説明

電源補償電圧および電流源

【課題】電源補償電圧または電流を供給する装置および方法を提供する。
【解決手段】電源補償電流および電圧源は、バンドギャップ基準電圧およびスケールされた電源電圧に接続された差動増幅器106を利用する。電源が変動すると、差動増幅器が安定した補償出力を調整する。出力は補償電圧でも電流でもよい。さらに、差動増幅器から複数の電流および電圧が参照されてもよい。安定した補償出力は、外部回路のための基準バイアスとして供給されてもよい。さらに、補償出力は、電圧制御発振器に供給されてもよい。電源補償電圧および電流源は、電源電圧が第1および第2の抵抗器102に跨って分配される、基準ノード122で第2の抵抗器と直列に接続された第1の抵抗器と、電圧基準電源104と、第1および第2の電圧入力および補償出力を有し、前記第1の入力が前記基準ノードに接続され、前記第2の入力が前記電圧基準電源に接続される差動増幅器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
米国政府は、国防脅威削減局によって与えられた契約番号DTRAO1−03−D−0018および送付番号DTRA01−03−D−0018−0001により本発明に一定の権利を取得している。
【0002】
本発明は、一般に、電流および電圧源に関し、より詳細には、電源変動に関して安定した電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0003】
位相ロックループ(「PLL」)は、アナログ電気システムおよび通信システムで広く使用されてきた。ますます厳しくなっているタイミング制約の中で動作する現在の高性能システムでは、より一般的なデジタル電子回路にPLLが導入されつつある。例えば、様々な回路用途に使用される特定用途向け集積回路(「ASIC」)は、一般に、クロック信号分配用オンチップPLLを含む。
【0004】
PLLがクロック分配にもたらす主要な利点は、位相/遅延補償、周波数逓倍、およびデューティサイクル補正である。PLLは、1つの周期信号またはクロックが基準クロックの周波数の倍数に位相整合されることができるようにする。PLLの出力は、その名前が示すように、受信基準クロック信号にロックし、基準クロックの平均周波数に等しい周波数を有する周期信号を発生する。出力PLL信号が基準信号を追跡する場合、PLLは「ロックされる」と言われる。
【0005】
しかし、PLLは、限られた周波数範囲にわたってロックされたままであるだけか、あるいはホールドインレンジまたはロックレンジと呼ばれる周波数内でシフトする。PLLは、基準周波数が徐々に変化する場合は、一般に、ロックレンジにわたって基準信号を追跡する。この最大「ロック掃引速度」は、PLLがロックされたままである基準周波数の最大変化速度である。周波数変化がこの速度より速い場合は、PLLはロックから外れる。
【0006】
他の要因が、予期せずに突然発生することもあるロックの喪失を生じさせる可能性がある。例えば、電源電圧変動によって、PLLの出力周波数の偏差が生じる可能性がある。出力周波数の偏差によって、PLLがロックから外れることもある。PLLにロックから外れさせる可能性のある電源変動の一例は、電源上の増大した負荷である。増大した負荷は、電源を共用している増大した数の回路構成要素によって導入される可能性がある。
【0007】
電源変動はまた、出力周波数それ自体の変動など他の障害を生成する可能性もある。PLLは依然として「ロックされた」ままである可能性があるが、可変出力周波数がPLL出力を参照して回路内の不安定状態を引き起こす可能性がある。
【0008】
電源変動の一因は、PLLの中の電圧制御発振器(VCO)によって受け取られる電圧である。VCOの機能はPLLの周期出力信号を発生することである。基準クロックがPLLによって追跡された場合、位相検出器は、他の構成要素と共に、基準クロックとPLLの出力の位相差を表す電圧(または電流)を発生する。基本的に、VCOは、発生された電圧(または電流)を受け取り、それを周期出力信号に変換する。例えば、高出力電圧は、高速周波数を有する出力信号に変換されてよい。一方、低入力電圧は、低周波数を有する出力信号に変換されてよい。
【0009】
しかし、電源が変動する場合、VCOは入力電圧を様々な周期信号に変換してよい。すなわち、周期信号は電源が変動するにつれて変動する。その結果、PLL出力の偏差に、あるいはPLL内のロックの喪失に起因する有害な回路エラーが発生する可能性がある。したがって、電圧制御発振器のための電源補償電圧および電流源の必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電源補償電圧および電流源を供給する装置および方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、補償電圧および電流源は、入力としてバンドギャップ基準電圧およびスケールされた電源電圧を受け取る差動増幅器を備える。差動増幅器はまた、閾値基準回路によって駆動される電流源を含む。電源が変わった場合でも、差動増幅器によって安定した補償電流出力が維持される。次いで、補償電流は、VCOバイアス発生器などの外部回路に供給される。その場合、VCOバイアス発生器は、供給補償出力を生成するために波形発生器に信号を出力してよい。
