説明

物体検出装置および情報取得装置

【課題】透過率の再現性が高い分光素子を用いながら、適正にレーザ光源の光量制御が可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供する。
【解決手段】情報取得装置1は、発光装置10と、受光装置20と、を備える。発光装置10は、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130と、リーケージミラー130によって反射されたレーザ光をドットパターンを有するレーザ光に変換するDOE140と、リーケージミラー130を透過したレーザ光を受光して受光量に応じた検出信号を出力するFMD160と、リーケージミラー130とFMD160との間に配置され、リーケージミラー130を透過したレーザ光の光量を減衰させるフィルタ150と、FMD160の検出信号に基づいて、レーザ光源110の発光量を制御するAPC制御部21bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域に光を投射したときの反射光の状態に基づいて目標領域内の物体を検出する物体検出装置および当該物体検出装置に用いて好適な情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いた物体検出装置が種々の分野で開発されている。いわゆる距離画像センサを用いた物体検出装置では、2次元平面上の平面的な画像のみならず、検出対象物体の奥行き方向の形状や動きを検出することができる。かかる物体検出装置では、レーザ光源やLED(Light Emitting Diode)から、予め決められた波長帯域の光が目標領域に投射され、その反射光がCMOSイメージセンサ等の受光素子により受光される。距離画像センサとして、種々のタイプのものが知られている。
【0003】
所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの距離画像センサでは、ドットパターンを持つレーザ光の目標領域からの反射光が受光素子によって受光される。そして、ドットの受光素子上の受光位置に基づいて、三角測量法を用いて、検出対象物体の各部(検出対象物体上の各ドットの照射位置)までの距離が検出される(たとえば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の物体検出装置では、ドットパターンのレーザ光を投射するための光学系として、レーザ光源と、コリメータレンズと、回折光学素子が用いられる。レーザ光源は、発熱や経年劣化により、出射光量が変化するため、レーザ光の出力をモニタし、所望の光出力レベルが得られるようにAPC(Auto Power Control)制御を行う必要がある。
【0006】
APC制御を行う手法として、レーザ光の出射方向に分光素子を設け、レーザ光の一部を透過して光検出器に導光する、いわゆるフロントモニタ方式の構成が用いられ得る。上記構成の物体検出装置では、遠方の目標領域にドットパターンのレーザ光を投射するために、高出力のレーザ光源が用いられる。この場合、分光素子の透過率が十分に小さくないと、光検出器の検出信号が飽和し、APC制御に悪影響をおよぼす惧れがある。しかし、製造上、透過率が非常に低い分光素子を再現性よく製造するのは困難である。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、透過率の再現性が高い分光素子を用いながら、適正にレーザ光源の光量制御が可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置に関する。本態様に係る情報取得装置は、目標領域に所定のドットパターンでレーザ光を投射する発光装置と、前記発光装置に対して所定の距離だけ横方向に離れて並ぶように配置され、前記目標領域を撮像する受光装置と、を備える。前記発光装置は、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を平行光に変換するコリ
メータレンズと、前記コリメータレンズを透過した前記レーザ光を分岐させる分光素子と、前記分光素子によって分光された第1のレーザ光を目標領域において所定のドットパターンを有するレーザ光に変換して前記目標領域に投射する回折光学素子と、前記分光素子によって分光された第2のレーザ光を受光して受光量に応じた検出信号を出力する光検出器と、前記分光素子と前記光検出器との間に配置され、前記光検出器に到達する前記第2のレーザ光の光量を減衰させる光量調節部材と、前記光検出器の前記検出信号に基づいて、前記レーザ光源の発光量を制御するレーザ制御部と、を有する。
【0009】
本発明の第2の態様は、物体検出装置に関する。本態様に係る物体検出装置は、上記第1の態様に係る情報取得装置を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透過率の再現性が高い分光素子を用いながら、適正にレーザ光源の光量制御が可能な情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る物体検出装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る情報取得装置と情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る目標領域に対するレーザ光の照射状態とイメージセンサ上のレーザ光の受光状態を示す図である。
【図4】実施の形態に係る発光装置の分解斜視図を示す図である。
【図5】実施の形態に係る情報取得装置の組立過程を示す図である。
【図6】実施の形態に係る情報取得装置の組立過程を示す図である。
【図7】実施の形態に係る情報取得装置の構成を示す図である。
【図8】実施の形態に係る情報取得装置のAPC制御を示すフローチャートである。
【図9】他の変更例の情報取得装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態には、所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの情報取得装置が例示されている。
【0014】
まず、図1に本実施の形態に係る物体検出装置の概略構成を示す。図示の如く、物体検出装置は、情報取得装置1と、情報処理装置2とを備えている。テレビ3は、情報処理装置2からの信号によって制御される。
【0015】
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離(以下、「3次元距離情報」という)を取得する。取得された3次元距離情報は、ケーブル4を介して情報処理装置2に送られる。
