説明

車両用制御装置及び車両

【課題】摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータの大容量化を抑制しつつ制動力を十分に確保することができると共に、電動モータの駆動トルクを使用せずに車両の停車状態を保持することができる車両用制御装置及び車両を提供すること。
【解決手段】車両用制御装置100によれば、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の回生運転を利用した回生制動と、車輪2の横力を利用したトウ制動とを併用する構成であるので、必要最大制動力を回生制動のみでは発揮することができず、制動力が不足する場合であっても、その不足分をトウ制動によって補うことができる。よって、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータの容量を小型化しつつ、制動力を十分に確保することができる。また、車輪2にトウ角を付与することができるので、例えば、坂道であっても、車両1を停車状態に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関し、特に、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータの大容量化を抑制しつつ制動力を十分に確保することができると共に、電動モータの駆動トルクを使用せずに車両の停車状態を保持することができる車両用制御装置及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とするいわゆる電気自動車やハイブリット車両では、減速時に、電動モータの回生運転(電動モータを発電機として動作させつつ、その発電エネルギを電動モータの電源である蓄電池(バッテリ)に充電させる運転)を行い、これにより、走行エネルギを電気エネルギに変更し、そのときの抵抗により制動力を得る回生制動を行うことが一般的である。
【0003】
回生制動は、回生エネルギを回収できることから、燃費向上の上で有利であり、かかる回生制動を優先的に利用することが好ましい。そこで、例えば、特許文献1には、ブレーキペダルの操作状態に応じて設定される要求制動力が所定値よりも小さい場合には回生制動のみを行い、要求制動力が所定値よりも大きな場合に摩擦力を利用した摩擦制動を併せて行うという技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−264793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、摩擦制動を併用する従来の技術では、摩擦ブレーキ装置を車両に別途設ける必要があるため、その分、車両重量や製品コストが嵩むという問題点があった。
【0005】
一方、摩擦ブレーキ装置の設置を省略し、電動モータによる回生制動のみを制動力とする構成の車両であれば、上述した問題点の解消は可能である。しかしながら、この場合、回生制動力の最大値は、電動モータの容量(出力)に依存するため、回生制動のみで必要最大制動力を確保する構成(摩擦ブレーキ装置の設置を省略した構成)では、電動モータの不必要な大容量化を招くという問題点があった。
【0006】
例えば、必要最大制動力が0.8Gである場合に、摩擦制動を併用する従来の技術では、電動モータの回生制動により0.4Gを確保し、不足分を摩擦ブレーキ装置の摩擦制動により補うことができる。
【0007】
これに対し、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した構成では、車両の加速性能として要求される電動モータの出力(容量)が0.4Gの場合であっても、電動モータの回生制動だけで0.8Gを確保する必要があるため、電動モータの容量を不必要に大容量とする必要が生じ、非効率的であった。
【0008】
また、車両を停車させる場合、回生制動のみでは車両の停車状態を保持するための保持力を発生させることができないため、摩擦ブレーキ装置の設置が省略された車両では、例えば、坂道において、停車中も電動モータの駆動トルクを制御し続ける必要が生じ、燃費(電気エネルギ消費率)が悪化するという問題点があった。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータの大容量化を抑制しつつ制動力を十分に確保することができると共に、電動モータの駆動トルクを使用せずに車両の停車状態を保持することができる車両用制御装置及び車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の車両用制御装置は、転舵可能に構成される車輪と、その車輪を回転駆動するモータ装置と、前記車輪を操舵駆動するアクチュエータ装置とを有する車両に対し、前記モータ装置を作動させて、前記車輪の駆動状態を制御すると共に、前記アクチュエータ装置を作動させて、前記車輪のトウ角を制御するものであって、前記モータ装置を回生運転させて、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与する回生制動手段と、前記アクチュエータ装置を作動させて、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与するトウ制動手段と、を備えている。
【0011】