【0012】
他の実施形態では、補償電圧は差動増幅器によって生成される。補償電圧はVCOバイアス発生器などの外部回路によって使用されてよい。
【0013】
これらおよび他の態様ならびに利点は、それが適当な場合は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、当業者には明らかになるであろう。さらに、この要約は単に例であって、主張された本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。
【0014】
ここで好ましい諸実施形態は、様々な図で同様の参照数字が同様の要素を指す添付の図面に関連して下記で説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
電源補償電圧および電流源が提供される。補償電圧および電流源は、電圧または電流、あるいはその両方を、電圧制御発振器(VCO)などの外部回路に供給するために使用されてよい。安定したPLL出力は、補償電圧および電流源によって電圧または電流を供給されるVCOを使用して発生させることができる。電源変動補償の利点から利益を受ける他の回路もまた、本発明の実施形態から利益を受けることができる。
【0016】
ここで図1に戻ると、基本的なPLL10は、位相周波数検出器12、チャージポンプ14、ループ(ローパス)フィルタ16、VCO18およびロック検出器30からなっていてよい。位相周波数検出器12は、基準クロック20および派生(またはフィードバック)クロック22を受け取る。位相周波数検出器12の出力は、チャージポンプ14に供給される。チャージポンプ14からの出力は、ローパスフィルタ16に供給される。ローパスフィルタ16は、VCO18に接続される。VCO18の出力は、周波数分割器28に供給される。周波数分割器28の出力は、位相周波数検出器12に戻され、通常のロック検出器30に供給される。ロック検出器30はまた、通常のロック検出器信号32を供給することができるようになるように基準クロック20を供給される。
【0017】
動作中に、位相検出器12は2つの出力周波数を比較し、それらの位相差の大きさである出力を発生する。例えば、位相周波数検出器は、入力基準クロック信号20(REFCLK)をフィードバッククロック信号22(FBKCLK)と比較し、2つの信号20、22の位相/周波数差の大きさに比例するエラー信号24を発生する。図では、位相検出器12の出力信号24は、VCO18を駆動するループフィルタ16として働くカウンタ(示されていない)に一般に入力される、アップまたはダウンパルス24として示されている。他の実施形態では、位相検出器12は、標準デジタルフィルタに出力されてよいnビットの位相エラー24を出力してよい。
【0018】
エラー信号24は、PLL回路上の位相検出器12のローディングを軽減するためにチャージポンプ14に供給される。チャージポンプ14電流は、ループフィルタ16に蓄えられる電荷の大きさを制御し、それによって、位相周波数検出器12からの出力をVCO18への制御電圧入力26に転換する。VCO18は、制御電圧26に比例する出力周波数を発生する。
【0019】
PLL10がロックされている場合、REFCLK20信号とFBKCLK22信号の間には一定の位相差(通常ゼロ)があり、それらの周波数は一致している。2つの信号が等しい場合は、位相検出器12からのマグニチュード出力24はない。信号が異なる場合は、位相検出器12は対応する電圧信号24を出力する。動作中に、位相検出器12は、REFCLK20を(周波数分割器28を介して)発振器出力と比較し、REFCLK20を追跡する周期的フィードバッククロック出力FBKCLK22を発生する。発振器からのFBKCLK22がREFCLK20より周波数が遅れている場合、発振器18の速度が上がるように、位相検出器12はチャージポンプ14に制御電圧を変更させる。同様に、FBKCLK22がREFCLK20より先行している場合は、位相検出器12は、発振器18の速度を落とすように、チャージポンプ14に制御電圧を変更させる。ローパスフィルタ16がチャージポンプ14からの急な制御入力を滑らかにするので、システムは、位相検出器12がほとんど補正を行わない状態になる傾向がある。その結果、PLL出力34が安定し、様々な集積回路の用途に使用されることができるようになる。そのような用途の1つは、クロック発生回路でよい。
【0020】
