説明

パターニング方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、半導体装置の製造方法、半導体装置、圧電駆動素子の製造方法及び圧電駆動素子

【課題】 加工精度を損なうことなく生産性を向上させることができるパターニング方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、半導体装置の製造方法、半導体装置、圧電駆動素子の製造方法及び圧電駆動素子を提供する。
【解決手段】 ビアホール39を有した第2層間絶縁膜37上側全面にITOからなる透明導電膜42形成し、同透明導電膜42のエッチング領域Eに、塩酸Lと反応して水素ガスPを生成する金属膜45を、亜鉛ペーストを塗布することによって形成した。そして、金属膜45を有した素子形成面14aを塩酸L中に浸漬して透明導電膜42をエッチングし、陽極40を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニング方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、半導体装置の製造方法、半導体装置、圧電駆動素子の製造方法及び圧電駆動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や半導体装置の製造工程には、金属酸化物膜としての透明導電膜(例えば、錫を添加した酸化インジウム:ITO)をエッチングして画素電極を形成する工程や、金属酸化物膜としての強誘電体膜(例えば、Pb(ZnxNb1-x)TiO3-PbTiO3 )を所定のパターン形状にエッチングしてキャパシタを形成する工程が行われている。
こうした金属酸化物膜のエッチングは、始めに金属酸化物を還元させて、次に、含有する金属原子(例えば、インジウム(In)あるいは錫(Sn))の揮発性化合物や溶解性化合物を形成することによって進行する。そして、こうしたエッチングの手法には、一般的に、気相で行うドライエッチング法と、液相で行うウェットエッチング法が知られている。
【0003】
ドライエッチング法では、金属酸化物膜の形成された基板を真空チャンバー内に載置し、ヨウ化水素ガスや塩素等のプラズマに晒すことによってエッチングを行う。しかし、プラズマ発生源を有した真空装置等の高価な設備が必要であって、画素電極やキャパシタを形成するための設備コストが高くなる。その結果、液晶表示装置や半導体装置の製造コストを増加させる問題を招く。
【0004】
一方、ウェットエッチング法では、金属酸化物膜が形成された基板を塩酸や硝酸等の酸(エッチング液)に浸漬させることによってエッチングを行うため、前記ドライエッチングに比べ、高価な付帯設備を要することなくエッチングを行うことができる。これらドライエッチング法、ウェットエッチング法ともに、パターン形成のため、以下に記述するようなフォトリソグラフィプロセス有する。すなわち、フォトレジスト全面塗布、露光、現像により所定のレジストパターンを得た後、これをマスクとしてドライ、またはウェットエッチングを行う。さらにはレジストマスクを有機溶剤あるいは硫酸と過酸化水素水をベースとした剥離液、またはドライアッシングにより除去を行う。
【0005】
このようなフォトリソグラフィプロセスに基づいた複雑なプロセスを短縮し、効率をあげるため、例えば特許文献1に示すように、(1)金属酸化膜形成前にレジストパターンを形成し、金属酸化物膜を全面に形成した後にレジスト剥離とともにレジスト上に乗った不要酸化膜を除去するリフトオフ法によるパターン形成、または、(2)金属酸化物膜の化合物液体をインクジェット、スクリーン印刷などの方法により選択的に塗布し、焼成により金属酸化物膜のパターンを得る方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−93915号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、(1)の方法では、一般的なフォトリソグラフィによるパターン形成方法と同様に、高価な露光装置が必要である。また(2)の方法は、効率的あるいは高価な露光装置の削減といった点で優れた方法であるが、塗布可能な材料に制限があり、膜の電気特性、物理特性、密着性などの点で要求特性を満たせない場合があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加工精度を損
なうことなく生産性を向上させることができるパターニング方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、半導体装置の製造方法、半導体装置、圧電駆動素子の製造方法及び圧電駆動素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパターニング方法は、金属酸化物膜を所定のパターンにエッチングするパターニング方法において、前記金属酸化物膜を溶解可能な酸性溶液に、前記金属酸化膜を接触させる前に、前記酸性溶液に溶解して水素ガスを生成する金属膜を前記金属酸化物膜の所定のパターンを成すエッチング領域に形成するようにした。
