説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】金属酸化膜または金属シリケート膜を含む薄膜ゲート絶縁膜を有する半導体装置の製造方法において、VFBを十分に制御し、Vthを十分に制御すること。
【解決手段】基板1上に、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜5を形成する第1工程と、第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成する第2工程と、第2高誘電率ゲート絶縁膜6上に、ゲート電極膜7を形成する第3工程と、を有し、前記第2工程では、第2の金属元素および炭化水素基からなる主原料と、溶媒材料と、を混合した混合材料を用いて、原子層蒸着法により第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成する半導体装置の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路の微細化に伴い、ゲート絶縁膜の薄膜化が要求されている。従来用いられているシリコン酸化膜やシリコン酸窒化膜では、リーク電流増大のため薄膜化に限界があり、サブ0.1μm世代のCMOSでは、SiO換算膜厚で1.5nm以下の性能を要求することが困難となってきている。このため、シリコン酸化膜やシリコン酸窒化膜と比較して比誘電率の高い金属酸化膜、金属シリケート膜、あるいは金属アルミネート膜をゲート酸化膜に用いて、物理的膜厚を厚くすることによりリーク電流を抑制するという提案がなされている。
【0003】
しかしながら、これら金属酸化膜、金属シリケート膜、あるいは金属アルミネート膜をゲート絶縁膜として用いた場合、電極材料に関係なくフラットバンド電圧(VFB)を制御することが難しく、トランジスタ特性が不良になる可能性がある。
【0004】
このような問題に対し、近年では、金属酸化膜あるいは金属シリケート膜上にアルミ酸化(Al)膜を形成し、VFBを制御する技術が提案されている。非特許文献1では、Hf酸化膜上にAl膜を原子層蒸着法により薄く形成後、高温熱処理し、AlをHf酸化膜/シリコン窒化膜界面に拡散させることにより、VFBが抑制できることが記載されている。
【0005】
また、非特許文献2には、HfSiON膜上にLa膜を形成した半導体装置において、La膜の膜厚を制御することで、VFBを制御できることが記載されている。なお、La膜を形成する手段としては、原子層蒸着法を利用することが記載されており、具体的には、(1)金属元素を含む化合物からなる主原料を気化させた後、気化後のガスをキャリアガスとともに基板上に供給し、(2)次いで酸化性ガスを供給して金属酸化膜を形成する工程が記載されている。そして、上記(1)および(2)の工程を含むセットを所定回数行うことで、La膜の膜厚を制御できることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Morooka et al., Jpn. J. Appl. Phys., 48, 04C010, 2009
【非特許文献2】S. Kamiyama et al., Tech. Dig., IEDM, p.41, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載された技術によりHigh−kゲート絶縁膜を形成した場合、VFBを抑制できるが、VFBの制御は不十分である。このため、トランジスタ特性において最も重要であるドレイン電流を十分に増加させることができない問題がある。これは、Al元素の電気陰性度が1.61であるため、Hf元素(電気陰性度:1.30)との電気陰性度差(△E)が0.31と不十分であり、所望のVFBが得られるまでには至らないためと考えられる。
【0008】
また、非特許文献2に記載されたLa膜の形成手段では、金属元素(La)を含む主原料のみを気化させ、キャリアガスとともに基板上に供給しているが、かかる場合、1セット当りに形成される膜厚が十分に薄くできない。このため、上記セットを所定回数行うことで実現される金属酸化膜の膜厚制御には限界がある。よって、当該技術によっても、VFBを十分に制御できない。
【0009】
上述のように、非特許文献1および非特許文献2に記載された技術ではVFBを十分に制御することができないため、閾値電圧(Vth)を十分に制御することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、基板上に、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜を形成する第1工程と、前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜を形成する第2工程と、前記第2高誘電率ゲート絶縁膜上に、ゲート電極膜を形成する第3工程と、を有し、前記第2工程では、第2の金属元素および炭化水素基からなる主原料と、溶媒材料と、を混合した混合材料を用いて、原子層蒸着法により前記第2高誘電率ゲート絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
