説明

半導体装置の製造方法

【課題】銅を用いた多層配線を有する半導体装置を高性能化する。
【解決手段】シリコン基板上に第1配線層用絶縁膜Z1を形成し、第1配線層用絶縁膜Z1に第1配線用孔部H1を形成する。その後、第1配線用孔部H1の側壁および底面を覆うようにして、タンタルまたはチタンを含む下部バリア導体膜eb1と、ルテニウムを主体とする上部バリア導体膜et1とからなる第1配線用バリア導体膜EM1を形成する。続いて、上部バリア導体膜et1をシード層として、電気めっき法により、銅を主体とする第1配線用導体膜EC1を形成し、CMP法により第1配線用導体膜EC1を第1配線用孔部H1に埋め込む。特に、上部バリア導体膜et1として、1〜5%の濃度で炭素を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする導体膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、多層配線を有する半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、それを構成するMIS(Metal Insulator Semiconductor)型電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)(以下、単にMISトランジスタ)などの半導体素子の微細化による高集積化や、配線の微細化による高集積化によって高性能化される。このうち配線の微細化に関しては、アルミニウム(Al)から銅(Cu)へと配線材料を変える技術がある。銅は、比抵抗がアルミニウムよりも低いこと、融点が高くエレクトロマイグレーションが起こり難いこと、ストレスマイグレーションが起こり難いことなどを理由として、微細化に適した配線材料として認識されている。
【0003】
例えば、特開2002−75994号公報(特許文献1)には、ルテニウム(Ru)膜をバリアメタルとし、その上に形成した銅をシード層として銅メッキ膜を形成することで、ビアおよび配線を形成する技術が開示されている。Ru膜は酸化されても導電性を失わないことから、バリアメタルの酸化に起因した配線抵抗の増大を防ぐことができる。
【0004】
また、例えば、特開2007−258390号公報(特許文献2)には、ルテニウムシリサイド、ルテニウムカーバイト、または、ルテニウム合金を拡散防止層として用い、銅めっきを施すことで配線層を形成する技術が開示されている。これにより、銅配線に対するバリア性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2002−75994号公報
【特許文献2】2007−258390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が上記技術の適用を検討したところ、以下で説明するような課題が見出された。
【0007】
例えば、ルテニウムをバリアメタルとし、更に、これを銅めっきのシード層として、銅配線を電気めっきする技術がある。このようにシード層を用いない技術は、配線や接続部(コンタクトプラグやビアプラグなど)の更なる微細化に適している。しかしながら、本発明者の検討によれば、このようにして銅をめっきした場合、配線孔や接続孔の隅の部分まで銅めっきが覆いきれず、空孔(ボイド)が発生することが分かった。
【0008】
このようなボイドの発生は、当該配線の接触不良などを引き起こす一原因となり得る。即ち、上記のようなボイドを残したままでは、半導体装置を構成する素子や配線などの微細化による高性能化を達成し難い構造となってしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、銅を用いた多層配線を有する半導体装置を高性能化する技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願においては、複数の発明が開示されるが、そのうちの一実施例の概要を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0012】
半導体基板上に多層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板上に多層配線を形成する工程は、半導体基板上に第1絶縁膜を形成する工程と、第1絶縁膜に第1孔部を形成する工程と、第1孔部の側壁および底面を含む第1絶縁膜を覆うようにして、ルテニウムを主体とする第1バリア導体膜を形成する工程と、第1バリア導体膜を覆うようにして、第1孔部を含む第1絶縁膜を覆うようにして、銅を主体とする第1導体膜を形成する工程と、第1導体膜に表面研磨を施すことで、第1絶縁膜の第1孔部に第1導体膜を埋め込む工程とを有し、1〜5%の濃度で炭素を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される複数の発明のうち、上記一実施例により得られる効果を代表して簡単に説明すれば以下の通りである。
【0014】
即ち、銅を用いた多層配線を有する半導体装置を高性能化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1である半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図11】図10の要部p01を拡大して示した拡大図である。
【図12】図10に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図15】図12の要部p02を拡大して示した拡大図である。
【図16】本発明者が検討した半導体装置の製造工程中において、図12の要部p02に該当する部分を拡大して示した拡大図である。
【図17】本発明の実施の形態2である半導体装置の製造工程中であって、図13に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図22】図21の要部p04を拡大して示した拡大図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態1の半導体装置の製造方法を図1〜図14を用いて説明する。図は、製造工程中におけるシリコン基板(半導体基板)1のうち、nMIS領域RnおよびpMIS領域Rpの要部断面図を示している。本実施の形態1の半導体装置の製造方法は、シリコン基板1上に、nチャネル型のMISトランジスタQn(以下、単にn型MISトランジスタQn)やpチャネル型のMISトランジスタQp(以下、単にp型MISトランジスタQp)を形成する工程と、多層配線を形成する工程とを有する。はじめに、各トランジスタQn,Qpを形成する工程を説明する。
