説明

エンジン制御装置

【課題】エンジンから排出される排気の浄化を適正に実施する。
【解決手段】本車両制御システムは、エンジン10とモータ28とを動力源とするハイブリッド車両に適用される。モータ28は、エンジン10の始動装置としても機能する。ハイブリッドECU60は、エンジン停止に伴うエンジン10の燃焼停止状態においてエンジン出力軸25が回転した状態となるエンジン空回し状態になるための空回し条件が成立したか否かを判定し、空回し条件が成立したと判定された場合に、エンジン10から触媒22への空気の供給を制限する供給制限手段としてのEGR弁24を、エンジン空回し状態において空気供給制限の状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、詳しくは、酸素を吸着又は放出する排気浄化触媒により排気の浄化を行うエンジンの後処理装置について、触媒の酸素吸着量を適正に制御するためのエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気中に含まれるHC、CO及びNOxを浄化するための触媒として三元触媒が知られている。三元触媒は、排気系に配置され、排気中の酸素量に応じて酸素の吸着及び放出を行うことで排気中のHC、CO及びNOxを浄化する。すなわち、排気の空燃比が理論空燃比に対してリーン側の場合には、触媒の酸素吸着能によりNOxが還元され、リッチ側の場合には、触媒に吸着された酸素が排気中に放出されることによりHCやCOが酸化される。
【0003】
ところで、所謂アイドルストップ車やハイブリッド車では、エンジンの自動停止及び再始動が繰り返し実施され、エンジン再始動時には、燃焼開始前において、スタータや電動機(モータ)によりエンジンの出力軸が回転される、すなわちエンジンが空回しされた状態になる。このエンジン空回し状態では、吸気系から導入された空気が触媒に供給され、その供給された空気中の酸素が三元触媒に吸着されることにより、触媒の酸素吸着量が過多になることが考えられる。この酸素の吸着過多の状態では、エンジン始動時において、触媒によるNOx還元を適正に実施できないおそれがある。
【0004】
エンジン始動時における触媒の酸素吸着過多の状態を解消し、NOx還元を適正に行うための方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、触媒が新品状態の場合と劣化状態の場合とで、エンジン始動時におけるエンジン燃焼開始前での触媒のO2ストレージ量が異なることに着目し、触媒の状態に合わせてエンジン始動時の燃料噴射量を可変にすることが開示されている。つまり、この特許文献1では、エンジンの始動時燃料増量を行う際に、触媒状態に応じた量の燃料(HC)を噴射することにより、触媒に吸着された酸素が触媒から放出されるようにし、これにより、触媒の酸素吸着過多の状態が解消されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−190477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、触媒の酸素吸着量を減らすべく、エンジン空回し状態において触媒に吸着された酸素に見合う量の燃料を噴射する必要があり、特に、O2ストレージ量が多くなりやすい触媒の新品状態では、燃費悪化を招いたり触媒暖機前ではHCの排出量が増加してエミッション悪化を招いたりすることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、エンジンから排出される排気の浄化を適正に実施することができるエンジンの制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
本発明は、エンジンと、前記エンジンの始動装置と、該エンジンの排気通路に配置され酸素を吸着又は放出する排気浄化触媒とを備えるシステムに適用され、エンジン停止後、前記エンジンの再始動要求があった場合に、前記始動装置により該エンジンの出力軸を回転させてエンジン再始動を行うエンジン制御装置に関するものである。請求項1に記載の発明は、エンジン停止に伴う前記エンジンの燃焼停止状態において前記出力軸が回転した状態となるエンジン空回し状態になるための空回し条件が成立したか否かを判定する条件判定手段と、前記条件判定手段により前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記エンジンから前記排気浄化触媒への空気の供給を制限する供給制限手段を、前記エンジン空回し状態において空気供給制限の状態に制御する制限制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
要するに、エンジン停止時やそのエンジン停止後の再始動時、具体的には、エンジン停止要求からエンジン回転が停止するまでの期間や、エンジン停止後の再始動要求に伴い始動装置によりエンジン出力軸を回転させる期間では、エンジンの燃焼停止状態においてエンジン出力軸が回転された状態(空回し状態)になることがある。このエンジンの空回し状態では、エンジンに導入された空気(新気)がそのまま排気通路に流れ込み、排気浄化触媒に空気が供給される。かかる場合、空気に含まれる酸素が触媒に吸着され、その結果、触媒が、酸素の吸着過多の状態(例えば酸素飽和状態)になることが考えられる。そのような酸素吸着過多の状態では、次回のエンジンの燃焼再開時において、触媒の排気浄化性能が適正に発揮されず、つまり触媒が排気中のNOxから酸素を奪うことができず、NOx浄化を適正に実施できないおそれがある。
【0011】
その点に鑑み、本発明では、エンジン空回り状態において触媒への空気の供給を制限することにより、触媒に酸素が過剰に吸着されるのを回避する。これにより、次回のエンジンの燃焼再開時においてNOx還元を適正に実施することができ、ひいては排気浄化を適正に実施することができる。
【0012】
エンジン停止後の再始動時においてエンジンの燃焼を開始する前では、始動装置によるエンジン出力軸の回転によりエンジンに空気が導入され、その導入された空気が触媒に供給される。したがって、請求項2に記載の発明のように、供給制限手段を触媒への空気の供給制限の状態にした後に始動装置によるエンジン出力軸の回転を開始するとよい。こうすることにより、触媒への空気の供給制限を、始動装置によるエンジン出力軸の回転開始当初から実施することができ、触媒の酸素吸着を好適に抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、所定の停止条件が成立した場合に前記エンジンの自動停止を行うとともに、前記停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記再始動要求があったものとしてエンジン再始動を行うエンジン制御装置において、前記停止条件が成立した場合に前記空回し条件が成立したものと判定し、前記停止条件が成立したと判定されてから、前記再始動条件の成立に伴い前記エンジンの燃焼を再開するよりも前までの期間で、前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御する。この構成によれば、エンジン停止要求からエンジン回転が停止するまでの期間及びエンジン停止後の再始動要求に伴い始動装置によりエンジン出力軸を回転させる期間で触媒への空気の供給制限が実施されることにより、エンジン停止/再始動の一連の流れにおいて触媒の酸素吸着を抑制できる。