請求項2記載の車両用制御装置は、請求項1記載の車両用制御装置において、運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作状態を検出する操作量検出手段と、その操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作状態に基づいて、要求された制動力が所定値以上の制動力であるかを判断する急制動判断手段と、その急制動判断手段の判断の結果、前記要求された制動力が所定値以上の制動力であるとされた場合に、前記回生制動手段を実行し、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与し、かつ、前記トウ制動手段を実行し、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する急制動時作動制御手段と、を備えている。
【0012】
請求項3記載の車両用制御装置は、請求項2記載の車両用制御装置において、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、その車両速度検出手段により検出された前記車両の速度が基準速度よりも低速であるかを判断する速度判断手段と、前記急制動判断手段による判断の結果、前記要求された制動力が所定値以上の制動力ではなく、かつ、前記速度判断手段による判断の結果、前記車両の速度が基準速度よりも低速であるとされた場合に、前記回生制動手段を非実行とし、かつ、前記トウ制動手段を実行し、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する低速時作動制御手段と、を備えている。
【0013】
請求項4記載の車両用制御装置は、請求項3記載の車両用制御装置において、前記急制動判断手段による判断の結果、前記要求された制動力が所定値より小さく、かつ、前記速度判断手段による判断の結果、前記車両の速度が基準速度よりも低速ではないとされた場合に、前記回生制動手段を実行して、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与し、かつ、前記トウ制動手段を非実行とする定常時作動制御手段と、を備えている。
【0014】
請求項5記載の車両は、請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の車両用制御装置によれば、回生制動手段によりモータ装置が回生運転されると、車輪に回生制動のための回生トルクが付与される。これにより、車輪に回生制動力が発生し、車両の走行速度が減速される。一方、トウ制動手段によりアクチュエータ装置が作動されると、車輪にトウ制動のためのトウ角が付与される。これにより、車輪に横力が発生し、その横力がトウ制動力となることで、車両の走行速度が減速(又は、車両の停車状態が保持)される。
【0016】
このように、本発明の車両用制御装置によれば、電動モータ(モータ装置)の回生運転を利用した回生制動と、車輪の横力を利用したトウ制動とを併用する構成であるので、必要最大制動力を回生制動のみでは発揮することができず、制動力が不足する場合であっても、その不足分をトウ制動によって補うことができる。よって、電動モータの容量を小型化しつつ、制動力を十分に確保することができるという効果がある。
【0017】
また、その結果、必要最大制動力を確保できることで、摩擦ブレーキ装置の設置を省略することができるので、その分、部品点数を削減して、車両重量の軽量化と製品コストの削減とを図ることができるという効果がある。
【0018】
更に、本発明の車両用制御装置によれば、トウ制動手段により車輪にトウ角を付与することができるので、例えば、坂道であっても、車両を停車状態に保持することができるという効果がある。即ち、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータ(モータ装置)の駆動トルクを使用せずに、車両を停車状態に保持することができるので、停車中の車両を保持するために電動モータの駆動トルクを制御し続けることを不要として、その分、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができるという効果がある。
【0019】
なお、アクチュエータ装置は、運転者のハンドル操作などがなされた場合に、車両を旋回させることを目的として、車輪を操舵駆動する(トウ角を付与する)ための装置であり、車両が本来備える構成である。本発明の車両用制御装置では、このアクチュエータ装置を利用して、車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する構成(即ち、アクチュエータ装置を車両の旋回とトウ制動との2動作に対する駆動源として兼用する構成)であるので、トウ制動を行うための新たな構成を車両に別途設けることを不要とすることができるという効果がある。
【0020】
即ち、このような車両に新たな構成を別途設けることなく制動力を確保するという効果は、従来の摩擦ブレーキ装置を利用する技術では達成不可能であり、本発明のようにトウ制動を採用することで初めて達成可能となったものであり、これにより車両重量の軽量化と制動力の確保とを同時に達成することができる。
【0021】
請求項2記載の車両用制御装置によれば、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作状態を検出する操作量検出手段と、その操作量検出手段により検出されたブレーキ操作部材の操作状態に基づいて、要求された制動力が所定値以上の制動力であるかを判断する急制動判断手段とを備え、その急制動判断手段の判断の結果、要求された制動力が所定値以上の制動力であるとされた場合に、回生制動を行うための回生制動手段とトウ制動を行うためのトウ制動手段とを同時に実行する構成であるので、運転者により急制動が指示された場合に、その急制動を十分な制動力で確実に行うことができるという効果がある。