しかし、PLL10が安定した出力34を生成できない状況は多い。ロック検出器30は、REFCLK20信号およびFBKCLK22信号を測定することによって、いつ安定した出力が出力されるか、あるいは出力されないかを示す。安定した出力がない場合、ロック検出器30は、満たされない「ロック」条件に対応する信号32を生成する。
【0021】
上記で議論されたように、満たされないロック条件を生じる可能性のあるそのような状況の1つは、VCO出力を発生するために使用される電流または電圧の変動である可能性がある。具体的には、増幅に使用される電圧および電流の小さな変化が、VCO出力での大きな変動を引き起こす可能性がある。残念ながら、電圧および電流の小さな変化は、電源電圧が変動するときに生じる可能性がある。その結果、基準電流または電圧のわずかな変動が、VCO18出力(および、順にPLL出力34)を、REFCLK20に比較して速すぎるかまたは遅すぎるようにする可能性がある。これは、PLLを「ロック」から外れた状態にする可能性がある。
【0022】
たとえロック条件が満たされても、PLL出力周波数34の上昇または低下が有害な影響を引き起こす可能性がある。そのような影響の1つは、PLL10を利用したASIC内にあるクロック回路の周波数の上昇である。周波数の上昇によって、ASICの中にある他の回路が望ましくない速度でサイクルするようになる可能性がある。この望ましくないサイクル速度は、ASICの中にある回路構成要素間の同期エラーを引き起こす可能性がある。電源変動は断続的か予期しないものであり得るので、電源変動中に安定した電流および電圧をVCOに供給することが重要である。
【0023】
VCO電源の不安定性を防止するためのVCO36が図2に示されている。VCO36は、電圧/電流源38、VCOバイアス発生器40およびVCO波形発生器42を備える。VCO36への入力は差動電圧制御26a、26bである。この実施形態では、差動電圧制御26a、26bは差動信号である。ただし、この信号は、図1に示されているように、シングルエンドでよい(電圧制御26)。VCO36からの出力はPLL出力34である。
【0024】
VCO36の中で、VCOバイアス発生器40は、電圧/電流源38(V/C源)から出力される補償電流44(「ICOMP」)を供給される。V/C源38は、さらに図5に示されている。他の実施形態では、V/C源38は電圧信号を出力することができる。あるいは、他の実施形態では、V/C源38は電流と電圧両方の出力を出力することができる。出力信号のタイプに関係なく、V/C源38はバンドギャップ電圧VBG45を受け取り、電源はVおよびV、46、48を入力する。
【0025】
VCOバイアス発生器40は、ICOMP44および差動電圧制御26a、26bを受け取ると、基準電流50a〜d(「IREF」)を出力する。IREF50a〜dは、PLL出力34を出力するVCO波形発生器42に供給される。
【0026】
ここで図3aに戻ると、波形発生器42は遅延セル54a〜dおよびフルスイング−シングルエンド変換56(「F/S」)を備える。遅延セル54a〜dはそれぞれIREF50a〜dを受け取る。遅延セル54a〜dはまた、差動入力信号を受け取り、増幅された差動出力を出力する。遅延セル54dの差動出力は、遅延セル54aに戻され、また、F/S56にも入力される。F/S56は、フルスイング差動信号をシングルエンド、ロジックレベル、PLL出力34に変換する。PLL出力34にとってフルスイング信号が望ましい場合は、F/S56は省略されてもよい。さらに、より多くのあるいはより少ない遅延セルが他の実施形態で使用されてもよい。VCO36の周波数、安定性、および電力消費量は、使用される遅延セルの数によって変わる。遅延セルの追加または削減の影響は、図3bで詳細に議論される。
【0027】
個々の遅延セル54aを表す回路図が図3bに示されている。遅延セル54a〜dの性質および構造は全て遅延セル54aの回路図と同様である。IREF50aおよび差動入力VIN+およびVIN−、58a、58bは、遅延セル54aに入力される。遅延セル54aからの出力は、差動出力VOUT+およびVOUT−、60a、60bである。遅延セル54aの中で、IREF50aはPMOSトランジスタ62に供給される。PMOSトランジスタ62はそのゲートに、電圧分割器64、NMOSトランジスタ66、68の電源電圧、およびNMOSトランジスタ70のゲート電圧によって決定されるバイアスがかけられる。NMOSトランジスタ70は、差動増幅器72の中で電流源として使用される。この実施形態では、差動増幅器は、PMOSトランジスタ74a、74bおよび76a、76bからのアクティブ負荷を含む。また、PMOSトランジスタ78の出力は、アクティブ負荷PMOSトランジスタ74aおよび76aのゲートに接続される。
【0028】
動作中、IREF50aは、トランジスタ66、68および70のバイアスを決定する。IREF50aの電流値が高いほど、トランジスタ66、68および70上のゲート−ソースバイアスは高くなる。IREF50aの電流値を低減する場合は、逆相関が存在する。トランジスタ70のゲート−ソースバイアスが増大する場合、より多くの電流が差動増幅器72の末尾に供給される。
