説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】運転者による制動操作中の減速抜けによるショックの発生および制動装置の耐久性の悪化を抑制する。
【解決手段】HV_ECUは、運転者の操作によるダウンシフト要求がなく(S100にてNO)、車両の周囲の状況に応じたダウンシフト要求があり(S104にてYES)、かつ、ブレーキが作動中である場合(S106にてYES)、ダウンシフト要求を拒否するステップ(S108)と、運転者の操作によるダウンシフト要求があるか(S100にてYES)、または、ブレーキの作動中でない場合(S106にてNO)、ダウンシフト制御を実行するステップ(S102)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、油圧制動力と回生制動力とによりトータル制動力を実現する車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行状態とドライバーの運転操作状態に応じてエンジンの出力を制御する技術が公知である。たとえば、特開2007−38933号公報(特許文献1)は、定速走行制御中において適切に変速を実行してドライバーの運転操作の煩雑化を防止する車両走行制御装置を開示する。この車両走行制御装置は、定速走行制御用の目標車速を実現するための要求制駆動力を算出する手段と、算出された要求制駆動力に基づき車両用エンジンの出力を調節する手段と、車両走行状態及びドライバーの運転操作状態に基づいてドライバーが期待する期待制駆動力を算出する手段と、算出された要求制駆動力と、算出された期待制駆動力とのいずれかの制駆動力を、要求制駆動力と期待制駆動力との比較結果を含めた車両運転状態に基づいて選択して選択制駆動力として設定し、選択制駆動力に基づいて変速する手段とを備えたことを特徴とする。
【0003】
上述した公報に開示された車両走行制御装置によると、定速走行制御側の要求レベルとドライバーの期待レベルとを、同じ制駆動力を用いることにより、容易かつ高精度に比較することができる。したがって、実際の制駆動力が適切な状態となるように変速に対する定速走行制御とドライバーの期待との調停が適切になされる。
【0004】
また、近年、環境問題対策の1つとして、エンジンおよびモータからの駆動力により走行するハイブリッド車両が注目されている。このようなハイブリッド車両は、駆動輪に対して直接的に駆動力を発生するモータと、エンジンの始動およびエンジンの動力を用いた発電とを行なうジェネレータとが搭載される。
【特許文献1】特開2007−38933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド車両においては、油圧で作動する制動装置による油圧ブレーキとモータによる回生ブレーキとにより運転者がブレーキペダルの操作により要求するトータル制動力を実現している。
【0006】
しかしながら、油圧ブレーキは、回生ブレーキよりも応答性が低いため、回生ブレーキに短時間の変動が生じた場合には、油圧ブレーキの応答遅れにより車両の減速中にトータル制動力が変動し、減速抜けによるショックが車両に発生するという問題がある。また、トータル制動力の変動を抑制するため、制動装置の作動が頻繁に行なわれる。そのため、制動装置の耐久性が悪化する場合がある。
【0007】
車両の減速中においては、回生ブレーキによる回生パワーとバッテリの充電状態とに基づいてエンジン始動が行なわれる場合がある。このとき、ジェネレータを用いてエンジンを始動する際に、エンジン始動前のジェネレータの回転方向によっては、ジェネレータにより発電を行なう期間がある場合がある。そのため、車両に搭載されるバッテリの充電状態によっては(たとえば、要求充電量を満足する場合には)、回生パワーが制限されるため、回生ブレーキの変動が発生する可能性がある。
【0008】
上述した公報に開示された車両走行制御装置においては、このような問題について何ら考慮されていないため、解決することはできない。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者による制動操作中の減速抜けによるショックの発生および制動装置の耐久性の悪化を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る車両の制御装置においては、車両は、駆動源であり、かつ、車両の減速時に回生制動力を車両に発生させるための第1のモータジェネレータと、運転者のブレーキペダルへの操作量に応じたトータル制動力を車両に発生させるために、回生制動力に加えて油圧を用いた油圧制動力を車両に発生させるための制動装置とを含む。この制御装置は、走行中の車両の周囲の状況に応じて、回生制動力の変動を伴なう車両の挙動制御を実行するための挙動制御手段と、運転者がブレーキペダルを操作しているか否かを検出するためのブレーキ操作検出手段と、運転者がブレーキペダルを操作している場合に、挙動制御の実行を禁止するための禁止手段とを含む。第7の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0011】
第1の発明によると、運転者がブレーキペダルを操作している場合に挙動制御(たとえば、ダウンシフト制御)の実行を禁止することにより、回生制動力の変動を回避することができる。回生制動力の変動を抑制することにより、トータル制動力の変動を抑制することができる。これにより、油圧制動力の応答遅れに起因した減速抜けによるショックの発生を抑制することができる。さらに、回生制動力の変動を抑制することができるため、結果的に油圧制動力の変動を抑制することができる。そのため、制動装置の作動回数の増加が抑制される。これにより、制動装置の耐久性の悪化を抑制することができる。したがって。運転者による制動操作中の減速抜けによるショックの発生および制動装置の耐久性の悪化を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0012】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、車両は、エンジンと、エンジンの始動およびエンジンの動力を用いた発電を行なう第2のモータジェネレータと、エンジンの動力を、第1、第2のモータジェネレータに分割して伝達する動力分割機構とをさらに含む。挙動制御手段は、挙動制御として、第2のモータジェネレータを用いて、エンジンの回転数を段階的に増加させるダウンシフト制御を、エンジンを始動する制御とともに実行する。第2のモータジェネレータは、エンジンを始動させる際に、少なくとも一部の期間回生動作を行なう。第8の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0013】