【0014】
走行用モータが始動装置としても機能し、エンジンと走行用モータとを動力源とする所謂ハイブリッド車両では、エンジン運転効率を高めるべく、エンジン始動時において、始動装置によるエンジン出力軸の回転をエンジン回転速度が安定するまで行った後、具体的には、エンジンのアイドル回転速度(例えば700rpm)よりも高いエンジン回転速度(例えば1000〜2000rpm)までクランキングを行った後、エンジンの燃焼を再開する場合がある。この場合、エンジン回転速度の安定化を待ってから燃焼を再開するため、エンジンが空回し状態で保持される時間が長く、その結果、触媒が酸素過多の状態になりやすいことが考えられる。
【0015】
したがって、請求項4に記載の発明のように、前記エンジンに加え、走行用モータを動力源として備える車両に適用されるものとし、前記走行用モータが前記始動装置として機能するものであり、前記再始動要求に伴う前記始動装置による前記出力軸の回転実施期間において前記エンジンの回転速度が所定の回転速度で安定した状態になったことを判定する状態判定手段と、前記状態判定手段により前記回転速度が安定した状態になったと判定された後に前記エンジンの燃焼を再開する再始動制御手段と、を備える構成において、エンジン再始動に際し、燃焼が再開される前の期間で触媒への空気の供給を制限することにより、触媒に酸素が過剰に吸着されるのを回避できるといった効果を好適に得ることができる。
【0016】
エンジンとモータとを動力源とする所謂ハイブリッド車両では、エンジン再始動要求として、車両走行要求に基づくものや、蓄電装置の充電要求に基づくものがある。このうち、エンジン再始動要求が車両走行要求に基づく場合には、走行性優先のため、充電要求に比べて、エンジンをできるだけ速やかにかつ確実に始動させる必要性があると考えられる。
【0017】
その点に鑑み、請求項5に記載の発明では、前記出力軸の回転により発電する発電機と、該発電機と電力のやり取りが可能な蓄電装置とを備える車両に適用され、前記発電機が前記始動装置として機能するものであり、前記条件判定手段は、前記空回し条件の成立が、前記蓄電装置の充電要求による前記再始動要求及び車両走行要求による前記再始動要求のいずれによるものかを判定し、前記制限制御手段は、前記条件判定手段により、前記空回し条件の成立が前記充電要求による前記再始動要求であると判定された場合に、前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御し、前記車両走行要求による前記再始動要求であると判定された場合に、前記供給制限手段を前記空気の供給が制限されていない状態に制御する。こうすることにより、エンジン再始動の要求内容に即して、エンジンの始動性の確保と触媒性能の確保とをバランスよく実現することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、前記排気通路において前記排気浄化触媒の上流側と前記エンジンの吸気系とを接続するEGR通路と、同EGR通路に配置され前記エンジンの排気を前記吸気系に還流させる還流量を調整するEGR弁とを備えるシステムにおいて、前記供給制限手段を前記EGR弁とし、前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記還流量を増量する側に前記EGR弁を制御する。還流量を増加する側にEGR弁を制御することにより、エンジンから触媒へ流れる空気の少なくとも一部が吸気側に戻される。これにより、触媒に供給される空気量を少なくすることができ、触媒の酸素吸着が抑制される。
【0019】
あるいは、請求項7に記載の発明のように、前記排気通路において前記排気浄化触媒の上流側に、前記エンジンから前記排気浄化触媒への空気の流量を調整する流量調整弁が配置されており、前記供給制限手段を前記流量調整弁とし、前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記空気の流量を減量する側に前記流量調整弁を制御する構成としてもよい。
【0020】
特に、排気通路において排気浄化触媒の上流側であってEGR通路と排気通路との接続部分よりも上流側に流量調整弁を配置し、空回し条件が成立した場合に、流量調整弁に加えてEGR弁を制御する構成とするとよい。つまり、エンジン空回り状態では、触媒への空気流量を減量する側に流量調整弁を制御し、かつ還流量を増量する側にEGR弁を制御する構成とする。この構成によれば、流量調整弁により触媒への空気の供給を制限できるとともに、その供給制限に伴う排気通路内の圧力上昇をEGR弁により抑制できる。よって、触媒への空気の供給制限に際し、流量調整弁単独による制御に比べて始動装置の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両制御システムの全体概略を示す構成図。
【図2】EGR弁の開度及びO2ストレージ量の推移を示すタイムチャート。
【図3】エンジン停止要求時の処理手順を示すフローチャート。
【図4】エンジン再始動要求時の処理手順を示すフローチャート。
【図5】第2の実施形態のエンジン制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態のエンジン再始動要求時の処理手順を示すフローチャート。
【図7】第3の実施形態の車両制御システムの全体概略を示す構成図。
【図8】第3の実施形態のエンジン制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図9】第3の実施形態のエンジン再始動要求時の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、エンジンとモータとを動力源とするハイブリッド車両における車両制御システムの制御装置に具体化している。当該制御システムにおいては、エンジン電子制御ユニット(エンジンECU)とハイブリッド電子制御ユニット(ハイブリッドECU)とが設けられている。そして、エンジンECUを中枢として、エンジンにおける燃料噴射量制御や点火時期制御等を実施し、ハイブリッドECUを中枢として、車両のシステム全体を制御する。本制御システムの全体概略を示す構成図を図1に示す。
【0023】
図1において、エンジン10には、吸気管11と排気管12とが接続されており、吸気管11には気筒内への吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ13が設けられている。スロットルバルブ13は、モータ等からなるスロットルアクチュエータ14により電気的に開閉駆動される空気量調整手段である。スロットルアクチュエータ14にはスロットルバルブ13の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが内蔵されている。
