説明

被処理体の移載機構及び被処理体の処理システム

【課題】少ない台数のイオン発生手段で例えば被処理体移載エリア内の広範囲に亘って帯電箇所の除電及び浮遊する帯電塵の除電を行うことが可能な被処理体の移載機構を提供する。
【解決手段】複数の被処理体Wを複数段に亘って保持して収容することが可能な収容ボックス6と、複数の被処理体を複数段に亘って保持し、被処理体に対して所定の処理を施すための処理容器64内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段18との間で、被処理体の移載を行う被処理体の移載機構52において、昇降手段54により上下方向へ昇降可能になされた昇降台56と、昇降台に設けられて、被処理体を載置して前進、後退及び旋回可能になされたフォーク手段58と、フォーク手段に設けられて静電気を除去するイオンを発生させるイオン発生手段60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体を収納する収容ボックスから被処理体を被処理体移載エリア内の被処理体ボートへ移載して被処理体に熱処理を施すようにした処理システム及び被処理体の移載機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICやLSI等の半導体集積回路を製造するためには、半導体ウエハに対して各種の成膜処理、酸化拡散処理、エッチング処理等を繰り返し行なうが、各処理を行なうにあたって、半導体ウエハを対応する装置間で搬送する必要がある。この場合、半導体ウエハは、複数枚、例えば25枚ずつ収容ボックス内へ収容されて搬送される。この種の収容ボックスとしては、カセットのように大気に対して開放状態で搬送するものや、FOUP(登録商標)のように、パーティクルや自然酸化膜の付着を抑制するために、開閉蓋で密閉状態になされた箱内をN ガス等の不活性ガスや清浄空気の雰囲気にしたものが知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
そして、上記収容ボックスを取り扱う例えばバッチ式の処理システムにあっては、上記収容ボックスを搬送機構によって搬送するボックス搬送エリアと、この収容ボックスより半導体ウエハを熱処理のためにウエハボート等へ移載するための被処理体移載エリアとが一般的にはある(例えば特許文献4〜6)。そして、両エリアはウエハの受け渡しを行うために開閉可能になされた開口ゲートを有する区画壁により区画されており、被処理体を剥き出し状態で搬送する上記被処理体移載エリア内は、ウエハ表面に自然酸化膜等が付着することを防止するために、不活性ガス、例えば窒素雰囲気になされている場合もあるし、清浄雰囲気になされている場合もある。
【0004】
そして、上記被処理体移載エリアでは、上述したような例えば25枚のウエハを収容する収容ボックス内のウエハを、ウエハの移載機構を用いて石英等よりなる被処理体ボートとしてのウエハボートに対して移載を行う。このウエハボートは、複数枚、例えば50〜150枚程度のウエハが等ピッチで多段に保持できるようになっている。また同様に、ウエハに対する熱処理が完了すると、上記移載機構を用いて上記とは逆にウエハボートから収容ボックスに対してウエハの移載を行う。
【0005】
ここで、一般的に縦型の熱処理ユニットにあっては、用いる石英製のウエハボートとしては、ウエハボートを構成する支柱にウエハのエッジを支持するウエハ支持溝部を形成してなる、いわゆるラダー型のウエハボートや支柱間にリング状の載置台を多段に掛け渡して、各載置台にウエハのエッジを支持する支持つめ部を形成してなる、いわゆるリング型のウエハボートが知られている(特許文献6等)。
【0006】
ところで、上述したように被処理体移載エリア内で上記した移載機構を用いて収容ボックスとウエハボートとの間で半導体ウエハの移載を行う場合、部材同士間の僅かな接触、或いは摺接によって上記ウエハ自体、収容ボックス自体、更にはウエハボート自体に静電気が発生することは避けられない。この静電気が発生すると、雰囲気中に漂う僅かなパーティクルでもこれを吸着してしまって製品の歩留まり低下の原因となってしまう。
【0007】
そのため、従来の搬送機構においては、上記発生した静電気を除去する目的で被処理体移載エリア内にイオナイザを固定的に設けたり、或いはカセット間のウエハ移載時にウエハに発生する静電気を除去する目的で移載機構の移載アームの付け根に複数のイオナイザを設けるようにして、上記発生した静電気を除電するようにしていた(例えば特許文献7)。
【0008】
【特許文献1】特開平8−279546号公報
【特許文献2】特開平9−306975号公報
【特許文献3】特開平11−274267号公報
【特許文献4】特開2002−76089号公報
【特許文献5】特開2003−37148号公報
【特許文献6】特開平9−213647号公報
【特許文献7】特開平11−238778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のようにイオナイザを被処理体移載エリア内に固定的に設けることにより、帯電箇所や浮遊する帯電塵(パーティクル)のある程度の除電を行うことができた。
【0010】
しかしながら、実際の被処理体移載エリア内では移載機構が移動する領域の多くの部分で静電気の帯電が発生しており、これらの帯電箇所を十分に且つ効果的に除電することは上記した従来構成では困難であった。この場合、移載機構が移動するあらゆる領域に対してイオナイザを設けることも考えられるが、この場合にはイオナイザの設置台数が増加して、設備コストが大幅に増大してしまうので、現実的ではない。
【0011】
また、移載アームの付け根にイオナイザを設けた場合には、これに保持した例えばウエハ自体に発生した静電気の除電は有効に行うことができるが、ウエハボート自体や収容ボックス自体に発生した静電気の除電は有効に行うことができないばかりか、この場合にも設置するイオナイザの数が多くなってしまう、といった問題があった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、少ない台数のイオン発生手段で例えば被処理体移載エリア内の広範囲に亘って帯電箇所の除電及び浮遊する帯電塵の除電を行うことが可能な被処理体の移載機構及び被処理体の処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、複数の被処理体を複数段に亘って保持して収容することが可能な収容ボックスと、複数の被処理体を複数段に亘って保持し、前記被処理体に対して所定の処理を施すための処理容器内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段との間で、前記被処理体の移載を行う被処理体の移載機構において、昇降手段により上下方向へ昇降可能になされた昇降台と、前記昇降台に設けられて、前記被処理体を載置して前進、後退及び旋回可能になされたフォーク手段と、前記フォーク手段に設けられて静電気を除去するイオンを発生させるイオン発生手段と、を備えたことを特徴とする被処理体の移載機構である。
