説明

薄膜トランジスタ及び表示装置

【課題】半導体層をゲート電極によって遮光したボトムゲート型薄膜トランジスタのオフ電流を低減する。
【解決手段】ゲート電極層と、第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に接して設けられた前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、前記ゲート電極層と前記第1の半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層と、前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、前記不純物半導体層及び前記第1及び第2の半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有し、前記第1の半導体層のゲート電極層側は全面が前記ゲート電極層によって覆われており、前記第1の半導体層と前記ソース電極及びドレイン電極層が接する部分のポテンシャル障壁は0.5eV以上である薄膜トランジスタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薄膜トランジスタ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁性表面を有する基板(例えば、ガラス基板)上の半導体薄膜(厚さ数nm〜数百nm程度)によって構成された、薄膜トランジスタが注目されている。薄膜トランジスタは、IC(Integrated Circuit)及び電気光学装置のような電子デバイスに広く応用されている。特に、液晶表示装置などに代表される、画像表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。液晶表示装置などの画像表示装置では、スイッチング素子として、主に非晶質半導体膜または多結晶半導体膜を用いた薄膜トランジスタが用いられている。更には、微結晶半導体膜を用いた薄膜トランジスタが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
薄膜トランジスタの性能は、ゲート電圧を変化させた際にソースとドレインの間に流れる電流の変化量が大きいほど優れているといえる。ゲート電圧を変化させた際にソースとドレインの間に流れる電流の変化量を示すものとしてサブスレッショルド値が広く知られている。
【0004】
また、薄膜トランジスタは光リーク電流の低減を要する。光リーク電流とは、薄膜トランジスタの半導体層に光が照射されることで半導体層に光起電力効果が生じ、ソースとドレインの間に電流が流れてしまうことで生じる電流をいう。そのため、薄膜トランジスタの半導体層を遮光するための技術開発が数多くなされてきた(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4409134号明細書
【特許文献2】特開平10−20298号公報
【特許文献3】特開平7−122754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、表示装置に適用される薄膜トランジスタでは、半導体層に光が照射されることで光リーク電流を生じる。光リーク電流が生じると、例えば表示装置のコントラスト比が低下するなどして、表示品質が低下する。このような光リーク電流を抑制するためには半導体層を遮光すればよい。例えば、光が入射する側に、半導体層と重畳するようにゲート電極を設ければよい。
【0007】
しかし、例えば、微結晶半導体層上に非晶質半導体層を積層した薄膜トランジスタにおいて、半導体層をゲート電極と重畳させると、オフ電流が増大する傾向がある。特に、Vgs<0のときにゲート電圧を低くするにつれてオフ電流が大きく増大する。すなわち、オフ電流の跳ね上がりが大きい。
【0008】
そこで、上記の問題点に鑑み、ゲート電極により半導体層を遮光した場合であっても、オフ電流の跳ね上がりが小さい薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ボトムゲート型薄膜トランジスタであって、キャリア移動度の高い半導体層上にキャリア移動度の低い半導体層が積層された半導体層を有し、これらの半導体層の全面がゲート電極により遮光され、キャリア移動度の高い半導体層とドレイン電極が接する部分のポテンシャル障壁が大きい薄膜トランジスタである。具体的には、この接する部分のドレイン電極を仕事関数の低い材料で形成する。
【0010】
本発明の一態様は、ゲート電極層と、第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に接して設けられた前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、前記ゲート電極層と前記第1の半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層と、前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、前記不純物半導体層及び前記第1及び第2の半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有し、前記第1の半導体層のゲート電極層側は全面が前記ゲート電極層と重畳し、前記第1の半導体層と前記ソース電極及びドレイン電極層が接する部分のポテンシャル障壁は0.5eV以上であることを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0011】
本発明の一態様は、ゲート電極層と、第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に接して設けられた前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、前記ゲート電極層と前記第1の半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層と、前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、前記不純物半導体層及び前記第1及び第2の半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有し、前記第1の半導体層のゲート電極層側は全面が前記ゲート電極層と重畳し、前記ソース電極及びドレイン電極層を形成する材料の仕事関数φと、前記第1の半導体層の電子親和力(真空準位と前記第1の半導体層の移動度端の底との差)χと、前記第1の半導体層の禁制帯幅Eについて、E+χ−φが0.5eV以上であることを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0012】
上記構成の薄膜トランジスタにおいて、前記第1の半導体層は前記ゲート電極層により遮光されているとよい。従って、ゲート電極層は、遮光性材料により形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成の薄膜トランジスタにおいて、前記第2の半導体層の禁制帯幅は、前記ソース電極及びドレイン電極層が接する前記第1の半導体層の禁制帯幅よりも大きいことが好ましい。第2の半導体層の禁制帯幅を第1の半導体層の禁制帯幅よりも大きくすると、少なくとも第1の半導体層のポテンシャル障壁のみを考慮すれば十分であるからである。
【0014】
上記構成の薄膜トランジスタは、前記第1の半導体層が結晶性半導体を有し、前記第2の半導体層が非晶質半導体を有する構成とすることで得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
ボトムゲート型薄膜トランジスタにおいて、第1の半導体層上に第2の半導体層を設けると、オンしたときには電流は主に第1の半導体層側を流れ、オフしたときには電流は主に第2の半導体層側を流れる。そのため、第1の半導体層をキャリア移動度の高い半導体により形成し、第2の半導体層をキャリア移動度の低い半導体により形成することで、オン電流が大きく、オフ電流が小さい(すなわち、オンオフ比が高い)薄膜トランジスタを得ることができる。また、半導体層をゲート電極層と重畳させて遮光することができ、光リーク電流を低減することができる。すなわち、本発明の一態様である薄膜トランジスタの構成により、光リーク電流が小さく、且つオンオフ比が高い薄膜トランジスタを得ることができる。
【0016】
光リーク電流が小さく、オンオフ比が高い薄膜トランジスタを表示装置に適用することで、コントラスト比が高く、消費電力が小さい表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】薄膜トランジスタの構造の一例を説明する図。
【図2】薄膜トランジスタの構造の一例を説明する図。
【図3】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図4】薄膜トランジスタの構造の一例を説明する図。
【図5】薄膜トランジスタのオフ電流の経路を説明する図。
【図6】バンド構造を説明する図。
【図7】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図8】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図9】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図10】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図11】薄膜トランジスタの電気的特性を説明する図。
【図12】薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図13】薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図14】薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図15】薄膜トランジスタの作製方法を説明する図。
【図16】表示装置の構成を説明するブロック図。
【図17】液晶表示パネルを説明する上面図及び断面図。
【図18】発光表示パネルを説明する上面図及び断面図。
【図19】表示装置を用いた電子機器を説明する図。
【図20】薄膜トランジスタの構造の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。また、便宜上、絶縁層は上面図には表さない場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である薄膜トランジスタについて図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態の薄膜トランジスタの一例を示す。
【0021】
図1に示す薄膜トランジスタは、ゲート電極層102と、半導体層(第1の半導体層106及び第2の半導体層108)と、ゲート電極層102と半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層104と、半導体層に接して設けられた不純物半導体層110と、不純物半導体層110及び半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層112と、を有するものであって、半導体層の全面がゲート電極層102と重畳している。また、当該薄膜トランジスタは、保護層114によって覆われていることが好ましい。当該薄膜トランジスタを表示装置の画素トランジスタとして用いる場合には、図1に示すように保護層114に開口部116を設け、開口部116を介してソース電極及びドレイン電極層112に接続されるように画素電極層118を設ければよい。なお、第2の半導体層108は、第1の半導体層106に接して設けられており、第1の半導体層106よりもキャリア移動度が低い材料により設けるとよい。
