説明

エンジン停止再始動制御装置、その方法及びそれを搭載した車両

【課題】 運転者がブレーキを踏み込むことなく車両が自動停車したときにもエンジンを自動停止させる。
【解決手段】 このアイドルストップ機能及び低車速追従走行機能を備えた自動車では、ステップS220で自動停車中フラグF2が値1であると判定されたときには、ステップS240で運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定し、運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたときには、ステップS260でエンジンの各気筒への点火や燃料噴射を停止させてエンジンを自動停止させる。このように、車両が自動停車したときにはエンジン停止条件から運転者によるブレーキの踏み込みの条件が除かれるため、運転者がブレーキを踏み込むことなく車両が自動停車した場合であってもエンジンを自動停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止再始動制御装置、その方法及びそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン停止再始動制御装置としては、予め定められたエンジン停止条件のしきい値を走行状態や運転状況に応じて運転者が選択的に設定するものが提案されている。(例えば特許文献1参照)。この装置によれば、各エンジン停止条件のしきい値は運転者の操作によって設定されるため、例えば、運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとしてエンジンの自動停止制御を行う場合には、ブレーキ踏力のしきい値を運転者が設定することができ、これにより道路状況や運転状況、運転者自らの好みを反映させながらエンジンを自動停止させることができる。
【特許文献1】特開2004−270532
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のエンジン停止再始動制御装置では、運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとする場合に運転者はブレーキ踏力のしきい値を設定し得るもののブレーキの踏み込みは必須条件となるため、運転者がブレーキを踏み込むことなく車両が自動停車した場合にはエンジンは自動停止せず無駄な燃料を消費するという問題があった。また、車両が自動停車した場合であってもエンジンを自動停止させるためには運転者はブレーキを踏み込まなくてはならず、エンジンを停止させるために無駄な操作が必要になるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、車両が自動停車したときであってもエンジンを自動停止させることを目的の一つとする。また、このエンジン停止再始動制御装置を搭載した車両を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
即ち、本発明のエンジン停止再始動制御装置は、
運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとしてエンジンの自動停止制御を行い、運転者によるブレーキの踏み込みの解除をエンジン再始動条件の一つとして前記エンジンの自動再始動制御を行うエンジン自動停止再始動制御装置であって、
所定の停車条件が成立したときに車両が自動停車するよう制御する自動走行制御手段と、
前記自動走行制御手段によって自動停車したときに運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定する自動停車時停止条件判定手段と、
前記自動停車時停止条件判定手段によって運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたときには前記エンジンが自動停止するよう制御する停止制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
このエンジン停止再始動制御装置では、車両が自動停車したときにはエンジン停止条件から運転者によるブレーキの踏み込みの条件が除かれるため、運転者がブレーキを踏み込むことなく車両が自動停車した場合であってもエンジンを自動停止させることができ、燃費の向上を図ることができる。また、自動停車したときにはエンジンを自動停止させるために運転者がわざわざブレーキを踏み込むといった無駄な操作を必要としない。
【0008】
本発明のエンジン停止再始動制御装置において、前記所定の停車条件は、少なくとも自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離以下であることを含んでいてもよい。こうすれば、例えば、車両前方に存在する障害物との衝突を避けるために自動停車した場合にもエンジンを自動停止させることができ、燃費の向上を図ることができる。また、エンジンを自動停止させるためにわざわざブレーキを踏み込むといった無駄な操作を必要としない。なお、「所定の距離」は、例えば、自車両の前方に存在する障害物との衝突を回避するよう経験的に定めた値としてもよい(以下同じ)。
【0009】
本発明のエンジン停止再始動制御装置において、前記所定の停車条件は、少なくとも自車両の車速が所定の車速以下であって且つ自車両と先行車両との間の車間距離が所定の車間距離以下であることを含み、前記自動走行制御手段は、走行時には定速で走行又は前記先行車両に追従して走行するよう制御し、前記先行車両が停車したときには前記先行車両と自車両との間に所定の車間距離をあけて停車するよう制御してもよい。こうすれば、先行車両が停車したときに先行車両と自車両との間に所定の車間距離をあけて停車した場合にもエンジンを自動停止させることができ、燃費の向上を図ることができる。また、自動停車したときにエンジンを自動停止させるためにわざわざ運転者がブレーキを踏み込むといった無駄な操作を必要としない。なお、「所定の車速」は、例えば、先行車両が急停車した場合にも先行車両に追突することなく自動停車する車速として実験的に定めればよく、具体的には、ゼロ又はこれを少し上回る値としてもよい。また、「所定の車間距離」は、先行車両との衝突を回避するよう経験的に定めた値としてもよい(以下同じ)。
【0010】
