位置決め装置
【課題】バーミラーを用いることなく、干渉計の測長光路を減圧して位置決め精度を向上させることで、ステージ外部の減圧が困難な加工装置等への適用及び装置の小型化を可能にする。
【解決手段】位置決め装置の固定部であるベース1は、Yガイド面2を有し、Y凹空間部6、シール部7、Y軸受8を有するYスライダ3は、Yガイド面2に沿って移動する。X凹空間部9、シール部10、X軸受11を有するXスライダ5は、Yスライダ3上をXガイド面4に沿って移動する。干渉計25a及びミラー27a、27bは、Xスライダ5のX凹空間部9に配置され、干渉計25b及びミラー27c、27dは、Yスライダ3のY凹空間部6に配置される。各凹空間部6,9は、それぞれ排気ホース15、16によって減圧される。
【解決手段】位置決め装置の固定部であるベース1は、Yガイド面2を有し、Y凹空間部6、シール部7、Y軸受8を有するYスライダ3は、Yガイド面2に沿って移動する。X凹空間部9、シール部10、X軸受11を有するXスライダ5は、Yスライダ3上をXガイド面4に沿って移動する。干渉計25a及びミラー27a、27bは、Xスライダ5のX凹空間部9に配置され、干渉計25b及びミラー27c、27dは、Yスライダ3のY凹空間部6に配置される。各凹空間部6,9は、それぞれ排気ホース15、16によって減圧される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の加工装置や露光装置等の加工装置に搭載される位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ測長器を用いた2次元方向に移動可能な位置決め装置においては、レーザ測長器から出射されるレーザのターゲットとしてバーミラーが用いられる(特許文献1参照)。従来の露光装置における位置決め装置では、スライダ上にバーミラーを設置することで、スライダがレーザ測長器の測長方向と垂直な方向に移動する場合においても、レーザの反射が途切れることなく連続的な位置の測定が可能となっている。また、レーザ測長器を用いた位置決め装置においては、大気中のレーザ光路(測長光路)の屈折率変動により測長値が変動し、位置決め誤差が発生するという問題がある。露光空間を真空環境とする露光装置においては、ステージに静圧軸受と差動排気シールを組み合わせて用いることにより、ステージ外部の露光空間が真空排気されるため、真空環境下にレーザ測長器を配置することが可能である。
【0003】
図13は、従来の露光装置における位置決め装置を示すもので、ベース101上のX・Yスライダ103、105を含むステ−ジに保持されたウェハ136を含む露光空間を減圧するために、真空チャンバ100が不図示の真空ポンプにより真空排気される。各スライダ103、105の静圧軸受108から放出される空気の露光空間への流出は、差動排気シール109により抑制される。差動排気シール109は非接触でシール機能を有するため、ステージ移動時においても位置決め精度の低下要因となる外乱は発生しない。ステージ外部に配置されたレーザ測長器である干渉計115a、115bの測長光路は、バーミラー117a、117bとともに、真空チャンバ100の内部に収容されるため減圧されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−173654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバーミラーを用いた位置決め装置は、バーミラーを設置するためにスライダが大型化するという課題を有する。また、工作機械においては、加工により発生する切粉、工具及びワークの冷却に用いられる切削油、研磨液などの、飛散する固体及び液体がステージ外部の加工空間に存在する。このような加工空間を減圧し、レーザ測長器を配置する場合、飛散する固体や液体によってレーザ測長器の汚染や、真空ポンプの損傷等の問題が生じる。このため、工作機械においてはステージ外部を減圧することは困難である。したがって、従来の静圧軸受と差動排気シールを用い、レーザ測長器の測長光路を減圧する位置決め装置は、レーザ測長器がステージの外部に配置される構成であるため、工作機械への適用が困難である。
【0006】
また、上記の位置決め装置は、ステージを真空チャンバ内に設置することを前提としているため、真空チャンバを含む装置全体が大型化するという課題を有する。
【0007】
本発明は、バーミラーを用いることなく、スライダの小型化が可能であるとともに、レーザ測長器の測長光路を減圧することにより位置決め精度を向上させることのできる位置決め装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置決め装置は、第1のガイド面を有する固定部と、前記第1のガイド面に沿って移動する第1の移動体と、前記第1の移動体に設けられた第2のガイド面に沿って移動する第2の移動体と、前記固定部に対する前記第1の移動体の位置を測定する第1のレーザ測長器と、前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の位置を測定する第2のレーザ測長器と、前記第1の移動体に配置された、前記第1のガイド面に対向する開口を有する第1の凹空間部と、前記第2の移動体に配置された、前記第2のガイド面に対向する開口を有する第2の凹空間部と、前記第1の凹空間部及び前記第2の凹空間部をそれぞれ減圧するための減圧手段と、を有し、前記第1の凹空間部に前記第1のレーザ測長器を配置し、前記第2の凹空間部に前記第2のレーザ測長器を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、移動体にバーミラーを設置しないため、移動体の小型化が可能となる。
【0010】
また、移動体の位置を計測するレーザ測長器が、移動体内部の減圧空間に収容されるため、測長光路の屈折率変化が抑制され、その結果、位置決め精度を向上させることができる。
【0011】
レーザ測長器を収容する減圧空間を移動体内部に設けたことで、飛散する固体や液体の存在により位置決め装置外部の減圧が困難である工作機械等にも適用が可能となる。
【0012】