このような混合材料を用いて原子層蒸着法により第2の金属の酸化膜を形成する半導体装置の製造方法によれば、第2の金属の酸化膜の成膜速度を遅くすることができる。かかる場合、第1高誘電率ゲート絶縁膜上に形成される第2高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚を幅広く制御することが可能となり、VFBを十分に制御することが可能となる。結果、Vthを十分に制御することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、基板と、前記基板上に形成されたシリコン酸化膜、または、0atom%より多く、20atom%以下の濃度で窒素を含むシリコン酸窒化膜と、前記シリコン酸化膜または前記シリコン酸窒化膜上に形成された、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜と、前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に形成された、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜と、前記第2高誘電率ゲート絶縁膜上に形成された、ゲート電極と、を有し、前記第1高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D1)と、前記第2高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D2)との膜厚比(D2/D1)が、1/50以上1/3以下である半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属酸化膜または金属シリケート膜を含む薄膜ゲート絶縁膜を有する半導体装置および半導体装置の製造方法において、VFBを十分に制御することが可能となる。結果、閾値電圧(Vth)を十分に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の半導体装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される作用効果を説明するための図である。
【図3】本実施形態の半導体装置の製造工程を説明するための断面模式図である。
【図4】本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される作用効果を説明するための図である。
【図5】本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される作用効果を説明するための図である。
【図6】本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される作用効果を説明するための図である。
【図7】各種元素の電気陰性度を示した図である。
【図8】本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の構造図は全て本発明の実施の形態を模式的に示すものであり、特にことわりがない限り、構成要素の図面上の比率により、本発明による構造の寸法を規定するものではない。また、同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態のMOSトランジスタの一例を模式的に示した断面図である。p型のシリコン基板1にnウエル2が形成されており、浅い素子分離溝構造STI(Sallow Trench Isolation)3によってMOSトランジスタ形成領域が区画形成されている。STI3は、シリコン基板1の表面側から形成した浅い溝内にシリコン酸化膜4を充填した構造である。
【0017】
MOSトランジスタ形成領域では、シリコン基板1表面に、例えば膜厚0.5nm程度の、シリコン酸化膜(SiO膜)あるいはシリコン酸窒化膜(SiON膜)が形成されており(図示せず)、その上に、例えばHf(ハフニウム)シリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜5が形成されている。第1高誘電率ゲート絶縁膜5の膜厚は、例えば3nm程度であってもよい。
【0018】
さらに、この第1高誘電率ゲート絶縁膜5の上に、例えばテルル(Te)の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜6が形成され、その上にゲート電極7が形成されている。また、ゲート電極7の側面にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などからなるサイドウォール11が形成されている。
【0019】
さらに、シリコン基板1のMOSトランジスタ形成領域には、p型不純物を低濃度に導入したLDD領域14と、p型不純物を高濃度に導入したソース・ドレイン領域15とが形成され、pチャネルMOSトランジスタが構成されている。さらに、層間絶縁膜16、および、ソース・ドレイン領域15に接続される埋込コンタクト17が形成されている。