【0029】
差動電圧が差動増幅器に印加された場合、VIN+およびVIN−、58a、58bで印加された信号は、VOUT+およびVOUT−、60a、60bで増幅され反転される。これは、等式、
(VOUT+−VOUT−)=Av(VIN+−VIN−
で表される。増幅の遷移時間、すなわち遅延時間(「τ」)は、差動増幅器72の末尾に印加される電流量に比例する。本質的に、差動増幅器72に供給される電流が多いほど、差動増幅器72の中でのラッチングの時間は長くなる。したがって、トランジスタ70を通る電流が増大した場合、遅延時間τは長くなる。また、トランジスタ70を通る電流が減少した場合は、差動増幅器が反転するのがより容易になり、遅延時間τは短くなる。トランジスタ70はIREF50aに直接影響されるので、IREF50aを変えることは遅延時間τの直接制御を提供する。
【0030】
遅延時間τはまた、トランジスタ78によって調整される。トランジスタ78は、抵抗器79と共に、トランジスタ74a、76aにバイアスをかけるために使用される。トランジスタ78、74aおよび76aの機能は、アクティブ負荷74a、74bおよび76a、76bの遅延時間を補償することである。基本的に、トランジスタ74aおよび76aは、「ハイ」から「ロー」へ、または「ロー」から「ハイ」への遷移が行われる前に早めにオンになる。これらのトランジスタによって供給された追加電流は、アクティブ負荷を遷移にもってゆく時間の量を低減することによって遅延時間τを短縮する。IREF50aはトランジスタ66を通る電流量を直接制御するので、IREF50aを変えることはまた、差動増幅器72のアクティブ負荷を調整することによって、遅延時間τに影響を与える。
【0031】
図3aの上記の実施形態では、遅延セル54a〜dのフィードバックループは、最終的に定常状態の波形を生成する。最初に、差動入力内の小さな摂動は、その後、増幅の閾値に達するまで増幅される。遅延セル54a、54dの反転された差動出力は、各個別遅延セルでの遅延時間τによって遅延されるリーディングエッジを有する発振波形を生成する。リーディングエッジは、そのオリジナル電圧レベルに戻る前に2回遅延セル54a、54dを通ってサイクルする。したがって、VCO36の周波数全体は、次のように計算される。
【0032】
f=1/(2Nτ)
上式で、Nは遅延セルの数である。上記で議論されたように、より少ない遅延セルが使用されてよく、より速い周波数出力が生成される。しかし、より少ない遅延セルを使用することのトレードオフは、安定性の低下である。雑音やその他の障害が、望ましくない周波数の偏差または位相ずれによって、この不安定性を引き起こす可能性がある。遅延セルの追加は回路の安定性を高めることができるが、電力消費量が増大し、周波数が低下する。これらのことは、回路設計者によって、所与のVCOの適当な許容差を選択する際に考慮される必要がある。4つの遅延セルが使用される上記実施形態の1つの利点は、各遅延セル間で90度位相ずれが行われることである。このタイプの位相ずれは、出力周波数の極を決定するのに好都合であり得る。
【0033】
明らかに、IREF50a〜dは、VCO36の出力周波数にかなり大きな影響を与える。上記で指摘されたように、電流内の無保証変動(例えば電源変動によって生じる変動)は、遅延時間τにかなり大きな影響を与える可能性があり、VCO36の出力周波数に直接影響を与える。
【0034】
IREF50a〜dがどのようにして発生されるか理解するために、VCOバイアス発生器40が図4に示されている。この回路では、ICOMP44および電圧制御26a、26bが入力される。IREF50a〜dが出力される。また、他の諸実施形態では、周波数選択f80a、f80bも入力される。
【0035】
VCOバイアス発生器40の中には、差動増幅器82、電流ミラー84a〜d、NMOSトランジスタ86、ANDゲート88およびORゲート90がある。ICOMP44、電源補償電流は、差動増幅器82の中のトランジスタ92a、92bにバイアスをかけるために使用される。図3の差動増幅器72と同様に、トランジスタ92a、92bはテール電流源として機能する。差動電圧制御信号26a、26bは、PMOSトランジスタ94a、94bにバイアスをかける。利得は、周波数選択f80aでトランジスタ95を「オン」または「オフ」にすることによって増大されることができる。また差動増幅器82の中で、トランジスタ96は、電流ミラー84a〜dの中のPMOSトランジスタのゲートにミラーされているそのドレインから電圧を供給する。
【0036】
電流ミラー84a〜dはまた、PMOSトランジスタ96から出力を受け取ると同時に、論理AND88および周波数選択80bの論理OR90と共に、周波数選択信号80a、80bの論理AND88を受け取る。論理AND88および論理OR90の出力は、電流ミラー84a〜dの中の別々のPMOSトランジスタ97a〜dおよび98a〜dを駆動するために使用される。IREF50a〜dは、PMOSトランジスタ97a〜dおよび98a〜dのドレインから出力される。