【0024】
エンジン10は、同エンジン10の各気筒に燃料を噴射供給する燃料噴射手段としてのインジェクタ15と、気筒ごとに設けられた点火プラグ16に点火火花を発生させる点火手段としてのイグナイタ(点火装置)17と、吸気ポート及び排気ポートにそれぞれ配置された通路開閉手段としての吸気バルブ18及び排気バルブ19とを備えている。吸気バルブ18及び排気バルブ19は、エンジン10の出力軸25の回転に伴い開閉する機械駆動式となっている。
【0025】
なお、本実施形態では、吸気ポート噴射式エンジンを採用しており、インジェクタ15が吸気ポート近傍に設けられる構成としているが、これに代えて、直噴式エンジンを採用し、インジェクタ15が各気筒のシリンダヘッド等に設けられる構成としてもよい。
【0026】
排気管12には、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサとしてのA/Fセンサ21が設けられている。また、排気管12において、A/Fセンサ21の下流側には排気浄化装置としての触媒22が設けられている。
【0027】
触媒22は、例えば三元触媒であり、排気が通過する際に排気中の有害成分等を浄化する。具体的には、触媒22は、リーン雰囲気で酸素を吸着する機能(O2ストレージ機能)を有しており、リーン雰囲気の後にリッチ雰囲気に曝されることにより、吸着した酸素を放出する。そして、排気の空燃比が理論空燃比に対してリーン側の場合には、触媒22は、O2ストレージ機能により排気中のNOxを還元し、リッチ側の場合には、吸着した酸素を排気中に放出することにより、排気中のHCやCOを酸化する。
【0028】
また、本システムには、排気の一部をEGRガスとして吸気系に導入するEGR装置(排気再循環装置)が設けられている。すなわち、吸気管11と排気管12との間には、一端が吸気管11のスロットルバルブ下流側に接続され、かつ他端が排気管12の触媒22上流側に接続されたEGR配管23が設けられており、そのEGR配管23の途中に、電磁式のEGR弁24が設けられている。この場合、EGR弁24の開度を調整することで、EGR還流量が増減調整されるようになっている。
【0029】
エンジン10の出力軸25には、遊星ギアを用いた動力分配装置26が接続されている。動力分配装置26には、ギア軸27を介して、電動機及び発電機として駆動可能なモータ28が接続されており、ギア軸29、ディファレンシャルギア31及び駆動軸32を介して車輪(駆動輪)33が接続されている。これにより、エンジン10とモータ28とが同一の駆動軸32に動力を出力可能になっている。
【0030】
モータ28は、インバータ34を介して高圧バッテリ35に接続されている。モータ28が発電機として駆動する場合には、モータ28で発電した電力が、インバータ34で交流から直流に変換された後、高圧バッテリ35に充電される。一方、モータ28が電動機として駆動する場合には、高圧バッテリ35からの電力が、インバータ34を介してモータ28に供給される。高圧バッテリ35の残容量(SOC)は、電流センサ36により検出される充放電電流に基づいて算出される。
【0031】
エンジンECU50及びハイブリッドECU60は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)を主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エンジン10や車両の駆動に関する各種制御を実施する。
【0032】
具体的には、エンジンECU50は、エンジン10の所定クランク角毎に矩形状のクランク角信号を出力するクランク角センサ37や、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサ38等といったエンジン10の運転状態を検出する各種センサ等からの検出信号を入力し、それらの各種信号に基づいて、燃料噴射量や点火時期等を演算してインジェクタ15や点火装置17の駆動を制御する。また、エンジンECU50は、ハイブリッドECU60と電気的に接続されており、ハイブリッドECU60からの制御信号に基づいてエンジン10を制御する。
【0033】
ハイブリッドECU60は、イグニッションスイッチ39や電流センサ36、車両の運転に関する各種情報を検出する各種センサから検出信号を入力し、それらの各種信号に基づいて、モータ28やインバータ34等の駆動を制御する。また、ハイブリッドECU60は、エンジンECU50と各種制御信号やデータ等のやり取りを行い、エンジン10の燃費効率を考慮した車両走行モードによりエンジン10及びモータ28を制御したり、アイドルストップ制御を実施したりする。
【0034】
車両走行モードによる制御について詳しくは、例えば車両の発進時や低負荷走行時のようにエンジン10の燃費効率が悪い領域では、エンジン10を運転停止状態(燃焼停止状態)にして、モータ28の動力のみで車輪33を回転させる。また、中負荷走行時では、基本的にはエンジン10の動力で車輪33を回転させ、車両加速時や高負荷走行時のようにエンジン動力のみでは所望量の動力を出力できない場合には、エンジン10を始動し、エンジン10とモータ28との動力で車輪33を回転させる。また、モータ走行中に高圧バッテリ35の残容量(SOC)が所定量以下になった場合においてもエンジン10を始動し、これにより、高圧バッテリ35の充電を行う。
【0035】
次に、アイドルストップ制御について詳述する。アイドルストップ制御は、概略として、エンジン10のアイドル運転時に所定のアイドル停止条件が成立すると当該エンジン10を自動停止させるとともに、その後、所定のアイドル再始動条件が成立するとエンジン10を再始動させるものである。アイドル停止条件としては、例えば、アクセル操作量がゼロになったこと、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと、車速が所定値以下まで低下したこと等の少なくともいずれかが含まれる。また、アイドル再始動条件としては、エンジン停止状態においてアクセル操作が行われたこと、ブレーキペダルの踏み込みが解除されたこと等の少なくともいずれかが含まれる。
【0036】
エンジン10の燃焼停止状態においてエンジン10を始動させる場合、本システムでは、モータ28を始動装置として用いる。すなわち、高圧バッテリ35に蓄えられた電力を、インバータ34を介してモータ28に供給し、これにより出力されるモータ28の動力でエンジン10の出力軸25を回転させる(クランキングを行う)。その後、エンジン10の燃焼を開始する。
【0037】
