説明

炭素繊維布帛の検査装置および検査方法

【課題】
本発明は、炭素繊維布帛の欠点を簡便、かつ、高精度で、信頼性高く検査できる炭素繊維布帛の検査装置および検査方法を提案すること。
【解決手段】
本発明の炭素繊維布帛の検査装置は、炭素繊維布帛を移動させる送出装置と巻取装置と、それらの間に設置する、少なくとも次の(a)〜(h)の手段を備えることを特徴とする炭素繊維布帛の布帛欠点の位置および種類を検出する検査装置である。
(a)照明手段
(b)画像取得手段
(c)遮光手段
(d)撮像した取得画像を数値化した布帛情報に処理する画像処理手段
(e)炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を予め基準情報として登録しておく記憶手段
(f)布帛情報と基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、および、欠点の位置ならびに種類を判別する判別手段
(g)出力手段
(h)炭素繊維布帛の移動量または前記画像取得手段の移動量を検出する移動量検出手段

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維布帛における布帛欠点(毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織の乱れ、炭素繊維糸条またはステッチ糸の切断、開口率、糸条幅、糸条配列密度、糸条の斜行・弧形、炭素繊維布帛実質幅または炭素繊維布帛総幅など)を簡便、かつ、高精度で信頼性高く測定することができる、外観検査を光学的手法で行なう炭素繊維布帛の検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチックス(以下、CFRPと呼称する。)はその比強度、比弾性率の高さから様々な分野で多く利用されており、CFRPに用いられる炭素繊維布帛は、特に高い性能を示すことから、航空機、船艇、自動車、等の高い強度を要求される用途に多く利用されている。
【0003】
これらCFRPに用いられる炭素繊維布帛においては、少しの布帛欠点がCFRPとした際の破壊起点および強度低下原因と成り得るため、布帛欠点に関して厳しい検査規格が設けられている。中でも、開口率、糸条幅、糸条配列密度、糸条の斜行や弧形などについては、数値による正確な検査がなされており、これら検査規格の合否判定においては、高い精度の検査水準が要求される。
【0004】
これら検査は、一般的に人の目によって行われていたが、省人化、精度向上、欠点見逃し抑制などを目的とした自動化技術の導入が進んでおり、検査時間の短縮や検査精度の向上のため、種々の技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、単一のカメラにて複数種の欠点を検出できる織物検査装置の提案がある。しかしながら、かかる提案では合繊繊維織物における複数種の欠点を検出できる点においては優れているが、光学的な処理が難しい黒色の炭素繊維布帛では、対象物の表面状態毎に調整が必要となるだけでなく、合繊繊維織物と同様の精度が発現しない問題があった。さらに、照明装置および撮像装置が配置される空間に何ら規定がされていないため外乱の影響を受け易く、照明装置による照射強度の調整だけでは検査の正確性に欠けるだけでなく、照明装置が反射のみで透過を用いていないため、炭素繊維布帛における欠点検出では、その検査できる欠点種類およびその精度に限界があった。
【0006】
また、特許文献2には、検査対象織物を挟んで発光部および受光部を対置し、これらを同期移動させることで測定バラツキを可及的に阻止する開口率測定装置の提案がある。かかる提案においても検査対象を忠実かつ正確に反映した画像を取得するには十分でなく、撮像環境および照明環境に問題があった。すなわち、取得画像において糸条と空白部との境界部に反射光の回折によりグレイゾーンが発生してしまい、実物を正確に反映した画像を取得することができず、これに伴い、画像の正確な二値化を行うことができなかったのである。更に、発光部と受光部とを同期移動させる機構が同期できず、検査の信頼性を損なう場合があった。
【0007】
つまり、特許文献1、2をはじめとした従来技術では、外乱を抑制した精度の高い検査技術は確立されておらず、かかる技術が渇望されている。
【特許文献1】特開2003−218172 号公報
【特許文献2】特開2005−290623 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記に挙げた問題点を解決することにある。すなわち、本発明は、炭素繊維布帛の欠点を簡便、かつ、高精度で、信頼性高く検査できる炭素繊維布帛の検査装置および検査方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。すなわち
(1)炭素繊維布帛を移動させる送出装置と巻取装置と、それらの間に設置する、少なくとも次の(a)〜(h)の手段を備えることを特徴とする炭素繊維布帛の布帛欠点の位置および種類を検出する検査装置。
(a)炭素繊維布帛を光で反射照明する反射照明手段(a1)および/または炭素繊維布帛を光で透過照明する透過照明手段(a2)から構成される照明手段
(b)炭素繊維布帛に反射された照明光および/または炭素繊維布帛を透過した照明光を撮像する画像取得手段
(c)前記照明手段(a)と前記画像取得手段(b)とをその内部に配置し、かつ、前記照明手段(a)以外の光が前記画像取得手段(b)に実質的に撮像されないようにする遮光手段
(d)前記画像取得手段(b)で、撮像した取得画像をデータ処理して炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報に処理する画像処理手段
(e)正常な炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報と、複数種の布帛欠点を数値化した布帛情報とを予め基準情報として登録しておく記憶手段
(f)前記画像処理手段(d)により処理した布帛情報と、前記記憶手段(e)に予め登録された基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、および、布帛欠点が存在する場合の欠点の位置ならびに種類を判別する判別手段
(g)布帛欠点の位置および種類を出力する出力手段
(h)炭素繊維布帛の移動量または前記画像取得手段の移動量を検出する移動量検出手段。
【0010】
(2)前記照明手段(a)が、反射照明手段(a1)と、透過照明手段(a2)とから構成され、
反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明光の波長が100〜470nm異なるものであり、
炭素繊維布帛の移動面の片側に反射照明手段(a1)が、もう一方の側に透過照明手段(a2)が配置され、
反射照明手段(a1)の側に画像取得手段(b)が配置され、
前記画像取得手段(b)が、反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明光を撮像する、
前記(1)に記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【0011】
(3)前記照明手段(a)が、炭素繊維布帛を反射照明手段(a1)であり、
該反射照明手段(a1)と前記画像取得手段(b)とが、それぞれ炭素繊維布帛の移動面の両側に配置された、
前記(1)または(2)に記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【0012】
(4)前記画像取得手段(b)が、炭素繊維布帛の幅方向に2〜15個のCCDカメラを布帛の幅方向に撮像範囲が切れ目なく連続するように配置し、それぞれのCCDカメラが、分解能が0.05〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内になるように設置された、
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【0013】
(5)更に、次の(i)、(j)の手段を備える前記(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置。
(i)判別した布帛欠点の位置情報に基づいて、布帛欠点の位置または判別した布帛欠点の炭素繊維布帛端部に欠点表示を行う欠点表示手段
(j)布帛欠点を人が再確認または欠点修正する再確認手段。