【0037】
動作中に、VCO36が定常状態に達したとき(例えば、REFCLK20とFBKCLK22が一致したとき)、差動電圧制御信号26a、26bは比較的安定したままになる。VCO36が定常状態に達する前に、差動制御信号は、REFCLK20とFBKCLK22が一致するまで、出力電流IREF50a〜dを(上または下いずれかに)調整する。しかし、REFCLK20およびFBKCLK22の周波数内の正または負の偏差はまた、増大するあるいは減少する差動電圧に変わる。さらに、IREF50a〜dを増大あるいは減少させることは、出力周波数に反比例する遅延時間τを増大あるいは減少させる。IREF50a〜dを変えるために、差動増幅器82は、IREF50a〜dが出力する電流量を直接制御する。
【0038】
電源変動は、特に増幅で、望ましくない出力を生じさせる可能性があるので、ICOMP44は、差動増幅器82の中の電流源を通る電流量を制御する。ICOMP44によって決定されるNMOSトランジスタ86のゲートからの電圧は、トランジスタ92a、92bのゲートに印加される。ICOMP44は、絶対温度に反比例する。すなわち、温度が上がると、ICOMP44は減少し、また、差動増幅器82内の電流源(すなわちトランジスタ92a、92b)を通る電流は増大する。もしICOMP44が絶対温度に反比例しないとすれば、差動増幅器82は、温度が上がるにつれて利得が増大するであろう。利得を増大させることは、PLL10の出力周波数を誤って増大させるであろう。ICOMP44の発生は、図5でさらに説明される。
【0039】
差動増幅器82の利得に対して影響力のある他のものは、トランジスタ95である。f80aが高い(すなわち、周波数fが選択された)場合、トランジスタ95はオフになる。本質的に、増幅器の利得は、トランジスタ92aのドレインからトランジスタ92bまでの抵抗が増大されたとき、減少される。差動増幅器82の利得を調整することができることは、バイアス発生器40の出力の感度に影響を与える。利得が低い場合、差動増幅器82の(トランジスタ96のドレインからの)出力電圧は、利得が高い場合ほど大きくは増大しない。バイアス発生器40は周波数選択可能なので、利得を調整することは、異なる周波数範囲の入力26a、26bの感度を変えるために有用である。異なる周波数範囲f80a、f80bを選択することは、下記で説明される。
【0040】
電圧制御信号26a、26bから増大または減少する電圧信号を受け取ると、トランジスタ96のドレインの電圧は増大あるいは減少する。ドレイン電圧を増大させることは、電流ミラー84a〜dを通る電流を減少させ、逆の場合も同じである。他の様々な実施形態では、また上記で説明されたように、電流ミラー84a〜dは、周波数選択入力によって出力電流の量を選択するように調整可能であってよい。例えば、図4で、周波数選択80a、80bは、PMOSトランジスタ97a〜dのゲートに印加される前に論理処理を受ける。例えば、f80aが(論理「ハイ」によって)選択された場合、AND88の出力は「ロー」になり、PMOSトランジスタ97a〜dはオンになる。しかし、f80aが選択された場合は、AND88の出力は「ハイ」になり、OR90の出力は「ロー」になる。この場合は、PMOSトランジスタ98a〜dだけがオンになる。これらのPMOSトランジスタだけがオンになった場合、より低いIREF電流50a〜dが出力される。したがって、より低い遅延時間τが生じ、出力周波数がより高くなる。この実施形態では、両方の周波数選択f80a、f80bが選択された場合、バイアス発生器40は、トランジスタ97a〜dおよび98a〜dがオフになるので、オフになる可能性がある。
【0041】
しかし、1つの周波数だけが出力されることが望まれる場合は、単一の周波数入力が使用されてもよく、周波数入力は全然使用されなくてもよい。他の諸実施形態では、AND88およびOR90は除去されてもよく、1組のトランジスタ(すなわち、97a〜dまたは98a〜d)だけが使用されてもよい。一定のバイアスがどちらかの組のトランジスタにかけられることもできる。トランジスタ95を介した利得調整もまた、様々な実施形態で除去されることができる。
【0042】
上記で説明されたように、より多くのあるいはより少ないIREF50a〜dが、VCO36の中の遅延セルの数に応じて使用されてよい。バイアス発生器40で、電流ミラー84a〜dは電流分割器の代わりに使用される。電流ミラーは、固有の抵抗に限定されない電流出力の決定可能な量、または、電流分割器から生じる可能性のある電流内の微妙な違いを生じさせる可能性のある処理に起因する変動を提供する。しかし、電流分割器から安定した電流出力が入手可能な場合は、別の実施形態では、IREF50a〜dを電流分割器から発生してもよい。
