説明

車両の走行安全装置

【課題】 予め記憶している道路データに基づく車両の走行安全性を確保しつつ、道路データの修正に要する演算量が過剰に増大することを抑制する。
【解決手段】 カーブ推定部65はカーブ認識部61での道路データに基づく認識結果および比較部63での比較結果に応じて、安全装置が作動している状態での自車両のカーブの通過状態に基づき、カーブの実形状(例えば、極性、半径、曲率、深さ等)を推定する。データ修正部66は、カーブ推定部65にて推定された推定形状と、カーブ認識部61にて認識された認識形状とが同等となるようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する。作動部64は、カーブ推定部65にて推定された実カーブの推定形状が、カーブ認識部61にて認識された地図カーブの認識形状よりも緩いとき、安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ナビゲーションシステムに記憶した経路案内用のデータに加えて、車両の挙動変化や外部環境の変化に基づき走行軌跡データを取得し、この走行軌跡データに基づいて車両制御を実行する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば、道路の位置及び形状を構成するノードデータ等を予めデータベースとしてデータ記憶部に格納しておき、車両の走行に伴い、例えばジャイロセンサにより検出された旋回角や所定の算出処理により算出された走行時間に基づき走行軌跡を検知し、ノードデータ上の道路の形状と走行軌跡の形状とを比較し、形状が異なる部分が存在した場合にデータベースを修正するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−328582号公報
【特許文献2】特開2001−108450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術の一例に係る車両制御装置においては、経路案内用のデータと、走行軌跡データとの両方のデータを記憶することから、例えば共通のデータにより経路案内および車両制御を行う場合に比べて、データの記憶に要する記憶容量が増大してしまうという問題が生じる。しかも、経路案内用のデータと走行軌跡データとで道路形状や位置等に相違が存在する場合には、経路案内と車両制御との間に不整合が生じ、運転者が違和感を感じてしまう虞がある。
また、上記従来技術の一例に係るナビゲーション装置においては、車両走行中のナビゲーション装置による経路案内の実行時に、常に、ノードデータ上の道路の形状と走行軌跡の形状とを比較し、形状が異なる部分が存在した場合にデータベースを修正することから、例えばデータベースを修正する必要度が相対的に低いと判断することができる道路形状等に対してもデータベースが修正されてしまう場合があり、過剰な頻度でデータベースの修正処理が実行されることを抑制すると共に、修正に要する演算量が過剰に増大してしまうことを抑制することが望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、予め記憶している道路データに基づく車両の走行安全性を確保しつつ、道路データの修正に要する演算量が過剰に増大することを抑制することが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)と、前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段(例えば、実施の形態でのカーブ認識部61)と、前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部62)と、前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での比較部63)と、前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段(例えば、実施の形態での作動部64)とを備える車両の走行安全装置であって、前記安全装置の作動時における自車両の前記カーブの通過状態に基づき前記カーブの実形状を推定する推定手段(例えば、実施の形態でのカーブ推定部65)と、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状と前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの認識形状とが相違するとき、前記推定形状と前記認識形状とが同等となるようにして前記道路データを修正する修正手段(例えば、実施の形態でのデータ修正部66)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動時における自車両のカーブの通過状態に基づき推定したカーブの推定形状と、カーブ認識手段にて認識されたカーブの認識形状とが相違するとき、推定形状と認識形状とが同等となるようにして道路データを修正することから、安全装置の作動対象となるカーブに係る道路データのみを修正することができ、道路データの修正に要する演算量が増大することを防止しつつ、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、カーブの極性および径および曲率および深さおよび長さの少なくとも何れかひとつであることを特徴としている。
【0007】
上記の車両の走行安全装置によれば、推定形状と認識形状とに対し、カーブの極性および径および曲率および深さの少なくとも何れかひとつが同等となるようにして道路データを修正することから、道路データの修正に要する演算量が増大することを、より一層、防止することができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記修正手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの位置と、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの位置とが相違するとき、これらの位置が同等となるようにして前記道路データを修正することを特徴としている。
【0009】
