説明

車両用駆動装置の制御装置

【課題】車両走行中に何らかの故障により係合装置の伝達トルク容量が低下しても、機械式伝達部の入力系の回転部材や第2電動機等の過回転を抑制する車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】自動変速部20の入力部材の実際の回転速度NIN1と実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) および自動変速部20の変速比γに基づいて算出された理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との回転速度差ΔNINに応じて、エンジン8の出力トルクが制限されることから、車両走行中に何らかの故障により入力クラッチC1および/またはC2の伝達トルク容量が低下しても上記自動変速部20の入力系において入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置に係り、特に、走行中に上記機械式伝達部の係合装置が故障したときの、その機械式伝達部の入力系構成部品の過回転を防止し、それらの耐久性を確保する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両用駆動装置がそれである。このような車両用駆動装置では、電気式差動部から機械式伝達部へ動力を伝達する伝達部材から駆動輪に至る動力伝達経路に第2電動機を設けることに加えて、機械式伝達部が有段式自動変速機構で構成されており、この有段式自動変速機構によって伝達部材の回転すなわちエンジンからの動力が入力される入力部材の回転を多段に変速して伝達することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−264762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に示すような従来の車両用駆動装置では、入力クラッチ等の係合装置を備えた機械式伝達部が用いられ、電気式差動部からの動力がその係合装置を介して機械式伝達部から出力されるようになっている。
【0005】
しかしながら、車両の比較的高速での走行中に上記入力クラッチ等の係合装置或いはそれを駆動制御する部品の故障によりその係合装置の伝達トルク容量が低下すると、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材の回転が高回転となる可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両走行中に何らかの故障により機械式伝達部の係合装置の伝達トルク容量が低下しても、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材の回転が高回転となることを抑制する車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、(b)前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、(c) 前記機械式伝達部の実際の回転速度とその機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度差に応じて、前記エンジンの出力を制限し、(d)前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とするものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度差が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることにある。
【0009】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、(a) エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、(c)前記機械式伝達部の実際の回転速度とその機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度比に応じて、前記エンジンの出力を制限し、(d)前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とするものである。
【0010】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項3に係る発明において、前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度比が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることにある。
【0011】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、(a) エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、(c)前記機械式伝達部の実際の変速比がその機械式伝達部の理論変速比から乖離する量に応じて、前記エンジンの出力を制限し、(d)前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とするものである。
【0012】
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項5に係る発明において、前記機械式伝達部の実際の変速比が前記機械式伝達部の実際の理論変速比から乖離する量が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることにある。
【0013】
また、請求項7に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至6のいずれか1に係る発明において、(a) 前記電気式差動部は、前記エンジンの出力を第1電動機および前記機械式伝達部の入力軸へ分配する差動機構と、その入力軸に直接的に又は間接的に連結された第2電動機とを備えたものであり、(b) 前記第2電動機の回転速度が所定の回転速度上限値以上にならないように前記第1電動機の回転速度を制御することにある。
【0014】
また、請求項8に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれか1に係る発明において、前記機械式伝達部は、動力を伝達するための係合装置を有する有段又は無段の変速装置であることにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、前記機械式伝達部の実際の回転速度とその機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度差に応じて前記エンジンの出力が制限され、前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、そのエンジンの出力制限値を小さい値とされることから、車両走行中に何らかの故障により係合装置の伝達トルク容量が低下しても機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の高回転が高精度で抑制される。したがって、それら係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。