【0009】
前記形成方法としては、安価な選択塗布方法として、インクジェット法、スクリーン印刷法、あるいはディスペンサによる塗布などを用いることができる。
本発明のパターニング方法によれば、エッチングを所望する領域に安価に塗布形成された金属膜の溶解によって、金属酸化物膜に水素ガスを供給することができ、その水素ガスによって、金属膜を形成した領域、すなわちエッチング領域のみ、その還元反応を飛躍的に促進することができる。従って、金属膜を形成していない非エッチング領域との間でエッチング速度の選択比が得られ、エッチングの加工精度を損なうことなくパターニングが可能となる。また、前記原理によりエッチング速度は飛躍的に上昇し、さらには高価な露光装置も使用せず、レジスト工程も無くなることにより、パターニング工程の生産性の上昇、製造コストおよび装置投資の飛躍的削減が可能である。
【0010】
このパターニング方法において、前記金属酸化物膜は、透明導電膜である。
このパターニング方法によれば、透明導電膜のパターニング工程を簡略化することができ、そのパターニング工程の生産性の向上が可能である。
【0011】
このパターニング方法によれば、少なくともZn、Sn、Ni、Al、Fe、Mgのうちのいずれか1つ、あるいは1つ以上を含む金属膜の溶解によって水素ガスを生成することができ、金属酸化膜のパターニング工程の生産性の向上が可能である。
【0012】
このパターニング方法において、前記金属膜は、少なくともZn、Sn、Ni、Al、Fe、Mgのうちのいずれか1つあるいは1つ以上を含む液状組成物を前記エッチング領域に塗布して乾燥したものである。
【0013】
このパターニング方法によれば、エッチング領域に塗布した液状組成物を乾燥することによって金属膜を形成するため、エッチング領域に対する金属膜の位置整合処理(例えば、リソグラフィプロセスやエッチングプロセス等)を削減することができる。しかも、金属膜を形成した部位のみエッチングを行うことができるため、レジスト等のマスクを形成してエッチングを行う場合に比べ、リソグラフィ工程を削減できる。その結果、エッチング工程の処理能力を向上することができる。
【0014】
このパターニング方法において、前記酸性溶液は、塩酸又は希硫酸からなる。
このパターニング方法によれば、透明導電膜又は強誘電体膜に含まれる金属原子を塩化物や硫酸化物として酸性溶液中に溶解させることができ、被エッチング物の析出を低減することができる。その結果、パターニング工程の処理能力を向上することができる。
【0015】
このパターニング方法において、前記透明導電膜は、少なくともITO、IO、ATO、CTO、FTO、SnO2、ZnO、ZAOのうちのいずれか1つからなる。
このパターニング方法によれば、少なくともITO、IO、ATO、CTO、FTO、SnO2、ZnO、ZAOのいずれか1つからなる透明導電膜の生産性の上昇、製造コストおよび装置投資の飛躍的削減が可能である。
【0016】
このパターニング方法において、前記金属酸化物膜は、強誘電体膜である。
このエッチング方法によれば、強誘電体膜のパターニング工程を簡略化することができ、そのパターニング工程の生産性の上昇、製造コストおよび装置投資の飛躍的削減が可能である。
【0017】
このパターニング方法において、前記強誘電体膜は、少なくともPLZT、PNZTのうちのいずれか1つからなる。
このパターニング方法によれば、少なくともPLZT、PNZTのうちのいずれか1つからなる強誘電体膜のパターニングを向上することができる。
【0018】
本発明の電気光学装置の製造方法は、画素領域に透明電極を形成するようにした電気光学装置の製造方法において、上記のパターニング方法によって前記透明電極を形成するようにした。
【0019】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、透明電極を形成するためのパターニング工程の処理能力を向上することができ、ひいては電気光学装置の生産性を向上することができる。
【0020】
本発明の電気光学装置は、上記の電気光学装置の製造方法によって製造した。
本発明の電気光学装置によれば、電気光学装置の生産性を向上することができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、強誘電体材料からなる容量素子を形成するようにした半導体装置の製造方法において、上記のパターニング方法によって前記容量素子を形成するようにしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、容量素子を形成するためのパターニング工程の処理能力を向上することができ、ひいては半導体装置の生産性を向上することができる。
【0022】
本発明の半導体装置は、上記の半導体装置の製造方法によって製造した。
本発明の半導体装置によれば、半導体装置の生産性を向上することができる。
本発明の圧電駆動素子の製造方法は、強誘電体材料からなる圧電駆動素子を形成するようにした圧電駆動素子の製造方法において、上記のパターニング方法によって前記圧電駆動素子を形成するようにした。
