半導体装置の製造方法
【課題】強誘電体キャパシタが備えるキャパシタ誘電体膜の特性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法により強誘電体膜24を形成する工程と、強誘電体膜24上に第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程と、第1導電性金属酸化膜25dに対して第1のアニールを行う工程と、第1導電性酸化金属膜25d上に第2導電性酸化金属膜25eを形成する工程と、第1導電膜23、強誘電体膜24、及び第2導電膜25をパターニングしてキャパシタを形成する工程とを有し、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより強誘電体膜24の強誘電体特性が向上することを利用し、強誘電体特性を酸素流量比で調節する半導体装置の製造方法による。
【解決手段】第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法により強誘電体膜24を形成する工程と、強誘電体膜24上に第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程と、第1導電性金属酸化膜25dに対して第1のアニールを行う工程と、第1導電性酸化金属膜25d上に第2導電性酸化金属膜25eを形成する工程と、第1導電膜23、強誘電体膜24、及び第2導電膜25をパターニングしてキャパシタを形成する工程とを有し、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより強誘電体膜24の強誘電体特性が向上することを利用し、強誘電体特性を酸素流量比で調節する半導体装置の製造方法による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進展に伴い、大容量のデータを高速に保存したり保存したりすることが可能な不揮発性メモリの開発が進められている。
【0003】
そのような不揮発性メモリとしては、フラッシュメモリや強誘電体メモリが知られている。
【0004】
このうち、フラッシュメモリは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(IGFET)のゲート絶縁膜中に埋め込んだフローティングゲートを有し、記憶情報を表す電荷をこのフローティングゲートに蓄積することによって情報を記憶する。しかし、このようなフラッシュメモリでは、情報の書き込みや消去の際に、ゲート絶縁膜にトンネル電流を流す必要があり、比較的高い電圧が必要であるという欠点がある。
【0005】
これに対し、強誘電体メモリは、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも呼ばれ、強誘電体キャパシタが備える強誘電体膜のヒステリシス特性を利用して情報を記憶する。その強誘電体膜は、キャパシタの上部電極と下部電極の間に印加される電圧に応じて分極を生じ、その電圧を取り去っても自発分極が残留する。印加電圧の極性を反転すると、この自発分極も反転し、その自発分極の向きを「1」と「0」に対応させることで、強誘電体膜に情報が書き込まれる。この書き込みに必要な電圧はフラッシュメモリにおけるよりも低く、また、フラッシュメモリよりも高速で書き込みができるという利点がFeARMにはある。この利点を活かし、FeRAMとロジック回路とを混載してなる混載チップ(SOC: System On Chip)がICカード等への用途として検討されている。
【0006】
その強誘電体キャパシタが備えるキャパシタ誘電体膜は例えばPZT(Lead Zirconate Titanate: PbZrTiO3)膜よりなり、その成膜方法には種々ある。
【0007】
例えば、特許文献1では、ブタノール等の有機溶媒に有機金属化合物を溶解してなる溶液を用い、ゾル・ゲル法によりPZT膜を形成している。ゾル・ゲル法は、スパッタやMOCVD法等に比べて成膜コストが安いという利点があるので、広く研究開発されている。
【0008】
一方、強誘電体キャパシタの上部電極や下部電極としては、非特許文献1のように酸化イリジウム膜を形成することが多い。非特許文献1によれば、キャパシタ誘電体膜としてPZTを用いる場合に、上部電極と下部電極とを酸化イリジウムで形成することで、強誘電体キャパシタの疲労が抑えられ、良好な容量特性が確保されるとある。
【0009】
ところが、酸化イリジウム膜の表面には、異常成長した酸化イリジウムよりなる巨大結晶が生じ易いことが知られている。その巨大結晶は強誘電体キャパシタの電気的特性を劣化させ、ひいては半導体装置の歩留まりを低下させる恐れがある。
【0010】
このような問題を解決するために、特許文献2では、低スパッタパワーによる成膜と高スパッタパワーによる成長とを順に行う2ステップのスパッタ法を採用することにより、上記のような巨大結晶の発生を抑制している(段落番号0025)。
【0011】
また、特許文献3では、酸化イリジウム膜とイリジウム膜とをこの順に形成してなる積層膜を上部電極としている。特許文献3によれば、下層の酸化イリジウム膜によって容量特性の劣化が防止され、上層のイリジウム膜によって上部電極の抵抗が低減されるとある(段落番号0027)。
【0012】
また、特許文献4では、スパッタ法により形成されたPZT膜に対して1回目のアニールを行い、PZT膜を結晶化している(段落番号0035)。そして、PZT膜の上に酸化イリジウムよりなる上部電極を形成した後、その上部電極に対して2回目のアニールを行っている(段落番号0038)。
【0013】
そして、特許文献5では、共に酸化イリジウムよりなる第1の導電性酸化金属膜と第2の導電性酸化金属膜との積層膜を上部電極としている(段落番号0035〜0037)。
【0014】
同様に、特許文献6でも、上部電極として二層の酸化イリジウム膜を形成している(段落番号0033)。
【特許文献1】特開平11−292626号公報
【特許文献2】特開2001−127262号公報
【特許文献3】特開2000−91270号公報
【特許文献4】特開2002−246564号公報
【特許文献5】特開2005−183842号公報
【特許文献6】特開2006−73648号公報
【非特許文献1】APPL. Phys. Lett. 65, P.1522 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、強誘電体キャパシタが備えるキャパシタ誘電体膜の特性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記酸素流量比で調節する半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する。これらの成膜方法で形成された強誘電体膜は、膜中に酸素欠損が発生し易く、その強誘電体特性を向上させる余地がある。
【0018】
本願発明者が行った調査では、第1導電性酸化金属膜を形成する際におけるスパッタ雰囲気中の酸素流量比を増やすことで、強誘電体膜のスイッチング電荷量等の強誘電体特性が高められることが確認された。この事実を利用して、本発明では、スイッチング電荷量を上記の酸素流量比で調節することが可能となる。
【0019】
更に、ゾル・ゲル法は他の成膜方法と比較して成膜コストが安いので、半導体装置の製造コストが安価になるという利点も本発明にはある。
【0020】
また、本発明では、第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行うことによっても、強誘電体膜の酸素欠損が補われる。
【0021】
このように第1のアニールを行っても、第1導電性酸化金属膜が成膜の時点で既に結晶化しているので、第1導電性酸化金属膜と強誘電体膜との相互拡散に伴う界面層が発生し難い。よって、上部電極と下部電極との間に電圧を印加しても、界面層に印加される電圧が低減され、強誘電体膜にその電圧の大部分を印加することが可能となる。
【0022】
また、MOCVD法により形成された第1強誘電体膜と、ゾル・ゲル法により該第1強誘電体膜の上に形成された第2強誘電体膜とでキャパシタ誘電体膜を構成するようにしてもよい。このようにすると、強誘電体の結晶粒を反映して第1強誘電体膜の上面に形成された凹凸が第2強誘電体膜により埋め込まれる。そのため、キャパシタ誘電体膜と上部電極との界面がフラットになり、上部電極からキャパシタ誘電体膜に対して均一に電圧を印加することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ゾル・ゲル法により強誘電体膜を形成する場合において、上部電極の下層を構成する第1導電性酸化金属膜をスパッタ法で形成する際の酸素流量比を高めることにより、強誘電体膜のスイッチング電荷量を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(1)第1実施形態
図1〜図6は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0025】
最初に、図1(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0026】
まず、n型又はp型のシリコン(半導体)基板1の表面を熱酸化することにより素子分離絶縁膜2を形成し、この素子分離絶縁膜2でトランジスタの活性領域を画定する。このような素子分離構造はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)と呼ばれるが、これに代えてSTI(Shallow Trench Isolation)を採用してもよい。
【0027】
次いで、シリコン基板1の活性領域にp型不純物、例えばボロンを導入してpウェル3を形成した後、その活性領域の表面を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜4となる熱酸化膜を約6〜7nmの厚さに形成する。
【0028】
続いて、シリコン基板1の上側全面に、厚さ約50nmの非晶質シリコン膜と厚さ約150nmのタングステンシリサイド膜を順に形成する。なお、非晶質シリコン膜に代えて多結晶シリコン膜を形成してもよい。その後に、フォトリソグラフィによりこれらの膜をパターニングして、シリコン基板1上にゲート電極5を形成する。
【0029】
そのゲート絶縁膜5は、pウェル3上に互いに平行に二つ形成され、その各々はワード線の一部を構成する。
【0030】
更に、ゲート電極5をマスクにするイオン注入により、ゲート電極5の横のシリコン基板1にn型不純物としてリンを導入し、第1、第2ソース/ドレインエクステンション6a、6bを形成する。
【0031】
その後に、シリコン基板1の上側全面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極5の横に絶縁性サイドウォール7として残す。その絶縁膜として、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により酸化シリコン膜を形成する。
【0032】
続いて、この絶縁性サイドウォール7とゲート電極5をマスクにしながら、シリコン基板1に砒素等のn型不純物を再びイオン注入することにより、ゲート電極5の側方のシリコン基板1に第1、第2ソース/ドレイン領域(第1、第2不純物拡散領域)8a、8bを形成する。
【0033】
更に、シリコン基板1の上側全面に、スパッタ法によりコバルト膜等の高融点金属膜を形成する。そして、その高融点金属膜を加熱させてシリコンと反応させることにより、第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bにおけるシリコン基板1上にコバルトシリサイド層等の高融点金属シリサイド層9を形成し、各ソース/ドレイン領域8a、8bを低抵抗化する。
【0034】
その後に、素子分離絶縁膜2の上等で未反応となっている高融点金属層をウエットエッチングして除去する。
【0035】
ここまでの工程により、シリコン基板1の活性領域には、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、及び第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8b等によって構成される第1、第2MOSトランジスタTR1、TR2が形成されたことになる。
【0036】
次に、図1(b)に示すように、シリコン基板10の上側全面に、プラズマCVD法で酸窒化シリコン(SiON)膜を厚さ約200nmに形成し、それをカバー絶縁膜10とする。
【0037】
更に、TEOS(tetra ethoxy silane)ガスを使用するプラズマCVD法により、このカバー絶縁膜10の上に第1層間絶縁膜11として酸化シリコン(SiO2)膜を厚さ約600nmに形成する。この第1層間絶縁膜11を形成する際、ゲート絶縁膜4の水素劣化はカバー絶縁膜10によって防止される。
【0038】
その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法で第1層間絶縁膜11を約200nm程度研磨し、第1層間絶縁膜11の上面を平坦化する。
【0039】
次いで、基板温度を650℃とするアニールを第1層間絶縁膜11に対して30分間行うことにより第1層間絶縁膜11の脱ガスを行う。
【0040】
更に、第1層間絶縁膜11の上に、下部電極密着膜12としてスパッタ法によりアルミナ(Al2O3)膜を20nm程度の厚さに形成する。なお、アルミナ膜に代えて、チタン膜又は酸化チタン膜を下部電極密着膜12として形成してもよい。このうち、チタン膜は、基板温度を150℃として形成することができる。
【0041】
続いて、図1(c)に示すように、下部電極密着膜12の上に、スパッタ法により第1導電膜23としてプラチナ膜を形成する。この第1導電膜23は、後でパターニングされてキャパシタ下部電極になり、100℃又は350℃の成膜温度で約150nmの厚さに形成される。
【0042】
なお、下部電極密着膜12として厚さが約20nmのチタン膜を形成する場合は、プラチナよりなる第1導電膜23の厚さは約180nmとされる。
【0043】
また、第1導電膜23を形成する前に下部電極密着膜12を形成したので、第1導電膜23と第1層間絶縁膜11との密着力が高められる。
【0044】
次に、図2(a)に示すように、ゾル・ゲル法を用いて、PZT膜にLaをドープしてなるPLZT膜を第1導電膜23上に強誘電体膜24として形成する。
【0045】
そのゾル・ゲル法は次のようにして行われる。
【0046】
まず、湿度が40%の大気中において、回転数を5000rpmとするスピンコート法により第1強誘電体膜24b上にPLZT溶液(強誘電体溶液)を30秒間塗布し、PLZT塗膜を形成する。
【0047】
そのPLZT溶液は特に限定されないが、本実施形態ではPb、La、Zr、及びTiの各前駆体を10重量%の濃度でブタノール溶媒に溶解してなる溶液を使用する。そのような溶液は材料メーカから購入することができ、例えば、成膜後の組成比がPb:La:Zr:Ti=110:2:40:60になるように調節された三菱マテリアル製のものを使用すればよい。
【0048】
次いで、そのPLZT塗膜に対し、常圧(大気圧)の酸素雰囲気中において基板温度を200〜450℃、例えば240℃とするアニールを約5分間行う。
【0049】
これにより、PLZT塗膜中のブタノール溶媒が蒸発し、PLZT塗膜の堆積が収縮して強誘電体を構成する分子も含めたゲルの密度が上がり、PLZT塗膜が後で結晶化しやすくなる。このように溶媒を蒸発させるために行われるアニールはベークとも呼ばれる。
【0050】
そして、このようなPLZT塗膜の形成とベークとを所定回数、例えば4回繰り返すことにより、PLZTよりなる強誘電体膜24が120nmの厚さに形成される。
【0051】
なお、ゾル・ゲル法により形成される強誘電体膜24はPLZT膜に限定されない。
【0052】
ABO3型ペロブスカイト構造(A=Bi、Pb、Ba、Sr、Ca、Na、K、及び希土類元素のいずれか一つ、B=Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、及びCrのいずれか一つ)を有する強誘電性材料で強誘電体膜24を構成してもよい。
【0053】
強誘電体膜24としてPZT膜を形成する場合は、その膜中にランタン、カルシウム、ストロンチウム、及びニオブのいずれかを0.1〜5mol%の濃度でPZTに添加するのが好ましい。これらの元素がドープされた強誘電体膜24を後述のキャパシタに適用することで、キャパシタの耐疲労特性やインプリント特性の向上、リーク電流の低減、及び動作電圧の低電圧化等の効果を得ることができる。
【0054】
更に、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素で0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、及びSrBi4Ti4O15等のBi層状構造化合物も、結晶の一単位としてみればABO3型ペロブスカイト構造となるため、強誘電体膜24の構成材料として適用し得る。
【0055】
なお、この強誘電体膜24の結晶性を向上させるには、強誘電体膜24を構成するPLZTと格子定数が近い材料で第1導電膜23を構成するのが好ましい。そのような材料としては、上記のプラチナの他に、パラジウムや、PLZTと同じペロプスカイト構造を持つSrRuO3及びLaSrCoO3がある。一方、ルテニウムやイリジウム、及びこれらの酸化物はPLZTと格子定数が離れているため、これらの材料で第1導電膜23を構成すると、格子不整合によって強誘電体膜24の結晶性が悪くなる恐れがある。
【0056】
ここで、ゾル・ゲル法はスパッタ法に比べて成膜コストが安いので、本実施形態ではスパッタ法を採用せず、上記のようにゾル・ゲル法で強誘電体膜24を形成し、半導体装置の製造コストをなるべく安価にする。
【0057】
但し、ゾル・ゲル法により形成された強誘電体膜24は、成膜の時点では結晶化しておらず、強誘電体特性に乏しい。
【0058】
そこで、次の工程では、図2(b)に示すように、酸化性ガス含有雰囲気中で強誘電体膜24に対して常圧RTA(Rapid Thermal Anneal)を行い、分極電荷量が最も大きくなる(111)方向に強誘電体膜24を結晶化させる。このようなアニールは結晶化アニールと呼ばれる。
【0059】
結晶化アニールの雰囲気は酸化性ガス含有雰囲気であれば特に限定されない。本実施形態では100%の酸素雰囲気中で結晶化アニールを行う。なお、酸素ガスに代えて、オゾンガスや二酸化窒素ガスを酸化性ガスとして用いてもよい。また、これらのガスをアルゴンガス等の不活性ガスで希釈してもよい。
【0060】
また、結晶化アニールの昇温速度も特に限定されないが、本実施形態では昇温速度を40〜150℃/分とする。強誘電体膜24の結晶性を向上させるためには、その昇温速度はなるべく速く、例えば125℃/分とするのが好ましい。
【0061】
また、この結晶化アニールにおける最高基板温度が高すぎると、強誘電体膜24の上面から結晶化が進み、その上面付近にPZT結晶粒が不連続となる界面が形成される恐れがある。この界面よりも上側の層はSurface Layerと呼ばれる。Surface Layerの上面には結晶粒を反映した凹凸が形成され、その凹凸は強誘電体膜24に対して電圧を均一に印加することができない一因となる。
【0062】
従って、Surface Layerの形成を抑えるために、上記の結晶化アニールの最高基板温度の下限を強誘電体膜24の結晶化温度とし、且つその上限を結晶化温度よりも60℃高い温度とするのが好ましい。本実施形態では最高基板温度を500〜560℃、例えば550℃とする。
【0063】
このように最高基板温度の上限を比較的低温にすることで、強誘電体膜24の下面から結晶化が進むようになるので、強誘電体膜24の結晶粒が第1導電膜23の結晶性を引継ぐようになり、上記したsurface layerが発生し難くなると共に、強誘電体膜24の凹凸も抑えられるようになる。
【0064】
なお、この結晶化アニールにより、第1導電膜23を構成するプラチナ膜が緻密化し、第1導電膜23と強誘電体膜24との界面近傍におけるプラチナと酸素との相互拡散が抑制されるという利点も得られる。
【0065】
また、常圧RTAに代えて減圧RTAによりこの結晶化アニールを行ってもよい。減圧RTAでは、常圧RTAよりも強誘電体膜24を結晶化させ易いので、常圧RTAにおけるよりも最高基板温度の上限と下限をそれぞれ10℃程度低く抑えることができる。その結果、結晶化アニールの最高基板温度の下限を強誘電体膜24の結晶化温度よりも10℃低い温度とし、且つその上限を結晶化温度よりも50℃高い温度としても、強誘電体膜24におけるSurface Layerの発生を抑制することができる。
【0066】
次に、図2(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0067】
まず、酸素とアルゴンとの混合ガスをスパッタガスとし、且つイリジウムターゲットを使用するスパッタ法により、上記の強誘電体膜24の上に成膜の時点で既に結晶化している酸化イリジウム膜を厚さ約25nmに形成し、この酸化イリジウム膜を第1導電性酸化金属膜25dとする。
【0068】
このように成膜の時点で確実に結晶化している酸化イリジウム膜を形成するには、基板温度を300℃以上とすればよい。これより低い温度で酸化イリジウム膜を成膜すると、成膜時に結晶化が十分に進行せず、アモルファス状態の酸化イリジウム膜となる恐れがある。
【0069】
一方、基板温度が400℃よりも高くなると、酸化イリジウム膜中の酸素が不足するようになる。酸素不足の酸化イリジウム膜は外部の水分を還元して水素を発生してしまい、その水素によって強誘電体膜24が劣化してしまう。従って、強誘電体膜24の劣化を確実に防止するという点からすると、酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dは400℃以下の基板温度で形成するのが好ましい。
【0070】
本実施形態では、この酸化イリジウム膜を形成する際、アルゴン流量を140sccmにすると共に、酸素流量を60sccmとする。また、スパッタパワーは1kW〜2kWとする。
【0071】
この後に、酸素ガスとアルゴンガスとの混合雰囲気中において、基板温度を725℃、処理時間を60秒とする条件で、第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行う。このRTAにおけるガス流量は特に限定されないが、本実施形態では酸素流量を20sccmにし、アルゴン流量を2000sccmにする。但し、酸素の流量比が20%を超えると、酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dが酸素によって還元されて表面荒れが発生するので、20%以下の酸素流量比でこのアニールを行うのが好ましい。
【0072】
このようなRTAにより、強誘電体膜24が完全に結晶化すると共に、スパッタ法により第1導電性酸化金属膜25dを形成する際に強誘電体膜24が受けたダメージが回復する。また、強誘電体膜24の酸素欠損もこのRTAによって補われ、強誘電体膜24の強誘電体特性が高められる。
【0073】
特に、このように強誘電体膜24の全面を第1導電性酸化金属膜25dで覆った状態でアニールすることにより、強誘電体膜24の強誘電体特性の維持に必須の鉛原子が強誘電体膜24からアニール雰囲気に逃げ難くなるので、キャパシタをパターニングした後にアニールする場合よりもアニールの効果が高まる。
【0074】
また、第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面がフラットになり、後述の上部電極から強誘電体膜24に均一に電圧を印加できるという利点もこのアニールによって得られる。
【0075】
なお、このときのアニール雰囲気は、酸化性ガス含有雰囲気であれば特に限定されない。その酸化性ガスとしては、上記の酸素ガスの他に、オゾンガスや二酸化窒素ガスもある。
【0076】
その後に、第1導電性酸化金属膜25dの上に第2導電性酸化金属膜25eとしてスパッタ法で酸化イリジウム膜を約200nmの厚さに形成する。そのスパッタ法では、イリジウムターゲットが使用されると共に、スパッタガスとして酸素とアルゴンとの混合ガスが使用される。
【0077】
第1導電性酸化金属膜25dと異なり、第2導電性酸化金属膜25eを構成する酸化イリジウム膜は成膜の時点で結晶化している必要はない。本実施形態では、第2導電性酸化金属膜25eを形成する際の基板温度を室温(20℃)にし、アモルファス状態の酸化イリジウム膜を形成するようにする。
【0078】
ところで、上記した酸化イリジウムのスパッタでは、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム原子がスパッタ雰囲気中で酸化されることで基板上に酸化イリジウムが堆積する。そのため、堆積した酸化イリジウムの中には、雰囲気中における酸化が不十分なものも含まれ、酸化イリジウム膜全体としては化学量論組成(IrO2)よりも酸素が少ない状態になり易い。
【0079】
ところが、第2導電性酸化金属膜25eにおいて酸素が不足すると、第2導電性酸化金属膜25eの触媒作用が高まるため、外部の水分が第2導電性酸化金属膜25eに触れて水素が発生するようになる。水素は、強誘電体膜24を還元してその強誘電体特性を劣化させるという問題があるため、FeRAMの製造工程では水素の発生を極力抑える必要がある。
【0080】
従って、水素の発生を防止するという観点からすると、第2導電性酸化金属膜25eの酸化数は、第1導電性酸化金属膜25dの酸化数よりも大きいのが好ましい。
【0081】
そこで、本実施形態では、第2導電性酸化金属膜25eの成膜時に、第1導電性酸化金属膜25dの成膜時よりも酸素の流量比を多くすることで、酸化イリジウムの組成を化学量論組成(IrO2)に近づけ、第2導電性酸化金属膜24eの触媒作用を抑えるようにする。
【0082】
以上により、第1導電性酸化金属膜25dと第2導電性酸化金属膜25eとで構成される第2導電膜25が強誘電体膜24上に形成されたことになる。
【0083】
なお、第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eの構成材料は酸化イリジウムに限定されない。第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eは、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成され得る。更に、これらの酸化物を積層して第2導電膜25としてもよい。
【0084】
次いで、図3(a)に示すように、シリコン基板1の裏面を洗浄した後、フォトリソグラフィとエッチングにより上部電極用導電膜25をパターニングして上部電極25aを形成する。そして、このパターニングにより強誘電体膜24が受けたダメージを回復させるために、強誘電体膜24に対する回復アニールを縦型炉内で行う。この回復アニールは酸素含有雰囲気において行われ、その条件は、例えば、基板温度650℃、処理時間60分である。
【0085】
続いて、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより強誘電体膜24をパターニングし、PLZT等の強誘電体材料で構成されるキャパシタ誘電体膜24aを形成する。このパターニングでキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージは回復アニールによって回復される。この回復アニールは、上記と同様に縦型炉を用いて酸素含有雰囲気中で行われ、その条件として基板温度350℃、処理時間60分が採用される。
【0086】
次に、図3(c)に示すように、シリコン基板1の上側全面に、水素や水分等の還元性物質からキャパシタ誘電体膜24aを保護するための第1アルミナ膜31をスパッタ法で厚さ約50nmに形成する。
【0087】
ここで、図3(b)で説明した回復アニールを予め行ったことにより、第1アルミナ膜31に膜剥がれが発生し難くなる。
【0088】
そして、第1アルミナ膜31の形成時にキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるために、酸素含有雰囲気中で基板温度を550℃とする回復アニールを約60分間行う。この回復アニールは、例えば縦型炉を用いて行われる。
【0089】
次いで、図4(a)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、第1導電膜23と第1アルミナ膜31とをパターニングし、キャパシタ誘電体膜24aの下の下部第1導電膜23を下部電極23aにすると共に、この下部電極23aを覆うように第1アルミナ膜31を残す。
【0090】
また、下部電極23aは、キャパシタ誘電体膜24aからはみ出したコンタクト領域CRを有し、このコンタクト領域CRにおいて、後述の金属配線と下部電極23aとが電気的に接続されることになる。
【0091】
その後に、プロセス中にキャパシタ誘電体24aが受けたダメージを回復させるために、縦型炉において、基板温度550℃、処理時間60分の条件で、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜28aに回復アニールを施す。
【0092】
ここまでの工程により、シリコン基板1のセル領域には、下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aをこの順に積層してなるキャパシタQが形成されたことになる。
【0093】
続いて、図4(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面に、キャパシタ誘電体膜24aを保護するための第2アルミナ膜32をスパッタ法で約20nmの厚さに形成する。この第2アルミナ膜32は、その下の第1アルミナ膜32と協同して、水素や水分等の還元性物質がキャパシタ誘電体膜24aに至るのを防止し、キャパシタ誘電体膜24aが還元されてその強誘電体特性が劣化するのを抑えるように機能する。
【0094】
その後に、基板温度550℃、処理時間60分の条件で、酸素含有雰囲気となっている縦型炉内においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。
【0095】
この回復アニールにより、キャパシタQのリーク電流が低減するという利点も得られる。
【0096】
更に、図4(c)に示すように、シラン(SiH4)ガスを使用するHDPCVD(High Density Plasma CVD)法により、上記の第2アルミナ膜32上に酸化シリコン膜を厚さ約1500nmに形成し、その酸化シリコン膜を第2層間絶縁膜41とする。この後に、第2層間絶縁膜41の上面をCMP法で研磨して平坦化する。
【0097】
その後に、第2層間絶縁膜41に対してN2Oプラズマ処理を行うことにより、第2層間絶縁膜41を脱水すると共に、第2層間絶縁膜41の上面を僅かに窒化して水分の再吸着を防止する。
【0098】
次に、図5(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0099】
