説明

半導体装置の製造方法、及び半導体装置

【課題】ゲート電極が金属窒化膜により構成されるMOSFETにおいて、電流駆動能力の向上を図る。
【解決手段】基板10に、素子形成領域20を分離する素子分離領域50を設ける。次に素子形成領域20上にゲート絶縁膜100を形成する。その後ゲート絶縁膜100上に金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜200を形成する。さらに下部ゲート電極膜200を熱処理する。そして下部ゲート電極膜200上に上部ゲート電極膜220を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)において、ゲート絶縁膜をSiO又はSiONより高誘電率な絶縁層(High−k材料)とし、ゲート電極を金属又は金属窒化物にする技術がある。これにより電流駆動能力の向上を図ることができる。
【0003】
非特許文献1には、ゲート電極に、金属窒化膜にSiを積層したSi/金属窒化膜を適用することが記載されている。非特許文献2には、ゲート電極に適用する金属窒化膜の膜厚を変化させることで、ゲート電極の見かけ上の仕事関数を制御することができると記載されている。具体的には、ゲート電極に適用する金属窒化膜の膜厚を厚くすると、ゲート電極の見かけ上の仕事関数は大きくなると記載されている。ゲート電極の見かけ上の仕事関数が大きくなると、pMOSFETのしきい値電圧Vtは低下(負のVt値で絶対値が小さくなる)し、nMOSFETのしきい値電圧Vtは上昇(正のVt値で絶対値が更に大きくなる)する。非特許文献2では、金属窒化膜の膜厚によりしきい値電圧Vtを制御することで、pMOSFETとnMOSFETが共に低い(Vt値の絶対値が小さい)しきい値電圧Vtを有するCMOSFETが実現できるとしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Y. Yu 他著、IEEE Electron Device Letters, 25 巻、5 号、2004年、337〜339 頁
【非特許文献2】M. Kadoshima 他著、2008 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、48〜49頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の構造をゲート電極に適用し、ゲート電極を形成した後、ソース・ドレイン領域中に導入された不純物を高温の熱処理により電気的に活性化した場合、ゲート電極の見かけ上の仕事関数が変動してしまうという問題があった。また非特許文献2に記載の技術により、仕事関数の変動分を考慮して膜厚を制御することにより、上記した問題を解決することも考えられる。しかしこの場合、ウェハ面内においてゲート電極を構成する金属窒化膜の膜厚にばらつきが生じ、そのためウェハ面内におけるゲート電極のしきい値電圧Vtにばらつきが生じる。そしてウェハ面内におけるしきい値電圧Vtにばらつきが生じると、大口径半導体ウェハを用いて半導体集積回路素子を量産することが難しくなる。従って他の方法でしきい値電圧Vtの変動を抑制できるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基板に設けられた第1の素子形成領域上に第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に、金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜を形成する工程と、
前記下部ゲート電極膜を熱処理する工程と、
前記下部ゲート電極膜上に上部ゲート電極膜を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
nMOSFETにおいて金属窒化膜により構成されるゲート電極膜を開放状態で熱処理することで、ゲート電極のしきい値電圧が低下する。本発明によれば、上部ゲート電極膜の形成前に金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜を熱処理する。従って、ゲート電極が金属窒化膜により構成されるMOSFETにおいて、ゲート電極の仕事関数の変動を抑制することができる。
【0008】
本発明によれば、基板と、前記基板に設けられた第1の素子形成領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記基板に設けられた第2の素子形成領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上、及び前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に位置する前記下部ゲート電極膜上に形成されたマスク膜と、前記下部ゲート電極膜上及び前記マスク膜上に形成された上部ゲート電極膜と、を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲート電極が金属窒化膜により構成されるMOSFETにおいて、電流駆動能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】図1に示す製造方法により形成される半導体装置を示す断面図である。
【図3】図2に示す半導体装置の製造方法における、熱処理温度とゲート電極のしきい値電圧との相関図である。
【図4】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】図4に示す製造方法により形成される半導体装置を示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。図2は、図1に示す製造方法により形成される半導体装置を示す断面図である。この製造方法では、まず基板10に設けられた素子形成領域20上にゲート絶縁膜100を形成する。次いでゲート絶縁膜100上に下部ゲート電極膜200を形成する。さらに下部ゲート電極膜200を熱処理する。そして下部ゲート電極膜200上に上部ゲート電極膜220を形成する。その後エッチング工程や、イオン注入工程を経て、図2に示す半導体装置が形成される。
【0013】
