説明

カーナビゲーション装置及び地図情報

【課題】データベースの記憶容量の増大を招くことなく、ユーザの安全走行に必要な情報を提示することができるカーナビゲーション装置及び地図情報を提供すること。
【解決手段】本発明によるカーナビゲーション装置1は、自車位置を測定する測位手段と、前記自車位置とノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの地図情報とを用いて自車の地図上の位置を特定する特定手段と、自車周辺情報を認識する認識手段と、自車が交差点範囲内に位置するかどうかを判定する判定手段と、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記交差点範囲内の幾何学的情報を取得する処理手段とを備えるとともに、自車が前記交差点範囲内に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記交差点範囲内の幾何学的情報に基づいてメトリックマップを作成する学習手段2を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備されるカーナビゲーション装置及び地図情報に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの利便性を高める目的で、多くの車両に、自車両の位置と目的地、それらの最短時間あるいは最短距離の経路をあらかじめデータベースに格納された探索用地図情報を用いて探索して、自車両の位置と目的地および探索された経路を表示用地図情報とともにユーザに提示するカーナビゲーション装置が装備されている。
【0003】
このカーナビゲーション装置に用いられる地図情報は、最新情報をもとに更新されることが好ましいため、例えば、特許文献1に記載されているような学習機能を有するカーナビゲーション装置が提案されている。このカーナビゲーション装置では、あらかじめ車両のデータベースに格納されている地図情報に存在しない新設道路が存在した場合に、その新設道路を地図情報に新たに登録することができる。
【特許文献1】特開2003−42775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなカーナビゲーション装置では、地図情報がノードとリンクを組み合わせた、いわゆるトポロジカルマップにより構成されているため、ユーザが車両をより安全に走行できるよう、交差点の形状や信号の有無等のより詳細な情報を学習しユーザに提示しようとする場合に、その要求を満足することができないという問題が生じた。かといって、交差点の形状や信号の有無等の交差点の幾何学的情報を表示できるメトリックマップにより全ての地図情報を構成すると、今度はデータベースの記憶容量の増大を招いてしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、データベースの記憶容量の増大を招くことなく、ユーザの安全走行に必要な情報を提示することができるカーナビゲーション装置及び地図情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明によるカーナビゲーション装置は、
自車位置を測定する測位手段と、前記自車位置とノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの地図情報とを用いて自車の地図上の位置を特定する特定手段と、自車周辺情報を認識する認識手段と、自車が交差点範囲内に位置するかどうかを判定する判定手段と、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記交差点範囲内の幾何学的情報を取得する処理手段とを備えるとともに、自車が前記交差点範囲内に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記交差点範囲内の幾何学的情報に基づいてメトリックマップを作成する学習手段を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、トポロジカルマップとはノードとリンクから構成される地図情報のことであり、ノードとは、一般に道路の交差点、車線数や幅員が変更する点などを指し、リンクは、隣接するノードを連結するベクトルで表され、リンクが含む道路情報にはリンクの距離、方向、幅員、車線数、一方通行等の情報が含まれる。また、メトリックマップとは、交差点に代表される道路の幾何学的形状を表現することができる、画像をグリッド処理して作成した地図情報を言う。
【0008】
ここで、前記処理手段が、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記交差点範囲外の道路情報を取得するとともに、自車が前記交差点範囲外に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記交差点範囲外の道路情報に基づいて前記学習手段がトポロジカルマップを作成することが好ましい。これにより、前記交差点範囲外範囲外においても、処理手段の取得した道路情報をもとにトポロジカルマップを構成するノード及びリンクをより正確に作成し学習することができる。