【0014】
このように、被処理体を収容する収容ボックスと処理容器内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段との間で被処理体の移載を行う移載機構において、被処理体を載置して移動するフォーク手段にイオン発生手段を設けて静電気を除去するようにしたので、少ない台数のイオン発生手段で例えば被処理体移載エリア内の広範囲に亘って帯電箇所の除電及び浮遊する帯電塵の除電を行うことができる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フォーク手段は、前記昇降台上に旋回可能に設けられた旋回台と、前記旋回台に設けられて前記被処理体を載置して前進及び後退可能になされた複数のフォーク本体と、よりなることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記フォーク手段は、前記旋回台に設けられて、前記被処理体の有無を検出する光センサを先端部に有して前進及び後退可能になされたセンサ付きフォーク本体を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、前記イオン発生手段は、前記旋回台に設けられることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項の発明において、前記イオン発生手段は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段を有しており、前記イオン発生手段のイオン吹出しノズルは、前記旋回台の先端部に設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項3の発明において、前記イオン発生手段は、前記センサ付きフォーク本体に設けられることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項3又は6の発明において、前記イオン発生手段は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段を有しており、前記イオン発生手段のイオン吹出しノズルは、前記センサ付きフォーク本体の先端部に設けられることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項5又は7の発明において、前記イオン吹出しノズルには、前記イオンの吹き出し方向を拡散させる拡散ヘッドが設けられることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項5又は7の発明において、前記イオン吹出しノズルには、前記イオンの吹き出し方向を変化させるための可変ルーバが設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか一項の発明において、前記イオンが吹き出される領域に設けられる帯電量検出センサと、前記帯電量検出センサの検出値に基づいて前記イオン発生手段の動作を制御するイオン用制御部と、を有することを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1乃至10のいずれか一項の発明において、前記イオン発生手段は、イオナイザであることを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれか一項の発明において、前記収容ボックスは、着脱可能になされた開閉蓋を有し、内部は密閉可能になされていることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項1乃至12のいずれか一項の発明において、前記処理容器は、底部に開口を有すると共に有天井になされた石英製の円筒体よりなり、前記開口には気密に着脱可能になされたキャップが装着されることを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1乃至13のいずれか一項の発明において、前記被処理体の移載を行う空間は、前記処理容器の下方の被処理体移載エリアであることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項1乃至14のいずれか一項の発明において、前記被処理体移載エリアには、清浄気体のサイドフローが形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項16に係る発明は、複数の被処理体を収容する収容ボックスから前記被処理体を取り出して前記被処理体に対して熱処理を施すようにした被処理体の処理システムにおいて、前記被処理体に対して熱処理を施すための処理容器を有する縦型の処理ユニットと、前記処理ユニットの下方に設けられて周囲が区画壁により区画された被処理体移載エリアと、前記被処理体を複数段に亘って保持する被処理体保持手段と、前記被処理体保持手段を昇降させて前記処理容器内へロード及びアンロードする保持手段用昇降手段と、前記区画壁に設けられた移載ステージに設置した前記収容ボックスと前記被処理体保持手段との間で前記被処理体を移載するための請求項1乃至15のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構と、を備えたことを特徴とする被処理体の処理システムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る被処理体の移載機構及び被処理体の処理システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