【0016】
また、請求項2に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との回転速度差が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力がそれ以外のときに比較して低下させられるので、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制され、それらの耐久性が確保される。
【0017】
請求項3に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、前記機械式伝達部の実際の回転速度とその機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度比に応じて前記エンジンの出力が制限され、前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とされることから、車両走行中に何らかの故障により係合装置の伝達トルク容量が低下しても機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の高回転が高精度で抑制される。したがって、それら係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。
【0018】
また、請求項4に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との回転速度比が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力がそれ以外のときに比較して低下させられるので、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制され、それらの耐久性が確保される。
【0019】
また、請求項5に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、 エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、前記機械式伝達部の実際の変速比がその機械式伝達部の理論変速比から乖離する量に応じて、前記エンジンの出力が制限され、前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とされることから、車両走行中に何らかの故障により係合装置の伝達トルク容量が低下しても機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の高回転が高精度で抑制される。したがって、それら係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。
【0020】
また、請求項6に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記機械式伝達部の実際の変速比が前記機械式伝達部の実際の理論変速比から乖離する量が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させられるので、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の高回転が抑制される。したがって、それら係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。
【0021】
また、請求項7に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、(a) 前記電気式差動部は、前記エンジンの出力を第1電動機および前記機械式伝達部の入力軸へ分配する差動機構と、その入力軸に直接的に又は間接的に連結された第2電動機とを備えたものであり、(b) 前記第2電動機の回転速度が所定の回転速度上限値以上にならないように前記第1電動機の回転速度を制御することから、機械式伝達部の入力系において上記入力クラッチよりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が応答性よく速やかに抑制され、それらの耐久性が一層確保される。
【0022】
また、請求項8に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記機械式伝達部は、動力を伝達するための係合装置を有する有段又は無段の変速装置であるので、その有段又は無段の変速装置の係合装置の故障によってその伝達トルク容量が低下しても、機械式伝達部の入力系において上記係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の高回転が抑制される。したがって、それら係合装置よりもエンジン側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。
【0023】
ここで、前記機械式伝達部は、摩擦係合装置を備えた動力伝動装置や、変速比が固定の摩擦型動力伝動装置であってもよいが、好適には、複数の回転要素を有する1または2以上の遊星歯車装置とそれら回転要素を相互に或いは非回転部材に選択的に連結する複数の摩擦係合装置とを備えた有段式自動変速機、有効径が可変な一対の可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けられて摩擦力により動力が伝達されるベルト式無段変速機、或いは、一対のコーンの間に回動可能回転軸心を有する複数のローラが挟持されて摩擦力により動力が伝達されるトロイダル式無段変速機等の自動変速機である。上記一対の可変プーリおよび伝動ベルトや、一対のコーンおよびローラも摩擦係合装置の一種である。
【0024】
また、好適には、前記エンジンの出力は、そのエンジンに供給される燃料を燃料噴射弁により遮断( フューエルカット)し、或いはそのエンジンに供給される混合気をスロットル弁により制限することによって実行される。
【0025】
また、好適には、車両のシフトレバーが走行位置であるか否かを判定する走行位置判定手段と、その走行位置判定手段によってシフトレバーが走行位置であると判定された場合は、前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との回転速度差又は回転速度比が所定の判定値以上であるか否かを判定する判定手段と、その判定手段により上記回転速度差又は回転速度比が所定の判定値以上であると判定された場合は、前記エンジンの出力を制限するエンジン出力制限手段と、上記判定手段により上記回転速度差または回転速度比が所定の判定値以上であると判定されたとき、前記第2電動機の回転速度が所定の回転速度上限値以上にならないように前記第1電動機の回転速度を制御する第1電動機制御手段とが、備えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の実施例のハイブリッド車両においてその変速機構に設けられた有段変速機の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