【0014】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用い炭素繊維布帛をオフライン検査する炭素繊維布帛の検査方法。
【0015】
(7)前記送出および/または巻取装置が、炭素繊維布帛製造装置を構成する一部であり、炭素繊維布帛をインライン検査する炭素繊維布帛の検査方法。
【0016】
(8)前記反射照明手段(a1)による反射画像と前記透過照明手段(a2)による透過画像とを前記画像取得手段(b)で取得し、
前記画像処理手段(d)において、反射及び透過の布帛情報を分離して得、
前記判別手段(f)にて、反射と透過との布帛情報を別個に判別する、
前記(2)、(4)、および、(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0017】
(9)炭素繊維布帛の移動面の一方の面側に配置された画像取得装置と他方の面側に配置された画像取得装置とで、それぞれの面の画像を取得し、
前記画像処理手段(d)で、それぞれの面の布帛情報を得、
前記判別手段(f)にて、それぞれの面の布帛情報を分離して判別する、
前記(3)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0018】
(10)検査対象の炭素繊維布帛が、織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、前記炭素繊維布帛中の炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布、の少なくとも1つから炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記布帛情報に基づいて、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織などの組織乱れ、炭素繊維糸条の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅および配列密度から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別する、
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0019】
(11)検査対象の炭素繊維布帛が、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、編糸もしくはステッチ糸に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布の少なくとも1つから炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記布帛情報に基づいて、編組織の乱れ、ステッチ糸の切断から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別する、
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0020】
(12)検査対象の炭素繊維布帛が、織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、それぞれのカメラからの取得画像を連結して、炭素繊維布帛の全幅にわたる炭素繊維糸条の位置情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記位置情報に基づいて、炭素繊維糸条の斜行または弧形について判別する、
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0021】
(13)検査対象の炭素繊維布帛が、それぞれの端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織を有しているか、房耳を有する織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像取得手段(b)において、カメラの視野を炭素繊維布帛のそれぞれの端部がカバーされるように設定し、
前記画像処理手段(d)により、炭素繊維布帛のそれぞれの炭素繊維布帛端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織の位置情報か、炭素繊維布帛の端部の輪郭線の位置情報を得、
前記判別手段(f)により、前記位置情報に基づいて、炭素繊維布帛端部それぞれの地絡糸もしくは最外側の編組織の間の距離を算出して炭素繊維布帛実質幅を判別するか、炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置の間の距離を算出して炭素繊維布帛総幅を判別するか、地絡糸もしくは最外側の編組織の位置と炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置との距離を算出して房耳長を判別する、
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【0022】
(14)前記送出および/または巻取装置を連続稼働し、炭素繊維布帛を一定速度で移動させている状態で連続して布帛欠点の位置および種類を検出する前記(6)〜(13)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0023】
(15)前記送出および/または巻取装置を間欠的に稼働し、炭素繊維布帛の移動時に欠点の位置および種類を測定し、停止時に布帛欠点を修正する前記(6)〜(13)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0024】
(16)前記送出および/または巻取装置を間欠的に稼働し、炭素繊維布帛を停止している状態で欠点の位置および種類を測定し、炭素繊維布帛を移動させ、所定長で炭素繊維布帛を停止させて、所定時間で再び炭素繊維布帛を移動させる一連の間欠運転を、予め組み込んだプログラムにて自動で行う前記(6)〜(13)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の炭素繊維布帛の検査装置は、特に、遮光手段(c)、数値化した布帛情報を処理する画像処理手段(d)、布帛欠点を予め登録しておく記憶手段(e)、欠点の種類を判別する判別手段(f)、を有することにより、人の目による検査に較べて、光学的な処理が難しい黒色の炭素繊維布帛において、検査精度の向上、欠点見逃し抑制、検査時間の短縮、を実現することができる。
【0026】
また、照明手段(a)として反射照明手段(a1)に加えて透過照明手段(a2)を用いたり、炭素繊維布帛の表裏を反射照明することにより、幅広い種類の欠点を高い検査精度で検出することができる。
【0027】
更に、画像取得手段(b)を2〜15個配置し、画像処理手段(d)で取得画像を連結させるため、幅方向に渡る欠点検査をも行うことができる。
【0028】
これに加え、欠点表示手段(i)により欠点表示を行ったり、再確認手段(j)により布帛欠点を人が再確認・欠点修正することもできる。
【0029】
以上の作用効果により、優れた検査精度および信頼性を有する炭素繊維布帛の検査手段および検査方法を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の炭素繊維布帛の検査装置は、少なくとも炭素繊維糸条を含む炭素繊維布帛における布帛欠点の位置および種類を測定する検査装置であって、炭素繊維布帛を移動させる送出装置と巻取装置と、それらの間に設置する、少なくとも次の(a)〜(h)の手段を備える。更に、次の(i)、(j)の手段を備えるのが好ましい。
(a)炭素繊維布帛を光で反射照明する反射照明手段(a1)および/または炭素繊維布帛を光で透過照明する透過照明手段(a2)から構成される照明手段
(b)炭素繊維布帛に反射された照明光および/または炭素繊維布帛を透過した照明光を撮像する画像取得手段
(c)前記照明手段(a)と前記画像取得手段(b)とをその内部に配置し、かつ、前記照明手段(a)以外の光が前記画像取得手段(b)に実質的に撮像されないようにする遮光手段
(d)前記画像取得手段(b)で、撮像した取得画像をデータ処理して炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報に処理する画像処理手段