本発明のエンジン停止再始動制御装置において、前記運転者によるブレーキの踏み込みは、シフトレバーが走行可能なシフト位置にあるときにエンジン停止条件に含まれるとしてもよい。
【0011】
本発明のエンジン停止再始動制御装置は、更に、運転者によるブレーキの踏み込みがあるか否かを検出するブレーキ検出手段、を備え、前記自動走行制御手段は、前記ブレーキ検出手段によって運転者によるブレーキの踏み込みがあると検出されたときには前記自動走行制御手段による自動停車を解除するよう制御してもよい。こうすれば、運転者によってブレーキが踏み込まれて自動停車が解除されたときには通常のエンジン停止条件でエンジンを自動停止することができる。
【0012】
本発明のエンジン停止再始動制御装置は、更に、前記自動走行制御手段によって自動停車し、前記停止制御手段によって前記エンジンが自動停止した後に運転者によるブレーキの踏み込みの解除以外のすべてのエンジン再始動条件が成立したか否かを判定する自動停車後再始動条件判定手段と、自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離よりも長いか否かを判定する距離判定手段と、前記自動停車後再始動条件判定手段によって運転者によるブレーキの踏み込みの解除以外のすべてのエンジン再始動条件が成立したと判定され、且つ前記距離判定手段によって自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離以上であると判定されたときには前記エンジンが自動再始動するよう制御する再始動制御手段と、を備えていてもよい。こうすれば、エンジン再始動条件から運転者によるブレーキの踏み込みの解除の条件が除かれるため、運転者がブレーキを踏み込むことなく車両が自動停車してエンジンが自動停止した後これを再始動させる場合に、運転者はわざわざ一旦ブレーキを踏み込んでからこれを解除するといった無駄な操作をすることなくエンジンを自動再始動させることができる。また、自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離以上であるときにエンジンを自動再始動させるため、エンジン再始動条件がブレーキの踏み込みの解除のみであってもエンジンを自動再始動させることができる。
【0013】
本発明のエンジン停止再始動制御装置において、前記障害物は先行車両であってもよい。こうすれば、自車両と先行車両との間の車間距離が所定の車間距離以上であるときにエンジンを自動再始動させることができる。
【0014】
本発明のエンジン停止再始動制御装置において、前記運転者によるブレーキの踏み込みの解除は、シフトレバーが走行可能なシフト位置にあるときにエンジン再始動条件に含まれるとしてもよい。
【0015】
本発明のエンジン停止再始動方法は、
運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとしてエンジンの自動停止制御を行い、運転者によるブレーキの踏み込みの解除をエンジン再始動条件の一つとして前記エンジンの自動再始動制御を行うエンジン自動停止再始動方法であって、
(a)所定の停車条件が成立したときに車両が自動停車するステップと、
(b)前記ステップ(a)で自動停車したときに運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)で運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたときには前記エンジンを自動停止させるステップと、
を含むものである。
【0016】
このエンジン停止再始動方法では、車両が自動停車したときにはエンジン停止条件から運転者によるブレーキの踏み込みの条件が除かれるため、運転者がブレーキを踏み込むことなく自動停車した場合であってもエンジンを自動停止させることができ、燃費の向上を図ることができる。また、自動停車したときにはエンジンを自動停止させるために運転者がわざわざブレーキを踏み込むといった無駄な操作を必要としない。なお、このエンジン停止再始動方法に上述したエンジン停止再始動制御装置が備えている各種の構成手段の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0017】
本発明のエンジン停止再始動制御装置を搭載した車両は、本発明のエンジン停止再始動制御装置を搭載しているため、車両が自動停車したときであってもエンジンを自動停止させることができる。また、自動停車したときにはエンジンを自動停止させるために運転者がわざわざブレーキを踏み込むといった無駄な操作をする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるアイドルストップ機能及び低車速追従走行機能を備えた自動車20の構成の概略を示す説明図である。本実施形態の自動車20は、ガソリンにより駆動するエンジン30と、エンジン30の各気筒31の吸気ポート36に燃料を噴射するインジェクタ32と、エンジン30の各気筒内の混合気に点火する点火プラグ33と、エンジン30を始動させるスタータモータ26と、エンジン30をコントロールするエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)50と、ブレーキアクチュエータ81をコントロールするブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)80と、トランスミッションアクチュエータ91をコントロールするトランスミッション用電子制御ユニット(以下、トランスミッションECUという)90とを備える。
【0019】
エンジン30は、本実施形態では4気筒エンジンであり、各気筒31は、吸気通路22のうち吸気バルブ34の手前に設けられた吸気ポート36にインジェクタ32がガソリンを噴射するポート式として構成されている。ここで、図示しないエアクリーナ及びスロットルバルブを介して吸気通路22に吸入された空気は、吸気ポート36でインジェクタ32から噴射されたガソリンと混合されて混合気となる。この混合気は、吸気カム39の作動によって吸気バルブ34を開くことにより燃焼室37へ吸入され、点火プラグ33のスパークによって点火されて爆発燃焼し、その燃焼エネルギによりピストン38が往復運動してクランクシャフト41を回転運動させる。そして、燃焼後の排ガスは、排気カム40の作動によって排気バルブ35を開くことにより燃焼室37から排気通路24に排出される。ここで、エンジン30の各気筒は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程(燃焼行程ともいう)、排気行程を1サイクルとしてこのサイクルを順次繰り返すものであり、クランクシャフト41が2回転つまり720°回転するごとに1サイクル進む。また、4つの気筒の点火タイミングは、本実施形態では1番気筒、2番気筒、4番気筒、3番気筒という順であり、従って、例えば、1番気筒が膨張行程にあるとき、2番気筒は圧縮行程、3番気筒は排気行程、4番気筒は吸気行程となる。