【0016】
情報処理装置2は、たとえば、テレビ制御用のコントローラやゲーム機、パーソナルコンピュータ等である。情報処理装置2は、情報取得装置1から受信した3次元距離情報に基づき、目標領域における物体を検出し、検出結果に基づきテレビ3を制御する。
【0017】
たとえば、情報処理装置2は、受信した3次元距離情報に基づき人を検出するとともに、3次元距離情報の変化から、その人の動きを検出する。たとえば、情報処理装置2がテレビ制御用のコントローラである場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人のジェスチャを検出するとともに、ジェスチャに応じてテレビ3に制御信号を出力するアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定のジェスチャをすることにより、チャンネル切り替えやボリュームのUp/Down等、所定の機能をテレビ3に実行させることができる。
【0018】
また、たとえば、情報処理装置2がゲーム機である場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人の動きを検出するとともに、検出した動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させ、ゲームの対戦状況を変化させるアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定の動きをすることにより、自身がテレビ画面上のキャラクタとしてゲームの対戦を行う臨場感を味わうことができる。
【0019】
図2は、情報取得装置1と情報処理装置2の構成を示す図である。
【0020】
情報取得装置1は、光学部の構成として、投射光学系100と受光光学系200とを備えている。投射光学系100と受光光学系200は、X軸方向に並ぶように、情報取得装置1に配置される。
【0021】
投射光学系100は、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130と、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)140と、フィルタ150と、FMD(Front Monitor Diode)160とを備えている。また、受光光学系200は、アパーチャ210と、撮像レンズ220と、フィルタ230と、CMOSイメージセンサ240とを備えている。この他、情報取得装置1は、回路部の構成として、CPU(Central Processing Unit)21と、レーザ駆動回路22と、PD信号処理回路23と、撮像信号処理回路24と、入出力回路25と、メモリ26を備えている。
【0022】
レーザ光源110は、受光光学系200から離れる方向(X軸正方向)に波長830nm程度の狭波長帯域のレーザ光を出力する。コリメータレンズ120は、レーザ光源110から出射されたレーザ光を平行光から僅かに広がった光(以下、単に「平行光」という)に変換する。
【0023】
リーケージミラー130は、誘電体薄膜の多層膜からなり、反射率が100%よりも若干低く、透過率が反射率よりも数段小さくなるように膜の層数や膜厚が設計されている。リーケージミラー130は、製造工程において反射/透過率の再現性が確保されるよう、ある程度の高さの透過率を有している(たとえば、透過率4%)。リーケージミラー130は、コリメータレンズ120側から入射されたレーザ光の大部分をDOE140に向かう方向(Z軸方向)に反射し、残りの一部分をFMD160に向かう方向(X軸方向)に透過する。
【0024】
DOE140は、入射面に回折パターンを有する。この回折パターンによる回折作用により、DOE140に入射したレーザ光は、ドットパターンのレーザ光に変換されて、目標領域に照射される。回折パターンは、たとえば、ステップ型の回折ホログラムが所定のパターンで形成された構造とされる。回折ホログラムは、コリメータレンズ120により平行光とされたレーザ光をドットパターンのレーザ光に変換するよう、パターンとピッチが調整されている。
【0025】
DOE140は、リーケージミラー130から入射されたレーザ光を、放射状に広がる
ドットパターンのレーザ光として、目標領域に照射する。ドットパターンの各ドットの大きさは、DOE140に入射する際のレーザ光のビームサイズに応じたものとなる。DOE140にて回折されないレーザ光(0次光)は、DOE140を透過してそのまま直進する。
【0026】
フィルタ150は、レーザ光源110から出射されるレーザ光の波長帯域の光を吸収する素材からなっている。たとえば、フィルタ150は、樹脂材料に、シアニン染料、メチン染料等の赤外光を吸収する特性を有した有機染料を混ぜた材料から形成される。フィルタ150は、リーケージミラー130を透過したレーザ光の光量を1/3程度に減衰させる。
【0027】
FMD160は、フィルタ150によって減衰されたレーザ光を受光し、受光量に応じた電気信号を出力する。FMD160は、レーザ光源110の1%程度の光量を検出可能な範囲に含んでいる。
【0028】
なお、投射光学系100と受光光学系200の詳細な構成は、追って図4、図5を参照して、説明する。
【0029】
目標領域から反射されたレーザ光は、アパーチャ210を介して撮像レンズ220に入射する。
【0030】
アパーチャ210は、撮像レンズ220のFナンバーに合うように、外部からの光に絞りを掛ける。撮像レンズ220は、アパーチャ210を介して入射された光をCMOSイメージセンサ240上に集光する。フィルタ230は、レーザ光源110の出射波長(830nm程度)を含む赤外の波長帯域の光を透過し、可視光の波長帯域をカットするIRフィルタ(Infrared Filter)である。
【0031】
CMOSイメージセンサ240は、撮像レンズ220にて集光された光を受光して、画素毎に、受光量に応じた信号(電荷)を撮像信号処理回路24に出力する。ここで、CMOSイメージセンサ240は、各画素における受光から高レスポンスでその画素の信号(電荷)を撮像信号処理回路24に出力できるよう、信号の出力速度が高速化されている。
【0032】
CPU21は、メモリ26に格納された制御プログラムに従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU21には、レーザ光源110を制御するためのレーザ制御部21aと、FMD160から出力された信号量に応じてレーザ光源110の光量の自動制御を行う、いわゆるAPC(Auto Power Control)制御を行うAPC制御部21bと、3次元距離情報を生成するための距離演算部21cの機能が付与される。
【0033】
