説明

印刷半田検査装置

【課題】 印刷半田の平行移動ずれと角度ずれを共に検出できる印刷半田検査装置を提供し、更に、印刷半田の平行移動ずれと角度ずれの推移を把握容易な形態で表示できる印刷半田検査装置を提供する。
【解決手段】 プリント基板1の部品実装面1aに光照射して反射光量に応じた検出信号を出力する検出ヘッド11と、基板設計値情報および検出信号に基づいて部品実装面1aにおける半田印刷領域の基準位置を検出する基準位置検出手段31と、基板設計値情報および検出信号に基づいて複数の印刷半田の平行移動ずれを検出する平行移動ずれ検出手段33と、基準位置検出手段31の検出情報に基づいて半田印刷領域における回転中心座標を設定する中心座標設定手段32と、プリント基板1の設計値情報、平行移動ずれ検出手段33の検出情報および中心座標設定手段32の設定情報に基づいて複数の印刷半田の角度ずれを検出する回転ずれ検出手段34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上に印刷された半田等の位置ずれを検査する印刷半田検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板上にパッケージICやチップ部品等の電子部品を実装する場合、いわゆるリフロー式の表面実装技術が従来から多用されているが、その表面実装に際しては、電子部品のプリント基板上への実装作業に先立って、プリント基板にクリーム半田等の接続材料を所定パターン形状でスクリーン印刷したり、チップ部品の仮固定用接着剤を必要箇所に塗布したりする作業がなされる。
【0003】
このような場合、印刷半田検査装置を用いて、プリント基板上に配線パターンと共に予め形成されている基準位置認識用のマーク(以下、単に認識マークという)の中心座標を基準位置として、プリント基板とその上に印刷する半田パターンの検査が行なわれる。また、印刷半田検査装置を使って、接着剤パターンの検査や部品実装状態(実装電子部品の欠けや位置ずれ等)の検査も実施する場合がある。
【0004】
従来のこの種の印刷半田検査装置としては、例えばレーザ光源からの光によって部品実装面である配線パターン面を露光走査する一方、その配線パターン面上の電極パッド、電極パッド上に印刷された半田、認識マーク、基板基材面およびレジスト部等の各部位における光反射特性の相違に基づいて、配線パターン面の画像読取りを行い、その読取り画像を所定の閾(しきい)値で高反射光量域と低反射光量域とに分ける2値化処理を実行して、電極パッド類や認識マーク等をパターンマッチング検出できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、検査結果が正常である部位と異常である部位とを色違いの視覚情報として表示し、検出結果の把握を容易化したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−32738号公報
【特許文献2】特開2002−26512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような印刷半田検査装置にあっては、印刷半田パターンの各部位について配線パターン面上の位置ずれをXY平面上におけるX方向、Y方向の位置ずれとしてのみ測定していたため、印刷半田パターンが基板に対して回転方向にずれていることが要因でX方向、Y方向の位置ずれが大きく現われているような場合に、その不良原因を即座に把握するのが難しいという問題があった。
【0007】
また、印刷機側にはXY平面上におけるX方向、Y方向の位置のみならず、回転角度θを調整できるものがあるが、そのような場合に、不良原因がX方向、Y方向の位置のずれ、すなわち基準位置からの平行位置ずれであるのか、所定の回転中心回りの角度ずれであるのかを即座に判定できないため、半田印刷機側の補正のための情報取得に時間がかかるという問題があり、しかも、角度ずれの傾向把握ができないために有効な補正情報が得られなかった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたもので、印刷半田の平行移動ずれと角度ずれを共に検出することができる印刷半田検査装置を提供することを目的とし、さらに、印刷半田の平行移動ずれと角度ずれの推移を把握容易な形態で知らせることができる印刷半田検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の印刷半田検査装置は、上記目的達成のため、プリント基板の配線パターン面に光を照射するとともに該配線パターン面からの反射光量に応じた検出信号を出力する検出ヘッドと、前記プリント基板の設計値情報および前記検出ヘッドからの検出信号に基づいて前記プリント基板の配線パターン面における半田印刷領域の基準位置を検出する基準位置検出手段と、前記プリント基板の設計値情報および前記検出ヘッドの検出信号に基づいて前記半田印刷領域における複数の印刷半田の平行移動ずれを検出する平行移動ずれ検出手段と、前記基準位置検出手段の検出情報に基づいて前記半田印刷領域における回転中心座標を設定する中心座標設定手段と、前記プリント基板の設計値情報、前記平行移動ずれ検出手段の検出情報および前記座標設定手段の設定情報に基づいて前記複数の印刷半田の角度ずれを検出する回転ずれ検出手段とを備えたものである。