【0043】
VCO36の全体的な電源変動の独立性は、ICOMP44に依存する。もしICOMP44が電源変動によって変わるとすれば、差動増幅器82を通る電流量は故意にではなく増大または減少するであろう。ICOMP44の故意にではない増大または減少は、VCO36で多くの問題を生じるであろう。1つの問題は、出力周波数の制御の欠如である。例えば、電源の不安定性を補正する手段または方法がないので、パワースパイクがICOMP44を増大する可能性がある。その場合、ICOMP44は、差動増幅器82の利得を増大させる。より高い利得はより低いIREF50a〜d電流に変わるであろう。IREF50a〜dが低下した場合、波形発生器42の遅延時間τが減少し、出力周波数が増大するであろう。もしICOMP44が電源変動から独立していないとすれば、多くの他のタイプの故意でない有害な作用が生じる可能性があるであろう。
【0044】
したがって、図5は、電源補償を備えたV/C SOURCE38の回路実施形態を示す。VBG入力44、電源電圧V46および共通の電圧V48がV/C SOURCE38に供給される。電源補償電流および電圧源IREF44およびVCOMP100が出力される。IREF44およびVCOMP100はまた、絶対温度に反比例する。VCOMP100は前述の諸実施形態では使用されていない。しかし、本発明の他の諸実施形態は、補償電流の代わりに補償電圧を使用してもよい。あるいは、他の諸実施形態は、IREF44とVCOMP100の両方を使用してもよい。さらに、VBG入力44は、通常のバンドギャップ基準電流からの出力でもよい。VBG入力100は、別法として、何か他のタイプの温度補償電圧でもよい。また、V46およびV48は、PLL10の中の他の構成要素に供給される同じ電源であってもよい。V46およびV48はまた、PLLの他の部分に供給される電源から独立していてもよい。
【0045】
V/C SOURCE38は、電圧分割器102、電圧基準回路104、および差動増幅器106を備える。さらにこの実施形態に含まれる構成要素には、フィルタ108、電圧ミラー回路110、および電流ミラー回路112がある。
【0046】
差動増幅器106は、PMOSトランジスタ114a、114b、NMOSトランジスタ116a、116b、抵抗器118、およびNMOSトランジスタ124a、124bを備える。アクティブ負荷PMOSトランジスタ114a、114bのソースは、電源46に接続される。トランジスタ114a、114bのドレインは、トランジスタ116a、116bのドレインに接続される。トランジスタ116aのゲートは、(フィルタ108によってフィルタされてよい)VBG入力44によってバイアスをかけられ、トランジスタ116bのゲートは電圧分割器122の中のノード120によってバイアスをかけられる。抵抗器118は、トランジスタ116a、116bのソースに接続する。また、トランジスタ124a、124bのソースも、トランジスタ116a、116bのソースに接続される。トランジスタ124a、124bは、電流源を形成する。他の諸実施形態では、電流源は異なる配置のトランジスタあるいは別のタイプの電流源を備えていてもよい。さらに、差動増幅器106およびV/C SOURCE38はまた、(MOSトランジスタの代わりにバイポーラ接合トランジスタなど)追加の回路要素を備えていてもよい。
【0047】
上記で説明されたように、トランジスタ116aのゲートは、VBG44によってバイアスをかけられる。VBG44によってトランジスタ116aにバイアスをかけることによって、トランジスタ116bのゲートは、差動増幅器106の中の一定の電圧基準と比較されることができるようになる。一方、トランジスタ116bのゲートは、電圧分割器102の中のノード122によってバイアスをかけられる。電圧分割器102は、2つの直列に接続された抵抗器を備える。共通の電圧48への電源46(Vp〜Vn)は、直列に接続された抵抗器を通して分配される。電源46が変動すると、ノード122からトランジスタ116のゲートにかけられるバイアスも変わる。この変動は、電源変動の縮小版である。例えば、3Vの公称電圧がトランジスタ116のゲートにバイアスをかけるために使用され、電源46が5Vの電圧レベルを有する場合、2KΩと3KΩの値を有する2つの抵抗器が電圧分割器102の中で使用されてよい。この例では、もし電源が5.5Vにスパイクするとすれば、トランジスタ116のゲートにかけられたバイアスは3.3Vにジャンプするであろう。
【0048】
トランジスタ116a、116bは両方とも、トランジスタ124a、124bに接続される。トランジスタ124a、124bのゲートは、電圧基準回路104によってバイアスをかけられる。電圧基準回路104は、トランジスタ126〜136および抵抗器138を備える。この実施形態では、基準回路104は、閾値基準電流源を使用してトランジスタ132で絶対温度に反比例する出力を生成する。他の実施形態は、電圧または電流出力を生成するために他の基準回路を備えていてもよい。