上記の車両の走行安全装置によれば、推定形状と認識形状とに対し、カーブの位置が同等となるようにして道路データを修正することから、道路データの修正に要する演算量が増大することを、より一層、防止することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の本発明の車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)と、前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段(例えば、実施の形態でのカーブ認識部61)と、前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部62)と、前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での比較部63)と、前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段(例えば、実施の形態での作動部64)とを備える車両の走行安全装置であって、前記安全装置の作動時における自車両の前記カーブの通過状態に基づき前記カーブの実形状を推定する推定手段(例えば、実施の形態でのカーブ推定部65)を備え、前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの認識形状よりも緩いとき、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0011】
上記の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動時における自車両のカーブの通過状態に基づき推定したカーブの推定形状が、カーブ認識手段にて認識されたカーブの認識形状よりも緩いとき、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、前記カーブの径または曲率であり、自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)を備え、前記推定手段は前記運動状態検出手段にて検出された前記運動状態に基づき、前記カーブの径または曲率を推定しており、前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの径が所定値以上である場合、または、前記推定手段にて推定された前記カーブの曲率が所定値以下である場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0013】
上記の車両の走行安全装置によれば、推定形状でのカーブの径が所定値以上である場合、または、推定形状でのカーブの曲率が所定値以下である場合に、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、前記カーブの径または曲率であり、自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)を備え、前記推定手段は前記運動状態検出手段にて検出された前記運動状態に基づき、前記カーブの径または曲率を推定しており、前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの径または曲率と、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの径または曲率との、差または比が、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0015】
上記の車両の走行安全装置によれば、推定形状での径または曲率と認識形状での径または曲率との、差または比が、実カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブの通過状態は、横加速度検出手段(例えば、実施の形態での加速度センサ54)により検出される自車両の横加速度であり、前記作動手段は、検出された横加速度が所定値以下である場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0017】
上記の車両の走行安全装置によれば、カーブ通過時に検出された横加速度が所定値以下である場合に、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブの通過状態は、横加速度検出手段(例えば、実施の形態での加速度センサ54)により検出される自車両の横加速度であり、前記作動手段は、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの形状に基づき算出した横加速度と、前記横加速検出手段により検出された横加速度との、差または比が、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0019】
上記の車両の走行安全装置によれば、認識形状に基づき算出した横加速度と、カーブ通過時に検出された横加速度との、差または比が、実カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の走行安全装置は、自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)を備え、前記カーブの通過状態は、前記運動状態検出手段にて検出された運動状態に基づき検知される自車両が実際に前記カーブの入口位置に到達した状態であり、前記安全装置が作動した時点での自車両の位置から、前記推定手段により推定された前記カーブの入口位置までの距離を検知する第1の距離検知手段(例えば、実施の形態でのステップS43)と、前記安全装置が作動した時点での自車両の位置から、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブの入口位置までの距離を検知する第2の距離検知手段(例えば、実施の形態でのステップS44)とを備え、前記作動手段は、前記第1の距離検知手段にて検知された距離が、前記第2の距離検知手段にて検知された距離よりも所定値以上長い場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0021】
上記の車両の走行安全装置によれば、安全装置が作動した時点での自車両の位置から、実カーブの入口位置までの距離が、安全装置が作動した時点での自車両の位置から地図カーブの入口位置までの距離よりも所定値以上長い場合に、カーブに対する安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定することから、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【0022】