【0020】
エンジン30のクランクシャフト41の端には、エンジン30の本体外側に露出した状態でフライホイール28が備えられている。このフライホイール28の外周には外歯歯車が刻まれており、エンジン始動時にはスタータモータ26の回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車が噛み合って始動クランキングが行われる。
【0021】
エンジン30のクランクシャフト41は、オートマチックトランスミッション51と接続されている。このオートマチックトランスミッション51は、エンジン30からクランクシャフト41に出力された動力を変速してデファレンシャルギア52を介して駆動輪53a,53aに伝達する。また、オートマチックトランスミッション51は、オートマチックトランスミッション51への油圧を調整するトランスミッションアクチュエータ91と接続されており、トランスミッションアクチュエータ91から伝達された油圧によってシフトアップやシフトダウンを行う。
【0022】
オートマチックトランスミッション51の出力軸には、出力軸と一体となって回転する図示しないタイミングロータが取り付けられ、タイミングロータに対向する位置に車速センサ65が取り付けられている。車速センサ65は、本実施形態では、電磁ピックアップ式センサであり、オートマチックトランスミッション51の出力軸の回転数を検出する。具体的には、タイミングロータの外周には18個の歯が設けられており、タイミングロータの歯が車速センサ65のコアに接近するごとに1個のパルスを出力するため、トランスミッション51の出力軸が1回転すると18個のパルス信号を発生する。この出力されるパルスによって発進、制動又は走行中の車速を求めることができる。
【0023】
駆動輪53a,53aは、ディスクブレーキ54を備えている。このディスクブレーキ54は、駆動輪53a,53aとボルト等により一体化されたディスク55と、このディスク55の両面にそれぞれ配置されたパッド56a,56aと、パッド56a,56aを作動させるホイールシリンダ57とを有している。そして、ホイールシリンダ57に油圧がかかっていない場合にはホイールシリンダ57内の図示しないピストンは一対のパッド56a,56aをディスクに押しつけないため制動力が発生せず、ホイールシリンダ57に油圧がかかった場合にはホイールシリンダ57内の図示しないピストンは一対のパッド56a,56aをディスク55に押しつけるため制動力が発生する。このホイールシリンダ57に油圧がかかる場合としては、運転者がブレーキペダル76を踏み込んだときの踏力がマスタシリンダ78で油圧に変換されてホイールシリンダ57へ伝達される場合のほか、マスタシリンダ78とホイールシリンダ57との間の図示しない油圧回路に設けられた電磁弁やポンプなどからなるブレーキアクチュエータ81の作動により発生した油圧がホイールシリンダ57へ伝達される場合がある。
【0024】
自動車20の車両前方部分には、レーザレーダセンサ68が取り付けられている。このレーザレーダセンサ68は、レーザ光を発生するレーザダイオードからなるレーザ発光部68aと、レーザ発光部68aで発光されたレーザ光をスキャニングするためのポリゴンミラーからなるレーザ発信器68bと、レーザ発信器68bから発信され対象物で反射されたレーザ光を検出するフォトダイオードからなるレーザ受光部68cと、レーザ受光部68cで受光された反射光が入射されるまでの時間や入射角度を検出する演算部68dとで構成されている。また、レーザレーダセンサ68のレーザ発信器68bは、本実施形態では、自動車20の前方ゼロ〜35メートルまでの範囲にレーザ光を照射するよう設定されている。レーザレーダセンサ68のレーザ発光部68aで発光されたレーザ光がレーザ発信器68bから自動車20の車両前方に向けて照射されると、自動車20の走行線上の前方ゼロ〜35メートルまでの範囲に先行車両が存在する場合には、レーザ光は先行車両のリフレクタなどで反射されてレーザ受光部68cに戻ってくる。このとき、レーザ光がレーザ発信器68bで照射されてからレーザ受光部68cに戻ってくるまでの時間や入射角度を演算部68dで検出することにより、先行車両との車間距離や相対速度を算出することができる。一方、自動車20の走行線上の前方ゼロ〜35メートルまでの範囲に先行車両が存在しない場合には、レーザ発信器68bから照射されたレーザ光はレーザ受光部68cに戻らないため、先行車両は存在しないと判断される。このように、レーザレーダセンサ68によって先行車両の有無・車間距離・相対速度といった先行車両情報を求めることができる。
【0025】
エンジンECU50は、エンジン30の運転を制御するものであり、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成されており、CPUの他に処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや出力ポート、通信ポートなどを備えている。このエンジンECU50には、エンジン30の運転状態を示す種々のセンサ、例えば、前出の車速センサ65やレーザレーダセンサ68のほか、クランク角センサ66やカム角センサ67、図示しないが、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、スロットルバルブの開度(ポジション)を検出するスロットルバルブポジションセンサ、エンジン30の冷却水の温度(水温)を検出する水温センサなどが接続されており、各種センサからの検出信号が入力される。また、運転者の操作に基づく要求動力をエンジン30から出力するために、エンジンECU50には、シフトレバー72のポジションを検出するシフトポジションセンサ73からのシフトポジションやアクセルペダル74のポジションを検出するアクセルペダルポジションセンサ75からのアクセルペダルポジション、ブレーキペダル76が踏み込まれているか否かを検出するブレーキポジションセンサ77からのオンオフ信号のほか、運転者の操作に基づいて低車速追従走行を設定する低車速追従走行スイッチ63からの操作信号が入力される。一方、エンジンECU50からは、スタータモータ26やインジェクタ32への駆動信号、点火プラグ33に放電電圧を印加するイグニッションコイル62への駆動信号などが出力される。また、エンジンECU50は、通信ポートを介してブレーキECU80及びトランスミッションECU90と接続されており、必要に応じてブレーキECU80やトランスミッションECU90に制御信号を送信する。ここで、本実施形態では、シフトポジションのうち走行可能なシフトポジションとして、Dレンジや4速レンジ、3速レンジ、2速レンジ、1速レンジを備えている。