第2の発明によると、挙動制御として、ダウンシフト制御の実行とともにエンジンを始動する場合、第2のモータジェネレータにおいて回生動作が行なわれる。そのため、バッテリへの充電状態によっては(たとえば、要求充電量を満足する場合には)、回生制動力が制限される場合がある。その結果、回生制動力に変動が生じることとなる。したがって、運転者がブレーキペダルを操作している場合に、挙動制御の実行を禁止することにより、回生制動力の変動を抑制することができる。
【0014】
第3の発明に係る車両の制御装置は、第1または2の発明の構成に加えて、運転者の操作に基づく意図が挙動制御の実行と一致するか否かを検出するための挙動制御操作検出手段をさらに含む。挙動制御手段は、運転者の操作に基づく意図が挙動制御の実行と一致している場合は、禁止手段による挙動制御の実行の禁止の有無に関わらず挙動制御を実行する。第9の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0015】
第3の発明によると、運転者の操作に基づく意図が挙動制御の実行と一致している場合は、禁止手段による挙動制御の実行の禁止の有無に関わらず挙動制御を実行することにより、運転者の意図に応じた制御を適切に実行することができる。
【0016】
第4の発明に係る車両の制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、車両の外部の通信設備から車両の周囲の地図情報を受信するための受信手段をさらに含む。挙動制御手段は、受信した地図情報に基づいて挙動制御を実行する。第10の発明に係る車両の制御方法は、第4の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0017】
第4の発明によると、車両の周辺の地図情報に基づいて挙動制御を実行することにより、車両の周囲の状況に対応した適切な挙動制御を実施することができる。
【0018】
第5の発明に係る車両の制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、車両の周囲を撮像するための撮像手段をさらに含む。挙動制御手段は、撮像手段による撮像結果に基づいて挙動制御を実行する。第11の発明に係る車両の制御方法は、第5の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0019】
第5の発明によると、撮像手段の撮像結果に基づいて挙動制御を実行することにより、車両の周囲の状況に対応した適切な挙動制御を実施することができる。
【0020】
第6の発明に係る車両の制御装置は、第1〜5のいずれかの発明の構成に加えて、車両が走行する路面の勾配を検出するための勾配検出手段をさらに含む。挙動制御手段は、勾配検出手段の検出結果に基づいて挙動制御を実行する。第12の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
【0021】
第6の発明によると、勾配検出手段の検出結果に基づいて挙動制御を実行することにより、車両の周囲の状況に対応した適切な挙動制御を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置が搭載されるハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。
【0024】
ハイブリッド車両は、駆動源としての内燃機関(以下、エンジンという)120と、回転電機であるモータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、ジェネレータ140Aとモータ140Bと表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、ジェネレータ140Aがモータとして機能したり、モータ140Bがジェネレータとして機能したりする。
【0025】
エンジン120の吸気通路122には、吸入空気のほこりを捕捉するエアクリーナ122A、エアクリーナ122Aを通ってエンジン120に吸入される空気量を検出するエアフローメータ122B、エンジン120に吸入される空気量を調整するためのスロットルバルブを有する電子スロットル122Cが設けられている。電子スロットル122Cにはスロットルポジションセンサ122Dが設けられている。エンジンECU(Electronic Control Unit)280には、エアフローメータ122Bにより検出された吸入空気量や、スロットルポジションセンサ122Dにより検出された電子スロットル122Cの開度等が入力される。
【0026】
エンジン120は、複数の気筒と、複数の気筒のそれぞれに燃料を供給する燃料噴射装置130が設けられる。燃料噴射装置130は、エンジンECU280からの燃料噴射制御信号に基づいて各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射する。
【0027】
また、エンジン120の排気通路124には、三元触媒コンバータ124Bと、三元触媒コンバータ124Bに導入される排出ガスにおける空燃比(A/F)を検出する空燃比センサ124Aと、三元触媒コンバータ124Bの温度を検出する触媒温度センサ124Cと、消音器124Dと、三元触媒コンバータ124Bから排出される排出ガスにおける酸素濃度を検出する酸素センサ124Eとが設けられている。
