説明

半導体装置の製造方法

【課題】
太幅配線の添加元素を細幅配線の添加元素とは独立に制御する。
【解決手段】
層間絶縁膜に、第1の幅を有する第1の配線溝および第1の幅より広い第2の幅を有する第2の配線溝を形成し、第1の配線溝および第2の配線溝内に、第1の添加元素を含む第1のシード層を形成し、第1のシード層上に第1の銅層を形成し、第1の配線溝内の第1の銅層および第1のシード層を残存させつつ、第2の配線溝内の第1の銅層および第1のシード層を除去し、その後、第2の配線溝内に、第2の添加元素を含む又は添加元素を含まない第2のシード層を形成し、第2のシード層の上に第2の銅層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、スケーリング則に従って微細化が進められ、MOSトランジスタなどの素子と共に、配線も微細化されている。アルミニウム配線に代わり、より低抵抗の銅配線が主流になっている。銅配線は高精度にパターニングすることが困難であり、絶縁膜中に配線を収容する凹部を形成し、凹部に配線を埋め込むダマシン配線が採用されている。銅が絶縁膜中に拡散すると絶縁特性を劣化させるため、銅配線をバリアメタル膜、または絶縁性銅拡散防止膜で包む構成が採用される。
多くの場合、銅配線層はメッキで形成する。層間絶縁膜に配線用凹部を形成し、例えばバリアメタル膜、メッキ用シード層をスパッタリングで形成し、シード層上に銅層を電解メッキで形成する。バリアメタル膜は、銅層から銅原子が層間絶縁膜中に拡散することを防止(バリア)する機能を有する膜であり、TiN,Ta、Ta/TaN, Ti等で形成される。シード層は電解メッキの電極およびメッキ成膜のシードとなる層であり、銅または銅合金などで形成される。
スパッタリングなどで形成されたバリアメタル膜、シード層は、層間絶縁膜上にも形成される。メッキ層はシード層上に形成される。層間絶縁膜上の不要金属層を化学機械研磨で除去し、銅配線、層間絶縁膜を覆って、SiC,SiN等の絶縁性銅拡散防止膜を堆積する。このようにして形成された銅配線の側面および下面は、シード層、バリアメタル膜で覆われ、上面は絶縁性銅拡散防止膜で覆われる。
【0003】
銅はアルミニウムと比べ融点が高く、マイグレーションし難い元素であるが、微細配線(細幅配線、狭幅配線)においてはエレクトロマイグレーション(EM)が無視できないようになってきた。また、太幅(広幅)配線においても、ストレスマイグレーション(SM)が生じる。銅に他の元素を添加して銅合金とすることなどにより、マイグレーションを抑制することが研究されている。
【0004】
特開平10−209156号は、銅に0.5重量%のTaを添加したCu−Taを水素雰囲気中で熱処理すると、TaがCu粒界に析出し、粒界拡散が抑制される、ボイドが発生しにくくなり、EM耐性が向上すると記載する。
【0005】
WO2004/53971号は、Cu−Sn等の銅合金シード層を用い、銅配線膜形成後、熱処理により合金シード層中の添加元素を銅層中に拡散させることにより、銅合金を形成し、EM耐性、SM耐性の対策を行う例を紹介し、結晶粒中に残る添加元素が銅合金配線の抵抗率を上昇してしまう、銅合金シード層をスパッタリングにより形成する場合、配線溝の底に堆積する合金シード層は、細幅配線において太幅配線より薄くなり、その結果Cu配線の抵抗率が低くなり、Cu配線の抵抗率が配線幅によってばらつくと指摘する。
この発明は、Ti,Zn,Hf,Cr,Co,Al,Sn,Ni,Mg,Ag等の添加元素を銅配線膜上方から銅層中に拡散させ、SM,EMの拡散経路となるCu結晶粒界およびその近傍に導入することによりCuのマイグレーションを抑制することを提案する。酸化種に曝されても、まず添加元素が安定な金属酸化物を形成することにより、銅の酸化を抑制する。
【0006】
特開2006−80234号は、細幅配線用溝、太幅配線用溝に底面上に同一の厚さ、側面上に同一の厚さ、を有する銅合金シード層を形成し、その上に銅層をメッキし、アニール処理すると、配線幅が太くなるほど添加元素の割合が少なくなる配線が得られると記載する。シード層はスパッタリング、CVD等で成膜すると記載する。どのような成膜パラメータを用いて制御調整すれば配線幅によらず膜厚の均一なシード層が成膜できるかは記載しない。シード層の添加元素は、銅層内に拡散するのみであることを前提とする。どのようにすればそれが可能となるかは記載しない。
【0007】
配線の寄生容量を抑制するためには、層間絶縁膜は誘電率の低い材料で形成することが好ましく、例えばCVD低誘電率膜として水素化シリコンオキシ−炭化物(SiCOH)であるASMインターナショナルN.V社製のAurora(登録商標)、APPLIED MATERIALS社製のBlack Diamond(登録商標)、Novellus Systems社製のCORAL(登録商標)等や、有機塗布膜であるSiLK(登録商標)、また、ポーラスシリカ等の多孔質材料が用いられるようになってきた。これらの材料は水分を透過し易い性質を有する。バリアメタル膜に水分が到達すると、酸化等を生じ、バリアメタル層を変質させ、バリア性を失わせる可能性がある。
【0008】
M. Haneda et al. : AMC 2007, pp.27-28およびH. Kudo et al. : IITC 2008, pp. 117-119(非特許文献1)において、本発明者らと同僚は、45nm世代のデュアルダマシン構造を用い、Taのバリアメタル膜上にCu−Mn合金のシード層を適応した半導体装置を作製し、バリアメタル膜が薄くても、合金の添加元素Mnによってバリア機能が自己修復的に回復し、銅配線の信頼性が向上することを報告した。非特許文献1では、配線構造の試料に、350℃で30分熱処理を施した場合に形成される自己修復バリア層の配線内元素マッピングを参照できる。
【0009】
Mnによるバリアの自己修復反応は、200℃〜400℃の熱印加を受けることによって起こるが、後続の製造工程における熱印加、例えば導電部形成後のCVDによるキャップ膜形成時の温度等を利用することができる。これにより、個別に熱処理を行なわなくとも容易に自己修復バリア層を形成することができる。
【0010】