被処理体を収容する収容ボックスと処理容器内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段との間で被処理体の移載を行う移載機構において、被処理体を載置して移動するフォーク手段にイオン発生手段を設けて静電気を除去するようにしたので、少ない台数のイオン発生手段で例えば被処理体移載エリア内の広範囲に亘って帯電箇所の除電及び浮遊する帯電塵の除電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明に係る被処理体の移載機構及び被処理体の処理システムの好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る被処理体の処理システムの一実施形態を示す概略構成図、図2は本発明に係る被処理体の移載機構を設置した被処理体移載エリア内の各構成部材の配列位置の一例を示す平面図、図3は被処理体移載エリア内の清浄気体の流れを示す斜視図、図4は被処理体移載エリア内の各構成部材の配列位置と移載機構の動作状況の一例を示す斜視図、図5はイオン発生手段を有する移載機構を示す拡大斜視図、図6は移載機構のフォーク手段を示す側面図、図7はイオン発生手段の各種形態を示すブロック構成図である。
【0025】
まず、図1及び図2に示すように、この被処理体の処理システム2は、全体が区画壁として機能する例えばステンレス等よりなる筐体4に囲まれており、この内部は収容ボックス6を搬送するための収容ボックス搬送エリア8と被処理体である半導体ウエハWを移載する被処理体移載エリア10とに区画壁12により2分されている。尚、ここではウエハWは直径が300mmのウエハを用いるが、これに限定されず、直径が450mm、8インチ、6インチのウエハも用いることができる。
【0026】
上記収容ボックス6には、複数枚、例えば25枚のウエハが段部状に支持されて開閉蓋6Aにより密閉状態になされており、内部はN ガス等の不活性ガス雰囲気や清浄空気の雰囲気になされている。そして、上記収容ボックス搬送エリア8内には清浄空気のダウンフローが流され、上記被処理体移載エリア10内には後述するようにN ガス等の不活性ガスの清浄気体のサイドフローが形成された不活性ガス雰囲気になされている。尚、このエリア10内に清浄空気を流す場合もある。
【0027】
この処理システム2は、主に収容ボックス6を処理システム2内に対して搬入搬出させるための搬出入ポート14と、上記収容ボックス6を一時的に貯留するためのストッカ部16と、この収容ボックス6と被処理体保持手段としてのウエハボート18との間で半導体ウエハWを移載する移載ステージ20と、ウエハボート18に移載されて保持されている半導体ウエハWに対して所定の熱処理を施す処理ユニット22とにより主に構成される。
【0028】
上記搬出入ポート14において、筐体4には常時開放されているボックス搬出入口24が形成されている。尚、このボックス搬出入口24が開閉ドアで開閉可能になされている場合もある。このボックス搬出入口24には、外部より搬送してきた収容ボックス6を載置するための外側載置台26が設けられている。この外側載置台26は、上記ボックス搬出入口24の内側と外側とに股がるようにして設置されている。上記外側載置台26の上部には、この外側載置台26上をスライド移動可能になされたスライド板28が設けられており、この上に収容ボックス6を載せた状態で移動できるようになっている。
【0029】
一方、収容ボックス搬送エリア8内の上方には、上記ストッカ部16が位置されている。このストッカ部16は、図示例においては例えば2列2段に上記収容ボックス6を一時的に載置して保管する棚段30が並設されている。尚、この棚段30の数量は特に限定されず、実際には更に多く設けられる。
【0030】
上記2つの棚段30間には、昇降エレベータ32が起立させて設けられており、この昇降エレベータ32には、水平方向に前進後退及び旋回可能になされたボックス搬送アーム34が設けられている。従って、このボックス搬送アーム34を屈伸及び昇降させることにより、収容ボックス6をボックス搬送アーム34で保持し、搬出入ポート14とスットカ部16との間で搬送できるようになっている。
【0031】
また、上記移載ステージ20において、両エリア8、10間を区画する区画壁12には、収容ボックス6の開閉蓋6Aよりも僅かに大きくなされた開口36が形成されると共に、この開口36の収容ボックス搬送エリア8側には、置台38が水平に設けられており、この上に収容ボックス6を載置できるようになっている。また、この置台38の一側には、この上に載置された収容ボックス6を区画壁12側へ押圧付勢するためのアクチュエータ40が設けられており、上記収容ボックス6の開閉蓋6Aを、上記開口36に臨ませた状態で収容ボックス6の開口部の開口縁が区画壁12の開口36の開口縁に略気密に接触されることになる。尚、上記アクチュエータ40として収容ボックス6を、その上方より押圧して固定するようにしたものもある。
【0032】
また、この開口36の被処理体移載エリア10側には、これを開閉する開閉ドア42が横方向へスライド可能に設けられている。尚、この開閉ドア42が上下方向へスライド移動可能に設けられる場合もある。また、この開閉ドア42には上記収容ボックス6の開閉蓋6Aを開閉するための蓋開閉機構44が設けられている(図2参照)。
【0033】
そして、収容ボックス搬送エリア8内において、この開口36の近傍に収容ボックス6を待機させるための待機用ボックス搬送アーム46が設置されており、次に処理すべきウエハを収容する収容ボックス6をボックス搬送アーム34から受け取り、待機後にこれを移載ステージ20に置くようになっている。尚、上記待機用ボックス搬送アーム46を設けない場合もあり、この場合には、上記ボックス搬送アーム34により収容ボックス6を移載ステージ20上に設置することになる。
【0034】
一方、上記被処理体移載エリア10内には、ウエハボート18を載置する2つのボート載置台、すなわち移載用ボート載置台48と待機用ボート載置台50とが設けられている。上記2つのボート載置台48、50の内、この移載用ボート載置台48と上記移載ステージ20との間には、本発明の特徴とする被処理体の移載機構52が設けられている。この移載機構52は、昇降手段54により上下方向へ昇降可能になされた昇降台56と、水平方向へ前進、後退及び旋回可能になされたフォーク手段58と、静電気を除去するイオンを発生するイオン発生手段60とを主に有している。尚、この移載機構52の構造は後で詳述する。
