説明

自動車およびその制御方法

【課題】 雪道などの低μ路における発進や走行をスムーズに行なう。
【解決手段】 雪道走行モードが設定されたときには、路面の勾配により車両がずり下がらないようにするために出力すべき釣合トルクTeqを計算し(S140)、駆動トルクが釣合トルクTeqに至るまでの範囲ではアクセル開度Accに対する駆動トルクの特性を通常走行モードのときと同一の特性とすると共に駆動トルクが釣合トルクTeqを超える範囲ではアクセル開度Accに対する駆動トルクの特性を通常走行モードより低特性として雪道用トルク設定マップを作成し(S150)、作成した雪道用トルク設定マップを用いて走行用のモータのトルク指令Tm*を設定して制御する(S170,S180)。この結果、雪道での坂路発進時に通常時の坂路発進と同様のアクセル操作を行なっても、車両のずり下がりや空転によるスリップの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、複数の発進モードに基づいてエンジンからの駆動力を無段変速機により変速して走行するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、雪道発進モードが設定されたときには無段変速機をシフトアップ側に制御し、登坂発進モードが設定されたときには無段変速機をシフトダウン側に制御し、軽重量発進モードが設定されたときには無段変速機をシフトアップ側に制御することにより、発進モードに対応した発進を行なうようにしている。
【特許文献1】特開平9−303550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の自動車では、雪道の坂路を発進するときにはスムーズに発進できない場合が生じる。雪道発進モードを設定して発進すると、無段変速機がシフトアップ側に制御されるため、アクセル操作量に対する駆動力特性が低くなり、通常のアクセル操作では車重に釣り合う駆動力が出力されず、車両のずり下がりが生じる。また、登坂発進モードを設定して発進すると、無段変速機がシフトダウン側に制御されるため、アクセル操作量に対する駆動力特性が高くなり、通常のアクセル操作を行なうと、大きな駆動力が出力され、空転によるスリップを生じ、スムーズに発進できない場合が生じる。
【0004】
本発明の自動車およびその制御方法は、雪道などの低μ路における発進や走行をスムーズに行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の自動車は、
走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段と、
アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性を通常時の通常時駆動力特性と該通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性とを含む複数の駆動力特性から操作者の操作に基づいて設定する駆動力特性設定手段と、
路面勾配に基づいて車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力を推定する車重分力推定手段と、
前記駆動力特性設定手段により前記通常時駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、前記駆動力特性設定手段により前記低反応駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対する前記第1の駆動力特性に基づく駆動力が前記車重分力推定手段により推定される車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、該釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段と、
該目標駆動力設定手段により設定された目標駆動力に基づいて前記駆動力出力手段を制御する駆動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の自動車では、アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性として通常時の通常時駆動力特性が設定されたときには、アクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、設定した目標駆動力に基づいて走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段を制御する。また、アクセル対応駆動力特性として通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性が設定されたときには、アクセル操作に対する第1の駆動力特性に基づく駆動力が路面勾配に基づいて推定された車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、この釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、設定した目標駆動力に基づいて駆動力出力手段を制御する。したがって、雪道などの低μ路で坂路発進する際にアクセル対応駆動力特性として低反応駆動力特性を設定すれば、釣合駆動力となるアクセル操作量まではアクセル操作に対して通常時の第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定して駆動力出力手段を制御するから、通常のアクセル操作と同様に車両を駆動させ、アクセル操作に比して駆動力が低特性となることに基づく車両のずり下がりを抑制することができる。また、釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定して駆動力出力手段を制御するから、駆動力の急増を抑制し、空転によるスリップを抑制することができる。この結果、雪道などの低μ路における発進や走行をスムーズに行なうことができる。なお、「駆動力出力手段」としては、例えば電動機や内燃機関からの駆動力を直接または間接に出力する手段を挙げることができる。
【0008】
こうした本発明の自動車において、前記車重分力推定手段は、車両の重力加速度を検出する重力加速度検出手段と、該検出された重力加速度に基づいて路面勾配を演算すると共に該演算した路面勾配に基づいて前記車重分力を演算する車重分力演算手段と、を備える手段であるものとすることもできる。こうすれば、車両の重力加速度に基づいて車重分力をより適正に演算することができる。
【0009】