【0026】
ブレーキECU80は、ブレーキアクチュエータ81をコントロールするものであり、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成されており、CPUの他に処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや出力ポート、通信ポートなどを備えている。ブレーキECU80には、エンジンECU50からの制御信号などが入力ポートを介して入力され、ブレーキECU80からは、ブレーキアクチュエータ81への制御信号などが出力ポートを介して出力される。
【0027】
トランスミッションECU90は、トランスミッションを構成する図示しない遊星歯車やトルクコンバータを作動させる油圧回路に設けられた電磁弁からなるトランスミッションアクチュエータ91をコントロールするものであり、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成されており、CPUの他に処理プログラムやデータなどを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAMや出力ポート、通信ポートなどを備えている。トランスミッションECU90には、エンジンECU50からの制御信号などが入力ポートを介して入力され、トランスミッションECU90からは、トランスミッションアクチュエータ91への制御信号などが出力ポートを介して出力される。
【0028】
次に、本実施形態の自動車20の動作、特に低車速追従走行に伴う自動停車の動作について以下に説明する。この自動車20では、低車速追従走行スイッチ63がONの状態であると共に一定の車速以下(例えば、時速30キロメートル)になったときには、先行車両の車速に応じて決定される目標車間距離を先行車両との間に保ちながら先行車両に追従して走行し、低車速追従走行スイッチ63がONの状態であると共に先行車両が停車したときには、目標車間距離を最小車間距離L0としてこの最小車間距離L0を先行車両との間に保ちながら自動停車する低車速追従走行制御が行われる。また、この低車速追従走行制御によれば、先行車両が発進したと判断しうる所定の車間距離L1以上の車間距離が先行車両との間にあいたときには自動発進する。以下には、この低車速追従走行制御ルーチンについて説明する。なお、この低車速追従走行制御ルーチンには自動停車制御が含まれる。また、低車速追従走行スイッチ63がONの状態であっても一定の車速以下でなければ低車速追従走行を行わないよう設定されている。
【0029】
図2は、この自動車20で行われる低車速追従走行制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、走行中所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU50によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU50は、まず、自動停車中フラグF2が値1か否かを判定する(ステップS100)。ここで、自動停車中フラグF2とは、自動車20がこの低車速追従走行制御ルーチンにおける自動停車制御により自動停車しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは自動停車していないことを示し、値1のときは自動停車していることを示す。そして、ステップS100で自動停車中フラグF2がゼロと判定されたときには、続いて追従走行実行中フラグF1が値1か否かを判定する(ステップS105)。ここで、追従走行実行中フラグF1とは、エンジンECU50が低車速追従走行制御を実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは低車速追従走行制御を実行していないことを示し、値1のときは低車速追従走行制御を実行していることを示す。
【0030】
そして、ステップS105で追従走行実行中フラグF1がゼロと判定されたときには、(1)低車速追従走行スイッチ63がONの状態であり、(2)車速Vが予め設定された一定の車速Vth以下であり、(3)自動車20の走行線上に先行車両が存在するという3つの条件がすべて成立するか否かを判定し(ステップS110)、この3つの条件のうち少なくとも1つが成立しないと判定されたときには、低車速追従走行制御を実行する必要はないため本ルーチンを終了する。一方、上記3つの条件のすべてが成立すると判定されたときには、追従走行実行中フラグF1を値1にセットする(ステップS115)。ここで、一定の車速Vthは、追従走行中に先行車両が急停車した場合にも先行車両に追突することなく自動停車することが可能な車速として予め実験的に求めた値であり、車速Vは、オートマチックトランスミッション51の出力軸の回転数を検出する車速センサ65から出力されるパルスに基づいて算出された値である。また、先行車両の有無の検出は、レーザレーダセンサ68から照射されたレーザ光が先行車両で反射した際の反射光のデータに基づいて行われる。本実施形態では、レーザレーダセンサ68のレーザ発信器68bは、自動車20の前方ゼロ〜35メートルまでの範囲にレーザ光を照射するよう設定されている。このため、先行車両がこの範囲内に存在する場合には、レーザレーダセンサ68のレーザ発信器68bから自動車20の前方に向けて照射されたレーザ光は先行車両のリフレクタなどで反射し、反射光としてレーザ受光部68cに戻ってくる。一方、この範囲内に先行車両が存在しない場合には、レーザ発信器68bから照射されたレーザ光はレーザ受光部68cに戻ってこない。従って、反射光の有無を検出することによって先行車両の有無を検出することができる。