【0009】
加えて、前記判定手段が前記交差点範囲を、前記交差点を構成するリンクの有する道路情報の幅員に基づいて求めることが好ましい。これによれば、より簡易な手法で、前記交差点範囲を定めることができる。
【0010】
さらに、前記判定手段が前記交差点範囲を、前記交差点を構成するノードを中心とし、前記交差点を構成するリンクの有する道路情報の幅員の最大値に基づいた長さを半径とする円の内側範囲として求めることが好ましい。これにより、より簡易な手法で、前記交差点範囲を定めることができる。
【0011】
加えて、前記学習手段が、前記円と前記交差点を構成するリンクとの交点を新たなノードとして認識するとともに、当該新たなノードに基づいて当該交差点を構成するノードを修正することが好ましい。これにより、当該交差点を構成するノードを新たに学習した当該ノード周辺のノードにより修正することができる。
【0012】
さらに、前記学習手段が、前記交差点が四叉路である場合に、前記新たなノードの向かい合う二対のノードを結ぶ二対の直線の交点を用いて、当該交差点を構成するノードを修正することが好ましい。これにより、より簡易な手法で、当該交差点を構成するノードを修正することができる。
【0013】
本発明は以上述べた交差点範囲によるメトリックマップとトポロジカルマップの使い分けによる学習以外にも、以下の形態において適用可能である。すなわち、本発明によるカーナビゲーション装置は、
自車位置を測定する測位手段と、前記自車位置とノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの地図情報とを用いて自車の地図上の位置を特定する特定手段と、自車周辺情報を認識する認識手段と、自車が所定の範囲内に位置するかどうかを判定する判定手段と、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記所定の範囲内の幾何学的情報を取得する処理手段とを備えるとともに、自車が前記所定の範囲内に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記所定の範囲内の幾何学的情報に基づいてメトリックマップを作成する学習手段を備えることを特徴としてもよい。
【0014】
ここで、前記処理手段が、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記所定の範囲外の道路情報を取得するとともに、自車が前記所定の範囲外に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記所定の範囲外の道路情報に基づいて前記学習手段がトポロジカルマップを作成することが好ましい。これにより、前記所定の範囲外においても、処理手段の取得した道路情報をもとにトポロジカルマップを構成するノード及びリンクをより正確に作成し学習することができる。
【0015】
さらに、前記所定の範囲を事故多発区間とすることもできる。あるいは、前記所定の範囲をユーザが指定する範囲とすることもできる。これにより、交通情報に基づきあるいはユーザの判断に基づき、メトリックマップを作成する場合と、トポロジカルマップを作成する場合とを峻別することができる。
【0016】
また、本発明による地図情報は、カーナビゲーション装置の自車位置又は探索経路の表示若しくは探索に用いられる地図情報であって、いずれかの交差点範囲内はメトリックマップとトポロジカルマップの双方により構成され、当該交差点範囲外はトポロジカルマップにより構成されることを特徴とする。
【0017】
あるいは、本発明による地図情報は、
カーナビゲーション装置の自車位置又は探索経路の表示若しくは探索に用いられる地図情報であって、所定の範囲内はメトリックマップとトポロジカルマップの双方により構成され、当該所定の範囲外はトポロジカルマップにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、データベースの記憶容量の増大を招くことなく、ユーザの安全走行に必要な情報を学習しユーザに提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係るカーナビゲーション装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0021】
カーナビゲーション装置1は、カーナビゲーションECU2と、GPSアンテナ3、イナーシャメジャメントユニット(IMU)4、アンチロックブレーキシステム(ABS)5、ステアリングセンサ6、受信器7、データベース8、ディスプレイ9、スピーカ10、タッチパネル11、カメラ12、レーザレンジファインダ13、記憶媒体14とから構成される。
【0022】
カーナビゲーションECU2(Electronic Control Unit)は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる処理を行うものである。
【0023】