【0010】
この構成により、複数の印刷半田についての平行移動ずれと、複数の印刷半田のそれぞれの角度ずれおよび全体としての角度ずれ等が検出可能となり、前記複数の印刷半田を含んだ印刷半田パターンの位置ずれを正確に把握できるようになるとともに、印刷機側の補正に適した検査情報を得ることが可能となる。
【0011】
本発明の印刷半田検査装置は、また、前記中心座標設定手段が、前記半田印刷領域における仮回転中心座標を複数設定し、前記回転ずれ検出手段が、該各仮回転中心座標を中心として前記複数の印刷半田の角度ずれを順次検出するとともに、該複数の仮回転中心座標についての前記複数の印刷半田の角度ずれが最小となるよう、前記複数の仮回転中心座標のうちいずれか1つの仮回転中心座標を選択して、該選択した仮回転中心座標と該仮回転中心座標に対応する角度ずれとを最終検出情報として出力するものであっても好ましい。
【0012】
この構成により、印刷半田の平行移動ずれと角度ずれを正確に、かつ複雑な処理を行なうことなく迅速に検出可能となる。
【0013】
本発明の印刷半田検査装置は、さらに、前記平行移動ずれ検出手段および前記回転ずれ検出手段の検出情報に基づいて、前記複数の印刷半田の半田印刷領域における平行移動ずれおよび角度ずれに関連する視覚情報を表示する表示手段を備えたものであるのがよい。
【0014】
この構成により、半田印刷領域における複数の印刷半田の平行移動ずれおよび角度ずれをこれらに関連する視覚情報として表示し、ユーザーに印刷状態の検査結果を即座にかつ把握の容易な形態で通知可能となる。
【0015】
前記表示手段が、前記平行移動ずれおよび前記角度ずれの傾向を時系列的に示す視覚情報を表示するのが望ましい。
【0016】
この構成によって、位置ずれの傾向等をより的確に把握でき、印刷側の補正に対してより有効な情報を得ることができる。
【0017】
加えて、本発明の印刷半田検査装置は、前記表示手段に、半田印刷条件又は検査時搬送条件の異なる複数のプリント基板について、前記条件が同じになる基板グループ毎に表示エリアを分け、複数の基板グループについての比較可能な視覚情報を提示するようにすることができる。
【0018】
このような表示を採用すると、プリント基板の印刷状態をより詳細に検査したり搬送位置決め精度の偏りなどをも考慮した高精度の検査ができ、印刷機側へのより有効な補正情報を迅速かつ的確に把握可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の印刷半田についての平行移動ずれと、複数の印刷半田のそれぞれの角度ずれおよび全体としての角度ずれ等を検出できるので、複数の印刷半田を含んだ印刷半田パターンの位置ずれを正確に把握できるとともに、印刷機側の補正に適した検査情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1から図8は本発明の好ましい一の実施の形態に係る印刷半田検査装置を示す図である。
【0022】
まず、その構成について説明する。
【0023】
図1および図2において、検出ヘッド11はヘッド移動機構15に支持されており、このヘッド移動機構15によって検出ヘッド11が所定の平面移動(X、Y方向、例えば水平方向)およびこれと直交する方向(Z方向、例えば鉛直方向)に精密に位置決めおよび移動可能になっている。
【0024】
検出ヘッド11の下方側には、基板搬送ラインを構成する固定ガイド16およびこれに対し平行移動する可動ガイド17が設けられており、プリント基板1は両ガイド16,17によって図2の左右方向に移動可能に案内され、図示しない搬送ベルトによって同図中の右向きに搬送される。また、その搬送方向所定位置には位置決めピン18が設けられており、この位置決めピン18は固定ガイド16および可動ガイド17によるプリント基板1の搬送基準高さに対して上下に出没するようになっている。そして、この位置決めピン18が、突出時にプリント基板1の搬送方向の先端に当接して、搬送方向にのみ移動可能なプリント基板1を所定位置に位置決めする。