レーザ駆動回路22は、CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源110を駆動する。PD信号処理回路23は、FMD160から出力された受光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してCPU21に出力する。CPU21は、PD信号処理回路23から供給される信号をもとに、APC制御部21bによる処理によって、レーザ光源110の光量を増幅もしくは減少させる判断を行う。APC制御部21bにより、レーザ光源110の光量を変化させる必要があると判断された場合、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を変化させる制御信号をレーザ駆動回路22に送信する。なお、APC制御にかかる処理については、追って、図8を参照して説明する。
【0034】
撮像信号処理回路24は、CMOSイメージセンサ240を制御して、CMOSイメージセンサ240で生成された各画素の信号(電荷)をライン毎に順次取り込む。そして、取り込んだ信号を順次CPU21に出力する。CPU21は、撮像信号処理回路24から
供給される信号(撮像信号)をもとに、情報取得装置1から検出対象物の各部までの距離を、距離演算部21cによる処理によって算出する。入出力回路25は、情報処理装置2とのデータ通信を制御する。
【0035】
情報処理装置2は、CPU31と、入出力回路32と、メモリ33を備えている。なお、情報処理装置2には、同図に示す構成の他、テレビ3との通信を行うための構成や、CD−ROM等の外部メモリに格納された情報を読み取ってメモリ33にインストールするためのドライブ装置等が配されるが、便宜上、これら周辺回路の構成は図示省略されている。
【0036】
CPU31は、メモリ33に格納された制御プログラム(アプリケーションプログラム)に従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU31には、画像中の物体を検出するための物体検出部31aの機能が付与される。かかる制御プログラムは、たとえば、図示しないドライブ装置によってCD−ROMから読み取られ、メモリ33にインストールされる。
【0037】
たとえば、制御プログラムがゲームプログラムである場合、物体検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動きを検出する。そして、検出された動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させるための処理が制御プログラムにより実行される。
【0038】
また、制御プログラムがテレビ3の機能を制御するためのプログラムである場合、物体検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動き(ジェスチャ)を検出する。そして、検出された動き(ジェスチャ)に応じて、テレビ3の機能(チャンネル切り替えやボリューム調整、等)を制御するための処理が制御プログラムにより実行される。
【0039】
入出力回路32は、情報取得装置1とのデータ通信を制御する。
【0040】
図3(a)は、目標領域に対するレーザ光の照射状態を模式的に示す図、図3(b)は、CMOSイメージセンサ240におけるレーザ光の受光状態を模式的に示す図である。なお、同図(b)には、便宜上、目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在するときの受光状態が示されている。
【0041】
投射光学系100からは、ドットパターンを持ったレーザ光(以下、このパターンを持つレーザ光の全体を「DP光」という)が、目標領域に照射される。同図(a)には、DP光の光束領域が実線の枠によって示されている。DP光の光束中には、DOE140による回折作用によってレーザ光の強度が高められたドット領域(以下、単に「ドット」という)が、DOE140による回折作用によるドットパターンに従って点在している。
【0042】
なお、図3(a)では、便宜上、DP光の光束が、マトリックス状に並ぶ複数のセグメント領域に区分されている。各セグメント領域には、ドットが固有のパターンで点在している。一つのセグメント領域におけるドットの点在パターンは、他の全てのセグメント領域におけるドットの点在パターンと相違する。これにより、各セグメント領域は、ドットの点在パターンをもって、他の全てのセグメント領域から区別可能となっている。
【0043】
目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在すると、これにより反射されたDP光の各セグメント領域は、同図(b)のように、CMOSイメージセンサ240上においてマトリックス状に分布する。たとえば、同図(a)に示す目標領域上におけるセグメント領域S0の光は、CMOSイメージセンサ240上では、同図(b)に示すセグメント領域Sp
に入射する。なお、図3(b)においても、DP光の光束領域が実線の枠によって示され、便宜上、DP光の光束が、マトリックス状に並ぶ複数のセグメント領域に区分されている。
【0044】
上記距離演算部21cでは、CMOSイメージセンサ240上における各セグメント領域の位置が検出され、検出された各セグメント領域の位置から、三角測量法に基づいて、検出対象物体の各セグメント領域に対応する位置までの距離が検出される。かかる検出手法の詳細は、たとえば、上記非特許文献1(第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280)に示されている。
【0045】
ところで、図2のように、リーケージミラー130によりレーザ光源110から出射されたレーザ光の一部を透過させてFMD160に導かせると、レ―ザ光源110のCAN内にバックモニタ用の光検出器を配さずとも、FMD160によりレーザ光源110の光量をモニタすることができる。
【0046】
しかし、リーケージミラー130は、製造上、透過率が非常に低いもの(たとえば、透過率略1%)を再現性よく製造するのは困難である。また、レーザ光源110は、遠方の目標領域にレーザ光を投射するために、高出力のレーザ光が用いられる。したがって、透過率の再現性が不安定なリーケージミラー130のみでFMD160に入射するレーザ光の光量を調整しようとすると、使用されたリーケージミラー130の透過率が目標値(たとえば略1%)値よりも高い場合に、FMD160から出力される検出信号が飽和し、レーザ光源110の光量制御を行うことが困難となる。
【0047】
そこで、本実施の形態では、透過率の再現性が確保された、透過率がやや高いリーケージミラー130を用いながら、リーケージミラー130からFMD160に向かう光路中に、レーザ光の光量調節部材として、フィルタ150が配置される。