【0022】
図1に示すように、薄膜トランジスタの半導体層の全面がゲート電極層102と重畳することで、基板100側からの光リーク電流を低減することができる。
【0023】
また、図1に示す薄膜トランジスタでは、半導体層は、第1の半導体層106と第2の半導体層108が積層して形成されている。第2の半導体層108はオフ電流を低減するために設けられている。第2の半導体層108は、第1の半導体層106に接して設けられており、第1の半導体層106よりもキャリア移動度が低い材料により設けるとよい。例えば、第1の半導体層106として結晶性半導体層を形成し、第2の半導体層108として、後述する「非晶質半導体を含む層」(電界緩和可能な半導体層)を形成するとよい。薄膜トランジスタがオンすると第1の半導体層106に流れる電流が支配的になり、薄膜トランジスタがオフすると第2の半導体層108に流れる電流が支配的になる。また、第2の半導体層108を後述する「非晶質半導体を含む層」とすることで、第2の半導体層108を設けることによるオン電流の低下を防ぐこともできる。そのため、第1の半導体層106を結晶性半導体層とし、第2の半導体層108を後述する「非晶質半導体を含む層」とすることで、オンオフ比が高い薄膜トランジスタを得ることができる。ただし、第2の半導体層108はこれに限定されず、例えば非晶質半導体により形成してもよい。
【0024】
ここで、薄膜トランジスタを構成する層のそれぞれについて説明する。
【0025】
基板100は、基板100上に形成される薄膜(結晶性シリコンなど)の形成工程に耐えうる程度の耐熱性及び耐薬品性などを有していればよく、特定の材料の基板に限定されるものではない。具体的には、例えば、ガラス基板、石英基板、ステンレス基板及びシリコン基板が挙げられる。なお、図1に示す薄膜トランジスタを表示装置に適用する場合には、基板100には透光性を有する基板を用いればよく、例えば、ガラス基板または石英基板を用いればよい。基板100がマザーガラスの場合には、第1世代(例えば、320mm×400mm)〜第10世代(例えば、2950mm×3400mm)のものを用いればよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
ゲート電極層102は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム若しくはスカンジウムなどの金属材料またはこれらを主成分とする合金材料により形成することができる。ゲート電極層102は、これらの材料により単層で形成してもよいし、これらを積層して形成してもよい。なお、ゲート電極層102は、ゲート配線も構成する。
【0027】
ゲート絶縁層104は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンによって形成することができる。また、ゲート絶縁層104は、単層で形成してもよいし、これらを積層して形成してもよい。第1の半導体層106が結晶性半導体層である場合には、少なくとも第1の半導体層106に接するゲート絶縁層104を酸化シリコン層とすることで第1の半導体層106の結晶性を向上させることができる。酸化シリコン層は、特に好ましくは、形成ガスに珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)を用いて形成する。
【0028】
第1の半導体層106は、上記説明したように結晶性半導体により形成するとよい。結晶性半導体には、多結晶半導体または微結晶半導体などを含むが、結晶化工程が不要な微結晶半導体により形成することが好ましい。
【0029】
第2の半導体層108は、好ましくは、非晶質半導体と微小半導体結晶粒を有し、従来の非晶質半導体と比較して、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体層である。すなわち、このような半導体層は、従来の非晶質半導体と比較して欠陥が少なく、価電子帯のバンド端(移動度端)における準位のテイル(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体層である。このような半導体層を「非晶質半導体を含む層」と記載することとする。
【0030】
ただし、第2の半導体層108は、上記説明に限定されず、非晶質半導体により形成してもよい。第2の半導体層108は、少なくとも第1の半導体層106よりもキャリア移動度の低い材料により設ければよい。
【0031】
ここで、第1の半導体層106と第2の半導体層108の好ましい一形態について説明する。
【0032】
第1の半導体層106は、例えば微結晶半導体により形成されるとよい。ここで、微結晶半導体とは、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造の半導体をいう。微結晶半導体は、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、結晶粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは、20nm以上50nm以下の柱状結晶または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している半導体である。このため、柱状結晶または針状結晶の界面には、結晶粒界が形成される場合もある。
【0033】
微結晶半導体の一である微結晶シリコンでは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側にシフトしている。すなわち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体が得られる。このような微結晶半導体に関する記述は、例えば、特許文献1(米国特許4,409,134号明細書)で開示されている。
【0034】
また、第1の半導体層106に含まれる酸素及び窒素の濃度(二次イオン質量分析法による測定値)を、1×1018atoms/cm未満とすると、第1の半導体層106の結晶性を高めることができる。
【0035】
第2の半導体層108は、「非晶質半導体を含む層」、ハロゲンを含有する「非晶質半導体を含む層」、または窒素を含有する「非晶質半導体を含む層」、最も好ましくはNH基を含有する「非晶質半導体を含む層」で形成するとよい。ただし、これらに限定されない。
【0036】
第1の半導体層106と第2の半導体層108の界面領域は、微結晶半導体領域、及び当該微結晶半導体領域の間に充填される非晶質半導体を有する。具体的には、第1の半導体層106から凸状に伸びた微結晶半導体領域と、第2の半導体層108と同様の「非晶質半導体を含む層」と、で形成される。
【0037】
第2の半導体層108を、例えば、「非晶質半導体を含む層」、ハロゲンを含有する「非晶質半導体を含む層」、または窒素を含有する「非晶質半導体を含む層」、またはNH基を含有する「非晶質半導体を含む層」により形成すると、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、上記の界面領域において、錐形状の微結晶半導体領域を有するため、縦方向(膜厚方向)の抵抗、すなわち、第2の半導体層108と、不純物半導体層110により構成されるソース領域またはドレイン領域と、の間の抵抗を低くすることができ、薄膜トランジスタのオン電流を高めることが可能である。
【0038】
または、第2の半導体層108を有さない構成としてもよい。この場合には、上記した界面領域が第1の半導体層106と不純物半導体層110の間に設けられるとよい。この界面領域には、微結晶半導体領域と、当該微結晶半導体領域の間に充填された非晶質半導体領域と、を有する。微結晶半導体領域は、第1の半導体層106から伸びた微結晶半導体により形成される。このとき、該界面領域における非晶質半導体領域に対する微結晶半導体領域の割合は小さいことが好ましい。さらには、一対の不純物半導体層110の間(ソース領域とドレイン領域の間)、すなわち、キャリアが流れる領域においては、微結晶半導体領域の割合が小さいことが好ましい。薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができるためである。また、上記の界面領域では縦方向(膜厚方向)の抵抗が低いため、薄膜トランジスタのオン電流を大きくすることが可能である。
【0039】
なお、第1の半導体層106が薄くなるとオン電流が低下し、第1の半導体層106が厚くなると第1の半導体層106とソース電極及びドレイン電極層112の接触面積が増大し、ソース電極及びドレイン電極層112の仕事関数が高い場合には、後述するようにオフ電流が向上する。
【0040】
上記の微結晶半導体領域は、ゲート絶縁層104から第2の半導体層108に向かって先端が狭くなる凸状の結晶粒により大部分が構成されているとよい。または、ゲート絶縁層104から第2の半導体層108に向かって幅が広がる凸状の結晶粒により大部分が構成されていてもよい。
【0041】
上記の界面領域において、微結晶半導体領域が、ゲート絶縁層104から第2の半導体層108に向かって先端が狭くなる凸状の結晶粒の場合は、第1の半導体層106側のほうが、第2の半導体層108側と比較して、微結晶半導体領域の割合が高い。微結晶半導体領域は、第1の半導体層106の表面から膜厚方向に成長するが、原料ガスにおいてシランに対する水素の流量が小さく(すなわち、希釈率が低く)、または窒素を含む原料ガスの濃度が高いと、微結晶半導体領域における結晶成長が抑制され、結晶粒は錐状になり、堆積されて形成される半導体は、大部分が非晶質となる。
【0042】
また、上記の界面領域は、窒素、特にNH基を含有することが好ましい。これは、微結晶半導体領域に含まれる結晶の界面、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面において、窒素、特にNH基がシリコン原子のダングリングボンドと結合すると、欠陥を低減させ、キャリアが流れやすくなるためである。このため、窒素、好ましくはNH基を1×1020cm−3乃至1×1021cm−3とすることで、シリコン原子のダングリングボンドを窒素、好ましくはNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなる。この結果、結晶粒界や欠陥におけるキャリアの移動を促進する結合ができ、上記の界面領域のキャリア移動度が上昇する。そのため、薄膜トランジスタの電界効果移動度が向上する。
【0043】
また、上記の界面領域の酸素濃度を低減させることにより、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面または結晶粒間の界面における欠陥を低減させ、キャリアの移動を阻害する結合を低減させることができる。
【0044】
ゲート絶縁層104の界面から第2の半導体層108の凸部の先端までの距離を3nm以上80nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下とすることで、薄膜トランジスタのオフ電流を効果的に低減することができる。
【0045】
不純物半導体層110は、半導体層とソース電極及びドレイン電極層112をオーミック接触させることを目的として設ける層であり、形成ガスに一導電型を付与する不純物元素を含ませることで形成することができる。導電型がn型の薄膜トランジスタを形成する場合には、不純物元素として代表的にはリンを添加すればよく、水素化シリコンにフォスフィン(化学式:PH)などのn型の導電型を付与する不純物元素を含む気体を加えればよい。導電型がp型の薄膜トランジスタを形成する場合には、不純物元素として代表的にはボロンを添加すればよく、水素化シリコンにジボラン(化学式:B)などのp型の導電型を付与する不純物元素を含む気体を加えればよい。また、不純物半導体層110の結晶性は特に限定されず、結晶性半導体であってもよいし、非晶質半導体であってもよいが、結晶性半導体により設けることが好ましい。不純物半導体層110を結晶性半導体により設けることで、オン電流が大きくなるからである。
