説明

層形成方法、配線基板、電気光学装置、および電子機器

【課題】 下地層の段差を吸収して平坦な面を提供する絶縁層であって、コンタクトホールを有する絶縁層を、インクジェット法で形成すること。
【解決手段】 インクジェット法を用いた層形成方法は、(a)第1レベル面上に位置する第1導電層21の側面が第1絶縁材料31Aで覆われるように、前記第1レベル面上に第1の濃度を有する前記第1絶縁材料31Aを吐出するステップと、(b)吐出された前記第1絶縁材料31Aを活性化または乾燥して、前記第1導電層21に接する第1絶縁層31Bを形成するステップと、(c)前記第1導電層21上と前記第1絶縁層31B上とに、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度を有する第2絶縁材料を吐出するステップと、(d)吐出された前記第2絶縁材料を活性化または乾燥して、前記第1導電層21と前記第1絶縁層31Bとを覆う第2絶縁層を形成するステップと、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層形成方法、配線基板、電気光学装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷法によるアディティブプロセス(Additive Process)を用いて配線基板を製造する方法が注目されている。薄膜の塗布プロセスとフォトリソグラフィープロセスとを繰り返して配線基板を製造する方法に比べて、アディティブプロセスのコストは低いからである。
【0003】
このようなアディティブプロセスに利用される技術の一つとして、インクジェット法による金属配線の形成技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−6578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット法で物体上に膜や層のパターンを形成する場合に、形成されるべきパターンの形状によっては、吐出された材料の物体上での塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることが求められることがある。例えば、層の境界部を形成する場合であれば、物体上に着弾した材料がなるべく塗れ広がらないことが好ましい。層の境界部の形状を明確にしたいからである。一方、同じ層であっても、層の内部を形成する場合には、物体上に着弾後の材料は塗れ広がってもよい。
【0006】
例えば、コンタクトホールを有する絶縁層を形成する場合には、比較的濃度の高い液状の材料を用いることが求められる。比較的濃度が高い液状の材料であれば、吐出された後で、溶媒の気化に伴なって流動性を失うまでの時間が比較的に短いので、コンタクトホールとなる開口部の外形を形取るのが容易だからである。
【0007】
しかしながらそのような液状の材料が着弾後に塗れ広がる面積は小さい。したがって、そのような液状の材料を用いた場合には、下地層の段差を吸収して平坦な面を提供するような層を設けることが難しい。
【0008】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、下地層の段差を吸収して平坦な面を提供する絶縁層であって、コンタクトホールを有する絶縁層を、インクジェット法で形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の層形成方法は、インクジェット法を用いて配線基板を製造する方法である。上記層形成方法は、(a)第1レベルの表面上に位置する第1導電層の側面が第1絶縁材料で覆われるように、前記表面上に第1の濃度を有する液状の前記第1絶縁材料を吐出するステップと、(b)吐出された前記第1絶縁材料を活性化または乾燥して、前記第1導電層に接する第1絶縁層を形成するステップと、(c)前記第1導電層上と前記第1絶縁層上とに、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度を有する液状の第2絶縁材料を吐出するステップと、(d)吐出された前記第2絶縁材料を活性化または乾燥して、前記第1導電層と前記第1絶縁層とを覆う第2絶縁層を形成するステップと、を含んでいる。
【0010】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法で、第1導電層を覆う平坦な絶縁層が容易に得られることである。
【0011】
本発明のある態様では、前記第1導電層は銅配線である。
【0012】
上記構成によって得られる効果の一つは、一般に入手し易い配線基板にインクジェット法による絶縁層を設けることができることである。
【0013】
好ましくは、上記層形成方法が、(e)前記表面上に液状の第1導電性材料を吐出するステップと、(f)吐出された前記第1導電性材料層を活性化または乾燥して前記第1導電層を得るステップと、をさらに含んでいる。
【0014】
上記構成によって得られる効果の一つは、導電層の形成にインクジェット法を適用できることである。
【0015】
さらに好ましくは、前記ステップ(e)は、銀を含んだ前記第1導電性材料を吐出するステップを含む。
【0016】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法による導電層の形成が容易になることである。
【0017】
好ましくは、前記ステップ(c)は、前記吐出された第2絶縁材料によって前記第1導電層の一部を露出するコンタクトホールが形取られるように、前記第2絶縁材料を吐出するステップを含み、前記ステップ(d)は、前記吐出された第2絶縁材料を活性化または乾燥して、前記コンタクトホールを有する前記第2絶縁層を得るステップを含む。
【0018】
上記構成によって得られる効果の一つは、コンタクトホールを有する絶縁層をインクジェット法で形成できることである。
【0019】
本発明のある態様では、上記層形成方法が、(g)前記コンタクトホール内に前記第1導電層に接する第2導電層を設けるステップ、をさらに含んでいる。
【0020】
好ましくは、前記ステップ(g)は、前記コンタクトホールに液状の第2導電性材料を吐出するステップと、前記吐出された第2導電性材料を活性化または乾燥して前記第2導電層を得るステップと、を含んでいる。
【0021】
上記構成によって得られる効果の一つは、上記コンタクトホールを埋める導電層をインクジェット法で形成できることである。
【0022】
本発明の層形成方法は、第1部分と前記第1部分と接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法である。この層形成方法は、(a)前記第1部分へ第1の濃度を有する液状の第1絶縁材料を吐出するステップと、(b)前記ステップ(a)の後で、前記第2部分へ第2の濃度を有する液状の第2絶縁材料を吐出するステップと、を含んでいる。