(e)正常な炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報と、複数種の布帛欠点を数値化した布帛情報とを、予め基準情報として登録しておく記憶手段
(f)前記画像処理手段(d)により処理した布帛情報と、前記記憶手段(e)に予め登録された基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、及び、布帛欠点が存在する場合の欠点の位置および種類を判別する判別手段
(g)布帛欠点の位置および種類を出力する出力手段
(h)炭素繊維布帛の移動量または前記画像取得手段の移動量を検出する移動量検出手段
(i)判別した布帛欠点の位置情報に基づいて、布帛欠点の位置または判別した布帛欠点の炭素繊維布帛端部に欠点表示を行う欠点表示手段
(j)布帛欠点を人が再確認または欠点修正する再確認手段
本発明における被検査対象である炭素繊維布帛とは、少なくとも炭素繊維糸条を含む布帛を指し、例えば、織物(1〜4軸、3次元など)、編物、挿入糸を有する編物(挿入糸が炭素繊維糸条を含む)、組物、不織布、マット、メッシュ、ステッチ布帛(例えば、特開2002−317371号公報に記載されている多軸ステッチ基材など)が挙げられるが、中でも織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であると、本発明の効果を最大限に発現することができる。
【0031】
以下に、各手段の詳細について説明する。
【0032】
(a)照明手段
本発明における照明手段(a)は、被検査対象である炭素繊維布帛を、その長手方向から光で反射照明(a1)および/または炭素繊維布帛を光で透過照明(a2)するものである。本反射照明手段(a1)は、炭素繊維布帛に対して後述の画像取得手段(b)と同じ側に配置される。かかる反射照明手段(a1)では、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅および配列密度、編組織の乱れ、ステッチ糸の切断、炭素繊維布帛幅(炭素繊維布帛実質幅、炭素繊維布帛総幅)、房耳長などという布帛表面に関わる情報を検出することができる。
【0033】
本反射照明手段(a1)が炭素繊維布帛を照明する角度は、例えば、後述の画像取得手段(b)へ正反射する角度で照明する正反射方式、正反射しない角度で照明する乱反射方式、それらの組み合わせが挙げられるが、中でも乱反射方式、または、正反射方式と乱反射方式との組み合わせが好ましい。乱反射方式では光量は大きくできないものの、正反射方式では検出し難い布帛欠点(例えば、光沢ムラ、組織違いなど)を検出することができる。特に黒色の炭素繊維布帛では、乱反射方式は有効である。なお、正反射方式では後述の画像取得手段への光量が大きくできることにより検査精度を高くすることができるという利点もある。
【0034】
本照明手段(a)においては、反射照明(第1の光)に加えて、更に光で炭素繊維布帛を透過照明(第2の光)する透過照明手段(a2)を備えるのが好ましい。かかる透過照明手段(a2)は、炭素繊維布帛を挟んで後述の画像取得手段(b)と対向して反対側の一方に配置される。かかる透過照明手段(a2)では、炭素繊維布帛を透過して照明するため、炭素繊維布帛の隙間、開口率や、炭素繊維糸条の幅、配列密度、斜行、弧形や、炭素繊維糸条同士の隙間、などの炭素繊維布帛の形状に関わる情報を、反射照明よりも簡易かつ精度高く抽出することができる。
【0035】
ここで反射照明する第1の光と、透過照明する第2の光とは、同じ光の波長を有するものを用いてもよいが、それぞれ光の波長を異なるものを用いるのが好ましい。より具体的には、照明光の波長が、100〜470nm異なるのが好ましい。第1の光と第2の光との組み合わせとしては、可視光の中で最も波長差を大きくできる、赤色と青色(または紫色)との組み合わせが好ましい例として挙げられる。後述の画像取得手段(b)では、一般的に赤色光は高い感度で取得し易いため、画像取得手段に届く光量を大きくし難い反射照明する第1の光として赤色を用いるのが好ましい。また、炭素繊維糸条の開口や隙間などを透過する光は、隙間の寸法によっては回折などの影響を受け易いため、透過照明する第2の光として回折の影響を受けにくい青色(または紫色)を用いるのが最も好ましい態様といえる。なお、上記の通り第1の光と第2の光とを波長を異なる光を用いると、画像取得手段としてカラー(RGB)CCDでいずれの光も取得できるため、省設備化できるという利点もある。
【0036】
本照明手段(a)は、炭素繊維布帛の表面および裏面のいずれも反射照明手段(a1)を備えるのもまた好ましい。かかる両面の反射照明手段(a1)により、表・裏いずれの面も検査することができる。かかる反射照明手段(a1)は、炭素繊維布帛の移動面に対して後述の画像取得手段(b)それぞれと同じ側に配置される。かかる反射照明手段(a1)を追加すると、炭素繊維布帛両面に関わる情報を抽出することができるのである。なお、透過照明手段(a2)に関しては、表面と裏面とを分けて照明する必要がないため、一方からの照明のみで対応できる。ここで炭素繊維布帛の移動面とは、本発明の炭素繊維布帛の検査装置に被検査対である炭素繊維布帛を通した際、炭素繊維布帛が移動する面を仮想した面を指す。具体的には、前記画像取得手段(b)が焦点をあわせている箇所の上流側(送出側)のローラの出側表面と下流側(巻取側)のローラの入側表面とを結ぶ面を指す。
【0037】
上述の通り、本発明でとりわけ好ましい照明手段としては、炭素繊維布帛表面(または裏面)を反射照明する手段(第1の光)と透過照明する手段(第2の光)と、炭素繊維布帛裏面(または表面)を反射照明する手段(第3の光)とを備える態様といえる。なお、第3の光としては、第1の光と同様に赤色を用いるのが好ましい。もちろん、撮像する光のコンタミを避けるため、第1の光、第2の光とも異なる波長の光(例えば、緑色)を用いることもできる。
【0038】
本照明手段としては、蛍光灯(白色、紫外線、高周波など)、ハロゲンランプ、LED照明(青色、赤色、白色など)、等の光源を用いることができるが、中でもLED照明は寿命が長く、経時劣化も小さいので費用および交換手間が掛からず、安定した検査が行えることから好ましい。また、光源の形状については、例えばドーム、バー、リング、平板、ラインなどの形状であってもよいが、特にライン形状であると炭素繊維布帛に対し広範囲に一様な照明強度を得られることから特に好ましい。すなわち、本発明においてはライン形状のLED照明であると、本発明の効果を最大限に発現できるといえる。
【0039】
(b)画像取得手段
本発明における画像取得手段は、被検査対象である炭素繊維布帛を撮像するものである。本画像取得手段では、効率よく処理を行うためにCCDカメラ(ラインセンサ、エリアセンサなど)を採用することが好ましい。中でも分解能を高くかつ高速処理ができ、後述の画像処理手段(d)での負荷が小さくできるラインセンサが特に好ましい。なお、本発明に用いるCCDカメラとしてラインセンサを用いる場合、1台のCCDカメラとは、光を受光する感光部が1列に配置された集合体(2,048画素なら2,048個の集合体)、レンズ、その他部品とから構成された1単位を指す。
【0040】
ラインセンサの仕様としては、分解能が0.05〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内になるように設定・設置するのが好ましい。分解能が0.05mm/画素未満であると、極めて微少な欠点の検出が可能となるが、取得画像の視野が狭くなり過ぎて糸条幅や糸条配列密度などを検査するために必要な情報を得るために本画像取得手段が数多く必要となる場合がある。高い有効画素数のラインセンサは高価であり、安価な汎用品を使用しても多くの台数が必要となり、同様に設備費用がかかり過ぎるのである。一方、分解能が2mm/画素を超えると、検査すべき対象領域(例えば、糸条の隙間や、隣り合う炭素繊維糸条同士の開口や隙間など)自体が1画素内に含まれる場合があり、検査対象の境界を明確にすることができない。このように境界が不明確な取得画像をもとに後述の画像処理手段(d)において、例えば二値化処理を行うと、高い精度での画像処理ができなくなる場合がある。
【0041】
上記ラインセンサ自体の画素数は、検査視野、検査精度から任意に選択することができる。例えば、有効画素数が4千画素程度の汎用モデルから9千画素程度のハイグレードモデルまで、所望の検査した規格に応じて所望の台数、仕様から構成することができ、カラー、白黒も同様である。中でも、撮像する取得画像の中央部と周辺部における画像の変化比率の小さい低ディストーションカメラが好ましい。