A. Isobayashi et al. :IEEE IEDM 04, 2004, pp.953-956は、CuにAgをドープしたCu−Ag合金をシード層に用い、銅層を形成すると、ストレスマイグレーションに起因するボイドが抑制され、信頼性が向上すると報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−209156号公報、
【特許文献2】WO2004/53971号公報、
【特許文献3】特開2006−80234号公報、
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M. Haneda et al. : AMC 2007, pp.27-28,
【非特許文献2】H. Kudo et al. : IITC 2008, pp. 117-119,
【非特許文献3】A. Isobayashi et al. :IEEE IEDM 04, 2004, pp.953-956.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施例の1目的は、添加元素を含む銅合金シード層上に銅層を形成する技術において、太幅配線の添加元素を細幅配線の添加元素とは独立に制御することを可能にすることである。なお、太幅配線のシード層には添加元素なしの純銅を用いる場合を含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施例の1観点によれば、
半導体基板上方に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、第1の幅を有する第1の配線溝および前記第1の幅より広い第2の幅を有する第2の配線溝を形成する工程と、
前記第1の配線溝および前記第2の配線溝内に、第1の添加元素を含む第1のシード層を形成する工程と、
前記第1のシード層上に第1の銅層を形成する工程と、
前記第1の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を残存させつつ、前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程と、
前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程の後、前記第2の配線溝内に、第2の添加元素を含む又は添加元素を含まない第2のシード層を形成する工程と、
前記第2のシード層の上に第2の銅層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0015】
太幅配線の添加元素を細幅配線の添加元素とは独立に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−1】と、
【図1−2】図1A〜図1Eは、幅の異なる配線溝内にダマシン銅配線層をメッキする工程を概略的に示す断面図である。
【図2−1】と、
【図2−2】図2A〜図2Gは、基本実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す断面図である。
【図3−1】と、
【図3−2】図3A〜図3Jは、実施例による半導体装置の製造方法における銅配線形成前の工程を概略的に示す断面図である。
【図4−1】と、
【図4−2】と、
【図4−3】と、
【図4−4】と、
【図4−5】図4A〜図4Sは、実施例による半導体装置の製造方法における銅配線形成工程を示す断面図である。
【図5】図5は、実施例による半導体装置の製造方法におけるデュアルダマシン配線の構成を拡大して、概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
11 バリアメタル膜、
12 (第1の)シード層、
13 (第1の)銅層、
14 第2のシード層、
15 第2の銅層、
22 (第1の)シード層、
23 (第1の)銅層、
24 第2のシード層、
25 第2の銅層、
51 下地基板、
52 第1の絶縁膜、
53 第2の絶縁膜、
54 バリアメタル膜、
55 (第1の)シード層、
56 (第1の)銅層、
58 第2のシード層、
59 第2の銅層、
TR 溝、
W 溝幅、
H 溝深さ、
d 銅層の厚さ、
【発明を実施するための形態】
【0018】
ダマシン配線の作成においては、絶縁膜中に配線用溝を形成する。配線溝の深さは、配線幅によらず一定であり、長い配線の単位長さ当りの側壁の面積は、配線幅によらず一定となる。底面の面積は、配線幅と共に増加する。従って、合金シード層をスパッタリング等の指向性プロセスで形成しても、化学気相堆積(CVD)等のコンフォーマルなプロセスで形成しても、側壁の影響は細幅配線で、太幅配線より大きくなることが予想される。
【0019】
配線溝内にシード層をコンフォーマル成膜であるCVDで形成し、一様な厚さのシード層を形成した場合、底面上のシード層の量は配線幅に比例する。側壁上のシード層の量は配線幅によらずほぼ一定となる。側壁上のシード層内の添加元素が配線全体に再分布すると、細幅溝内の配線中の添加元素の濃度が太幅溝内の配線中の添加元素の濃度より高くなろう。
【0020】
スパッタリングは指向性を有する成膜方法であり、基本的には、平坦面上の面積当りの堆積量は一定であろう。スパッタリングでバリアメタル膜、シード層を堆積する時、ある角度分布を持って溝開口に飛来する原料が溝側面、溝底面に分布して堆積すると考えられる。飛来する原料の量は開口面積(従って配線幅)に比例すると考えられる。細幅配線溝では開口幅により側面、底面への入射角度が制限されるであろう。従って、細幅配線溝に形成されるシード層は、太幅配線溝に形成されるシード層より薄くなるであろう。
【0021】
本発明者らは、銅合金シード層をスパッタリングで形成し、その上に銅層を電解メッキした後、熱処理、研磨、キャップ層の形成などを施して銅配線評価試料を製作後、抵抗を測定して、シード層に添加元素を入れない場合との差を検討した。すると、太幅配線ほど抵抗上昇率が高いことが判った。
【0022】
シード層に添加した元素の濃度が、太幅配線で細幅配線より大きくなっていることが想定される。添加元素が単純に銅配線全体に拡散すると考えると理解できない現象である。
【0023】