また、本発明の自動車において、前記駆動力特性設定手段は、操作者により通常走行モードが設定されたときに前記通常時駆動力特性をアクセル対応駆動力特性として設定し、操作者により雪道走行モードが設定されたときに前記低反応駆動力特性をアクセル対応駆動力特性として設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、操作者が雪道走行モードを設定したときに低反応駆動力特性をアクセル対応駆動力特性として設定することができる。
【0010】
本発明の自動車の制御方法は、
走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段を備える自動車の制御方法であって、
(a)アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性を通常時の通常時駆動力特性と該通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性とを含む複数の駆動力特性から操作者の操作に基づいて設定し、
(b)路面勾配に基づいて車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力を推定し、
(c)前記ステップ(a)により前記通常時駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、前記ステップ(a)により前記低反応駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対する前記第1の駆動力特性に基づく駆動力が前記ステップ(b)により推定される車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設
定し、該釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、
(d)該設定した目標駆動力に基づいて前記駆動力出力手段を制御する
ことを要旨とする。
【0011】
この本発明の自動車の制御方法では、アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性として通常時の通常時駆動力特性が設定されたときには、アクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、設定した目標駆動力に基づいて走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段を制御する。また、アクセル対応駆動力特性として通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性が設定されたときには、アクセル操作に対する第1の駆動力特性に基づく駆動力が路面勾配に基づいて推定された車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、この釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、設定した目標駆動力に基づいて駆動力出力手段を制御する。したがって、雪道などの低μ路で坂路発進する際にアクセル対応駆動力特性として低反応駆動力特性を設定すれば、釣合駆動力となるアクセル操作量まではアクセル操作に対して通常時の第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定して駆動力出力手段を制御するから、通常のアクセル操作と同様に車両を駆動させ、アクセル操作に比して駆動力が低特性となることに基づく車両のずり下がりを抑制することができる。また、釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定して駆動力出力手段を制御するから、駆動力の急増を抑制し、空転によるスリップを抑制することができる。この結果、雪道などの低μ路における発進や走行をスムーズに行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、インバータ24を介してバッテリ26から供給される電力を用いて駆動輪28a,28bに動力を出力する周知の同期発電電動機として構成された走行用のモータ22と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。
【0014】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に、処理プログラム等を記憶するROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートとを備える。電子制御ユニット40には、シフトレバー51の操作位置を検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジションSP,アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ57からの車速V、車両の前後方向の加速度を検出するGセンサ58からの前後加速度G,運転者の操作により走行モードを通常走行モードと雪道走行モードとから切り替える走行モードスイッチ59からの走行モードMd,モータ22の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ23からの回転位置,インバータ24の内部に取り付けられてモータ22に印加される三相交流電力における相電流を検出する図示しない電流センサからの相電流などが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット40からは、インバータ24のスイッチング素子のスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0015】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0016】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Accや車速センサ57からの車速V,Gセンサ58からの前後加速度G,走行モードスイッチ59からの走行モードMdなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。
【0017】