また、移動体の外部に真空チャンバを設置する必要がないため、装置全体の小型化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜4は第1の実施形態を説明するものである。図1は本実施形態による位置決め装置を示す平面図、図2(a)、(b)は、それぞれ、図1の装置をY方向、X方向から見た断面図である。本実施形態による位置決め装置は、2つの移動体を組み合わせた、水平方向に自由度を有する2自由度のXYステージを用いているが、本発明の位置決め装置の移動方向は水平方向に限定されるものではない。例えば、XZステージ等のように、鉛直方向(Z方向)に自由度を有する構成とすることも可能である。
【0015】
図1に示すように、固定部であるベース1上に第1のガイド面であるYガイド面2が設けられ、第1の移動体であるYスライダ3は、Yガイド面2に沿って移動可能である。また、Yスライダ3の上面に設けられた第2のガイド面であるXガイド面4に沿って第2の移動体であるXスライダ5が移動可能である。
【0016】
図2に示すように、Yスライダ3は、Yガイド面2と対向する面上に開口を有する第1の凹空間部であるY凹空間部6、シール部7、Y軸受8を有する。Xスライダ5は、Xガイド面4と対向する面上に開口を有する第2の凹空間部であるX凹空間部9、シール部10、X軸受11を有する。
【0017】
Y凹空間部6及びX凹空間部9は、それぞれ、減圧手段を構成する排気ホース15,16を通じて不図示の真空ポンプに接続され、減圧される。干渉計25aは、Yスライダ3に対してXスライダ5のX方向の相対位置を測定する第2のレーザ測長器であり、干渉計25bは、ベース1に対してYスライダ3のY方向の相対位置を測定する第1のレーザ測長器である。
【0018】
干渉計と測定対象である移動体の間の測長光路において、屈折率変動が生じると測長誤差が生じるため、測長精度を向上させるためには測長光路を減圧することが有効である。本実施形態においては、測長光路が減圧された凹空間部に収容されるため、測長誤差を抑制して位置決め精度を向上させることができる。また、減圧される領域が位置決め装置の内部であるため、位置決め装置外部の減圧が困難な工作機械への適用が可能である。
【0019】
干渉計25a、25bから出射される干渉光は、不図示の光検出回路に導かれ、干渉光の位相差からミラーの移動距離を演算する回路(不図示)を使用することにより、ミラーの位置情報が得られる。干渉計25a、25bは、分解能向上を主な目的として、対向する2箇所に設置された複数のミラー27a〜27dの差動計測を行っている。
【0020】
Yスライダ3の上段にXスライダ5を配置したXYステージにおいて、本発明では、Yスライダ3の位置をベース基準で計測し、Xスライダ5の位置をYスライダ基準で計測することにより、バーミラーを不要としている。これに対して図13に示す従来技術では、固定部であるベース101を基準としてXスライダ105の位置を計測するため、バーミラー117a、117bが必須となる。したがって、図14に示すように、XスライダストロークXstとYスライダストロークYstが等しい場合は、本発明の位置決め装置においては、従来技術に比べて、Xスライダ5のY方向の長さLを縮小することで小型化が可能である。
【0021】
図3は、真空排気時に各凹空間部6、9への空気の流入を抑制するシール構造を示すもので、(a)はXスライダ5の下面図、(b)はYスライダ3の下面図である。Xスライダ5においては、X凹空間部9のXガイド面4に面した開口の周囲にシール部10が配置され、X凹空間部9に流入する空気の量を抑制する。また、シール部10の外側にX軸受11が配置され、Xガイド面4に対しXスライダ5を支持する。Yスライダ3においても、Xスライダと同様の位置関係でシール部7、Y軸受8が配置される。
【0022】
図4は、本実施形態の位置決め装置に使用する差動干渉計の構成を示す。この構成は、X方向の位置を測定する干渉計25aに対応しているが、干渉計25bも同様の構成である。干渉計25aにおいて、偏光ビームスプリッタ30に入射したレーザ18は2光束に分割され、直角ミラー28から構成されるミラー27a、27bにより多重反射された後、干渉させられる。レーザ18は、干渉計25aとミラー27a、27bとの間でそれぞれ4往復し、ミラー27aとミラー27bの変位が差動計測されるため、干渉計25aは8パスの差動干渉計として機能する。
【0023】
なお、差動干渉計は8パス干渉計に限定されず、2nパス干渉計(n=1、2、3・・・)が使用可能である。差動干渉計を用いることの利点は、測長分解能が向上すること、減圧される凹空間部全域を測長光路29a、29bとして有効利用できること、ミラー27a、27b等の熱変形による測長誤差の影響を軽減できることなどである。
【0024】
なお、第1の実施形態以外の他の実施形態においても差動干渉計を使用することが可能である。
【0025】
シール部7、10には摺動摩擦抵抗がなく位置決め精度を向上しやすい非接触型シールを用いることが望ましいが、接触型シールを用いることも可能である。
【0026】
ここで非接触型シールとは、シール部が対向するガイド面との間に微小隙間を形成し、微小隙間の流路抵抗を利用して空気の流入を抑制するシールである。このようなシールは差動排気シールとも呼ばれる。非接触型シールを用いる場合は、微小隙間より減圧空間に常に空気が流入するが、微小隙間の高さ、シール部の面積、真空ポンプの排気速度等を適切に設計することにより、空間内の屈折率変動を僅少とする圧力まで減圧できる。微小隙間の高さは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μmより小さいとガイド面と接触しやすく、加工も難しい。10μmより広いと、シール効果が薄れて、減圧空間部に空気が流入し、測長光路に気流が生じやすくなる。非接触型シールの材質は、グラファイト等の潤滑性を有する素材とするとよい。
【0027】
また、接触型シールとは、Oリングやオイルシール等の部材同士が接触することにより空気の流入を抑制するシールであり、非接触型シールに比べて高いシール効果が得られる。
【0028】
各軸受8、11には摺動摩擦抵抗がなく位置決め精度を向上しやすい非接触軸受を用いることが望ましいが、よりコストの低い接触式軸受を用いることも可能である。
【0029】
ここで非接触軸受とは流体軸受や磁気軸受等を含む軸受であり、軸受の材質はグラファイト等の潤滑性を有する素材とするとよい。
【0030】
接触式軸受とは、すべり軸受や転がり軸受等を含む軸受である。
【0031】
また、非接触軸受と非接触型シールを組み合わせて用いる場合には、各軸受8、11の各ガイド面2,4に対向する面と、シール部7、10の各ガイド面2,4に対向する面とを、同一平面上に配置することが好ましい。なぜなら、上記の軸受面とシール面を同時に加工することが可能となり、形状精度の向上と製作コストの削減を同時に実現できるからである。