【0046】
ソース電極及びドレイン電極層112は、導電性材料により単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよいが、後述するように少なくとも第1の半導体層106に接する部分の仕事関数が低い材料であることを要する。
【0047】
保護層114は、ゲート絶縁層104と同様に形成することができるが、窒化シリコンにより形成することが特に好ましい。特に、大気中に浮遊する有機物や金属、水蒸気などの汚染源となりうる不純物の侵入を防ぐことができるよう、緻密な窒化シリコン層とすることが好ましい。緻密な窒化シリコン層は、例えば、周波数が1GHz以上のプラズマを用いたプラズマCVD法により形成することができる。
【0048】
画素電極層118は、透光性を有する導電性高分子(導電性ポリマーともいう。)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、またはこれらの2種以上の共重合体などが挙げられる。
【0049】
または、画素電極層118は、例えば、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと記載する。)、インジウム亜鉛酸化物または酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物などを用いて形成してもよい。
【0050】
ここで、比較のために、半導体層の一部のみがゲート電極により遮光されている薄膜トランジスタについて、図2を参照して説明する。
【0051】
図2に示す薄膜トランジスタは、ゲート電極層202と、半導体層(第1の半導体層206及び第2の半導体層208)と、ゲート電極層202と半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層204と、半導体層に接して設けられた不純物半導体層210と、不純物半導体層210及び半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層212と、を有するものであって、ゲート電極層は半導体層の一部のみと重畳している。また、図2に示す薄膜トランジスタは、図1に示すものと同様に保護層214によって覆われ、保護層214に設けた開口部216を介してソース電極及びドレイン電極層212に接続されるように画素電極層218が設けられている。第2の半導体層208は、第1の半導体層206に接して設けられており、第1の半導体層206よりもキャリア移動度が低い材料により設けるとよい。
【0052】
図2に示すように、薄膜トランジスタの半導体層の一部のみがゲート電極層202と重畳すると、半導体層の一部は光(主に基板200側から入射する光)に曝され、光リーク電流を低減することができない。
【0053】
ところで、図3は、図4に示す薄膜トランジスタにおけるゲート電圧に対するドレイン電流の電流−電圧特性を示す曲線(以下、I−V曲線と記す。)を示す。図3(A)は図4(A)に示す薄膜トランジスタのI−V曲線を示し、図3(B)は、図4(B)に示す薄膜トランジスタのI−V曲線を示している。図3(A)と図3(B)では、オフ電流に大きな差が見られないため、図4(A)に示す薄膜トランジスタと図4(B)に示す薄膜トランジスタでは、オフ電流に大きな差がないことになる。図1に示す薄膜トランジスタと図4(A)に示す薄膜トランジスタでは、好ましくは結晶性半導体により形成される第1の半導体層がソース電極及びドレイン電極層と接して形成されているか否かが異なる。これがオフ電流の違いに影響しているのではないかと考えられる。
【0054】
ここで、図1に示す薄膜トランジスタと図2に示す薄膜トランジスタを、図5を参照して比較する。
【0055】
図5(A)は、図1に示す薄膜トランジスタの一部を拡大して示したものである。図5(B)は、図2に示す薄膜トランジスタの一部を拡大して示したものである。図5(A)及び図5(B)中の矢印は、オフ電流の主な経路を示している。
【0056】
なお、上記したように、第1の半導体層106が薄くなるとオン電流が低下し、第1の半導体層106が厚くなると第1の半導体層106とソース電極及びドレイン電極層112の接触面積が増大し、ソース電極及びドレイン電極層112の仕事関数が高い場合には、オフ電流が向上する。本発明の一態様である薄膜トランジスタにおいては、ソース電極及びドレイン電極層112に仕事関数の低い材料を用いるため、第1の半導体層106を薄膜トランジスタが十分なオン電流を得るために必要な厚さとすることができる。従って、従来よりもオン電流を大きくすることができる。
【0057】
図5(A)では、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112(ドレイン電極側)の一部が接している部分130が存在する。ここから正孔が注入され、第1の半導体層106中を電流が流れる。この電流は、ソース領域を形成している不純物半導体層110に向かって部分131を流れる電流と、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112の一部が接している部分132に向かう電流とに大別され、これらが支配的であると考えられる。なお、部分131では部分130から注入された正孔とソースから注入された電子が再結合していると考えられる。
【0058】
図5(B)では、第2の半導体層208のドレイン近傍の領域である部分230にキャリアが生じ、これに起因するオフ電流が支配的であると考えられる。部分230では、正孔と電子を生じて空乏層を形成しつつ、電子はドレインに向かって流れ、正孔は第1の半導体層206に向かって流れることで電流が流れる。正孔は第1の半導体層206中を流れ、部分231でソースからの電子と再結合すると考えられる。
【0059】
ここで、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112の一部が接している部分130におけるバンド構造について考察する。図6は、部分130におけるバンド構造の模式図を示す。
【0060】
図6において、φは、ソース電極及びドレイン電極層112を形成する材料の仕事関数である。χは、第1の半導体層106の電子親和力(真空準位と第1の半導体層106の移動度端の底との差)である。Eは第1の半導体層106の禁制帯幅である。第1の半導体層106とソース電極及びドレイン電極層112との境界のポテンシャル障壁の大きさをEとすると、これらの間には以下の式(1)の関係が成立する。
【0061】
【数1】

【0062】
境界のポテンシャル障壁の大きさEが小さいほど第1の半導体層106に正孔が注入されやすく、電流が流れやすい。従って、第1の半導体層106の禁制帯幅Eが広く、第1の半導体層106の電子親和力χが大きく、ソース電極及びドレイン電極層112を形成する材料の仕事関数φが低い場合には、境界のポテンシャル障壁の大きさEが大きくなり、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112の一部が接している部分130を介した導通は生じにくいことになる。
【0063】
従って、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112の一部が接している部分130を介して流れる電流を小さくするためには、ソース電極及びドレイン電極層112を仕事関数φの低い材料により形成すればよい。そこで、これを裏付けるために、図5(A)の構造においてソース電極及びドレイン電極層112を形成する材料の仕事関数φを3.9eV、4.2eV、4.5eVとして計算を行った。もちろん、他のパラメータは一定とした。その結果について図7及び図8に示す。なお、ここで、チャネル長(一対の不純物半導体層110により形成されるソース領域とドレイン領域の間の長さ)Lを4μm、チャネル幅(不純物半導体層110の幅)Wを20μmとし、ドレイン電圧Vは1V、10Vとした。
【0064】
図7(A)は、φ=3.9eVのときのI−V曲線を示す。図7(B)は、φ=4.2eVのときのI−V曲線を示す。図8は、φ=4.5eVのときのI−V曲線を示す。図7(A)、図7(B)及び図8から明らかなように、仕事関数φが高いほどオフ電流が大きくなる傾向があることがわかる。
【0065】
図9は、E=1.1〜1.3eVにおいて、ポテンシャル障壁(ショットキーバリアともいう。)E(横軸)に対するオフ電流Ioff(縦軸)を示した図である。ここで、ドレイン電圧V=10Vとし、ゲート電圧V=Vth−10Vとした。図9(A)は27℃における図であり、図9(B)は85℃における図である。図9(A)及び図9(B)によると、温度に関わらず、ポテンシャル障壁Eが0.5eV以上であれば、オフ電流を低減するには十分であることがわかる。なお、ここで、チャネル長(一対の不純物半導体層110により形成されるソース領域とドレイン領域の間の長さ)Lを4μm、チャネル幅(不純物半導体層110の幅)Wを20μmとする。なお、図9において用いたE=1.1〜1.3eVは、微結晶半導体のエネルギーギャップと概ね一致するものである。
【0066】
ここで、いくつかの材料の仕事関数を表1に例示する。ただし、これらに限定されるものではない。
【0067】
【表1】

【0068】
ソース電極及びドレイン電極層112の少なくとも一部に用いる材料として、上記の表1に例示したものでは、イットリウム、チタン、またはチタンの窒化物である窒化チタンが好ましい。または、これらの混合物を用いてもよい。特に、希土類元素をチタンに含ませたものが好ましい。最も好ましくは、イットリウム及びジルコニウムの一方または双方をチタンに0.2重量%以上20重量%以下で含ませたものを用いる。イットリウムは、仕事関数が非常に低いからである。また、ジルコニウムは、仕事関数が低く、更には、チタンと物理的性質及び化学的性質が類似しているからである。イットリウム及びジルコニウムの一方または双方をチタンに混合させることで、イットリウム及びジルコニウムの一方または双方のみを用いる場合と比較して、コストを低く抑えることができる。
【0069】
また、このような仕事関数の低い材料を用いることで薄膜トランジスタのオン電流を大きくすることも可能である。なお、これは図1に示す薄膜トランジスタに限定されず、図2及び図4に示す薄膜トランジスタにおいても、仕事関数の低い材料を用いることで薄膜トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0070】
ここで、ソース電極及びドレイン電極層をチタンまたはモリブデンにより形成した薄膜トランジスタについてのI−V曲線を図10及び図11に示す。すなわち、図10(A)は、図2に示す薄膜トランジスタについてのI−V曲線であって、ソース電極及びドレイン電極層212をモリブデンにより形成したものを示す。図10(B)は、図1に示す薄膜トランジスタについてのI−V曲線であって、ソース電極及びドレイン電極層112をモリブデンにより形成したものを示す。図11(A)は、図2に示す薄膜トランジスタについてのI−V曲線であって、ソース電極及びドレイン電極層212をチタンにより形成したものを示す。図11(B)は、図1に示す薄膜トランジスタについてのI−V曲線であって、ソース電極及びドレイン電極層112をチタンにより形成したものを示す。
【0071】
図10(A)と図10(B)の比較から、ソース電極及びドレイン電極層をモリブデンにより形成した場合には、図1に示す薄膜トランジスタのオフ電流は、図2に示す薄膜トランジスタのオフ電流よりも大きくなることがわかる。
【0072】
図11(A)と図11(B)の比較から、ソース電極及びドレイン電極層をチタンにより形成した場合には、図1に示す薄膜トランジスタのオフ電流と図2に示す薄膜トランジスタのオフ電流の間には大きな違いが見られない。従って、半導体層を遮光することができる図1に示す薄膜トランジスタであっても、オフ電流を低く抑えることができる。すなわち、光リーク電流が小さく、オフ電流が小さい薄膜トランジスタを得ることができる。