【0035】
従って、この移載機構52のフォーク手段58を前進、後退及び昇降駆動することにより、置台38上の収容ボックス6と移載用ボート載置台48上のウエハボート18との間でウエハWの移載を行なうことができるようになっている。ここではウエハボート18に関しては、複数台、例えば2台のウエハボート18A、18Bが設けられており、この2台が交互に用いられる。尚、ウエハボート18を1台、又は3台以上設けてもよいし、ウエハボート18が1台の場合には、ボート載置台48、50は設けられず、後述するキャップ上のウエハボートとの間でウエハの移載が行われる。
【0036】
このウエハボート18は、その全体が耐熱性材料、例えば石英で構成されており、例えば6本の石英製の支柱を有している。この支柱に等ピッチに形成した支持溝等にウエハWのエッジを支持させることにより、複数枚のウエハWを等ピッチで支持するようになっている。この場合、支持されるウエハWのピッチは、例えば4.0mm程度に設定されている。
【0037】
上記被処理体移載エリア10の一側の上方には、縦型熱処理炉よりなる上記処理ユニット22がベース板62により支持されて配置されている。この処理ユニット22は、底部に開口を有すると共に有天井になされた石英製の円筒体よりなる処理容器64を有し、その周囲には円筒状の加熱ヒータ66が設けられて、処理容器64内のウエハを加熱し得るようになっている。ここで処理容器64内の雰囲気は、例えば容器下部の側壁に設けた排気口や、容器天井部に設けた排気口等より排気される。これにより、一度に多数枚のウエハWに対して成膜や酸化拡散等の所定の熱処理を施すようになっている。
【0038】
この場合、処理内容にもよるが、ウエハ温度は例えば最大800〜900℃程度になる。この処理容器64の下方、すなわちベース板62より下方が実質的な被処理体移載エリア10となる。この処理容器64の下方には、昇降エレベータのようなボート昇降機構68により昇降可能になされたキャップ70が配置されている。このボート昇降機構68として例えばボールネジ等を用いることができる。そして、このキャップ70上にウエハボート18を載置してこれを上昇させることにより、このウエハボート18を処理容器64の下端開口部よりこの処理容器64内へロードできるようになっている。この時、処理容器64の下端開口部は上記キャップ70により気密に閉じられるようになっている。
【0039】
また処理容器64の下端開口部の側部には、上記ウエハボート18をアンロードしてこれを下方向へ降下させた際に、上記下端開口部を閉じるシャッタ72がスライド可能に設けられている。そして、降下されたキャップ70と上記両ボート載置台48、50の近傍には、屈伸及び旋回可能になされたボート移載機構74が設けられており、上記両ボート載置台48、50とキャップ70との間及び両ボート載置台48、50間でウエハボート18の移載ができるようになされている。
【0040】
そして、この被処理体移載エリア10内の一側には、高性能の一対のフィルタ76(図2及び図3参照)が設けられており、このフィルタ76より清浄空気、又はN ガス等の不活性ガスを水平方向へ吹き出すことにより清浄気体のサイドフロー78が常時形成されている。これにより、この被処理体移載エリア10内を清浄に保つと共に、この雰囲気温度を冷却するようになっている。また、上記フィルタ76の設置面に対向する面には、気体吸入口80が設けられており、ここで吸い込まれた上記サイドフロー78は、底部に設けたダクト82(図4も参照)等を介して上記フィルタ76側へ戻され、一部は循環使用されることになる。
【0041】
ここで本発明の特徴とする被処理体の移載機構52について詳しく説明すると、前述したように、この移載機構52は、昇降手段54により上下方向へ昇降可能になされた昇降台56と、水平方向へ前進、後退及び旋回可能になされたフォーク手段58と、静電気を除去するイオンを発生するイオン発生手段60とを主に有している。
【0042】
具体的には、図1及び図5にも示すように、上記昇降手段54は例えば垂直方向へ起立されたボールネジ86よりなり、このボールネジ86に沿って案内レール88が設けられている。上記昇降台56は上記ボールネジ86に螺合されており、このボールネジ86を正逆回転することにより上記案内レール88に沿って上下移動するようになっている。そして、この昇降台56は水平方向に延びる取付アーム部90(図5参照)を有しており、このアーム部90にフォーク手段58が取り付けられる。
【0043】
上記フォーク手段58は、上記取付アーム部90上に矢印91に示すように旋回可能に設けられた直方体状の旋回台92と、この旋回台92に設けられて前進及び後退可能になされた複数のフォーク本体94とにより主に構成されている。図6にも示すように、ここでは5本のフォーク本体94A、94B、94C、94D、94Eを上下方向に等ピッチで並べて配列されていると共に、先端側は2股状になされており、各フォーク本体94A〜94E上にそれぞれウエハWを載置できるようになっている。
【0044】
そして、上記各フォーク本体94A〜94Eの基端部はスライダ96により支持されており、このスライダ96を上記旋回台92の長手方向へ矢印97(図5参照)に示すように往復スライド移動させることにより、上述したように上記フォーク本体94A〜94Eを前進及び後退させることができるようになっている。尚、上記フォーク本体94の本数は5本に限定されず、これよりも多くても或いは少なくてもよい。
【0045】
上記イオン発生手段60は上記フォーク手段58の上記旋回台92に設けられることになる。具体的には、このイオン発生手段60は例えばイオナイザよりなり、図5に示すように、上記直方体状の旋回台92の両側にそれぞれイオン発生手段60が設けられている。尚、ここでは2台のイオン発生手段60を設けているが、これを1台設けるようにしてもよい。このイオン発生手段60は、図7(A)にも示すように、それぞれイオン発生器98と、これより延びるイオン流路100と、このイオン流路100の先端部に接続されるイオン吹出しノズル102とにより主に形成されている。そして、上記イオン発生器98には、これにキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段104が設けられている。
【0046】