【0020】
なお、nウエル2を形成する代わりにpウエル2´を形成し(図示せず)、n型不純物を低濃度に導入したLDD領域14と、n型不純物を高濃度に導入したソース・ドレイン領域15とを形成して、nチャネルMOSトランジスタを形成することもできる。
【0021】
ここで、第1高誘電率ゲート絶縁膜5は、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜とすることができる。第1の金属は、Hf、ジルコニウム(Zr)、および、タンタル(Ta)の中の1つ以上を含むものとすることができる。また、第2高誘電率ゲート絶縁膜6は、第2の金属の酸化膜とすることができる。第2の金属は、Te、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、鉛(Pb)、モリブデン(Mo)、および、ビスマス(Bi)の中の1つ以上を含むものとすることができる。
【0022】
上述のような第1高誘電率ゲート絶縁膜5および第2高誘電率ゲート絶縁膜6を有する本実施形態のMOSトランジスタによれば、第1の金属元素の電気陰性度と第2の金属の電気陰性度との電気陰性度差を大きくすることができる。結果、閾値電圧(Vth)を十分に制御することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態においては、第1高誘電率ゲート絶縁膜5の膜厚(D1)と、第2高誘電率ゲート絶縁膜6の膜厚(D2)との膜厚比(D2/D1)が、1/50以上1/3以下とすることができる。
【0024】
また、本実施形態においては、第1高誘電率ゲート絶縁膜5は、(第1の金属)/(第1の金属+シリコン)で表される組成比が0.6以上で形成されてもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、シリコン基板1および第1高誘電率ゲート絶縁膜5に挟まれて形成されるSiON膜(図示せず)は、0atom%より多く、20atom%以下の濃度で窒素を含んでいるのが好ましい。
【0026】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について詳細に説明する。
【0027】
図3(a)乃至図3(h)は、図1に示すMOSトランジスタの製造方法の一例を工程順に示す断面図である。
【0028】
図3(a)において一導電型のシリコン基板1にウエル2を形成し、次いでシリコン基板1の素子分離領域に浅い溝を形成した後、この浅い溝内にシリコン酸化膜4を埋設し、STI3を形成する。シリコン酸化膜4の埋設方法としては、例えば、上記浅い溝を形成した後、シリコン基板1の表面に溝の深さ以上の厚さにシリコン酸化膜4を堆積し、次いでこれを化学機械研磨(CMP)法などによりエッチングバックしてシリコン基板1の表面を露呈させることで、浅い溝内にエッチングされないシリコン酸化膜4を残す方法を利用することができる。
【0029】
その後、シリコン基板1の表面を洗浄および希釈フッ酸(DHF)により処理した後、シリコン基板1の表面上に、SiO膜またはSiON膜(図示せず)を形成する。SiO膜またはSiON膜の膜厚は、例えば、0.5nm程度とすることができる。なお、SiON膜は、0atom%より多く、20atom%以下の濃度で窒素を含んでいるものとすることができる。SiO膜またはSiON膜の形成方法は従来技術を適用することができる。例えば、SiO膜(図示せず)の形成方法としては、ランプアニールによる急速加熱処理を用い、酸素ガスや水素ガスを適用することにより膜質の優れた1nm以下の極薄SiO膜を形成することができる。
【0030】
SiO膜またはSiON膜を形成した後、その上に、第1の金属の酸化膜または第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜5を形成することで(第1工程)、図3(b)に示す状態が得られる。
【0031】
第1高誘電率ゲート絶縁膜5は、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜とすることができ、第1の金属は、Hf、Zr、および、Taの中の1つ以上を含むものとすることができる。第1高誘電率ゲート絶縁膜5は、(第1の金属)/(第1の金属+シリコン)で表される組成比が0.6以上で形成されてもよい。
【0032】
なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜5の膜厚は、例えば、3nm程度とすることができる。
【0033】
このような第1高誘電率ゲート絶縁膜5の形成方法は従来技術を適用することができる。
【0034】
次に、第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成することで(第2工程)、図3(c)に示す状態が得られる。なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜5をプラズマ処理により窒化し、1秒間以上1800秒間以下、800℃以上1100℃以下のランプアニールによる急速加熱処理にて第1高誘電率ゲート絶縁膜5を緻密化した後に、この第1高誘電率ゲート絶縁膜5の上に第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成してもよい。