カーナビゲーションECU2にはGPS受信アンテナ3と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)4と、ステアリングセンサ6と、ディスプレイ9と、スピーカ10と、タッチパネル11と、受信器7と、データベース8と、カメラ12、レーザレンジファインダ13、記憶媒体14が接続され、さらに、ABS(アンチロックブレーキシステム)5がCANあるいはFrexRay等の通信規格により接続される。
【0024】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信アンテナ6は、地球上空に打ち上げられた複数の軍事衛星の内三個の軍事衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU2は、三角測量の原理で自車の位置つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の軍事衛星を用いる。
【0025】
ここで、IMU4は車両のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ6は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。タッチパネル11はユーザが目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベース8はCD−ROMやDVD−ROMあるいはハードディスク等の記憶媒体により構成され、ノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。ディスプレイ9は入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU2が探索した探索ルートを表示用の地図情報とともに表示するものである。また、ABS5は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得している。
【0026】
さらに、受信器7は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの道路情報を受信する。VICSは、警察が収集した一般路の情報と道路公団が収集した高速道路の情報がVICSセンターに送られて、そこで編集された情報がFM多重放送、電波ビーコンあるいは光ビーコンにより発信されるものである。
【0027】
VICSの発信する情報は渋滞情報(渋滞区間とその距離)が主であるが、自車の現在地からの所要時間、交通規制、速度規制、チェーン規制、駐車場情報、地震・津波などの緊急情報も含む。送信の方式としては、FM多重放送(NHKのFMを利用した広域通信方法)、電波ビーコン(主に高速道路に設置された通信方法)、光ビーコン(赤外線を利用した通信方法で主要一般道路に設置)という三つがあり、情報送信方法それぞれに異なる受信器が必要となるが、光あるいは電波ビーコンに準拠した受信器がないと、DRG(Dynamic Route Guidance)という渋滞区間回避経路の探索はできないため、受信器10は前述したように光あるいは電波ビーコンに準拠したものとすることが好ましい。なお、VICSの発信する情報は、文字表示、簡易図形表示、地図表示の三方法により表示される。
【0028】
上述したGPS受信アンテナ6を用いた自車の位置の測定は、軍事衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは電波をGPS受信アンテナ6が受信できないため、自車の位置が測定できないという問題が生じる。
【0029】
このため、上述したようなGPS受信アンテナ6が電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU2は、ABS5が検出した車速とIMU4が検出したヨーレート、ステアリングセンサ6が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算して自車の位置を測定し、GPS受信アンテナ6を用いた自車の位置の測定と併せて、トータルの自車位置の測定の精度を高めている。なお、車速はABS5から取得することに限られず、例えばVSC(Vehicle Dynamic Control)やECB(電子制御ブレーキ)などを搭載した車両であればそれらの装置から取得することも可能である。
【0030】
そして、カーナビゲーションECU2は、データベース8内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置と、タッチパネル11により入力された目的地と、受信器7により受信した渋滞区間等の情報とを併せて地図上の自車の位置を特定しディスプレイ9に表示する。これとともに、カーナビゲーションECU2はデータベース8内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置とを照合して、自車が交差点範囲内にあるかどうかを判定する。
【0031】
カメラ12は、自車の周辺情報を認識するためのものであり、例えば車両室内のウインドシールド中央上部に、車両前方に光軸が合致するように配設され、車両の前方を撮像する。撮像された画像は、カーナビゲーションECU2により水平面内の幾何学的情報(上方視)に変換処理される。
