説明

窒化物電子デバイス、窒化物電子デバイスを作製する方法

【課題】チャネル層のキャリア濃度が増大することを避けてリークを低減できる構造を有する、窒化物電子デバイスを提供する。
【解決手段】半導体積層15の斜面15a及び主面15cは、それぞれ、第1及び第2の基準面R1、R2に対して延在する。半導体積層15の主面15cは六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸Cxに対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜すると共に、第1の基準面R1の法線と基準軸Cxとの成す角度は第2の基準面R2の法線と基準軸Cxとの成す角度より小さいので、チャネル層19の酸素濃度を1×1017cm−3未満にすることができる。これ故に、チャネル層19において、酸素添加によりキャリア濃度が増加することを避けることができ、チャネル層を介したトランジスタのリーク電流を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物電子デバイス、及び窒化物電子デバイスを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置が記載されている。この半導体装置は、ピンチオフ特性を改善し、またはチャネル層の移動度を向上させ電気的特性の良好な半導体装置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、窒化物電子デバイスは、基板上に形成される半導体領域を含む。半導体領域は、その主面には開口部を有する層を備える。半導体領域の主面及びの開口部の側面には、チャネル層及びキャリア供給層が再成長される。キャリア供給層はチャネル層上に形成されて、これらはヘテロ接合を形成する。ゲート電極は、キャリア供給層の開口部の側面に形成される。ソース電極は、半導体領域の主面上に形成される。
【0005】
上記のように、チャネル層は、半導体積層の主面及びの開口部の側面に成長される。チャネル層はアンドープ窒化ガリウム系半導体からなり、この半導体層を半導体積層の主面及びの開口部の側面に成長するとき、主面と斜面の面方位が異なるので、半導体領域の主面への成長は開口部の側面への成長と異なる。半導体積層がc面基板上に形成されるとき、半導体領域の成長がc面基板上にほぼ平坦に成長されて、半導体領域主面もまた平坦面(実質的にc面)になる。
【0006】
この半導体領域に先のように開口を形成した後に、半導体積層の主面及びの開口部の側面に成長するとき、チャネル層の成長の初期において、主面における成長面は、C面又はその微斜面から構成される。このような成長面では、窒化ガリウム系半導体の成長において原料の取り込みが制限される。平坦面に取り込まれなかったIII族原子は、半導体領域に主面から開口側面に到達し、そこで多くの原子が取り込まれる。従って、開口側面(平坦面に対して傾斜する斜面)における成長では、C面に対して垂直方向の成長速度が極端に大きくなり、このエピタキシャル成長時には、その成長方向に起因して、より多くの酸素が開口側面上への成長において取り込まれる。この酸素取込みは、アンドープのチャネル層の成長において生じるので、酸素添加により電子キャリアがチャネル層に生成される。これは、トランジスタのドレインリークの原因となる。
【0007】
低い成長温度でチャネル層を成長することにより、C軸垂直方向の成長を抑制することができる。成長温度を下げることにより、C面への原料の取り込みを促進でき、結果として半導体積層の側面(斜面)への取り込みを相対的に低減できる。
【0008】
キャリア供給層の結晶性の視点からチャネル層に比べてキャリア供給層の最適な成長温度は高い。これ故に、チャネル層の成長温度の低減は、チャネル層の成長温度からキャリア供給層の成長温度への遷移期間を長くすることになる。この成長中断期間の増大により、高温雰囲気中に晒されているチャネル層の表面において物質の移動が生じて、開口側面に成長されるチャネル層表面の形状が、下地の半導体領域の形状から変形により崩れてしまう。したがって、酸素取り込みの低減のために成長温度を下げることには制約がある。
【0009】
一方で、遷移期間を短縮して成長中断時間を短くすると、基板温度が十分に安定する前にキャリア供給層の成長が介しされるので、キャリア供給層の結晶性の低下やヘテロ界面の急峻性の低下が生じる。これは、デバイスのオン抵抗増加を招く。
【0010】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、チャネル層のキャリア濃度の増大に起因するリークを低減できる、窒化物電子デバイスを作製する方法を提供することを目的とし、また、チャネル層のキャリア濃度が増大することを避けてリークを低減できる構造を有する、窒化物電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係る発明は、窒化物電子デバイスを作製する方法である。この方法は、(a)基板の主面上に半導体積層を成長する工程と、(b)前記半導体積層上にマスクを形成する工程と、(c)前記マスクを用いて前記半導体積層をエッチングして、前記半導体積層の主面に対して斜面を有する開口を前記半導体積層の前記主面に形成する工程と、(d)前記マスクを除去した後に、アンモニア及びIII族元素原料を含む原料ガスを成長炉に供給することによって前記半導体積層の前記主面及び前記斜面上に、チャネル層を第1の成長温度で成長する工程とを備える。前記基板の前記主面は六方晶系III族窒化物からなり、前記半導体積層は、第1の窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層、第2の窒化ガリウム系半導体からなる電流ブロック層、及び第3の窒化ガリウム系半導体からなるコンタクト層を含み、前記チャネル層は、アンドープ窒化ガリウム系半導体を含み、前記半導体積層の前記斜面及び前記主面は、それぞれ、第1及び第2の基準面に沿って延在し、前記半導体積層の前記主面の法線ベクトルは、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、前記第1の基準面の法線ベクトルと前記基準軸との成す角度は前記第2の基準面の法線と前記基準軸との成す角度より小さい。
【0012】
この作製方法によれば、c軸に対する傾斜角の違いに応じて半導体積層主面への成長と半導体積層斜面上への成長とに違いがある。しかし、半導体積層の主面は、上記の基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、第1の基準面(半導体積層の斜面が延在する面)の法線ベクトルと基準軸(c軸)との成す角度は第2の基準面(半導体積層の主面が延在する面)の法線ベクトルと基準軸(c軸)との成す角度より小さい。これ故に、半導体積層の斜面における成長が、半導体積層の主面に比べてよりc面に近くなる。したがって、半導体積層の斜面における成長において、酸素取込みの程度を低減できる。酸素添加によりチャネル層のキャリア濃度が増大することを避けることができ、トランジスタのチャネルリークを低減できる。
【0013】
本発明の別の側面に係る窒化物電子デバイスは、(a)六方晶系III族窒化物からなり、該六方晶系III族窒化物のc軸に対して5度以上40度以下の範囲で傾斜した主面を有する支持基体と、(b)前記支持基体の前記主面上に順に設けられたドリフト層、電流ブロック層及びコンタクト層を含むと共に、前記コンタクト層から前記電流ブロック層を介して前記ドリフト層に至る開口を有する半導体積層と、(c)前記開口の側面に設けられ、窒化ガリウム系半導体を含むチャネル層と、(d)前記開口の前記側面に設けられ、III族窒化物を含むキャリア供給層と、(e)前記開口の前記側面に設けられたゲート電極と、(f)前記半導体積層の主面上に設けられたソース電極と、(g)前記半導体積層及び前記支持基体のいずれかに設けられドレイン電極とを備える。前記チャネル層の酸素濃度は1×1017cm−3未満であり、前記半導体積層の前記側面及び前記主面は、それぞれ、第1及び第2の基準面に対して延在し、前記半導体積層の前記主面の法線ベクトルは、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に直交する面に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、前記第1の基準面の法線と前記基準軸との成す角度は前記第2の基準面の法線と前記基準軸との成す角度より小さく、前記ドリフト層は、第1の窒化ガリウム系半導体からなり、前記電流ブロック層は、第2の窒化ガリウム系半導体からなり、前記コンタクト層は、第3の窒化ガリウム系半導体からなり、前記チャネル層は前記キャリア供給層と前記開口の前記側面との間に設けられ、前記キャリア供給層の前記III族窒化物のバンドギャップは、前記チャネル層の前記窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きい。