【図3】図1の実施例のハイブリッド車両の変速機構において、差動部の無段変速作動と有段変速機の有段変速作動とにおける各回転要素の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の実施例の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】図1の実施例のハイブリッド車両の変速機構において、有段変速機の有段変速作動を行うための油圧制御回路の要部を示す図である。
【図6】シフトレバーにより複数種類のシフトポジションを人為的操作により切り換えるためのシフト操作装置の一例を示す図である。
【図7】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】車速と要求出力トルクとをパラメータとする同じ二次元座標に構成された、自動変速機の変速判断に用いられる予め記憶された変速線図と、エンジン走行とモータ走行とを切換判断に用いられる境界線を有する予め記憶された駆動力源切換線図とを例示する図である。
【図9】図7のハイブリッド制御手段により作動させられるエンジンの最適燃費率曲線を示す図である。
【図10】図7のエンジン出力トルク制限手段により制限されるエンジン出力トルク制限値と回転速度差との関係を示す図である。
【図11】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の他の実施例において、エンジン出力トルク制限手段により制限されるエンジン出力トルク制限値と回転速度差との関係を示す図であって、図10に相当する図である。
【図13】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する図である。
【図14】図13の実施例の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図15】車速を示す軸と第2電動機の回転速度を示す軸との二次元座標において、図13の実施例の回転速度比判定手段による判定位置および図16の実施例の変速比差判定手段による判定位置を、図7の実施例の回転速度差判定手段いよる判定位置と対比して説明する図である。
【図16】本発明の他の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する図である。
【図17】図16の実施例の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図18】本発明の他の実施例における図15に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部として機能可能な電気式差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間の動力伝達経路に設けられて、エンジン8からの動力を差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0029】
本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは相互に直結されている。この直結とはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているという意味であり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する機械的連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0030】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構である動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
【0031】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0032】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされる。この差動状態では、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11は、その変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機すなわち電気式無段変速部として機能する。
【0033】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式自動変速機、機械式変速部、或いは機械式伝達部として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4で表される。
【0034】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0035】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは、自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結され、エンジン8の出力が差動部11および第1クラッチC1および/または第2クラッチC2を介して、自動変速部20へ入力されるようになっている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は、自動変速部20の入力クラッチとして機能している。これら第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。このため、上記第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置としても機能している。
【0036】
上記自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる有段変速機である。図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