まず、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、各絶縁膜10〜12、31、32、41をパターニングして、第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bの上のこれらの膜に第1、第2ホール41a、41bを形成する。
【0100】
その後、第1、第2コンタクトホール41a、41bのそれぞれの内面と第2層間絶縁膜41の上面に、スパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜をそれぞれ厚さ20nm、50nmに形成し、これらの膜をグルー膜(密着膜)とする。次いで、このグルー膜の上に、六フッ化タングステンガスを使用するCVD法でタングステン膜を形成し、このタングステン膜で第1、第2コンタクトホール41a、41bを完全に埋め込む。
【0101】
その後に、第2層間絶縁膜41上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法で研磨して除去し、これらの膜を第1、第2コンタクトホール41a、41b内のみに第1、第2導電性プラグ61a、61bとして残す。各導電性プラグ61a、61bは、それぞれ第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bと電気的に接続される。
【0102】
ここで、第1、第2導電性プラグ61a、61bは、非常に酸化され易いタングステンを主に構成されているため、酸素含有雰囲気中で容易に酸化してコンタクト不良を引き起こす恐れがある。
【0103】
そこで、次の工程では、図5(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面に酸化防止絶縁膜55としてCVD法により酸窒化シリコン膜を厚さ約100nmに形成し、この酸化防止絶縁膜55により第1、第2導電性プラグ61a、61bの酸化を防止する。
【0104】
その後、フォトリソグラフィとエッチングにより、酸化防止絶縁膜55から第1アルミナ膜31までをパターニングする。これにより、下部電極23aのコンタクト領域CR上のこれらの絶縁膜に第3ホール41cが形成されると共に、上部電極25aの上に第4ホール41dが形成される。
【0105】
その後に、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるために、酸素含有雰囲気となっている縦型炉にシリコン基板1を入れ、基板温度500℃、処理時間60分の条件で、キャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。
【0106】
次に、図6に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0107】
まず、第2層間絶縁膜41と第1、第2導電性プラグ61a、61bのそれぞれの上面に、スパッタ法により金属積層膜を形成する。本実施形態では、その金属積層膜として、約150nmの厚さの窒化チタン膜、約550nmの厚さの銅含有アルミニウム膜、約5nmの厚さのチタン膜、及び約150nmの厚さの窒化チタン膜をこの順に形成する。この金属積層膜は、キャパシタQ上の第3、第4ホール41c、41d内にも形成される。
【0108】
そして、フォトリソグラフィとエッチングでこの金属積層膜をパターニングすることにより、キャパシタQや導電性プラグ61a、61bに電気的に接続された金属配線62を形成する。
【0109】
その後、例えば窒素雰囲気となっている縦型炉を用いて、基板温度350℃、N2流量20リットル/分、及び処理時間30分の条件で第2層間絶縁膜41をアニールして脱水する。
【0110】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成した。
【0111】
上記した本実施形態では、図2(c)に示したように、上部電極25aとなる第2導電膜25が、いずれも酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dと第2導電性酸化金属膜25eとを有する。
【0112】
そのうち、第1導電性酸化金属膜25dは、既述のように、酸素を含むスパッタガスを使用するスパッタ法で形成する。そのスパッタガス中の酸素は、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム粒を酸化する役割だけでなく、ゾル・ゲル法により形成された強誘電体膜24中の酸素欠損を補う役割も担う。
【0113】
特に、ゾル・ゲル法で形成された強誘電体膜24は、スパッタ法で形成された強誘電体膜と比較して膜中の酸素が欠損し易い。従って、本実施形態のようにゾル・ゲル法で強誘電体膜24bを形成する場合は、第1導電性酸化金属膜25dを成膜する際の酸素流量比を最適化することにより、強誘電体膜24の酸素欠損を最大限補いその強誘電体特性を高める必要がある。
【0114】
なお、本明細書における酸素流量比とは、スパッタガスに占める酸素ガスの割合の百分率をいう。
【0115】
本願発明者は、どのような酸素流量比で第1導電性酸化金属膜25dを形成する場合に、強誘電体膜24の強誘電体特性が高められるかを調査した。
【0116】
その結果を図7に示す。
【0117】
この調査では、長辺の長さが1.60μmで短辺の長さが1.15μmの長方形の強誘電体キャパシタ(セルキャパシタ)をシリコン基板上に1428個形成し、その後、三層目の金属配線まで形成した。
【0118】
また、強誘電体膜24の強誘電体特性としてスイッチング電荷量を調べた。図7の横軸の印加電圧は、キャパシタの上部電極25aと下部電極23aとの間に印加した電圧を示す。
【0119】
そして、各サンプルにおける強誘電体膜24としては、4層のPLZT塗膜を結晶化して得られた厚さ120nmのPLZT膜を用いた。PLZT塗膜に対する結晶化アニール時の基板温度は本実施形態と同じ550℃である。また、PLZT膜におけるLaの濃度は2.0mol%である。
【0120】
図7における本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際のスパッタガスの流量を次のように設定した。
【0121】
・本実施形態1
アルゴン流量:150sccm
酸素流量:50sccm(酸素流量比25%)
・本実施形態2
アルゴン流量:140sccm
酸素流量:60sccm(酸素流量比30%)
・本実施形態3
アルゴン流量:120sccm
酸素流量:80sccm(酸素流量比40%)
なお、本実施形態1〜3のいずれにおいても、第1導電性酸化金属膜25dを成膜する際の基板温度は300℃である。そして、第1導電性酸化金属膜25dに対し、アルゴンと酸素の混合雰囲気中で基板温度725℃、処理時間60秒の条件でRTAを行った。
【0122】
これに対し、比較例1では、プラチナ膜と酸化イリジウム膜とをこの順に形成してなる膜を上部電極として形成した。
【0123】
また、比較例2では、いずれも室温で形成された二層の酸化イリジウム膜を積層してなる膜を上部電極として形成した。各酸化イリジウム膜は、室温で形成されるため成膜の時点ではアモルファス状態となるが、一層目の酸化イリジウム膜については成膜後にRTAを行って結晶化させた。
【0124】
図7に示されるように、プラチナ膜を有する上部電極を形成する比較例1では、キャパシタがかなり劣化し、各工程を終了した後のスイッチング電荷量Qswがかなり低い。これは、金属配線49aを形成する際の熱により、第2層間絶縁膜41に含まれる水がプラチナ膜によって還元されて水素となり、この水素によってキャパシタが劣化したためと考えられる。
【0125】
一方、上部電極として酸化イリジウム膜の積層膜を形成する比較例2では、プラチナによる触媒作用が無いため、比較例1に比べてスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0126】
但し、比較例2では、一層目の酸化イリジウム膜に対して結晶化のためのRTAを行う際に、酸化イリジウム膜とPLZT膜との間に相互拡散に伴う比較的厚い界面層が形成される。その界面層は、常誘電体層であるため、キャパシタ誘電体膜の強誘電体特性には寄与しない。よって、比較例2では、キャパシタに印加する電圧の一部が上記の界面層に印加されてしまい、PLZT膜に印加される電圧が少なくなって、本実施形態よりもスイッチング電荷量Qswが小さくなってしまう。
【0127】
これに対し、本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dを300℃という高温で形成するため、成膜の時点で第1導電性酸化金属膜25dは既に結晶化している。従って、第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行っても、PLZT膜と第1導電性酸化金属膜25dとの間に比較例2のような界面層が形成され難くなるため、界面層による電圧の吸収が抑えられ、比較例2よりもスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0128】
更に、本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dに対して酸素含有雰囲気中でRTAを行うため、第1導電性酸化金属膜25dの形成時にPLZT膜が受けたダメージが回復すると共に、PLZT膜の酸素欠損が補われ、スイッチング電荷量Qswを効果的に高めることができる。
【0129】
このような酸素欠損の補償を効果的に行うためには、第1導電性酸化金属膜25dはなるべく薄く、例えば10〜50nmとし、RTAの雰囲気中の酸素が第1導電性酸化金属膜25dを通り易くするのが好ましい。
【0130】
また、このRTAにおける基板温度が650℃よりも低いと、酸素が第1導電性酸化金属膜25dを通り難くなり、PLZT膜の酸素欠損が補償され難くなるので、このRTAでの基板温度の下限は650℃とするのが好ましい。
【0131】
但し、基板温度が高すぎると、第1導電性酸化金属膜25dを構成する酸化イリジウムが還元されて、酸化数が2よりも小さく不安定な酸化イリジウムが生成されるので、このRTAにおける基板温度の上限は800℃とするのが好ましい。
【0132】
また、本実施形態1〜3のそれぞれを比較すると、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際のスパッタガスにおける酸素流量比が高いほどスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0133】
これは、酸素流量比が高いと、第1導電性酸化金属膜25dを構成する酸化イリジウム(IrOx)のxが2に近づいて安定な状態の酸化イリジウム膜が形成されるため、第1導電性酸化金属膜25dに対するアニールの際に、アニール雰囲気中の酸素が第1導電膜25dに捕獲されずに効果的にPLZT膜に供給されるためと考えられる。
【0134】
このような傾向は、スパッタ法でPZT膜を形成する特許文献6では見られない。例えば、特許文献6の図14、図15、図18A、及び図18Bには、上部電極の一層目の酸化イリジウム膜の成膜条件を様々に振った場合のPZT膜のスイッチング電荷量Qswが調査されている。
【0135】
そのような成膜条件のうち、本実施形態のように成膜の時点で酸化イリジウムが確実に結晶化するのは、基板温度を300℃とする条件である。上記した特許文献6の各図において、基板温度を300℃とする条件では、スパッタ雰囲気中の酸素流量が30%から60%に上昇すると、PZT膜のスイッチング電荷量が減少している。この傾向は、図7に示した本実施形態1〜3とは全く逆の傾向である。
【0136】
本実施形態1〜3では、ゾル・ゲル法によりPLZT膜を形成したため、特許文献6とは逆の傾向が現れたものと考えられる。
【0137】
従って、キャパシタ誘電体膜24aをゾル・ゲル法により形成する本実施形態では、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することによりキャパシタ誘電体膜24aのスイッチング電荷量が増大することを利用し、スイッチング電荷量Qswを上記の流量比で調節することができる。
【0138】
そして、スイッチング電荷量Qswを十分に高めるには、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際の酸素流量比を20%以上とするのが好ましい。
【0139】
なお、ゾル・ゲル法に代えて、有機金属分解法やCSD(Chemical Solution Deposition)法で強誘電体膜24を形成する場合でも、強誘電体膜24中の酸素が不足し易い。従って、これらの成膜方法により強誘電体膜24を形成する場合にも、上記と同じように第1導電性酸化金属膜25dの形成時の酸素流量を増やすことで、強誘電体膜24のスイッチング電荷量を高めるのが好ましい。
【0140】
ところで、成膜の時点で結晶化させるべく高温で形成される第1導電性酸化金属膜25dは、異常成長を起こし易く、結晶の乱れが発生し易い。
【0141】
図8は、成膜温度を300℃にし、酸素流量とアルゴン流量をそれぞれ80sccm、120sccmとして形成された厚さ50nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。このような流量によれば、酸素流量比は40%となる。
【0142】
一方、図9は、図8と同じ条件で形成された厚さ100nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【0143】
なお、図8及び図9のいずれにおいても顕微鏡の倍率は25倍である。
【0144】
図8と図9とを比較して分かるように、膜厚が50nmの酸化イリジウムの表面(図8)は非常に綺麗であるのに対し、膜厚が100nmの場合(図9)では表面に黒い斑点が多数発生している。その黒い斑点は、異常成長した酸化イリジウム粒を表している。
【0145】
これらの結果より、第1導電性酸化金属膜25dの異常成長を防止するという点からすると、第1導電性酸化金属膜25dの厚さを50nm以下にするのが好ましい。
【0146】
但し、第1導電性酸化金属膜25dの厚さが10nm未満になると、強誘電体膜24上に第1導電性酸化金属膜25dを均一に形成することができないので、第1導電性酸化金属膜25dの膜厚の下限は10nmとするのが好ましい。
【0147】
一方、酸素流量比を上記よりも更に高めて50%とした調査では、40nmの酸化イリジウム膜でも異常成長が見られた。なお、その調査では、酸素とアルゴンの流量を共に100sccmとした。従って、酸素流量比を50%未満とすることによっても、第1導電性酸化金属膜25dの異常成長を防止することができる。
【0148】
以上説明したように、本実施形態では、図7に示したように、低電圧から飽和電圧にわたって高いスイッチング電荷量が得られると共に、図7のグラフの勾配が各比較例よりも急となるため、低電圧動作のキャパシタを提供することが可能となる。
【0149】
また、第1導電性酸化金属膜25dに対するアニールにより、強誘電体膜24の酸素欠損が補われるだけでなく、第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面がフラットになるため、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに均一に電圧を印加できると共に、キャパシタQの疲労特性やインプリント特性も向上させることができ、低電圧動作が可能な次世代のFeRAMを提供することができる。
【0150】
(2)第2実施形態
図10〜図21は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0151】
この半導体装置は、微細化に有利なスタック型のFeRAMであり、以下のようにして作成される。
【0152】
最初に、図10(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0153】
まず、n型又はp型のシリコン基板1表面に、トランジスタの活性領域を画定するSTI用の溝を形成し、その中に酸化シリコン等の絶縁膜を埋め込んで素子分離絶縁膜2とする。なお、素子分離構造はSTIに限られず、LOCOS法で素子分離絶縁膜2を形成してもよい。
【0154】
次に、第1実施形態の図1(a)と同じ工程を行うことにより、シリコン基板1の活性領域に、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、及び第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8b等によって構成される第1、第2MOSトランジスタTR1、TR2を形成する。
【0155】
続いて、プラズマCVD法により、シリコン基板1の上側全面に窒化シリコン(SiN)膜を厚さ約80nmに形成し、それをカバー絶縁膜10とする。次いで、このカバー絶縁膜10の上に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により第1層間絶縁膜11として酸化シリコン膜を厚さ約1000nmに形成する。
【0156】
次いで、第1層間絶縁膜11の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して平坦化する。このCMPの結果、第1層間絶縁膜11の厚さは、シリコン基板1の平坦面上で約700nmとなる。
【0157】
そして、フォトリソグラフィによりカバー絶縁膜10と第1層間絶縁膜11とをパターニングして第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bの上に直径が0.25μmのコンタクトホールを形成する。更に、このコンタクトホール内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第1層間絶縁膜11上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜をコンタクトホール内にのみ第1、第2導電性プラグ32a、32bとして残す。
【0158】
これらの第1、第2導電性プラグ32a、32bは、それぞれ第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bと電気的に接続される。
【0159】
なお、上記のグルー膜は、厚さ約30nmのチタン膜と厚さ約20nmの窒化チタン膜とをこの順に形成してなる。また、CMP前のタングステン膜は、第1層間絶縁膜11上で約300nmの厚さを有する。
【0160】
ここで、第1、第2導電性プラグ32a、32bは、酸化され易いタングステンを主にして構成され、プロセス中で酸化されるとコンタクト不良を起こす恐れがある。
【0161】
そこで、各導電性プラグ32a、32bの酸化を防ぐ酸化防止絶縁膜14として、これらのプラグ32a、32bと第1層間絶縁膜11の上にプラズマCVD法により酸窒化シリコン膜を厚さ約130nmに形成する。
【0162】
なお、酸窒化シリコン膜に代えて、窒化シリコン膜やアルミナ膜を酸化防止絶縁膜14として形成してもよい。
【0163】
その後に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により、酸化防止絶縁膜14の上に酸化シリコン膜を厚さ約300nmに形成し、この酸化シリコン膜を下地絶縁膜15とする。
【0164】
次に、図10(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0165】
まず、下地絶縁膜15と酸化防止絶縁膜14とをパターニングすることにより、第1導電性プラグ32aの上方のこれらの絶縁膜に第1ホール15aを形成する。
【0166】
次いで、この第1ホール15a内と下地絶縁膜15の上にスパッタ法によりグルー膜35として窒化チタン膜を形成する。
【0167】
更に、CVD法を用いて、このグルー膜35の上にプラグ用導電膜36としてタングステン膜を形成し、このプラグ用導電膜36で第1ホール15aを完全に埋め込む。
【0168】
続いて、図10(c)に示すように、下地絶縁膜15の上の余分なグルー膜35とプラグ用導電膜36とをCMP法により研磨して除去する。これにより、グルー膜35とプラグ用導電膜36は、第1導電性プラグ32aと電気的に接続された第3導電性プラグ36aとして第1ホール15a内に残される。
【0169】
このCMPでは、研磨対象であるグルー膜35とプラグ用導電膜36の研磨速度が下地の下地絶縁膜15よりも速くなるようなスラリ、例えばCabot Microelectronics Corporation製のW2000を使用する。そして、下地絶縁膜15上に研磨残を残さないために、このCMPの研磨量は各膜35、36の合計膜厚よりも厚く設定され、このCMPはオーバー研磨となる。
【0170】
次に、図11(a)に示すように、酸化シリコンよりなる下地絶縁膜15を窒素含有プラズマ、例えばアンモニア(NH3)プラズマに曝し、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させる。
【0171】
このアンモニアプラズマ処理では、例えば、シリコン基板1に対して約9mm(350mils)だけ離れた位置に対向電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置が使用される。そして、266Pa(2Torr)の圧力下において基板温度を400℃に保持しながら、チャンバ内にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、シリコン基板1側に13.56MHzの高周波電力を100Wのパワーで、また上記の対向電極に350kHzの高周波電力を55Wのパワーで60秒間供給することにより処理が行われる。
【0172】
続いて、図11(b)に示すように、下地絶縁膜15と第3導電性プラグ36aのそれぞれの上にチタン膜を厚さ約20nmに形成し、このチタン膜を導電性密着膜16とする。
【0173】
この導電性密着膜16の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1とチタンターゲットとの距離が60mmに設定されたスパッタチャンバを用いて、0.15Paのアルゴン雰囲気中で基板温度を20℃にする。そして、2.6kWのDC電力をチャンバに5秒間供給することにより、チタンよりなる導電性密着膜16を形成する。
【0174】
ここで、アンモニアプラズマ処理(図11(a)参照)を予め行い、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させておいたので、下地絶縁膜15上に堆積したチタン原子は下地絶縁膜15表面の酸素原子に捕獲され難くい。そのため、チタン原子が下地絶縁膜15の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる導電性密着膜16を形成することが可能となる。
【0175】
その後に、導電性密着膜16に対し、窒素雰囲気中において基板温度を650℃、処理時間を60秒とするRTA(Rapid Thermal Anneal)を行う。これにより、チタンよりなる導電性密着膜16が窒化され、(111)方向に配向した窒化チタンで導電性密着膜16が構成されることになる。
【0176】
なお、導電性密着膜16の材料は窒化チタンに限定されない。導電性密着膜16は、チタン、窒化チタン、プラチナ、イリジウム、レニウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム及びオスミウムのいずれか、又はこれらの合金で構成され得る。また、酸化プラチナ、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、及び酸化パラジウムのいずれかで導電性密着膜16を構成してもよい。
【0177】
次に、図12(a)に示すように、この導電性密着膜16の上に導電性酸素バリア膜17として窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜を反応性スパッタ法で100nmの厚さに形成する。
【0178】
窒化チタンアルミニウムよりなる導電性酸素バリア膜17は、酸素透過防止機能に優れており、その下の第3導電性プラグ36aが酸化してコンタクト不良が発生するのを防止する役割を担う。
【0179】
この導電性酸素バリア膜17の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、チタンとアルミニウムとの合金ターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガスをスパッタガスとして用いる。そして、アルゴンガスと窒素ガスのそれぞれの流量を40sccm、100sccmにし、253.3Paの圧力下、400℃の基板温度、そして1.0kWのスパッタパワーで導電性酸素バリア膜17を形成する。
【0180】
更に、導電性酸素バリア膜17の材料は窒化チタンアルミニウムに限定されない。導電性酸素バリア膜17は、窒化チタンアルミニウム、酸窒化チタンアルミニウム(TiAlON)、窒化タンタルアルミニウム(TaAlN)、及び酸窒化タンタルアルミニウム(TaAlON)のいずれかで構成され得る。
【0181】
その導電性酸素バリア膜17は、導電性密着膜16によって下地との密着強度が高められる。なお、密着強度が問題にならないなら、導電性密着膜16を省いてもよい。その場合は、第3導電性プラグ36aと下地絶縁膜15のそれぞれの上面に導電性酸素バリア膜17が直接形成されることになる。
【0182】
続いて、図12(b)に示すように、厚さが50〜100nmのイリジウム膜23c、厚さが約30nmの酸化イリジウム膜23d、及び厚さが約50nmのプラチナ膜23eをこの順にスパッタ法に形成し、これらの積層膜を第1導電膜23とする。
【0183】
その第1導電膜23を構成するイリジウム膜23cは、酸素のバリア性に優れているため第3導電性プラグ36aに対する酸素バリア膜として機能し、例えば基板温度が400℃の下で形成される。
【0184】
また、酸化イリジウム膜23dは、基板温度が50℃と低温で形成されるため結晶化せず、アモルファス状態である。このため、自己配向性導電膜であるプラチナ膜23eは、アモルファスな酸化イリジウム膜23dによって配向が乱されることが無く、(111)方向に良好に配向する。
【0185】
なお、最上層のプラチナ膜23eに代えて、プラチナを含む合金膜を形成するようにしてもよい。
【0186】
更に、イリジウム膜、ルテニウム膜、酸化イリジウム膜、酸化ルテニウム膜、SrRuO3膜、及びLaSrCoO3膜のいずれかの単層膜を第1導電膜23として形成してもよい。
【0187】
その後に、アルゴン雰囲気中で基板温度を650℃以上にするRTAを第1導電膜23に対して60秒間行う。このRTAにより、第1導電膜23を構成する各膜23b〜23d同士の密着性や、第1導電膜23と導電性酸素バリア膜17との密着性が向上すると共に、第1導電膜23の結晶性も改善される。なお、アルゴン雰囲気に代えて、窒素雰囲気でこのRTAを行ってもよい。
【0188】
次に、図13(a)に示すように、第1導電膜23の上にMOCVD(Metal Organic CVD)法によりPZT膜を厚さ約80nmに形成し、このPZT膜を第1強誘電体膜24bとする。
【0189】
そのMOCVD法は次のようにして行われる。
【0190】
まず、不図示の反応容器内のサセプタ上にシリコン基板1を載せる。
【0191】
次いで、反応容器内に酸素を導入すると共に、シリコン基板1を昇温し、基板温度を620℃程度に安定させる。
【0192】
そして、気化されたTHF溶媒を反応容器に導入する。これにより、第1導電膜23は溶媒ガスの雰囲気に曝されることになる。
【0193】
このように、原料ガスの供給前に溶媒ガスを供給することで、気化器や配管等で原料ガスが固化するのを防止でき、配管詰まり等を回避することができる。なお、THFに代えて、気化した酢酸ブチルを溶媒ガスとして用いてもよい。
【0194】
更に、Pb、Zr、及びTiの各液体原料を気化器において気化して原料ガスを作製し、各原料ガスを反応容器内に導入することで、PZT膜の成膜を開始する。
【0195】
ここで、各液体原料は、例えば、Pb(DPM)2(化学式Pb(C11H19O2)2))、Zr(dmhd)4(化学式Zr(C9H15O2)4)、及びTi(O−iOr)2(DPM)2(化学式Ti(C3H7O)2(C11H19O2)2)のそれぞれをTHF(Tetra Hydro Furan: C4H8O)溶媒中にいずれも0.3mol/lの濃度で溶解することで作製され得る。また、気化された原料ガスの流量は特に限定されないが、本実施形態では、上記核液体原料を気化器にそれぞれ0.326ml/分、0.200ml/分、及び0.200ml/分の流量で供給して気化させることにより、Pb、Zr、及びTiの原料ガスを得る。
【0196】
そして、圧力が665Pa(5Torr)の下で、このような状態を約620秒間維持することにより、上記したPZT膜が80nmの厚さに形成される。
【0197】
このようにMOCVD法で形成された第1強誘電体膜24bは、成膜の時点で既に結晶化しており、その配向の向きが(111)方向に揃っているため、第1強誘電体膜24bを結晶化させるための結晶化アニールは不要である。
【0198】
また、MOCVD法を用いると、第1強誘電体膜24bを薄膜化してもその強誘電体特性が低下しないので、半導体装置の高集積化に有利となる。このような利点は、キャパシタの高集積化に有利な本実施形態のスタック型のFeRAMにおいて特に得られ易い。
【0199】
ところで、このように第1強誘電体膜24bが結晶化していると、その結晶粒を反映した凹凸が第1強誘電体膜24bの上面に形成される。そのような凹凸が形成されたままだと、後述の上部電極から第1強誘電体膜24bに対して均一に電圧を印加できないという不都合がある。
【0200】
そこで、本実施形態では、図13(b)に示すように、第1強誘電体膜24bの上にゾル・ゲル法で第2強誘電体膜24cを20〜30nmの厚さに形成し、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を第2強誘電体膜24cで埋め込むようにする。
【0201】
ゾル・ゲル法による第1強誘電体膜24bの形成は第1実施形態と同じ条件で行われ、Pb、La、Zr、及びTiの各前駆体を10重量%の濃度でブタノール溶媒に溶解してなる溶液が使用される。そして、スピンコート法によりこの溶液を第1強誘電体膜24b上に塗布してPLZT塗膜を一層だけ形成した後、常圧の酸素雰囲気中において基板温度を200〜450℃、例えば240℃とするベークを約5分間行い、上記の第2強誘電体膜24cを得る。
【0202】
以上により、第1導電膜23の上に第1強誘電体膜24bと第2強誘電体膜24cとで構成される強誘電体膜24が形成されたことになる。
【0203】
このうち、ゾル・ゲル法で形成された第2強誘電体膜24cは、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を埋め込む目的で形成されるため、その厚さを第1強誘電体膜24bよりも薄くし、第1強誘電体膜24bを主にして強誘電体膜24を構成するのが好ましい。
