説明

炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造装置

【課題】薬液に関する問題を低減するとともに、洗浄効果を高めるSiC半導体装置の製造方法およびSiC半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】SiC半導体装置の製造方法は、SiCの表面に酸化膜を形成する工程(ステップS3)と、酸化膜を除去する工程(ステップS5)とを備え、酸化膜を形成する工程(ステップS3)では、オゾンガスを用いる。酸化膜を除去する工程(ステップS5)では、ハロゲンプラズマまたは水素プラズマを用いることが好ましい、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(SiC)半導体の製造方法およびSiC半導体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、バンドギャップが大きく、また最大絶縁破壊電界および熱伝導率はシリコン(Si)と比較して大きい一方、キャリアの移動度はシリコンと同程度に大きく、電子の飽和ドリフト速度および耐圧も大きい。そのため、高効率化、高耐圧化、および大容量化を要求される半導体装置への適用が期待される。
【0003】
このようなSiC半導体装置の製造方法においては、SiC半導体の表面に付着している付着物を除去するために洗浄を行なう。この洗浄の方法として、たとえば特許3733792号公報(特許文献1)に開示の技術が挙げられる。この特許文献1には、SiC基板にイオン注入された不純物を活性化するためのアニール後、表面清浄化の前処理法としてRCA洗浄を行なってからプラズマによる表面エッチングを行なうことが開示されている。また特許文献1には、RCA洗浄を以下の手順で行なったことが開示されている。有機物、貴金属の除去のために硫酸過水(H2SO4:H22=4:1)により処理した後、自然酸化膜の除去のために希HF処理を行なう。その後、自然酸化酸化膜中に存在していた金属を除去するために塩酸過水(HCl:H22:H2O=1:1:6)処理を行なう。最後に、これらのプロセス中で新たに生じた自然酸化膜を除去するために再度希HF処理を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3733792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のRCA洗浄で用いる過酸化水素(H22、以下過水とも言う)は不安定な材料であり、分解しやすい。このため、過水を用いたRCA洗浄では、十分に表面の清浄化ができない。
【0006】
またRCA洗浄を行なうと、薬液の使用量が増加し、薬液の濃度管理や廃液処理などの問題もある。このように、RCA洗浄に伴う薬液に関する問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、薬液に関する問題を低減するとともに、洗浄効果を高めるSiC半導体装置の製造方法およびSiC半導体装置の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のSiC半導体装置の製造方法は、SiCの表面に酸化膜を形成する工程と、酸化膜を除去する工程とを備え、酸化膜を形成する工程では、オゾン(O3)ガスを用いる。
【0009】
本発明のSiC半導体装置の製造方法によれば、オゾンガスを用いて酸化膜を形成している。オゾンガスは、酸化させるエネルギー(活性度)が高いため、安定な化合物であるSiCの半導体の表面に酸化膜を容易に形成することができる。これにより、表面に付着していた不純物、パーティクルなどを取り込んで酸化膜を容易に形成することができる。この酸化膜を除去することにより、取り込んだ不純物、パーティクルなどを除去することができる。このため、RCA洗浄に比べて洗浄効果を高めることができる。
【0010】
また、酸化膜を形成する工程では、薬液を用いる必要がない。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題を低減することができる。
【0011】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を除去する工程では、ハロゲンプラズマまたは水素(H)プラズマを用いる。
【0012】
この場合、酸化膜を除去する工程においても薬液を用いる必要がない。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題を低減することができる。
【0013】
また、ハロゲンプラズマまたはHプラズマにより酸化膜を除去すると、SiCの面方位による異方性の影響を低減できる。このため、SiC半導体の表面に形成した酸化膜を面内バラツキを低減して除去することができる。さらに、SiC半導体は、安定な化合物であるので、ハロゲンプラズマを用いても、SiC半導体へのダメージが少ない。このため、SiC半導体の表面特性を良好に維持して、SiC半導体の表面を洗浄することができる。
【0014】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を除去する工程では、ハロゲンプラズマとしてフッ素(F)プラズマを用いる。
【0015】
Fプラズマは、エッチング効率が高く、金属汚染の可能性が低い。このため、表面特性がより良好になるように、SiC半導体の表面を洗浄することができる。
【0016】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を除去する工程では、20℃以上400℃以下の温度で行なう。これにより、SiC半導体へのダメージを低減できる。
【0017】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を除去する工程では、0.1Pa以上20Pa以下の圧力で行なう。
【0018】
これにより、ハロゲンプラズマまたはHプラズマと、酸化膜との反応性を高めることができるので、酸化膜を容易に除去することができる。
【0019】
上記SiC半導体装置の製造方法において、酸化膜を除去する工程では、フッ化水素(HF)を用いてもよい。HFを用いても、酸化膜を容易に除去することができる。
【0020】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を形成する工程と酸化膜を除去する工程との間に、不活性ガスを含む雰囲気でSiC半導体を熱処理する工程をさらに備えている。
【0021】
酸化膜を形成する工程を実施する際に、表面に炭素(C)が析出する場合がある。しかし、酸化膜を形成後に熱処理をすることにより、表面に存在する炭素をSiC半導体の内部に分散することができる。このため、化学量論組成に近い表面を形成することができる。
【0022】
上記SiC半導体の製造方法において好ましくは、酸化膜を形成する工程に先立って、SiC半導体の表面に不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンを注入する工程をさらに備えている。
【0023】
これにより、不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンの注入により表面近傍に結晶欠陥を導入することができる。酸化膜を形成する工程において、オゾンガスによる活性酸素がこの結晶欠陥を通じて供給される。このため、結晶欠陥が導入された範囲に酸化膜を容易に形成することができる。したがって、洗浄効果をより高めることができる。