【0014】
この窒化物半導体素子によれば、半導体積層の斜面及び主面は、それぞれ、第1及び第2の基準面に対して延在すると共に、半導体積層の主面の法線ベクトルは六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。第1の基準面の法線ベクトルと基準軸との成す角度は第2の基準面の法線と基準軸との成す角度より小さいので、チャネル層の酸素濃度を1×1017cm−3未満にすることができる。酸素添加によりチャネル層のキャリア濃度が増大することを避けることができ、トランジスタのチャネルリークを低減できる。
【0015】
本発明の一側面は、(e)前記チャネル層を成長した後に、前記第1の成長温度から第2の成長温度に基板温度を上昇する工程と、(f)前記チャネル層上にキャリア供給層を前記第2の成長温度で成長して、基板生産物を形成する工程とを備えることができる。前記キャリア供給層はIII族窒化物半導体を含み、前記キャリア供給層の前記III族窒化物半導体のバンドギャップは、前記チャネル層の前記窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きく、前記チャネル層は、前記半導体積層の前記斜面上に成長された第1の部分と、前記半導体積層の前記主面上に成長された第2の部分とを含み、前記キャリア供給層は、前記チャネル層の前記第1の部分上に成長された第1の部分と前記チャネル層の前記第2の部分上に成長された第2の部分とを含み、前記キャリア供給層の前記第1の部分は第2の基準面に対して傾斜し、前記第2の基準面の法線ベクトルは、前記第1の窒化ガリウム系半導体のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。
【0016】
本発明の一側面によれば、第2の基準面の法線ベクトルが第3の窒化ガリウム系半導体のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。このため、チャネル層を半導体積層の斜面に成長する際に、チャネル層の成長温度を下げることなく、酸素取込みの程度を低減できる。また、チャネル層の成長温度を下げることなく成長するので、第1の成長温度から第2の成長温度に基板温度を上昇する期間が長くならない。これ故に、温度上昇中にチャネル層の表面における原子の移動を低減でき、チャネル層表面の変形を避けることができる。
【0017】
また、第1の成長温度から第2の成長温度に基板温度を上昇する期間を長くすることなく、基板温度が、第2の成長温度に十分に安定させることができる。基板温度が第2の成長温度に十分に安定した後に、チャネル層とキャリア供給層とのヘテロ界面が形成される。これ故に、低い品質のヘテロ界面の形成を避けることができる。
【0018】
本発明の一側面及び別の側面は、前記チャネル層の前記第1の部分の酸素濃度は1×1017cm−3未満であることが好適である。この作製方法によれば、チャネル層における酸素濃度に起因したトランジスタリークを低減できる。
【0019】
本発明の一側面及び別の側面は、前記半導体積層の前記斜面は、前記基準軸に直交する面に対して−10度より大きく+10度未満の範囲の角度を成すことが好適である。本発明の一側面及び別の側面によれば、半導体積層の斜面が上記の角度範囲にあれば、チャネル層の厚さの不均一を低減できる。
【0020】
本発明の一側面及び別の側面は、前記基板生産物を取り出した後に、前記キャリア供給層上にゲート電極を形成する工程を更に備えることができる。前記開口の前記斜面は、前記ドリフト層の側面、前記電流ブロック層の側面、及び前記コンタクト層の側面を含み、前記電流ブロック層の前記側面は、前記半導体積層の前記主面上に成長された第2の部分に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。前記ゲート電極は前記電流ブロック層の前記側面上に設けられる。
【0021】
本発明の一側面及び別の側面によれば、電流ブロック層の側面の法線が基準軸に対して5度以上の角度で傾斜するので、チャネル長の増大によるオン抵抗の増加を避けることができる。一方、C軸を基準にして基板結晶方位を40度以下の角度でかつ電流ブロック層の法線ベクトルを40度以下に設定すると、RIEによる開口部形成以前の下地エピタキシャル成長において成長表面の窒素による酸素の混入を低減でき、また、チャネル層と電流ブロック層とのpnダイオード耐圧が、電流ブロック層におけるアクセプタ補償、及びチャネル層の過剰ドナーの両影響により低下することを防ぐことができる。
【0022】
本発明の一側面及び別の側面は、前記半導体積層上に前記マスクを形成する前記工程として、前記半導体積層上に塗布されたレジストに前記開口を規定するエッジを有するパターンを形成する工程と、前記パターン形成されたレジストに熱処理を行って、前記エッジに傾斜面を形成して前記マスクを形成する工程とを含むことができる。前記エッチングでは、ドライエッチングにより前記マスク及び前記半導体積層をエッチングする。
【0023】
本発明の一側面及び別の側面によれば、マスクが、パターン形成されたレジストに熱処理を行ってエッジに傾斜面を形成することによって形成されるので、開口の傾面の角度の調整が容易になる。
【0024】
本発明の一側面及び別の側面では、前記基板は導電性の自立III族窒化物基板からなり、前記自立III族窒化物基板の主面の法線は、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に直交する面に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。当該方法は、前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程を更に備えることができる。
【0025】
本発明の一側面及び別の側面によれば、自立III族窒化物基板の主面が上記の角度範囲内の角度で傾斜するので、半導体積層の主面及び斜面の形成が容易になる。
【0026】
本発明の一側面及び別の側面は、前記ドリフト層の前記第1の窒化ガリウム系半導体、前記電流ブロック層の前記第2の窒化ガリウム系半導体、及び前記コンタクト層の第3の窒化ガリウム系半導体は、n型GaN/p型GaN/n型GaN、及びn型GaN/p型AlGaN/n型GaNのいずれかであることが好適である。本発明の一側面及び別の側面によれば、ドリフト層、電流ブロック層及びコンタクト層の好適な組み合わせが提供される。
【0027】
本発明の一側面及び別の側面では、前記チャネル層及び前記キャリア供給層の材料は、InGaN/AlGaN、GaN/AlGaN、及びAlGaN/AlNのいずれかであることができる。本発明の一側面及び別の側面では、チャネル層及びキャリア供給層の好適な組み合わせが提供される。
【0028】
本発明の一側面及び別の側面は、前記基板生産物を取り出した後に、前記半導体積層の前記主面上にソース電極を形成する工程を更に備えることができる。前記ソース電極は、前記電流ブロック層及び前記コンタクト層に電位を供給し、前記チャネル層と前記キャリア供給層とは接合を成し、前記接合には二次元電子ガス層が形成され、前記ソース電極は、前記チャネル層を流れるキャリアを供給することができる。本発明の一側面及び別の側面によれば、ソース電極が電流ブロック層及びコンタクト層に電位を供給するので、電流ブロック層がチャネル層のバックゲートとして働く。
【0029】
本発明の一側面及び別の側面は、前記キャリア供給層の前記第1の部分に接合を成すゲート電極を形成する工程を更に備えることができる。本発明の一側面及び別の側面によれば、半導体にショットキ接合を成すゲート電極を用いてチャネルキャリアを制御するトランジスタを提供できる。
【0030】
本発明の一側面及び別の側面は、前記キャリア供給層の前記第1の部分上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを更に備えることができる。前記ゲート電極は前記ゲート絶縁膜に接合を成す。本発明の一側面及び別の側面によれば、絶縁膜を介してチャネルキャリアを制御するゲート電極を有するトランジスタを提供できる。
【0031】
本発明の一側面及び別の側面では、前記ドリフト層の前記第1の窒化ガリウム系半導体はSiドープn型GaNであり、前記ドリフト層の膜厚は1μm以上10μm以下であり、前記第1の窒化ガリウム系半導体のSi濃度は1×1015cm−3以上3×1016cm−3以下であり、前記電流ブロック層の前記第2の窒化ガリウム系半導体はMgドープp型GaNであり、前記電流ブロック層の膜厚が0.1μm以上2.0μm以下であり、前記第2の窒化ガリウム系半導体のMg濃度は5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下であり、前記コンタクト層の前記第3の窒化ガリウム系半導体はSiドープn型GaNであり、前記コンタクト層の膜厚が0.1μm以上1.0μm以下であり、前記第3の窒化ガリウム系半導体Si濃度は、1×1016cm−3以上であることは好適である。本発明の一側面及び別の側面によれば、半導体積層が上記の値を有する窒化ガリウム系半導体を含むとき、好適なトランジスタ特性が提供される。