モータ28によるクランキングについて、特に本実施形態では、モータ28によるエンジン出力軸25の回転をエンジン回転速度が安定するまで行うものとし、具体的には、エンジン10のアイドル回転速度(例えば700rpm)よりも高いエンジン回転速度であるモータ始動回転速度NEa(例えば1000〜2000rpm)でエンジン回転速度が安定するまで、エンジン10の燃焼停止状態でモータ28によるエンジン出力軸25の回転を実施することとしている。つまり、エンジン始動に際しては、エンジン運転効率を高めるべく、エンジン運転効率がさほど良好でない低回転域ではモータ28によりエンジン出力軸25を回転させるものとし、エンジン回転速度がモータ始動回転速度NEaまで上昇し、かつその回転速度NEaで安定した状態になった後に、モータ28による回転からエンジン10の燃焼による回転に切り替えるべく、エンジン10の燃焼を再開するようにしている。この場合、車両の共振回転速度域(例えば400〜500rpm)を迅速に通過した後にエンジン10の燃焼が開始されることにより、エンジン始動時における車両の振動を抑制できる点においても有意である。さらに、エンジン10において空気の流速が比較的速い状態で初回の燃料噴射及び点火を行うことができ、より少ない燃料量でエンジン10を確実に始動できる点においても有意である。
【0038】
なお、モータ始動回転速度NEaは、所謂スタータモータのクランキング回転速度(例えば200rpm)よりも高い回転速度でもある。
【0039】
ところで、アイドルストップ制御や車両走行モードの切り替えに伴いエンジン10の自動停止及び再始動を行う場合、エンジン停止時であれば、エンジン10の燃焼を停止してからエンジン出力軸25の回転が停止するまでの期間、エンジン再始動時であれば、モータ28により出力軸25の回転を開始してから燃焼が再開されるまでの期間では、エンジン10の燃焼停止状態においてエンジン出力軸25が回転された状態、すなわちエンジン10が空回しされた状態になる。このエンジン空回し状態では、吸気管11に導入された空気が気筒を経由して排気管12内に流れ込み、更には触媒22に供給される。この場合、触媒22がリーン雰囲気に曝されることとなり、空気に含まれる酸素が触媒22に吸着される。つまり、触媒22の酸素吸着量(O2ストレージ量)が、HC,COの酸化とNOxの還元との双方を適正に実施可能な中立状態に保たれず、酸素の吸着過多の状態になることが考えられる。このような酸素吸着過多の状態では、次回のエンジン10の燃焼再開時において、触媒22が排気中のNOxから酸素を奪うことができず、その結果、NOx浄化を適正に実施できないおそれがある。
【0040】
特に、本システムでは、エンジン10のクランキングに際し、エンジン回転速度を比較的高いモータ始動回転速度NEa(1000〜2000rpm)まで上昇させ、その回転速度NEaで安定化するのを待ってからエンジン10の燃焼を再開する。そのため、エンジン10が空回し状態で保持される時間が長くなり、触媒が酸素過多の状態になりやすいことが考えられる。また、モータ始動回転速度NEaが比較的高いことから、エンジン空回しの状態での空気の流速が速くなり、その結果、触媒22に送られる空気量(酸素量)が多くなる、つまり触媒22での酸素吸着過多の状態が起きやすいと考えられる。
【0041】
そこで、本実施形態では、エンジン停止に伴うエンジン10の燃焼停止状態においてエンジン出力軸25が回転した状態となるエンジン空回し状態になるための空回し条件が成立したか否かを判定し、空回し条件が成立したと判定された場合に、そのエンジン空回し状態においてエンジン10から触媒22への空気の供給を制限することとしている。
【0042】
詳細には、本実施形態では、EGR弁24を、エンジンから前記排気浄化触媒への空気の供給を制限する供給制限手段として用い、上記空回し条件が成立した場合、ここではエンジン10の停止要求があった場合に、EGR弁24を閉弁した状態から開弁した状態、より具体的には全閉状態から全開状態に切り替える。これにより、エンジン停止要求からエンジン回転が停止するまでの期間、及びエンジン停止後の再始動要求に伴い始動装置によりエンジン出力軸を回転させる期間、触媒22への空気の供給を制限する。そして、エンジン10の燃焼を再開する前に、EGR弁24を閉弁状態(全閉)に切り替え、触媒22への空気の供給制限を解除する。
【0043】
図2は、エンジン10の停止要求があってから、再始動要求に伴いエンジン10の燃焼を再開するまでの期間におけるEGR弁24の開度及びO2ストレージ量の推移を示すタイムチャートである。図中、(a)はエンジン回転速度、(b)はエンジン10の燃焼/燃焼停止、(c)はEGR弁の開度、(d)は触媒22のO2ストレージ量の推移をそれぞれ示す。また、図中、実線は、エンジン10の空回し状態において触媒22への空気の供給を制限する場合を示し、一点鎖線は、触媒22への空気の供給制限を実施しない場合を示している。
【0044】
本実施形態では、図2の実線で示すように、エンジン運転中にエンジン10の停止要求があった場合、その要求タイミングt11から、予め定めたディレイ時間TAが経過した後のタイミングt12で、EGR弁24を全閉状態から全開状態に切り替える。ここで、ディレイ時間TAは、気筒内及び触媒22上流側の排気管12内に残留している排気が触媒22下流側まで排出されるまでに要する時間として定めてある。
【0045】
エンジン停止要求後におけるエンジン10の運転停止期間では、EGR弁24の全開状態をそのまま保持する。このエンジン運転停止状態において再始動要求があった場合、その要求タイミングt14でモータ28によるエンジン10のクランキングを開始し、エンジン回転速度NEを上昇させる。そして、エンジン回転速度NEが、アイドル回転速度よりも高いモータ始動回転速度NEa(本実施形態では1000〜2000rpm)に達し、その回転速度NEaにおいて所定時間の間エンジン10が安定した状態が継続されると、タイミングt15でEGR弁24を閉弁状態に切り替える。また、その切替タイミングt15から所定時間TBが経過した後のタイミングt16で、エンジン10の燃料噴射及び点火を再開する。
【0046】
なお、所定時間TBは、EGR弁24を全閉状態にするための信号を出力してから、EGR弁24の実開度が全閉開度になるまでに要する時間に基づき定めてある。つまり、本実施形態では、EGR弁24が全閉状態になった後に燃料噴射及び点火を再開することとしている。
【0047】
エンジン空回し状態においてEGR弁24を開弁する場合(実線の場合)、EGR弁24の閉弁状態を維持する構成(一点鎖線の場合)に比べて、エンジン10の空回し状態において触媒22に供給される空気量が低減され、これにより、触媒22のO2ストレージ量の増加が抑制される。つまり、エンジン10の燃焼再開時に、触媒22のO2ストレージ量を適正な量にしておくことができ、その結果、エンジン10の燃焼開始当初から排気中のHCやCO,NOxの還元を適正に実施することが可能になる。
【0048】
