車載用報知装置
【課題】車両の運転者に対して回生ブレーキの効率的な利用を促す情報をより効果的に報知するための技術を提供する。
【解決手段】回生教示コンピュータ19は、回生制御コンピュータ20から入力されるブレーキの作動状況に関する情報に基づき、運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する。そして、その導出した損失情報に基づいて、車両の走行前、走行中、走行終了後の各場面において損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【解決手段】回生教示コンピュータ19は、回生制御コンピュータ20から入力されるブレーキの作動状況に関する情報に基づき、運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する。そして、その導出した損失情報に基づいて、車両の走行前、走行中、走行終了後の各場面において損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキシステムによるエネルギの得失に関する情報を運転者に対して報知する車載用報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や二次電池を動力源とする電気自動車、あるいはそれら以外の一部の自動車において、回生ブレーキシステムを搭載したものが実用化している。回生ブレーキシステムは、通常は動力源として使用しているモータを発電機して作動させることで車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、その発電抵抗で車両に制動をかけるブレーキシステムの一種である。自動車に用いられる回生ブレーキシステムでは、制動時にモータで発生した電力によって車両に搭載された蓄電池を充電してエネルギを再利用することができるので、従来の機械式ブレーキのみを搭載した自動車と比較して省燃費を実現できる。
【0003】
自動車に用いられる回生ブレーキシステムでは、車両に搭載された蓄電池や充電機器等の性能的な制約により、回生可能な瞬間電力に上限(以下、回生限界電力とも称する)がある。このため、回生ブレーキ作動時におけるモータの発電電力がこの回生限界電力を超えた場合、超過した分のエネルギは熱等に変換されて廃棄されてしまい、電気エネルギとして回収できない。
【0004】
また、回生ブレーキに用いられるモータはある回転速度で発電電力が最大となり、そこで制動力がピークとなるため、回生ブレーキで得られる制動力には限界がある。そこで、自動車では、回生ブレーキだけでは不足する制動力を補うために、回生ブレーキと、摩擦力で制動をかける機械式ブレーキ(例えば、油圧ブレーキ等)とを併用するのが一般的である。
【0005】
そのため、運転者が強いブレーキを要求するブレーキ操作を行うと、回生ブレーキだけでは不足する制動力を補うため、機械式ブレーキが回生ブレーキと同時に作動することになる。このような場合、ブレーキ操作によって減少した運動エネルギのうち、機械式ブレーキにより減少した分のエネルギは摩擦熱として放出されてしまい、電気エネルギとして回収できない。
【0006】
つまり、モータの発電電力が回生限界電力を超えたり、モータの最大発電電力を超えたりするような強力な制動力を要するブレーキ操作は、電気エネルギとして回収できない損失エネルギを生じさせるため、回生ブレーキによるエネルギ効率を低下させる要因となる。
【0007】
一方、回生ブレーキによるエネルギ効率を向上させるための技術として、特許文献1に記載のような車両用運転支援装置が知られている。特許文献1に記載の車両用運転支援装置では、地図データベースから要減速地点の地図情報を抽出し、この抽出した要減速地点の地図情報に基づいて、その要減速地点での目標車速を設定し、現在の車速から設定された目標車速まで回生ブレーキのみで減速する場合に必要な減速距離を算出する。そして、要減速地点から減速距離分手前に位置する地点に車両が到達した時点でブレーキ操作の開始をするように案内する。このようにすることで、回生ブレーキのみで減速可能な効率的なブレーキ操作を運転者に対して促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−221889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用運転支援装置では、以下のような課題を解決することができない。
回生ブレーキに関する案内の対象となる要減速地点は、地図情報によって予め定義された一時停止やカーブ、交差点といった特定地点のみである。しかし、それ以外の場所では回生ブレーキに関する案内は行われず、運転者に対して効率的なブレーキ操作を促すことができない。また、一時停止やカーブ、交差点に備えて減速のために要する距離は、運転者ごとの運転特性によって異なる。このため、運転者の運転特性を考慮して回生ブレーキに関する案内をしなければ、回生ブレーキによるエネルギ効率の更なる向上は期待できない。
【0010】
また、ブレーキ操作の事前に運転者に対してブレーキ操作を促すフィードフォワード方式によって情報を報知するのみであり、実際に行われたブレーキ操作の結果が良かったのか、悪かったのかを運転者に通知することは考慮されていない。そのため、ブレーキ操作の実態が運転者にフィードバックされず、運転者に効率的なブレーキ操作を意識付けるという効果に乏しく、回生ブレーキによるエネルギ効率の更なる向上は期待できない。
【0011】
また、運転者の運転特性を考慮せず、地図情報によって予め定義された特定地点でのみ回生ブレーキに関する案内を行っている。そのため、たとえ運転者自らが回生ブレーキを効率的に利用するように気をつけている場所であっても、地図情報によって予め定義された特定地点であれば回生ブレーキに関する案内が行われることになり、運転者にとって煩わしい。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、車両の運転者に対して回生ブレーキの効率的な利用を促す情報をより効果的に報知するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載用報知装置は、運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する損失情報導出手段と、損失情報導出手段によって導出された損失情報に基づき、損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を車両に搭載された報知手段を介して運転者に報知する報知制御手段とを備えることを特徴とする。なお、ここでいう損失情報とは、回生ブレーキによって回収できなかった損失エネルギの値や、損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの値を算出することのできる物理量(例えば、回生ブレーキと併用する機械式ブレーキのトルクや、ブレーキ全体の制動仕事率と回生限界電力との差分)等の種々のものを採用できる。
【0014】
そして、運転者のブレーキ操作によって実際に発生した損失エネルギに基づく情報を運転者に対して報知することで、ブレーキ操作の実態を運転者にフィードバックすることができる。これにより、運転者は自身のブレーキ操作によって損失エネルギが発生したことを的確に把握することができる。このように、本発明の車載用報知装置によれば、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより強く意識付けることができ、運転者の運転特性を反映した態様にて回生ブレーキの効率的な利用を促すことができる。
【0015】
ところで、個々の運転者の運転特性に着目した場合、走行する場所ごとに損失エネルギを発生させ易かったり、発生させ難かったりといった具合に、運転特性に応じて場所ごとの損失エネルギの発生度合いが異なると考えられる。つまり、運転者の運転特性をより的確に把握して回生ブレーキの効率的な利用を促すには、場所ごとの損失エネルギの発生状況を統計的に学習し、その学習した統計情報に基づいて情報の報知を行うのが効果的である。
【0016】
そこで、請求項2に記載の車載用報知装置のように構成するとよい。すなわち、損失情報記録手段は、位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失情報導出手段により導出した損失情報を、その損失情報に係る損失エネルギが発生した地理範囲に対応付けて学習情報記憶手段に統計的に記録する。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報に基づき、地理範囲ごとにおける損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0017】
このように構成することで、運転者は、自身の運転によってどの場所を走行しているときに損失エネルギを発生させ易いのかを知ることができ、以降、その場所を走行する際に効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギを発生させていない地域については、それまでどおりの運転で回生ブレーキを十分効率的に利用できていると知ることもできる。このように、本発明の車載用報知装置によれば、場所ごとの運転特性を考慮した態様にて回生ブレーキの効率的な利用を促すことができる。
【0018】
さらに、車両が移動する予定の経路が取得可能であるならば、その移動予定の経路を加味して損失エネルギの発生度合いに関する情報を報知するように構成してもよい。そこで、請求項3のように構成することが考えられる。すなわち、車載用報知装置は、車両の移動予定の経路に関する経路情報を取得する経路取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、経路取得手段により取得した経路情報に基づき、移動予定の経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0019】
なお、ここでいう「車両の移動予定の経路に関する経路情報」というのは、例えば、利用者によって設定された出発地点から目的地点までの情報に基づいて算出された誘導経路情報が考えられる。
【0020】
このように構成することで、場所ごとの損失エネルギの発生状況を学習した結果に基づき、これから走行しようとする経路上のどの場所において損失エネルギを発生させ易いのかを事前に運転者に報知することができる。これにより、走行予定の経路に沿って車両を運転する運転者に対して、効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、場所ごとの損失エネルギの発生状況を、走行予定の経路上に絞った範囲で報知するので、運転者にとって無用な情報を報知することがなく、好適である。
【0021】
あるいは、車両の現在地を取得可能であるならば、車両の現在地に基づいて損失エネルギの発生度合いに関する情報を走行中において適時に報知するように構成してもよい。そこで、請求項4のように構成することが考えられる。すなわち、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際、その旨を運転者に対して報知する。
【0022】
このように構成することで、運転者は、これから損失エネルギを発生させやすい場所を走行することをタイムリーに知ることができる。そして、運転者は、その場所を走行する際に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。このように、走行中に車両の現在地に基づくタイムリーな情報提供を行うことで、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が見込まれる。
【0023】
なお、請求項4に記載のように、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際に行う情報の報知のタイミングを、車両の速度の高低度合い応じて変更するように構成してもよい。
【0024】
例えば、車両の速度が比較的速い場合、ブレーキ操作時に損失エネルギを発生させないようにするためには、速度が比較的低い場合と比べてより手前の位置から慎重にブレーキ操作を行う必要がある。そこで、車両の速度が比較的速い場合には、より手前の位置から損失エネルギの発生度合い場所へ進入する旨を運転者に報知するといった対処をすることで、十分な余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができるようになると考えられる。反対に、車両の速度が比較的遅い場合には、報知のタイミングが多少遅くとも、運転者は余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができると考えられる。
【0025】
このように、車両の速度の高低度合い応じて、損失エネルギの発生度合い場所へ進入する旨を報知するタイミングの早遅を変更可能に構成することで、車両の速度の応じた適切なタイミングで運転者に対して情報の報知を行うことができるようになる。
【0026】
さらに、走行開始から走行終了までの期間に発生した損失エネルギに関する情報を、走行終了後に運転者にフィードバックするような構成であってもよい。具体的には、請求項6に記載のように構成するとよい。すなわち、車載用報知装置は、車両が実際に走行した経路に関する走行経路情報を取得する走行経路取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、走行経路取得手段により取得した走行経路情報に基づき、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間に走行した経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0027】
このように構成することで、運転者は、走行終了後に、今回走行した経路上のどの場所でどの程度損失エネルギが発生したことを的確に把握することができ、自身のブレーキ操作の実態を省みる契機となる。そして、運転者は、自身のブレーキ操作の実態を省みることで、次回からの走行時に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。
【0028】
ところで、運転者の運転特性を反映して損失エネルギに関する情報を報知する手法としては、運転者のブレーキ操作によって現に損失エネルギが発生していることをフィードバックすることも考えられる。具体的には、請求項6に記載のように構成するとよい。すなわち、報知制御手段は、損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの発生度合いを示す情報を運転者に対して報知する。
【0029】
このようにすることで、運転者は、現に操作中のブレーキによって損失エネルギが発生しているのか否かを具に知ることができる。したがって、運転者は、自身が回生ブレーキを効率的に使用しているのか否かを直接的に理解できるようになり、どの程度のブレーキ操作であれば損失エネルギを発生させないで済むのかを体験的に学習し易くなる。つまり、運転者に対して効率的なブレーキ操作を意識付けるだけでなく、回生ブレーキを効率的に利用する技能の向上も期待できる。
【0030】
さらに、請求項8に記載のように、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知するように構成してもよい。このようにすることで、単に損失エネルギの発生の有無を報知するだけよりも、ブレーキ操作の実情を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0031】
また、請求項9に記載のように、運転者によるブレーキ操作終了後に、当該ブレーキ操作による損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知するように構成してもよい。このようにすることで、そのブレーキ操作に対する全体的な評価を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0032】
ところで、車両の走行中においては、回生ブレーキの効率的な利用に運転者の意識を向けさせるよりも、車両の周辺状況に対して優先的に運転者の意識を向けさせるべき状況であることも考えられる。そのような状況では、回生ブレーキに関する情報の報知を抑制することで、車両の周辺状況に対する運転者の注意の妨げにならないようにするといった配慮をするのが好ましい。そこで、請求項10に記載のように構成するとよい。すなわち、車載用報知装置は、車両の周辺の障害物の存在状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、周辺状況取得手段により取得した周辺状況情報に基づき、走行中に車両と障害物とが所定の接近状態である場合、走行中における損失エネルギに関する情報の報知を行わないように制御する。
【0033】
このように構成することで、走行中の車両が他の車両や地物等の障害物と接近状態にある場合、その障害物に対する運転者の注意の妨げとならないように、走行中における情報の報知を抑制でき、好適である。
【0034】
つぎに、請求項11に記載の車載用報知装置は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間にブレーキ操作情報記録手段により記録したデータに基づき、運転者によるブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、その算出した情報を運転者に報知することを特徴とする。このように構成することで、走行終了後に、運転者に対して走行中のブレーキ操作の内容を確認させることができ、効率的なブレーキ操作を意識付けることができるようになり、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が期待できる。
【0035】
さらに、走行後にブレーキ操作の内容を報知する場合、請求項12に記載のように構成してもよい。すなわち、報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間にブレーキ操作情報記録手段により記録したデータと、回生ブレーキシステムで回生可能な最大電力である限界回生電力とに基づき、実際のブレーキ操作によって得られた制動を制動仕事率が限界回生電力を越さないように達成するための理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出する。そして、運転者による実際のブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報と、そのブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報とを対比可能な態様にて運転者に報知する。