さらに、請求項10に記載の本発明の車両の走行安全装置は、運転者の減速操作の有無を検出する操作検出手段(例えば、実施の形態でのブレーキペダルセンサ52)を備え、前記安全装置の作動以後において、前記操作検出手段により運転者の減速操作が無いことが検出された場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴としている。
【0023】
上記の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動状態に運転者の意志を適切に反映させ、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1から請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動対象となるカーブに係る道路データのみを修正することができ、道路データの修正に要する演算量が増大することを防止しつつ、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
また、請求項4から請求項10に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば、内燃機関11の駆動力を、オートマチックトランスミッション(AT)あるいは無段自動変速機(CVT)等のトランスミッション(T/M)12を介して車両の駆動輪に伝達する車両に搭載され、ナビゲーション装置13と、制御装置14と、ブレーキアクチュエータ15および警報装置(図示略)を具備する安全装置(図示略)とを備えて構成されている。
【0027】
ナビゲーション装置13は、例えば現在位置検出部21と、ナビゲーション処理部22と、地図データ記憶部23と、入力部24と、表示部25とを備えて構成されている。
さらに、現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号や、例えば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部31と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレート等)を検出するジャイロセンサ32と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ33とを備えて構成され、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0028】
地図データ記憶部23は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部23は、例えば表示部25において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路データを格納している。
【0029】
ナビゲーション処理部22は、例えば、地図データ記憶部23から取得される道路データに対して、現在位置検出部21における測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れかから得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正すると共に、検出された車両の現在位置、あるいは、各種スイッチやキーボード等からなる入力部24を介して操作者により入力された適宜の車両の位置に対して、表示部25での地図表示を制御する。
また、ナビゲーション処理部22は、例えば車両の経路探索や経路誘導等の処理を実行し、地図データ記憶部23から取得される道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を表示部25へ出力する。
【0030】
制御装置14は、速度制御部41と、エンジン制御部42と、変速制御部43と、ブレーキ制御部44とを備えて構成され、運転者によるアクセルペダルの操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサ51と、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ52と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ53と、自車両に発生する加速度(例えば、車両前後方向の前後加速度および車両横方向の横加速度等)を検出する加速度センサ54とから出力される各検出信号が入力されている。
さらに、速度制御部41は、カーブ認識部61と、適正車速設定部62と、比較部63と、作動部64と、カーブ推定部65と、データ修正部66とを備えて構成されている。
【0031】
カーブ認識部61は、地図データ記憶部23に記憶された道路データを取得し、この道路データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路上に存在するカーブを検出する。
例えばカーブ認識部61は、道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸)と、リンクつまり各ノードを結ぶ線(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸を結ぶ線)とに基づいて、カーブの形状を認識する。そして、例えばカーブの径や曲率および極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を算出し、適正車速設定部62へ出力する。
【0032】
適正車速設定部62は、カーブ認識部61にて認識されたカーブ形状値に基づいて、このカーブを適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部62は設定した適正速度VSのデータを比較部63へ出力する。
ここで、適正車速設定部62は、カーブ通過時に車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部62aを備えている。すなわち、先ず、横加速度算出部62aは、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状に基づいて、このカーブを適正に通過する際に許容される横加速度を算出する。次に、適正車速設定部62は、この横加速度を車両に発生させる車両の速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、カーブ通過時に自車両に許容される横加速度は、路面状況、タイヤの状況、積載の状態等により変化するため、これらを更に考慮して適正速度VSを設定するようにしてもよい。
