説明

半導体装置

【課題】新たな構造の半導体装置を提供することを目的の一とする。
【解決手段】直列に接続されたメモリセルと、容量素子と、を有し、メモリセルの一は、ビット線及びソース線に接続された第1のトランジスタと、信号線及びワード線に接続された第2のトランジスタと、ワード線、に接続された容量素子とを有し、第2のトランジスタは酸化物半導体層を含み、第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方とが接続された、半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を利用した記憶装置は、電力の供給がなくなると記憶内容が失われる揮発性記
憶装置と、電力の供給がなくなっても記憶内容は保持される不揮発性記憶装置とに大別さ
れる。
【0003】
揮発性記憶装置の代表的な例としては、DRAM(Dynamic Random Ac
cess Memory)がある。DRAMは、記憶素子を構成するトランジスタを選択
してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶する。
【0004】
上述の原理から、DRAMでは、情報を読み出すとキャパシタの電荷は失われることにな
るため、データの読み出しの後、再度情報を記憶するには、再度の書き込み動作が必要と
なる。また、記憶素子を構成するトランジスタにはリーク電流が存在し、トランジスタが
選択されていない状況でも電荷が流出、または流入するため、データの保持期間が短い。
このため、所定の周期で再度の書き込み動作(リフレッシュ動作)が必要であり、消費電
力を十分に低減することは困難である。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われ
るため、長期間の記憶の保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要と
なる。
【0005】
揮発性記憶装置の別の例としてはSRAM(Static Random Access
Memory)がある。SRAMは、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を
保持するため、リフレッシュ動作が不要であり、この点においてはDRAMより有利であ
る。しかし、フリップフロップなどの回路を用いているため、記憶容量あたりの単価が高
くなるという問題がある。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるという点に
ついては、DRAMと変わるところはない。
【0006】
不揮発性記憶装置の代表例としては、フラッシュメモリがある。フラッシュメモリは、ト
ランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該
フローティングゲートに電荷を保持させることで記憶を行うため、データの保持期間は極
めて長く(半永久的)、揮発性記憶装置で必要なリフレッシュ動作が不要であるという利
点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、書き込みの際に生じるトンネル電流によって記憶素子を構成するゲート絶縁層が
劣化するため、所定回数の書き込みによって記憶素子が機能しなくなるという問題が生じ
る。この問題の影響を緩和するために、例えば、各記憶素子の書き込み回数を均一化する
手法が採られるが、これを実現するためには、複雑な周辺回路が必要になってしまう。そ
して、このような手法を採用しても、根本的な寿命の問題が解消するわけではない。つま
り、フラッシュメモリは、情報の書き換え頻度が高い用途には不向きである。
【0008】
また、フローティングゲートに電荷を保持させるため、または、その電荷を除去するため
には、高い電圧が必要である。さらに、電荷の保持、または除去のためには比較的長い時
間を要し、書き込み、消去の高速化が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−105889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、電力が供給されない状況でも記憶内容の
保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供する
ことを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体を用いて形成されるトランジスタと、それ以外の材料を
用いて形成されるトランジスタとの積層構造に係る半導体装置である。例えば、次のよう
な構成を採用することができる。
【0012】
本発明の一態様は、ソース線と、ビット線と、信号線と、ワード線と、を有し、ソース線
と、ビット線との間には、複数のメモリセルが直列に接続され、複数のメモリセルの一は
、第1のゲート電極、第1のソース電極、および第1のドレイン電極を有する第1のトラ
ンジスタと、第2のゲート電極、第2のソース電極、および第2のドレイン電極を有する
第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、第1のトランジスタは、半導体材料を含む
基板に設けられ、第2のトランジスタは酸化物半導体層を含んで構成され、第1のゲート
電極と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方と
は、電気的に接続され、ソース線と、第1のソース電極とは、電気的に接続され、ビット
線と、第1のドレイン電極とは、電気的に接続され、信号線と、第2のゲート電極とは、
電気的に接続され、ワード線と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の他方と、
容量素子の電極の他方とは、電気的に接続された半導体装置である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、ソース線と、ビット線と、信号線と、ワード線と、を有し
、ソース線と、ビット線との間には、複数のメモリセルが直列に接続され、複数のメモリ
セルの一は、第1のゲート電極、第1のソース電極、および第1のドレイン電極を有する
第1のトランジスタと、第2のゲート電極、第2のソース電極、および第2のドレイン電
極を有する第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、第1のトランジスタは、半導体
材料を含む基板に設けられ、第2のトランジスタは酸化物半導体層を含んで構成され、第
1のゲート電極と、第2のソース電極または第2のドレイン電極の一方と、容量素子の電
極の一方とは、電気的に接続され、ソース線と、第1のソース電極とは、電気的に接続さ
れ、ビット線と、第1のドレイン電極とは、電気的に接続され、信号線と、第2のソース
電極または第2のドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、ワード線と、第2のゲー
ト電極と、容量素子の電極の他方とは、電気的に接続された半導体装置である。
【0014】
上記において、半導体装置は、第1の選択線と、第2の選択線と、第1の選択線と、ゲー
ト電極において電気的に接続された第3のトランジスタと、第2の選択線と、ゲート電極
において電気的に接続された第4のトランジスタと、を有し、ビット線は、第3のトラン
ジスタを介して、第1のドレイン電極と、電気的に接続され、ソース線は、第4のトラン
ジスタを介して、第1のソース電極と、電気的に接続されるのが好適である。
【0015】
また、上記において、第1のトランジスタは、半導体材料を含む基板に設けられたチャネ
ル形成領域と、チャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域と、チャネル形成領
域上の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁層上の第1のゲート電極と、不純物領域
と電気的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を有する。
【0016】
また、上記において、第2のトランジスタは、半導体材料を含む基板上の第2のゲート電
極と、第2のゲート電極上の第2のゲート絶縁層と、第2のゲート絶縁層上の酸化物半導
体層と、酸化物半導体層と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極
と、を有する。
【0017】
また、上記において、半導体材料を含む基板としては、単結晶半導体基板またはSOI基
板を採用するのが好適である。特に、半導体材料はシリコンとするのが好適である。
【0018】
また、上記において、酸化物半導体層は、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料を
含んでいることが好適である。特に、酸化物半導体層は、InGaZnOの結晶を
含んでいることが好適である。さらに、酸化物半導体層の水素濃度は5×1019ato
ms/cm以下とすることが好適である。また、第2のトランジスタのオフ電流は1×
10−13A以下とすることが好適である。
【0019】
また、上記において、第2のトランジスタは、第1のトランジスタと重畳する領域に設け
られた構成とすることができる。
【0020】
なお、本明細書等において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」
または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上の第1の
ゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層と第1のゲート電極との間に他の構成要素を
含むものを除外しない。また、「上」「下」という用語は説明の便宜のために用いる表現
に過ぎず、特に言及する場合を除き、その上下を入れ替えたものも含む。
【0021】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的
に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあ
り、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極
」や「配線」が一体となって形成されている場合などをも含む。
【0022】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0023】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0024】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線はもちろんのこと、トラ
ンジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機
能を有する素子などが含まれる。
【0025】
また、一般に「SOI基板」は絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板を
いうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設
けられた構成の基板をも含む概念として用いる。つまり、「SOI基板」が有する半導体
層は、シリコン半導体層に限定されない。また、「SOI基板」における基板は、シリコ
ンウェハなどの半導体基板に限らず、ガラス基板や石英基板、サファイア基板、金属基板
などの非半導体基板をも含む。つまり、絶縁表面を有する導体基板や絶縁体基板上に半導
体材料からなる層を有するものも、広く「SOI基板」に含まれる。さらに、本明細書等
において、「半導体基板」は、半導体材料のみからなる基板を指すに留まらず、半導体材
料を含む基板全般を示すものとする。つまり、本明細書等においては「SOI基板」も広
く「半導体基板」に含まれる。
【0026】
また、本明細書等において、酸化物半導体以外の半導体材料とは、酸化物半導体以外の半
導体材料であればどのような半導体材料であっても良い。例えば、シリコン、ゲルマニウ
ム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、等がある。他に、有機半導体
材料などを用いることもできる。なお、半導体装置などを構成する材料について特に言及
しない場合は、酸化物半導体材料または酸化物半導体以外の半導体材料のどちらを用いて
もよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様では、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタを有し、上部
に酸化物半導体を用いたトランジスタを有する半導体装置が提供される。
【0028】
酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることに
より極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動
作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となる
ため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても
、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0029】
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば従来の
不揮発性メモリのようにフローティング(浮遊)ゲートへの電子の注入と引き抜きを行う
必要がないため、ゲート絶縁層の劣化が全く生じることがない。すなわち、本実施形態に
係る半導体装置は、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限は
なく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって
、情報の書き込みが行われるため、高速動作も容易に実現しうる。また、フラッシュメモ
リなどにおいて必要とされる情報を消去するための動作が不要であるというメリットもあ
る。
【0030】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0031】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたト
ランジスタとを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】半導体装置を説明するための回路図
【図2】半導体装置を説明するための断面図および平面図
【図3】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
【図4】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
【図5】半導体装置の作製工程を説明するための断面図
【図6】酸化物半導体を用いたトランジスタの断面図。
【図7】図6のA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)。
【図8】(A)ゲート(GE1)に正の電圧(V>0)が与えられた状態を示し、(B)ゲート(GE1)に負の電圧(V<0)が与えられた状態示す図。
【図9】真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
【図10】C−V特性を示す図
【図11】Vgと(1/C)との関係を示す図
【図12】半導体装置を説明するための断面図
【図13】半導体装置を説明するための断面図
【図14】半導体装置を説明するための断面図
【図15】半導体装置を説明するための断面図
【図16】半導体装置を説明するための回路図
【図17】半導体装置を説明するためのブロック回路図
【図18】半導体装置を説明するための回路図
【図19】半導体装置を説明するための回路図
【図20】半導体装置を用いた電子機器を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および
詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下
に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするため
、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。よって、必ずしも、図面等
に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0035】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同
を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成および作製方法につい
て、図1乃至図15を参照して説明する。
【0037】
<半導体装置の回路構成>
図1には、半導体装置の回路構成の一例を示す。当該半導体装置は、酸化物半導体以外の
材料を用いたトランジスタ160と酸化物半導体を用いたトランジスタ162によって構
成される。なお、図1において、トランジスタ162は、酸化物半導体(Oxide S
emiconductor)を用いたことを明示するために、OSの符号を合わせて付し
ている。以下の実施の形態についても同様である。
【0038】
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはド
レイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line
:ソース線SLとも呼ぶ)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、
第2の配線(2nd Line:ビット線BLとも呼ぶ)とトランジスタ160のドレイ
ン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線(3rd Line:第1信
号線S1とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、
電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2信号線S2とも呼ぶ)と、トラ
ンジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
【0039】
酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160は、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ
162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ1
62をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を極めて長時間に
わたって保持することが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ162で
は、短チャネル効果が現れにくいというメリットもある。
【0040】
ゲート電極の電位を長時間にわたって保持することができるという特徴を生かすことで、
次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0041】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極に与えられる(書き
込み)。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として
、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極の
電位が保持される(保持)。
【0042】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160のゲート電極の
電位は長時間にわたって保持される。例えば、トランジスタ160のゲート電極の電位が
トランジスタ160をオン状態とする電位であれば、トランジスタ160のオン状態が長
時間にわたって保持されることになる。また、トランジスタ160のゲート電極の電位が
トランジスタ160をオフ状態とする電位であれば、トランジスタ160のオフ状態が長
時間にわたって保持される。
【0043】
次に、情報の読み出しについて説明する。上述のように、トランジスタ160のオン状態
またはオフ状態が保持された状態において、第1の配線に所定の電位(低電位)が与えら
れると、トランジスタ160のオン状態またはオフ状態に応じて、第2の配線の電位は異
なる値をとる。例えば、トランジスタ160がオン状態の場合には、第1の配線の電位の
影響を受けて、第2の配線の電位が低下することになる。逆に、トランジスタ160がオ
フ状態の場合には、第2の配線の電位は変化しない。
【0044】
このように、情報が保持された状態において、第2の配線の電位を所定の電位と比較する
ことで、情報を読み出すことができる。
【0045】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび
保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態と
なる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位
(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極に与えられる。その後、
第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ1
62をオフ状態とすることにより、新たな情報が保持された状態となる。
【0046】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。
つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0047】
なお、上記説明は、電子をキャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ
)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔をキャリアと
するp型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0048】
また、トランジスタ160のゲート電極の電位の保持を容易にするために、トランジスタ
160のゲート電極に、容量素子などを付加しても良いことはいうまでもない。
【0049】
<半導体装置の平面構成および断面構成>
図2は、上記半導体装置の構成の一例である。図2(A)には、半導体装置の断面図を、
図2(B)には、半導体装置の平面図を、それぞれ示す。ここで、図2(A)は、図2(
B)の線A1−A2および線B1−B2における断面に相当する。図2(A)および図2
(B)に示される半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ1
60を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162を有するものである。なお
、トランジスタ160およびトランジスタ162は、いずれもn型トランジスタとして説
明するが、p型トランジスタを採用しても良い。特に、トランジスタ160は、p型とす
ることが容易である。
【0050】
トランジスタ160は、半導体材料を含む基板100に設けられたチャネル形成領域11
6と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域114および高濃度不
純物領域120(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域11
6上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極
110と、不純物領域114と電気的に接続するソース電極またはドレイン電極130a
、ソース電極またはドレイン電極130bを有する。
【0051】
ここで、ゲート電極110の側面にはサイドウォール絶縁層118が設けられている。ま
た、基板100の、平面図で見てサイドウォール絶縁層118と重ならない領域には、高
濃度不純物領域120を有し、高濃度不純物領域120上には金属化合物領域124が存
在する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106
が設けられており、トランジスタ160を覆うように、層間絶縁層126および層間絶縁
層128が設けられている。ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極または
ドレイン電極130bは、層間絶縁層126および層間絶縁層128に形成された開口を
通じて、金属化合物領域124と電気的に接続されている。つまり、ソース電極またはド
レイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bは、金属化合物領域124
を介して高濃度不純物領域120および不純物領域114と電気的に接続されている。ま
た、ゲート電極110には、ソース電極またはドレイン電極130aやソース電極または
ドレイン電極130bと同様に設けられた電極130cが電気的に接続されている。
【0052】
トランジスタ162は、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート
電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設けられた
酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140上に設けられ、酸化物半導体層140と
電気的に接続されているソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレ
イン電極142bと、を有する。
【0053】
ここで、ゲート電極136dは、層間絶縁層128上に形成された絶縁層132に、埋め
込まれるように設けられている。また、ゲート電極136dと同様に、ソース電極または
ドレイン電極130aに接して電極136aが、ソース電極またはドレイン電極130b
に接して電極136bが、電極130cに接して電極136cが、それぞれ形成されてい
る。
【0054】
また、トランジスタ162の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように、保護
絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設けられて
いる。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口が設けられて
おり、当該開口を通じて、電極150d、電極150eが、ソース電極またはドレイン電
極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに接して形成されている。また、電
極150d、電極150eと同様に、ゲート絶縁層138、保護絶縁層144、層間絶縁
層146に設けられた開口を通じて、電極136a、電極136b、電極136cに接す
る電極150a、電極150b、電極150cが形成されている。
【0055】
ここで、酸化物半導体層140は水素などの不純物が十分に除去され、高純度化されてい
るものであることが望ましい。具体的には、酸化物半導体層140の水素濃度は5×10
19atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望
ましくは5×1017atoms/cm以下とする。また、十分な酸素を含有すること
により、酸素欠乏に起因する欠陥が低減されたものであることが望ましい。水素濃度が十
分に低減されて高純度化され、酸素欠乏に起因する欠陥が低減された酸化物半導体層14
0では、キャリア濃度が1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm
以下となる。このように、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いること
で、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ162を得ることができる。例えば、ドレ
イン電圧Vdが+1Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電圧Vgが−5Vから−2
0Vの範囲では、オフ電流は1×10−13A以下である。このように、水素濃度が十分
に低減されて高純度化され、酸素欠乏に起因する欠陥が低減された酸化物半導体層140
を適用し、トランジスタ162のオフ電流を低減することにより、新たな構成の半導体装
置を実現することができる。なお、上述の酸化物半導体層140中の水素濃度は、二次イ
オン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectros
copy)で測定したものである。
【0056】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、当該絶縁層152に埋め
込まれるように、電極154a、電極154b、電極154c、電極154dが設けられ
ている。ここで、電極154aは電極150aと接しており、電極154bは電極150
bと接しており、電極154cは電極150cおよび電極150dと接しており、電極1
54dは電極150eと接している。
【0057】
つまり、図2に示される半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極110と、ト
ランジスタ162のソース電極またはドレイン電極142aとが、電極130c、電極1
36c、電極150c、電極154cおよび電極150dを介して電気的に接続されてい
る。
【0058】
<半導体装置の作製方法>
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のト
ランジスタ160の作製方法について図3を参照して説明し、その後、上部のトランジス
タ162の作製方法について図4および図5を参照して説明する。
【0059】
<下部のトランジスタの作製方法>
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(図3(A)参照)。半導体材料を含む基
板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板
、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができ
る。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の
一例について示すものとする。
【0060】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成す
る(図3(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、
窒化酸化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後
において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純
物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシ
リコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用い
ることができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミ
ニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0061】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われてい
ない領域(露出している領域)の基板100の一部を除去する。これにより分離された半
導体領域104が形成される(図3(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチン
グを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエ
ッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0062】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領域
の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(図3(B)参照
)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを用いて形成さ
れる。絶縁層の除去方法としては、CMPなどの研磨処理やエッチング処理などがあるが
、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁
層106の形成後には、上記保護層102を除去する。
【0063】
次に、半導体領域104上に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成す
る。
【0064】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて得
られる酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニ
ウム、酸化タンタル等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度プ
ラズマ処理や熱酸化処理によって、半導体領域104の表面を酸化、窒化させることによ
り、上記絶縁層を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、
Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを用いて
行うことができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上10
0nm以下とすることができる。
【0065】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料
を用いて形成することができる。また、導電材料を含む多結晶シリコンなどの半導体材料
を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、C
VD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例に
ついて示すものとする。
【0066】
その後、絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層108
、ゲート電極110を形成する(図3(C)参照)。
【0067】
次に、ゲート電極110を覆う絶縁層112を形成する(図3(C)参照)。そして、半
導体領域104にリン(P)やヒ素(As)などを添加して、基板100との浅い接合深
さの不純物領域114を形成する(図3(C)参照)。なお、ここではn型トランジスタ
を形成するためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、
硼素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。なお、不純物領
域114の形成により、半導体領域104のゲート絶縁層108下部には、チャネル形成
領域116が形成される(図3(C)参照)。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定
することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その濃度を高くするこ
とが望ましい。また、ここでは、絶縁層112を形成した後に不純物領域114を形成す
る工程を採用しているが、不純物領域114を形成した後に絶縁層112を形成する工程
としても良い。
【0068】
次に、サイドウォール絶縁層118を形成する(図3(D)参照)。サイドウォール絶縁
層118は、絶縁層112を覆うように絶縁層を形成した後に、当該絶縁層に異方性の高
いエッチング処理を適用することで、自己整合的に形成することができる。また、この際
に、絶縁層112を部分的にエッチングして、ゲート電極110の上面と、不純物領域1
14の上面を露出させると良い。
【0069】
次に、ゲート電極110、不純物領域114、サイドウォール絶縁層118等を覆うよう
に、絶縁層を形成する。そして、当該絶縁層が不純物領域114と接する領域に、リン(
P)やヒ素(As)などを添加して、高濃度不純物領域120を形成する(図3(E)参
照)。その後、上記絶縁層を除去し、ゲート電極110、サイドウォール絶縁層118、
高濃度不純物領域120等を覆うように金属層122を形成する(図3(E)参照)。当