【0022】
請求項3記載の車両用制御装置によれば、請求項2記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、急制動判断手段による判断の結果、要求された制動力が所定値以上の制動力ではなく、かつ、速度判断手段による判断の結果、車両の速度が基準速度よりも低速であるとされた場合には、低速時作動手段によって、回生制動手段を非実行とし、かつ、トウ制動手段を実行し、車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する構成であるので、電動モータ(モータ装置)のトルク制御を不要として、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができるという効果がある。
【0023】
即ち、急制動判断手段により急制動が必要ではないと判断され、回生制動またはトウ制動のいずれか一方のみで制動力が足りるような場合には、回生エネルギを回収できる回生制動を利用することが燃費(電気エネルギ消費率)の観点より好ましい。
【0024】
しかしながら、速度判断手段により車両速度が低速であると判断されている場合(例えば、時速0kmから時速5km程度での走行時)には、目標速度で走行(例えば、坂道での車両の停車状態を維持するための動作を含む)を行うべく、電動モータの駆動・回生が繰り返され、トルクのハンチングを招くため、電気エネルギのロスが発生する。
【0025】
これに対し、本発明の車両用制御装置によれば、上述のように、急制動が不要かつ低速の場合には、回生制動手段を非実行とし、トウ制動手段のみを実行する構成であるので、電動モータ(モータ装置)のトルク制御を不要として、トルクのハンチングを回避することができるので、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができる。
【0026】
請求項4記載の車両用制御装置によれば、請求項3記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、急制動判断手段による判断の結果、要求された制動力が所定値以上の制動力ではなく、かつ、速度判断手段による判断の結果、車両の速度が基準速度よりも低速ではないとされた場合には、定常時作動手段によって、回生制動手段を実行し、車輪に回生制動のためのトルクを付与し、かつ、トウ制動手段を非実行とする構成であるので、回生エネルギを回収して、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができると共に、車輪の摩耗を抑制して、車輪の寿命の向上を図ることができるという効果がある。
【0027】
即ち、この場合は、急制動が必要ではなく、回生制動のみで制動力が足り、かつ、車両速度が所定値よりも高速であるので、上述したハンチングの問題も生じない。よって、回生制動の利用により、回生エネルギを回収して、その分、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができると共に、トルク制動の非実施により、車輪に横力が発生することを回避して、車輪の摩耗を抑制することができ、その分、その寿命の向上を図ることができる。
【0028】
請求項5記載の車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置を備えるので、請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。また、図1では、全車輪2に所定のトウ角が付与された状態が図示されている。
【0030】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を独立に操舵駆動するアクチュエータ装置4とを主に備えている。
【0031】
ここで、車両1の制動は、後述するように、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の回生運動を利用した回生制動と、車輪2の横力を利用したトウ制動との2種類の形態を利用して行われる。なお、回生制動は、電動モータを回生運動させることで、回生トルクを発生させ、この回生トルクを制動力として利用するものである。一方、トウ制動は、車輪2にトウ角を付与することで、横力を発生させ、この横力を制動力として利用するものである。
【0032】
次いで、図1を参照して、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、ステアリング装置20,30により操舵可能に構成されている。
【0033】
ステアリング装置20,30は、各車輪2を操舵するための操舵装置であり、図1に示すように、各車輪2を揺動可能に支持するキングピン21と、各車輪2のナックルアーム(図示せず)に連結されるタイロッド22と、そのタイロッド22にアクチュエータ装置4の駆動力を伝達する伝達機構部23とを主に備えて構成されている。
【0034】
アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を独立に操舵駆動するための操舵駆動装置であり、図1に示すように、4個のアクチュエータ(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)を備えて構成されている。運転者がハンドル51を操作して旋回を指示した場合には、アクチュエータ装置4の一部又は全部が駆動され、ハンドル51の操作量に応じたトウ角が車輪2の一部(例えば、前輪2FR,2FLのみ)又は全部に付与される。