また、認識されたカーブの形状の手前に上り勾配が存在する場合には、この勾配の大きさに応じて適正速度VSが増大傾向に変化するように設定される。
【0033】
比較部63は、現在位置検出部21の車速センサ33にて検出した車両の速度(現在速度)VPと、適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を作動部64へ出力する。
作動部64は、比較部63での比較結果に基づいてエンジン制御部42および変速制御部43およびブレーキ制御部44の作動を制御する。例えば、比較部63での比較結果において、車速センサ33にて検出した現在速度VPと適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとが異なる場合、例えば検出された車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態等のように車両が適正車両状態にない場合には、警報装置を作動させて運転者の注意を喚起したり、ブレーキ制御部44を介してブレーキアクチュエータ15を作動させて自動的に車両を減速させる。
【0034】
作動部64にて警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置を作動させるタイミングは、車両がカーブ認識部61にて認識したカーブの入口位置に到達するまでに、現在速度VPから適正速度VSまで減速する際に要する時間または距離等に基づいて設定される。
例えば図2に示すように、車両Aが速度V1(例えば、速度V1>適正速度VS)で走行している場合に、進行方向前方に存在するカーブCを適正に通過するためには、カーブCの入口位置CSにて車両の速度が適正速度VSとなるように設定する。
このとき、例えば所定の減速度GS(例えば、0.2G=0.2×9.8m/s)にて、現在の速度V1(例えば、100km/h)から適正速度VS(例えば、40km/h)まで減速する場合には、減速に要する時間TはT=(V1−VS)/GSにより求められる。そして、この時間Tに基づいて、減速に要する距離つまり減速必要距離L0が算出され、カーブCの入口位置CSから、減速必要距離L0だけ手前の減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)が設定される。
【0035】
さらに、例えば、警報を発して運転者に注意を促してから、実際に運転者が反応してブレーキを踏み込むまでの反応時間(例えば、約0.5s)と、運転者がブレーキを踏み込んでから実際にブレーキが効き始めるまでの空走時間(例えば、約0.3s)とを考慮して反応空走距離ΔL0を算出する。これにより、減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)から反応空走距離ΔL0だけ手前の警報開始位置CWが設定される。
すなわち、車両AがカーブCの手前に設定される警報開始位置CWに到達した時点、つまり車両Aの現在位置とカーブCの入口位置CSとの間の距離(減速対象地点間距離Ln)が、下記数式(1)に示すように設定される警報必要距離LWに等しくなった時点で警報を発する。
【0036】
【数1】

【0037】
カーブ推定部65は、カーブ認識部61での道路データに基づく認識結果および比較部63での比較結果に応じて、警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置が作動している状態での自車両のカーブの通過状態に基づき、このカーブの実形状(例えば、極性、半径、曲率、深さ等)を推定する。
そして、データ修正部66は、カーブ推定部65にて推定された推定形状と、カーブ認識部61にて認識された認識形状とが同等となるようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する。
【0038】
例えば図3に示すように、カーブ認識部61により道路データに基づきカーブ(地図カーブ)CMが認識されている状態で、カーブ推定部65は、例えば図4に示すように、自車両の走行状態から算出した曲率Uが所定値α以上となる状態をカーブの通過状態とし、この通過状態の時間区間(例えば、図4に示す時刻t1から時刻t2の時間区間)あるいは地点間を実カーブCRのカーブ区間として認識する。
なお、時間tに応じて変化する曲率U(t)は、例えば下記数式(2)に示すように、車速センサ33にて検出される現在速度VP(t)と、ジャイロセンサ32にて検出されるヨーレートω(t)とに基づき算出される。
【0039】
【数2】

【0040】
そして、カーブ推定部65は、認識したカーブ区間における方位偏差量D、つまりヨーレートω(t)の時間積分値と、カーブ区間における走行距離LRとに基づき、例えば下記数式(3)に示すように、実カーブ半径RCRを算出する。そして、地図カーブCMの半径(地図カーブ半径)RCMと実カーブ半径RCR(例えば図3においては、RCR>RCM)とを比較する。
そして、データ修正部66は、地図カーブ半径RCMと実カーブ半径RCR(例えば図3においては、RCR>RCM)との比較結果に応じて、例えば地図カーブ半径RCMが増大するようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する。
【0041】
【数3】

【0042】
また、例えば図5に示すように、カーブ認識部61により道路データに基づきカーブ(地図カーブ)CMが認識され、この道路データ上において自車両が地図カーブCMの入口位置CSCMに到達していない状態で、カーブ推定部65は、実際の自車両の走行状態から算出した曲率Uが所定値α以上となって自車両が実カーブCRの入口位置CSCRに到達したことを認識すると、この時点(例えば、図5に示す時刻t1)での道路データ上における自車両の位置PDR(t1)から地図カーブCMの入口位置CSCMまでの距離を道路データ上のアプローチ距離LCMとし、このアプローチ距離LCMの実際のアプローチ距離に対するずれ量Aを、実カーブCRの入口位置CSCRと地図カーブCMの入口位置CSCMとの間の距離(入口位置ずれ量ΔCS)として設定する。