【0204】
なお、ゾル・ゲル法により形成される第2強誘電体膜24cはPLZT膜に限定されない。
【0205】
PLZTと同様のABO3型ペロブスカイト構造(A=Bi、Pb、Ba、Sr、Ca、Na、K、及び希土類元素のいずれか一つ、B=Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、及びCrのいずれか一つ)を有する強誘電性材料で第2強誘電体膜24cを構成してもよい。
【0206】
更に、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素で0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、及びSrBi4Ti4O15等のBi層状構造化合物も第2強誘電体膜24cの構成材料として使用し得る。
【0207】
ここで、ゾル・ゲル法により形成された第2強誘電体膜24cは、成膜の時点では結晶化していないので、このままでは強誘電体特性に乏しい。
【0208】
そこで、次の工程では、図14(a)に示すように、酸素含有雰囲気中において第2強誘電体膜24cに対して結晶化アニールを行い、第2強誘電体膜24cを結晶化させる。
【0209】
その結晶化アニールは常圧RTAにより行われる。そして、流量が共に1000sccmの酸素とアルゴンとをアニール雰囲気中に供給し、30〜120秒、例えば90秒の処理時間で結晶化アニールを行う。
【0210】
また、結晶化アニールの昇温速度も特に限定されないが、本実施形態では昇温速度を40〜150℃/分とする。第2強誘電体膜24cの結晶性を向上させるためには、その昇温速度はなるべく速く、例えば125℃/分とするのが好ましい。
【0211】
また、この結晶化アニールにおける最高基板温度が高すぎると、第1実施形態で説明したSurface Layerが第2強誘電体膜24cに形成され、第2強誘電体膜24cと第1強誘電体膜24bのそれぞれの結晶粒が繋がらなくなる恐れがある。
【0212】
従って、Surface Layerの形成を抑えるために、上記の結晶化アニールの最高基板温度の下限を第2強誘電体膜24bの結晶化温度(520℃)とし、且つその上限を結晶化温度よりも60℃高い温度とするのが好ましい。本実施形態では最高基板温度を520〜560℃、例えば550℃とする。
【0213】
このように最高基板温度の下限を比較的低温にすることで、第2強誘電体膜24cの下面から結晶化が進むようになるので、第2強誘電体膜24cの結晶粒が第1強誘電体膜24bの結晶粒を引継ぐようになり、各強誘電体膜24b、24cの間に界面が発生し難くなると共に、第2強誘電体膜24cの凹凸も抑えられるようになる。
【0214】
続いて、図14(b)に示すように、シリコン基板1を加熱しながら強誘電体膜24の上に第1導電性酸化金属膜25dとしてスパッタ法で酸化イリジウム膜を厚さ約25nmに形成する。第1実施形態で説明したように、このようにシリコン基板1を加熱するスパッタ法で形成された酸化イリジウム膜は、結晶化のためのプロセスを行わなくても、成膜の時点で既に結晶化している。
【0215】
その第1導電性酸化金属膜25dの成膜条件は特に限定されない。本実施形態では、基板温度を300℃に保持しながら、イリジウムターゲットを用いて、流量が140sccmの酸素と流量が60sccmのアルゴンガスとの混合ガスをスパッタガスとして用い、更にスパッタパワーを1kW〜2kWとする。
【0216】
ここで、強誘電体膜24は、第1導電性酸化金属膜25dをスパッタ法で形成した際に、スパッタガスによってダメージを受けていると共に膜中の酸素濃度が欠乏し、その強誘電体特性が劣化している恐れがある。
【0217】
そこで、上記の第1導電性酸化金属膜25dを形成した後に、アルゴンと酸素との混合雰囲気中でRTAを行うことにより、スパッタにより受けた強誘電体膜24のダメージを回復させると共に、第1強誘電体膜24の酸素欠損を補償する。
【0218】
このRTAの条件は特に限定されない。本実施形態では、基板温度を725℃にし、処理時間を60秒とする。また、アルゴンと酸素の流量をそれぞれ2000sccm、20sccmとする。第1実施形態と同様に、このRTAにおける酸化性ガスとしては、酸素ガスの他に、オゾンガス又は二酸化窒素ガスもある。
【0219】
ここで、第1導電性酸化金属膜25dが成膜の時点で結晶化しているため、その結晶粒を反映して第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面には凹凸が形成されているが、このRTAによってその凹凸が平坦化されるという利点も得られる。
【0220】
次に、基板温度を室温に維持しながら、スパッタ法により第1導電性酸化金属膜25dの上に第2導電性酸化金属膜25eとして酸化イリジウム膜を厚さ約100〜300nm、例えば200nmに形成する。その第2導電性酸化金属膜25eは、圧力が0.8Paのアルゴン雰囲気中、スパッタパワーを1.0kWにし、成膜時間を79秒とすることで形成される。
【0221】
ここで、高い成膜温度で結晶化された第1導電性酸化金属膜25dとは異なり、基板温度を室温とするスパッタ法で形成された第2導電性酸化金属膜25eはアモルファス状態になる。
【0222】
この第2導電性酸化金属膜25eは強誘電体膜24の劣化を防止するために形成されるものであり、第2導電性酸化金属膜25eを構成する酸化イリジウムの酸化数をなるべく大きくし、第2導電性酸化金属膜25eの水分に対する還元作用を抑えるのが好ましい。このように酸化数を大きくするには、第1導電性酸化金属膜25dの成膜時と比較して、スパッタガスにおける酸素の流量比を高めればよい。これにより、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム粒がスパッタ雰囲気中において十分に酸化され、化学量論的組成(IrO2)に近い酸化数の酸化イリジウム膜を形成することができる。
【0223】
このような第2導電性酸化金属膜25eと第1導電性酸化金属膜25dにより、図示のように導電性酸化金属膜25bが構成される。
【0224】
なお、第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eの構成材料は酸化イリジウムに限定されない。第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eは、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成され得る。更に、これらの酸化物を積層して導電性酸化金属膜25bとしてもよい。
【0225】
続いて、図15(a)に示すように、導電性酸化金属膜25bの上に、導電性向上膜25cとしてイリジウム膜をスパッタ法により厚さ50nm〜100nmに形成する。そのスパッタ法は、圧力が1Paのアルゴン雰囲気中で行われ、1.0kWのスパッタパワーがスパッタ雰囲気に投入される。
【0226】
導電性向上膜25cは、その下の導電性酸化金属膜25bと共に第2導電膜25を構成し、導電性酸化金属膜25bだけでは不足しがちな第2導電膜25の導電性を補う役割を担う。
【0227】
導電性向上膜25cはイリジウム膜に限定されない。導電性向上膜25cは、イリジウム、プラチナ、ルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、及びパラジウムのいずれか、又はこれらの酸化物で構成され得る。
【0228】
この後に、シリコン基板1の背面を洗浄する。
【0229】
次に、図15(b)に示すように、第2導電膜25の上にスパッタ法により窒化チタン膜を形成し、その窒化チタン膜を第1マスク材料層26とする。
【0230】
更に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて、第1マスク材料層26の上に第2マスク材料層27として酸化シリコン膜を形成する。
【0231】
次いで、図16(a)に示すように、第2マスク材料層27を島状にパターニングすることにより第2ハードマスク27aを形成する。
【0232】
次に、図16(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0233】
まず、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0234】
次いで、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の各膜23〜25をドライエッチングによりパターニングする。
【0235】
これにより、第1導電膜23、強誘電体膜24、及び第2導電膜25はそれぞれ下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aとなり、これらによって強誘電体キャパシタQが構成される。
【0236】
そのドライエッチングのガスは特に限定されないが、第1導電膜23と第2導電膜25に対するエッチングガスとしてはHBrと酸素との混合ガスが使用される。一方、強誘電体膜24に対するエッチングガスとしては塩素とアルゴンとの混合ガスが使用される。なお、これらのガスにC4F8ガスを添加してもよい。
【0237】
また、この第1導電膜23用のエッチングガスに対して導電性酸素バリア膜17はエッチング耐性を有するので、キャパシタQを形成した後でも導電性密着膜16の全面に導電性酸素バリア膜17は残存する。
【0238】
このようにして形成されたキャパシタQは、導電性酸素バリア膜17、導電性密着膜16、及び第3導電性プラグ36aを介して第1導電性プラグ32aと電気的に接続される。
【0239】
続いて、図17(a)に示すように、過酸化水素(H2O2)、アンモニア、及び水の混合溶液をエッチング液として用い、酸化シリコンよりなる第2ハードマスク27aをウエットエッチングにより除去する。なお、ドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去してもよい。
【0240】
次に、図17(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0241】
まず、第1ハードマスク26aをマスクとして用いながら、導電性密着膜16と導電性酸素バリア膜17とをエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。このエッチングはドライエッチングにより行われ、そのエッチングガスとしては例えばアルゴンと塩素との混合ガスが使用される。
【0242】
また、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0243】
続いて、図18(a)に示すように、キャパシタQを覆うアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、そのアルミナ膜を第1キャパシタ保護絶縁膜39とする。第1キャパシタ保護絶縁膜39を構成するアルミナは、水素の透過防止能力に優れているため、外部の水素はこの第1キャパシタ保護絶縁膜39によってブロックされ、水素によるキャパシタ誘電体膜24aの劣化を防止することができる。
【0244】
ここで、キャパシタ誘電体膜24aは、キャパシタQを形成する際のドライエッチング(図16(b)参照)や、スパッタ法による第1キャパシタ保護絶縁膜39の成膜によってダメージを受けている。
【0245】
そこで、このダメージからキャパシタ誘電体膜24aを回復させる目的で、図18(b)に示すように、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。この回復アニールの条件は特に限定されないが、本実施形態では、炉内において基板温度を550℃〜700℃、例えば650℃とし、約60分間行われる。
【0246】
続いて、図19(a)に示すように、第1キャパシタ保護絶縁膜39の上に、CVD法によりアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、このアルミナ膜を第2キャパシタ保護絶縁膜40とする。
【0247】
次に、図19(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0248】
まず、TEOSガスを反応ガスとするプラズマCVDにより、第2キャパシタ保護絶縁膜40の上に第2層間絶縁膜41として酸化シリコン膜を形成する。その反応ガスには、酸素ガスとヘリウムガスも含まれる。また、第2層間絶縁膜41の膜厚は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1の平坦面上での厚さを1500nmとする。
【0249】
なお、酸化シリコン膜に代えて、絶縁性の無機膜を第2層間絶縁膜41として形成してもよい。
【0250】
その後に、CMP法により第2層間絶縁膜41の表面を研磨して平坦化する。
【0251】
更に、第2層間絶縁膜41に対する脱水処理として、第2層間絶縁膜41の表面をN2Oプラズマに曝す。このN2Oプラズマにより、第2層間絶縁膜41内に残留する水分が除去されると共に、第2層間絶縁膜41への水分の再吸収が防止される。
【0252】
なお、この脱水処理としてN2プラズマ処理を行ってもよい。
【0253】
続いて、第2層間絶縁膜41の上に、スパッタ法により平坦なアルミナ膜を厚さ約20nm〜100nmに形成し、そのアルミナ膜を第3キャパシタ保護絶縁膜42とする。この第3キャパシタ保護絶縁膜42は、平坦化された第2層間絶縁膜41上に形成されるため優れたカバレッジ特性が要求されず、上記のように安価なスパッタ法で形成される。但し、第3キャパシタ保護絶縁膜42の成膜方法はスパッタ法に限定されず、CVD法であってもよい。
【0254】
その後に、図20(a)に示すように、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて、第3キャパシタ保護絶縁膜42の上に、キャップ絶縁膜43として酸化シリコン膜を300nm〜500nm程度の厚さに形成する。なお、このキャップ絶縁膜43として、酸窒化シリコン膜又は窒化シリコン膜を形成してもよい。
【0255】
次に、図20(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0256】
まず、第1〜第3キャパシタ保護絶縁膜39、40、42、第2層間絶縁膜41、キャップ絶縁膜43をパターニングすることにより、上部電極25a上のこれらの膜に第2ホール41aを形成する。
【0257】
次いで、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、不図示の炉内にシリコン基板1を入れ、酸素雰囲気中で基板温度を550℃とする回復アニールを約40分間行う。
【0258】
次に、第2導電性プラグ32bの上の第1〜第3キャパシタ保護絶縁膜39、40、42、第2層間絶縁膜41、キャップ絶縁膜43、下地絶縁膜15、及び酸化防止絶縁膜14をパターニングして、これらの膜に第3ホール41bを形成する。
【0259】
なお、このパターニングの際、第2ホール41aは、レジストパターンで覆われており、そのレジストパターンによってエッチング雰囲気から保護されている。
【0260】
ここで、もし、これらのホール41a、41bを同時に形成しようとすると、深い第3ホール41bが開口されるまで第2ホール41a内の上部電極25aが長時間にわたってエッチング雰囲気に曝され、キャパシタ誘電体膜24aが劣化するという問題が発生する。
【0261】
本実施形態では、上記のように深さの異なる第2、第3ホール41a、41bを別々に形成するので、このような問題を回避することができる。
【0262】
更に、第2ソース/ドレイン領域8b上の第2導電性プラグ32bは、本工程が終了するまで、酸化防止絶縁膜14によって覆われているので、第2導電性プラグ32bを構成するタングステンが酸化してコンタクト不良を起こすのが防止される。
【0263】
続いて、キャップ絶縁膜43上と第2、第3ホール41a、41b内に、グルー膜としてスパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜とをこの順に形成する。
【0264】
なお、窒化チタン膜についてはMOCVD法で形成してもよい。その場合、窒化チタン膜から炭素を除去するため、窒素と水素とをプラズマ化してなる雰囲気中で窒化チタン膜をアニールするのが好ましい。このように水素含有雰囲気中でアニールを行っても、上部電極25aの最上層に形成されたイリジウムよりなる導電性向上膜25c(図15(a)参照)が水素をブロックするので、水素によって導電性酸化金属膜25bが還元されることは無い。
【0265】
更に、CVD法によりグルー膜の上にタングステン膜を形成し、このタングステン膜で第2、第3ホール41a、41bを完全に埋め込む。
【0266】
そして、キャップ絶縁膜43上の不要なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を第2、第3ホール41a、41b内にのみ第4、第5導電性プラグ47a、47bとして残す。
【0267】
これらのプラグのうち、第4導電性プラグ47aは、キャパシタQの上部電極25aと電気的に接続される。一方、第5導電性プラグ47bは、第2導電性プラグ32bに電気的に接続され、その第2導電性プラグ32bと共にビット線の一部を構成する。
【0268】
その後に、図21に示すように、キャップ絶縁膜43と各導電性プラグ47a、47bのそれぞれの上にスパッタ法で金属積層膜を形成し、この金属積層膜をパターニングして金属配線49aとビット線用の導電性パッド49bとを形成する。
【0269】
その金属積層膜として、厚さ60nmのチタン膜、厚さ30nmの窒化チタン膜、厚さ360nmの銅含有アルミニウム膜、厚さ5nmのチタン膜、及び厚さ70nmの窒化チタン膜をこの順に形成する。
【0270】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成したことになる。
【0271】
上記した本実施形態では、図13(b)に示したように、MOCVD法で形成された第1強誘電体膜24bの上に、ゾル・ゲル法により第2強誘電体膜24cを形成するようにした。
【0272】
これにより、PZTの結晶粒を反映して第1強誘電体膜24bの上面に形成された凹凸が第2強誘電体膜24cにより埋め込まれるので、キャパシタ強誘電体膜24aと上部電極25aとの界面がフラットになり、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに対して均一に電圧を印加することが可能になる。
【0273】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、ゾル・ゲル法により形成された第2強誘電体膜24cの上に酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dを形成する。そのため、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することによりキャパシタ誘電体膜24aのスイッチング電荷量が増大することを利用し、スイッチング電荷量Qswを上記の流量比で調節することができる。
【0274】
ところで、本実施形態では、図14(a)に示したように、第2強誘電体膜24cを結晶化させるための結晶化アニールを行う。
【0275】
本願発明者は、その結晶化アニールの際の基板温度がキャパシタ誘電体膜24aに与える影響を調査した。
【0276】
その調査結果を図22及び図23に示す。
【0277】
図22の調査は、一辺の長さが50μmの正方形の平面形状を有する孤立したキャパシタをシリコン基板上に形成して行われた。
【0278】
一方、図23の調査は、一辺の長さが50μmの正方形の平面形状を有するキャパシタをシリコン基板上に5152個集積形成して行われた。
【0279】
なお、図22及び図23において、本実施形態1で示されるグラフは、上記の結晶化アニールを550℃の基板温度で行って得られたものである。一方、本実施形態2で示されるグラフは、結晶化アニールを500℃の基板温度で行って得られたものである。
【0280】
この調査結果によれば、キャパシタを孤立して形成した場合(図22)、及びキャパシタを集積形成した場合(図23)のいずれの場合でも、低い温度で結晶化アニールを行った本実施形態1の方がキャパシタのスイッチング電荷量Qswが大きくなった。
【0281】
このように高い温度の結晶化アニールでスイッチング電荷量Qswが低くなるのは、結晶化アニールの際の基板温度が高いと第2強誘電体膜24cの結晶化が速く進み、第2強誘電体膜24cの上面にPLZT結晶粒を反映した凹凸が形成され、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに効果的に電圧を印加できないためと考えられる。
【0282】
これに対し、結晶化アニールを低い温度で行うと、第2強誘電体膜24cの結晶化が穏やかに進むため、第2強誘電体膜24cの結晶粒が下地の第1強誘電体膜24bの結晶粒を引き継ぐようになり、第2強誘電体膜24cの上面に形成される凹凸の大きさが小さくなる。これにより、第2強誘電体膜24cと上部電極25aとの界面が実質的にフラットになり、上部電極25aから印加される大部分の電圧がキャパシタ誘電体膜24aに加わるようになって、上記のようにスイッチング電荷量が大きくなるものと考えられる。
【0283】
この調査結果より、第2強誘電体膜24cに対する結晶化アニールは、550℃未満の基板温度で行うのが好ましいことが明らかとなった。
【0284】
(3)第3実施形態
図24〜図29は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。なお、これらの図において第2実施形態で説明した要素には第2実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0285】
第2実施形態の図10(c)の工程では、グルー膜35とプラグ用導電膜36とをCMP法により研磨することで第3導電性プラグ36aを形成した。
【0286】
しかしながら、そのCMPで使用されるスラリに対し、グルー膜35とプラグ用導電膜36の研磨速度は下地の下地絶縁膜15よりも速いので、CMPを終了した時点で第3導電性プラグ36aと下地絶縁膜15のそれぞれの上面の高さを合わせるのは難しい。
【0287】
そのため、実際には、図24(a)に示されるように、上記のCMPの後には下地絶縁膜15にリセス15bが形成され、第3導電性プラグ36aの上面の高さが下地絶縁膜15のそれよりも低くなる。そのリセス15bの深さは20〜50nmであり、典型的には50nm程度になる。
【0288】
ところが、このようなリセス15bが存在すると、下部電極23aとキャパシタ誘電体膜24aの配向が乱れ、キャパシタ誘電体膜24aの強誘電体特性が劣化するという問題が発生する。
【0289】
この問題を解決するため、本実施形態では以下のような工程を行う。
【0290】
まず、図24(b)に示すように、下地絶縁膜15に対してアンモニアプラズマ処理を行い、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させる。
【0291】
このアンモニアプラズマ処理は、例えばシリコン基板1に対して約9mm(350mils)だけ離れた位置に対向電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置が使用される。そして、266Pa(2Torr)の圧力下において基板温度を400℃に保持しながら、チャンバ内にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、シリコン基板1側に13.56MHzの高周波電力を100Wのパワーで、また上記の対向電極に350kHzの高周波電力を55Wのパワーで60秒間供給することにより処理が行われる。
【0292】
次に、図25(a)に示すように、下地絶縁膜15と第3導電性プラグ36aの上に平坦化用導電膜50としてチタン膜を100〜300nm、例えば約100nmに形成し、この平坦化用導電膜50でリセス15bを完全に埋め込む。
【0293】
この平坦化用導電膜50の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1とチタンターゲットとの距離が60mmに設定されたスパッタ装置を用い、圧力が0.15Paのアルゴン雰囲気において、2.6kWのスパッタ用のDCパワーを35秒間印加し、基板温度が室温(20℃)の条件下において平坦化用導電膜50を形成する。
【0294】
また、平坦化用導電膜50を形成する前に、アンモニアプラズマ処理(図24(b))により下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させておいたので、下地絶縁膜15上に堆積したチタン原子は酸素原子に捕獲され難くい。その結果、チタン原子が下地絶縁膜15の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる平坦化用導電膜50を形成することが可能となる。
【0295】
なお、平坦化用導電膜50はチタン膜に限定されず、タングステン膜、シリコン膜、及び銅膜のいずれかを平坦化用導電膜50として形成してもよい。
【0296】
その後に、平坦化用導電膜50に対し、窒素雰囲気中で基板温度を650℃とするRTAを行うことで、チタンよりなる平坦化用導電膜50を窒化して、(111)方向に配向した窒化チタンで平坦化用導電膜50を構成する。
【0297】
ここで、第3導電性プラグ36aの周囲の下地絶縁膜15に既述のように形成されたリセス15bを反映して、上記の平坦化用導電膜50の上面には凹部が形成される。しかし、このような凹部が形成されていると、平坦化用導電膜50の上方に後で形成される強誘電体膜の結晶性が劣化する恐れがある。
【0298】
そこで、本実施形態では、図25(b)に示すように、CMP法により平坦化用導電膜50の上面を研磨して平坦化し、上記した凹部を除去する。このCMPで使用されるスラリは特に限定されないが、本実施形態ではCabot Microelectronics Corporation製のSSW2000を使用する。
【0299】
なお、CMP後の平坦化用導電膜50の厚さは、研磨誤差に起因して、シリコン基板の面内や、複数のシリコン基板間でばらつく。そのばらつきを考慮して、本実施形態では、研磨時間を制御することにより、CMP後の平坦化用導電膜50の厚さの目標値を50〜100nm、より好ましくは50nmとする。
【0300】
ところで、上記のように平坦化用導電膜50に対してCMPを行った後では、平坦化用導電膜50の上面付近の結晶が研磨によって歪んだ状態となっている。しかし、このように結晶に歪が発生している平坦化用導電膜50の上方にキャパシタの下部電極を形成すると、その歪みを下部電極が拾ってしまって下部電極の結晶性が劣化し、ひいてはその上の強誘電体膜の強誘電体特性が劣化することになる。
【0301】
このような不都合を回避するために、次の工程では、図26(a)に示すように、平坦化用導電膜50の上面をアンモニアプラズマに曝すことで、平坦化用導電膜50の結晶の歪みがその上の膜に伝わらないようにする。
【0302】
次に、図26(b)に示すように、上記のアンモニアプラズマ処理によって結晶の歪みが解消された平坦化用導電膜50の上に、スパッタ法で導電性密着膜51としてイリジウム膜を形成する。その導電性密着膜51は、上下の膜同士の密着強度を高める膜として機能し、その厚さはなるべく薄く、例えば20nm以下、より好ましくは5nm〜10nmの厚さに形成するのが望ましい。
【0303】
続いて、第2実施形態で説明した図11(b)〜図15(a)の工程を行うことにより、図27(a)に示すように、各膜16、17、23〜25を積層する。
【0304】
なお、この工程では、第2実施形態と同じように、MOCVD法により第1強誘電体膜24bを形成した後、その上にゾル・ゲル法により第2強誘電体膜24cを形成し、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を埋め込むようにする。
【0305】
そして、導電性酸化金属膜25bとしては、スパッタ法により酸化イリジウムよりなる第1、第2導電性酸化金属膜25d、25e(図14(b)参照)の積層膜を形成する。このうち、第1導電性酸化金属膜25dは成膜の時点で既に結晶化しており、その成膜後に、第2実施形態と同じ条件を用いて酸化性ガス含有雰囲気中でRTAを行うことにより、強誘電体膜24cの酸素欠損を補う。
【0306】
続いて、図15(b)及び図16(a)で説明した工程を行うことにより、図27(b)に示すように、第2導電膜25の上に第1マスク材料層26と第2ハードマスク27aとを形成する。
【0307】
次に、図28(a)に示すように、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0308】
その後、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の第2導電膜25、強誘電体膜24、及び第1導電膜23をドライエッチングする。これにより、下部電極25a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極23aを備えたキャパシタQが形成される。
【0309】
そのエッチングでは、第1実施形態と同様に、第1導電膜23と第2導電膜25に対するエッチングガスとしてHBrと酸素との混合ガスを使用し、強誘電体膜24に対するエッチングガスとして塩素とアルゴンとの混合ガスを使用する。
【0310】
続いて、図28(b)に示すように、過酸化水素、アンモニア、及び水の混合溶液をエッチング液とするウエットエッチングにより、酸化シリコンよりなる第2ハードマスク27aを除去する。なお、ドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去してもよい。
【0311】
次に、図29(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0312】
まず、第1ハードマスク26aをマスクとして用いながら、導電性酸素バリア膜17、下地導電膜16、導電性密着膜51、及び平坦化用導電膜50をエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。このエッチングはドライエッチングにより行われ、そのエッチングガスとしては例えばアルゴンと塩素との混合ガスが使用される。
【0313】
また、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0314】
この後は、第1実施形態で説明した図18(a)〜図21の工程を行うことにより、図29(b)に示すような本実施形態に係る半導体装置の基本構造を完成させる。
【0315】
以上説明した本実施形態によれば、図25(a)を参照して説明したように、CMPにより第3導電性プラグ36aの周囲に発生したリセス15bを平坦化用導電膜50で埋め込み、更にCMPによりその平坦化用導電膜50を平坦化した。
