説明

傾き調整方法および傾き調整装置並びにその傾き調整方法において調整されるデバイス

【課題】対向配置された対象物同士の相対的な傾きをを高精度にかつ容易に調整することができる傾き調整の技術を提供することを目的とする。
【解決手段】基板55には第1検出部である電極が形成され、基板56には第2検出部である電極が基板55の電極と対を構成する位置に形成されている。そして、基板55および基板56をステージ部15の保持部29およびヘッド部39の保持部44にそれぞれ保持し、基板55および基板56の電極の対の間の静電容量を検出部50により検出する。そして、検出された静電容量が所定の値になるように、X−Yテーブル制御部52によってX−Yステージ機構11を移動させ、基板55および基板56の相対的な傾きを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された一方および他方の対象物を所定の傾きに調整する傾き調整の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの小型化、高密度化が進み、微細な回路パターンの所定の位置にチップを搭載したり、ウエハや基板に微小なチップを高密度に搭載することとなったため、デバイスを形成するための実装装置、接合装置、露光装置等には、基板等の対象物同士の位置を精度よく合わせるために、デバイス形成前に対象物の傾きを調整する傾き調整が行われている。
【0003】
一般的には、個々の対象物ごとの平面状態の違いは無視できるものとして、対象物を保持するステージとヘッドの保持面を接触して倣い調整を行ったり、ステージとヘッドを所定の間隔に設定してステージとヘッドの保持面の傾きを非接触で検出し、傾き調整が行われている。一方、デバイスがより小型化すると、個々の対象物ごとの平面状態を無視することができなくなり、対象物ごとに傾きを検出してこれを調整する必要がある。
【0004】
個々の対象物ごとに傾き調整を行う技術としては、アライメントマークが形成された両対象物同士をステージおよびヘッドに保持して対向配置した後、両対象物の間にセンサーを備えた検出手段を導入し、一方の対象物に形成されたアライメントマークと他方の対象物に形成された対応するアライメントマークをそれぞれ検出し、両対象物の傾きを調整して、両対象物同士を所定の傾きに調整することが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の露光装置にはウエハとマスクの位置調整を行う位置制御装置が組み込まれ、露光動作をする前のウエハ(ワーク)とマスクをそれぞれウエハホルダーおよびマスクホルダーにより保持して対向配置し、ウエハとマスクの間にキャリブレーション装置を挿入している。
【0006】
キャリブレーション装置は、下面にレーザー発光素子と分割受光素子からなるセンサーを複数個備えている。そして、キャリブレーション装置の上面をマスクホルダーの下面に当接し、キャリブレーション装置の下面に配置されたセンサーにより、マスクに対して対向配置されたウエハの傾きを検出する。その後、ウエハホルダーの底面を支持する駆動シリンダーを制御してウエハホルダーの傾きを調整し、ウエハとマスクの傾き調整を行う構成となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−173907号公報(段落0007、0008、0012、0019、0028〜0030、図12〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、対象物同士の傾き調整をするときには、対象物同士をできるだけ接近して調整すると精度よく位置を合わせることができる。ところが、特許文献1に記載の発明では、上記したように、ウエハとマスクとの間にセンサーを備えたキャリブレーション装置を導入して調整するため、ウエハとマスクとの間には、少なくともキャリブレーション装置を導入するための一定間隔が必要であり、ウエハとマスクをより近接して位置合わせをすることが難しいという問題があった。そのため、例えば、ウエハホルダーやマスクホルダーを上下方向に移動する位置制御装置の稼動軸の方向が正確な鉛直方向ではなく歪みや偏心がある場合には、傾き調整後にキャリブレーション装置を退避してウエハとマスクを接触させたときにウエハとマスクの傾きがずれるおそれがあった。特に対象物を接合する場合には、接合部であるパッドのサイズおよびパッド間の間隔が数十μm、バンプの高さが数μm〜数十μmにまで微細化されてきたことにより、正確な鉛直方向からのわずかな歪みや偏心が、歩留まりに無視できない影響を及ぼすおそれがでてきている。しかも、従来の技術では、傾き調整後にウエハとマスクとの間からキャリブレーション装置を退避するため、装置の動作が複雑化するという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は、対向配置された対象物を所定の傾きに高精度にかつ容易に調整することができる傾き調整の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる傾き調整方法は、対向配置されたほぼ板状の第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを、前記第1の対象物に複数形成された第1検出部それぞれと前記第2の対象物に複数形成された第2検出部それぞれとの対により構成された複数の検出手段により検出する検出工程と、前記第1および第2の対象物の一方を基準としたときの他方の傾きを傾き調整手段によって変更して、前記検出工程で検出した前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを所定の傾きに調整する傾き調整工程とを含むことを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、本発明にかかる傾き調整方法は、前記第1および第2の対象物が、互いに接合される接合物であることを特徴としている(請求項2)。
【0012】
また、本発明にかかる傾き調整方法は、前記検出工程において、前記検出手段が、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の静電容量をそれぞれ検出する静電容量式であって、前記各検出手段による前記静電容量の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴としている(請求項3)。
【0013】
また、本発明にかかる傾き調整方法は、前記検出工程において、前記検出手段が、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部のいずれか一方から他方に磁界を印加したときの前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の磁界の変化による渦電流をそれぞれ検出する渦電流式であって、前記各検出手段による前記渦電流の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴としている(請求項4)。
【0014】
また、本発明にかかる傾き調整方法は、前記検出工程において、前記検出手段が、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部のいずれか一方から他方に照射した光の前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の光路時間をそれぞれ検出する光学センサ式であって、前記各検出手段による前記光路時間の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴としている(請求項5)。
【0015】
また、本発明にかかる傾き調整方法は、前記検出工程において、前記検出手段が、前記第1および第2の対象物を接触した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部に作用する荷重をそれぞれ検出する歪みセンサ式であって、前記各検出手段による前記荷重の値から前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴としている(請求項6)。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明にかかる傾き調整装置は、前記第1の対象物に複数形成された第1検出部と、前記第2の対象物に複数形成された第2検出部と、前記各第1検出部それぞれと前記各第2検出部それぞれとの対により構成され、前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出する複数の検出手段と、前記第1の対象物を保持する第1保持手段と、前記第2の対象物を保持する第2保持手段と、前記第1保持手段および前記第2保持手段の少なくともいずれかに配設され、前記第1および第2の対象物の一方を基準としたときの他方の傾きを調整する傾き調整手段と、前記傾き調整手段を制御して、前記各検出手段により検出した前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを所定の傾きに調整する制御手段とを備えることを特徴としている(請求項7)。
【0017】
また、本発明にかかる傾き調整装置は、前記第1および第2の対象物が、互いに接合される接合物であることを特徴としている(請求項8)。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかるデバイスは、前記第1の対象物および前記第2の対象物を備えることを特徴としている(請求項9)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、7の発明によれば、第1の対象物に複数形成された第1検出部それぞれと第2の対象物に複数形成された第2検出部それぞれとの対により複数の検出手段が構成されるので、第1および第2の対象物を保持するステージとヘッドの傾きを検出する等の間接的な傾き検出ではなく、第1および第2の対象物自体の相対的な傾きを検出することができる。したがって、対象物個々の平面性等の傾きのバラツキがあっても、両対象物の傾きを高精度に調整することができる。また、両対象物の間に別途検出手段を挿入して傾き検出する必要がないので、両対象物を近接して相対的な傾きを検出することができる。したがって、第1および第2の対象物を所定の傾きに精度よく調整することが可能である。