この場合、データ修正部66は、例えば道路データ上のアプローチ距離LCMが減少するようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する。
【0043】
同様にして、例えば図6に示すように、カーブ認識部61により道路データに基づきカーブ(地図カーブ)CMが認識され、この道路データ上において自車両が既に地図カーブCMの入口位置CSCMを通過した状態で、カーブ推定部65は、実際の自車両の走行状態から算出した曲率Uが所定値α以上となって自車両が実カーブCRの入口位置CSCRに到達したことを認識すると、道路データ上のアプローチ距離LCMの実際のアプローチ距離に対するずれ量を、実カーブCRの入口位置CSCRと地図カーブCMの入口位置CSCMとの間の距離(入口位置ずれ量ΔCS)として設定する。
この場合、データ修正部66は、例えば道路データ上のアプローチ距離LCMが増大するようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する。
【0044】
ここで、作動部64は、カーブ推定部65にて推定された実カーブの推定形状が、カーブ認識部61にて認識された地図カーブの認識形状よりも緩いとき、安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定する。
例えば、作動部64は、実カーブ半径が所定値以上である場合、または、実カーブの曲率が所定値以下である場合、あるいは、実カーブの径または曲率と地図カーブの径または曲率との、差または比が、実カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定する。
また、例えば、作動部64は、カーブ通過時に加速度センサ54により検出された横加速度が所定値以下である場合、あるいは、カーブ通過時に加速度センサ54により検出された横加速度と地図カーブの形状に基づき算出した横加速度との、差または比が、実カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定する。
また、例えば、作動部64は、安全装置が作動した時点での自車両の位置から、実カーブの入口位置までの距離が、安全装置が作動した時点での自車両の位置から地図カーブの入口位置までの距離よりも所定値以上長い場合に、安全装置の次回以降の作動時において安全装置が作動し難くなるように設定する。
【0045】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0046】
先ず、以下に、進行方向に存在するカーブに対して安全装置として、例えば警報装置を作動させるか否かを判定する処理について説明する。
例えば図7に示すステップS01においては、安全装置の作動対象となる地点(警報対象地点)、つまりカーブ認識部61にて認識したカーブの入口位置CSを推定する。
次に、現在速度VPが適正速度VSより大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
次に、ステップS03においては、現在位置検出部21にて検出した自車両の現在位置から安全装置の作動対象となる地点(例えば、カーブの入口位置CS)までの距離、つまり警報対象地点間距離Lnを算出する。
【0047】
次に、ステップS04においては、上記数式(1)に基づいて、警報必要距離LWを算出する。
次に、ステップS05においては、警報対象地点間距離Lnが警報必要距離LWよりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進み、このステップS06においては、安全装置の作動(例えば、警報の出力)が必要であると判断して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS07に進み、ステップS07においては、安全装置の作動(例えば、警報の出力)が不必要であると判断して、一連の処理を終了する。
【0048】
次に、以下に、実カーブ半径と地図カーブ半径とが同等となるようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する処理の一例について説明する。
先ず、図8に示すステップS11においては、地図データ記憶部23から道路データを取得する。
次に、ステップS12においては、車両の現在速度VPおよび現在位置を取得する。
次に、ステップS13においては、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて、進行方向前方の所定距離以内にカーブ形状が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
次に、ステップS14においては、道路データに基づき認識したカーブ(地図カーブ)は単路であるか否かを判定する。
ステップS14の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS14の判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
【0049】
次に、ステップS15においては、安全装置が作動したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
次に、ステップS16においては、走行状態データ、例えば車速センサ33にて検出される現在速度VPおよびジャイロセンサ32にて検出されるヨーレートω等を取得する。
次に、ステップS17においては、道路データ上において、自車両が地図カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
ステップS17の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS17の判定結果が「YES」の場合には、ステップS18に進む。
次に、ステップS18においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
ステップS18の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS18の判定結果が「YES」の場合には、ステップS19に進む。
【0050】
そして、ステップS19においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの出口位置を通過したか否かを判定する。
ステップS19の判定結果が「NO」の場合には、ステップS19の処理を繰り返す。