【0025】
検出ヘッド11は、このプリント基板1の停止・位置決め位置の近傍に位置しており、プリント基板1の配線パターン面1aに光を照射するとともに、その配線パターン面からの反射光量に応じた検出信号を出力するようになっている。
【0026】
図1に示すように、検出ヘッド11は、所定形状のケース21内にレーザ光源22、受光部23および検出信号生成部25を内蔵している。レーザ光源22はケース21の下部一方側(図1中の左下側)に配置され、検出ヘッド11の検出中心線21cに対して所定の角度をなすよう光軸設定されている。また、受光部23は、検出ヘッド11の下部他方側(図1中の右下側)に配置され、検出ヘッド11の検出中心線21cに対して所定の角度をなすよう光軸配設されている。そして、検出ヘッド11の検出中心線21c上で所定の検出高さ位置に配線パターン面1aが位置するとき、レーザ光源22からの検出対象プリント基板1への入射光のうち配線パターン面1aで反射された光が受光部23で受光されるようになっている。詳細は図示しないが、受光部23はフォトダイオード等の光電変換可能な受光素子および結像レンズ等で構成され、受光した光の光量(光強度)に対応する光電流信号を出力する。
【0027】
検出信号生成部25は、受光部23からの光電流信号を電圧信号に変換し増幅するI−V(電流-電圧)変換および増幅回路とを内蔵しており、受光部23からの光電流に対応する電圧信号を光量の検出信号として出力する。
【0028】
なお、レーザ光源22からのビーム状の光は、好ましくは図示しない光偏向手段によって所定の走査幅を持って偏向走査され、プリント基板1は一定幅分の偏向走査と共に、検出ヘッド11が図2中上下方向に移動することによって帯状に走査され、更に検出ヘッド11が図2中の左側に前記偏向走査幅分ずつ移動することによって、所要の基板面全域にわたる画像読取りのための露光がなされる構成となっている。
【0029】
検出ヘッド11の検出信号はデータ処理装置30に取り込まれる。
【0030】
データ処理装置30は、そのハードウェア構成の詳細を図示していないが、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース等を含むマイクロコンピュータ構成のもので、図1に示すように、基準位置検出部31、中心座標設定部32、平行移動ずれ検出部33、回転ずれ検出部34、状態判別部35、表示処理部36等を含んで構成されている。
【0031】
基準位置検出部31は、プリント基板1の設計値情報および検出ヘッド11からの検出信号に基づいて、プリント基板1の複数の、例えば図3に示すように対角線上に配された一対の認識マーク1bの位置を検出するようになっている。
【0032】
プリント基板1については、詳細を図示していないが、例えばガラスエポキシ樹脂製の板状基材に配線層となる金属膜(例えば銅箔)を成膜し、これを選択的エッチング等により所定の配線パターン形状にしたものであり、認識マーク1bの平面マーク形状は、例えば丸形であるが、これに限らず、十字型や三角型等でもよい。
【0033】
このプリント基板1の配線パターン面1a上には、例えばパッケージICやチップ部品等を表面実装するための複数種の電極パッド部1p,1q,1r等が形成されており、そのための印刷半田パターンが例えばペースト状のろう付け材料(直径数μmから数十μmの半田粒子を含んだいわゆるクリーム半田)をスクリーン印刷することで形成されている。
【0034】
基準位置検出部31は、検出ヘッド11から少なくとも認識マーク1bが配された基準点領域の露光走査による画像データを取り込み、その基準点領域の各部の画素濃度(輝度)を閾値判定して前記画像データを二値化画像として設計値情報に対応する所定形状の認識マーク1bの輪郭形状パターンが存在するか否かの判断を行なった上で、その認識マーク1bの輪郭を形成するドット(画素)の座標および各認識マーク1bの重心座標(X−Y平面で読み取った認識マーク形状の図心となるドットの座標)を基準位置の情報として特定する。すなわち、基準位置検出部31は、プリント基板1の設計値情報および検出ヘッド11からの検出信号に基づいて、プリント基板1の部品実装面である配線パターン面1aにおける半田印刷領域の基準位置を検出するようになっている。
【0035】