【0048】
図4は、本実施の形態に係る発光装置10の構成例を示す分解斜視図である。発光装置10は、図2中の投射光学系100が他の部品とともにユニット化された装置である。なお、図4には、図2で示したX−Y−Z軸とともに、前後左右上下の方向が示されている。上下方向はZ軸方向に平行、前後方向はY軸方向に平行、左右方向はX軸方向に平行である。
【0049】
図4を参照して、発光装置10は、上述のレーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130と、DOE140と、フィルタ150と、FMD160の他に、レーザホルダ111と、レンズホルダ121と、DOE押さえバネ141と、FMD回路基板161と、温度検出回路基板162と、ハウジング170と、レンズホルダ押さえバネ180を備えている。
【0050】
図示の如く、レーザ光源110は、ベース110aとCAN110bとを有する。ベース110aは、正面視において、外周が一部切り欠かれた円形の輪郭を有する。
【0051】
レーザホルダ111は、正面視において正方形の輪郭を有し、中央に円形の開口111aが形成された枠部材からなっている。開口111aは、レーザホルダ111を左右方向に貫通しており、径が異なる円柱状の2つの穴が同軸上に並んだ構成となっている。開口111aの右方の穴の径は左方の穴の径よりも大きくなっており、径が変化する境界には、リング状の段差が形成されている。開口111aの右方の穴の径は、レーザ光源110のベース110aの径よりも僅かに大きい。レーザ光源110のベース110aの左面が開口111a内の段差に当接するまで、右側からベース110aを開口111aに嵌め込むことにより、レーザ光源110がレーザホルダ111に対して位置決めされる。この状
態で、ベース110aの外周の切り欠きに接着材が注入され、レーザ光源110がレーザホルダ111に接着固定される。
【0052】
レンズホルダ121は、正面視において略円形の輪郭を有し、中央に開口121aが形成された枠部材からなっている。開口121aは、レンズホルダ121を左右方向に貫通しており、径が異なる円柱状の2つの穴が同軸上に並んだ構成となっている。開口121aの右方の穴の径は左方の穴の径よりも小さくなっており、径が変化する境界には、リング状の段差が形成されている。開口121aの右方の穴の径は、コリメータレンズ120の径よりも僅かに小さい。コリメータレンズ120の右方が開口121a内の段差に当接するまで、左側からコリメータレンズ120を開口121aに嵌め込むことにより、コリメータレンズ120がレンズホルダ121に対して位置決めされる。この状態で、コリメータレンズ120がレンズホルダ121に接着固定される。
【0053】
レンズホルダ121の側面には、それぞれ、コリメータレンズ120とレンズホルダ121を接着固定する際に接着剤を流入させるための2つの溝が形成されている。
【0054】
DOE押さえバネ141の中央には、レーザ光を目標領域に導くための開口141aが形成されている。DOE140は、DOE押さえバネ141の下方向から、DOE押さえバネ141に嵌め込まれ、接着固定される。また、DOE押さえバネ141は、前後の側面に、DOE押さえバネ141をハウジング170に固定するための鉤部141bが形成されている。
【0055】
フィルタ150は、一定の厚みの平板形状を有している。フィルタ150は、前述のごとく、赤外光を吸収する染料等が含まれた樹脂材からなり、他の光学部材と比べて厚みが薄い形状を有している(たとえば、0.1mm程度)。
【0056】
FMD回路基板161は、FMD160と、コンデンサ161aを搭載する回路基板である。FMD回路基板161には、図2で示したPD信号処理回路23が搭載され、FMD160から出力された電気信号を増幅する増幅回路およびデジタル変換するA/D変換回路等が搭載されている。また、FMD回路基板161には、CPU21等が搭載された後段の回路基板およびレーザ光源110と電気的に接続するためのFPC(Flexible Printed Circuit)161bが後方から前方に延びるように配されている。コンデンサ161aは、FMD回路基板161に発生する電気的ノイズを低減させる。温度検出回路基板162は、サーミスタを備え、レーザ光源110の温度を検出する。
【0057】
ハウジング170は、上面視において長方形の輪郭の、有底の枠部材からなっている。ハウジング170は、X−Z平面に平行な面に対して前後方向に対称な形状となっている。
【0058】
ハウジング170の内部左側の側面には、X−Z平面の面内方向に45°傾いた2つのミラー装着部170aが前後方向に並んで形成されている。また、ミラー装着部170aの左方には、FMD回路基板161を装着するための溝170bとFMD装着部170cが形成されている。さらに、FMD装着部170cの左方には、フィルタ150を装着するためのフィルタ装着部170dが形成されている。
【0059】
また、ハウジング170の右方の側面には、U字型の開口170eが形成されている。開口170eの前後方向の幅は、レーザ光源110のCAN110bの径よりも大きい。
【0060】
また、ハウジング170の前後方向にならぶ2つの内側面の下端には、互いに向き合う一対の傾斜面170fが形成されている。2つの傾斜面170fは、それぞれ、X−Y平
面に平行な面に対して下方向に同じ角度だけ傾いている。2つの傾斜面170fにレンズホルダ121を載せると、レンズホルダ121は、Y軸方向(前後方向)において、変位が規制される。
【0061】
ハウジング170の側面には、DOE押さえバネ141の鉤部141bを装着するための穴170gと、後述するレンズホルダ押さえバネ180の鉤部180bを装着するための穴170hが形成されている。さらに、ハウジング170の中央付近の底面には、ハウジング170を後述するベースプレート300に固定するためのネジ穴170iが形成されている。
【0062】
レンズホルダ押さえバネ180は、バネ性のある板ばねであり、中央に、一段低い段部180aを有する。レンズホルダ押さえバネ180は、前後方向に対称な形状を有する。レンズホルダ押さえバネ180には、レンズホルダ押さえバネ180をハウジング170に上部から固定するための2つの鉤部180bが形成されている。
【0063】
発光装置10の組立時には、まず、図4において、リーケージミラー130が、ハウジング170内のミラー装着部170aに装着される。これにより、リーケージミラー130が、X−Y平面に対してX−Z平面の面内方向に45度の傾きを持つように、ハウジング170内に設置される。
【0064】