【0316】
これにより、平坦化導電膜50の上方に形成される下部電極23a(図29(b)参照)の平坦性が良好になり、下部電極23aの配向が良好になる。そして、下部電極23aの配向の作用によりキャパシタ誘電体膜24aの配向も向上し、スイッチング電荷量等のキャパシタ誘電体膜24aの強誘電体特性が高められる。
【0317】
(4)第4実施形態
図30は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【0318】
本実施形態が第2実施形態と異なる点は、本実施形態では図25(b)のCMP工程において下地絶縁膜15の上面から平坦化用導電膜50を除去し、リセス15b内の第3導電性プラグ36a上にのみ平坦化用導電膜50を残す点である。これ以外の点は、本実施形態も第2実施形態も同じである。
【0319】
このようにCMPにより下地絶縁膜15の上面から平坦化用導電膜50を完全に除去しても、平坦化用導電膜50の膜厚が薄いため、CMP時のオーバー研磨量は少なくて済み、リセス15b内に残された平坦化用導電膜50の上面には凹部が殆ど形成されない。従って、平坦化用導電膜50と下地絶縁膜15のそれぞれの上面が平坦な連続面となるため、下部電極23aとキャパシタ誘電体膜24aの結晶性が良好になる。
【0320】
(5)第5実施形態
図31〜図38は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。なお、これらの図において、第2実施形態で説明した要素には第2実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0321】
最初に、図31(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0322】
まず、第2実施形態の図10(a)で説明した工程に従い、シリコン基板1の上にカバー絶縁膜10と第1層間絶縁膜11とを形成する。そして、これらの絶縁膜をパターニングすることにより、第1ソース/ドレイン領域8aの上にコンタクトホールを形成する。
【0323】
更に、このコンタクトホール内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第1層間絶縁膜11上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜をコンタクトホール内にのみ第1導電性プラグ32aとして残す。
【0324】
次に、図31(b)に示すように、第1層間絶縁膜11と第1導電性プラグ32aのそれぞれの上にチタン膜を厚さ約20nmに形成し、このチタン膜を下地導電膜16とする。
【0325】
なお、この下地導電膜16を形成する前に、第1層間絶縁膜11と第1導電性プラグ32aのそれぞれの上面に対しアンモニアプラズマ処理を予め行ってもよい。このアンモニアプラズマ処理を行うことで、第1層間絶縁膜11上に堆積したチタン原子が絶縁膜11表面の酸素原子に捕獲され難くなるので、チタン原子が第1層間絶縁膜11の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる下地導電膜16を形成することが可能となる。
【0326】
その後に、下地絶縁膜16に対し、窒素雰囲気中において基板温度を650℃、処理時間を60秒とするRTAを行う。これにより、チタンよりなる下地導電膜16が窒化され、(111)方向に配向した窒化チタンで下地導電膜16が構成されることになる。
【0327】
更に、この下地導電膜16の上に導電性酸素バリア膜17として窒化チタンアルミニウム膜を反応性スパッタ法で100nmの厚さに形成する。
【0328】
次に、図31(c)に示すように、導電性酸素バリア膜17の上にスパッタ法により第1導電膜23を形成する。その第1導電膜23は、第2実施形態と同様に、厚さが50〜100nmのイリジウム膜23c、厚さが約30nmの酸化イリジウム膜23d、及び厚さが約50nmのプラチナ膜23eをこの順に形成してなる。
【0329】
続いて、図32(a)に示すように、第2実施形態と同じ成膜条件を採用して、MOCVD法によりPZT膜を厚さ約80nmに形成し、このPZT膜を第1強誘電体膜24bとする。
【0330】
次に、図32(b)に示すように、第1強誘電体膜24bの上に第2強誘電体膜24cとしてPLZT膜をゾル・ゲル法で20〜30nmの厚さに形成する。この第2強誘電体膜24cの成膜条件は第2実施形態と同じなので省略する。
【0331】
以上により、第1導電膜23の上には、第1強誘電体膜24cと第2強誘電体膜24dとで構成される強誘電体膜24が形成されたことになる。
【0332】
続いて、図33(a)に示すように、第2強誘電体膜24dに対する結晶化アニールとして、昇温速度を125℃/分、最高基板温度を550℃とするRTAを90秒行う。そのRTAでは、アニール雰囲気中に流量が共に1000sccmの酸素とアルゴンとが供給される。
【0333】
次に、図33(b)に示すように、第2実施形態の図14(b)と同じ工程を行うことにより、強誘電体膜24の上に導電性酸化金属膜25bを形成する。第2実施形態で説明したように、その導電性酸化金属膜25dは、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜25dとアモルファスな第2導電性酸化金属膜25eとで構成される。そして、第1導電性酸化金属膜25dを形成した後には、酸化性ガス含有雰囲気中で該第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行うことにより、強誘電体膜24の酸素欠損を補うと共に、第1導電性酸化金属膜25dを完全に結晶化させる。このRTAの条件は第2実施形態で説明したので省略する。
【0334】
次に、図34(a)に示すように、導電性酸化金属膜25bの上に、導電性向上膜25cとしてイリジウム膜をスパッタ法により厚さ50nm〜100nmに形成し、この導電性向上膜25cと導電性酸化金属膜25dとを第2導電膜25とする。
【0335】
次に、図34(b)に示すように、スパッタ法で第2導電膜25の上に窒化チタンよりなる第1マスク材料層26を形成する。
【0336】
また、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて第1マスク材料層36の上に酸化シリコン膜を形成し、その酸化シリコン膜をパターニングして第2ハードマスク27aを形成する。
【0337】
続いて、図35(a)に示すように、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0338】
次いで、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の第2導電膜25、強誘電体膜24、及び第1導電膜23をドライエッチングする。これにより、下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aを備えたキャパシタQが形成される。
【0339】
なお、このドライエッチングの条件は、第2実施形態で図16(b)を参照して説明したので省略する。
【0340】
また、上記のドライエッチングを行っても、導電性酸素バリア膜17はエッチングされずに下地導電膜16の全面に残存する。
【0341】
次に、図35(b)に示すように、ウエットエッチング又はドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去する。ウエットエッチングの場合は、過酸化水素、アンモニア、及び水の混合溶液がエッチング液として用いられる。
【0342】
続いて、図36(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0343】
まず、第1ハードマスク26aをマスクにしながら、アルゴンと塩素との混合ガスをエッチングガスとして用い、下地導電膜16と導電性酸素バリア膜17とをドライエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。
【0344】
なお、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0345】
次に、図36(b)に示すように、水素等の還元性物質からキャパシタQを保護するために、シリコン基板1の上側全面に、第1キャパシタ保護絶縁膜39としてアルミナ膜を厚さ約20nmに形成する。
【0346】
そして、キャパシタQを形成する際のドライエッチング(図35(a)参照)や、スパッタ法による第1キャパシタ保護絶縁膜39の成膜時にキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。この回復アニールの条件は、炉内において基板温度を550℃〜700℃、例えば650℃とし、約60分間行われる。
【0347】
その後に、第1キャパシタ保護絶縁膜39の上に、CVD法によりアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、このアルミナ膜を第2キャパシタ保護絶縁膜40とする。
【0348】
次いで、図37(a)に示すように、TEOSガスを反応ガスとするプラズマCVDにより、第2キャパシタ保護絶縁膜40の上に第2層間絶縁膜41として酸化シリコン膜を形成する。その反応ガスには、酸素ガスとヘリウムガスも含まれる。また、第2層間絶縁膜41は、シリコン基板1の平坦面上で1500nmの厚さを有する。
【0349】
なお、酸化シリコン膜に代えて、絶縁性の無機膜を第2層間絶縁膜41として形成してもよい。
【0350】
その後に、CMP法により第2層間絶縁膜41の表面を研磨して平坦化する。
【0351】
次に、図37(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0352】
まず、第2層間絶縁膜41の表面をN2Oプラズマに曝すことにより、第2層間絶縁膜41内に残留する水分を除去すると共に、第2層間絶縁膜41への水分の再吸収を防止する。
【0353】
なお、この脱水処理としてN2プラズマ処理を行ってもよい。
【0354】
次いで、カバー絶縁膜10、第1、第2層間絶縁膜11、41、及び第1、第2キャパシタ保護絶縁膜39、40をパターニングすることにより、第2ソース/ドレイン領域8bの上のこれらの絶縁膜に第1ホール41cを形成する。
【0355】
そして、この第1ホール41c内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第2層間絶縁膜41上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を第1ホール41c内にのみ第2導電性プラグ54として残す。
【0356】
その第2導電性プラグ54は、ビット線の一部を構成し、第2ソース/ドレイン領域8bと電気的に接続される。
【0357】
ところで、第2導電性プラグ54は、酸化され易いタングステンを主にして構成されるため、プロセス中で酸化されるとコンタクト不良を起こし易い。
【0358】
そこで、第2導電性プラグ54の酸化を防止するため、第2層間絶縁膜41と第2導電性プラグ54のそれぞれの上面に酸窒化シリコン膜を厚さ約100nmに形成し、この酸窒化シリコン膜を酸化防止絶縁膜55とする。
【0359】
次に、図38(a)に示すように、第1、第2キャパシタ保護絶縁膜39、40、第2層間絶縁膜41、及び酸化防止絶縁膜55をパターニングすることにより、上部電極25aの上のこれらの絶縁膜に第2ホール41dを形成する。
【0360】
この第2ホール41dを形成した後、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中でアニールを行ってもよい。このようにアニールをしても、第2導電性プラグ54の酸化は酸化防止絶縁膜55によって防止される。
【0361】
この後に、酸化防止絶縁膜55をエッチバックして除去する。
【0362】
続いて、図38(b)に示すように、第2層間絶縁膜41と第2導電性プラグ54のそれぞれの上面にスパッタ法で金属積層膜を形成し、この金属積層膜をパターニングして金属配線57aとビット線用の導電性パッド57bとを形成する。
【0363】
その金属積層膜は、例えば、厚さ60nmのチタン膜、厚さ30nmの窒化チタン膜、厚さ400nmの銅含有アルミニウム膜、厚さ5nmのチタン膜、及び厚さ70nmの窒化チタン膜をこの順に形成してなる。
【0364】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成したことになる。
【0365】
上記した本実施形態では、第2実施形態の第3導電性プラグ36aや下地絶縁膜15を形成しないので、第2実施形態と比較して工程の簡略化が図られる。
【0366】
更に、第2ソース/ドレイン領域8b上でビット線の一部を構成する第2導電性プラグ54が一段しかないので、二段の導電性プラグ32b、47bを形成する第2実施形態よりも簡単な構造となる。
【0367】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0368】
(付記1) 半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、
酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、
前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、
前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、
前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記酸素流量比で調節することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0369】
(付記2) 前記強誘電体特性としてスイッチング電荷量を採用することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0370】
(付記3) 前記強誘電体膜を形成する工程は、MOCVD法により前記第1導電膜の上に第1強誘電体膜を形成する工程と、ゾル・ゲル法により前記第1強誘電体膜の上に第2強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0371】
(付記4) 前記第2強誘電体膜を形成する工程において、該第2強誘電体膜を前記第1強誘電体膜よりも薄く形成することを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0372】
(付記5) 前記第2強誘電体膜を形成する工程は、前記第1強誘電体膜の上に強誘電体溶液の塗膜を一層のみ形成し、該塗膜をアニールして前記第2強誘電体膜とすることにより行われることを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
【0373】
(付記6) 前記第1強誘電体膜を形成する工程の前に、前記半導体基板を昇温し、溶媒ガスの雰囲気中に前記第1導電膜を曝すことを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0374】
(付記7) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程は、基板温度を300℃以上にして行われることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0375】
(付記8) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、該第1導電性酸化金属膜を10nm以上50nm以下の厚さに形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0376】
(付記9) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記酸素の流量比を20%以上50%未満とすることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0377】
(付記10) 前記第1導電性酸化金属膜に対して前記第1のアニールを行う工程は、650℃以上800℃以下の基板温度で行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0378】
(付記11) 前記第1のアニールを行う工程における前記酸化性ガスとして、酸素ガス、オゾンガス、及び二酸化窒素ガスのいずれかを用いることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0379】
(付記12) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程の前に前記強誘電体膜に対して第2のアニールを行うことにより前記強誘電体膜を結晶化する工程を更に有し、
前記第2のアニールを行う工程が常圧RTAで行われ、該常圧RTAにおける基板温度の下限が前記強誘電体膜の結晶化温度であり、且つ、前記基板温度の上限が前記結晶化温度よりも60℃高い温度であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0380】
(付記13) 前記第1導電性酸化金属膜と前記第2導電性酸化金属膜の少なくとも一方を、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0381】
(付記14) 前記第2導電性酸化金属膜の上に導電性向上膜を形成する工程を更に有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0382】
(付記15) 前記導電性向上膜として、イリジウム、プラチナ、ルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、及びパラジウムのいずれか、又はこれらの酸化物で構成することを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【0383】
(付記16) 前記第1導電膜として、導電性酸素バリア膜、アモルファス導電膜、及び自己配向性導電膜をこの順に形成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0384】
(付記17) 前記半導体基板に第1不純物拡散領域を形成する工程と、
前記第1不純物拡散領域の上方の前記第1層間絶縁膜に第1ホールを形成する工程と、
前記第1ホール内に、前記第1不純物拡散領域と電気的に接続された第1導電性プラグを形成する工程とを有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記第1導電性プラグの上にも該第1導電膜を形成し、
前記キャパシタを形成する工程において、前記第1導電性プラグの上に該キャパシタを形成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0385】
(付記18) 前記第1層間絶縁膜と前記第1導電性プラグの上に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記第1導電性プラグの上の前記下地絶縁膜に第2ホールを形成する工程と、
前記第2ホールに、前記第1導電性プラグと電気的に接続された第2導電性プラグを形成する工程と、
前記第2導電性プラグと前記下地絶縁膜のそれぞれの上に平坦化用導電膜を形成する工程と、
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程とを更に有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記平坦化された平坦化用導電膜の上に該第1導電膜を形成することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【0386】
(付記19) 前記平坦化用導電膜を平坦化する工程において、該平坦化用導電膜を研磨することにより、前記第2導電性プラグの上にのみ該平坦化用導電膜を残すことを特徴とする付記18に記載の半導体装置の製造方法。
【0387】
(付記20) 前記半導体基板に第2不純物拡散領域を形成する工程と、
前記キャパシタを覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2不純物拡散領域の上の前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜に第3ホールを形成する工程と、
前記第3ホール内に、前記第2不純物拡散領域と電気的に接続された第3導電性プラグを形成する工程とを更に有することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0388】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図4】図4(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図5】図5(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図7】図7は、複数のキャパシタをシリコン基板上に集積形成した場合における、印加電圧と強誘電体膜のスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図8】図8は、スパッタ法により形成された厚さ50nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【図9】図9は、スパッタ法により形成された厚さ100nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図11】図11(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図12】図12(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図13】図13(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図14】図14(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図15】図15(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図16】図16(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【図17】図17(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その8)である。
【図18】図18(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その9)である。
【図19】図19(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その10)である。
【図20】図20(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その11)である。
【図21】図21は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その12)である。
【図22】図22は、シリコン基板上にキャパシタを孤立して形成した場合における、キャパシタへの印加電圧とスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図23】図23は、シリコン基板上に複数のキャパシタを集積形成した場合における、キャパシタへの印加電圧とスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図24】図24(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図25】図25(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図26】図26(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図27】図27(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図28】図28(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図29】図29(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図30】図30は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図31】図31(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図32】図32(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図33】図33(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図34】図34(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図35】図35(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図36】図36(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図37】図37(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【図38】図38(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その8)である。
【符号の説明】
【0389】
1…シリコン基板、2…素子分離絶縁膜、3…pウェル、4…ゲート絶縁膜、5…ゲート電極、6a、6b…第1、第2ソース/ドレインエクステンション、7…絶縁性サイドウォール、8a、8b…第1、第2ソース/ドレイン領域、10…カバー絶縁膜、11…第1層間絶縁膜、12…下部電極密着膜、14…酸化防止絶縁膜、15…下地絶縁膜、16…導電性密着膜、17…導電性酸素バリア膜、23…第1導電膜、23a…下部電極、23c…イリジウム膜(導電性酸素バリア膜)、23d…酸化イリジウム膜(アモルファス導電膜)、23e…プラチナ膜(自己配向性導電膜)、24…強誘電体膜、24a…キャパシタ誘電体膜、24b…第1強誘電体膜、24c…第2強誘電体膜、25…第2導電膜、25a…上部電極、25b…酸化金属膜、25c…導電性向上膜、25d…第1導電性酸化金属膜、25e…第2導電性酸化金属膜、26…第1マスク材料層、26a…第1ハードマスク、27…第2マスク材料層、27a…第2ハードマスク、32a、32b…第1、第2導電性プラグ、35…グルー膜、36…プラグ用導電膜、36a…第3導電性プラグ、39…第1キャパシタ保護絶縁膜、40…第2キャパシタ保護絶縁膜、41…第2層間絶縁膜、42…第3キャパシタ保護絶縁膜、43…キャップ絶縁膜、47a、47b…第4、第5導電性プラグ、49a、57a…金属配線、49b、57b…導電性パッド、50…平坦化用導電膜、51…導電性密着膜、54…第2導電性プラグ、55…酸化防止絶縁膜、61a、61b…第1、第2導電性プラグ、62…導電性プラグ。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進展に伴い、大容量のデータを高速に保存したり保存したりすることが可能な不揮発性メモリの開発が進められている。
【0003】
そのような不揮発性メモリとしては、フラッシュメモリや強誘電体メモリが知られている。
【0004】
このうち、フラッシュメモリは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(IGFET)のゲート絶縁膜中に埋め込んだフローティングゲートを有し、記憶情報を表す電荷をこのフローティングゲートに蓄積することによって情報を記憶する。しかし、このようなフラッシュメモリでは、情報の書き込みや消去の際に、ゲート絶縁膜にトンネル電流を流す必要があり、比較的高い電圧が必要であるという欠点がある。
【0005】
これに対し、強誘電体メモリは、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも呼ばれ、強誘電体キャパシタが備える強誘電体膜のヒステリシス特性を利用して情報を記憶する。その強誘電体膜は、キャパシタの上部電極と下部電極の間に印加される電圧に応じて分極を生じ、その電圧を取り去っても自発分極が残留する。印加電圧の極性を反転すると、この自発分極も反転し、その自発分極の向きを「1」と「0」に対応させることで、強誘電体膜に情報が書き込まれる。この書き込みに必要な電圧はフラッシュメモリにおけるよりも低く、また、フラッシュメモリよりも高速で書き込みができるという利点がFeARMにはある。この利点を活かし、FeRAMとロジック回路とを混載してなる混載チップ(SOC: System On Chip)がICカード等への用途として検討されている。
【0006】
その強誘電体キャパシタが備えるキャパシタ誘電体膜は例えばPZT(Lead Zirconate Titanate: PbZrTiO3)膜よりなり、その成膜方法には種々ある。
【0007】
例えば、特許文献1では、ブタノール等の有機溶媒に有機金属化合物を溶解してなる溶液を用い、ゾル・ゲル法によりPZT膜を形成している。ゾル・ゲル法は、スパッタやMOCVD法等に比べて成膜コストが安いという利点があるので、広く研究開発されている。
【0008】
一方、強誘電体キャパシタの上部電極や下部電極としては、非特許文献1のように酸化イリジウム膜を形成することが多い。非特許文献1によれば、キャパシタ誘電体膜としてPZTを用いる場合に、上部電極と下部電極とを酸化イリジウムで形成することで、強誘電体キャパシタの疲労が抑えられ、良好な容量特性が確保されるとある。
【0009】
ところが、酸化イリジウム膜の表面には、異常成長した酸化イリジウムよりなる巨大結晶が生じ易いことが知られている。その巨大結晶は強誘電体キャパシタの電気的特性を劣化させ、ひいては半導体装置の歩留まりを低下させる恐れがある。
【0010】
このような問題を解決するために、特許文献2では、低スパッタパワーによる成膜と高スパッタパワーによる成長とを順に行う2ステップのスパッタ法を採用することにより、上記のような巨大結晶の発生を抑制している(段落番号0025)。
【0011】
また、特許文献3では、酸化イリジウム膜とイリジウム膜とをこの順に形成してなる積層膜を上部電極としている。特許文献3によれば、下層の酸化イリジウム膜によって容量特性の劣化が防止され、上層のイリジウム膜によって上部電極の抵抗が低減されるとある(段落番号0027)。