一方、ステップS19の判定結果が「YES」の場合には、ステップS20に進む。
そして、ステップS20においては、認識したカーブ区間における方位偏差量D、つまりヨーレートω(t)の時間積分値と、カーブ区間における走行距離LRとに基づき、上記数式(3)に示すように、実カーブのカーブ半径(実カーブRCR)を算出する。
そして、ステップS21においては、実カーブのカーブ半径を地図カーブのカーブ半径で除算して得た値(あるいは、実カーブのカーブ半径から地図カーブのカーブ半径を減算して得た値)が所定値以上か否かを判定する。
ステップS21の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS21の判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
そして、ステップS22においては、安全装置の作動は過剰制御であると判定する。
そして、ステップS23においては、地図カーブ半径が実カーブ半径と同等になるようにして地図データ記憶部23の道路データを修正し、一連の処理を終了する。
【0051】
次に、以下に、実カーブ通過時に加速度センサ54により検出された横加速度と地図カーブの形状に基づき算出した横加速度とに応じて安全装置の作動を制御する処理の一例について説明する。
なお、以下において上述したステップS11からステップS16の処理と同一部分については説明を省略する。
この処理では、例えば図9に示すように、ステップS16の実行後にステップS31に進む。
そして、ステップS31においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS32に進む。
【0052】
そして、ステップS32においては、例えばブレーキペダルセンサ52等の検出信号に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過する以前のタイミングで運転者による減速操作が実行されたか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS33に進む。
次に、ステップS33においては、カーブ通過時に加速度センサ54により検出された横加速度(実横加速度)と、地図カーブの形状に基づき算出した横加速度(地図横加速度)との偏差ΔGyを算出する。
そして、ステップS34においては、偏差ΔGyがゼロよりも大きな所定偏差#ΔGy以上か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS37に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS35に進む。
【0053】
そして、ステップS35においては、安全装置の作動は過剰制御であると判定する。
そして、ステップS36においては、実カーブの推定形状が、地図カーブの認識形状よりも緩いと判断して、実カーブを対象とした安全装置の作動を禁止し、一連の処理を終了する。
また、ステップS37においては、実横加速度に対する地図横加速度の比rGyを算出する。
そして、ステップS38においては、比rΔGyが1よりも大きな所定比#rGy以上か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS35に進む。
【0054】
次に、以下に、安全装置が作動した時点での自車両の位置から、実カーブおよび地図カーブの各入口位置までの距離に応じて地図データ記憶部23の道路データを修正する処理の一例について説明する。
この処理では、例えば図10に示すように、ステップS16の実行後にステップS41に進む。
そして、ステップS41においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS42に進む。
【0055】
そして、ステップS42においては、自車両が実カーブの入口位置を通過する以前のタイミングで運転者による減速操作が実行されたか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS43に進む。
次に、ステップS43においては、安全装置が作動した時点での自車両の位置から、実カーブの入口位置までの距離(実距離La)を取得する。
次に、ステップS44においては、安全装置が作動した時点での自車両の位置から、地図カーブの入口位置までの距離(地図距離Lb)を取得する。
次に、ステップS45においては、実距離Laと地図距離Lbとの偏差ΔLを取得する。
次に、ステップS45においては、取得した偏差ΔLに基づき地図距離Lbに対する補正値を設定して記憶し、次回以降の処理にて地図距離Lbを補正するように設定して、一連の処理を終了する。
【0056】
次に、以下に、地図カーブの入口位置を修正するようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する処理の一例について説明する。
この処理では、例えば図11に示すように、ステップS16の実行後にステップS51に進む。
そして、ステップS51においては、道路データ上において、自車両が地図カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS52に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS57に進む。
次に、ステップS52においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
ステップS52の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS52の判定結果が「YES」の場合には、ステップS53に進む。
【0057】
そして、ステップS53においては、地図カーブの極性と実カーブの極性とが同極性であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS54に進む。
次に、ステップS54においては、安全装置が作動開始した時点での自車両の位置から、地図カーブの入口位置までの距離(地図距離Lb)を取得する。
そして、ステップS55においては、地図距離Lbが所定第1距離#L1以上、かつ、所定第1距離#L1よりも大きい所定第2距離#L2以下か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS56に進む。