次に、コリメータレンズ120が装着されたレンズホルダ121が、一対の傾斜面170f上に載せられ、ハウジング170の内部に収容される。
【0065】
そして、レンズホルダ押さえバネ180の鉤部180bがハウジング170の穴170gに差し込まれ、レンズホルダ押さえバネ180がハウジング170の上部に当てられる。このとき、レンズホルダ121の上部水平面が、レンズホルダ押さえバネ180の段部180aによって、下方向に押し付けられる。これにより、レンズホルダ121は、レンズホルダ押さえバネ180の付勢によって、ハウジング170の傾斜面170fに押し付けられ、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)に動かないように仮固定される。
【0066】
こうしてレンズホルダ121がハウジング170に仮固定されると、レンズホルダ121と、ハウジング170の内側面の間には、レンズホルダ121がX軸方向(左右方向)に移動可能なように、所定の隙間が存在する。
【0067】
次に、レーザ光源110のCAN110bがハウジング170のU字型の開口170eに挿入されるよう、レーザホルダ111の後面がハウジング170の外側面に当てられる。レーザ光源110のCAN110bとハウジング170の開口170eとの間には、レーザ光源110がYZ軸方向(上下左右方向)に移動可能なように、所定の隙間が存在する。
【0068】
この状態で、調整用治具により、レーザホルダ111をハウジング170に押し付けつつ、レーザ光源110がYZ軸方向(上下左右方向)に変位され、YZ軸方向(上下左右方向)の位置調整が行われる。これにより、レーザ光源110の光軸とコリメータレンズ120の光軸が整合する。また、レンズホルダ121のX軸方向(左右方向)の位置調整が行われる。これにより、コリメータレンズ120の焦点位置がレーザ光源110の発光点に対して適正に位置付けられる。
【0069】
以上の位置調整によって、目標領域において所望のドットパターンが得られるようになる。
【0070】
こうして位置調整がなされた後、レーザホルダ111の前後の2つの側面とハウジング170の側面との境界に、前後均等にUV接着剤が添着される。UV接着剤が添着された後、再度、レーザ光の光軸のずれが確認され、問題なければ、UV接着剤に紫外線が照射されて、レーザホルダ111がハウジング170に接着固定される。なお、レーザ光の光軸のずれの確認において問題があった場合には、再度、レーザホルダ111が微調整された後に、UV接着剤に紫外線が照射され、レーザホルダ111がハウジング170に接着固定される。
【0071】
さらに、レンズホルダ121とハウジング170内部の傾斜面170fとが互いに当接する位置に、前後均等にUV接着剤が添着される。UV接着剤が添着された後、再度、レーザ光源110とコリメータレンズ120の位置関係が確認され、問題なければ、UV接着剤に紫外線が照射されて、レンズホルダ121がハウジング170に接着固定される。なお、レーザ光源110とコリメータレンズ120の位置関係の確認において問題があった場合には、再度、レンズホルダ121が微調整された後に、UV接着剤に紫外線が照射され、レンズホルダ121がハウジング170に接着固定される。
【0072】
こうして、ハウジング170に対するレーザ光源110とコリメータレンズ120の設置が完了した後、DOE140が装着されたDOE押さえバネ141の鉤部141bがハウジング170の穴170gに嵌め込まれ、DOE押さえバネ141がハウジング170に固着される。
【0073】
しかる後、ハウジング170のフィルタ装着部170dに、フィルタ150が取り付けられ、接着固定される。そして、ハウジング170の溝170bに、上方からFMD回路基板161が差し込まれる。このとき、FMD160とコンデンサ161aが装着されたFMD回路基板161が、FMD回路基板161の上端をFMD装着部170cの上端に揃えるようにして、FMD装着部170cに位置づけられる。このようにFMD回路基板161が位置づけられると、レーザ光源110から出射されたレーザ光の一部は、ミラー装着部170aに装着されたリーケージミラー130を透過し、FMD160に入射する。この状態で、FMD160から正常に検出信号が出力されるかが確認され、問題なければ、FMD回路基板161がFMD装着部170cに接着固定される。FMD160から正常に検出信号が出力されない場合、正常に検出信号が出力されるまで、FMD回路基板161の位置が調整される。これにより、FMD160が適正に位置づけられ、FMD160の受光面がレーザ光源110の光軸に対して垂直になるように、FMD160がハウジング170に装着される。さらに、FPC161bの、FMD回路基板161と温度検出回路基板162との間の部分が、ハウジング170の後側面に接着される。これにより、温度検出回路基板162がレーザホルダ111の後側面に対向する位置に位置付けられる。こうして、発光装置10の組み立てが完了する。
【0074】
本実施の形態では、上記のように、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるよう投射光学系100が構成されているため、Z軸方向において、発光装置10を薄くすることができる。ここで、レーザ光源110のCAN110b内にバックモニタ用の光検出器を配する必要がないため、CAN110bの径を小さくすることができ、発光装置10の薄型化を進めても、この薄型化がCAN110bの径によって制限されることがない。
【0075】
また、リーケージミラー130からFMD160に向かう光路中にフィルタ150が配されるため、透過率の高いリーケージミラー130を用いても、FMD160の検出信号が飽和することなく、適正にレーザ光源110の光量制御を行うことができる。フィルタ150は、薄い平板形状を有するため、このようにフィルタ150が配されても、ハウジング170の大きさに大きな影響を与えない。
【0076】
図5、図6は、情報取得装置1の組立過程を示す斜視図である。なお、便宜上、受光装置20の組立過程は図示省略する。受光装置20は、図2中の受光光学系200が他の部品とともにユニット化された装置である。アパーチャ210と、撮像レンズ220と、フィルタ230は、レンズホルダ260の筒部261内に収容されている。また、CMOSイメージセンサ240は、イメージセンサ回路基板241を介して、レンズホルダ260の下面に装着されている。
【0077】
図5において、300は、発光装置10と受光装置20を支持するベースプレートである。
【0078】