【0037】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置( 係合要素) であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0038】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と有段式変速機として機能する自動変速部20とで全体として変速比が無段階で変化させられる無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで変速比が段階的に変化させられる有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0039】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0040】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0041】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0042】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0043】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0044】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0045】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0046】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NEを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
【0047】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0048】
自動変速部20において、第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0049】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st)の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th)の出力軸22の回転速度が示される。
【0050】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8、第1電動機M1、第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行する。
【0051】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図7参照)のシフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUT( rpm)に対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOIL(℃)を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Acc( %)を表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0052】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0053】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図を例示している。
【0054】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン30により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度或いはスロットル開度で表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0055】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成であり、電子制御装置80により独立に駆動制御され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3がそれぞれ制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0056】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0057】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0058】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0059】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション或いは「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を後進或いは前進走行させるときに選択される後進或いは前進走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0060】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0061】
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の要求出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。要求出力トルクTOUTは、よく知られた予め記憶された関係から実際のアクセル開度Acc( %)および車速Vに基づいて算出される。
【0062】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0063】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0064】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。
【0065】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0066】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0067】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NEを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0068】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
【0069】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0070】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的無段変速機能(差動作用)によって車両をモータ走行させることができる。図6の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機M2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図6の境界線(実線A)に示される関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUT とをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図8中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に記憶手段に予め記憶されている。