上記キャリアガス供給手段104は、途中に開閉弁106が介設されたキャリアガス管108よりなり、その先端部側は2つに分岐されて上記各イオン発生器98に接続され、キャリアガスを供給できるようになっている。このキャリアガスとしては、ここでは例えばN ガスを用いているが、これに限定されず、Ar、He等の希ガスを用いてもよい。このキャリアガス管108の材料としては、例えば可撓性のある蛇腹状になされたステンレス管、テフロン(商品名)製のガス管、セラミック製の管等を用いることができ、上記フォーク手段58の昇降移動に追従できるように十分に長く設定されている。
【0047】
また上記イオン発生器98内では、周知のように複数のプラス放電針とマイナス放電針(図示せず)が内蔵されており、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させるようになっている。ここでイオン発生器98として用いるイオナイザとしては、どのような種類のものを用いてもよく、例えばプラスイオンとマイナスイオンを同時に発生させるダブルDC式バータイプのイオナイザ、プラスイオンとマイナスイオンとを一定の間隔で交互に発生させるパルスDCタイプイオナイザ、プラスイオンとマイナスイオンとを高速で交互に発生させるAC式バータイプのイオナイザ、X線を照射してプラスイオンとマイナスイオンとを発生させる軟X線イオナイザ等を用いることができる。
【0048】
ここで発生されたプラスイオンとマイナスイオンとを上記キャリアガスと共に上記イオン流路100内に移送し得るようになっている。このイオン流路100は、例えばステンレス製、テフロン(商品名)製、セラミック製等の材質の管よりなり、好ましくは絶縁製材質により構成し、発生した上記両イオンが内部でできるだけ消滅しないようにする。また、上記両イオン吹出しノズル102は、上記旋回台92の先端部にそれぞれ取り付け固定されており、キャリアガスと共に運ばれてまた上記イオンを必要に応じて矢印110(図5及び図6参照)に示すように、前方へ吹き出すようになっている。
【0049】
また、図2及び図7(A)にも示すように、上記イオンが吹き出される領域、すなわち被処理体移載エリア10内には、帯電量検出センサ112が設けられており、この帯電量検出センサ112の検出値は、例えばコンピュータ等よりなるイオン用制御部114へ入力されている。そして、このイオン用制御部114からの制御信号は、上記イオン発生手段60側、具体的にはイオン発生器98と開閉弁106側へ入力されており、上記帯電量検出センサ112の検出値に基づいてこのイオン発生手段60の動作を制御するようになっている。尚、上記帯電量検出センサ42を設けないで、処理システムの動作中は常に上記イオン発生手段60を動作させてイオンを吹き出すようにしてもよい。
【0050】
そして、この処理システム2の全体の動作の制御、例えば収容ボックス搬送エリア8内における収容ボックス6の搬入及び搬出操作、被処理体移載エリア10内におけるウエハWの移載操作、ウエハボート18の移載操作、ウエハボート18の昇降操作、処理ユニット22における熱処理操作(成膜処理等)等は、例えばコンピュータよりなるシステム制御部120(図1参照)により制御される。この場合、上記イオン用制御部114は、上記システム制御部120の支配下になっている。そして、上記システム制御部120やイオン用制御部114の制御に必要なプログラム(コンピュータによって読み取り可能)は記憶媒体122に記憶されている。この記憶媒体122としては、例えばフレキシブルディスクやCD(CompactDisc)やハードディスクやフラッシュメモリ等よりなる。
【0051】
次に、以上のように構成された処理システム2の動作について説明する。まず、被処理体移載エリア10内は、ウエハ表面への自然酸化膜の付着を防止するために不活性ガス、例えばN ガスのサイドフロー78(図3参照)が形成されてN 雰囲気になされている。また、収容ボックス搬送エリア8内は、清浄空気のダウンフローが形成されて清浄空気の雰囲気に維持されている。
【0052】
最初に、半導体ウエハWの全体的な流れについて説明すると、収容ボックス搬送エリア8側において外部より搬送されてきた収容ボックス6は、その開閉蓋6Aをボックス搬出入口24側に向けて外側載置台26上に載置される。そして、収容ボックス6が載置されている外側載置台26上のスライド板28を前進させることによって、これを上記収容ボックス搬送エリア8内に移送する。
【0053】
次に、ボックス搬送アーム34を駆動することにより、上記スライド板28上に設置されている収容ボックス6を取りに行ってこれを保持し、更に昇降エレベータ32を駆動することによって、この収容ボックス6を上方のストッカ部16の棚段30の所定の位置まで搬送して設置し、これを一時的に保管する。これと同時に、すでに棚段30に一時貯留されており、処理対象となったウエハを収容する収容ボックス6をこのボックス搬送アーム34により取りに行き、上述のように昇降エレベータ32を駆動してこれを降下させる。
【0054】
そして、移載ステージ20の置台38が空の場合には、この収容ボックス6を移載ステージ30の置台38上に移載する。また、置台38上に別の収容ボックス6がすでにセットされている場合には、ボックス搬送アーム34上の収容ボックス6を待機用ボックス搬送アーム46で把持し、これを開口36の近傍まで搬送して待機させる。そして、置台38上の収容ボックス6の開閉蓋6Aは、開閉ドア42側に向けられており、しかも、置台38の一側に設けた水平アクチュエータ40により、収容ボックス6は押圧付勢されて置台38上にて固定されている。
【0055】
この状態で、蓋開閉機構44(図2参照)を駆動することにより、開口36の開閉ドア42と収容ボックス6の開閉蓋6Aとを取り外し、これらを例えば水平方向へスライド移動させて退避させる。そして、本発明に係る被処理体の移載機構52を駆動することにより、収容ボックス6内に収容されていたウエハWを、ここでは5枚ずつ取り出し、これを移載用ボート載置台48上に設置されているウエハボート18に移載する。
【0056】
この場合、ウエハボート18のウエハ収容枚数が75枚で、且つ収容ボックス6内のウエハ収容枚数が25枚ならば、3つの収容ボックス6内からウエハが取り出されて移載され、1バッチの処理が行われることになる。ここで上記被処理体の移載機構52の駆動が開始されると、これに設けられたイオン発生手段60も駆動されてイオンの放出が開始される。