【0012】
また、特許文献4では、スパッタ法により形成されたPZT膜に対して1回目のアニールを行い、PZT膜を結晶化している(段落番号0035)。そして、PZT膜の上に酸化イリジウムよりなる上部電極を形成した後、その上部電極に対して2回目のアニールを行っている(段落番号0038)。
【0013】
そして、特許文献5では、共に酸化イリジウムよりなる第1の導電性酸化金属膜と第2の導電性酸化金属膜との積層膜を上部電極としている(段落番号0035〜0037)。
【0014】
同様に、特許文献6でも、上部電極として二層の酸化イリジウム膜を形成している(段落番号0033)。
【特許文献1】特開平11−292626号公報
【特許文献2】特開2001−127262号公報
【特許文献3】特開2000−91270号公報
【特許文献4】特開2002−246564号公報
【特許文献5】特開2005−183842号公報
【特許文献6】特開2006−73648号公報
【非特許文献1】APPL. Phys. Lett. 65, P.1522 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、強誘電体キャパシタが備えるキャパシタ誘電体膜の特性を向上させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記酸素流量比で調節する半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する。これらの成膜方法で形成された強誘電体膜は、膜中に酸素欠損が発生し易く、その強誘電体特性を向上させる余地がある。
【0018】
本願発明者が行った調査では、第1導電性酸化金属膜を形成する際におけるスパッタ雰囲気中の酸素流量比を増やすことで、強誘電体膜のスイッチング電荷量等の強誘電体特性が高められることが確認された。この事実を利用して、本発明では、スイッチング電荷量を上記の酸素流量比で調節することが可能となる。
【0019】
更に、ゾル・ゲル法は他の成膜方法と比較して成膜コストが安いので、半導体装置の製造コストが安価になるという利点も本発明にはある。
【0020】
また、本発明では、第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行うことによっても、強誘電体膜の酸素欠損が補われる。
【0021】
このように第1のアニールを行っても、第1導電性酸化金属膜が成膜の時点で既に結晶化しているので、第1導電性酸化金属膜と強誘電体膜との相互拡散に伴う界面層が発生し難い。よって、上部電極と下部電極との間に電圧を印加しても、界面層に印加される電圧が低減され、強誘電体膜にその電圧の大部分を印加することが可能となる。
【0022】
また、MOCVD法により形成された第1強誘電体膜と、ゾル・ゲル法により該第1強誘電体膜の上に形成された第2強誘電体膜とでキャパシタ誘電体膜を構成するようにしてもよい。このようにすると、強誘電体の結晶粒を反映して第1強誘電体膜の上面に形成された凹凸が第2強誘電体膜により埋め込まれる。そのため、キャパシタ誘電体膜と上部電極との界面がフラットになり、上部電極からキャパシタ誘電体膜に対して均一に電圧を印加することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ゾル・ゲル法により強誘電体膜を形成する場合において、上部電極の下層を構成する第1導電性酸化金属膜をスパッタ法で形成する際の酸素流量比を高めることにより、強誘電体膜のスイッチング電荷量を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(1)第1実施形態
図1〜図6は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0025】
最初に、図1(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0026】
まず、n型又はp型のシリコン(半導体)基板1の表面を熱酸化することにより素子分離絶縁膜2を形成し、この素子分離絶縁膜2でトランジスタの活性領域を画定する。このような素子分離構造はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)と呼ばれるが、これに代えてSTI(Shallow Trench Isolation)を採用してもよい。
【0027】
次いで、シリコン基板1の活性領域にp型不純物、例えばボロンを導入してpウェル3を形成した後、その活性領域の表面を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜4となる熱酸化膜を約6〜7nmの厚さに形成する。
【0028】
続いて、シリコン基板1の上側全面に、厚さ約50nmの非晶質シリコン膜と厚さ約150nmのタングステンシリサイド膜を順に形成する。なお、非晶質シリコン膜に代えて多結晶シリコン膜を形成してもよい。その後に、フォトリソグラフィによりこれらの膜をパターニングして、シリコン基板1上にゲート電極5を形成する。
【0029】
そのゲート絶縁膜5は、pウェル3上に互いに平行に二つ形成され、その各々はワード線の一部を構成する。
【0030】
更に、ゲート電極5をマスクにするイオン注入により、ゲート電極5の横のシリコン基板1にn型不純物としてリンを導入し、第1、第2ソース/ドレインエクステンション6a、6bを形成する。
【0031】
その後に、シリコン基板1の上側全面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極5の横に絶縁性サイドウォール7として残す。その絶縁膜として、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により酸化シリコン膜を形成する。
【0032】
続いて、この絶縁性サイドウォール7とゲート電極5をマスクにしながら、シリコン基板1に砒素等のn型不純物を再びイオン注入することにより、ゲート電極5の側方のシリコン基板1に第1、第2ソース/ドレイン領域(第1、第2不純物拡散領域)8a、8bを形成する。
【0033】
更に、シリコン基板1の上側全面に、スパッタ法によりコバルト膜等の高融点金属膜を形成する。そして、その高融点金属膜を加熱させてシリコンと反応させることにより、第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bにおけるシリコン基板1上にコバルトシリサイド層等の高融点金属シリサイド層9を形成し、各ソース/ドレイン領域8a、8bを低抵抗化する。
【0034】
その後に、素子分離絶縁膜2の上等で未反応となっている高融点金属層をウエットエッチングして除去する。
【0035】
ここまでの工程により、シリコン基板1の活性領域には、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、及び第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8b等によって構成される第1、第2MOSトランジスタTR1、TR2が形成されたことになる。
【0036】
次に、図1(b)に示すように、シリコン基板10の上側全面に、プラズマCVD法で酸窒化シリコン(SiON)膜を厚さ約200nmに形成し、それをカバー絶縁膜10とする。
【0037】
更に、TEOS(tetra ethoxy silane)ガスを使用するプラズマCVD法により、このカバー絶縁膜10の上に第1層間絶縁膜11として酸化シリコン(SiO2)膜を厚さ約600nmに形成する。この第1層間絶縁膜11を形成する際、ゲート絶縁膜4の水素劣化はカバー絶縁膜10によって防止される。
【0038】
その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法で第1層間絶縁膜11を約200nm程度研磨し、第1層間絶縁膜11の上面を平坦化する。
【0039】
次いで、基板温度を650℃とするアニールを第1層間絶縁膜11に対して30分間行うことにより第1層間絶縁膜11の脱ガスを行う。
【0040】
更に、第1層間絶縁膜11の上に、下部電極密着膜12としてスパッタ法によりアルミナ(Al2O3)膜を20nm程度の厚さに形成する。なお、アルミナ膜に代えて、チタン膜又は酸化チタン膜を下部電極密着膜12として形成してもよい。このうち、チタン膜は、基板温度を150℃として形成することができる。
【0041】
続いて、図1(c)に示すように、下部電極密着膜12の上に、スパッタ法により第1導電膜23としてプラチナ膜を形成する。この第1導電膜23は、後でパターニングされてキャパシタ下部電極になり、100℃又は350℃の成膜温度で約150nmの厚さに形成される。
【0042】
なお、下部電極密着膜12として厚さが約20nmのチタン膜を形成する場合は、プラチナよりなる第1導電膜23の厚さは約180nmとされる。
【0043】
また、第1導電膜23を形成する前に下部電極密着膜12を形成したので、第1導電膜23と第1層間絶縁膜11との密着力が高められる。
【0044】
次に、図2(a)に示すように、ゾル・ゲル法を用いて、PZT膜にLaをドープしてなるPLZT膜を第1導電膜23上に強誘電体膜24として形成する。
【0045】
そのゾル・ゲル法は次のようにして行われる。
【0046】
まず、湿度が40%の大気中において、回転数を5000rpmとするスピンコート法により第1強誘電体膜24b上にPLZT溶液(強誘電体溶液)を30秒間塗布し、PLZT塗膜を形成する。
【0047】
そのPLZT溶液は特に限定されないが、本実施形態ではPb、La、Zr、及びTiの各前駆体を10重量%の濃度でブタノール溶媒に溶解してなる溶液を使用する。そのような溶液は材料メーカから購入することができ、例えば、成膜後の組成比がPb:La:Zr:Ti=110:2:40:60になるように調節された三菱マテリアル製のものを使用すればよい。
【0048】
次いで、そのPLZT塗膜に対し、常圧(大気圧)の酸素雰囲気中において基板温度を200〜450℃、例えば240℃とするアニールを約5分間行う。
【0049】
これにより、PLZT塗膜中のブタノール溶媒が蒸発し、PLZT塗膜の堆積が収縮して強誘電体を構成する分子も含めたゲルの密度が上がり、PLZT塗膜が後で結晶化しやすくなる。このように溶媒を蒸発させるために行われるアニールはベークとも呼ばれる。
【0050】
そして、このようなPLZT塗膜の形成とベークとを所定回数、例えば4回繰り返すことにより、PLZTよりなる強誘電体膜24が120nmの厚さに形成される。
【0051】
なお、ゾル・ゲル法により形成される強誘電体膜24はPLZT膜に限定されない。
【0052】
ABO3型ペロブスカイト構造(A=Bi、Pb、Ba、Sr、Ca、Na、K、及び希土類元素のいずれか一つ、B=Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、及びCrのいずれか一つ)を有する強誘電性材料で強誘電体膜24を構成してもよい。
【0053】
強誘電体膜24としてPZT膜を形成する場合は、その膜中にランタン、カルシウム、ストロンチウム、及びニオブのいずれかを0.1〜5mol%の濃度でPZTに添加するのが好ましい。これらの元素がドープされた強誘電体膜24を後述のキャパシタに適用することで、キャパシタの耐疲労特性やインプリント特性の向上、リーク電流の低減、及び動作電圧の低電圧化等の効果を得ることができる。
【0054】
更に、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素で0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、及びSrBi4Ti4O15等のBi層状構造化合物も、結晶の一単位としてみればABO3型ペロブスカイト構造となるため、強誘電体膜24の構成材料として適用し得る。
【0055】
なお、この強誘電体膜24の結晶性を向上させるには、強誘電体膜24を構成するPLZTと格子定数が近い材料で第1導電膜23を構成するのが好ましい。そのような材料としては、上記のプラチナの他に、パラジウムや、PLZTと同じペロプスカイト構造を持つSrRuO3及びLaSrCoO3がある。一方、ルテニウムやイリジウム、及びこれらの酸化物はPLZTと格子定数が離れているため、これらの材料で第1導電膜23を構成すると、格子不整合によって強誘電体膜24の結晶性が悪くなる恐れがある。
【0056】
ここで、ゾル・ゲル法はスパッタ法に比べて成膜コストが安いので、本実施形態ではスパッタ法を採用せず、上記のようにゾル・ゲル法で強誘電体膜24を形成し、半導体装置の製造コストをなるべく安価にする。
【0057】
但し、ゾル・ゲル法により形成された強誘電体膜24は、成膜の時点では結晶化しておらず、強誘電体特性に乏しい。
【0058】
そこで、次の工程では、図2(b)に示すように、酸化性ガス含有雰囲気中で強誘電体膜24に対して常圧RTA(Rapid Thermal Anneal)を行い、分極電荷量が最も大きくなる(111)方向に強誘電体膜24を結晶化させる。このようなアニールは結晶化アニールと呼ばれる。
【0059】
結晶化アニールの雰囲気は酸化性ガス含有雰囲気であれば特に限定されない。本実施形態では100%の酸素雰囲気中で結晶化アニールを行う。なお、酸素ガスに代えて、オゾンガスや二酸化窒素ガスを酸化性ガスとして用いてもよい。また、これらのガスをアルゴンガス等の不活性ガスで希釈してもよい。
【0060】
また、結晶化アニールの昇温速度も特に限定されないが、本実施形態では昇温速度を40〜150℃/分とする。強誘電体膜24の結晶性を向上させるためには、その昇温速度はなるべく速く、例えば125℃/分とするのが好ましい。
【0061】
また、この結晶化アニールにおける最高基板温度が高すぎると、強誘電体膜24の上面から結晶化が進み、その上面付近にPZT結晶粒が不連続となる界面が形成される恐れがある。この界面よりも上側の層はSurface Layerと呼ばれる。Surface Layerの上面には結晶粒を反映した凹凸が形成され、その凹凸は強誘電体膜24に対して電圧を均一に印加することができない一因となる。
【0062】
従って、Surface Layerの形成を抑えるために、上記の結晶化アニールの最高基板温度の下限を強誘電体膜24の結晶化温度とし、且つその上限を結晶化温度よりも60℃高い温度とするのが好ましい。本実施形態では最高基板温度を500〜560℃、例えば550℃とする。
【0063】
このように最高基板温度の上限を比較的低温にすることで、強誘電体膜24の下面から結晶化が進むようになるので、強誘電体膜24の結晶粒が第1導電膜23の結晶性を引継ぐようになり、上記したsurface layerが発生し難くなると共に、強誘電体膜24の凹凸も抑えられるようになる。
【0064】
なお、この結晶化アニールにより、第1導電膜23を構成するプラチナ膜が緻密化し、第1導電膜23と強誘電体膜24との界面近傍におけるプラチナと酸素との相互拡散が抑制されるという利点も得られる。
【0065】
また、常圧RTAに代えて減圧RTAによりこの結晶化アニールを行ってもよい。減圧RTAでは、常圧RTAよりも強誘電体膜24を結晶化させ易いので、常圧RTAにおけるよりも最高基板温度の上限と下限をそれぞれ10℃程度低く抑えることができる。その結果、結晶化アニールの最高基板温度の下限を強誘電体膜24の結晶化温度よりも10℃低い温度とし、且つその上限を結晶化温度よりも50℃高い温度としても、強誘電体膜24におけるSurface Layerの発生を抑制することができる。
【0066】
次に、図2(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0067】
まず、酸素とアルゴンとの混合ガスをスパッタガスとし、且つイリジウムターゲットを使用するスパッタ法により、上記の強誘電体膜24の上に成膜の時点で既に結晶化している酸化イリジウム膜を厚さ約25nmに形成し、この酸化イリジウム膜を第1導電性酸化金属膜25dとする。
【0068】
このように成膜の時点で確実に結晶化している酸化イリジウム膜を形成するには、基板温度を300℃以上とすればよい。これより低い温度で酸化イリジウム膜を成膜すると、成膜時に結晶化が十分に進行せず、アモルファス状態の酸化イリジウム膜となる恐れがある。
【0069】
一方、基板温度が400℃よりも高くなると、酸化イリジウム膜中の酸素が不足するようになる。酸素不足の酸化イリジウム膜は外部の水分を還元して水素を発生してしまい、その水素によって強誘電体膜24が劣化してしまう。従って、強誘電体膜24の劣化を確実に防止するという点からすると、酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dは400℃以下の基板温度で形成するのが好ましい。
【0070】
本実施形態では、この酸化イリジウム膜を形成する際、アルゴン流量を140sccmにすると共に、酸素流量を60sccmとする。また、スパッタパワーは1kW〜2kWとする。
【0071】
この後に、酸素ガスとアルゴンガスとの混合雰囲気中において、基板温度を725℃、処理時間を60秒とする条件で、第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行う。このRTAにおけるガス流量は特に限定されないが、本実施形態では酸素流量を20sccmにし、アルゴン流量を2000sccmにする。但し、酸素の流量比が20%を超えると、酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dが酸素によって還元されて表面荒れが発生するので、20%以下の酸素流量比でこのアニールを行うのが好ましい。
【0072】
このようなRTAにより、強誘電体膜24が完全に結晶化すると共に、スパッタ法により第1導電性酸化金属膜25dを形成する際に強誘電体膜24が受けたダメージが回復する。また、強誘電体膜24の酸素欠損もこのRTAによって補われ、強誘電体膜24の強誘電体特性が高められる。
【0073】
特に、このように強誘電体膜24の全面を第1導電性酸化金属膜25dで覆った状態でアニールすることにより、強誘電体膜24の強誘電体特性の維持に必須の鉛原子が強誘電体膜24からアニール雰囲気に逃げ難くなるので、キャパシタをパターニングした後にアニールする場合よりもアニールの効果が高まる。
【0074】
また、第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面がフラットになり、後述の上部電極から強誘電体膜24に均一に電圧を印加できるという利点もこのアニールによって得られる。
【0075】
なお、このときのアニール雰囲気は、酸化性ガス含有雰囲気であれば特に限定されない。その酸化性ガスとしては、上記の酸素ガスの他に、オゾンガスや二酸化窒素ガスもある。
【0076】
その後に、第1導電性酸化金属膜25dの上に第2導電性酸化金属膜25eとしてスパッタ法で酸化イリジウム膜を約200nmの厚さに形成する。そのスパッタ法では、イリジウムターゲットが使用されると共に、スパッタガスとして酸素とアルゴンとの混合ガスが使用される。
【0077】
第1導電性酸化金属膜25dと異なり、第2導電性酸化金属膜25eを構成する酸化イリジウム膜は成膜の時点で結晶化している必要はない。本実施形態では、第2導電性酸化金属膜25eを形成する際の基板温度を室温(20℃)にし、アモルファス状態の酸化イリジウム膜を形成するようにする。
【0078】
ところで、上記した酸化イリジウムのスパッタでは、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム原子がスパッタ雰囲気中で酸化されることで基板上に酸化イリジウムが堆積する。そのため、堆積した酸化イリジウムの中には、雰囲気中における酸化が不十分なものも含まれ、酸化イリジウム膜全体としては化学量論組成(IrO2)よりも酸素が少ない状態になり易い。
【0079】
ところが、第2導電性酸化金属膜25eにおいて酸素が不足すると、第2導電性酸化金属膜25eの触媒作用が高まるため、外部の水分が第2導電性酸化金属膜25eに触れて水素が発生するようになる。水素は、強誘電体膜24を還元してその強誘電体特性を劣化させるという問題があるため、FeRAMの製造工程では水素の発生を極力抑える必要がある。
【0080】
従って、水素の発生を防止するという観点からすると、第2導電性酸化金属膜25eの酸化数は、第1導電性酸化金属膜25dの酸化数よりも大きいのが好ましい。
【0081】
そこで、本実施形態では、第2導電性酸化金属膜25eの成膜時に、第1導電性酸化金属膜25dの成膜時よりも酸素の流量比を多くすることで、酸化イリジウムの組成を化学量論組成(IrO2)に近づけ、第2導電性酸化金属膜24eの触媒作用を抑えるようにする。
【0082】
以上により、第1導電性酸化金属膜25dと第2導電性酸化金属膜25eとで構成される第2導電膜25が強誘電体膜24上に形成されたことになる。
【0083】
なお、第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eの構成材料は酸化イリジウムに限定されない。第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eは、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成され得る。更に、これらの酸化物を積層して第2導電膜25としてもよい。
【0084】
次いで、図3(a)に示すように、シリコン基板1の裏面を洗浄した後、フォトリソグラフィとエッチングにより上部電極用導電膜25をパターニングして上部電極25aを形成する。そして、このパターニングにより強誘電体膜24が受けたダメージを回復させるために、強誘電体膜24に対する回復アニールを縦型炉内で行う。この回復アニールは酸素含有雰囲気において行われ、その条件は、例えば、基板温度650℃、処理時間60分である。
【0085】
続いて、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより強誘電体膜24をパターニングし、PLZT等の強誘電体材料で構成されるキャパシタ誘電体膜24aを形成する。このパターニングでキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージは回復アニールによって回復される。この回復アニールは、上記と同様に縦型炉を用いて酸素含有雰囲気中で行われ、その条件として基板温度350℃、処理時間60分が採用される。
【0086】
次に、図3(c)に示すように、シリコン基板1の上側全面に、水素や水分等の還元性物質からキャパシタ誘電体膜24aを保護するための第1アルミナ膜31をスパッタ法で厚さ約50nmに形成する。
【0087】
ここで、図3(b)で説明した回復アニールを予め行ったことにより、第1アルミナ膜31に膜剥がれが発生し難くなる。
【0088】
そして、第1アルミナ膜31の形成時にキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるために、酸素含有雰囲気中で基板温度を550℃とする回復アニールを約60分間行う。この回復アニールは、例えば縦型炉を用いて行われる。
【0089】
次いで、図4(a)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、第1導電膜23と第1アルミナ膜31とをパターニングし、キャパシタ誘電体膜24aの下の下部第1導電膜23を下部電極23aにすると共に、この下部電極23aを覆うように第1アルミナ膜31を残す。
【0090】
また、下部電極23aは、キャパシタ誘電体膜24aからはみ出したコンタクト領域CRを有し、このコンタクト領域CRにおいて、後述の金属配線と下部電極23aとが電気的に接続されることになる。
【0091】
その後に、プロセス中にキャパシタ誘電体24aが受けたダメージを回復させるために、縦型炉において、基板温度550℃、処理時間60分の条件で、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜28aに回復アニールを施す。
【0092】
ここまでの工程により、シリコン基板1のセル領域には、下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aをこの順に積層してなるキャパシタQが形成されたことになる。
【0093】
続いて、図4(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面に、キャパシタ誘電体膜24aを保護するための第2アルミナ膜32をスパッタ法で約20nmの厚さに形成する。この第2アルミナ膜32は、その下の第1アルミナ膜32と協同して、水素や水分等の還元性物質がキャパシタ誘電体膜24aに至るのを防止し、キャパシタ誘電体膜24aが還元されてその強誘電体特性が劣化するのを抑えるように機能する。
【0094】
その後に、基板温度550℃、処理時間60分の条件で、酸素含有雰囲気となっている縦型炉内においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。
【0095】
この回復アニールにより、キャパシタQのリーク電流が低減するという利点も得られる。
【0096】
更に、図4(c)に示すように、シラン(SiH4)ガスを使用するHDPCVD(High Density Plasma CVD)法により、上記の第2アルミナ膜32上に酸化シリコン膜を厚さ約1500nmに形成し、その酸化シリコン膜を第2層間絶縁膜41とする。この後に、第2層間絶縁膜41の上面をCMP法で研磨して平坦化する。
【0097】
その後に、第2層間絶縁膜41に対してN2Oプラズマ処理を行うことにより、第2層間絶縁膜41を脱水すると共に、第2層間絶縁膜41の上面を僅かに窒化して水分の再吸着を防止する。
【0098】
次に、図5(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0099】
まず、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、各絶縁膜10〜12、31、32、41をパターニングして、第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bの上のこれらの膜に第1、第2ホール41a、41bを形成する。
【0100】
その後、第1、第2コンタクトホール41a、41bのそれぞれの内面と第2層間絶縁膜41の上面に、スパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜をそれぞれ厚さ20nm、50nmに形成し、これらの膜をグルー膜(密着膜)とする。次いで、このグルー膜の上に、六フッ化タングステンガスを使用するCVD法でタングステン膜を形成し、このタングステン膜で第1、第2コンタクトホール41a、41bを完全に埋め込む。
【0101】
その後に、第2層間絶縁膜41上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法で研磨して除去し、これらの膜を第1、第2コンタクトホール41a、41b内のみに第1、第2導電性プラグ61a、61bとして残す。各導電性プラグ61a、61bは、それぞれ第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bと電気的に接続される。
【0102】
ここで、第1、第2導電性プラグ61a、61bは、非常に酸化され易いタングステンを主に構成されているため、酸素含有雰囲気中で容易に酸化してコンタクト不良を引き起こす恐れがある。
【0103】
そこで、次の工程では、図5(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面に酸化防止絶縁膜55としてCVD法により酸窒化シリコン膜を厚さ約100nmに形成し、この酸化防止絶縁膜55により第1、第2導電性プラグ61a、61bの酸化を防止する。
【0104】
その後、フォトリソグラフィとエッチングにより、酸化防止絶縁膜55から第1アルミナ膜31までをパターニングする。これにより、下部電極23aのコンタクト領域CR上のこれらの絶縁膜に第3ホール41cが形成されると共に、上部電極25aの上に第4ホール41dが形成される。
【0105】
その後に、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるために、酸素含有雰囲気となっている縦型炉にシリコン基板1を入れ、基板温度500℃、処理時間60分の条件で、キャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。
【0106】
次に、図6に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0107】
まず、第2層間絶縁膜41と第1、第2導電性プラグ61a、61bのそれぞれの上面に、スパッタ法により金属積層膜を形成する。本実施形態では、その金属積層膜として、約150nmの厚さの窒化チタン膜、約550nmの厚さの銅含有アルミニウム膜、約5nmの厚さのチタン膜、及び約150nmの厚さの窒化チタン膜をこの順に形成する。この金属積層膜は、キャパシタQ上の第3、第4ホール41c、41d内にも形成される。
【0108】
そして、フォトリソグラフィとエッチングでこの金属積層膜をパターニングすることにより、キャパシタQや導電性プラグ61a、61bに電気的に接続された金属配線62を形成する。
【0109】
その後、例えば窒素雰囲気となっている縦型炉を用いて、基板温度350℃、N2流量20リットル/分、及び処理時間30分の条件で第2層間絶縁膜41をアニールして脱水する。
【0110】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成した。
【0111】
上記した本実施形態では、図2(c)に示したように、上部電極25aとなる第2導電膜25が、いずれも酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dと第2導電性酸化金属膜25eとを有する。
【0112】
そのうち、第1導電性酸化金属膜25dは、既述のように、酸素を含むスパッタガスを使用するスパッタ法で形成する。そのスパッタガス中の酸素は、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム粒を酸化する役割だけでなく、ゾル・ゲル法により形成された強誘電体膜24中の酸素欠損を補う役割も担う。
【0113】
特に、ゾル・ゲル法で形成された強誘電体膜24は、スパッタ法で形成された強誘電体膜と比較して膜中の酸素が欠損し易い。従って、本実施形態のようにゾル・ゲル法で強誘電体膜24bを形成する場合は、第1導電性酸化金属膜25dを成膜する際の酸素流量比を最適化することにより、強誘電体膜24の酸素欠損を最大限補いその強誘電体特性を高める必要がある。
【0114】
なお、本明細書における酸素流量比とは、スパッタガスに占める酸素ガスの割合の百分率をいう。
【0115】
本願発明者は、どのような酸素流量比で第1導電性酸化金属膜25dを形成する場合に、強誘電体膜24の強誘電体特性が高められるかを調査した。