【0020】
このとき、第1および第2の対象物に形成された複数の検出手段により両対象物の相対的な傾きを検出するので、基板が細長い形状である場合には、例えば、2個の検出手段を形成することにより、効率よく第1および第2の対象物の傾きを調整することができる。また、基板の大きさや形状に合わせた個数の検出手段を形成すればよい。したがって、第1および第2の対象物の形状や大きさに合わせて検出手段を複数形成することにより、両対象物の傾きを精度よく調整することができる。
【0021】
請求項2、8の発明によれば、第1および第2の対象物が互いに接合される接合物であるので、接合物同士である第1および第2の対象物の傾きを調整して精度よく接合した接合物を提供することができる。これにより、接合部であるパッドのサイズおよびパッド間の間隔が数十μm、バンプの高さが数μm〜数十μm、あるいはそれ以下にまで微細化された場合にも、高い歩留まりを維持することが可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、第1および第2の対象物を対向配置して非接触で両対象物の相対的な傾きを検出するので、対象物の表面状態が柔らかい場合や対象物が傷などのダメージを受け易い場合であっても、対象物にダメージを与えることなく両対象物の相対的な傾きを検出して調整することができる。また、両対象物の傾き調整後に両対象物を所定の間隔に保持して露光などの作業を行う場合は、両対象物を予めその作業時の間隔に保持して傾き調整することが可能である。
【0023】
また、第1検出部および第2検出部の対の間の静電容量の変化から第1および第2の対象物の相対的な傾きを検出するので、特に両対象物を近接したときに両対象物の傾きを感度よく検出することができ、両対象物を近接した状態でより精度よく傾き調整することが可能である。
【0024】
請求項4の発明によれば、第1検出部および第2検出部の対の間の磁界の変化による渦電流から第1および第2の対象物の相対的な傾きを検出するので、特に両対象物を近接したときに両対象物の傾きを感度よく検出することができ、両対象物を近接した状態でより精度よく所定の傾きに調整することができる。また、磁界の変化による渦電流を利用した方法であるため、上記した静電容量式に対し、対象物の材質が有機物等の非金属であっても対象物の材質に起因した静電容量変化の影響を受けることがないので、非金属の対象物の傾き調整を行うときには特に有効である。
【0025】
また、請求項5の発明によれば、第1検出部および第2検出部のいずれか一方から他方に光を照射して、光の光路時間から第1および第2の対象物の相対的な傾きを検出するので、検出時間が早く、また、対象物の材質に関わらず、精度よく両対象物の傾きを調整することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、第1検出部と第2検出部を接触したときの、第1検出部及び第2検出部に作用する荷重から第1および第2の対象物の相対的な傾きを検出するので、傾き調整後に両対象物を接触して接合などの作業を行う場合は、両対象物を予め接触した状態で傾き調整することができるため、両対象物の傾きをより精度よく簡便に調整することが可能である。
【0027】
請求項9の発明によれば、デバイスが備える第1および第2の対象物自体の相対的な傾きを精度よく調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態として、本発明にかかる傾き調整装置を組み込んだ超音波振動接合装置について図1ないし図8を参照して説明する。なお、図1は本発明の一実施形態における超音波振動接合装置の概略構成図、図2は対象物を搭載する搭載手段の動作を示す概略構成図、図3は搭載手段の斜視図、図4および図5は対象物である基板の概略構成図、図6は対象物を搭載したステージ部およびヘッド部の部分概略構成図、図7は傾き調整の動作手順を示すフローチャート、図8は基準体を搭載したステージ部およびヘッド部の部分概略構成図、図9は基板を搭載したステージ部および基板の平面図である。
【0029】
1.装置構成
本実施形態における接合装置は、図1に示すように、本発明にかかるデバイスが備える対象物を保持するための搭載手段1と、加圧手段2と、装置全体の動作の監視および制御を行う制御装置3とを備えている。
【0030】
搭載手段1は、本発明における「傾き調整手段」に相当し、図1ないし4に示すように、基台10上にX−Yテーブル機構11と、支柱12と、支持台13とを備え、ローラー14a、14b、14cと、ステージ部15、連結機構16によって構成されている。なお、基台10、支柱12および支持台13は固着されている。
【0031】
X−Yテーブル機構11は、サーボモーターからなる駆動モーター20a、20bとボールねじ(図示せず)と、それぞれX方向、Y方向に移動可能に構成される水平移動テーブル11a、11bとにより構成されている。上記水平移動テーブル11a、11bでは、駆動モーター20a、20bを励磁して動作させると、駆動モーター20a、20bの回転がボールねじに伝達されてボールねじが回転し、両テーブル11a、11bがボールねじに沿ってそれぞれX方向、Y方向に移動する。また、駆動モーター20a、20bに流す電流を逆にすることにより、駆動モーター20a、20bの回転が逆回転となり、両テーブル11a、11bはそれぞれX方向、Y方向へ逆方向に移動する。
【0032】
また、駆動モーター20a、20bの励磁を解除した場合には、両テーブル11a、11bは駆動モーター20a、20bの動作とは関係なく自由に移動し、駆動モーター20a、20bを励磁して回転のためのサーボ制御信号を与えた状態では、両テーブル11a、11bは駆動モーター20a、20bの回転に連動して移動する。また、駆動モーター20a、20bを励磁した状態で停止すると、両テーブル11a、11bは所定の位置に固定された状態となる。
【0033】
ステージ部15は、円柱の下周面が球面状に加工されて下面に球面を有する球面状基部25と、平面視が球面状基部25と同じ形状を成し上面に対象物を保持するステージ基準部26によって構成される。ステージ基準部26は、球面状基部25の上面に、断熱部27およびヒーター部28を介して対象物を保持する保持部29が順次積層されて形成されている。また、ステージ基準部26は、球面状基部25の下面の球面の曲率中心P(ここで、図1以下の点Pが曲率中心に相当)の位置に、ステージ基準部26の上面の中心がほぼ一致するように配置されている。このように配置することにより、ステージ基準部26の上面の中心を基準に傾き調整を行うと、精度よく傾き調整することができる。また、対象物を上記したステージ基準部26の上面の中心を含む位置に保持することにより、安定した傾き調整を行うことができる。
【0034】
また、対象物を保持する保持部29には、対象物を真空吸着により保持するための吸着機構(図示せず)、および、対象物に当接する信号検出用のプローブ(図示せず)が配設されている。なお、対象物の保持方法は前記した真空吸着法に限らず、その他の方法でもよい。また、ステージ基準部26は、本実施形態のように対象物を加熱するためのヒーター部28を必ずしも備えている必要はない。
【0035】
そして、球面状基部25は連結機構16を介してX−Yテーブル機構11に連結されている。連結機構16は、図1および図2に示すように、上端が球面状基部25の下面中央に配設された丸棒状の軸体および該軸体の下端に一体形成された球体からなる軸部30と、軸部30の軸体に外嵌され軸部30を軸方向および軸周り方向に摺動自在に支持する円筒部31と、上側の水平移動テーブル11aの上面に固着され上面に軸部30の球体を摺動自在に保持する球面凹部を有する受部32とを備えている。
【0036】
ここで、軸部30の軸体は、ステージ部15の球面状基部25の球面の曲率中心Pを通る線上に配設されている。
【0037】
このような構成により、図2に示すように、X−Yテーブル機構11の両テーブル11a、11bの動作に対応してステージ部15の傾きを自在に変えることができる。つまり、X−Yテーブル機構11の移動により、連結機構16の軸部30の球体と受部32は摺動し、軸部30は連結機構16の円筒部31に対して軸部30の軸方向および軸周り方向に摺動して、ステージ部15とX−Yテーブル機構11との間の距離変動が吸収調整されるため、ステージ部15のステージ基準部26の上面の傾き角度を可変できるようになっている。
【0038】
また、図3に示すように、支持台13の上面には、正三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ配設された3個のローラー14a、14b、14cを介して、ステージ部15が支持されている。また、各ローラー14a、14b、14cに対し、次のような構成により、球面状基部25の球面が摺動可能に支持されている。
【0039】
各ローラー14a、14b、14cは、それぞれ水平方向に配設された軸33と軸33に外嵌されたストローク部34によって構成され、ストローク部34は軸33の軸方向に所定量移動可能で、かつ軸33の周りを自由に回転可能に設けられている。したがって、各ローラー14a、14b、14cの動作により、ステージ部15のステージ基準部26の上面の傾き角度を可変でき、ステージ部15を基準体(図1中の符号45)に対し安定して倣い移動させることができる。
【0040】
そして、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bの励磁を解除した状態では、ステージ基準部26の上面が所定の傾きに加圧されると、X−Yテーブル機構11はステージ部15の傾きに連動して移動する。また、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bを励磁した状態でX−Yテーブル機構11が所定の位置に停止すると、X−Yテーブル機構11が固定された状態となり、ステージ部15の傾きも固定される。