【0032】
レーザレンジファインダ13も、自車の周辺情報を認識するためのものであり、例えば車両室内のウインドシールド中央上部に、車両前方に光軸が合致するように配設され、車両の前方の一定範囲に存在する物体との距離を測定する。測定された情報は、カーナビゲーションECU2によりこれも水平面内の幾何学的情報(上方視)に変換処理される。
【0033】
カーナビゲーションECU2が、自車が交差点範囲内にあると判定する場合には、カメラ12およびレーザレンジファインダ13により取得した幾何学的情報(交差点形状、歩道の縁石の位置や形状、右折レーン、標識の有無等)に基づいて、カーナビゲーションECU2は例えば図2に示すような交差点範囲内のメトリックマップを作成する。また、カーナビゲーションECU2が、自車が交差点範囲外にあると判定する場合には、これらの幾何学的情報に基づいて、道路線形、車線数、幅員等の道路情報を認識し、図3に示すような、交差点範囲外の道路のトポロジカルマップを作成する。さらに、カーナビゲーションECU2は、これらのメトリックマップとトポロジカルマップを統合して図4に示すような学習ファイルを作成し、この学習ファイルを記憶媒体14に格納する。記憶媒体14内に過去に格納した学習ファイルが存在する場合には、新たに作成した学習ファイルにより過去の学習ファイルを修正するあるいは上書きする。
【0034】
さらに、カーナビゲーションECU2は記憶媒体14に格納した学習ファイルと、データベース8内の地図情報とを統合(トポロジカルマップを、リンクの有する車線数と幅員を用いて模式的に復元した後、メトリックマップと統合する。)して、ディスプレイ9上に表示する。
【0035】
なお、データベース8が読み書き自在のハードディスク等により構成されている場合は、データベース8内の地図情報と学習ファイルを統合して、データベース8内に格納することも可能である。
【0036】
前述した自車が交差点範囲内にあるかどうかの判定は、具体的な以下のような手法を用いる。図5は本発明によるカーナビゲーション装置に用いる地図情報を示す模式図である。
【0037】
図5に示すようなノードとリンクからなるトポロジカルマップの地図上において、自車AがノードBに向かって走行している。ノードBには四つのリンクL1、L2、L3、L4が接続されて交差点が形成されており、自車AはリンクL4上を走行している。リンクL1、L2、L3、L4の有する道路情報から、リンクL1、L2、L3、L4の幅員がそれぞれW1、W2、W3、W4と求められる。幅員W1、W2、W3、W4の最大値がW4である場合に、半径R=W4であり、ノードBを中心とする半径Rである円Cを描き、その円Cの内側を交差点範囲内と定義する。これらを模式的に表すと図6のようになる。
【0038】
本発明によるカーナビゲーション装置1では上述したことに加えて、以下のような学習も行う。図7および図8は本発明によるカーナビゲーション装置に用いる地図情報を示す模式図である。
【0039】
図7に示すようなノードとリンクからなるトポロジカルマップの地図上において、ノードDには四つのリンクL5、L6、L7、L8が接続されて交差点が形成されており、リンクL5、L6、L7、L8の有する道路情報から、リンクL5、L6、L7、L8の幅員がそれぞれW5、W6、W7、W8と求められる。幅員W5、W6、W7、W8の最大値がW8である場合に、半径R=W8であり、ノードDを中心とする円Cを描き、その円Cの内側を交差点範囲内と定義する。図8に示すように、この円Cと交差点を構成するリンクL5、L6、L7、L8との交点を新たなノードE、F、G、Hとして学習するとともに、これらの新たなノードE、F、G、Hに基づいて交差点を構成するノードDを修正する。つまり、図8に示すように、交差点が四叉路である場合に、新たなノードE、F、G、Hの向かい合う二対のノードを結ぶ二対の直線EG、FHの交点DSを用いて、交差点を構成するノードDを修正し、交点DSを新たなノードとして認識する。
【0040】
以上述べた本発明によるカーナビゲーション装置の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図9は本発明によるカーナビゲーション装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0041】
S1において、上述したような手法によりカーナビゲーションECU2が自車位置を測定し、S2において、これも上述したような手法によりカーナビゲーションECU2が地図中の自車位置を特定する。S3において、カメラ12およびレーザレンジファインダ13により自車の周辺情報を取得する。S4においてカーナビゲーションECU2が、自車が交差点範囲内にあると判定すると、S5にすすみ、S5において自車の周辺情報に基づき交差点範囲内の幾何学的情報を認識し、S6においてカーナビゲーションECU2は、幾何学的情報に基づき交差点範囲内のメトリックマップを作成する。
【0042】