【0032】
本発明の一側面及び別の側面では、前記キャリア供給層はAlGa1−XN(0<X<1)を含み、前記キャリア供給層の膜厚が5nm以上40nm以下であり、前記チャネル層はアンドープGaNを含み、前記チャネル層の膜厚が20nm以上400nm以下であることができる。本発明の一側面及び別の側面によれば、キャリア供給層及びチャネル層は、ゲート電極と電流ブロック層との間において上記の値を持つとき、好適なトランジスタ特性が提供される。
【0033】
本発明の一側面及び別の側面に係る窒化物電子デバイスでは、前記半導体積層の前記側面は、前記基準軸に直交する面に対して−10度より大きく+10度未満の範囲の角度を成すことができる。この窒化物電子デバイスよれば、半導体積層の側面が上記の角度範囲にあれば、チャネル層の厚さの均一性を向上できる。
【0034】
本発明の一側面及び別の側面に係る窒化物電子デバイスでは、前記ゲート電極は前記キャリア供給層に接合を成すことができる。ゲート電極と電流ブロック層との間に前記キャリア供給層及びチャネル層が設けられる。本発明の一側面及び別の側面によれば、半導体にショットキ接合を成すゲート電極を用いてチャネルキャリアを制御するトランジスタを提供できる。
【0035】
或いは、本発明の一側面及び別の側面に係る窒化物電子デバイスは、前記キャリア供給層上に設けられたゲート絶縁膜を更に備えることができる。前記ゲート電極は前記ゲート絶縁膜に接合を成す。ゲート絶縁膜と電流ブロック層との間に前記キャリア供給層及びチャネル層が設けられる。本発明の一側面及び別の側面によれば、絶縁膜を介してチャネルキャリアを制御するゲート電極を有するトランジスタを提供できる。
【0036】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、チャネル層のキャリア濃度の増大に起因するリークを低減できる、窒化物電子デバイスを作製する方法が提供される。また、本発明の別の側面によれば、チャネル層のキャリア濃度が増大することを避けてリークを低減できる構造を有する、窒化物電子デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタの構造を示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を含む工程フローを示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、開口部の側面の傾斜とチャネル層厚の均一性とを説明する図面である。
【図8】図8は、チャネル層及びキャリア供給層を成長する再成長温度シーケンスを示す図面である。
【図9】図9は、物理的に形成された下地面における結晶の再成長機構を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の窒化物電子デバイス、窒化物電子デバイスを作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0040】
図1は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタの構造を示す図面である。ヘテロ接合トランジスタ11は、導電性の支持基体13と、半導体積層15と、チャネル層19と、キャリア供給層21と、ゲート電極23とを備える。支持基体13は、半極性を示す主面13a及び裏面13bを有し、この主面13aは六方晶系のIII族窒化物からなる。主面13aは、該六方晶系III族窒化物のc軸の方向に延在する基準軸Cx(c軸ベクトルCV)に対して5度以上40度以下の範囲で傾斜しており、これ故に、主面13aの法線軸(法線ベクトルNV)Nxは、基準軸Cxに対して上記の角度で傾斜している。半導体積層15は開口部16を有し、この開口部16は支持基体13の主面13aから離れた底部16bを有する。開口部16は、半導体積層15に形成されたメサ、凹部又は溝により規定される。チャネル層19は、窒化ガリウム系半導体からなり、また半導体積層15の開口部16内に設けられる。キャリア供給層21は、III族窒化物からなり、また半導体積層15の開口部16内に設けられると共に開口部16内のチャネル層19に沿って延在する。
【0041】
キャリア供給層21のIII族窒化物のバンドギャップはチャネル層19の窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きい。ゲート電極23はキャリア供給層21上に設けられ、開口部16内においてキャリア供給層21はチャネル層19とゲート電極23との間に位置する。ゲート電極23は開口部16の側面16a上に設けられ、チャネル層19のキャリア伝導を制御する。チャネル層19とキャリア供給層21とはヘテロ接合20を成す。ゲート電極23は、ヘテロ接合20に沿った二次元電子ガスの生成を制御する。
【0042】
半導体積層15は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含むドリフト層25、第2導電型窒化ガリウム系半導体層を含む電流ブロック層27、及び第1導電型窒化ガリウム系半導体層を含むコンタクト層29を含む。ドリフト層25は、例えばSiドープn型半導体であり、また基板13の主面13a上に設けられる。電流ブロック層27は、例えばp導電性を有し、またコンタクト層29とドリフト層25との間に設けられる。コンタクト層29は、電流ブロック層27と支持基体13との間に設けられ、コンタクト層29は、例えばn導電性半導体であることができる。半導体積層15はnpn構造の構成を含む。
【0043】
ドリフト層25は、半導体積層16の開口部16の側面16a及び底面16bに位置する端面25aを有する。電流ブロック層27は、半導体積層15の開口部16の側面16aに位置する端面27aを有する。コンタクト層29は、半導体積層15の開口部16の側面16aに到達する端面29aを有する。チャネル層19は、ドリフト層25の端面25a及び上面25d、電流ブロック層27の端面27a並びにコンタクト層29の端面29a上に設けられる。
【0044】
半導体積層15の斜面15a及び主面15cは、それぞれ、第1及び第2の基準面R1、R2に対して延在する。半導体積層15の主面15cは六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸Cxに対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。第1の基準面R1の法線と基準軸Cxとの成す角度は第2の基準面R2の法線と基準軸Cxとの成す角度より小さい。チャネル層19は、半導体積層15の斜面15a上に設けられた部分を有する。この部分は、ゲート電極23と電流ブロック層27の端面27aとの間に位置し、その酸素濃度は1×1017cm−3未満である。
【0045】
このヘテロ接合トランジスタ11によれば、半導体積層15の斜面15a及び主面15cは、それぞれ、第1及び第2の基準面R1、R2に対して延在する。半導体積層15の主面15cは六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸Cxに対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜すると共に、第1の基準面R1の法線と基準軸Cxとの成す角度は第2の基準面R2の法線と基準軸Cxとの成す角度より小さいので、チャネル層19の酸素濃度を1×1017cm−3未満にすることができる。これ故に、チャネル層19において、酸素添加によりキャリア濃度が増加することを避けることができ、チャネル層を介したトランジスタのリーク電流を低減できる。
【0046】
このヘテロ接合トランジスタ11では、半導体積層15の斜面15aは、基準軸Cxに直交する面に対して−10度より大きく+10度未満の範囲の角度を成すことが好適である。半導体積層15の斜面15aが上記の角度範囲にあれば、所望の特性(例えば、キャリア濃度)を有するチャネル層を形成できると共に、チャネル層厚の均一性が良好になる。
【0047】
好適な実施例では、図1に示されるように、開口部15の側面15aは、c軸に直交又はほぼ直交する平面に沿って設けられている。図1においては、結晶座標系CRが示されており、基準軸Cxはc軸の方向を示している。m面は結晶座標系CRのm軸に直交する面であり、a面は結晶座標系CRのa軸に直交する面である。開口部16の側面16aは、III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共にIII族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成す。これらの角度は、それぞれの面における法線動詞の成す角度として規定される。この定義に基づくとき、第3の角度は第1の角度よりも小さく、第3の角度は第2の角度よりも小さい。