【0032】
各スライダの駆動方法は以下の通りである。干渉計により測定されたスライダの位置情報と、目標位置との偏差を基に、PID演算等によりスライダを駆動するための駆動力を算出する。そしてリニアモータ等の駆動手段によりスライダを駆動することにより、スライダの位置決め動作を行う。駆動力の算出方法及び駆動手段については、周知であるので詳細な説明は省略する。
【0033】
図5〜7は第2の実施形態を説明するもので、図5は、本実施形態による位置決め装置を示す平面図、図6(a)、(b)は、それぞれ、図5の装置をY・X方向から見た断面図である。また、図7(a)、(b)は、それぞれ、Xスライダ5、Yスライダ3の下面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、スライダに設けた凹空間部の減圧方法であり、その他は第1の実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態においては、図6に示すように、Yスライダ3は、Xガイド面4上の、X凹空間部9と対向する位置に設けたX排気口12と、X排気口12とY凹空間部6とを連通するX−Y連通流路13と、を有する。ベース1は、Yガイド面2上の、Y凹空間部6と対向する位置に設けたY排気口14を有する。Y排気口14には不図示の真空ポンプが接続され、Y排気口14を通じてY凹空間部6及びX凹空間部9が減圧される。スライダの位置によらず真空排気流路を確保するため、Y凹空間部6のYガイド面2に面した開口は、Yスライダ3がストローク範囲内で移動する場合において、Y排気口14の全面に重なっている。同様に、X凹空間部9のXガイド面4に面した開口は、Xスライダ5がストローク範囲内で移動する場合において、X排気口12の全面に重なっている。
【0035】
本実施形態においては、移動体(スライダ)に排気ホースを接続する必要がないため、排気ホースの変形による非線形外乱力が移動体に作用せず、第1の実施形態に比べて、位置決め精度が向上する。
【0036】
図8〜11は第3の実施形態を説明するもので、図8は本実施形態における位置決め装置を示す平面図、図9は、図8に示す装置のY方向の断面図、図10(a)、(b)はそれぞれ、図8に示す装置のA−A断面図、B−B断面図である。図11(a)、(b)は、それぞれ、Xスライダ5、Yスライダ3の下面図である。
【0037】
本実施形態の特徴は、Yスライダ3に、独立した2つのY凹空間部6a、6bを設けた点である。図9、10に示すように、第3の凹空間部であるY凹空間部6bは、X排気口12、X−Y連通流路13により第2の凹空間部であるX凹空間部9と連通している。これに対して、第1の凹空間部であるY凹空間部6aは、X凹空間部9とは連通しておらず、図11に示すように、Y凹空間部6bからはシール部7により隔離されている。X凹空間部9及びY凹空間部6bはY排気口14を通じて真空ポンプにより減圧され、Y凹空間部6aはY排気口31を通じて真空ポンプにより減圧される。干渉計25aは、Yスライダ3に対してXスライダ5のX方向の相対位置を測定する第2のレーザ測長器であり、干渉計25bは、ベース1に対してYスライダ3のY方向の相対位置を測定する第1のレーザ測長器である。
【0038】
本実施形態の利点を、第2の実施形態との比較により説明する。各スライダのガイド面は完全な平面ではなく、加工精度の限界によりうねりが存在する。シール部に非接触シールを用いてスライダの凹空間部を減圧する場合には、ガイド面のうねりによりスライダ移動時にシールの微小隙間高さが変化し、凹空間部の真空度が変動する。この真空度変動により測長光路の屈折率が変動するため、スライダ移動時に測長誤差が生じる。
【0039】
第2の実施形態においては、干渉計25aの測長光路であるX凹空間部9と、干渉計25bの測長光路であるY凹空間部6とが、X−Y連通流路13により通じている。このためXスライダ5が移動する場合、Xガイド面4のうねりによりX凹空間部9の真空度が変動すると、同時にY凹空間部6の真空度も変動する。このようにX凹空間部9とY凹空間部6の真空度が連成して変動することにより、干渉計25aと干渉計25bにおいて連成した測長誤差が発生する問題がある。
【0040】
本実施形態はこの問題に対する対策として有効である。本実施形態においては、干渉計25aの測長光路であるX凹空間部9と、干渉計25bの測長光路であるY凹空間部6aとが独立している。このため、Xスライダ5が移動する場合に、X凹空間部9の真空度が変動しても、Y凹空間部6aの真空度は変動しない。したがって、Xスライダ5の移動時における干渉計25bの測長誤差の抑制が可能である。
【0041】
図12は第4の実施形態を示す。これは、第2の実施形態による位置決め装置を用いた加工装置(工作機械)であり、被加工物36は、Xスライダ5、Yスライダ3、不図示のリニアモータ等の駆動手段から構成されるXYステージ上の保持具に保持され、XY方向に移動可能となっている。Yスライダ3のベース1に対する相対位置が、減圧されたY凹空間部6を測長光路として用いる干渉計25bによって計測される。同様に、Xスライダ5のYスライダ3に対する相対位置が、減圧されたX凹空間部9を測長光路として用いる干渉計25aによって計測される。X凹空間部9とY凹空間部6はX−Y連通流路13によって連通されており、ベース1に設けたY排気口を通じて、X凹空間部9とY凹空間部6が減圧される。
【0042】
本実施形態におけるXYステージの軸受及びシール部の構成は、第2の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0043】
工具35は図示しない保持具に保持され、保持具を支持するZスライダ34、リニアモータ等の駆動手段から構成されるZステージによってZ方向に移動可能となっている。Zスライダ34は、Yスライダ3と同様に減圧された凹空間部と、ベース1との相対位置を計測する干渉計、シール部、軸受を備えるが、詳細な説明は省略する。
【0044】
各スライダに設けた減圧凹空間の外周部にはシール部7、10などが設けられているため、減圧凹空間への空気の流入は微小である。
【0045】
また、加工空間で発生する切粉、切削油等は、被加工物36近傍に設置される不図示のカバー等により、スライダの軸受あるいはシール部に到達する以前に回収される。したがって、加工空間で飛散する固体及び液体は減圧凹空間には混入しないので、レーザ測長器の汚染や真空ポンプの損傷等の問題を回避できる。