配線溝内に、Taのバリアメタル膜、その上にCu−Mn合金のシード層を形成し、銅層をメッキした銅配線において、側面のTaバリアメタルが浸入した水分によって酸化しても、酸化物に添加元素のMnが結合するとバリア機能を復活することが判った。このような添加元素の消費はバリア膜の酸化が生じ易い側面、特に微細な配線の側面、において優先的に生じるであろう。側壁部において、添加元素が消費されると考えると、側壁の影響は細幅配線ほど大きくなるので、細幅配線でEM耐性を上げることができる量の元素をシード層に添加し、細幅配線の要求を満足するようにすると、太幅配線では側壁部における消費量が相対的に小さいので、添加元素の濃度が高くなり抵抗が上昇してしまうことが理解できる。
【0024】
絶縁膜に、細幅配線、太幅配線に合わせて幅の異なる溝を形成し、共通プロセスによりバリアメタル膜、シード合金層を堆積し、銅層を形成し、不要部を除去して配線を形成すると、避けがたい現象とも考えられる。しかし、配線の抵抗上昇は装置の性能達成の観点から何とか避けたい。そもそも、細幅配線で問題となるエレクトロマイグレーションが、太幅配線においてはあまり問題とならない。太幅配線ではストレスマイグレーションが問題となりうる。
【0025】
もし、細幅配線と太幅配線において、添加元素の種類、濃度を自由に選択できるなら、この問題を解決できる。しかし、細幅配線と太幅配線とを全く別の工程で作成すると、工程数の増加が著しく、歩留まりを低下させてしまうであろう。少なくとも配線埋込用凹部は共通の工程で作成し、追加工程が与えるダメージが少なく、歩留まりの低下が抑制できる対策を検討した。
銅の電解メッキ液は、例えば、硫酸銅溶液に、塩素イオン、およびメッキを促進するアクセラレータ、銅の析出を抑制するサプレッサ、銅の析出を抑制し、平滑性を持たせるレベラの3種類の有機添加剤を加えて形成される。添加剤を加えることにより、銅メッキの析出と成長を制御し、微細なビアや配線溝に対する埋込を可能とする。銅の電解メッキを行うためには、電極となるシード層を予め形成しておく必要がある。
図1A〜図1Dは、配線溝内への銅配線層のメッキ工程を概略的に示す断面図である。
【0026】
図1Aに示すように、絶縁性銅拡散防止膜ないしエッチストッパとして機能する第1の絶縁膜52を備えた下地基板51上方に、層間絶縁膜として機能する第2の絶縁膜53を積層し、フォトレジストパターンなどをエッチングマスクとして第2の絶縁膜53に配線用溝TR1,TR2,TR3(TRと総称することがある)をエッチし、エッチングマスクを取り除く。溝TR1の幅に対する高さの比(アスペクトレシオ)は1、溝TR2のアスペクトレシオは0.5、溝TR3のアスペクトレシオは0.25とする。
【0027】
図1Bに示すように、トレンチ上方からスパッタリングにより、Ta等のバリアメタル膜54、Cu―Mn合金などのシード層55を溝TRの内面を覆うように堆積する。第2の絶縁膜53の上面上にもバリアメタル膜54、シード層55は形成される。バリアメタル膜54は、銅の拡散を防止する機能を有する金属膜であり、Taの他、TaN,TiN,Ti等の金属膜またはこれらの積層で形成される。シード層55は、銅の電解メッキの際電流を流すための電極となる層であり、銅や銅合金で形成される。銅合金の場合、Mn等の添加元素は、銅配線におけるエレクトロマイグレーションを抑制できる機能を有する元素から選択する。
【0028】
図1Cに示すように、電解メッキによりシード層55上に銅層56をメッキする。当初、メッキ層は、溝底面、溝側面上のシード層上にほぼ均一な厚さで(コンフォーマルに)成長する。溝の対向する側壁上に成長する銅メッキ層56間の間隔がある幅より狭くなると、残された狭い溝内で底部から上方に向かって急速にメッキ層が成長するボトムアップ成長が生じる。図1Cでは、溝TR1内でボトムアップ成長が生じている。
【0029】
図1Dに示すように、さらに電解メッキを進行すると、溝TR1上方ではアクセラレータの影響で、配線上部の銅層がさらに成長し、相対的に膜が盛り上がるオーバープレート現象が生じる。溝TR2においては、溝内が埋め込まれる前に対向する側壁上の銅メッキ層間の間隔がある幅より狭くなりボトムアップ成長が生じている。溝TR3においては側壁上の銅メッキ層間の距離は離れており、コンフォーマル成長が続き、溝が埋め込まれるまでボトムアップ成長は生じない。ボトムアップ成長、オーバプレート現象は、メッキ液への3種類の添加剤を調整することにより制御される。
【0030】
図1Eに示すように、溝深さをH,溝幅をWとする。バリアメタル膜、シード層、メッキ銅層を併せた複合配線層の厚さが均一にdである時、底面上の銅層が溝深さHを埋める前に、両側壁上の銅層が接するにはd<Hかつ2d=W,d=W/2が成り立つ必要があろう。すなわち、H>d=W/2となり、溝深さHが溝幅Wの半分より大が必要条件となる。アスペクトレシオ0.5を溝埋込前にボトムアップ成長が生じるか否かの臨界として扱うことができよう。
【0031】
そこで、アスペクトレシオが0.5以下の配線を太幅配線と呼び、アスペクトレシオが0.5を超える配線を細幅配線と呼ぶことにする。
【0032】
図2A〜図2Gは、基本実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す断面図である。細幅配線を2種、太幅配線を1種例示する。
【0033】
図2Aにおいて、下地基板51上に第1の絶縁膜52、第2の絶縁膜53が積層され、第2の絶縁膜53に配線用溝TR1,TR2,TR3が形成されている。溝TR1,TR2が細幅の溝であり、溝TR3が太幅の溝であるとする。溝TR内面を覆ってバリアメタル膜54、シード層55が形成されている。シード層55上に銅層56をメッキする。図示の状態で、細幅の溝TR1、TR2で埋込が終了している。メッキ促進剤のアクセラレータの影響で、溝埋込後、配線上部の銅層がさらに成長し、相対的に膜が盛り上がって形成されるオーバープレート現象が生じる。太幅の溝TR3ではコンフォーマル成長が続いている。なお、シード層55は銅又は銅合金の層であるので、シード層55とメッキした銅層56とを併せて、銅層57と呼ぶことにする。
【0034】
図2Bは、オーバープレートがさらに進行した状態を示す。細幅溝上の第2の絶縁膜53より上の銅層57の厚さをT1とし、広幅溝内の銅層57の厚さをT2とし、それぞれの最小値、最大値を添字min,maxで示す。溝TR1上の銅層57の厚さがT1max,溝TR2上の銅層57の厚さがT1min、太幅の溝TR3内の底部からの銅層の厚さがT2maxとする。
【0035】