【0048】
ヘテロ接合トランジスタ11は、コンタクト層25に直接に接続されたソース電極31を更に備えることができる。ソース電極31は電流ブロック層にキャリアを供給するように接続されている。ソース電極31がコンタクト層25だけでなく、電流ブロック層27にも電気を供給するとき、電流ブロック層27の電位はソース電極31を用いて印加されて、これが背面バイアスとなる。これは、ヘテロ接合トランジスタ11にノーマリオフ動作をさせるために好適である。
【0049】
ヘテロ接合トランジスタ11では、支持基体13の裏面13bに設けられたドレイン電極33を更に備えることができる。ドレイン電極33が支持基体13の裏面13bに設けられるので、ドレイン電極33をゲート電極23から隔てることができる。
【0050】
コンタクト層29の第1の面29bは、チャネル層19と接合を成す。コンタクト層29の第2の面29cは、電流ブロック層27の第1の面27bと接合を成す。ドリフト層29の第1の面29bは、電流ブロック層27の第2の面27cと接合を成す。ドリフト層29の第2の面29cは、支持基体13の主面13aと接合を成す。
【0051】
開口部16の側面16aでは、チャネル層19の裏面は、ドリフト層29の端面29aと接合を成す。また、チャネル層19の裏面は、ドリフト層25の端面25aと接合を成す。チャネル層19の裏面は、及び電流ブロック層27の端面27aと接合を成す。
【0052】
ヘテロ接合トランジスタ11では、支持基体13はn型GaNからなり、ドリフト層25はアンドープGaNからなり、電流ブロック層27はp型GaNからなり、及びコンタクト層29はn型GaNからなり、チャネル層19はアンドープGaNからなり、キャリア供給層21はAlGaNからなることができる。
【0053】
ゲート電極23は、キャリア供給層21にショットキ接合を成すことができる。ゲート電極23と電流ブロック層27の端面27aとの間にキャリア供給層21及びチャネル層19が設けられる。この実施例は、半導体にショットキ接合を成すゲート電極23を用いてチャネルキャリアを制御するトランジスタを提供できる。
【0054】
或いは、ヘテロ接合トランジスタ11は、キャリア供給層21上に設けられたゲート絶縁膜を更に備えることができる。このゲート絶縁膜にゲート電極23は接合を成すことができる。キャリア供給層21及びチャネル層19がゲート絶縁膜と電流ブロック層27の端面27aとの間に設けられる。この実施例においては、絶縁膜を介してチャネルキャリアを制御するゲート電極23を有するトランジスタを提供できる。
【0055】
ヘテロ接合トランジスタ11の一実施例を以下に示す。
支持基体13:n型GaN(電子濃度:1×1019cm−3)。
チャネル層19:アンドープGaN(電子濃度:1×1016cm−3、厚さ:30nm)。
キャリア供給層21:アンドープAlGaN(厚さ:30nm、Al組成比0.25)。
ドリフト層25:Siドープn型GaN(電子濃度:1×1016cm−3、厚さ:5μm)。
電流ブロック層27:Mgドープp型GaN(正孔濃度:1×1018cm−3、厚さ:0.5μm)。
コンタクト層29:Siドープn型GaN(電子濃度:1×1018cm−3、厚さ:0.3μm)。
このヘテロ接合トランジスタによれば、実用的な構造の一例が提供される。
【0056】
また、ドリフト層25の膜厚は1μm以上10μm以下であり、ドリフト層25の窒化ガリウム系半導体のSi濃度は1×1015cm−3以上3×1016cm−3以下であることができる。電流ブロック層27の膜厚が0.1μm以上2.0μm以下であり、電流ブロック層27の窒化ガリウム系半導体のMg濃度は5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下であることができる。コンタクト層29の膜厚が0.1μm以上1.0μm以下であり、コンタクト層29の窒化ガリウム系半導体のSi濃度は、1×1016cm−3以上であることは好適である。半導体積層15が、上記の値を有する窒化ガリウム系半導体を含むとき、好適なトランジスタ特性が提供される。
【0057】
さらに、キャリア供給層21はAlGa1−XN(0<X<1)を含むことができ、キャリア供給層21の膜厚が5nm以上40nm以下であることができる。チャネル層19はアンドープGaNを含むことができ、チャネル層19の膜厚が20nm以上400nm以下であることができる。キャリア供給層21及びチャネル層19は、ゲート電極23と電流ブロック層27との間において上記の値を持つとき、好適なトランジスタ特性が提供される。
【0058】
ヘテロ接合トランジスタ11の動作を説明する。ヘテロ接合トランジスタ11の導通及び非導通は、ゲート電極23に印加される電圧により制御される。ヘテロ接合トランジスタ11が非導通であるとき、ヘテロ接合トランジスタ11のソース電極31及びドレイン電極33の間に電流は流れない。ヘテロ接合トランジスタ11が導通であるとき、ソース電極31からキャリアがコンタクト層29に流れ込む。コンタクト層29からチャネル層19にキャリアが流れ込む。ゲートバイアスにおかげで二次元電子ガスチャネルが形成されているので、キャリアは、ゲート電極直下のチャネルを通過する。チャネルを通過したキャリアは、ドレインバイアスに引かれて、チャネル層19からドリフト層25に流れ込む。さらに、ドリフト層25を走行したキャリアは、支持基体13を介してドレイン電極33に到達する。
【0059】
有用な形態では、ドリフト層25の端面25aは、この半導体層25のc面を含むことが良い。また、電流ブロック層27の端面27aは、この半導体層27のc面を含むことが良い。さらに、コンタクト層29の端端面29aは、この半導体層29のc面を含むことが良い。c面及びc面に近い微傾斜面にすれば、開口部16の側面16a上への半導体層の成長の際に、酸素といった不純物の取り込みを低減できる。
【0060】
図2は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を含む工程フローを示す図面である。図3〜図6は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【0061】
工程S101では、III族窒化物半導体の半極性を示す主面51aを有する導電性基板(図3の(a)部では、基板は参照番号「51」として参照される)を準備する。例えば、導電性基板51として、III族窒化物半導体基板を用いることができる。III族窒化物半導体基板は、例えばGaN、AlN等からなることができる。導電性基板51の主面51aは、後の工程で形成される開口の側面に所望の面方位を提供できるように選択される。主面51aの傾斜角は、基板のc軸の方向を示す基準軸Cx(ベクトルCV)に対して5度以上40度以下の範囲である。
【0062】
工程S102では、III族窒化物半導体基板51を成長炉10aに配置した後に、図3の(a)部に示されるように、III族窒化物半導体基板51の熱クリーニングを行う。熱クリーニングは、例えばアンモニア及び水素を含む雰囲気においてIII族窒化物半導体基板51の熱処理によって行われる。熱処理は、例えば10分間程度である。また、熱処理温度は、例えば摂氏1030度程度である。炉内圧力は例えば100Torrである。
【0063】
工程S103では、図3の(b)部に示されるように、基板51の主面51aに半導体積層53を成長して、エピタキシャル基板Eを形成する。半導体積層53の形成では、第1導電型窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層55、第2導電型窒化ガリウム系半導体からなる電流ブロック層57、及び第1導電型窒化ガリウム系半導体のためのコンタクト層59を基板51の主面51a上に順に成長する。この成長は、例えば有機金属気相成長法で行われる。ドリフト層55は、例えば厚さ5μmのSiドープn型GaNからなり、電流ブロック層57は例えば厚さ0.5μmのMgドープp型GaNからなり、及びコンタクト層59は例えば厚さ0.2μmのSiドープn型GaNからなる。このとき、半導体積層53の厚さは5.7μmである。半導体積層53における接合61a、61bの各々も、基板51の主面51aの面方位と同じ面方位を示す。
【0064】
工程S104でが、エッチング条件の適正化のために半導体積層53及び/又は基板51のX線回折の測定を行って、主面51a及び/又は53aの面方位を見積もることができる。X線回折の測定結果を用いて、エッチング条件等を調整を行って、半導体積層53に所望の開口を形成できる。
【0065】