【0042】
前記照明手段(a)において反射照明に加えて透過照明する場合、炭素繊維布帛の移動面の片側に反射照明手段(a1)が、もう一方の側に透過照明手段(a2)が配置され、反射照明手段(a1)の側に画像取得手段(b)が配置されて、前記画像取得手段(b)が、反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明光を撮像して、反射画像と透過画像とを取得すると、省設備化できるため好ましい。
【0043】
反射光と透過光とを同じ波長の光を用いた場合、モノクロまたはカラーCCDカメラで、それぞれの照明手段が照明するタイミングと画像取得とのタイミングを同期させることにより、それぞれの画像を同じ本手段で取得することができる。すなわち、照明手段は反射、透過が交互に点滅させ、点灯したタイミングにそれぞれの画像を取得するのである。一方、反射光と透過光とを異なる波長の光(好ましくは波長が100〜470nm異なるもの)を用いた場合、カラーCCDでいずれの画像を同じ本手段で取得することができる。カラーCCDを用いると、照明手段をそれぞれ点滅させて同期をとる必要がないため、更に省設備化できるという利点があり、本発明において好ましい態様といえる。
【0044】
本画像取得手段は、炭素繊維布帛の幅方向に2〜15個のCCDカメラを有し、それぞれのCCDカメラが撮像した取得画像が炭素繊維布帛の幅方向に切れ目なく連続するか、もしくは、本画像取得手段が撮像した取得画像が炭素繊維布帛の幅方向に一部重複するように配置されるのが好ましい。かかる態様であると、後述の画像処理手段(d)において、それぞれの取得画像を連結して炭素繊維布帛全幅にわたる炭素繊維糸条の位置情報を取得することができる。ここで、2台のCCDカメラとは、光を受光する感光部が1列に配置された集合体(4,096画素なら4,096個の集合体)、レンズ、その他部品から構成されたものの2単位、という意である。
【0045】
また、本画像取得手段は、カメラが炭素繊維布帛のそれぞれの端部が視野に入るように配置されているのが好ましい。かかる態様であると、後述の画像処理手段(d)において、炭素繊維布帛のそれぞれの炭素繊維布帛端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織の位置情報か、炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置情報を取得することができる。
【0046】
ここで、取得画像を後述の画像処理手段(d)へ送る転送方式としては、画像劣化の少ないデジタル転送方式のものがより好ましい。
【0047】
(c)遮光手段
本発明における遮光手段は、前記照明手段(a)と前記画像取得(b)手段とをその内部に配置し、かつ、前記照明手段(a)以外の光が前記画像取得手段(b)に実質的に撮像されないようにするものである。表面光沢が強く、また、ハレーションを起こし易いため光学的な処理が難しい黒色の炭素繊維布帛の検査装置において、本遮光手段を備えることにより、外光の影響を最小限に抑制して検査画像における照明ムラを抑制すると共に、照明手段による光量調整などの不確定要素を排除し、検査対象を忠実かつ正確に反映した画像を取得することができるのである。
【0048】
反射照明のみで炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置情報を抽出する場合、本遮光手段は、少なくとも炭素繊維布帛端部において、鏡面特性または無反射特性を有する布帛台(または床)を有しているか、床までの距離が反射照明が反射しない程度の高さを有する位置で炭素繊維布帛を検査する配置であるのが好ましい。かかる態様であると、炭素繊維布帛端部の輪郭線を容易に検出することができる。なお、透過照明も併用して炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置情報を抽出する場合、透過照明により画像処理できるため必ずしも布帛台は必要ない。
【0049】
(d)画像処理手段
本発明における画像処理手段は、前記画像取得手段(b)で撮像した取得画像をデータ処理して炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報に処理するものである。具体的には、炭素繊維糸条、地絡糸(織物端部に配置される糸)やトレーサー糸のような炭素繊維糸条以外の補助糸、編糸もしくはステッチ糸に関する形状(幅など)、配列、周期、位置(炭素繊維布帛の幅方向、長手方向)、輝度分布(ヒストグラム、パターンなど)、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布(ヒストグラム、パターンなど)、端部の輪郭線の位置、などを数値化する。
【0050】
数値化する具体的なステップとしては、例えば、取得画像の輝度分布から閾値を設定して二値化し、二値化画像から炭素繊維布帛を構成する糸の形状情報を抽出し、形状特性から炭素繊維糸条の糸幅・配列密度、炭素繊維布帛の開口率、を算出するステップを例示することができる。前記画像取得手段(b)では、予めノイズの少ない画像を取得できることから、二値化処理による形状情報の分離が容易であり、間隙や孔を有する炭素繊維糸条の糸幅・配列密度、炭素繊維布帛の開口率といった形状特性の抽出には好適である。
【0051】
取得する布帛情報が、炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布、の少なくとも1つであるのが好ましい。かかる態様であると、後述の判別手段(f)において、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織などの組織乱れ、炭素繊維糸条の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅および配列密度から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別することができる。
【0052】
また、取得する布帛情報が、編糸もしくはステッチ糸に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布の少なくとも1つであるのが好ましい。かかる態様であると、後述の判別手段(f)において、編組織の乱れ、ステッチ糸の切断から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別することができる。
【0053】
更に、取得する布帛情報が、それぞれの炭素繊維布帛端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織の位置情報か、炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置情報を取得するのが好ましい。かかる態様であると、後述の判別手段(f)において、炭素繊維布帛端部それぞれの地絡糸もしくは最外側の編組織の間の距離を算出して炭素繊維布帛実質幅を判別するか、炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置の間の距離を算出して炭素繊維布帛総幅を判別するか、地絡糸もしくは最外側の編組織の位置と炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置との距離を算出して房耳長を判別することができる。
【0054】
同様に、取得する布帛情報が、炭素繊維布帛中に配置されたトレーサー糸の位置情報を取得するのが好ましい。かかる態様であると、後述の判別手段(f)において、トレーサー糸の間の距離を算出して所定の配列幅を判別することができる。
【0055】
前記画像取得手段(b)において炭素繊維布帛の幅方向に2〜15個のカメラが配置される場合、本画像処理手段はそれぞれの取得画像を連結して、炭素繊維布帛全幅にわたる炭素繊維糸条の位置情報を取得するのが好ましい。かかる態様であると、後述の判別手段(f)において、炭素繊維糸条の斜行または弧形について判別することができる。
【0056】
(e)記憶手段
本発明における記憶手段は、正常な炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報と、複数種の布帛欠点を数値化した布帛情報とを、予め基準情報として登録しておくものである。本記憶手段としてはハードディスクや外部記憶媒体を用いることができるが、読込速度の速いメモリーが好ましく用いられる。