次に、本システムのエンジン制御の処理手順について、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。ここで、図3は、エンジン10の停止要求があった場合の処理手順を示すフローチャートであり、図4は、エンジン停止要求後においてエンジン10の再始動要求があった場合の処理手順を示すフローチャートである。これらの処理は、ハイブリッドECU60により所定周期毎に実行される。
【0049】
図3において、まずステップS11では、エンジン10の停止要求があったか否かを判定する。停止要求としては、アイドル停止条件の成立に伴うものや、車両走行モードの切り替えに伴うもの等を含む。停止要求があった場合、ステップS12へ進み、燃料噴射及び点火を停止する。
【0050】
ステップS13では、エンジン停止要求のタイミングからディレイ時間TAが経過したか否かを判定する。そして、ディレイ時間TAが経過したことを条件にステップS14へ進み、EGR弁24を全閉状態から全開状態に切り替え、本処理を終了する。
【0051】
続いて、エンジン停止後にエンジン10の再始動要求があった場合の処理について、図4を用いて説明する。図4において、まずステップS21では、エンジン停止後にエンジン10の再始動要求があったか否かを判定する。再始動要求としては、アイドル再始動条件の成立に伴うものや、車両走行モードの切り替えに伴うもの、具体的には、モータ走行中における高圧バッテリ35の充電要求に伴うものや、車両の加速要求や高速走行要求といった車両走行要求に伴うものなどを含む。そして、エンジン再始動要求があった場合にステップS22へ進む。
【0052】
ステップS22では、モータ28の通電を開始してエンジン10のクランキングを開始する。また、ステップS23では、エンジン回転速度がモータ始動回転速度NEaで安定した状態になったか否かを判定する。エンジン回転速度がモータ始動回転速度NEa付近で維持される状態が所定時間継続し、エンジン回転速度がモータ始動回転速度NEaで安定した状態になったと判定されると、ステップS24へ進み、EGR弁24を全開状態から全閉状態に切り替える。その後、ステップS25において、EGR弁24の全閉への切替後、所定時間経過したタイミングで燃料噴射及び点火を開始する。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0054】
エンジン停止に伴うエンジン10の燃焼停止状態においてエンジン出力軸25が回転した状態となるエンジン空回し状態になるための空回し条件が成立したか否かを判定し、空回し条件が成立したと判定された場合に、そのエンジン空回し状態においてエンジン10から触媒22への空気の供給を制限する構成としたため、触媒22に酸素が過剰に吸着されるのを回避することができる。これにより、次回のエンジン10の燃焼再開時においてNOx還元を適正に実施することができ、ひいては排気浄化を適正に実施することができる。
【0055】
また、エンジン空回し状態においてエンジン10から触媒22への空気の供給を制限する構成であることから、触媒22への空気の供給制限を実施しない場合に比べて、触媒22に吸着される酸素量を少なくできる。よって、エンジン始動時において燃焼開始前では、触媒22を中立状態にするための燃料(HC)の供給が不要であるか、又は必要であっても、その燃料量をできるだけ少なくすることができる。
【0056】
エンジン再始動時では、触媒22への空気の供給制限の状態になった後にモータ28によるエンジン10のクランキングが開始される構成としたため、触媒22への空気の供給制限を、エンジン10のクランキング開始当初から実施することができる。
【0057】
エンジン停止要求があった場合に、エンジン空回し条件が成立したものとして触媒22への空気の供給制限を開始し、その後、エンジン10の燃焼を再開するまでの期間、その空気の供給制限状態を維持する構成としたため、エンジン停止/再始動の一連の流れにおいて触媒22の酸素吸着を抑制できる。
【0058】
エンジン10のクランキングに際し、エンジン回転速度を比較的高いモータ始動回転速度NEaまで上昇させ、その回転速度NEaで安定化するのを待ってからエンジン10の燃焼を再開する構成では、エンジン10が空回し状態で保持される時間が長くなり、触媒22が酸素過多の状態になりやすいと考えられる。このような構成に本発明を適用することにより、排気浄化を適正に実施できるといった効果を好適に得ることができる。
【0059】
触媒22への空気の供給制限をEGR弁24により行う構成とし、エンジン空回し条件が成立した場合にEGR弁24を開弁状態にすることにより、エンジン10から触媒22へ流れる空気の少なくとも一部を吸気側に戻すことができる。よって、EGR装置を有するシステムでは、エンジン空回り状態における触媒22の酸素吸着の抑制を、新たな構成を追加することなく実施することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、上述した第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記実施形態では、エンジン停止要求があった場合に、エンジン空回し条件が成立したものとしてEGR弁24を全開状態に切り替える構成としたが、本実施形態ではこの構成を変更する。すなわち、本実施形態では、エンジン停止後においてエンジン10の再始動要求があった場合に、エンジン空回し条件が成立したものとしてEGR弁24を全開状態に切り替える。
【0061】
図5は、本実施形態のエンジン制御の具体的態様を示すタイムチャートである。図中、(a)はエンジン回転速度、(b)はエンジン10の燃焼/燃焼停止、(c)はモータ28の駆動/駆動停止、(d)はEGR弁24の開度の推移をそれぞれ示す。また、(d)中、一点鎖線はEGR弁24の目標開度の推移を示し、実線は実開度の推移を示している。
【0062】
図5において、エンジン停止要求後では、EGR弁24の目標開度は全閉開度に設定されている。そして、エンジン停止後、エンジン10の再始動要求があった場合、その要求タイミングt21でEGR弁24の目標開度を全閉開度から全開開度に変更する。これにより、EGR弁24が全開状態に切り替わる。
【0063】
続いて、要求タイミングt21から切替所要時間TCが経過した後のタイミングt22で、モータ28の駆動を開始する。ここで、切替所要時間TCは、EGR弁24の目標開度を全開開度に変更してから、EGR弁24が全開状態になるまでに要する時間に基づき定めてあり、その所要時間よりも大きい値としてある。つまり、本実施形態では、EGR弁24が全開状態になった後にモータ28によるエンジン出力軸25の回転(クランキング)を行うものとしている。
【0064】
エンジン10のクランキングに伴い、エンジン回転速度NEがモータ始動回転速度NEa(本実施形態では1000〜2000rpm)に達し、その回転速度NEaにおいて所定時間エンジン10が安定した状態が継続されると、タイミングt23でEGR弁24の目標開度を全閉開度に変更する。これにより、EGR弁24が全閉状態に切り替わる。また、EGR弁24が全閉状態に切り替わった後のタイミングt24で、エンジン10の燃料噴射及び点火を再開する。