エピタキシャル基板Eを成長炉10aから取り出した後に、工程S104では、半導体積層53の主面53a上にマスクを形成する。まず、図4の(a)部に示されるように、工程S105−1では、半導体積層53の主面53a上にレジストを塗布してレジスタ膜60を形成する。レジスト膜60の膜厚は例えば1μm〜5μmであることができる。工程S105−2では、フォトリソグラフィ法を用いてレジスト膜60にパターン形成して、図4の(b)部に示されるように、パターン形成されたレジスト層62を形成する。このパターンは、開口部の形状を規定する。レジスト層62は、現像により形成された側面62a及び上面62bを含む。工程S105−3では、パターン形成されたレジスト層62をベークして、図4の(c)部に示されるように、ベークされたパターン形成されたレジスト層、つまりマスク63を形成する。マスク63は、傾斜した側面63a及び上面63bを含む。マスク63の傾斜した側面63aは、実際には平坦な平面ではない。主面53aにおける傾斜した側面63aの基点とレジストの平坦な上面のエッジとを結ぶ線分の傾斜は、ベーク前に比べてベークにより大きくなる。ベーク時間は、レジストの種類や厚さに依存するが、例えば窒素雰囲気で摂氏90度、5分であることができる。マスク63は、半導体積層53に形成される開口の形状及び位置を規定する開口63cを有する。
【0066】
フォトリソグラフィ法でマスク63を形成した後に、工程S106では、図5の(a)部に示されるエッチング装置10bにエピタキシャル基板Eを配置する。この装置10b及びマスク63を用いて半導体積層53のドライエッチングを行う。このドライエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE)であることができる。エッチャントとして不活性ガス及び塩素系エッチャント(Clガス)を含むエッチャントを使用できる。不活性ガスとして、例えばアルゴン、ネオン、窒素等を用いることができる。マスク63を用いたドライエッチングにより、半導体積層53に開口65が形成される。開口形成の結果として、開口65を含む半導体積層53bが形成される。エッチングでは、マスク63の傾斜側面63aは、エッチングが進むに従い削られて、平坦な上面63bのエッジが後退していく。また、エッチング中に、マスク63の側面63aの傾斜が半導体積層53の開口65の側面の形状に転写されていく。上記の方法は、半導体積層53の開口65の側面を傾斜させる一方法であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
開口65は、表面53aのコンタクト層59からドリフト層55に到達する。開口65は側面65d及び底面65eによって規定される。開口65の側面65d及び底面65eには、ドリフト層55の側面55a及び上面55b、電流ブロック層57の側面57a、及びコンタクト層59の側面59aが現れている。開口65の底面65eには、ドリフト層55の上面55bが現れている。
【0068】
工程S107では、図5の(b)部に示されるように、マスク63が除去される。この結果、基板生産物SP1が形成される。基板生産物SP1では、開口65は、第1〜第3部分65a、65b、65cを有する。第1の部分65aでは、ドリフト層55の上面55b(底面65e)が露出している。第2の部分65bでは、開口65の側面65dが、ドリフト層55の上面55bから半導体積層53bの表面53aまで傾斜して延在する。第3の部分65cでは、半導体積層53bの表面53a(コンタクト層59の表面)が露出している。
【0069】
図5の(b)部では、単一の開口65が描かれているけれども、基板51には多数の開口が配列されている。これ故に、半導体積層53bは、開口63の形状に応じて、メサ形状、或いは凹部(例えば溝)を含む形状を成す。側面65dは、基板51の主面51aに対して傾斜しており、また半導体積層53bの表面53aに対して傾斜している。マスク63を用いたエッチングにより、側面65dの具体的な傾斜角を制御できる。
【0070】
必要な場合には、エッチング工程の前に、工程S104で半導体の面方位をX線回折により調べて、X線回折により半導体の面方位を見積もることが好ましい。この見積もり結果に基づき、エッチング条件を調整することができる。条件の調整は、半導体積層65の側面65aの傾斜の制御に好適である。また、必要な場合には、この見積もり結果に基づき、レジスト膜厚、露光条件、及び/又はベーク条件を調整することができる。X線回折を行う工程は、エッチングを行う前であり、半導体積層53が形成された後である。
【0071】
側面65dは、全体としては、基準面R11に沿って延在している。基準面R11は基板51の主面51aの法線及び基板51の主面51aの両方に対して傾斜している。開口65の底面65eは基準面R12に沿って延在しており、半導体積層53bの主面53aは基準面R13に沿って延在している。基準面R11の法線とc軸との成す角度は、基準面R12、R13の法線とc軸との成す角度より小さい。好適な実施例では、半導体積層53bの主面53aは基板51の主面51aと実質的に平行であることができる。基準面R11(つまり、側面65d)と基準面R12、R13(主面53a、底面65e)との成す角度は例えば5度から40度の範囲にあることができる。
【0072】
チャネル層及びキャリア供給層の成長に先立って、必要な場合には、基板生産物SP1の前処理(例えば、洗浄)を行った後に、基板生産物SP1を成長炉10aに配置することができる。
【0073】
工程S108では、アンモニア及びIII族元素原料を含む原料ガスG1を成長炉10aに供給して、図6の(a)部に示されるように、半導体積層53bの主面53a、開口65の側面65d及び底面65e上に、チャネル層69を成長温度TG1で成長する。チャネル層69はアンドープ窒化ガリウム系半導体からなる。チャネル層68は、第1の部分69a、第2の部分69b及び第3の部分69cを含む。第1の部分69aは、開口65の側面65d上に成長され、基準面R21に沿って延在する。基準面R21は、基板51の主面51aに対して傾斜する。基準面R21の法線は、例えばc軸に対して−10度〜+10度の角度範囲内にあり、好適な実施例ではチャネル層69の窒化ガリウム系半導体のc軸にほぼ直交することができる。第2の部分69bは、半導体積層53bの主面53a上に成長され、法線軸Nxに直交する基準面R22に沿って延在する。第1の部分69aは、基準面R21に対して傾斜する。第3の部分69cは、開口65の底面65e上に成長され、基準面R23に沿って延在する。第1の部分69aは、基準面R22、R23に対して傾斜する。好適な実施例では、開口部65の底面65eの形状はエッチング条件やマスクの材質や形状に依存するが、好適な実施例では、基準面R23は基準面R22と実質的に平行であり、また基準面R23及び基準面R22は基板51の主面51aに平行であることができる。
【0074】
半導体積層65の側面65d上にチャネル層69の部分が成長され、側面65dの面方位のおかげで、この部分の酸素濃度は1×1016cm−3未満にできる。チャネル層69における酸素濃度に起因したドレインリークを低減できる。
【0075】
また、電流ブロック層57の側面57aが基準軸Cxに対して5度以上の角度で傾斜するので、チャネル長の増大によるオン抵抗の増加を避けることができる。電流ブロック層57の端面57aが基準軸Cxに対して40度以下の角度で傾斜するので、その上に成長されたチャネル層69において面方位に起因する酸素濃度の増加を避けることができる。
【0076】
工程S109では、チャネル層69を成長した後にキャリア供給層71を成長する前に、成長温度TG1から成長温度TG2に基板温度を上昇する。この温度変更は、例えばアンモニアを成長炉10aに流しながら行われる。例えば、チャネル層69がGaNからなると共に、キャリア供給層71がAlGaNからなるとき、成長温度TG1は例えば950度であり、成長温度TG2は例えば10880度である。成長温度TG1は例えば摂氏900度以上摂氏1100度以下であり、成長温度TG2は例えば摂氏1000度以上摂氏1200度以下である。
【0077】
半導体積層53の主面53aが基準軸Cxに対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜する。このため、半導体積層65の斜面65dにチャネル層69を成長する際に、成長温度TG1を下げることなく、チャネル層69への酸素取込みの程度を低減できる。また、成長温度TG1を下げることなくチャネル層69が成長されるので、成長温度TG1から成長温度TG2に基板温度を上昇する期間が長くならない。これ故に、温度上昇中にチャネル層69の表面における原子の移動を低減でき、チャネル層表面の変形を避けることができる。
【0078】
また、成長温度TG1から成長温度TG2に基板温度を上昇する期間が長くすることなく、基板温度を成長温度TG2に十分に安定させることができる。基板温度が成長温度TG2に十分に安定した後に、引き続き成長されるキャリア供給層71とチャネル層69とのヘテロ界面70が形成される。これ故に、低い品質のヘテロ界面70の形成を避けることができる。
【0079】