【0036】
このように、運転者による実際のブレーキ操作の状況と、その実際のブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作とを比較可能な態様で報知にすることで、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより具体的にアドバイスできる。
【0037】
つぎに、請求項13に記載の車載用報知装置は、走行開始から走行終了までの期間に回生ブレーキシステムにより回生された回生電力量を算出し、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間における回生電力量に関する情報を運転者に報知することを特徴とする。このように、走行中に実際に回生された電力量を運転者に提示することで、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより一層高められると考えられ、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が期待できる。
【0038】
さらに、走行後に回生ブレーキによる回生電力量を報知する場合、請求項14に記載のように構成してもよい。すなわち、車載用報知装置は、走行開始から走行終了までの期間に運転者によって行われたブレーキ操作による制動エネルギの総量を算出する総制動エネルギ算出手段を更に備える。そして、報知制御手段は、走行終了後に、回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量と、総制動エネルギ算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における総制動エネルギとを対比可能な態様にて運転者に報知する。
【0039】
このように、走行中における実際の回生電力量と、走行中に発生した総制動エネルギ(すなわち、理論上回収可能な最大の電力量)とを比較可能な態様にて運転者に提示することで、運転者は、自身のブレーキ操作においてどの程度の省エネルギを達成できたのかをより具体的に知ることができる。これにより、実際の回生電力量だけを提示する場合と比べて、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0040】
さらに、請求項15及び請求項16に記載のように、走行開始から走行終了までの期間における回生電力量や制動エネルギの総量を、所定の区間ごとに表示するように構成してもよい。これにより、運転者は回生電力量や総制動エネルギの発生状況を区間ごとに詳細に知ることができるようになり、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0041】
ところで、本発明の車載報知装置においては、運転者に対して情報を伝達する方法として、運転者の視覚、聴覚、触覚、嗅覚等の種々の感覚に作用することで情報伝達を行う手法を採用できる(請求項17)。
【0042】
なお、運転者の視覚に作用するものとしては、例えば、ディスプレイや表示灯等による表示が考えられる。また、運転者の聴覚に作用するものとしては、例えば、スピーカから言語音や信号音を出力するものが考えられる。また、運転者の触覚に作用するものとしては、例えば、車両内で運転者と接触している部位で圧力や振動を発生させるものが考えられる。また、嗅覚に作用するものとしては、例えば、情報の報知タイミングにおいて特定の香りを運転者の顔面付近に吹き付ける形態のものが考えられる。
【0043】
特に、触覚や嗅覚に作用する情報伝達では、視覚(表示)や聴覚(音声)による情報伝達と比較して、運転者に対して伝達できる情報の内容は限定的であると考えられる。しかしながら、触覚や嗅覚に対する作用パターンと、その作用パターンに対応する情報内容とを運転者が予め理解していれば、実用に十分な程度の情報伝達が可能である。また、運転中において視覚によらない情報の伝達方法を用いることで、運転者の運転負担を軽減することができるといったメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態の回生ブレーキ教示システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】学習データの一例を示す説明図である。
【図3】学習処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】走行前報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】走行前に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を示す説明図である。
【図6】走行中報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】回生メータの表示例を示す説明図である。
【図8】走行後報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】走行後に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を示す説明図である。
【図10】ブレーキグラフウィンドウの表示例を示す説明図である。
【図11】回生電力量グラフウィンドウの表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[回生ブレーキ教示システムの構成の説明]
図1は、実施形態の回生ブレーキ教示システムの概略構成を示すブロック図である。
【0046】
本実施形態の回生ブレーキ教示システムは、回生ブレーキシステムを備える車両に搭載される車載用報知装置である。図1に示すように、回生ブレーキ教示システムは、位置検出器10と、車両周辺センサ11と、地図データベース12と、学習情報データベース13と、音声出力デバイス14と、表示デバイス15と、振動デバイス16と、香り発生デバイス17と、ナビゲーションコンピュータ18と、回生教示コンピュータ19と、回生制御コンピュータ20とを備える。
【0047】
位置検出器10は、GPS(Global Positioning System)衛星からの送信信号を受信し、車両の位置座標や高度を検出するGPS受信機や、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ等を備えている。そして、これらの各センサからの出力信号に基づいて、ナビゲーションコンピュータ18あるいは回生教示コンピュータ19が車両の位置、方位、速度等を算出する。車両周辺センサ11は、例えば、レーダセンサや、ソナーセンサ、車載カメラ等のセンサによって構成され、走行中の自車両の周辺に存在する障害物の存在状況を回生教示コンピュータ19へ入力する。あるいは、車両周辺センサ11は、車車間通信や路車間通信によって自車両以外の車両や路上装置においてセンシングされた周辺状況のデータを取得して、これを回生教示コンピュータ19へ入力するものであってもよい。
【0048】
地図データベース12には、交差点等の特定地点に対応するノード、ノード間を接続する道路区間の最小単位であるリンク及びリンク同士の接続情報から構成される道路ネットワークを含む道路地図データや、地図画像の表示に必要な描画データ等が格納されている。学習情報データベース13には、所定の地理範囲ごとに、各地理範囲内を走行中に行われたブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち回生ブレーキによって回収できなかった分の損失エネルギの発生状況を一定量蓄積した学習データが記憶されている。この学習データの詳細な内容については後述する。
【0049】
音声出力デバイス14は、スピーカから言語音や信号音を発生することで各種情報をユーザに報知できるように構成されている。表示デバイス15は、液晶ディスプレイ等の表示面を有する表示装置であり、地図画像や案内画像等の表示に用いられる。振動デバイス16は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、運転座席等といった、運転者と接触する部位に設けられた振動発生装置によって振動を発生させることで運転者に対して情報を伝達するためのものである。この振動デバイス16では、発生する振動のリズムや強弱のパターンによって伝達する情報の区別が可能である。香り発生デバイス17は、運転者の顔面付近へ香料を射出することで運転者に対して情報を伝達するためのものである。この香り発生デバイス17では、伝達する情報の内容に応じて射出する香料の種類を使い分けることで、伝達する情報の区別が可能である。
【0050】
ナビゲーションコンピュータ18は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ナビゲーションに関する各種処理を実行する。ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理では、位置検出器10からの検出信号に基づいて算出した自車両の現在地に基づき、地図データベース12から現在地周辺の道路地図データや描画データを読み込んで地図画像を生成し、これに自車両の現在地を示すマークを重ね合わせて表示デバイス15に表示させる。また、経路案内処理では、ユーザによって目的地が指定されると、現在地を出発地とし、出発地から目的地までの最適経路を地図データベースから読み込んだ道路地図データに基づいて探索する。そして、経路探索によって得られた最適経路を誘導経路として、その誘導経路を地図画像上に重ね合わせて表示デバイス15に表示させる。そして、自車両の移動に伴って所定のタイミングで案内情報を表示又は音声で出力し、自車両が目的地までの誘導経路に沿って走行できるように案内する。また、ナビゲーションコンピュータ18は、探索した誘導経路の情報を回生教示コンピュータ19へ入力する。
【0051】
回生教示コンピュータ19は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、回生ブレーキの損失エネルギの発生状況や、回生ブレーキのエネルギ効率を向上させるためのブレーキ操作に関するアドバイス等の情報を運転者に報知するための各種処理を実行する。回生教示コンピュータ19が運転者に対して情報を報知する場面は、走行前、走行中及び走行後に分けられる。運転者に対する情報の報知は、主に音声出力デバイス14や表示デバイス15用いて行い、状況に応じて振動デバイス16や香り発生デバイス17も利用してもよい。なお、走行前、走行中及び走行後の各場面で運転者に対して情報を報知する処理の詳細な内容については後述する。
【0052】
また、回生教示コンピュータ19は、位置検出器10や回生制御コンピュータ20からの入力情報に基づき、走行中の車両の位置、車速、ブレーキの作動状況(例えば、運転者のブレーキ操作に応じて作動した回生ブレーキ及び油圧ブレーキ全体(以下、全ブレーキ)の制動トルクの推移)の推移を一定の時間間隔ごとにサンプリングしたデータをメモリに保存する。
【0053】
回生制御コンピュータ20は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、走行用のバッテリ21、回生ブレーキ用モータ22及び回生ブレーキと併用される油圧ブレーキ23の作動状態を監視・制御し、それらから取得したデータを回生教示コンピュータ19へ出力する。
【0054】
本車両に搭載された回生ブレーキシステムでは、回生ブレーキ用モータ22の発電電力に上限があるものを想定している。そこで、回生制御コンピュータ20は、回生ブレーキ用モータ22の最大発電電力を超えない程度の制動力を要求するブレーキ操作が行われた場合、回生ブレーキのみで制動を行うように制御し、最大発電電力を超えるような制動力を要求するようなブレーキ操作が行われた場合には、回生ブレーキでは不足する制動力を油圧ブレーキに分担させる制御を行う。
【0055】
また、回生制御コンピュータ20は、回生ブレーキ用モータ22及び油圧ブレーキ23が作動したときのそれぞれの制動トルク、及び回生ブレーキ用モータ22で発生した発電電力を取得し、それらのデータを回生教示コンピュータ19へ出力する。
【0056】
なお、ナビゲーションコンピュータ18、回生教示コンピュータ19及び回生制御コンピュータ20は、それぞれが独立したコンピュータ装置によって構成されていてもよいし、1つのコンピュータ装置においてそれぞれのプログラムを実行することで、各部の機能を実現するような構成であっても良い。
【0057】
[学習データ取得処理の説明]
図2は、学習情報データベース13に記憶されている学習データの一例を模式的に示す説明図である。学習データは、所定の学習区間(図2の事例では、区間1,2,3…と表記)ごとに、当該学習区間を1回走行する度にその学習区間内での損失エネルギの発生の有無を「1」又は「0」の1ビットの符号で記録したものである。なお、学習区間内でのブレーキ操作時に損失エネルギが発生した場合には「1」のデータが当該学習区間に対応付けて記録され、損失エネルギが発生しなかった場合には「0」のデータが当該学習区間に対応付けて記録される。
【0058】
この学習データには、1学習区間ごとに8ビット(=1バイト)の情報量が割り当てられており、最も古い走行時のデータを先頭にし、走行順にビットシフトをして最大8走分のデータを蓄積する。そして、1学習区間につき8走分のデータが蓄積された状態で更に同じ学習区間を新たに走行した場合、学習データ全体を左側にビットシフトして、最も古い走行時の走行データを消去し、新たな走行時のデータを学習データの最後尾に追加する。このようにすることで、個々の学習区間ごとに最新の8走分の学習データが常に蓄積されることになる。
【0059】
なお、学習データを蓄積する単位である学習区間として、地点(座標)や、座標範囲、距離範囲、地図データに対応する道路区間(リンク等)等を採用することが考えられる。また、道路区間ごとに学習データを蓄積する場合、例えば、順方向では上り坂、逆方向では下り坂となる道路のように、走行方向による運転特性の変化を反映するために、同一の道路区間について走行方向別にそれぞれ別区間としてもよい。
【0060】
つぎに、図3は、上述の学習データを蓄積するために回生教示コンピュータ19が実行する学習処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両の走行中に常時繰り返し実行される。
【0061】
回生教示コンピュータ19は、まず、現在走行中の学習区間における損失エネルギ情報を算出する(S101)。ここでいう学習区間とは、学習情報データベース13に格納されている学習データ(図2)の記録単位である学習区間に対応するものである。このS101では、損失エネルギ情報として、ブレーキ操作に伴う損失エネルギの有無を算出する。
【0062】
なお、本車両に搭載された回生ブレーキシステムでは、走行用のバッテリ21や充電機器等の性能的な制約により回生可能な瞬間電力に上限(回生限界電力)があるものを想定している。そして、回生ブレーキ用モータ22による発電電力がこの回生限界電力を超えた場合、超過した分のエネルギは熱等に変換されて放出される。この場合、熱として放出された分のエネルギは、回生ブレーキによって回収されなかった損失エネルギに該当する。そこで、回生教示コンピュータ19は、回生制御コンピュータ20から入力されるデータに基づき、回生ブレーキ用モータ22による発電電力と回生限界電力とを比較し、発電電力が回生限界電力を超えた場合、すなわち、発電電力(W)>回生限界電力(W)となった場合に損失エネルギが発生したと判断する。一方、発電電力が回生限界電力以下の場合、すなわち、発電電力(W)≦回生限界電力(W)である場合、損失エネルギは発生していないと判定する。
【0063】
なお、発電電力は、回生ブレーキ用モータ22の出力側の電流・電圧から直接計測してもよいし、下記式1によって算出してもよい。
発電電力(W)=回生ブレーキの制動トルク(Nm)×車速(m/s)÷車輪半径(m) …式1
また、回生限界電力は、回生ブレーキシステムの仕様に基づき予め設定された固定値を用いてもよいし、走行条件やバッテリ21のコンディションに応じて回生制御コンピュータ20が算出するような構成であってもよい。前者の場合、回生限界電力をメモリ等に予め登録しておくことで、これを回生教示コンピュータ19が各種演算に用いることができる。また、後者の場合、その時々の走行条件やバッテリのコンディションに基づいて回生制御コンピュータ20が回生限界電力を随時算出し、これを回生教示コンピュータ19へ出力することで、回生教示コンピュータ19が各種演算に用いることができる。
【0064】
あるいは、油圧ブレーキが作動した場合、油圧ブレーキの作用による制動エネルギは、回生ブレーキによって電気エネルギとして回収されなかった損失エネルギに該当する。そこで、回生教示コンピュータ19は、油圧ブレーキが作動した場合、すなわち、油圧ブレーキの制動トルク(Nm)>0となった場合に損失エネルギが発生したと判断する。一方、油圧ブレーキが作動していない場合、すなわち、油圧ブレーキの制動トルク(Nm)=0である場合、損失エネルギは発生していないと判定する。
【0065】
損失エネルギの有無の判断方法は、回生限界電力を根拠とする前者の方法と、油圧ブレーキの作動状態を根拠とする後者の方法の何れか一方を採用してもよいし、両者の判断方法を併用してもよい。
【0066】
つぎに、S102では、S101で算出した損失エネルギの有無に関する情報をメモリに保存する。ここで記憶した損失エネルギ情報は、現在走行中の学習区間から退出した後、学習情報データベース13における当該学習区間の学習データを更新するまで一時的に保存される。
【0067】
S103では、車両が別の学習区間へ進入したか否かを判定する。別の学習区間へ進入していないと判定した場合(S103:NO)、すなわち、従前の学習区間をまだ走行中であると判定した場合、S101の処理へ戻る。一方、別の学習区間へ進入したと判定した場合(S103:YES)、メモリに保存している損失エネルギ情報を参照し、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していたか否かを判定する(S104)。
