説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーション用プログラム

【課題】道路形状データの精度は現状レベルでも、経路案内オブジェクトが道路に一致するように経路案内オブジェクトを実写画像に重畳表示することができるナビゲーション装置の提供。
【解決手段】自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを画面に表示するナビゲーション装置であって、自車前方の実写画像を取得する撮像部と、実写画像の道路白線を検出する白線検出部と、道路形状を表す道路形状データを含む地図情報を格納する地図情報格納部と、道路白線に沿って経路案内オブジェクトが表示されるように、道路白線の検出結果に基づき道路形状データを補正する道路形状データ補正部と、補正された道路形状データに基づき、経路案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、生成された経路案内オブジェクトを画面に表示する表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーション用プログラムに関し、より特定的には、実写画像に自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを重畳表示するナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーション用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の実写画像をビデオカメラ等の撮像手段で取得し、自車が交差点等の案内点に近づくと、自車が進むべき進路を示す矢印画像を経路案内オブジェクトとして実写画像に重畳表示する車載用ナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように実写画像に経路案内オブジェクトを重畳表示するナビゲーション装置においては、ユーザ(運転者)はフロントガラス越しに見える実風景と案内画面の対比がしやすい。このため、当該ナビゲーション装置は、運転者に対して直感的な経路誘導を行うことができる。
【0004】
一方、車両に搭載されたカメラから車両前方の実写画像を入力し、実写画像から道路白線候補点を抽出した後、当該道路白線候補点をHough変換することによって直線を検出し、その直線を道路白線として認識する白線検出装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、道路白線の検出結果を用いて、前方車線(レーン)に追従して自車の走行を制御する車線追従装置が開示されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
また、道路白線の検出結果から得た車線数および自車の走行している車線情報を使用して、走行すべき車線を決定し自車の移動方向と車線位置を決定する誘導手段を有するナビゲーション装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平7−63572号公報
【特許文献2】特開昭63−142478号公報
【特許文献3】特開2005−38225号公報
【特許文献4】特開2004−205527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両前方の実写画像をビデオカメラ等の撮像手段で取得し、自車が案内点に近づくと、自車の進むべき進路を示す矢印画像を経路案内オブジェクトとして重畳表示する車載用ナビゲーション装置において、経路案内オブジェクトは、当該装置が備える地図データベースに格納された道路形状データに基づき生成される。通常、道路形状データと実際の道路形状には誤差があり、図23に示すように正確には一致しない。一般的に、道路形状データの位置精度誤差(水平方向)は現状では数m〜数10m程度であることが知られている。ここで、図23に示す黒丸は道路形状データを構成する案内点ノード又は形状ノードであり、案内点ノード又は形状ノードはこのように離散的に管理されている。このため、経路案内オブジェクトを実写画像に重畳表示すると図24に示すように、実際の道路に対してずれて表示されるという問題があった。このようにずれて表示されてしまうと、場所によっては運転者が誤った進路を取る可能性があり、誘導案内に支障を来たす。
【0008】
実写画像に重畳表示される経路案内オブジェクトを実写画像の道路に沿って描画するためには、高密度且つ高精度な道路形状データが求められるが、通常、上記案内点ノード、形状ノードの配置密度は高くなく、このようなデータを作成するためには莫大なコストと労力がかかる。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、道路形状データの精度は現状レベルでも、経路案内オブジェクトが道路に一致するように当該経路案内オブジェクトを実写画像に重畳表示することができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るナビゲーション装置は、