【0035】
第2高誘電率ゲート絶縁膜6は、第2の金属の酸化膜とすることができ、第2の金属は、Te、Se、Sb、Re、Os、Pb、Mo、および、Biの中の1つ以上を含むものとすることができる。
【0036】
なお、第2高誘電率ゲート絶縁膜6の膜厚は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5と、第2高誘電率ゲート絶縁膜6との膜厚比が、1/50以上、1/3以下となるように設計するのが望ましい。
【0037】
ここで、このような第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成する手段について詳細に説明する。
【0038】
第2高誘電率ゲート絶縁膜6は、第2の金属元素および炭化水素基からなる主原料と、溶媒材料と、を混合した混合材料を用いて、原子層蒸着法により形成される。
【0039】
例えば、上記混合材料を気化した混合ガスを第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に供給するガス供給処理、および、このガス供給処理の後に行われ、酸化性ガスを第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に供給して第2の金属の酸化膜を形成する処理、これら2つの処理を含むセットを1セット以上行うことで所望の厚さの第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成してもよい(以下で出てくる「セット」は、特別な言及のない限り、上記2つの処理を含むセットのことを意味する)。
【0040】
より具体的には、主原料(例:Te(CCp))と、溶媒材料(例:オクタン)とを混合した混合材料を気化器に流し、キャリアArガスと共に、チャンバー内へ導入し、シリコン基板1上に形成された第1高誘電率ゲート絶縁膜5(例:Hfシリケート膜)上へそれぞれの原料を吸着させる。その後、チャンバー内へ酸化性ガス(例:オゾンガス)を導入することにより、第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に第2の金属の酸化膜(例:TeO膜)を形成する。これらの処理を含むセットを1セット以上行うことで、第1高誘電率ゲート絶縁膜5上に第2の金属の酸化膜を積層していき、所望の厚さの第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成する。このような方法によれば、0.01nm/セット以上、0.30nm/セット以下の成膜速度で、第2の金属の酸化膜を形成することができる。なお、主原料と溶媒材料との重量混合比(主原料)/(溶媒材料はが、0より大きく0.2より小さい範囲に調整することができる。
【0041】
なお、主原料と溶媒材料とを混合した混合材料を気化器にて気化させる温度としては室温以上300℃以下、キャリアガスであるAr流量としては2sccm以上10000sccm以下、酸化性ガス(例:オゾンガス)の濃度としては20g/m3以上500g/m3以下とすることができる。
【0042】
また、主原料は第2の金属元素および炭化水素基から構成されるものであればよく、上記例示したTe(CCp)の他、Te(CCp)のCがC、C、または、C11に置き換わったものであってもよいし、その他のものであってもよい。
【0043】
さらに、溶媒材料は特段制限されず、オクタンの他、へキサン、ヘプタン、または、デカンであってもよいし、その他のものであってもよい。
【0044】
ここで、図2に、主原料としてTe(CCp)を選択し、溶媒材料としてオクタンを選択した混合材料であって、主原料と溶媒材料との重量混合比((主原料)/(溶媒材料)=Re/Sol.)が、0.02、0.1、または、0.2である混合材料を用いて第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成した際の膜厚の変化について示す。図2に示す表における縦軸は第2高誘電率ゲート絶縁膜6の膜厚を示し、横軸はセット数を示す。
【0045】
図2から、セット数の増加に伴い、第2高誘電率ゲート絶縁膜6の膜厚が線形的に増加していることが分かる。これは、本方法による成膜が原子層蒸着法になっていることを意味している。さらに、主原料と溶媒材料との重量混合比(Re/Sol.)が小さくなるのに伴い、1セットで成膜される膜厚、すなわち成膜速度が減少していることが分かる。当該結果から、主原料と溶媒材料とを含む混合材料を用いて原子層蒸着法により金属酸化膜を形成した場合、主原料のみを用いて原子層蒸着法により金属酸化膜を形成した場合に比べて、成膜速度を減少できることが分かる。さらに、混合材料中における溶媒材料の割合を増やすことで、成膜速度をさらに減少できることが分かる。なお、主原料と溶媒材料との重量混合比に関係なく、膜厚均一性(X/2T<5%)は良好であった。
