説明

薄膜トランジスタの製造方法

【課題】酸化物半導体薄膜、特に、前駆体から熱変換され形成される酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法において、半導体特性の向上およびその安定性が向上した生産効率の高い薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】基体310上に、ゲート電極302、ゲート絶縁膜303、酸化物半導体薄膜306を有する薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜303が大気圧プラズマ法により形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した特性をもつ酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタについての技術は幾つか開示されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
これらの薄膜トランジスタにおいても、真空系であるプラズマCVD法を用いゲート絶縁膜を形成する方法は知られている。
【0004】
例えば、スパッタ等による酸化物半導体の形成後、真空プラズマCVD法によりゲート絶縁膜が形成されるものである。
【0005】
一方、酸化物半導体の形成に関しては、前駆体から、これを酸化物半導体に転換して薄膜トランジスタを製造する方法が知られている。
【0006】
例えば、有機金属からなる前駆体からこれを分解酸化(加熱、分解反応)して、非晶質酸化物半導体を形成する方法が知られている(例えば特許文献4、5参照)。
【0007】
また、金属塩を前駆体として熱酸化等により非晶質酸化物半導体に転化する技術も知られている(例えば非特許文献1、2また3参照)。
【0008】
これらの方法は、前駆体薄膜が塗布プロセスによって得られ、かつ、発熱手段を用いて熱酸化を行うことにより容易に半導体薄膜に転化するので、容易にパターニングができ、かつ塗布プロセスで半導体薄膜が得られることに特徴がある。
【0009】
しかしながら、大気圧下で作成された酸化物半導体を用いたこれらの薄膜トランジスタの場合、その構成や、また作成方法によってはトランジスタ特性に違いがあることがわかった。
【0010】
ゲート絶縁膜の形成方法については種々の材料また形成方法等が知られているが、作成方法によっては、半導体特性、また特性のバラツキ等に差があることがわかってきた。
【0011】
本発明は、ゲート絶縁膜を、大気圧プラズマ法を用いて作成することにより酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの特性を改善するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−165527号公報
【特許文献2】特開2006−165528号公報
【特許文献3】特開2007−73705号公報
【特許文献4】特開2003−179242号公報
【特許文献5】特開2005−223231号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】化学工業2006年12月号「ゾルゲル法による酸化物半導体薄膜の合成と応用」
【非特許文献2】Electrochemical and Solid−State Letters,10(5)H135−H138
【非特許文献3】Advanced Materials 2007,19,183−187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の課題は、酸化物半導体薄膜、特に、前駆体から熱変換され形成される酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法において、半導体特性の向上および安定性が向上した生産効率の高い薄膜トランジスタを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0016】
1.基体上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法において、前記ゲート絶縁膜が大気圧プラズマ法により形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【0017】
2.酸化物半導体が前駆体の溶液または分散液の塗布膜から形成されることを特徴とする前記1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【0018】
3.酸化物半導体がアモルファス半導体であることを特徴とする前記1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【0019】
4.前記酸化物半導体薄膜が少なくともIn、Sn、Znのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【0020】
5.酸化物半導体の前駆体がGa、Alのいずれかを含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、半導体特性が安定し生産効率の向上した薄膜トランジスタの製造方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】薄膜トランジスタ素子の伝達特性の一例を示す図である。
【図2】大気圧プラズマ処理装置の一例を示す図である。
【図3】ロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】薄膜トランジスタ素子の代表的な構成を示す図である。
【図6】薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシートの一例の概略の等価回路図である。
【図7】本発明の薄膜トランジスタ製造方法について各工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態について以下詳細に説明する。
【0024】
本発明は、基体上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜を大気圧プラズマ法により形成することを特徴とする。
【0025】
また、酸化物半導体としては、前駆体の溶液または分散液の塗布膜から、これを熱変換し形成されたものが好ましい。