【0018】
まず、図1に示すように、例えばp型の単結晶シリコンからなるシリコン基板1(半導体ウェハと称する平面略円形状の半導体の薄板)を用意する。続いて、そのシリコン基板1の主面に分離部2を形成する。分離部2は、酸化シリコン膜などからなる浅い溝型の絶縁体(Shallow Trench Isolation:STI)によって形成されている。分離部2は、シリコン基板1にエッチングを施すことで溝を形成し、続いてシリコン基板1の主面上に化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により酸化シリコン膜を堆積した後、溝の外部の酸化シリコン膜を化学的機械的研磨(Chemical and Mechanical Polishing:CMP)法により除去することで形成する。
【0019】
その後、シリコン基板1のnMIS領域Rnにp型不純物、例えばホウ素(B)をイオン注入してp型ウェル3を形成する。また、シリコン基板1のpMIS領域Rpにn型不純物、例えばリン(P)をイオン注入してn型ウェル4を形成する。この後、p型ウェル3またはn型ウェル4に後に形成するトランジスタの閾値を制御するための不純物をイオン注入しても良い。
【0020】
次に、例えばフッ酸水溶液を用いたウェットエッチングによりシリコン基板1の表面を洗浄した後、シリコン基板1を熱酸化して、酸化シリコンを主体とする絶縁膜からなるゲート絶縁膜5を形成する。
【0021】
次に、図2に示すように、ゲート絶縁膜5上に、ゲート電極用の導体膜を形成した後、レジストパターンをエッチングマスクとしたドライエッチングによりゲート電極用の導体膜を加工して、導体膜からなるゲート電極6n,6pを形成する。ゲート電極用の導体膜としては、例えばCVD法などによって、多結晶シリコン(ポリシリコンとも言う)を主体とする導体膜を形成する。特に、nMIS領域Rnにはn型不純物が導入された多結晶シリコンからなるゲート電極6nを形成し、pMIS領域Rpにはp型不純物が導入された多結晶シリコンからなるゲート電極6pを形成する。
【0022】
続いて、nMIS領域Rnのp型ウェル3に、例えばヒ素(As)をイオン注入する。このとき、ゲート電極6nがイオン注入マスクとなって、ゲート電極6nの側方下部のp型ウェル3にイオン注入が施される。このようにして、n型半導体領域であるエクステンション領域7をnMIS領域Rnに形成する。また、同様に、pMIS領域Rpのn型ウェル4に、例えばフッ化ホウ素(BF)をイオン注入する。このとき、ゲート電極6pがイオン注入マスクとなって、ゲート電極6pの側方下部のn型ウェル4にイオン注入が施される。このようにして、p型半導体領域であるエクステンション領域8をpMIS領域Rpに形成する。
【0023】
次に、図3に示すように、シリコン基板1の主面に酸化シリコンからなる絶縁膜を、CVD法などにより形成し、これをエッチバックすることで、ゲート電極6n,6pの側壁を覆うようなサイドウォールスペーサ9を形成する。ここでは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜によって、サイドウォールスペーサ9を形成しても良い。
【0024】
続いて、nMIS領域Rnのp型ウェル3に、例えばヒ素をイオン注入する。このとき、ゲート電極6nおよびサイドウォールスペーサ9がイオン注入マスクとなって、nMIS領域Rnのサイドウォールスペーサ9の側方下部のp型ウェル3に、イオン注入が施される。このようにして、n型半導体領域であるソースドレイン領域10を、nMIS領域Rnに形成する。nMIS領域Rnのソースドレイン領域10は、同じn型のエクステンション領域7と比較して、n型不純物濃度が高く、基板表面からの深さが深い。また、同様に、pMIS領域Rpのn型ウェル4に、例えばフッ化ホウ素をイオン注入する。このとき、ゲート電極6pおよびサイドウォールスペーサ9がイオン注入マスクとなって、pMIS領域Rpのサイドウォールスペーサ9の側方下部のn型ウェル4に、イオン注入が施される。このようにして、p型半導体領域であるソースドレイン領域11を、pMIS領域Rpに形成する。pMIS領域Rpのソースドレイン領域11は、同じp型のエクステンション領域8と比較して、p型不純物濃度が高く、基板表面からの深さが深い。
【0025】
次に、図4に示すように、サリサイド技術により、各ゲート電極6n,6pおよびソースドレイン領域10,11の表面に、低抵抗の金属シリサイド層12を形成する。金属シリサイド層12としては、例えば、ニッケルシリサイド(NiSi)、ニッケル合金シリサイド、コバルトシリサイド(CoSi)、タングステンシリサイド(WSi)、または、白金シリサイド(PtSi)を形成する。例えば、ニッケルシリサイドを形成する場合には、まず、シリコン基板1の主面上にスパッタリング法などによりニッケル膜を形成する。その後、熱処理を施すことで、シリコンとニッケルとが触れている箇所でシリサイド反応を起こさせる。ここで、シリコンとニッケルとが触れている箇所が、各ゲート電極6n,6pおよびソースドレイン領域10,11の表面である。そして、未反応のニッケル膜をエッチングにより除去する。このようにして、自己整合的に、上記の箇所に金属シリサイド層12を形成することができる。
【0026】
以上のようにして、シリコン基板1の主面のnMIS領域Rnにn型MISトランジスタQn、pMIS領域Rpにp型MISトランジスタQpを形成する。
【0027】
続いて、本実施の形態1の半導体装置の製造方法では、多層配線の形成工程となる。以下で、本実施の形態1の半導体装置の製造方法が有する多層配線の形成工程について、詳しく説明する。
【0028】