【0023】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、圧電駆動素子を形成するためのパターニング工程の処理能力を向上することができ、ひいては圧電駆動素子の生産性を向上することができる。
【0024】
本発明の圧電駆動素子は、上記の圧電駆動素子の製造方法によって製造した。
本発明の圧電駆動素子によれば、圧電駆動素子の生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。図1は、電気光学装置としての液晶表示装置を示す斜視図である。
液晶表示装置10は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置であって、図1に示すように、照明装置11と液晶パネル12を備えている。尚、本実施形態では、液晶パネル12の照明装置11側を照明側とし、液晶パネル12の照明装置11の反対側を観測側とする。
【0026】
図1に示すように、照明装置11は、LED等の光源11aと、同光源11aから出射された光L1を透過して平面状の光として液晶パネル12に照射する導光体11bを有し、平面状の光L1を液晶パネル12の照明側に照明するようになっている。
【0027】
図1に示すように、液晶パネル12は、その照明側と観測側に、それぞれ四角形状の対向基板13と素子基板14とを有している。対向基板13と素子基板14は、四角枠状のシール材15を介して貼り合わされ、これら対向基板13と素子基板14との間の間隙に、図示しない液晶材料が封入されている。尚、本実施形態では、この素子基板13の一側辺(図1における右側辺)に沿う方向をX方向とし、前記一側辺と直交する他側辺に沿う方向をY方向とする。
【0028】
図2に示すように、対向基板13は、四角形状に形成された無アルカリガラスからなる透明基板であって、その素子基板14側の面(フィルタ形成面13a)には、遮光層16が形成されている。遮光層16は、クロムやカーボンブラック等の遮光性材料によって、X方向とY方向で交差する格子状に形成されている。そして、この遮光層16が形成されることによって、フィルタ形成面13a略全面に、略四角形状のカラーフィルタ形成領域17がマトリックス状に配列される。
【0029】
そのカラーフィルタ形成領域17には、それぞれ光源11aから出射された光L1に対して対応する色(赤色、緑色及び青色)に着色して出射する赤色着色層、緑色着色層及び青色着色層が形成されている。尚、本実施形態における各色の着色層は、図2に示すように、フィルタ形成面13aのX方向右側から順に左側に向かって、第1赤色着色層Lr1、第1緑色着色層Lg1、第1青色着色層Lb1、・・・、第n赤色着色層Lrn,第n緑色着色層Lgn、第n青色着色層Lbnの順序で形成されている。
【0030】
これら各色の着色層及び遮光層16の上層には、錫をドープした酸化インジウム(ITO)によって形成される対向電極18が積層されている。対向電極18は、図示しない電源回路に電気的に接続され、その電源回路から所定の対向電極電圧が供給されるようになっている。その対向電極の上層には、ポリイミド等からなる図示しない配向膜が積層されている。配向膜は、ラビング処理等の配向処理が施され、同配向膜(対向基板13)近傍の液晶分子の配向を設定するようになっている。
【0031】
図1に示すように、この対向基板13の観測側には、素子基板14が貼り合わされている。素子基板14は、前記対向基板13よりも若干大きいサイズに形成された無アルカリガラスからなる透明基板であって、その観測側には偏光板19が貼り付けられている。一方、素子基板14の対向基板13側の面(素子形成面14a)には、Y方向に延びる複数の走査線21が所定の間隔をおいて形成されている。各走査線21は、それぞれ素子基板14の一側端に配設される走査線駆動回路22に電気的に接続されている。走査線駆動回路22は、図示しない制御回路から供給される走査制御信号に基づいて、複数の走査線21の中から所定の走査線21を所定のタイミングで選択駆動し、その走査線21に走査信号を出力するようになっている。
【0032】
図1に示すように、その素子形成面14aには、X方向に延びる複数のデータ線23が所定の間隔をおいて形成されている。各データ線23は、それぞれ素子基板14の一側端に配設されるデータ線駆動回路24に電気的に接続されている。データ線駆動回路24は、図示しない外部装置から供給される表示データに基づいてデータ信号を生成し、そのデータ信号を対応するデータ線23に所定のタイミングで出力するようになっている。
【0033】
そして、これらデータ線23と走査線21が形成されることによって、素子形成面14a略全面に、四角形状の画素領域25がマトリックス状に配列されている。そして、素子
基板14は、これら各画素領域25を、それぞれ対応する前記カラーフィルタ形成領域17と相対向させるように、前記対向基板13に貼り合わされている。
【0034】
図3は、その画素領域25を示す要部概略平面図であって、図4は、図3のA−Aに沿う概略断面図である。