【0041】
加圧手段2は、対象物が保持されるヘッド部39と、対象物を第1の対象物に当接するための上下駆動機構40によって構成されている。
【0042】
ヘッド部39は、図1に示すように、振動子41を有する共振器42を備えている。また、共振器42は最小振動振幅点の位置を共振器支持部43により支持されてヘッド部39に配設されている。そして、共振器42の最大振動振幅点の位置に相当する共振器の中央部分には、下面に第2の対象物を保持するための保持部44が配設されている。対象物の保持方法には、真空吸着法が用いられ、保持部44には吸着機構(図示せず)が配設されている。また、保持部44には、対象物に当接する信号検出用のプローブ(図示せず)が配設されている。
【0043】
なお、対象物の保持方法は、真空吸着法に限らず、機械的に保持する方法などでもよい。また、保持部44は、共振器42の両端に位置する最大振動振幅点のいずれかの位置や、その他の位置に形成されるとしてもよい。また、対象物同士の接合が加熱により行われる場合には、ヘッド部39にヒーターなどの加熱機構を備えるとしてもよい。
【0044】
また、保持部44は対象物を保持するだけでなく、後述するように第1および第2の対象物をステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44に保持する前に、保持部29および保持部44の傾き調整を行うときに傾き調整のための基準面を有する基準体45を保持し、この基準面を基準として傾き調整を行う。なお、保持部29および保持部44の傾き調整を行うときには、基準体45を保持する代わりに、保持部44の下面自体を倣い基準面としてもよい。なお、搭載手段1および加圧手段2の一方が本発明における「第1保持手段」、他方が「第2保持手段」に相当する。
【0045】
制御装置3は、本発明における「制御手段」に相当し、検出部50、制御部51、X−Yテーブル制御部52、超音波振動制御部53を備えている。検出部50は、後述する第1および第2の対象物に第1検出部および第2検出部として形成された複数の電極の対の間の静電容量を検出するための高周波ベクトルネットワークアナライザを備えている。そして、検出部50で検出された各電極の対の間の静電容量が所定の値となるように、制御部51およびX−Yテーブル制御部52によって、ステージ部15の傾き調整が行われる構成となっている。
【0046】
また、超音波振動制御部53では、振動子41の振動の制御が行われ、接合時に対象物に印加される超音波振動の制御が行われる。なお、検出部50は、高周波ベクトルネットワークアナライザに限らず、Qメーター、LCRメーター、インピーダンスアナライザ等であってもよい。
【0047】
2.デバイス構成
次に、本実施形態におけるデバイスの構成について説明する。本実施形態におけるデバイスは、第1の対象物である基板55および第2の対象物である基板56を備えている。図4に、基板55および基板56の平面図を示す。
【0048】
基板55は、図4(a)に示すように、平面形状が15.0mm×15.0mmの正方形を有する石英ガラスを基材としている。そして、第1検出部として、Al−Si系合金からなり、平面形状がそれぞれ2.0mm×2.0mmの正方形を有する電極57a、57b、57c、57dが、正方形形状の4隅に配置されるように基板の4箇所に形成されている。
【0049】
また、基板55の周縁部には、ステージ部15の保持部29に配設された信号検出用のプローブ(図示せず)を当接するための、外部端子58a、58b、58c、58dが形成されている。外部端子58a、58b、58c、58dは、それぞれ平面形状が1.5mm×0.7mmの長方形を有し、Al−Si系合金により形成されている。さらに、電極57a、57b、57c、57dと外部端子58a、58b、58c、58dとの間には、引出配線部59a、59b、59c、59dが形成され、各電極57a、57b、57c、57dと各外部端子58a、58b、58c、58dとがそれぞれ接続されている。
【0050】
また、基板55には、基板55および基板56を接合するための接合部であるパッド60が形成されている。パッド60は、Al−Si系合金により形成され、それぞれ平面形状が40μm×40μmの正方形を有し、隣り合うパッド間の間隔を50μmとして、基板55の電極57a、57b、57c、57dを囲むように、平面形状が正方形となるように形成されている。
【0051】
また、基板56は、図4(b)に示すように、平面形状が7.4mm×7.4mmの正方形を有する石英ガラスを基材としたガラスチップである。そして、第2検出部として、Al−Si系合金からなり、平面形状がそれぞれ2.0mm×2.0mmの正方形を有する電極62a、62b、62c、62dが、基板56の各コーナー近傍の4箇所に形成されている。
【0052】
なお、図5は、図4(a)、(b)に示した基板55および基板56のAA線およびBB線の矢視断面図である。同図に示すように、基板56の電極62a、62b、62c、62dは、基板55の電極57a、57b、57c、57dとそれぞれ対向する位置に形成され、電極57aと電極62a、電極57bと電極62b、電極57cと電極62c、電極57dと電極62dがそれぞれ対となって検出手段として構成されている。
【0053】
また、基板56には、ヘッド部39の保持部44に配設された信号検出用のプローブ(図示せず)を当接するための、外部端子63a、63b、63c、63dが形成されている。外部端子63a、63b、63c、63dは、それぞれ平面形状が40μm×40μmの正方形を有し、Al−Si系合金により形成されている。さらに、電極62a、62b、62c、62dと外部端子63a、63b、63c、63dとの間には、引出配線部64a、64b、64c、64dが形成され、各電極62a、62b、62c、62dと各外部端子63a、63b、63c、63dとが接続されている。
【0054】
また、基板56には、基板55および基板56を接合するための接合部であるパッド65が形成されている。パッド65は、Al−Si系合金により形成され、それぞれ平面形状が40μm×40μmの正方形を有し、隣り合うパッド間の間隔を50μmとして、電極62a、62b、62c、62dを囲むように、基板56の周縁付近の基板55のパッド60と対応する位置に、平面形状が正方形となるように形成されている。
【0055】
そして、図6に示すように、基板55および基板56は、それぞれステージ部15の保持部29およびヘッド部39の保持部44に保持され、保持部29および保持部44に配置された信号検出用のプローブ(図示せず)が基板55の外部端子58a、58b、58c、58dおよび基板56の外部端子63a、63b、63c、63dに当接されて、上記した4対の電極間の静電容量が制御装置3の検出部50により検出される構成となっている。なお、上記した4対の各電極の面積は等しいので、各検出手段の電極間の距離が等しいときには、各電極間の静電容量は全て等しい値が検出される。
【0056】
なお、基板55が球面状基部25の下面の球面の曲率中心Pを含む位置に保持されることにより、安定した傾き調整を行うことができる。また、基板55および基板56に形成された電極57a、57b、57c、57dおよび電極62a、62b、62c、62dにより構成された正方形の重心位置が、球面状基部25の球面の曲率中心Pを通る垂直方向の線上に位置するように基板55および56が保持されると、より安定した傾き調整を行うことができる。
【0057】
また、基板55および基板56の各電極、各外部端子、各引出配線部の形成方法は、例えば基板に形成されるその他の回路パターンとともに基板表面にパターン形成する方法や、基板に埋設する方法等どのような形成方法であってもよい。
【0058】
3.傾き調整の動作手順
次に傾き調整の動作手順について説明する。図7に、傾き調整の動作手順を示すフローチャートを示す。
【0059】
はじめに、対象物を保持する第1および第2保持手段であるステージ部15とヘッド部39の傾きを調整する。図8に示すように、ステージ部15とヘッド部39の傾き調整は、第1および第2の対象物を保持しない状態で、保持部29の上面中心にヘッド部39の基準体45の倣い基準面が当接された状態で行われる。
【0060】
まず、ステージ部15のステージ基準部26の上面を加圧したときにX−Yテーブル機構11が自在に移動するように、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bの励磁が解除された状態にされる。そして、ステージ基準部26の上面の中心を含む所定位置にヘッド部39の保持部44に保持された基準体45の倣い基準面が当接するように、上下駆動機構40によりヘッド部39が下降される。
【0061】
基準体45の倣い基準面がステージ基準部26の上面に当接した状態で、制御部51により所定圧力が加えられると、ステージ基準部26の上面は基準体45の倣い基準面の傾きに従って所定の傾きに倣い調整される。このとき、ステージ部15の球面状基部25の球面は各ローラー14a、14b、14cを摺動し、前記球面の曲率中心Pを中心にして回転移動する。
【0062】
各ローラー14a、14b、14cは、球面状基部25の球面の摺動に伴い、各ローラー14a、14b、14cのストローク部34が軸33の軸方向および軸周りにそれぞれ移動するため、ステージ基準部26の上面が倣い基準面に一致するように、ステージ部15が倣い調整される。このとき、ステージ部15が球面状基部25の球面の曲率中心Pを中心にして倣い調整されるため、球面状基部25の下面に配設された連結機構16も前記曲率中心Pを通る線、つまり軸部30の軸周りに回転するとともに、ステージ部15の上下方向への移動があれば連結機構16の円筒部31が軸部30の方向に摺動する。
【0063】
そして、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bの励磁が解除されて両テーブル11a、11bが自由に動ける状態にあるため、両テーブル11a、11bは連結機構16の移動に連動して所定の倣い位置に移動される。
【0064】