図5に示すように、シリコン基板1の主面上に、CVD法により窒化シリコン膜からなるコンタクト層用ストッパ膜13を形成する。続いて、コンタクト層用ストッパ膜13上に、プラズマCVD法によりTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜からなるコンタクト層用絶縁膜14を形成する。このように、コンタクト層用ストッパ膜13とコンタクト層用絶縁膜14からなる層間絶縁膜を形成する。その後、コンタクト層用絶縁膜14の表面をCMP法により研磨する。下地段差に起因してコンタクト層用ストッパ膜13の表面に凹凸形状が形成されていても、コンタクト層用絶縁膜14の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜が得られる。
【0029】
続いて、レジストパターンをエッチングマスクとしてコンタクト層用絶縁膜14およびコンタクト層用ストッパ膜13を順にエッチングし、接続孔(コンタクトホール)15を所定の箇所に形成する。所定の箇所とは、例えば、各トランジスタQn,Qpの各ゲート電極6n,6pおよび各ソースドレイン領域10,11の上方に位置するコンタクト層用ストッパ膜13およびコンタクト層用絶縁膜14である。
【0030】
次に、図6に示すように、接続孔15の内部を含むシリコン基板1の主面上に、チタン(Ti)および窒化チタン(TiN)を順に形成して、この積層膜からなるコンタクト層用バリア導体膜16を形成する。チタン膜は酸素原子を多く固溶できることから金属シリサイド層12表面の還元材として用いられて、金属シリサイド層12との接触抵抗を低減する機能を有する。また、窒化チタン膜は後の工程で接続孔15の内部に埋め込まれる金属膜の構成原子が拡散するのを抑制または防止する機能を有する。チタン膜および窒化チタン膜からなるコンタクト層用バリア導体膜16は、例えば、スパッタリング法やCVD法などによって形成する。
【0031】
その後、例えばCVD法などによって、接続孔15の内部を含むシリコン基板1の主面上に、タングステン(W)からなるコンタクト層用導体膜17aを形成する。
【0032】
次に、図7に示すように、例えばCMP法により、コンタクト層用導体膜17aの表面を平坦化する。その際、接続孔15の外部に堆積したコンタクト層用導体膜17aおよびコンタクト層用バリア導体膜16を除去する。これにより、接続孔15にコンタクト層用導体膜17aが埋め込まれ、コンタクトプラグ(接続プラグ)17が形成される。以上のようにして、コンタクト層CLを形成する。
【0033】
次に、図8に示すように、シリコン基板1上のうち、コンタクト層CL上に、第1配線層用バリア絶縁膜(バリア絶縁膜)B1を形成する。その後、シリコン基板1上のうち、第1配線層用バリア絶縁膜B1を覆うようにして、第1配線層用絶縁膜(第1絶縁膜)Z1を形成する。第1配線層用バリア絶縁膜B1は、後の工程で第1配線層用絶縁膜Z1中に形成する金属配線が絶縁膜中に拡散するのを防ぐことを目的の一つとして形成される。
【0034】
ここで、第1配線層用バリア絶縁膜B1および第1配線層用絶縁膜Z1としては、選択的にエッチングが出来るような材料を選択する。言い換えれば、第1配線層用バリア絶縁膜B1および第1配線層用絶縁膜Z1として、同一条件のエッチングに対して互いにエッチング速度の異なる絶縁材料を用いる。
【0035】
例えば、第1配線層用バリア絶縁膜B1としては、窒化シリコンを主体とする絶縁膜をCVD法などによって形成し、第1配線層用絶縁膜Z1としては、酸化シリコンを主体とする絶縁膜、または、酸化シリコンよりも比誘電率の低い絶縁膜(Low−k材料とも言う)をCVD法などによって形成する。このように、エッチング速度の異なる材料を適用する効果に関しては、後に詳しく説明する。
【0036】
続いて、第1配線層用絶縁膜Z1を覆うようにして、キャップ絶縁膜C1を形成する。キャップ絶縁膜C1としては、窒化シリコンを主体とする絶縁膜を、CVD法などによって形成する。
【0037】
次に、図9に示すように、キャップ絶縁膜C1上に、所望の形状に加工したフォトレジスト膜18を形成する。ここで、所望の形状とは、後の工程で第1配線層用絶縁膜Z1に形成される配線パターンを反転した形状である。フォトレジスト膜18の加工は、フォトレジスト塗布、露光および現像といった一連のフォトリソグラフィ工程によって行う。
【0038】
続いて、フォトレジスト膜18をエッチングマスクとして、キャップ絶縁膜C1、第1配線層用絶縁膜Z1、および、第1配線層用バリア絶縁膜B1に対してエッチングを施すことで、フォトレジスト膜18から露出した部分の上記各絶縁膜C1,Z1,B1を除去する。これにより、キャップ絶縁膜C1、第1配線層用絶縁膜Z1および第1配線層用バリア絶縁膜B1に第1配線用孔部(第1孔部)H1を形成する。このとき、上述のように、第1配線層用絶縁膜Z1と第1配線層用バリア膜B1とは、エッチング速度の異なる材料を用いている。従って、第1配線層用絶縁膜Z1にエッチングを施す際に、下地の第1配線層用バリア絶縁膜B1をエッチングストッパとして適用できる。これにより、下地のコンタクト層CLにダメージを与え難い加工方法とすることができる。エッチング工程後、フォトレジスト膜18を除去する。
【0039】
続く工程を、図10と、その要部p01の拡大図である図11とを用いて説明する。続く工程では、第1配線用孔部H1の側壁および底面を含む、キャップ絶縁膜C1、第1配線層用絶縁膜Z1および第1配線層用バリア絶縁膜B1を覆うようにして、順に、下部バリア導体膜(第2バリア導体膜)eb1および上部バリア導体膜(第1バリア導体膜)et1を形成する。このようにして、下部バリア導体膜eb1および上部バリア導体膜et1からなる第1配線用バリア導体膜EM1を形成する。
【0040】
ここでは、下部バリア導体膜eb1として、タンタル(Ta)またはチタン(Ti)を含む導体膜を、スパッタリング法などによって形成する。このような下部バリア導体膜eb1として、例えば、窒化タンタル(TaN)または窒化チタン(TiN)を形成する。
【0041】
また、上部バリア導体膜et1として、ルテニウム(Ru)を主体とする導体膜を、ALD(Atomic Layer Deposition)法などによって5nm程度形成する。特に、本実施の形態1の半導体装置の製造方法では、1〜5%の濃度で炭素(C)を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする上部バリア導体膜et1を形成する。ここで、本発明者の検証によれば、ルテニウム膜を形成する際に、膜中に自然に含まれる炭素は0.5%程度であった。従って、本実施の形態1の製造方法においては、ルテニウム膜中に意図的に1〜5%の濃度の炭素を含ませることになる。