【0028】
また、エンジンECU280には、エンジン120の冷却水の温度を検出する水温検出センサ360からエンジン冷却水温を示す信号が入力される。エンジン120の出力軸には、クランクポジションセンサ380が設けられており、エンジンECU280には、クランクポジションセンサ380から出力軸の回転数を示す信号が入力される。
【0029】
ハイブリッド車両は、減速機180と動力分割機構200とをさらに含む。減速機180は、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する。動力分割機構200は、たとえば、遊星歯車機構であって、エンジン120の発生する動力を駆動輪160(すなわち、モータ140B)とジェネレータ140Aとの2経路に分配する。たとえば、遊星歯車機構のサンギヤは、ジェネレータに接続し、キャリアは、エンジンに接続され、リングギヤは、モータ140Aに接続されるものとする。また、リングギヤとモータ140Aとの間に変速機構が設けられるようにしてもよい。
【0030】
また、ハイブリッド車両は、走行用バッテリ220と、インバータ240とをさらに含む。走行用バッテリ220は、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する。なお、走行用バッテリ代えてキャパシタ等を蓄電装置として用いてもよい。インバータ240は、走行用バッテリ220の直流とジェネレータ140Aおよびモータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なう。
【0031】
さらに、ハイブリッド車両は、バッテリ制御ユニット(以下バッテリECUという)260と、エンジンECU280と、MG_ECU300と、HV_ECU320とをさらに含む。
【0032】
バッテリECU260は、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御する。エンジンECU280は、エンジン120の動作状態を制御する。MG_ECU300は、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御する。HV_ECU320は、バッテリECU260、エンジンECU280、MG_ECU300、後述するNAVI−ECU330およびブレーキECU340等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御する。
【0033】
HV_ECU320には、シフトレバー(図示せず)の位置を検出するシフトポジションセンサ344が接続される。シフトポジションセンサ344は、シフトレバーの位置を示すシフトポジション信号をHV_ECU320に送信する。さらに、HV_ECU320には、車両が走行する路面の勾配を検出する勾配センサ346が接続される。勾配センサ346は、路面の勾配を示す勾配信号をHV_ECU320に送信する。勾配センサ346は、たとえば、Gセンサ等により実現される。
【0034】
本実施の形態においては、走行用バッテリ220とインバータ240との間にはコンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、ジェネレータ140Aやモータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータジェネレータ140Aやモータ140Bに電力を供給するときには、コンバータ242で電力を昇圧する。このコンバータ242には平滑コンデンサが内蔵されており、コンバータ242が昇圧動作を行なう際には、この平滑コンデンサに電荷が蓄えられる。
【0035】
さらに、本実施の形態におけるハイブリッド車両は、NAVI−ECU330と、ブレーキECU340と、制動装置358とをさらに含む。
【0036】
NAVI−ECU330は、外部の通信設備から車両の周囲の状況に対応した地図情報を受信する受信装置332と、車両の周囲を撮像するカメラ334とを含む。NAVI−ECU330は、受信した地図情報とカメラにより取得された映像または画像とに基づいてHV_ECU320に対してダウンシフト制御の実行要求(以下の説明においては、ダウンシフト要求とも記載する)を送信する。
【0037】
「ダウンシフト制御」とは、エンジン120の回転数を段階的に増加させることによりエンジン120におけるフリクション抵抗を増加させてエンジンブレーキ力の発生の度合を増加させる制御である。たとえば、エンジンブレーキ力の効きに応じて1段から6段の段階を設定する。また、段数が小さくなるほど減速時のエンジンブレーキ力が大きくなるようにまたは加速時の加速応答性が向上するように設定される。
【0038】
たとえば、HV_ECU320は、ダウンシフト要求があると、現在選択されている段数よりも低い段数を選択する。HV_ECU320は、エンジン120の回転数を選択された段数に対応する下限値以上に持ち上げるようにジェネレータ140Aおよび/またはエンジンECU280を経由してエンジン120を制御する。このようにして、選択された段数に対応する減速度が車両に発生するようにジェネレータ140Aおよび/またはエンジン120が制御される。
【0039】
なお、HV_ECU320は、ダウンシフト制御の実行時にエンジン120が停止中の場合であって、かつ、走行用バッテリ220の充電量が要求量を満足することに起因して回生制動力の発生が制限される場合には、選択された段数に対応する減速度を車両に発生させるためにジェネレータ140Aを用いてエンジン120を始動させて、エンジン120の回転数を上昇させることによりエンジンブレーキ力の効きを上昇させる。
【0040】
また、「外部の通信設備」とは、たとえば、基地局またはGPS(Global Positioning System)衛星である。
【0041】