【0071】
また、ハイブリッド制御手段84は、車速Vおよび要求出力トルクTOUTで示される車両の走行状態が図8のA線で囲まれたモータ走行領域内となると、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させる。これにより、ハイブリッド制御手段84は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域において、モータ走行を実行する。また、ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
【0072】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0073】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0074】
走行位置判定手段86は、シフトレバー52が走行位置に操作されているか否か、すなわち車両のシフトレバー52が「D」、「M」又は「R」ポジションへ操作されているか否かを、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて判定する。
【0075】
回転速度差判定手段88は、シフトレバー52が走行位置に操作されているとき、第2電動機M2に内蔵されているレゾルバの出力信号に基づいて算出された、差動部( 電気式無段変速部) 11の出力部材である伝達部材18の実際の回転速度、すなわち自動変速部(機械式伝達部)20の入力部材の実際の回転速度NIN1と、実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) および自動変速部20の実際のギヤ段に対応する変速比γに基づいて算出された理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との回転速度差ΔNINが、予め設定された所定の回転速度差判定値ΔNINA以上であるか否かを判定する。上記自動変速部20の入力部材とは、第1クラッチC1および第2クラッチC2またはそれに連結されている部材である。
【0076】
エンジン出力制限手段90は、上記回転速度差判定手段88により上記回転速度差ΔNINが所定の回転速度差判定値ΔNINA( rpm)以上であると判定された場合は、エンジン出力制御装置58にエンジン8に供給される燃料を燃料噴射弁により遮断( フューエルカット)させ或いはそのエンジン8に供給される混合気をスロットル弁62により制限させるために、エンジン8の出力トルクTE を、図10に示すように回転速度差ΔNINがその回転速度差判定値ΔNINAを下回る場合の出力トルク制限値TEmax1( N・m)よりも低い出力トルク制限値TEmax2( N・m)に制限する。なお、図10において、回転速度差ΔNINが回転速度差判定値ΔNINAを下回る領域におけるエンジン8の出力トルク制限値TEmax1は、たとえばエンジン8の最大出力トルクと同等以上の値に設定されるものであり、その回転速度差ΔNINが回転速度差判定値ΔNINAを下回る領域では、エンジン8の出力トルクは実質的に制限されていない。
【0077】
第1電動機回転速度制御手段92は、上記回転速度差判定手段88により上記回転速度差ΔNINが所定の回転速度差判定値ΔNINA以上であると判定された場合は、第2電動機M2の回転速度NM2が予め記憶された所定の回転速度上限値NM2max 以上にならないように第1電動機M1の回転速度NM1を制御する。たとえば、第2電動機M2の回転速度NM2が所定の回転速度上限値NM2max 以上の過回転とならないように、第1電動機M1の回転速度NM1を増加させて、第2電動機M2の回転速度NM2の上昇を抑制する。第1電動機M1の回転速度NM1は、上記フューエルカットによるエンジン8の出力トルクTE の抑制制御よりも制御応答性が高いという特徴がある。
【0078】
図11は、電子制御装置40の制御作動の要部、すなわち入力クラッチC1および/またはC2の異常による第2電動機M2の過回転を防止する制御作動を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行される。
【0079】
先ず、前記走行位置判定手段86に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1では、シフトレバー52が走行ポジションに操作されているか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合は、S6においてその他の制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。しかし、S1の判断が肯定される場合は、前記回転速度差判定手段88に対応するS2において、第2電動機M2に内蔵されているレゾルバの出力信号に基づいて算出された、差動部11の出力部材である伝達部材18の実際の回転速度すなわち自動変速部20の入力部材の実際の回転速度NIN1と、実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) および自動変速部20の実際のギヤ段に対応する変速比γに基づいて算出された理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との回転速度差ΔNINが、予め設定された所定の回転速度差判定値ΔNINAたとえば500rpm以上であるか否かが判定される。この回転速度差判定値ΔNINAは、第2電動機M2の回転速度が過大とならないようにエンジン出力トルクの制限を開始させる条件としてが予め実験的に設定される。この回転速度差判定値ΔNINAは、エンジン出力トルクの制限を開始させるときの第1クラッチC1および/または第2クラッチC2のすべり量に対応している。
【0080】
上記S2の判断が否定される場合は、S5において、エンジン8の出力トルク制限値TEmaxが通常値TEmax1に保持される。これにより、エンジン8の出力トルクTE はエンジン出力制御装置58によって通常値TEmax1以下となるように制限されるが、その通常値TEmax1は前述のようにエンジン8の最大出力トルクと同等以上の値に設定されており、回転速度差ΔNINが回転速度差判定値ΔNINAを下回る領域では、エンジン8の出力トルクTE は実質的に制限されていない。
【0081】
しかし、S2の判断が肯定される場合は、前記エンジン出力制限手段90に対応するS3において、エンジン8の出力トルク制限値TEmaxが、たとえば図10に示すように予め通常値TEmax1よりも低く設定された一定の出力トルク制限値TEmax2に設定される。このため、エンジン8の出力トルクTE はエンジン出力制御装置58によってその出力トルク制限値TEmax2以下となるように制限される。この出力トルク制限値TEmax2は、SL1或いはSL2のソレノイド又は本体のスプール弁子のスティック等の故障など、何らかの異常により第1クラッチC1或いは第2クラッチC2にスリップが発生したときに、第2電動機M2の過回転を発生させないように予め実験的に決定された値である。