図2Cは、銅層の厚さの時間変化を例示したグラフである。横軸が時間tを示し、縦軸が溝内の底部からの銅層の厚さを示す。実線が細幅溝内の銅層57の厚さを示し、破線が太幅溝内の銅層の厚さを示す。溝深さHを破線で示す。銅層の厚さが溝深さHに達する時、溝の埋込は終了する。溝深さHより上の細幅溝内の銅層57の厚さが、オーバープレートの影響で相対的に盛り上がって形成されている銅層の厚さを示す。細幅溝上の銅層57の最小厚さT1min、および太幅の溝内の銅層57の最大厚さT2maxに注目する。細幅溝では埋込終了後、オーバープレートの影響により盛り上がりが生じ、最小盛り上がり厚さT1minも増大し、T1minがT2maxを上回るようになる。T1min−T2max≧0の状態でメッキを終了する。以下、シード層55を第1のシード層と呼び、メッキ層56を第1のメッキ層と呼ぶことにする。
【0036】
図2Dに示すように、基板をエッチング液に浸漬し、銅層57をエッチングする。エッチングは均一に進行する。太幅の溝内の銅層57(第1のメッキ層56および第1のシード層55)が完全に除去(T2max分エッチング)される。この状態で、細幅の溝上銅層57の厚さがT2max減少しても、T1min−T2max≧0である。即ち、その表面は溝より上方であり、溝内を埋め込んだ状態を維持する。
【0037】
図2Eは、細幅溝は銅層57で埋め込まれた状態を維持し、太幅溝内の銅層57(第1のメッキ層56および第1のシード層55)を完全に除去した状態を示す。バリアメタル層54は残す。
【0038】
図2Fに示すように、太幅溝内のバリアメタル層54を露出した状態で、新たに銅合金の第2のシード層58を堆積し、その上に第2の銅層59をメッキする。第2のシード層58は第1のシード層55とは異なる層であり、その組成は自由に選択できる。太幅配線に適した元素を適量添加した銅合金や、純銅を第2シード層58に用いることができる。第2のシード層58とメッキした第2の銅層59を併せて銅層60とする。
【0039】
図2Gに示すように、太幅の溝を第2の銅層59で埋め込んでメッキを終了した後、結晶安定化のための熱処理を行い、化学機械研磨(CMP)により、層間絶縁膜53上の不要金属層を除去する。結晶安定化のための熱処理は、従来の方法を用いることができる。広幅の配線溝TR3内には、細幅の配線溝TR1,TR2内とは異なる組成のシード層58が埋め込まれている。シード層の添加元素が後の工程において300℃以上の熱印加を受けることによって銅層に充分に拡散すると、細幅配線の銅層57と広幅配線の銅層60とは異なる組成を有することになる。このようにして、細幅配線と太幅配線とで添加元素の異なる銅配線を形成することができる。
【0040】
シード層55,58の添加元素の拡散は、後続の工程における熱印加を利用してもよいし、個別の熱処理工程を追加して行ってもよい。例えば、後続工程の熱印加の利用としては、銅配線に対する絶縁性銅拡散防止膜(上部のキャップ層、後述する図4Jのエッチストッパ膜ES2)の形成時の温度、例えば400℃などが該当する。
【0041】
ところで、シード層55、58の添加元素の拡散において、Mn等のように添加元素が酸化したバリアメタル層54等の界面や,上部キャップ膜との界面で反応し、拡散防止機能を持つ新たな化合物層を形成する場合には、細幅配線の銅層57と広幅配線の銅層60に対し、それぞれ異なるバリア膜組成を有することになる。このようにして、細幅配線と太幅配線とで金属元素乃至組成が異なるバリア膜組成層を有する銅配線を形成することができる。
【0042】
ここで、酸化したバリアメタル膜と反応するような添加元素を用いる場合において、ユーザが決定する任意の性能許容範囲で(例えば配線抵抗や信頼性など)、シード層55,58の添加元素の拡散を銅層のみに施す制御を行なう場合には、予めバリアメタル層54の膜厚を絶縁膜53からの酸化で消滅しない程度に厚く形成するか、バリアメタル層の酸化を起こし難い絶縁膜53を用いることで実施できる。
【0043】
また、シード層55、58の添加元素の拡散をバリアメタル層54の界面及び銅層57(またはバリアメタル層54と銅層60)の両方に拡散を施す制御を行なう場合には、ターゲット濃度を高くし添加量を増加するか、バリアメタル層54の形成を薄膜化するか、バリアメタル層54を酸化し易い絶縁膜53を用いることで実施できる。
【0044】
以下、より具体的な実施例による半導体装置の製造方法を説明する。
【0045】
図3Aに示すように、シリコン基板subの表面上に、酸化膜、窒化膜の積層等によるハードマスク層をCVDにより堆積し、その表面上に素子分離用溝を画定するホトレジストマスクPR1を形成する。ホトレジストマスクPR1をマスクとし、ハードマスク層をエッチングして、ハードマスクHMを形成する。必要に応じてホトレジストマスクPR1を除去し、ハードマスクHMをエッチングマスクとしてシリコン基板subをエッチングし、素子分離溝を形成する。
【0046】
図3Bに示すように、例えば形成した溝の表面を熱酸化した後、高密度プラズマ(HDP)CVDにより酸化シリコン膜ILを堆積する。酸化シリコン膜ILは、素子分離溝を埋め込む。
【0047】
図3Cに示すように、化学機械研磨(CMP)により、ハードマスクHMより上の酸化シリコン層ILを研磨して除去する。その後ハードマスクHMも除去する。このようにしてシャロートレンチアイソレーション型の素子分離領域STIが形成される。素子分離領域STIにより、活性領域が画定される。活性領域表面上に、スルー酸化膜を形成し、レジストマスクによってnチャネル(NMOS)トランジスタ領域、pチャネル(PMOS)トランジスタ領域を分けてイオン注入を行ない、p型ウエルPW、n型ウエルNWを形成する。その後、スルー酸化膜は除去する。以下の説明においては、1.2V動作のNMOSトランジスタを例として説明する。
【0048】
図3Dに示すように、活性領域表面を熱酸化して、厚さ1.3nmのゲート酸化膜Goxを形成する。ゲート酸化膜Gox上にノンドープの多結晶シリコン層PSを厚さ約100nmCVDにより堆積する。
【0049】
図3Eに示すように、多結晶シリコン層PS上にホトレジストパターンPR2を形成し、反応性イオンエッチング等の異方性ドライエッチングにより多結晶シリコン層PSをパターニングする。各活性領域上にゲート電極Gが形成される。その後、ホトレジストパターンPR2を除去する。
【0050】