【0073】
以上説明したように、ソース電極及びドレイン電極層112(具体的には、第1の半導体層106に接するソース電極及びドレイン電極層112の部分)を仕事関数の低い金属材料により形成することで、半導体層の全面がゲート電極層と重畳する場合に生じる、第1の半導体層106の一部とソース電極及びドレイン電極層112の一部が接している部分130を介したリーク電流の発生を防止することができる。更には、半導体層の全面がゲート電極層102と重畳することで光リーク電流を低減させることができるため、光リーク電流が小さく、且つオフ電流が小さい薄膜トランジスタを得ることができる。
【0074】
次に、上記説明した第1の半導体層106及び第2の半導体層108の好ましい形態の作製方法について説明する。
【0075】
第1の半導体層106となる半導体膜は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体(シラン(化学式:SiH)など)と水素を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。または、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、ヘリウム、ネオン、クリプトンなどの希ガスと、を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンを含む堆積性気体の流量に対して、水素の流量を10〜2000倍、好ましくは10〜200倍に希釈して形成する。第1の半導体層106となる半導体膜は、1nm以上20nm以下、好ましくは3nm以上10nm以下の厚さで形成する。
【0076】
または、ゲルマン(化学式:GeH)若しくはジゲルマン(化学式:Ge)などの堆積性気体を用いて、第1の半導体層106となる半導体膜をゲルマニウムにより形成してもよい。
【0077】
なお、第1の半導体層106となる半導体膜を形成する前に、プラズマCVD装置の処理室内を排気しつつ、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を導入して、処理室内の不純物元素を除去すると、形成される膜の界面における不純物元素を少なくすることが可能であり、薄膜トランジスタの電気的特性を向上させることができる。
【0078】
第2の半導体層108となる半導体膜は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体と水素を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。このとき、第1の半導体層106となる半導体膜の成膜条件よりも、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らして(すなわち、希釈率を低くして)成膜することで、結晶成長が抑制され、膜が堆積されるにつれ、微結晶半導体領域を含まない第2の半導体層108となる半導体膜が形成されていく。
【0079】
なお、第2の半導体層108となる半導体膜の成膜初期には、第1の半導体層106となる半導体膜の成膜条件よりもシリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らす(すなわち、希釈率を低くする)ことで、第2の半導体層108となる半導体膜に微結晶半導体領域を残存させることができる。また、上記条件よりも、更に、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らしていく(すなわち、希釈率を低くしていく)と、第2の半導体層108となる半導体膜を、「非晶質半導体を含む層」となる半導体膜とすることができる。または、上記条件よりも、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を更に減らし(すなわち、希釈率を更に低くし)、且つ窒素を含むガスを混合させることで、第2の半導体層108の非晶質半導体領域を大きく形成することができる。なお、第2の半導体層108となる半導体膜もゲルマニウムを用いて形成してもよい。
【0080】
また、第2の半導体層108となる半導体膜の成膜初期においては、第1の半導体層106となる半導体膜を種結晶として、全体に膜が堆積される。その後は部分的に結晶成長が抑制され、錐状の微結晶半導体領域が成長する(成膜中期)。さらに、錐状の微結晶半導体領域の結晶成長が抑制され、上層に微結晶半導体領域を含まない第2の半導体層108となる半導体膜が形成される(成膜後期)。
【0081】
なお、第1の半導体層106は結晶性半導体層に限定されない。例えば、第2の半導体層108よりもキャリア移動度が高い半導体層であればよい。
【0082】
なお、ゲート電極層102とソース電極及びドレイン電極層112の重畳部分の幅が大きいほどオフ電流が増加する傾向が見られる。
【0083】
次に、図1に示す薄膜トランジスタの作製方法について図面を参照して説明する。
【0084】
まず、基板100上にゲート電極層102を形成する。基板100は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノシリケートガラスなどの、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度以上の耐熱性を有するプラスチック基板などを用いることができる。また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁層を設けた基板を用いてもよい。すなわち、基板100としては、絶縁性表面を有する基板を用いる。基板100がマザーガラスの場合、第1世代(例えば、320mm×400mm)〜第10世代(例えば、2950mm×3400mm)のどれを用いてもよい。
【0085】
ゲート電極層102は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム若しくはスカンジウムなどの金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。これらは単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。例えば、アルミニウム層上にモリブデン層またはチタン層が積層された二層の積層構造とすることが好ましい。電気的抵抗が低い材料の層上にバリア層として機能する金属層が積層されることで、電気的抵抗を低くすることができ、且つ金属層から半導体層への金属元素の拡散を防止することができる。例えば、Al−Nd合金層上にモリブデン層を積層して形成すると、耐熱性に優れ、且つ電気的に抵抗が低い導電層を形成することができる。または、三層以上の積層構造としてもよい。
【0086】
ゲート電極層102は、スパッタリング法または真空蒸着法により基板100上に導電膜を形成し、該導電膜上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法などによりレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて導電膜をエッチングすることで形成することができる(図12(A)を参照)。また、銀、金若しくは銅などの導電性ナノペーストをインクジェット法により基板上に吐出して焼成することで形成することもできる。なお、ゲート電極層102と基板100の密着性を向上させ、ゲート電極層102を構成する材料の拡散を防ぐバリアメタルとして、上記の金属材料の窒化物層を、基板100とゲート電極層102の間に設けてもよい。ここでは、基板100上に導電膜を形成し、フォトマスクを用いて形成したレジストマスクによりエッチングすることでゲート電極層102を形成する。
【0087】
なお、ゲート電極層102上には、後の工程で半導体層及びソース配線(信号線)を形成するので、段差の箇所における配線切れ防止のため側面がテーパーを有するように加工することが好ましい。また、この工程でゲート配線(走査線)も同時に形成することができる。更には、画素部が有する容量線も形成することができる。なお、走査線とは、画素を選択する配線をいう。
【0088】
次に、ゲート電極層102を覆ってゲート絶縁層104を形成し、ゲート絶縁層104上に第1の半導体層106となる第1の半導体膜150、第2の半導体層108となる第2の半導体膜152、及び不純物半導体層110となる不純物半導体膜154を順に積層して形成する。なお、少なくとも、ゲート絶縁層104、第1の半導体膜150及び第2の半導体膜152を連続して成膜することが好ましい。更に好ましくは、不純物半導体膜154まで連続して成膜する。少なくとも、ゲート絶縁層104、第1の半導体膜150及び第2の半導体膜152を大気に触れさせることなく連続して成膜することで、大気成分や大気中に浮遊する不純物元素によりこれらの層が汚染されずに、積層膜の各層の界面を形成することができる。そのため、薄膜トランジスタの電気的特性のばらつきを低減させることができ、信頼性の高い薄膜トランジスタを歩留まりよく作製することができる。
【0089】
ゲート絶縁層104は、CVD法またはスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンで形成することができる。好ましくは酸化シリコンにより形成する。特に、形成ガスに珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)を用いた酸化シリコン層により形成すると、ゲート絶縁層104に接して形成される半導体層が結晶性である場合に、その結晶性を高めることができる。また、ゲート絶縁層104は、単層で形成してもよいし、これらを積層して形成してもよい。例えば、ゲート絶縁層104は、50nm以上、好ましくは50nm以上400nm以下、より好ましくは150nm以上300nm以下となるように形成する。窒化酸化シリコン層を用いると、基板100に含まれるアルカリ金属などが第1の半導体層106へ侵入することを防止することができる。また、酸化窒化シリコン層を用いることで、ゲート電極層102にアルミニウムを用いた場合に生じるヒロックの生成を防ぎ、更には、ゲート電極層102の酸化を防止することができる。また、ゲート絶縁層104の形成には、好ましくは、周波数が1GHz以上のプラズマCVD装置を用いるとよい。
【0090】
なお、ゲート絶縁層104の形成後、第1の半導体膜150の成膜前に、密着性を向上させ、または酸化を防止するための層をゲート絶縁層104上に形成してもよい。このような酸化防止などを目的として設けられる層として、例えば、酸化窒化シリコン層を窒化シリコン層により挟んだ積層構造の層が挙げられる。
【0091】
第1の半導体層106は、薄膜トランジスタのチャネル形成領域として機能する。ここでは、第1の半導体層106は結晶性半導体層である。すなわち、ここでは、第1の半導体膜150は結晶性半導体膜である。結晶性半導体膜は、プラズマCVD法などを用いて微結晶シリコンにより形成することができる。
【0092】
なお、本実施の形態の結晶性半導体層のキャリア移動度は、非晶質半導体層のキャリア移動度の約2倍以上20倍以下である。そのため、結晶性半導体層により形成される薄膜トランジスタでは、非晶質半導体層を用いた薄膜トランジスタと比較して、I−V曲線における立ち上がり部分の傾きが急峻となる。ここで、ゲート電圧とは、ソース電極の電位を基準としたゲート電極の電位との電位差をいい、ドレイン電流とは、ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流をいう。従って、結晶性半導体層をチャネル形成領域に用いた薄膜トランジスタは、スイッチング素子としての応答性に優れ、高速動作が可能である。表示装置のスイッチング素子として、結晶性半導体層をチャネル形成領域に用いた薄膜トランジスタを用いると、チャネル形成領域の面積、即ち薄膜トランジスタの面積を縮小することもできる。また、駆動回路の一部または全部を画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することもできる。