【0057】
(f)判別手段
本発明における判別手段は、前記画像処理手段(d)により処理した布帛情報と、記憶手段に予め登録された基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、および、布帛欠点が存在する場合の欠点の位置および種類を判別するものである。具体的には、前記基準情報に基づいて、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅、配列密度、編組織の乱れ、ステッチ糸の切断、炭素繊維糸条の斜行・弧形、炭素繊維布帛幅(炭素繊維布帛実質幅、炭素繊維布帛総幅)、房耳長、などを判別する。なお、炭素繊維布帛の開口率とは、織物を平面で見た際の間隙の面積率を定義したものであり、間隙部の面積と検査面積との除の百分率にて表される。また、配列密度とは、炭素繊維糸条が単位長さ当たりに何本が存在するかを示す数値である。
【0058】
前記照明手段(a)で反射照明に加え透過照明を併用した場合、本判別手段は反射と透過との布帛情報について分離して判別するのが好ましい。かかる態様であると、反射照明により検出し難い欠点(例えば、炭素繊維布帛の隙間、開口率や、炭素繊維糸条の幅、配列密度、斜行、弧形や、炭素繊維糸条同士の隙間など)を、透過照明により検出することができ、より高い検査精度を実現できる。
【0059】
同様に、前記照明手段(a)で炭素繊維布帛の表面および裏面のいずれも反射照明した場合、本判別手段は表面と裏面との布帛情報について分離して判別するのが好ましい。かかる態様であると、後述の出力手段(g)やの欠点表示手段(i)において、表面の布帛欠点と、裏面の布帛欠点とを分離して表示することができる。
【0060】
(g)出力手段
本発明における出力手段は、少なくとも布帛欠点の位置および種類をディスプレイやプリンタや記録媒体などに出力するものである。記録媒体に出力することにより炭素繊維布帛の製造後に容易にトレースできる利点がある。
【0061】
また、更に入力手段を追加して、炭素繊維布帛に使用している原料や製造ロットなど炭素繊維布帛に関する製造情報を入力することができる。かかる入力手段と本出力手段とを組み合わせることにより、製造情報と記録した布帛欠点の位置および種類とを併せて、出力手段(プリンタなど)に炭素繊維布帛の検査結果表や検査証明書などとして出力することができ、大幅に省人化に貢献できる。
【0062】
(h)移動量検出手段
本発明における移動量検出手段は、炭素繊維布帛を移動させながら移動時に測定を行う装置の場合は、炭素繊維布帛を移動させた距離を検出するものである。炭素繊維布帛を停止して前記画像取得手段(b)を移動させる態様で用いる検査装置の場合は、逆に前記画像取得手段(b)を移動させた距離を取得するものである。このように、本発明の検査装置の使用する態様によって、炭素繊維布帛が移動した距離を検出する検出器、または、画像取得手段が移動した距離を検出する検出器のいずれかが必要となる。なお、検査装置の前記使用態様がプログラム等で切り替えられる場合には、両検出装置が共に設けられていることも検査条件を設定する自由度が向上するため好ましい。
【0063】
本手段にて、移動させた距離を検出し、この距離情報(炭素繊維布帛の長手方向)を前記画像処理手段(d)および/または判別手段(f)に送り、長手方向に関する欠点の位置情報とすることができる。かかる距離情報は、前記画像取得手段(b)における炭素繊維布帛の幅方向の分解能と同じ分解能とする、すなわち、0.05〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内になりように設定・設置すると、前記画像処理手段(d)での画像処理において正方形として処理することができ、安定した正確な画像処理を行えるため好ましい。
【0064】
移動させた距離を検出する方法としては、例えば移動する炭素繊維布帛上に接触させるコンタクトローラーの軸や、移動する炭素繊維布帛が通過するローラーの軸の回転数からエンコーダーで検出する方法などが挙げられる。炭素繊維布帛は0.1〜0.5mmと比較的厚いものが多いため、本発明においては、移動する炭素繊維布帛上に接触させるコンタクトローラーの軸にエンコーダーを取り付けるのが好ましい。この場合、送出装置または巻取装置モーターのオン/オフ信号から運転/停機を判断できる信号にてノイズを最小限に抑えるのが好ましい。
【0065】
送出装置および/または巻取装置装置は、炭素繊維布帛製造装置(例えば、織機、編機など)に備わっているものを使用すると、インライン検査を行うことができる。また、炭素繊維布帛製造装置ではない検反機などに備わっているものを使用すると、オフライン検査を行うことができる。検査の安定性や精度の観点からは、停機なく安定して炭素繊維布帛を走行することができ、かつ、前記照明手段(a)や前記画像取得手段(b)などの振動などを最小限に抑制することができるオフライン検査が好ましい。一方、検査精度がそれほど厳しくなく、検査における費用を最小限にするという観点からは、インライン検査が好ましい。インライン検査によると、検反機などで巻き返す必要がなく、リードタイムも短くすることができる。
【0066】
なお、本装置は、更にエッジ・ポジション・コントロール装置(EPC)を備えるのが好ましい。送出および/または巻取装置にEPCを備えると、綺麗な巻姿の炭素繊維布帛を得ることができるだけでなく、炭素繊維布帛の検査における炭素繊維布帛端部の位置を安定させることができるため、炭素繊維布帛の検査自体も安定させることができる。
【0067】
(i)欠点表示手段
本発明における欠点表示手段は、前記判別手段(f)にて判別した布帛欠点の位置情報に基づいて、布帛欠点の位置または判別した布帛欠点の炭素繊維布帛端部に欠点表示を行うものである。好ましくは、欠点種類も併せて表示するのが好ましい。
【0068】
欠点の表示方法としては、例えば、ラベル貼付手段で欠点ラベル(欠点種類の表示はラベルを変える)を貼り付けたり、ミシンなどで欠点糸(欠点種類の表示は色糸を変える)を縫いつけたりミシン掛けしたり、印刷手段で印刷したりマーキングしたり、発光手段で光(欠点種類の表示は光を変える)を点灯させたりすることができる。中でも欠点ラベルの貼り付け、または、光の点灯であると、後述の再確認手段(j)で欠点を修正して解消した場合、炭素繊維布帛を傷めずに簡単に欠点表示を除去できることから好ましい。
【0069】
(j)再確認手段
本発明における再確認手段は、布帛欠点を人が再確認または欠点修正するものである。本装置では、前記欠点表示手段(i)にて表示した布帛欠点を人が監視して、欠点表示を参照して布帛欠点を再確認または欠点修正できるようなものとするのが好ましい。例えば、炭素繊維布帛は水平面に対して10〜80度の角度で走行させ、炭素繊維布帛に手が届く位置に人が立つまたは座ることができる台を有するものが挙げられる。
【0070】
前記照明手段(a)〜再確認手段(j)は、それぞれの所定の位置を維持した状態で設置され、炭素繊維布帛の移動に対してその位置のそれぞれを不動とすると、安定した環境での検査が可能となり、本願発明の効果を最大限に発現することができるため好ましい。
【0071】
以上の検査装置は、炭素繊維布帛を移動させる送出装置と巻取装置との間に設置される。かかる送出装置および巻取装置は、トルクモーターなどでトルク制御してもよいし、炭素繊維布帛の張力を検出して張力制御してもよい。炭素繊維布帛の巻締を抑制し、より安定した巻姿の炭素繊維布帛を得るためには、送出または巻取装置は張力制御するのが好ましい。特に巻取装置においては、その効果は顕著に発現する。また、本装置は、1本の駆動軸に炭素繊維布帛が巻かれたコアを取り付ける軸駆動方式で送出または巻取してもよいし、2本のローラーのうち少なくとも1本が駆動するローラー群の隙間上に炭素繊維布帛巻物を置く表面駆動方式で送出または巻取してもよい。表面駆動方式は炭素繊維布帛巻物の交換が容易という利点がある。一方、伸縮性のない炭素繊維布帛において、炭素繊維布帛の巻締を抑制し、より安定した巻姿の炭素繊維布帛を得るためには軸駆動方式がより好ましい。
【0072】
本発明の炭素繊維布帛の検査方法は、上述の検査装置を用いて布帛欠点の位置および種類を測定するものである。
【0073】
本発明の検査方法の一態様としては、前記送出および巻取装置を連続運転して炭素繊維布帛を一定速度で移動させている状態で、連続して布帛欠点の位置および種類を測定することができる。上記態様であると、炭素繊維布帛が一定速度で移動することにより、安定してエンコーダーから移動させた距離を検出することができ、安定した検査を行うことができる。この場合、画像処理能力から前記画像取得手段(b)としてラインセンサを用いるのが好ましい。