【0024】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を形成する工程では、SiC半導体を20℃以上600℃以下に加熱する。
【0025】
20℃以上にすることにより、表面1aとオゾンガスとの酸化反応速度を高めることができるので、酸化膜をより容易に形成することができる。600℃以下にすることにより、オゾンガスの分解を抑制できるので、酸化膜をより容易に形成することができる。
【0026】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を形成する工程では、0.1Pa以上50Pa以下の圧力で行なう。これにより、酸化膜をより容易に形成することができる。
【0027】
上記SiC半導体装置の製造方法において好ましくは、酸化膜を形成する工程では、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、および一酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む雰囲気で行なう。
【0028】
これにより、オゾンガスの分解を効果的に抑制できるので、酸化膜をより容易に形成することができる。
【0029】
本発明の一の局面におけるiC半導体装置の製造装置は、形成部と、除去部と、接続部とを備えている。形成部は、SiC半導体の表面に酸化膜を形成する。除去部は、オゾンガスを用いて酸化膜を除去する。接続部は、SiC半導体を搬送可能に形成部と除去部とを接続する。接続部におけるSiC半導体を搬送させる領域は、大気の遮断が可能である。
【0030】
本発明の他の局面におけるSiC半導体装置の製造装置は、オゾンガスを用いてSiC半導体の表面に酸化膜を形成するための形成部と、酸化膜を除去するための除去部とを備え、形成部と除去部とは同一である。
【0031】
本発明の一および他の局面におけるSiC半導体の製造装置によれば、形成部においてSiC半導体の表面に酸化膜を形成した後、除去部において酸化膜を除去する間に、SiC半導体が大気に曝されることを抑制できる。これにより、大気中の不純物がSiC半導体の表面に再付着することを抑制できる。また活性度の高いオゾンガスを用いて酸化膜を形成しているので、酸化膜を容易に形成することができる。これにより、RCA洗浄に比べて洗浄効果を高めることができる。
【0032】
また、形成部では、薬液を用いずに、酸化膜を形成することができる。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題を低減することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明のSiC半導体装置の製造方法および製造装置によれば、薬液に関する問題を低減できるとともに、洗浄効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1におけるSiC半導体装置の製造装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるSiC半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において準備するSiC半導体としてのSiC基板を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1においてSiC基板に酸化膜を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1において酸化膜を除去した状態を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるSiC基板上にエピタキシャル層を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における洗浄するSiC半導体としてのエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1においてエピタキシャルウエハに酸化膜を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1において酸化膜を除去した状態を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1においてエピタキシャルウエハにSiC半導体装置を構成する絶縁膜を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1においてソース電極を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1においてソース電極を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1においてSiC基板の裏面に酸化膜を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1において酸化膜を除去して、電極を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1においてゲート電極を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2におけるSiC半導体装置の製造装置の模式図である。
【図17】実施例で洗浄するエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるSiC半導体装置の製造装置10の模式図である。図1を参照して、本発明の一実施の形態におけるSiC半導体装置の製造装置10を説明する。
【0037】
図1に示すように、SiC半導体の製造装置10は、形成部11と、除去部12と、熱処理部13と、接続部14とを備えている。形成部11、除去部12および熱処理部13とは、接続部14により互いに接続されている。形成部11、除去部12、熱処理部13および接続部14の内部は大気から遮断されており、内部は互いに連通可能である。
【0038】
形成部11は、オゾンガスを用いて、SiC半導体の表面に酸化膜を形成する。形成部11は、たとえばオゾンガス発生装置を用いて酸化膜を形成する装置などが用いられる。
【0039】
除去部12は、形成部11で形成した酸化膜を除去する。除去部12は、たとえばプラズマ発生装置、HFなどの酸化膜を還元可能な溶液を用いて酸化膜を除去する装置、熱分解装置などが用いられる。除去部12は、ハロゲンプラズマまたはHプラズマを用いて酸化膜を除去することが好ましい。ハロゲンプラズマとしてはフッ素プラズマを用いて酸化膜を除去することがより好ましい。
【0040】
なお、除去部12がプラズマ発生装置の場合には、たとえば平行平板型RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)装置、ICP(Inductive Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)型RIE装置、ECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)型RIE装置、SWP(Surface Wave Plasma:表面波プラズマ)型RIE装置、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着)装置などが用いられる。
【0041】
熱処理部13は、形成部11と除去部12との間に配置され、不活性ガスを含む雰囲気でSiC半導体を熱処理する。