S4においてカーナビゲーションECU2が、自車が交差点範囲外にあると判定すると、S7にすすみ、S7においてカーナビゲーションECU2は自車の周辺情報に基づき、交差点範囲外の道路情報を認識し、S8においてこの道路情報に基づき、カーナビゲーションECU2は交差点範囲外の道路のトポロジカルマップを作成する。S9において、カーナビゲーションECU2は、S6で作成した交差点範囲内のメトリックマップと、S8で作成した交差点範囲外のトポロジカルマップを統合して学習ファイルを作成し記憶媒体14に格納し、S10においてカーナビゲーションECU2は、データベース8内の地図情報と学習ファイルを統合して、ディスプレイ7に表示する。
【0043】
このように、交差点範囲内においては、交差点の幾何学的情報(交差点の形状、歩道の縁石の形状、右折レーンの有無や形状、信号機の位置等)を詳細に表現できるメトリックマップを作成し、交差点範囲外においては、道路の幅員や車線数のみを表現するトポロジカルマップを作成することにより、記憶媒体の容量を大きくすることなく、効率的にユーザの安全走行に必要な情報を学習することができる。また、ユーザが次回以降は交差点範囲内の幾何学的情報をより詳細に事前に知ることができるので、ユーザはその情報に従ってより安全に運転することができる。
【0044】
さらに、ここでは図示しないが、カーナビゲーションECU2が作成した学習ファイルを路側のセンタに送信する送信器を設けて、本実施例によるカーナビゲーション装置1を複数の車両に搭載して、これらのカーナビゲーション装置1が作成する複数の学習ファイルをセンタにより集計して、地図情報をリアルタイムに作成し、この地図情報を地上側のセンタから車両に送信して車両の表示用あるいは探索用の地図情報をリアルタイムに更新することも可能である。
【0045】
以下に本実施例によるカーナビゲーション装置により作成した学習ファイルの効果を説明する。図10〜12は本実施例によるカーナビゲーション装置により作成した学習ファイルの効果を示す模式図である。図10は豊田市内の一般道路を示すトポロジカルマップであり、図12は同じく豊田市内の一般道路を詳細に示す地図であり、図11は本発明によるカーナビゲーション装置により作成した学習ファイルより復元した交差点及び道路の模式図である。
【0046】
豊田市内の図10に示すような一般道路において、本実施例によるカーナビゲーション装置を搭載した車両を走行させて、以上述べたような学習ファイルを作成し、その学習ファイルから復元した模式図である図11と実際の道路の図面である図12とを比較した。
【0047】
図11に示す交差点の歩道の縁石は図12に示す歩道の縁石の形状とよく一致しており、かつ、図11に示す交差点範囲外の道路の線形、幅員、車線数についても図12に示す交差点範囲外の道路の線形、幅員、車線数とよく一致している。このように、本実施例によるカーナビゲーション装置により作成した学習ファイルにより、交差点範囲内の幾何学的形状及び交差点範囲外の道路情報が忠実に再現できていることが分かる。
【0048】
なお、以上述べた実施例では交差点範囲に着目して、その範囲の内外にてメトリックマップとトポロジカルマップを使い分けてユーザの安全走行に必要な情報を学習したが、例えば、VICS等の情報によりユーザが知得できる事故多発区間や、市街地の駐車場の出入り口周辺あるいはユーザが目的地に指定する頻度が高い地域をユーザがタッチパネル11から入力して、これらの範囲内に自車があるかどうかを判定して、その範囲内であればメトリックマップを用いて学習し、範囲外であればトポロジカルマップを用いて学習することもできる。以下にその実施例を示す。
【実施例2】
【0049】
本実施例のカーナビゲーション装置は実施例1ひいては図1に示したものと同様であるため、構成および機能についての説明は重複するので省略する。
【0050】
図13は本実施例によるカーナビゲーション装置の事故多発区間の内外を判定するための手法を示す模式図である。
【0051】
図13に示すように、二つのノードI、Jがあり、ノードI、Jを結ぶリンクL9が、急カーブが連続する区間であり、この区間がVICS等の情報により事故多発区間であることをユーザが知得しているとする。この場合に、ユーザがタッチパネル11からの入力により、リンクL9が事故多発区間であると指定する。
【0052】
この場合に、カーナビゲーションECU2は、自車が事故多発区間(リンクL9)内にあるかどうかを判定して、事故多発区間内にあると判定する場合には、カメラ12およびレーザレンジファインダ13により認識した幾何学的情報(ガードレールの有無や位置および形状、急カーブの実際の曲率やバンクの有無等)に基づいて、カーナビゲーションECU2はメトリックマップを作成する。また、カーナビゲーションECU2が、自車がリンクL9外にあると判定する場合には、これらの幾何学的情報に基づいて、道路線形、車線数、幅員等の道路情報を認識し、事故多発区間外の道路のトポロジカルマップを作成する。
【0053】
以下、本実施例によるカーナビゲーション装置の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図14は本実施例によるカーナビゲーション装置の制御内容を示すフローチャートである。
【0054】