【0026】
本発明は、ゲート絶縁膜を、通常用いられるプラズマCD、スパッタ法等の、真空系の製造装置を用いて作成したものに比べ、大気圧プラズマ法により作成したものが、薄膜トランジスタとしての素子特性、即ち、移動度、on/off比、また特に閾値等の特性において優れていることを見いだしたものである。
【0027】
薄膜トランジスタ素子の特性は、例えば、半導体パラメーターアナライザー(Agilent社製4155)を用い評価することができる。即ち、素子に所定のドレインバイアスをかけ、ゲート電圧(Vg)を掃引したときのドレイン電流(Id)の増加(伝達特性)で評価する。
【0028】
図1にこの伝達特性の一例を示すが、ゲート電圧(Vg)を掃引したときドレイン電流(Id)が立ち上がるVgを、そのId=0に外挿して得た値Vg(ON)を閾値としている。
【0029】
本発明によれば、閾値(の絶対値)が小さく、特性のバラツキが少なく、安定に動作する薄膜トランジスタを得ることができる。
【0030】
本発明において、何故に、移動度が高いことのほかon/off比についても大きく、特に閾値の小さい安定したトランジスタが得られるのかは不明であるが、大気圧プラズマ法により作成されたゲート絶縁膜とこれに接して形成される酸化物半導体との界面の状態に関係していると推定している。
【0031】
本発明においては酸化物半導体が用いられる。
【0032】
酸化物半導体としては、例えば、スパッタ法等を用いて形成される、例えば、In−Ga−Zn−O系ターゲットを用い形成される金属酸化物半導体、また有機金属化合物からゾルゲル法により形成される酸化物半導体等であってもよいが、本発明においては前駆体から熱変換によって形成される酸化物半導体が好ましい。
【0033】
本発明において、前駆体は、熱酸化、またプラズマ酸化等により酸化物半導体に変換するものであるが、加熱による酸化的な分解によって金属酸化物(半導体)に転換する材料である。
【0034】
(酸化物半導体の前駆体)
本発明において酸化物半導体の前駆体材料としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物としては、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
【0035】
金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
【0036】
それらの金属塩のうち、In(インジウム)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)のいずれかの金属イオンを含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
【0037】
また、その他の金属として、Ga(ガリウム)またはAl(アルミニウム)を含むことが好ましい。
【0038】
金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩が好ましく、さらに、硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
【0039】
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
【0040】
一般式(I) RMR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えばアセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。金属塩のうちでは、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
【0041】
以上の酸化物半導体の前駆体のうち、好ましいのは、金属の硝酸塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムなどが挙げられる。
【0042】
(酸化物半導体の前駆体薄膜の成膜方法)
これらの酸化物半導体の前駆体となる金属を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法など種々の方法を用いることができるが、本発明においては金属塩、ハロゲン化物、有機金属化合物等を適切な溶媒に溶解した溶液を用いて基板上に連続的に塗設することで生産性を大幅に向上することができ好ましい。溶解性の観点からも、金属化合物としては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、金属アルコキシド等を用いることが好ましい。
【0043】
溶媒としては、水のほか、金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、さらに、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、二硫化炭素等を好適に用いることができる。
【0044】
金属ハロゲン化物および/または金属アルコキシドを用いた場合には、比較的極性の高い溶媒が好ましく、中でも沸点が100℃以下の水、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、またはこれらの混合物を用いると乾燥温度を低くすることができため、樹脂基板に塗設することが可能となり、より好ましい。特に、水またはアルコール類を50質量%以上含有すること溶媒が好ましい。
【0045】
また、溶媒中に金属アルコキシドと種々のアルカノールアミン、α−ヒドロキシケトン、β−ジケトンなどの多座配位子であるキレート配位子を添加すると、金属アルコキシドを安定化したり、カルボン酸塩の溶解度を増加させたりすることができ、悪影響が出ない範囲で添加することが好ましい。
【0046】
酸化物半導体の前駆体材料を含有する液体を基材上に適用して薄膜を形成する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法など塗布法、また、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられる。薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等も好ましい方法である。
【0047】