【0042】
接続部14は、SiC半導体を搬送可能に形成部11と除去部12とを接続する。本実施の形態では、形成部11と熱処理部13との間、および、熱処理部13と除去部12との間に配置されている。接続部14においてSiC半導体を搬送させる領域(内部空間)は、大気の遮断が可能である。
【0043】
ここで、大気の遮断(大気を遮断した雰囲気)とは、大気が混入しない雰囲気を意味し、たとえば真空中、または、不活性ガスや窒素ガスよりなる雰囲気である。具体的には、大気を遮断した雰囲気は、たとえば真空中、または、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)、またはこれらの組み合わせからなるガスが充填された雰囲気である。
【0044】
本実施の形態では、接続部14は、形成部11の内部と熱処理部13の内部とを連結するとともに、熱処理部13の内部と除去部12の内部とを連結している。なお、本発明の接続部14は、形成部11の内部と除去部12の内部とを連結していればよい。つまり、接続部14は、形成部11から搬出されるSiC半導体を除去部12へ搬送するための空間を内部に有していればよい。接続部14は、SiC半導体を大気に開放しないように、形成部11から除去部12へ搬送するために設置されている。
【0045】
接続部14は、内部でSiC半導体が搬送可能であるような大きさを有する。また接続部14は、SiC半導体をサセプタに載置した状態で搬送可能である大きさを有していてもよい。接続部14は、たとえば形成部11の出口と熱処理部13の入口とを連結するロードロック室や、熱処理部13の出口と除去部12の入口とを連結するロードロック室である。
【0046】
また、製造装置10は、接続部14の内部に配置されるとともに、SiC半導体を形成部11から除去部12へ搬送するための第1の搬送部をさらに備えていてもよい。製造装置10は、除去部12で酸化膜を除去したSiC半導体を、製造装置10の外部へ取り出す、あるいは、SiC半導体装置を構成する酸化膜を形成する酸化膜形成部へ大気を遮断した雰囲気で搬送するための第2の搬送部をさらに備えていてもよい。第1の搬送部と第2の搬送部とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
また、製造装置10は、内部の雰囲気ガスを排出するための真空ポンプや、内部の雰囲気ガスを置換するための置換ガスボンベをさらに備えていてもよい。真空ポンプや置換ガスボンベは、形成部11、除去部12および接続部14のそれぞれに接続されていてもよく、少なくともいずれか1つに接続されていてもよい。
【0048】
なお、製造装置10は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
【0049】
また、図1では、接続部14として形成部11と除去部12との間を連結する形状を示したが、特にこれに限定されない。接続部14として、たとえば大気を遮断したチャンバを用い、このチャンバ内に形成部11および除去部12が配置されていてもよい。
【0050】
図2は、本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図3〜図15は、本実施の形態におけるSiC半導体装置の各製造工程を概略的に示す断面図である。続いて、図1〜図15を参照して、本発明の一実施の形態のSiC半導体装置の製造方法を説明する。本実施の形態では、SiC半導体装置として、縦型MOSFETを製造する方法を説明する。また本実施の形態では、図1に示すSiC半導体の製造装置10を用いる。
【0051】
図2および図3に示すように、まず、表面1aを有するSiC基板1を準備する(ステップS1)。SiC基板1は、特に限定されないが、たとえば以下の方法により準備することができる。
【0052】
具体的には、たとえば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、OMVPE(OrganoMetallic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相成長)法、昇華法、CVD法などの気相成長法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相成長法などにより成長されたSiCインゴットを準備する。その後、SiCインゴットから表面を有するSiC基板を切り出す。切り出す方法は特に限定されず、SiCインゴットからスライスなどによりSiC基板を切り出す。次いで、切り出したSiC基板の表面を研磨する。研磨する面は、表面のみでもよく、表面と反対側の裏面をさらに研磨してもよい。研磨する方法は特に限定されないが、表面を平坦にするとともに、傷などのダメージを低減するために、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)を採用する。CMPでは、研磨剤としてコロイダルシリカ、砥粒としてダイヤモンド、酸化クロム、固定剤として接着剤、ワックスなどを用いる。なお、CMPと併せて、あるいは代わりに、電界研磨法、化学研磨法、機械研磨法などの他の研磨をさらに行なってもよい。また研磨を省略してもよい。これにより、図3に示す表面1aを有するSiC基板1を準備することができる。このようなSiC基板1として、たとえば導電型がn型であり、抵抗が0.02Ωcmの基板を用いる。
【0053】
次に、図2に示すように、SiC基板1の表面1aを洗浄する(ステップS2〜S5、S10)。洗浄方法は、たとえば以下のように行なう。
【0054】
具体的には、図2に示すように、SiC基板1の表面1aに不活性ガスイオンおよび水素イオン(H+)の少なくとも1種のイオンを注入する(ステップS2)。不活性ガスイオンは、ヘリウムイオン(He+)、ネオンイオン(Ne+)、アルゴンイオン(Ar+)、クリプトンイオン(Kr+)、キセノンイオン(Xe+)、ラドンイオン(Rn+)、またはこれらの組み合わせのイオンである。
【0055】
このステップS2では、後述するステップS3において酸化膜を形成する領域にイオン注入する。本実施の形態では、SiC基板1の表面1a全体にイオンを注入する。
【0056】
次に、図2および図4に示すように、オゾンガスを用いてSiC基板1の表面1aに酸化膜3を形成する(ステップS3)。本実施の形態のステップS2では、図1に示す製造装置10の形成部11で酸化膜3を形成する。
【0057】
このステップS3では、SiC半導体を20℃以上600℃以下に加熱することが好ましい。20℃以上にすることにより、表面1aとオゾンガスとの酸化反応速度を高めることができる。600℃以下にすることにより、オゾンガスの分解を抑制できる。
【0058】
また、このステップS3では、0.1Pa以上50Pa以下の圧力でオゾンガスを供給することが好ましい。0.1Pa以上にすることにより、オゾンガスの分解を抑制できる。50Pa以下にすることにより、表面1aとオゾンガスとの酸化反応速度を高めることができる。
【0059】
また、このステップS3では、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、および一酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む雰囲気で行なうことが好ましい。これにより、オゾンガスの分解を抑制できる。
【0060】
また、このステップS3では、オゾンガスの分圧(濃度)は2%以上90%以下であることが好ましい。2%以上にすることにより、表面1aとオゾンガスとの酸化反応速度を高めることができる。90%以下にすることにより、オゾンガスの分解を抑制できる。