【0031】
ステップS105で追従走行実行中フラグF1が値1と判定されたとき又はステップS115で追従走行実行中フラグF1を値1にセットした後は、エンジンECU50は、先行車両との間の車間距離Lを算出する(ステップS120)。ここで、車間距離Lの算出は、ステップS110と同様にレーザレーダセンサ68によって検出された反射光のデータに基づいて行われる。即ち、レーザ発信器68bから照射されたレーザ光が反射光としてレーザ受光部68cに戻ってきたときの反射光のデータ、具体的には、レーザ光が照射されてから反射光として戻ってくるまでの間の時間や入射角度といったデータを演算部68dで検出する。そして、エンジンECU50は、このデータに基づいて先行車両との間の車間距離Lを算出する。
【0032】
続いて、エンジンECU50は、先行車両の車速Vfに応じて決定される目標車間距離Ltを算出する(ステップS125)。ここで、先行車両の車速Vfは、車速センサ65により出力されたパルスから算出される自動車20の車速Vとレーザレーダセンサ68により検出された反射光のデータから算出される先行車両に対する相対速度とに基づいて求められる。図3は、先行車両の車速Vfと目標車間距離Ltとの対応関係を表すマップである。図3では、先行車両の車速Vfがゼロのときに目標車間距離Ltを最小車間距離L0と決定し、先行車両の車速Vfが速くなるにつれて目標車間距離Ltを長くするよう目標車間距離Ltを決定する。そして、車間距離Lが目標車間距離Ltよりも短いか否かを判定し(ステップS130)、車間距離Lが目標車間距離Ltよりも短いと判定されたときには、エンジンECU50は、ブレーキアクチュエータ81を作動させて制動するようブレーキECU80に指令する(ステップS135)。この結果、ブレーキECU80はブレーキアクチュエータ81内のポンプで油圧を発生させてホイールシリンダ57に伝えることによりホイールシリンダ57の図示しないピストンがパッド56a,56aをディスク55に押しつける。すると、パッド56a,56aとディスク55との間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって自動車20は自動的に減速又は停車する。なお、ステップS135でブレーキ要求に代えて又は加えて、エンジンECU50はトランスミッションアクチュエータ91を作動させてシフトダウンするようトランスミッションECU90に指令してもよい。一方、車間距離Lが目標車間距離Lt以上であると判定されたときには、エンジンECU50は、スロットルバルブを開いてエンジン30のトルクを増加させ(ステップS140)、本ルーチンを終了する。この結果、スロットルバルブからの流入空気量が増量し、この流入空気量に応じて燃料噴射量も増量されるため動力が増加し、この動力によって自動車20は自動的に加速する。なお、ステップS140でアクセル要求に代えて又は加えて、エンジンECU50はトランスミッションアクチュエータ91を作動させてシフトアップするようトランスミッションECU90に指令してもよい。
【0033】
ステップS135でブレーキ要求をした後は、エンジンECU50は、車速Vが略ゼロであるか否かを判定し(ステップS145)、車速Vが略ゼロでないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、車速Vが略ゼロであると判定されたときには、自動停車中フラグF2を値1にセットすると共に追従走行実行中フラグF1をゼロにリセットし(ステップS150)、本ルーチンを終了する。これにより、低車速追従走行制御において、自動車20と先行車両との間に目標車間距離Ltを保ちながら自動車20を自動走行させることができる。また、先行車両が停車したときには本ルーチンが繰り返されるごとにブレーキ要求がなされるため、最終的には自動車20を自動停車させることができる。なお、本ルーチンの実行中にブレーキペダルポジションセンサ77によって運転者によるブレーキペダル76の踏み込みが検出されたときには、本ルーチンによる自動停車制御は解除される。
【0034】
次に、アイドルストップ制御で行われる自動停止制御ルーチンと自動再始動制御ルーチンについて説明する。
【0035】
まず、エンジン自動停止制御ルーチンについて説明する。図4はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU50によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU50は、まず、エンジン30が稼働中であるか否かを判定し(ステップS200)、エンジン30が稼働中でないと判定されたときにはそのまま本ルーチンを終了する。一方、エンジン30が稼働中であると判定されたときには、停止制御実行中フラグF3が値1か否かを判定する(ステップS210)。ここで、停止制御実行中フラグF3とは、エンジンECU50がエンジン30の自動停止制御を実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは自動停止制御を実行していないことを示し、値1のときは自動停止制御を実行していることを示す。そして、ステップS210で停止制御実行中フラグF3がゼロと判定されたときには、自動停車中フラグF2が値1か否かを判定し(ステップS220)、自動停車中フラグF2がゼロと判定されたときには、通常のアイドルストップ制御を行うとして、すべてのエンジン停止条件が揃ったか否かを判定する(ステップS230)。ここで、すべてのエンジン停止条件とは、本実施形態では、(1)シフトレバー72が走行可能な位置にあり、(2)ブレーキペダル76がONの状態であり、(3)マスタシリンダ78内の圧力が所定の圧力値以下であり、(4)車速Vがゼロであることとする。一方、ステップS220で自動停車中フラグF2が値1と判定されたときには、エンジン停止条件のうちブレーキON以外のすべてのエンジン停止条件が揃ったか否かを判定する(ステップS240)。即ち、低車速追従走行制御により運転者がブレーキペダル76を踏み込むことなく自動車20が自動停車した場合には、エンジン停止条件のうちブレーキONの条件については判断せず、ブレーキON以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定する。