中心座標設定部32は、通常、基準位置検出部31によって特定された各認識マーク1bの座標情報から両認識マーク1bのほぼ中間点である回転中心座標1c(図3参照)を算出し、その算出座標を回転中心座標として設定をする。すなわち、中心座標設定部32は、基準位置検出部31の検出情報に基づいて、前記半田印刷領域における回転の中心座標を設定するようになっている。なお、この回転中心座標設定は、必ずしも認識マーク1bの中間点である必要はなく、半田印刷機の仕様やプリント基板1の搬送系の仕様もよって生じやすく補正し易い回転中心が異なり得るから、ユーザーが画面上で別の基準で求めた座標(例えば2つの認識マークを結ぶ線とプリント基板1のガイド基準面から所定距離を隔てた平行線との交点座標)を指定することもできるようになっている。
【0036】
平行移動ずれ検出部33は、受光部23からの検出信号および設計値情報を基に、パッケージIC等の実装部品(図示していない)の実装部である電極パッド部1p,1q,1r等について、各電極パッド部の印刷半田のXY方向のずれである平行移動ずれの量を、画像データのドット単位(画素ピッチに対応する単位長さ)で算出して出力する。すなわち、平行移動ずれ検出部33は、プリント基板1の設計値情報および検出ヘッド11の検出信号に基づいて、半田印刷領域における複数の印刷半田の平行移動ずれを検出するようになっている。
【0037】
具体的には、例えば図4(a)に示すように、特定の電極パッド部の印刷半田の設計輪郭形状101が長方形である場合、この形状に対応する輪郭座標のドット群の設計値データと、この印刷半田の画像読取りによって得られた印刷半田輪郭形状102のドット群の測定値データとを用いて、測定された印刷半田輪郭形状102をX方向、Y方向にそれぞれ何ドットだけシフトさせると、印刷半田輪郭形状102の図心が設計輪郭形状101の図心に最も近くなるかを計算し、必要なドット数だけのずれが存在するものとする。同図においては、印刷半田輪郭形状102が設計輪郭形状101に対して長く、左に1ドット分、右に3ドット分出ているから、印刷半田輪郭形状102を左へ1ドット分シフトさせると、図4(b)に示すように、印刷半田輪郭形状102の図心が設計輪郭形状101の図心と一致する。したがって、この場合の平行移動ずれはX方向に1ドットで、図中の左側を正とすると、平行移動ずれは−1、シフト量は+1となる。
【0038】
平行移動ずれ検出部33は、このような平行移動ずれの算出処理を、プリント基板1の各印刷半田について実行し、更に、プリント基板1上の印刷半田を全体として印刷半田パターンとした場合に、この印刷半田パターンを一律にX方向、Y方向の正負の向きに数ドットの範囲内でシフトさせ、有効なすべて(印刷幅過大NG部およびブリッジ半田部を除く)の印刷半田の重心が設計輪郭形状の図心にもっとも近くなるように、例えば全印刷半田の平行移動ずれ量の総和が各方向について最小となるシフト量を計算し、その結果からX方向、Y方向のずれを求めて、平行移動ずれ検出情報を出力する。
【0039】
平行移動ずれ検出部33は、更に、回転ずれ検出部34と協働して、複数段階に微小化したシフト量を設定しながらより細かく前記ずれの総和が小さくなる位置を特定し、その結果からX方向、Y方向のずれを求めて、mm単位の平行移動ずれ検出情報を出力するようになっている。
【0040】
具体的には、平行移動ずれ検出部33は、例えば最初に複数ドット単位の大きな第1シフト量で印刷半田パターンをシフトさせた上でそのシフト方向のずれ量の総和を求め、そのときに全印刷半田のずれ量の総和が最小となるシフト量の前後1ドットの範囲内で、今度はシフト量を第1シフト量の数分の一から十分の一程度に微小化した第2シフト量(以下、便宜的にサブシフト量とも呼ぶ)を設定し、このサブシフト量の単位で再度印刷半田パターンを一律に正負の向きに数サブシフト量の範囲内でシフトさせ、そのシフト方向(X方向又はY方向)におけるの平行移動ずれ量の総和を求めるという処理を、要求される検出精度に応じて、複数回実行する。なお、要求される平行移動ずれの検出精度は、例えば0.001mm以下の検出精度であるが、上述のような処理は、計算自体が複雑でないため、現在のシフト量から次のサブシフト量へと多段階(例えば3段階)にシフト量を微小化しても、昨今のハードウェア性能からすれば、処理速度の低下が問題となるような負荷は生じない。印刷半田が、ブリッジ状態か若しくは印刷幅過大であり、又は欠落している場合には、その部位についての平行移動ずれの算出はスキップする。
【0041】
回転ずれ検出部34は、プリント基板1の設計値情報、平行移動ずれ検出部33の検出情報および中心座標設定部32の設定情報に基づいて、前記複数の印刷半田の角度ずれを反時計回り(CCW)方向を正として検出する。
【0042】
例えば、図5に示すように、回転中心1cの座標と、各電極パッド部の印刷半田の設計輪郭201A〜201Dのデータおよび測定された輪郭202A〜202Dのデータから、各設計輪郭201A〜201Dの図心座標と測定された輪郭202A〜202Dの重心のなす回転中心1c回りの回転方向のずれ角θ1〜θ4として算出する。