そして、ステージ基準部26の上面が基準体45の倣い基準面に合う所定の傾きに倣ったところで、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bを励磁させることにより、X−Yテーブル機構11の位置が固定されるため、ステージ部15は倣い状態における所定の傾きで固定され、ステージ部15とヘッド部39の傾き調整が終了する(ステップS10)。
【0065】
ステージ部15とヘッド部39の傾き調整が終了すると、ヘッド部39は上下駆動機構40によって上昇され、その後、第1および第2の対象物である基板55および基板56がそれぞれステージ部15の保持部29およびヘッド部39の保持部44に保持される(ステップS11)。なお、基板55の外部端子58a、58b、58c、58dおよび基板56の外部端子63a、63b、63c、63dには、それぞれステージ部15およびヘッド部39に配設された信号検出用のプローブ(図示せず)が当接される。
【0066】
次に、基板56が保持されたヘッド39が上下駆動機構40により所定の高さまで下降され、基板56が仮調整位置に保持される(ステップS12)。そして、基板55および基板56に形成された電極57aと電極62a、電極57bと電極62b、電極57cと電極62c、電極57dと電極62dが対向するように、ヘッド部39がX方向、Y方向、θ方向に移動され、基板55および基板56が相対的に位置調整される(ステップS13)。
【0067】
基板55および基板56の位置調整後、基板56が保持されたヘッド39が再び上下駆動機構40により所定の高さまでさらに下降され、基板56が傾き調整位置に保持され、基板56が基板55に近接配置される(ステップS14)。このときの基板55および基板56の間隔は、上記した仮調整位置での基板55および基板56の間隔よりも小さく、一例として2〜20μm程度である。
【0068】
そして、基板55および基板56に形成された電極57aと電極62a、電極57bと電極62b、電極57cと電極62c、電極57dと電極62dの間の静電容量が検出される。各電極間の静電容量は、制御装置3の検出部50に配設された高周波ベクトルネットワークアナライザにより高周波インピーダンスとしてそれぞれ計測され、静電容量が検出される(ステップS15)。
【0069】
そして、検出されたそれぞれの電極間の静電容量が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、両テーブル11a、11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更される(ステップS16)。
【0070】
その後、保持部29の傾きが所定の傾きに調整されたところで、X−Yテーブル機構11の駆動モータ20a、20bを励磁した状態のまま停止すると、保持部29の傾きが固定され、基板55および基板56が所定の傾きに保持される(ステップS17)。なお、基板55と基板56を平行に調整する場合には、検出された各電極間の静電容量が一定の値となるように、X−Yテーブル機構11を移動して調整すればよい。
【0071】
4.接合動作
次に超音波振動による接合動作について説明する。基板同士の傾き調整が終了すると、ヘッド部39が上下駆動機構40によって下降されて接合対象である基板55のパッド60および基板56のパッド65が接触され、所定圧力の加圧下、超音波振動が与えられて接合動作が行われる。
【0072】
超音波振動は、制御装置3の超音波振動制御部53によって、振動子41に所定の電圧を印加することにより発生する。振動子41は印加された電圧により振動を発生し、振動子41の振動は共振器42によってヘッド部39の保持部44に配設された基板56に伝達される。そして、伝達された超音波振動により基板56が振動し、基板56のパッド60と基板55のパッド65が摺動される。この摺動により、基板55のパッド60と基板56のパッド65の接合面では、不純物による膜や酸化膜などが除去されて新生面が露出する。そして、新生面が露出した両対象物の表面では原子同士が引き合うことによって両対象物が接合される。
【0073】
そして、基板55および基板56に超音波振動を所定時間印加した後、振動子41の振動を停止し、基板55および基板56の吸着が解除される。そして、上下駆動機構40によりヘッド部39が上昇し、接合の終了した対象物(基板55、基板56)が取り出されて一連の接合動作が終了する。なお、接合の終了は加圧力や超音波振動の印加時間などにより判断してもよく、接合終了時を判断するためのセンサーなどを備えてもよい。また、超音波振動接合中に対象物を加熱しながら接合を行ってもよい。
【0074】
したがって、本実施形態によると、基板55および基板56に形成された電極57aと電極62a、電極57bと電極62b、電極57cと電極62c、電極57dと電極62dがそれぞれ対になって検出手段が構成され、各電極間の静電容量を検出するので、基板55および基板56自体の相対的な傾きを検出することができる。したがって、基板55および基板56に傾きのバラツキがあっても、基板55および基板56の相対的な傾きを高精度に調整することができる。
【0075】
また、基板55および基板56の間に検出手段を挿入する必要がないので、基板55および基板56を近接することができる。そして、非接触で基板55および基板56の相対的な傾きを検出することができるので、基板55および基板56に接触による傷等のダメージを与えることなく、基板55および基板56を所定の傾きに精度よく調整することが可能である。
【0076】
また、基板55および基板56に形成された各電極の対の間の静電容量の変化から基板55および基板56の相対的な傾きを検出するので、特に基板55および基板56を近接したときに基板55および基板56の傾きを感度よく検出することができ、基板55および基板56を近接した状態でより精度よく傾き調整することが可能である。
【0077】
なお、本実施形態では検出手段としての電極の対が4箇所に形成されているため、各電極の対を接続してブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路の一次側(一の対角)に電圧を与えて二次側(他の対角)の電圧を測定し、ブリッジ回路が平衡状態であるかどうかを検出することとしてもよい。つまり、各電極の対の間の静電容量を直接計測しなくても、ブリッジ回路が平衡状態となれば各電極の対の間の静電容量が同一の値となるので、ブリッジ回路が平衡状態となるように傾き調整を行えば、基板同士を平行に調整することができる。このようにブリッジ回路を構成することにより、各電極の対の間の静電容量を直接計測する必要がないので、より簡便に基板同士の傾き調整をすることが可能となる。
【0078】
また、静電容量の検出は、上記した高周波ベクトルネットワークアナライザによる高周波インピーダンス測定による検出に限らず、Qメーター、LCRメーター、インピーダンスアナライザ等どのような計測機器によって検出してもよい。また、静電容量の値[pF]に限らず、静電容量を電圧値[V]や電流値[A]に置換したものを検出してもよい。また、上記した各電極の対に代えて、静電容量センサを基板55や基板56に備えることとしてもよい。
【0079】
また、第1および第2の対象物は上記した基板に限らず、ウエハやチップなどその他のものであってもよく、材質もどのようなものであってもよい。また、第1および第2の対象物に形成された電極やパッドの形状、大きさ、材質も、上記したものに限らず適宜変更してもよい。
【0080】
また、電極の対の数は上記した4対に限らず、どのように変更してもよい。例えば、電極を基板55および基板56のそれぞれ3箇所に、正三角形の各頂点位置に配置されるように形成してもよい。この場合、図9に示すように、基板55にそれぞれ形成された3箇所の電極67a、67b、67cによりそれぞれ構成された正三角形の重心位置が球面状基部25の球面の曲率中心Pを通る垂直方向の線上に位置するように基板55が保持され、基板56に形成された3箇所の電極が電極67a、67b、67cとそれぞれ対向するようにヘッド部39の保持部44に保持されると、より安定した傾き調整を行うことができる。
【0081】
また、基板が一方向に細長い形状である場合には、電極の対は、3箇所でなくても2箇所に形成することとしてもよい。以下にその実施形態を説明する。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図10を参照して説明する。図10(a)は本実施形態におけるデバイスが備える第1の対象物の平面図、同図(b)は第2の対象物の平面図である。以下に第1実施形態との相違点について説明する。
【0083】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、図10(a)、(b)に示すように、第1の対象物である基板70および第2の対象物である基板71が一方向に細長い長方形を有し、第1検出部および第2検出部である電極が基板70および基板71のそれぞれ2箇所に形成されている点である。なお、同図では、第1実施形態に示した接合部としてのパッドは図示を省略している。
【0084】
図10(a)に示すように、第1の対象物である基板70には、第1検出部としての電極72a、72bが基板の長辺の方向に2箇所に形成されている。また、同図(b)に示すように、第2の対象物である基板71には、第2検出部としての電極76a、76bが、基板70の電極72a、72bとそれぞれ対向するように基板71の長辺の方向に2箇所に形成され、電極72aと電極76a、電極72bと電極76bがそれぞれ対となって検出手段として構成されている。
【0085】
また基板70には、ステージ15の保持部29に配設された信号検出用のプローブを当接するための外部端子73a、73bが形成されている。さらに、電極72a、72bと外部端子73a、73bとの間には引出配線部74a、74bが形成され、各電極72a、72bと各外部端子73a、73bとがそれぞれ接続されている。同様に、基板71には、ヘッド部39の保持部44に配設された信号検出用のプローブを当接するための外部端子77a、77bが形成されている。さらに、電極76a、76bと外部端子77a、77bとの間には引出配線部78a、78bが形成され、各電極76a、76bと各外部端子77a、77bとがそれぞれ接続されている。そして、基板70の外部端子73a、73bおよび基板71の外部端子77a、77bからステージ部15およびヘッド部39を介して制御装置3の検出部50により、電極72aおよび76a、電極72bおよび76b間の静電容量が検出される構成となっている。