【0061】
このステップS3では、たとえば1分子層以上30nm以下の厚みの酸化膜3を形成する。1分子層以上の厚みを有する酸化膜3を形成することで、表面1aの不純物、パーティクルなどを酸化膜に取り込むことができる。30nm以下の酸化膜3を形成することで、後述するステップS5で酸化膜3は除去されやすくなる。
【0062】
このステップS3を実施すると、SiC基板1の表面1aに付着しているパーティクル、金属不純物などを酸化膜3の表面や内部に取り込むことができる。なお、酸化膜3は、たとえば酸化シリコンである。
【0063】
次に、図1を参照して、形成部11で酸化膜3を形成したSiC基板1を、接続部14を介して、熱処理部13へ搬送する。このとき、SiC基板1は大気が遮断された雰囲気である接続部14内で搬送される。言い換えると、酸化膜3を形成するステップS2と後述する不活性ガスアニールを行なうステップS4との間では、SiC基板1は大気が遮断された雰囲気内に配置される。これにより、酸化膜3が形成された後に、SiC基板1に大気に含まれる不純物が付着することを抑制できる。
【0064】
次に、不活性ガスを含む雰囲気でSiC基板1を熱処理する(ステップS4)。熱処理はアルゴンを含む雰囲気で行なわれることが好ましい。また、1300℃以上1500℃以下で熱処理することが好ましい。
【0065】
このステップS4を実施することにより、酸化膜3を形成するステップS3時に、表面1aに炭素が析出して点欠陥となる場合がある。しかし、このステップS4でSiC基板1の表面1aを熱処理することにより、表面1aに存在する炭素をSiC基板1の内部に分散することができる。このため、後述する酸化膜3を除去するステップS5を実施すると、化学量論組成に近い表面を形成することができる。
【0066】
次に、図1を参照して、形成部11で酸化膜3を形成したSiC基板1を、接続部14を介して、除去部12へ搬送する。このとき、SiC基板1は大気が遮断された雰囲気である接続部14内で搬送される。言い換えると、不活性ガスアニールを行なうステップS4と酸化膜3を除去するステップS5との間では、SiC基板1は大気が遮断された雰囲気内に配置される。つまり、酸化膜3を形成するステップS2と酸化膜3を除去するステップS3との間では、SiC基板1は大気が遮断された雰囲気内に配置される。これにより、酸化膜3が形成された後に、SiC基板1に大気に含まれる不純物が付着することを抑制できる。
【0067】
次に、図3および図5に示すように、酸化膜3を除去する(ステップS5)。本実施の形態のステップS5では、図1に示す製造装置10の除去部12で酸化膜3を除去する。
【0068】
酸化膜3の除去方法は、特に限定されず、たとえばハロゲンプラズマ、Hプラズマ、熱分解、ドライエッチング、ウエットエッチングなどを用いることができる。
【0069】
ハロゲンプラズマとは、ハロゲン元素を含むガスから生成されるプラズマを意味する。ハロゲン元素とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)である。「ハロゲンプラズマにより酸化膜3を除去する」とは、ハロゲン元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜3をエッチングすることを意味する。言い換えると、ハロゲン元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜3を除去することを意味する。
【0070】
ハロゲンプラズマとしては、Fプラズマを用いることが好ましい。Fプラズマとは、F元素を含むガスから生成されるプラズマを意味し、たとえば四フッ化炭素(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、フロン(C26)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、二フッ化キセノン(XeF2)、フッ素(F2)、および三フッ化塩素(ClF3)の単独ガスあるいは混合ガスをプラズマ発生装置に供給することにより発生させることができる。「Fプラズマにより酸化膜3を除去する」とは、F元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜3を除去することを意味する。言い換えると、F元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜3を除去することを意味する。
【0071】
Hプラズマとは、H元素を含むガスから生成されるプラズマを意味し、たとえばH2ガスをプラズマ発生装置に供給することにより発生させることができる。「Hプラズマにより酸化膜3を除去する」とは、H元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜3をエッチングすることを意味する。言い換えると、H元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜3を除去することを意味する。
【0072】
このステップS5でハロゲンプラズマまたはHプラズマを用いる場合には、20℃以上400℃以下の温度で酸化膜3を除去することが好ましい。この場合、SiC基板1へのダメージが低減できる。
【0073】
また、このステップS5でハロゲンプラズマまたはHプラズマを用いる場合には、0.1Pa以上20Pa以下の圧力で酸化膜3を除去することが好ましい。この場合、ハロゲンプラズマまたはHプラズマと、酸化膜3との反応性を高めることができるので、酸化膜3を容易に除去することができる。
【0074】
熱分解は、Oを含まない雰囲気で、1200℃以上SiCの昇華温度以下で、酸化膜3を熱分解することが好ましい。1200℃以上のOを含まない雰囲気で酸化膜3を加熱すると、酸化膜3を容易に熱分解することができる。SiCの昇華温度以下にすることで、SiC基板1の劣化を抑制できる。また、熱分解は、反応を促進できる観点から、減圧下で行なうことが好ましい。
【0075】
ドライエッチングは、たとえば1000℃以上SiCの昇華温度以下で、水素(H2)ガスおよび塩化水素(HCl)ガスの少なくとも一方のガスを用いて、酸化膜3を除去する。1000℃以上の水素ガスおよび塩化水素ガスは、酸化膜3を還元する効果が高い。酸化膜がSiOxの場合、水素ガスはSiOxをH2OとSiHyとに分解し、塩化水素ガスはSiOxをH2OとSiClzとに分解する。SiCの昇華温度以下にすることで、エピタキシャルウエハ100の劣化を抑制できる。また、ドライエッチングは、反応を促進できる観点から、減圧下で行なうことが好ましい。
【0076】
ウエットエッチングは、たとえばHF、NH4F(フッ化アンモニウム)などの溶液を用いて酸化膜3を除去する。ウエットエッチングは、HFを用いることが好ましく、1%以上10%以下の希HF(DHF)を用いることがより好ましい。HFを用いて除去する場合には、たとえば反応容器にHFを貯留させて、SiC基板1をHFに浸漬させることで酸化膜3を除去することができる。
【0077】
ウエットエッチングなどの液相を用いたウエット洗浄をする場合には、ウエット洗浄後に、SiC基板1の表面1aを純水で洗浄してもよい。純水は超純水であることが好ましい。純水に超音波を印加して洗浄してもよい。なお、この工程は省略されてもよい。
【0078】
また、ウエット洗浄をする場合には、SiC基板1の表面1aを乾燥してもよい(乾燥工程)。乾燥する方法は特に限定されないが、たとえばスピンドライヤー等により乾燥する。なお、この乾燥工程は省略されてもよい。