【0116】
その結果を図7に示す。
【0117】
この調査では、長辺の長さが1.60μmで短辺の長さが1.15μmの長方形の強誘電体キャパシタ(セルキャパシタ)をシリコン基板上に1428個形成し、その後、三層目の金属配線まで形成した。
【0118】
また、強誘電体膜24の強誘電体特性としてスイッチング電荷量を調べた。図7の横軸の印加電圧は、キャパシタの上部電極25aと下部電極23aとの間に印加した電圧を示す。
【0119】
そして、各サンプルにおける強誘電体膜24としては、4層のPLZT塗膜を結晶化して得られた厚さ120nmのPLZT膜を用いた。PLZT塗膜に対する結晶化アニール時の基板温度は本実施形態と同じ550℃である。また、PLZT膜におけるLaの濃度は2.0mol%である。
【0120】
図7における本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際のスパッタガスの流量を次のように設定した。
【0121】
・本実施形態1
アルゴン流量:150sccm
酸素流量:50sccm(酸素流量比25%)
・本実施形態2
アルゴン流量:140sccm
酸素流量:60sccm(酸素流量比30%)
・本実施形態3
アルゴン流量:120sccm
酸素流量:80sccm(酸素流量比40%)
なお、本実施形態1〜3のいずれにおいても、第1導電性酸化金属膜25dを成膜する際の基板温度は300℃である。そして、第1導電性酸化金属膜25dに対し、アルゴンと酸素の混合雰囲気中で基板温度725℃、処理時間60秒の条件でRTAを行った。
【0122】
これに対し、比較例1では、プラチナ膜と酸化イリジウム膜とをこの順に形成してなる膜を上部電極として形成した。
【0123】
また、比較例2では、いずれも室温で形成された二層の酸化イリジウム膜を積層してなる膜を上部電極として形成した。各酸化イリジウム膜は、室温で形成されるため成膜の時点ではアモルファス状態となるが、一層目の酸化イリジウム膜については成膜後にRTAを行って結晶化させた。
【0124】
図7に示されるように、プラチナ膜を有する上部電極を形成する比較例1では、キャパシタがかなり劣化し、各工程を終了した後のスイッチング電荷量Qswがかなり低い。これは、金属配線49aを形成する際の熱により、第2層間絶縁膜41に含まれる水がプラチナ膜によって還元されて水素となり、この水素によってキャパシタが劣化したためと考えられる。
【0125】
一方、上部電極として酸化イリジウム膜の積層膜を形成する比較例2では、プラチナによる触媒作用が無いため、比較例1に比べてスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0126】
但し、比較例2では、一層目の酸化イリジウム膜に対して結晶化のためのRTAを行う際に、酸化イリジウム膜とPLZT膜との間に相互拡散に伴う比較的厚い界面層が形成される。その界面層は、常誘電体層であるため、キャパシタ誘電体膜の強誘電体特性には寄与しない。よって、比較例2では、キャパシタに印加する電圧の一部が上記の界面層に印加されてしまい、PLZT膜に印加される電圧が少なくなって、本実施形態よりもスイッチング電荷量Qswが小さくなってしまう。
【0127】
これに対し、本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dを300℃という高温で形成するため、成膜の時点で第1導電性酸化金属膜25dは既に結晶化している。従って、第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行っても、PLZT膜と第1導電性酸化金属膜25dとの間に比較例2のような界面層が形成され難くなるため、界面層による電圧の吸収が抑えられ、比較例2よりもスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0128】
更に、本実施形態1〜3では、第1導電性酸化金属膜25dに対して酸素含有雰囲気中でRTAを行うため、第1導電性酸化金属膜25dの形成時にPLZT膜が受けたダメージが回復すると共に、PLZT膜の酸素欠損が補われ、スイッチング電荷量Qswを効果的に高めることができる。
【0129】
このような酸素欠損の補償を効果的に行うためには、第1導電性酸化金属膜25dはなるべく薄く、例えば10〜50nmとし、RTAの雰囲気中の酸素が第1導電性酸化金属膜25dを通り易くするのが好ましい。
【0130】
また、このRTAにおける基板温度が650℃よりも低いと、酸素が第1導電性酸化金属膜25dを通り難くなり、PLZT膜の酸素欠損が補償され難くなるので、このRTAでの基板温度の下限は650℃とするのが好ましい。
【0131】
但し、基板温度が高すぎると、第1導電性酸化金属膜25dを構成する酸化イリジウムが還元されて、酸化数が2よりも小さく不安定な酸化イリジウムが生成されるので、このRTAにおける基板温度の上限は800℃とするのが好ましい。
【0132】
また、本実施形態1〜3のそれぞれを比較すると、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際のスパッタガスにおける酸素流量比が高いほどスイッチング電荷量Qswが大きくなる。
【0133】
これは、酸素流量比が高いと、第1導電性酸化金属膜25dを構成する酸化イリジウム(IrOx)のxが2に近づいて安定な状態の酸化イリジウム膜が形成されるため、第1導電性酸化金属膜25dに対するアニールの際に、アニール雰囲気中の酸素が第1導電膜25dに捕獲されずに効果的にPLZT膜に供給されるためと考えられる。
【0134】
このような傾向は、スパッタ法でPZT膜を形成する特許文献6では見られない。例えば、特許文献6の図14、図15、図18A、及び図18Bには、上部電極の一層目の酸化イリジウム膜の成膜条件を様々に振った場合のPZT膜のスイッチング電荷量Qswが調査されている。
【0135】
そのような成膜条件のうち、本実施形態のように成膜の時点で酸化イリジウムが確実に結晶化するのは、基板温度を300℃とする条件である。上記した特許文献6の各図において、基板温度を300℃とする条件では、スパッタ雰囲気中の酸素流量が30%から60%に上昇すると、PZT膜のスイッチング電荷量が減少している。この傾向は、図7に示した本実施形態1〜3とは全く逆の傾向である。
【0136】
本実施形態1〜3では、ゾル・ゲル法によりPLZT膜を形成したため、特許文献6とは逆の傾向が現れたものと考えられる。
【0137】
従って、キャパシタ誘電体膜24aをゾル・ゲル法により形成する本実施形態では、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することによりキャパシタ誘電体膜24aのスイッチング電荷量が増大することを利用し、スイッチング電荷量Qswを上記の流量比で調節することができる。
【0138】
そして、スイッチング電荷量Qswを十分に高めるには、第1導電性酸化金属膜25dを形成する際の酸素流量比を20%以上とするのが好ましい。
【0139】
なお、ゾル・ゲル法に代えて、有機金属分解法やCSD(Chemical Solution Deposition)法で強誘電体膜24を形成する場合でも、強誘電体膜24中の酸素が不足し易い。従って、これらの成膜方法により強誘電体膜24を形成する場合にも、上記と同じように第1導電性酸化金属膜25dの形成時の酸素流量を増やすことで、強誘電体膜24のスイッチング電荷量を高めるのが好ましい。
【0140】
ところで、成膜の時点で結晶化させるべく高温で形成される第1導電性酸化金属膜25dは、異常成長を起こし易く、結晶の乱れが発生し易い。
【0141】
図8は、成膜温度を300℃にし、酸素流量とアルゴン流量をそれぞれ80sccm、120sccmとして形成された厚さ50nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。このような流量によれば、酸素流量比は40%となる。
【0142】
一方、図9は、図8と同じ条件で形成された厚さ100nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【0143】
なお、図8及び図9のいずれにおいても顕微鏡の倍率は25倍である。
【0144】
図8と図9とを比較して分かるように、膜厚が50nmの酸化イリジウムの表面(図8)は非常に綺麗であるのに対し、膜厚が100nmの場合(図9)では表面に黒い斑点が多数発生している。その黒い斑点は、異常成長した酸化イリジウム粒を表している。
【0145】
これらの結果より、第1導電性酸化金属膜25dの異常成長を防止するという点からすると、第1導電性酸化金属膜25dの厚さを50nm以下にするのが好ましい。
【0146】
但し、第1導電性酸化金属膜25dの厚さが10nm未満になると、強誘電体膜24上に第1導電性酸化金属膜25dを均一に形成することができないので、第1導電性酸化金属膜25dの膜厚の下限は10nmとするのが好ましい。
【0147】
一方、酸素流量比を上記よりも更に高めて50%とした調査では、40nmの酸化イリジウム膜でも異常成長が見られた。なお、その調査では、酸素とアルゴンの流量を共に100sccmとした。従って、酸素流量比を50%未満とすることによっても、第1導電性酸化金属膜25dの異常成長を防止することができる。
【0148】
以上説明したように、本実施形態では、図7に示したように、低電圧から飽和電圧にわたって高いスイッチング電荷量が得られると共に、図7のグラフの勾配が各比較例よりも急となるため、低電圧動作のキャパシタを提供することが可能となる。
【0149】
また、第1導電性酸化金属膜25dに対するアニールにより、強誘電体膜24の酸素欠損が補われるだけでなく、第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面がフラットになるため、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに均一に電圧を印加できると共に、キャパシタQの疲労特性やインプリント特性も向上させることができ、低電圧動作が可能な次世代のFeRAMを提供することができる。
【0150】
(2)第2実施形態
図10〜図21は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0151】
この半導体装置は、微細化に有利なスタック型のFeRAMであり、以下のようにして作成される。
【0152】
最初に、図10(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0153】
まず、n型又はp型のシリコン基板1表面に、トランジスタの活性領域を画定するSTI用の溝を形成し、その中に酸化シリコン等の絶縁膜を埋め込んで素子分離絶縁膜2とする。なお、素子分離構造はSTIに限られず、LOCOS法で素子分離絶縁膜2を形成してもよい。
【0154】
次に、第1実施形態の図1(a)と同じ工程を行うことにより、シリコン基板1の活性領域に、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、及び第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8b等によって構成される第1、第2MOSトランジスタTR1、TR2を形成する。
【0155】
続いて、プラズマCVD法により、シリコン基板1の上側全面に窒化シリコン(SiN)膜を厚さ約80nmに形成し、それをカバー絶縁膜10とする。次いで、このカバー絶縁膜10の上に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により第1層間絶縁膜11として酸化シリコン膜を厚さ約1000nmに形成する。
【0156】
次いで、第1層間絶縁膜11の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して平坦化する。このCMPの結果、第1層間絶縁膜11の厚さは、シリコン基板1の平坦面上で約700nmとなる。
【0157】
そして、フォトリソグラフィによりカバー絶縁膜10と第1層間絶縁膜11とをパターニングして第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bの上に直径が0.25μmのコンタクトホールを形成する。更に、このコンタクトホール内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第1層間絶縁膜11上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜をコンタクトホール内にのみ第1、第2導電性プラグ32a、32bとして残す。
【0158】
これらの第1、第2導電性プラグ32a、32bは、それぞれ第1、第2ソース/ドレイン領域8a、8bと電気的に接続される。
【0159】
なお、上記のグルー膜は、厚さ約30nmのチタン膜と厚さ約20nmの窒化チタン膜とをこの順に形成してなる。また、CMP前のタングステン膜は、第1層間絶縁膜11上で約300nmの厚さを有する。
【0160】
ここで、第1、第2導電性プラグ32a、32bは、酸化され易いタングステンを主にして構成され、プロセス中で酸化されるとコンタクト不良を起こす恐れがある。
【0161】
そこで、各導電性プラグ32a、32bの酸化を防ぐ酸化防止絶縁膜14として、これらのプラグ32a、32bと第1層間絶縁膜11の上にプラズマCVD法により酸窒化シリコン膜を厚さ約130nmに形成する。
【0162】
なお、酸窒化シリコン膜に代えて、窒化シリコン膜やアルミナ膜を酸化防止絶縁膜14として形成してもよい。
【0163】
その後に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により、酸化防止絶縁膜14の上に酸化シリコン膜を厚さ約300nmに形成し、この酸化シリコン膜を下地絶縁膜15とする。
【0164】
次に、図10(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0165】
まず、下地絶縁膜15と酸化防止絶縁膜14とをパターニングすることにより、第1導電性プラグ32aの上方のこれらの絶縁膜に第1ホール15aを形成する。
【0166】
次いで、この第1ホール15a内と下地絶縁膜15の上にスパッタ法によりグルー膜35として窒化チタン膜を形成する。
【0167】
更に、CVD法を用いて、このグルー膜35の上にプラグ用導電膜36としてタングステン膜を形成し、このプラグ用導電膜36で第1ホール15aを完全に埋め込む。
【0168】
続いて、図10(c)に示すように、下地絶縁膜15の上の余分なグルー膜35とプラグ用導電膜36とをCMP法により研磨して除去する。これにより、グルー膜35とプラグ用導電膜36は、第1導電性プラグ32aと電気的に接続された第3導電性プラグ36aとして第1ホール15a内に残される。
【0169】
このCMPでは、研磨対象であるグルー膜35とプラグ用導電膜36の研磨速度が下地の下地絶縁膜15よりも速くなるようなスラリ、例えばCabot Microelectronics Corporation製のW2000を使用する。そして、下地絶縁膜15上に研磨残を残さないために、このCMPの研磨量は各膜35、36の合計膜厚よりも厚く設定され、このCMPはオーバー研磨となる。
【0170】
次に、図11(a)に示すように、酸化シリコンよりなる下地絶縁膜15を窒素含有プラズマ、例えばアンモニア(NH3)プラズマに曝し、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させる。
【0171】
このアンモニアプラズマ処理では、例えば、シリコン基板1に対して約9mm(350mils)だけ離れた位置に対向電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置が使用される。そして、266Pa(2Torr)の圧力下において基板温度を400℃に保持しながら、チャンバ内にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、シリコン基板1側に13.56MHzの高周波電力を100Wのパワーで、また上記の対向電極に350kHzの高周波電力を55Wのパワーで60秒間供給することにより処理が行われる。
【0172】
続いて、図11(b)に示すように、下地絶縁膜15と第3導電性プラグ36aのそれぞれの上にチタン膜を厚さ約20nmに形成し、このチタン膜を導電性密着膜16とする。
【0173】
この導電性密着膜16の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1とチタンターゲットとの距離が60mmに設定されたスパッタチャンバを用いて、0.15Paのアルゴン雰囲気中で基板温度を20℃にする。そして、2.6kWのDC電力をチャンバに5秒間供給することにより、チタンよりなる導電性密着膜16を形成する。
【0174】
ここで、アンモニアプラズマ処理(図11(a)参照)を予め行い、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させておいたので、下地絶縁膜15上に堆積したチタン原子は下地絶縁膜15表面の酸素原子に捕獲され難くい。そのため、チタン原子が下地絶縁膜15の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる導電性密着膜16を形成することが可能となる。
【0175】
その後に、導電性密着膜16に対し、窒素雰囲気中において基板温度を650℃、処理時間を60秒とするRTA(Rapid Thermal Anneal)を行う。これにより、チタンよりなる導電性密着膜16が窒化され、(111)方向に配向した窒化チタンで導電性密着膜16が構成されることになる。
【0176】
なお、導電性密着膜16の材料は窒化チタンに限定されない。導電性密着膜16は、チタン、窒化チタン、プラチナ、イリジウム、レニウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム及びオスミウムのいずれか、又はこれらの合金で構成され得る。また、酸化プラチナ、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、及び酸化パラジウムのいずれかで導電性密着膜16を構成してもよい。
【0177】
次に、図12(a)に示すように、この導電性密着膜16の上に導電性酸素バリア膜17として窒化チタンアルミニウム(TiAlN)膜を反応性スパッタ法で100nmの厚さに形成する。
【0178】
窒化チタンアルミニウムよりなる導電性酸素バリア膜17は、酸素透過防止機能に優れており、その下の第3導電性プラグ36aが酸化してコンタクト不良が発生するのを防止する役割を担う。
【0179】
この導電性酸素バリア膜17の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、チタンとアルミニウムとの合金ターゲットを使用し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガスをスパッタガスとして用いる。そして、アルゴンガスと窒素ガスのそれぞれの流量を40sccm、100sccmにし、253.3Paの圧力下、400℃の基板温度、そして1.0kWのスパッタパワーで導電性酸素バリア膜17を形成する。
【0180】
更に、導電性酸素バリア膜17の材料は窒化チタンアルミニウムに限定されない。導電性酸素バリア膜17は、窒化チタンアルミニウム、酸窒化チタンアルミニウム(TiAlON)、窒化タンタルアルミニウム(TaAlN)、及び酸窒化タンタルアルミニウム(TaAlON)のいずれかで構成され得る。
【0181】
その導電性酸素バリア膜17は、導電性密着膜16によって下地との密着強度が高められる。なお、密着強度が問題にならないなら、導電性密着膜16を省いてもよい。その場合は、第3導電性プラグ36aと下地絶縁膜15のそれぞれの上面に導電性酸素バリア膜17が直接形成されることになる。
【0182】
続いて、図12(b)に示すように、厚さが50〜100nmのイリジウム膜23c、厚さが約30nmの酸化イリジウム膜23d、及び厚さが約50nmのプラチナ膜23eをこの順にスパッタ法に形成し、これらの積層膜を第1導電膜23とする。
【0183】
その第1導電膜23を構成するイリジウム膜23cは、酸素のバリア性に優れているため第3導電性プラグ36aに対する酸素バリア膜として機能し、例えば基板温度が400℃の下で形成される。
【0184】
また、酸化イリジウム膜23dは、基板温度が50℃と低温で形成されるため結晶化せず、アモルファス状態である。このため、自己配向性導電膜であるプラチナ膜23eは、アモルファスな酸化イリジウム膜23dによって配向が乱されることが無く、(111)方向に良好に配向する。
【0185】
なお、最上層のプラチナ膜23eに代えて、プラチナを含む合金膜を形成するようにしてもよい。
【0186】
更に、イリジウム膜、ルテニウム膜、酸化イリジウム膜、酸化ルテニウム膜、SrRuO3膜、及びLaSrCoO3膜のいずれかの単層膜を第1導電膜23として形成してもよい。
【0187】
その後に、アルゴン雰囲気中で基板温度を650℃以上にするRTAを第1導電膜23に対して60秒間行う。このRTAにより、第1導電膜23を構成する各膜23b〜23d同士の密着性や、第1導電膜23と導電性酸素バリア膜17との密着性が向上すると共に、第1導電膜23の結晶性も改善される。なお、アルゴン雰囲気に代えて、窒素雰囲気でこのRTAを行ってもよい。
【0188】
次に、図13(a)に示すように、第1導電膜23の上にMOCVD(Metal Organic CVD)法によりPZT膜を厚さ約80nmに形成し、このPZT膜を第1強誘電体膜24bとする。
【0189】
そのMOCVD法は次のようにして行われる。
【0190】
まず、不図示の反応容器内のサセプタ上にシリコン基板1を載せる。
【0191】
次いで、反応容器内に酸素を導入すると共に、シリコン基板1を昇温し、基板温度を620℃程度に安定させる。
【0192】
そして、気化されたTHF溶媒を反応容器に導入する。これにより、第1導電膜23は溶媒ガスの雰囲気に曝されることになる。
【0193】
このように、原料ガスの供給前に溶媒ガスを供給することで、気化器や配管等で原料ガスが固化するのを防止でき、配管詰まり等を回避することができる。なお、THFに代えて、気化した酢酸ブチルを溶媒ガスとして用いてもよい。
【0194】
更に、Pb、Zr、及びTiの各液体原料を気化器において気化して原料ガスを作製し、各原料ガスを反応容器内に導入することで、PZT膜の成膜を開始する。
【0195】
ここで、各液体原料は、例えば、Pb(DPM)2(化学式Pb(C11H19O2)2))、Zr(dmhd)4(化学式Zr(C9H15O2)4)、及びTi(O−iOr)2(DPM)2(化学式Ti(C3H7O)2(C11H19O2)2)のそれぞれをTHF(Tetra Hydro Furan: C4H8O)溶媒中にいずれも0.3mol/lの濃度で溶解することで作製され得る。また、気化された原料ガスの流量は特に限定されないが、本実施形態では、上記核液体原料を気化器にそれぞれ0.326ml/分、0.200ml/分、及び0.200ml/分の流量で供給して気化させることにより、Pb、Zr、及びTiの原料ガスを得る。
【0196】
そして、圧力が665Pa(5Torr)の下で、このような状態を約620秒間維持することにより、上記したPZT膜が80nmの厚さに形成される。
【0197】
このようにMOCVD法で形成された第1強誘電体膜24bは、成膜の時点で既に結晶化しており、その配向の向きが(111)方向に揃っているため、第1強誘電体膜24bを結晶化させるための結晶化アニールは不要である。
【0198】
また、MOCVD法を用いると、第1強誘電体膜24bを薄膜化してもその強誘電体特性が低下しないので、半導体装置の高集積化に有利となる。このような利点は、キャパシタの高集積化に有利な本実施形態のスタック型のFeRAMにおいて特に得られ易い。
【0199】
ところで、このように第1強誘電体膜24bが結晶化していると、その結晶粒を反映した凹凸が第1強誘電体膜24bの上面に形成される。そのような凹凸が形成されたままだと、後述の上部電極から第1強誘電体膜24bに対して均一に電圧を印加できないという不都合がある。
【0200】
そこで、本実施形態では、図13(b)に示すように、第1強誘電体膜24bの上にゾル・ゲル法で第2強誘電体膜24cを20〜30nmの厚さに形成し、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を第2強誘電体膜24cで埋め込むようにする。
【0201】
ゾル・ゲル法による第1強誘電体膜24bの形成は第1実施形態と同じ条件で行われ、Pb、La、Zr、及びTiの各前駆体を10重量%の濃度でブタノール溶媒に溶解してなる溶液が使用される。そして、スピンコート法によりこの溶液を第1強誘電体膜24b上に塗布してPLZT塗膜を一層だけ形成した後、常圧の酸素雰囲気中において基板温度を200〜450℃、例えば240℃とするベークを約5分間行い、上記の第2強誘電体膜24cを得る。
【0202】
以上により、第1導電膜23の上に第1強誘電体膜24bと第2強誘電体膜24cとで構成される強誘電体膜24が形成されたことになる。
【0203】
このうち、ゾル・ゲル法で形成された第2強誘電体膜24cは、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を埋め込む目的で形成されるため、その厚さを第1強誘電体膜24bよりも薄くし、第1強誘電体膜24bを主にして強誘電体膜24を構成するのが好ましい。
【0204】
なお、ゾル・ゲル法により形成される第2強誘電体膜24cはPLZT膜に限定されない。
【0205】
PLZTと同様のABO3型ペロブスカイト構造(A=Bi、Pb、Ba、Sr、Ca、Na、K、及び希土類元素のいずれか一つ、B=Ti、Zr、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、及びCrのいずれか一つ)を有する強誘電性材料で第2強誘電体膜24cを構成してもよい。
【0206】
更に、(Bi1-xRx)Ti3O12(Rは希土類元素で0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、及びSrBi4Ti4O15等のBi層状構造化合物も第2強誘電体膜24cの構成材料として使用し得る。
【0207】
ここで、ゾル・ゲル法により形成された第2強誘電体膜24cは、成膜の時点では結晶化していないので、このままでは強誘電体特性に乏しい。
【0208】
そこで、次の工程では、図14(a)に示すように、酸素含有雰囲気中において第2強誘電体膜24cに対して結晶化アニールを行い、第2強誘電体膜24cを結晶化させる。
【0209】
その結晶化アニールは常圧RTAにより行われる。そして、流量が共に1000sccmの酸素とアルゴンとをアニール雰囲気中に供給し、30〜120秒、例えば90秒の処理時間で結晶化アニールを行う。
【0210】
また、結晶化アニールの昇温速度も特に限定されないが、本実施形態では昇温速度を40〜150℃/分とする。第2強誘電体膜24cの結晶性を向上させるためには、その昇温速度はなるべく速く、例えば125℃/分とするのが好ましい。
【0211】
また、この結晶化アニールにおける最高基板温度が高すぎると、第1実施形態で説明したSurface Layerが第2強誘電体膜24cに形成され、第2強誘電体膜24cと第1強誘電体膜24bのそれぞれの結晶粒が繋がらなくなる恐れがある。
【0212】
従って、Surface Layerの形成を抑えるために、上記の結晶化アニールの最高基板温度の下限を第2強誘電体膜24bの結晶化温度(520℃)とし、且つその上限を結晶化温度よりも60℃高い温度とするのが好ましい。本実施形態では最高基板温度を520〜560℃、例えば550℃とする。
【0213】
このように最高基板温度の下限を比較的低温にすることで、第2強誘電体膜24cの下面から結晶化が進むようになるので、第2強誘電体膜24cの結晶粒が第1強誘電体膜24bの結晶粒を引継ぐようになり、各強誘電体膜24b、24cの間に界面が発生し難くなると共に、第2強誘電体膜24cの凹凸も抑えられるようになる。
【0214】
続いて、図14(b)に示すように、シリコン基板1を加熱しながら強誘電体膜24の上に第1導電性酸化金属膜25dとしてスパッタ法で酸化イリジウム膜を厚さ約25nmに形成する。第1実施形態で説明したように、このようにシリコン基板1を加熱するスパッタ法で形成された酸化イリジウム膜は、結晶化のためのプロセスを行わなくても、成膜の時点で既に結晶化している。
【0215】
その第1導電性酸化金属膜25dの成膜条件は特に限定されない。本実施形態では、基板温度を300℃に保持しながら、イリジウムターゲットを用いて、流量が140sccmの酸素と流量が60sccmのアルゴンガスとの混合ガスをスパッタガスとして用い、更にスパッタパワーを1kW〜2kWとする。
【0216】
ここで、強誘電体膜24は、第1導電性酸化金属膜25dをスパッタ法で形成した際に、スパッタガスによってダメージを受けていると共に膜中の酸素濃度が欠乏し、その強誘電体特性が劣化している恐れがある。
【0217】
そこで、上記の第1導電性酸化金属膜25dを形成した後に、アルゴンと酸素との混合雰囲気中でRTAを行うことにより、スパッタにより受けた強誘電体膜24のダメージを回復させると共に、第1強誘電体膜24の酸素欠損を補償する。
【0218】
このRTAの条件は特に限定されない。本実施形態では、基板温度を725℃にし、処理時間を60秒とする。また、アルゴンと酸素の流量をそれぞれ2000sccm、20sccmとする。第1実施形態と同様に、このRTAにおける酸化性ガスとしては、酸素ガスの他に、オゾンガス又は二酸化窒素ガスもある。
【0219】
ここで、第1導電性酸化金属膜25dが成膜の時点で結晶化しているため、その結晶粒を反映して第1導電性酸化金属膜25dと強誘電体膜24との界面には凹凸が形成されているが、このRTAによってその凹凸が平坦化されるという利点も得られる。
【0220】
次に、基板温度を室温に維持しながら、スパッタ法により第1導電性酸化金属膜25dの上に第2導電性酸化金属膜25eとして酸化イリジウム膜を厚さ約100〜300nm、例えば200nmに形成する。その第2導電性酸化金属膜25eは、圧力が0.8Paのアルゴン雰囲気中、スパッタパワーを1.0kWにし、成膜時間を79秒とすることで形成される。
【0221】
ここで、高い成膜温度で結晶化された第1導電性酸化金属膜25dとは異なり、基板温度を室温とするスパッタ法で形成された第2導電性酸化金属膜25eはアモルファス状態になる。
【0222】
この第2導電性酸化金属膜25eは強誘電体膜24の劣化を防止するために形成されるものであり、第2導電性酸化金属膜25eを構成する酸化イリジウムの酸化数をなるべく大きくし、第2導電性酸化金属膜25eの水分に対する還元作用を抑えるのが好ましい。このように酸化数を大きくするには、第1導電性酸化金属膜25dの成膜時と比較して、スパッタガスにおける酸素の流量比を高めればよい。これにより、イリジウムターゲットから飛来したイリジウム粒がスパッタ雰囲気中において十分に酸化され、化学量論的組成(IrO2)に近い酸化数の酸化イリジウム膜を形成することができる。