【0042】
上記のように、意図的に炭素を含ませたルテニウム膜を形成する方法として、例えば、下記のような方法がある。即ち、ALD法において、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(EtCp))を原材料として、成膜温度を300℃程度とすることで、1〜5%の炭素を含むようなルテニウム膜を形成できる。また、CVD法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法(例えばスパッタリング法など)によっても、原材料や成膜条件などを変更することで、1〜5%の炭素を含むようなルテニウム膜を形成できる。本実施の形態1の製造方法で、上記のように炭素を含むルテニウム膜を、上部バリア導体膜et1として形成することの理由および効果については、後に詳しく説明する。
【0043】
次に、図12に示すように、下部バリア導体膜eb1および上部バリア導体膜et1からなる第1配線用バリア導体膜EM1を覆うようにして、かつ、第1配線用孔部H1を有するキャップ絶縁膜C1、第1配線層用絶縁膜Z1および第1配線層用バリア絶縁膜B1を覆うようにして、銅を主体とする導体膜からなる第1配線用導体膜(第1導体膜)EC1を形成する。これには、炭素を含むルテニウム膜からなる上部バリア導体膜et1をシード層とした電気めっき法によって、銅からなる第1配線用導体膜EC1を形成する。
【0044】
次に、図13に示すように、第1配線用導体膜EC1に対してCMP法による表面研磨を施す。これにより、第1配線層用絶縁膜Z1および第1配線層用バリア絶縁膜B1が有する第1配線用孔部H1に、第1配線用導体膜EC1が埋め込まれ、第1配線層ML1が形成される。また、当該CMP工程の際に、キャップ絶縁膜C1をエッチングストッパ膜として適用することもできる。その場合、最終的にキャップ絶縁膜C1が除去された構造であっても、残された構造であっても良い。本図13では、キャップ絶縁膜C1が除去された構造として示している。
【0045】
次に、図14に示すように、一般的なデュアルダマシン法などによって、第1ビア層VL1および第2配線層ML2を形成する。デュアルダマシン法によって第1ビア層VL1および第2配線層ML2を形成した場合、下層から順に、第1ビア層用バリア絶縁膜19、第1ビア層用絶縁膜20、第2配線層用バリア絶縁膜21、および、第2配線層用絶縁膜22からなる層間絶縁膜の中に、ビアプラグ部と配線部との一体的な構造であるビア・配線用導体膜23が形成される。層間絶縁膜とビア・配線用導体膜23との間には、ビア・配線用バリア導体膜24が形成される。ビア・配線用バリア導体膜24としては、例えば、下層から順に窒化タンタル、タンタル、および、シード層としての銅の積層構造を有している。また、ビア・配線用導体膜23としては、電気めっき法により銅を形成する。その後、同様の手法を繰り返すことで、多層配線構造を形成する。
【0046】
以上図5〜図14を用いて説明した工程が、本実施の形態1の半導体装置の製造方法が有する、多層配線を形成する工程である。以下では、上述の本実施の形態1の製造方法によって発現され得る効果について説明する。
【0047】
本実施の形態1の半導体装置の製造方法では、上記図10および図11を用いて説明したように、第1配線用バリア導体膜EM1を構成する上部バリア導体膜et1として、ルテニウムを主体とする導体膜を形成している。ルテニウム膜は銅の電気めっきのシード層となり得ることから、銅からなる第1配線用導体膜EC1を電気めっきで形成する際に、銅のシード層を必要としない。更に、このルテニウム膜は、銅に対して高いバリア性を有し、また、酸化されても導電性が変わらない。これらのことから、ルテニウム膜自体の厚さを薄くでき、微細化に適した配線構造を提供できる。
【0048】
更に、本実施の形態1の半導体装置の製造方法では、ルテニウムを主体とする上部バリア導体膜et1に対し、意図的に1〜5%の炭素を含ませて形成している。これにより、例えば、図15に示すように、第1配線用バリア導体膜EM1と第1配線用導体膜EC1との間に、ボイドなどの空隙が生じず、密着性が高まることが分かった。なお、図15は上記図12の要部p02における拡大図である。
【0049】
本発明者は、この効果を検証するため、種々の上部バリア導体膜et1を用いて同様の工程を試みた。例えば、上部バリア導体膜et1として、10nm程度の窒化ルテニウム(RuN)、10nm程度のルテニウム、または、5nm程度のルテニウム上に形成した5nm程度の窒化ルテニウムを検証した。ここで用いたルテニウムは、本実施の形態1の製造方法と異なり、意図的に炭素を含ませるような形成方法ではなく、炭素を極力含ませないような方法によって形成したものである。このとき、図16に示すように、第1配線用孔部H1の隅の部分(要部p03)で、上部バリア導体膜et1から第1配線用導体膜EC1がはがれ、ボイドが生じることが分かった。なお、図16は上記図12の要部p02における拡大図である。これは、上記のいずれの上部バリア導体膜et1を適用しても同様であった。これらのことから、上記図15を用いて説明したように、上部バリア導体膜et1としてのルテニウム膜に、1〜5%の炭素を含ませることが効果的であることが分かった。
【0050】
通常、ルテニウム膜中の炭素は、導電性の低下をもたらすものとして、極力混入しないようにする。この観点から本発明者が検証したところ、ルテニウム膜中に1〜5%の炭素含有率であれば、炭素による抵抗値の上昇が問題にならない程度であり、かつ、銅との密着性も十分に確保できる数値範囲であることが分かった。
【0051】
以上のように、本実施の形態1の半導体装置の製造方法において、炭素を含んだルテニウム膜とすることで、銅との密着性を向上できる。これにより、ボイドなどによる高抵抗化や接触不良を起こし難くすることができる。結果として、銅を用いた多層配線を有する半導体装置を高性能化することができる。
【0052】
また、上述のように銅とバリア導体膜との密着性が向上するのは、バリア導体膜として炭素を含むルテニウム膜を形成することの効果であり、この効果を発現するにあたり、上記のような下部バリア導体膜eb1を形成することは必須では無い。ただし、本実施の形態1の半導体装置の製造方法においては、炭素を含むルテニウムからなる上部バリア導体膜et1を形成する前に、タンタルまたはチタンを含む導体膜からなる下部バリア導体膜eb1を形成する方が、より好ましい。その理由を以下で詳しく説明する。