【0082】
そして、前記第1電動機回転速度制御手段92に対応するS4では、第2電動機M2の回転速度NM2が予め記憶された所定の回転速度上限値NM2max 以上にならないように第1電動機M1の回転速度NM1が制御される。たとえば、第2電動機M2の回転速度NM2が10000rpm程度に設定された回転速度上限値NM2max 以上の過回転とならないように、第1電動機M1の回転速度NM1を増加させられ且つサンギヤS1のトルクが上昇させられて、第2電動機M2の回転速度NM2の上昇が抑制される。
【0083】
上述のように、本実施例の電子制御装置40によれば、エンジン8の出力を駆動輪34に伝達する動力伝達経路に、差動部( 電気式無段変速部) 11と自動変速部(機械式伝達部)20とを直列に配置した車両用変速機構( 駆動装置) 10において、自動変速部20の入力部材の実際の回転速度NIN1と実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) および自動変速部20のギヤ段に対応する変速比γに基づいて算出された理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との回転速度差ΔNINに応じて、エンジン8の出力トルクが制限されることから、車両走行中に何らかの故障により入力クラッチC1および/またはC2の伝達トルク容量が低下しても上記自動変速部20の入力系において入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。このような効果は、軸方向寸法が小さく且つ有段変速状態においてワイドレンジ且つクロスレシオの複数のギヤ段変速段で構成するために、自動変速部20が入力クラッチをそれぞれ有する複数の入力系統を備えらる本実施例の車両用変速機構( 駆動装置) 10において、特に顕著な効果が得られる。
【0084】
また、本実施例の電子制御装置40によれば、上記回転速度差ΔNINが予め設定された回転速度差判定値ΔNINA以上であるとき、エンジン8の出力トルクがそれ以外の場合に比較して低下させられるので、自動変速部20の入力系において上記入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制され、それらの耐久性が確保される。
【0085】
また、本実施例の電子制御装置40によれば、(a) 差動部( 電気式無段変速部) 11は、エンジン8の出力トルクを第1電動機M1および自動変速部20の入力軸( 伝達部材18)へ分配する動力分配機構( 差動機構) 16と、その入力軸に直接的に又は間接的に連結された第2電動機とを備えたものであり、(b) 第2電動機M2の回転速度NM2が所定の回転速度上限値NM2max 以上にならないように第1電動機M1の回転速度NM1を制御することから、自動変速部20の入力系において上記入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機M2等の過回転が応答性よく速やかに抑制され、それらの耐久性が一層確保される。
【0086】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0087】
前述の実施例において、出力トルク制限値TEmax2は一定値であったが、その出力トルク制限値TEmax2は、たとえば自動変速部20の変速比γが大きい程出力トルク制限値TEmax2が低くなるように予め設定された関係から、第2電動機M2の回転速度NM2および/または自動変速部20の実際の変速比γに基づいて決定される。図10の1点鎖線は、第2電動機M2の回転速度NM2および/または自動変速部20のギヤ段に対応した値を例示している。この関係では、第2電動機M2の回転速度NM2が高くなるほど、および/または自動変速部20の変速比が大きくなるほど、出力トルク制限値TEmax2が小さくなるように設定されている。
【実施例3】
【0088】
図12は、エンジン8の出力トルク制限値TEmaxを求めるために用いられる関係の他の例を示している。前述の実施例において用いられていた図10の関係では回転速度差ΔNINが回転速度差判定値ΔNINAを超えるとエンジン8の出力トルク制限値TEmaxが通常値TEmax1から出力トルク制限値TEmax2へ急激に階段状に低くなるのに比較して、本実施例の関係では、回転速度差ΔNINの増加に伴って出力トルク制限値TEmax2が連続的に減少するように設定されている。また、図12の1点鎖線に示すように、本実施例では、第2電動機M2の回転速度NM2が高くなるほど、および/または自動変速部20の変速比が大きくなるほど、出力トルク制限値TEmax2および上記回転速度差判定値ΔNINAが低くなるように設定されている。本実施例によれば、第2電動機M2等の過回転が精度よく抑制される利点がある。
【実施例4】
【0089】
図13および図14は、本発明の他の実施例において、入力クラッチC1および/またはC2の伝達容量低下異常による第2電動機M2の過回転を防止するための電子制御装置40の制御機能の要部を示す機能ブロック線図、および電子制御装置40の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図13では、図7の回転速度差判定手段88に替えて回転速度比判定手段88’が設けられている他は図7と同じであり、図14では、図11のS2に替えて上記回転速度比判定手段88’に対応するS2’が設けられている他は図11と同じである。以下、相違点のみ説明する。
【0090】
図13の回転速度比判定手段88’は、シフトレバー52が走行位置に操作されているとき、第2電動機M2に内蔵されているレゾルバの出力信号に基づいて算出された、差動部( 電気式無段変速部) 11の出力部材である伝達部材18の実際の回転速度すなわち自動変速部(機械式伝達部)20の入力部材の実際の回転速度NIN1と、実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) および自動変速部20の実際のギヤ段に対応する変速比γに基づいて算出された理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との間の回転速度比RN(=NIN1/NIN2)が、予め設定された所定の回転速度比判定値RN A以上であるか否かを判定する。この回転速度比判定値RN Aは、前述の回転速度差判定値ΔNINAと同様の目的で決定された値であり、たとえば1.3程度の値が設定される。
【0091】
上記回転速度比判定手段88’によって上記回転速度比RN (=NIN1/NIN2)が予め設定された所定の回転速度比判定値RN A以上であると判定されると、前述の実施例と同様に、エンジン出力制限手段90は、エンジン出力制御装置58にエンジン8に供給される燃料を燃料噴射弁により遮断( フューエルカット)させ或いはそのエンジン8に供給される混合気をスロットル弁62により制限させるために、エンジン8の出力トルクTE を、図10に示す場合と同様に、回転速度比RN が回転速度比判定値RN Aを下回る場合の値TEmax1( N・m)よりも低い値TEmax2( N・m)に制限し、第1電動機回転速度制御手段92は、第2電動機M2の回転速度NM2が予め記憶された所定の回転速度上限値NM2max 以上にならないように第1電動機M1の回転速度NM1を制御する。