【0046】
本実施形態においては、工具35及び被加工物36のうちの少なくとも一方を、高精度な位置決め装置を用いて位置決めすることにより、高精度加工を行うことができる。また、工具35と被加工物36の配置を交換しても同様な加工を行うことができる。
【0047】
上記構成により、従来技術では不可能であった、測長光路が減圧された干渉計を用いた位置決め装置の加工装置への適用が可能となる。また、位置決め装置外部の真空チャンバが不要であるため、装置全体の小型化が可能である。
【0048】
次に、図12に示す加工装置が行う加工の具体例を説明する。
【0049】
第1の加工例として、レンズ金型の切削加工を説明する。工具35をスピンドルに取付けられた先端丸形状のダイアモンドバイト、被加工物36を鉄系の母材の上に無電界ニッケルメッキを施した金型材とする。スピンドルの回転によりバイトを高速旋回させ、金型材をXY方向、バイトをZ方向に走査する。バイトの切込み量を図12の位置決め装置により高精度に制御しながら切削加工を行うことにより、レンズ金型を高精度に加工できる。
【0050】
また、第2の加工例として、レンズの研磨加工を説明する。工具35をウレタンパッドなどの研磨工具、被加工物36をレンズ母材とし、研磨液中でレンズ母材に対し研磨工具を軽微な荷重で押し付けながら走査することにより、研磨加工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の位置決め装置は、切削、研削、研磨、ウォータージェット加工などの噴射加工、プラズマ加工、放電加工、電子ビーム加工、レーザ加工などの、工具及び被加工物の少なくとも一方を高精度に位置決めする加工装置に広く適用できる。
【0052】
また、本発明の位置決め装置は加工装置だけでなく、露光装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図2】図1の装置の断面を示すもので、(a)はY方向から見た断面図、(b)はX方向から見た断面図である。
【図3】図1の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るレーザ測長器の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図6】図5の装置の断面を示すもので、(a)はY方向から見た断面図、(b)はX方向から見た断面図である。
【図7】図5の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図9】図8の装置をY方向から見た断面図である。
【図10】図8の装置のX方向から見た断面を示すもので、(a)は図8に基づくA−A断面図、(b)は図8に基づくB−B断面図である。
【図11】図8の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る加工装置を示す斜視図である。
【図13】一従来例による、露光装置における位置決め装置を示す斜視図である。
【図14】第1の実施形態による位置決め装置と、従来例による露光装置における位置決め装置のスライダの大きさを比較したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ベース
2 Yガイド面
3 Yスライダ
4 Xガイド面
5 Xスライダ
6、6a、6b Y凹空間部
7、10 シール部
9 X凹空間部
12 X排気口
13 X−Y連通流路
14、31 Y排気口
15、16 排気ホース
25a、25b 干渉計
26a、26b レーザ光源
27a、27b、27c、27d ミラー
34 Zスライダ
35 工具
36 被加工物
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の加工装置や露光装置等の加工装置に搭載される位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ測長器を用いた2次元方向に移動可能な位置決め装置においては、レーザ測長器から出射されるレーザのターゲットとしてバーミラーが用いられる(特許文献1参照)。従来の露光装置における位置決め装置では、スライダ上にバーミラーを設置することで、スライダがレーザ測長器の測長方向と垂直な方向に移動する場合においても、レーザの反射が途切れることなく連続的な位置の測定が可能となっている。また、レーザ測長器を用いた位置決め装置においては、大気中のレーザ光路(測長光路)の屈折率変動により測長値が変動し、位置決め誤差が発生するという問題がある。露光空間を真空環境とする露光装置においては、ステージに静圧軸受と差動排気シールを組み合わせて用いることにより、ステージ外部の露光空間が真空排気されるため、真空環境下にレーザ測長器を配置することが可能である。
【0003】
図13は、従来の露光装置における位置決め装置を示すもので、ベース101上のX・Yスライダ103、105を含むステ−ジに保持されたウェハ136を含む露光空間を減圧するために、真空チャンバ100が不図示の真空ポンプにより真空排気される。各スライダ103、105の静圧軸受108から放出される空気の露光空間への流出は、差動排気シール109により抑制される。差動排気シール109は非接触でシール機能を有するため、ステージ移動時においても位置決め精度の低下要因となる外乱は発生しない。ステージ外部に配置されたレーザ測長器である干渉計115a、115bの測長光路は、バーミラー117a、117bとともに、真空チャンバ100の内部に収容されるため減圧されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−173654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバーミラーを用いた位置決め装置は、バーミラーを設置するためにスライダが大型化するという課題を有する。また、工作機械においては、加工により発生する切粉、工具及びワークの冷却に用いられる切削油、研磨液などの、飛散する固体及び液体がステージ外部の加工空間に存在する。このような加工空間を減圧し、レーザ測長器を配置する場合、飛散する固体や液体によってレーザ測長器の汚染や、真空ポンプの損傷等の問題が生じる。このため、工作機械においてはステージ外部を減圧することは困難である。したがって、従来の静圧軸受と差動排気シールを用い、レーザ測長器の測長光路を減圧する位置決め装置は、レーザ測長器がステージの外部に配置される構成であるため、工作機械への適用が困難である。