そして、ステップS56においては、地図カーブの入口位置を手前側に修正するようにして地図データ記憶部23の道路データを修正し、一連の処理を終了する。
【0058】
また、ステップS57においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
ステップS57の判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、ステップS57の判定結果が「YES」の場合には、ステップS58に進む。
【0059】
そして、ステップS58においては、地図カーブの極性と実カーブの極性とが同極性であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS59に進む。
次に、ステップS59においては、地図カーブの入口位置から現在位置までの距離(地図距離Ld)を取得する。
そして、ステップS60においては、地図距離Ldが所定第3距離#L3以上、かつ、所定第3距離#L3よりも大きい所定第4距離#L4以下か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS61に進む。
そして、ステップS61においては、地図カーブの入口位置を遠方側に修正するようにして地図データ記憶部23の道路データを修正し、一連の処理を終了する。
【0060】
次に、以下に、地図カーブのカーブ形状を修正するようにして、地図データ記憶部23の道路データを修正する処理の一例について説明する。
この処理では、例えば図12に示すように、ステップS16の実行後にステップS71に進む。
そして、ステップS71においては、道路データ上において、自車両が地図カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS72に進む。
そして、ステップS72においては、実路上でカーブの走行を開始したか否かを判定する。ここでは、例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)が上昇傾向の変化を開始したか否かを判定する。
ステップS72の判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS81に進む。
一方、ステップS72の判定結果が「YES」の場合には、ステップS73に進む。
【0061】
次に、ステップS73においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの入口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS74に進む。
そして、ステップS74においては、自車両の走行方位と走行距離を取得する。
そして、ステップS75においては、取得した走行状態データの時間変化(例えば、上記数式(2)に示す曲率U(t)等)に基づき、自車両が実カーブの出口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS74に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS76に進む。
そして、ステップS76においては、取得した自車両の走行方位と走行距離とに基づき、実カーブの形状を取得する。
【0062】
そして、ステップS77においては、地図カーブの極性と実カーブの極性とが同極性であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS79に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS78に進む。
そして、ステップS78においては、地図カーブの極性を実カーブの極性により修正するようにして地図データ記憶部23の道路データを修正する。
そして、ステップS79においては、地図カーブの半径と実カーブの半径との偏差が所定以上か否かを判定する。
ステップS79の判定結果が「YES」の場合には、地図カーブの半径と実カーブの半径に基づき修正することが適切ではないと判断して、一連の処理を終了する。
一方、ステップS79の判定結果が「NO」の場合には、ステップS80に進む。
そして、ステップS80においては、地図カーブの半径を実カーブの半径により修正するようにして地図データ記憶部23の道路データを修正し、一連の処理を終了する。
【0063】
また、ステップS81においては、道路データ上において、自車両が地図カーブの出口位置を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS72に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS82に進む。
そして、ステップS82においては、実路は直線路であると判断する。
そして、ステップS83においては、地図カーブを安全装置の作動に対する制御非対象として設定、または、地図カーブを直線路として修正するようにして地図データ記憶部23の道路データを修正し、一連の処理を終了する。
【0064】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、安全装置の作動対象となるカーブに係る道路データのみを修正することができ、道路データの修正に要する演算量が増大することを防止しつつ、安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】車両がカーブに進入する際の警報の作動タイミングを示す図である。
【図3】実カーブと地図カーブとの各カーブ半径の一例を示す図である。
【図4】曲率U(t)の時間変化に応じて設定するカーブ区間の一例を示す図である。
【図5】実カーブと地図カーブとの一例を示す図である。
【図6】実カーブと地図カーブとの一例を示す図である。
【図7】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 車両の走行安全装置
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
23 地図データ記憶部(記憶手段)
32 ジャイロセンサ(車両状態検出手段、運動状態検出手段)
33 車速センサ(車両状態検出手段、運動状態検出手段)
52 ブレーキペダルセンサ(操作検出手段)
54 加速度センサ(横加速度検出手段)
61 カーブ認識部(カーブ認識手段)
62 適正車速設定部(適正車両状態設定手段)
63 比較部(比較手段)