成膜する場合、塗布後、50〜150℃程度で溶媒を揮発させることにより金属酸化物前駆体の薄膜が形成される。なお、溶液を滴下する際、基板自体を上記温度に加熱しておくと、塗布、乾燥の二つのプロセスを同時に行えるので好ましい。
【0048】
(金属の組成比)
好ましい、金属の組成比としては、Inを1としたとき、ZnSn1−y(ここにおいてyは0〜1の正数)は0.2〜5、好ましくは0.5〜2とする。さらにInを1としたときに、GaまたはAlの組成比は0.2〜5、好ましくは0.5〜2が好ましい。
【0049】
また、前駆体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
【0050】
(非晶質酸化物)
熱酸化によって形成される酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜である。
【0051】
酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択される温度である。なお、本発明に係るアモルファス(非晶質)酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフの薄膜トランジスタが歩留まりよく得られる。
【0052】
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
【0053】
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0054】
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、さらには1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましい。
【0055】
前駆体材料の薄膜を酸化物半導体に転化するには、前駆体材料の薄膜を有する基板を加熱すればよい、前駆体材料の加熱による酸化物半導体への転化は、基本的には熱酸化であり、大気中等、酸素の存在下において加熱処理を行う。
【0056】
加熱の方法としては特に限定はないが、具体的には、前記の加熱は、基板、また基板上に形成される他の要素が、熱により変性しない温度範囲、すなわち、70〜120℃、好ましくは180〜400℃、さらに好ましくは200〜350℃で、20秒〜30分間、好ましくは20〜10分間の加熱による。加熱条件(温度、時間)は前駆体材料の種類また酸素条件等によって異なるため、上記の範囲で適宜選択する。加熱は、あらゆる適切な加熱手段により行われるが、各種電気オーブン、ドライ・ヒートブロック、マイクロウェーブ・オーブン、各種ヒータなどが例示される。しかし、これらに限定されるものではない。
【0057】
電磁波、特にマイクロ波を利用すれば、マイクロ波の吸収を利用した発熱により加熱処理することができ、加熱された領域において前駆体材料を酸化物半導体に転化させることができる。
【0058】
金属酸化物半導体の前駆体材料を含む薄膜にマイクロ波を照射することで、熱が発生して薄膜が内部から、均一に加熱される。
【0059】
また、ITOのような強い電磁波吸収体が近傍に存在する場合、これもマイクロ波を吸収し発熱するため、これに隣接する領域を更に短時間に加熱することができる。
【0060】
例えば、実施例(図7)の如く、ゲート電極を、例えばITO等のマイクロ波吸収材料により形成しておけば、マイクロ波をこれに照射して発熱させて、近傍の領域を加熱することができる。マイクロ波とは0.3〜50GHzの周波数をもつ電磁波のことをさす。
【0061】
また、プラズマ酸化や、酸素の存在下紫外光照射を行い光酸化処理する等の方法でも前駆体材料薄膜を半導体層に転化することができる。
【0062】
半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0063】
本発明は、酸化物半導体を用い、かつ、ゲート絶縁膜については、大気圧プラズマ法により形成する。
【0064】
大気圧プラズマ法について以下説明する。
【0065】
本発明の大気圧プラズマ法によるゲート絶縁膜の形成において、好ましく用いることができるプラズマ処理装置について、以下説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
大気圧プラズマ法は、大気圧またはそれに近い気圧下において行われることが特徴であるが、具体的な圧力としては70kPa〜130kPaが好ましく、まったく減圧・加圧を行わない、大気圧であることが最も好ましい。
【0067】
プラズマを発生させるためには、キャリアガスとして不活性ガスの雰囲気下で放電させる必要があるが、ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、所謂希ガスと呼ばれる、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等や、更には窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましく、アルゴンまたはヘリウムが特に好ましく用いられる。ただし、製造コスト的な観点からは窒素ガスを用いることが最も好ましい。
【0068】
本発明の好ましい態様として、不活性ガスと共に0.01%〜30%(体積割合)の反応(薄膜形成)ガスを含有させることが好ましく、さらに好ましくは0.1%〜20%、最も好ましくは1%〜15%の反応(薄膜形成)ガスを含有させることが本発明の実施においてより好ましい。
【0069】
ゲート絶縁膜としては、無機酸化物(窒化物)層が好ましく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム等の金属酸化物が、また、酸化窒化物としては、酸化窒化珪素、窒化珪素等の酸化窒化物、窒化物等が挙げられる。
【0070】
これらの無機酸化物、窒化物層は、珪素、AlまたTi、Zn、Sn等を含有する有機金属化合物を反応性ガスとして用い、大気圧プラズマ法を用いることで、作成することができる。
【0071】
具体的な有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、何れも好ましく用いることができ、これらを2種以上同時に混合して使用することもできる。
【0072】
また、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン等を挙げることができ、またこれらを2種以上同時に混合して使用することもできる。
【0073】