【0006】
また、上記の位置決め装置は、ステージを真空チャンバ内に設置することを前提としているため、真空チャンバを含む装置全体が大型化するという課題を有する。
【0007】
本発明は、バーミラーを用いることなく、スライダの小型化が可能であるとともに、レーザ測長器の測長光路を減圧することにより位置決め精度を向上させることのできる位置決め装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置決め装置は、第1のガイド面を有する固定部と、前記第1のガイド面に沿って移動する第1の移動体と、前記第1の移動体に設けられた第2のガイド面に沿って移動する第2の移動体と、前記固定部に対する前記第1の移動体の位置を測定する第1のレーザ測長器と、前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の位置を測定する第2のレーザ測長器と、前記第1の移動体に配置された、前記第1のガイド面に対向する開口を有する第1の凹空間部と、前記第2の移動体に配置された、前記第2のガイド面に対向する開口を有する第2の凹空間部と、前記第1の凹空間部及び前記第2の凹空間部をそれぞれ減圧するための減圧手段と、を有し、前記第1の凹空間部に前記第1のレーザ測長器を配置し、前記第2の凹空間部に前記第2のレーザ測長器を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、移動体にバーミラーを設置しないため、移動体の小型化が可能となる。
【0010】
また、移動体の位置を計測するレーザ測長器が、移動体内部の減圧空間に収容されるため、測長光路の屈折率変化が抑制され、その結果、位置決め精度を向上させることができる。
【0011】
レーザ測長器を収容する減圧空間を移動体内部に設けたことで、飛散する固体や液体の存在により位置決め装置外部の減圧が困難である工作機械等にも適用が可能となる。
【0012】
また、移動体の外部に真空チャンバを設置する必要がないため、装置全体の小型化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜4は第1の実施形態を説明するものである。図1は本実施形態による位置決め装置を示す平面図、図2(a)、(b)は、それぞれ、図1の装置をY方向、X方向から見た断面図である。本実施形態による位置決め装置は、2つの移動体を組み合わせた、水平方向に自由度を有する2自由度のXYステージを用いているが、本発明の位置決め装置の移動方向は水平方向に限定されるものではない。例えば、XZステージ等のように、鉛直方向(Z方向)に自由度を有する構成とすることも可能である。
【0015】
図1に示すように、固定部であるベース1上に第1のガイド面であるYガイド面2が設けられ、第1の移動体であるYスライダ3は、Yガイド面2に沿って移動可能である。また、Yスライダ3の上面に設けられた第2のガイド面であるXガイド面4に沿って第2の移動体であるXスライダ5が移動可能である。
【0016】
図2に示すように、Yスライダ3は、Yガイド面2と対向する面上に開口を有する第1の凹空間部であるY凹空間部6、シール部7、Y軸受8を有する。Xスライダ5は、Xガイド面4と対向する面上に開口を有する第2の凹空間部であるX凹空間部9、シール部10、X軸受11を有する。
【0017】
Y凹空間部6及びX凹空間部9は、それぞれ、減圧手段を構成する排気ホース15,16を通じて不図示の真空ポンプに接続され、減圧される。干渉計25aは、Yスライダ3に対してXスライダ5のX方向の相対位置を測定する第2のレーザ測長器であり、干渉計25bは、ベース1に対してYスライダ3のY方向の相対位置を測定する第1のレーザ測長器である。
【0018】
干渉計と測定対象である移動体の間の測長光路において、屈折率変動が生じると測長誤差が生じるため、測長精度を向上させるためには測長光路を減圧することが有効である。本実施形態においては、測長光路が減圧された凹空間部に収容されるため、測長誤差を抑制して位置決め精度を向上させることができる。また、減圧される領域が位置決め装置の内部であるため、位置決め装置外部の減圧が困難な工作機械への適用が可能である。
【0019】
干渉計25a、25bから出射される干渉光は、不図示の光検出回路に導かれ、干渉光の位相差からミラーの移動距離を演算する回路(不図示)を使用することにより、ミラーの位置情報が得られる。干渉計25a、25bは、分解能向上を主な目的として、対向する2箇所に設置された複数のミラー27a〜27dの差動計測を行っている。
【0020】
Yスライダ3の上段にXスライダ5を配置したXYステージにおいて、本発明では、Yスライダ3の位置をベース基準で計測し、Xスライダ5の位置をYスライダ基準で計測することにより、バーミラーを不要としている。これに対して図13に示す従来技術では、固定部であるベース101を基準としてXスライダ105の位置を計測するため、バーミラー117a、117bが必須となる。したがって、図14に示すように、XスライダストロークXstとYスライダストロークYstが等しい場合は、本発明の位置決め装置においては、従来技術に比べて、Xスライダ5のY方向の長さLを縮小することで小型化が可能である。
【0021】
図3は、真空排気時に各凹空間部6、9への空気の流入を抑制するシール構造を示すもので、(a)はXスライダ5の下面図、(b)はYスライダ3の下面図である。Xスライダ5においては、X凹空間部9のXガイド面4に面した開口の周囲にシール部10が配置され、X凹空間部9に流入する空気の量を抑制する。また、シール部10の外側にX軸受11が配置され、Xガイド面4に対しXスライダ5を支持する。Yスライダ3においても、Xスライダと同様の位置関係でシール部7、Y軸受8が配置される。
【0022】
図4は、本実施形態の位置決め装置に使用する差動干渉計の構成を示す。この構成は、X方向の位置を測定する干渉計25aに対応しているが、干渉計25bも同様の構成である。干渉計25aにおいて、偏光ビームスプリッタ30に入射したレーザ18は2光束に分割され、直角ミラー28から構成されるミラー27a、27bにより多重反射された後、干渉させられる。レーザ18は、干渉計25aとミラー27a、27bとの間でそれぞれ4往復し、ミラー27aとミラー27bの変位が差動計測されるため、干渉計25aは8パスの差動干渉計として機能する。
【0023】