64 作動部(作動手段)
65 カーブ推定部(推定手段)
66 データ修正部(修正手段)
ステップS43 第1の距離検知手段
ステップS44 第2の距離検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段と、
前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段と
を備える車両の走行安全装置であって、
前記安全装置の作動時における自車両の前記カーブの通過状態に基づき前記カーブの実形状を推定する推定手段と、
前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状と前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの認識形状とが相違するとき、前記推定形状と前記認識形状とが同等となるようにして前記道路データを修正する修正手段と
を備えることを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、カーブの極性および径および曲率および深さおよび長さの少なくとも何れかひとつであることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記修正手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの位置と、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの位置とが相違するとき、これらの位置が同等となるようにして前記道路データを修正することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段と、
前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段と
を備える車両の走行安全装置であって、
前記安全装置の作動時における自車両の前記カーブの通過状態に基づき前記カーブの実形状を推定する推定手段を備え、
前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの認識形状よりも緩いとき、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項5】
前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、前記カーブの径または曲率であり、
自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段を備え、
前記推定手段は前記運動状態検出手段にて検出された前記運動状態に基づき、前記カーブの径または曲率を推定しており、
前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの径が所定値以上である場合、または、前記推定手段にて推定された前記カーブの曲率が所定値以下である場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行安全装置。
【請求項6】
前記カーブの前記推定形状および前記認識形状は、前記カーブの径または曲率であり、
自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段を備え、
前記推定手段は前記運動状態検出手段にて検出された前記運動状態に基づき、前記カーブの径または曲率を推定しており、
前記作動手段は、前記推定手段にて推定された前記カーブの径または曲率と、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの径または曲率との、差または比が、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行安全装置。
【請求項7】
前記カーブの通過状態は、横加速度検出手段により検出される自車両の横加速度であり、
前記作動手段は、検出された横加速度が所定値以下である場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行安全装置。
【請求項8】
前記カーブの通過状態は、横加速度検出手段により検出される自車両の横加速度であり、
前記作動手段は、前記カーブ認識手段にて認識された前記カーブの形状に基づき算出した横加速度と、前記横加速検出手段により検出された横加速度との、差または比が、前記推定手段にて推定された前記カーブの推定形状が緩いことを示す所定値を超える場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行安全装置。
【請求項9】
自車両の運動状態を検出する運動状態検出手段を備え、
前記カーブの通過状態は、前記運動状態検出手段にて検出された運動状態に基づき検知される自車両が実際に前記カーブの入口位置に到達した状態であり、
前記安全装置が作動した時点での自車両の位置から、前記推定手段により推定された前記カーブの入口位置までの距離を検知する第1の距離検知手段と、
前記安全装置が作動した時点での自車両の位置から、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブの入口位置までの距離を検知する第2の距離検知手段とを備え、
前記作動手段は、前記第1の距離検知手段にて検知された距離が、前記第2の距離検知手段にて検知された距離よりも所定値以上長い場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の走行安全装置。
【請求項10】
運転者の減速操作の有無を検出する操作検出手段を備え、
前記安全装置の作動以後において、前記操作検出手段により運転者の減速操作が無いことが検出された場合に、前記カーブに対する前記安全装置の次回以降の作動時において前記安全装置が作動し難くなるように設定することを特徴とする請求項4から請求項9の何れかひとつに記載の車両の走行安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−137262(P2006−137262A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327082(P2004−327082)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】