また、有機錫化合物として、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。
【0074】
また、その他の有機金属化合物として、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
【0075】
また、これらの金属を含む反応ガスを分解して無機酸化物、窒化物等、無機化合物を得るための分解ガスを含んでよく、分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0076】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物等を得ることができる。
【0077】
大気圧下でプラズマ処理する場合は、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスがヘリウム、アルゴンまたは窒素であること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。
【0078】
周波数として、1kHz〜1GHzが好ましい。印加する電力は、用いる有機金属化合物の種類、又濃度等によっても異なるが、条件を最適化する必要がある。例えば、0.01〜10W/cmの範囲の電力を用いて0.1秒〜数十秒の範囲で放電処理を行うことがこのましい。
【0079】
本発明に用いることのできる大気圧プラズマ処理装置の一例を図2を用いて説明する。
【0080】
図2はフレキシブルなフィルム基材の搬送工程に適用できる、所謂ロールツーロールによるプラズマ処理の装置例である。図2中、大気圧プラズマ処理装置30は、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0081】
ロール電極(第一電極)35と複数の角筒型電極(第二電極)36との対向電極間(放電空間)32に、ガス供給手段50から供給された有機金属化合物のガスおよび/又は酸素ガスと、例えば窒素のような放電ガスとの混合物Gが供給され、ここで活性化されて、基材F上に導入される。
【0082】
ロール回転電極(第一電極)35と角筒型電極(第二電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第一電極)35には第一電源41から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第一の高周波電界を、また角筒型電極(第二電極)36には第二電源42から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第二の高周波電界をかけるようになっている。
【0083】
ロール回転電極(第一電極)35と第一電源41との間には、第一フィルタ43が設置されており、第一フィルタ43は第一電源41から第一電極への電流を通過しやすくし、第二電源42からの電流をアースして、第二電源42から第一電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型電極(第二電極)36と第二電源42との間には、第二フィルタ44が設置されており、第二フィルタ44は、第二電源42から第二電極への電流を通過しやすくし、第一電源41からの電流をアースして、第一電源41から第二電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0084】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第二電極、また角筒型電極36を第一電極としてもよい。何れにしても第一電極には第一電源が、また第二電極には第二電源が接続される。第一電源は第二電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0085】
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第一の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3〜20mA/cm、さらに好ましくは1.0〜20mA/cmである。また、第二の高周波電界の電流I2は、好ましくは10〜100mA/cm、さらに好ましくは20〜100mA/cmである。
【0086】
ガス供給手段50において、ガス発生装置51で発生させた反応性ガスGは、流量を制御して給気口52より大気圧プラズマ処理容器31内に導入する。
【0087】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されてくるか、または前工程から搬送されてきて、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されてくる空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型電極36との間に移送し、ロール回転電極(第一電極)35と角筒型電極(第二電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより処理される。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、次工程に移送する。
【0088】
放電処理済みの処理排気G′は排気口53より排出する。
【0089】
薄膜形成中、ロール回転電極(第一電極)35および角筒型電極(第二電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。
【0090】
なお、68および69は大気圧プラズマ処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0091】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0092】
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
【0093】
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0094】
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図4同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0095】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0096】