【0035】
また、運転者によるハンドル操作が行われていない場合であっても、ブレーキペダル52が踏み込まれた(操作された)場合には、アクチュエータ装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)の一部又は全部が駆動され、車輪2の一部又は全部(本実施の形態では全車輪2)にトウ角が付与される。これにより、車輪2に横力を発生させ、この横力を制動力として利用することで、車両1の速度を減速させる。
【0036】
このように、アクチュエータ装置4による車輪2の操舵駆動は、ハンドル51の操作に起因し、旋回を目的として行われる場合と、ハンドル51の操作の有無に関わらず、制動を目的として行われる場合(トウ制動)との2種類がある。
【0037】
なお、このアクチュエータ装置4は、車両1を旋回させることを目的として、車輪2を操舵駆動する(トウ角を付与する)ための装置として、車両1が本来備える構成である。本実施の形態における車両用制御装置100では、このアクチュエータ装置4を利用して、車輪2にトウ制動のためのトウ角を付与する構成(即ち、アクチュエータ装置4を車両の旋回とトウ制動との2動作に対する駆動源として兼用する構成)であるので、トウ制動を行うための新たな構成(例えば、摩擦ブレーキ装置)を車両1に別途設けることを不要とすることができる。
【0038】
ここで、本実施の形態では、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRが電動モータで構成されると共に、伝達機構部23がねじ機構で構成される。電動モータが回転されると、その回転運動が伝達機構部23により直線運動に変換され、タイロッド22に伝達される。その結果、各車輪2がキングピン21を揺動中心として揺動駆動され、各車輪2に所定の舵角が付与される。
【0039】
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2ごとに(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル53を操作した場合には、各電動モータから回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル53の操作量に応じた回転速度で回転される。また、運転者がブレーキペダル52を操作した場合には、各電動モータから回生制動力が各車輪2に付与され、各車輪2にブレーキペダル52の操作量に応じた制動力が発生する。
【0040】
車両用制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための制御装置であり、例えば、アクセルペダル53が操作された場合などには、車輪駆動装置3の駆動制御を行う一方、ハンドル51や各ペダル52,53が操作された場合などには、アクチュエータ装置4の駆動制御(トウ角制御)や車輪駆動装置3の駆動制御(回生制御)を行う。
【0041】
次いで、図2を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図2は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図2に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
【0042】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図4に図示される制動制御処理のフローチャート)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0043】
ここで、ROM72には、図2に示すように、トウ角マップ72aと回生制動マップ72bとが設けられている。ここで、図3を参照して、トウ角マップ72a及び回生制動マップ72bについて説明する。図3(a)は、トウ角マップ72aの内容を模式的に図示した模式図であり、図3(b)は、回生制動マップ72bの内容を模式的に図示した模式図である。
【0044】
図3(a)に示すように、トウ角マップ72aは、ブレーキペダル52の踏み込み量(操作量)と車輪2のトウ角との関係が記憶されたマップであり、車輪2のトウ角がブレーキペダル52の踏み込み量に比例する形で規定されている。CPU71は、このトウ角マップ72aの内容に基づいて、車輪2に付与するトウ角を決定し、アクチュエータ装置4の駆動制御を行う。
【0045】
また、図3(b)に示すように、回生制動マップ72bは、ブレーキペダル52の踏み込み量(操作量)と電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の回生制動量との関係を記憶したマップであり、電動モータの回生制動量がブレーキペダル52の踏み込み量に比例する形で規定されている。CPU71は、この回生制動マップ72bの内容に基づいて、電動モータの回生運転状態を決定し、車輪駆動装置3の駆動制御を行う。
【0046】
図2に戻って説明する。車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
【0047】