【0086】
したがって、第2実施形態によると、基板70および基板71が細長い形状をしている場合には、基板70および基板71の長辺の方向に2箇所ずつ電極を形成することにより基板の長辺の方向の傾きを簡便に調整することができる。
【0087】
なお、2対の電極は基板の長辺の方向であればどのような位置に配置されてもよいが、2対の電極がそれぞれ基板の端に近い位置に形成されて2対の電極が離れているほうが精度よく傾き調整をすることができる。また、各電極の大きさや形状はどのように構成されてもよい。
【0088】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図11を参照して説明する。図11は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図であり、以下に、第1実施形態との相違点について説明する。
【0089】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1および第2の対象物である基板80および基板81の相対的な傾きが、磁界の変化による渦電流を検出する渦電流式により検出される点である。したがって、基板80および基板81に形成された第1検出部および第2検出部の構成と、図7に示した傾き調整手順のフローチャートのステップS15での基板の傾きの検出方式が第1実施形態と異なる。以下に、詳細に説明する。
【0090】
図11に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板80には、第1検出部として電極82a、82b、82cが正三角形の各頂点位置に形成されている。なお、基板80の電極82a、82b、82cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板80の平面図は省略する。また、第2の対象物である基板81には、第2検出部としてコイル83a、83b、83cが電極82a、82b、82cとそれぞれ対向するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、電極82aとコイル83a、電極82bとコイル83b、電極82cとコイル83cがそれぞれ対となり検出手段が構成されている。
【0091】
そして、第1実施形態と同様、ステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44の傾き調整後(ステップS10)、基板80はステージ部15の保持部29に保持され、基板81はヘッド部39の保持部44に保持される(ステップS11)。さらに、ステップS12〜ステップS14の手順を経て基板81が傾き調整位置に配置され、基板80および基板81が近接して対向配置される。
【0092】
そして、ステップS15の基板傾き検出では、基板81に形成されたコイル83a、83b、83cに、制御装置3の制御部51からヘッド部39の保持部44を介して交番電流が印加される。そして、印加された交番電流に対応して、各コイル83a、83b、83cには交番磁界が発生する。さらに、その交番磁界によって、基板81に形成され各コイル83a、83b、83cと対を成す電極82a、82b、82cには渦電流が生じることとなる。
【0093】
そして、各電極82a、82b、82cに生じた渦電流の値は、制御装置3の検出部50によりそれぞれ計測され、基板80および基板81の相対的な傾きが検出される(ステップS15)。さらに、検出された各電極82a、82b、82cの電流値が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0094】
したがって、第3実施形態によると、基板80および基板81に形成された電極82a、82b、82cおよびコイル83a、83b、83cの間の磁界の変化により発生する渦電流を検出する渦電流式により基板80および基板81の相対的な傾きを検出するので、基板80および基板81自体の相対的な傾きを検出して、精度よく基板80および基板81の傾きを調整することができる。また、特に基板80および基板81を近接したときに傾きを感度よく検出することができ、基板80および基板81を近接した状態でより精度よく傾き調整することができる。さらに、磁界の変化による渦電流を利用した方法であるため、第3実施形態で示した静電容量式の検出方法に対し、対象物の材質が有機物等の非金属であっても対象物の材質に起因した静電容量変化の影響を受けることがないので、非金属の対象物の傾き調整を行うときには特に有効である。
【0095】
なお、上記した渦電流の検出は、電流値[A]そのものを検出してもよく、電圧値[V]等に置換したものを検出してもよい。また、基板80および基板81に形成された第1検出部および第2検出部は上記した電極とコイルに限らず、渦電流式センサや磁性体であってもよい。また、基板80に形成された電極82a、82b、82cで生じた渦電流の検出に代えて、電極82a、82b、82cにより発生した渦電流によるコイル83a、83b、83cのインダクタンスの変化[H]を検出してもよい。また、第1および第2の対象物は上記した基板に限らず、ウエハやチップなどその他のものであってもよい。
【0096】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図12および図13を参照して説明する。図12および図13は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図であり、以下に、第1実施形態との相違点について説明する。
【0097】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、対象物である基板85および基板86の相対的な傾きがレーザー光による光センサ式で検出される点である。したがって、基板85および基板86に形成された第1検出部および第2検出部の構成と、図7に示した傾き調整手順のフローチャートのステップS15での基板の傾きの検出方式が第1実施形態と異なる。
【0098】
図12に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板85には、第1検出部としてのセンサ部87a、87b、87cが正三角形の頂点位置に形成されている。各センサ部87a、87b、87cは発光素子であるレーザーダイオード88a、88b、88cと受光素子であるフォトダイオード89a、89b、89cとを備えている。なお、基板85のセンサ部87a、87b、87cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板85の平面図は省略する。また、第2の対象物である基板86には、第2検出部として反射体90a、90b、90cがセンサ部87a、87b、87cと対向するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、センサ部87aと反射体90a、センサ部87bと反射体90b、センサ部87cと反射体90cがそれぞれ対となって検出手段が構成されている。
【0099】
そして、第1実施形態と同様、ステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44の傾き調整後(ステップS10)、基板85はヘッド部39の保持部44に保持され、基板86はステージ部15の保持部29に保持される(ステップS11)。さらに、ステップS12〜ステップS14の手順を経て基板85が傾き調整位置に配置され、基板85および基板86が近接して対向配置される。
【0100】
そして、ステップS15の基板傾き検出では、基板85に形成された各センサ部87a、87b、87cのレーザーダイオード88a、88b、88cから基板86の反射体90a、90b、90cに向かってレーザー光が照射され、各反射体90a、90b、90cで反射されたレーザー光が基板85の各センサ部87a、87b、87cのフォトダイオード89a、89b、89cで受光される。
【0101】
そして、制御装置3の検出部50により、レーザーダイオード88a、88b、88cから発光されたレーザー光とフォトダイオード89a、89b、89cで受光されたレーザー光の光路時間の値から、基板85および基板86の傾きが検出される(ステップS15)。そして、各センサ部87a、87b、87cで検出された光路時間が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0102】
したがって、第4実施形態によると、基板85および基板86に形成されたセンサ部87a、87b、87cから反射体90a、90b、90cにレーザー光を照射してその光路時間から基板85および基板86の相対的な傾きを検出するので、基板85および基板86自体の相対的な傾きを検出することができる。また、光学的な方式を利用したものであるので検出時間が早く、基板の材質に関わらず精度よく基板85および基板86を傾き調整することができる。
【0103】
なお、第2の対象物である基板86を、回路の動作面を上方に向けたフェイスアップ状態で第1の対象物である基板85にマウントする場合には、図13に示すように、基板86をフェイスアップ状態でヘッド部の保持部44に保持して基板85と基板86の傾き調整を行うこととしてもよい。
【0104】
つまり、図13に示すように、第2の対象物である基板86には、第2検出部としての反射体90a、90b、90cが基板の上面に形成されている。また、反射体90a、90b、90cの下方の基板86には、貫通孔91a、91b、91cが形成されている。なお、反射体90a、90b、90cは、センサ部87a、87b、87cの位置と対応するように正三角形の各頂点位置に形成され、センサ部87aと反射体90a、センサ部87bと反射体90b、センサ部87cと反射体90cがそれぞれ対となって検出手段が構成されている。