図3に示すように、各画素領域25内であって素子形成面14a上には、ポリシリコン等からなる半導体膜をパターニングして形成した島状のチャンネル層31が備えられている。図4に示すように、チャンネル層31は、その中央位置に形成されたp型のチャンネル領域31cを備え、その両側にn型のソース領域31s及びドレイン領域31dを有している。
【0035】
図4に示すように、チャンネル層31の上側には、素子形成面14a略全面を覆うように堆積されたシリコン酸化膜等からなるゲート絶縁膜32が形成されている。そのゲート絶縁膜32の上側であって前記チャンネル領域31cの上方には、図3及び図4に示すように、走査線21から延出されたゲート電極33が形成されている。ゲート電極33(走査線21)は、素子形成面14a略全面に形成したアルミニウム膜やタンタル膜等からなる導電膜をパターニングすることによって形成されている。尚、前記ソース領域31s及びドレイン領域31dは、このゲート電極33をマスクにしたリンイオンのイオン打ち込み法によって、自己整合的に形成されている。そのゲート電極33上には、各ゲート電極33間を電気的に絶縁するシリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁膜34が形成されている。
【0036】
図4に示すように、チャンネル層31のソース領域31s上には、前記ゲート絶縁膜32及び前記第1層間絶縁膜34を貫通するデータ線コンタクトホール35が形成されている。そのデータ線コンタクトホール35内には、アルミニウム等からなる導電膜によってソース領域31sに電気的に接続された前記データ線23が形成されている。一方、チャンネル層31のドレイン領域31dには、ゲート絶縁膜32及び第1層間絶縁膜34を貫通する画素電極コンタクトホール36が形成されている。その画素電極コンタクトホール36内には、アルミニウム等からなる導電膜によってドレイン領域31dに電気的に接続されたドレイン電極38が形成されている。
【0037】
これらデータ線23及びドレイン電極38上には、第1層間絶縁膜34を覆うようにシリコン酸化膜等からなる第2層間絶縁膜37が形成されている。前記ドレイン電極38の上側には、この第2層間絶縁膜37を貫通するビアホール39が形成されている。そのビアホール39内には、ITOからなる透明電極としての陽極40が、前記第2層間絶縁膜37上に広がるように形成されている。尚、本実施形態における陽極40は、ITOに限らず、少なくともフッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化インジウム(IO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、カドミウムをドープした酸化錫、アルミニウムドープした酸化亜鉛(ZAO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)のうちのいずれか1つからなるものであってもよい。
【0038】
そして、この陽極40は、以下に示すエッチング方法によって形成されている。すなわち、陽極40を形成するに際し、まず、図6に示すように、ビアホール39を有した第2層間絶縁膜37上側全面に、スパッタ法、蒸着法、CVD法、SPD法等の気相プロセスによってITOからなる透明導電膜42形成する。
【0039】
透明導電膜42を第2層間絶縁膜37上側全面に形成すると、図5に示すように、透明導電膜42上であって陽極40を形成する領域以外の領域(エッチング領域E)に、液状組成物としての亜鉛ペーストを、スクリーン法やインクジェット法、あるいはディスペンサによって塗布する。そして、塗布した亜鉛ペーストを乾燥することによって、図6に示
すように、亜鉛(Zn)からなる金属膜45をエッチング領域E上に形成する。
【0040】
図7に示すように、金属膜45を形成すると、素子基板14(素子形成面14a)を酸性溶液としての塩化水素溶液(塩酸L)の中に浸漬する。すると、金属膜45が、塩酸Lによって瞬時に酸化され、同塩酸L中に溶解する。同時に、金属膜45は、溶解分に相対する水素ガスPを生成する。生成された水素ガスPの一部は、図7に示すように、金属膜45を浸透して、相対する透明導電膜42(エッチング領域Eの透明導電膜42)の表面に供給される。そして、この水素ガスPによって、エッチング領域Eの透明導電膜42が瞬時に還元される。
【0041】
この際、金属膜45の生成する水素ガスPは、同金属膜45と塩酸Lがエッチング領域Eで均等に接触(反応)する分だけ均等に生成され、エッチング領域Eの透明導電膜42に対して均等に供給される。その結果、金属膜45は、その生成した水素ガスPによって、エッチング領域Eの透明導電膜42を瞬時に、かつ均等に還元する。
【0042】
尚、この際、金属膜45の酸化反応及び透明導電膜42の還元反応が瞬時に進行するため、エッチング領域Eの透明導電膜42が水素ガスPで還元される間、エッチング領域E以外の透明導電膜42は、エッチングされることなく、その状態を維持することができる。
【0043】