【0036】
ステップS230ですべてのエンジン停止条件のうち少なくとも1つが成立していないと判定されたとき又はステップS240でブレーキON以外のすべての停止条件のうち少なくとも1つが成立していないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS230ですべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたとき又はステップS240でブレーキON以外のすべての停止条件が成立したと判定されたときには、エンジンECU50は、停止制御実行中フラグF3を値1にセットして(ステップS250)、エンジン30の各気筒31のインジェクタ32への通電を停止すると共に点火プラグ33のイグニッションコイル62への通電を停止する(ステップS260)。この結果、エンジン30の各気筒31の点火及び燃料噴射は停止されるため、エンジン30はクランクシャフト41を回転させるトルクを発生しなくなる。このため、クランクシャフト41は慣性力のみで回転する。この慣性力は、圧縮行程の気筒で発生するガス圧縮力などによって減衰されるため、クランクシャフト41の回転は停止に向けて収束する。
【0037】
ステップS210で停止制御実行中フラグF3が値1と判定されたとき又はステップS260で各気筒31の点火及び燃料噴射を停止した後には、エンジンECU50は、エンジン回転数Neがゼロになったか否かを判定し(ステップS270)、エンジン回転数Neがゼロになっていないと判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。ここで、エンジン回転数Neは、クランク角センサ66から出力されるパルスの時間間隔に基づいて算出される。一方、エンジン回転数Neがゼロになったと判定されたときには、停止制御実行中フラグF3をゼロにリセットした後(ステップS280)、本ルーチンを終了する。これにより、低車速追従走行制御によって運転者がブレーキペダル76を踏み込むことなく自動停車した場合であっても、アイドルストップ制御によりエンジン30を自動停止させることができる。
【0038】
次に、自動再始動制御ルーチンについて説明する。図5はこのルーチンのフローチャートである。このルーチンは、所定タイミングごと(例えば数msecごと)にエンジンECU50によって実行される。このルーチンが開始されると、エンジンECU50は、まず、エンジン30が前述したエンジン自動停止再始動制御ルーチンによって自動停止中であるか否かを判定し(ステップS300)、エンジン30が自動停止中でないと判定されたときはそのまま本ルーチンを終了する。一方、エンジン30が自動停止中であると判定されたときには、再始動制御実行中フラグF4が値1か否かを判定する(ステップS305)。ここで、再始動制御実行中フラグF4は、エンジンECU50がエンジン30の自動再始動制御を実行しているか否かを示すフラグであり、ゼロのときは自動再始動制御を実行していないことを示し、値1のときは自動再始動制御を実行していることを示す。そして、ステップS310で再始動制御実行中フラグF4がゼロと判定されたときには、自動停車中フラグF2が値1か否かを判定し(ステップS310)、自動停車中フラグF2がゼロと判定されたときには、すべてのエンジン再始動条件が揃ったか否かを判定する(ステップS315)。ここで、すべてのエンジン再始動条件とは、本実施形態では、(1)シフトレバー72が走行可能な位置にあり、(2)ブレーキペダル76がOFFの状態であり、(3)マスタシリンダ78内の圧力が所定の圧力値未満であることとする。一方、ステップS310で自動停車中フラグF2が値1と判定されたときには、エンジン再始動条件のうちブレーキOFF以外のすべてのエンジン再始動条件が揃ったか否かを判定し(ステップS320)、ブレーキOFF以外のすべてのエンジン再始動条件が揃ったと判定されたときには、先行車両との間の車間距離Lが所定の車間距離L1よりも長いか否かを判定する(ステップS325)。即ち、自動停車制御により運転者がブレーキペダル76を踏み込むことなく自動車20が自動停車してエンジン30が自動停止した場合には、エンジン再始動条件のうちブレーキOFFの条件については判断せず、ブレーキOFF以外のすべてのエンジン再始動条件が成立したか否かを判定した後に先行車両との間の車間距離Lが所定の車間距離L1よりも長いか否かを判定する。ここで、所定の車間距離L1とは、先行車両が発進したと判断しうる車間距離として経験的に定めた値であり、例えば、最小車間距離L0をわずかに上回る値として経験的に定めてもよい。
【0039】
ステップS315ですべてのエンジン再始動条件のうち少なくとも1つが成立していないと判定されたとき、ステップS320でブレーキOFF以外のすべての再始動条件のうち少なくとも1つが成立していないと判定されたとき又はステップS325で先行車両との間の車間距離Lが所定の車間距離L1以下であると判定されたときには、そのまま本ルーチンを終了する。一方、ステップS315ですべてのエンジン再始動条件が成立したと判定されたとき又はステップS325で先行車両との間の車間距離Lが所定の車間距離L1よりも長いと判定されたときには、エンジンECU50は、再始動制御実行中フラグF4を値1にセットして(ステップS330)、スタータモータ26の回転軸を突出させて回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車とを噛み合わせた後にスタータモータ26に電力を供給する(ステップS335)。この結果、スタータモータ26の回転軸の先端に設けられた外歯歯車とフライホイール28の外歯歯車とが噛み合いながら回転し、フライホイール26の回転力によってクランクシャフト41を回転させてエンジン30のクランキングを開始する。続いて、ステップS305で再始動制御実行中フラグF4が値1であると判定されたとき又はステップS335でクランキングを開始した後には、エンジン30が完爆状態になったか否かを判定し(ステップS340)、エンジン30が完爆状態になっていないと判定されたときにはそのまま本ルーチンを終了する。一方、エンジン30が完爆状態になったと判定されたときには、スタータモータ26の回転軸を元の位置に戻してスタータモータ26によるクランキングを停止して(ステップS345)、自動停車中フラグF2及び再始動制御実行中フラグF4をゼロにリセットして(ステップS350)、本ルーチンを終了する。なお、本ルーチンを終了した後は通常の走行時の制御を実行する。