【0105】
そして、基板85に形成された各センサ部87a、87b、87cのレーザーダイオード88a、88b、88cから貫通孔91a、91b、91cを通して基板86の反射体90a、90b、90cに向かってレーザー光が照射され、各反射体90a、90b、90cで反射されたレーザー光が基板85の各センサ部87a、87b、87cのフォトダイオード89a、89b、89cで受光される構成となっている。
【0106】
このような構成とすることにより、基板86を、回路の動作面を上方に向けたフェイスアップ状態で第1の対象物である基板85にマウントする場合であっても、基板86をフェイスアップ状態に保持して精度よく基板85と基板86の傾き調整を行うことができる。
【0107】
また、上記した実施形態では基板85にレーザーダイオード88a、88b、88cおよびフォトダイオード89a、89b、89cの両方を備えたセンサ部87a、87b、87cが形成され、基板86に反射体90a、90b、90cが形成された構成であるが、レーザーダイオードおよびフォトダイオードを別々の基板に備えることとしてもよい。さらに、上記した実施形態では、基板85および基板86自体の相対的な傾きを光路時間[sec]から検出するものであるが、光量から検出する構成であってもよい。また、発光素子および受光素子は、レーザーダイオードやフォトダイオードに限らず、その他の発光素子や受光素子を使用してもよい。また、第1および第2の対象物は上記した基板に限らず、ウエハやチップなどその他のものであってもよい。
【0108】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図14ないし図17を参照して説明する。図14ないし16は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図であり、以下に、第4実施形態との相違点について説明する。
【0109】
本実施形態が第4実施形態と異なる点は、対象物である基板95および基板96の相対的な傾きが、赤外光(IR光)により検出される点である。したがって、IR光発生素子であるIRレーザーおよびIR光受光素子である高感度のフォトダイオードAPDがステージ部15の保持部29またはヘッド部39の保持部44に配設される点、および、基板95および基板96に形成された第1検出部および第2検出部の構成が、第4実施形態と異なる。
【0110】
図14に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板95には、第1検出部としてのハーフミラー97a、97b、97cが正三角形の頂点位置に形成されている。なお、基板95のハーフミラー97a、97b、97cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板95の平面図は省略する。また、第2の対象物である基板96には、第2検出部としてミラー98a、98b、98cがハーフミラー97a、97b、97cの位置と対応するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、ハーフミラー97aとミラー98a、ハーフミラー97bとミラー98b、ハーフミラー97cとミラー98cがそれぞれ対となって検出手段が構成されている。
【0111】
また、ステージ部15にはセンサ部100a、100b、100cが配設され、各センサ部100a、100b、100cは、IR光を発生するIRレーザー101a、101b、101cと、IR光を検出することができる高感度のフォトダイオードであるAPD102a、102b、102cとを備えている。なお、図14ないし図17では、ステージ部15およびヘッド部39は図示を省略し、基板95および基板96とセンサ部100の配置のみを示している。
【0112】
そして、第4実施形態と同様、ステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44の傾き調整後(ステップS10)、基板95はヘッド部39の保持部44に保持され、基板96はステージ部15の保持部29に保持される(ステップS11)。さらに、ステップS12〜ステップS14の手順を経て基板95が傾き調整位置に配置され、基板95および基板96が近接して対向配置される。
【0113】
そして、ステップS15の基板傾き検出では、ステージ部15に配設されたIRレーザー101a、101b、101cからIR光が照射され、各ハーフミラー97a、97b、97cでIR光の一部が反射される。また、透過したIR光は基板96に形成された各ミラー98a、98b、98cで反射され、各ハーフミラー97a、97b、97cおよび各ミラー98a、98b、98cで反射されたIR光が、センサ部100a、100b、100cのAPD101a、101b、101cにより受光される。
【0114】
そして、制御装置3の検出部50により、各ハーフミラー97a、97b、97cおよび各ミラー98a、98b、98cで反射されたIR光の光路時間の値が検出され、基板95および基板96の傾きが検出される(ステップS15)。さらに、各ハーフミラー97a、97b、97cおよび各ミラー98a、98b、98cで反射されたIR光の光路時間が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0115】
したがって、第5実施形態によると、ステージ部15に配設されたIRレーザー101a、101b、101cからIR光を照射して、基板95および基板96に形成されたハーフミラー97a、97b、97cおよびミラー98a、98b、98cで反射したIR光をAPD102a、102b、102cで受光し、その光路時間の値から基板95および基板96の相対的な傾きを検出するので、基板95および基板96自体の相対的な傾きを検出することができる。
【0116】
なお、基板96は、図14に示したように動作面を下方に向けて基板95に対向した状態でなくても、図15に示すように、動作面を上方に向けたフェイスアップ状態でヘッド部39の保持部44に保持してもよい。基板96を図15のように保持しても、本実施形態に示す傾き調整方法はIR光を利用したものであるので、IR光により基板96を透過してミラー98a、98b、98cで反射したIR光をAPD102a、102b、102cで受光して、基板95および基板96の相対的な傾きを検出することができる。
【0117】
また、図16および図17に示すように、センサ部100a、100b、100cはステージ部15側でなくてもヘッド部39側に備えることとしてもよい。図16は、第1の対象物である基板95が、動作面を下方に向けて第2の対象物である基板96と対向するようにヘッド部39の保持部44に保持された構成である。また、図17は、第1の対象物である基板95が、動作面を上方に向けてフェイスアップ状態でヘッド部39の保持部44に保持された構成である。このように、IRレーザー101a、101b、101c、APD102a、102b、102c、ハーフミラー97a、97b、97cおよびミラー98a、98b、98cは、どのように配置してもよい。また、第1および第2の対象物は上記した基板に限らず、ウエハやチップなどその他のものであってもよい。
【0118】
また、基板95や基板96がガラス基板等の透明な材質からなる場合には、IR光に限らず可視光により基板95および基板96を透過して、基板95および基板96の相対的な傾きを検出してもよい。
【0119】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、図18を参照して説明する。図18は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図であり、以下に、第1実施形態との相違点について説明する。
【0120】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、対象物である基板105および基板106の相対的な傾きが、ミリ波により検出される点である。したがって、基板105および基板106に形成された第1検出部および第2検出部の構成と、図7に示した傾き調整手順のフローチャートのステップS15での基板の傾きの検出方式が第1実施形態と異なる。以下に、詳細に説明する。
【0121】
図18に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板105には、第1検出部として、GaAsにより形成されたミリ波受信機107a、107b、107cが正三角形の頂点位置に形成されている。また、第2の対象物である基板106には、第2検出部として、N型半導体からなり30GHz〜300GHzのミリ波を発生するガンダイオード108a、108b、108cがミリ波受信機107a、107b、107cと対向するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、ミリ波受信機107aとガンダイオード108a、ミリ波受信機107bとガンダイオード108b、ミリ波受信機107cとガンダイオード108cがそれぞれ対となって検出手段が構成されている。なお、基板106のガンダイオード108a、108b、108cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板106の平面図は省略する。
【0122】
そして、第1実施形態と同様、ステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44の傾き調整後(ステップS10)、基板105はヘッド部39の保持部44に保持され、基板106はステージ部15の保持部29に保持される(ステップS11)。さらに、ステップS12〜ステップS14の手順を経て基板105が傾き調整位置に配置され、基板105および基板106が近接して対向配置される。
【0123】
そして、ステップS15の基板傾き検出では、基板105に形成された各ガンダイオード108a、108b、108cから発射されたミリ波が基板105の各ミリ波受信機107a、107b、107cで検出される。
【0124】