【0057】
上記ウエハボート18へのウエハWの移載が完了したならば、次に、ボート移載機構74を駆動して、この移載用ボート載置台48上のウエハボート18を最下端へ降下されているキャップ70上に載置する。ここで、熱処理が完了してアンロードされたウエハを収容するウエハボート18が上記キャップ70上にある場合には、ボート移載機構74を用いてこのウエハボート18を予め待機用ボート載置台50上へ移しておく。
【0058】
そして、この未処理のウエハを収容するウエハボート18のキャップ70上への移載が完了したならば、ボート昇降機構68を駆動させて、ウエハボート18と、これを載置したキャップ70を一体的に上昇させ、このウエハボート18を処理ユニット22の処理容器64内へ、この下端開口部より導入してロードする。そして、このキャップ70によって処理容器64の下端開口部を密閉し、この状態で処理ユニット22内でウエハWに対して所定の熱処理、例えば成膜処理や酸化拡散処理等を行なう。この場合、熱処理の態様にもよるが、ウエハWの温度は800〜1000℃の高温に達する。
【0059】
このようにして、所定の時間の熱処理が終了したならば、前述したと逆の操作を行なって、処理済みのウエハWを取り出す。すなわち、アンロードを開始することよりウエハボート18を処理容器64内から降下させてアンロードを完了する。この際、アンロードを開始してウエハボート18の降下を開始すると、被処理体移載エリア10内の雰囲気は高温状態になるが上述したサイドフロー78(図3参照)で冷却される。そして、このアンロードされたウエハボート18は、ボート移載機構74により、待機用ボート載置台50を経由して、或いはこれを経由することなく直接的に移載用ボート載置台48上へ移載される。この間に上記処理済みのウエハWは、ある程度冷却されている。
【0060】
そして、被処理体の移載機構52の昇降手段54及びフォーク手段58を用いて処理済みのウエハWをウエハボート18から移載ステージ20の置台38上の空の収容ボックス6内に移載する。この場合にも、上記被処理体の移載機構52に設けられたイオン発生手段60を駆動しており、イオンを放出している。この収容ボックス6内への処理済みウエハWの移載が完了したならば、開閉ドア42を開口36へ装着し、更に蓋開閉機構44(図2参照)を駆動して、これに保持していた開閉蓋6Aを収容ボックス6側へ装着する。
【0061】
次に、収容ボックス搬送エリア8内のボックス搬送アーム34を駆動し、この収容ボックス6を一時的にストッカ部16へ貯留し、或いは貯留することなくボックス搬出入口24を介して処理システム2の外へ搬送することになる。このボックス搬送アーム34が処理済みのウエハを収容した収容ボックス6を搬送している間、すでに空の収容ボックス6を把持して待機していた待機用ボックス搬送アーム46は、この空の収容ボックス6を置台38上にセットし、処理済みのウエハの収容ボックス6内への収容が開始されることになる。
【0062】
この場合、例えば3つの空の収容ボックス6が用いられることになる。そして、これにより、1バッチのウエハの処理が完了する。以下、同様な操作が繰り返される。尚、上記した収容ボックス26の流れは単に一例を示したに過ぎず、これに限定されないのは勿論である。
【0063】
さて、このような一連の動作が行われている中で、上記被処理体移載エリア10内での半導体ウエハWの移載について着目すると、このウエハWは、置台38上に設置された収容ボックス6と移載用ボート載置台48上に設置されたウエハボート18との間で被処理体の移載機構52を用いて移載されることになる。すなわち、図5に示すように、被処理体の移載機構52の昇降手段54によって昇降台86は昇降移動し、またフォーク手段58の旋回台92は、昇降台86より延びる取付アーム90上で必要に応じて旋回移動し、更に、旋回台92上のスライダ96が前後へスライド移動することによって5本のフォーク本体94A〜94Eは前進或いは、後退し、これによって各フォーク本体94A〜94E上にウエハWを保持して、これを移載することになる。
【0064】
このように、ウエハWを移載する結果、ウエハW自体及びウエハWを保持して収容することになる収容ボックス6やウエハボート18が静電気により帯電する傾向となる。また、種々の原因により、この被処理体移載エリア10内に存在する僅かなパーティクル(塵)も静電気により帯電する傾向にある。
【0065】
しかしながら、本発明においては、上記フォーク手段58にイオン発生手段60を設けて、このイオン発生手段60よりプラスイオンとマイナスイオンとを放出しているので、上記帯電箇所や浮遊している帯電パーティクルが除電されることになり、ウエハWにパーティクルが付着することを防止することができる。
【0066】
すなわち、図7(A)に示すように、イオン発生手段60のイオン発生器98にて発生したプラスイオンとマイナスイオンとは、キャリアガスにより随伴されてイオン流路100内を流れ、この先端に接続したイオン吹出しノズル102から前方に向けて常に放出されることになる。このイオン吹出しノズル102は、上述したようにウエハWの移載操作によって、昇降移動、旋回移動及び前進後退移動するので、このフォーク手段58が移動する全ての領域に対して上記イオンを放出することになる。
【0067】
例えば図4では、フォーク手段58が左右反対側を向いた状態を示しており、このようにして、フォーク手段58が移動する全ての経路においてイオンを放出させることができる。従って、上述のように帯電する傾向にある収容ボックス6及びウエハボート18を効果的及び効率的に除電することができる。
【0068】
また、被処理体移載エリア10内の広い領域に対して広範囲にイオンを放出することができるので、このエリア内で帯電して浮遊しているパーティクルに対しても、これを効果的及び効率的に除電することができる。この場合、イオン発生器60は、1台或いは2台程度なので、設備コストは非常に少なくて済み、少ない台数のイオン発生手段60で広範囲に亘ってイオンを放出させることができる。
【0069】
また、この被処理体移載エリア10内の帯電状況は、図7(A)に示すように、帯電量検出センサ112により常時検出されており、この検出値が所定値よりも低い場合には、上記イオン用制御部114はイオン発生器98の動作を停止することができるので、キャリアガス等を無駄に消費することを防止することができる。
【0070】