以下図1及び図2を用いて、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。まず図1(a)に示すように、基板10に素子分離領域50を形成する。これによりトランジスタが形成される素子形成領域20が分離される。基板10は、例えばSi、Ge、又はSiとGeの混合物である。次いで、図1(b)に示すように、素子形成領域20上にゲート絶縁膜100を成膜する。ゲート絶縁膜100は、例えば1nm程度のSiO又はSiON上に、HfO又はHfZrOxを数nm成長させ、850℃程度で加熱処理して形成される。基板10が、Ge、又はSiとGeの混合物により構成される場合、ゲート絶縁膜100として、CVD法で形成したSiO膜、GeO膜、GeO膜またはCVD−SiO膜とHigh−k膜(HfO又はHfZrO)との積層膜、あるいは単層のHigh−k膜(HfO又はHfZrO)などを用いてもよい。
【0014】
次いで、図1(c)に示すように、ゲート絶縁膜100上に下部ゲート電極膜200を成膜する。下部ゲート電極膜200は、例えばTiN、TaN、WN、又はMoNにより構成される。また下部ゲート電極膜200は、例えば3〜10nmの膜厚を有する。
【0015】
そして、図1(c)に示すように、下部ゲート電極膜200を露出した状態で熱処理する。下部ゲート電極膜200の熱処理は、例えば600℃以上の温度で行う。また下部ゲート電極膜200の熱処理は、例えば真空中又は窒素雰囲気下で行う。
【0016】
そして図1(d)に示すように、下部ゲート電極膜200上に上部ゲート電極膜220を成膜する。上部ゲート電極膜220は、例えばSi、Ge、又はSiとGeの混合物により構成される。その後、下部ゲート電極膜200及び上部ゲート電極膜220を選択的に除去して、図2に示すゲート電極240が形成される。
【0017】
その後、図2に示すように素子分離領域50、及びゲート電極240をマスクとして基板10に不純物イオンを注入する。これにより、素子形成領域20にソース・ドレインのエクステンション領域60が形成される。次いでゲート電極240上、素子形成領域20上、及び素子分離領域50上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をエッチバックする。これにより図2に示すように、ゲート電極240の側壁にオフセットスペーサ280が形成される。
【0018】
そして、ゲート電極240、オフセットスペーサ280、及び素子分離領域50をマスクとして基板10に不純物イオンを注入する。これにより図2に示すように、素子形成領域20にソース・ドレイン領域70が形成される。
【0019】
次に本実施形態の効果を説明する。図3は上部ゲート電極220形成前の下部ゲート電極膜200の熱処理工程における、熱処理温度とゲート電極のしきい値電圧との相関図である。nMOSFETにおいて金属窒化膜により構成されるゲート電極膜を開放状態で、かつ600℃以上で熱処理することにより、nMOSFETのゲート電極のしきい値電圧Vtが低下(正のVt値で絶対値が小さくなる)する。nMOSFETでは、仕事関数が小さくなるとしきい値電圧Vtは低下し、同じドレイン電圧で高いオン電流が得られる。
【0020】
本実施形態によれば、上部ゲート電極膜220の形成前に金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜200を熱処理する。すなわち熱処理が行われるタイミングにおいて、下部ゲート電極膜200は何にも覆われていない。このようにすると、図3に示すようにゲート電極が金属窒化膜により構成されるMOSFETにおいて、ゲート電極の見かけ上の仕事関数の上昇を制御し、電流駆動能力の向上を図ることができる。
【0021】
図4は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図であり、第1の実施形態に係る図1に対応している。また図5は、図4に示す製造方法により形成される半導体装置を示す断面図であり、第1の実施形態に係る図2に対応している。図4に示す半導体装置の製造方法は、マスク膜250を形成及び除去する工程を備える点を除いて、図1に示す半導体装置の製造方法と同様である。図5に示す半導体装置は、トランジスタが複数ある点を除いて図2に示す半導体装置と同様の構成である。
【0022】
以下図4及び図5を用いて第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。まず基板10に素子分離領域50を形成し、素子形成領域20と素子形成領域30を互いに分離する(図4(a))。そして素子形成領域20上にゲート絶縁膜100を、素子形成領域30上にゲート絶縁膜120を形成する(図4(b))。ゲート絶縁膜100とゲート絶縁膜120の形成工程は、例えば同一工程で行われる。そして下部ゲート電極膜200を形成する(図4(c))。これらの形成方法は第1の実施形態と同様である。
【0023】
次いで図4(d)に示すように、下部ゲート電極膜200を形成した後、マスク膜250を形成する。マスク膜250は、ゲート絶縁膜120上に位置する下部ゲート電極膜200上に形成される。またマスク膜250は、例えばプラズマCVDを用いてSiOを成膜し、ゲート絶縁膜100上に位置する下部ゲート電極膜200上のマスク膜を選択的に除去することで形成される。そして下部ゲート電極膜200を熱処理する。次いで下部ゲート電極膜200上のマスク膜250を除去する。
【0024】
そして下部ゲート電極膜200上に上部ゲート電極膜220を成膜する(図4(e))。その後ゲート電極240、エクステンション領域60、オフセットスペーサ280、及びソース・ドレイン領域70を形成する。形成方法は第1の実施形態と同様である。これにより、図5に示す半導体装置が形成される。
【0025】
本実施形態においても、上部ゲート電極膜220の形成前に金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜200を熱処理する。従って、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0026】
またpMOSFETにおいて金属窒化膜により構成されるゲート電極膜をマスク膜で覆った状態で熱処理することにより、pMOSFETのゲート電極のしきい値電圧Vtは低下(負のVt値で絶対値が小さくなる)する。pMOSFETでは、仕事関数が大きくなるとしきい値電圧Vtは低下し、同じドレイン電圧で高いオン電流が得られる。
【0027】
本実施形態によれば、ゲート絶縁膜120上に位置する下部ゲート電極膜200上にマスク膜250を形成した後に、下部ゲート電極膜200を熱処理する。すなわち熱処理が行われるタイミングにおいて、ゲート絶縁膜120上に位置する下部ゲート電極膜200はマスク膜に覆われている。従って、基板に形成された複数のMOSFETのうち、選択したpMOSFETにおけるゲート電極の見かけ上の仕事関数の低下を制御することができ、電流駆動能力の向上を図ることができる。
【0028】