そして、制御装置3の検出部50により、各ガンダイオード108a、108b、108cから発射されたミリ波が各ミリ波受信機107a、107b、107cに到達する時間から、基板105および基板106の傾きが検出される(ステップS15)。そして、各ミリ波受信機107a、107b、107cで検出されたミリ波の到達時間が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0125】
したがって、第6実施形態によると、基板106に形成されたガンダイオード108a、108b、108cから基板105に形成されたミリ波受信機107a、107b、107cにミリ波を発射してその到達時間から基板105および基板106の相対的な傾きを検出するので、基板105および基板106自体の相対的な傾きを検出することができる。
【0126】
なお、上記した実施形態では基板106にはミリ波を発生するガンダイオード108a、108b、108cが形成された構成であるが、ミリ波に限らずその他の周波数の高周波を発生する高周波発生装置であってもよい。また、第1および第2の対象物は上記した基板に限らず、ウエハやチップなどその他のものであってもよい。
【0127】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について、図19を参照して説明する。図19は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図である。本発明にかかる傾き調整装置は、対象物同士が非接触である場合に限らず、対象物同士を接触して傾き調整する場合に使用してもよい。その例について、第1実施形態との相違点を示しながら以下に説明する。
【0128】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、対象物である基板110および基板111を接触して接触面の歪みを検出し、基板110および基板111の間に作用する荷重から基板110および基板111の相対的な傾きを検出する点である。したがって、基板110および基板111に形成された第1検出部および第2検出部の構成と、図7に示した傾き調整手順のフローチャートのステップS14の傾き調整位置およびステップS15での基板の傾きの検出方式が第1実施形態と異なる。
【0129】
図19に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板110には、第1検出部として基板110の表面より突出した形状のバンプ電極112a、112b、112cが正三角形の各頂点位置に形成されている。また、第2の対象物である基板111には、第2検出部として圧電素子113a、113b、113cがバンプ電極112a、112b、112cと対向するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、バンプ電極112aと圧電素子113a、バンプ電極112bと圧電素子113b、バンプ電極112cと圧電素子113cがそれぞれ対となり検出手段が構成されている。なお、基板111の圧電素子113a、113b、113cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板111の平面図は省略する。また、バンプ電極112a、112b、112cは突出した形状に限らず、圧電素子113a、113b、113cとそれぞれ接触する構成であればどのような形状であってもよい。また、例えば先鋭な形状に形成されてもよい。
【0130】
そして、第1実施形態と同様、ステージ部15の保持部29とヘッド部39の保持部44の傾き調整後(ステップS10)、基板110はヘッド部39の保持部44に保持され、基板111はステージ部15の保持部29に保持される(ステップS11)。さらに、ステップS12〜ステップS13の手順により基板110および基板111のX方向、Y方向、θ方向の位置が調整される。
【0131】
基板110および基板111の位置調整後、基板110が保持されたヘッド39が上下駆動機構40により再び下降されて傾き調整位置に配置され、基板110に形成された各バンプ電極112a、112b、112cと基板111に形成された各圧電素子113a、113b、113cがそれぞれ接触される(ステップS14)。
【0132】
このとき、接触された各バンプ電極112a、112b、112cと各圧電素子113a、113b、113cの対の間に作用する荷重により、各圧電素子113a、113b、113cには歪みが生じることとなる。そして、各圧電素子113a、113b、113cの歪みにより発生する電圧が、制御装置3の検出部50で検出される(ステップS15)。なお、荷重の大きさは一例として一圧電素子当たり1〜10N程度である。
【0133】
さらに、検出された各圧電素子113a、113b、113cの歪みによる電圧が所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0134】
したがって、第7実施形態によると、基板110および基板111に形成されたバンプ電極112a、112b、112cおよび圧電素子113a、113b、113cの間に作用する荷重から基板110および基板111の相対的な傾きを検出するので、基板110および基板111を接触した場合でも、基板110および基板111自体の相対的な傾きを精度よく傾き調整することができる。また、傾き調整後に基板110および基板111を接触して接合などの作業を行う場合は、基板110および基板111を予め接触した状態で精度よく傾き調整することができるため、傾き調整後の接合等の作業をより精度よく簡便に行うことが可能である。
【0135】
なお、上記した各圧電素子113a、113b、113cの歪みは、電圧値[V]に限らず電流値[A]に置換したものや歪み量[μm]、荷重[N]等を検出してもよい。また、基板110および基板111に形成された第1検出部および第2検出部は上記したバンプ電極と圧電素子に限らず、種々の歪みセンサ等であってもよい。
【0136】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について、図20を参照して説明する。図20は本実施形態におけるデバイスが備える第1および第2の対象物の概略構成図である。本発明にかかる傾き調整装置は、第7実施形態と同様、対象物同士を接触して接触面の歪みを検出し、両対象物の間に作用する荷重から両対象物の相対的な傾きを検出して傾き調整する構成であるが、ラマン分光法により接触面の歪みを検出する点が第7実施形態と異なる。以下に、第7実施形態との相違点を示しながら説明する。
【0137】
図20に示すように、本実施形態における第1の対象物である基板115には、第1検出部としてシリコン素子117a、117b、117cが正三角形の各頂点位置に形成されている。また、第2の対象物である基板116には、第2検出部として接触部118a、118b、118cがシリコン素子117a、117b、117cと対向するように正三角形の各頂点位置に形成されている。そして、シリコン素子117aと接触部118a、シリコン素子117bと接触部118b、シリコン素子117cと接触部118cがそれぞれ対となり検出手段が構成されている。なお、基板116の接触部118a、118b、118cの配置位置は、図9に示した基板55の電極67a、67b、67cと同様であるため、基板115の平面図は省略する。また、シリコン素子117a、117b、117cは接触部118a、118b、118cとそれぞれ接触する構成であればどのような形状であってもよい。
【0138】
また、ステージ部15の保持部29には、IRレーザー120a、120b、120cおよび受光部121a、121b、121cが配設されている。受光部121a、121b、121cは、対向配置されたシリコン素子117a、117b、117cと接触部118a、118b、118cとを接触してIRレーザー120a、120b、120cを照射したときに、IR光がシリコン素子117a、117b、117cの歪みによりラマン散乱したときのラマン散乱光を受光する。そして、受光したラマン散乱光の波長スペクトルを制御装置3の検出部50で検出し、接触された各シリコン素子117a、117b、117cと各接触部118a、118b、118cの対の間に作用する荷重による各シリコン素子117a、117b、117cの歪みが検出される構成となっている。
【0139】
そして、上記した構成により各シリコン素子117a、117b、117cの歪みから、基板115および基板116の相対的な傾きが制御装置3の検出部50で検出される(ステップ15)。
【0140】
さらに、検出部50で検出された各シリコン素子117a、117b、117cの歪みが所定の値となるように、X−Yテーブル制御部52によりX−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bがフィードバック制御される。そして、Xテーブル11aおよびYテーブル11bがX方向、Y方向に移動され、ステージ部15の保持部29の傾きが変更されて固定される(ステップS16、S17)。
【0141】
したがって、第8実施形態によると、基板115に形成されたシリコン素子117a、117b、117cと基板116に形成された接触部118a、118b、118cとを接触したときの各シリコン素子117a、117b、117cの歪みから基板115および基板116の相対的な傾きを検出するので、基板115および基板116を接触した場合でも基板115および基板116自体の相対的な傾きを精度よく調整することができる。また、傾き調整後に基板115および基板116を接触して接合などの作業を行う場合は、基板115および基板116を予め接触した状態で精度よく傾き調整することができるため、傾き調整後の接合等の作業をより精度よく簡便に行うことが可能である。
【0142】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0143】
一例として、上記した実施形態では、本発明にかかる傾き調整装置を超音波振動接合装置に搭載した例について記載しているが、上記した超音波振動接合装置に限らずその他の装置に本発明にかかる傾き調整装置を搭載してもよい。