図4に示した各角筒型電極36は、円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0097】
対向する第一電極および第二の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことをいい、双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことをいう。
【0098】
電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0099】
大気圧プラズマ処理容器31は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたはステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁をとってもよい。
【0100】
以下に、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置に適用可能な高周波電源を例示する。
【0101】
大気圧プラズマ処理装置に設置する第一電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SP G5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることができ、いずれも使用することができる。
【0102】
また、第二電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることができ、いずれも好ましく使用できる。
【0103】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0104】
それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0105】
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ処理装置に採用することが好ましい。
【0106】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第二電極(第二の高周波電界)に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ処理する。
【0107】
第二電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0108】
また、第一電極(第一の高周波電界)にも、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給することにより、第二の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。さらに好ましくは5W/cm以上である。また、第一電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cmである。
【0109】
これにより、さらなる均一高密度プラズマを生成でき、処理速度の向上と処理性の向上が両立できる。
【0110】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第二電極側(第二の高周波電界)は連続サイン波の方がより好ましい。
【0111】
図2に示される大気圧プラズマ処理装置は電極温度調節手段60を有している装置である。
【0112】
本発明に係るプラズマ放電処理は、反応性の観点からできる限り高温で処理することが好ましく、電極温度調節手段60を用いて少なくともロール回転電極(第一電極)の温度を調整しながら処理することが好ましい。
【0113】
ロール回転電極(第一電極)の温度は、50℃以上にすることが好ましく、70℃以上が更に好ましく、90℃以上が最も好ましい。
【0114】
プラズマの照射時間は基材Fの搬送速度で制御することができ、照射時間に合わせて膜厚が適宜調整される。好ましい照射時間は0.1秒〜100秒であり、さらに好ましくは0.2秒〜30秒であり、最も好ましくは0.5秒〜20秒である。
【0115】
次に、以下で、薄膜トランジスタを構成する他の各要素について説明する。
【0116】
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、また、例えば、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛等の電磁波吸収能をもつ電極材料、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
【0117】
また、導電性材料として、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。
【0118】
金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
【0119】
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として、マスクを介して蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成する方法、また蒸着やスパッタリング等の方法により形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0120】
また、ソース、ドレイン、またゲート電極等、またゲートバスライン、ソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
【0121】
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
【0122】
無電解メッキの触媒とメッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
【0123】
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
【0124】
本発明のソース、あるいはドレイン電極の電極材料、また形成方法としては、塗布あるいは印刷法等のウェットプロセスにより、容易に成膜が可能な流動性電極材料を用いて形成されることが好ましい。
【0125】