また、車輪駆動装置3は、回生回路(図示せず)を備えており、FL〜RRモータ3FL〜3RRは、この回生回路と共に回生ブレーキ装置を構成し、回生モータとして機能する。なお、回生回路は、交流電流を直流電流に変換するコンバータを内蔵し、CPU71からの制御信号に基づいて、これら各モータ3FL〜3RRを回生モータとして機能させる(回生運転させる)ことにより、各モータ3FL〜3RRにより発生された電力(電気エネルギ)をバッテリ(図示せず)へ供給(回収)する。
【0048】
アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を操舵駆動するための装置であり、各車輪2に操舵駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
【0049】
舵角センサ装置31は、各車輪2の舵角(トウ角)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の舵角をそれぞれ検出する4個のFL〜RR舵角センサ31FL〜31RRと、それら各舵角センサ31FL〜31RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0050】
なお、本実施の形態では、各舵角センサ31FL〜31RRが各伝達機構部23にそれぞれ設けられ、その伝達機構部23において回転運動が直線運動に変換される際の回転数を検出する非接触式の回転角度センサとして構成されている。この回転数は、タイロッド22の変位量に比例するので、CPU71は、舵角センサ装置31から入力された検出結果(回転数)に基づいて、各車輪2の舵角を得ることができる。
【0051】
ここで、舵角センサ装置31により検出される舵角とは、各車輪2の中心線と車両1(車体フレームBF)の基準線(各線ともに図示せず)とがなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度である。
【0052】
車両速度センサ装置32は、路面に対する車両1の速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0053】
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ32a,32bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0054】
CPU71は、車両速度センサ装置32から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
【0055】
図2に示す他の入出力装置35としては、例えば、ハンドル51、ブレーキペダル52及びアクセルペダル53(いずれも図1参照)の操作状態(回転角や踏み込み量、操作速度など)を検出するための操作状態検出センサ装置(図示せず)等が例示される。
【0056】
次いで、図4を参照して、本発明の制動制御処理について説明する。図4は、制動制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理である。
【0057】
CPU71は、制動制御処理に関し、まず、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)を検出し(S1)、ブレーキペダル52が操作されているか否かを判断する(S2)。
【0058】
その結果、ブレーキペダル52が操作されていないと判断される場合には(S2:No)、車両1を減速させる又は停車状態に保持する指示が運転者からなされておらず、制動動作を実行する必要がないということであるので、S3以降の処理をスキップして、この制動制御処理を終了する。
【0059】
一方、S2の処理において判断した結果、ブレーキペダル52が操作されていると判断される場合には(S2:Yes)、次いで、急制動を行う必要があるか否か、即ち、運転者により要求された制動力が所定値以上の制動力であるか否かを、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(操作状態)に基づいて判断する(S3)。なお、本実施の形態では、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量)が所定量(例えば、最大踏み込み可能量の70%)を越える場合に、急制動であると判断する。
【0060】
S3の処理で判断した結果、急制動を行う必要があると判断される場合には(S3:Yes)、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(踏み込み量)に対応する車輪2のトウ角の値を、ROM72に設けられているトウ角マップ72a(図3(a)参照)より読み取り(S4)、S5の処理へ移行する。
【0061】
S5の処理では、S4の処理において読み取ったトウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御すると共に、最大回生制動力を目標値として車輪駆動装置3(回生回路)を駆動して(S5)、この制動制御処理を終了する。
【0062】
S5の処理により、車輪2にトウ制動のためのトウ角が付与され、トウ制動力が発生すると共に、同時に、車輪駆動装置3が所定条件で回生運転され、車輪2に回生制動のための最大回生トルクが付与されることで、最大回生制動力が発生する。その結果、車両1の走行速度が減速(急制動)される。
【0063】
このように、本実施の形態における車両用制御装置100によれば、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の回生運転を利用した回生制動と、車輪2の横力を利用したトウ制動とを併用する構成である。