なお、差動干渉計は8パス干渉計に限定されず、2nパス干渉計(n=1、2、3・・・)が使用可能である。差動干渉計を用いることの利点は、測長分解能が向上すること、減圧される凹空間部全域を測長光路29a、29bとして有効利用できること、ミラー27a、27b等の熱変形による測長誤差の影響を軽減できることなどである。
【0024】
なお、第1の実施形態以外の他の実施形態においても差動干渉計を使用することが可能である。
【0025】
シール部7、10には摺動摩擦抵抗がなく位置決め精度を向上しやすい非接触型シールを用いることが望ましいが、接触型シールを用いることも可能である。
【0026】
ここで非接触型シールとは、シール部が対向するガイド面との間に微小隙間を形成し、微小隙間の流路抵抗を利用して空気の流入を抑制するシールである。このようなシールは差動排気シールとも呼ばれる。非接触型シールを用いる場合は、微小隙間より減圧空間に常に空気が流入するが、微小隙間の高さ、シール部の面積、真空ポンプの排気速度等を適切に設計することにより、空間内の屈折率変動を僅少とする圧力まで減圧できる。微小隙間の高さは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μmより小さいとガイド面と接触しやすく、加工も難しい。10μmより広いと、シール効果が薄れて、減圧空間部に空気が流入し、測長光路に気流が生じやすくなる。非接触型シールの材質は、グラファイト等の潤滑性を有する素材とするとよい。
【0027】
また、接触型シールとは、Oリングやオイルシール等の部材同士が接触することにより空気の流入を抑制するシールであり、非接触型シールに比べて高いシール効果が得られる。
【0028】
各軸受8、11には摺動摩擦抵抗がなく位置決め精度を向上しやすい非接触軸受を用いることが望ましいが、よりコストの低い接触式軸受を用いることも可能である。
【0029】
ここで非接触軸受とは流体軸受や磁気軸受等を含む軸受であり、軸受の材質はグラファイト等の潤滑性を有する素材とするとよい。
【0030】
接触式軸受とは、すべり軸受や転がり軸受等を含む軸受である。
【0031】
また、非接触軸受と非接触型シールを組み合わせて用いる場合には、各軸受8、11の各ガイド面2,4に対向する面と、シール部7、10の各ガイド面2,4に対向する面とを、同一平面上に配置することが好ましい。なぜなら、上記の軸受面とシール面を同時に加工することが可能となり、形状精度の向上と製作コストの削減を同時に実現できるからである。
【0032】
各スライダの駆動方法は以下の通りである。干渉計により測定されたスライダの位置情報と、目標位置との偏差を基に、PID演算等によりスライダを駆動するための駆動力を算出する。そしてリニアモータ等の駆動手段によりスライダを駆動することにより、スライダの位置決め動作を行う。駆動力の算出方法及び駆動手段については、周知であるので詳細な説明は省略する。
【0033】
図5〜7は第2の実施形態を説明するもので、図5は、本実施形態による位置決め装置を示す平面図、図6(a)、(b)は、それぞれ、図5の装置をY・X方向から見た断面図である。また、図7(a)、(b)は、それぞれ、Xスライダ5、Yスライダ3の下面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、スライダに設けた凹空間部の減圧方法であり、その他は第1の実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態においては、図6に示すように、Yスライダ3は、Xガイド面4上の、X凹空間部9と対向する位置に設けたX排気口12と、X排気口12とY凹空間部6とを連通するX−Y連通流路13と、を有する。ベース1は、Yガイド面2上の、Y凹空間部6と対向する位置に設けたY排気口14を有する。Y排気口14には不図示の真空ポンプが接続され、Y排気口14を通じてY凹空間部6及びX凹空間部9が減圧される。スライダの位置によらず真空排気流路を確保するため、Y凹空間部6のYガイド面2に面した開口は、Yスライダ3がストローク範囲内で移動する場合において、Y排気口14の全面に重なっている。同様に、X凹空間部9のXガイド面4に面した開口は、Xスライダ5がストローク範囲内で移動する場合において、X排気口12の全面に重なっている。
【0035】
本実施形態においては、移動体(スライダ)に排気ホースを接続する必要がないため、排気ホースの変形による非線形外乱力が移動体に作用せず、第1の実施形態に比べて、位置決め精度が向上する。
【0036】
図8〜11は第3の実施形態を説明するもので、図8は本実施形態における位置決め装置を示す平面図、図9は、図8に示す装置のY方向の断面図、図10(a)、(b)はそれぞれ、図8に示す装置のA−A断面図、B−B断面図である。図11(a)、(b)は、それぞれ、Xスライダ5、Yスライダ3の下面図である。
【0037】
本実施形態の特徴は、Yスライダ3に、独立した2つのY凹空間部6a、6bを設けた点である。図9、10に示すように、第3の凹空間部であるY凹空間部6bは、X排気口12、X−Y連通流路13により第2の凹空間部であるX凹空間部9と連通している。これに対して、第1の凹空間部であるY凹空間部6aは、X凹空間部9とは連通しておらず、図11に示すように、Y凹空間部6bからはシール部7により隔離されている。X凹空間部9及びY凹空間部6bはY排気口14を通じて真空ポンプにより減圧され、Y凹空間部6aはY排気口31を通じて真空ポンプにより減圧される。干渉計25aは、Yスライダ3に対してXスライダ5のX方向の相対位置を測定する第2のレーザ測長器であり、干渉計25bは、ベース1に対してYスライダ3のY方向の相対位置を測定する第1のレーザ測長器である。
【0038】
本実施形態の利点を、第2の実施形態との比較により説明する。各スライダのガイド面は完全な平面ではなく、加工精度の限界によりうねりが存在する。シール部に非接触シールを用いてスライダの凹空間部を減圧する場合には、ガイド面のうねりによりスライダ移動時にシールの微小隙間高さが変化し、凹空間部の真空度が変動する。この真空度変動により測長光路の屈折率が変動するため、スライダ移動時に測長誤差が生じる。
【0039】
第2の実施形態においては、干渉計25aの測長光路であるX凹空間部9と、干渉計25bの測長光路であるY凹空間部6とが、X−Y連通流路13により通じている。このためXスライダ5が移動する場合、Xガイド面4のうねりによりX凹空間部9の真空度が変動すると、同時にY凹空間部6の真空度も変動する。このようにX凹空間部9とY凹空間部6の真空度が連成して変動することにより、干渉計25aと干渉計25bにおいて連成した測長誤差が発生する問題がある。