【0092】
図14では、回転速度比判定手段88’に対応するS2’において上記回転速度比RN (=NIN1/NIN2)が予め設定された所定の回転速度比判定値RN A以上であるか否かが判断される。このS2’の判断が肯定されると、前述の実施例と同様に、エンジン出力制限手段90に対応するS3および第1電動機回転速度制御手段92に対応するS4が実行されるので、前述の実施例と同様に、車両走行中に何らかの故障により入力クラッチC1および/またはC2の伝達トルク容量が低下しても上記自動変速部20の入力系において入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。このような効果は、軸方向寸法が小さく且つ有段変速状態においてワイドレンジ且つクロスレシオの複数のギヤ段変速段で構成するために、自動変速部20が入力クラッチをそれぞれ有する複数の入力系統を備えらる本実施例の車両用変速機構( 駆動装置) 10において、特に顕著な効果が得られる。
【0093】
本実施例の回転速度比判定手段88’では、自動変速部(機械式伝達部)20の入力部材の実際の回転速度NIN1と自動変速部20の理論入力部材回転速度NIN2( =γ×NOUT) との間の回転速度比RN (=NIN1/NIN2)が、予め設定された所定の回転速度比判定値RN A以上であるか否かが判定されるので、所定変速段における、入力クラッチC1およびC2が正常時の第2電動機M2の回転速度NM2(回転速度NIN1)と車速V( km/h)を示す図15の二次元座標において、回転速度NIN1を実線で示すと、前述の実施例の回転速度差判定値ΔNINAは破線で表されるのに対し、本実施例の上記回転速度比判定値RN Aは1点鎖線で表される。
【実施例5】
【0094】
図16および図17は、本発明の他の実施例において、入力クラッチC1および/またはC2の伝達容量低下異常による第2電動機M2の過回転を防止するための電子制御装置40の制御機能の要部を示す機能ブロック線図、および電子制御装置40の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図16では、図7の回転速度差判定手段88に替えて変速比差判定手段88”が設けられている他は図7と同じであり、図17では、図11のS2に替えて上記変速比差判定手段88’に対応するS2”が設けられている他は図11と同じである。以下、相違点のみ説明する。
【0095】
図16の変速比差判定手段88”は、シフトレバー52が走行位置に操作されているとき、第2電動機M2に内蔵されているレゾルバの出力信号に基づいて算出された、差動部( 電気式無段変速部) 11の出力部材である伝達部材18の実際の回転速度すなわち自動変速部(機械式伝達部)20の入力部材の実際の回転速度NIN1と実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) とから求められる実際の変速比γ1(=NIN1/NOUT)と、実際のギヤ段に対応する自動変速部20の理論変速比(設計変速比)γ2との間の変速比差Δγ(=γ1−γ2)が、予め設定された所定の変速比差判定値ΔγA以上であるか否かを判定する。この変速比差判定値ΔγAは、前述の回転速度差判定値ΔNINAと同様の目的で決定された値である。
【0096】
上記変速比差判定手段88”によって上記変速比差Δγ(=γ1−γ2)が予め設定された所定の変速比差判定値ΔγA以上であると判定されると、前述の実施例と同様に、エンジン出力制限手段90は、エンジン出力制御装置58にエンジン8に供給される燃料を燃料噴射弁により遮断( フューエルカット)させ或いはそのエンジン8に供給される混合気をスロットル弁62により制限させるために、エンジン8の出力トルクTE を、図10に示す場合と同様に、回転速度比RN が回転速度比判定値RN Aを下回る場合の値TEmax1( N・m)よりも低い値TEmax2( N・m)に制限し、第1電動機回転速度制御手段92は、第2電動機M2の回転速度NM2が予め記憶された所定の回転速度上限値NM2max 以上にならないように第1電動機M1の回転速度NM1を制御する。
【0097】
図17では、変速比差判定手段88”に対応するS2”において上記変速比差Δγ(=γ1−γ2)が予め設定された所定の変速比差判定値ΔγA以上であるか否かが判断される。このS2”の判断が肯定されると、前述の実施例と同様に、エンジン出力制限手段90に対応するS3および第1電動機回転速度制御手段92に対応するS4が実行されるので、前述の実施例と同様に、車両走行中に何らかの故障により入力クラッチC1および/またはC2の伝達トルク容量が低下しても上記自動変速部20の入力系において入力クラッチC1および/またはC2よりもエンジン8側の回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の過回転が抑制されるので、それら回転部材およびそれに関連して回転する軸受、第2電動機等の耐久性が確保される。このような効果は、軸方向寸法が小さく且つ有段変速状態においてワイドレンジ且つクロスレシオの複数のギヤ段変速段で構成するために、自動変速部20が入力クラッチをそれぞれ有する複数の入力系統を備えらる本実施例の車両用変速機構( 駆動装置) 10において、特に顕著な効果が得られる。
【0098】
本実施例の変速比差判定手段88”では、自動変速部(機械式伝達部)20の入力部材の実際の回転速度NIN1と実際の車速V( 出力軸22の回転速度NOUT) とから求められる実際の変速比γ1(=NIN1/NOUT)と、実際のギヤ段に対応する自動変速部20の理論変速比(設計変速比)γ2との間の変速比差Δγ(=γ1−γ2)が、予め設定された所定の変速比差判定値ΔγA以上であるか否かが判定されるので、所定変速段における、入力クラッチC1およびC2が正常時の第2電動機M2の回転速度NM2(回転速度NIN1)と車速V( km/h)を示す図15の二次元座標において、1点鎖線で表され得る。
【実施例6】
【0099】
車速Vが所定値V1以下の低車速では、実施例1に示す回転速度差判定手段88が用いられ、車速Vが所定値V1を上回る高車速では、実施例4または5に示す回転速度比判定手段88’または速度差判定手段88”が用いられてもよい。図18は、所定変速段における、入力クラッチC1およびC2が正常時の第2電動機M2の回転速度NM2(回転速度NIN1)と車速V( km/h)を示す図15の二次元座標において、実線に示される回転速度NIN1に対して、第2電動機M2の過回転を抑制するためにエンジン8の出力トルクTE を低下させる境界線が低車速域では破線で示されるものとなり、高車速域では1点鎖線で示されるものとなる。本実施例では、前述の実施例と同様の効果が得られるのに加えて、低車速域ではノイズの影響を受け難くなり、高車速域では入力クラッチC1および/またはC2のすべり異常に起因する第2電動機M2の過回転を抑制するためにエンジン8の出力トルクTE の低下を適切に開始させる利点がある。