【0046】
ここで、図3(c)に戻り、図3(c)に示す状態が得られた後の流れについて説明する。
【0047】
図3(c)に示すように第1高誘電率ゲート絶縁膜5の上に第2高誘電率ゲート絶縁膜6を形成した後、高温熱処理を行う。例えば、窒素ガス雰囲気、または、窒素ガス中に酸素ガスを微量添加した雰囲気で、1秒間以上1800秒間以下、800℃以上1100℃以下のランプアニールによる急速加熱処理を行う。この高温熱処理により、第2金属元素は第1高誘電率ゲート絶縁膜5を通して、シリコン基板1と第1高誘電率ゲート絶縁膜5との間に形成されたSiO膜またはSiON膜(図示せず)まで拡散する。
【0048】
その後、図3(d)に示すように、ゲート電極層7(例:TaSiN層およびタングステン(W)層)を形成する。次いで、リソグラフィとエッチングにより、ゲート電極層7、第2高誘電率ゲート絶縁膜6および第1高誘電率ゲート絶縁膜5を部分的に除去することで、図3(e)に示す状態が得られる。
【0049】
その後、ゲート電極7を利用した自己整合法により、低濃度のイオン注入9を行い、ゲート電極7の両側のシリコン基板1の主面にイオン注入層10を形成する。イオン注入9において、nウエル領域2では例えばボロン(BF)不純物をイオン注入する。なお、図示しないがpウエル領域2´を形成した場合には、例えばヒ素(As)不純物をイオン注入する。イオン注入として、例えばBFでは注入エネルギー2keV、ドーズ量6E14cm−2、Asでは注入エネルギー3keV、ドーズ量6E14cm−2とするのが望ましい。ここで、ゲート電極7としてTaSiN電極およびW電極を用いたが、TaSiN電極の代わりにTiN電極あるいはTiAlN電極を用いてもよい。また、W電極の代わりにポリシリコン電極あるいはシリコンゲルマ(SiGex)電極を用いてもよい。さらに、TaSiN電極の代わりにTiN電極あるいはTiAlN電極を用い、かつ、W電極の代わりにポリシリコン電極あるいはシリコンゲルマ(SiGex)電極を用いてもよい。
【0050】
次いで、全面に所要の厚さのシリコン窒化膜を形成し、且つこのシリコン窒化膜を異方性エッチング法によりエッチングバックすることで、図3(f)に示すように、サイドウォール11を形成する。
【0051】
その後、図3(g)に示すように、ゲート電極7およびサイドウォール11を利用した自己整合法により、イオン注入12を行い、サイドウォール11の両側のシリコン基板1の主面にイオン注入層13を形成する。イオン注入12において、nウエル領域2では例えばボロン(B)不純物をイオン注入し、また、図示しないがpウエル領域2´の場合には、例えばヒ素(As)不純物をイオン注入する。イオン注入として、例えばBでは注入エネルギー3keV、ドーズ量3E15cm−2、Asでは注入エネルギー30keV、ドーズ量5E15cm−2とするのが望ましい。
【0052】
その後、シリコン基板1に対してランプアニールを用いた急速加熱処理を行う。このランプアニールにより、低濃度イオン注入層10、高濃度イオン注入層13およびゲート電極7が活性化されて、低濃度LDD領域14と高濃度ソース・ドレイン領域15が形成される。なお、この活性化処理により、nウエル領域2では低濃度p型LDD領域14および高濃度p型ソース・ドレイン領域15が形成され、また図示しないがpウエル領域2´では低濃度n型LDD領域14´および高濃度n型ソース・ドレイン領域15が形成される。ここで、活性化熱処理温度は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5および第2高誘電率ゲート絶縁膜6形成後の緻密化処理温度より、少なくとも10℃以上は低くすることが望ましい。
【0053】
以上の工程により、pチャネル型あるいはnチャネル型MOSトランジスタが形成される。その後、このMOSトランジスタを覆うようにシリコン基板1上へ層間絶縁膜16を形成し、また、ソース領域およびドレイン領域に電気接続するための埋込コンタクト17を形成する。これにより、図1に示したMOSトランジスタ構造が形成される。
【0054】
次に、本実施形態のMOSトランジスタのゲート電圧−ゲート容量値(C−V)特性を図4(a)および図4(b)に示す。ここで、図4(a)および図4(b)は、主原料としてTe(CCp)を選択し、溶媒材料としてオクタンを選択した混合材料であって、主原料と溶媒材料との重量混合比((主原料)/(溶媒材料)=Re/Sol.)が、0.2(図4(a))、または、0.1(図4(b))である混合材料を用いた場合のC−V特性を示している。なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜として、Hf/(Hf+Si)濃度が74%のHfシリケート膜を用いた。
【0055】