該金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法
を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を構成する半導体材
料と反応して低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。この
ような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバル
ト、白金等がある。
【0070】
次に、熱処理を施して、上記金属層122と半導体材料とを反応させる。これにより、高
濃度不純物領域120に接する金属化合物領域124が形成される(図3(F)参照)。
なお、ゲート電極110として多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極110
の金属層122と接触する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0071】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができ
る。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応
の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理が実現できる方法を用いることが望
ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成され
るものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成するこ
とで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物
領域124を形成した後には、金属層122は除去する。
【0072】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、層間絶縁層126、層間絶縁層
128を形成する(図3(G)参照)。層間絶縁層126や層間絶縁層128は、酸化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、
アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、層間絶
縁層126と層間絶縁層128の二層構造としているが、層間絶縁層の構成はこれに限定
されない。層間絶縁層128の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理などに
よって平坦化しておくことが望ましい。
【0073】
その後、上記層間絶縁層に、金属化合物領域124にまで達する開口を形成し、当該開口
に、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bを
形成する(図3(H)参照)。ソース電極またはドレイン電極130aやソース電極また
はドレイン電極130bは、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて
導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電層の一部
を除去することにより形成することができる。
【0074】
なお、上記導電層の一部を除去してソース電極またはドレイン電極130aやソース電極
またはドレイン電極130bを形成する際には、その表面が平坦になるように加工するこ
とが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、
開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMPによって、不
要なタングステン膜、チタン膜、窒化チタン膜などを除去すると共に、その表面の平坦性
を向上させることができる。このように、ソース電極またはドレイン電極130a、ソー
ス電極またはドレイン電極130bを含む表面を平坦化することにより、後の工程におい
て、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0075】
なお、ここでは、金属化合物領域124と接触するソース電極またはドレイン電極130
aやソース電極またはドレイン電極130bのみを示しているが、この工程において、ゲ
ート電極110と接触する電極(例えば、図2(A)における電極130c)などをあわ
せて形成することができる。ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極または
ドレイン電極130bとして用いることができる材料について特に限定はなく、各種導電
材料を用いることができる。例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングス
テン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料を用いることができ
る。
【0076】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160が形成される。な
お、上記工程の後には、さらに電極や配線、絶縁層などを形成しても良い。配線の構造と
して、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用することにより、高
度に集積化した半導体装置を提供することができる。
【0077】
<上部のトランジスタの作製方法>
次に、図4および図5を用いて、層間絶縁層128上にトランジスタ162を作製する工
程について説明する。なお、図4および図5は、層間絶縁層128上の各種電極や、トラ
ンジスタ162などの作製工程を示すものであるから、トランジスタ162の下部に存在
するトランジスタ160等については省略している。
【0078】
まず、層間絶縁層128、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはド
レイン電極130b、電極130c上に絶縁層132を形成する(図4(A)参照)。絶
縁層132はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタ
ル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0079】
次に、絶縁層132に対し、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極または
ドレイン電極130b、および、電極130cにまで達する開口を形成する。この際、後
にゲート電極136dが形成される領域にも併せて開口を形成する。そして、上記開口に
埋め込むように、導電層134を形成する(図4(B)参照)。上記開口はマスクを用い
たエッチングなどの方法で形成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた
露光などの方法によって形成することが可能である。エッチングとしてはウェットエッチ
ング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが、微細加工の観点からは、ドライエッ
チングを用いることが好適である。導電層134の形成は、PVD法やCVD法などの成
膜法を用いて行うことができる。導電層134の形成に用いることができる材料としては
、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム
、スカンジウムなどの導電性材料や、これらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げ
られる。
【0080】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CV
D法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形
成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下
部電極(ここではソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電
極130b、電極130cなど)との界面の酸化膜を還元し、下部電極との接触抵抗を低
減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を
抑制するバリア機能を備える。また、チタンや、窒化チタンなどによるバリア膜を形成し
た後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0081】
導電層134を形成した後には、エッチング処理やCMPといった方法を用いて導電層1
34の一部を除去し、絶縁層132を露出させて、電極136a、電極136b、電極1
36c、ゲート電極136dを形成する(図4(C)参照)。なお、上記導電層134の
一部を除去して電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dを形成
する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このように、絶縁層13
2、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dの表面を平坦化す
ることにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成する
ことが可能となる。
【0082】
次に、絶縁層132、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136d
を覆うように、ゲート絶縁層138を形成する(図4(D)参照)。ゲート絶縁層138
は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層
138は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化
ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。なお、ゲート絶縁
層138は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。例えば、原料ガスとして
、シラン(SiH)、酸素、窒素を用いたプラズマCVD法により、酸化窒化珪素でな
るゲート絶縁層138を形成することができる。ゲート絶縁層138の厚さは特に限定さ
れないが、例えば、10nm以上500nm以下とすることができる。積層構造の場合は
、例えば、膜厚50nm以上200nm以下の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁
層上の膜厚5nm以上300nm以下の第2のゲート絶縁層の積層とすると好適である。
【0083】
なお、不純物を除去することによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体(高
純度化された酸化物半導体)は、界面準位や界面電荷に対して極めて敏感であるため、こ
のような酸化物半導体を酸化物半導体層に用いる場合には、ゲート絶縁層との界面は重要
である。つまり、高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層138には、高品
質化が要求されることになる。
【0084】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法は、緻密で絶縁耐圧の
高い高品質なゲート絶縁層138を形成できる点で好適である。高純度化された酸化物半
導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良
好なものとすることができるからである。
【0085】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、高純度化された
酸化物半導体層を用いる場合であっても、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の
方法を適用することができる。また、形成後の熱処理によって、膜質や酸化物半導体層と
の界面特性が改質される絶縁層を適用しても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層138
としての膜質が良好であると共に、酸化物半導体層との界面準位密度を低減し、良好な界
面を形成できるものを形成すれば良い。
【0086】
さらに、温度85℃、電界強度2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱スト
レス試験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と
酸化物半導体の主成分との結合が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切
断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のシフトを誘発することとなる。
【0087】
これに対して、酸化物半導体の不純物、特に水素や水などを極力排除し、上記のようにゲ
ート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定なトランジス
タを得ることが可能である。
【0088】
次いで、ゲート絶縁層138上に、酸化物半導体層を形成し、マスクを用いたエッチング
などの方法によって当該酸化物半導体層を加工して、島状の酸化物半導体層140を形成
する(図4(E)参照)。
【0089】
酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−Oや、三元
系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O、In−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−
O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金
属酸化物であるIn−Zn−O、Sn−Zn−O、Al−Zn−O、Zn−Mg−O、S
n−Mg−O、In−Mg−Oや、In−O、Sn−O、Zn−Oなどを用いた酸化物半
導体層を適用することができる。また、上記酸化物半導体材料にSiOを含ませても良
い。
【0090】
また、酸化物半導体層は、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いる
ことができる。ここで、Mは、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金
属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びC
oなどがある。InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半導体膜の
うち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、In−Ga−Zn−O酸化物半導体と
呼び、その薄膜をIn−Ga−Zn−O酸化物半導体膜(In−Ga−Zn−O非晶質膜
)などと呼ぶこととする。
【0091】
本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用
ターゲットを用いて、非晶質の酸化物半導体層をスパッタ法により形成することとする。
なお、非晶質の酸化物半導体層中にシリコンを添加することで、その結晶化を抑制するこ
とができるから、例えば、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用い
て酸化物半導体層を形成しても良い。
【0092】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、酸化
亜鉛を主成分とする酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることができる。また、In、
Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比として、In:G
:ZnO=1:1:1[mol比])などを用いることもできる。また、In、
Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットとして、In:Ga
:ZnO=1:1:2[mol比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:
4[mol比]の組成比を有するターゲットなどを用いても良い。酸化物半導体成膜用タ
ーゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上(例えば99.9%
)である。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、緻密な酸化
物半導体層が形成される。
【0093】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、ま
たは、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体
的には、例えば、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物の濃度が数ppm程度(
望ましくは数ppb程度)にまで除去された高純度ガスを用いるのが好適である。
【0094】
酸化物半導体層の形成の際には、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温
度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱
しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を
低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理室
内の残留水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物
をターゲットとして酸化物半導体層を形成する。処理室内の残留水分を除去するためには
、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ
、チタンサブリメーションポンプを用いることができる。また、排気手段としては、ター
ボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気
した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好まし
くは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で形成した酸化物半導体
層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0095】
形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が100mm、圧力が0.6
Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量比率100%)雰囲気、
といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜
時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚のばらつきも小
さくなるため、好ましい。酸化物半導体層の厚さは、2nm以上200nm以下、好まし
くは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚さ
は異なるから、その厚さは用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0096】
なお、酸化物半導体層をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラ
ズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層138の表面に付着しているゴミを除
去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッタ
ターゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させることによ
ってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては
、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを生成す
る方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、酸素雰
囲気などを用いても良い。
【0097】
上記酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれ
を用いても良い。もちろん、両方を組み合わせて用いることもできる。所望の形状にエッ
チングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エ
ッチング時間、温度等)を適宜設定する。
【0098】
ドライエッチングに用いるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(塩素系ガス、
例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(
CCl)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭
素(CF)、弗化硫黄(SF)、弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF
)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やア
ルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0099】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるよ
うに、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される
電力量、基板側の電極温度等)は適宜設定する。
【0100】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液など
を用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)などを用いてもよい。
【0101】
次いで、酸化物半導体層に第1の熱処理を行うことが望ましい。この第1の熱処理によっ
て酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の熱処理の温度は、
300℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。例えば、
抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層140に対して窒素雰囲
気下450℃において1時間の熱処理を行う。この間、酸化物半導体層140は、大気に
触れないようにし、水や水素の再混入が行われないようにする。
【0102】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Ann
eal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライド
ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水
銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置で
ある。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。気体としては、ア
ルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性
気体が用いられる。
【0103】
例えば、第1の熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板
を投入し、数分間加熱した後、当該不活性ガス中から基板を取り出すGRTA処理を行っ
てもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短時間の
熱処理であるため、基板の歪み点を超える温度条件であっても適用が可能となる。
【0104】
なお、第1の熱処理は、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分
とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気で行うことが望ましい。例えば
、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、
6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち
、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0105】
第1の熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層が結晶化
し、微結晶または多結晶となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80
%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の熱処理の条件、または
酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体層となる場
合もある。
【0106】
また、非晶質の酸化物半導体(例えば、酸化物半導体層の表面)に結晶(粒径1nm以上
20nm以下、代表的には2nm以上4nm以下)が混在する酸化物半導体層となる場合
もある。
【0107】
また、非晶質の表面に結晶層を設けることで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させる
ことも可能である。例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットを
用いて酸化物半導体層を形成する場合には、電気的異方性を有するInGaZnO
の結晶粒が配向した結晶部を形成することで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させる
ことができる。
【0108】
より具体的には、例えば、InGaZnOのc軸が酸化物半導体層の表面に垂直な
方向をとるように配向させることで、酸化物半導体層の表面に平行な方向の導電性を向上
させ、酸化物半導体層の表面に垂直な方向の絶縁性を向上させることができる。また、こ
のような結晶部は、酸化物半導体層中への水や水素などの不純物の侵入を抑制する機能を
有する。
【0109】
なお、上述の結晶部を有する酸化物半導体層は、GRTA処理による酸化物半導体層の表
面加熱によって形成することができる。また、Znの含有量がInまたはGaの含有量よ
り小さいスパッタターゲットを用いることで、より好適に形成することが可能である。
【0110】
酸化物半導体層140に対する第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層140に加工する
前の酸化物半導体層に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置か
ら基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0111】
なお、上記第1の熱処理は、酸化物半導体層140に対する脱水化、脱水素化の効果があ
るから、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。このような脱水化処理、脱
水素化処理は、酸化物半導体層の形成後、酸化物半導体層140上にソース電極またはド
レイン電極を積層させた後、ソース電極またはドレイン電極上に保護絶縁層を形成した後
、などのタイミングにおいて行うことが可能である。また、このような脱水化処理、脱水
素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0112】
次に、酸化物半導体層140に接するように、ソース電極またはドレイン電極142a、
ソース電極またはドレイン電極142bを形成する(図4(F)参照)。ソース電極また
はドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bは、酸化物半導体層1
40を覆うように導電層を形成した後、当該導電層を選択的にエッチングすることにより
形成することができる。
【0113】
導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用
いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、
タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した元素を
成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリ
リウム、トリウムから選択されたいずれか一または複数の材料を用いてもよい。また、ア
ルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカ
ンジウムから選ばれた元素を単数、または複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0114】
また、導電層は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸
化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジ
ウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジ
ウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)または、これらの金属酸化物材料にシリコン若
しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0115】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリ
コンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構
造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。
【0116】
ここで、エッチングに用いるマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArF
レーザ光を用いるのが好適である。
【0117】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極142aの下端部と
、ソース電極またはドレイン電極142bの下端部との間隔によって決定される。なお、
チャネル長(L)が25nm未満において露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極
めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いてマスク形
成の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に
形成されるトランジスタのチャネル長(L)を10nm以上1000nm以下とすること
も可能であり、回路の動作速度を高速化できる。さらにオフ電流値が極めて小さいため、
消費電力が大きくならずに済む。
【0118】
なお、導電層のエッチングの際には、酸化物半導体層140が除去されないように、それ
ぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッチング条件によ
っては、当該工程において、酸化物半導体層140の一部がエッチングされ、溝部(凹部
)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0119】
また、酸化物半導体層140とソース電極またはドレイン電極142aの間や、酸化物半
導体層140とソース電極またはドレイン電極142bの間には、酸化物導電層を形成し
てもよい。酸化物導電層と、ソース電極またはドレイン電極142aやソース電極または
ドレイン電極142bを形成するための金属層は、連続して形成すること(連続成膜)が
可能である。酸化物導電層はソース領域またはドレイン領域として機能しうる。このよう
な酸化物導電層を設けることで、ソース領域またはドレイン領域の低抵抗化を図ることが
できるため、トランジスタの高速動作が実現される。
【0120】
また、上記マスクの使用数や工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光
マスクである多階調マスクによってレジストマスクを形成し、これを用いてエッチング工
程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは、複数の厚みを有す
る形状(階段状)となり、アッシングによりさらに形状を変形させることができるため、
異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。つまり、一枚の
多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマス
クを形成することができる。よって、露光マスク数を削減することができ、対応するフォ
トリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が図れる。
【0121】
なお、上述の工程の後には、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理
を行うのが好ましい。当該プラズマ処理によって、露出している酸化物半導体層の表面に
付着した水などが除去される。また、酸素とアルゴンの混合ガスなど、酸素を含有するガ
スを用いたプラズマ処理を行ってもよい。これによって酸化物半導体層に酸素を供給し、
酸素欠乏に起因する欠陥を低減することが可能である。
【0122】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層140の一部に接する保護絶縁層14
4を形成する(図4(G)参照)。
【0123】
保護絶縁層144は、スパッタ法など、保護絶縁層144に水、水素等の不純物を混入さ
せない方法を適宜用いて形成することができる。また、その厚さは、1nm以上とする。
保護絶縁層144に用いることができる材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪
素、窒化酸化珪素などがある。また、その構造は、単層構造としても良いし、積層構造と
しても良い。保護絶縁層144を形成する際の基板温度は、室温以上300℃以下とする
のが好ましく、雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、または希
ガス(代表的にはアルゴン)と酸素の混合雰囲気とするのが好適である。
【0124】
保護絶縁層144に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入や、水素によ
る酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、などが生じ、酸化物半導体層のバックチャネル側
が低抵抗化してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、保護絶縁層1
44はできるだけ水素を含まないように、形成方法においては水素を用いないことが重要
である。
【0125】
また、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層144を形成することが好ましい。酸
化物半導体層140および保護絶縁層144に水素、水酸基または水が含まれないように
するためである。
【0126】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。
例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが
好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであ
ってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H