こうしてデータを入力すると、入力した走行モードMdに基づいて走行モードが雪道走行モードであるか否かを判定する(ステップS110)。雪道走行モードではないとき、即ち通常走行モードのときには、そのときの車速Vにおけるアクセル開度Accと駆動トルクTdとの関係を示す通常時トルク設定マップを実行用マップとして設定する(ステップS120)。ここで、通常時トルク設定マップは、実施例では、車速Vとアクセル開度Accと駆動トルクTdとの関係を予め定めて三元マップとしてROM44に記憶しておき、車速Vが与えられると、記憶した三元マップから車速Vに対応するアクセル開度Accと駆動トルクTdとの関係を導出することにより得るものとした。通常時トルク設定マップの一例を図3に示す。この例では、アクセル開度Accの増加に応じて駆動トルクTdが増加するよう設定されている。続いて、設定した実行用マップに入力したアクセル開度Accを適用して導出される駆動トルクTdをモータ22のトルク指令Tm*として設定し(ステップS170)、設定したトルク指令Tm*のトルクがモータ22から出力されるようモータ22を駆動制御して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。
【0018】
一方、ステップS110で走行モードMdに基づいて走行モードが雪道走行モードであると判定されたときには、車両の前後加速度Gや現在モータ22の駆動制御に用いているトルク指令Tm*などを用いて路面勾配θを計算し(ステップS130)、計算した路面勾配θと車重Mとを用いて車両が路面勾配に基づいてずり下がらないために必要なトルクとしての釣合トルクTeq(Teq=k・Mgsinθ)を計算する(ステップS140)。ここで、「g」は重力加速度であり、「k」は力をトルクに変換する換算係数である。
【0019】
続いて、そのときの車速Vにおける通常時トルク設定マップと釣合トルクTeqとを用いて雪道用トルク設定マップを作成する(ステップS150)。雪道用トルク設定マップは、アクセル開度Accと駆動トルクTdとの関係が、駆動トルクTdが計算した釣合トルクTeqに至るまでの範囲では通常時トルク設定マップと同一となるよう作成され、駆動トルクTdが釣合トルクTeqより大きい範囲では通常時トルク設定マップよりもアクセル開度Accに対する駆動トルクTdの変化が小さくなるように、即ち低特性となるように作成される。雪道用トルク設定マップの一例を図4に示す。図中、実線は雪道用トルク設定マップを示し、破線は通常時トルク設定マップを示し、一点鎖線はアクセル開度Accの全範囲に対してアクセル開度Accに対する駆動トルクTdの特性が低特性となる低特性トルク設定マップを示す。図示するように、駆動トルクTdが釣合トルクTeqに至るまでの範囲(アクセル開度Accが値Acc1以下の範囲)では、雪道用トルク設定マップは通常時トルク設定マップと同一であり、駆動トルクTdが釣合トルクTeqより大きい範囲(アクセル開度Accが値Acc1より大きい範囲)では、雪道用トルク設定マップは、通常時トルク設定マップに比してアクセル開度Accに対する駆動トルクTdの特性が低くなっている。
【0020】
こうして雪道用トルク設定マップを作成すると、作成した雪道用トルク設定マップを実行用マップとして設定し(ステップS160)、設定した実行用マップに入力したアクセル開度Accを適用してモータ22のトルク指令Tm*を設定し(ステップS170)、
設定したトルク指令Tm*のトルクがモータ22から出力されるようモータ22を駆動制御して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。
【0021】
いま、雪道の坂路で雪道走行モードにより坂路発進する場合を考える。運転者がアクセルペダル53を踏み込んでアクセル開度Accが値Acc1に至るまで、即ち、車両がずり下がらずに停止するトルクを出力するまでは、通常時トルク設定マップと同一の特性として作成された雪道用トルク設定マップを用いて導出される駆動トルクTdがトルク指令Tm*として設定されるから、雪道での坂路発進であっても通常時の坂路発進と同様の操作感により車両を操作することができる。なお、図4の一点鎖線に示す低特性トルク設定マップを用いてトルク指令Tm*を設定する場合では、アクセル開度Accが値Acc2のときに釣合トルクTeqがトルク指令Tm*に設定されるから、通常時の操作感と同様に車両を操作すると、車両はずり下がってしまう。したがって、実施例の雪道用トルク設定マップを用いてトルク指令Tm*を設定することにより、坂路発進時の車両のずり下がりを抑制することができるのである。運転者が更にアクセルペダル53を踏み込んだときには、通常時トルク設定マップに比してアクセル開度Accに対する駆動トルクTdの特性が低特性となる雪道用トルク設定マップを用いて導出される駆動トルクTdがトルク指令Tm*として設定されるから、通常時トルク設定マップを用いてトルク指令Tm*を設定する場合に比して、トルク指令Tm*の変化を小さくすることができる。この結果、トルク指令Tm*が大きく変化することにより生じる空転によるスリップの発生を抑制することができる。
【0022】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、運転者が走行モードスイッチ59を操作することにより雪道走行モードを設定したときには、アクセル開度Accと駆動トルクTdとの関係が駆動トルクTdが釣合トルクTeqに至るまでの範囲では通常時トルク設定マップと同一となり駆動トルクTdが釣合トルクTeqより大きい範囲では通常時トルク設定マップよりも低特性となる雪道用トルク設定マップを作成し、この雪道用トルク設定マップを用いてモータ22のトルク指令Tm*を設定するから、雪道での坂路発進であっても通常時の坂路発進と同様の操作感により車両を操作することができると共に更なるアクセルペダル53の踏み込みによっても空転によるスリップの発生を抑制することができる。即ち、雪道での坂路発進でも通常時と同様の操作により車両のずり下がりを抑制することができると共に空転によるスリップの発生を抑制することができるのである。この結果、雪道での坂路発進をスムーズに行なうことができる。もとより、発進後における走行もスムーズに行なうことができる。
【0023】
実施例の電気自動車20では、車両のずり下がりや空転によるスリップの発生が生じやすい路面状態として雪道での坂路発進を一例として説明したが、濡れた路面や凍結路面などのように低μ路における坂路発進の際にも走行モードスイッチ59により雪道走行モードを設定することにより同様に機能することができるのは勿論である。
【0024】
実施例の電気自動車20では、Gセンサ58からの前後加速度Gに基づいて路面勾配θを計算すると共に計算した路面勾配θを用いて釣合トルクTeqを計算したが、路面勾配θを直接検出する路面勾配センサを取り付け、この路面勾配センサからの検出値を用いて釣合トルクTeqを計算するものとしてもよい。
【0025】
実施例では、駆動輪28a,28bに駆動力を直接出力する走行用のモータ22を備える電気自動車20を一例として本発明を実施するための形態を具体的に説明したが、アクセル操作に対応して駆動輪に出力すべき駆動力を設定し、設定した駆動力を駆動輪に出力可能な駆動源を備えるものであれば、如何なる構成の車両に適用するものとしてもよい。例えば、図5の変形例のハイブリッド車220に例示するように、エンジン222とプラネタリギヤ224と二つのモータ226,228とを備える構成としてもよいし、図6の