【0074】
別の態様としては、前記送出および巻取装置を間欠運転して、炭素繊維布帛を運転している状態で欠点の位置および種類を測定し、停止している状態で布帛欠点を修正するのが好ましい。炭素繊維布帛を停止している状態で布帛欠点を修正・救済すると、高価な炭素繊維布帛を屑にせずに有効活用することができる。
【0075】
一方、前記送出および巻取装置を間欠運転して、炭素繊維布帛を停止している状態で欠点の位置および種類を測定することができる。炭素繊維布帛を停止している状態で布帛欠点の位置および種類を測定すると、前記画像取得手段(b)としてエリアセンサを用いることができ、精密な画像を取得することができ、この場合、炭素繊維布帛全長に渡る連続した検査はできないが、その箇所での検査精度を最大限に高くすることができる。ラインセンサを用いる場合は、ラインセンサ自体を動かすことにより画像を取得することができる。この場合は、前記移動量検出手段(h)は、ラインセンサの移動量を検出する。
【0076】
前記送出および巻取装置を間欠運転する場合、炭素繊維布帛を移動させ、所定長で炭素繊維布帛を停止させて、所定時間で再び炭素繊維布帛を移動させる一連の間欠運転を、予め組み込んだプログラムにて自動で行うのが好ましい。運転をプログラム化すると、より省人化を実現することができる。
【実施例】
【0077】
本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一態様について図面を参照しながら説明する。
【0078】
図1は、本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一実施形態を説明する概略断面図である。
【0079】
図2は、本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一実施形態を説明する概略平面図である。
<炭素繊維布帛の検査装置>
まず、エッジ・ポジション・コントロール装置(k1)で炭素繊維布帛の送出位置を揃えながら送出装置(h1)により炭素繊維布帛を送り出した。図1、2では、炭素繊維布帛の製造装置ではない検反機に備わっているものを使用してオフライン検査とした。
また、移動する炭素繊維布帛上に接触させるコンタクトローラー(h3)の軸にエンコーダー(図示せず)を取り付け、かつ、巻取装置(h2)のモーターのオン/オフ信号から運転/停機を判断できる信号を併用してノイズを最小限に抑え、炭素繊維布帛を移動させた距離を検出した(移動量検出手段)。この距離情報(炭素繊維布帛の長手方向)は、画像処理手段(d)に送り、長手方向に関する欠点の位置情報とした。かかる距離情報は、画像取得手段(b1)〜
(b3)における炭素繊維布帛の幅方向の分解能と同じ分解能である0.08mm/画素とした。なお、反射照明手段(a1)、透過照明手段(a2)や画像取得手段(b1)〜(b3)は、送出装置(h1)、巻取装置(h2)の振動が伝播しないようにそれらに連結していない別フレーム構造に取り付けた。
【0080】
図1、2における反射照明手段(a1)は、画像取得手段(b1)〜(b3)へ正反射しない角度で照明する乱反射方式で反射照明(第1の光)した。更に、透過照明手段(a2)にて、更に透過照明(第2の光)した。透過照明手段(a2)と画像取得手段(b1)〜(b3)とは炭素繊維布帛を挟んで配置され、両者を結ぶ直線と、炭素繊維布帛面とが略垂直となるように設置した。この構成により、略垂直に光が照射される構成となり、炭素繊維布帛に散在する間隙、孔の境界部での光の回折を抑制することができ、画像処理におけるグレイゾーンを最小限に抑制することができた。なお、反射照明手段(a1)の第1の光は赤色、透過照明手段(a2)の第2の光は青色を用い、いずれもライン状にLEDを配列した光源を用いた(波長の差は150〜350nm)。
【0081】
これら反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明による画像は、炭素繊維布帛の送出・巻取方向と垂直方向に一列で等間隔に配列された画像取得手段(b1)〜(b3)で取得した。ここで、画像取得手段(b1)、(b3)のいずれも炭素繊維布帛のそれぞれの端部が視野に入るように、かつ、画像取得手段(b1)〜(b3)の撮像する取得画像が炭素繊維布帛の幅方向に50画素ほど重複するように配置した。なお、画像取得手段としてカラーラインセンサ(有効画素数は4096画素、周波数5kHz)を用い、分解能が0.08mm/画素となるように設定した。
【0082】
図1、2における反射照明手段(a1)、透過照明手段(a2)、画像取得手段(b1)〜(b3)は、遮光手段(c)により囲い、照明手段以外の光が画像取得手段に実質的に撮像されないように遮光した。遮光手段(c)の下面は、反射照明が反射しない程度に、炭素繊維布帛から50cmの距離を有するようにした。
【0083】
画像取得手段(b1)〜(b3)で取得した画像を画像処理手段(d)へとデジタル転送し、取得画像を画像処理して炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を取得した。ここで取得した布帛情報は、炭素繊維糸条に関する幅(形状)、配列密度、位置、輝度分布、地絡糸に関する位置、ステッチ糸に関する位置、配列密度、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布、端部の輪郭線の位置、炭素繊維布帛全幅にわたる炭素繊維糸条の位置(画像取得手段(b1)〜(b3)の取得画像を連結して抽出)である。
【0084】
記憶手段(e)は、ハードディスクおよびメモリーに正常な炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報と複数種の布帛欠点とを予め基準情報として登録した。
【0085】
判別手段(f)は、画像処理手段(d)により処理した前記布帛情報と、記憶手段に予め登録された基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、及び、布帛欠点が存在する場合の欠点の位置および種類を判別した。ここで判別した欠点種類は、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織、ステッチ組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、ステッチ糸の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅、配列密度、炭素繊維糸条の斜行・弧形、炭素繊維布帛幅(炭素繊維布帛実質幅、炭素繊維布帛総幅)、房耳長である。なお、判別手段fでは反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との布帛情報については分離して判別した。
【0086】
出力手段(g)は、少なくとも布帛欠点の位置および種類を、ディスプレイ(g1)および記録媒体であるハードディスクへ出力した。また、キーボード(入力手段、図示せず)を有し、炭素繊維布帛に使用している原料や製造ロットなど炭素繊維布帛に関する製造情報を入力し、プリンタ(g2)へも出力して炭素繊維布帛の検査結果表を出力した。
【0087】
図1、2における欠点表示手段(i1)はラベル貼付装置であり、欠点表示手段(i2)〜(i5)は炭素繊維布帛の送出・巻取方向と垂直方向に一列で等間隔に配列された発光手段である。ラベル貼付装置(i1)は、判別手段(f)にて判別した布帛欠点の位置を欠点位置の炭素繊維布帛端部にラベルを貼り付けて欠点表示を行った。欠点種類は、ラベルに予め印字しておいたものを区別して貼り付けて欠点位置と種類とを表示している。また、発光手段(i2)〜(i5)は、炭素繊維布帛の送出・巻取方向と垂直方向に一列で等間隔に4台配列されており、布帛欠点の位置に最も近いものが発光して欠点位置を表示するように設定した。
【0088】
図1、2における再確認手段(j)は、炭素繊維布帛が水平面に対して45度の角度で走行させ、炭素繊維布帛に手が届く位置に人間4が立つ台である。再確認手段(j)で布帛欠点を人間4が再確認し、修正可能な欠点を修正した。
【0089】