【0100】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0101】
例えば、前述の実施例の変速機構10の自動変速部20は、前進4速の有段式変速機であったが、変速段数はいずれであってもよく、また、有効径が可変の一対の可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けられて変速比が無段階に変化させられるベルト式無段変速機であってもよい。このようなベルト式無段変速機では、一対の可変プーリに伝動ベルトとの間の摩擦係合によって動力が伝達されるので、そのような摩擦係合部の伝達容量が異常に低下したことに起因する第2電動機M2の過回転も防止することができる。この場合、一対の可変プーリとそれに巻き掛けられた伝動ベルトとが係合装置として機能している。
【0102】
また、前述の実施例では、自動変速機20において第1クラッチC1および/または第2クラッチC2が機械式伝達部の係合装置として機能していたが、機械式伝達部に設けられる係合装置としては、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置噛合いクラッチなどの他の形式の係合装置であってもよい。
【0103】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0104】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、伝動チェイン、伝動ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0105】
また、前述の実施例では、第2電動機M2が伝達部材18に連結されていたが、その部材18から駆動輪34に至る動力伝達経路中の回転部材に、たとえば出力軸22に連結されていてもよい。
【0106】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。
【0107】
また、前述の実施例において、無段変速部として機能する電気式差動部11は、第1電動機M1が制御されることにより、有段変速機としても差動させられることができる。
【0108】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0109】
8:エンジン
10:変速機構(駆動装置)
11:電気式差動部(電気式無段変速部)
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
20:自動変速部(機械式伝達部)
38:駆動輪
40:電子制御装置(制御装置)
88:回転速度差判定手段
88’:回転速度比判定手段
88”:変速比差判定手段
90:エンジン出力制限手段
92:第1電動機回転速度制御手段
M1:第1電動機
M2:第2電動機
C1:第1クラッチ(係合装置)
C2:第2クラッチ(係合装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、
前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、
前記機械式伝達部の実際の回転速度と該機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度差に応じて、前記エンジンの出力を制限し、
前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とする
ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度差が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることを特徴とする請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、
前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、
前記機械式伝達部の実際の回転速度と該機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度比に応じて、前記エンジンの出力を制限し、
前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とする
ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記機械式伝達部の実際の回転速度と前記機械式伝達部の変速比から推定される理論回転速度との間の回転速度比が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることを特徴とする請求項3の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
エンジンの出力を駆動輪に伝達する動力伝達経路に、電気式差動部と機械式伝達部とを直列に配置した車両用駆動装置の制御装置において、
前記電気式差動部は、前記機械式伝達部の入力軸又はその後段に接続された電動機の運転状態が制御されることによって電気式無段変速機として作動するものであり、
前記機械式伝達部の実際の変速比が該機械式伝達部の理論変速比から乖離する量に応じて、前記エンジンの出力を制限し、
前記電動機の回転速度が高くなるほどおよび/または前記機械式伝達部の変速比が大きくなるほど、前記エンジンの出力制限値を小さい値とする
ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記機械式伝達部の実際の変速比が前記機械式伝達部の理論変速比から乖離する量が所定の判定値以上であるとき、前記エンジンの出力をそれ以外のときに比較して低下させることを特徴とする請求項5の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記電気式差動部は、前記エンジンの出力を第1電動機および前記機械式伝達部の入力軸へ分配する差動機構と、該入力軸に直接的に又は間接的に連結された第2電動機とを備えたものであり、
前記第2電動機の回転速度が所定の回転速度上限値以上にならないように前記第1電動機の回転速度を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記機械式伝達部は、動力を伝達するための係合装置を有する有段又は無段の変速装置である請求項1乃至7のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−52733(P2010−52733A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278070(P2009−278070)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【分割の表示】特願2006−304615(P2006−304615)の分割
【原出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】