【0093】
また、結晶性半導体層は、価電子制御を目的とした不純物元素を添加せずとも弱いn型の電気伝導性を示すことが多い。そのため、薄膜トランジスタのチャネル形成領域として機能する結晶性半導体層には、p型を付与する不純物元素(例えば、ボロン)を成膜と同時に、または成膜した後に添加して閾値電圧Vthを制御してもよい。p型を付与する不純物元素として代表的にはボロンがあり、ジボラン(化学式:B)または3フッ化ボロン(化学式:BF)などの不純物気体を1ppm〜1000ppm、好ましくは1〜100ppmの割合で水素化シリコンに含ませることで形成するとよい。そして、結晶性半導体層中のボロンの濃度を、例えば1×1014〜6×1016atoms/cmとするとよい。
【0094】
結晶性半導体層は、2nm以上60nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下の厚さで形成するとよい。また、結晶性半導体層の厚さは、例えば、結晶性半導体膜の成膜工程におけるシランの流量と成膜時間により制御することができる。具体的には、酸素または窒素に代表される結晶化を阻害する成分を低減させ、シランなどの堆積性ガスの流量に対する水素などの希釈ガスの流量を大きくすることで形成することができる。このとき、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を10倍以上2000倍以下、好ましくは50倍以上200倍以下とすればよい。このように形成することで、所謂、微結晶半導体層が形成される。
【0095】
第2の半導体層108は、オフ電流を低減させるバッファ層として機能する。ここでは、第2の半導体層108を「非晶質半導体を含む層」とする場合、すなわち、従来の非晶質半導体と比較して欠陥が少なく価電子帯のバンド端(移動度端)における準位のテイル(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体により形成する場合について説明する。このような半導体膜は、上記した結晶性半導体膜の形成ガス中に、例えば第1の半導体膜150の成膜条件よりも堆積性気体に対する水素の流量比を小さくし(すなわち、希釈率を低くし)、プラズマCVD法を用いることで、結晶成長が抑制されて形成される。また、結晶性半導体膜の形成ガス中に窒素を含ませると形成しやすい。なお、第2の半導体膜152には窒素が、1×1020cm−3乃至1×1021cm−3で含まれることが好ましい。このとき、窒素は、NH基の状態で存在することが好ましい。半導体原子のダングリングボンドを窒素またはNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなるためである。この結果、結晶粒界や欠陥におけるキャリアの移動を促進する結合ができ、第2の半導体層108のキャリア移動度が向上し、薄膜トランジスタは十分に高い電界効果移動度とオン電流を得ることができる。なお、窒素はNH基のみならず、NH基の状態で存在していてもよい。このとき、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を10倍以上2000倍以下、好ましくは50倍以上200倍以下とすればよく、好ましくは第1の半導体層106を形成するときよりも希釈ガスの流量比を小さくする。
【0096】
なお、第2の半導体膜152の酸素濃度は低いことが好ましい。第2の半導体膜152の酸素濃度を低減させることにより、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域との界面や、微結晶半導体領域間の界面における、キャリアの移動を阻害する結合を少なくすることができる。
【0097】
不純物半導体層110は、不純物半導体膜154を形成し、これをエッチングして形成することができる。不純物半導体層110として導電型がn型の薄膜トランジスタを形成する場合には、代表的には不純物元素としてリンを添加すればよく、例えば水素化シリコンにフォスフィン(化学式:PH)を含む気体を加えることで形成することができる。また、導電型がp型の薄膜トランジスタを形成する場合には、代表的には不純物元素としてボロンを添加すればよく、例えば水素化シリコンにジボラン(化学式:B)を含む気体を加えることで形成することができる。不純物半導体膜154は、結晶性半導体または非晶質半導体のどちらで形成してもよいが、好ましくは結晶性半導体により形成する。不純物半導体層110となる不純物半導体膜154は、第2の半導体層108とソース電極及びドレイン電極層112がオーミック接触できる厚さとすればよく、概ね2nm以上60nm以下の厚さで形成するとよい。不純物半導体膜154を可能な範囲で薄くすると、スループットを向上させることができる。なお、不純物半導体層110を結晶性半導体により形成する場合には、酸素または窒素に代表される結晶化を阻害する成分を低減させ、シランなどの堆積性ガスの流量に対する水素などの希釈ガスの流量を大きくすることで形成することができる。このとき、不純物半導体層110を非晶質半導体により形成する場合には、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を1倍以上10倍以下、好ましくは1倍以上5倍以下とすればよいが、結晶性半導体により形成する場合には、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を10倍以上2000倍以下、好ましくは50倍以上200倍以下とすればよい。このように形成することで、所謂、微結晶半導体層が形成される。
【0098】
なお、上述したように、ゲート絶縁層104から不純物半導体膜154までは連続して成膜することが好ましい(図12(B)を参照)。複数の反応室を備えたマルチチャンバーのCVD装置を用いると、堆積する膜の種類毎に反応室を配することが可能であり、複数の異なる種類の膜を大気に触れさせることなく連続して成膜することができる。
【0099】
図13は、複数の反応室を備えたマルチ・チャンバー・プラズマCVD装置の一例の上断面を示す模式図である。この装置は、共通室272、ロード/アンロード室270、第1反応室250a、第2反応室250b、第3反応室250c及び第4反応室250dを備えている。ロード/アンロード室270のカセットに基板100が装填されると、共通室272の搬送機構276によって各反応室に基板100が搬出入される。共通室272と各反応室及びロード/アンロード室との間にはゲートバルブ274が備えられ、各反応室で行われる処理が互いに干渉しないように構成されている。各反応室は成膜する薄膜の種類に応じて使い分けることができる。例えば、第1反応室250aでは絶縁膜を成膜し、第2反応室250b及び第4反応室250dでは半導体膜を成膜し、第3反応室250cでは一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体膜を成膜する。それぞれの薄膜は最適な成膜温度が異なるので、反応室を分けておくことで成膜温度の管理が容易となり、各薄膜を最適な温度で成膜することができる。さらに、同じ膜種を繰り返し成膜することができるので、成膜履歴に係る残留不純物の影響を排除することができる。なお、一の反応室で一の膜を成膜する構成としてもよいし、結晶性半導体膜と非晶質半導体膜のように、組成の似た複数の膜を一の反応室で成膜する構成としてもよい。
【0100】
各反応室には、排気手段としてターボ分子ポンプ264とドライポンプ266が接続されている。排気手段はこれらの真空ポンプの組み合わせに限定されるものではなく、概略10−5Paから10−1Paの真空度まで排気できるものであれば他の真空ポンプを用いてもよい。ただし、第2反応室250bでは、反応室内の圧力を概略10−5Pa以下まで到達させることができるようにクライオポンプ268が接続されていることが好ましい。これらの排気手段と各反応室との間にはバタフライバルブ260及びコンダクタンスバルブ262の一方または双方が設けられている。バタフライバルブ260を用いることで排気手段と反応室を遮断することができる。そして、コンダクタンスバルブ262を用いることで排気速度を制御し、各反応室の圧力を調節することができる。
【0101】
なお、第2反応室250bに接続されているクライオポンプ268を用いることで、反応室内の圧力を10−5Paよりも低い圧力(例えば、超高真空)とすることも可能である。本実施の形態では、反応室250b内を10−5Paよりも低い圧力にすることで、半導体膜中への酸素などの大気成分の混入を防止することができる。その結果、半導体膜に含まれる酸素濃度を1×1016cm−3以下とすることができる。
【0102】
ガス供給手段258は、原料ガスが充填されているシリンダ、ストップバルブ及びマスフローコントローラなどで構成されている。ガス供給手段258aは第1反応室250aに接続され、絶縁膜を成膜するためのガスを供給する。ガス供給手段258bは第2反応室250bに接続され、半導体膜を成膜するためのガスを供給する。ガス供給手段258cは第3反応室250cに接続され、例えばn型の導電型を付与する不純物元素が添加された半導体材料ガスを供給する。ガス供給手段258dは第4反応室250dに接続され、半導体膜を成膜するためのガスを供給する。ガス供給手段258eはアルゴンを供給する。ガス供給手段258fは反応室内のクリーニングに用いるエッチングガス(ここではNFガス)を供給する。アルゴンガスとクリーニングに用いるエッチングガスはすべての反応室において用いられるため、ガス供給手段258eとガス供給手段258fはすべての反応室に接続されていることが好ましい。
【0103】
また、各反応室にはプラズマを生成するための高周波電力供給手段が連結されている。ここで、高周波電力供給手段には、高周波電源252と整合器254が含まれる。ただし、これに限定されず、マイクロ波発生部が接続されていてもよい。発生させるプラズマとしては、例えばRF(13.56MHz)プラズマ、VHFプラズマ(30MHz〜300MHz)、マイクロ波(2.45GHz)プラズマが挙げられる。なお、RFプラズマとVHFプラズマを同時に発生させる(2周波励起させる)ことで堆積率を向上させることができる。
【0104】
なお、ここで用いるプラズマはパルス変調プラズマであることが好ましい。パルス変調プラズマを用いることで、成膜時の堆積率が向上し、成膜時に発生するパーティクルの発生を抑制し、成膜される半導体膜の膜質及び厚さの均一性を向上させることができる。また、プラズマ発生時の紫外線の発生量を抑制し、成膜される半導体膜中の欠陥数を低減することができる。
【0105】
なお、同一の反応室内において、結晶性半導体膜、非晶質半導体膜、及び一導電型を付与する不純物元素が添加された不純物半導体膜を連続して成膜してもよい。具体的には、ゲート絶縁膜が形成された基板を反応室内に搬入し、該反応室で結晶性半導体膜、非晶質半導体膜、及び一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体膜(不純物半導体膜)を連続して成膜する。同一の反応室内で結晶性半導体膜及び非晶質半導体膜を連続して成膜することで、結晶歪の少ない界面を形成することが可能である。そのため、界面に意図しない準位が形成されることを防ぐことができる。また、界面に混入しうる大気成分を低減することができる。
【0106】
なお、図示しないが、図13に示すマルチ・チャンバー・プラズマCVD装置には予備室が連結されていてもよい。成膜前に予備室で基板を加熱しておくと、各反応室における成膜までの加熱時間を短縮することが可能であり、スループットを向上させることができる。
【0107】
なお、上記説明したように連続して成膜することで、汚染源となりうる不純物元素によって界面が汚染されることなく、複数の膜を積層して形成することができる。そのため、薄膜トランジスタの電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0108】