流動性電極材料としては、公知の導電性ペーストなどを用いてもよいが、平均粒子径は1〜300nmの金属微粒子分散物が好ましく、さらに、中でも粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である金属ナノ微粒子分散液等が挙げられる。また導電性ポリマー溶液、分散液等を好適に用いることができる。
【0126】
このような金属微粒子の分散物の作製方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報、特許第2561537号などに記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子の分散物である。
【0127】
導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法により適用する方法を用いることができる。
【0128】
印刷等により基板上に適用後、150〜450℃の温度で焼成処理を行うことで融着が進み低抵抗の電極となる。
【0129】
(ゲート絶縁膜)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜については、既に説明した大気圧プラズマ法による方法が挙げられるが、他の方法あるいは材料による絶縁膜を併用あるいは積層して用いてもよい。
【0130】
例えば、有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
【0131】
特に、無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0132】
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において可撓性がありフレキシブルな基板であることから、支持体(基板)は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができると共に、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0133】
(素子構成)
図5は薄膜トランジスタ素子の代表的な構成を示す図である。
【0134】
同図(a)は、支持体6上にソース電極2、ドレイン電極3を形成し、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体6上に先ず半導体層1を形成し、その後ソース電極2、ドレイン電極3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0135】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4、絶縁層5を形成し、その上に、ソース電極2およびドレイン電極3を形成し、該電極間に半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0136】
図6は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される電子デバイスである薄膜トランジスタシート10の一例の概略の等価回路図である。
【0137】
薄膜トランジスタシート10はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子14を有する。11は各薄膜トランジスタ素子14のゲート電極のゲートバスラインであり、12は各薄膜トランジスタ素子14のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子14のドレイン電極には、出力素子16が接続され、この出力素子16は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子16として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。15は蓄積コンデンサ、17は垂直駆動回路、18は水平駆動回路である。
【0138】
この様な、支持体上にTFT素子を2次元的に配列した薄膜トランジスタシートの作製に本発明の方法を用いることができる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明に係る酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの製造方法についてその実施形態を具体的に説明する。
【0140】
実施例1
本発明の薄膜トランジスタ製造方法による薄膜トランジスタの作成について図7の各工程の断面模式図を用いて説明する。
【0141】
〈薄膜トランジスタ1の作成〉
支持体301として、ポリイミド樹脂フィルム(200μm)を用い、この上に、先ず、50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
【0142】
(下引き層の形成)
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
【0143】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
さらにその層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層(バリア層)310とした(図7(1))。なお、大気圧プラズマ処理装置は前記図2に準じた装置を用いた。
【0144】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
【0145】
(ゲート電極の形成)
次いで、ゲート電極を形成する。スパッタ法により、厚さ300nmのITO膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてゲート電極302を形成した。(図7(1))
(ゲート絶縁膜の形成)
次いで、さらにフィルム温度200℃にて、同じ大気圧プラズマ処理装置を用い上記と同条件で、厚さ250nmの酸化珪素膜を設けゲート絶縁膜303を形成した。(図7(2))
なお、表面温度は熱電対を用いた表面温度計により測定した。
【0146】
(半導体層の形成)
次いで、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、ゲート絶縁膜表面全面がOTSと反応し表面処理された。表面処理によりオクチルトリクロロシランによる単分子膜が形成するが図では便宜的に表面処理層308でこの単分子膜を表した(図7(3))。