【0053】
本発明者の検証によれば、ルテニウム膜は酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはLow−k膜などとの密着性が低い。ここで、バリア導体膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはLow−k膜などからなる層間絶縁膜に空けられた孔部の、側壁から底面を覆うようにして形成するから、密着性が低いことは、導体部の剥がれなどの原因となる。そこで、層間絶縁膜とルテニウム膜との両者に対して高い密着性を持つ、タンタルまたはチタンを成分とする導体膜を下部バリア導体膜eb1として形成する。これにより、層間絶縁膜の孔部において、ルテニウム膜からなるバリア導体膜をしっかりと密着させて形成することができる。タンタルまたはチタンを成分とする導体膜のうち、より密着性が高いのは、窒化タンタルまたは窒化チタンなどである。このような理由から、本実施の形態1の半導体装置の製造方法では、一例として、窒化タンタルまたは窒化チタンを主体とする導体膜を用いて、下部バリア導体膜eb1を形成する例を示した。
【0054】
また、上述のような効果をもたらす、炭素を含んだルテニウム膜を上部バリア導体膜et1として適用する本実施の形態1の技術は、多層配線中のいずれの配線層に適用しても同様に効果的である。ただし、本実施の形態1の半導体装置の製造方法においては、多層配線のうち、シリコン基板1側から数えて1層目の配線層、即ち、第1配線層ML1に適用して、より効果的である。なぜなら、本技術は上述のように電気めっき法で形成する銅配線の微細化に適した技術であり、多層配線においては、下層の配線層ほど微細なパターンとなっているからである。また、このように、より微細なパターンを要する下層配線層に本技術を適用し、上層配線層には、例えば銅のシード層を適用することで、製造コストを削減することができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態2の半導体装置の製造方法を図17〜図25を用いて説明する。
【0056】
まず、上記実施の形態1の上記図1〜上記図13を用いて説明した方法と同様の工程を施す。続いて、図17に示すように、シリコン基板1上のうち、第1配線層ML1上に、第1ビア層用バリア絶縁膜(第1バリア絶縁膜)B2を形成する。その後、シリコン基板1上のうち、第1ビア層用バリア絶縁膜B2を覆うようにして、第1ビア層用絶縁膜(第1絶縁膜)Z2を形成する。第1ビア層用バリア絶縁膜B2は、後の工程で第1ビア層用絶縁膜Z2中に形成する金属プラグが絶縁膜中に拡散するのを防ぐことを目的の一つとして形成される。
【0057】
ここで、第1ビア層用バリア絶縁膜B2および第1ビア層用絶縁膜Z2としては、選択的にエッチングが出来るような材料を選択する。言い換えれば、第1ビア層用バリア絶縁膜B2および第1ビア層用絶縁膜Z2として、同一条件のエッチングに対して互いにエッチング速度の異なる絶縁材料を用いる。
【0058】
例えば、第1ビア層用バリア絶縁膜B2としては、窒化シリコンを主体とする絶縁膜をCVD法などによって形成し、第1ビア層用絶縁膜Z2としては、酸化シリコンを主体とする絶縁膜、または、Low−k材料をCVD法などによって形成する。このように、エッチング速度の異なる材料を適用する効果は、上記実施の形態1で説明した、第1配線層用バリア絶縁膜B1と第1配線層用絶縁膜Z1との関係と同様である。即ち、後の工程で第1ビア層用絶縁膜Z2にビアホールを形成する際に、第1ビア層用バリア絶縁膜B2をエッチングストップ膜として適用できる。
【0059】
続いて、第1ビア層用絶縁膜Z2を覆うようにして、第2配線層用バリア絶縁膜(第2バリア絶縁膜)B3を形成する。第2配線層用バリア絶縁膜B3としては、窒化シリコンを主体とする絶縁膜を、CVD法などによって形成する。その後、第2配線層用バリア絶縁膜B3をフォトリソグラフィ法やエッチング法などによって所望の形状にパターニングする。ここで、所望の形状とは、後の工程で、第1ビア層用絶縁膜Z2内にビアホールおよびビアプラグを形成する箇所を反転させたパターンである。
【0060】
次に、図18に示すように、シリコン基板1上のうち、第2配線層用バリア絶縁膜B3を覆うようにして、第2配線層用絶縁膜(第2絶縁膜)Z3を形成する。第2配線層用バリア絶縁膜B3は、後の工程で第2配線層用絶縁膜Z3中に形成する金属配線が絶縁膜中に拡散するのを防ぐことを目的の一つとして形成される。
【0061】
ここで、上記の第2配線層用バリア絶縁膜B3および第2配線層用絶縁膜Z3としては、選択的にエッチングが出来るような材料を選択する。例えば、第2配線層用バリア絶縁膜B3が窒化シリコン膜であるなら、第2配線層用絶縁膜Z3としては、酸化シリコンを主体とする絶縁膜、または、Low−k材料をCVD法などによって形成する。このように、エッチング速度の異なる材料を適用する効果は、上記実施の形態1で説明した、第1配線層用バリア絶縁膜B1と第1配線層用絶縁膜Z1との関係と同様である。即ち、後の工程で第2配線層用絶縁膜Z3に配線用の孔部を形成する際に、第2配線層用バリア絶縁膜B3をエッチングストップ膜として適用できる。
【0062】
次に、図19に示すように、第2配線層用絶縁膜Z3をフォトリソグラフィ法やエッチング法などによって加工することで、第2配線用孔部(配線用孔部)H2を形成する。第2配線用孔部H2は、後に金属配線を埋め込むための孔部であり、形成すべき配線パターンと同じ形状に加工する。ここで、第2配線層用絶縁膜Z3の下には、第2配線層用バリア絶縁膜B3が配置されている。そして、上述のように、第2配線層用絶縁膜Z3と第2配線層用バリア絶縁膜B3とはエッチング選択比が取れる材料を選択しているから、第2配線層用バリア絶縁膜B3がエッチングストップ膜として第2配線層用絶縁膜Z3にエッチングを施すことで、第2配線用孔部H2を形成できる。
【0063】