【0064】
よって、急制動時に要求された制動力(必要最大制動力)を回生制動のみでは発揮することができず、制動力が不足する場合であっても、その不足分をトウ制動によって補うことができる。従って、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の容量を小型化しつつ、制動力を十分に確保することができる。
【0065】
また、このように、必要最大制動力を確保できることで、摩擦ブレーキ装置(例えば、ディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置)の設置を省略することができるので、その分、部品点数を削減して、車両1全体としての重量の軽量化と製品コストの削減とを図ることができる。
【0066】
ここで、本実施の形態における車両用制御装置100によれば、運転者により急制動が指示された場合には(S3:Yes)、最大回生制動力を目標値として車輪駆動装置3を駆動し(S5)、不足分をトウ制動で補う構成、即ち、回生制動を優先的に利用して、回生運転を最大とする構成であるので、回生エネルギを効率的に回収することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0067】
また、運転者により急制動が指示された場合に(S3:Yes)、トウ制動により発生させるトウ制動力は、運転者が操作したブレーキペダル52の操作量に応じた大きさの制動力であるので(S4)、過大な制動力が急激に発生するなどの不具合を未然に回避して、運転者の意志に応じた制動を安定して行うことができる。
【0068】
一方、S2及びS3の処理において判断した結果、ブレーキペダル52が操作されており、かつ、急制動を行う必要はないと判断される場合には(S2:Yes、S3:No)、車両1を減速させる又は停車状態に保持する指示が運転者からなされており、所定の制動動作を実行する必要があるということである。
【0069】
この場合には(S2:Yes、S3:No)、まず、車両1の速度を検出し(S6)、その検出した車両1の速度が時速5km以上であるか否かを判断する(S7)。この判断の結果、車両1の速度が時速5km以上であると判断される場合には(S7:Yes)、要求されている制動動作は、急制動ではなく、かつ、後述する低速領域における制動動作でもないので、S8及びS9の処理へ移行して、回生制動のみによる制動動作を実行する。
【0070】
即ち、この場合には(S7:Yes)、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(踏み込み量)に対応する車輪2の回生制動量の値を、ROM72に設けられている回生制動マップ72b(図3(b)参照)より読み取ると共に(S8)、その読み取った回生制動量を目標値として車輪駆動装置3(回生回路)を駆動して(S9)、この制動制御処理を終了する。
【0071】
これにより、車輪駆動装置3が所定条件(電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)が回生制動マップ72bより読み出された回生制動量に対応する状態に設定された状態)で回生運転され、車輪2に回生制動のための回生トルクが付与されることで、回生制動力が発生する。その結果、車両1の走行速度がブレーキペダル52の操作量に応じた制動力で減速される。
【0072】
このように、本実施の形態における車両用制御装置100によれば、要求されている制動動作が、急制動ではなく、かつ、後述する低速領域における制動動作でもない場合には、回生制動のみを実行し、トウ制動を非実行とする構成であるので、回生エネルギを回収して、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができると共に、車輪の摩耗を抑制して、車輪の寿命の向上を図ることができる。
【0073】
即ち、この場合は(S3:No、S7:Yes)、急制動が必要ではないので、回生制動のみで制動力が足り、かつ、車両1の速度が所定値よりも高速である(後述する低速領域にない)ので、後述するハンチングの問題も生じない。よって、回生制動の利用により、回生エネルギを回収して、その分、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができると共に、トルク制動の非実行により、車輪2に横力が発生することを回避して、その摩耗を抑制することができ、その分、車輪2の寿命の向上を図ることができる。
【0074】
一方、S7の処理において判断した結果、車両1の速度が時速5km以上ではないと判断される場合には(S7:No)、低速領域(車両1が停車状態にある又は時速0kmを越え時速5km未満の走行速度である状態)における車両1の制動動作であるので、S10及びS11の処理へ移行して、トウ角制動のみによる制動動作を実行する。
【0075】
即ち、この場合には(S7:No)、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(踏み込み量)に対応する車輪2のトウ角の値を、ROM72に設けられているトウ角マップ72a(図3(a)参照)より読み取ると共に(S10)、その読み取ったトウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動して(S11)、この制動制御処理を終了する。
【0076】