このように、被処理体である例えば半導体ウエハWを収容する収容ボックス6と処理容器64内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段であるウエハボート18との間で被処理体の移載を行う移載機構において、被処理体を載置して移動するフォーク手段58にイオン発生手段60を設けて静電気を除去するようにしたので、少ない台数のイオン発生手段60で例えば被処理体移載エリア10内の広範囲に亘って帯電箇所の除電及び浮遊する帯電塵の除電を行うことができる。
【0071】
尚、上記実施形態の場合には、旋回台92の両側に2台のイオン発生手段60を設けた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、図7(B)に示すように1台のイオン発生手段60を設け、このイオン発生器98から延びるイオン流路100を途中で2つに分岐して、分岐したそれぞれのイオン流路100の先端部にイオン吹出しノズル102を設けるようにしてもよい。これによれば、イオン発生器98を1台減少させた分だけ、設備コストを低減させることができる。尚、図7(B)において、図7(A)に示す部分と同一構成の部分については同一参照符号を付してある。
【0072】
<変形実施形態>
次に、本発明の被処理体の搬送機構の変形実施形態について説明する。先の実施形態にあっては、イオン発生手段60の全体を旋回台92に設けた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、イオン発生手段60の一部、或いは全部をフォーク本体94側に取り付けるようにしてもよい。図8はこのような本発明の被処理体の搬送機構の変形実施形態の一例を示す側面図、図9は本発明の被処理体の搬送機構の変形実施形態の一例を示す平面図であり、図8中のA−A線矢視概略断面図を示している。尚、図8及び図9において、図5中の構成部費かと同一構成部品については同一参照符号を付してある。
【0073】
一般に、図8及び図9に示すように、フォーク手段58には、ウエハWを保持するフォーク本体94A〜94E以外に、ウエハボート18や収容ボックス6内におけるウエハの収容位置を検出するセンサ付きフォーク本体94Xを有している場合がある。
【0074】
このセンサ付きフォーク本体94Xは、他のフォーク本体94A〜94Eと同様に、前進及び後退が可能になされ、先端側は2股状に分かれている。そして、この2股状の先端部に、ウエハWの有無を検出する光センサ130が設けられる。この光センサ130は、2股状の先端部の一端に設けた発光ダイオードやレーザ素子等よりなって検査光Lを発する発光器130Aと他方の先端部に設けた受光器130Bとよりなり、このセンサ付きフォーク本体94Xを前進させた状態で、ウエハWのエッジに相当する箇所を上下方向へ走査移動させることにより、ウエハの有無と、その位置を検出するようになっている。尚、このセンサ付きフォーク本体94Xを用いてウエハWの搬送ができるのは勿論である。
【0075】
そして、この変形実施形態では、上記センサ付きフォーク本体94Xの両側に、それぞれ上記イオン発生手段60を設けている。具体的には、上記センサ付きフォーク本体94Xの2股状の先端部に、2台のイオン発生手段60の各イオン吹出しノズル102をそれぞれ取り付けている。また、ここでは各イオン発生器98をスライダ96の両側に取り付けるようにしている。この場合には、上記センサ付きフォーク本体94Xを前進させて、上記イオン吹出しノズル102を上記ウエハWやウエハボート18や収容ボックス6に更に接近させた状態でイオンを吹き出すことができるので、帯電箇所等をより効果的に除電することができる。尚、この場合にも、図7(B)に示すようにイオン発生器98を1台にしてもよいのは勿論である。
【0076】
また、上記各実施形態では、イオン吹出しノズル102からのイオンの吹き出し方向は、前方へ直線状になるように設定したが、これに限定されず、図10に示すように、イオン吹出しノズル102の先端部に、イオンの吹き出し方向を拡散させる拡散ヘッド132を設けるようにしてもよい。この拡散ヘッド132には、吹き出し方向を前方のみならず、斜め前方に向けて拡散させるための複数の吹き出し孔132Aが形成されており、前方の広範囲な領域にイオンを吹き出すことができるようになっている。
【0077】
また、図示されていないが、このイオン吹出しノズル102の先端部にイオンの吹き出し方向を可変にする可変ルーバを設けるようにしてもよい。また上記各実施形態では、イオン発生手段60としてキャリアガスを用いたものを例にとって説明したが、これに限定されず、キャリアガスを用いないようにしてもよい。このキャリアガスを用いない場合には、発生したイオンをサイドフロー78(図3参照)に随伴させてイオンを拡散させるようにする。
【0078】
また、以上の各実施形態ではイオン発生器98とイオン吹出しノズル102とを離間させて両者をイオン流路100により連結した場合(図7参照)を主に例にとって説明したが、これに限定されず、図11に示すイオン発生手段の他の変形実施形態のように、イオン発生器98とイオン吹出しノズル102とを直に接合したようなイオン発生手段も用いることができる。このようなイオン発生手段としては、例えば株式会社キーエンス(KEYENCE)製のマイクロ除電器ST−M020シリーズ(商品名)等を用いることができる。また、この場合にも、キャリアガスを用いる形式のものと、用いない形式のものがあり、図11では、キャリアガスを用いた形式を図示している。
【0079】
尚、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る被処理体の処理システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る被処理体の移載機構を設置した被処理体移載エリア内の各構成部材の配列位置の一例を示す平面図である。
【図3】被処理体移載エリア内の清浄気体の流れを示す斜視図である。
【図4】被処理体移載エリア内の各構成部材の配列位置と移載機構の動作状況の一例を示す斜視図である。
【図5】イオン発生手段を有する移載機構を示す拡大斜視図である。
【図6】移載機構のフォーク手段を示す側面図である。
【図7】イオン発生手段の各種形態を示すブロック構成図である。
【図8】本発明の被処理体の搬送機構の変形実施形態の一例を示す側面図である。