ここで、第2配線用孔部H2の底部に形成されている第2配線層用バリア絶縁膜B3には、上記図17で説明したパターニングが施されており、一部で第1ビア層用絶縁膜Z2が露出している。この第1ビア層用絶縁膜Z2は、第2配線層用絶縁膜Z3と同じ材料の絶縁膜(酸化シリコン膜またはLow−k膜)である。従って、上記の工程で第2配線用孔部H2を形成するためのエッチングを第2配線層用絶縁膜Z3に施し、エッチングがその底部に達した後も、第2配線層用バリア絶縁膜B3の開口部から、第1ビア層用絶縁膜Z2に対してエッチングが施される。このようにして、図20に示すように、第1ビア層用絶縁膜Z2に第1ビアホール(接続用孔部)H3を形成する。
【0064】
続く工程を、図21と、その要部p04の拡大図である図22とを用いて説明する。続く工程では、シリコン基板1の主面を覆うようにして、ビア・配線用バリア導体膜EM2を形成する。これにより、第2配線用孔部H2の側壁および底面と、第1ビアホールH3の側壁および底面とを含む、第2配線層用絶縁膜Z3、第2配線層用バリア絶縁膜B3、第1ビア層用絶縁膜Z2および第1ビア層用バリア絶縁膜B2を覆うようにして、順に、下部バリア導体膜(第2バリア導体膜)eb2および上部バリア導体膜(第1バリア導体膜)et2からなるビア・配線用バリア導体膜EM2を形成する。
【0065】
ここでは、下部バリア導体膜eb2として、タンタルまたはチタンを含む導体膜を、スパッタリング法などによって形成する。このような下部バリア導体膜eb2として、例えば、窒化タンタルまたは窒化チタンを形成する。
【0066】
また、上部バリア導体膜et2として、ルテニウムを主体とする導体膜を、ALD法、CVD法、または、PVD法(例えばスパッタリング法など)によって5nm程度形成する。特に、本実施の形態2の半導体装置の製造方法では、1〜5%の濃度で炭素を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする上部バリア導体膜et2を形成する。このように、意図的に炭素を含ませたルテニウム膜を形成する方法として、例えば、下記のような方法がある。即ち、例えば、ALD法において、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(EtCp))を原材料として、成膜温度を300℃程度とすることで、1〜5%の炭素を含むようなルテニウム膜を形成できる。また、CVD法や、PVD法によっても、原材料や成膜条件などを変更することで、1〜5%の炭素を持つようなルテニウム膜を形成できる。以上は、上記実施の形態1において、上記図10および上記図11を用いて説明した工程で形成した上部バリア導体膜et1と同様である。
【0067】
次に、図23に示すように、下部バリア導体膜eb2および上部バリア導体膜et2からなるビア・配線用バリア導体膜EM2を覆うようにして、かつ、第2配線用孔部H2および第1ビアホールH3を有する第2配線層用絶縁膜Z3、第2配線層用バリア絶縁膜B3、第1ビア層用絶縁膜Z2および第1ビア層用バリア絶縁膜B2を覆うようにして、銅を主体とする導体膜からなるビア・配線用導体膜(第1導体膜)EC2を形成する。これには、炭素を含むルテニウム膜からなる上部バリア導体膜et2をシード層とした電気めっき法によって、銅から成るビア・配線用導体膜EC2を形成する。
【0068】
次に、図24に示すように、ビア・配線用導体膜EC2に対してCMP法による表面研磨を施す。これにより、第2配線層用絶縁膜Z3が有する第2配線用孔部H2、および、第1ビア層用絶縁膜Z2が有する第1ビアホールH3に、ビア・配線用導体膜EC2が埋め込まれる。以上のようにして、第1ビア層VL1および第2配線層ML2を形成する。本実施の形態2の半導体装置の製造方法では、第1ビア層VL1と第2配線層ML2とを一括して形成する、所謂デュアルダマシン法である。
【0069】
次に、図25に示すように、一般的なデュアルダマシン法などによって、第2ビア層VL2および第3配線層ML3を形成する。デュアルダマシン法によって第2ビア層VL2および第3配線層ML3を形成した場合、下層から順に、第2ビア層用バリア絶縁膜25、第2ビア層用絶縁膜26、第3配線層用バリア絶縁膜27、および、第3配線層用絶縁膜28からなる層間絶縁膜の中に、ビアプラグ部と配線部との一体的な構造であるビア・配線用導体膜29が形成される。層間絶縁膜とビア・配線用導体膜29との間には、ビア・配線用バリア導体膜30が形成される。ビア・配線用バリア導体膜30としては、例えば、下層から順に窒化タンタル、タンタル、および、シード層としての銅の積層構造を有している。また、ビア・配線用導体膜29としては、電気めっき法により銅を形成する。その後、同様の手法を繰り返すことで、多層配線構造を形成する。
【0070】
以上が、本実施の形態2の半導体装置の製造方法が有する多層配線の形成工程である。
【0071】
本実施の形態2の製造方法においては、1〜5%の炭素を含むルテニウム膜からなる上部バリア導体膜et2を適用し、その上に電気めっき法により、銅からなるビア・配線用導体膜EC2を形成している。これは、上記実施の形態1において、第1配線層ML1を形成する過程で、上部バリア導体膜et1の上に第1配線用導体膜EC1を形成する工程と同様である。従って、同様の効果が得られる。即ち、銅からなるビア・配線用導体膜EC2のビア・配線用バリア導体膜EM2への密着性が向上する。従って、電気めっき工程における銅膜の剥がれなどが生じ難く、ボイドなどの空隙の発生率を低減できる。これにより、ボイドなどによる高抵抗化や接触不良を起こし難くすることができる。本実施の形態2の製造方法では、デュアルダマシン法によって形成するビア・配線層においても、上記のように効果的な本願の技術を適用できることを示している。結果として、銅を用いた多層配線を有する半導体装置をより高性能化することができる。
【0072】
また、上述のように銅とバリア導体膜との密着性が向上するのは、バリア導体膜として炭素を含むルテニウム膜を形成することの効果であり、この効果を発現するにあたり、上記のような下部バリア導体膜eb2を形成することは必須では無い。ただし、本実施の形態2の半導体装置の製造方法においては、炭素を含むルテニウムからなる上部バリア導体膜et2を形成する前に、タンタルまたはチタンを含む導体膜からなる下部バリア導体膜eb2を形成する方が、より好ましい。その理由を以下で詳しく説明する。
【0073】