O)など水素原子を含む化合物等が除去されているため、当該成膜室で形成した保護絶縁
層144に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0127】
保護絶縁層144を形成する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基または
水素化物などの不純物の濃度が数ppm程度(望ましくは数ppb程度)にまで除去され
た高純度ガスを用いることが好ましい。
【0128】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の熱処理(好ましくは20
0℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うのが望ましい。例えば
、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の熱処理を行う。第2の熱処理を行うと、トラ
ンジスタの電気的特性のばらつきを低減することができる。また、第2の熱処理によって
、酸化物半導体層に酸素を供給することが可能である。
【0129】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の熱処理を行っても
よい。この熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以
上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえし
て行ってもよい。また、この熱処理を、保護絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。
減圧下で熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。なお、当該熱処理は、上記
第2の熱処理に代えて行っても良いし、第2の熱処理の前後などに行っても良い。
【0130】
次に、保護絶縁層144上に、層間絶縁層146を形成する(図5(A)参照)。層間絶
縁層146はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタ
ル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。層間絶縁層146の形成
後には、その表面を、CMPやエッチングなどの方法によって平坦化しておくことが望ま
しい。
【0131】
次に、層間絶縁層146、保護絶縁層144、およびゲート絶縁層138に対し、電極1
36a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース
電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むように
導電層148を形成する(図5(B)参照)。上記開口はマスクを用いたエッチングなど
の方法で形成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法に
よって形成することが可能である。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッ
チングのいずれを用いても良いが、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いるこ
とが好適である。導電層148の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行う
ことができる。導電層148の形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チ
タン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムな
どの導電性材料や、これらの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0132】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法
により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成す
る方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下部電
極(ここでは、電極136a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン
電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bなど)との界面の酸化膜を還元し
、下部電極との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタ
ンは、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや、窒化チタンな
どによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0133】
導電層148を形成した後には、エッチングやCMPといった方法を用いて導電層148
の一部を除去し、層間絶縁層146を露出させて、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eを形成する(図5(C)参照)。なお、上記導電層
148の一部を除去して電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、電
極150eを形成する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このよ
うに、層間絶縁層146、電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、
電極150eの表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶
縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0134】
さらに、絶縁層152を形成し、絶縁層152に、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むよ
うに導電層を形成した後、エッチングやCMPなどの方法を用いて導電層の一部を除去し
、絶縁層152を露出させて、電極154a、電極154b、電極154c、電極154
dを形成する(図5(D)参照)。当該工程は、電極150a等を形成する場合と同様で
あるから、詳細は省略する。
【0135】
上述のような方法でトランジスタ162を作製した場合、酸化物半導体層140の水素濃
度は5×1019atoms/cm以下となり、また、トランジスタ162のオフ電流
は検出限界である1×10−13A以下となる。さらに、トランジスタ162のオフ電流
(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA/μm以下となる。こ
のような、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、酸素欠乏に起因する欠陥が低減さ
れた酸化物半導体層140を適用することで、優れた特性のトランジスタ162を得るこ
とができる。また、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、
上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162を有する優れた特性の半導体装置を作製
することができる。
【0136】
なお、酸化物半導体において、物性研究は多くなされているが、エネルギーギャップ中の
局在準位そのものを十分に減らすという思想を含まない。開示する発明の一態様では、局
在準位の原因たり得る水や水素を酸化物半導体中より除去することで、高純度化した酸化
物半導体を作製する。これは、エネルギーギャップ中の局在準位そのものを十分に減らす
という思想に立脚するものである。そして、これによって極めて優れた工業製品の製造を
可能とするものである。
【0137】
なお、水素や水などを除去する際には、同時に酸素が除去されてしまうことがある。この
ため、酸素欠乏により発生する金属の未結合手に対して酸素を供給し、酸素欠陥による局
在準位を減少させることにより、酸化物半導体をさらに高純度化(i型化)するのは好適
である。たとえば、チャネル形成領域に密接して酸素過剰の酸化膜を形成し、200℃〜
400℃、代表的には250℃程度の温度条件での熱処理を行うことで、当該酸化膜から
酸化物半導体中へ酸素を供給して、酸素欠陥による局在準位を減少させることが可能であ
る。また、第2の熱処理中に、不活性ガス、または酸素を含むガスに切り替えても良い。
第2の熱処理に続けて、酸素雰囲気、または水素や水を十分に除去した雰囲気における降
温過程を経ることで、酸化物半導体中に酸素を供給することも可能である。
【0138】
酸化物半導体の特性を悪化させる要因は、過剰な水素による伝導帯下0.1〜0.2eV
の浅い準位や、酸素欠損による深い準位、などであると考えられる。これらの欠陥を無く
すために、水素を徹底的に除去し、酸素を十分に供給するという技術思想は正しいもので
あろう。
【0139】
開示する発明では酸化物半導体を高純度化しているため、酸化物半導体中のキャリア密度
は十分小さい。
【0140】
さらに、常温でのフェルミ・ディラック分布則を用いると、エネルギーギャップが3.0
5〜3.15eVである酸化物半導体の真性キャリア密度は1×10−7/cmとなり
、真性キャリア密度が1.45×1010/cmであるシリコンと比べてはるかに小さ
い。
【0141】
そのため、少数キャリアであるホールも極めて少なく、IGFET(Insulated
Gate Field Effect Transistor)におけるオフ状態での
リーク電流は常温において100aA/μm以下、好ましくは10aA/μm以下、さら
に好ましくは1aA/μm以下を期待することができる。なお、ここで1aA/μmとい
う表記は、トランジスタのチャネル幅1μm当たり1aA(1×10−18A)の電流が
流れることを示す。
【0142】
もっとも、エネルギーギャップが3eV以上のワイドギャップ半導体として4H−SiC
(3.26eV)、GaN(3.42eV)などが知られており、同様なトランジスタ特
性が得られることが期待される。しかし、これらの半導体材料は1500℃以上のプロセ
ス温度を経由するため、薄膜化は実質的に不可能である。また、シリコン集積回路の上に
三次元の積層化をしようとしても、プロセス温度が高すぎるため不可能である。他方、酸
化物半導体は、室温〜400℃の加熱スパッタによる薄膜形成が可能であり、脱水化・脱
水素化(水素や水を除去すること)及び加酸化(酸素を供給すること)を450℃〜70
0℃で実現することができるため、シリコン集積回路の上に三次元的な積層構造を形成す
ることができる。
【0143】
なお、酸化物半導体は一般にn型とされているが、開示する発明の一態様では、水や水素
などの不純物を除去すると共に、酸化物半導体の構成元素である酸素を供給することでi
型化を実現する。この点、シリコンなどのように不純物を添加してのi型化ではなく、従
来にない技術思想を含むものといえる。
【0144】
<酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構>
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、図6乃至図9を用いて説
明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定しており、そのす
べてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあくまでも一考察に
過ぎず、発明の有効性に影響を与えるものではないことを付記する。
【0145】
図6は、酸化物半導体を用いたトランジスタ(薄膜トランジスタ)の断面図である。ゲー
ト電極(GE1)上にゲート絶縁層(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ
、その上にソース電極(S)およびドレイン電極(D)が設けられ、ソース電極(S)お
よびドレイン電極(D)を覆うように絶縁層が設けられている。
【0146】
図7には、図6のA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。また、図
7中の黒丸(●)は電子を示し、白丸(○)は正孔を示し、それぞれは電荷(−q,+q
)を有している。ドレイン電極に正の電圧(V>0)を印加した上で、破線はゲート電
極に電圧を印加しない場合(V=0)、実線はゲート電極に正の電圧(V>0)を印
加する場合を示す。ゲート電極に電圧を印加しない場合は高いポテンシャル障壁のために
電極から酸化物半導体側へキャリア(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状態を示
す。一方、ゲートに正の電圧を印加するとポテンシャル障壁が低下し、電流を流すオン状
態を示す。
【0147】
図8には、図6におけるB−B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。
図8(A)は、ゲート電極(GE1)に正の電圧(V>0)が与えられた状態であり、
ソース電極とドレイン電極との間にキャリア(電子)が流れるオン状態を示している。ま
た、図8(B)は、ゲート電極(GE1)に負の電圧(V<0)が印加された状態であ
り、オフ状態(少数キャリアは流れない状態)である場合を示す。
【0148】
図9は、真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を
示す。
【0149】
常温において金属中の電子は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する。一方、
従来の酸化物半導体はn型であり、そのフェルミ準位(E)は、バンドギャップ中央に
位置する真性フェルミ準位(E)から離れて、伝導帯寄りに位置している。なお、酸化
物半導体において水素の一部はドナーとなりn型化する要因の一つであることが知られて
いる。
【0150】
これに対して開示する発明の一態様に係る酸化物半導体は、n型化の要因である水素を酸
化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれな
いように高純度化することにより真性(i型)とし、または真性とせんとしたものである
。すなわち、不純物元素を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去
することにより、高純度化されたi型(真性半導体)またはそれに近づけることを特徴と
している。これにより、フェルミ準位(E)は真性フェルミ準位(E)と同程度とす
ることができる。
【0151】
酸化物半導体のバンドギャップ(E)は3.15eVで、電子親和力(χ)は4.3V
と言われている。ソース電極およびドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数は
、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属−酸化物半導体界面に
おいて、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0152】
すなわち、金属の仕事関数(φ)と酸化物半導体の電子親和力(χ)が等しい場合、両
者が接触すると図7で示すようなエネルギーバンド図(模式図)が示される。
【0153】
図7において黒丸(●)は電子を示す。ドレインに正の電位が与えられると、電子はバリ
アをこえて酸化物半導体に注入され、ドレインに向かって流れる。バリアの高さは、ゲー
ト電圧とドレイン電圧に依存して変化するが、正のドレイン電圧が印加される場合には、
電圧印加のない図7のバリアの高さ、すなわちバンドギャップ(E)の1/2、より低
くなる。
【0154】
このとき電子は、図8(A)で示すように、ゲート絶縁層と高純度化された酸化物半導体
との界面付近(酸化物半導体のエネルギー的に安定な最低部)を移動する。
また、図8(B)に示すように、ゲート電極(GE1)に負の電位が与えられると、少数
キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値となる。
【0155】
このように酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純
度化することにより、真性(i型)とし、または実質的に真性となるため、ゲート絶縁層
との界面特性が顕在化する。そのため、ゲート絶縁層には、酸化物半導体と良好な界面を
形成できるものが要求される。具体的には、例えば、VHF帯〜マイクロ波帯の電源周波
数で生成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁層や、スパッタリング
法で作製される絶縁層などを用いることが好ましい。
【0156】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁層との界面を良好なものとす
ることにより、例えば、トランジスタのチャネル幅(W)が1×10μm、チャネル長
(L)が3μmの場合には、10−13A以下のオフ電流、0.1V/dec.のサブス
レッショルドスイング値(S値)(ゲート絶縁層の厚さ:100nm)が実現され得る。
【0157】
このように、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高
純度化することにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0158】
<キャリア濃度>
開示する発明に係る技術思想は、酸化物半導体層におけるキャリア濃度を十分に小さくし
、できるだけ真性(i型)に近づけようとするものである。以下、キャリア濃度の求め方
、および、実際に測定したキャリア濃度に関し、図10および図11を参照して説明する

【0159】
まず、キャリア濃度の求め方について簡単に説明する。キャリア濃度は、MOSキャパシ
タを作製し、MOSキャパシタのC−V測定の結果(C−V特性)を評価することで求め
ることが可能である。
【0160】
より具体的には、MOSキャパシタのゲート電圧Vgと容量Cとの関係をプロットしたC
−V特性を取得し、当該C−V特性からゲート電圧Vgと(1/C)との関係を表すグ
ラフを取得し、当該グラフにおいて弱反転領域での(1/C)の微分値を求め、当該微
分値を式(1)に代入することによりキャリア濃度Nの大きさが求められる。なお、式