【0068】
S104で、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していたと判定した場合(S104:YES)、学習情報データベース13における当該学習区間に対応する学習データに「1」のデータを新たに追加し(S105)、学習処理を終了する。一方、S104で、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していない判定した場合(S104:NO)、学習情報データベース13における当該学習区間に対応する学習データに「0」のデータを新たに追加し(S106)、学習処理を終了する。
【0069】
[走行前報知処理の説明]
つぎに、回生教示コンピュータ19が、学習情報データベース13の学習データを利用して走行開始前に運転者に情報を報知するための処理について、図4,5に基づき説明する。図4は、回生教示コンピュータ19が実行する走行前報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を開始する前の停車中に実行される。
【0070】
回生教示コンピュータ19は、まず、車両が走行する予定の走行経路の情報を取得する(S201)。ここで取得するのは、ナビゲーションコンピュータ18が算出した現在地から目的地までの誘導経路の情報である。
【0071】
つぎに、S201で取得した走行経路の情報に基づき、学習情報データベース13(図2参照)からこの走行経路が通る学習区間の学習データを取得し(S202)、その取得した学習データの中から、損失エネルギの発生回数が規定値以上の学習区間(以下、損失エネルギ発生エリアと称する)を抽出する(S203)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間、すなわち、過去8回の走行のうち5回以上の走行で回生ブレーキの損失エネルギが発生した学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。
【0072】
そして、その抽出した損失エネルギ発生エリアの位置を示すマークの画像を、ナビゲーションコンピュータ18が描画する地図画像上の走行経路に重畳して描画し(S204)、走行前報知処理を終了する。なお、学習データが、例えば地点(座標)のように細かな区間ごとに記録されている場合、S204では経路上の代表地点にのみ損失エネルギ発生エリアのマークを表示するように構成してもよい。
【0073】
図5は、上述の走行前報知処理によって、走行前に表示デバイス15に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を模式的に示す説明図である。図5に示すように、地図画像上に、現在地(出発地)から目的地までの走行経路が表示されており、この走行経路上において、過去の走行時のブレーキ操作による損失エネルギの発生状況の学習結果に基づいて特定した損失発生エリアの位置を示すマークが重ねて表示されている。
【0074】
[走行中報知処理の説明]
つぎに、回生教示コンピュータ19が、損失エネルギの発生状況に関する情報を運転者に対して随時報知するための処理について、図6,7に基づき説明する。図6は、回生教示コンピュータ19が実行する走行中報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を開始してから走行を終了するまでの間、繰り返し実行される。
【0075】
回生教示コンピュータ19は、まず、位置検出器10からの検出信号、及び、学習情報データベース13の学習データ(図2参照)に基づき、車両が損失エネルギ発生エリア内に進入したか否かを判定する(S301)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。損失エネルギ発生エリアへ進入していないと判定した場合(S301:NO)、S303の処理へ移行する。一方、損失エネルギ発生エリアへ進入したと判定した場合(S301:YES)、損失エネルギ発生エリアへ進入したことを音声にて運転者に対して報知し(S302)、S303の処理へ移行する。
【0076】
つぎに、S303では、運転者によるブレーキ操作が行われているか否かを判定する。ブレーキ操作が行われていないと判定した場合(S303:NO)、S301の処理へ戻る。一方、ブレーキ操作が行われていると判定した場合(S303:YES)、回生ブレーキ及び油圧ブレーキの作動状況に基づいて回生ブレーキによる制動エネルギの回収状況及び損失エネルギの発生状況を示す回生メータを表示するための情報を計算する(S304)。そして、S304で計算した情報に基づき、回生メータ(図7参照)を表示デバイス15に表示する(S305)。
【0077】
ここで、S304及びS305における回生メータの表示方法の詳細について説明する。図7は、回生メータの表示例を模式的に示す説明図である。この回生メータには、縦方向に一列に並んだ8つのインジケータが描画されており、このインジケータの点灯数によって回生レーキによる制動エネルギの回収状況及び損失エネルギの発生状況を運転者に通知することができる。具体的には、運転者のブレーキ操作に応じて作動した全ブレーキの制動仕事率の大きさに比例して、インジケータが下側から順に点灯するようになっている。ちなみに、図7では、下から5つ目までのインジケータが点灯している状態を示している。
【0078】
また、下から4つ目までのインジケータの点灯分は、回生限界電力を超えない範囲で回生ブレーキが制動を担っている分の比率を示している。つまり、インジケータの点灯数が4以下である場合、損失エネルギは発生していないことになる。一方、下から5つ目以降のインジケータの点灯分は、全ブレーキの制動仕事率のうち回生ブレーキの回生限界電力を超えた分の比率を示している。つまり、インジケータの点灯数が5以上である場合、回生ブレーキ用モータ22の発電電力が回生限界電力を超えていたり、油圧ブレーキが作動している状態であり、損失エネルギが発生していることになる。
【0079】
回生メータのインジケータの点灯数は、下記式2,3で算出されるメータレベルに基づいて決定する。
メータレベル=全ブレーキの制動仕事率(W)÷(回生限界電力(W)÷4) …式2
ただし、
全ブレーキの制動仕事率(W)=全ブレーキの制動トルク(Nm)×車速(m/s)÷車輪半径(m) …式3
上記式(2)で算出したメータベルの値を四捨五入により端数処理し、端数処理したメータレベルの値から、下記の表1で示すとおりに回生メータ内のインジケータの描画内容を決定する。
【0080】
【表1】
図6のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S306では、現在損失エネルギが発生中であるか否かを判定する。ここで、損失エネルギ発生の有無を判定する方法としては、上述の学習データ取得処理(図3参照)で行うのと同様の方法であってもよいし、S304における計算結果に基づいて、メータレベルが5以上である場合に損失エネルギが発生していると判定してもよい。
【0081】
ここで、損失エネルギが発生していないと判定した場合(S306:NO)、S308へ移行する。一方、損失エネルギが発生していると判定した場合(S306:YES)、損失エネルギが発生中であることを通知するため音声又は信号音を出力する(S307)。あるいは、音声による情報の報知の変わりに、振動デバイス16を用いて、損失エネルギが発生中であることを通知するための特定の振動パターンを発生してもよいし、香り発生デバイス17を用いて、損失エネルギが発生中であることを通知するための特定の香料を運転者へ向けて射出してもよい。
【0082】
つぎに、S308では、一連のブレーキ操作が終了したか否かを判定する。ここでは、サンプリングしているブレーキの制動トルクが正の値から0に変化した瞬間をブレーキ操作終了と判定する。ブレーキ操作が継続中であると判定した場合(S308:NO)、S304の処理へ戻る。以降、ブレーキ操作が継続している間、S304〜S308の処理を順次繰り返すことで、ブレーキ操作中における損失エネルギの発生状況に関する情報報知を継続する。そして、S308でブレーキ操作が終了したと判定した場合(S308:YES)、当該ブレーキ操作中において損失エネルギが発生していたか否かを判定する(S309)。ここでは、ブレーキ操作中における回生メータのメータレベルの最大値が4以下であった場合に損失エネルギが発生しなかったと判定し、メータレベルの最大値が5以上であった場合に損失エネルギが発生したと判定する。
【0083】
S309で、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生しなかったと判定した場合(S309:NO)、そのブレーキ操作が良好であったという判定結果を通知するための音声又は信号音を出力し(S310)、S301の処理へ戻る。一方、S309で、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生したと判定した場合(S309:YES)、そのブレーキ操作が不良であったという判定結果を通知するための音声又は信号音を出力し(S311)、S301の処理へ戻る。あるいは、音声によってブレーキ操作の良否判定結果を報知する変わりに、振動デバイス16を用いて、ブレーキ操作の良否に応じて異なる振動パターンを発生してもよいし、香り発生デバイス17を用いて、ブレーキ操作の良否に応じて異なる種類の香料を運転者へ向けて射出してもよい。また、ブレーキ操作の良否の判定結果を示すシンボルマーク等を表示デバイス15に表示してもよい。
【0084】
なお、上述の走行中報知処理においては、更に下記のような変形例を採用してもよい。
(1)S302で損失エネルギ発生エリアへ進入したことを運転者へ報知する際、車両の速度に応じて報知タイミングの早遅を変更するように構成してもよい。例えば、車両の速度が比較的速い場合には、車両が損失エネルギ発生エリアへ進入する手前の位置で損失エネルギ発生エリアへ進入する旨を事前に運転者に報知する。このようにすることで、十分な余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができるようになると考えられる。反対に、車両の速度が比較的遅い場合には、報知のタイミングが多少遅くとも、運転者は余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができると考えられるため、車両が損失エネルギ発生エリアへ進入してから損失エネルギ発生エリアへ進入した旨を運転者に報知する。
【0085】
(2)S306及びS307においては、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生しているときのみ、その旨を報知するようになっている。このようにする代わりに、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生していない場合(S306:NO)には、ブレーキ操作が良好である旨の判定結果を報知し、損失エネルギが発生している場合(S306:YES)には、ブレーキ操作が不良である旨の判定結果を報知するように構成してもよい。
【0086】
(3)S302,S305,S307,S310,S311の各処理において、車両の走行中に運転者に情報を報知する場合、車両の周辺状況に応じて報知の実施を制限してもよい。具体的には、車両周辺センサ11からの入力信号に基づき、自車両と自車両周辺の障害物とが近接状態であると判定した場合、走行中における回生ブレーキに関する情報の報知を中止又は抑制する。このようにすることで、自車両と近接状態にある障害物に対する運転者の注意の妨げとならないので好適である。
【0087】
[走行後報知処理の説明]
つぎに、走行終了後の場面において、回生教示コンピュータ19が、走行中の損失エネルギの発生状況に関する情報を運転者に対して報知するための処理について、図8〜11に基づいて説明する。図8は、回生教示コンピュータ19が実行する走行後報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を終了した後の停車中に実行される。
【0088】
回生教示コンピュータ19は、まず、車両が実際に走行した経路の情報に基づき、学習情報データベース13(図2参照)からこの走行経路が通る学習区間の学習データを取得する(S401)。そして、その取得した学習データの中から、損失エネルギの発生回数が規定値以上の損失エネルギ発生エリアを抽出する(S402)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間、すなわち、過去8回の走行のうち5回以上の走行で回生ブレーキの損失エネルギが発生した学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。
【0089】
そして、その抽出した損失エネルギ発生エリアの位置を示すマークの画像を、ナビゲーションコンピュータ18が表示デバイス15に表示する地図画像上の走行経路に重畳して描画する(S403)。
【0090】
図9は、上述の走行後報知処理のS403において表示デバイス15に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を模式的に示す説明図である。図9に示すように、地図画像上に、出発地から現在地(目的地)までの実際の走行経路が表示されており、この走行経路上において、過去の走行時のブレーキ操作による損失エネルギの発生状況の学習結果に基づいて特定した損失発生エリアの位置を示すマークが重ねて表示されている。
【0091】
図8のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S404では、画面を遷移させる要求がユーザから入力されたか否かを判定する。ここでは、画面を遷移させる要求がなされるまでの間(S404:NO)、処理を繰り返す。そして、画面を遷移させる要求が入力されたと判定した場合(S404:YES)、走行中に記録したブレーキの作動状況のサンプリングデータから、ブレーキの作動状況のグラフとして表示用のサンプルとなる1回分のブレーキ操作のデータを抽出する(S405)。ここでは、サンプリングされた各ブレーキ操作の中から、損失エネルギの発生度合いが最も高いと推測されるブレーキ操作を表示用のサンプルに選択する。具体的には、サンプリングされた個々のブレーキ操作について、下記式4で示される判定値をそれぞれ算出し、その判定値が最大となるブレーキ操作を選択する。
【0092】
判定値=ブレーキ作動時間(s)×制動仕事率の最大値(W) …式4
つぎに、S405で抽出したブレーキ操作のサンプルデータに基づき、このサンプルのブレーキ操作における制動仕事率の時間的推移を示すグラフと、回生限界電力を超えないでサンプルのブレーキ操作と同等の減速が得られる理想的なブレーキ操作の制動仕事率の時間的推移を示すグラフとを計算する(S406)。ここでは、サンプルデータのブレーキ操作に対応するグラフを下記式5で示す関数を用いて近似計算し、理想的なブレーキ操作に対応するグラフを下記式6で示す関数を用いて近似計算する。なお、式5,6の関数における変数xは時間(s)であり、変数yは制動仕事率(W)である。
【0093】
〈サンプルのブレーキに対応するグラフ描画関数〉
y=−{max#regen/(brake#time/2)2}×[x−{ideal#brake#time−(brake#time/2)}]+max#regen …式5
〈理想的なブレーキに対応するグラフ描画関数〉
y=−{ideal#regen/(ideal#brake#time/2)2}×{x−(ideal#brake#time/2)}+ideal#regen …式6
なお、上記式5,6で用いられている定数の定義は下記表2で示すとおりである。
【0094】
【表2】
つぎに、S406で計算したサンプルのブレーキのグラフ、及び理想的なブレーキのグラフに基づき、ブレーキグラフウィンドウ(図10参照)を描画し、表示デバイス15に表示する(S407)。ここでは、縦軸(y軸)を制動仕事率(W)、横軸(x軸)を時間(s)にとったグラフをブレーキグラフウィンドウ上に描画する。グラフの横軸の描画範囲は、0から、サンプルのブレーキの作動時間(brake#time)又は理想のブレーキの作動時間(ideal#brake#time)の何れか長い方までとする。また、縦軸の描画範囲は、0から、サンプルのブレーキにおける制動仕事率の最大値(max#regen)又は回生限界電力(ideal#regen)の何れか大きい方までとする。
【0095】
さらに、ブレーキグラフウィンドウ内には、サンプルのブレーキの作動時間(brake#time)と、理想的なブレーキの作動時間(ideal#brake#time)とを表示する。また、運転者に対してブレーキ操作に関するアドバイスをするためのメッセージも表示する。このメッセージは、例えば、サンプルのブレーキにおける制動仕事率の最大値と回生限界電力との大小関係や、ブレーキの作動時間と理想的なブレーキの作動時間との大小関係に応じて、予め用意したメッセージの中から適当なものを選択して表示することが考えられる。
【0096】
図10は、ブレーキグラフウィンドウの表示例を模式的に示す説明図である。図10に示すように、ブレーキグラフウィンドウには、「あなたのブレーキ操作」と題してサンプルのブレーキのグラフと、「理想のブレーキ操作」と題して理想的なブレーキのグラフとが互いに比較可能に描画されている。なお、このグラフでは、サンプルのブレーキの作動時間の終端と、理想的なブレーキの作動時間の終端とが一致するように描画されている。これにより、運転者のブレーキ操作が理想的なブレーキ操作と比較して早めであるか遅めであるかが瞭然となる。さらに、グラフにおいて回生限界電力のレベルにラインを設けることで、サンプルのブレーキにおいてどの程度の損失エネルギが発生したのかも瞭然となる。
【0097】
また、ブレーキグラフウィンドウの左側には、「あなたのブレーキ操作時間」と題してサンプルのブレーキの作動時間(brake#time)が表示され、同じく「理想的なブレーキ操作時間」と題して理想的なブレーキの作動時間(ideal#brake#time)が表示されている。さらに、ブレーキグラフウィンドウの下側には「今日のアドバイス」と題して、「気持ち早めにブレーキを踏みましょう。」とのメッセージが表示されている。このメッセージは、サンプルのブレーキの作動時間が、理想的なブレーキ操作に必要な時間と比較して短いことを反映したものである。