図3Fに示すように、ゲート電極Gをマスクとしてエクステンション領域形成用のイオン注入を行なう。レジストマスクによってNMOSトランジスタ領域、PMOSトランジスタ領域を分け、NMOS領域には、例えばAsを、PMOS領域には、例えばBをイオン注入する。ゲート電極G両側にエクステンション領域Exが形成される。
【0051】
図3Gに示すように、基板全面に厚さ10nmの酸化シリコン膜をCVDによって堆積し、異方性ドライエッチングして平坦面上からは除去し、ゲート電極の側壁上にサイドウォールスペーサSWを残す。ゲート電極G、サイドウォールスペーサSWをマスクとして、低抵抗ソースドレイン拡散層Difをイオン注入する。レジストマスクによってNMOSトランジスタ領域、PMOSトランジスタ領域を分け、NMOS領域には、例えばPを、PMOS領域には、例えばBをイオン注入する。その後、例えばラピッドサーマルアニールを行ない、イオン注入した不純物を活性化する。
【0052】
図3Hに示すように、ゲート電極Gを覆い、シリコン基板上に下部絶縁膜LDLとして厚さ180nmの酸化シリコン膜、キャップ層CLとして厚さ30nmのSiC膜をCVDにより堆積し、下部層間絶縁膜LILを形成する。ホトレジストマスクPR3をエッチングマスクとして、下部層間絶縁膜LILにコンタクト孔CHをエッチングする。コンタクト孔CH底面に、低抵抗ソースドレイン拡散層Difが露出する。その後、ホトレジストマスクPR3は除去する。
【0053】
図3Iに示すように、厚さ3nmのTiN層を原子層堆積(ALD)により形成し、厚さ180nmのW層をCVDにより堆積して、コンタクト孔CHを埋め込む。下部層間絶縁膜LIL上の不要金属層をCMPで除去し、導電性プラグPLをコンタクト孔CH内に残す。
【0054】
図3Jは、このようにして形成される下部構造USを示す。ここまでは公知の工程、構造であり、他の公知の工程、構造と置換することもできる。なお、以下の説明においては下部構造USを簡略化して示す。
【0055】
以下、下部構造上にダマシン配線を形成する実施例を説明する。Wプラグ上にシングルダマシンの第1銅配線を形成し、その上にデュアルダマシンの第2銅配線を形成する。第1銅配線、第2銅配線ともに細幅配線と太幅配線を有する。
【0056】
図4Aに示すように、キャップ層CLを有する下部構造USの上に、絶縁膜DL1を形成する。例えば、厚さ220nmのSiOC膜をCVDで堆積する。絶縁膜としては、TEOSやシランガスを原料としたプラズマ促進(PE)CVDや熱CVDにより形成されるSiO膜を用いることもできる。配線の寄生容量を小さくするには、酸化シリコンより誘電率の低い低誘電率絶縁膜を用いることが望ましい。無機低誘電率絶縁膜としては、オルガノシラン系材料によるSiOC膜、オルガノシロキサン系材料膜、水素化シロキサン系材料膜、ポーラスシリカ系材料のナノクラスタリングシリカ膜等を用いることができる。絶縁体膜DL1の上にエッチストッパ層ES1を形成する。例えば、テトラメチルシランを原料としたPECVDにより、温度300℃〜450℃、例えば400℃、で厚さ30nmのSiC膜を堆積する。なお、エッチストッパ層としては、PECVDによるSiC膜、SiN膜等を用いることができる。
【0057】
絶縁膜DL1とエッチストッパ層ES1の積層が、第1層間絶縁膜ILD1を構成する。なお、下部構造の最上層はSiCのキャップ層CLであり、局所的にWプラグが貫通している。なお、低誘電率絶縁膜として、SiOC膜の代わりに、SiLK等の有機塗布膜やポーラスシリカ膜等を用いてもよい。
【0058】
図4Bに示すように、フォトレジストマスクPR4をエッチングマスクとして、第1層間絶縁膜ILD1(ES1+DL1)に配線溝をエッチングする。配線溝底面に導電性プラグが露出する。左の配線溝が細幅溝であり、中と右の配線溝が太幅溝である。配線溝の幅は、例えば50nm〜30000nmである。その後、フォトレジストマスクPR4は除去する。
【0059】
図4Cに示すように、配線溝の内壁を覆うように、バリアメタル膜11として、例えば厚さ5nmのTa膜をスパッタリング等の物理気相堆積(PVD)で形成する。例えば、Taターゲットを用い、ArまたはNを放電ガスとし、ターゲット投入電力を160mW/mm〜640mW/mmとしたスパッタリングで成膜する。なお、Ta膜の代わりに、Ta/TaNの積層やTi膜を用いることもできる。膜厚は、1nm〜15nmでよい。PVDの代わりにALDを用いてもよい。
【0060】
バリアメタル膜11の上に、メッキ用のシード層12として、Cu−Mn合金膜を例えば厚さ35nmPVDにより成膜する。例えば、Cu−Mn合金ターゲットを用い、10−1PaのAr雰囲気中でDC10kWの電力を投入したスパッタリングを行なう。この銅合金膜の添加元素Mnは、細幅配線のエレクトロマイグレーションを抑制することを目的とする。Cu−Mn合金のほか、Al,Ti,Snのいずれか、またはMn,Al,Ti,Snの内2種以上をCuに混合した銅合金を用いてもよい。
【0061】
図4Dに示すように、シード層12上に電解メッキにより銅層13をメッキする。例えば、Enthone Inc. から入手可能なVia Form(登録商標)NEXTの硫酸銅基本浴および添加剤一式を使用する。硫酸銅の基本浴に、アクセラレータ6mL/L〜12mL/L、例えば10mL/L、サプレッサ1mL/L〜5mL/L、例えば2mL/L、レベラ1mL/L〜5mL/L、例えば3mL/Lを含むメッキ液を用い、電流密度13.5mA/cmで2.5秒、8.3mA/cmで20秒電解メッキする。なお、Lはリットルを意味する。ブランケット膜換算のメッキ膜厚は、約75nmである。
【0062】
細幅溝における第1の層間絶縁膜ILD1より上の膜厚T1minは約180nm、太幅溝における底部からの銅層の膜厚T2maxは約110nmとなる。太幅配線溝においては、溝深さ250nmの半分以上が未だ埋められていない状態であり、太幅配線溝内の底部からの銅層の膜厚T2maxは細幅配線溝の層間絶縁膜上方の銅層の膜厚T1minより小さい。
【0063】
なお、メッキ液として、他の一般的な汎用銅メッキ液を用いることもできる。例えば、Enthone Inc.のVia Form(登録商標)やVia Form Extreme等のVia FormシリーズやRohm and Haas companyのUltrafill(登録商標)シリーズの銅メッキ液等を用いてもよい。
【0064】