【0079】
このステップS5を実施すると、ステップS2で不純物、パーティクルなどを取り込んだ酸化膜3を除去できるので、ステップS1で準備したSiC基板1の表面1aに付着していた不純物、パーティクルなどを除去することができる。また、化学量論組成に近い表面2aを有するSiC基板2を形成することができる。
【0080】
上記工程(ステップS2〜S5、S10)を実施することにより、SiC基板2の表面2aを洗浄することができる。なお、ステップS2およびS4は省略されてもよい。このように洗浄することにより、たとえば図5に示すように、不純物およびパーティクルが低減された表面2aを有するSiC基板2を実現することができる。
【0081】
なお、上記ステップS2〜S5の全てまたは一部を繰り返してもよい。ただし、ステップS2〜S5の間に、RCA洗浄は行なわない。また、フッ素原子を含むガス単独またはフッ素原子を含む混合ガスにより、表面2aをエッチングする工程をさらに備えていてもよい。
【0082】
次に、図2、図6および図7に示すように、SiC基板2の表面2a上に、気相成長法、液相成長法などにより、エピタキシャル層120を形成する(ステップS6)。本実施の形態では、たとえば以下のようにエピタキシャル層120を形成する。
【0083】
具体的には、図6に示すように、SiC基板2の表面2a上に、バッファ層121を形成する。バッファ層121は、たとえば導電型がn型のSiCからなり、たとえば厚さが0.5μmのエピタキシャル層である。またバッファ層121における導電性不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3である。
【0084】
その後、図6に示すように、バッファ層121上に耐圧保持層122を形成する。耐圧保持層122として、気相成長法、液相成長法などにより、導電型がn型のSiCからなる層を形成する。耐圧保持層122の厚さは、たとえば15μmである。また耐圧保持層122におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1015cm-3である。
【0085】
次に、図7に示すように、エピタキシャル層120にイオン注入する(ステップS7)。本実施の形態では、図7に示すように、p型ウエル領域123と、n+ソース領域124と、p+コンタクト領域125とを、以下のように形成する。まず導電型がp型の不純物を耐圧保持層122の一部に選択的に注入することで、ウエル領域123を形成する。その後、n型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってソース領域124を形成し、また導電型がp型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってコンタクト領域125を形成する。なお不純物の選択的な注入は、たとえば酸化膜からなるマスクを用いて行われる。このマスクは、不純物の注入後にそれぞれ除去される。
【0086】
このような注入工程の後、活性化アニール処理が行われてもよい。たとえば、アルゴン雰囲気中、加熱温度1700℃で30分間のアニールが行われる。
【0087】
これらの工程により、図7に示すように、SiC基板2と、SiC基板2上に形成されたエピタキシャル層120とを備えたエピタキシャルウエハ100を準備することができる。
【0088】
次に、エピタキシャルウエハ100の表面100aを洗浄する(ステップS2〜S5、S10)。エピタキシャルウエハ100の表面100aを洗浄する工程(ステップS10)は、SiC基板1の表面1aを洗浄する工程と基本的には同様である。なお、エピタキシャルウエハ100を洗浄する際に、図1に示す製造装置10を用いる場合には、製造装置10の接続部14は、エピタキシャルウエハ100が搬送される。このため、接続部14は、エピタキシャルウエハ100またはエピタキシャルウエハ100が載置されたサセプタが搬送可能な形状である。
【0089】
具体的には、図2に示すように、エピタキシャルウエハ100の表面100aに不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンを注入する(ステップS2)。
【0090】
次に、図2および図8に示すように、エピタキシャルウエハ100の表面100aに、酸化膜3を形成する(ステップS3)。このステップS3は、SiC基板1の表面1a上に酸化膜3を形成するステップS3と同様である。ただし、ステップS7でエピタキシャルウエハにイオン注入することにより表面100aがダメージを受けた場合、このダメージ層を除去する目的で、ダメージ層を酸化してもよい。この場合、表面100aからSiC基板2に向けてたとえば10nm超えて100nm以下酸化する。
【0091】
次に、不活性ガスを含む雰囲気でエピタキシャルウエハ100を熱処理する(ステップS4)。このステップS4では、酸化膜3を形成する工程(ステップS3)以外に、イオン注入する工程(ステップS7)においても、表面1aに炭素が析出して点欠陥となる場合がある。しかし、このステップS4でエピタキシャルウエハ100の表面100aを熱処理することにより、表面100aに存在する炭素をエピタキシャルウエハ100の内部に分散することができる。このため、酸化膜3を除去すると、化学量論組成に近い表面を形成することができる。
【0092】
次に、図2および図9に示すように、エピタキシャルウエハ100の表面100a上に形成された酸化膜3を除去する(ステップS5)。
【0093】
上記工程(ステップS2〜S5、S10)を実施することにより、エピタキシャルウエハ100の表面100aに付着していた不純物、パーティクルなどを除去することができるとともに、化学量論組成に近い表面を形成することができる。これにより、たとえば図9に示すように、不純物およびパーティクルが低減され、かつ化学量論組成に近い表面101aを有するエピタキシャルウエハ101を実現することができる。
【0094】
次に、エピタキシャルウエハ101において洗浄された表面101aに、SiC半導体装置を構成する酸化膜であるゲート酸化膜126を形成する(ステップS8)。具体的には、図10に示すように、表面101aにおいて、耐圧保持層122と、ウエル領域123と、ソース領域124と、コンタクト領域125との上を覆うように、ゲート酸化膜126を形成する。この形成はたとえば熱酸化(ドライ酸化)により行なうことができる。熱酸化は、たとえばO2、O3、NOなどの酸素元素を含む雰囲気中で高温に加熱する。熱酸化の条件は、たとえば、加熱温度が1200℃であり、また加熱時間が30分である。なお、ゲート酸化膜126の形成は、熱酸化に限定されず、たとえばCVD法、スパッタリング法などにより形成してもよい。ゲート酸化膜126は、たとえば50nmの厚みを有するシリコン酸化膜からなる。
【0095】
このように不純物、パーティクルなどを低減した表面101a上にSiC半導体装置を構成するゲート酸化膜126を形成してSiC半導体装置を作製すると、ゲート酸化膜126の特性を向上できるとともに、表面101aとゲート酸化膜126との界面、およびゲート酸化膜126中に存在する不純物、パーティクルなどを低減することができる。したがって、SiC半導体装置の逆方向電圧印加時の耐圧を向上できるとともに、順方向電圧印加時の動作の安定性および長期信頼性を向上することができる。
【0096】