NAVI−ECU330は、たとえば、受信した地図情報と車両の周囲の状況の映像または画像を解析した結果、車両の位置がカーブの手前、高速道路の合流時、退出時および検札所通過手前等である場合には、エンジンブレーキ力の発生の度合を増加させるためにHV_ECU320に対してダウンシフト要求を送信する。
【0042】
本実施の形態においては、NAVI−ECU330は、地図情報と車両の周囲の状況の映像または画像とに基づいてダウンシフト要求を送信するとして説明するが、地図情報および車両の周囲の状況の映像または画像のうちの少なくともいずれか一方に基づいてダウンシフト要求を送信するようにしてもよい。
【0043】
制動装置358は、ブレーキロータ352と、ブレーキキャリパ354と、ブレーキアクチュエータ350とを含む。ブレーキロータ352は、駆動輪160の回転軸に固定され駆動輪160とともに回転する。ブレーキキャリパ354は、油圧を用いてブレーキロータ352を回転軸に平行な方向から挟み込むようにして設けられる。ブレーキアクチュエータ350は、ブレーキECU340からの制御信号に基づいてブレーキキャリパ354に供給される油圧をソレノイド等を用いて調整する。
【0044】
ブレーキECU340には、駆動輪160の回転速度を検出する車輪速センサ356が接続される。車輪速センサ356は、駆動輪160の回転速度を示す信号をブレーキECU340に送信する。さらに、ブレーキECU340には、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルストロークセンサ342が接続される。ブレーキペダルストロークセンサ342は、ブレーキペダルの操作量を示す信号をブレーキECU340に送信する。なお、ブレーキペダルストロークセンサ342に代えて運転者のブレーキペダルへの踏力を検出する踏力検出センサ(たとえば、マスターシリンダ圧センサ)を用いてもよい。
【0045】
ブレーキECU340は、受信したブレーキペダルの操作量に基づいて運転者の意図に対応したトータル制動力を算出する。トータル制動力は、ブレーキペダルの操作量の増加に比例して増加するように算出される。トータル制動力は、制動装置358により発生される油圧制動力(機械的制動力、油圧ブレーキ)と、モータジェネレータ140Bによる回生トルクにより発生される回生制動力(電気的制動力、回生ブレーキ)との組み合わせにより協調的に確保される。
【0046】
たとえば、ブレーキECU340は、ブレーキペダルの操作量を受信するとトータル制動力を算出し、エンジンブレーキによる制動力を確保した上で、回生制動力の要求値をブレーキペダルの操作量に応じたレベルに設定する。ブレーキECU340は、設定された回生制動力の要求値をHV_ECU320に送信する。HV_ECU320は、受信した回生制動力の要求値と走行用バッテリ220の充電状態および回生制動の制限の有無等に応じて発生する回生制動力を決定して、決定された回生制動力が発現するようにモータ140Bに対して回生制御を実行する。HV_ECU320は、決定された回生制動力をブレーキECU340に送信する。ブレーキECU340は、トータル制動力からエンジンブレーキによる制動力および決定された回生制動力を除いた不足分を制動装置358を用いて発生する油圧制動力により確保するようにブレーキアクチュエータ350を制御する。
【0047】
なお、図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320と、NAVI−ECU330と、ブレーキECU340とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0048】
運転席にはアクセルペダル(図示せず)が設けられており、アクセルポジションセンサ(図示せず)は、アクセルペダルの踏込み量を検出する。アクセルポジションセンサは、アクセルペダルの踏込み量を示す信号をHV_ECU320に出力する。HV_ECU320は、踏込み量に対応する要求駆動力に応じて、ジェネレータ140A、モータ140BおよびエンジンECU280を介してエンジン120の出力あるいは発電量を制御する。
【0049】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とジェネレータ140Aとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。ジェネレータ140Aの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。
【0050】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Bのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Aを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Bを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Bに供給してモータ140Bの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。
【0051】
一方、減速時および制動操作時には、駆動輪160により従動するモータ140Bがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Aによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動力を増加する制御を行なう場合もある。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0052】
さらに、図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態によっては、燃費を向上させるために、エンジン120を停止させる。そして、その後も車両の運転状態や走行用バッテリ220の状態を検出して、ジェネレータ140Aを用いてエンジン120を再始動させる。このように、このエンジン120は間欠運転され、従来の車両(エンジンしか搭載していない車両)においては、イグニッションスイッチがSTART位置にまで回されてエンジンが始動すると、イグニッションスイッチがON位置からACC位置またはOFF位置にされるまでエンジンが停止しない点で異なる。