工程S110では、アンモニア及びIII族元素原料を含む原料ガスG2を成長炉10aに供給して、図6の(b)部に示されるように、半導体積層53bの主面53a、開口65の側面65d及び底面65e上に、キャリア供給層71を成長温度TG2で成長する。キャリア供給層71はチャネル層69とヘテロ接合70を形成する。キャリア供給層71はIII族窒化物半導体からなる。キャリア供給層71は、第1の部分71a、第2の部分71b及び第3の部分71cを含む。第1の部分71aは、開口65の側面65d上に成長され、基準面R31に沿って延在する。基準面R31は、基板51の主面51aに対して傾斜する。基準面R31の法線は、例えばc軸に対して−10度〜+10度の角度範囲内にあり、好適な実施例では、基準面R31はキャリア供給層71の窒化ガリウム系半導体のc軸にほぼ直交することができる。第2の部分71bは、半導体積層53bの主面53a上に成長され、基準面R32に沿って延在する。第1の部分71aは、基準面R32に対して傾斜する。第3の部分71cは、開口65の底面65e上に成長され、基準面R33に沿って延在する。第1の部分71aは、基準面R33に対して傾斜する。本実施例では、基準面R33は基準面R32と実質的に平行であり、また基準面R33及び基準面R32は基板51の主面51aに平行である。キャリア供給層71のIII族窒化物半導体のバンドギャップは、チャネル層69の窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きい。チャネル層69とキャリア供給層71とは接合70を成し、接合70に沿って二次元キャリアガス層が形成される。
【0080】
キャリア供給層71の成長が完了した後に、基板生産物SP2の温度を成長温度TG2からの低下を開始することができる。キャリア供給層71の成長が完了した後にキャリア供給層71の成長温度TG2以下の温度の所定雰囲気にキャリア供給層71の表面71aをさらしながら降温を行う。所定雰囲気は、窒素(N)を含むと共にアンモニアを含まない。
【0081】
工程S111では、基板生産物SP2の温度を下げて基板生産物SP2を取り出す。工程S112a又は工程S112bの電極形成工程では、キャリア供給層71上にゲート電極を形成する。より具体的には、電極形成工程では、半導体積層53bの半導体層57、59に接触を成すソース電極の形成、基板51の裏面51bに接触を成すドレイン電極の形成、ゲート絶縁膜77の形成、及びゲート絶縁膜77に接触を成すゲート電極の形成を行う。
【0082】
半導体積層53bの主面53a上にソース電極を形成することができる。このソース電極は、電流ブロック層57及びコンタクト層59に電位を供給する。ソース電極73は、チャネル層69を流れるキャリアを供給し、キャリアは二次元キャリアガスを介してドリフト層55に流れる。この作製方法によれば、ソース電極が電流ブロック層57及びコンタクト層59に電位を供給するので、電流ブロック層57がチャネル層69に対してバックゲートとして働く。
【0083】
(実施例)
エピタキシャル基板の作製。
窒化ガリウム膜をMOCVD法により成膜する。ガリウム原料として、トリメチルガリウムを用いる。窒素原料としては、高純度アンモニアを用いる。キャリアガスとしては、純化した水素を用いる。高純度アンモニアの純度は、99.999%以上であり、純化水素の純度は99.999995%以上である。n型ドーパントとして水素ベースのシランを用い、p型ドーパントとしてビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いる。基板として導電性の窒化ガリウム基板を用い、この基板のサイズは2インチである。まず、摂氏1030度の温度及び100Torrの圧力で、アンモニアと水素の雰囲気中で基板のクリーニングを行う。その後に、摂氏1050度に昇温した後に、200Torrの圧力、及び1500のV/IIIモル比で窒化ガリウム層を成膜する。本実施例では、GaN基板主面のオフ角は18度である。
【0084】
窒化ガリウム基板上に、厚さ5μmのアンドープGaNドリフト層、厚さ0.5μのp型AlGaN電流ブロック層、厚さ0.2μmのn型GaNキャップ層(コンタクト層)が順に成長される。ドリフト層のSi濃度は1×1016cm−3であり、バリア層のMg濃度は1×1018cm−3であり、キャップ層のSi濃度は1×1018cm−3である。この成膜により、窒化ガリウム基板上にnpn構造の半導体積層を有するエピタキシャル基板が作製される。
【0085】
デバイス構造の作製。
このエピタキシャル基板に開口部を形成する。このためのマスクは、エピタキシャル膜表面にレジストを塗布した後にフォトリソグラフィによりレジストにパターンを形成して作製される。このマスクを用いて、エピタキシャル基板に反応性イオンエッチング(RIE)により開口部を形成して、開口を有する基板生産物をする。開口部の斜面の傾斜角に関しては、GaN基板のc軸方向に延在する基準軸と開口部の斜面の法線との角度差は−10度より大きく+10度未満であることが好ましい。この角度範囲の外側の角度では、チャネル層としてアンドープGaNの再成長を行った場合、その傾斜角度の斜面上におけるチャネル層厚の均一性が良好でなくなる。
【0086】
図7は、開口部の側面の傾斜とチャネル層厚の均一性とを説明する図面である。座標軸は、図1に示された座標軸Sに従う。開口部の側面がc面又はc面に近い面であるので、チャネル層の表面にc面が形成される傾向にある。図7の(a)には、比較的大きい傾斜を有する開口部の側面上に成長されたチャネル層の形態を示す。開口部の側面は、基準面R0に沿って延在しており、チャネル層の表面は、c軸にほぼ直交する基準面RC1に沿って延在する。基準面RC1と基準面R0との成す角度TH1が大きすぎるとき、開口部の斜面上において、開口部の底面から半導体積層の上面への方向に、チャネル層厚の徐々に厚くなり、これ故に、チャネル層厚の均一性が良好でない。電流ブロック層の側面の上端上におけるチャネル層厚が厚すぎるとき、ゲート電極の電界がチャネル層の深部に及ばなくなり、リーク電流の増大になる。また、電流ブロック層の側面の下端上におけるチャネル層厚が薄すぎるとき、下地のp型層からのp型ドーパント拡散の影響によりオン抵抗の増大になる。
【0087】
図7の(b)には、比較的小さい傾斜を有する開口部の側面上に成長されたチャネル層の形態を示す。開口部の側面は、基準面R0に沿って延在しており、チャネル層の表面は、c軸にほぼ直交する基準面RC2に沿って延在する。基準面RC2と基準面R0との成す角度TH2が大きすぎるとき、開口部の斜面上において、半導体積層の上面から開口部の底面への方向に、チャネル層厚の徐々に厚くなり、これ故に、チャネル層厚の均一性が良好でない。電流ブロック層の側面の上端上におけるチャネル層厚が薄すぎるとき、チャネル電流が流れるチャネル層断面が小さくなり、オン抵抗の増大になる。また、電流ブロック層の側面の下端上におけるチャネル層厚が厚すぎるとき、ゲート電極の電界がチャネル層の深部に及ばなくなり、リーク電流の増大になる。
【0088】
図7の(c)には、c軸に対する基板主面の傾斜角とほぼ等しい傾斜の開口部側面上に成長されたチャネル層の形態を示す。開口部の側面がc面又はc面に近い面であるので、チャネル層の表面にc面が形成される傾向にある。開口部の側面は、基準面R0に沿って延在しており、チャネル層の表面は、c軸にほぼ直交する基準面RC3に沿って延在する。基準面RC3と基準面R0とはほぼ平行にあるとき、開口部の斜面上において、開口部の底面から半導体積層の上面への方向に、チャネル層厚の変化は小さくなり、これ故に、チャネル層厚の均一性が良好になる。電流ブロック層の側面の上端上におけるチャネル層厚が、電流ブロック層の側面の下端上におけるチャネル層厚とほぼ等しいとき、ゲート電極の電界がチャネル層の深部に十分に及んでリーク電流を抑制でき、また、下地のp型層からのp型ドーパント拡散の影響によるオン抵抗増大も防げる。
【0089】
本実施例では、結晶方位はXRDのω−2θスキャンで把握すると共に、その結晶方位に応じて、反応性ガス(塩素等)/不活性ガス(希ガス)の供給比の調整により、斜面形成RIE時に基板垂直方向のエッチングレートを変更することで開口部の傾斜角を調節することにより、エッチングにより生成される開口部の側面の傾斜角が先に述べた角度差の範囲になるように形成できる。
【0090】
レジストマスクの除去と基板洗浄の後に、図8に示される再成長温度シーケンスに従ってチャネル層及びキャリア供給層を成長する。まず、時刻t0でMOCVD装置に基板生産物を導入して、時刻t1で摂氏400度に基板温度を上昇させる。さらに、アンモニア及び水素を含む雰囲気で摂氏950度まで温度を上昇した後に、熱クリーニングを行う。次いで、引き続きアンモニア及び水素を成長炉に供給しながらIII族有機金属原料(TMG)を成長炉に時刻t2に供給して、厚さ100nmのi−GaNチャネル層を成長する。時刻t3でIII族有機金属原料の供給を停止してチャネル層の成長を終了する。この後に、アンモニア及び水素を含む雰囲気で基板温度を上昇して時刻t4で摂氏1080度の基板温度になる。時刻t5でIII族有機金属原料(TMG、TMA)を成長炉に供給して、厚さ25nmのi−AlGaNキャリア供給層を成長する。時刻t6でIII族有機金属原料の供給を停止してキャリア供給層の成長を終了する。この後に、アンモニア及び水素を含む雰囲気を窒素(N)雰囲気に変更した後に、基板温度を室温まで降下する。時刻t7で、基板生産物を成長炉から取り出す。