ベースプレート300には、発光装置10と受光装置20が配置される。ベースプレート300は、図示の如く、前後方向(Y軸方向)の幅が狭く、左右方向(X軸方向)の幅が広い形状を有している。また、ベースプレート300は、外縁が他の部分と比べ、一段高くなったリブ300aを有している。このリブ300aにより、ベースプレート300がZ軸正負の方向に撓みにくくなる。よって、本実施の形態のように、前後方向の幅が狭いベースプレート300を用いても、情報取得装置1の検出精度を確保することができる。
【0079】
ベースプレート300には、発光装置10をベースプレート300に取り付ける際の位置決めとなる開口301、302が形成されており、また、発光装置10を取り付けるためのネジ孔(図示せず)が形成されている。
【0080】
また、ベースプレート300には、下方(Z軸負方向)からレンズホルダ260の筒部261を嵌め込むための開口303が形成されている。開口303は、筒部261の外径と同様の形状を有しており、筒部261を嵌め込ませることができる寸法を有している。また、ベースプレート300には、レンズホルダ260の位置調整時に仮固定するためのネジ孔304aおよび、接着固定時に接着剤を流し込ませるための4つの孔304bが形成されている。
【0081】
発光装置10と受光装置20は、それぞれ、発光装置10の射出瞳と、受光装置の入射瞳がX軸方向の直線上に並ぶように配置される必要がある。そのため、ベースプレート300は、段差305を有し、受光装置20を下方(Z軸負方向)からベースプレート300に取り付けた際、発光装置10の射出瞳の位置と受光装置20の入射瞳の位置が一致するように、ベースプレート300の右端周辺がレーザ光の投射方向(Z軸正方向)に一段高くなっている。なお、発光装置10の射出瞳はDOE140の出射面の近傍となり、受光装置20の入射瞳はアパーチャ210の絞りの位置となる。
【0082】
また、発光装置10と受光装置20の設置間隔は、情報取得装置1と目標領域の基準面との距離に応じて、設定される。どの程度離れた目標物を検出対象とするかによって、基準面と情報取得装置1との間の距離が変わる。検出対象の目標物までの距離が近くなるほど、発光装置10と受光装置20の設置間隔は狭くなる。逆に、検出対象の目標物までの距離が遠くなるほど、発光装置10と受光装置20の設置間隔は広くなる。
【0083】
このように、ベースプレート300の大きさは、発光装置10と受光装置20の並び方向において広くなる。
【0084】
情報取得装置1の組立時には、まず、ハウジング170の底面がベースプレート300の開口301、302の縁に当接するように、上方から、発光装置10がベースプレート300に配置される。この状態で、ベースプレート300に形成されたネジ孔(図示せず
)と、発光装置10の底面に形成されたネジ穴170i(図4参照)が合わされ、これらネジ穴を介して、ハウジング170がベースプレート300に螺着される。
【0085】
次に、下方から、筒部261が開口303に嵌め込まれ、レンズホルダ260のベースプレート装着部262がベースプレート300に当接するように、受光装置20が配置される。この状態で、ベースプレート300に形成されたネジ孔304aと、レンズホルダ260に形成されたネジ穴262aが合わされ、これらネジ穴を介して、レンズホルダ260がベースプレート300に螺着される。その後、受光装置20の角度調整がされた後、孔304bより接着剤が流入され、受光装置20は、ベースプレート300に接着固定される。こうして、図6に示す構成体が組み立てられる。
【0086】
発光装置10のFPC161bは、一端が温度検出回路基板162に接続され、また、一端がFMD回路基板161に接続され、さらに、もう一端が、後段の回路基板500(図7参照)に接続される。温度検出回路基板162は、レーザ光源110の近傍に配置される。
【0087】
受光装置20のFPC241bは、一端がイメージセンサ回路基板241に接続され、また、もう一端が、後段の回路基板500(図7参照)に接続される。回路基板500には、図2に示すレーザ駆動回路22、CPU21等の情報取得装置1の回路部が実装されている。その後、ベースプレート300を外部から保護するカバー部材(図示せず)が装着され、情報取得装置1の組立が完了する。
【0088】
図7は、本実施の形態に係る情報取得装置1の構成を示す模式図である。図7は、図6に示す情報取得装置1を後側から見た図であり、発光装置10と受光装置20の内部が透視された状態となっている。
【0089】
図7を参照して、前述のごとく、発光装置10と受光装置20の設置間隔Daは、ある程度、広くなっている。また、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、リーケージミラー130がX軸方向に並んで配置されているため、DOE140の発光中心pから、レーザ光源110までの距離Laと、DOE140の発光中心pからFMD160までの距離Lbは、距離Laの方が大きくなりやすい。したがって、情報取得装置1の小型化のためには、本実施の形態のように、レーザ光源110が、受光装置20に近づく方向に配置されるほうが望ましい。
【0090】
この場合、ベースプレート300のX軸正方向の大きさは、DOE140の発光中心pからFMD160までの距離Lbによって決定される。したがって、ベースプレート300をX軸方向において、さらに小型化するためには、この距離Lbができるだけ小さいほうが望ましい。
【0091】
ここで、フィルタ150は、赤外光を吸収する染料等が含まれた樹脂材からなり、厚さDfの薄い形状である。このため、距離Lbを小さく抑えることができる。かかるフィルタ150に代えて、たとえば、ガラス製NDフィルタ(Neutral Density Filter)や、フィルタ150と同様の染料が含まれたガラス材等を用いることもできる。しかし、これらは、厚みが、フィルタ150と比べ、かなり大きくなるため、これらの部材を用いると、距離Lbが大きくなり、情報取得装置1の大型化につながる。
【0092】
また、フィルタ150は、樹脂材等に染料を混ぜ込むといった簡易な手法により製造することができるため、他のフィルタを用いるよりも、製造コストが安価である。
【0093】
したがって、本実施の形態のように、樹脂材にレーザ光源110の光を吸収する染料等
が混ぜ込まれたフィルタ150を用いることで、情報取得装置1の製造コストを抑えつつ、装置の大型化を抑えることができる。
【0094】
図8は、APC制御の処理を示す図である。図8の処理は、図2のAPC制御部21bによって行われる。
【0095】
図8(a)参照して、APC制御部21bは、レーザ制御部21aによるレーザ発光タイミングにおいて(S101:YES)、PD信号処理回路23より出力された受光量に応じたPD信号を取得する(S102)。そして、APC制御部21bは、取得したPD信号の値に基づき、FMD160の受光量が規定光量の範囲内にあるかを判定する(S103)。なお、規定光量は、レーザ光源110の適正発光量の上限値と下限値に対応する2つの閾値により規定され、これら2つの閾値が、あらかじめ、メモリ26に保持されている。