上記に示すプラズマCVD装置を用いることで、各反応室で一種類の膜または組成の類似する複数種の膜を成膜することが可能であり、且つ大気に曝すことなく連続して成膜することができる。そのため、既に成膜した膜の残留物及び大気に浮遊する不純物元素によって界面が汚染されることなく、複数の膜を積層して形成することができる。
【0109】
プラズマCVD装置の反応室内は、フッ素ラジカルでクリーニングするとよい。また、成膜前に反応室内に保護膜を成膜することが好ましい。
【0110】
なお、用いることのできる装置は上記の図13に示すものに限定されない。例えば、二の反応室が設けられたCVD装置を用いてもよい。このとき、一方の反応室(第1反応室)は、形成ガスに珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)を用いた酸化シリコン膜の形成に用いる反応室とし、他方の反応室(第2の反応室)は、窒化シリコン膜、シリコン膜及び一導電型の不純物元素を含むシリコン膜の形成に用いる反応室とすればよい。または、一の反応室のみを有する装置を用いてもよい。
【0111】
次に、不純物半導体層110となる不純物半導体膜154上にレジストマスク156を形成する(図12(C)を参照)。レジストマスク156は、フォトリソグラフィ法により形成することができる。または、インクジェット法などにより形成してもよい。または、コスト削減を目的として、印刷法により形成してもよいし、印刷法により形成した後にレーザー加工を行ってもよい。
【0112】
次に、レジストマスク156を用いて、第1の半導体膜150、第2の半導体膜152、及び不純物半導体膜154をエッチングする。この処理により、これらの膜を素子毎に分離して、第1の半導体層106、第2の半導体層158及び不純物半導体層160を形成する(図14(A)を参照)。その後、レジストマスク156を除去する。
【0113】
なお、このエッチング処理では、第1の半導体層106、第2の半導体層158及び不純物半導体層160が積層された積層体162の側面がテーパーを有するようにエッチングを行うことが好ましい。テーパー角は30°以上90°以下、好ましくは40°以上80°以下とする。積層体162の側面がテーパーを有する形状とすることで、後の工程でこれらの上に形成される膜(例えば、導電膜164)の被覆性を向上させることができ、配線切れなどを防止することができる。
【0114】
次に、積層体162上に導電膜164を形成する(図14(B)を参照)。ここで形成される導電膜164は、ソース電極及びドレイン電極層112となるため、少なくとも第1の半導体層106に接する部分には仕事関数の低い金属材料を配する。すなわち、導電膜164が単層である場合には、導電膜164は仕事関数の低い金属材料により形成し、導電膜164が複数の層が積層されたものである場合には、導電膜164の少なくとも最下層は仕事関数の低い金属材料により形成する。
【0115】
導電膜164は、スパッタリング法または真空蒸着法などを用いて形成すればよい。また、導電膜164は、銀、金または銅などの導電性ナノペーストを用いてスクリーン印刷法またはインクジェット法などを用いて吐出し、焼成することで形成してもよい。
【0116】
次に、導電膜164上にレジストマスク166を形成する(図14(C)を参照)。レジストマスク166は、レジストマスク156と同様にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法により形成することができる。または、コスト削減を目的として、印刷法により形成してもよいし、印刷法により形成した後にレーザー加工を行ってもよい。また、レジストマスクのサイズを調整するために酸素プラズマによるアッシングを行ってもよい。
【0117】
次に、レジストマスク166を用いて導電膜164をエッチングし、導電膜164をパターン形成してソース電極及びドレイン電極層112を形成する。ここで、エッチングは、例えばウエットエッチングにより行うことができる。ウエットエッチングにより、レジストマスク166から露出された部分の導電膜164が等方的にエッチングされる。その結果、導電層はレジストマスク166の端部よりも後退し、ソース電極及びドレイン電極層112が形成される。このソース電極及びドレイン電極層112は薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極のみならず、信号線も構成する。ただし、これに限定されず、ドライエッチングを用いてもよい。
【0118】
次に、レジストマスク166が形成された状態で、第2の半導体層158及び不純物半導体層160をエッチングしてバックチャネル部を形成する。これにより、第2の半導体層158は一部を残してエッチングされ、第2の半導体層108及び不純物半導体層110が形成される。
【0119】
ここで、エッチングはドライエッチングにより行うとよく、特に、酸素を含んだガスによるドライエッチングを行うとよい。酸素を含んだガスにより、レジストを後退させつつ不純物半導体層110と第2の半導体層108をエッチングすることができ、不純物半導体層110の側面と、非晶質半導体層である第2の半導体層108の側面がテーパーを有する形状にすることができるからである。エッチングガスとしては、例えば、4フッ化メタン(化学式:CF)に酸素を含ませたエッチングガスまたは塩素に酸素を含ませたエッチングガスを用いる。不純物半導体層110の側面と、非晶質半導体層である第2の半導体層108の側面がテーパーを有する形状にすることで電界の集中を防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0120】
第2の半導体層108では、一部がエッチングされて凹部が設けられているが、凹部と重畳する第2の半導体層108の少なくとも一部が残存する厚さとすることが好ましい。不純物半導体層110と重畳する部分の第2の半導体層108は、ソース領域及びドレイン領域の形成プロセスにおいてエッチングされないが、この部分の厚さは概ね80nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下、更に好ましくは200nm以上300nm以下とするとよい。上記のように、第2の半導体層108を十分に厚くすることで、第1の半導体層106への不純物元素の混入などを防止することができる。このように、第2の半導体層108は、第1の半導体層106の保護層としても機能する。
【0121】
次に、レジストマスク166を除去する。
【0122】
なお、ここまでの工程により生じた、バックチャネル部に存在する残渣及びレジストマスク166の除去に用いた剥離液の成分などは電気的特性に影響を与えることが多い。そのため、これらを除去することを目的として、レジストマスク166を除去した後に、更なるエッチング、プラズマ処理及び洗浄のいずれか一または複数の工程を用いることで、電気的特性が良好な(例えば、オフ電流が小さい)薄膜トランジスタを作製することができる。
【0123】
または、ソース電極及びドレイン電極層112を形成した後に、レジストマスク166を除去し、ソース電極及びドレイン電極層112をマスクとして用いてエッチングを行うことで、第2の半導体層108と不純物半導体層110を形成してもよい。
【0124】
以上の工程により、図1に示すボトムゲート型の薄膜トランジスタを形成することができる(図15(A)を参照)。なお、図2に示すボトムゲート型の薄膜トランジスタについても作製工程は上記と同様である。
【0125】
次に、上記のように作製した薄膜トランジスタを覆って保護層114を形成する(図15(B)を参照)。保護層114は、ゲート絶縁層104と同様に形成することができる。窒化シリコンにより形成することが特に好ましい。特に、大気中に浮遊する有機物や金属、水蒸気などの汚染源となりうる不純物元素の侵入を防ぐことができるよう、緻密な窒化シリコン層とすることが好ましい。
【0126】
なお、図1に示す薄膜トランジスタは画素トランジスタとして用いることができるため、ソース電極及びドレイン電極の一方が画素電極に接続されている。図1に示す薄膜トランジスタにおいては、ソース電極及びドレイン電極の一方が、保護層114に設けられた開口部116を介して画素電極層118に接続されている。
【0127】
画素電極層118は、スパッタリング法などを用いて、透光性を有する導電性高分子(導電性ポリマーともいう。)を含む導電性組成物により形成することができる。ここでは、ITOをスパッタリング法により形成すればよい。
【0128】
画素電極層118は、ソース電極及びドレイン電極層112などと同様に、全面に形成した後にレジストマスクなどを用いてエッチングを行い、パターン形成すればよい(図15(C)を参照)。
【0129】
なお、図示していないが、保護層114と画素電極層118との間に、画素電極層118の被形成面の平坦化を目的として、スピンコーティング法などにより有機樹脂層を形成してもよい。
【0130】
なお、上記した説明では、ゲート電極と走査線とが同一の工程で形成され、ソース電極及びドレイン電極と信号線とが同一の工程で形成される場合について説明したが、これに限定されず、電極と、該電極に接続される配線を別工程により形成してもよい。
【0131】
なお、本実施の形態では、半導体層が積層構造を有する場合について説明したがこれに限定されず、半導体層が結晶性半導体層の単層であってもよい。
【0132】
以上説明したように光リーク電流が小さく、且つオフ電流が小さい薄膜トランジスタを得ることができる。更には、光リーク電流が小さく、且つオンオフ比が大きい薄膜トランジスタを得ることができる。
【0133】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一形態である、実施の形態1にて説明した薄膜トランジスタを搭載した表示装置または発光装置について、図面を参照して説明する。
【0134】
本実施の形態の表示装置または発光装置では、画素部に接続される信号線駆動回路と走査線駆動回路は別の基板(例えば、半導体基板またはSOI基板など)上に設けて接続してもよいし、画素回路と同一基板上に形成してもよい。
【0135】
なお、別途形成した場合の接続方法は特に限定されるものではなく、公知のCOG法、ワイヤボンディング法またはTAB法などを用いることができる。また接続する位置は、電気的な接続が可能であるならば、特に限定されない。また、コントローラ、CPU及びメモリなどを別途形成し、画素回路に接続してもよい。
【0136】
図16は、本実施の形態の表示装置のブロック図の一例を示す。図16に示す表示装置は、表示素子を備えた画素を複数有する画素部400と、画素部400が有する各画素を選択する走査線駆動回路402と、選択された画素へのビデオ信号の入力を制御する信号線駆動回路403と、を有する。
【0137】
なお、本実施の形態の表示装置は、図16に示す形態に限定されない。すなわち、信号線駆動回路は、シフトレジスタとアナログスイッチのみを有する形態に限定されない。シフトレジスタとアナログスイッチに加え、バッファ、レベルシフタ、ソースフォロワなど、他の回路を有していてもよい。また、シフトレジスタ及びアナログスイッチは必ずしも設ける必要はなく、例えば、シフトレジスタの代わりにデコーダ回路のような信号線の選択ができる別の回路を有していてもよいし、アナログスイッチの代わりにラッチなどを有していてもよい。
【0138】
図16に示す信号線駆動回路403は、シフトレジスタ404とアナログスイッチ405を有する。シフトレジスタ404には、クロック信号(CLK)とスタートパルス信号(SP)とが入力される。クロック信号(CLK)とスタートパルス信号(SP)が入力されると、シフトレジスタ404においてタイミング信号が生成され、アナログスイッチ405に入力される。
【0139】
アナログスイッチ405には、ビデオ信号(video signal)が供給される。アナログスイッチ405は、シフトレジスタ404から入力されるタイミング信号に従ってビデオ信号をサンプリングし、後段の信号線に供給する。