【0098】
図8のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S408では、画面を遷移させる要求がユーザから入力されたか否かを判定する。ここでは、画面を遷移させる要求がなされるまでの間(S408:NO)、処理を繰り返す。そして、画面を遷移させる要求が入力されたと判定した場合(S408:YES)、走行中に記録したブレーキの作動状況のサンプリングデータから、実際に回収した回生電力量と理想的な回生電力量とを所定の区間別に算出する(S409)。なお、理想的な回生電力量とは、運転者のブレーキ操作に係る制動エネルギが全て電気エネルギとして回生されたと仮定した場合の電力量である。また、回生電力量を計算する対象となる所定の区間としては、一定の走行距離ごと、一定の時間ごと、あるいは地図データに対応する道路区間(リンク等)等を採用することが考えられる。
【0099】
実際に回収した回生電力量と理想的な回生電力量とを下記式7,8,9によって計算する。なお、下記式8,9における記号Σは、計算対象の区間に該当の個々のサンプル値に関する計算結果を合計するという意味である。
【0100】
〈実際に回収した回生電力量〉
全ブレーキの制動仕事率のサンプル値(W)=全ブレーキの制動トルクのサンプル値(Nm)×車速のサンプル値(m/s)÷車輪の半径(m) …式7
回生電力量(kws)=Σ(回生電力のサンプル値(W)×サンプリング時間間隔(s))/1000 …式8
ただし、回生電力のサンプル値には、上記式7による制動仕事率のサンプル値の計算結果を下記表3に示すとおりに変換した値を用いる。
【0101】
【表3】
〈理想的な回生電力量〉
理想的な回生電力量(kws)=Σ(全ブレーキの制動仕事率のサンプル値(W)×サンプリング時間間隔(s))/1000 …式9
つぎに、S409で計算した区間ごとの実際の回生電力量及び理想的な回生電力量に基づき、回生電力量グラフウィンドウ(図11参照)を描画し、表示デバイス15に表示する(S410)。ここでは、縦軸を回生電力量(W)、横軸を区間の推移にとったグラフを回生電力量グラフウィンドウ上に描画する。グラフの横軸の描画範囲は、運転開始から運転終了までの全区間とする。また、運転者に対してブレーキ操作に関するアドバイスをするためのメッセージも表示する。このメッセージは、例えば、実際の回生電力量と理想的な回生電力量との差の大小に応じて、予め用意したメッセージの中から適当なものを選択して表示することが考えられる。
【0102】
図11は、回生電力量グラフウィンドウの表示例を模式的に示す説明図である。図11に示すように、回生電力量グラフウィンドウには、「エリア1」,「エリア2」…と区分けされた個々の区間ごとに、当該区間に対応する理想的な回生電力量(理想値)と実際の回生電力量(実測値)とが並べて表示されている。これにより、運転者のブレーキ操作によって、どの区間でどの程度の損失エネルギが発生しているのかが瞭然となる。
【0103】
また、回生電力量グラフウィンドウの下側には、「今日のアドバイス」と題して、「もっと早めにブレーキを踏みましょう。」とのメッセージが表示されている。このメッセージは、実際の回生電力量が理想的な回生電力量に比べて少なくなっていることを反映したものである。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態の回生ブレーキ教示システムの構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応関係は下記のとおりである。回生教示コンピュータ19及び回生制御コンピュータ20が、損失情報導出手段に相当する。また、回生教示コンピュータ19が、報知制御手段、損失情報記録手段、ブレーキ操作情報記録手段、回生電力量算出手段及び総制動エネルギ算出手段に相当する。また、位置検出器10が位置取得手段に相当する。また、学習情報データベース13が学習情報記憶手段に相当する。また、ナビゲーションコンピュータ18が走行経路取得手段に相当する。また、車両周辺センサ11が周辺状況取得手段に相当する。
【0105】
[効果]
上記実施形態の回生ブレーキ教示システムによれば、下記のような効果を奏する。
場所ごとの損失エネルギの発生状況を学習データとして統計的に蓄積し、その蓄積した学習データを利用して損失エネルギ発生エリアに関する情報を報知することができる。これにより、運転者は、自身の運転によってどの場所を走行しているときに損失エネルギを発生させ易いのかを知ることができ、以降、その場所を走行する際に効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギ発生エリア以外の地域については、それまでどおりの運転で回生ブレーキを十分効率的に利用できていると知ることもできる。
【0106】
例えば、移動予定の経路を加味して、走行を開始する事前に走行経路上における損失エネルギ発生エリアを地図上に表示することができる。このようにすることで、これから走行しようとする経路上のどの場所において損失エネルギを発生させ易いのかを事前に運転者に報知することができる。これにより、走行予定の経路に沿って車両を運転する運転者に対して、効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギ発生エリアの情報を走行予定の経路上に絞った範囲で表示するので、運転者にとって無用な情報を報知することがなく、好適である。
【0107】
また、走行中において損失エネルギ発生エリアへの進入を運転者に対して報知できる。このようにすることで、運転者は、これから損失エネルギを発生させやすい場所を走行することをタイムリーに知ることができる。そして、運転者は、その場所を走行する際に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。このように、走行中に車両の現在地に基づくタイムリーな情報提供を行うことで、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が見込まれる。
【0108】
また、走行終了後に、それまで走行してきた経路上に分布する損失エネルギ発生エリアを地図上に表示できる。このようにすることで、運転者は、走行終了後に、今回走行した経路上のどの場所で損失エネルギが発生しやすかったかを的確に把握することができ、自身のブレーキ操作の実態を省みる契機となる。そして、運転者は、自身のブレーキ操作の実態を省みることで、次回からの走行時に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。
【0109】
ブレーキ操作中に、現に損失エネルギが発生していることをフィードバックして報知することができる。このようにすることで、運転者は、現に操作中のブレーキによって損失エネルギが発生しているのか否かを具に知ることができる。したがって、運転者は、自身が回生ブレーキを効率的に使用しているのか否かを直接的に理解できるようになり、どの程度のブレーキ操作であれば損失エネルギを発生させないで済むのかを体験的に学習し易くなる。つまり、運転者に対して効率的なブレーキ操作を意識付けるだけでなく、回生ブレーキを効率的に利用する技能の向上も期待できる。
【0110】
また、運転者によるブレーキ操作終了直後に、当該ブレーキ操作中における損失エネルギの発生の有無に基づいてブレーキ操作の巧拙の評価を報知することができる。このようにすることで、そのブレーキ操作に対する全体的な評価を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0111】
走行中に収集したブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、実際のブレーキ操作のグラフと、当該ブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作のグラフとを比較可能な態様で表示できる。このようにすることで、走行終了後に、運転者に対して走行中のブレーキ操作の内容を確認させることができる上に、理想的なブレーキ操作と比較可能にすることで、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより具体的にアドバイスできる。
【0112】
走行中に収集したブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、走行中に回収できた回生電力量と理想的な回生電力量(すなわち、理論上回収可能な最大の電力量)とを比較可能な態様で表示することができる。このようにすることで、運転者は、自身のブレーキ操作においてどの程度の省エネルギを達成できたのかをより具体的に知ることができる。よって、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0113】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
【0114】
上記実施形態においては、学習情報データベース13に記憶される学習データ(図2参照)の記録方法として、学習区間への進入時から退出時までの損失エネルギの発生の有無を走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録する方法を採用している。このような方法以外にも、学習区間への進入時から退出時までの損失エネルギの発生回数を走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録するようにしてもよい。
【0115】
あるいは、学習区間への進入時から退出時までのブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、損失エネルギの電力量を計算し、これを走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録するようにしてもよい。
【0116】
さらに、予め学習済みの損失エネルギの発生回数と新たな損失エネルギの発生回数の平均値、もしくは移動平均値を算出し、これを記憶してもよい。あるいは、予め学習済みの損失エネルギの電力量と新たな損失エネルギの電力量の平均値、もしくは移動平均値を算出し、これを記憶してもよい。あるいは、損失エネルギの電力量を算出するために必要なパラメータ(例えば、油圧ブレーキの制動トルク等)の平均値、もしくは移動平均値を記憶してもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…位置検出器、11…車両周辺センサ、12…地図データベース、13…学習データ、14…音声出力デバイス、15…表示デバイス、16…振動デバイス、17…香り発生デバイス、18…ナビゲーションコンピュータ、19…回生教示コンピュータ、20…回生制御コンピュータ20、21…バッテリ、22…回生ブレーキ用モータ、23…油圧ブレーキ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキシステムによるエネルギの得失に関する情報を運転者に対して報知する車載用報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や二次電池を動力源とする電気自動車、あるいはそれら以外の一部の自動車において、回生ブレーキシステムを搭載したものが実用化している。回生ブレーキシステムは、通常は動力源として使用しているモータを発電機して作動させることで車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、その発電抵抗で車両に制動をかけるブレーキシステムの一種である。自動車に用いられる回生ブレーキシステムでは、制動時にモータで発生した電力によって車両に搭載された蓄電池を充電してエネルギを再利用することができるので、従来の機械式ブレーキのみを搭載した自動車と比較して省燃費を実現できる。
【0003】
自動車に用いられる回生ブレーキシステムでは、車両に搭載された蓄電池や充電機器等の性能的な制約により、回生可能な瞬間電力に上限(以下、回生限界電力とも称する)がある。このため、回生ブレーキ作動時におけるモータの発電電力がこの回生限界電力を超えた場合、超過した分のエネルギは熱等に変換されて廃棄されてしまい、電気エネルギとして回収できない。
【0004】
また、回生ブレーキに用いられるモータはある回転速度で発電電力が最大となり、そこで制動力がピークとなるため、回生ブレーキで得られる制動力には限界がある。そこで、自動車では、回生ブレーキだけでは不足する制動力を補うために、回生ブレーキと、摩擦力で制動をかける機械式ブレーキ(例えば、油圧ブレーキ等)とを併用するのが一般的である。
【0005】
そのため、運転者が強いブレーキを要求するブレーキ操作を行うと、回生ブレーキだけでは不足する制動力を補うため、機械式ブレーキが回生ブレーキと同時に作動することになる。このような場合、ブレーキ操作によって減少した運動エネルギのうち、機械式ブレーキにより減少した分のエネルギは摩擦熱として放出されてしまい、電気エネルギとして回収できない。
【0006】
つまり、モータの発電電力が回生限界電力を超えたり、モータの最大発電電力を超えたりするような強力な制動力を要するブレーキ操作は、電気エネルギとして回収できない損失エネルギを生じさせるため、回生ブレーキによるエネルギ効率を低下させる要因となる。
【0007】
一方、回生ブレーキによるエネルギ効率を向上させるための技術として、特許文献1に記載のような車両用運転支援装置が知られている。特許文献1に記載の車両用運転支援装置では、地図データベースから要減速地点の地図情報を抽出し、この抽出した要減速地点の地図情報に基づいて、その要減速地点での目標車速を設定し、現在の車速から設定された目標車速まで回生ブレーキのみで減速する場合に必要な減速距離を算出する。そして、要減速地点から減速距離分手前に位置する地点に車両が到達した時点でブレーキ操作の開始をするように案内する。このようにすることで、回生ブレーキのみで減速可能な効率的なブレーキ操作を運転者に対して促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−221889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用運転支援装置では、以下のような課題を解決することができない。
回生ブレーキに関する案内の対象となる要減速地点は、地図情報によって予め定義された一時停止やカーブ、交差点といった特定地点のみである。しかし、それ以外の場所では回生ブレーキに関する案内は行われず、運転者に対して効率的なブレーキ操作を促すことができない。また、一時停止やカーブ、交差点に備えて減速のために要する距離は、運転者ごとの運転特性によって異なる。このため、運転者の運転特性を考慮して回生ブレーキに関する案内をしなければ、回生ブレーキによるエネルギ効率の更なる向上は期待できない。
【0010】
また、ブレーキ操作の事前に運転者に対してブレーキ操作を促すフィードフォワード方式によって情報を報知するのみであり、実際に行われたブレーキ操作の結果が良かったのか、悪かったのかを運転者に通知することは考慮されていない。そのため、ブレーキ操作の実態が運転者にフィードバックされず、運転者に効率的なブレーキ操作を意識付けるという効果に乏しく、回生ブレーキによるエネルギ効率の更なる向上は期待できない。
【0011】
また、運転者の運転特性を考慮せず、地図情報によって予め定義された特定地点でのみ回生ブレーキに関する案内を行っている。そのため、たとえ運転者自らが回生ブレーキを効率的に利用するように気をつけている場所であっても、地図情報によって予め定義された特定地点であれば回生ブレーキに関する案内が行われることになり、運転者にとって煩わしい。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、車両の運転者に対して回生ブレーキの効率的な利用を促す情報をより効果的に報知するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載用報知装置は、運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する損失情報導出手段と、損失情報導出手段によって導出された損失情報に基づき、損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を車両に搭載された報知手段を介して運転者に報知する報知制御手段とを備えることを特徴とする。なお、ここでいう損失情報とは、回生ブレーキによって回収できなかった損失エネルギの値や、損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの値を算出することのできる物理量(例えば、回生ブレーキと併用する機械式ブレーキのトルクや、ブレーキ全体の制動仕事率と回生限界電力との差分)等の種々のものを採用できる。
【0014】
そして、運転者のブレーキ操作によって実際に発生した損失エネルギに基づく情報を運転者に対して報知することで、ブレーキ操作の実態を運転者にフィードバックすることができる。これにより、運転者は自身のブレーキ操作によって損失エネルギが発生したことを的確に把握することができる。このように、本発明の車載用報知装置によれば、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより強く意識付けることができ、運転者の運転特性を反映した態様にて回生ブレーキの効率的な利用を促すことができる。
【0015】
ところで、個々の運転者の運転特性に着目した場合、走行する場所ごとに損失エネルギを発生させ易かったり、発生させ難かったりといった具合に、運転特性に応じて場所ごとの損失エネルギの発生度合いが異なると考えられる。つまり、運転者の運転特性をより的確に把握して回生ブレーキの効率的な利用を促すには、場所ごとの損失エネルギの発生状況を統計的に学習し、その学習した統計情報に基づいて情報の報知を行うのが効果的である。
【0016】
そこで、請求項2に記載の車載用報知装置のように構成するとよい。すなわち、損失情報記録手段は、位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失情報導出手段により導出した損失情報を、その損失情報に係る損失エネルギが発生した地理範囲に対応付けて学習情報記憶手段に統計的に記録する。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報に基づき、地理範囲ごとにおける損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0017】