さらに、複数のMOSFETのうち選択した一のnMOSFETにおいてのみ、熱処理によるしきい値電圧Vtの低下を実現することができる。これにより基板への不純物導入をすることなしに、しきい値電圧の異なる一のnMOSFETと他のnMOSFETを同一基板に配置することが可能となる。
【0029】
図6は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図であり、第2の実施形態に係る図5に対応している。図6に示す半導体装置の製造方法は、下部ゲート電極膜200を熱処理する工程の後、マスク膜を除去しない点を除いて、図4に示す第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様である。また図6に示す半導体装置は、ゲート絶縁膜120上に位置する下部ゲート電極膜200と上部ゲート電極膜220の間にマスク膜250が位置している点を除いて、図5に示す半導体装置の構成と同様である。
【0030】
図6に示すマスク膜250は、例えばSi、Ge、又はSiとGeの混合物により構成される。またマスク膜250は、例えばPVDにより10nm程度の膜厚に成膜される。
【0031】
本実施形態においても、上部ゲート電極膜220の形成前に金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜200を熱処理する。またゲート絶縁膜120上に位置する下部ゲート電極膜200上にマスク膜250を形成した後に、下部ゲート電極膜200の熱処理を行う。従って、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態ではマスク膜250を除去する工程を備えていない。従って、半導体装置の製造における、工程数を削減することができる。
【0033】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 基板
20 素子形成領域
30 素子形成領域
50 素子分離領域
60 エクステンション領域
70 ソース・ドレイン領域
100 ゲート絶縁膜
120 ゲート絶縁膜
200 下部ゲート電極膜
220 上部ゲート電極膜
240 ゲート電極
250 マスク膜
280 オフセットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた第1の素子形成領域上に第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に、金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜を形成する工程と、
前記下部ゲート電極膜を熱処理する工程と、
前記下部ゲート電極膜上に上部ゲート電極膜を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記下部ゲート電極膜を形成する工程の前に、前記基板に設けられた第2の素子形成領域上に第2のゲート絶縁膜を形成する工程を備え、
前記下部ゲート電極膜を形成する工程において、前記第2のゲート絶縁膜上にも前記下部ゲート電極膜を形成し、
前記下部ゲート電極膜を形成する工程と前記下部ゲート電極膜を熱処理する工程との間に、前記第2のゲート絶縁膜上に位置する前記下部ゲート電極膜上にマスク膜を形成する工程を有し、
前記上部ゲート電極膜を形成する工程において、前記第2のゲート絶縁膜上に位置する前記下部ゲート電極膜上にも前記上部ゲート電極膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記下部ゲート電極膜は窒化チタニウム、窒化タンタル、窒化タングステン、または窒化モリブデンのいずれかにより構成される半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記上部ゲート電極膜はシリコン、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの混合物のいずれかにより構成される半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の素子形成領域に形成されるトランジスタがnチャネル型である半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記下部ゲート電極膜を熱処理する工程と前記上部ゲート電極膜を形成する工程との間に、前記マスク膜を除去する工程をさらに備える半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項2ないし5いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記マスク膜はシリコン、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの混合物である半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項2ないし6いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記マスク膜はシリコン酸化膜である半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記下部ゲート電極膜を熱処理する工程における雰囲気は真空又は窒素雰囲気である半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板に設けられた第1の素子形成領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、
前記基板に設けられた第2の素子形成領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上、及び前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、金属窒化膜により構成される下部ゲート電極膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に位置する前記下部ゲート電極膜上に形成されたマスク膜と、
前記下部ゲート電極膜上及び前記マスク膜上に形成された上部ゲート電極膜と、
を備える半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−210997(P2011−210997A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77975(P2010−77975)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】