(1)において、eは電気素量、εは真空の誘電率、εは酸化物半導体の誘電率である

【0161】
【数1】

【0162】
次に、上記の方法を用いて実際に測定したキャリア濃度について説明する。測定には、ガ
ラス基板上にチタン膜を300nmの厚さで形成し、チタン膜上に窒化チタン膜を100
nmの厚さで形成し、窒化チタン膜上に、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い
た酸化物半導体層を2μmの厚さで形成し、酸化物半導体層上に銀膜を300nmの厚さ
で形成した試料(MOSキャパシタ)を用いた。なお、酸化物半導体層は、In、Ga、
およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(In:Ga:ZnO=1
:1:1[mol比])を用いたスパッタリング法により形成した。また、酸化物半導体
層の形成雰囲気は、アルゴンと酸素の混合雰囲気(流量比は、Ar:O=30(scc
m):15(sccm))とした。
【0163】
図10にはC−V特性を、図11にはVgと(1/C)との関係を、それぞれ示す。図
11の弱反転領域における(1/C)の微分値から式(1)を用いて得られたキャリア
濃度は、6.0×1010/cmであった。
【0164】
このように、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体(例えば、キャリア濃度が
1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm以下)を用いることで、
極めて優れたオフ電流特性のトランジスタを得ることが可能である。
【0165】
<変形例>
図12乃至図15には、半導体装置の構成の変形例を示す。なお、以下では、変形例とし
て、トランジスタ162の構成が上記とは異なるものについて説明する。つまり、トラン
ジスタ160の構成は上記と同様である。
【0166】
図12には、酸化物半導体層140の下にゲート電極136dを有し、ソース電極または
ドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層1
40の下側表面において酸化物半導体層140と接する構成のトランジスタ162を有す
る例を示す。なお、平面の構造は、断面に対応して適宜変更すればよいから、ここでは、
断面についてのみ示すこととする。
【0167】
図12に示す構成と図2に示す構成の大きな相違点として、ソース電極またはドレイン電
極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bと、酸化物半導体層140との接
続の位置がある。つまり、図2に示す構成では、酸化物半導体層140の上側表面におい
て、酸化物半導体層140がソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極また
はドレイン電極142bと接するのに対して、図12に示す構成では、酸化物半導体層1
40の下側表面において、酸化物半導体層140がソース電極またはドレイン電極142
aや、ソース電極またはドレイン電極142bと接する。そして、この接触の相違に起因
して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。各構成要素の詳細は
、図2と同様である。
【0168】
具体的には、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート電極136
d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設けられた、ソース電
極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極
またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接す
る酸化物半導体層140と、を有する。
【0169】
ここで、ゲート電極136dは、層間絶縁層128上に形成された絶縁層132に、埋め
込まれるように設けられている。また、ゲート電極136dと同様に、ソース電極または
ドレイン電極130aに接して電極136aが、ソース電極またはドレイン電極130b
に接して電極136bが、電極130cに接して電極136cが、それぞれ形成されてい
る。
【0170】
また、トランジスタ162の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように、保護
絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設けられて
いる。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口が設けられて
おり、当該開口を通じて、電極150d、電極150eが、ソース電極またはドレイン電
極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに接して形成されている。また、電
極150d、電極150eと同様に、ゲート絶縁層138、保護絶縁層144、層間絶縁
層146に設けられた開口を通じて、電極136a、電極136b、電極136cに接す
る電極150a、電極150b、電極150cが形成されている。
【0171】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、当該絶縁層152に埋め
込まれるように、電極154a、電極154b、電極154c、電極154dが設けられ
ている。ここで、電極154aは電極150aと接しており、電極154bは電極150
bと接しており、電極154cは電極150cおよび電極150dと接しており、電極1
54dは電極150eと接している。
【0172】
図13は、酸化物半導体層140の上にゲート電極136dを有する構成の例である。こ
こで、図13(A)は、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはド
レイン電極142bが、酸化物半導体層140の下側表面において酸化物半導体層140
と接する構成の例であり、図13(B)は、ソース電極またはドレイン電極142aや、
ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層140の上側表面において酸
化物半導体層140と接する構成の例である。
【0173】
図2や図12に示す構成と図13に示す構成の大きな相違点は、酸化物半導体層140の
上にゲート電極136dを有する点である。また、図13(A)に示す構成と図13(B
)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極
またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層140の下側表面または上側表面のいず
れにおいて接触するか、という点である。そして、これらの相違に起因して、その他の電
極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。各構成要素の詳細は、図2などと同様
である。
【0174】
具体的には、図13(A)では、層間絶縁層128上に設けられたソース電極またはドレ
イン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接する酸化物半導
体層140と、酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁
層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域のゲート電極136dと、を有する。
【0175】
また、図13(B)では、層間絶縁層128上に設けられた酸化物半導体層140と、酸
化物半導体層140の上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極
142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、酸化物半導体層140、ソース電
極またはドレイン電極142a、および、ソース電極またはドレイン電極142b上に設
けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳す
る領域のゲート電極136dと、を有する。
【0176】
なお、図13に示す構成では、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略できる場
合がある(例えば、電極150aや、電極154aなど)。この場合、作製工程の簡略化
という副次的な効果も得られる。もちろん、図2などに示す構成においても、必須ではな
い構成要素を省略できることはいうまでもない。
【0177】
図14は、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の下にゲー
ト電極136dを有する構成の例である。この場合、表面の平坦性やカバレッジに対する
要求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極などを絶縁層中に埋め込むように形成
する必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニングを行うことで、ゲート電極13
6dなどを形成することが可能である。なお、ここでは図示しないが、トランジスタ16
0についても、同様に作製することが可能である。
【0178】
図14(A)に示す構成と図14(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極または
ドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層1
40の下側表面または上側表面のいずれにおいて接触するか、という点である。そして、
これらの相違に起因して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。
各構成要素の詳細は、図2などと同様である。
【0179】
具体的には、図14(A)では、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと
、ゲート電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設
けられた、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極14
2bと、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142
bの上側表面に接する酸化物半導体層140と、を有する。
【0180】
また、図14(B)では、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲー
ト電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上のゲート電
極136dと重畳する領域に設けられた酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140
の上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極142a、ソース電
極またはドレイン電極142bと、を有する。
【0181】
なお、図14に示す構成においても、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略で
きる場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0182】
図15は、素子のサイズが比較的大きい場合であって、酸化物半導体層140の上にゲー
ト電極136dを有する構成の例である。この場合にも、表面の平坦性やカバレッジに対
する要求は比較的緩やかなものであるから、配線や電極などを絶縁層中に埋め込むように
形成する必要はない。例えば、導電層の形成後にパターニングを行うことで、ゲート電極
136dなどを形成することが可能である。なお、ここでは図示しないが、トランジスタ
160についても、同様に作製することが可能である。
【0183】
図15(A)に示す構成と図15(B)に示す構成の大きな相違点は、ソース電極または
ドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bが、酸化物半導体層1
40の下側表面または上側表面のいずれにおいて接触するか、という点である。そして、
これらの相違に起因して、その他の電極、絶縁層などの配置が異なるものとなっている。
各構成要素の詳細は、図2などと同様である。
【0184】
具体的には、図15(A)では、層間絶縁層128上に設けられたソース電極またはドレ
イン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの上側表面に接する酸化物半導
体層140と、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極
142b、酸化物半導体層140上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層1
38上の酸化物半導体層140と重畳する領域に設けられたゲート電極136dと、を有
する。
【0185】
また、図15(B)では、層間絶縁層128上に設けられた酸化物半導体層140と、酸
化物半導体層140の上側表面に接するように設けられたソース電極またはドレイン電極
142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイン電極1
42a、ソース電極またはドレイン電極142b、酸化物半導体層140上に設けられた
ゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上の酸化物半導体層140と重畳する領域に
設けられたゲート電極136dと、を有する。
【0186】
なお、図15に示す構成においても、図2に示す構成などと比較して、構成要素が省略で
きる場合がある。この場合も、作製工程の簡略化という効果が得られる。
【0187】
以上に示したように、開示する発明の一態様によって、新たな構成の半導体装置が実現さ
れる。本実施の形態では、トランジスタ160とトランジスタ162を積層して形成する
例について説明したが、半導体装置の構成はこれに限られるものではない。また、本実施
の形態では、トランジスタ160とトランジスタ162のチャネル長方向が互いに垂直と
なる例を説明したが、トランジスタ160とトランジスタ162の位置関係などはこれに
限られるものではない。さらに、トランジスタ160とトランジスタ162とを重畳して
設けても良い。
【0188】
また、本実施の形態では理解の簡単のため、最小記憶単位(1ビット)の半導体装置につ
いて説明したが、半導体装置の構成はこれに限られるものではない。複数の半導体装置を
適当に接続して、より高度な半導体装置を構成することもできる。例えば、上記半導体装
置を複数用いて、NAND型やNOR型の半導体装置を構成することが可能である。配線
の構成も図1に限定されず、適宜変更することができる。
【0189】
本実施の形態に係る半導体装置は、トランジスタ162の低オフ電流特性により、極めて
長時間にわたり情報を保持することが可能である。つまり、DRAMなどで必要とされる
リフレッシュ動作が不要であり、消費電力を抑制することができる。また、実質的な不揮
発性記憶装置として用いることが可能である。
【0190】
また、トランジスタ162のスイッチング動作によって情報の書き込みなどを行うため、
高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン、オフに
よって、情報の書き込みや消去が行われるため、高速動作も容易に実現しうる。また、ト
ランジスタに入力する電位を制御することで情報を直接書き換えることが可能である。こ
のため、フラッシュメモリなどにおいて必要とされる消去動作が不要であり、消去動作に
起因する動作速度の低下を抑制することができる。
【0191】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0192】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0193】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の回路構成および動作方法について
説明する。
【0194】
〈メモリセルの構成〉
半導体装置が有するメモリセル回路図の一例を図16に示す。図16に示すメモリセル2
00は、第1信号線S1と、ワード線WLと、トランジスタ201(第1のトランジスタ
)と、トランジスタ202(第2のトランジスタ)と、容量素子203と、から構成され
ている。トランジスタ201は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トラ
ンジスタ202は酸化物半導体を用いて形成されている。ここで、トランジスタ201は
、実施の形態1に示すトランジスタ160と同様の構成とするのが好ましい。また、トラ
ンジスタ202は、実施の形態1に示すトランジスタ162と同様の構成とするのが好ま
しい。また、メモリセル200は、ソース線SL及びビット線BLと電気的に接続されて
おり、トランジスタ(他のメモリセルを構成するものも含む。)を介して、ソース線SL
及びビット線BLと電気的に接続されていてもよい。
【0195】
ここで、トランジスタ201のゲート電極と、トランジスタ202のソース電極またはド
レイン電極の一方と、容量素子203の電極の一方とは、電気的に接続されている。また
、ソース線SLと、トランジスタ201のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線
BLと、トランジスタ201のドレイン電極とは、電気的に接続され、第1信号線S1と
、トランジスタ202のゲート電極とは、電気的に接続され、ワード線WLと、トランジ
スタ202のソース電極またはドレイン電極の他方と、容量素子203の電極の他方とは
、電気的に接続されている。なお、ソース線SLと、トランジスタ201のソース電極と
は、トランジスタ(他のメモリセルを構成するものも含む。)を介して接続されていても
よい。また、ビット線BLと、トランジスタ201のドレイン電極とは、トランジスタ(
他のメモリセルを構成するものも含む。)を介して接続されていてもよい。
【0196】
〈半導体装置の構成〉
図17に、m×nビットの記憶容量を有する半導体装置のブロック回路図を示す。ここで
は一例として、メモリセル200が直列に接続されたNAND型の半導体装置を示す。