【0053】
以上のような構成を有する車両においては、ブレーキアクチュエータ350の制御による油圧制動力の変化は、モータ140Bの制御による回生制動力の変化よりも応答性が低い。そのため、回生ブレーキに短時間の変動が生じた場合には、油圧制動力の応答遅れにより車両の減速中にトータル制動力が変動し、減速抜けによるショックが車両に発生する場合がある。また、トータル制動力の変動を抑制するため、制動装置358のブレーキアクチュエータ350の作動が頻繁に行なわれるため、ブレーキアクチュエータ350の耐久性が悪化する場合がある。
【0054】
特に、車両の減速中において、エンジン120が停止中である場合、回生制動による充電量とバッテリの充電状態とに基づいてエンジン120の始動が行なわれる。
【0055】
図2に、動力分割機構200の共線図を示す。図2の実線に示すように、走行中にエンジン120を停止させていれば、ジェネレータ140Aが逆回転しており、その状態からジェネレータ140Aを電動機として機能させて正回転方向(図2の紙面上方向)にトルクを出力させると、エンジン100にこれを正回転させる方向のトルクが作用し、ジェネレータ140Aによってエンジン120を始動(モータリングもしくはクランキング)することができる。
【0056】
ジェネレータ140Aの回転が逆回転方向である間は、正回転方向のトルクでブレーキをかけ(回生動作)、その後回転が正回転方向になるとトルクで回転が増速される(力行動作)。
【0057】
この場合、逆回転のジェネレータ140Aを正回転方向に回転させる場合、回転方向が正回転方向になるまで(図2の破線)は、ジェネレータ140Aにおいて発電が行なわれる期間が生じることとなる。そのため、走行用バッテリ220の充電状態(によってはたとえば、充電量が上限付近である場合は)、回生制動力の発生の度合が制限されるため、回生制動力の変動が発生する可能性がある。
【0058】
そこで、本発明は、HV_ECU320が運転者がブレーキペダルを操作している場合に、走行中の車両の周囲の状況に応じた、回生制動力の変動を伴なう車両の挙動制御の実行を禁止する点に特徴を有する。
【0059】
本実施の形態において、HV_ECU320は、挙動制御として、エンジン120の回転数を段階的に増加させるダウンシフト制御を、車両の状態に応じてジェネレータ140Aを用いてエンジン120を始動する制御とともに実行する。
【0060】
また、HV_ECU320は、運転者の操作に基づく意図が挙動制御(すなわち、ダウンシフト制御)の実行と一致している場合は、挙動制御の実行の禁止の有無に関わらず挙動制御を実行する。
【0061】
なお、本実施の形態においては、挙動制御としては、車両の周囲の状況に応じた、回生制動力の変動を伴なう挙動制御であればよく、特にダウンシフト制御とともにエンジン120を始動する制御を実行するものに限定されるものではない。挙動制御は、ブレーキ作動中に少なくともジェネレータ140Aにおいて回生パワーが変動する制御であればよい。挙動制御は、たとえば、車両の周囲の状況に応じて(たとえば、カーブの手前において)サスペンションの減衰力、車高等を調整する制御であってもよいし、車両の周囲の状況に応じて始動中のエンジン120の回転数を適切な回転数に制御するものであってもよい。
【0062】
図3に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるHV_ECU320の機能ブロック図を示す。HV_ECU320は、ユーザ操作判定部500と、ダウンシフト要求判定部502と、ブレーキ作動判定部504と、ダウンシフト実行禁止部506と、ダウンシフト実行部508とを含む。
【0063】
ユーザ操作判定部500は、運転者の操作に基づく指示がダウンシフト要求と一致するか否かを判定する。ユーザ操作判定部500は、シフトポジションセンサ344からのシフトポジション信号に基づいてダウンシフトの指示に対応する位置に運転者がシフトレバーを移動させたか否かを判定し、ダウンシフトの指示に対応する位置に運転者がシフトレバーを移動させると、運転者の操作に基づく指示がダウンシフト要求と一致すると判定する。なお、ユーザ操作判定部500は、たとえば、運転者の操作に基づく指示がダウンシフト要求と一致する場合に、ユーザ操作判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0064】
ダウンシフト要求判定部502は、車両の周囲の状況に応じたダウンシフト要求の有無を判定する。ダウンシフト要求判定部502は、NAVI−ECU330からダウンシフト要求信号を受信する場合、ダウンシフト要求があることを判定する。さらに、ダウンシフト要求判定部502は、勾配信号に基づいて車両が予め定められた勾配以上の登坂路または予め定められた勾配以下の降坂路である場合、ダウンシフト要求があることを判定する。なお、ダウンシフト要求判定部502は、たとえば、ダウンシフト要求があると、ダウンシフト要求フラグをオンするようにしてもよい。
【0065】
ブレーキ作動判定部504は、運転者がブレーキペダルを操作しているか否かを判定する。ブレーキ作動判定部504は、たとえば、ブレーキペダルストロークセンサ342からブレーキECU340を経由して受信するブレーキペダルストローク信号に基づくブレーキペダルの操作量が予め定められた値以上の場合に、運転者がブレーキペダルを操作していると判定する。なお、ユーザ操作判定部500は、運転者がブレーキペダルを操作していると判定すると、ブレーキ作動判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0066】
ダウンシフト実行禁止部506は、運転者がブレーキペダルを操作している場合、ダウンシフト制御の実行を禁止する。具体的には、ダウンシフト実行禁止部506は、運転者がブレーキペダルを操作している場合は、ダウンシフト禁止フラグをオンする。