このように構成することで、運転者は、自身の運転によってどの場所を走行しているときに損失エネルギを発生させ易いのかを知ることができ、以降、その場所を走行する際に効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギを発生させていない地域については、それまでどおりの運転で回生ブレーキを十分効率的に利用できていると知ることもできる。このように、本発明の車載用報知装置によれば、場所ごとの運転特性を考慮した態様にて回生ブレーキの効率的な利用を促すことができる。
【0018】
さらに、車両が移動する予定の経路が取得可能であるならば、その移動予定の経路を加味して損失エネルギの発生度合いに関する情報を報知するように構成してもよい。そこで、請求項3のように構成することが考えられる。すなわち、車載用報知装置は、車両の移動予定の経路に関する経路情報を取得する経路取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、経路取得手段により取得した経路情報に基づき、移動予定の経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0019】
なお、ここでいう「車両の移動予定の経路に関する経路情報」というのは、例えば、利用者によって設定された出発地点から目的地点までの情報に基づいて算出された誘導経路情報が考えられる。
【0020】
このように構成することで、場所ごとの損失エネルギの発生状況を学習した結果に基づき、これから走行しようとする経路上のどの場所において損失エネルギを発生させ易いのかを事前に運転者に報知することができる。これにより、走行予定の経路に沿って車両を運転する運転者に対して、効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、場所ごとの損失エネルギの発生状況を、走行予定の経路上に絞った範囲で報知するので、運転者にとって無用な情報を報知することがなく、好適である。
【0021】
あるいは、車両の現在地を取得可能であるならば、車両の現在地に基づいて損失エネルギの発生度合いに関する情報を走行中において適時に報知するように構成してもよい。そこで、請求項4のように構成することが考えられる。すなわち、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際、その旨を運転者に対して報知する。
【0022】
このように構成することで、運転者は、これから損失エネルギを発生させやすい場所を走行することをタイムリーに知ることができる。そして、運転者は、その場所を走行する際に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。このように、走行中に車両の現在地に基づくタイムリーな情報提供を行うことで、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が見込まれる。
【0023】
なお、請求項4に記載のように、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際に行う情報の報知のタイミングを、車両の速度の高低度合い応じて変更するように構成してもよい。
【0024】
例えば、車両の速度が比較的速い場合、ブレーキ操作時に損失エネルギを発生させないようにするためには、速度が比較的低い場合と比べてより手前の位置から慎重にブレーキ操作を行う必要がある。そこで、車両の速度が比較的速い場合には、より手前の位置から損失エネルギの発生度合い場所へ進入する旨を運転者に報知するといった対処をすることで、十分な余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができるようになると考えられる。反対に、車両の速度が比較的遅い場合には、報知のタイミングが多少遅くとも、運転者は余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができると考えられる。
【0025】
このように、車両の速度の高低度合い応じて、損失エネルギの発生度合い場所へ進入する旨を報知するタイミングの早遅を変更可能に構成することで、車両の速度の応じた適切なタイミングで運転者に対して情報の報知を行うことができるようになる。
【0026】
さらに、走行開始から走行終了までの期間に発生した損失エネルギに関する情報を、走行終了後に運転者にフィードバックするような構成であってもよい。具体的には、請求項6に記載のように構成するとよい。すなわち、車載用報知装置は、車両が実際に走行した経路に関する走行経路情報を取得する走行経路取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、学習情報記憶手段に記憶されている情報と、走行経路取得手段により取得した走行経路情報に基づき、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間に走行した経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知する。
【0027】
このように構成することで、運転者は、走行終了後に、今回走行した経路上のどの場所でどの程度損失エネルギが発生したことを的確に把握することができ、自身のブレーキ操作の実態を省みる契機となる。そして、運転者は、自身のブレーキ操作の実態を省みることで、次回からの走行時に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。
【0028】
ところで、運転者の運転特性を反映して損失エネルギに関する情報を報知する手法としては、運転者のブレーキ操作によって現に損失エネルギが発生していることをフィードバックすることも考えられる。具体的には、請求項6に記載のように構成するとよい。すなわち、報知制御手段は、損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの発生度合いを示す情報を運転者に対して報知する。
【0029】
このようにすることで、運転者は、現に操作中のブレーキによって損失エネルギが発生しているのか否かを具に知ることができる。したがって、運転者は、自身が回生ブレーキを効率的に使用しているのか否かを直接的に理解できるようになり、どの程度のブレーキ操作であれば損失エネルギを発生させないで済むのかを体験的に学習し易くなる。つまり、運転者に対して効率的なブレーキ操作を意識付けるだけでなく、回生ブレーキを効率的に利用する技能の向上も期待できる。
【0030】
さらに、請求項8に記載のように、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知するように構成してもよい。このようにすることで、単に損失エネルギの発生の有無を報知するだけよりも、ブレーキ操作の実情を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0031】
また、請求項9に記載のように、運転者によるブレーキ操作終了後に、当該ブレーキ操作による損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知するように構成してもよい。このようにすることで、そのブレーキ操作に対する全体的な評価を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0032】
ところで、車両の走行中においては、回生ブレーキの効率的な利用に運転者の意識を向けさせるよりも、車両の周辺状況に対して優先的に運転者の意識を向けさせるべき状況であることも考えられる。そのような状況では、回生ブレーキに関する情報の報知を抑制することで、車両の周辺状況に対する運転者の注意の妨げにならないようにするといった配慮をするのが好ましい。そこで、請求項10に記載のように構成するとよい。すなわち、車載用報知装置は、車両の周辺の障害物の存在状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況取得手段を更に備える。そして、報知制御手段は、周辺状況取得手段により取得した周辺状況情報に基づき、走行中に車両と障害物とが所定の接近状態である場合、走行中における損失エネルギに関する情報の報知を行わないように制御する。
【0033】
このように構成することで、走行中の車両が他の車両や地物等の障害物と接近状態にある場合、その障害物に対する運転者の注意の妨げとならないように、走行中における情報の報知を抑制でき、好適である。
【0034】
つぎに、請求項11に記載の車載用報知装置は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間にブレーキ操作情報記録手段により記録したデータに基づき、運転者によるブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、その算出した情報を運転者に報知することを特徴とする。このように構成することで、走行終了後に、運転者に対して走行中のブレーキ操作の内容を確認させることができ、効率的なブレーキ操作を意識付けることができるようになり、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が期待できる。
【0035】
さらに、走行後にブレーキ操作の内容を報知する場合、請求項12に記載のように構成してもよい。すなわち、報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間にブレーキ操作情報記録手段により記録したデータと、回生ブレーキシステムで回生可能な最大電力である限界回生電力とに基づき、実際のブレーキ操作によって得られた制動を制動仕事率が限界回生電力を越さないように達成するための理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出する。そして、運転者による実際のブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報と、そのブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報とを対比可能な態様にて運転者に報知する。
【0036】
このように、運転者による実際のブレーキ操作の状況と、その実際のブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作とを比較可能な態様で報知にすることで、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより具体的にアドバイスできる。
【0037】
つぎに、請求項13に記載の車載用報知装置は、走行開始から走行終了までの期間に回生ブレーキシステムにより回生された回生電力量を算出し、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間における回生電力量に関する情報を運転者に報知することを特徴とする。このように、走行中に実際に回生された電力量を運転者に提示することで、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより一層高められると考えられ、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が期待できる。
【0038】
さらに、走行後に回生ブレーキによる回生電力量を報知する場合、請求項14に記載のように構成してもよい。すなわち、車載用報知装置は、走行開始から走行終了までの期間に運転者によって行われたブレーキ操作による制動エネルギの総量を算出する総制動エネルギ算出手段を更に備える。そして、報知制御手段は、走行終了後に、回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量と、総制動エネルギ算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における総制動エネルギとを対比可能な態様にて運転者に報知する。
【0039】
このように、走行中における実際の回生電力量と、走行中に発生した総制動エネルギ(すなわち、理論上回収可能な最大の電力量)とを比較可能な態様にて運転者に提示することで、運転者は、自身のブレーキ操作においてどの程度の省エネルギを達成できたのかをより具体的に知ることができる。これにより、実際の回生電力量だけを提示する場合と比べて、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0040】
さらに、請求項15及び請求項16に記載のように、走行開始から走行終了までの期間における回生電力量や制動エネルギの総量を、所定の区間ごとに表示するように構成してもよい。これにより、運転者は回生電力量や総制動エネルギの発生状況を区間ごとに詳細に知ることができるようになり、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0041】
ところで、本発明の車載報知装置においては、運転者に対して情報を伝達する方法として、運転者の視覚、聴覚、触覚、嗅覚等の種々の感覚に作用することで情報伝達を行う手法を採用できる(請求項17)。
【0042】
なお、運転者の視覚に作用するものとしては、例えば、ディスプレイや表示灯等による表示が考えられる。また、運転者の聴覚に作用するものとしては、例えば、スピーカから言語音や信号音を出力するものが考えられる。また、運転者の触覚に作用するものとしては、例えば、車両内で運転者と接触している部位で圧力や振動を発生させるものが考えられる。また、嗅覚に作用するものとしては、例えば、情報の報知タイミングにおいて特定の香りを運転者の顔面付近に吹き付ける形態のものが考えられる。
【0043】
特に、触覚や嗅覚に作用する情報伝達では、視覚(表示)や聴覚(音声)による情報伝達と比較して、運転者に対して伝達できる情報の内容は限定的であると考えられる。しかしながら、触覚や嗅覚に対する作用パターンと、その作用パターンに対応する情報内容とを運転者が予め理解していれば、実用に十分な程度の情報伝達が可能である。また、運転中において視覚によらない情報の伝達方法を用いることで、運転者の運転負担を軽減することができるといったメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態の回生ブレーキ教示システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】学習データの一例を示す説明図である。
【図3】学習処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】走行前報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】走行前に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を示す説明図である。
【図6】走行中報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】回生メータの表示例を示す説明図である。
【図8】走行後報知処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】走行後に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を示す説明図である。
【図10】ブレーキグラフウィンドウの表示例を示す説明図である。
【図11】回生電力量グラフウィンドウの表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[回生ブレーキ教示システムの構成の説明]
図1は、実施形態の回生ブレーキ教示システムの概略構成を示すブロック図である。
【0046】
本実施形態の回生ブレーキ教示システムは、回生ブレーキシステムを備える車両に搭載される車載用報知装置である。図1に示すように、回生ブレーキ教示システムは、位置検出器10と、車両周辺センサ11と、地図データベース12と、学習情報データベース13と、音声出力デバイス14と、表示デバイス15と、振動デバイス16と、香り発生デバイス17と、ナビゲーションコンピュータ18と、回生教示コンピュータ19と、回生制御コンピュータ20とを備える。
【0047】
位置検出器10は、GPS(Global Positioning System)衛星からの送信信号を受信し、車両の位置座標や高度を検出するGPS受信機や、車両に加えられる回転運動の角速度に応じた検出信号を出力するジャイロスコープ、車両の速度に応じた検出信号を出力する車速センサ等を備えている。そして、これらの各センサからの出力信号に基づいて、ナビゲーションコンピュータ18あるいは回生教示コンピュータ19が車両の位置、方位、速度等を算出する。車両周辺センサ11は、例えば、レーダセンサや、ソナーセンサ、車載カメラ等のセンサによって構成され、走行中の自車両の周辺に存在する障害物の存在状況を回生教示コンピュータ19へ入力する。あるいは、車両周辺センサ11は、車車間通信や路車間通信によって自車両以外の車両や路上装置においてセンシングされた周辺状況のデータを取得して、これを回生教示コンピュータ19へ入力するものであってもよい。
【0048】
地図データベース12には、交差点等の特定地点に対応するノード、ノード間を接続する道路区間の最小単位であるリンク及びリンク同士の接続情報から構成される道路ネットワークを含む道路地図データや、地図画像の表示に必要な描画データ等が格納されている。学習情報データベース13には、所定の地理範囲ごとに、各地理範囲内を走行中に行われたブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち回生ブレーキによって回収できなかった分の損失エネルギの発生状況を一定量蓄積した学習データが記憶されている。この学習データの詳細な内容については後述する。
【0049】