図4Eに示すように、太幅配線溝内のメッキした銅層13とその下のシード層12をウェットエッチングで除去する。例えば、HSO:H:純水=2:15:125(体積比)の希薄な液を用い、3.5秒でCu及びCu合金を厚さ110nm分選択的に除去する。HF:H:純水=1:1:200(体積比)の希薄な液を用いて2秒ウェットエッチングしてもよい。太幅配線溝内のメッキ銅層とその下の銅合金シード層は除去される。細幅配線溝の領域においても銅層がウェトエッチングされるが、細幅配線溝は未だ露出しない。
【0065】
図4Fに示すように、第2のシード層14を堆積する。第2のシード層14は、例えば厚さ35nmのCu−Al合金膜であり、Cu−Alターゲットを用いて、10−1PaのAr雰囲気中で投入電力DC10kWのスパッタリングで形成する。第2のシード層14は太幅配線溝内に銅配線をメッキするためのシード層であり、純銅又は配線抵抗の増加を抑制しつつ、ストレスマイグレーションを抑制する機能を有する銅合金で形成することが好ましい。銅合金の場合の添加元素は、Ti,Al,Ag,Sn、Mnのいずれか、又は2種以上であり、第1のシード層の添加元素とは異なるものを選択することができる。細幅配線、太幅配線のそれぞれに要求される性能を満たすことが可能な元素を、適切な濃度で、互いに独立に、添加することができる。細幅配線、太幅配線のそれぞれに、同一元素を異なる濃度で添加してもよい。
【0066】
図4Gに示すように、細幅配線溝が消滅した半導体基板上に太幅配線を形成するための銅メッキを行い、第2の銅層15を成膜する。例えば、硫酸銅基本液に、アクセラレータ3mL/L〜15mL/L、例えば6mL/L、サプレッサ1mL/L〜10mL/L、例えば2mL/L、レベラ1mL/L〜10mL/L、例えば2.5mL/Lを含むメッキ液を用い、電流密度3mA/cm〜55mA/cmで膜厚250nm〜10000nmの銅層を電解メッキする。ボトムアップ成長、オーバープレート現象は不要であり、第1の銅層13用のメッキ液とは、添加剤濃度が異なる。この例においては、第2の銅メッキのアクセラレータ、レベラの濃度が、第1の銅メッキのアクセラレータ、レベラの濃度より低く選択されている。
【0067】
図4Hに示すように、成膜した銅層の結晶安定化のため、熱処理を行なう。熱処理は従来同様の工程を行うことができる。例えば、N/H雰囲気中で、温度250℃で90秒の熱処理を行なう。
【0068】
図4Iに示すように、CMPを行い、層間絶縁膜上の不要金属層を除去する。配線溝内にのみ埋め込まれた第1銅配線が形成される。
【0069】
その後の後続の工程の300℃以上の充分な熱印加によって第1のシード層12の添加元素、例えばMn、及び第2のシード層の添加元素、例えばAl、は、バリアメタル界面側あるいは銅配線側に拡散する。先の説明の通り、シード層の添加元素の拡散は個別の熱処理で行なってもよい。
【0070】
図4Jに示すように、第1銅配線を覆って、第1エッチストッパ層ES1の上に、第2エッチストッパ層ES2、第2低誘電率絶縁膜DL2,第3エッチストッパ層ES3を形成する。第2エッチストッパ層ES2は、第1銅配線に対する絶縁性銅拡散防止膜(キャップ層)としても機能する。例えばプラズマCVDにより、厚さ30nmのSiC膜を基板温度400℃で堆積する。SiC膜の上に、例えばCVDにより、厚さ300nmのSiOC膜を基板温度400℃で堆積する。さらに、厚さ30nmのSiC膜を堆積する。
【0071】
なお、絶縁性銅拡散防止膜としては、オルガノシラン系材料やシランガスを原料としたSiC膜,SiOC膜,SiON膜,SiCN膜,SiN膜等を用いることができる。低誘電率絶縁膜の厚さは、100nm〜500nmの範囲とすることができる。成膜温度は350℃〜400℃の範囲とすることができる。
【0072】
図4Kに示すように、フォトレジストマスクPR5をエッチングマスクとして、第3エッチングストッパ層ES3,第2低誘電率絶縁膜DL2,第2エッチストッパ層ES2をエッチングし、ビア孔を形成する。ビア孔の径は、例えば70nmである。その後、フォトレジストマスクPR5を除去する。
【0073】
図4Lに示すように、ビア孔を埋込み、第3エッチストッパ層ES3の上にフォトレジスト膜PR6を塗布する。フォトレジスト膜PR6に配線溝形成用のパターンを露光し、現像する。深いビア孔内にはフォトレジスト膜が残る。
【0074】
図4Mに示すように、フォトレジストマスクPR6をエッチングマスクとして、第3エッチストッパ層ES3、第2低誘電率絶縁膜DL2を例えば150nmエッチングし、所定の幅及び高さを有する細幅配線溝、太幅配線溝を形成する。その後、フォトレジストマスクPR6を除去する。ここでは、ビア孔の形成後に配線溝の形成を行なうビアファーストの場合を記載したが、配線溝の形成後にビア孔を形成するビアラストを用いてもよい。
【0075】
図4Nに示すように、配線溝、ビア孔を形成した層間絶縁膜上に、バリアメタル膜21として、厚さ5nmのTa膜を形成する。例えば、Taのターゲットをスパッタリングして、Ta膜を形成する。Ta膜の上にシード層22として厚さ35nmのCu−Mn合金膜をスパッタリングで形成する。これらの工程は、図4Cに示す工程と同様である。シード層22は、細幅配線のエレクトロマイグレーションを抑制できる元素を添加した銅合金である。
【0076】
図4Oに示すように、シード層22上に、銅層23を電解メッキする。この工程は、図4Dの電解メッキ工程同様、細幅配線溝でボトムアップ成長、オーバプレート現象が生じやすい条件で行なう。なお、ビア孔は0.5を大きく上回るアスペクトレシオを有し、細幅溝である。まず、ビア孔においてボトムアップ成長が生じ、ビア導電体が形成される。配線溝内のメッキ工程は図4Dに示したシングルダマシン工程同様に行なわれる。細幅配線溝における層間絶縁膜より上の銅層の厚さT1minが、太幅配線溝内の底部からの銅層の厚さT2maxより厚くなった状態で、電解メッキを終了する。
【0077】
図4Pに示すように、銅層23をエッチングして太幅配線溝内の銅層23、シード層22を除去する。細幅配線溝内には銅配線が埋め込まれた状態が残る。この工程は、図4Eに示す工程と同様である。但し、太幅配線溝においても、銅層23、シード層22を下方のビア孔内には残す。
【0078】