【0023】
上記構成によって得られる効果の一つは、物体上での液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができることである。このため、上記構成によれば、層の境界部と内部とを容易に形成できる。
【0024】
本発明の配線基板は、上記層形成方法で製造される。
【0025】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法で配線基板を製造できることである。
【0026】
本発明の電気光学装置は、上記層形成方法で製造される。
【0027】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法で電気光学装置を製造できることである。
【0028】
本発明の電子機器は、上記層形成方法で製造される。
【0029】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法で電子機器を製造できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(実施形態1)
本実施形態の配線基板は、テープ形状を有するベース基板から製造される。ここでベース基板は、ポリイミドからなっており、フレキシブル基板とも呼ばれる。ベース基板上には、後述する製造工程によって、金属配線が形成される。そして、金属配線が形成された後で、ベース基板はプレス処理を受けて、ベース基板から複数の基板が切り抜かれる。この結果、ベース基板から、それぞれが金属配線を有する複数の基板が得られる。ここで、本実施形態では、複数の基板のそれぞれに設けられた金属配線は、どれも同じパターンを構成している。このように、金属配線が形成された基板を「配線基板」と表記する。
【0031】
(A.層形成装置)
本実施形態の配線基板は、6つの層形成装置が行う層形成工程を経て製造される。これら6つの層形成装置は、いずれも基本的に同じ構成・機能を有している。このため、以下では、記載の重複を避ける目的で、6つの層形成装置を代表して、1つの層形成装置についてのみ構成・機能を説明する。
【0032】
図1の層形成装置10は、所定のレベルに位置する表面上に導電層または絶縁層を形成する装置である。この層形成装置10は、一対のリールW1と、吐出装置10Aと、オーブン10Bと、を含んでいる。そして、層形成装置10において、ベース基板1aがリールW1の一方から巻き出されて他方に巻き取られるまでに、吐出装置10Aとオーブン10Bとによって、ベース基板1aに対してそれぞれの処理が行われる。このような処理方式は、リール・トゥ・リール(Reel To Reel)とも呼ばれる。
【0033】
吐出装置10Aは、ベース基板1aの所定のレベルに位置する表面に向けて液状の材料を吐出する装置である。また、オーブン10Bは、吐出装置10Aによって付与または塗布された液状の材料を加熱することで活性化する装置である。
【0034】
本明細書では、6つの層形成装置10のそれぞれに含まれる6つの吐出装置10Aを、説明の便宜上、第1吐出装置11A、第2吐出装置12A、第3吐出装置13A、第4吐出装置14A、第5吐出装置15A、第6吐出装置16Aと、表記する。同様に、6つのオーブン10Bを、説明の便宜上、第1オーブン11B、第2オーブン12B、第3オーブン13B、第4オーブン14B、第5オーブン15B、第6オーブン16Bと、表記する。
【0035】
6つの吐出装置11A、12A、13A、14A、15A、16Aは、基本的にいずれも同じ構造・機能を有している。このため、以下では、記載の重複を避ける目的で、6つの吐出装置11A、12A、13A、14A、15A、16Aを代表して、第1吐出装置11Aについてのみ構成・機能を説明する。
【0036】
(B.吐出装置の全体構成)
図2に示す第1吐出装置11Aはインクジェット装置である。より具体的には、第1吐出装置11Aは、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から液状の材料111が供給される吐出走査部102と、を備えている。ここで、吐出走査部102は、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、支持部104aと、を備えている。
【0037】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図3)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状の材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状の材料111が供給される。
【0038】
ステージ106はベース基板1aを固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いてベース基板1aの位置を固定する機能も有する。
【0039】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0040】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0041】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータやサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。なお、本明細書では、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108を、「ロボット」または「走査部」とも表記する。
【0042】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、ベース基板1aはステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、ベース基板1aに対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図3)は、ベース基板1aに対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0043】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データ(例えばビットマップデータ)を外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。