なお、エピタキシャルウエハ101の表面101aを洗浄する工程(ステップS5)と、SiC半導体装置を構成する酸化膜を形成する工程(ステップS8)との間では、エピタキシャルウエハ101は大気が遮断された雰囲気内に配置されることが好ましい。つまり、図1に示す製造装置は、除去部12とSiC半導体装置を構成する酸化膜を形成する第2の形成部との間に、大気の遮断が可能な第2の接続部を備えていることが好ましい。この場合、洗浄された表面100aを有するエピタキシャルウエハ100は、大気が遮断された第2の接続部内で搬送される。これにより、酸化膜3が除去された後に、エピタキシャルウエハ101の表面101aに大気中に含まれる不純物が付着することを抑制できる。
【0097】
その後、窒素アニールを行なう(ステップS9)。具体的には、一酸化窒素(NO)雰囲気中でのアニール処理が行われる。この処理の条件は、たとえば加熱温度が1100℃であり、加熱時間が120分である。この結果、耐圧保持層122、ウエル領域123、ソース領域124、およびコンタクト領域125の各々と、ゲート酸化膜126との界面近傍に、窒素原子を導入することができる。
【0098】
なお、この一酸化窒素を用いた窒素アニール工程(ステップS9)の後、さらに不活性ガスであるアルゴンガスを用いたアニール処理を行ってもよい(ステップS11)。この処理の条件は、たとえば、加熱温度が1100℃であり、加熱時間が60分である。
【0099】
また窒素アニール工程(ステップS9)の後、さらに、有機洗浄、酸洗浄、RCA洗浄などの表面洗浄を行ってもよい。
【0100】
次に、図2、図11および図12に示すように、ソース電極111、127を形成する(ステップS12)。具体的には、ゲート酸化膜126上に、フォトリソグラフィ法を用いて、パターンを有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜をマスクとして用いて、ゲート酸化膜126のうちソース領域124およびコンタクト領域125上に位置する部分をエッチングにより除去する。これによりゲート酸化膜126に開口部126aを形成する。たとえば蒸着法により、この開口部126aにおいてソース領域124およびコンタクト領域125の各々と接触するように導電体膜を形成する。次にレジスト膜を除去することにより、上記導体膜のうちレジスト膜上に位置していた部分の除去(リフトオフ)が行われる。この導体膜は、金属膜であってもよく、たとえばニッケル(Ni)からなる。このリフトオフの結果、ソース電極111が形成される。
【0101】
ここでアロイ化のための熱処理が行なわれることが好ましい。たとえば、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスの雰囲気中、加熱温度950℃で2分の熱処理が行なわれる。
【0102】
その後、図12に示すように、たとえば蒸着法により、ソース電極111上に上部ソース電極127を形成する。
【0103】
次に、SiC基板2の裏面2bをバックグラインド(BG)して、裏面2bの平滑化を図る。このSiC基板2の裏面2bを洗浄する(ステップS2〜S5、S10)。SiC基板2の裏面2bを洗浄する工程(ステップS10)は、SiC基板1の表面1aを洗浄する工程と基本的には同様である。なお、SiC基板2の裏面2bを洗浄する際に、図1に示す製造装置10を用いる場合には、製造装置10の接続部14は、ソース電極111、127が形成されたエピタキシャルウエハ101が搬送される。このため、接続部14は、ソース電極111、127が形成されたエピタキシャルウエハ100またはこのエピタキシャルウエハ100が載置されたサセプタが搬送可能な形状である。
【0104】
具体的には、図2に示すように、SiC基板2の裏面2bに不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンを注入する(ステップS2)。次いで、図2および図13に示すように、SiC基板2の裏面2bに、酸化膜3を形成する(ステップS3)。次に、図2に示すように、不活性ガスを含む雰囲気でSiC基板2の裏面2bを熱処理する(ステップS4)。その後、図2に示すように、SiC基板2の裏面2b上に形成された酸化膜3を除去する(ステップS5)。
【0105】
上記工程(ステップS2〜S5、S10)を実施することにより、SiC基板2の裏面2bに付着していた不純物、パーティクルなどを除去することができる。また酸化膜3を形成するステップS3においてバックグラインドによるダメージ層も酸化できるので、バックグラインドによりダメージ層を除去することもできる。さらに、化学量論組成に近い面にすることもできる。
【0106】
次に、図2および図14に示すように、SiC基板2の裏面上にドレイン電極112を形成する(ステップS13)。ドレイン電極112を形成する方法は特に限定されないが、たとえば蒸着法により形成することができる。
【0107】
次に、図2および図15に示すように、ゲート電極110を形成する(ステップS14)。ゲート電極110の形成方法は特に限定されないが、たとえば以下のように形成する。予めゲート酸化膜126上の領域に位置する開口パターンを有するレジスト膜を形成し、当該レジスト膜の全面を覆うようにゲート電極を構成する導電体膜を形成する。そして、レジスト膜を除去することによって、ゲート電極となるべき導電体膜の部分以外の導電体膜を除去(リフトオフ)する。この結果、図15に示すように、ゲート酸化膜126上にゲート電極110を形成することができる。
【0108】
以上の工程(ステップS1〜S14)を実施することにより、図15に示すSiC半導体装置としてのMOSFET102を製造することができる。
【0109】
ここで、本実施の形態では、洗浄する工程(ステップS2〜S5、S10)の対象となるSiC半導体の表面として、エピタキシャル層120を形成する前のSiC基板1の表面1a、エピタキシャルウエハ100におけるイオン注入された表面100a、およびエピタキシャルウエハ100においてSiC基板2のエピタキシャル層が形成された面と反対側の裏面2bを例に挙げて説明した。しかし、洗浄する工程の対象となるSiC半導体の表面は上記に限定されず、たとえば図7に示すイオン注入される前のエピタキシャルウエハ100の表面100aを洗浄してもよい。また、上記のいずれかの面のみを洗浄してもよい。
【0110】
また、本実施の形態における導電型が入れ替えられた構成、すなわちp型とn型とが入れ替えられた構成を用いることもできる。
【0111】
また、MOSFET102を作製するためにSiC基板2を用いているが、基板の材料はSiCに限定されず、他の材料の結晶を用いて作製されてもよい。また、SiC基板2が省略されてもよい。
【0112】
以上説明したように、本実施の形態におけるSiC半導体装置の一例としてのMOSFET102の製造方法は、SiC半導体の表面に酸化膜を形成する工程(ステップS3)と、酸化膜を除去する工程(ステップS5)とを備え、酸化膜を形成する工程(ステップS3)では、オゾンガスを用いる。
【0113】
本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造方法によれば、オゾンガスを用いて酸化膜3を形成している。オゾンガスは、酸化させるエネルギー(活性度)が高いため、安定性の高い化合物であるSiC半導体の表面に酸化膜3を容易に形成することができる。これにより、表面に付着していた不純物、パーティクルなどを取り込んで酸化膜3を容易に形成することができる。この酸化膜3を除去することにより、取り込んだ不純物、パーティクルなどを除去することができる。このため、活性度が低いRCA洗浄に比べて洗浄効果を高めることができる。
【0114】