図4Qに示すように、新たなシード層24を形成し、新たな銅メッキ層25を形成する。これらの工程は、図4F,図4Gに示す工程と同様である。新たなシード層は、純銅か、抵抗増加が抑制され、ストレスマイグレーションが抑制できる添加物を適当量含む銅合金である。
【0079】
図4Rに示すように、銅合金安定化のための熱処理を行なう。図4Hに示す熱処理工程と同様の工程である。
【0080】
図4Sに示すように、層間絶縁膜表面上の不要金属層をCMPによって除去する。第2の銅配線層が形成される。シード層22の添加元素、例えばMn,及びシード層24に添加元素が含まれる場合においてその添加元素は、その後の後続工程における300℃以上の充分な熱印加によってバリアメタル界面側あるいは銅配線側に拡散する。先の説明通り、シード層の添加元素の拡散に個別の熱処理工程で行なってもよい。銅配線が露出した平坦化した表面上に、銅拡散を防止する絶縁性キャップ膜CLないしエッチストッパ層として、厚さ30nmのSiC層を400℃のCVDで堆積する。必要に応じて、銅配線形成プロセスを繰り返して、多層配線を形成する。
【0081】
図5は、上記実施例によるデュアルダマシン配線の構造を概略的に示す。左側に細幅配線、右側に太幅配線を示す。デュアルダマシン配線用凹部は、ビア孔とその上部に連続する配線溝を有する。
【0082】
凹部全表面を覆って、バリアメタル膜21が形成され、その上に第1のシード層22、第1の銅層23が形成されている。太幅配線溝内の第1の銅層23、その下のシード層22が除去される。ビア孔では、バリアメタル膜21の上の第1のシード層22、その上の第1の銅層23が残される。太幅配線溝のバリアメタル膜21の上に第2のシード層24が形成されるとともに、ビア孔を埋め込む第1の銅層23の上にも第2のシード層24が形成され、第2のシード層24の上に第2の銅層25が形成されている。即ち、太幅のデュアルダマシン配線は、その製造プロセスに起因して、シングルダマシン配線の積み重ねのような構成を有する。但し、ビア孔を埋め込む銅配線の上にはバリアメタル膜は存在しない。
【0083】
以上説明した実施例においては、太幅配線溝内の銅層を除去するのに、図4E,4Pに示すようにエッチングを用いた。エッチングに代え、リバースメッキを用いることもできる。即ち、基板を電解メッキ液に浸漬し、印加電圧の極性を反転してメッキ層の銅をめっき液中に溶け込ませ、銅層の厚さを減少させる。
【0084】
また、配線用銅層の形成にメッキを用いた。メッキに代えて、スパッタリングなどの物理気相堆積(PVD)を用いてもよい。化学気相堆積を用いることも可能であろう。
【0085】
以上実施例に沿って、本発明を説明した。本発明はこれらに限定されるものではない。種々の変形、改良、置換、組み合わせなどが可能なことは当業者に自明であろう。
【0086】
以下、本発明の特徴を付記する。
【0087】
(付記1)
半導体基板上方に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、第1の幅を有する第1の配線溝および前記第1の幅より広い第2の幅を有する第2の配線溝を形成する工程と、
前記第1の配線溝および前記第2の配線溝内に、第1の添加元素を含む第1のシード層を形成する工程と、
前記第1のシード層上に第1の銅層を形成する工程と、
前記第1の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を残存させつつ、前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程と、
前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程の後、前記第2の配線溝内に、第2の添加元素を含む又は添加元素を含まない第2のシード層を形成する工程と、
前記第2のシード層の上に第2の銅層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0088】
(付記2)
前記第1のシード層を形成する工程の前に、前記第1の配線溝および前記第2の配線溝内に、バリアメタル層を形成する工程を含み、
前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、前記バリアメタル層は除去しない、
付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記3)
前記第1の銅層を形成する工程は、ボトムアップ成長、オーバプレートを示す電解メッキ工程である付記1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
(付記4)
前記電解メッキ工程は、アクセラレータ、サプレッサ、レベラを含むメッキ液を用いて行なう付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0091】
(付記5)
前記第1の配線溝は0.5を超えるアスペクトレシオを有し、前記第2の配線溝は0.5以下のアスペクトレシオを有する付記3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記6)
前記第1の銅層を形成する工程は、前記第1の配線溝上方において、前記第1のシード層および前記第1の銅層の前記層間絶縁膜より上の厚さが、前記第2の配線溝内の前記第1のシード層および前記第1の銅層の厚さ以上になった状態で終了する付記3〜6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記7)
前記第1の配線溝および前記第2の配線溝を形成する工程は、前記第1の配線溝および前記第2の配線溝の底面からそれぞれ下方に延在する第1のビア孔および第2のビア孔も形成し、
前記第1のシード層を形成する工程は、前記第1の配線溝、前記第2の配線溝内および前記第1のビア孔、前記第2のビア孔内に前記第1のシード層を形成し、
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、前記第2のビア孔内の前記第1の銅層および前記第1のシード層は残存させる、
付記1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0094】
(付記8)