【0040】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のエンジンECU50が本発明の自動走行制御手段や自動停車条件判定手段、停止制御手段、自動停車後再始動条件判定手段、距離判定手段、再始動制御手段に相当し、ブレーキポジションセンサ77がブレーキ検出手段に相当する。なお、本実施形態では、自動車20の動作を説明することにより本発明のエンジン自動停止再始動制御装置の一例を明らかにすると共に本発明のエンジン停止再始動方法の一例も明らかにしている。
【0041】
以上詳述した本実施形態の自動車20によれば、自動車20が低車速走行制御により自動停車したときには運転者によるブレーキペダル76の踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したときにエンジン30が自動停止するため、運転者がブレーキペダル76を踏み込むことなく自動車20が自動停車した場合であってもエンジン30を自動停止させることができ、燃費の向上を図ることができる。また、自動停車したときにエンジン30を自動停止させるために運転者がわざわざブレーキペダル76を踏み込むといった無駄な操作をすることなくエンジン30を自動停止させることができる。
【0042】
また、ステップS110でレーザレーダセンサ68により先行車両などの障害物が自動車20の走行線上に存在すると検出されたときには、低車速追従走行制御ルーチンにおける自動停車制御により自動車20を自動停車させることができ、自動車20が自動停車した場合にはエンジン自動停止制御ルーチンにおけるエンジン自動停止制御によりエンジン30を自動停止させることができる。
【0043】
更に、自動車20が低車速走行制御により自動停車してエンジン30がエンジン自動停止制御により自動停止したときにはステップS325で先行車両との間に所定の車間距離L1よりも長い車間距離があいたと判定されたときにステップS335でエンジン30を再始動させるため、エンジン再始動条件からブレーキペダル76の踏み込みの解除の条件を除いてもエンジン30を自動再始動させることができる。
【0044】
更にまた、アイドルストップ制御では走行途中に何度もエンジン停止と再始動を繰り返すため、節減される燃費の累積値が大きくなり有利である。
【0045】
そして更にまた、低車速追従走行制御中に運転者によるブレーキの踏み込みが検出されたときには自動停車制御による自動停車を解除するため、運転者によるブレーキの踏み込みが検出されたときには通常のエンジン停止条件でアイドルストップ制御を行うことができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上述した実施形態のエンジン自動停止再始動制御ルーチンでは、図3に示すように低車速領域では先行車両の車速Vfに応じた目標車間距離Ltを決定し、先行車両との車間距離Lを目標車間距離Ltと一致させるように自動走行制御を行ったが、図6に示すように車間距離Lに基づいて目標車速Vtを決定し、車速Vを目標車速Vtと一致させるよう自動走行制御を行ってもよい。即ち、図6では、先行車両との間の車間距離Lが所定の車間距離L2以上のときには予め運転者が設定した設定車速Vcを目標車速Vtとして決定し、車間距離Lが所定の車間距離L2よりも短くなったときには車間距離Lに対応する車速を目標車速Vtとして決定し、車間距離Lが最小車間距離L0になったときには目標車速Vtをゼロに決定する。こうすれば、全車速領域で自動走行制御を行うことができ、先行車両との車間距離Lが最小車間距離L0になったときに自動車20を自動停車させることができる。また、この場合に自動車20が自動停車してエンジン30が自動停止した後は、図6において先行車両が発進して車間距離Lが所定の車間距離L1になったときにエンジン30を再始動させてもよい。ここで、所定の車間距離L2は、自動車20が設定車速Vcで走行しているときの安全な車間距離として経験的に定めた値としてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、先行車両の車速Vfに応じて決定される目標車間距離Ltを予め作成したマップから読み込んだが、算出式からその都度算出してもよい。
【0049】
更に、上述した実施形態では、ステップS240で運転者によるブレーキの踏み込みの有無は判断しなかったが、ステップS240の直前でブレーキの踏み込みがあるか否かを
ブレーキペダルポジションセンサ77の検出信号に基づいて判断し、ブレーキの踏み込みがないと判断されたときにはステップS240へ進み、ブレーキの踏み込みがあると判断されたときにはステップS230へ進むようにしてもよい。また、ステップS340で運転者によるブレーキの踏み込みの解除の有無は判断しなかったが、ステップS340の直前でブレーキの踏み込みがあるか否かをブレーキペダルポジションセンサ77の検出信号に基づいて判断し、ブレーキの踏み込みがないと判断されたときにはステップS340へ進み、ブレーキの踏み込みがあると判断されたときにはステップS330へ進むようにしてもよい。
【0050】
更にまた、上述した実施形態では、先行車両との間の車間距離Lなどの先行車両情報を算出するセンサとしてレーザレーダセンサ65を採用したが、ミリ波を送受信するミリ波レーダセンサを採用してもよい。こうすれば、悪天候下においても外環境の影響を受けにくいため、より正確な先行車両情報を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】アイドルストップ機能及び低車速追従走行機能を備えた自動車の構成の概略 を示す説明図である。
【図2】低車速追従走行制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】先行車両の車速Vfと目標車間距離Ltとの対応関係を表すマップである。
【図4】エンジン自動停止制御ルーチンのフローチャートである。
【図5】エンジン自動再始動制御ルーチンのフローチャートである。
【図6】車間距離Lと目標車速Vtとの対応関係を表すマップである。