RCA洗浄を行なうと、バッチ処理においては薬液の使用量が膨大になり、スピン洗浄でも廃液処理の問題が発生する。しかし、本実施の形態の酸化膜を形成する工程(ステップS3)では、ドライ雰囲気で酸化膜3を形成するので、薬液を用いる必要がない。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題を低減することができる。なお、ドライ雰囲気とは、気相中で酸化膜3を形成することを意味し、意図しない液相成分を含んでいてもよい。
【0115】
さらに、本実施の形態における酸化膜を形成する工程(ステップS3)および酸化膜を除去する工程(ステップS5)を実施することにより、炭素リッチな面においてはCOやCO2としてCを除去できるので、SiおよびCが化学量論組成に近い表面を形成できる。このため、洗浄する表面の特性を向上することができるので、この表面を有するSiC半導体装置の特性も向上することができる。
【0116】
本発明の実施の形態におけるSiC半導体の製造装置10は、SiC半導体の表面に酸化膜3を形成するための形成部11と、オゾンガスを用いて酸化膜3を除去するための除去部12と、SiC半導体を搬送可能に形成部11と除去部12とを接続する接続部14とを備え、接続部14におけるSiC半導体を搬送させる領域は、大気の遮断が可能である。
【0117】
本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造装置10によれば、形成部11においてSiC半導体に酸化膜3を形成した後、除去部12において酸化膜3を除去する間に、SiC半導体が大気に曝されることを抑制できる。これにより、大気中の不純物がSiC半導体の表面に再付着することを抑制できる。また活性度の高いオゾンガスを用いて酸化膜を形成しているので、酸化膜を容易に形成することができる。したがって、活性度が低いRCA洗浄に比べて洗浄効果を高めることができる。
【0118】
また、形成部11では、薬液を用いずに、酸化膜3を形成することができる。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題を低減することができる。
【0119】
なお、本実施の形態では、SiC半導体装置として縦型のMOSFETの製造方法を例に挙げて説明したが、半導体装置は特に限定されず、たとえば横型のMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの絶縁ゲート型電界効果部を有する半導体装置や、JFET(Junction Field-Effect Transistor:接合電界効果トランジスタ)などのSiC半導体装置全般に適用できる。
【0120】
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2のSiC半導体装置の製造装置の模式図である。図16を参照して、本実施の形態のSiC半導体装置の製造装置を説明する。
【0121】
図16に示すように、本実施の形態の製造装置20は、チャンバ21と、第1のガス供給部22と、第2のガス供給部23と、真空ポンプ24とを備えている。第1のガス供給部22、第2のガス供給部23および真空ポンプ24は、チャンバ21と接続されている。
【0122】
チャンバ21は、内部にSiC半導体を収容する。第1のガス供給部22は、SiC半導体の表面に酸化膜を形成するためのガスをチャンバ21に供給する。第1のガス供給部22は、オゾンガスを含むガスを供給する。第2のガス供給部23は、SiC半導体に形成された酸化膜3を除去するためのガスを供給する。第2のガス供給部23は、たとえばハロゲンまたはHを含むガスを供給する。このため、第2のガス供給部23は、チャンバ21内でハロゲンプラズマまたはHプラズマを発生することが可能であり、これによりSiC半導体の表面に形成された酸化膜3を除去することができる。
【0123】
真空ポンプ24は、チャンバ21の内部を真空にする。このため、オゾンガスによりSiC半導体の表面に酸化膜3を形成した後に、チャンバ21の内部を真空にして、酸化膜3を除去することができる。なお、真空ポンプ24は省略されてもよい。
【0124】
また、製造装置20は、第3のガス供給部(図示せず)を備えていてもよい。第3のガス供給部は、不活性ガスを供給し、チャンバ21内でSiC半導体を熱処理することを可能とする。
【0125】
なお、図16に示す製造装置20は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
【0126】
本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造方法は、基本的には実施の形態1と同様の構成を備えているが、本実施の形態における製造装置20を用いる点において異なる。なお、本実施の形態では、酸化膜3を除去する工程(ステップS5)では、ドライ雰囲気で行なう。
【0127】
以上より、本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造装置20は、オゾンガスを用いてSiC半導体の表面に酸化膜3を形成するための形成部と、酸化膜3を除去するための除去部とを備え、形成部と除去部とが同一(チャンバ21)である。
【0128】
本実施の形態におけるSiC半導体装置の製造装置20によれば、形成部においてSiC半導体に酸化膜3を形成した後、除去部において酸化膜3を除去する間に、SiC半導体を搬送する必要がないので、SiC半導体は大気に曝されない。言い換えると、酸化膜3を形成するステップS3と酸化膜3を除去するステップS5との間では、SiC半導体は大気が遮断された雰囲気内に配置される。これにより、SiC半導体の洗浄中に大気中の不純物がSiC半導体の表面に再付着することを抑制できる。また活性度の高いオゾンガスによって酸化膜3を形成しているので、安定した化合物であるSiC半導体の表面に酸化膜3を容易に形成することができる。したがって、活性度が低いRCA洗浄に比べて洗浄効果を高めることができる。
【0129】
また、薬液を用いずに、ドライ雰囲気で、酸化膜3の形成および酸化膜3の除去を行なうことができる。このため、洗浄に伴う薬液に関する問題をさらに低減することができる。
【実施例】
【0130】
本実施例では、SiC半導体として、図17に示すエピタキシャルウエハ130の洗浄において、オゾンガスを用いて酸化膜を形成することの効果について調べた。なお、図17は、本実施例で洗浄するエピタキシャルウエハ130を概略的に示す断面図である。
【0131】
(本発明例1)
まず、SiC基板2として、表面2aを有する4H−SiC基板を準備した(ステップS1)。
【0132】
次に、エピタキシャル層120を構成する層として、10μmの厚みを有し、1×1016cm-3の不純物濃度を有するp型SiC層131をCVD法により成長した(ステップS6)。
【0133】
次に、SiO2をマスクとして用いて、リン(P)をn型不純物として1×1019cm-3の不純物濃度を有するソース領域124およびドレイン領域129を形成した。また、アルミニウム(Al)をp型不純物として1×1019cm-3の不純物濃度を有するコンタクト領域125を形成した(ステップS7)。なお、各々のイオン注入をした後には、マスクを除去した。
【0134】
次に、活性化アニール処理を行なった。この活性化アニール処理としては、Arガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700〜1800℃、加熱時間30分と条件とした。
【0135】