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、ウェットエッチングを用いる付記1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0095】
(付記9)
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、リバースメッキを用いる付記1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0096】
(付記10)
前記層間絶縁膜は、エッチストッパ層と低誘電率絶縁膜の積層を含み、前記エッチストッパ層はSiC膜,SiOC膜、SiON膜、SiCN膜、SiN膜のいずれかで構成され、前記低誘電率絶縁膜はSiOC膜、オルガノシロキサン系材料膜、水素化シロキサン系材料膜、ナノクラスタリングシリカ膜、芳香族ポリエーテル膜のいずれかで構成される付記1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0097】
(付記11)
前記第1の添加元素は、Mn,Al,Sn,Tiの少なくとも1種である付記1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0098】
(付記12)
前記第1のシード層中の前記第1の添加元素の濃度は、0.5at%〜10at%の範囲内である付記11に記載の半導体装置の製造方法。
【0099】
(付記13)
前記第2のシード層が第2の添加元素を含み、第2の添加元素はMn,Al,Sn,Ti,Agの少なくとも1種であり、第1の添加元素と同一である場合は、第2の添加元素の濃度は第1の添加元素の濃度より低い付記1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0100】
(付記14)
前記第2のシード層中の前記第2の添加元素の濃度は、0.1at%〜10at%の範囲内である付記13に記載の半導体装置の製造方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上方に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、第1の幅を有する第1の配線溝および前記第1の幅より広い第2の幅を有する第2の配線溝を形成する工程と、
前記第1の配線溝および前記第2の配線溝内に、第1の添加元素を含む第1のシード層を形成する工程と、
前記第1のシード層上に第1の銅層を形成する工程と、
前記第1の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を残存させつつ、前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程と、
前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程の後、前記第2の配線溝内に、第2の添加元素を含む又は添加元素を含まない第2のシード層を形成する工程と、
前記第2のシード層の上に第2の銅層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1のシード層を形成する工程の前に、前記第1の配線溝および前記第2の配線溝内に、バリアメタル層を形成する工程を含み、
前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、前記バリアメタル層は除去しない、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の銅層を形成する工程は、ボトムアップ成長、オーバプレートを示す電解メッキ工程である請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の配線溝は0.5を超えるアスペクトレシオを有し、前記第2の配線溝は0.5以下のアスペクトレシオを有する請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の配線溝および前記第2の配線溝を形成する工程は、前記第1の配線溝および前記第2の配線溝の底面から下方に延在する第1のビア孔および第2のビア孔も形成し、
前記第1のシード層を形成する工程は、前記第1の配線溝、前記第2の配線溝内および前記第1のビア孔、前記第2のビア孔内に前記第1のシード層を形成し、
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、前記第2のビア孔内の前記第1の銅層および前記第1のシード層は残存させる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、ウェットエッチングを用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2の配線溝内の前記第1の銅層および前記第1のシード層を除去する工程は、リバースメッキを用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記層間絶縁膜は、エッチストッパ層と低誘電率絶縁膜の積層を含み、前記エッチストッパ層はSiC膜,SiOC膜、SiON膜、SiCN膜、SiN膜のいずれかで構成され、前記低誘電率絶縁膜はSiOC膜、オルガノシロキサン系材料膜、水素化シロキサン系材料膜、ナノクラスタリングシリカ膜、芳香族ポリエーテル膜のいずれかで構成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の添加元素は、Mn,Al,Sn,Tiの少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2のシード層が第2の添加元素を含み、第2の添加元素はMn,Al,Sn,Ti,Agの少なくとも1種であり、第1の添加元素と同一である場合は、第2の添加元素の濃度は第1の添加元素の濃度より低い請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−35347(P2011−35347A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183147(P2009−183147)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】