【0044】
上記構成を有する第1吐出装置11Aは、ビットマップデータに応じて、ヘッド114のノズル118(図3)をベース基板1aに対して相対移動させるとともに、被吐出部に向けてノズル118から液状の材料111を吐出する。このビットマップデータは、ベース基板1a上に、材料を所定パターンで付与するためのデータである。なお、第1吐出装置11Aによるヘッド114の相対移動と、ヘッド114からの液状の材料111の吐出と、をまとめて「塗布走査」または「吐出装置」と表記することもある。
【0045】
また「被吐出部」とは、液状の材料111の液滴が着弾して塗れ広がる部分である。さらに「被吐出部」は、液状の材料111が所望の接触角を呈するように、下地の物体に表面改質処理が施されることによって形成された部分でもある。ただし、表面改質処理を行わなくても下地の物体の表面が、液状の材料111に対して所望の撥液性または親液性を呈する(つまり着弾した液状の材料111が下地の物体の表面上で望ましい接触角を呈する)場合には、下地の物体の表面そのものが「被吐出部」であってもよい。なお、本明細書では、「被吐出部」を「ターゲット」または「受容部」とも表記する。
【0046】
(C.ヘッド)
図3(a)および(b)に示すように、第1吐出装置11Aにおけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、ノズル118の開口を規定するノズルプレート128と、を備えている。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、液たまり129が位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の材料111が常に充填される。
【0047】
また、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の材料111が供給される。なお、本実施形態では、ノズル118の直径は、約27μmである。
【0048】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A、124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状の材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0049】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0050】
(D.制御部)
次に、制御部112の構成を説明する。図4に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と記憶装置202とは、相互に通信可能に接続されている。処理部204と走査駆動部206とは相互に通信可能に接続されている。処理部204とヘッド駆動部208とは相互に通信可能に接続されている。また、走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0051】
入力バッファメモリ200は、第1吐出装置11Aの外部に位置するホストコンピュータ(不図示)から、液状の材料111の液滴Dを吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図4では、記憶装置202はRAMである。
【0052】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部に対してヘッド114が相対移動する。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から、液状の材料111の液滴Dが吐出される。
【0053】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、バスを含んだコンピュータであってもよい。この場合には、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0054】
(E.液状の材料)
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴として吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。
【0055】
液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上であれば、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111の流出により汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下であれば、ノズル118における目詰まり頻度が低くなり、この結果、円滑な液滴の吐出が実現し得る。
【0056】
後述する第1導電性材料、第2導電性材料、および第3導電性材料は、いずれも上記のような「液状の材料111」である。そして、第1導電性材料は第1吐出装置11Aから吐出され、第2導電性材料は第4吐出装置14Aから吐出され、第3導電性材料は第5吐出装置15Aから吐出される。
【0057】
本実施形態では、第1導電性材料、第2導電性材料、および第3導電性材料は、いずれも平均粒径が10nm程度の銀粒子と、分散剤と、有機溶媒と、を含む。そして導電性材料において、銀粒子は分散剤に覆われている。分散剤に覆われた銀粒子は有機溶媒中に安定して分散されている。ここで、分散剤は、銀原子に配位可能な化合物である。このような分散剤として、アミン、アルコール、チオールなどが知られている。
【0058】
平均粒径が1nm程度から数100nmまでの粒子は、「ナノ粒子」とも表記される。この表記によれば、第1導電性材料、第2導電性材料、および第3導電性材料は、いずれも銀のナノ粒子を含んでいる。
【0059】
さらに、後述する第1絶縁材料、第2絶縁材料、および第3絶縁材料も、いずれも上記のような「液状の材料111」である。そして、第1絶縁材料は第2吐出装置12Aから吐出され、第2絶縁材料は第3吐出装置13Aから吐出される。第3絶縁材料は第6吐出装置16Aから吐出される。なお、第1絶縁材料と第3絶縁材料とは同じである。
【0060】
本実施形態では、第1絶縁材料および第2絶縁材料は、いずれも、ポリイミド前駆体と、溶媒(希釈剤)であるNメチル2ピロリドンと、を含んだ溶液である。そして、第1絶縁材料および第2絶縁材料のそれぞれにおいて、ポリイミド前駆体の濃度がそれぞれ所定値になるよう設定されている。本実施形態では、第1絶縁材料におけるポリイミド前駆体の濃度が、第2絶縁材料におけるポリイミド前駆体の濃度よりも低い。ここで、一般的に、ポリイミド前駆体の濃度が高いほど、吐出後の第1絶縁材料および第2絶縁材料が流動性を実質的に失うまでの時間が短い。一方、ポリイミド前駆体の濃度が低いほど、吐出後の第1絶縁材料および第2絶縁材料が流動性を維持する期間は長くなる。