【0043】
回転ずれ検出部34は、このような角度ずれの算出処理を、プリント基板1の各印刷半田について実行し、更に、プリント基板1上の印刷半田を全体として印刷半田パターンとした場合に、この印刷半田パターンを一律に所定角度範囲内で所定微小角度シフト単位で回転させ、すべての印刷半田の重心がその設計輪郭形状の図心に最も近くなるように、例えば全印刷半田の角度ずれ量の総和が最小となる微小角度シフト量を計算して、その結果に対応する角度ずれを印刷半田パターン全体としての角度ずれθと設定する。
【0044】
また、回転ずれ検出部34は、後述する回転中心座標のファインチューニング処理の後、図6(a)に示すように、プリント基板1上のある実装部品に対応する電極パッド部1qの印刷半田の設計輪郭形状211が2列に整列する複数の長方形である場合、回転ずれ検出部34は、この形状に対応する輪郭座標のドット群の設計値データと、この印刷半田の画像読取りによって得られた印刷半田輪郭形状212のドット群の測定値データとを用いて、測定された印刷半田輪郭形状212の半田整列中心線212cと設計輪郭形状211の半田整列中心線211cを求め、両半田整列中心線211c、212cの交差角θqを算出する。このときの半田整列中心線211c、212cの算出はそれぞれに対応する2列の長方形のすべての重心又は図心との距離が最小となる傾きの中心線を特定するようなされ、交差角θqは1つの部品実装部位における角度ずれとなる。したがって、交差角θqの分だけ印刷半田輪郭形状212を回転させると、図5(c)に示すように、角度ずれがゼロになる。
【0045】
中心座標設定部32、平行移動ずれ検出部33および回転ずれ検出部34で求められた各検出情報は、状態判別部35に取り込まれる。
【0046】
状態判別部35は、設定器13からの各判定項目についての情報と設計値情報を入力し、中心座標設定部32、平行移動ずれ検出部33および回転ずれ検出部34から検出情報に基づいて、各電極パッド部の印刷半田の欠落やXY方向の位置ずれ、それら印刷半田の平坦度、角度ずれ等が許容範囲内か否か(OKかNGか)を判定するようになっている。また、状態判別部35は、各判定項目についての判定結果情報を表示器14に表示するための画像データの生成および出力を表示処理部36に実行させる。
【0047】
一方、本実施形態においては、上述の回転中心座標検出に際して、例えば図6に示すような多接続部品の角度ずれの算出に先立って、次のようなファインチューニング処理を実行する。
【0048】
まず、中心座標設定部32は、半田印刷領域における仮回転中心座標をX、Y方向の複数ドット範囲に複数設定する。例えば、図7(a)に示すように、縦横4ドットにわたる第1の中心座標検索領域300を設定して、その領域を16分割する縦横の分割線301,302の25個の交点を仮回転中心座標(Xi,Yi)としてする。このとき、領域の中心座標は最初に設定された中心座標値でこれを(X1,Y1)とし、−2<i<2とする。
【0049】
次いで、各仮回転中心座標(Xi,Yi)を中心として、複数の印刷半田の角度ずれを順次検出する。例えば、図7(a)中の第1の中心座標検索領域300の最上最左の仮回転中心座標(X1−2,Y1+2)からY方向で同一位置に位置する他の4つの座標(X1−1,Y1+2)、(X1,Y1+2)、(X1+1,Y1+2)、(X1+2,Y1+2)について、それぞれ角度ずれ算出を行なう。次いで、直下のY+1の5つ座標列に関して、同様に最左の座標(X1−2,Y1+1)から右に順次角度ずれ検出を行なって、更に下の交点座標群についても、最後に座標(X+2,Y−2)について角度ずれを算出するまで、各印刷半田の角度ずれとその総和を算出する。
【0050】
そして、複数の印刷半田の角度ずれの総和が最小となるよう、複数の仮回転中心座標(Xi,Yi)のうちいずれか1つの仮回転中心座標を選択する。
【0051】
ここで、例えば角度ずれの総和量が最小となる仮回転中心座標が、座標(X1+1,Y1+1)であったとすると、次いで、この座標を中心として第1の中心座標検索領域300より狭い第2の中心座標検索領域310を設定して、この第2の中心座標検索領域310を更に格子状に分割して、各交点座標(Xs,Ys)について、上述と同様な角度ずれおよび総和量の算出を実行する。
【0052】