変形例のハイブリッド車320に例示するように、エンジン322とエンジン322のクランクシャフトに接続された第1ロータ326aおよび駆動輪28a,28bに連結された駆動軸に取り付けられた第2ロータ326bからなる対ロータ電動機326と駆動軸に取り付けられたモータ328とを備える構成としてもよい。また、図7の変形例のハイブリッド車420に例示するように、駆動輪28a,28bに接続された変速機426と、この変速機426の入力軸にクラッチを介して接続されたエンジン422と、変速機426の入力軸に取り付けられたモータ424とを備える構成としてもよい。更に、こうした図5ないし図7に例示するハイブリッド車の構成の他、エンジンとエンジンからの動力を変速して駆動輪28a,28bに出力する変速機とを備えるエンジン車にも適用することができる。
【0026】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、自動車製造産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】通常時トルク設定マップの一例を示す説明図である。
【図4】雪道用トルク設定マップの一例を示す説明図である。
【図5】変形例のハイブリッド車220の構成の概略を示す構成図である。
【図6】変形例のハイブリッド車320の構成の概略を示す構成図である。
【図7】変形例のハイブリッド車420の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0029】
20 電気自動車、22 モータ、23 回転位置検出センサ、24 インバータ、26 バッテリ、28a,28b 駆動輪、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、51 シフトレバー、52 シフトポジションセンサ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、57 車速センサ、58 Gセンサ、59 走行モードスイッチ、220,320,420 ハイブリッド車、222,322,422 エンジン、224 プラネタリギヤ、226,228,328,424 モータ、326 対ロータ電動機、326a 第1のロータ、326b 第2のロータ、426 変速機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段と、
アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性を通常時の通常時駆動力特性と該通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性とを含む複数の駆動力特性から操作者の操作に基づいて設定する駆動力特性設定手段と、
路面勾配に基づいて車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力を推定する車重分力推定手段と、
前記駆動力特性設定手段により前記通常時駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、前記駆動力特性設定手段により前記低反応駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対する前記第1の駆動力特性に基づく駆動力が前記車重分力推定手段により推定される車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、該釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段と、
該目標駆動力設定手段により設定された目標駆動力に基づいて前記駆動力出力手段を制御する駆動制御手段と、
を備える自動車。
【請求項2】
前記車重分力推定手段は、車両の重力加速度を検出する重力加速度検出手段と、該検出された重力加速度に基づいて路面勾配を演算すると共に該演算した路面勾配に基づいて前記車重分力を演算する車重分力演算手段と、を備える手段である請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記駆動力特性設定手段は、操作者により通常走行モードが設定されたときに前記通常時駆動力特性をアクセル対応駆動力特性として設定し、操作者により雪道走行モードが設定されたときに前記低反応駆動力特性をアクセル対応駆動力特性として設定する手段である請求項1または2記載の自動車。
【請求項4】
前記駆動力出力手段は、電動機および/または内燃機関からの駆動力を直接または間接に出力する手段である請求項1ないし3いずれか記載の自動車。
【請求項5】
走行用の駆動力を出力する駆動力出力手段を備える自動車の制御方法であって、
(a)アクセル操作に対する駆動力の特性であるアクセル対応駆動力特性を通常時の通常時駆動力特性と該通常時駆動力特性より低反応な低反応駆動力特性とを含む複数の駆動力特性から操作者の操作に基づいて設定し、
(b)路面勾配に基づいて車両に作用する車重の車両走行方向の分力である車重分力を推定し、
(c)前記ステップ(a)により前記通常時駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対して予め設定された第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、前記ステップ(a)により前記低反応駆動力特性がアクセル対応駆動力特性として設定されたときにはアクセル操作に対する前記第1の駆動力特性に基づく駆動力が前記ステップ(b)により推定される車重分力と釣り合う釣合駆動力となるアクセル操作量までのアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、該釣合駆動力となるアクセル操作量を超えるアクセル操作に対しては前記第1の駆動力特性に比して低反応な第2の駆動力特性に基づいて目標駆動力を設定し、
(d)該設定した目標駆動力に基づいて前記駆動力出力手段を制御する
自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−42528(P2006−42528A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220531(P2004−220531)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】