検査が終わった炭素繊維布帛を、エッジ・ポジション・コントロール装置(k2)で炭素繊維布帛の巻姿を揃えながら巻取装置(h2)により巻き取った。送出および巻取ともに1本の駆動軸に炭素繊維布帛が巻かれたコアを取り付ける軸駆動方式を採用し、炭素繊維布帛の巻締を抑制し、より安定した巻姿の炭素繊維布帛を得た。
<被検査対象>
炭素繊維布帛として、次のものを上記検査装置を用いて検査を行った。
【0090】
2方向性織物:東レ(株)製BT70−20、T700S−12K、平織、炭素繊維目付200g/m、100m巻。
【0091】
2軸ステッチ基材:東レ(株)製T700S−12K、配向角度+45°/―45°、鎖編ステッチ組織、一層当たりの炭素繊維目付150g/m・層、炭素繊維総目付300g/m、50m巻。
(実施例1)
送出装置(h1)および巻取装置(h2)を連続運転して、2軸ステッチ基材を5m/分の一定速度で移動させている状態で、50m連続して布帛欠点の位置および種類を測定した。ここでの検査は、反射照明手段(a1)のみを用いて、画像取得手段(b1)〜(b3)で画像取得し、炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布の情報を抽出して判別したものである。
【0092】
検査の結果、毛羽(長径12mm、短径7mmのもの1箇所)、炭素繊維糸条同士の隙間(1.5mm以上の幅を有するもの12箇所)、ステッチ糸の切断箇所(150mm長1箇所)、炭素繊維布帛幅(平均の炭素繊維布帛実質幅1231mm、平均の炭素繊維布帛総幅1260mm)、房耳長(平均の片耳15mm)、を判別することができた。なお、ステッチ糸組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、などの欠点は存在しなかった。
【0093】
上記欠点箇所には、欠点表示手段(ラベル貼付装置)で、2軸ステッチ基材の端部にラベルを貼り付けて欠点表示を行うことができた。
(実施例2)
送出装置(h1)および巻取装置h2を連続運転して、2方向性織物を5m/分運転している状態で欠点の位置および種類を測定した。ここでの検査は、反射照明手段(a1)に加えて透過照明手段(a2)も併用して、画像取得手段(b1)〜(b3)で画像取得し、炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布と、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布との情報を抽出して判別したものである。
【0094】
検査の結果、毛羽(長径15mm、短径3mmのもの3箇所)、炭素繊維布帛幅(平均の炭素繊維布帛実質幅1002mm、平均の炭素繊維布帛総幅1020mm)、房耳長(平均の片耳9mm)、を判別することができた。ここで、透過照明手段(a2)を用いたことにより、織物開口率(平均4%)、炭素繊維糸条の幅(平均8.0mm)、配列密度(平均1.3本/cm)、炭素繊維糸条の弧形(9mm/m)も判別でき、局所的な開口部(3×3mm)、局所的な弧形(25mm/m)を欠点として判別することができた。なお、織組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、などの欠点は存在しなかった。
【0095】
上記欠点箇所には、検査中に欠点表示手段(発光装置)(i2)〜(i5)で、織物幅方向に欠点の位置に最も近いものが発光して欠点表示することができた。この発光を見て、前記毛羽を検出した14m、18m、63mの位置それぞれで、送出装置(h1)および巻取装置(h2)を停止して、人手により毛羽取り(欠点修正)を行った。すなわち、送出装置(h1)および巻取装置(h2)を間欠運転した。
【0096】
このことにより、欠点が存在したからといって、炭素繊維布帛を捨てることなく、全て有効活用することができた。
(実施例3)
送出装置(h1)および巻取装置(h2)を、5m/分で定速運転して10m毎に1分間停機するように予め組み込んだプログラムにて自動で間欠運転して2方向性織物を検査した。すなわち、2方向性織物が停止している状態で欠点の位置および種類について、長手方向100mに対して計10点測定した。ここで、画像取得手段(b1)〜(b3)としてカラーラインセンサではなく、エリアセンサ(分解能0.08mm/画素、図示せず)を用い、炭素繊維布帛全長に渡る連続した検査ではなく、測定箇所での検査精度を最大限に高くした。また、炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布と、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布との情報を抽出して判別したものである。
【0097】
検査の結果、毛羽(長径8mm、短径5mmのもの1箇所)、炭素繊維布帛幅(平均の炭素繊維布帛実質幅1000mm、平均の炭素繊維布帛総幅1019mm)、房耳長(平均の片耳10mm)、を判別することができた。ここで、透過照明手段(a2)を用いたことにより、織物開口率(平均4.2%)、炭素繊維糸条の幅(平均8.0mm)、配列密度(平均1.3本/cm)、炭素繊維糸条の弧形(平均11mm/m)も判別できた。なお、織組織の乱れ、炭素繊維糸条の切断、などの欠点は存在せず、欠点表示手段は用いなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の炭素繊維布帛の検査装置は、人の目による検査に較べて、光学的な処理が難しい黒色の炭素繊維布帛において、検査精度の向上、欠点見逃し抑制、検査時間の短縮、を実現することができる。また、既存の検反機、織機、等に簡単に設置することが可能であり、品質管理における省人化、高信頼化および高精度化としても大きな効果を示す。
【0099】
かかる検査装置は、高品質が要求される航空・宇宙用途や自動車に代表される構造部材、意匠が要求される自動車用途や一般産業用途に代表される外観部材などの炭素繊維布帛の検査に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一実施形態を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一実施形態を説明する概略平面図である。
【符号の説明】
【0101】
1:炭素繊維布帛の検査装置
2、3:炭素繊維布帛
4:人間
5:炭素繊維布帛の移動面
a1:反射照明手段
a2:透過照明手段
b1、b2、b3:カラーラインセンサである画像取得手段
c:遮光手段
d:画像処理手段
e:記憶手段
f:判別手段
g:出力手段
g1:ディスプレイ
g2:プリンタ
h1:送出装置
h2:巻取装置
h3:コンタクトローラー
i1:ラベル貼付装置である欠点表示手段
i2〜i5:発光装置である欠点表示手段
j:再検査手段
k1、k2:エッジ・ポジション・コントロール装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維布帛を移動させる送出装置と巻取装置と、それらの間に設置する、少なくとも次の(a)〜(h)の手段を備えることを特徴とする炭素繊維布帛の布帛欠点の位置および種類を検出する検査装置。
(a)炭素繊維布帛を光で反射照明する反射照明手段(a1)および/または炭素繊維布帛を光で透過照明する透過照明手段(a2)から構成される照明手段
(b)炭素繊維布帛に反射された照明光および/または炭素繊維布帛を透過した照明光を撮像する画像取得手段
(c)前記照明手段(a)と前記画像取得手段(b)とをその内部に配置し、かつ、前記照明手段(a)以外の光が前記画像取得手段(b)に実質的に撮像されないようにする遮光手段
(d)前記画像取得手段(b)で、撮像した取得画像をデータ処理して炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報に処理する画像処理手段
(e)正常な炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報と、複数種の布帛欠点を数値化した布帛情報とを予め基準情報として登録しておく記憶手段
(f)前記画像処理手段(d)により処理した布帛情報と、前記記憶手段(e)に予め登録された基準情報とを比較して、布帛欠点の在否、および、布帛欠点が存在する場合の欠点の位置ならびに種類を判別する判別手段
(g)布帛欠点の位置および種類を出力する出力手段
(h)炭素繊維布帛の移動量または前記画像取得手段の移動量を検出する移動量検出手段
【請求項2】
前記照明手段(a)が、反射照明手段(a1)と、透過照明手段(a2)とから構成され、