【0040】
本実施形態はこの問題に対する対策として有効である。本実施形態においては、干渉計25aの測長光路であるX凹空間部9と、干渉計25bの測長光路であるY凹空間部6aとが独立している。このため、Xスライダ5が移動する場合に、X凹空間部9の真空度が変動しても、Y凹空間部6aの真空度は変動しない。したがって、Xスライダ5の移動時における干渉計25bの測長誤差の抑制が可能である。
【0041】
図12は第4の実施形態を示す。これは、第2の実施形態による位置決め装置を用いた加工装置(工作機械)であり、被加工物36は、Xスライダ5、Yスライダ3、不図示のリニアモータ等の駆動手段から構成されるXYステージ上の保持具に保持され、XY方向に移動可能となっている。Yスライダ3のベース1に対する相対位置が、減圧されたY凹空間部6を測長光路として用いる干渉計25bによって計測される。同様に、Xスライダ5のYスライダ3に対する相対位置が、減圧されたX凹空間部9を測長光路として用いる干渉計25aによって計測される。X凹空間部9とY凹空間部6はX−Y連通流路13によって連通されており、ベース1に設けたY排気口を通じて、X凹空間部9とY凹空間部6が減圧される。
【0042】
本実施形態におけるXYステージの軸受及びシール部の構成は、第2の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0043】
工具35は図示しない保持具に保持され、保持具を支持するZスライダ34、リニアモータ等の駆動手段から構成されるZステージによってZ方向に移動可能となっている。Zスライダ34は、Yスライダ3と同様に減圧された凹空間部と、ベース1との相対位置を計測する干渉計、シール部、軸受を備えるが、詳細な説明は省略する。
【0044】
各スライダに設けた減圧凹空間の外周部にはシール部7、10などが設けられているため、減圧凹空間への空気の流入は微小である。
【0045】
また、加工空間で発生する切粉、切削油等は、被加工物36近傍に設置される不図示のカバー等により、スライダの軸受あるいはシール部に到達する以前に回収される。したがって、加工空間で飛散する固体及び液体は減圧凹空間には混入しないので、レーザ測長器の汚染や真空ポンプの損傷等の問題を回避できる。
【0046】
本実施形態においては、工具35及び被加工物36のうちの少なくとも一方を、高精度な位置決め装置を用いて位置決めすることにより、高精度加工を行うことができる。また、工具35と被加工物36の配置を交換しても同様な加工を行うことができる。
【0047】
上記構成により、従来技術では不可能であった、測長光路が減圧された干渉計を用いた位置決め装置の加工装置への適用が可能となる。また、位置決め装置外部の真空チャンバが不要であるため、装置全体の小型化が可能である。
【0048】
次に、図12に示す加工装置が行う加工の具体例を説明する。
【0049】
第1の加工例として、レンズ金型の切削加工を説明する。工具35をスピンドルに取付けられた先端丸形状のダイアモンドバイト、被加工物36を鉄系の母材の上に無電界ニッケルメッキを施した金型材とする。スピンドルの回転によりバイトを高速旋回させ、金型材をXY方向、バイトをZ方向に走査する。バイトの切込み量を図12の位置決め装置により高精度に制御しながら切削加工を行うことにより、レンズ金型を高精度に加工できる。
【0050】
また、第2の加工例として、レンズの研磨加工を説明する。工具35をウレタンパッドなどの研磨工具、被加工物36をレンズ母材とし、研磨液中でレンズ母材に対し研磨工具を軽微な荷重で押し付けながら走査することにより、研磨加工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の位置決め装置は、切削、研削、研磨、ウォータージェット加工などの噴射加工、プラズマ加工、放電加工、電子ビーム加工、レーザ加工などの、工具及び被加工物の少なくとも一方を高精度に位置決めする加工装置に広く適用できる。
【0052】
また、本発明の位置決め装置は加工装置だけでなく、露光装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図2】図1の装置の断面を示すもので、(a)はY方向から見た断面図、(b)はX方向から見た断面図である。
【図3】図1の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るレーザ測長器の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図6】図5の装置の断面を示すもので、(a)はY方向から見た断面図、(b)はX方向から見た断面図である。
【図7】図5の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る位置決め装置を示す平面図である。
【図9】図8の装置をY方向から見た断面図である。
【図10】図8の装置のX方向から見た断面を示すもので、(a)は図8に基づくA−A断面図、(b)は図8に基づくB−B断面図である。
【図11】図8の装置のXスライダ及びYスライダの下面を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る加工装置を示す斜視図である。
【図13】一従来例による、露光装置における位置決め装置を示す斜視図である。
【図14】第1の実施形態による位置決め装置と、従来例による露光装置における位置決め装置のスライダの大きさを比較したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 ベース
2 Yガイド面
3 Yスライダ
4 Xガイド面
5 Xスライダ
6、6a、6b Y凹空間部
7、10 シール部
9 X凹空間部
12 X排気口
13 X−Y連通流路
14、31 Y排気口
15、16 排気ホース
25a、25b 干渉計
26a、26b レーザ光源
27a、27b、27c、27d ミラー
34 Zスライダ
35 工具
36 被加工物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガイド面を有する固定部と、
前記第1のガイド面に沿って移動する第1の移動体と、
前記第1の移動体に設けられた第2のガイド面に沿って移動する第2の移動体と、
前記固定部に対する前記第1の移動体の位置を測定する第1のレーザ測長器と、