これにより、アクチュエータ装置4の駆動動作により、車輪2にトウ制動のためのトウ角が付与され、トウ制動力が発生するその結果、車両1の走行速度がブレーキペダル52の操作量に応じた制動力で減速される。
【0077】
このように、本実施の形態における車両用制御装置100によれば、要求されている制動動作が、急制動ではなく、かつ、後述する低速領域における制動動作でもない場合には、回生制動のみを実行し、トウ制動を非実行とする構成であるので、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)のトルク制御を不要として、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができる。
【0078】
即ち、急制動の必要がなく、回生制動またはトウ制動のいずれか一方のみで制動力が足りるような場合には、回生制動によって回生エネルギを回収することが燃費(電気エネルギ消費率)の観点より好ましい。
【0079】
しかしながら、車両1が低速領域(即ち、車両1が停車状態にある又は時速0kmを越え時速5km未満の速度で走行する状態)にあると判断される場合には、目標速度での走行(例えば、坂道でも停車状態を維持するための動作を含む)を行うべく、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の駆動・回生が繰り返され、トルクのハンチングを招くため、電気エネルギのロスが発生する。
【0080】
これに対し、本実施の形態における車両用制御装置100によれば、急制動が不要かつ低速領域にある場合には、回生制動を非実行とし、トウ制動のみを実行する構成であるので、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)のトルク制御を不要として、トルクのハンチングを回避することができるので、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができる。
【0081】
また、このように、車両1の停車状態においては、トウ制動のみを実行する構成とすることで、摩擦ブレーキ装置の設置を省略した場合でも、電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の駆動トルクを使用せずに、車両1を平坦路や坂道で停車状態に保持することができる。よって、車両1の停車状態を保持するために電動モータの駆動トルクを制御し続けることを不要として、その分、燃費(電気エネルギ消費率)の向上を図ることができる。
【0082】
ここで、図4に示すフローチャート(制動制御処理)において、請求項1記載の回生制動手段S5及びS9の処理が、トウ制動手段としてはS5及びS11の処理が、請求項2記載の操作量検出手段としてはS1の処理が、急制動判断手段としてはS3の処理が、急制動時作動制御手段としてはS5の処理が、請求項3記載の車両速度検出手段としてはS6の処理が、速度判断手段としてはS7の処理が、低速時作動制御手段としてはS11の処理が、請求項4記載の定常時作動制御手段としてはS9の処理が、それぞれ該当する。
【0083】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記実施の形態では、低速領域における車両1の走行速度の上限が時速5kmである場合を説明したが、この走行速度の値は一例であり、時速5km以上の数値を採用することは当然可能である。
【0085】
上記実施の形態では説明を省略したが、トウ制動は、左右の車輪2が互いに同じ絶対値のトウ角(操舵方向が同じ又は異なる)を有するように行っても良く、左右の車輪2が互いに異なる絶対値のトウ角(操舵方向が同じ又は異なる)を有するように行っても良い。また、トウ制動は、左右の前輪2FL,2FRのみで行っても良く、左右の後輪2RL,2RRのみで行っても良く、或いは、全ての車輪2を使用して行っても良い。
【0086】
この場合、全ての車輪2が同じ絶対値のトウ角を有するようにトウ角制御を行っても良い。全ての車輪2を使用してトウ制動を行うことで、制動力を確保することができると共に、4輪の摩耗を均一化してローテーション作業回数を低減することができ、また、全ての車輪2を同じトウ角とすることで、車両用制御装置100の制御負担の軽減を図ることができる。
【0087】
なお、これら場合には、左右の車輪2がトーイン又はトーアウトとなるように、左右の車輪2の操舵方向を互いに逆方向として、かつ、同じタイミングで操舵制御を行うことが好ましい。このように、左右の車輪2をトーイン又はトーアウトとなるようにトウ角制御を行うことで、車両1に発生する旋回力を相殺して、トウ制動時の車両1の挙動をより安定させることができる。
【0088】
また、上記実施の形態では、車両1が旋回中であるか否かに関わらずトウ制動を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、急制動でなく、かつ、低速領域でもない場合には、車両1が直進走行している或いは所定の旋回半径以下の旋回中である場合にのみトウ制動を行い、直進走行或いは所定の旋回半径を越える場合にはトウ制動に代えて回生制動を実行するように構成しても良い。これにより、車両1の挙動が不安定化することを抑制することができる。
【0089】
上記実施の形態において説明したトウ角マップ72a及び回生制動マップ72bの内容は一例であって、他の内容により構成することは当然可能である。例えば、上記実施の形態では、トウ角又は回生制動量がブレーキペダル52の操作量に比例(正比例)する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これらの関係を他の関数(例えば、2次曲線等)により構成しても良い。