音声出力デバイス14は、スピーカから言語音や信号音を発生することで各種情報をユーザに報知できるように構成されている。表示デバイス15は、液晶ディスプレイ等の表示面を有する表示装置であり、地図画像や案内画像等の表示に用いられる。振動デバイス16は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、運転座席等といった、運転者と接触する部位に設けられた振動発生装置によって振動を発生させることで運転者に対して情報を伝達するためのものである。この振動デバイス16では、発生する振動のリズムや強弱のパターンによって伝達する情報の区別が可能である。香り発生デバイス17は、運転者の顔面付近へ香料を射出することで運転者に対して情報を伝達するためのものである。この香り発生デバイス17では、伝達する情報の内容に応じて射出する香料の種類を使い分けることで、伝達する情報の区別が可能である。
【0050】
ナビゲーションコンピュータ18は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ナビゲーションに関する各種処理を実行する。ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理では、位置検出器10からの検出信号に基づいて算出した自車両の現在地に基づき、地図データベース12から現在地周辺の道路地図データや描画データを読み込んで地図画像を生成し、これに自車両の現在地を示すマークを重ね合わせて表示デバイス15に表示させる。また、経路案内処理では、ユーザによって目的地が指定されると、現在地を出発地とし、出発地から目的地までの最適経路を地図データベースから読み込んだ道路地図データに基づいて探索する。そして、経路探索によって得られた最適経路を誘導経路として、その誘導経路を地図画像上に重ね合わせて表示デバイス15に表示させる。そして、自車両の移動に伴って所定のタイミングで案内情報を表示又は音声で出力し、自車両が目的地までの誘導経路に沿って走行できるように案内する。また、ナビゲーションコンピュータ18は、探索した誘導経路の情報を回生教示コンピュータ19へ入力する。
【0051】
回生教示コンピュータ19は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、回生ブレーキの損失エネルギの発生状況や、回生ブレーキのエネルギ効率を向上させるためのブレーキ操作に関するアドバイス等の情報を運転者に報知するための各種処理を実行する。回生教示コンピュータ19が運転者に対して情報を報知する場面は、走行前、走行中及び走行後に分けられる。運転者に対する情報の報知は、主に音声出力デバイス14や表示デバイス15用いて行い、状況に応じて振動デバイス16や香り発生デバイス17も利用してもよい。なお、走行前、走行中及び走行後の各場面で運転者に対して情報を報知する処理の詳細な内容については後述する。
【0052】
また、回生教示コンピュータ19は、位置検出器10や回生制御コンピュータ20からの入力情報に基づき、走行中の車両の位置、車速、ブレーキの作動状況(例えば、運転者のブレーキ操作に応じて作動した回生ブレーキ及び油圧ブレーキ全体(以下、全ブレーキ)の制動トルクの推移)の推移を一定の時間間隔ごとにサンプリングしたデータをメモリに保存する。
【0053】
回生制御コンピュータ20は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、走行用のバッテリ21、回生ブレーキ用モータ22及び回生ブレーキと併用される油圧ブレーキ23の作動状態を監視・制御し、それらから取得したデータを回生教示コンピュータ19へ出力する。
【0054】
本車両に搭載された回生ブレーキシステムでは、回生ブレーキ用モータ22の発電電力に上限があるものを想定している。そこで、回生制御コンピュータ20は、回生ブレーキ用モータ22の最大発電電力を超えない程度の制動力を要求するブレーキ操作が行われた場合、回生ブレーキのみで制動を行うように制御し、最大発電電力を超えるような制動力を要求するようなブレーキ操作が行われた場合には、回生ブレーキでは不足する制動力を油圧ブレーキに分担させる制御を行う。
【0055】
また、回生制御コンピュータ20は、回生ブレーキ用モータ22及び油圧ブレーキ23が作動したときのそれぞれの制動トルク、及び回生ブレーキ用モータ22で発生した発電電力を取得し、それらのデータを回生教示コンピュータ19へ出力する。
【0056】
なお、ナビゲーションコンピュータ18、回生教示コンピュータ19及び回生制御コンピュータ20は、それぞれが独立したコンピュータ装置によって構成されていてもよいし、1つのコンピュータ装置においてそれぞれのプログラムを実行することで、各部の機能を実現するような構成であっても良い。
【0057】
[学習データ取得処理の説明]
図2は、学習情報データベース13に記憶されている学習データの一例を模式的に示す説明図である。学習データは、所定の学習区間(図2の事例では、区間1,2,3…と表記)ごとに、当該学習区間を1回走行する度にその学習区間内での損失エネルギの発生の有無を「1」又は「0」の1ビットの符号で記録したものである。なお、学習区間内でのブレーキ操作時に損失エネルギが発生した場合には「1」のデータが当該学習区間に対応付けて記録され、損失エネルギが発生しなかった場合には「0」のデータが当該学習区間に対応付けて記録される。
【0058】
この学習データには、1学習区間ごとに8ビット(=1バイト)の情報量が割り当てられており、最も古い走行時のデータを先頭にし、走行順にビットシフトをして最大8走分のデータを蓄積する。そして、1学習区間につき8走分のデータが蓄積された状態で更に同じ学習区間を新たに走行した場合、学習データ全体を左側にビットシフトして、最も古い走行時の走行データを消去し、新たな走行時のデータを学習データの最後尾に追加する。このようにすることで、個々の学習区間ごとに最新の8走分の学習データが常に蓄積されることになる。
【0059】
なお、学習データを蓄積する単位である学習区間として、地点(座標)や、座標範囲、距離範囲、地図データに対応する道路区間(リンク等)等を採用することが考えられる。また、道路区間ごとに学習データを蓄積する場合、例えば、順方向では上り坂、逆方向では下り坂となる道路のように、走行方向による運転特性の変化を反映するために、同一の道路区間について走行方向別にそれぞれ別区間としてもよい。
【0060】
つぎに、図3は、上述の学習データを蓄積するために回生教示コンピュータ19が実行する学習処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両の走行中に常時繰り返し実行される。
【0061】
回生教示コンピュータ19は、まず、現在走行中の学習区間における損失エネルギ情報を算出する(S101)。ここでいう学習区間とは、学習情報データベース13に格納されている学習データ(図2)の記録単位である学習区間に対応するものである。このS101では、損失エネルギ情報として、ブレーキ操作に伴う損失エネルギの有無を算出する。
【0062】
なお、本車両に搭載された回生ブレーキシステムでは、走行用のバッテリ21や充電機器等の性能的な制約により回生可能な瞬間電力に上限(回生限界電力)があるものを想定している。そして、回生ブレーキ用モータ22による発電電力がこの回生限界電力を超えた場合、超過した分のエネルギは熱等に変換されて放出される。この場合、熱として放出された分のエネルギは、回生ブレーキによって回収されなかった損失エネルギに該当する。そこで、回生教示コンピュータ19は、回生制御コンピュータ20から入力されるデータに基づき、回生ブレーキ用モータ22による発電電力と回生限界電力とを比較し、発電電力が回生限界電力を超えた場合、すなわち、発電電力(W)>回生限界電力(W)となった場合に損失エネルギが発生したと判断する。一方、発電電力が回生限界電力以下の場合、すなわち、発電電力(W)≦回生限界電力(W)である場合、損失エネルギは発生していないと判定する。
【0063】
なお、発電電力は、回生ブレーキ用モータ22の出力側の電流・電圧から直接計測してもよいし、下記式1によって算出してもよい。
発電電力(W)=回生ブレーキの制動トルク(Nm)×車速(m/s)÷車輪半径(m) …式1
また、回生限界電力は、回生ブレーキシステムの仕様に基づき予め設定された固定値を用いてもよいし、走行条件やバッテリ21のコンディションに応じて回生制御コンピュータ20が算出するような構成であってもよい。前者の場合、回生限界電力をメモリ等に予め登録しておくことで、これを回生教示コンピュータ19が各種演算に用いることができる。また、後者の場合、その時々の走行条件やバッテリのコンディションに基づいて回生制御コンピュータ20が回生限界電力を随時算出し、これを回生教示コンピュータ19へ出力することで、回生教示コンピュータ19が各種演算に用いることができる。
【0064】
あるいは、油圧ブレーキが作動した場合、油圧ブレーキの作用による制動エネルギは、回生ブレーキによって電気エネルギとして回収されなかった損失エネルギに該当する。そこで、回生教示コンピュータ19は、油圧ブレーキが作動した場合、すなわち、油圧ブレーキの制動トルク(Nm)>0となった場合に損失エネルギが発生したと判断する。一方、油圧ブレーキが作動していない場合、すなわち、油圧ブレーキの制動トルク(Nm)=0である場合、損失エネルギは発生していないと判定する。
【0065】
損失エネルギの有無の判断方法は、回生限界電力を根拠とする前者の方法と、油圧ブレーキの作動状態を根拠とする後者の方法の何れか一方を採用してもよいし、両者の判断方法を併用してもよい。
【0066】
つぎに、S102では、S101で算出した損失エネルギの有無に関する情報をメモリに保存する。ここで記憶した損失エネルギ情報は、現在走行中の学習区間から退出した後、学習情報データベース13における当該学習区間の学習データを更新するまで一時的に保存される。
【0067】
S103では、車両が別の学習区間へ進入したか否かを判定する。別の学習区間へ進入していないと判定した場合(S103:NO)、すなわち、従前の学習区間をまだ走行中であると判定した場合、S101の処理へ戻る。一方、別の学習区間へ進入したと判定した場合(S103:YES)、メモリに保存している損失エネルギ情報を参照し、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していたか否かを判定する(S104)。
【0068】
S104で、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していたと判定した場合(S104:YES)、学習情報データベース13における当該学習区間に対応する学習データに「1」のデータを新たに追加し(S105)、学習処理を終了する。一方、S104で、前に走行した学習区間において損失エネルギが発生していない判定した場合(S104:NO)、学習情報データベース13における当該学習区間に対応する学習データに「0」のデータを新たに追加し(S106)、学習処理を終了する。
【0069】
[走行前報知処理の説明]
つぎに、回生教示コンピュータ19が、学習情報データベース13の学習データを利用して走行開始前に運転者に情報を報知するための処理について、図4,5に基づき説明する。図4は、回生教示コンピュータ19が実行する走行前報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を開始する前の停車中に実行される。
【0070】
回生教示コンピュータ19は、まず、車両が走行する予定の走行経路の情報を取得する(S201)。ここで取得するのは、ナビゲーションコンピュータ18が算出した現在地から目的地までの誘導経路の情報である。
【0071】
つぎに、S201で取得した走行経路の情報に基づき、学習情報データベース13(図2参照)からこの走行経路が通る学習区間の学習データを取得し(S202)、その取得した学習データの中から、損失エネルギの発生回数が規定値以上の学習区間(以下、損失エネルギ発生エリアと称する)を抽出する(S203)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間、すなわち、過去8回の走行のうち5回以上の走行で回生ブレーキの損失エネルギが発生した学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。
【0072】
そして、その抽出した損失エネルギ発生エリアの位置を示すマークの画像を、ナビゲーションコンピュータ18が描画する地図画像上の走行経路に重畳して描画し(S204)、走行前報知処理を終了する。なお、学習データが、例えば地点(座標)のように細かな区間ごとに記録されている場合、S204では経路上の代表地点にのみ損失エネルギ発生エリアのマークを表示するように構成してもよい。
【0073】
図5は、上述の走行前報知処理によって、走行前に表示デバイス15に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を模式的に示す説明図である。図5に示すように、地図画像上に、現在地(出発地)から目的地までの走行経路が表示されており、この走行経路上において、過去の走行時のブレーキ操作による損失エネルギの発生状況の学習結果に基づいて特定した損失発生エリアの位置を示すマークが重ねて表示されている。
【0074】
[走行中報知処理の説明]
つぎに、回生教示コンピュータ19が、損失エネルギの発生状況に関する情報を運転者に対して随時報知するための処理について、図6,7に基づき説明する。図6は、回生教示コンピュータ19が実行する走行中報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を開始してから走行を終了するまでの間、繰り返し実行される。
【0075】
回生教示コンピュータ19は、まず、位置検出器10からの検出信号、及び、学習情報データベース13の学習データ(図2参照)に基づき、車両が損失エネルギ発生エリア内に進入したか否かを判定する(S301)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。損失エネルギ発生エリアへ進入していないと判定した場合(S301:NO)、S303の処理へ移行する。一方、損失エネルギ発生エリアへ進入したと判定した場合(S301:YES)、損失エネルギ発生エリアへ進入したことを音声にて運転者に対して報知し(S302)、S303の処理へ移行する。
【0076】
つぎに、S303では、運転者によるブレーキ操作が行われているか否かを判定する。ブレーキ操作が行われていないと判定した場合(S303:NO)、S301の処理へ戻る。一方、ブレーキ操作が行われていると判定した場合(S303:YES)、回生ブレーキ及び油圧ブレーキの作動状況に基づいて回生ブレーキによる制動エネルギの回収状況及び損失エネルギの発生状況を示す回生メータを表示するための情報を計算する(S304)。そして、S304で計算した情報に基づき、回生メータ(図7参照)を表示デバイス15に表示する(S305)。
【0077】
ここで、S304及びS305における回生メータの表示方法の詳細について説明する。図7は、回生メータの表示例を模式的に示す説明図である。この回生メータには、縦方向に一列に並んだ8つのインジケータが描画されており、このインジケータの点灯数によって回生レーキによる制動エネルギの回収状況及び損失エネルギの発生状況を運転者に通知することができる。具体的には、運転者のブレーキ操作に応じて作動した全ブレーキの制動仕事率の大きさに比例して、インジケータが下側から順に点灯するようになっている。ちなみに、図7では、下から5つ目までのインジケータが点灯している状態を示している。
【0078】
また、下から4つ目までのインジケータの点灯分は、回生限界電力を超えない範囲で回生ブレーキが制動を担っている分の比率を示している。つまり、インジケータの点灯数が4以下である場合、損失エネルギは発生していないことになる。一方、下から5つ目以降のインジケータの点灯分は、全ブレーキの制動仕事率のうち回生ブレーキの回生限界電力を超えた分の比率を示している。つまり、インジケータの点灯数が5以上である場合、回生ブレーキ用モータ22の発電電力が回生限界電力を超えていたり、油圧ブレーキが作動している状態であり、損失エネルギが発生していることになる。
【0079】
回生メータのインジケータの点灯数は、下記式2,3で算出されるメータレベルに基づいて決定する。
メータレベル=全ブレーキの制動仕事率(W)÷(回生限界電力(W)÷4) …式2
ただし、
全ブレーキの制動仕事率(W)=全ブレーキの制動トルク(Nm)×車速(m/s)÷車輪半径(m) …式3
上記式(2)で算出したメータベルの値を四捨五入により端数処理し、端数処理したメータレベルの値から、下記の表1で示すとおりに回生メータ内のインジケータの描画内容を決定する。
【0080】
【表1】
図6のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S306では、現在損失エネルギが発生中であるか否かを判定する。ここで、損失エネルギ発生の有無を判定する方法としては、上述の学習データ取得処理(図3参照)で行うのと同様の方法であってもよいし、S304における計算結果に基づいて、メータレベルが5以上である場合に損失エネルギが発生していると判定してもよい。
【0081】
ここで、損失エネルギが発生していないと判定した場合(S306:NO)、S308へ移行する。一方、損失エネルギが発生していると判定した場合(S306:YES)、損失エネルギが発生中であることを通知するため音声又は信号音を出力する(S307)。あるいは、音声による情報の報知の変わりに、振動デバイス16を用いて、損失エネルギが発生中であることを通知するための特定の振動パターンを発生してもよいし、香り発生デバイス17を用いて、損失エネルギが発生中であることを通知するための特定の香料を運転者へ向けて射出してもよい。
【0082】
つぎに、S308では、一連のブレーキ操作が終了したか否かを判定する。ここでは、サンプリングしているブレーキの制動トルクが正の値から0に変化した瞬間をブレーキ操作終了と判定する。ブレーキ操作が継続中であると判定した場合(S308:NO)、S304の処理へ戻る。以降、ブレーキ操作が継続している間、S304〜S308の処理を順次繰り返すことで、ブレーキ操作中における損失エネルギの発生状況に関する情報報知を継続する。そして、S308でブレーキ操作が終了したと判定した場合(S308:YES)、当該ブレーキ操作中において損失エネルギが発生していたか否かを判定する(S309)。ここでは、ブレーキ操作中における回生メータのメータレベルの最大値が4以下であった場合に損失エネルギが発生しなかったと判定し、メータレベルの最大値が5以上であった場合に損失エネルギが発生したと判定する。
【0083】