反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明光の波長が100〜470nm異なるものであり、
炭素繊維布帛の移動面の片側に反射照明手段(a1)が、もう一方の側に透過照明手段(a2)が配置され、
反射照明手段(a1)の側に画像取得手段(b)が配置され、
前記画像取得手段(b)が、反射照明手段(a1)と透過照明手段(a2)との照明光を撮像する、
請求項1に記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【請求項3】
前記照明手段(a)が、炭素繊維布帛を反射照明手段(a1)であり、
該反射照明手段(a1)と前記画像取得手段(b)とが、それぞれ炭素繊維布帛の移動面の両側に配置された、
請求項1または2に記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【請求項4】
前記画像取得手段(b)が、炭素繊維布帛の幅方向に2〜15個のCCDカメラを布帛の幅方向に撮像範囲が切れ目なく連続するように配置し、それぞれのCCDカメラが、分解能が0.05〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内になるように設置された、
請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置。
【請求項5】
更に、次の(i)、(j)の手段を備える請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置。
(i)判別した布帛欠点の位置情報に基づいて、布帛欠点の位置または判別した布帛欠点の炭素繊維布帛端部に欠点表示を行う欠点表示手段
(j)布帛欠点を人が再確認または欠点修正する再確認手段
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用い炭素繊維布帛をオフライン検査する炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項7】
前記送出および/または巻取装置が、炭素繊維布帛製造装置を構成する一部であり、炭素繊維布帛をインライン検査する炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項8】
前記反射照明手段(a1)による反射画像と前記透過照明手段(a2)による透過画像とを前記画像取得手段(b)で取得し、
前記画像処理手段(d)において、反射及び透過の布帛情報を分離して得、
前記判別手段(f)にて、反射と透過との布帛情報を別個に判別する、
請求項2、4、および、5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項9】
炭素繊維布帛の移動面の一方の面側に配置された画像取得装置と他方の面側に配置された画像取得装置とで、それぞれの面の画像を取得し、
前記画像処理手段(d)で、それぞれの面の布帛情報を得、
前記判別手段(f)にて、それぞれの面の布帛情報を分離して判別する、
請求項3〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項10】
検査対象の炭素繊維布帛が、織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、前記炭素繊維布帛中の炭素繊維糸条に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布、炭素繊維布帛に関する開口の大きさ、輝度分布、の少なくとも1つから炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記布帛情報に基づいて、毛羽などの異物混入、炭素繊維糸条同士の隙間、織組織や編組織などの組織乱れ、炭素繊維糸条の切断、炭素繊維布帛の開口率、炭素繊維糸条の幅および配列密度から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別する、
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項11】
検査対象の炭素繊維布帛が、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、編糸もしくはステッチ糸に関する形状、配列、周期、位置、輝度分布の少なくとも1つから炭素繊維布帛形態を数値化した布帛情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記布帛情報に基づいて、編組織の乱れ、ステッチ糸の切断から選ばれる少なくとも1種の布帛情報について判別する、
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項12】
検査対象の炭素繊維布帛が、織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像処理手段(d)により、それぞれのカメラからの取得画像を連結して、炭素繊維布帛の全幅にわたる炭素繊維糸条の位置情報を取得し、
前記判別手段(f)により、前記位置情報に基づいて、炭素繊維糸条の斜行または弧形について判別する、
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項13】
検査対象の炭素繊維布帛が、それぞれの端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織を有しているか、房耳を有する織物、挿入糸を有する編物またはステッチ布帛であり、
前記画像取得手段(b)において、カメラの視野を炭素繊維布帛のそれぞれの端部がカバーされるように設定し、
前記画像処理手段(d)により、炭素繊維布帛のそれぞれの炭素繊維布帛端部に存在する地絡糸もしくは最外側の編組織の位置情報か、炭素繊維布帛の端部の輪郭線の位置情報を得、
前記判別手段(f)により、前記位置情報に基づいて、炭素繊維布帛端部それぞれの地絡糸もしくは最外側の編組織の間の距離を算出して炭素繊維布帛実質幅を判別するか、炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置の間の距離を算出して炭素繊維布帛総幅を判別するか、地絡糸もしくは最外側の編組織の位置と炭素繊維布帛端部の輪郭線の位置との距離を算出して房耳長を判別する、
請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査装置を用いた炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項14】
前記送出および/または巻取装置を連続稼働し、炭素繊維布帛を一定速度で移動させている状態で連続して布帛欠点の位置および種類を検出する請求項6〜13のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項15】
前記送出および/または巻取装置を間欠的に稼働し、炭素繊維布帛の移動時に欠点の位置および種類を測定し、停止時に布帛欠点を修正する請求項6〜13のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項16】
前記送出および/または巻取装置を間欠的に稼働し、炭素繊維布帛を停止している状態で欠点の位置および種類を測定し、炭素繊維布帛を移動させ、所定長で炭素繊維布帛を停止させて、所定時間で再び炭素繊維布帛を移動させる一連の間欠運転を、予め組み込んだプログラムにて自動で行う請求項6〜13のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291535(P2007−291535A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117584(P2006−117584)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係わる特許出願(平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構「地球温暖化防止新技術プログラム(自動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発)」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】