【0223】
このような第2導電性酸化金属膜25eと第1導電性酸化金属膜25dにより、図示のように導電性酸化金属膜25bが構成される。
【0224】
なお、第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eの構成材料は酸化イリジウムに限定されない。第1、第2導電性酸化金属膜25d、25eは、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成され得る。更に、これらの酸化物を積層して導電性酸化金属膜25bとしてもよい。
【0225】
続いて、図15(a)に示すように、導電性酸化金属膜25bの上に、導電性向上膜25cとしてイリジウム膜をスパッタ法により厚さ50nm〜100nmに形成する。そのスパッタ法は、圧力が1Paのアルゴン雰囲気中で行われ、1.0kWのスパッタパワーがスパッタ雰囲気に投入される。
【0226】
導電性向上膜25cは、その下の導電性酸化金属膜25bと共に第2導電膜25を構成し、導電性酸化金属膜25bだけでは不足しがちな第2導電膜25の導電性を補う役割を担う。
【0227】
導電性向上膜25cはイリジウム膜に限定されない。導電性向上膜25cは、イリジウム、プラチナ、ルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、及びパラジウムのいずれか、又はこれらの酸化物で構成され得る。
【0228】
この後に、シリコン基板1の背面を洗浄する。
【0229】
次に、図15(b)に示すように、第2導電膜25の上にスパッタ法により窒化チタン膜を形成し、その窒化チタン膜を第1マスク材料層26とする。
【0230】
更に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて、第1マスク材料層26の上に第2マスク材料層27として酸化シリコン膜を形成する。
【0231】
次いで、図16(a)に示すように、第2マスク材料層27を島状にパターニングすることにより第2ハードマスク27aを形成する。
【0232】
次に、図16(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0233】
まず、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0234】
次いで、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の各膜23〜25をドライエッチングによりパターニングする。
【0235】
これにより、第1導電膜23、強誘電体膜24、及び第2導電膜25はそれぞれ下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aとなり、これらによって強誘電体キャパシタQが構成される。
【0236】
そのドライエッチングのガスは特に限定されないが、第1導電膜23と第2導電膜25に対するエッチングガスとしてはHBrと酸素との混合ガスが使用される。一方、強誘電体膜24に対するエッチングガスとしては塩素とアルゴンとの混合ガスが使用される。なお、これらのガスにC4F8ガスを添加してもよい。
【0237】
また、この第1導電膜23用のエッチングガスに対して導電性酸素バリア膜17はエッチング耐性を有するので、キャパシタQを形成した後でも導電性密着膜16の全面に導電性酸素バリア膜17は残存する。
【0238】
このようにして形成されたキャパシタQは、導電性酸素バリア膜17、導電性密着膜16、及び第3導電性プラグ36aを介して第1導電性プラグ32aと電気的に接続される。
【0239】
続いて、図17(a)に示すように、過酸化水素(H2O2)、アンモニア、及び水の混合溶液をエッチング液として用い、酸化シリコンよりなる第2ハードマスク27aをウエットエッチングにより除去する。なお、ドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去してもよい。
【0240】
次に、図17(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0241】
まず、第1ハードマスク26aをマスクとして用いながら、導電性密着膜16と導電性酸素バリア膜17とをエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。このエッチングはドライエッチングにより行われ、そのエッチングガスとしては例えばアルゴンと塩素との混合ガスが使用される。
【0242】
また、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0243】
続いて、図18(a)に示すように、キャパシタQを覆うアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、そのアルミナ膜を第1キャパシタ保護絶縁膜39とする。第1キャパシタ保護絶縁膜39を構成するアルミナは、水素の透過防止能力に優れているため、外部の水素はこの第1キャパシタ保護絶縁膜39によってブロックされ、水素によるキャパシタ誘電体膜24aの劣化を防止することができる。
【0244】
ここで、キャパシタ誘電体膜24aは、キャパシタQを形成する際のドライエッチング(図16(b)参照)や、スパッタ法による第1キャパシタ保護絶縁膜39の成膜によってダメージを受けている。
【0245】
そこで、このダメージからキャパシタ誘電体膜24aを回復させる目的で、図18(b)に示すように、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。この回復アニールの条件は特に限定されないが、本実施形態では、炉内において基板温度を550℃〜700℃、例えば650℃とし、約60分間行われる。
【0246】
続いて、図19(a)に示すように、第1キャパシタ保護絶縁膜39の上に、CVD法によりアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、このアルミナ膜を第2キャパシタ保護絶縁膜40とする。
【0247】
次に、図19(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0248】
まず、TEOSガスを反応ガスとするプラズマCVDにより、第2キャパシタ保護絶縁膜40の上に第2層間絶縁膜41として酸化シリコン膜を形成する。その反応ガスには、酸素ガスとヘリウムガスも含まれる。また、第2層間絶縁膜41の膜厚は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1の平坦面上での厚さを1500nmとする。
【0249】
なお、酸化シリコン膜に代えて、絶縁性の無機膜を第2層間絶縁膜41として形成してもよい。
【0250】
その後に、CMP法により第2層間絶縁膜41の表面を研磨して平坦化する。
【0251】
更に、第2層間絶縁膜41に対する脱水処理として、第2層間絶縁膜41の表面をN2Oプラズマに曝す。このN2Oプラズマにより、第2層間絶縁膜41内に残留する水分が除去されると共に、第2層間絶縁膜41への水分の再吸収が防止される。
【0252】
なお、この脱水処理としてN2プラズマ処理を行ってもよい。
【0253】
続いて、第2層間絶縁膜41の上に、スパッタ法により平坦なアルミナ膜を厚さ約20nm〜100nmに形成し、そのアルミナ膜を第3キャパシタ保護絶縁膜42とする。この第3キャパシタ保護絶縁膜42は、平坦化された第2層間絶縁膜41上に形成されるため優れたカバレッジ特性が要求されず、上記のように安価なスパッタ法で形成される。但し、第3キャパシタ保護絶縁膜42の成膜方法はスパッタ法に限定されず、CVD法であってもよい。
【0254】
その後に、図20(a)に示すように、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて、第3キャパシタ保護絶縁膜42の上に、キャップ絶縁膜43として酸化シリコン膜を300nm〜500nm程度の厚さに形成する。なお、このキャップ絶縁膜43として、酸窒化シリコン膜又は窒化シリコン膜を形成してもよい。
【0255】
次に、図20(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0256】
まず、第1〜第3キャパシタ保護絶縁膜39、40、42、第2層間絶縁膜41、キャップ絶縁膜43をパターニングすることにより、上部電極25a上のこれらの膜に第2ホール41aを形成する。
【0257】
次いで、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、不図示の炉内にシリコン基板1を入れ、酸素雰囲気中で基板温度を550℃とする回復アニールを約40分間行う。
【0258】
次に、第2導電性プラグ32bの上の第1〜第3キャパシタ保護絶縁膜39、40、42、第2層間絶縁膜41、キャップ絶縁膜43、下地絶縁膜15、及び酸化防止絶縁膜14をパターニングして、これらの膜に第3ホール41bを形成する。
【0259】
なお、このパターニングの際、第2ホール41aは、レジストパターンで覆われており、そのレジストパターンによってエッチング雰囲気から保護されている。
【0260】
ここで、もし、これらのホール41a、41bを同時に形成しようとすると、深い第3ホール41bが開口されるまで第2ホール41a内の上部電極25aが長時間にわたってエッチング雰囲気に曝され、キャパシタ誘電体膜24aが劣化するという問題が発生する。
【0261】
本実施形態では、上記のように深さの異なる第2、第3ホール41a、41bを別々に形成するので、このような問題を回避することができる。
【0262】
更に、第2ソース/ドレイン領域8b上の第2導電性プラグ32bは、本工程が終了するまで、酸化防止絶縁膜14によって覆われているので、第2導電性プラグ32bを構成するタングステンが酸化してコンタクト不良を起こすのが防止される。
【0263】
続いて、キャップ絶縁膜43上と第2、第3ホール41a、41b内に、グルー膜としてスパッタ法によりチタン膜と窒化チタン膜とをこの順に形成する。
【0264】
なお、窒化チタン膜についてはMOCVD法で形成してもよい。その場合、窒化チタン膜から炭素を除去するため、窒素と水素とをプラズマ化してなる雰囲気中で窒化チタン膜をアニールするのが好ましい。このように水素含有雰囲気中でアニールを行っても、上部電極25aの最上層に形成されたイリジウムよりなる導電性向上膜25c(図15(a)参照)が水素をブロックするので、水素によって導電性酸化金属膜25bが還元されることは無い。
【0265】
更に、CVD法によりグルー膜の上にタングステン膜を形成し、このタングステン膜で第2、第3ホール41a、41bを完全に埋め込む。
【0266】
そして、キャップ絶縁膜43上の不要なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を第2、第3ホール41a、41b内にのみ第4、第5導電性プラグ47a、47bとして残す。
【0267】
これらのプラグのうち、第4導電性プラグ47aは、キャパシタQの上部電極25aと電気的に接続される。一方、第5導電性プラグ47bは、第2導電性プラグ32bに電気的に接続され、その第2導電性プラグ32bと共にビット線の一部を構成する。
【0268】
その後に、図21に示すように、キャップ絶縁膜43と各導電性プラグ47a、47bのそれぞれの上にスパッタ法で金属積層膜を形成し、この金属積層膜をパターニングして金属配線49aとビット線用の導電性パッド49bとを形成する。
【0269】
その金属積層膜として、厚さ60nmのチタン膜、厚さ30nmの窒化チタン膜、厚さ360nmの銅含有アルミニウム膜、厚さ5nmのチタン膜、及び厚さ70nmの窒化チタン膜をこの順に形成する。
【0270】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成したことになる。
【0271】
上記した本実施形態では、図13(b)に示したように、MOCVD法で形成された第1強誘電体膜24bの上に、ゾル・ゲル法により第2強誘電体膜24cを形成するようにした。
【0272】
これにより、PZTの結晶粒を反映して第1強誘電体膜24bの上面に形成された凹凸が第2強誘電体膜24cにより埋め込まれるので、キャパシタ強誘電体膜24aと上部電極25aとの界面がフラットになり、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに対して均一に電圧を印加することが可能になる。
【0273】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、ゾル・ゲル法により形成された第2強誘電体膜24cの上に酸化イリジウムよりなる第1導電性酸化金属膜25dを形成する。そのため、第1導電性酸化金属膜25dを形成する工程において、スパッタガスにおける酸素流量比が増大することによりキャパシタ誘電体膜24aのスイッチング電荷量が増大することを利用し、スイッチング電荷量Qswを上記の流量比で調節することができる。
【0274】
ところで、本実施形態では、図14(a)に示したように、第2強誘電体膜24cを結晶化させるための結晶化アニールを行う。
【0275】
本願発明者は、その結晶化アニールの際の基板温度がキャパシタ誘電体膜24aに与える影響を調査した。
【0276】
その調査結果を図22及び図23に示す。
【0277】
図22の調査は、一辺の長さが50μmの正方形の平面形状を有する孤立したキャパシタをシリコン基板上に形成して行われた。
【0278】
一方、図23の調査は、一辺の長さが50μmの正方形の平面形状を有するキャパシタをシリコン基板上に5152個集積形成して行われた。
【0279】
なお、図22及び図23において、本実施形態1で示されるグラフは、上記の結晶化アニールを550℃の基板温度で行って得られたものである。一方、本実施形態2で示されるグラフは、結晶化アニールを500℃の基板温度で行って得られたものである。
【0280】
この調査結果によれば、キャパシタを孤立して形成した場合(図22)、及びキャパシタを集積形成した場合(図23)のいずれの場合でも、低い温度で結晶化アニールを行った本実施形態1の方がキャパシタのスイッチング電荷量Qswが大きくなった。
【0281】
このように高い温度の結晶化アニールでスイッチング電荷量Qswが低くなるのは、結晶化アニールの際の基板温度が高いと第2強誘電体膜24cの結晶化が速く進み、第2強誘電体膜24cの上面にPLZT結晶粒を反映した凹凸が形成され、上部電極25aからキャパシタ誘電体膜24aに効果的に電圧を印加できないためと考えられる。
【0282】
これに対し、結晶化アニールを低い温度で行うと、第2強誘電体膜24cの結晶化が穏やかに進むため、第2強誘電体膜24cの結晶粒が下地の第1強誘電体膜24bの結晶粒を引き継ぐようになり、第2強誘電体膜24cの上面に形成される凹凸の大きさが小さくなる。これにより、第2強誘電体膜24cと上部電極25aとの界面が実質的にフラットになり、上部電極25aから印加される大部分の電圧がキャパシタ誘電体膜24aに加わるようになって、上記のようにスイッチング電荷量が大きくなるものと考えられる。
【0283】
この調査結果より、第2強誘電体膜24cに対する結晶化アニールは、550℃未満の基板温度で行うのが好ましいことが明らかとなった。
【0284】
(3)第3実施形態
図24〜図29は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。なお、これらの図において第2実施形態で説明した要素には第2実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0285】
第2実施形態の図10(c)の工程では、グルー膜35とプラグ用導電膜36とをCMP法により研磨することで第3導電性プラグ36aを形成した。
【0286】
しかしながら、そのCMPで使用されるスラリに対し、グルー膜35とプラグ用導電膜36の研磨速度は下地の下地絶縁膜15よりも速いので、CMPを終了した時点で第3導電性プラグ36aと下地絶縁膜15のそれぞれの上面の高さを合わせるのは難しい。
【0287】
そのため、実際には、図24(a)に示されるように、上記のCMPの後には下地絶縁膜15にリセス15bが形成され、第3導電性プラグ36aの上面の高さが下地絶縁膜15のそれよりも低くなる。そのリセス15bの深さは20〜50nmであり、典型的には50nm程度になる。
【0288】
ところが、このようなリセス15bが存在すると、下部電極23aとキャパシタ誘電体膜24aの配向が乱れ、キャパシタ誘電体膜24aの強誘電体特性が劣化するという問題が発生する。
【0289】
この問題を解決するため、本実施形態では以下のような工程を行う。
【0290】
まず、図24(b)に示すように、下地絶縁膜15に対してアンモニアプラズマ処理を行い、下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させる。
【0291】
このアンモニアプラズマ処理は、例えばシリコン基板1に対して約9mm(350mils)だけ離れた位置に対向電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置が使用される。そして、266Pa(2Torr)の圧力下において基板温度を400℃に保持しながら、チャンバ内にアンモニアガスを350sccmの流量で供給し、シリコン基板1側に13.56MHzの高周波電力を100Wのパワーで、また上記の対向電極に350kHzの高周波電力を55Wのパワーで60秒間供給することにより処理が行われる。
【0292】
次に、図25(a)に示すように、下地絶縁膜15と第3導電性プラグ36aの上に平坦化用導電膜50としてチタン膜を100〜300nm、例えば約100nmに形成し、この平坦化用導電膜50でリセス15bを完全に埋め込む。
【0293】
この平坦化用導電膜50の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、シリコン基板1とチタンターゲットとの距離が60mmに設定されたスパッタ装置を用い、圧力が0.15Paのアルゴン雰囲気において、2.6kWのスパッタ用のDCパワーを35秒間印加し、基板温度が室温(20℃)の条件下において平坦化用導電膜50を形成する。
【0294】
また、平坦化用導電膜50を形成する前に、アンモニアプラズマ処理(図24(b))により下地絶縁膜15の表面の酸素原子にNH基を結合させておいたので、下地絶縁膜15上に堆積したチタン原子は酸素原子に捕獲され難くい。その結果、チタン原子が下地絶縁膜15の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる平坦化用導電膜50を形成することが可能となる。
【0295】
なお、平坦化用導電膜50はチタン膜に限定されず、タングステン膜、シリコン膜、及び銅膜のいずれかを平坦化用導電膜50として形成してもよい。
【0296】
その後に、平坦化用導電膜50に対し、窒素雰囲気中で基板温度を650℃とするRTAを行うことで、チタンよりなる平坦化用導電膜50を窒化して、(111)方向に配向した窒化チタンで平坦化用導電膜50を構成する。
【0297】
ここで、第3導電性プラグ36aの周囲の下地絶縁膜15に既述のように形成されたリセス15bを反映して、上記の平坦化用導電膜50の上面には凹部が形成される。しかし、このような凹部が形成されていると、平坦化用導電膜50の上方に後で形成される強誘電体膜の結晶性が劣化する恐れがある。
【0298】
そこで、本実施形態では、図25(b)に示すように、CMP法により平坦化用導電膜50の上面を研磨して平坦化し、上記した凹部を除去する。このCMPで使用されるスラリは特に限定されないが、本実施形態ではCabot Microelectronics Corporation製のSSW2000を使用する。
【0299】
なお、CMP後の平坦化用導電膜50の厚さは、研磨誤差に起因して、シリコン基板の面内や、複数のシリコン基板間でばらつく。そのばらつきを考慮して、本実施形態では、研磨時間を制御することにより、CMP後の平坦化用導電膜50の厚さの目標値を50〜100nm、より好ましくは50nmとする。
【0300】
ところで、上記のように平坦化用導電膜50に対してCMPを行った後では、平坦化用導電膜50の上面付近の結晶が研磨によって歪んだ状態となっている。しかし、このように結晶に歪が発生している平坦化用導電膜50の上方にキャパシタの下部電極を形成すると、その歪みを下部電極が拾ってしまって下部電極の結晶性が劣化し、ひいてはその上の強誘電体膜の強誘電体特性が劣化することになる。
【0301】
このような不都合を回避するために、次の工程では、図26(a)に示すように、平坦化用導電膜50の上面をアンモニアプラズマに曝すことで、平坦化用導電膜50の結晶の歪みがその上の膜に伝わらないようにする。
【0302】
次に、図26(b)に示すように、上記のアンモニアプラズマ処理によって結晶の歪みが解消された平坦化用導電膜50の上に、スパッタ法で導電性密着膜51としてイリジウム膜を形成する。その導電性密着膜51は、上下の膜同士の密着強度を高める膜として機能し、その厚さはなるべく薄く、例えば20nm以下、より好ましくは5nm〜10nmの厚さに形成するのが望ましい。
【0303】
続いて、第2実施形態で説明した図11(b)〜図15(a)の工程を行うことにより、図27(a)に示すように、各膜16、17、23〜25を積層する。
【0304】
なお、この工程では、第2実施形態と同じように、MOCVD法により第1強誘電体膜24bを形成した後、その上にゾル・ゲル法により第2強誘電体膜24cを形成し、第1強誘電体膜24bの上面の凹凸を埋め込むようにする。
【0305】
そして、導電性酸化金属膜25bとしては、スパッタ法により酸化イリジウムよりなる第1、第2導電性酸化金属膜25d、25e(図14(b)参照)の積層膜を形成する。このうち、第1導電性酸化金属膜25dは成膜の時点で既に結晶化しており、その成膜後に、第2実施形態と同じ条件を用いて酸化性ガス含有雰囲気中でRTAを行うことにより、強誘電体膜24cの酸素欠損を補う。
【0306】
続いて、図15(b)及び図16(a)で説明した工程を行うことにより、図27(b)に示すように、第2導電膜25の上に第1マスク材料層26と第2ハードマスク27aとを形成する。
【0307】
次に、図28(a)に示すように、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0308】
その後、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の第2導電膜25、強誘電体膜24、及び第1導電膜23をドライエッチングする。これにより、下部電極25a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極23aを備えたキャパシタQが形成される。
【0309】
そのエッチングでは、第1実施形態と同様に、第1導電膜23と第2導電膜25に対するエッチングガスとしてHBrと酸素との混合ガスを使用し、強誘電体膜24に対するエッチングガスとして塩素とアルゴンとの混合ガスを使用する。
【0310】
続いて、図28(b)に示すように、過酸化水素、アンモニア、及び水の混合溶液をエッチング液とするウエットエッチングにより、酸化シリコンよりなる第2ハードマスク27aを除去する。なお、ドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去してもよい。
【0311】
次に、図29(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0312】
まず、第1ハードマスク26aをマスクとして用いながら、導電性酸素バリア膜17、下地導電膜16、導電性密着膜51、及び平坦化用導電膜50をエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。このエッチングはドライエッチングにより行われ、そのエッチングガスとしては例えばアルゴンと塩素との混合ガスが使用される。
【0313】
また、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0314】
この後は、第1実施形態で説明した図18(a)〜図21の工程を行うことにより、図29(b)に示すような本実施形態に係る半導体装置の基本構造を完成させる。
【0315】
以上説明した本実施形態によれば、図25(a)を参照して説明したように、CMPにより第3導電性プラグ36aの周囲に発生したリセス15bを平坦化用導電膜50で埋め込み、更にCMPによりその平坦化用導電膜50を平坦化した。
【0316】
これにより、平坦化導電膜50の上方に形成される下部電極23a(図29(b)参照)の平坦性が良好になり、下部電極23aの配向が良好になる。そして、下部電極23aの配向の作用によりキャパシタ誘電体膜24aの配向も向上し、スイッチング電荷量等のキャパシタ誘電体膜24aの強誘電体特性が高められる。
【0317】
(4)第4実施形態
図30は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【0318】
本実施形態が第2実施形態と異なる点は、本実施形態では図25(b)のCMP工程において下地絶縁膜15の上面から平坦化用導電膜50を除去し、リセス15b内の第3導電性プラグ36a上にのみ平坦化用導電膜50を残す点である。これ以外の点は、本実施形態も第2実施形態も同じである。
【0319】
このようにCMPにより下地絶縁膜15の上面から平坦化用導電膜50を完全に除去しても、平坦化用導電膜50の膜厚が薄いため、CMP時のオーバー研磨量は少なくて済み、リセス15b内に残された平坦化用導電膜50の上面には凹部が殆ど形成されない。従って、平坦化用導電膜50と下地絶縁膜15のそれぞれの上面が平坦な連続面となるため、下部電極23aとキャパシタ誘電体膜24aの結晶性が良好になる。
【0320】
(5)第5実施形態
図31〜図38は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。なお、これらの図において、第2実施形態で説明した要素には第2実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0321】
最初に、図31(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0322】
まず、第2実施形態の図10(a)で説明した工程に従い、シリコン基板1の上にカバー絶縁膜10と第1層間絶縁膜11とを形成する。そして、これらの絶縁膜をパターニングすることにより、第1ソース/ドレイン領域8aの上にコンタクトホールを形成する。
【0323】
更に、このコンタクトホール内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第1層間絶縁膜11上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜をコンタクトホール内にのみ第1導電性プラグ32aとして残す。
【0324】
次に、図31(b)に示すように、第1層間絶縁膜11と第1導電性プラグ32aのそれぞれの上にチタン膜を厚さ約20nmに形成し、このチタン膜を下地導電膜16とする。
【0325】
なお、この下地導電膜16を形成する前に、第1層間絶縁膜11と第1導電性プラグ32aのそれぞれの上面に対しアンモニアプラズマ処理を予め行ってもよい。このアンモニアプラズマ処理を行うことで、第1層間絶縁膜11上に堆積したチタン原子が絶縁膜11表面の酸素原子に捕獲され難くなるので、チタン原子が第1層間絶縁膜11の表面を自在に移動できるようになり、(002)方向に強く自己配向したチタンよりなる下地導電膜16を形成することが可能となる。
【0326】
その後に、下地絶縁膜16に対し、窒素雰囲気中において基板温度を650℃、処理時間を60秒とするRTAを行う。これにより、チタンよりなる下地導電膜16が窒化され、(111)方向に配向した窒化チタンで下地導電膜16が構成されることになる。
【0327】
更に、この下地導電膜16の上に導電性酸素バリア膜17として窒化チタンアルミニウム膜を反応性スパッタ法で100nmの厚さに形成する。
【0328】
次に、図31(c)に示すように、導電性酸素バリア膜17の上にスパッタ法により第1導電膜23を形成する。その第1導電膜23は、第2実施形態と同様に、厚さが50〜100nmのイリジウム膜23c、厚さが約30nmの酸化イリジウム膜23d、及び厚さが約50nmのプラチナ膜23eをこの順に形成してなる。
【0329】
続いて、図32(a)に示すように、第2実施形態と同じ成膜条件を採用して、MOCVD法によりPZT膜を厚さ約80nmに形成し、このPZT膜を第1強誘電体膜24bとする。
【0330】
次に、図32(b)に示すように、第1強誘電体膜24bの上に第2強誘電体膜24cとしてPLZT膜をゾル・ゲル法で20〜30nmの厚さに形成する。この第2強誘電体膜24cの成膜条件は第2実施形態と同じなので省略する。
【0331】
以上により、第1導電膜23の上には、第1強誘電体膜24cと第2強誘電体膜24dとで構成される強誘電体膜24が形成されたことになる。
【0332】
続いて、図33(a)に示すように、第2強誘電体膜24dに対する結晶化アニールとして、昇温速度を125℃/分、最高基板温度を550℃とするRTAを90秒行う。そのRTAでは、アニール雰囲気中に流量が共に1000sccmの酸素とアルゴンとが供給される。
【0333】
次に、図33(b)に示すように、第2実施形態の図14(b)と同じ工程を行うことにより、強誘電体膜24の上に導電性酸化金属膜25bを形成する。第2実施形態で説明したように、その導電性酸化金属膜25dは、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜25dとアモルファスな第2導電性酸化金属膜25eとで構成される。そして、第1導電性酸化金属膜25dを形成した後には、酸化性ガス含有雰囲気中で該第1導電性酸化金属膜25dに対してRTAを行うことにより、強誘電体膜24の酸素欠損を補うと共に、第1導電性酸化金属膜25dを完全に結晶化させる。このRTAの条件は第2実施形態で説明したので省略する。
【0334】
次に、図34(a)に示すように、導電性酸化金属膜25bの上に、導電性向上膜25cとしてイリジウム膜をスパッタ法により厚さ50nm〜100nmに形成し、この導電性向上膜25cと導電性酸化金属膜25dとを第2導電膜25とする。
【0335】
次に、図34(b)に示すように、スパッタ法で第2導電膜25の上に窒化チタンよりなる第1マスク材料層26を形成する。
【0336】
また、TEOSガスを使用するプラズマCVD法を用いて第1マスク材料層36の上に酸化シリコン膜を形成し、その酸化シリコン膜をパターニングして第2ハードマスク27aを形成する。