本発明者の検証によれば、ルテニウム膜は酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはLow−k膜などの層間絶縁膜との密着性が低い。ここで、バリア導体膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはLow−k膜などからなる層間絶縁膜に空けられた孔部の、側壁から底面を覆うようにして形成するから、密着性が低いことは、導体部の剥がれなどの原因となる。そこで、層間絶縁膜とルテニウム膜との両者に対して高い密着性を持つ、タンタルまたはチタンを成分とする導体膜を下部バリア導体膜eb2として形成する。これにより、層間絶縁膜の孔部において、ルテニウム膜からなるバリア導体膜をしっかりと密着させて形成することができる。タンタルまたはチタンを成分とする導体膜のうち、より密着性が高いのは、窒化タンタルまたは窒化チタンなどである。この様な理由から、本実施の形態2の半導体装置の製造方法では、一例として、窒化タンタルまたは窒化チタンを主体とする導体膜を用いて、下部バリア導体膜eb2を形成する例を示した。
【0074】
また、上述のような効果をもたらす、炭素を含んだルテニウム膜を、デュアルダマシン工程における上部バリア導体膜et2として適用する本実施の形態2の技術は、多層配線中のいずれのビア・配線層に適用しても同様に効果的である。ただし、本実施の形態2の半導体装置の製造方法においては、多層配線のうち、シリコン基板1側から数えて、2層目の接続層および2層目の配線層、即ち、第1ビア層VL1および第2配線層ML2に適用して、より効果的である。なぜなら、本技術は上述のように電気めっき法で形成する銅配線の微細化に適した技術であり、多層配線においては、下層の配線層ほど微細なパターンとなっているからである。なお、1層目の接続層であるコンタクト層CLおよび1層目の配線層である第1配線層ML1は、通常、デュアルダマシン法は適用せずに形成する(製造方法の一例は上記実施の形態1において説明している)。従って、デュアルダマシン工程に対して、本実施の形態2の技術を適用する場合、2層目のビア・配線層に適用するのが、最も効果的である。また、このように、より微細なパターンを要する下層配線層に本技術を適用し、上層配線層には、例えば銅のシード層を適用することで、製造コストを削減することができる。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、多層配線を備えた半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 シリコン基板(半導体基板)
2 分離部
3 p型ウェル
4 n型ウェル
5 ゲート絶縁膜
6n,6p ゲート電極
7,8 エクステンション領域
9 サイドウォールスペーサ
10,11 ソースドレイン領域
12 金属シリサイド層
13 コンタクト層用ストッパ膜
14 コンタクト層用絶縁膜
15 接続孔(コンタクトホール)
16 コンタクト層用バリア導体膜
17 コンタクトプラグ(接続プラグ)
17a コンタクト層用導体膜
18 フォトレジスト膜
19 第1ビア層用バリア絶縁膜
20 第1ビア層用絶縁膜
21 第2配線層用バリア絶縁膜
22 第2配線層用絶縁膜
23,29 ビア・配線用導体膜
24,30 ビア・配線用バリア導体膜
25 第2ビア層用バリア絶縁膜
26 第2ビア層用絶縁膜
27 第3配線層用バリア絶縁膜
28 第3配線層用絶縁膜
B1 第1配線層用バリア絶縁膜(バリア絶縁膜)
B2 第1ビア層用バリア絶縁膜(第1バリア絶縁膜)
B3 第2配線層用バリア絶縁膜(第2バリア絶縁膜)
C1 キャップ絶縁膜
CL コンタクト層
eb1,eb2 下部バリア導体膜(第2バリア導体膜)
EC1 第1配線用導体膜(第1導体膜)
EC2 ビア・配線用導体膜(第1導体膜)
EM1 第1配線用バリア導体膜
EM2 ビア・配線用バリア導体膜
et1,et2 上部バリア導体膜(第1バリア導体膜)
H1 第1配線用孔部(第1孔部)
H2 第2配線用孔部(配線用孔部)
H3 第1ビアホール(接続用孔部)
ML1 第1配線層
ML2 第2配線層
ML3 第3配線層
MV1 ビア・配線層
Qn n型MISトランジスタ
Qp p型MISトランジスタ
VL1 第1ビア層
VL2 第2ビア層
Z1 第1配線層用絶縁膜(第1絶縁膜)
Z2 第1ビア層用絶縁膜(第1絶縁膜)
Z3 第2配線層用絶縁膜(第2絶縁膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に多層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、
(a)前記半導体基板上に第1絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記第1絶縁膜に第1孔部を形成する工程と、
(c)前記第1孔部の側壁および底面を含む前記第1絶縁膜を覆うようにして、ルテニウムを主体とする第1バリア導体膜を形成する工程と、
(d)前記第1バリア導体膜を覆うようにして、前記第1孔部を含む前記第1絶縁膜を覆うようにして、銅を主体とする第1導体膜を形成する工程と、
(e)前記第1導体膜に表面研磨を施すことで、前記第1絶縁膜の前記第1孔部に前記第1導体膜を埋め込む工程とを有し、
前記(c)工程では、1〜5%の濃度で炭素を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする前記第1バリア導体膜を形成し、
前記(d)工程では、電気めっきによって前記第1導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程のうち、前記(a)〜前記(e)工程は、前記多層配線のうち、前記半導体基板側から数えて1層目の配線層を形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、前記(b)工程後であり、前記(c)工程前に、更に、
(f)前記第1孔部の前記側壁および前記底面を含む前記第1絶縁膜を覆うようにして、下部バリア導体膜を形成する工程を有し、
前記(f)工程では、前記下部バリア導体膜として、タンタルまたはチタンを含む導体膜を形成し、