例えば、図7(b)に示すように、第2の中心座標検索領域310は縦横1ドットピッチとなる領域サイズで、それを更に0.25ドットピッチの単位で分割し、25個の交点座標を仮回転中心座標とすることで、再度上述と同様な仮回転中心座標の順序で角度ずれおよび総和量算出を実行し、角度ずれの総和量が最小となる座標を特定し、求めるべき座標として選択する。
【0053】
このようにして選択された仮回転中心座標とその回転中心座標に対応する角度ずれは、回転ずれ検出部34の最終検出情報として、状態判別部35に出力される。そして、上述のように、状態判別部35が、各判定項目についての判定結果情報を表示器14にて表示するための画像データの生成および出力を表示処理部36に実行させる。
【0054】
表示処理部36の出力に応じて表示を行なう表示器14は、例えば図8に示すように、プリント基板1の名称、測定枚数、測定枚数中のOK枚数およびNG枚数、エラー検出回数、不良率などの表示を行なう複数の上側の表示部141a,141b,141c,141d,141e,141fと、それぞれ画面左方側に配置され、時刻、検査の総合判定結果および不良製品リスト等の表示を行なう複数の左側の表示部142a,142b,142cと、画面中央部に配置され、X方向およびY方向の平行移動と角度ずれとを表示する中央画面部143と、画面右方側に配置され、各測定項目についての判定結果リストおよび中央画面部143のグラフ表示の説明が行なわれる複数の右側の表示部144a,144bとを有している。
【0055】
ここで、中央画面部143は、縦軸をずれ量とし、横軸を時間としたグラフであって、その上半部で平行移動ずれを(図中では「X方向ずれ」「X方向ずれ」)、その下半部で角度移動ずれ(図中では「θずれ」)を示すものを表示することができる。
【0056】
すなわち、表示器14は、表示処理部36と共に、平行移動ずれおよび角度ずれに関連する視覚情報を提示する表示手段を構成しており、本実施形態においては、平行移動ずれおよび角度ずれの傾向を時系列的に示す視覚情報を、例えば図8に示すような折れ線グラフの形態で表示するようになっている。前記視覚情報の表示形態としては、他形式のグラフでもよく、グラフでなく印刷領域上の位置情報を含むマップや3次元表示その他の視覚情報でもよい。
【0057】
あるいは、検査対象の基板1に後述するような半田印刷条件又は検査時搬送条件の相違がある場合、前記条件が同じになる基板毎にグループ分けし、それぞれのグループに対する表示エリアを分けて、印刷条件の相違による各基板グループについての印刷半田のずれ量を対比可能な視覚情報を提示するようにすることもできる。
【0058】
図9はそのような場合の表示態様の一例を示す図で、同図中で図8に示した構成と同一か又はそれに対応する構成要素については図8と同一の符号を付している。
【0059】
同図に示すように、中央画面部143には、画面内の左側に位置する奇数枚目の基板1についてのずれ量表示エリア143aと、画面内の右側に位置する偶数枚目の基板1についてのずれ量表示エリア143bとに分かれている。そして、奇数枚目の基板グループについてのずれ量表示エリア143aと、偶数枚目の基板グループについてのずれ量表示エリア143bとを、それぞれの平行移動ずれおよび角度ずれのみならず、検査の進行に伴う時間的推移と共に、比較・対比して観察することが可能になっている。なお、条件に応じて、表示エリアを2つでなく3つ以上にすることも勿論可能である。
【0060】
図9に示す表示態様の場合は、例えば、基板1を固定ガイド16および可動ガイド17の間に供給する際、奇数枚目を固定ガイド16側から、偶数枚目を可動ガイド17側からというように交互に異なる搬送方向で供給する場合において、検査する基板1の位置決め状態が奇数枚目と偶数枚目とでわずかに相違する可能性があり、これが印刷半田の平行移動ずれおよび角度ずれに影響することがあるからであり、その場合、搬送系の見直しが印刷半田の位置ずれ縮小に有効だからである。
【0061】
図9に示す表示態様は、あるいは、クリーム半田のスクリーン印刷時において、図外の半田印刷機のスキージの移動方向が、基板1の奇数枚目には往復移動方向の一方側、偶数枚目にはその他方側といった具合に異なっており、それによって奇数枚目と偶数枚目とで半田印刷状態にわずかな相違が生じるといった半田印刷機側の印刷条件に対応したものである。この場合にも、印刷半田の平行移動ずれおよび角度ずれは、前記半田印刷機側でのプリント基板1についてのX、Y方向の基準位置の調整や回転方向の位置調整のみならず、半田印刷機の機構部調整等にも有効利用できることになる。
【0062】
次に、作用について説明する。
【0063】