【0197】
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本のワード線WLと、n本のビット線BL及び第
1信号線S1と、2本の選択線SEL(1)、SEL(2)と、複数のメモリセル200
(1、1)〜200(m、n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマト
リクス状に配置されたメモリセルアレイ210と、選択線SEL(1)に沿って、ビット
線BL(1)〜BL(n)とメモリセル200(1、1)〜200(1、n)の間に配置
されたトランジスタ215(1、1)〜215(1、n)と、選択線SEL(2)に沿っ
て、ソース線SL(1)〜SL(n)とメモリセル200(m、1)〜200(m、n)
の間に配置されたトランジスタ215(2、1)〜215(2、n)と、ビット線及び第
1信号線の駆動回路211と、ワード線の駆動回路213と、読み出し回路212といっ
た周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けら
れてもよい。
【0198】
メモリセル200(i、j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、
第1信号線S1(j)及びワード線WL(i)にそれぞれ接続されている。また、メモリ
セル200(i、j)(iは2〜mの整数)が有するトランジスタ201のドレイン
電極は、メモリセル200(i−1、j)が有するトランジスタ201のソース電極に
接続される。メモリセル200(1、j)が有するトランジスタ201のドレイン電極は
、トランジスタ215(1、j)のソース電極に接続され、メモリセル200(m、j)
が有するトランジスタ201のソース電極は、トランジスタ215(2、j)のドレイン
電極に接続される。トランジスタ215(1、j)のドレイン電極はビット線BL(j)
に接続され、トランジスタ215(2、j)のソース電極はソース線SL(j)に接続さ
れる。また、トランジスタ215(1,j)のゲート電極は、選択線SEL(1)に接続
され、トランジスタ215(2,j)のゲート電極は、選択線SEL(2)に接続される

【0199】
また、ビット線BL(1)〜BL(n)及び第1信号線S1(1)〜S1(n)はビット
線及び第1信号線の駆動回路211に、ワード線WL(1)〜WL(m)及び選択線SE
L(1)、SEL(2)はワード線の駆動回路213にそれぞれ接続されている。また、
ビット線BL(1)〜BL(n)は、読み出し回路212にも接続されている。ソース線
SL(1)〜SL(n)には電位Vsが与えられている。なお、ソース線SL(1)〜S
L(n)は必ずしも分離されている必要はなく、互いに電気的に接続されているような構
成にしてもよい。
【0200】
〈半導体装置の動作〉
次に、図17に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、書き込みは列ご
と、読み出しは行ごとに行う。
【0201】
第j列のメモリセル200(1,j)〜200(m,j)に書き込みを行う場合は、第1
信号線S1(j)の電位をV1(任意の電位、例えば2V)、とし、対象メモリセルのト
ランジスタ202をオン状態とする。一方、第j列以外の第1信号線S1の電位はV0(
任意の電位、例えば0V)とし、対象ではないメモリセルのトランジスタ202をオフ状
態とする。他の配線は、ビット線BL(1)〜BL(n)の電位をV0、選択線SEL(
1)、SEL(2)の電位をV0、ソース線SL(1)〜SL(n)の電位VsをV0と
する。ここで、電位V1は、ゲート電極に印加することにより、トランジスタ201、ト
ランジスタ202及びトランジスタ215をオン状態とする程度の電位とし、電位V0は
、ゲート電極に印加することにより、トランジスタ201、トランジスタ202及びトラ
ンジスタ215をオフ状態とする程度の電位とする。
【0202】
この状態で、ワード線WLの電位VWLを所定の電位とすることにより、データの書き込
みが行われる。例えば、データ”1”を書き込む場合には、対象メモリセルに接続された
ワード線WLの電位をVw_1とし、データ”0”を書き込む場合には、対象メモリセル
に接続されたワード線WLの電位をVw_0とする。なお、書き込み終了にあたっては、
ワード線WLの電位が変化する前に、第1信号線S1(j)の電位をV0として、対象メ
モリセルのトランジスタ202をオフ状態にする。
【0203】
ここで、トランジスタ201のゲート電極に接続されるノード(以下、ノードA)には、
書き込み時のワード線WLの電位VWLに応じた電荷QAが蓄積され、これによってデー
タが格納されることになる。ここで、トランジスタ202のオフ電流が極めて小さい、あ
るいは実質0であることから、書き込まれたデータは長時間にわたって保持される。他の
列のメモリセルでは、ノードAに蓄積された電荷QAは変化しない。
【0204】
なお、書き込み時のビット線BL(1)〜BL(n)の電位はV0としたが、トランジス
タ215(1,1)〜215(1,n)がオフ状態の範囲で、フローティング状態や任意
の電位に充電されていても構わない。
【0205】
また、書き込み時において、SOI基板上にトランジスタを形成した場合など、半導体装
置が基板電位を有さない場合には、例えば次のようにメモリセルにデータの書き込みを行
う。まず、選択線SEL(1)の電位をV0、選択線SEL(2)の電位をV1として、
トランジスタ215(1,j)をオフ状態、トランジスタ215(2,j)をオン状態と
する。また、第1信号線S1(j)の電位をV1とし、第j列のメモリセル200(1、
j)〜200(m,j)のトランジスタ202をオン状態とする。また、ワード線WL(
1)〜WL(m)の電位をV1とし、第j列のメモリセル200(1,j)〜200(m
,j)のトランジスタ201をオン状態とする。次に、第1行のメモリセル200(1,
j)から順にワード線WLの電位VWLを所定の電位とすることで、上述のデータの書き
込みを行う。第m行のメモリセル200(m,j)までデータの書き込みが終了したら、
選択線SEL(2)の電位をV0として、トランジスタ215(2,j)をオフ状態とす
る。これにより、第j列のメモリセルのトランジスタ201のソース電極の電位を約V0
としながらデータの書き込みを行うことができる。また、他の配線については、上述のデ
ータの書き込みと同様にすればよい。なお、第1行目から第m行目の順番でデータを書き
込む方法について説明したが、これに限られることなく、ビット線BL(1)〜BL(n
)の電位をV0とし、選択線SEL(1)の電位をV1としてトランジスタ215(1,
j)をオン状態として、第m行目から第1行目の順番でデータの書き込みを行っても良い

【0206】
一方、単結晶半導体基板上にトランジスタを形成した場合など、半導体装置が基板電位を
有する場合には、基板電位を0Vとして上述のデータの書き込みを行えばよい。
【0207】
第i行のメモリセル200(i,1)〜200(i,n)の読み出しも、ワード線WLの
電位VWLを所定の電位とすることにより行われる。第i行のメモリセル200(i,1
)〜200(i,n)の読み出しを行う場合は、選択線SEL(1)、SEL(2)の電
位をV1、第1信号線S1(1)〜S1(n)の電位をV0、ソース線SL(1)〜SL
(n)の電位VsをV0、ビット線BL(1)〜BL(n)に接続されている読み出し回
路212を動作状態とする。これにより、トランジスタ215(1、1)〜215(2、
n)をオン状態とし、全てのメモリセルのトランジスタ202をオフ状態とする。
【0208】
そして、ワード線WL(i)の電位をVr_1、第i行以外のワード線WLの電位をVr
_0とする。このとき、第i行以外のメモリセルのトランジスタ201はオン状態となる
。その結果、第i行のメモリセルのトランジスタ201がオン状態かオフ状態かでメモリ
セル列の抵抗状態が決まる。第i行のメモリセルのうち、データ”0”を有するメモリセ
ルでは、トランジスタ201はオフ状態となり、メモリセル列が高抵抗状態になる。一方
、第i行のメモリセルのうち、データ”1”を有するメモリセルでは、トランジスタ20
1がオン状態となり、メモリセル列が低抵抗状態になる。その結果、読み出し回路212
は、メモリセル列の抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる

【0209】
次に、書き込みの際のワード線WLの電位Vw_0、Vw_1、および、読み出しの際の
ワード線WLの電位Vr_0、Vr_1の決定方法について説明する。
【0210】
トランジスタ201の状態を決めるノードAの電位VAは、トランジスタ201のゲート
−ソース(ドレイン)間の容量C1と、容量素子203の容量C2に依存する。VAは、
書き込み時のワード線WLの電位VWL(書)、及び、読み出し時のワード線WLの電位
VWL(読)を用いて、次のように表すことができる。
VA=(C1・VWL(書)+C2・VWL(読))/(C1+C2)
【0211】
読み出しが選択状態にあるメモリセル200においては、VWL(読)=Vr_1であり
、読み出しが非選択状態にあるメモリセル200においては、VWL(読)=Vr_0で
ある。また、データ”1”書き込み時はVWL(書)=Vw_1であり、データ”0”書
き込み時はVWL(書)=Vw_0である。つまり、各状態におけるノードAの電位は、
次のように表すことができる。
読み出しが選択状態、データ”1”
VA≒(C1・Vw_1+C2・Vr_1)/(C1+C2)
読み出しが選択状態、データ”0”
VA≒(C1・Vw_0+C2・Vr_1)/(C1+C2)
読み出しが非選択状態、データ”1”
VA≒(C1・Vw_1+C2・Vr_0)/(C1+C2)
読み出しが非選択状態、データ”0”
VA≒(C1・Vw_0+C2・Vr_0)/(C1+C2)
【0212】
読み出しが選択状態にある場合であって、データ”1”が書き込まれている場合には、ト
ランジスタ201はオン状態となることが望ましく、ノードAの電位VAはトランジスタ
201のしきい値電圧Vthを上回ることが望ましい。つまり、以下の式を満たすことが
望ましい。
(C1・Vw_1+C2・Vr_1)/(C1+C2)>Vth
【0213】
読み出しが選択状態にある場合であって、データ”0”が書き込まれている場合には、ト
ランジスタ201はオフ状態となることが望ましく、ノードAの電位VAはトランジスタ
201のしきい値電圧Vthを下回ることが望ましい。つまり、以下の式を満たすことが
望ましい。
(C1・Vw_0+C2・Vr_1)/(C1+C2)<Vth
【0214】
読み出しが非選択状態にある場合には、データ”1”またはデータ”0”のいずれが書き
込まれている場合であっても、トランジスタ201はオン状態となる必要があるため、ノ
ードAの電位VAはトランジスタ201のしきい値電圧Vthを上回ることが条件となる
。つまり、以下の式を満たす必要がある。
(C1・Vw_1+C2・Vr_0)/(C1+C2)>Vth
(C1・Vw_0+C2・Vr_0)/(C1+C2)>Vth
【0215】
上述の関係を満たすようにVw_0、Vw_1、Vr_0、Vr_1、などを決定するこ
とで、半導体装置を動作させることができる。例えば、トランジスタ201のしきい値電
圧Vth=0.3(V)、C1/C2=1の場合には、V0=0(V)、V1=2(V)
、Vw_0=0(V)、Vw_1=2(V)、Vr_0=2(V)、Vr_1=0(V)
とすることができる。なお、これらの電位は一例に過ぎず、上記の条件を満たす範囲で適
宜変更することが可能である。
【0216】
ここで、C1/C2<<1の条件では、ノードAとワード線WLが強く結合することにな
るため、トランジスタ202のオン状態・オフ状態に関わらず、ワード線WLの電位とノ
ードAの電位は同程度となる。このため、トランジスタ202をオンにして書き込みを行
っても、ノードAが蓄積できる電荷は僅かであるから、データ”0”とデータ”1”の差
は小さいものになってしまう。
【0217】
具体的には、選択したワード線WLの電位をVr_1として上述した読み出しを行う場合
、データ”0”、データ”1”のいずれを書き込んだ場合であっても、メモリセルのノー
ドAの電位は下降し、トランジスタ201がオフ状態となってしまう。その結果、データ
を読み出すことが困難になる。
【0218】
一方、C1/C2>>1の条件では、ノードAとワード線WLの結合は弱いため、ワード
線WLの電位を変化させてもノードAの電位はほとんど変化しない。このため、トランジ
スタ201のオン状態・オフ状態を制御することが可能なノードAの電位は非常に限られ
たものとなり、トランジスタ201のオン状態・オフ状態を制御することが困難になる。
【0219】
具体的には、非選択のワード線WLの電位をVr_0として上述した読み出しを行う場合
、メモリセルのノードAの電位はほとんど上がらず、データ”0”のトランジスタ201
はオフ状態となってしまう。その結果、データを読み出すことが困難になる。
【0220】
このように、C1とC2の大きさによってはその動作が困難になる場合があるから、これ
らの決定に関しては留意が必要である。なお、Vw_0=0(V)、Vw_1=Vdd、
Vr_0=0(V)、Vr_1=Vddとする場合には、C1/C2がVth/(Vdd
−Vth)〜(Vdd−Vth)/Vthの間にあれば、十分に動作させることが可能で
ある。
【0221】
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の区別に過ぎないから、入れ替えて用いても
構わない。また、V0として接地電位GNDなどを採用し、V1として電源電位Vddな
どを採用しても良い。
【0222】
酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることに
より極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動
作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となる
ため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても
、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0223】
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トラ
ンジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速動作も容
易に実現しうる。また、フラッシュメモリなどにおいて必要とされる情報を消去するため
の動作が不要であるというメリットもある。
【0224】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0225】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0226】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る半導体装置が有する読み出し回路212の一例について図18を用
いて説明する。
【0227】
図18に示す読み出し回路212は、トランジスタ204とセンスアンプ205を有する
。トランジスタ204のゲート電極にはバイアス電圧Vbiasが印加され、所定の電流
を流す。センスアンプ205の一方の入力端子には、参照電位Vrefが入力される。
【0228】
読み出し時には、センスアンプ205の他方の入力端子と、読み出しを行うメモリセルが
接続されたビット線BLとを電気的に接続する。
【0229】
メモリセルは、格納するデータ”1”またはデータ”0”に応じて抵抗が異なる。具体的
には、選択したメモリセルのトランジスタ201がオン状態の場合には低抵抗状態となり
、選択したメモリセルのトランジスタ201がオフ状態の場合には高抵抗状態となる。
【0230】
メモリセルが高抵抗状態の場合、センスアンプ205の他方の入力端子の電位は、参照電
位Vrefより高くなり、センスアンプ205の出力端子からはデータ”1”が出力され
る。一方、メモリセルが低抵抗状態の場合、センスアンプ205の他方の入力端子の電位
は、参照電位Vrefより低くなり、センスアンプ205の出力端子からはデータ”0”
が出力される。
【0231】
上述のように、読み出し回路212を用いることにより、メモリセルに格納されたデータ
を読み出すことができる。なお、読み出し回路212は一例に過ぎず、他の構成の読み出
し回路を用いても良い。例えば、読み出し回路212はプリチャージ回路を有するもので
あっても良い。
【0232】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0233】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態において示したメモリセルとは異なるメモリセルの回
路構成およびその動作について説明する。
【0234】
〈メモリセルの構成〉
本実施の形態に係るメモリセルの回路図の一例を図19に示す。図19に示すメモリセル
220は、第1信号線S1と、ワード線WLと、トランジスタ221(第1のトランジス
タ)と、トランジスタ222(第2のトランジスタ)と、容量素子223とから構成され
ている。トランジスタ221は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トラ
ンジスタ222は酸化物半導体を用いて形成されている。ここで、トランジスタ221は
、実施の形態1に示すトランジスタ160と同様の構成とするのが好ましい。また、トラ
ンジスタ222は、実施の形態1に示すトランジスタ162と同様の構成とするのが好ま
しい。また、メモリセル220は、ソース線SL及びビット線BLと電気的に接続されて
おり、トランジスタ(他のメモリセルを構成するものも含む)を介して、ソース線SL及
びビット線BLと電気的に接続されていてもよい。
【0235】
ここで、トランジスタ221のゲート電極と、トランジスタ222のソース電極またはド
レイン電極の一方と、容量素子223の電極の一方とは、電気的に接続されている。また
、ソース線SLと、トランジスタ221のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線
BLと、トランジスタ221のドレイン電極とは、電気的に接続され、第1信号線S1と
、トランジスタ222のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、
ワード線WLと、トランジスタ222のゲート電極と、容量素子223の電極の他方とは
、電気的に接続されている。なお、ソース線SLと、トランジスタ221のソース電極と
は、トランジスタ(他のメモリセルを構成するものも含む。)を介して接続されていても