【0096】
受光量が規定光量内であれば(S103:YES)、APC制御部21bは、レーザ光源110から適正な発光量のレーザ光が出射されていると判断し、処理をS107に進める。他方、受光量が規定光量内でない場合(S103:NO)、APC制御部21bは、レーザ光源110からは、適正でない発光量のレーザ光が出射されていると判断し、受光量が規定光量よりも大きいかを判定する(S104)。
【0097】
受光量が規定光量よりも大きい場合(S104:YES)、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステップ減少させるための信号を出力する(S105)。これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ減少させる。これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ小さくなる。
【0098】
受光量が規定光量よりも小さい場合(S104:NO)、APC制御部21bは、レーザ制御部21aにレーザ光源110から発光されるレーザ光の発光量を1ステッ上昇させるための信号を出力する(S106)。これに応じて、レーザ制御部21aは、レーザ光源110の発光量を1ステップ上昇させる。これにより、レーザ光源110からの発光量が1ステップだけ大きくなる。
【0099】
その後、レーザ発光の終了タイミングであるかが判定され(S107)、レーザ発光の終了タイミングでない場合(S107:NO)、レーザ光源110の発光量の調節処理(S102〜S107)が繰り返される。レーザ発光の終了タイミングに到達すると(S107:YES)、APC制御部21bは、APC制御の処理を終了し、S101に戻って次の発光タイミングを待つ。
【0100】
図8(b)は、本実施の形態における時間の経過によるFMD160の検出信号の変化の例を模式的に示す図、図8(c)は、フィルタ150を配置しなかった場合の比較例における時間の経過によるFMD160の検出信号の変化の例を模式的に示す図である。図中、横軸は時間の経過、縦軸は、FMD160の検出信号(PD信号)の大きさを示している。ステップS103の規定光量の上限値としてS2、下限値としてS1が設定されている。また、Smは、FMD160が出力できる検出信号の限度値である。
【0101】
図8(b)を参照して、時間T1において、PD信号が、規定光量の下限値であるS1を下回っている。この場合、上記S106の処理により、レーザ光源110の発光量が引き上げられ、規定光量の範囲内に位置づけられる。
【0102】
時間T2、4においては、PD信号が規定光量の範囲内であるため、レーザ光源110
の光量制御は行われない。
【0103】
時間T3において、PD信号が規定光量の上限値であるS2を上回っている。この場合、上記S105の処理により、レーザ光源110の発光量が引き下げられ、規定光量の範囲内に位置づけられる。
【0104】
このようにして、レーザ光源110の出射光量は、規定光量の範囲内に保たれる。
【0105】
図8(c)を参照して、フィルタ150を配置しなかった場合、レーザ光源110からのレーザ光が減衰されることなく、大きな光量のレーザ光がFMD160に入射することとなる。この場合、FMD160からのPD信号が飽和することとなり、時間T1〜T4すべての区間において、FMD160の出力できるPD信号の限度値が出力される。したがって、実際は、図8(b)のようにレーザ光源110からの発光量に変化があったとしても、FMD160から出力されるPD信号からは光量の変化を読み取ることができず、適正にレーザ光源110の光量制御を行うことができない。
【0106】
このように、本実施の形態では、発光量の大きいレーザ光と、透過率の高いリーケージミラー130を用いたとしても、フィルタ150によってレーザ光の光量がFMD160の検出可能な範囲にまで減衰されるため、適正にレーザ光源110の光量制御を行うことができる。
【0107】
以上、本実施の形態によれば、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるよう投射光学系100が構成されているため、目標領域に向かう方向の発光装置10の高さを低くすることができる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、リーケージミラー130からFMD160に向かう光路中にフィルタ150が配されるため、透過率の高いリーケージミラー130を用いても、FMD160の検出信号が飽和することなく、適正にレーザ光源110の光量制御を行うことができる。
【0109】
さらに、本実施の形態によれば、光量調節部材として、樹脂材にレーザ光源110の光を吸収する染料等が混ぜ込まれたフィルタ150が用いられるため、情報取得装置1の製造コストを抑えつつ、装置の大型化を抑えることができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0111】
たとえば、上記実施の形態では、フィルタ150がリーケージミラー130とFMD160の間に、コリメータレンズ120の光軸に対して垂直となるように配置されたが、図9(a)に示すように、リーケージミラー130の背面にフィルタ150を装着し、フィルタ150とリーケージミラー130とが一体化されてもよい。また、この構成において、リーケージミラー130とフィルタ150が傾いて設置されることによってできる背部のスペースに、FMD160が配置されてもよい。この場合、DOE140の発光中心pからFMD160までの距離Lb’は、上記実施の形態と比べ、小さいものとなる。したがって、発光装置10および情報取得装置1をX軸方向においてさらに小型化することができる。
【0112】
なお、本実施の形態では、染料が混ぜ込まれたフィルタ150が用いられるため、光の入射角が変わってもフィルタ150のフィルタ特性は略変わらない。よって、図9(a)のように、フィルタ150は、レーザ光源110の光軸に対して傾くように配置されても
、フィルタ150によるレーザ光の減衰は、適正に行われ得る。
【0113】