そして、全ての金属膜45が瞬時に塩酸Lに溶解すると、エッチング領域Eの透明導電膜42のみが水素ガスPに還元された状態で塩酸L中に露出する。その結果、透明導電膜42は、前記水素ガスPに還元された領域、すなわちエッチング領域Eのみが、そのインジウム(In)あるいは錫(Sn)を塩酸L中に溶解可能な塩化物イオンとして溶解する。
【0044】
尚、この際、還元された透明導電膜42の溶解反応が瞬時に進行するため、エッチング領域の透明導電膜42が溶解(エッチング)される間、エッチング領域E以外の透明導電膜42は、殆どエッチングされることなく、その状態を維持することができる。従って、エッチング領域Eの透明導電膜42のみが瞬時にエッチングされる。そして、エッチングの加工精度を損なうことなくエッチング速度が飛躍的に増加し、陽極40を形成することができる。
【0045】
図4に示すように、その陽極40及び第1層間絶縁膜34上には、配向膜41が形成されている。配向膜41は、素子基板14(陽極40及び第1層間絶縁膜34)上に塗布したポリイミド等の樹脂膜に、ラビング処理等の配向処理を施すことによって形成されている。
【0046】
今、走査線駆動回路22が、走査線21を線順次走査に基づき1本ずつ順次選択すると、対応する画素領域25のチャンネル層31が順次、選択期間中だけオン状態になる。チャンネル層31がオン状態となると、データ線駆動回路24から供給されたデータ信号が、データ線23及びチャンネル層31を介して陽極40に出力される。そして、陽極40と対向電極18との間の電位差に基づいて、素子基板14と対向基板13との間の液晶分子の配向状態を制御することができ、照明装置11の照射する光L1を変調するように維持することができる。そして、変調された光が図示しない偏光板19を通過するか否かによって、液晶パネル12の観測側に所望するフルカラーの画像が表示される。
【0047】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、ビアホール39を有した第2層間絶縁膜37上側全面にITOからなる透明導電膜42形成し、同透明導電膜42のエッチング領域Eに、塩酸L
と反応して水素ガスPを生成する金属膜45を形成した。そして、金属膜45を有した素子形成面14aを塩酸L中に浸漬して透明導電膜42をエッチングし、陽極40を形成するようにした。
【0048】
その結果、金属膜45の生成した水素ガスPによって、エッチング領域Eの透明導電膜42のみを均一に還元することができ、還元した透明導電膜42を瞬時にエッチングすることができる。従って、透明導電膜42のエッチングの加工精度を損なうことなく、そのエッチング速度を飛躍的に増加させて陽極40を形成することができる。
【0049】
(2)上記実施形態によれば、亜鉛ペーストを塗布することによって金属膜45を形成するようにした。従って、リソグラフィ工程を削減することができ、陽極40の生産性、ひいては液晶表示装置10の生産性を向上させることができる。
【0050】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、金属酸化物膜を液晶表示装置10に使用する透明導電膜42として具体化したが、これに限らず、例えばPb(ZnxNb1-x)TiO3-PbTiO3 、Laを添加したPZT(PLZT)、Nbを添加したPZT(PNZT)等、半導体装置の容量素子(キャパシタ)に使用する強誘電体材料膜であってもよい。これによれば、強誘電体材料膜の生産性、ひいては半導体装置の生産性を向上させることができる。
・上記実施形態では、金属膜45の構成材料を亜鉛に具体化したが、これに限らず、少なくとも亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)のうちのいずれか1つからなるものであってもよく、酸性溶液と反応して水素ガスを生成する金属であればよい。
・上記実施形態では、液状組成物としてのペーストを乾燥することによって金属膜45を形成する構成にしたが、これに限らず、金属膜45を、マスクパターンを通してのスパッタ法、蒸着法、CVD法、SPD法等によって形成してパターニングする構成であってもよい。
・上記実施形態では、透明導電膜42を塩酸L中に浸漬してエッチングするようにしたが、これに限らず、例えばスプレー法やスピンコート法等によってエッチング液(例えば、塩酸L)を透明導電膜42に塗布するようにしてもよい。あるいは、エッチングガス(例えは塩化水素ガス)を供給可能なチャンバー内に素子基板14を載置し、その透明導電膜42を、同塩化水素ガスに晒すようにしてもよい。
・上記実施形態では、透明導電膜42であってエッチング領域E以外の領域を塩酸Lに晒す構成にしたが、これを変更し、同領域をレジスト等の保護膜によって覆い、塩酸Lに接触させない構成にしてもよい。これによれば、エッチング領域E以外の領域を保護して、エッチング領域Eのみを確実にエッチングすることができる。
【0051】
・上記実施形態では、電気光学装置を液晶表示装置10として具体化したが、これに限らず、例えば有機エレクトロルミネッセンスディスプレイや電界効果型ディスプレイ(FEDやSED等)であってもよく、透明導電膜を形成した電気光学装置であればよい。
【0052】