【0140】
図16に示す走査線駆動回路402は、シフトレジスタ406及びバッファ407を有する。また、レベルシフタを有していてもよい。走査線駆動回路402において、シフトレジスタ406にクロック信号(CLK)及びスタートパルス信号(SP)が入力されることによって、選択信号が生成される。生成された選択信号はバッファ407において緩衝増幅され、対応する走査線に供給される。一の走査線には、1ラインのすべての画素トランジスタのゲートが接続されている。そして、動作時には1ライン分の画素トランジスタを一斉にオンにしなくてはならないので、バッファ407は大きな電流を流すことが可能な構成とする。
【0141】
フルカラーの表示装置において、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応するビデオ信号を、順にサンプリングして対応する信号線に供給する場合、シフトレジスタ404とアナログスイッチ405とを接続するための端子数は、アナログスイッチ405と画素部400の信号線を接続するための端子数の1/3程度に相当する。よって、アナログスイッチ405を画素部400と同一基板上に形成することで、アナログスイッチ405を画素部400と異なる基板上に形成した場合に比べて、別途形成した基板の接続に用いる端子の数を抑えることができ、接続不良の発生を抑えて歩留まりを高めることができる。
【0142】
なお、図16の走査線駆動回路402は、シフトレジスタ406とバッファ407を有するが、これに限定されず、シフトレジスタ406のみで走査線駆動回路402を構成してもよい。
【0143】
なお、図16に示す構成は、表示装置の一形態を示したものであり、信号線駆動回路と走査線駆動回路の構成はこれに限定されない。
【0144】
次に、表示装置の一形態に相当する液晶表示装置及び発光装置の外観について、図17及び図18を参照して説明する。図17(A)は、第1の基板411上に形成された結晶性半導体層を有する薄膜トランジスタ420及び液晶素子423を、第2の基板416との間にシール材415によって封止した、表示装置の上面図を示す。図17(B)は、図17(A)のK−Lにおける断面図に相当する。図18は発光装置の場合を示す。なお、図18は、図17と異なる部分についてのみ符号を付している。
【0145】
図17及び図18では、第1の基板411上に設けられた画素部412と、走査線駆動回路414と、を囲んで、シール材415が設けられている。また、画素部412及び走査線駆動回路414の上に第2の基板416が設けられている。よって、画素部412及び走査線駆動回路414は、第1の基板411とシール材415と第2の基板416とによって、液晶層418(または、図18では充填材431)と共に封止されている。また、第1の基板411上のシール材415によって囲まれている領域とは異なる領域に信号線駆動回路413が実装されている。なお、信号線駆動回路413は、別途用意された基板上に結晶性半導体層を有する薄膜トランジスタにより設けられたものであるが、これに限定されない。なお、本実施の形態では、結晶性半導体層を有する薄膜トランジスタを用いた信号線駆動回路413を、第1の基板411に貼り合わせる場合について説明するが、単結晶半導体を用いた薄膜トランジスタで信号線駆動回路を形成し、第1の基板411に貼り合わせることが好ましい。図17(B)では、信号線駆動回路413に含まれる、結晶性半導体層で形成された薄膜トランジスタ419を例示する。
【0146】
第1の基板411上に設けられた画素部412は、複数の薄膜トランジスタを有しており、図17(B)には、画素部412に含まれる薄膜トランジスタ420を例示している。また、信号線駆動回路413も複数の薄膜トランジスタを有しており、図17(B)では、信号線駆動回路413に含まれる薄膜トランジスタ419を例示している。本実施の形態の発光装置においては、薄膜トランジスタ420は駆動用トランジスタであってもよいし、電流制御用トランジスタであってもよいし、消去用トランジスタであってもよい。薄膜トランジスタ420は実施の形態1で説明した結晶性半導体層を用いた薄膜トランジスタに相当する。
【0147】
また、液晶素子423が有する画素電極422は、薄膜トランジスタ420と配線428を介して電気的に接続されている。そして、液晶素子423の対向電極427は第2の基板416上に設けられている。画素電極422と対向電極427と液晶層418が重なっている部分が、液晶素子423に相当する。
【0148】
また、図18において、発光素子430が有する画素電極は、薄膜トランジスタ420のソース電極またはドレイン電極と、配線を介して電気的に接続されている。そして本実施の形態では、発光素子430の共通電極と透光性を有する導電層が電気的に接続されている。なお、発光素子430の構成は、本実施の形態に示した構成に限定されない。発光素子430の構成は、発光素子430から取り出す光の方向や、薄膜トランジスタ420の極性などに応じて決定することができる。
【0149】
なお、第1の基板411及び第2の基板416の材料としては、ガラス、金属(代表的にはステンレス)、セラミックスまたはプラスチックなどを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムなどを用いることができる。また、アルミニウム箔をPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いてもよい。
【0150】
また、スペーサ421はビーズスペーサであり、画素電極422と対向電極427との間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお、絶縁層を選択的にエッチングすることで得られるスペーサ(ポストスペーサ)を用いていてもよい。
【0151】
また、別途形成された信号線駆動回路413と、走査線駆動回路414及び画素部412に与えられる各種の信号(電位)は、FPC417(Flexible Printed Circuit)から引き回し配線424及び引き回し配線425を介して供給される。
【0152】
図17では、接続端子426が、液晶素子423が有する画素電極422と同じ導電層によって形成されている。また、引き回し配線424及び引き回し配線425は、配線428と同じ導電層で形成されている。ただし、これに限定されない。
【0153】
接続端子426とFPC417が有する端子は、異方性導電層429を介して電気的に接続されている。
【0154】
なお、図示していないが、本実施の形態に示した液晶表示装置は、配向膜及び偏光板を有し、更にカラーフィルタや遮光層などを有していてもよい。
【0155】
図18では、接続端子426が、発光素子430が有する画素電極と同じ導電層によって形成されている。また、引き回し配線425は、配線428と同じ導電層で形成されている。ただし、これに限定されない。
【0156】
なお、発光素子430からの光の取り出し方向に位置する基板である第2の基板は、透光性の基板を用いる。その場合には、ガラス板、プラスチック板またはポリエステルフィルム若しくはアクリルフィルムなどの透光性を有する材料からなる基板を用いる。発光素子430からの光の取り出し方向が第1の基板の方向である場合には、第1の基板として透光性基板を用いる。
【0157】
また、充填材431としては、窒素やアルゴンなどの不活性な気体、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂などを用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)またはEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。ここでは、例えば、窒素を用いるとよい。
【0158】
また、発光素子の射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)またはカラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止層を設けてもよい。
【0159】
以上説明したように、実施の形態1で説明した薄膜トランジスタを用いて表示装置を作製することができる。
【0160】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2にて説明した表示装置を搭載した電子機器について図面を参照して説明する。このような電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用のモニタ、電子ペーパー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0161】
電子機器として、例えば電子ペーパーが挙げられる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカードなどの各種カードにおける情報の表示などに用いることができる。電子機器の一例を図19(A)に示す。
【0162】
図19(A)は、電子書籍の一例を示している。図19(A)に示す電子書籍は、筐体500及び筐体501で構成されている。筐体500及び筐体501は、蝶番504により一体になっており、開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍と同様に扱うことができる。
【0163】
筐体500には表示部502が組み込まれ、筐体501には表示部503が組み込まれている。表示部502及び表示部503は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図19(A)では表示部502)に文章を表示し、左側の表示部(図19(A)では表示部503)に画像を表示することができる。表示部502及び表示部503には、実施の形態2に示した表示装置を適用することができる。
【0164】
また、図19(A)では、筐体500に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体500は、電源入力端子505、操作キー506、スピーカ507などを備えている。操作キー506は、例えば頁を送る機能を備えることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、図19(A)に示す電子書籍には、電子辞書としての機能を持たせてもよい。
【0165】
また、図19(A)に示す電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成を備えていてもよい。無線通信により、電子書籍サーバから所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることもできる。
【0166】
図19(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。例えば、図19(B)に示すデジタルフォトフレームは、筐体511に表示部512が組み込まれている。表示部512は、各種画像を表示することが可能であり、例えば、デジタルカメラなどで撮影した画像データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。表示部512は、実施の形態2に示した表示装置を適用することができる。
【0167】
なお、図19(B)に示すデジタルフォトフレームは、操作部、外部接続用端子、記録媒体挿入部などを備える構成とするとよい。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを取り込み、取り込んだ画像データを表示部512に表示させることができる。
【0168】
また、図19(B)に示すデジタルフォトフレームは、無線で情報を送受信出来る構成としてもよい。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0169】