【0049】
電圧基準回路104では、入力電流はトランジスタ126および134を通って進む。トランジスタ128および132は、出力電流を生成する。トランジスタ132のゲートはトランジスタ134のドレインに接続されているので、トランジスタ128および132を通る出力電流は、トランジスタ126および134を通る入力電流に依存するより、閾値電圧に多く依存する。したがって、トランジスタ126および134を通る出力電流に対する電源変動の影響は、減衰される。トランジスタ132からの出力電流はミラーされ、電圧140が発生されてトランジスタ124a、124bにバイアスをかけるために使用される。電圧140は、絶対温度に反比例する。
【0050】
温度が上昇すると、電圧140は低下し、トランジスタ124a、124bを通る電流は低下する。また、トランジスタ116bおよび116aを通る電流も低下する。また、ICOMP44およびVCOMP100も低下する。しかし、温度が低下すると、反対の影響が見られる。すなわち、ICOMP44およびVCOMP100は上昇する。絶対温度に反比例する量は、V/C源38の設計によって決定され得る。これは、電圧基準回路104、電圧ミラー回路110、電流ミラー回路112および/または差動増幅器106を含む、V/C源38の中の構成要素の設計を含んでよい。
【0051】
再度差動増幅器106に戻ると、電源変動補償は、以下の例で確認されることができる。電源に変動が生じない場合、トランジスタ116a(ノード144)のドレインの電圧は一定のままである。VCOMP100を生成するために電圧ミラー回路110が使用されてよく、ICOMP44を生成するために電流ミラー回路112が使用されてよい。追加の電圧または電流基準が、電流および電圧ミラーを追加することによって生成されてもよい。
【0052】
電源(すなわち、Vp〜Vn)が増大した場合、トランジスタ116bのゲートにかけられたバイアスは増大し、トランジスタ116bを通る電流も増大する。トランジスタ116aは基準電圧派生バイアスを有するので、トランジスタ116bを通る電流の増加は、トランジスタ116aを通る電流より大きい。基本的に、ノード122の電圧は、トランジスタ116aのゲート電圧(すなわち、VBG45を表すもの)と比較される。また、トランジスタ124a、124bを通る電流も、増加した電源と共に増加する。トランジスタ116bからの補償電流は、抵抗器108を通って進んで、トランジスタ124a、124bを通る電流の増加を補償する。補償電流は、トランジスタ116a内の電流の大きな増加を防止する。したがって、ノード44での電圧および電流の変化は減衰する。電源電圧が減少した場合、トランジスタ116bに印加されたゲート電圧は減少する。補償電流は抵抗器108を通って反対方向に進む。さらに、ノード144での電圧変化の影響全体は、抵抗器108を通って進む電流を補償することによって減少する。
【0053】
変動する電源電圧を有する出力電圧(または電流)に対する減衰効果が図6a〜bのグラフに見られる。図6aは、無補償差動増幅器に供給される変動する電源によって上昇する温度を有するICOMP44出力を示す。図6bは、電源補償差動増幅器106を使用する減衰効果を示す。図6a〜bでは、電源電圧(VS)は、1.4から1.95まで変わる。どちらの図でも、バイアス電流(ICOMP44)は、(図5に示されているような)電流ミラーを使用してノード44を参照する。図6aでは、バイアス電流(ICOMP44)は、変化する電源電圧によってかなり大きく変わる。しかし、図6bでは、変化する電源電圧によるバイアス電流(ICOMP44)の変化は、かなり低減されている。
【0054】
上記の諸実施形態は、電源補償電流および電圧源を備えるVCOを有する位相ロックループを説明している。様々な実施形態で、この電流および電圧源は、安定した電流および/または電圧をVCOに供給するために使用されることができる。VCOに供給される安定した電流または電圧は、VCOが、通常のVCOに対する有害作用を有する可能性のある電源変動に、より敏感でない波形を出力することができるようにする。
【0055】
様々な他の実施形態では、電源補償電流および電圧源は、安定したバイアスを必要とする他のタイプの回路によって使用されてよい。電源補償電流および電圧源は、VCOまたはPLLに使用されることだけに限定されるものではない。
【0056】
例示された諸実施形態は、例としてだけであって、本発明の範囲を限定すると考えられるべきでないことを理解すべきである。特許請求の範囲の請求項は、その趣旨で述べられない限り、記載された順序または要素に限定されると解釈されるべきでない。したがって、添付の特許請求の範囲に記載の請求項の範囲および趣旨ならびにその同等物に含まれる全ての実施形態は、本発明として主張される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】位相ロックループのブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による電圧制御発振器のブロック図である。