【0061】
第1絶縁材料および第2絶縁材料におけるポリイミド前駆体の濃度は、本発明の「絶縁材料の濃度」に対応する。なお、重合反応の代わりに、絶縁微粒子が凝集して絶縁層が形成される場合には、絶縁微粒子の濃度または重量%が、本発明の「絶縁材料の濃度」に対応する。
【0062】
(F.製造方法)
以下では、層形成方法、すなわち製造方法を説明する。
【0063】
(F1.第1導電層)
最初に、ベース基板1aのほぼ同一レベル上に第1導電層21を形成する。
【0064】
具体的には、図5(a)に示すように、まず、ベース基板1aを第1吐出装置11Aのステージ106上に位置させる。そうすると第1吐出装置11Aは、第1ビットマップデータに応じて、ベース基板1aの被吐出部上に第1導電性材料層21Bを形成する。
【0065】
より具体的には、まず、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第1吐出装置11Aはノズル118から第1導電性材料21Aの液滴を吐出する。吐出された第1導電性材料21Aの液滴は、ベース基板1aの被吐出部に着弾する。そして第1導電性材料21Aの液滴が被吐出部に着弾することによって、ベース基板1aの被吐出部上に第1導電性材料層21Bが得られる。
【0066】
上述の第1ビットマップデータは「吐出データ」の一種である。「吐出データ」とは、ノズル118から液滴を吐出すべき相対位置(吐出位置)を表す情報と、吐出位置ごとの液滴の体積を示す情報と、を含んでいる。このような吐出データは、図示しない外部情報処理装置(ホストコンピュータ)から、第1吐出装置11Aにおける制御部112のメモリに供給される。そして、制御部112は、供給された吐出データに応じて、第1位置制御装置104によるヘッド114の移動と、ヘッド114による液滴の吐出と、を制御する。
【0067】
第1導電性材料層21Bを形成した後で、第1導電性材料層21Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第1オーブン11Bの内部に位置させる。そして、第1導電性材料層21Bを加熱することで、第1導電性材料層21Bにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。このような活性化の結果、図5(b)に示すように、ベース基板1a上に、第1パターン形状を有する第1導電層21が得られる。
【0068】
第1パターン形状を有する第1導電層21は、図5(c)に示すような配線25Aと、配線25Bと、配線25Cと、を含む。具体的には、これら配線25A、25B、25Cのそれぞれは、ベース基板1aの被吐出部上に位置している。つまり、これら配線25A、25B、25Cはいずれも、ほぼ同一のレベルにある表面L1上に位置している。ただし、これら配線25A、25B、25Cのうちのどの2つの配線も、面L1上では互いから物理的に分離されている。なお、後述の工程によって、配線25Aと配線25Bとは、互いに電気的に接続されるべき配線である。一方、配線25Cは、配線25Aと配線25Bとのどちらからも電気的に絶縁されるべき配線である。
【0069】
(F2.第1絶縁層)
第1パターン形状の第1導電層21が設けられた後では、ベース基板1a上に第1導電層21の厚さに相当する段差が生じる。そこで、図5(d)に示すように、本実施形態では、ベース基板1aの部分であって第1導電層21がない部分に第1絶縁層31を形成する。第1絶縁層31は第1導電層21の側面を覆うので、このことで第1導電層21によって生じた段差がなくなる。
【0070】
具体的には、図5(d)に示すように、まず、第1導電層21が設けられたベース基板1aを第2吐出装置12Aのステージ106上に位置させる。そうすると第2吐出装置12Aは、第2ビットマップデータに応じて、ベース基板1aの被吐出部上に第1絶縁材料層31Bを形成する。
【0071】
より具体的には、まず、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、ノズル118が被吐出部に対応する位置に達した場合に、第2吐出装置12Aはノズル118から第1絶縁材料31Aの液滴を吐出する。吐出された第1絶縁材料31Aの液滴は、ベース基板1aの被吐出部に着弾する。そして第1絶縁材料31Aの液滴が被吐出部に着弾することで、ベース基板1a上に第1絶縁材料層31Bが得られる。
【0072】
ここで、着弾後の第1絶縁材料31Aが第1導電層21の側面を覆って塗れ広がるまで、第1絶縁材料31Aが流動性を維持できるように、本実施形態の第1絶縁材料31Aの濃度は十分低く設定されている。このため、被吐出部に着弾した第1絶縁材料31Aは、被吐出部上で、均一な厚さの層(第1絶縁材料層31B)を形成する。
【0073】
第1絶縁材料層31Bを形成した後で、第1絶縁材料層31Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第2オーブン12Bの内部に位置させる。そして、第1絶縁材料層31Bを加熱することで、第1絶縁材料層31Bにおけるポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図6(a)に示すように、ベース基板1a上に、第1絶縁層31(ポリイミド層)を得る。
【0074】
第1絶縁層31が形成されると、第1導電層21によって形成されたベース基板1a上の段差が吸収される。第1導電層21の表面と、第1絶縁層31の表面と、がほぼ同一のレベルに位置するからである。本明細書では、第1導電層21の表面と、第1絶縁層31の表面と、によって提供される表面を、「第2レベルの表面」とも表記する。
【0075】
(F3.第2絶縁層)
第1絶縁層31を形成した後で、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層を形成する。
【0076】
具体的には、図6(b)に示すように、まず、第1導電層21と第1絶縁層31とが設けられたベース基板1aを第3吐出装置13Aのステージ106上に位置させる。そうすると第3吐出装置13Aは、第3ビットマップデータに応じて、第1導電層21と、第1絶縁層31と、を覆う第2絶縁材料層32Bを形成する。
【0077】