前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の位置を測定する第2のレーザ測長器と、
前記第1の移動体に配置された、前記第1のガイド面に対向する開口を有する第1の凹空間部と、
前記第2の移動体に配置された、前記第2のガイド面に対向する開口を有する第2の凹空間部と、
前記第1の凹空間部及び前記第2の凹空間部をそれぞれ減圧するための減圧手段と、を有し、
前記第1の凹空間部に前記第1のレーザ測長器を配置し、前記第2の凹空間部に前記第2のレーザ測長器を配置したことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記第1の凹空間部を介して前記第2の凹空間部を減圧する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第1の移動体に配置された、前記第1の凹空間部とは独立であり、かつ前記第1のガイド面に対向する開口を有する第3の凹空間部と、を有し、
前記減圧手段は、前記第1の凹空間部を減圧し、前記第3の凹空間部を介して前記第2の凹空間部を減圧する手段を有するたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項4】
各凹空間部の開口の周囲に配置されたシール部を有し、
前記シール部は、前記ガイド面との間に1μm以上10μm以下の隙間を形成し、前記隙間によって前記凹空間部への空気の流入を抑制することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
各凹空間部の開口の周囲に配置されたシール部を有し、
前記シール部は、接触型シールを前記凹空間部の外周部に配置することによって、前記凹空間部への空気の流入を抑制することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項6】
各シール部の近傍には、非接触軸受を配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
各シール部の前記ガイド面に対向する面と、前記非接触軸受の前記ガイド面に対向する面とは、同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の位置決め装置。
【請求項8】
各レーザ測長器は、前記凹空間部の対向する2箇所に設置された複数のミラーを用いて差動計測することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の位置決め装置と、
工具と、
前記工具によって加工される被加工物を保持する保持具と、を有し、
前記工具と前記保持具の少なくとも一方を前記位置決め装置によって位置決めすることを特徴とする加工装置。
【請求項1】
第1のガイド面を有する固定部と、
前記第1のガイド面に沿って移動する第1の移動体と、
前記第1の移動体に設けられた第2のガイド面に沿って移動する第2の移動体と、
前記固定部に対する前記第1の移動体の位置を測定する第1のレーザ測長器と、
前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の位置を測定する第2のレーザ測長器と、
前記第1の移動体に配置された、前記第1のガイド面に対向する開口を有する第1の凹空間部と、
前記第2の移動体に配置された、前記第2のガイド面に対向する開口を有する第2の凹空間部と、
前記第1の凹空間部及び前記第2の凹空間部をそれぞれ減圧するための減圧手段と、を有し、
前記第1の凹空間部に前記第1のレーザ測長器を配置し、前記第2の凹空間部に前記第2のレーザ測長器を配置したことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記第1の凹空間部を介して前記第2の凹空間部を減圧する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第1の移動体に配置された、前記第1の凹空間部とは独立であり、かつ前記第1のガイド面に対向する開口を有する第3の凹空間部と、を有し、
前記減圧手段は、前記第1の凹空間部を減圧し、前記第3の凹空間部を介して前記第2の凹空間部を減圧する手段を有するたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項4】
各凹空間部の開口の周囲に配置されたシール部を有し、
前記シール部は、前記ガイド面との間に1μm以上10μm以下の隙間を形成し、前記隙間によって前記凹空間部への空気の流入を抑制することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
各凹空間部の開口の周囲に配置されたシール部を有し、
前記シール部は、接触型シールを前記凹空間部の外周部に配置することによって、前記凹空間部への空気の流入を抑制することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項6】
各シール部の近傍には、非接触軸受を配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
各シール部の前記ガイド面に対向する面と、前記非接触軸受の前記ガイド面に対向する面とは、同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の位置決め装置。
【請求項8】
各レーザ測長器は、前記凹空間部の対向する2箇所に設置された複数のミラーを用いて差動計測することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の位置決め装置と、
工具と、
前記工具によって加工される被加工物を保持する保持具と、を有し、
前記工具と前記保持具の少なくとも一方を前記位置決め装置によって位置決めすることを特徴とする加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−149245(P2010−149245A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331195(P2008−331195)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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