【図3】図3aは本発明の一実施形態によるVCO波形発生器のブロック図である。
【0058】
図3bは本発明の一実施形態による遅延セルの回路図である。
【図4】本発明の一実施形態によるVCOバイアス発生器の回路図である。
【図5】本発明の一実施形態による電圧および電流源の回路図である。
【図6】図6aは電源変動によるバイアス電流出力を示すグラフである。
【0059】
図6bは本発明の一実施形態による電源変動によるバイアス電流出力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
10 PLL
12 位相周波数検出器、位相検出器
14 チャージポンプ
16 ループ(ローパス)フィルタ
18 電圧制御発振器(VCO)
26a、26b 差動電圧制御、差動電圧制御信号
28 周波数分割器
30 ロック検出器
36 VCO
38 電圧/電流源、V/C SOURCE
40 VCOバイアス発生器
42 VCO波形発生器
50a〜d 基準電流(IREF)
54a〜d 遅延セル
56 フルスイング−シングルエンド変換(F/S)
64 電圧分割器
72 差動増幅器
78 PMOSトランジスタ
82 差動増幅器
84a〜d 電流ミラー
102 電圧分割器
104 電圧基準回路
106 差動増幅器
108 フィルタ
110 電圧ミラー回路
112 電流ミラー回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が第1および第2の抵抗器に跨って分配される、基準ノードで第2の抵抗器と直列に接続された第1の抵抗器と、
電圧基準電源と、
第1および第2の電圧入力および補償出力を有し、前記第1の入力が前記基準ノードに接続され、前記第2の入力が前記電圧基準電源に接続される差動増幅器と、
を備える、電源補償電圧および電流源。
【請求項2】
前記差動増幅器は、
前記第1の入力に接続されたゲートおよび第1のPMOSトランジスタのソースに接続されたドレインを有する第1のNMOSトランジスタと、
前記第2の入力に接続されたゲートおよび第2のPMOSトランジスタのソースに接続されたドレインを有する第2のNMOSトランジスタと、
第1および第2の入力を有し、前記第1の入力が前記第1のNMOSトランジスタのソースに接続され、前記第2の入力が前記NMOSトランジスタのソースに接続される電流源と、
第1および第2の端子を有し、前記第1の端子が前記NMOSトランジスタのソースに接続され、前記第2の端子が前記第2のNMOSトランジスタのソースに接続される第3の抵抗器と、
をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電流源が第3および第4のNMOSトランジスタを備え、前記第3のNMOSトランジスタのドレインが前記電流源の前記第1の入力に接続され、前記4のNMOSトランジスタのドレインが前記電流源の前記第2の入力に接続される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第3および第4のNMOSトランジスタのゲートが第2の電圧基準電源に接続される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の電圧基準電源が閾値基準電圧源である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電圧基準電源がバンドギャップ電圧基準電源である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
電源補償電流を出力する、前記補償出力に接続された電流ミラーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記補償電流を受け取り、前記補償出力を生成するように動作可能な、前記電流ミラーの出力に接続されたMOSトランジスタをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記補償出力が電圧制御発振器の基準入力に供給される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記補償電流が電圧制御発振器の電流基準入力に供給される、請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−116664(P2007−116664A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−203157(P2006−203157)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】