【0147】
この表面処理を行った酸化珪素膜上に、半導体チャネル領域に対応させた光透過部を有するフォトマスクMを介して、低圧水銀灯から波長254nmの紫外光を照射した(図7(4))。これにより、露光部の表面が分解され、表面処理部が親水化された。エタノールで洗浄し分解物を除去して、チャネル領域に対応する部分のゲート絶縁層303表面を露出させた(図7(5))。
【0148】
次ぎに、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(グラム原子比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット装置を用いて半導体層パターン(略ゲート電極パターン)に従ってインクを吐出し、半導体の前駆体材料薄膜306’を形成した(図7(6))。100℃で熱処理し乾燥し、形成した前駆体材料薄膜306’の平均膜厚は50nmであった。
【0149】
さらに、支持体側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し300℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極302)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向してIGZO系酸化物半導体層306が形成された(図7(7))。
【0150】
なお、表面温度は熱電対を用いた表面温度計により測定した。
【0151】
(保護膜の形成)
さらに、オクチルトリクロロシラン(C17SiCl)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、形成した酸化物半導体層306表面もOTSと反応し単分子膜が形成された(表面処理)。同様に、表面処理層308でこの単分子膜を表した(図7(8))。
【0152】
次いで、半導体層上の保護膜の形成領域以外を覆うマスクを用いて、保護膜形成領域を254nmの紫外光にて照射した(図7(9))。半導体層上の保護膜形成領域の表面処理層308を分解し半導体層を露出させた。なお、保護膜の幅がチャネル長(ソース電極304、ドレイン電極305の距離)を形成するので、保護膜の幅が15μmとなるよう露光領域を調整し半導体層のチャネル領域のみ露出させた(図7(10))。
【0153】
次に酸化物半導体層306上にパーヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 アクアミカNP110(登録商標))キシレン溶液を前記同様ピエゾ方式のインクジェット装置を用いて酸化物半導体層内の所定の領域に適用した(図7(11))。次いでこれを前記同様にマイクロ波を照射してゲート電極の発熱により200℃、で20分程度の熱処理を行って、二酸化ケイ素の薄膜層に転化させ保護層307を形成した(図7(12))。保護層の厚みは200nmであった。
【0154】
(ソース、ドレイン電極の形成)
次に、前記と同様の大気圧プラズマ処理装置を用い下記条件で酸素プラズマ処理し残っている表面処理層308を分解し、保護層以外の部分でゲート絶縁層303および酸化物半導体層306を露出させた(図7(13))。
【0155】
(使用ガス)
不活性ガス:窒素ガス 98体積%
反応性ガス:酸素ガス 2体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
次ぎに、銀微粒子分散液(Cabot社製 CCI−300(銀含有率20質量%))を、ピエゾ方式のインクジェットヘッドから射出し、半導体層の露出領域を含むソース電極、ドレイン電極部分に印刷を施した。次いで200℃で30分間熱処理して、ソース電極304およびドレイン電極305を形成した(図2(14))。それぞれのサイズは、幅40μm、長さ100μm(チャネル幅)厚さ100nmであり、ソース電極304、ドレイン電極305の距離(チャネル長)は20μmとした。薄膜トランジスタ1を作成した。
【0156】
また、前記薄膜トランジスタ1において、ゲート絶縁膜の形成を、以下の方法により大気圧プラズマ法により行う代わりに、真空条件下でのプラズマCVD法を用いて行った試料を作成した。
【0157】
(ゲート絶縁膜の形成)
装置は特開2002−127294号記載の図3で示されるプラズマCVD装置に準じた装置を用いた。装置のチャンバー内に基材を装着し、チャンバー内を油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度4.0×10−3Paまで減圧した。
【0158】
また、原料ガスとしてテトラメトキシシラン(TEOS、信越化学工業(株)、KBE−04)、および酸素ガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)、ヘリウムガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)を準備した。
【0159】
次に、コーティングドラム近傍に、コーティングドラムと対向するように電極を配置し、このコーティングドラムと電極との間に周波数50kHzの高周波電力を印加した。
【0160】
そしてチャンバー内の電極近傍に設けられたガス導入口から、TEOSガス300sccm、酸素ガス50sccm、ヘリウムガス1000sccmを導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内を6.7Paに保って、基材上に酸化ケイ素膜を形成した。膜厚は250nmとした。
【0161】
ゲート絶縁膜について以上の方法により作成したほかは全く同様に薄膜トランジスタを作成した。
【0162】
さらに、薄膜トランジスタ1において、ゲート絶縁膜を以下の方法で作成した有機ポリマーに代えて薄膜トランジスタを作成した。
【0163】
(ゲート絶縁膜の形成)
ゲート電極302の形成後(図7(1))、ポリビニルフェノールとヘキサメトキシメラミンを質量比7:3でプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、濃度5%の溶液を調製し、前記同様のピエゾ方式のインクジェット装置を用いてゲート電極を形成したフィルム上に射出・塗布し、次いでこれを100℃で乾燥し、さらに180℃で熱硬化させた。厚みは700nmのゲート絶縁膜とした。
【0164】