【0065】
次に、本実施形態のエンジン再始動時におけるエンジン制御の処理手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ハイブリッドECU60により所定周期毎に実行される。なお、上記第1の実施形態における図4と同じ処理については、図4と同じステップ番号を付してその説明を省略する。
【0066】
図6において、まずステップS31では、図4のステップS21と同じ処理、すなわちエンジン停止後にエンジン10の再始動要求があったか否かの判定を実行し、同要求があった場合には、ステップS32において、EGR弁24を全開状態に切り替える。
【0067】
続くステップS33では、モータ28の回転の許否、すなわち、触媒22の上流側から下流側への空気の流通を許可するか否かを判定する。ここでは、EGR弁24の目標開度を全開開度に変更してから、EGR弁24が全開状態になるまでに要する時間(切替所要時間TC)が再始動要求のタイミングから経過したか否かを判定する。そして、再始動要求タイミングから切替所要時間TCが経過したと判定された場合にステップS34へ進み、モータ28の回転を開始して、エンジン10のクランキングを行う。その後、ステップS35〜S37では、図4のステップS23〜S25と同じ処理をそれぞれ実行し、本処理を終了する。
【0068】
以上詳述した第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、触媒22に酸素が過剰に吸着されるのを回避することができる。これにより、次回のエンジンの燃焼再開時においてNOx還元を適正に実施することができ、ひいては排気浄化を適正に実施することができる。
【0069】
また特に、エンジン停止後においてエンジン10の再始動要求があった場合に、エンジン空回し条件が成立したものとしてEGR弁24を開弁状態に切り替える構成とし、EGR弁24の開度が目標開度になった後にモータ28の駆動を開始する構成としたため、クランキング期間において触媒22へ供給される空気量をできるだけ小さくすることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態との相違点を中心に説明する。上記実施形態では、供給制限手段をEGR弁24とし、エンジン空回し条件が成立した場合にEGR弁24の開度を変更することにより、エンジン空回し状態において触媒22への空気の供給を制限する構成としたが、本実施形態ではこの構成を変更する。すなわち、本実施形態では、供給制限手段として、排気通路において、触媒22の上流側であってEGR配管23との接続部分よりも下流側に、排気流量を調整する制御弁を配置する。そして、エンジン空回し条件が成立した場合、上記制御弁の開度を制御することにより、エンジン空回し状態において触媒22への空気の供給を制限する。
【0071】
図7は、本制御システムの全体概略を示す構成図である。なお、図7では、モータ28等のハイブリッドシステムについては図示を省略している。
【0072】
図7に示すように、排気管12には触媒22が配置されており、触媒22の上流側において、EGR配管23により排気系と吸気系とが接続されている。また、排気管12には、触媒22の上流側であってEGR配管23との接続部分よりも下流側に、開閉に伴い流路断面積を変更するシャッターバルブ41が設けられている。シャッターバルブ41は、モータ等からなるアクチュエータ42により電気的に開閉駆動される流量調整手段である。シャッターバルブ41の開弁状態では、触媒22への空気の流通が許容され、閉弁状態に切り替えられることで触媒22への空気の流通が制限される。
【0073】
本実施形態では、エンジン再始動要求があった場合に、シャッターバルブ41の開閉を切り替えることにより、具体的には、シャッターバルブ41を全開状態から、全閉又はほぼ全閉の状態に切り替えることにより、エンジン10の空回し状態において触媒22への空気の供給を制限する。
【0074】
ここで、シャッターバルブ41を全閉又はほぼ全閉の状態に切り替えた場合、シャッターバルブ41の上流側の圧力が高くなり、モータ28の駆動負荷が大きくなることが考えられる。この場合、モータ28の消費電力が大きくなったり、エンジン回転速度をモータ始動回転速度(本実施形態では1000〜2000rpm)で安定化させることができなかったりするおそれがある。
【0075】
そこで、本実施形態では、エンジン空回し条件が成立した場合、その空回し状態においてシャッターバルブ41を全閉状態にし、かつEGR弁24を開弁状態(本実施形態では全開状態)にする。これにより、シャッターバルブ41の全閉状態又はほぼ全閉状態により、触媒22への空気の供給が制限され、EGR弁24の開弁状態により、シャッターバルブ41上流側の圧力上昇を抑制し、モータ28の駆動負荷が大きくなるのを抑制するようにしている。
【0076】
なお、エンジン空回し状態でのEGR弁24の開度は、全開開度とする以外に、中間開度としてもよい。
【0077】
本実施形態のエンジン制御の具体的態様を、図8のタイムチャートを用いて説明する。図中、(a)はエンジン回転速度、(b)はエンジン10の燃焼/燃焼停止、(c)はモータ28の駆動/駆動停止、(d)はEGR弁24の開度、(e)はシャッターバルブ41の開度の推移をそれぞれ示す。また、(d)及び(e)中、一点鎖線は目標開度の推移を示し、実線は実開度の推移を示している。
【0078】
図8において、エンジン停止後、エンジン10の再始動要求があった場合、その要求タイミングt31でEGR弁24の目標開度を全開開度に変更し、シャッターバルブ41の目標開度を全閉開度に変更する。これにより、EGR弁24が全開状態に切り替わり、シャッターバルブ41が全閉状態に切り替わる。
【0079】
EGR弁24が全開状態になり、シャッターバルブ41が全閉状態になった後、そのタイミングt32でモータ28の回転を開始し、エンジン10のクランキングを開始する。つまり、EGR弁24が全開状態になり、かつシャッターバルブ41が全閉状態になった後に、モータ28によるエンジン出力軸25の回転(クランキング)を行うものとしている。
【0080】
そして、エンジン10のクランキングに伴い、エンジン回転速度NEがモータ始動回転速度NEa(例えば1000〜2000rpm)に達し、その回転速度NEaにおいて所定時間エンジン10が安定した状態が継続されると、タイミングt33で、EGR弁24の目標開度を全閉開度に変更し、シャッターバルブ41の目標開度を全開開度に変更する。これにより、EGR弁24が全閉状態に切り替わり、シャッターバルブ41が全開状態に切り替わる。また、EGR弁24及びシャッターバルブ41の開閉の切替後のタイミングt34で、エンジン10の燃料噴射及び点火を再開する。
【0081】
次に、本実施形態のエンジン再始動時におけるエンジン制御の処理手順について、図9のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ハイブリッドECU60により所定周期毎に実行される。なお、上記第2の実施形態における図6と同じ処理については、図6と同じステップ番号を付してその説明を省略する。