S11において、上述したような手法によりカーナビゲーションECU2が自車位置を測定し、S12において、これも上述したような手法によりカーナビゲーションECU2が地図中の自車位置を特定する。S13において、カメラ12およびレーザレンジファインダ13により自車の周辺情報を取得する。S14においてカーナビゲーションECU2が、自車がユーザの指定した事故多発区間内にあると判定すると、S15にすすみ、S15において自車の周辺情報に基づき事故多発区間内の幾何学的情報を認識し、S16においてカーナビゲーションECU2は、幾何学的情報に基づき事故多発区間内のメトリックマップを作成する。
【0055】
S14においてカーナビゲーションECU2が、自車が事故多発区間外にあると判定すると、S17にすすみ、S17においてカーナビゲーションECU2は自車の周辺情報に基づき、事故多発区間外の道路情報を認識し、S18においてこの道路情報に基づき、カーナビゲーションECU2は事故多発区間外の道路のトポロジカルマップを作成する。S19において、カーナビゲーションECU2は、S16で作成した事故多発区間内のメトリックマップと、S18で作成した事故多発区間外のトポロジカルマップを統合して学習ファイルを作成し記憶媒体14に格納し、S20においてカーナビゲーションECU2は、データベース8内の地図情報と学習ファイルを統合して、ディスプレイ7に表示する。
【0056】
このように、事故多発区間内においては、道路の幾何学的情報(ガードレールの有無や形状、急カーブの実際の曲率等)を詳細に表現できるメトリックマップを作成し、事故多発区間外においては、道路の幅員や車線数のみを表現するトポロジカルマップを作成することにより、記憶媒体の容量を大きくすることなく、効率的にユーザの安全走行に必要な情報を学習することができる。また、ユーザが事故多発区間の道路情報をより詳細に事前に知ることができるので、ユーザの安全運転に有効に寄与することができる。
【0057】
また、ここではユーザが事故多発区間を指定することを示したが、他にも例えば、市街地における他車の出入りが頻繁な駐車場の出入り口付近や、目的地に指定する頻度の高い地域をユーザが指定して、これに基づいて、メトリックマップとトポロジカルマップを使い分けて学習することも可能である。
【0058】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、学習機能を有するカーナビゲーション装置および地図情報に関するものであり、特には記憶媒体の容量の増大を招くことなく、ユーザの安全走行に必要な情報を詳細に学習することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るカーナビゲーション装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るカーナビゲーション装置の作成する交差点範囲内のメトリックマップの一例を示す模式図である。
【図3】本発明に係るカーナビゲーション装置の作成する交差点範囲外のトポロジカルマップの一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係るカーナビゲーション装置の作成する学習ファイルの一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係るカーナビゲーション装置の使用する交差点範囲を定める手法の一例を示す模式図である。
【図6】本発明に係るカーナビゲーション装置の使用する交差点範囲を定める手法の一例を示す模式図である。
【図7】本発明に係るカーナビゲーション装置の交差点を構成するノードを修正する手法を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係わるカーナビゲーション装置の交差点を構成するノードを修正する手法を示す模式図である。
【図9】本発明に係わるカーナビゲーション装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係わるカーナビゲーション装置の作成した学習ファイルの効果を示す模式図である。
【図11】本発明に係わるカーナビゲーション装置の作成した学習ファイルの効果を示す模式図である。
【図12】本発明に係わるカーナビゲーション装置の作成した学習ファイルの効果を示す模式図である。
【図13】本発明に係わるカーナビゲーション装置の事故多発区間の内外を判定するための手法を示す模式図である。
【図14】本発明に係わるカーナビゲーション装置の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 カーナビゲーション装置
2 カーナビゲーションECU
3 GPSアンテナ
4 IMU
5 ABS
6 ステアリングセンサ
7 受信器
8 データベース
9 ディスプレイ
10 スピーカ
11 タッチパネル
12 カメラ
13 レーザレンジファインダ