これにより、表面130aを有するエピタキシャルウエハ130を準備した。続いて、図1に示す製造装置10を用いて、エピタキシャルウエハ130の表面130aを洗浄した(ステップS10)。
【0136】
具体的には、オゾンガスを用いて、酸化膜を形成した(ステップS3)。このステップS3では、5Paでアルゴンを含む雰囲気でエピタキシャルウエハ130を400℃に加熱した。これにより、エピタキシャルウエハ130の表面130aに1nmの厚みの酸化膜を形成できたことを確認した。
【0137】
次に、接続部14を介して熱処理部13で、不活性ガスを含む雰囲気でエピタキシャルウエハ130を熱処理した(ステップS4)。熱処理の条件は、不活性ガスとしてアルゴンを用い、1300℃以上でエピタキシャルウエハ130を加熱した。
【0138】
次に、接続部14を通して除去部12で、エピタキシャルウエハ130の表面130aに形成された酸化膜を除去した(ステップS5)。このステップS5では、10%の濃度のフッ酸により除去した。これにより、ステップS3で形成した酸化膜を除去できたことを確認した。
【0139】
以上の工程(ステップS3〜S5、S10)により、エピタキシャルウエハ130の表面130aを洗浄した。本発明例1の洗浄後のエピタキシャルウエハ130の表面は、洗浄前の表面130aよりも不純物およびパーティクルが低減されていた。また、本発明例1の洗浄後のエピタキシャルウエハ130の表面は、化学量論組成に近いSiC表面であった。
【0140】
(本発明例2)
本発明例2では、まず、本発明例1と同様の図17に示すエピタキシャルウエハ130を準備した(ステップS1、S6、S7)。
【0141】
次に、SiC基板2の裏面2bをバックグラインドした。次いで、この裏面2bに酸化膜を形成した(ステップS3)。その後、熱処理をした(ステップS4)。次に、酸化膜を除去した(ステップS5)。ステップS3〜S5の条件は、本発明例1と同様とした。
【0142】
以上の工程(ステップS3〜S5)により、エピタキシャルウエハ130のSiC基板2の裏面2bを洗浄した。本発明例2の洗浄後のSiC基板2の裏面は、洗浄前の裏面2bよりも不純物およびパーティクルが低減されていた。また、本発明例2の洗浄後のSiC基板2の裏面は、化学量論組成に近いSiC表面であった。
【0143】
(本発明例3)
本発明例3は、基本的には本発明例1と同様に行なったが、酸化膜を形成する工程(ステップS3)に先立って、エピタキシャルウエハ130の表面130aに不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンを注入する工程(ステップS2)をさらに備えていた点において異なっていた。具体的には、不活性ガスイオンとして水素イオンを用い、表面130a全体に水素イオンを注入した。不活性ガスイオンを注入することで、ステップS3でオゾンガスを用いて表面130aを酸化させたときに、酸化膜をより容易に形成できたことを確認できた。
【0144】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0145】
1,2 SiC基板、1a,2a,100a,101a,130a 表面、2b 裏面、3 酸化膜、10,20 製造装置、11 形成部、12 除去部、13 熱処理部、14 接続部、21 チャンバ、22 第1のガス供給部、23 第2のガス供給部、24 真空ポンプ、100,101,130 エピタキシャルウエハ、110 ゲート電極、111,127 ソース電極、112 ドレイン電極、120 エピタキシャル層、121 バッファ層、122 耐圧保持層、123 ウエル領域、124 ソース領域、125 コンタクト領域、129 ドレイン領域、131 p型SiC層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素半導体の表面に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜を除去する工程とを備え、
前記酸化膜を形成する工程では、オゾンガスを用いる、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜を除去する工程では、ハロゲンプラズマまたは水素プラズマを用いる、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化膜を除去する工程では、前記ハロゲンプラズマとしてフッ素プラズマを用いる、請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記酸化膜を除去する工程では、20℃以上400℃以下の温度で行なう、請求項2または3に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記酸化膜を除去する工程では、0.1Pa以上20Pa以下の圧力で行なう、請求項2〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記酸化膜を除去する工程では、フッ化水素を用いる、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記酸化膜を形成する工程と前記酸化膜を除去する工程との間に、不活性ガスを含む雰囲気で前記炭化珪素半導体を熱処理する工程をさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記酸化膜を形成する工程に先立って、前記炭化珪素半導体の前記表面に不活性ガスイオンおよび水素イオンの少なくとも1種のイオンを注入する工程をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記酸化膜を形成する工程では、前記炭化珪素半導体を20℃以上600℃以下に加熱する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記酸化膜を形成する工程では、0.1Pa以上50Pa以下の圧力で行なう、請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記酸化膜を形成する工程では、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、および一酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む雰囲気で行なう、請求項1〜10のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
炭化珪素半導体の表面に酸化膜を形成するための形成部と、
オゾンガスを用いて前記酸化膜を除去するための除去部と、
前記炭化珪素半導体を搬送可能に前記形成部と前記除去部とを接続する接続部とを備え、
前記接続部における前記炭化珪素半導体を搬送させる領域は、大気の遮断が可能である、炭化珪素半導体装置の製造装置。
【請求項13】
オゾンガスを用いて炭化珪素半導体の表面に酸化膜を形成するための形成部と、
前記酸化膜を除去するための除去部とを備え、
前記形成部と前記除去部とは同一である、炭化珪素半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−114210(P2012−114210A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261323(P2010−261323)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】