【0091】
基板生産物の全面に絶縁膜を成膜した後に、フォトリソグラフィとイオンビーム蒸着法を用いて、ソース電極、ドレイン電極をそれぞれエピタキシャル基板の表面と裏面に形成すると共に、ゲート電極を開口部側面に形成する。
【0092】
これらの工程により、オン抵抗の増大を抑制できると共にドレインリーク電流の低減されたヘテロ構造トランジスタが形成される。
【0093】
c面GaN基板を用いて縦型トランジスタ構造を形成するとき、i−GaNチャネル層及びi−AlGaN電子供給層の再成長を順次行う。この際に、下地となる開口部斜面は、エッチングといった物理的なプロセスにより形成された面であるので、結晶学的な特定の面方位では無い。
【0094】
このため、物理的に形成された下地面に、i−GaNの再成長を行った場合、斜面周囲の平坦面は再成長初期にC面あるいはその微斜面が形成されるので、図9の(a)部に示されるように、原料の取り込みが制限され、その平坦面に取り込まれなかったIII族原子が、より荒れた斜面に多く取り込まれる、斜面においてはC面に対して垂直方向の成長速度が極端に速くなり、エピタキシャル成長時に成長方向に起因してより多くの酸素を取り込みやすくなる。その結果、開口部に再成長したi−GaNチャネル層が予想外に多くの電子濃度を有する。これは、トランジスタのドレインリークの原因となる。
【0095】
上記のようにC軸垂直方向の成長を抑制するために、i−GaNの成長温度を下げてC面への原料の取り込みを促進すると共に、斜面部への取り込みを相対的に低減することができる。結晶品質の観点からi−GaNと比べてi−AlGaNの最適成長温度を高くする。このため、i−GaN成長後にi−AlGaNの成長温度に昇温するために成長中断時間が長くなる。その場合、高温雰囲気中に晒されている斜面の表面で物質の移動が発生しており、より長時間成長を中断した場合、斜面の形状が崩れてしまう。したがって、成長温度下げによる酸素取り込み低減には制約が生じる。一方で、成長中断時間を長くしない場合、i−AlGaNの成長時に成長温度が十分に上がりきる前に成長が介しされ、これは、i−AlGaNの結晶性や、i−AlGaN/i−GaN界面におけるAl組成の急峻性が低下する。この低下により、デバイス形成後のオン抵抗の増加を招く。
【0096】
さらに、C面に対して大きく傾斜した開口側面にi−GaNチャネル層及びi−AlGaN電子供給層を再成長するとき、平坦面のC面と比して斜面部の成長速度が速くなる。特に、i−GaNチャネル層の成長では酸素等の導電性不純物を取り込みやすくなり、トランジスタ形成後のドレイン耐圧低下の原因となる。
【0097】
そこで、本実施の形態では縦型トランジスタの電気的特性と信頼性改善に有効な半導体素子の形成法および構造を提供する。本実施例では、基板主面の結晶方位をC軸より任意の方向に5度〜40度程度の角度で傾斜させる。この基板上に半導体積層をエピタキシャル成長する。半導体積層の上面に対して斜面した斜面を形成すると共に、傾斜面とは別の平坦面をC面に対して傾斜させる。この斜面は、半導体積層の上面に対して、基板結晶方位に合わせて5度〜40度程度の角度で傾斜させる。この斜面は、C面テラスとステップからなる微斜面或いはC面のいずれかなる構造を有する。この斜面上に、チャネル層及び電子供給層を再成長する。
【0098】
HEMT構造を再成長により形成するに先だって、開口斜面にC面あるいはC面テラスとステップからなる微斜面を形成し、開口内の平坦面及び半導体積層の主面をC面に対して傾斜される。この表面の構造上にHEMT構造を再成長により形成するとき、図9の(b)部に示されるように、平坦部から斜面部へのIII族原子の取り込みが生じない。また、再成長i−GaNの成長方向がC軸と平行になることで酸素の取り込みを低減できる。このため、i−GaNチャネル層のリークに起因するトランジスタのドレインリークを低減できる。
【0099】
また、C面あるいはC面テラスとステップからなる微斜面が開口部の斜面に形成されるので、仮にi−GaNの成長温度を上げたとしても平坦面に対する垂直方向の成長速度の増加を抑えることができ、またi−AlGaN成長時にその最適温度への到達時間を長くならない。その結果、i−AlGaN成長時に不十分な成長温度に起因するi−AlGaNの結晶性の低下やi−AlGaN/i−GaN界面におけるAl組成の急峻性の悪化を避けることができる。また、二次元電子ガスのための界面品質の劣化を伴うトランジスタのオン抵抗増加を防ぐことができる。
【0100】
電流ブロック層の側面の長さが2次元電子ガスの制御のための実効チャネルとなるので、C軸を基準にして基板結晶方位を5度以下の角度にすると、そのチャネル長が長くなり、オン抵抗の増加を招く。一方、C軸を基準にして基板結晶方位を40度以上の角度にすると、RIEによる開口部形成以前の下地エピタキシャル成長において成長表面に窒素が表出するようになり、その結果酸素の混入を招く。また、チャネル層と電流ブロック層とのpnダイオード耐圧が、電流ブロック層におけるアクセプタ補償、及びチャネル層の過剰ドナーの両影響により低下する。また、これは、電流ブロック層におけるアクセプタ不足は、ドレインリークの増加を招く。特に、C軸からの傾斜角が40度を超えるとき、酸素が1×1017cm−3以上でi−GaN層に混入し、pnダイオード構造部の耐圧、及びドレイン耐圧を低下させる。
【0101】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本実施の形態によれば、チャネル層のキャリア濃度の増大に起因するリークを低減できる、窒化物電子デバイスを作製する方法を提供できる。また、本実施の形態によれば、チャネル層のキャリア濃度が増大することを避けてリークを低減できる構造を有する、窒化物電子デバイスを提供できる。
【符号の説明】
【0103】
10a…成長炉、11…ヘテロ接合トランジスタ、13…導電性基板、15…半導体積層、16…開口、19…チャネル層、20…ヘテロ接合、21…バリア層、23…ゲート電極、25…ドリフト層、27…電流ブロック層、29…コンタクト層、31…ソース電極、33…ドレイン電極、CR…結晶座標系、51…III族窒化物半導体基板、53、53b…半導体積層、55…ドリフト層、57…電流ブロック層、57…コンタクト層、E…エピタキシャル基板、63…マスク、65…開口、65d…側面、65e…底面、R11、R12、R13、R31、R32、R33…基準面、69…チャネル層、71…キャリア供給層、73…ソース電極、77…ゲート絶縁膜、79…ゲート電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物電子デバイスを作製する方法であって、
基板の主面上に半導体積層を成長する工程と、
前記半導体積層上にマスクを形成する工程と、
前記マスクを用いて前記半導体積層をエッチングして、前記半導体積層の主面に対して斜面を有する開口を前記半導体積層の前記主面に形成する工程と、
前記マスクを除去した後に、アンモニア及びIII族元素原料を含む原料ガスを成長炉に供給することによって前記半導体積層の前記主面及び前記斜面上に、チャネル層を第1の成長温度で成長する工程と、
を備え、
前記基板の前記主面は六方晶系III族窒化物からなり、
前記半導体積層は、第1の窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層、第2の窒化ガリウム系半導体からなる電流ブロック層、及び第3の窒化ガリウム系半導体からなるコンタクト層を含み、
前記チャネル層は、アンドープ窒化ガリウム系半導体を含み、
前記半導体積層の前記斜面及び前記主面は、それぞれ、第1及び第2の基準面に沿って延在し、
前記半導体積層の前記主面の法線ベクトルは、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、
前記第1の基準面の法線と前記基準軸との成す角度は前記第2の基準面の法線と前記基準軸との成す角度より小さいことを特徴とする、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項2】
前記チャネル層を成長した後に、前記第1の成長温度から第2の成長温度に基板温度を上昇する工程と、
前記チャネル層上にキャリア供給層を前記第2の成長温度で前記成長炉で成長して、基板生産物を形成する工程と、
を備え、
前記キャリア供給層はIII族窒化物半導体を含み、