また、強誘電体材料を用いた半導体素子、あるいはインクジェットノズルなどに使用されている圧電駆動素子の製造にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を具体化した液晶表示装置を示す概略平面図。
【図2】同じく、対向基板を示す概略斜視図。
【図3】同じく、画素領域を示す概略平面図。
【図4】同じく、画素領域を示す概略断面図。
【図5】同じく、画素領域を示す概略平面図。
【図6】同じく、画素領域を示す概略断面図。
【図7】同じく、画素領域を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0054】
10…電気光学装置としての液晶表示装置、25…画素領域、40…陽極、42…金属酸化物膜としての透明導電膜、45…金属膜、E…エッチング領域、L…酸性溶液としての塩酸、P…水素ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物膜をエッチングすることにより所定のパターンを得るパターニング方法において、
前記金属酸化物膜を溶解可能な酸性溶液中に前記金属酸化物膜を浸漬する前に、前記酸性溶液に溶解して水素ガスを生成する金属膜を前記金属酸化物膜の所定のパターン形状をもつエッチング領域に形成するようにしたことを特徴とするパターニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターニング方法において、
前記金属膜は、液状組成物を所定のパターン形状となる前記エッチング領域に選択的に塗布して乾燥したものであることを特徴とするパターニング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターニング方法において、
前記金属膜は、少なくともZn、Sn、Ni、Al、Fe、Mgのうちのいずれか1つ、あるいは1つ以上を含むことを特徴とするパターニング方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパターニング方法において、
前記金属膜は、液状組成物を前記エッチング領域に、インクジェット、スクリーン印刷、あるいはディスペンサにより、所定のパターン形状に塗布して乾燥したものであることを特徴とするパターニング方法。
【請求項5】
請求項1から4に記載のパターニング方法において、
前記金属酸化物膜は、透明導電膜であることを特徴とするパターニング方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターニング方法において、
前記透明導電膜は、少なくともITO、IO、ATO、CTO、FTO、SnO2、ZnO、ZAOのうちのいずれか1つからなることを特徴とするパターニング方法。
【請求項7】
請求項1から4に記載のパターニング方法において、
前記金属酸化物膜は、強誘電体膜であることを特徴とするパターニング方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパターニング方法において、
前記強誘電体膜は、少なくともPLZT、PZNTのうちのいずれか1つからなることを特徴とするパターニング方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のパターニング方法において、
前記酸性溶液は、塩酸又は希硫酸からなることを特徴とするパターニング方法。
【請求項10】
画素領域に透明電極を形成するようにした電気光学装置の製造方法において、
請求項1〜9のいずれか1つに記載のパターニング方法によって前記透明電極を形成するようにしたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置の製造方法によって製造したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
強誘電体材料からなる容量素子を形成するようにした半導体装置の製造方法において、
請求項1〜9のいずれか1つに記載のパターニング方法によって前記容量素子を形成するようにしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法によって製造したことを特徴とする半導体装置

【請求項14】
強誘電体材料からなる圧電駆動素子を形成するようにした圧電駆動素子の製造方法において、
請求項1〜9のいずれか1つに記載のパターニング方法によって前記圧電駆動素子を形成するようにしたことを特徴とする圧電駆動素子の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の圧電駆動素子の製造方法によって製造したことを特徴とする圧電駆動素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−228894(P2006−228894A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39438(P2005−39438)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】