14 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を測定する測位手段と、前記自車位置とノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの地図情報とを用いて自車の地図上の位置を特定する特定手段と、自車周辺情報を認識する認識手段と、自車が交差点範囲内に位置するかどうかを判定する判定手段と、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記交差点範囲内の幾何学的情報を取得する処理手段とを備えるとともに、自車が前記交差点範囲内に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記交差点範囲内の幾何学的情報に基づいてメトリックマップを作成する学習手段を備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記処理手段が、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記交差点範囲外の道路情報を取得するとともに、自車が前記交差点範囲外に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記交差点範囲外の道路情報に基づいて前記学習手段がトポロジカルマップを作成することを特徴とする請求項1に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記判定手段が前記交差点範囲を、前記交差点を構成するリンクの有する道路情報の幅員に基づいて求めることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記判定手段が前記交差点範囲を、前記交差点を構成するノードを中心とし、前記交差点を構成するリンクの有する道路情報の幅員の最大値に基づいた長さを半径とする円の内側範囲として求めることを特徴とする請求項3に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項5】
前記学習手段が、前記円と前記交差点を構成するリンクとの交点を新たなノードとして認識するとともに、当該新たなノードに基づいて当該交差点を構成するノードを修正することを特徴とする請求項4に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項6】
前記学習手段が、前記交差点が四叉路である場合に、前記新たなノードの向かい合う二対のノードを結ぶ二対の直線の交点を用いて、当該交差点を構成するノードを修正することを特徴とする請求項5に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項7】
自車位置を測定する測位手段と、前記自車位置とノードとリンクから構成されるトポロジカルマップの地図情報とを用いて自車の地図上の位置を特定する特定手段と、自車周辺情報を認識する認識手段と、自車が所定の範囲内に位置するかどうかを判定する判定手段と、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記所定の範囲内の幾何学的情報を取得する処理手段とを備えるとともに、自車が前記所定の範囲内に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記所定の範囲内の幾何学的情報に基づいてメトリックマップを作成する学習手段を備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項8】
前記処理手段が、前記認識手段の認識した自車周辺情報を処理して前記所定の範囲外の道路情報を取得するとともに、自車が前記所定の範囲外に位置すると前記判定手段が判定する場合に、前記所定の範囲外の道路情報に基づいて前記学習手段がトポロジカルマップを作成することを特徴とする請求項7に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項9】
前記所定の範囲を事故多発区間とすることを特徴とする請求項7若しくは8に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項10】
前記所定の範囲をユーザが指定する範囲とすることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項11】
カーナビゲーション装置の自車位置又は探索経路の表示若しくは探索に用いられる地図情報であって、いずれかの交差点範囲内はメトリックマップとトポロジカルマップの双方により構成され、当該交差点範囲外はトポロジカルマップにより構成されることを特徴とする地図情報。
【請求項12】
カーナビゲーション装置の自車位置又は探索経路の表示若しくは探索に用いられる地図情報であって、所定の範囲内はメトリックマップとトポロジカルマップの双方により構成され、当該所定の範囲外はトポロジカルマップにより構成されることを特徴とする地図情報。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−248235(P2007−248235A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71322(P2006−71322)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】