【0144】
また、第1検出部および第2検出部は、上記した静電容量式、渦電流式、光学センサ式、歪みセンサ式に限らず、その他の方式や複数の方式を組み合わせたものであってもよい。また、第1検出部および第2検出部として形成される素子の種類、個数、配置、形成方法等はどのように変更してもよい。さらに、対象物は基板同士に限らず、例えばチップと基板等どのような組み合わせであってもよい。また、対象物の材質や大きさ、形状等も上記した実施形態に限られず、適宜変更してもよい。
【0145】
また、ステージ部15およびヘッド部39に保持される第1および第2の対象物は、各対象物の動作面を対向した状態でなくても、例えばヘッド部39に保持する第2の対象物の動作面を上方に向けてフェイスアップの状態にして保持することとしてもよい。
【0146】
また、上記した各実施形態において、傾き調整手段は、X−Yテーブル機構11上に受部32が配設され、球面状基部25に円筒部31が配設されているが、これらの配置は逆であってもよく、その他の連結機構であってもよい。また、搭載手段は上記した各実施形態のような連結機構やローラを備える構成でなくても、搭載手段の上面の傾きを変えることができるものであれば、どのような構成であってもよい。また、ヘッド部39に倣い機構を備える構成であってもよい。
【0147】
また、上記した各実施形態において、搭載手段がステージ部15にかかる荷重を検出するための歪みセンサを備え、ステージ部15にかかる荷重を検出して荷重が所定の値となるようにフィードバック制御してステージ部15の傾きを変更するものであってもよい。この場合、対象物である基板55および基板56を保持する前に、ステージ部15およびヘッド部39の傾きをより精度よく調整することができる。
【0148】
また、上記した各実施形態では、X−Yテーブル機構11の駆動モーター20a、20bの励磁によりX−Yテーブル機構11の位置固定が行われているが、ブレーキ板などの固定機構を備えることにより、X−Yテーブル機構11を所定の倣い位置に固定するようにしてもよい。また、X−Yテーブル機構11は、シャフトモーターやその他の駆動機構を利用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の第1実施形態における超音波振動接合装置の概略構成図である。
【図2】図1における超音波振動接合装置の搭載手段の動作を示す概略構成図である。
【図3】図1における搭載手段の斜視図である。
【図4】第1実施形態における対象物である基板を示し、(a)は第1の対象物の平面図、(b)は第2の対象物の平面図である。
【図5】第1実施形態における対象物である基板の概略構成図である。
【図6】基板を搭載したステージ部およびヘッド部の部分概略構成図である。
【図7】第1実施形態における傾き調整の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】基準体を搭載したステージ部およびヘッド部の部分概略構成図である。
【図9】基板を搭載したステージ部および基板の平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における基板を示し、(a)は第1の対象物の平面図、(b)は第2の対象物の平面図である。
【図11】本発明の第3実施形態における基板の概略構成図である。
【図12】本発明の第4実施形態における基板の概略構成図である。
【図13】本発明の第4実施形態における基板の概略構成図である。
【図14】本発明の第5実施形態における基板の概略構成図である。
【図15】本発明の第5実施形態における基板の概略構成図である。
【図16】本発明の第5実施形態における基板の概略構成図である。
【図17】本発明の第5実施形態における基板の概略構成図である。
【図18】本発明の第6実施形態における基板の概略構成図である。
【図19】本発明の第7実施形態における基板の概略構成図である。
【図20】本発明の第8実施形態における基板の概略構成図である。
【符号の説明】
【0150】
1 搭載手段(傾き調整手段、第1保持手段、第2保持手段)
2 加圧手段(第1保持手段、第2保持手段)
3 制御装置(制御手段)
55、70、80、85、95、105、110、115 基板(第1の対象物)
56、71、81、86、96、106、111、116 基板(第2の対象物)
57a、57b、57c、57d、72a、72b 電極(第1検出部)
62a、62b、62c、62d、76a、76b 電極(第2検出部)
67a、67b、67c 電極(第1検出部)
82a、82b、82c 電極(第1検出部)
83a、83b、83c コイル(第2検出部)
87a、87b、87c センサ部(第1検出部)
90a、90b、90c 反射体(第2検出部)
97a、97b、97c、103a、103b、103c ハーフミラー(第1検出部)
98a、98b、98c、104a、104b、104c ミラー(第2検出部)
107a、107b、107c ミリ波受信機(第1検出部)
108a、108b、108c ガンダイオード(第2検出部)
112a、112b、112c バンプ電極(第1検出部)
113a、113b、113c 圧電素子(第2検出部)
117a、117b、117c シリコン素子(第1検出部)
118a、118b、118c 接触部(第2検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置されたほぼ板状の第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを、前記第1の対象物に複数形成された第1検出部それぞれと前記第2の対象物に複数形成された第2検出部それぞれとの対により構成された複数の検出手段により検出する検出工程と、
前記第1および第2の対象物の一方を基準としたときの他方の傾きを傾き調整手段によって変更して、前記検出工程で検出した前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを所定の傾きに調整する傾き調整工程とを含むことを特徴とする傾き調整方法。
【請求項2】
前記第1および第2の対象物は、互いに接合される接合物であることを特徴とする請求項1に記載の傾き調整方法。
【請求項3】
前記検出工程において、前記検出手段は、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の静電容量をそれぞれ検出する静電容量式であって、前記各検出手段による前記静電容量の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の傾き調整方法。
【請求項4】
前記検出工程において、前記検出手段は、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部のいずれか一方から他方に磁界を印加したときの前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の磁界の変化による渦電流をそれぞれ検出する渦電流式であって、前記各検出手段による前記渦電流の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の傾き調整方法。
【請求項5】
前記検出工程において、前記検出手段は、前記第1および第2の対象物を近接して対向配置した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部のいずれか一方から他方に照射した光の前記第1検出部と前記第2検出部の対の間の光路時間をそれぞれ検出する光学センサ式であって、前記各検出手段による前記光路時間の値から非接触で前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の傾き調整方法。
【請求項6】
前記検出工程において、前記検出手段は、前記第1および第2の対象物を接触した状態で、前記第1検出部および前記第2検出部に作用する荷重をそれぞれ検出する歪みセンサ式であって、前記各検出手段による前記荷重の値から前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の傾き調整方法。
【請求項7】
対向配置されたほぼ板状の第1および第2の対象物の傾きを調整する傾き調整装置において、
前記第1の対象物に複数形成された第1検出部と、
前記第2の対象物に複数形成された第2検出部と、
前記各第1検出部それぞれと前記各第2検出部それぞれとの対により構成され、前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを検出する複数の検出手段と、
前記第1の対象物を保持する第1保持手段と、
前記第2の対象物を保持する第2保持手段と、
前記第1保持手段および前記第2保持手段の少なくともいずれかに配設され、前記第1および第2の対象物の一方を基準としたときの他方の傾きを調整する傾き調整手段と、
前記傾き調整手段を制御して、前記各検出手段により検出した前記第1および第2の対象物同士の相対的な傾きを所定の傾きに調整する制御手段とを備えることを特徴とする傾き調整装置。
【請求項8】
前記第1および第2の対象物は、互いに接合される接合物であることを特徴とする請求項7に記載の傾き調整装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の傾き調整方法において調整されるデバイスであって、前記第1の対象物および前記第2の対象物を備えることを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−147048(P2010−147048A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319340(P2008−319340)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(307044493)株式会社アドウェルズ (24)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【Fターム(参考)】