よい。また、ビット線BLと、トランジスタ221のドレイン電極とは、トランジスタ(
他のメモリセルを構成するものも含む。)を介して接続されていてもよい。
【0236】
〈メモリセルの動作〉
次に、メモリセルの動作について具体的に説明する。
【0237】
メモリセル220への書き込みを行う場合は、トランジスタ221のソース電極またはド
レイン電極の電位をV0(任意の電位、例えば0V)、ワード線WLの電位をV1(任意
の電位、例えば2V)とする。このとき、トランジスタ222はオン状態となる。
【0238】
この状態で、第1信号線S1の電位VS1を所定の電位とすることにより、データの書き
込みが行われる。例えば、データ”1”を書き込む場合には、第1信号線S1の電位をV
w_1とし、データ”0”を書き込む場合には、第1信号線S1の電位をVw_0とする
。なお、書き込み終了にあたっては、第1信号線S1の電位が変化する前に、ワード線W
Lの電位をV0として、トランジスタ222をオフ状態にする。
【0239】
トランジスタ221のゲート電極に接続されるノード(以下、ノードA)には、書き込み
時の第1信号線S1の電位に応じた電荷QAが蓄積され、これによってデータが格納され
ることになる。ここで、トランジスタ222のオフ電流が極めて小さい、あるいは実質0
であることから、書き込まれたデータは長時間にわたって保持される。
【0240】
メモリセル220の読み出しは、ワード線WLの電位VWLを所定の電位とすることによ
り行われる。例えば、読み出しを行うメモリセル220は、ワード線WLの電位をVr_
1とし、読み出しを行わないメモリセル220は、ワード線WLの電位をVr_0とする
。いずれの場合も第1信号線S1の電位をV1とする。
【0241】
書き込み時の第1信号線S1の電位Vw_1、Vw_0、及び、読み出し時のワード線W
Lの電位Vr_1、Vr_0は、ワード線WLの電位をVr_1としたときに、データ”
1”が格納されたメモリセルのトランジスタ221がオン状態となり、データ”0”が格
納されたメモリセルのトランジスタ221がオフ状態となるように設定する。また、トラ
ンジスタ222がオフ状態となるように設定する。さらに、ワード線WLの電位をVr_
0としたときに、データ”0”、データ”1”のいずれが格納されたかに関わらず、メモ
リセルのトランジスタ221がオン状態となり、かつ、トランジスタ222がオフ状態と
なるように設定する。
【0242】
メモリセル220を用いてNAND型の不揮発性メモリを構成する場合には、上述のよう
な関係の電位を用いることで、読み出し動作を行うことができる。つまり、読み出しが選
択されたメモリセルでは格納されたデータによって抵抗状態を異ならせることが可能であ
り、メモリセル列の他のメモリセルでは格納されたデータにかかわらず低抵抗状態とする
ことができる。その結果、ビット線BLの抵抗状態の違いを検出する読み出し回路を用い
て、メモリセルのデータを読み出すことができる。
【0243】
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の区別に過ぎないから、入れ替えて用いても
構わない。また、V0として接地電位GNDなどを採用し、V1として電源電位Vddな
どを採用しても良い。
【0244】
なお、本実施の形態において示したメモリセル220を用いる場合にも、マトリクス状の
半導体装置を実現することができる。マトリクス状の半導体装置は、先の実施の形態で示
した構成と同様な回路を用い、駆動回路や読み出し回路、書き込み回路を信号線の構成に
あわせて適宜構成することで実現できる。なお、メモリセル220を用いる場合には、読
み出しおよび書き込みは、いずれも行ごとに行う構成とする。
【0245】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0246】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で得られる半導体装置を搭載した電子機器の例につい
て図20を用いて説明する。先の実施の形態で得られる半導体装置は、電力の供給がない
場合でも、情報を保持することが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じな
い。さらに、その動作も高速である。このため、当該半導体装置を用いて新たな構成の電
子機器を提供することが可能である。なお、先の実施の形態に係る半導体装置は、集積化
されて回路基板などに実装され、各電子機器の内部に搭載されることになる。
【0247】
図20(A)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むノート型のパーソナルコンピュ
ータであり、本体301、筐体302、表示部303、キーボード304などによって構
成されている。本発明の一態様に係る半導体装置をノート型のパーソナルコンピュータに
適用することで、電力の供給がない場合でも、情報を保持することが可能である。また、
書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、その動作も高速である。このため、本発
明の一態様に係る半導体装置をノート型のパーソナルコンピュータに適用することは好適
である。
【0248】
図20(B)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含む携帯情報端末(PDA)であり
、本体311には表示部313と、外部インターフェイス315と、操作ボタン314等
が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス312がある。本発明の一態様
に係る半導体装置をPDAに適用することで、電力の供給がない場合でも、情報を保持す
ることが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、その動作も
高速である。このため、本発明の一態様に係る半導体装置をPDAに適用することは好適
である。
【0249】
図20(C)には、先の実施の形態に係る半導体装置を含む電子ペーパーの一例として、
電子書籍320を示す。電子書籍320は、筐体321および筐体323の2つの筐体で
構成されている。筐体321および筐体323は、軸部337により一体とされており、
当該軸部337を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、電子書
籍320は、紙の書籍のように用いることが可能である。本発明の一態様に係る半導体装
置を電子ペーパーに適用することで、電力の供給がない場合でも、情報を保持することが
可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、その動作も高速であ
る。このため、本発明の一態様に係る半導体装置を電子ペーパーに適用することは好適で
ある。
【0250】
筐体321には表示部325が組み込まれ、筐体323には表示部327が組み込まれて
いる。表示部325および表示部327は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異
なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば
右側の表示部(図20(C)では表示部325)に文章を表示し、左側の表示部(図20
(C)では表示部327)に画像を表示することができる。
【0251】
また、図20(C)では、筐体321に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐
体321は、電源331、操作キー333、スピーカー335などを備えている。操作キ
ー333により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポ
インティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部
接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなど
の各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい
。さらに、電子書籍320は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0252】
また、電子書籍320は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電
子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも
可能である。
【0253】
なお、電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野に適用することが可能
である。例えば、電子書籍以外にも、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジッ
トカード等の各種カードにおける表示などに適用することができる。
【0254】
図20(D)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含む携帯電話機である。当該携帯電
話機は、筐体340および筐体341の二つの筐体で構成されている。筐体341は、表
示パネル342、スピーカー343、マイクロフォン344、ポインティングデバイス3
46、カメラ用レンズ347、外部接続端子348などを備えている。また、筐体340
は、当該携帯電話機の充電を行う太陽電池セル349、外部メモリスロット350などを
備えている。また、アンテナは筐体341内部に内蔵されている。本発明の一態様に係る
半導体装置を携帯電話機に適用することで、電力の供給がない場合でも、情報を保持する
ことが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、その動作も高
速である。このため、本発明の一態様に係る半導体装置を携帯電話機に適用することは好
適である。
【0255】
表示パネル342はタッチパネル機能を備えており、図20(D)には映像表示されてい
る複数の操作キー345を点線で示している。なお、当該携帯電話は、太陽電池セル34
9で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路を実装している。ま
た、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置などを内蔵した構成とすること
もできる。
【0256】
表示パネル342は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル3
42と同一面上にカメラ用レンズ347を備えているため、テレビ電話が可能である。ス
ピーカー343およびマイクロフォン344は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再
生などが可能である。さらに、筐体340と筐体341はスライドし、図20(D)のよ
うに展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可
能である。
【0257】
外部接続端子348はACアダプタやUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であ
り、充電やデータ通信が可能になっている。また、外部メモリスロット350に記録媒体
を挿入し、より大量のデータの保存および移動に対応できる。また、上記機能に加えて、
赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0258】
図20(E)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むデジタルカメラである。当該デ
ジタルカメラは、本体361、表示部(A)367、接眼部363、操作スイッチ364
、表示部(B)365、バッテリー366などによって構成されている。本発明の一態様
に係る半導体装置をデジタルカメラに適用することで、電力の供給がない場合でも、情報
を保持することが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、そ
の動作も高速である。このため、本発明の一態様に係る半導体装置をデジタルカメラに適
用することは好適である。
【0259】
図20(F)は、先の実施の形態に係る半導体装置を含むテレビジョン装置である。テレ
ビジョン装置370では、筐体371に表示部373が組み込まれている。表示部373
により、映像を表示することが可能である。なお、ここでは、スタンド375により筐体
371を支持した構成を示している。
【0260】
テレビジョン装置370の操作は、筐体371が備える操作スイッチや、別体のリモコン
操作機380により行うことができる。リモコン操作機380が備える操作キー379に
より、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部373に表示される映像を操作
することができる。また、リモコン操作機380に、当該リモコン操作機380から出力
する情報を表示する表示部377を設ける構成としてもよい。本発明の一態様に係る半導
体装置をテレビジョン装置に適用することで、電力の供給がない場合でも、情報を保持す
ることが可能である。また、書き込み、消去に伴う劣化が生じない。さらに、その動作も
高速である。このため、本発明の一態様に係る半導体装置をテレビジョン装置に適用する
ことは好適である。
【0261】
なお、テレビジョン装置370は、受信機やモデムなどを備えた構成とするのが好適であ
る。受信機により、一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して
有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信
者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うこ
とが可能である。
【0262】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0263】
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁層
110 ゲート電極
112 絶縁層
114 不純物領域
116 チャネル形成領域
118 サイドウォール絶縁層
120 高濃度不純物領域
122 金属層
124 金属化合物領域
126 層間絶縁層
128 層間絶縁層
130a ソース電極またはドレイン電極
130b ソース電極またはドレイン電極
130c 電極
132 絶縁層
134 導電層
136a 電極
136b 電極
136c 電極
136d ゲート電極
138 ゲート絶縁層
140 酸化物半導体層
142a ソース電極またはドレイン電極
142b ソース電極またはドレイン電極
144 保護絶縁層
146 層間絶縁層
148 導電層
150a 電極
150b 電極
150c 電極
150d 電極
150e 電極
152 絶縁層
154a 電極
154b 電極
154c 電極
154d 電極
160 トランジスタ
162 トランジスタ
200 メモリセル
201 トランジスタ
202 トランジスタ
203 容量素子
204 トランジスタ
205 センスアンプ
210 メモリセルアレイ
211 ビット線及び第1信号線の駆動回路
212 読み出し回路
213 ワード線の駆動回路
215 トランジスタ
220 メモリセル
221 トランジスタ
222 トランジスタ
223 容量素子
301 本体
302 筐体
303 表示部
304 キーボード
311 本体
312 スタイラス
313 表示部
314 操作ボタン
315 外部インターフェイス
320 電子書籍
321 筐体
323 筐体
325 表示部
327 表示部
331 電源
333 操作キー
335 スピーカー
337 軸部
340 筐体
341 筐体
342 表示パネル
343 スピーカー
344 マイクロフォン
345 操作キー
346 ポインティングデバイス
347 カメラ用レンズ
348 外部接続端子
349 太陽電池セル
350 外部メモリスロット
361 本体
363 接眼部
364 操作スイッチ
365 表示部(B)
366 バッテリー
367 表示部(A)
370 テレビジョン装置
371 筐体
373 表示部
375 スタンド
377 表示部
379 操作キー
380 リモコン操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース線と、ビット線と、信号線と、ワード線と、を有し、
前記ソース線と、前記ビット線との間には、複数のメモリセルが直列に電気的に接続され、
前記複数のメモリセルの一は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、半導体材料を含む基板に設けられ、
前記第2のトランジスタは、酸化物半導体層を含み、
前記第1のトランジスタのゲート電極は、前記第2のトランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのゲート電極は、前記容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記ソース線は、前記第1のトランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方と電気的に接続され、
前記ビット線は、前記第1のトランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方と電気的に接続され、
前記信号線は、前記第2のトランジスタのゲート電極と電気的に接続され、
前記ワード線は、前記第2のトランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方と電気的に接続され、
前記ワード線は、前記容量素子の他方の電極と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−253365(P2012−253365A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158200(P2012−158200)
【出願日】平成24年7月16日(2012.7.16)
【分割の表示】特願2010−251809(P2010−251809)の分割
【原出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【特許番号】特許第5093934号(P5093934)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】