前記(c)工程では、前記下部バリア導体膜を覆うようにして、前記第1孔部の前記側壁および前記底面を含む前記第1絶縁膜を覆うようにして、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記下部バリア導体膜として、窒化タンタルまたは窒化チタンを主体とする導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、ALD法、CVD法、または、PVD法によって、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、Ru(EtCp)を原材料とした前記ALD法によって、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、前記(a)工程前に、更に、
(g)前記半導体基板上にバリア絶縁膜を形成する工程を有し、
前記(g)工程および前記(a)工程では、前記バリア絶縁膜および前記第1絶縁膜として、同一条件のエッチングに対して互いにエッチング速度の異なる絶縁材料を用い、
前記(a)工程では、前記半導体基板上のうち、前記バリア絶縁膜を覆うようにして、前記第1絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法について、
前記(g)工程では、前記バリア絶縁膜として、窒化シリコンを主体とする絶縁膜を形成し、
前記(a)工程では、前記第1絶縁膜として、酸化シリコンよりも比誘電率の低い絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板上に多層配線を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、
(a)前記半導体基板上に第1絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第2絶縁膜に配線用孔部を形成する工程と、
(d)前記第1絶縁膜に接続用孔部を形成する工程と、
(e)前記配線用孔部の側壁および底面と、前記接続用孔部の側壁および底面とを含む前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を覆うようにして、ルテニウムを主体とする第1バリア導体膜を形成する工程と、
(f)前記第1バリア導体膜を覆うようにして、前記配線用孔部および前記接続用孔部を含む前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を覆うようにして、銅を主体とする第1導体膜を形成する工程と、
(g)前記第1導体膜に表面研磨を施すことで、前記第2絶縁膜の前記配線用孔部および前記第1絶縁膜の前記接続用孔部に前記第1導体膜を埋め込む工程とを有し、
前記(e)工程では、1〜5%の濃度で炭素を含ませるようにして、ルテニウムを主体とする前記第1バリア導体膜を形成し、
前記(f)工程では、電気めっきによって前記第1導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程のうち、前記(a)〜前記(g)工程は、前記多層配線のうち、前記半導体基板側から数えて、2層目の接続層および2層目の配線層を形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、前記(d)工程後であり、前記(e)工程前に、更に、
(h)前記配線用孔部の側壁および底面と、前記接続用孔部の側壁および底面とを含む前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を覆うようにして、下部バリア導体膜を形成する工程を有し、
前記(h)工程では、前記下部バリア導体膜として、タンタルまたはチタンを含む導体膜を形成し、
前記(e)工程では、前記下部バリア導体膜を覆うようにして、前記配線用孔部の側壁および底面と、前記接続用孔部の側壁および底面とを含む前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を覆うようにして、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、前記下部バリア導体膜として、窒化タンタルまたは窒化チタンを主体とする導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、ALD法、CVD法、または、PVD法によって、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、Ru(EtCp)を原材料とした前記ALD法によって、前記第1バリア導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記多層配線を形成する工程は、
前記(a)工程前に、更に、
(i)前記半導体基板上に第1バリア絶縁膜を形成する工程を有し、
前記(a)工程後であり、前記(b)工程前に、更に、
(j)前記第1絶縁膜上に第2バリア絶縁膜を形成する工程を有し、
前記(i)工程および前記(a)工程では、前記第1バリア絶縁膜および前記第1絶縁膜として、同一条件のエッチングに対して互いにエッチング速度の異なる絶縁材料を用い、
前記(a)工程では、前記半導体基板上のうち、前記第1バリア絶縁膜を覆うようにして、前記第1絶縁膜を形成し、
前記(j)工程および前記(b)工程では、前記第2バリア絶縁膜および前記第2絶縁膜として、同一条件のエッチングに対して互いにエッチング速度の異なる絶縁材料を用い、
前記(b)工程では、前記第1絶縁膜上のうち、前記第2バリア絶縁膜を覆うようにして、前記第2絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程および前記(j)工程では、前記第1バリア絶縁膜および前記第2バリア絶縁膜として、窒化シリコンを主体とする絶縁膜を形成し、
前記(a)工程および前記(b)工程では、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜として、酸化シリコンよりも比誘電率の低い絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−18829(P2011−18829A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163538(P2009−163538)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】