【0082】
図9において、まずステップS41では図6のステップS31と同じ処理を実行し、エンジン停止後において再始動要求があった場合、ステップS42において、シャッターバルブ41を全閉状態にし、EGR弁24を全開状態にする。
【0083】
ステップS43〜S45では、図6のステップS33〜S35と同じ処理を実行し、エンジン回転速度が安定した状態になった場合、ステップS46において、シャッターバルブ41を全開状態にし、EGR弁24を全閉状態にする。その後、ステップS47でステップS37と同じ処理を実行し、本処理を終了する。
【0084】
以上詳述した第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、触媒22に酸素が過剰に吸着されるのを回避することができる。これにより、次回のエンジンの燃焼再開時においてNOx還元を適正に実施することができ、ひいては排気浄化を適正に実施することができる。
【0085】
また特に、空回し条件が成立した場合に、シャッターバルブ41に加えてEGR弁24を制御する構成としたため、シャッターバルブ41により触媒22への空気の供給を制限できるとともに、その供給制限に伴う排気通路内の圧力上昇をEGR弁24により抑制できる。よって、触媒22への空気の供給制限に際し、シャッターバルブ41単独による制御に比べてモータ28の負荷を低減することができる。
【0086】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0087】
・エンジン停止後の再始動要求が、高圧バッテリ35の充電要求及び車両走行要求のいずれであるかに応じて、エンジン空回し状態における触媒22への空気の供給制限を実施するか否かを切り替える。車両走行要求があった場合、具体的には、アイドル再始動条件の成立に伴いエンジン10を再始動させる場合や、モータ走行中に車両の加速要求や高速走行要求に伴いエンジン10を再始動させる場合には、走行性優先のため、エンジン回転速度がモータ始動回転速度NEaで安定化するのを待つことなく燃焼を開始するのが望ましい。ここで、エンジン回転速度の安定化を待たずに燃焼を再開する場合では、エンジン10が空回り状態になる時間が短く、触媒22に供給される空気量はさほど多くない、つまり触媒22への空気の供給制限をそもそも実施する必要がないと考えられる。したがって、エンジン再始動要求が充電要求によるものの場合には、エンジン空回し状態における触媒22への空気の供給制限を実施するのに対し、車両走行要求によるものの場合には、その空気の供給制限を実施しない構成とする。こうすることにより、NOx浄化の適正化と走行性確保とをバランスよく実現することができる。
【0088】
・上記第3の実施形態において、エンジン空回し状態のときにEGR弁24を開弁状態に制御しない構成とする。つまり、エンジン空回し状態において、シャッターバルブ41を開弁状態から閉弁状態に切り替え、EGR弁24を開弁状態のまま維持する。この場合であっても、シャッターバルブ41によって触媒22への空気の供給が制限され、触媒22のO2ストレージ量の適正化を図ることができる。
【0089】
・上記実施形態では、エンジン停止要求に伴いエンジン10を停止し、その後、再始動要求があったときにエンジン再始動を行う場合について説明したが、IGスイッチ39のオフへの切り替えに伴いエンジン10を停止し、その後、IGスイッチ39のオンへの切替に伴いエンジン10を暖機再始動する場合にも適用できる。この場合、エンジン空回し条件を、例えばIGスイッチ39のオフへの切り替えがあり、かつそのオフ切り替えから所定時間内に同スイッチ39のオンへの切り替えがあったこととする。この場合、IGスイッチ39のオフ時にはEGR弁24を閉弁したままにしておく。そして、IGスイッチのオフ切替タイミングから所定時間内にIGスイッチのオンへの切り替えがあった場合に、例えばハイブリッドECU60のメインリレーによってEGR弁24を開弁状態に切り替え、その状態でエンジン10のクランキングを行う。
【0090】
あるいは、エンジン空回し条件を、IGスイッチ39のオフへの切り替えがあったこととしてもよい。この場合、EGR弁24の開弁状態をその切替タイミングから所定の開弁許容時間継続する。なお、EGR弁24の開弁状態は、例えばハイブリッドECU60のメインリレーによって維持する。そして、開弁許容時間内にエンジン再始動要求があり、エンジン10のクランキングが開始された場合、そのクランキングの実施期間においてEGR弁24の開弁状態を維持し、その後、燃料噴射及び点火開始前にEGR弁24を閉弁状態に切り替える。
【0091】
・EGR弁24及びシャッターバルブ41の少なくともいずれかについて、エンジン空回し状態での開度を可変にする。例えば、空燃比センサの出力に基づいて触媒22のO2ストレージ量を推定し、その推定したO2ストレージ量に応じてEGR弁24又はシャッターバルブ41の開度を設定する。このとき、推定O2ストレージ量が多いほど、EGR弁24の開度を大きくし、シャッターバルブ41の開度を小さくする。
【0092】
・エンジン停止要求があった後、次回のエンジン再始動要求があるまでの期間においてエンジン空回し状態における触媒22への空気の供給を制限し、再始動要求後においてその供給制限を実施しない構成とする。
【0093】
・触媒22への空気の供給を制限する供給制限手段として、EGR弁24や、排気管12に設けたシャッターバルブ41を用いる構成としたが、供給制限手段はこれらに限定しない。例えば、触媒22が配置された排気管12に対し、触媒22の上流側において排気管12から分岐する分岐配管を設け、その分岐配管に開閉弁を設ける。そして、エンジン空回し状態において、分岐配管の開閉弁を流量増大側(開弁側)に切り替える。この場合であっても、触媒22へ供給される空気量を減らすことができ、エンジン始動時における触媒22のO2ストレージ量が過多になるのを抑制できる。
【0094】
・上記第1の実施形態において、EGR弁24の開弁タイミングを、エンジン自動停止の要求タイミングt11からディレイ時間TAが経過した後のタイミングt12とする構成に代えて、要求タイミングt11の直後のタイミングとしてもよい。
【0095】
・上記第2の実施形態及び第3の実施形態において、モータ28の回転開始タイミング(t22,t32)を、エンジン再始動要求のタイミング(t21,t31)としてもよい。
【0096】
・上記実施形態では、車両の動力源としてのモータ28をエンジン10の始動装置として用いる構成について説明したが、始動装置としてスタータモータを備える構成を本発明に適用してもよい。この構成では、エンジン再始動時における燃焼開始前に、スタータモータによりエンジン回転速度がクランキング回転速度(例えば200rpm)まで上昇され、その上昇後、燃焼が再開されるまでの間、エンジン10が空回りした状態になる。よって、この空回り状態において触媒22への空気の供給を制限することにより、触媒22が酸素過多の状態になるのを抑制することができ、NOx浄化を適正に実施することが可能になる。