より具体的には、まず、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、ノズル118が、第1導電層21の被吐出部および第1絶縁層31の被吐出部に対応する位置に達した場合に、第3吐出装置13Aはノズル118から第2絶縁材料32Aの液滴を吐出する。吐出された第2絶縁材料32Aの液滴は、第1導電層21の被吐出部および第1絶縁層31の被吐出部に着弾する。そして第2絶縁材料32Aの液滴が被吐出部に着弾することで、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁材料層32Bが得られる。
【0078】
ここで、配線25A上と、配線25C上と、にコンタクトホール35がそれぞれ形成されるように、第2絶縁材料32Aの液滴が吐出される。つまり、着弾した第2絶縁材料32Aによってコンタクトホール35の外形が規定されるように、第2絶縁材料32Aの液滴が吐出される。このため、コンタクトホール35が形成されるべき箇所には、第2絶縁材料32Aの液滴は吐出されない。
【0079】
第2絶縁材料32Aの濃度は、第1絶縁材料31Aの濃度よりも高い。このため、第1導電層21上に着弾した第2絶縁材料32Aが流動性を失うまでの時間が、第1絶縁材料31Aが流動性を失うまでの時間よりも短い。この結果、第2絶縁材料32Aは、第1絶縁材料31Aよりも、コンタクトホール35を形取るのに適している。本実施形態では、第2絶縁材料層32Bが活性化される前であっても、コンタクトホール35が形成されるべき部位は、開口部として維持される。
【0080】
第2絶縁材料層32Bを形成した後で、第2絶縁材料層32Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第3オーブン13Bの内部に位置させる。そして、第2絶縁材料層32Bを加熱することで、第2絶縁材料層32Bにおけるポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図6(c)に示すように、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層32(ポリイミド層)を得る。さらに上述したように、この第2絶縁層32は、配線25A上と配線25C上とに、それぞれコンタクトホール35を有している。
【0081】
しかも、第2絶縁材料32Aの濃度が高いにもかかわらず、第2絶縁材料32から形成される第2絶縁層32の表面は平坦になる。第2絶縁材料32Aが着弾する被吐出部(第2レベルの表面)が、第1導電層21と第1絶縁層31とによって形成される平坦面だからである。
【0082】
ところで、上述の第1絶縁材料31Aと第2絶縁材料32Aとは、次のように生成される。まず、溶液におけるポリイミド前駆体の濃度を調整することで、コンタクトホール35の形状を形取るのに適した濃度を有する第2絶縁材料32Aを得る。そして、第2絶縁材料32Aに所定量の溶媒を加えて第2絶縁材料32Aを希釈することで、第1絶縁材料31Aを得る。なお、溶媒として、Nメチル2ピロリドンや、N,Nジメチルアセトアミドを用いることができる。
【0083】
(F4.第2導電層)
第2絶縁層32を形成した後で、第2絶縁層32に設けられたコンタクトホール35を貫通する第2導電層を形成する。
【0084】
具体的には、図6(d)に示すように、まず、ベース基板1aを第4吐出装置14Aのステージ106上に位置させる。そうすると第4吐出装置14Aは、第4ビットマップデータに応じて、第2絶縁層32に設けられたコンタクトホール35を貫通する第2導電性材料層22Bを形成する。
【0085】
より具体的には、まず、第2絶縁層32に対するノズル118の相対位置を、2次元的に変化させる。そして、コンタクトホール35に対応する位置にノズル118が達した場合に、第4吐出装置14Aはノズル118から第2導電性材料22Aの液滴を吐出する。吐出された第2導電性材料22Aの液滴は、コンタクトホール35によって露出した第1導電層21の被吐出部に着弾する。そしてコンタクトホール35内を満たすのに充分な数の液滴がコンタクトホール35内に着弾することによって、コンタクトホール35を貫通する第2導電性材料層22Bが得られる。
【0086】
第2導電性材料層22Bを形成した後で、第2導電性材料層22Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第4オーブン14Bの内部に位置させる。そして、第2導電性材料層22Bを加熱することで、第2導電性材料層22Bにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。このような活性化の結果、図6(e)に示すように、第1導電層21における配線25Aと配線25Cとに電気的かつ物理的に連結されるとともに、コンタクトホール35を貫通するそれぞれの第2導電層22が得られる。
【0087】
(F5.第3導電層)
第2導電層22を形成した後で、第2絶縁層32上と第2導電層22上とに第3導電層23を形成する。
【0088】
具体的には、図7(a)に示すように、まず、ベース基板1aを第5吐出装置15Aのステージ106上に位置させる。そうすると第5吐出装置15Aは、第5ビットマップデータに応じて、第2パターン形状を有する第3導電性材料層23Bを第2絶縁層32の被吐出部上と第2導電層22の被吐出部上に形成する。ここで、第2パターン形状とは、2つのコンタクトホール35のそれぞれに設けられた第2導電層22を結ぶ形状である。
【0089】
より具体的には、まず、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第5吐出装置15Aはノズル118から第3導電性材料23Aの液滴を吐出する。吐出された第3導電性材料23Aの液滴は、第2絶縁層32の被吐出部と第2導電層22の被吐出部とに着弾する。そして第3導電性材料23Aの液滴が被吐出部に着弾することによって、第2絶縁層32の被吐出部上と第2導電層22の被吐出部上とに第3導電性材料層23Bが得られる。
【0090】
第3導電性材料層23Bを形成した後で、第3導電性材料層23Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第5オーブン15Bの内部に位置させる。そして、第3導電性材料層23Bを加熱することで、第3導電性材料層23Bにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。このような活性化の結果、図7(b)に示すように、2つのコンタクトホール35のそれぞれに設けられた第2導電層22に電気的に連結された第3導電層23が得られる。
【0091】