【0067】
ダウンシフト実行部508は、ダウンシフト要求があり、かつ、運転者がブレーキペダルを操作していない場合、ダウンシフト制御を実行する。ダウンシフト実行部508は、上述したように、エンジン120が停止中の場合は、走行用バッテリ220のSOC(State of Charge)に基づいてエンジン120を始動するようにエンジン120およびジェネレータ140Aに対して制御信号を送信する。
【0068】
ダウンシフト実行部508は、エンジン120の回転数をダウンシフト後の段数に対応した下限値以上に制限することにより、ダウンシフト後の段数に対応した車両の減速度を実現する。
【0069】
「段数に対応したエンジン120の回転数の下限値」は、たとえば、車速とエンジン回転数との関係を示すマップにより保持される。マップにおいては、段数が増加すると、車速の増加に対するエンジン回転数の増加の度合が大きくなるように設定される。
【0070】
なお、ダウンシフト実行部508は、ダウンシフト禁止フラグがオンされている場合は、ダウンシフト要求フラグがオンされていても、ダウンシフト制御を実行しない。また、ダウンシフト実行部508は、ユーザ操作判定フラグがオンされている場合は、ダウンシフト禁止フラグのオン、オフに関わらずダウンシフト制御を実行する。
【0071】
また、本実施の形態において、ユーザ操作判定部500と、ダウンシフト要求判定部502と、ブレーキ作動判定部504と、ダウンシフト実行禁止部506と、ダウンシフト実行部508とは、いずれもHV_ECU320のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0072】
図4を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるHV_ECU320で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0073】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、HV_ECU320は、運転者の操作によるダウンシフト要求があるか否かを判定する。運転者の操作によるダウンシフト要求があると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS104に移される。
【0074】
S102にて、HV_ECU320は、ダウンシフト制御を実行する。S104にて、車両の周囲の状況に応じたダウンシフト要求があるか否かを判定する。車両の周囲の状況に応じたダウンシフト要求があると(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでないと(S104にてNO)、この処理は終了する。
【0075】
S106にて、HV_ECU320は、ブレーキが作動中であるか否かを判定する。具体的には、HV_ECU320は、ブレーキペダルが操作されている場合、ブレーキが作動中であると判定する。ブレーキが作動中であると(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS102に移される。
【0076】
S108にて、HV_ECU320は、ダウンシフト要求を拒否する。すなわち、HV_ECU320は、ダウンシフト制御の実行を禁止して、現状の段数を維持する。
【0077】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるHV_ECU320の動作について図5および図6を用いてブレーキ作動中にダウンシフト制御を実行する場合と禁止する場合とを対比して説明する。
【0078】
<ブレーキ作動中にダウンシフト制御を実行する場合>
たとえば、ブレーキオフの状態であって、ダウンシフト要求フラグがオフであって、かつ、エンジン120が停止中(エンジン始動フラグがオフ)である場合を想定する。ブレーキオフの状態であるため、この状態における制動力および減速度はゼロである。なお、制動力および減速度は、図5の紙面下方向が正の値とし、紙面下方に変化するほど制動力または減速度が増加するものとして説明する。
【0079】
図5に示すように、時間T(0)にて、運転者がブレーキペダルを踏み込むとブレーキがオンされる。ブレーキペダルの操作量の増加に応じて油圧ブレーキ(すなわち、制動装置358による油圧制動力)と回生ブレーキ(すなわち、モータ140Bによる回生制動力)とが増加する。油圧ブレーキと回生ブレーキとの協調制御によりトータル制動力が実現される。また、制動力の発生により減速度が発生する。減速度は、制動力の増加により時間T(1)にて、da(0)まで増加する。
【0080】
時間T(2)にて、たとえば、車両がコーナーの手前等に位置する場合にNAVI−ECU330からのダウンシフト要求によりダウンシフト要求フラグがオンされると、時間T(3)にて、走行用バッテリ220への充電状態に応じてエンジン120の始動が開始される。このとき、エンジン120の始動パワーを確保するため、時間T(3)から時間T(4)までの短時間、回生ブレーキが制限されることとなる。
【0081】
回生ブレーキが制限されることにより、油圧ブレーキによる制動力が増加するようにブレーキアクチュエータ350が制御されるが、油圧の応答遅れにより車両の減速度は、回生ブレーキの発生の度合の減少に比例してda(0)から減少を開始する。
【0082】
時間T(4)にて、エンジン120の始動が開始されて(ジェネレータ140Bの回転方向が正回転方向となって)、回生ブレーキの制限が解除されるため、制限の解除とともに回生ブレーキが増加を開始する。そのため、da(1)まで減少した減速度は増加を開始する。減速度は、時間T(5)にて、da(2)になるまで増加する。
【0083】