【図9】本発明の被処理体の搬送機構の変形実施形態の一例を示す平面図である。
【図10】イオン吹出しノズルの先端部に設ける拡散ヘッドを示す斜視図である。
【図11】イオン発生手段の他の変形実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
2 被処理体の処理システム
4 筐体
6 収容ボックス
8 収容ボックス搬送エリア
10 被処理体移載エリア
18 ウエハボート(被処理体保持手段)
22 処理ユニット
32 昇降エレベータ
34 ボックス搬送アーム
48 移載用ボート載置台
50 待機用ボート載置台
52 被処理体の移載機構
54 昇降手段
56 昇降台
58 フォーク手段
60 イオン発生手段
64 処理容器
68 ボート昇降機構
70 キャップ
74 ボート移載機構
76 フィルタ
78 サイドフロー
92 旋回台
94,94A〜94E フォーク本体
96 スライダ
98 イオン発生器
100 イオン流路
102 イオン吹出しノズル
104 キャリアガス供給手段
108 キャリアガス管
112 帯電量検出センサ
114 イオン用制御部
120 システム制御部
130 光センサ
132 拡散ヘッド
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理体を複数段に亘って保持して収容することが可能な収容ボックスと、複数の被処理体を複数段に亘って保持し、前記被処理体に対して所定の処理を施すための処理容器内へロード及びアンロードされる被処理体保持手段との間で、前記被処理体の移載を行う被処理体の移載機構において、
昇降手段により上下方向へ昇降可能になされた昇降台と、
前記昇降台に設けられて、前記被処理体を載置して前進、後退及び旋回可能になされたフォーク手段と、
前記フォーク手段に設けられて静電気を除去するイオンを発生させるイオン発生手段と、
を備えたことを特徴とする被処理体の移載機構。
【請求項2】
前記フォーク手段は、
前記昇降台上に旋回可能に設けられた旋回台と、
前記旋回台に設けられて前記被処理体を載置して前進及び後退可能になされた複数のフォーク本体と、
よりなることを特徴とする請求項1記載の被処理体の移載機構。
【請求項3】
前記フォーク手段は、
前記旋回台に設けられて、前記被処理体の有無を検出する光センサを先端部に有して前進及び後退可能になされたセンサ付きフォーク本体を備えていることを特徴とする請求項2記載の被処理体の移載機構。
【請求項4】
前記イオン発生手段は、前記旋回台に設けられることを特徴とする請求項2又は3記載の被処理体の移載機構。
【請求項5】
前記イオン発生手段は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段を有しており、前記イオン発生手段のイオン吹出しノズルは、前記旋回台の先端部に設けられることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項6】
前記イオン発生手段は、前記センサ付きフォーク本体に設けられることを特徴とする請求項3記載の被処理体の移載機構。
【請求項7】
前記イオン発生手段は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段を有しており、前記イオン発生手段のイオン吹出しノズルは、前記センサ付きフォーク本体の先端部に設けられることを特徴とする請求項3又は6記載の被処理体の移載機構。
【請求項8】
前記イオン吹出しノズルには、前記イオンの吹き出し方向を拡散させる拡散ヘッドが設けられることを特徴とする請求項5又は7記載の被処理体の移載機構。
【請求項9】
前記イオン吹出しノズルには、前記イオンの吹き出し方向を変化させるための可変ルーバが設けられていることを特徴とする請求項5又は7記載の被処理体の移載機構。
【請求項10】
前記イオンが吹き出される領域に設けられる帯電量検出センサと、
前記帯電量検出センサの検出値に基づいて前記イオン発生手段の動作を制御するイオン用制御部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項11】
前記イオン発生手段は、イオナイザであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項12】
前記収容ボックスは、着脱可能になされた開閉蓋を有し、内部は密閉可能になされていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項13】
前記処理容器は、底部に開口を有すると共に有天井になされた石英製の円筒体よりなり、前記開口には気密に着脱可能になされたキャップが装着されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項14】
前記被処理体の移載を行う空間は、前記処理容器の下方の被処理体移載エリアであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構。
【請求項15】
前記被処理体移載エリアには、清浄気体のサイドフローが形成されていることを特徴とする請求項14記載の被処理体の移載機構。
【請求項16】
複数の被処理体を収容する収容ボックスから前記被処理体を取り出して前記被処理体に対して熱処理を施すようにした被処理体の処理システムにおいて、
前記被処理体に対して熱処理を施すための処理容器を有する縦型の処理ユニットと、
前記処理ユニットの下方に設けられて周囲が区画壁により区画された被処理体移載エリアと、
前記被処理体を複数段に亘って保持する被処理体保持手段と、
前記被処理体保持手段を昇降させて前記処理容器内へロード及びアンロードする保持手段用昇降手段と、
前記区画壁に設けられた移載ステージに設置した前記収容ボックスと前記被処理体保持手段との間で前記被処理体を移載するための請求項1乃至15のいずれか一項に記載の被処理体の移載機構と、
を備えたことを特徴とする被処理体の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−302351(P2009−302351A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156046(P2008−156046)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】