以上の方法で薄膜トランジスタ1のゲート絶縁膜を変化させた試料3種を作成した。
【0165】
〈薄膜トランジスタ2の作成〉
上記3種の薄膜トランジスタ1において、半導体層の形成を、硝酸インジウム、硝酸ガリウムを金属比率で1:1(グラム原子比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとして用い半導体の前駆体材料薄膜を形成し、また、マイクロ波の照射による焼成温度を200℃として、IGO系の酸化物半導体とした以外同様にして行い、それぞれゲート絶縁膜違いで3種の薄膜トランジスタ2を作成した。
【0166】
〈薄膜トランジスタ3の作成〉
上記3種の薄膜トランジスタ1において、半導体層の形成を、In−Ga−Zn−O組成(In:Zn:Ga=1:1:1)をもつアモルファス金属酸化物半導体薄膜(IGZO)を、所定の組成をもつIGZOターゲットを用いてスパッタ法を用いて成膜した(厚み50nm)以外は同様にして、ゲート絶縁膜違いの3種の薄膜トランジスタ3を作成した。
【0167】
尚、スパッタ条件は下記の通りである。
【0168】
方式:RFスパッタ(13.56MHz)
RFパワー:100W
放電ギャップ:40mm
基板温度:室温
酸素比率:3体積%(アルゴン雰囲気)
成膜レート:20〜40nm/min
スパッタ成膜後、レジストを用い塩酸でパターニングして絶縁膜上チャネル領域に同様の半導体膜を作成した。次いで、温度300℃30分間電気炉で焼成(アニール)を行ってスパッタ法を用いた酸化物半導体層を形成した。
【0169】
〈薄膜トランジスタ4の作成〉
薄膜トランジスタ3において半導体層を、マスクを用いて蒸着形成したペンタセン薄膜(膜厚50nm)とした以外は同様にゲート絶縁層が異なる3種の薄膜トランジスタ4を作成した。
【0170】
また、ペンタセン薄膜形成後、パーヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 アクアミカNP110(登録商標))キシレン溶液を前記同様ピエゾ方式のインクジェット装置を用いてペンタセン薄膜上の所定の領域に適用し、前記同様にマイクロ波を照射してゲート電極の発熱により200℃、で20分程度の熱処理を行って、二酸化ケイ素の薄膜層に転化させ保護層307を形成した(図7(13))。保護層の厚みは同じ200nmとした。保護層形成後薄膜トランジスタ3同様にソース、ドレイン電極を形成薄膜トランジスタを作成した。
【0171】
以上の方法により作製した、それぞれゲート絶縁膜の作成方法を変化させた3種の薄膜トランジスタ1〜4について、半導体パラメーターアナライザー(Agilent社製4155)を用い評価した。薄膜トランジスタ1〜3はn型のエンハンスメント動作を示した。また、薄膜トランジスタ4はp型のエンハンスメント動作を示した。
【0172】
薄膜トランジスタ1〜3(それぞれ3種)についてドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−30Vから+30Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)について観測し、その飽和領域から移動度(cm/Vs)を見積もった。また、ドレイン電流の立ち上がりのゲート電圧Vg(ON)、およびドレイン電流の最大値と最小値の比の常用対数の値(on/off比)を評価し、それらの結果について表1に示した。
【0173】
閾値Vg(ON)はゲートバイアスに対するドレイン電流値の平方根√Idの関係にて、√Id=0に外挿して得たゲートバイアスの値とした。
【0174】
また薄膜トランジスタ4に関しては、ドレインバイアス−40V、ゲート電圧を−50Vから+30Vまで掃引し同様にドレイン電流の増加(伝達特性)について観測し、その飽和領域から移動度(cm/Vs)を、また、ドレイン電流の立ち上がりのゲート電圧Vg(ON)、およびon/off比を評価した。
【0175】
【表1】

【0176】
本発明の酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタは、移動度、on/off比共にプラズマCVDによる、又有機ポリマー膜を用いたものに比べ高く、又、従来のプラズマCVD法によるゲート絶縁膜を用いたものに比較して特に閾値Vg(ON)が低く、良好な特性を有していることがわかる。特に酸化物半導体層を前駆体から形成したものは大気圧プラズマ法によりゲート絶縁膜を作成したとき移動度、閾値、またon/off比共に良好な特性を示す。
【符号の説明】
【0177】
1 半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
6 支持体
10 薄膜トランジスタシート
11 ゲートバスライン
12 ソースバスライン
14 薄膜トランジスタ素子
15 蓄積コンデンサ
16 出力素子
17 垂直駆動回路
18 水平駆動回路
301 支持体
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁膜
304 ソース電極
305 ドレイン電極
306 酸化物半導体層
306’ 前駆体材料薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体薄膜を有する薄膜トランジスタの製造方法において、前記ゲート絶縁膜が大気圧プラズマ法により形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
酸化物半導体が前駆体の溶液または分散液の塗布膜から形成されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
酸化物半導体がアモルファス半導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記酸化物半導体薄膜が少なくともIn、Sn、Znのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
酸化物半導体の前駆体がGa、Alのいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−177339(P2010−177339A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16573(P2009−16573)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】