上述のように構成された本実施の形態の基準位置検出装置およびこれを備えた印刷半田検査装置では、ヘッド移動機構15による検出ヘッド11の位置決めおよび前記搬送手段によるプリント基板1の搬送・位置決めがなされた後、プリント基板1と検出ヘッド11が相対移動され、レーザ光源22からの光が所定方向に走査されてプリント基板1の配線パターン面1aのうち認識マーク1bを含む所定印刷領域が画像読取りされ、その読取り画像を用いた基準位置算出、中心座標設定、平行移動ずれ検出および角度ずれ検出が実行されて、それらの検出情報を基に印刷状態の良否判別が設計許容値情報等を基に行なわれる。そして、その結果が、例えば図8又は図9に示すような表示形態で、表示器14に表示される。
【0064】
このような印刷半田検査装置の動作時においては、複数の印刷半田についての平行移動ずれ(X方向ずれ、Y方向ずれ)と、複数の印刷半田のそれぞれの角度ずれ(θずれ)および全体としての角度ずれ等が検出可能となり、さらに、複数の印刷半田を含んだ印刷半田パターンの位置ずれを正確に把握できるようになる。したがって、印刷機側の補正に適した検査情報を得ることができる。
【0065】
また、中心座標設定部32が、半田印刷領域における仮回転中心座標(Xi,Yi)を複数設定し、回転ずれ検出部34が、各仮回転中心座標を中心として前記複数の印刷半田の角度ずれを順次検出するとともに、それら複数の仮回転中心座標についての印刷半田の角度ずれの総和量が最小となるよう、複数の仮回転中心座標(Xi,Yi)のうちいずれか1つの仮回転中心座標を選択して、選択した回転中心座標とその回転中心座標に対応する角度ずれとを最終検出情報として出力するので、印刷半田の平行移動ずれと角度ずれをきわめて正確に、しかも複雑な処理を行なうことなく迅速に検出できることとなる。
【0066】
さらに、本実施形態においては、平行移動ずれ検出部33および回転ずれ検出部34の検出情報に基づいて、複数の印刷半田の半田印刷領域における平行移動ずれおよび角度ずれに関連する視覚情報を表示するので、半田印刷領域における複数の印刷半田の平行移動ずれおよび角度ずれを、これらに関連する視覚情報として表示するので、ユーザーに印刷状態の検査結果を即座にかつ把握の容易な形態で通知することができる。
【0067】
また、表示器14により、前記平行移動ずれ(X方向ずれ、Y方向ずれ)と、角度ずれ(θずれ)との傾向を時系列的に示す視覚情報、例えば、縦軸をずれ量、横軸を時間とするグラフを表示するので、位置ずれの傾向等をより的確に把握することができ、印刷機側の補正に対してより有効な情報を得ることができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、半田印刷条件や検査前の基板搬送条件の相違に応じて、同一条件の基板毎にグループ分けし、そのグループ間の比較観察が可能な表示形態でずれ量を示す視覚情報を提示するので、複数のプリント基板1の印刷状態をより詳細に検査できるとともに、印刷機側の補正に際してのより有効な情報を迅速かつ的確に提供することができる。
【0069】
なお、上述の実施の形態の説明においては、便宜上、基板1にICパッケージ等の電子部品が実装されていないものとして説明したが、本発明の印刷半田検査装置は、基板1に実装されるべき電子部品の一部又は全部を実装した状態での検査が可能であることはいうまでもなく、例えば実装された各電子部品の角度ずれや実装部品全体としての角度ずれ等を検出することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の印刷半田検査装置は、複数の印刷半田についての平行移動ずれと、複数の印刷半田のそれぞれの角度ずれおよび全体としての角度ずれ等を検出できるようにしたので、複数の印刷半田を含んだ印刷半田パターンの位置ずれを正確に把握でき、印刷機側の補正に適した検査情報を得ることができるという効果を奏し、プリント基板上に印刷された半田等の位置ずれを独立して検査する印刷半田検査装置としてのみならず、印刷機側に付設される形態でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置のプリント基板搬送手段のガイドおよび位置決め部の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置のプリント基板の上面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の平行移動ずれ算出手順を示す説明図である。
【図5】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の角度ずれ算出内容の模式的説明図である。
【図6】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の平行移動ずれ修正および角度ずれ修正手順を示す説明図である。