図19(C)は、テレビジョン装置の一例を示している。図19(C)に示すテレビジョン装置は、筐体521に表示部522が組み込まれている。表示部522により、映像を表示することができる。また、ここでは、スタンド523により筐体521を支持した構成を示している。表示部522は、実施の形態2に示した表示装置を適用することができる。
【0170】
図19(C)に示すテレビジョン装置の操作は、筐体521が備える操作スイッチや、リモコン操作機により行うことができる。リモコン操作機が備える操作キーにより、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部522に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機に、該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよく、該リモコン操作機が備える表示部に実施の形態2に示した表示装置を適用してもよい。
【0171】
なお、図19(C)に示すテレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、片方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0172】
図19(D)は、携帯電話機の一例を示している。図19(D)に示す携帯電話機は、筐体531に組み込まれた表示部532の他、操作ボタン533、操作ボタン537、外部接続ポート534、スピーカ535、及びマイク536などを備えている。表示部532は、実施の形態2に示した表示装置を適用することができる。
【0173】
図19(D)に示す携帯電話機は、表示部532がタッチパネルであってもよく、指などの接触により、表示部532の表示内容を操作することができる構成を有していてもよい。この場合、電話の発信或いはメールの作成などは、表示部532に指などを接触させることにより行うことができる。
【0174】
表示部532の画面は主として3つのモードがある。第1のモードは、画像の表示を主とする表示モードであり、第2のモードは、文字などの情報の入力を主とする入力モードである。第3のモードは表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0175】
例えば、電話の発信、或いはメールを作成する場合には、表示部532を、文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合には、表示部532の画面の大部分を使用してキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0176】
また、図19(D)に示す携帯電話機の内部に、ジャイロ、加速度センサなどの傾きを検出するセンサを備えた検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦または横)を判別して、表示部532の表示情報を自動的に切り替える構成とすることもできる。
【0177】
また、画面モードの切り替えは、表示部532への接触、または筐体531の操作ボタン537の操作により行われる構成とすればよい。また、表示部532に表示される画像の種類によって切り替える構成としてもよい。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える構成にすればよい。
【0178】
また、入力モードにおいて、表示部532の光センサで検出される信号を検知し、表示部532のタッチ操作による入力が一定期間行われない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0179】
表示部532は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部532を掌や指で触れ、掌紋及び指紋などをイメージセンサで撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【実施例1】
【0180】
本実施例では、実施の形態1で説明したように作製した薄膜トランジスタの電気的特性の測定結果などについて説明する。
【0181】
図10は、図1及び図2に示す薄膜トランジスタにおけるゲート電圧に対するドレイン電流の電流−電圧特性を示す曲線(以下、I−V曲線と記す。)を示す。なお、上記の実施の形態にて説明したように、ここでは、ソース電極及びドレイン電極層は仕事関数の高い材料であるモリブデンにより形成されている。図10(A)は、図2に示す薄膜トランジスタのI−V曲線を示し、図10(B)は、図1に示す薄膜トランジスタのI−V曲線を示す。なお、ここで、薄膜トランジスタのサイズは図20に示す通りである。
【0182】
上記の実施の形態にて説明したように、図10(A)と図10(B)を比較すると、ソース電極及びドレイン電極層をモリブデンにより形成した場合には、図1に示す薄膜トランジスタのオフ電流は図2に示す薄膜トランジスタのオフ電流と比較して非常に大きい。これではスイッチング素子として正常に動作させることは困難である。図11(A)と図11(B)を比較すると、図1に示す薄膜トランジスタのオフ電流は、図2に示す薄膜トランジスタのオフ電流との間に大きな違いが見られない。従って、図1に示す薄膜トランジスタの場合に、ソース電極及びドレイン電極層を仕事関数の低い材料により形成することが特に有効である。
【0183】
図3は、図4に示す薄膜トランジスタのI−V曲線を示す。図4(A)は、第1の半導体層106を有さず、他の構成は図1に示す薄膜トランジスタと同様である。ただし、第2の半導体層108は非晶質半導体により形成したものである。図4(B)は、第1の半導体層206を有さず、他の構成は図2に示す薄膜トランジスタと同様である。ただし、第2の半導体層208は非晶質半導体により形成したものである。すなわち、図4(A)及び図4(B)に示す薄膜トランジスタは、チャネル形成領域が非晶質半導体層により構成されている薄膜トランジスタである。なお、ソース電極及びドレイン電極層は図10と同様に、モリブデンにより形成されている。ここで、薄膜トランジスタのサイズは図20と同様である。
【0184】
図3によると、チャネル形成領域が非晶質半導体層により構成されている薄膜トランジスタでは、ゲート電極層が半導体層の全面と重畳する構造(図4(A)に示す構造)と、ゲート電極層が半導体層の一部のみと重畳した構造(図4(B)に示す構造)では、I−V曲線に大きな違いが見られないことがわかる。従って、第1の半導体層が結晶性半導体層である場合に、ソース電極及びドレイン電極層を仕事関数の低い材料により形成することが特に有効である。
【符号の説明】
【0185】
100 基板
102 ゲート電極層
104 ゲート絶縁層
106 第1の半導体層
108 第2の半導体層
110 不純物半導体層
112 ソース電極及びドレイン電極層
114 保護層
116 開口部
118 画素電極層
130 部分
131 部分
132 部分
150 第1の半導体膜
152 第2の半導体膜
154 不純物半導体膜
156 レジストマスク
158 第2の半導体層
160 不純物半導体層
162 積層体
164 導電膜
166 レジストマスク
200 基板
202 ゲート電極層
204 ゲート絶縁層
206 第1の半導体層
208 第2の半導体層
210 不純物半導体層
212 ソース電極及びドレイン電極層
214 保護層
216 開口部
218 画素電極層
230 部分
231 部分
250a 反応室
250b 反応室
250c 反応室
250d 反応室
252 高周波電源
254 整合器
258 ガス供給手段
258a ガス供給手段
258b ガス供給手段
258c ガス供給手段
258d ガス供給手段
258e ガス供給手段
258f ガス供給手段
260 バタフライバルブ
262 コンダクタンスバルブ
264 ターボ分子ポンプ
266 ドライポンプ
268 クライオポンプ
270 ロード/アンロード室
272 共通室
274 ゲートバルブ
276 搬送機構
400 画素部
402 走査線駆動回路
403 信号線駆動回路
404 シフトレジスタ
405 アナログスイッチ
406 シフトレジスタ
407 バッファ
411 基板
412 画素部
413 信号線駆動回路
414 走査線駆動回路
415 シール材
416 基板
417 FPC
418 液晶層
419 薄膜トランジスタ
420 薄膜トランジスタ
421 スペーサ
422 画素電極
423 液晶素子
424 配線
425 配線
426 接続端子
427 対向電極
428 配線
429 異方性導電層
430 発光素子
431 充填材
500 筐体
501 筐体
502 表示部
503 表示部
504 蝶番
505 電源入力端子
506 操作キー
507 スピーカ
511 筐体
512 表示部
521 筐体
522 表示部
523 スタンド
531 筐体
532 表示部
533 操作ボタン
534 外部接続ポート
535 スピーカ
536 マイク
537 操作ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層と、
第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に接して設けられた前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、
前記ゲート電極層と前記第1の半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層と、
前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、
前記不純物半導体層及び前記第1及び第2の半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有し、
前記第1の半導体層のゲート電極層側は全面が前記ゲート電極層と重畳し、
前記第1の半導体層と前記ソース電極及びドレイン電極層が接する部分のポテンシャル障壁は0.5eV以上であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
ゲート電極層と、
第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に接して設けられた前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、
前記ゲート電極層と前記第1の半導体層との間に接して設けられたゲート絶縁層と、
前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、
前記不純物半導体層及び前記第1及び第2の半導体層に一部が接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有し、
前記第1の半導体層のゲート電極層側は全面が前記ゲート電極層と重畳し、
前記ソース電極及びドレイン電極層を形成する材料の仕事関数φと、真空準位と前記第1の半導体層の移動度端の底との差χと、前記第1の半導体層の禁制帯幅Eについて、
+χ−φが0.5eV以上であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2の半導体層の禁制帯幅は、前記ソース電極及びドレイン電極層が接する前記第1の半導体層の禁制帯幅よりも大きいことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の半導体層は結晶性半導体を有し、
前記第2の半導体層は非晶質半導体を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−9689(P2011−9689A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280144(P2009−280144)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】