時間T(5)以降において、減速度がダウンシフト後の段数に対応する減速度da(3)よりも大きいため、回生ブレーキおよび油圧ブレーキが減少される。そのため、時間T(6)にて、減速度はda(2)からダウンシフト後の段数に対応するda(3)になるまで減少する。このように、ブレーキ作動中にダウンシフト制御を実行する場合、時間T(3)〜時間T(4)において減速度の抜けが発生し、時間T(4)〜時間T(5)において減速度の急激に増加するため、車両にショックが生じる。また、回生ブレーキの制限により油圧ブレーキの増加制御が行なわれるため、ブレーキアクチュエータ350の作動回数が増加することとなる。
【0084】
<ブレーキ作動中にダウンシフト制御の実行を禁止する場合>
たとえば、ブレーキオフの状態であって、ダウンシフト要求フラグがオフであって、かつ、エンジン120が停止中(エンジン始動フラグがオフ)である場合を想定する。ブレーキオフの状態であるため、この状態における制動力および減速度はゼロである。なお、制動力および減速度は、図6の紙面下方向が正の値とし、紙面下方に変化するほど制動力または減速度が大きくなるものとして説明する。
【0085】
図6に示すように、時間T’(0)にて、運転者がブレーキペダルを踏み込むとブレーキがオンされる。ブレーキペダルの操作量の増加に応じて油圧ブレーキと回生ブレーキとが増加する。油圧ブレーキと回生ブレーキとによりトータル制動力が実現される。また、制動力の発生により減速度が発生する。ブレーキがオンされると、ダウンシフト禁止フラグがオンされる。減速度は、制動力の増加により時間T’(1)にて、da’(0)まで増加する。
【0086】
このとき、運転者の操作によるダウンシフト要求がない場合は(S100にてNO)、時間T’(2)にて、路面の勾配あるいはNAVI−ECU330からのダウンシフト要求があっても、ブレーキが作動中であるため(S106にてYES)、ダウンシフト要求が拒否される(S108)。すなわち、ダウンシフト要求フラグがオンされてもダウンシフト禁止フラグがオンであるため、ダウンシフト制御が実行されない。そのため、エンジン120の始動も行なわれない。したがって、ブレーキペダルの操作中においては、運転者がシフトレバーの操作によりダウンシフト制御の実行を要求しない限りは、ダウンシフト制御が実行されることはない。このため、回生制動力の変動が抑制され、減速抜けおよびショックの発生が抑制される。
【0087】
以上のようにして本実施の形態に係る車両の制御装置によると、運転者がブレーキペダルを操作している場合にダウンシフト制御の実行を禁止することにより、回生制動力の変動を回避することができる。回生制動力の変動を抑制することにより、トータル制動力の変動を抑制することができる。これにより、油圧制動力の応答遅れに起因した減速抜けによるショックの発生を抑制することができる。さらに、回生制動力の変動を抑制することができるため、結果的に油圧制動力の変動を抑制することができる。そのため、制動装置のブレーキアクチュエータの作動回数の増加が抑制される。これにより、ブレーキアクチュエータの耐久性の悪化を抑制することができる。したがって。運転者による制動操作中の減速抜けによるショックの発生および制動装置の耐久性の悪化を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
【0088】
運転者の操作に基づく意図がダウンシフト制御の実行と一致している場合は、ダウンシフト制御の実行の禁止の有無に関わらずダウンシフト制御を実行することにより、運転者の意図に応じた制御を適切に実行することができる。
【0089】
なお、本実施の形態においては、本発明をハイブリッド車両に適用した場合について説明したが、特にハイブリッド車両に限定して適用されるものではなく、少なくとも回生ブレーキと油圧ブレーキとが協調して制御され、かつ、回生ブレーキの変動を伴なう挙動制御が実施される車両であればよい。たとえば、電気自動車に本発明を適用するようにしてもよい。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施の形態におけるハイブリッド車両の構成を示す制御ブロック図である。
【図2】動力分割機構の共線図である。
【図3】本実施の形態に係る車両の制御装置であるHV_ECUの機能ブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る車両の制御装置であるHV_ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】ブレーキ作動時にダウンシフト制御を実行する場合の減速度の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】ブレーキ作動時にダウンシフト制御の実行を禁止する場合の減速度の変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0092】
120 エンジン、122 吸気通路、122A エアクリーナ、122B エアフローメータ、122C 電子スロットル、122D スロットルポジションセンサ、124 排気通路、124A 空燃比センサ、124B 三元触媒コンバータ、124C 触媒温度センサ、124D 消音器、124E 酸素センサ、130 燃料噴射装置、140 モータジェネレータ、140A ジェネレータ、140B モータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、330 NAVI−ECU、332 受信装置、334 カメラ、340 ブレーキECU、342 ブレーキペダルストロークセンサ、344 シフトポジションセンサ、346 勾配センサ、350 ブレーキアクチュエータ、352 ブレーキロータ、354 ブレーキキャリパ、356 車輪速センサ、358 制動装置、360 水温検出センサ、380 クランクポジションセンサ、500 ユーザ操作判定部、502 ダウンシフト要求判定部、504 ブレーキ作動判定部、506 ダウンシフト実行禁止部、508 ダウンシフト実行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、前記車両は、駆動源であり、かつ、前記車両の減速時に回生制動力を前記車両に発生させるための第1のモータジェネレータと、運転者のブレーキペダルへの操作量に応じたトータル制動力を前記車両に発生させるために、前記回生制動力に加えて油圧を用いた油圧制動力を前記車両に発生させるための制動装置とを含み、