【0337】
続いて、図35(a)に示すように、第2ハードマスク27aをマスクにして第1マスク材料層26をエッチングすることにより第1ハードマスク26aを形成する。
【0338】
次いで、第1、第2ハードマスク26a、27aで覆われていない部分の第2導電膜25、強誘電体膜24、及び第1導電膜23をドライエッチングする。これにより、下部電極23a、キャパシタ誘電体膜24a、及び上部電極25aを備えたキャパシタQが形成される。
【0339】
なお、このドライエッチングの条件は、第2実施形態で図16(b)を参照して説明したので省略する。
【0340】
また、上記のドライエッチングを行っても、導電性酸素バリア膜17はエッチングされずに下地導電膜16の全面に残存する。
【0341】
次に、図35(b)に示すように、ウエットエッチング又はドライエッチングにより第2ハードマスク27aを除去する。ウエットエッチングの場合は、過酸化水素、アンモニア、及び水の混合溶液がエッチング液として用いられる。
【0342】
続いて、図36(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0343】
まず、第1ハードマスク26aをマスクにしながら、アルゴンと塩素との混合ガスをエッチングガスとして用い、下地導電膜16と導電性酸素バリア膜17とをドライエッチングし、これらの膜をキャパシタQの下にのみ残す。
【0344】
なお、このエッチングガスに対し第1ハードマスク26aもエッチングされるため、エッチングの終了時には第1ハードマスク26aは除去され、上部電極25aの上面が露出する。
【0345】
次に、図36(b)に示すように、水素等の還元性物質からキャパシタQを保護するために、シリコン基板1の上側全面に、第1キャパシタ保護絶縁膜39としてアルミナ膜を厚さ約20nmに形成する。
【0346】
そして、キャパシタQを形成する際のドライエッチング(図35(a)参照)や、スパッタ法による第1キャパシタ保護絶縁膜39の成膜時にキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中においてキャパシタ誘電体膜24aに対して回復アニールを施す。この回復アニールの条件は、炉内において基板温度を550℃〜700℃、例えば650℃とし、約60分間行われる。
【0347】
その後に、第1キャパシタ保護絶縁膜39の上に、CVD法によりアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、このアルミナ膜を第2キャパシタ保護絶縁膜40とする。
【0348】
次いで、図37(a)に示すように、TEOSガスを反応ガスとするプラズマCVDにより、第2キャパシタ保護絶縁膜40の上に第2層間絶縁膜41として酸化シリコン膜を形成する。その反応ガスには、酸素ガスとヘリウムガスも含まれる。また、第2層間絶縁膜41は、シリコン基板1の平坦面上で1500nmの厚さを有する。
【0349】
なお、酸化シリコン膜に代えて、絶縁性の無機膜を第2層間絶縁膜41として形成してもよい。
【0350】
その後に、CMP法により第2層間絶縁膜41の表面を研磨して平坦化する。
【0351】
次に、図37(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0352】
まず、第2層間絶縁膜41の表面をN2Oプラズマに曝すことにより、第2層間絶縁膜41内に残留する水分を除去すると共に、第2層間絶縁膜41への水分の再吸収を防止する。
【0353】
なお、この脱水処理としてN2プラズマ処理を行ってもよい。
【0354】
次いで、カバー絶縁膜10、第1、第2層間絶縁膜11、41、及び第1、第2キャパシタ保護絶縁膜39、40をパターニングすることにより、第2ソース/ドレイン領域8bの上のこれらの絶縁膜に第1ホール41cを形成する。
【0355】
そして、この第1ホール41c内にグルー膜とタングステン膜とを順に形成した後、第2層間絶縁膜41上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を第1ホール41c内にのみ第2導電性プラグ54として残す。
【0356】
その第2導電性プラグ54は、ビット線の一部を構成し、第2ソース/ドレイン領域8bと電気的に接続される。
【0357】
ところで、第2導電性プラグ54は、酸化され易いタングステンを主にして構成されるため、プロセス中で酸化されるとコンタクト不良を起こし易い。
【0358】
そこで、第2導電性プラグ54の酸化を防止するため、第2層間絶縁膜41と第2導電性プラグ54のそれぞれの上面に酸窒化シリコン膜を厚さ約100nmに形成し、この酸窒化シリコン膜を酸化防止絶縁膜55とする。
【0359】
次に、図38(a)に示すように、第1、第2キャパシタ保護絶縁膜39、40、第2層間絶縁膜41、及び酸化防止絶縁膜55をパターニングすることにより、上部電極25aの上のこれらの絶縁膜に第2ホール41dを形成する。
【0360】
この第2ホール41dを形成した後、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜24aが受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中でアニールを行ってもよい。このようにアニールをしても、第2導電性プラグ54の酸化は酸化防止絶縁膜55によって防止される。
【0361】
この後に、酸化防止絶縁膜55をエッチバックして除去する。
【0362】
続いて、図38(b)に示すように、第2層間絶縁膜41と第2導電性プラグ54のそれぞれの上面にスパッタ法で金属積層膜を形成し、この金属積層膜をパターニングして金属配線57aとビット線用の導電性パッド57bとを形成する。
【0363】
その金属積層膜は、例えば、厚さ60nmのチタン膜、厚さ30nmの窒化チタン膜、厚さ400nmの銅含有アルミニウム膜、厚さ5nmのチタン膜、及び厚さ70nmの窒化チタン膜をこの順に形成してなる。
【0364】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成したことになる。
【0365】
上記した本実施形態では、第2実施形態の第3導電性プラグ36aや下地絶縁膜15を形成しないので、第2実施形態と比較して工程の簡略化が図られる。
【0366】
更に、第2ソース/ドレイン領域8b上でビット線の一部を構成する第2導電性プラグ54が一段しかないので、二段の導電性プラグ32b、47bを形成する第2実施形態よりも簡単な構造となる。
【0367】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0368】
(付記1) 半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、
酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、
前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、
前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、
前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記酸素流量比で調節することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0369】
(付記2) 前記強誘電体特性としてスイッチング電荷量を採用することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0370】
(付記3) 前記強誘電体膜を形成する工程は、MOCVD法により前記第1導電膜の上に第1強誘電体膜を形成する工程と、ゾル・ゲル法により前記第1強誘電体膜の上に第2強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0371】
(付記4) 前記第2強誘電体膜を形成する工程において、該第2強誘電体膜を前記第1強誘電体膜よりも薄く形成することを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0372】
(付記5) 前記第2強誘電体膜を形成する工程は、前記第1強誘電体膜の上に強誘電体溶液の塗膜を一層のみ形成し、該塗膜をアニールして前記第2強誘電体膜とすることにより行われることを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
【0373】
(付記6) 前記第1強誘電体膜を形成する工程の前に、前記半導体基板を昇温し、溶媒ガスの雰囲気中に前記第1導電膜を曝すことを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0374】
(付記7) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程は、基板温度を300℃以上にして行われることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0375】
(付記8) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、該第1導電性酸化金属膜を10nm以上50nm以下の厚さに形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【0376】
(付記9) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記酸素の流量比を20%以上50%未満とすることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0377】
(付記10) 前記第1導電性酸化金属膜に対して前記第1のアニールを行う工程は、650℃以上800℃以下の基板温度で行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0378】
(付記11) 前記第1のアニールを行う工程における前記酸化性ガスとして、酸素ガス、オゾンガス、及び二酸化窒素ガスのいずれかを用いることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0379】
(付記12) 前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程の前に前記強誘電体膜に対して第2のアニールを行うことにより前記強誘電体膜を結晶化する工程を更に有し、
前記第2のアニールを行う工程が常圧RTAで行われ、該常圧RTAにおける基板温度の下限が前記強誘電体膜の結晶化温度であり、且つ、前記基板温度の上限が前記結晶化温度よりも60℃高い温度であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0380】
(付記13) 前記第1導電性酸化金属膜と前記第2導電性酸化金属膜の少なくとも一方を、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、及びオスミウムのいずれかの酸化物で構成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0381】
(付記14) 前記第2導電性酸化金属膜の上に導電性向上膜を形成する工程を更に有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0382】
(付記15) 前記導電性向上膜として、イリジウム、プラチナ、ルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、及びパラジウムのいずれか、又はこれらの酸化物で構成することを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【0383】
(付記16) 前記第1導電膜として、導電性酸素バリア膜、アモルファス導電膜、及び自己配向性導電膜をこの順に形成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0384】
(付記17) 前記半導体基板に第1不純物拡散領域を形成する工程と、
前記第1不純物拡散領域の上方の前記第1層間絶縁膜に第1ホールを形成する工程と、
前記第1ホール内に、前記第1不純物拡散領域と電気的に接続された第1導電性プラグを形成する工程とを有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記第1導電性プラグの上にも該第1導電膜を形成し、
前記キャパシタを形成する工程において、前記第1導電性プラグの上に該キャパシタを形成することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0385】
(付記18) 前記第1層間絶縁膜と前記第1導電性プラグの上に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記第1導電性プラグの上の前記下地絶縁膜に第2ホールを形成する工程と、
前記第2ホールに、前記第1導電性プラグと電気的に接続された第2導電性プラグを形成する工程と、
前記第2導電性プラグと前記下地絶縁膜のそれぞれの上に平坦化用導電膜を形成する工程と、
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程とを更に有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記平坦化された平坦化用導電膜の上に該第1導電膜を形成することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【0386】
(付記19) 前記平坦化用導電膜を平坦化する工程において、該平坦化用導電膜を研磨することにより、前記第2導電性プラグの上にのみ該平坦化用導電膜を残すことを特徴とする付記18に記載の半導体装置の製造方法。
【0387】
(付記20) 前記半導体基板に第2不純物拡散領域を形成する工程と、
前記キャパシタを覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2不純物拡散領域の上の前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜に第3ホールを形成する工程と、
前記第3ホール内に、前記第2不純物拡散領域と電気的に接続された第3導電性プラグを形成する工程とを更に有することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0388】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図4】図4(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図5】図5(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図7】図7は、複数のキャパシタをシリコン基板上に集積形成した場合における、印加電圧と強誘電体膜のスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図8】図8は、スパッタ法により形成された厚さ50nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【図9】図9は、スパッタ法により形成された厚さ100nmの酸化イリジウム膜の顕微鏡写真である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図11】図11(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図12】図12(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図13】図13(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図14】図14(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図15】図15(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図16】図16(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【図17】図17(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その8)である。
【図18】図18(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その9)である。
【図19】図19(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その10)である。
【図20】図20(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その11)である。
【図21】図21は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その12)である。
【図22】図22は、シリコン基板上にキャパシタを孤立して形成した場合における、キャパシタへの印加電圧とスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図23】図23は、シリコン基板上に複数のキャパシタを集積形成した場合における、キャパシタへの印加電圧とスイッチング電荷量との関係を調査して得られたグラフである。
【図24】図24(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図25】図25(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図26】図26(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図27】図27(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図28】図28(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図29】図29(a)、(b)は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図30】図30は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図31】図31(a)〜(c)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
【図32】図32(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
【図33】図33(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
【図34】図34(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
【図35】図35(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その5)である。
【図36】図36(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その6)である。
【図37】図37(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その7)である。
【図38】図38(a)、(b)は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その8)である。
【符号の説明】
【0389】
1…シリコン基板、2…素子分離絶縁膜、3…pウェル、4…ゲート絶縁膜、5…ゲート電極、6a、6b…第1、第2ソース/ドレインエクステンション、7…絶縁性サイドウォール、8a、8b…第1、第2ソース/ドレイン領域、10…カバー絶縁膜、11…第1層間絶縁膜、12…下部電極密着膜、14…酸化防止絶縁膜、15…下地絶縁膜、16…導電性密着膜、17…導電性酸素バリア膜、23…第1導電膜、23a…下部電極、23c…イリジウム膜(導電性酸素バリア膜)、23d…酸化イリジウム膜(アモルファス導電膜)、23e…プラチナ膜(自己配向性導電膜)、24…強誘電体膜、24a…キャパシタ誘電体膜、24b…第1強誘電体膜、24c…第2強誘電体膜、25…第2導電膜、25a…上部電極、25b…酸化金属膜、25c…導電性向上膜、25d…第1導電性酸化金属膜、25e…第2導電性酸化金属膜、26…第1マスク材料層、26a…第1ハードマスク、27…第2マスク材料層、27a…第2ハードマスク、32a、32b…第1、第2導電性プラグ、35…グルー膜、36…プラグ用導電膜、36a…第3導電性プラグ、39…第1キャパシタ保護絶縁膜、40…第2キャパシタ保護絶縁膜、41…第2層間絶縁膜、42…第3キャパシタ保護絶縁膜、43…キャップ絶縁膜、47a、47b…第4、第5導電性プラグ、49a、57a…金属配線、49b、57b…導電性パッド、50…平坦化用導電膜、51…導電性密着膜、54…第2導電性プラグ、55…酸化防止絶縁膜、61a、61b…第1、第2導電性プラグ、62…導電性プラグ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD(Chemical Solution Deposition)法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、
酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、
前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、
前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、
前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記流量比で調節することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記強誘電体特性としてスイッチング電荷量を採用することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記強誘電体膜を形成する工程は、MOCVD(Metal Organic CVD)法により前記第1導電膜の上に第1強誘電体膜を形成する工程と、ゾル・ゲル法により前記第1強誘電体膜の上に第2強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2強誘電体膜を形成する工程において、該第2強誘電体膜を前記第1強誘電体膜よりも薄く形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2強誘電体膜を形成する工程は、前記第1強誘電体膜の上に強誘電体溶液の塗膜を一層のみ形成し、該塗膜をアニールして前記第2強誘電体膜とすることにより行われることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電性酸化金属膜の上に導電性向上膜を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板に第1不純物拡散領域を形成する工程と、
前記第1不純物拡散領域の上方の前記第1層間絶縁膜に第1ホールを形成する工程と、
前記第1ホール内に、前記第1不純物拡散領域と電気的に接続された第1導電性プラグを形成する工程とを有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記第1導電性プラグの上にも該第1導電膜を形成し、
前記キャパシタを形成する工程において、前記第1導電性プラグの上に該キャパシタを形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1層間絶縁膜と前記第1導電性プラグの上に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記第1導電性プラグの上の前記下地絶縁膜に第2ホールを形成する工程と、
前記第2ホールに、前記第1導電性プラグと電気的に接続された第2導電性プラグを形成する工程と、
前記第2導電性プラグと前記下地絶縁膜のそれぞれの上に平坦化用導電膜を形成する工程と、
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程とを更に有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記平坦化された平坦化用導電膜の上に該第1導電膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程において、該平坦化用導電膜を研磨することにより、前記第2導電性プラグの上にのみ該平坦化用導電膜を残すことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記キャパシタを覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2不純物拡散領域の上の前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜に第3ホールを形成する工程と、
前記第3ホール内に、前記第2不純物拡散領域と電気的に接続された第3導電性プラグを形成する工程とを更に有することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板の上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜の上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に、ゾル・ゲル法、有機金属分解法、及びCSD(Chemical Solution Deposition)法のいずれかによる成膜ステップを含む成膜方法により強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に、酸素を含むスパッタガスを用いるスパッタ法により、成膜の時点で結晶化した第1導電性酸化金属膜を形成する工程と、
酸化性ガス含有雰囲気において前記第1導電性酸化金属膜に対して第1のアニールを行う工程と、
前記第1導電性酸化金属膜上に第2導電性酸化金属膜を形成し、該第2導電性酸化金属膜と前記第1導電性酸化金属膜とを第2導電膜とする工程と、
前記第1導電膜、前記強誘電体膜、及び前記第2導電膜をパターニングすることにより、下部電極、キャパシタ誘電体膜、及び上部電極を備えたキャパシタを形成する工程とを有し、
前記第1導電性酸化金属膜を形成する工程において、前記スパッタガスにおける酸素流量比が増大することにより前記強誘電体膜の強誘電体特性が向上することを利用し、前記強誘電体特性を前記流量比で調節することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記強誘電体特性としてスイッチング電荷量を採用することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記強誘電体膜を形成する工程は、MOCVD(Metal Organic CVD)法により前記第1導電膜の上に第1強誘電体膜を形成する工程と、ゾル・ゲル法により前記第1強誘電体膜の上に第2強誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2強誘電体膜を形成する工程において、該第2強誘電体膜を前記第1強誘電体膜よりも薄く形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2強誘電体膜を形成する工程は、前記第1強誘電体膜の上に強誘電体溶液の塗膜を一層のみ形成し、該塗膜をアニールして前記第2強誘電体膜とすることにより行われることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電性酸化金属膜の上に導電性向上膜を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板に第1不純物拡散領域を形成する工程と、
前記第1不純物拡散領域の上方の前記第1層間絶縁膜に第1ホールを形成する工程と、
前記第1ホール内に、前記第1不純物拡散領域と電気的に接続された第1導電性プラグを形成する工程とを有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記第1導電性プラグの上にも該第1導電膜を形成し、
前記キャパシタを形成する工程において、前記第1導電性プラグの上に該キャパシタを形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1層間絶縁膜と前記第1導電性プラグの上に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記第1導電性プラグの上の前記下地絶縁膜に第2ホールを形成する工程と、
前記第2ホールに、前記第1導電性プラグと電気的に接続された第2導電性プラグを形成する工程と、
前記第2導電性プラグと前記下地絶縁膜のそれぞれの上に平坦化用導電膜を形成する工程と、
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程とを更に有し、
前記第1導電膜を形成する工程において、前記平坦化された平坦化用導電膜の上に該第1導電膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記平坦化用導電膜を平坦化する工程において、該平坦化用導電膜を研磨することにより、前記第2導電性プラグの上にのみ該平坦化用導電膜を残すことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記キャパシタを覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2不純物拡散領域の上の前記第1層間絶縁膜及び前記第2層間絶縁膜に第3ホールを形成する工程と、
前記第3ホール内に、前記第2不純物拡散領域と電気的に接続された第3導電性プラグを形成する工程とを更に有することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2008−124330(P2008−124330A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308160(P2006−308160)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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