S309で、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生しなかったと判定した場合(S309:NO)、そのブレーキ操作が良好であったという判定結果を通知するための音声又は信号音を出力し(S310)、S301の処理へ戻る。一方、S309で、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生したと判定した場合(S309:YES)、そのブレーキ操作が不良であったという判定結果を通知するための音声又は信号音を出力し(S311)、S301の処理へ戻る。あるいは、音声によってブレーキ操作の良否判定結果を報知する変わりに、振動デバイス16を用いて、ブレーキ操作の良否に応じて異なる振動パターンを発生してもよいし、香り発生デバイス17を用いて、ブレーキ操作の良否に応じて異なる種類の香料を運転者へ向けて射出してもよい。また、ブレーキ操作の良否の判定結果を示すシンボルマーク等を表示デバイス15に表示してもよい。
【0084】
なお、上述の走行中報知処理においては、更に下記のような変形例を採用してもよい。
(1)S302で損失エネルギ発生エリアへ進入したことを運転者へ報知する際、車両の速度に応じて報知タイミングの早遅を変更するように構成してもよい。例えば、車両の速度が比較的速い場合には、車両が損失エネルギ発生エリアへ進入する手前の位置で損失エネルギ発生エリアへ進入する旨を事前に運転者に報知する。このようにすることで、十分な余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができるようになると考えられる。反対に、車両の速度が比較的遅い場合には、報知のタイミングが多少遅くとも、運転者は余裕を持って回生ブレーキを効率的に使ったブレーキ操作を行うことができると考えられるため、車両が損失エネルギ発生エリアへ進入してから損失エネルギ発生エリアへ進入した旨を運転者に報知する。
【0085】
(2)S306及びS307においては、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生しているときのみ、その旨を報知するようになっている。このようにする代わりに、ブレーキ操作中に損失エネルギが発生していない場合(S306:NO)には、ブレーキ操作が良好である旨の判定結果を報知し、損失エネルギが発生している場合(S306:YES)には、ブレーキ操作が不良である旨の判定結果を報知するように構成してもよい。
【0086】
(3)S302,S305,S307,S310,S311の各処理において、車両の走行中に運転者に情報を報知する場合、車両の周辺状況に応じて報知の実施を制限してもよい。具体的には、車両周辺センサ11からの入力信号に基づき、自車両と自車両周辺の障害物とが近接状態であると判定した場合、走行中における回生ブレーキに関する情報の報知を中止又は抑制する。このようにすることで、自車両と近接状態にある障害物に対する運転者の注意の妨げとならないので好適である。
【0087】
[走行後報知処理の説明]
つぎに、走行終了後の場面において、回生教示コンピュータ19が、走行中の損失エネルギの発生状況に関する情報を運転者に対して報知するための処理について、図8〜11に基づいて説明する。図8は、回生教示コンピュータ19が実行する走行後報知処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両が走行を終了した後の停車中に実行される。
【0088】
回生教示コンピュータ19は、まず、車両が実際に走行した経路の情報に基づき、学習情報データベース13(図2参照)からこの走行経路が通る学習区間の学習データを取得する(S401)。そして、その取得した学習データの中から、損失エネルギの発生回数が規定値以上の損失エネルギ発生エリアを抽出する(S402)。ここでは、学習データ内に「1」のデータが5個以上記録されている学習区間、すなわち、過去8回の走行のうち5回以上の走行で回生ブレーキの損失エネルギが発生した学習区間を損失エネルギ発生エリアであると特定する。
【0089】
そして、その抽出した損失エネルギ発生エリアの位置を示すマークの画像を、ナビゲーションコンピュータ18が表示デバイス15に表示する地図画像上の走行経路に重畳して描画する(S403)。
【0090】
図9は、上述の走行後報知処理のS403において表示デバイス15に表示される損失エネルギ発生エリアの一例を模式的に示す説明図である。図9に示すように、地図画像上に、出発地から現在地(目的地)までの実際の走行経路が表示されており、この走行経路上において、過去の走行時のブレーキ操作による損失エネルギの発生状況の学習結果に基づいて特定した損失発生エリアの位置を示すマークが重ねて表示されている。
【0091】
図8のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S404では、画面を遷移させる要求がユーザから入力されたか否かを判定する。ここでは、画面を遷移させる要求がなされるまでの間(S404:NO)、処理を繰り返す。そして、画面を遷移させる要求が入力されたと判定した場合(S404:YES)、走行中に記録したブレーキの作動状況のサンプリングデータから、ブレーキの作動状況のグラフとして表示用のサンプルとなる1回分のブレーキ操作のデータを抽出する(S405)。ここでは、サンプリングされた各ブレーキ操作の中から、損失エネルギの発生度合いが最も高いと推測されるブレーキ操作を表示用のサンプルに選択する。具体的には、サンプリングされた個々のブレーキ操作について、下記式4で示される判定値をそれぞれ算出し、その判定値が最大となるブレーキ操作を選択する。
【0092】
判定値=ブレーキ作動時間(s)×制動仕事率の最大値(W) …式4
つぎに、S405で抽出したブレーキ操作のサンプルデータに基づき、このサンプルのブレーキ操作における制動仕事率の時間的推移を示すグラフと、回生限界電力を超えないでサンプルのブレーキ操作と同等の減速が得られる理想的なブレーキ操作の制動仕事率の時間的推移を示すグラフとを計算する(S406)。ここでは、サンプルデータのブレーキ操作に対応するグラフを下記式5で示す関数を用いて近似計算し、理想的なブレーキ操作に対応するグラフを下記式6で示す関数を用いて近似計算する。なお、式5,6の関数における変数xは時間(s)であり、変数yは制動仕事率(W)である。
【0093】
〈サンプルのブレーキに対応するグラフ描画関数〉
y=−{max#regen/(brake#time/2)2}×[x−{ideal#brake#time−(brake#time/2)}]+max#regen …式5
〈理想的なブレーキに対応するグラフ描画関数〉
y=−{ideal#regen/(ideal#brake#time/2)2}×{x−(ideal#brake#time/2)}+ideal#regen …式6
なお、上記式5,6で用いられている定数の定義は下記表2で示すとおりである。
【0094】
【表2】
つぎに、S406で計算したサンプルのブレーキのグラフ、及び理想的なブレーキのグラフに基づき、ブレーキグラフウィンドウ(図10参照)を描画し、表示デバイス15に表示する(S407)。ここでは、縦軸(y軸)を制動仕事率(W)、横軸(x軸)を時間(s)にとったグラフをブレーキグラフウィンドウ上に描画する。グラフの横軸の描画範囲は、0から、サンプルのブレーキの作動時間(brake#time)又は理想のブレーキの作動時間(ideal#brake#time)の何れか長い方までとする。また、縦軸の描画範囲は、0から、サンプルのブレーキにおける制動仕事率の最大値(max#regen)又は回生限界電力(ideal#regen)の何れか大きい方までとする。
【0095】
さらに、ブレーキグラフウィンドウ内には、サンプルのブレーキの作動時間(brake#time)と、理想的なブレーキの作動時間(ideal#brake#time)とを表示する。また、運転者に対してブレーキ操作に関するアドバイスをするためのメッセージも表示する。このメッセージは、例えば、サンプルのブレーキにおける制動仕事率の最大値と回生限界電力との大小関係や、ブレーキの作動時間と理想的なブレーキの作動時間との大小関係に応じて、予め用意したメッセージの中から適当なものを選択して表示することが考えられる。
【0096】
図10は、ブレーキグラフウィンドウの表示例を模式的に示す説明図である。図10に示すように、ブレーキグラフウィンドウには、「あなたのブレーキ操作」と題してサンプルのブレーキのグラフと、「理想のブレーキ操作」と題して理想的なブレーキのグラフとが互いに比較可能に描画されている。なお、このグラフでは、サンプルのブレーキの作動時間の終端と、理想的なブレーキの作動時間の終端とが一致するように描画されている。これにより、運転者のブレーキ操作が理想的なブレーキ操作と比較して早めであるか遅めであるかが瞭然となる。さらに、グラフにおいて回生限界電力のレベルにラインを設けることで、サンプルのブレーキにおいてどの程度の損失エネルギが発生したのかも瞭然となる。
【0097】
また、ブレーキグラフウィンドウの左側には、「あなたのブレーキ操作時間」と題してサンプルのブレーキの作動時間(brake#time)が表示され、同じく「理想的なブレーキ操作時間」と題して理想的なブレーキの作動時間(ideal#brake#time)が表示されている。さらに、ブレーキグラフウィンドウの下側には「今日のアドバイス」と題して、「気持ち早めにブレーキを踏みましょう。」とのメッセージが表示されている。このメッセージは、サンプルのブレーキの作動時間が、理想的なブレーキ操作に必要な時間と比較して短いことを反映したものである。
【0098】
図8のフローチャートの説明に戻る。つぎに、S408では、画面を遷移させる要求がユーザから入力されたか否かを判定する。ここでは、画面を遷移させる要求がなされるまでの間(S408:NO)、処理を繰り返す。そして、画面を遷移させる要求が入力されたと判定した場合(S408:YES)、走行中に記録したブレーキの作動状況のサンプリングデータから、実際に回収した回生電力量と理想的な回生電力量とを所定の区間別に算出する(S409)。なお、理想的な回生電力量とは、運転者のブレーキ操作に係る制動エネルギが全て電気エネルギとして回生されたと仮定した場合の電力量である。また、回生電力量を計算する対象となる所定の区間としては、一定の走行距離ごと、一定の時間ごと、あるいは地図データに対応する道路区間(リンク等)等を採用することが考えられる。
【0099】
実際に回収した回生電力量と理想的な回生電力量とを下記式7,8,9によって計算する。なお、下記式8,9における記号Σは、計算対象の区間に該当の個々のサンプル値に関する計算結果を合計するという意味である。
【0100】
〈実際に回収した回生電力量〉
全ブレーキの制動仕事率のサンプル値(W)=全ブレーキの制動トルクのサンプル値(Nm)×車速のサンプル値(m/s)÷車輪の半径(m) …式7
回生電力量(kws)=Σ(回生電力のサンプル値(W)×サンプリング時間間隔(s))/1000 …式8
ただし、回生電力のサンプル値には、上記式7による制動仕事率のサンプル値の計算結果を下記表3に示すとおりに変換した値を用いる。
【0101】
【表3】
〈理想的な回生電力量〉
理想的な回生電力量(kws)=Σ(全ブレーキの制動仕事率のサンプル値(W)×サンプリング時間間隔(s))/1000 …式9
つぎに、S409で計算した区間ごとの実際の回生電力量及び理想的な回生電力量に基づき、回生電力量グラフウィンドウ(図11参照)を描画し、表示デバイス15に表示する(S410)。ここでは、縦軸を回生電力量(W)、横軸を区間の推移にとったグラフを回生電力量グラフウィンドウ上に描画する。グラフの横軸の描画範囲は、運転開始から運転終了までの全区間とする。また、運転者に対してブレーキ操作に関するアドバイスをするためのメッセージも表示する。このメッセージは、例えば、実際の回生電力量と理想的な回生電力量との差の大小に応じて、予め用意したメッセージの中から適当なものを選択して表示することが考えられる。
【0102】
図11は、回生電力量グラフウィンドウの表示例を模式的に示す説明図である。図11に示すように、回生電力量グラフウィンドウには、「エリア1」,「エリア2」…と区分けされた個々の区間ごとに、当該区間に対応する理想的な回生電力量(理想値)と実際の回生電力量(実測値)とが並べて表示されている。これにより、運転者のブレーキ操作によって、どの区間でどの程度の損失エネルギが発生しているのかが瞭然となる。
【0103】
また、回生電力量グラフウィンドウの下側には、「今日のアドバイス」と題して、「もっと早めにブレーキを踏みましょう。」とのメッセージが表示されている。このメッセージは、実際の回生電力量が理想的な回生電力量に比べて少なくなっていることを反映したものである。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態の回生ブレーキ教示システムの構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応関係は下記のとおりである。回生教示コンピュータ19及び回生制御コンピュータ20が、損失情報導出手段に相当する。また、回生教示コンピュータ19が、報知制御手段、損失情報記録手段、ブレーキ操作情報記録手段、回生電力量算出手段及び総制動エネルギ算出手段に相当する。また、位置検出器10が位置取得手段に相当する。また、学習情報データベース13が学習情報記憶手段に相当する。また、ナビゲーションコンピュータ18が走行経路取得手段に相当する。また、車両周辺センサ11が周辺状況取得手段に相当する。
【0105】
[効果]
上記実施形態の回生ブレーキ教示システムによれば、下記のような効果を奏する。
場所ごとの損失エネルギの発生状況を学習データとして統計的に蓄積し、その蓄積した学習データを利用して損失エネルギ発生エリアに関する情報を報知することができる。これにより、運転者は、自身の運転によってどの場所を走行しているときに損失エネルギを発生させ易いのかを知ることができ、以降、その場所を走行する際に効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギ発生エリア以外の地域については、それまでどおりの運転で回生ブレーキを十分効率的に利用できていると知ることもできる。
【0106】
例えば、移動予定の経路を加味して、走行を開始する事前に走行経路上における損失エネルギ発生エリアを地図上に表示することができる。このようにすることで、これから走行しようとする経路上のどの場所において損失エネルギを発生させ易いのかを事前に運転者に報知することができる。これにより、走行予定の経路に沿って車両を運転する運転者に対して、効率的なブレーキ操作を意識付けることができる。また、損失エネルギ発生エリアの情報を走行予定の経路上に絞った範囲で表示するので、運転者にとって無用な情報を報知することがなく、好適である。
【0107】
また、走行中において損失エネルギ発生エリアへの進入を運転者に対して報知できる。このようにすることで、運転者は、これから損失エネルギを発生させやすい場所を走行することをタイムリーに知ることができる。そして、運転者は、その場所を走行する際に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。このように、走行中に車両の現在地に基づくタイムリーな情報提供を行うことで、回生ブレーキによるエネルギ効率の向上が見込まれる。
【0108】
また、走行終了後に、それまで走行してきた経路上に分布する損失エネルギ発生エリアを地図上に表示できる。このようにすることで、運転者は、走行終了後に、今回走行した経路上のどの場所で損失エネルギが発生しやすかったかを的確に把握することができ、自身のブレーキ操作の実態を省みる契機となる。そして、運転者は、自身のブレーキ操作の実態を省みることで、次回からの走行時に回生ブレーキの効率的な利用を心がけるようになると期待できる。
【0109】
ブレーキ操作中に、現に損失エネルギが発生していることをフィードバックして報知することができる。このようにすることで、運転者は、現に操作中のブレーキによって損失エネルギが発生しているのか否かを具に知ることができる。したがって、運転者は、自身が回生ブレーキを効率的に使用しているのか否かを直接的に理解できるようになり、どの程度のブレーキ操作であれば損失エネルギを発生させないで済むのかを体験的に学習し易くなる。つまり、運転者に対して効率的なブレーキ操作を意識付けるだけでなく、回生ブレーキを効率的に利用する技能の向上も期待できる。
【0110】
また、運転者によるブレーキ操作終了直後に、当該ブレーキ操作中における損失エネルギの発生の有無に基づいてブレーキ操作の巧拙の評価を報知することができる。このようにすることで、そのブレーキ操作に対する全体的な評価を運転者にとって分かり易く報知することができる。
【0111】
走行中に収集したブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、実際のブレーキ操作のグラフと、当該ブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作のグラフとを比較可能な態様で表示できる。このようにすることで、走行終了後に、運転者に対して走行中のブレーキ操作の内容を確認させることができる上に、理想的なブレーキ操作と比較可能にすることで、運転者に対して効率的なブレーキ操作をより具体的にアドバイスできる。
【0112】
走行中に収集したブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、走行中に回収できた回生電力量と理想的な回生電力量(すなわち、理論上回収可能な最大の電力量)とを比較可能な態様で表示することができる。このようにすることで、運転者は、自身のブレーキ操作においてどの程度の省エネルギを達成できたのかをより具体的に知ることができる。よって、回生ブレーキを利用した省エネルギに対する運転者の意識をより効果的に高めることができる。
【0113】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
【0114】
上記実施形態においては、学習情報データベース13に記憶される学習データ(図2参照)の記録方法として、学習区間への進入時から退出時までの損失エネルギの発生の有無を走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録する方法を採用している。このような方法以外にも、学習区間への進入時から退出時までの損失エネルギの発生回数を走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録するようにしてもよい。