前記走行中の車両の周囲の状況に応じて、前記回生制動力の変動を伴なう前記車両の挙動制御を実行するための挙動制御手段と、
前記運転者が前記ブレーキペダルを操作しているか否かを検出するためのブレーキ操作検出手段と、
前記運転者が前記ブレーキペダルを操作している場合に、前記挙動制御の実行を禁止するための禁止手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両は、エンジンと、前記エンジンの始動および前記エンジンの動力を用いた発電を行なう第2のモータジェネレータと、前記エンジンの動力を、前記第1、第2のモータジェネレータに分割して伝達する動力分割機構とをさらに含み、
前記挙動制御手段は、前記挙動制御として、前記第2のモータジェネレータを用いて、前記エンジンの回転数を段階的に増加させるダウンシフト制御を、前記エンジンを始動する制御とともに実行し、
前記第2のモータジェネレータは、前記エンジンを始動させる際に、少なくとも一部の期間回生動作を行なう、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記運転者の操作に基づく意図が前記挙動制御の実行と一致するか否かを検出するための挙動制御操作検出手段をさらに含み、
前記挙動制御手段は、前記運転者の操作に基づく意図が前記挙動制御の実行と一致している場合は、前記禁止手段による前記挙動制御の実行の禁止の有無に関わらず前記挙動制御を実行する、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車両の外部の通信設備から前記車両の周囲の地図情報を受信するための受信手段をさらに含み、
前記挙動制御手段は、前記受信した地図情報に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車両の周囲を撮像するための撮像手段をさらに含み、
前記挙動制御手段は、前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車両が走行する路面の勾配を検出するための勾配検出手段をさらに含み、
前記挙動制御手段は、前記勾配検出手段の検出結果に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
車両の制御方法であって、前記車両は、駆動源であり、かつ、前記車両の減速時に回生制動力を前記車両に発生させるための第1のモータジェネレータと、運転者のブレーキペダルへの操作量に応じたトータル制動力を前記車両に発生させるために、前記回生制動力に加えて油圧を用いた油圧制動力を前記車両に発生させるための制動装置とを含み、
前記走行中の車両の周囲の状況に応じて、前記回生制動力の変動を伴なう前記車両の挙動制御を実行するステップと、
前記運転者が前記ブレーキペダルを操作しているか否かを検出するステップと、
前記運転者が前記ブレーキペダルを操作している場合に、前記挙動制御の実行を禁止するステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項8】
前記車両は、エンジンと、前記エンジンの始動および前記エンジンの動力を用いた発電を行なう第2のモータジェネレータと、前記エンジンの動力を、前記第1、第2のモータジェネレータに分割して伝達する動力分割機構とをさらに含み、
前記挙動制御を実行するステップは、前記挙動制御として、前記第2のモータジェネレータを用いて、前記エンジンの回転数を段階的に増加させるダウンシフト制御を、前記エンジンを始動する制御とともに実行し、
前記第2のモータジェネレータは、前記エンジンを始動させる際に、少なくとも一部の期間回生動作を行なう、請求項7に記載の車両の制御方法。
【請求項9】
前記制御方法は、前記運転者の操作に基づく意図が前記挙動制御の実行と一致するか否かを検出するステップをさらに含み、
前記挙動制御を実行するステップは、前記運転者の操作に基づく意図が前記挙動制御の実行と一致している場合は、前記挙動制御の実行の禁止の有無に関わらず前記挙動制御を実行する、請求項7または8に記載の車両の制御方法。
【請求項10】
前記制御方法は、前記車両の外部の通信設備から前記車両の周囲の地図情報を受信するステップをさらに含み、
前記挙動制御を実行するステップは、前記受信した地図情報に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項7〜9のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項11】
前記制御方法は、前記車両の周囲を撮像するステップをさらに含み、
前記挙動制御を実行するステップは、前記車両の周囲を撮像するステップにおける撮像結果に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項7〜10のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項12】
前記制御方法は、前記車両が走行する路面の勾配を検出するステップをさらに含み、
前記挙動制御を実行するステップは、前記路面の勾配を検出するステップにおける検出結果に基づいて前記挙動制御を実行する、請求項7〜11のいずれかに記載の車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−83427(P2010−83427A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257234(P2008−257234)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】