第3導電層23によって、第1導電層21の一部である配線25Aと配線25Cとは、互いに電気的に連結される。ここで、第1導電層21の一部である配線25Bは、配線25Aに対しても配線25Cに対しても電気的絶縁が保たれる。
【0092】
(F6.第3絶縁層)
第3導電層23を形成した後で、第3導電層23を覆う第3絶縁層33を形成する。
【0093】
具体的には、図7(c)に示すように、まず、ベース基板1aを第6吐出装置16Aのステージ106上に位置させる。そうすると第6吐出装置16Aは、第6ビットマップデータに応じて、第3導電層23を覆う第3絶縁材料層33Bを形成する。
【0094】
より具体的には、まず、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第6吐出装置16Aはノズル118から第3絶縁材料33Aの液滴を吐出する。吐出された第3絶縁材料33Aの液滴は、第2絶縁層32の被吐出部と第3導電層23の被吐出部とに着弾する。そして第3絶縁材料33Aの液滴が被吐出部に着弾することによって、第3絶縁材料層33Bが得られる。なお、本実施形態では、第3絶縁材料33Aは第1絶縁材料31Aと同じである。
【0095】
第3絶縁材料層33Bを形成した後で、第3絶縁材料層33Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第6オーブン16Bの内部に位置させる。そして、第3絶縁材料層33Bを加熱することで、第3絶縁材料層33Bにおけるポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図7(d)に示すように、第3導電層23を覆う第3絶縁層33が得られる。
【0096】
このように、本実施形態によれば、インクジェット法を利用して立体的な配線構造を有する配線基板を製造することができる。
【0097】
特に、第1レベルの表面上に段差が生じた場合でも、比較的濃度が低い第1絶縁材料31Aを第1レベルの表面上に吐出するので、第1レベルの次の第2レベルの表面を平坦にできる。さらに、本実施形態では、第2レベルの表面上に、第1絶縁材料31Aの濃度よりも高い濃度を有する第2の絶縁材料32Aを吐出するので、明確な形状のコンタクトホール35を形成することができる。つまり、本実施形態によれば、平坦性がよく、かつコンタクトホール35の形状が明確な絶縁層を、液状の材料(絶縁材料)の吐出によって形成できる。しかも、第1絶縁層31と、第2絶縁層32と、が同じ材料からなるので、線膨張率が互いに同じであり、この結果、熱膨張による応力が生じにくい。
【0098】
(実施形態2)
本実施形態の層形成方法は、第2絶縁層の形成工程を除いて、実施形態1の層形成方法と基本的に同じである。このため、以下では、記載の重複を避ける目的で、第2絶縁層の形成だけを説明する。
【0099】
(G.第2絶縁層)
まず、実施形態1の層形成方法で、ベース基板1a上に第1導電層21と第1絶縁層31とを形成する(図8(a))。そして、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層を形成する。
【0100】
具体的には、第2吐出装置12Aおよび第3吐出装置13Aが、それぞれのビットマップデータに応じて、第1導電層21の被吐出部上と第1絶縁層31の被吐出部上とに、第2絶縁材料層を設ける。そして、設けられた第2絶縁材料層は、後で活性化されることで第2絶縁層となる。
【0101】
この工程によって形成されるべき第2絶縁材料層(後の第2絶縁層)は、「層境界部」と「層内部」とからなる。「層境界部」とは、第2絶縁材料層または第2絶縁層の最も外側に位置する部分である。一方、「層内部」とは、その「層境界部」に囲まれた部分である。ただし、「層境界部」が、第2絶縁材料層においてコンタクトホールやビアホールの外形を形取る場合には、「層境界部」が「層内部」に囲まれる。いずれにしても、「層境界部」と「層内部」とは互いに密着している。
【0102】
本実施形態では、第1導電層21上の被吐出部と第1絶縁層31上の被吐出部のうち、層境界部に対応する被吐出部を「第1部分41」とも表記する。同様に、第1導電層21上の被吐出部と第1絶縁層31上の被吐出部のうち、層内部に対応する被吐出部を「第2部分42」とも表記する。第1部分41は、被吐出部の最も外側に位置する部分でもある。一方、第2部分42は、第1部分41によって囲まれた部分でもある。そして、これら第1部分41と第2部分42とは互いに接している。なお、本実施形態では、第1部分41と第2部分42とは、どちらも同じレベル(第2レベル)の表面上に位置している。ただしもちろん、これら第1部分41と第2部分42とが異なるレベルの表面上に位置していてもよい。
【0103】
(G1.層境界部(第1部分41への吐出))
以下では、第2絶縁層の形成をより具体的に説明する。まず、図8(b)に示すように、第3吐出装置13Aが、ベース基板1aに対するノズル118(図3)の相対位置を、Y軸方向の正の方向に相対速度Vで変化させる。そして、ノズル118が第1部分41に対応する位置に達した場合に、ヘッド114は第2絶縁材料32Aの液滴を吐出する。
【0104】
そして、ヘッド114のX軸方向への相対移動とY軸方向への相対移動とを繰り返すことで、第3吐出装置13Aは、ベース基板1a上の第1部分41のすべての範囲に第2絶縁材料32Aの液滴を着弾させる。そうすると、第1部分41を覆う第2絶縁材料層(層境界部)32Bが得られる。
【0105】
さて、第2絶縁材料32Aの濃度は、実施形態1で説明した第1絶縁材料31Aの濃度よりも高い。このため、第1導電層21上に着弾した第2絶縁材料32Aが流動性を失うまでの時間が、第1絶縁材料31Aが流動性を失うまでの時間よりも短い。この結果、第2絶縁材料32Aは、第1絶縁材料31Aよりも、層境界部を形取るのに適している。例えば、図8(b)および(c)に示すように、第1部分41がコンタクトホール35の外形に対応するように位置している場合には、第1部分41上の層境界部が活性化(硬化)されるまで、層境界部は、後にコンタクトホール35となる開口部を維持し得る。
【0106】
第2絶縁材料層32Bの層境界部が形成された後で、層境界部を活性化する。この目的で、ベース基板1aを第3オーブン13Bの内部に位置させる。そして、ベース基板1aを加熱することで、第2絶縁材料層32Bの層境界部を硬化させて、図8(c)に示すように第2絶縁層32の層境界部を得る。
【0107】
(G2.層内部(第2部分42への吐出))
第2絶縁層32の層境界部を形成した後で、層内部を形成する。まず、図8(d)に示すように、第2吐出装置12Aが、ベース基板1aに対するノズル118(図3)の相対位置を、Y軸方向の正の方向に相対速度Vで変化させる。そして、ノズル118が第2部分42に対応する位置に達した場合に、ヘッド114は第1絶縁材料31Aの液滴を吐出する。ここで、実施形態1で説明したように、第1絶縁材料31Aの濃度は十分低く設定されている。このため、第2部分42に着弾した第1絶縁材料31Aは十分広く塗れ広がる。