【図7】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の中心座標検出の手順の説明図である。
【図8】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の表示手段の表画面の説明図である。
【図9】本発明の一の実施の形態に係る印刷半田検査装置の表示手段に、図8とは異なる表示態様を採用した、他の表示態様の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 プリント基板
1a 配線パターン面(部品実装面)
1b 認識マーク
1c 回転中心座標
1p 電極パッド部
1q 電極パッド部
11 検出ヘッド(検出手段)
13 設定器(設定手段)
14 表示器(表示手段)
14a 周辺表示部
14b 画面
15 ヘッド移動機構
16 固定ガイド
17 可動ガイド
18 位置決めピン
21 ケース
22 レーザ光源
23 受光部
30 データ処理装置
31 基準位置検出部(基準位置検出手段)
32 中心座標設定部(中心座標設定手段)
33 平行移動ずれ検出部(平行移動ずれ検出手段)
34 回転ずれ検出部(回転ずれ検出手段)
35 状態判別部(状態判別手段)
36 表示処理部(表示手段)
101,201A〜201D,211 設計輪郭形状
102,202A〜202D,212 印刷半田輪郭形状
143a 奇数枚目の基板についてのずれ量表示エリア
143b 偶数枚目の基板についてのずれ量表示エリア
300 第1の中心座標検索領域
310 第2の中心座標検索領域
θ1〜θ4 角度ずれ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(1)の部品実装面(1a)に光を照射するとともに該部品実装面(1a)からの反射光量に応じた検出信号を出力する検出ヘッド(11)と、
前記プリント基板(1)の設計値情報および前記検出ヘッド(11)からの検出信号に基づいて、前記プリント基板(1)の部品実装面(1a)における半田印刷領域の基準位置を検出する基準位置検出手段(31)と、
前記プリント基板(1)の設計値情報および前記検出ヘッド(11)の検出信号に基づいて、前記半田印刷領域における複数の印刷半田の平行移動ずれを検出する平行移動ずれ検出手段(33)と、
前記基準位置検出手段(31)の検出情報に基づいて、前記半田印刷領域における回転中心座標を設定する中心座標設定手段(32)と、
前記プリント基板(1)の設計値情報、前記平行移動ずれ検出手段(33)の検出情報および前記中心座標設定手段(32)の設定情報に基づいて、前記複数の印刷半田の角度ずれを検出する回転ずれ検出手段(34)と、を備えた印刷半田検査装置。
【請求項2】
前記中心座標設定手段(32)が、前記半田印刷領域における仮回転中心座標を複数設定し、
前記回転ずれ検出手段(34)が、該各仮回転中心座標を中心として前記複数の印刷半田の角度ずれを順次検出するとともに、該複数の仮回転中心座標についての前記複数の印刷半田の角度ずれが最小となるよう、前記複数の仮回転中心座標のうちいずれか1つの仮回転中心座標を選択して、該選択した仮回転中心座標と該仮回転中心座標に対応する角度ずれとを最終検出情報として出力することを特徴とする請求項1に記載の印刷半田検査装置。
【請求項3】
前記平行移動ずれおよび前記角度ずれに関連する視覚情報を表示する表示手段(14,36)を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷半田検査装置。
【請求項4】
前記表示手段(14,36)が、前記平行移動ずれおよび前記角度ずれの傾向を時系列的に示す視覚情報を表示することを特徴とする請求項3に記載の印刷半田検査装置。
【請求項5】
前記表示手段(14,36)が、半田印刷条件又は検査時搬送条件の異なる複数のプリント基板(1)について、前記条件が同じになる基板グループ毎に表示エリア(143a,143b)を分け、複数の基板グループについての比較可能な視覚情報を提示することを特徴とする請求項3に記載の印刷半田検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−5238(P2006−5238A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181402(P2004−181402)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】