【0097】
・動力源として、アイドルストップ機能を有するエンジン10のみを備え、始動装置としてスタータモータを備える構成に本発明を適用する。この構成では、アイドルストップ機能によりエンジンの自動停止と自動再始動とが繰り返し実施されることにより、エンジン10の空回り状態が頻繁に生じ、これにより、その空回り状態において触媒22に空気が供給されることが考えられるからである。
【0098】
・上記実施形態では、動力分配装置26を介してエンジン10がモータ28に接続される構成のハイブリッド車両に本発明を適用したが、ハイブリッド車両の構成はこれに限定しない。例えば、エンジン10とモータ28とが直接接続された構成であってもよいし、エンジン10とモータ28とが異なる駆動軸に動力を出力する構成であってもよい。また、エンジン10と、電動機としての第1のモータと、発電機としての第2のモータとを備える構成であってもよい。さらに、エンジン10はガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンとしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…エンジン、22…触媒、23…EGR配管、24…EGR弁(供給制限手段)、25…エンジン出力軸、28…モータ(走行用モータ、発電機)、35…高圧バッテリ(蓄電装置)、41…シャッターバルブ(供給制限手段)、50…エンジンECU、60…ハイブリッドECU(条件判定手段、制限制御手段、再始動制御手段、要求内容判定手段、)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの始動装置と、該エンジンの排気通路に配置され酸素を吸着又は放出する排気浄化触媒とを備えるシステムに適用され、エンジン停止後、前記エンジンの再始動要求があった場合に、前記始動装置により該エンジンの出力軸を回転させてエンジン再始動を行うエンジン制御装置において、
エンジン停止に伴う前記エンジンの燃焼停止状態において前記出力軸が回転した状態となるエンジン空回し状態になるための空回し条件が成立したか否かを判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段により前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記エンジンから前記排気浄化触媒への空気の供給を制限する供給制限手段を、前記エンジン空回し状態において空気供給制限の状態に制御する制限制御手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記制限制御手段により前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御した後に、前記始動装置による前記出力軸の回転を開始する請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
所定の停止条件が成立した場合に前記エンジンの自動停止を行うとともに、前記停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記再始動要求があったものとしてエンジン再始動を行うエンジン制御装置において、
前記条件判定手段は、前記停止条件が成立した場合に前記空回し条件が成立したものと判定し、
前記制限制御手段は、前記条件判定手段により前記停止条件が成立したと判定されてから、前記再始動条件の成立に伴い前記エンジンの燃焼を再開するよりも前までの期間で、前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御する請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記エンジンに加え、走行用モータを動力源として備える車両に適用され、
前記走行用モータが前記始動装置として機能するものであり、
前記再始動要求に伴う前記始動装置による前記出力軸の回転実施期間において前記エンジンの回転速度が所定の回転速度で安定した状態になったことを判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段により前記回転速度が安定した状態になったと判定された後に前記エンジンの燃焼を再開する再始動制御手段と、を備え、
前記制限制御手段は、前記再始動要求に伴う前記エンジンの再始動に際し、前記再始動制御手段により前記燃焼が再開される前の期間で前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記出力軸の回転により発電する発電機と、該発電機と電力のやり取りが可能な蓄電装置とを備える車両に適用され、
前記発電機が前記始動装置として機能するものであり、
前記条件判定手段は、前記空回し条件の成立が、前記蓄電装置の充電要求による前記再始動要求及び車両走行要求による前記再始動要求のいずれによるものかを判定し、
前記制限制御手段は、前記条件判定手段により、前記空回し条件の成立が前記充電要求による前記再始動要求であると判定された場合に、前記供給制限手段を前記空気供給制限の状態に制御し、前記車両走行要求による前記再始動要求であると判定された場合に、前記供給制限手段を前記空気の供給が制限されていない状態に制御する請求項4に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記排気通路において前記排気浄化触媒の上流側と前記エンジンの吸気系とを接続するEGR通路と、同EGR通路に配置され前記エンジンの排気を前記吸気系に還流させる還流量を調整するEGR弁とを備えるシステムに適用され、
前記供給制限手段は前記EGR弁であり、
前記制限制御手段は、前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記還流量を増量する側に前記EGR弁を制御する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記排気通路において前記排気浄化触媒の上流側に、前記エンジンから前記排気浄化触媒への空気の流量を調整する流量調整弁が配置されており、
前記供給制限手段は前記流量調整弁であり、
前記制限制御手段は、前記空回し条件が成立したと判定された場合に、前記空気の流量を減量する側に前記流量調整弁を制御する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−247166(P2011−247166A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120907(P2010−120907)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】