【0108】
第2吐出装置12Aは、ヘッド114のX軸方向への相対移動とY軸方向への相対移動とを繰り返すことで、層境界部によって縁取られた部分(第2部分42)を第1絶縁材料31Aで満たす。この結果、第2吐出装置12Aは、第2絶縁材料層32Bの層内部を形成する。
【0109】
第2絶縁材料層32Bの層内部が形成された後で、層内部を活性化する。この目的で、ベース基板1aを第2オーブン12Bの内部に位置させる。そして、ベース基板1aを加熱することで、第2絶縁材料層32Bの層内部を硬化させて、第2絶縁層32の層内部を得る。ここで、既に第2絶縁層32の層境界部は形成されているので、第2オーブン12Bによる活性化の後で、第2絶縁層32の全体が完成する。つまり、第2オーブン12Bによる活性化の後で、図8(e)に示すように、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層32(ポリイミド層)が得られる。さらに上述したように、この第2絶縁層32は、配線25A上と配線25C上とに、それぞれコンタクトホール35を有している。
【0110】
このように第2吐出装置12Aと第3吐出装置13Aとによれば、物体上に施される表面改質処理が同じであっても、物体上での液状の材料111の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができる。
【0111】
実施形態1および2の配線基板の一例は、液晶表示装置において液晶パネルに接続される配線基板である。このため、実施形態1および2の製造方法は、液晶表示装置の製造に適用できる。
【0112】
さらに、実施形態1および2の製造方法は、液晶表示装置の製造だけでなく、種々の電気光学装置の製造にも適用され得る。ここでいう「電気光学装置」とは、複屈折性の変化や、旋光性の変化や、光散乱性の変化などの光学的特性の変化(いわゆる電気光学効果)を利用する装置に限定されず、信号電圧の印加に応じて光を射出、透過、または反射する装置全般を意味する。
【0113】
具体的には、電気光学装置は、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、表面伝導型電子放出素子を用いたディスプレイ(SED:Surface−Conduction Electron−Emitter Display)、および電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)を含む用語である。
【0114】
さらに、実施形態1および2の製造方法は、種々の電子機器の製造方法に適用され得る。例えば、図9に示すような、液晶表示装置52を備えた携帯電話機50の製造方法や、図10に示すような、液晶表示装置62を備えたパーソナルコンピュータ60の製造方法にも、実施形態1および2の製造方法が適用される。
【0115】
(変形例1)
実施形態1および2では、第1絶縁層31および第2絶縁層32は、ポリイミドからなる。ただし、ポリイミドに代えて、他のポリマーからなってもよい。第1絶縁層31および第2絶縁層32が他のポリマーからなる場合には、第1絶縁材料31Aおよび第2絶縁材料32Aは、ポリイミド前駆体に代えて、対応するポリマー前駆体を含んでいればよい。
【0116】
(変形例2)
実施形態1および2では、第1絶縁材料31Aから得られる絶縁層も、第2絶縁材料32Aから得られる絶縁層も、互いに同じ構造のポリイミド、すなわち同じ構造のポリマー、からなる。このため、第1絶縁材料31Aに含まれるポリマー前駆体の構造は、第2絶縁材料32Aに含まれるポリマー前駆体の構造と同じである。しかしながら、結果として生じる絶縁層の線膨張率が近いのであれば、第1絶縁材料31Aにおけるポリマー前駆体の構造と、第2絶縁材料32Aにおけるポリマー前駆体の構造とが、異なっていてもよい。第1絶縁材料31Aと第2絶縁材料32Aとが異なる構造のポリマー前駆体を含んでいる場合であっても、第1絶縁材料31Aの濃度が第2絶縁材料32Aの濃度よりも低ければ、上記効果が得られるからである。
【0117】
(変形例3)
実施形態1および2では、ポリイミドからなるベース基板1a上に金属配線が形成される。しなしながら、このようなベース基板1aに代えて、セラミック基板やガラス基板やエポキシ基板やガラスエポキシ基板やシリコン基板などが利用されても、実施形態1および2で説明した効果と同様の効果が得られる。なお、シリコン基板を利用する場合には、導電性材料を吐出する前に、基板表面にパシベーション膜を形成してもよい。なお、どのような基板や膜が用いられても、上述したように、ノズル118からの液状の材料111が着弾することになる部分は「被吐出部」に対応する。
【0118】
(変形例4)
実施形態1および2の導電性材料には、銀のナノ粒子が含まれている。しかしながら、銀のナノ粒子に代えて、他の金属のナノ粒子が用いられてもよい。ここで、他の金属として、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。ただし、銀であれば比較的低温で還元できるため、扱いが容易であり、この点で、インクジェット法を利用する場合には、銀のナノ粒子を含む導電性材料を利用することは好ましい。
【0119】
また導電性材料が、金属のナノ粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱(すなわち活性化)による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金(I)、クロロトリメチルホスフィン金(I)、クロロトリフェニルフォスフィン金(I)、銀(I)2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)錯体、銅(I)ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
【0120】
このように、導電性材料に含まれる金属の形態は、ナノ粒子に代表される粒子の形態でもよいし、有機金属化合物のような化合物の形態でもよい。
【0121】
(変形例5)