図4(a)および図4(b)からセット数が増加するのに伴い、C−V特性はプラス側へシフトしているのがわかる。これは、Te元素が、シリコン基板1と第1高誘電率ゲート絶縁膜5との間に形成されたSiO膜またはSiON膜まで拡散することにより、界面層にてHf−Oと同方向を持つダイポールモーメントが形成されためであり、セット数の増加に伴いこれらモーメント力が大きくなり、シフト量が増加する結果を示している。さらに、図4(a)と図4(b)とを比較すると、重量混合比(Re/Sol.)が小さくなるのに伴い、VFBシフト量が小さくなっていることが分かる。これは、図2を用いて説明したように、重量混合比(Re/Sol.)が異なれば、1セット当たりに成膜されるTeOの膜厚が異なるためと考えられる。なお、成膜速度が小さくなれば、VFBシフト量も小さくなることが示されている。当該結果より、成膜速度を制御することで、VFBシフト量が制御できることが確認された。
【0056】
図5(a)は、第1高誘電率ゲート絶縁膜(Hfシリケート膜)上に形成した第2高誘電率ゲート絶縁膜6(TeO膜)のセット数によるVFB変化量を示した結果であり、図5(b)はセット数によるVth変化量を示した結果である。なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜5として、Hf/(Hf+Si)濃度が74%のHfシリケート膜を用いた。図5(a)および図5(b)より、主原料と溶媒材料との重量混合比(Re/Sol.)が小さいほど、1セットにおけるVFB変化量およびVth変化量が小さいことが分かる。また、セット数が増えるほどVFB変化量およびVth変化量が増えることが分かる。すなわち、主原料と溶媒材料との重量混合比(Re/Sol.)およびセット数により、VFBシフト量およびVth変化量を十分に制御できることが確認された。
【0057】
図6(a)および図6(b)は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5(Hfシリケート膜)上に形成した第2高誘電率ゲート絶縁膜6(TeO膜)のセット数の変化に伴うドレイン電流(Id)の影響を示した結果である。ここで、図6(a)および図6(b)は、主原料と溶媒材料との重量混合比(Re/Sol.)が0.2(図6(a))および0.1(図6(b))である場合の特性を示している。なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜5として、Hf/(Hf+Si)濃度が74%のHfシリケート膜を用いた。図6(a)および図6(b)から、主原料と溶媒材料との重量混合比(Re/Sol.)およびセット数より、閾値電圧(Vth)が幅広く制御できており、これらに伴いドレイン電流も増加していることが確認された。
【0058】
図7は、複数の金属元素の電気陰性度、および、これらの金属元素とHf元素との電気陰性度差(△E)を示した表である。図7より、Al元素とHf元素との電気陰性度差は0.31であるのに対し、Re元素とHf元素との電気陰性度差は0.60、Se元素とHf元素との電気陰性度差は1.25と、Al元素とHf元素との電気陰性度差に比べて大きいことが分かる。当該表より、第1金属元素としてHfを選択し、第2金属元素として、Te、Se、Sb、Re、Os、Pb、Mo、および、Biの中の1つ以上を含むものとすることで、pMOS用閾値電圧を大幅に制御できることが分かる。
【0059】
図8は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5(Hfシリケート膜)上に形成した第2高誘電率ゲート絶縁膜6(TeO膜)のセット数の変化に伴うIon−Ioff特性の影響を示した結果である。なお、第1高誘電率ゲート絶縁膜5として、Hf/(Hf+Si)濃度が74%のHfシリケート膜を用いた。図8から、炭化水素基Rにより、Ion−Ioff特性が異なり、閾値電圧(Vth)を良好に制御できた。主原料/溶媒材料の混合比を小さくした場合、TeO膜を適用していない特性と比較して、40%以上改善されていることが確認された。
【0060】
なお、図4乃至図8を用いて説明した上記作用効果は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5としてHfシリケート膜を選択し、第2高誘電率ゲート絶縁膜6としてTeO膜を選択した結果を示したものであるが、本発明者は、第1高誘電率ゲート絶縁膜5として、Hf、Zr、および、Taの中の1つ以上を含む酸化膜、または、シリケート膜を選択し、また、第2高誘電率ゲート絶縁膜6として、Te、Se、Sb、Re、Os、Pb、Mo、および、Biの中の1つ以上を含む酸化膜を選択した場合において、上記と同様の結果が得られることを確認している。
【0061】
また、図4乃至図8を用いて説明した上記作用効果は、ゲート電極7としてTaSiN電極およびW電極を用いた結果を示したものであるが、TaSiN電極の代わりにTiN電極あるいはTiAlN電極を用いた場合、また、W電極の代わりにポリシリコン電極あるいはシリコンゲルマ(SiGex)電極を用いた場合、さらに、TaSiN電極の代わりにTiN電極あるいはTiAlN電極を用い、かつ、W電極の代わりにポリシリコン電極あるいはシリコンゲルマ(SiGex)電極を用いた場合においても、上記と同様の結果が得られることを本発明者は確認している。
【符号の説明】
【0062】
1 シリコン基板
2 nウエル
2´ pウエル
3 STI
4 シリコン酸化膜