【0115】
あるいは、学習区間への進入時から退出時までのブレーキの作動状況のサンプリングデータに基づき、損失エネルギの電力量を計算し、これを走行回ごとに当該学習区間に対応付けて記録するようにしてもよい。
【0116】
さらに、予め学習済みの損失エネルギの発生回数と新たな損失エネルギの発生回数の平均値、もしくは移動平均値を算出し、これを記憶してもよい。あるいは、予め学習済みの損失エネルギの電力量と新たな損失エネルギの電力量の平均値、もしくは移動平均値を算出し、これを記憶してもよい。あるいは、損失エネルギの電力量を算出するために必要なパラメータ(例えば、油圧ブレーキの制動トルク等)の平均値、もしくは移動平均値を記憶してもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…位置検出器、11…車両周辺センサ、12…地図データベース、13…学習データ、14…音声出力デバイス、15…表示デバイス、16…振動デバイス、17…香り発生デバイス、18…ナビゲーションコンピュータ、19…回生教示コンピュータ、20…回生制御コンピュータ20、21…バッテリ、22…回生ブレーキ用モータ、23…油圧ブレーキ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転を使ってモータで発電し、その発電負荷によって車輪に制動をかけると共に、発電によって得られた電気エネルギを車載電源に回収する回生ブレーキシステムを備えた車両に搭載される車載用報知装置であって、
運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、前記回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する損失情報導出手段と、
前記損失情報導出手段によって導出された損失情報に基づき、損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を車両に搭載された報知手段を介して運転者に報知する報知制御手段と
を備えることを特徴とする車載用報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用報知装置において、
車両の現在地を取得する位置取得手段と、
所定の地理範囲ごとに、個々の地理範囲を走行中に生じた損失エネルギに関する損失情報を統計的に記憶する学習情報記憶手段と、
前記位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、前記損失情報導出手段により導出した損失情報を、その損失情報に係る損失エネルギが発生した前記地理範囲に対応付けて前記学習情報記憶手段に統計的に記録する損失情報記録手段とを更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報に基づき、前記地理範囲ごとにおける損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用報知装置において、
車両の移動予定の経路に関する経路情報を取得する経路取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記経路取得手段により取得した経路情報に基づき、移動予定の経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際、その旨を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、車両の速度の高低度合い応じて、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する旨を報知するタイミングの早遅を変更すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
車両が実際に走行した経路に関する走行経路情報を取得する走行経路取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記走行経路取得手段により取得した走行経路情報に基づき、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間に走行した経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状における損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの発生度合いを示す情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の車載報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作終了後に、当該ブレーキ操作による損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項10】
請求項4又は請求項5、あるいは請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の車載報知装置において、
車両の周辺の障害物の存在状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、更に前記周辺状況取得手段により取得した周辺状況情報に基づき、走行中に車両と障害物とが所定の接近状態である場合、走行中における損失エネルギに関する情報の報知を行わないこと
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
運転者によるブレーキ操作で制動したときの制動仕事率の時間的推移に関する情報を記録するブレーキ操作情報記録手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間に前記ブレーキ操作情報記録手段により記録したデータに基づき、運転者によるブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、その算出した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間に前記ブレーキ操作情報記録手段により記録したデータと、前記回生ブレーキシステムで回生可能な最大電力である限界回生電力とに基づき、実際のブレーキ操作によって得られた制動を制動仕事率が前記限界回生電力を越さないように達成するための理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、運転者による実際のブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報と、そのブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報とを対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
走行開始から走行終了までの期間に前記回生ブレーキシステムにより回生された回生電力量を算出する回生電力量算出手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後に、前記回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量に関する情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車載用報知装置において、
走行開始から走行終了までの期間に運転者によって行われたブレーキ操作による制動エネルギの総量を算出する総制動エネルギ算出手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後に、前記回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量と、前記総制動エネルギ算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における総制動エネルギとを対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項15】
請求項13に記載の車載用報知装置において、
前記回生電力量算出手段は、走行開始から走行終了までの期間を所定の区分に区切った個々の区分ごとに前記回生電力量を算出し、
前記報知制御手段は、前記回生電力量算出手段により算出した個々の区分ごとの回生電力量に関する情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項16】
請求項14に記載の車載用報知装置において、
前記回生電力量算出手段及び総制動エネルギ算出手段は、走行開始から走行終了までの期間を互いに共通する区分に区切った個々の区分ごとに前記回生電力量及び前記制動エネルギの総量を算出し、
前記報知制御手段は、前記回生電力量算出手段により算出した個々の区分ごとの回生電力量と、前記総制動エネルギ算出手段により算出した個々の区分ごとの総制動エネルギとを、対応する区分同士で対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、運転者の視覚、聴覚、触覚及び嗅覚の少なくとも何れかに作用することで情報を伝達可能な報知手段を介して情報を報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項1】
車輪の回転を使ってモータで発電し、その発電負荷によって車輪に制動をかけると共に、発電によって得られた電気エネルギを車載電源に回収する回生ブレーキシステムを備えた車両に搭載される車載用報知装置であって、
運転者によるブレーキ操作によって減少した運動エネルギ分に相当する制動エネルギのうち、前記回生ブレーキシステムによる回生によって回収できなかった損失エネルギに関する損失情報を導出する損失情報導出手段と、
前記損失情報導出手段によって導出された損失情報に基づき、損失エネルギに関する所定の情報を生成し、その生成した情報を車両に搭載された報知手段を介して運転者に報知する報知制御手段と
を備えることを特徴とする車載用報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用報知装置において、
車両の現在地を取得する位置取得手段と、
所定の地理範囲ごとに、個々の地理範囲を走行中に生じた損失エネルギに関する損失情報を統計的に記憶する学習情報記憶手段と、
前記位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、前記損失情報導出手段により導出した損失情報を、その損失情報に係る損失エネルギが発生した前記地理範囲に対応付けて前記学習情報記憶手段に統計的に記録する損失情報記録手段とを更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報に基づき、前記地理範囲ごとにおける損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用報知装置において、
車両の移動予定の経路に関する経路情報を取得する経路取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記経路取得手段により取得した経路情報に基づき、移動予定の経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記位置取得手段により取得した現在地情報に基づき、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する際、その旨を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、車両の速度の高低度合い応じて、損失エネルギの発生度合いが所定量以上である地理範囲内に車両が進入する旨を報知するタイミングの早遅を変更すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
車両が実際に走行した経路に関する走行経路情報を取得する走行経路取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、前記学習情報記憶手段に記憶されている情報と、前記走行経路取得手段により取得した走行経路情報に基づき、走行終了後に、走行開始から走行終了までの期間に走行した経路上に該当する地理範囲における損失エネルギの発生度合いに関する情報を生成し、その生成した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状における損失エネルギの発生の有無、あるいは損失エネルギの発生度合いを示す情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作中に、現状の損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の車載報知装置において、
前記報知制御手段は、前記損失情報導出手段により導出した損失情報に基づき、運転者によるブレーキ操作終了後に、当該ブレーキ操作による損失エネルギの発生度合いに基づく当該ブレーキ操作の巧拙の評価に関する情報を運転者に対して報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項10】
請求項4又は請求項5、あるいは請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載の車載報知装置において、
車両の周辺の障害物の存在状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況取得手段を更に備え、
前記報知制御手段は、更に前記周辺状況取得手段により取得した周辺状況情報に基づき、走行中に車両と障害物とが所定の接近状態である場合、走行中における損失エネルギに関する情報の報知を行わないこと
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
運転者によるブレーキ操作で制動したときの制動仕事率の時間的推移に関する情報を記録するブレーキ操作情報記録手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間に前記ブレーキ操作情報記録手段により記録したデータに基づき、運転者によるブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、その算出した情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、走行終了後、走行開始から走行終了までの期間に前記ブレーキ操作情報記録手段により記録したデータと、前記回生ブレーキシステムで回生可能な最大電力である限界回生電力とに基づき、実際のブレーキ操作によって得られた制動を制動仕事率が前記限界回生電力を越さないように達成するための理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報を算出し、運転者による実際のブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報と、そのブレーキ操作に対応する理想的なブレーキ操作状況の時間的推移を示す情報とを対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
走行開始から走行終了までの期間に前記回生ブレーキシステムにより回生された回生電力量を算出する回生電力量算出手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後に、前記回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量に関する情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車載用報知装置において、
走行開始から走行終了までの期間に運転者によって行われたブレーキ操作による制動エネルギの総量を算出する総制動エネルギ算出手段を更に備え、
前記報知制御手段は、走行終了後に、前記回生電力量算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における回生電力量と、前記総制動エネルギ算出手段により算出した走行開始から走行終了までの期間における総制動エネルギとを対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項15】
請求項13に記載の車載用報知装置において、
前記回生電力量算出手段は、走行開始から走行終了までの期間を所定の区分に区切った個々の区分ごとに前記回生電力量を算出し、
前記報知制御手段は、前記回生電力量算出手段により算出した個々の区分ごとの回生電力量に関する情報を運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項16】
請求項14に記載の車載用報知装置において、
前記回生電力量算出手段及び総制動エネルギ算出手段は、走行開始から走行終了までの期間を互いに共通する区分に区切った個々の区分ごとに前記回生電力量及び前記制動エネルギの総量を算出し、
前記報知制御手段は、前記回生電力量算出手段により算出した個々の区分ごとの回生電力量と、前記総制動エネルギ算出手段により算出した個々の区分ごとの総制動エネルギとを、対応する区分同士で対比可能な態様にて運転者に報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16の何れか1項に記載の車載用報知装置において、
前記報知制御手段は、運転者の視覚、聴覚、触覚及び嗅覚の少なくとも何れかに作用することで情報を伝達可能な報知手段を介して情報を報知すること
を特徴とする車載用報知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2010−206976(P2010−206976A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50781(P2009−50781)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]