実施形態1および2によれば、オーブン11B、12B、13B、14B、15B、16Bによる加熱によって導電性材料層および絶縁材料層を活性化させる。ただし、加熱することに代えて、紫外域・可視光域の波長の光や、マイクロウェーヴなどの電磁波を照射することで、導電性材料層または絶縁材料層を活性化してもよい。また、このような活性化に代えて、導電性材料層または絶縁材料層を単に乾燥させてもよい。付与された導電性材料層または絶縁材料層を放置するだけでも導電層または絶縁層が生じるからである。ただし、導電性材料層または絶縁材料層を単に乾燥させる場合よりも、何らかの活性化を行う場合の方が、導電層または絶縁層の生成時間が短い。このため、導電性材料層または絶縁材料層を活性化することがより好ましい。
【0122】
(変形例6)
実施形態1および2によれば、第1導電層はインクジェット法によって形成された銀配線である。ただし、銀配線に代えて、第1導電層がフォトリソグラフィー工程によって形成された銅配線であってもよい。
【0123】
(変形例7)
実施形態1および2では、第1絶縁材料31Aは第2吐出装置12Aから吐出され、第2絶縁材料32Aは第3吐出装置13Aから吐出される。しかしながら、第1絶縁材料31Aと第2絶縁材料32Aとがそれぞれ別々の吐出装置12A、13Aから吐出される代わりに、第1絶縁材料31Aと第2絶縁材料32Aとが、1つの同じ吐出装置から吐出されてもよい。実施形態1および2によれば、第1絶縁材料31Aに含まれるポリマー前駆体と、第2絶縁材料32Aに含まれるポリマー前駆体と、は互いに同じなので、第1絶縁材料31Aと第2絶縁材料32Aとを切換える際に、タンク101やチューブ110などの流路を洗浄しなくてもよい。このため、吐出装置における流路を洗浄するための工程を増やすことなく、使用される吐出装置の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】層形成装置の模式図。
【図2】層形成装置における吐出装置の模式図。
【図3】吐出装置におけるヘッドの模式図。
【図4】吐出装置における制御部の機能ブロック図。
【図5】(a)から(d)は実施形態1の製造方法を説明する図。
【図6】(a)から(e)は実施形態1の製造方法を説明する図。
【図7】(a)から(d)は実施形態1の製造方法を説明する図。
【図8】(a)から(e)は実施形態2の製造方法を説明する図。
【図9】携帯電話機を示す模式図。
【図10】パーソナルコンピュータを示す模式図。
【符号の説明】
【0125】
1a…ベース基板、10…層形成装置、10A…吐出装置、11A…第1吐出装置、12A…第2吐出装置、13A…第3吐出装置、14A…第4吐出装置、15A…第5吐出装置、16A…第6吐出装置、21…第1導電層、21A…第1導電性材料、21B…第1導電性材料層、22…第2導電層、22A…第2導電性材料、22B…第2導電性材料層、23…第3導電層、23A…第3導電性材料、23B…第3導電性材料層、25A…配線、25B…配線、25C…配線、31…第1絶縁層、31A…第1絶縁材料、31B…第1絶縁材料層、32…第2絶縁層、32A…第2絶縁材料、32B…第2絶縁材料層、33…第3絶縁層、33B…第3絶縁材料層、35…コンタクトホール、50…携帯電話機、60…パーソナルコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法を用いた層形成方法であって、
(a)第1レベルの表面上に位置する第1導電層の側面が第1絶縁材料で覆われるように、前記表面上に第1の濃度を有する液状の前記第1絶縁材料を吐出するステップと、
(b)吐出された前記第1絶縁材料を活性化または乾燥して、前記第1導電層に接する第1絶縁層を形成するステップと、
(c)前記第1導電層上と前記第1絶縁層上とに、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度を有する液状の第2絶縁材料を吐出するステップと、
(d)吐出された前記第2絶縁材料を活性化または乾燥して、前記第1導電層と前記第1絶縁層とを覆う第2絶縁層を形成するステップと、
を含んだ層形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の層形成方法であって、
前記第1導電層は銅配線である、
層形成方法。
【請求項3】
請求項1記載の層形成方法であって、
(e)前記表面上に液状の第1導電性材料を吐出するステップと、
(f)吐出された前記第1導電性材料層を活性化または乾燥して、前記第1導電層を得るステップと、
をさらに含んだ層形成方法。
【請求項4】
請求項3記載の層形成方法であって、
前記ステップ(e)は、銀を含んだ前記第1導電性材料を吐出するステップを含む、
層形成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つ記載の層形成方法であって、
前記ステップ(c)は、前記吐出された第2絶縁材料によって前記第1導電層の一部を露出するコンタクトホールが形取られるように、前記第2絶縁材料を吐出するステップを含み、
前記ステップ(d)は、前記吐出された第2絶縁材料を活性化または乾燥して、前記コンタクトホールを有する前記第2絶縁層を得るステップを含む、
層形成方法。
【請求項6】
請求項5記載の層形成方法であって、
(g)前記コンタクトホール内に前記第1導電層に接する第2導電層を設けるステップ、
をさらに含んだ層形成方法。
【請求項7】
請求項6記載の層形成方法であって、
前記ステップ(g)は、前記コンタクトホールに液状の第2導電性材料を吐出するステップと、前記吐出された第2導電性材料を活性化または乾燥して前記第2導電層を得るステップと、を含んでいる、
層形成方法。
【請求項8】
第1部分と前記第1部分に接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法であって、
(a)前記第1部分へ第1の濃度を有する液状の第1絶縁材料を吐出するステップと、
(b)前記ステップ(a)の後で、前記第2部分へ第2の濃度を有する液状の第2絶縁材料を吐出するステップと、
を含んだ層形成方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つ記載の層形成方法で製造された配線基板。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一つ記載の層形成方法で製造された電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一つ記載の層形成方法で製造された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−32535(P2006−32535A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207177(P2004−207177)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】