【0090】
上記実施の形態では、S3の処理において、急制動であるか否かを、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量)が所定量(例えば、最大踏み込み可能量の70%)を越えるか否かに基づいて判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ブレーキペダル52の操作速度(踏み込み速度)が所定速度を超えた場合に急制動であると判断するようにしても良く、或いは、前後方向加速度センサ32aにより検出された減速加速度が所定値を越えた場合に急制動であると判断するようにしても良い。
【0091】
上記実施の形態では、急制動時におけるトウ制動力がブレーキペダル52の操作量に応じて設定される場合を説明したが(S4及びS5参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、急制動時には一定のトウ角(例えば、最大操舵角相当のトウ角)を付与するようにしても良い。これにより、車両用制御装置100の制御負担の軽減を図ることができ、急制動時の応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】(a)トウ角マップの内容を模式的に図示する模式図であり、(b)は回生制動マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図4】制動制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
100 制御装置
1 車両
2 車輪
2FL 前輪(車輪、左車輪)
2FR 前輪(車輪、右車輪)
2RL 後輪(車輪、左車輪)
2RR 後輪(車輪、右車輪)
3 車輪駆動装置(モータ装置)
3FL〜3RR FL〜RRモータ(モータ装置)
4 アクチュエータ装置
4FL〜4RR FL〜RRアクチュエータ(アクチュエータ装置)
32 車両速度センサ装置(車両速度検出手段)
52 ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵可能に構成される車輪と、その車輪を回転駆動するモータ装置と、前記車輪を操舵駆動するアクチュエータ装置とを有する車両に対し、前記モータ装置を作動させて、前記車輪の駆動状態を制御すると共に、前記アクチュエータ装置を作動させて、前記車輪のトウ角を制御する車両用制御装置であって、
前記モータ装置を回生運転させて、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与する回生制動手段と、
前記アクチュエータ装置を作動させて、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与するトウ制動手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作状態を検出する操作量検出手段と、
その操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作状態に基づいて、要求された制動力が所定値以上の制動力であるかを判断する急制動判断手段と、
その急制動判断手段の判断の結果、前記要求された制動力が所定値以上の制動力であるとされた場合に、前記回生制動手段を実行し、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与し、かつ、前記トウ制動手段を実行し、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する急制動時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
その車両速度検出手段により検出された前記車両の速度が基準速度よりも低速であるかを判断する速度判断手段と、
前記急制動判断手段による判断の結果、前記要求された制動力が所定値以上の制動力ではなく、かつ、前記速度判断手段による判断の結果、前記車両の速度が基準速度よりも低速であるとされた場合に、前記回生制動手段を非実行とし、かつ、前記トウ制動手段を実行し、前記車輪にトウ制動のためのトウ角を付与する低速時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記急制動判断手段による判断の結果、前記要求された制動力が所定値より小さく、かつ、前記速度判断手段による判断の結果、前記車両の速度が基準速度よりも低速ではないとされた場合に、前記回生制動手段を実行して、前記車輪に回生制動のための回生トルクを付与し、かつ、前記トウ制動手段を非実行とする定常時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項3記載の車両用制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置を備えていることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−239102(P2008−239102A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85959(P2007−85959)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】