【符号の説明】
【0052】
20 アイドルストップ機能及び低車速追従走行機能を備えた自動車、22 吸気通路、24 排気通路、26 スタータモータ、28 フライホイール、30 エンジン、31 気筒、32 インジェクタ、33 点火プラグ、34 吸気バルブ、35 排気バルブ、36 吸気ポート、37 燃焼室、38 ピストン、39 吸気カム、40 排気カム、41 クランクシャフト、50 エンジンECU、51 オートマチックトランスミッション、52 デファレンシャルギヤ、53a,53a 駆動輪、54 ディスクブレーキ、55 ドラム、56a,56a パッド、57 ホイールシリンダ、62 イグニッションコイル、63 低車速追従走行スイッチ、65 車速センサ、66 クランク角センサ、67 カム角センサ、68 レーザレーダセンサ、68a レーザ発光部、68b レーザ発信器、68c レーザ受光部、68d 演算部、72 シフトレバー、73 シフトポジションセンサ、74 アクセルペダル、75 アクセルペダルポジションセンサ、76 ブレーキペダル、77 ブレーキポジションセンサ、78 マスタシリンダ、80 ブレーキECU、81 ブレーキアクチュエータ、90 トランスミッションECU、91 トランスミッションアクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとしてエンジンの自動停止制御を行い、運転者によるブレーキの踏み込みの解除をエンジン再始動条件の一つとして前記エンジンの自動再始動制御を行うエンジン自動停止再始動制御装置であって、
所定の停車条件が成立したときに車両が自動停車するよう制御する自動走行制御手段と、
前記自動走行制御手段によって自動停車したときに運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定する自動停車時停止条件判定手段と、
前記自動停車時停止条件判定手段によって運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたときには前記エンジンが自動停止するよう制御する停止制御手段と、
を備えたエンジン停止再始動制御装置。
【請求項2】
前記所定の停車条件は、少なくとも自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離以下であることを含んでいる、
請求項1に記載のエンジン停止再始動制御装置。
【請求項3】
前記所定の停車条件は、少なくとも自車両の車速が所定の車速以下であって且つ自車両と先行車両との間の車間距離が所定の車間距離以下であることを含み、
前記自動走行制御手段は、走行時には定速で走行又は前記先行車両に追従して走行するよう制御し、前記先行車両が停車したときには前記先行車両と自車両との間に所定の車間距離をあけて停車するよう制御する、
請求項1又は2に記載のエンジン停止再始動制御装置。
【請求項4】
前記運転者によるブレーキの踏み込みは、シフトレバーが走行可能なシフト位置にあるときにエンジン停止条件に含まれる、
請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン停止再始動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン停止再始動制御装置であって、
運転者によるブレーキの踏み込みがあるか否かを検出するブレーキ検出手段、
を備え、
前記自動走行制御手段は、前記ブレーキ検出手段によって運転者によるブレーキの踏み込みがあると検出されたときには前記自動走行制御手段による自動停車を解除するよう制御する、
エンジン停止再始動制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエンジン停止再始動制御装置であって、
前記自動走行制御手段によって自動停車し、前記停止制御手段によって前記エンジンが自動停止した後に運転者によるブレーキの踏み込みの解除以外のすべてのエンジン再始動条件が成立したか否かを判定する自動停車後再始動条件判定手段と、
自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離よりも長いか否かを判定する距離判定手段と、
前記自動停車後再始動条件判定手段によって運転者によるブレーキの踏み込みの解除以外のすべてのエンジン再始動条件が成立したと判定され、且つ前記距離判定手段によって自車両の前方に存在する障害物と自車両との間の距離が所定の距離よりも長いと判定されたときには前記エンジンが自動再始動するよう制御する再始動制御手段と、
を備えたエンジン停止再始動制御装置。
【請求項7】
前記障害物は、先行車両である、
請求項6に記載のエンジン停止再始動制御装置。
【請求項8】
前記運転者によるブレーキの踏み込みの解除は、シフトレバーが走行可能なシフト位置にあるときにエンジン再始動条件に含まれる、
請求項6又は7に記載のエンジン停止再始動制御装置。
【請求項9】
運転者によるブレーキの踏み込みをエンジン停止条件の一つとしてエンジンの自動停止制御を行い、運転者によるブレーキの踏み込みの解除をエンジン再始動条件の一つとして前記エンジンの自動再始動制御を行うエンジン自動停止再始動方法であって、
(a)所定の停車条件が成立したときに車両が自動停車するよう制御するステップと、
(b)前記ステップ(a)で自動停車したときに運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したか否かを判定するステップと、
(d)前記ステップ(b)で運転者によるブレーキの踏み込み以外のすべてのエンジン停止条件が成立したと判定されたときには前記エンジンが自動停止するよう制御するステップと、
を含むエンジン停止再始動方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のエンジン停止再始動制御装置を搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183600(P2006−183600A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379585(P2004−379585)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】