前記キャリア供給層の前記III族窒化物半導体のバンドギャップは、前記チャネル層の前記窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きく、
前記チャネル層は、前記半導体積層の前記斜面上に成長された第1の部分と、前記半導体積層の前記主面上に成長された第2の部分とを含み、
前記キャリア供給層は、前記チャネル層の前記第1の部分上に成長された第1の部分と前記チャネル層の前記第2の部分上に成長された第2の部分とを含み、
前記キャリア供給層の前記第1の部分は第2の基準面に対して傾斜し、
前記第2の基準面の法線ベクトルは、前記第1の窒化ガリウム系半導体のc軸方向を示す基準軸に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜することを特徴とする請求項1に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項3】
前記チャネル層の前記第1の部分の酸素濃度は1×1017cm−3未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項4】
前記半導体積層の前記斜面の法線ベクトルは、前記基準軸に直交する面に対して−10度より大きく+10度未満の範囲の角度を成すことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項5】
前記基板生産物を取り出した後に、前記キャリア供給層上にゲート電極を形成する工程を更に備え、
前記開口の前記斜面は、前記ドリフト層の側面、前記電流ブロック層の側面、及び前記コンタクト層の側面を含み、
前記ゲート電極は前記電流ブロック層の前記側面上に設けられ、
前記電流ブロック層の前記側面は、前記半導体積層の前記主面上に成長された第2の部分に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項6】
前記半導体積層上に前記マスクを形成する前記工程は、
前記半導体積層上に塗布されたレジストに前記開口を規定するエッジを有するパターンを形成する工程と、
前記パターン形成されたレジストに熱処理を行って、前記エッジに傾斜面を形成して前記マスクを形成する工程と、
を含み、
前記エッチングでは、ドライエッチングにより前記マスク及び前記半導体積層をエッチングすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項7】
前記基板は導電性の自立III族窒化物基板からなり、
前記自立III族窒化物基板の主面の法線ベクトルは、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に直交する面に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、
当該方法は、前記基板の裏面にドレイン電極を形成する工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項8】
前記ドリフト層の前記第1の窒化ガリウム系半導体、前記電流ブロック層の前記第2の窒化ガリウム系半導体、及び前記コンタクト層の第3の窒化ガリウム系半導体の組み合わせは、n型GaN/p型GaN/n型GaN、及びn型GaN/p型AlGaN/n型GaNのいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項9】
前記チャネル層及び前記キャリア供給層の組み合わせは、InGaN/AlGaN、GaN/AlGaN、及びAlGaN/AlNのいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項10】
前記基板生産物を成長炉から取り出した後に、前記半導体積層の前記主面上にソース電極を形成する工程を更に備え、
前記ソース電極は、前記電流ブロック層及び前記コンタクト層に電位を供給し、
前記チャネル層と前記キャリア供給層とは接合を成し、
前記接合には二次元電子ガス層が形成され、
前記ソース電極は、前記チャネル層を流れるキャリアを供給することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項11】
前記キャリア供給層の前記第1の部分に接合を成すゲート電極を形成する工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項12】
前記キャリア供給層の前記第1の部分上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を更に備え、
前記ゲート電極は前記ゲート絶縁膜に接合を成すことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイスを作製する方法。
【請求項13】
窒化物電子デバイスであって、
六方晶系III族窒化物からなり、該六方晶系III族窒化物のc軸に対して5度以上40度以下の範囲で傾斜した主面の法線ベクトルを有する支持基体と、
前記支持基体の前記主面上に順に設けられたドリフト層、電流ブロック層及びコンタクト層を含むと共に、前記コンタクト層から前記電流ブロック層を介して前記ドリフト層に至る開口を有する半導体積層と、
前記開口の側面に設けられ、窒化ガリウム系半導体を含むチャネル層と、
前記開口の前記側面に設けられ、III族窒化物を含むキャリア供給層と、
前記開口の前記側面に設けられたゲート電極と、
前記半導体積層の主面上に設けられたソース電極と、
前記半導体積層及び前記支持基体のいずれかに設けられたドレイン電極と、
を備え、
前記チャネル層の酸素濃度は1×1017cm−3未満であり、
前記半導体積層の前記側面及び前記主面は、それぞれ、第1及び第2の基準面に対して延在し、
前記半導体積層の前記主面は、前記六方晶系III族窒化物のc軸方向を示す基準軸に直交する面に対して5度以上40度以下の範囲内の角度で傾斜し、
前記第1の基準面の法線と前記基準軸との成す角度は前記第2の基準面の法線と前記基準軸との成す角度より小さく、
前記ドリフト層は、第1の窒化ガリウム系半導体からなり、
前記電流ブロック層は、第2の窒化ガリウム系半導体からなり、
前記コンタクト層は、第3の窒化ガリウム系半導体からなり、
前記チャネル層は前記キャリア供給層と前記開口の前記側面との間に設けられ、
前記キャリア供給層の前記III族窒化物のバンドギャップは、前記チャネル層の前記窒化ガリウム系半導体のバンドギャップより大きいことを特徴とする窒化物電子デバイス。
【請求項14】
前記ドリフト層の第1の窒化ガリウム系半導体はSiドープn型GaNであり、前記ドリフト層の膜厚は1μm以上10μm以下であり、前記第1の窒化ガリウム系半導体のSi濃度は1×1015cm−3以上3×1016cm−3以下であり、
前記電流ブロック層の第2の窒化ガリウム系半導体はMgドープp型GaNであり、前記電流ブロック層の膜厚が0.1μm以上2.0μm以下であり、前記第2の窒化ガリウム系半導体のMg濃度は5×1016cm−3以上5×1018cm−3以下であり、
前記コンタクト層の第3の窒化ガリウム系半導体はSiドープn型GaNであり、前記コンタクト層の膜厚が0.1μm以上1.0μm以下であり、前記第3の窒化ガリウム系半導体のSi濃度は、1×1016cm−3以上であることを特徴とする請求項13に記載された、窒化物電子デバイス。
【請求項15】
前記キャリア供給層はAlGa1−XN(0<X<1)を含み、
前記キャリア供給層の膜厚が5nm以上40nm以下であり、
前記チャネル層はアンドープGaNを含み、
前記チャネル層の膜厚が20nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載された、窒化物電子デバイス。
【請求項16】
前記半導体積層の前記側面は、前記基準軸に直交する面に対して−10度より大きく+10度未満の範囲の角度を成すことを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイス。
【請求項17】
前記ゲート電極は前記キャリア供給層の前記第1の部分に接合を成すことを特徴とする請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイス。
【請求項18】
前記キャリア供給層上に設けられたゲート絶縁膜を更に備え、
前記ゲート電極は前記ゲート絶縁膜に接合を成すことを特徴とする請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載された、窒化物電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−222765(P2011−222765A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90689(P2010−90689)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】