また、上記実施の形態では、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路が折り曲げられるようにして発光装置10が構成されたが、図9(b)に示すように、レーザ光源110からDOE140までの光学素子が投射方向(Z軸方向)に並ぶように構成されてもよい。この場合、分光素子190は、透過率が高いものが用いられる。ただし、本発明は、上記実施の形態のように、レーザ光源110から出射されたレーザ光の光路を折り曲げることにより、投射光学系100の高さを抑える構成に用いて好ましいものである。すなわち、この構成では、高さ方向の薄型化が進むと、レーザ光源110のCAN110b内にバックモニタ用の光検出器を配せなくなる。本発明は、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を分光させる構成であるため、このようにレーザ光源110のCAN110b内にバックモニタ用の光検出器を配せないような光学系において、より効果を発揮するものである。
【0114】
また、上記実施の形態では、分光素子として、リーケージミラー130が用いられたが、偏光方向により分光する偏光ビームスプリッタや回折現象で分光する回折格子、回折光学素子等が用いられてもよい。これらの分光素子を用いる場合、FMD160に入射する光量が大きくなりやすいが、フィルタ150による遮光量を調節することで、FMD160の検出信号が飽和することなく、適正にレーザ光源の光量制御を行うことができる。
【0115】
また、上記実施の形態では、光量調節部材として、赤外光を吸収する染料がフィルタ150に混ぜ込まれたが、レーザ光源110の光量を減衰できれば、どのような波長帯域の光を吸収する材料が混ぜ込まれてもよいし、また、複数種類の材料が混ぜ込まれてもよい。
【0116】
また、フィルタ150に代えて、バンドパスフィルタ等の光干渉型のフィルタが用いられてもよい。この場合、フィルタ150を用いる場合に比べて、発光装置10および情報取得装置1が、X軸方向においてやや大きくなる。
【0117】
また、フィルタ150の設置位置、設置角度は、リーケージミラー130とFMD160の間であれば、上記実施の形態および変更例の設置位置、設置角度のほか、どのような位置、角度で配置されてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態では、フィルタ150は、樹脂材が用いられ、平板状に形成されたが、どのような材料が用いられ、また、どのような形状であってもよい。
【0119】
さらに、上記実施の形態では、ベースプレート300に段差305が形成されたが、段差が形成されてなくてもよい。また、受光装置20は、ベースプレート300の背面に取り付けられたが、発光装置10と同様に、ベースプレート300の上面に設置されてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、受光素子として、CMOSイメージセンサ240を用いたが、これに替えて、CCDイメージセンサを用いることもできる。さらに、投射光学系100および受光光学系200の構成も、適宜変更可能である。また、情報取得装置1と情報処理装置2は一体化されてもよいし、情報取得装置1と情報処理装置2がテレビやゲーム機、パーソナルコンピュータと一体化されてもよい。
【0121】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 … 情報取得装置
10 … 発光装置
20 … 受光装置
21a … レーザ制御部
21b … APC制御部(レーザ制御部)
110 … レーザ光源
120 … コリメータレンズ
130 … リーケージミラー(分光素子)
140 … DOE(回折光学素子)
150 … フィルタ(光量調節部材、光吸収板)
160 … FMD(光検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置において、
目標領域に所定のドットパターンでレーザ光を投射する発光装置と、
前記発光装置に対して所定の距離だけ横方向に離れて並ぶように配置され、前記目標領域を撮像する受光装置と、を備え、
前記発光装置は;
所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズと、
前記コリメータレンズを透過した前記レーザ光を分岐させる分光素子と、
前記分光素子によって分光された第1のレーザ光を目標領域において所定のドットパターンを有するレーザ光に変換して前記目標領域に投射する回折光学素子と、
前記分光素子によって分光された第2のレーザ光を受光して受光量に応じた検出信号を出力する光検出器と、
前記分光素子と前記光検出器との間に配置され、前記光検出器に到達する前記第2のレーザ光の光量を減衰させる光量調節部材と、
前記光検出器の前記検出信号に基づいて、前記レーザ光源の発光量を制御するレーザ制御部と、を有する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報取得装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光の一部を反射させて前記回折光学素子に導くとともに、前記レーザ光の一部を透過させ前記光量調節部材に導き、
前記レーザ光源、前記コリメータレンズおよび前記分光素子が直線状に並び、且つ、前記回折光学素子が前記目標領域に対向するように、前記レーザ光源、前記コリメータレンズ、前記分光素子、前記光量調節部材、前記光検出器および前記回折光学素子が配される、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報取得装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光源の光軸に対して傾くように配置されたリーケージミラーであり、
前記光量調節部材は、前記リーケージミラーの前記光検出器側の面に装着されている、ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の情報取得装置において、
前記光量調節部材は、少なくとも前記レーザ光源の前記波長の光を吸収する光吸収材を含有する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報取得装置において、
前記光量調節部材は、前記光吸収材を含有した平板状の樹脂材からなる光吸収板である、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の情報取得装置を有する物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11511(P2013−11511A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144249(P2011−144249)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】