5 第1高誘電率ゲート絶縁膜
6 第2高誘電率ゲート絶縁膜
7 ゲート電極(層)
9 イオン注入
10 イオン注入層
11 サイドウォール
12 イオン注入
13 イオン注入層
14 LDD領域
15 ソース・ドレイン領域
16 層間絶縁膜
17 埋込コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜を形成する第2工程と、
前記第2高誘電率ゲート絶縁膜上に、ゲート電極膜を形成する第3工程と、
を有し、
前記第2工程では、
第2の金属元素および炭化水素基からなる主原料と、溶媒材料と、を混合した混合材料を用いて、原子層蒸着法により前記第2高誘電率ゲート絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2工程では、
前記混合材料を気化した混合ガスを前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に供給するガス供給処理、および、前記ガス供給処理の後に行われ、酸化性ガスを前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に供給して前記第2の金属の酸化膜を形成する処理、を含むセットを1セット以上行うことで前記第2高誘電率ゲート絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の工程では、0.01nm/セット以上、0.30nm/セット以下の成膜速度で、前記第2の金属の酸化膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の金属はハフニウム、ジルコニウム、および、タンタルの中の1つ以上を含み、
前記第2の金属は、セレン、モリブデン、アンチモン、テルル、レニウム、オスミウム、鉛およびビスマスの中の1つ以上を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜は、(第1の金属)/(第1の金属+シリコン)で表される組成比が0.6以上で形成される半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D1)と、前記第2高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D2)との膜厚比(D2/D1)が、1/50以上、1/3以下で形成される半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程の前に、基板上に、シリコン酸化膜、または、0atom%より多く、20atom%以下の濃度で窒素を含むシリコン酸窒化膜を形成する工程を含み、
前記第1工程では、前記シリコン酸化膜または前記シリコン酸窒化膜の上に、前記第1高誘電率ゲート絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2工程で用いられる前記混合材料は、
前記主原料と前記溶媒材料との重量混合比(主原料)/(溶媒材料)が、0より大きく0.2より小さい範囲で調整されたものである半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成されたシリコン酸化膜、または、0atom%より多く、20atom%以下の濃度で窒素を含むシリコン酸窒化膜と、
前記シリコン酸化膜または前記シリコン酸窒化膜上に形成された、第1の金属の酸化膜、または、第1の金属のシリケート膜からなる第1高誘電率ゲート絶縁膜と、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜上に形成された、第2の金属の酸化膜からなる第2高誘電率ゲート絶縁膜と、
前記第2高誘電率ゲート絶縁膜上に形成された、ゲート電極と、
を有し、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D1)と、前記第2高誘電率ゲート絶縁膜の膜厚(D2)との膜厚比(D2/D1)が、1/50以上1/3以下である半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記第1の金属はハフニウム、ジルコニウム、および、タンタルの中の1つ以上を含み、
前記第2の金属は、セレン、モリブデン、アンチモン、テルル、レニウム、オスミウム、鉛およびビスマスの中の1つ以上を含む半導体装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の半導体装置において、
前記第1高誘電率ゲート絶縁膜は、(第1の金属)/(第1の金属+シリコン)で表される組成比が0.6以上である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−33677(P2012−33677A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171486(P2010−171486)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】