自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを画面に表示するナビゲーション装置であって、
自車前方の実写画像を取得する撮像部と、
上記実写画像の道路白線を検出する白線検出部と、
道路形状を表す道路形状データを含む地図情報を格納する地図情報格納部と、
上記道路白線に沿って上記経路案内オブジェクトが表示されるように、上記道路白線の検出結果に基づき上記道路形状データを補正する道路形状データ補正部と、
補正された上記道路形状データに基づき、上記経路案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、
生成された上記経路案内オブジェクトを上記画面に表示する表示部とを備えている。
【0011】
本発明においては、
上記表示部は、上記経路案内オブジェクトを上記実写画像上に重畳表示することが好ましい。
【0012】
本発明においては、
上記道路形状データは、複数の道路形状点の集合であり、
上記道路形状データ補正部は、上記白線検出部が検出した上記道路白線に沿って第1の道路形状ベクトルを生成し、当該道路形状ベクトルに対して上記道路形状点から垂線を下ろし、当該道路形状ベクトルと当該垂線との交点を補正後の道路形状点とすることで上記道路形状データを補正することが好ましい。
【0013】
本発明においては、
上記道路白線の検出結果の信頼性有無を判定する信頼度判定部を備え、
上記信頼度判定部において信頼性有りと判定された場合に限り、上記道路形状補正部は上記道路形状データを補正することが好ましい。
【0014】
本発明においては、
上記道路形状データは、複数の道路形状点の集合であり、
上記道路形状データ補正部は、
上記実写画像上に上記道路白線を検出できた領域と上記道路白線を検出できなかった領域が混在する場合に、上記道路白線を検出できた領域と上記道路白線を検出できなかった領域の境界に各上記領域でそれぞれ最も近い上記道路形状点同士を結ぶ線分と上記第1の道路形状ベクトルとがなす角度が緩やかになるように、上記道路白線を検出できなかった領域の上記道路形状データを補正することが好ましい。
【0015】
本発明においては、
上記道路形状データ補正部は、
上記道路白線を検出できなかった領域の上記道路形状点を上記垂線と平行に移動することで上記道路形状データを補正することが好ましい。
【0016】
本発明においては、
上記道路形状データ補正部は、
上記第1の道路形状ベクトルと、上記白線を検出できた領域内で自車位置から最遠の上記道路形状点と自車位置を結ぶことで得られる第2の道路形状ベクトルとがなす角度θを算出し、上記道路白線を検出した領域と上記道路白線を検出できなかった領域の各上記道路形状点を、上記最遠の道路形状点が上記第1の道路形状ベクトル上に位置するように上記角度θ回転させることで上記道路形状データを補正することが好ましい。
【0017】
本発明においては、
上記角度θを記憶する角度差記憶部を備え、
上記道路形状データ補正部は、上記白線検出部が白線を検出できなかった場合には、過去に記憶した上記角度θの平均値を算出し、上記道路形状点を上記平均値分回転させることで補正することが好ましい。
【0018】
本発明においては、
レーンチェンジ方向を指示するオブジェクトを生成するレーンチェンジオブジェクト生成部を備え、
上記表示部は、上記経路案内オブジェクト上にレーンチェンジオブジェクトを重畳表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、道路形状データを白線検出結果に基づき補正するので、格納されている道路形状データの精度は現状レベルでも、経路案内オブジェクトが道路に一致するように当該経路案内オブジェクトを実写画像に重畳表示することができるナビゲーション装置を提供することができる。
【0020】
ただし、カメラの画像認識の認識精度には限界があり、例えば、白線が前方車両に遮られていると認識できない、白線が薄くなっていると認識しづらくなる、白線ではない所を誤検出することがある。このため、信頼度という指標に基づき、白線検出結果が信頼性有りと判断されたときのみ白線検出結果を上記補正に使用する。
【0021】
また、画像を複数の領域に分けて白線検出処理を行うと前方の道路状況によっては、手前側は白線検出できるが、奥側は白線検出できない場合もある。このようなときでも、検出できた領域内では積極的にその検出結果に基づき道路形状データを補正する。
【0022】
このとき、白線検出できた領域とできなかった領域の境界付近でデータ上の道路形状が歪にならないように、白線検出できなかった領域においても道路形状データを補正する。その結果、経路案内オブジェクトが領域境界付近で極端に折れ曲がったりせず、当該オブジェクトを高精度に描画できるので、視認性に優れた重畳表示を行うことができる。
【0023】
また、自車前方にレーンが複数ある場合には、現在走行中のレーン上に経路案内オブジェクトが重畳されるため、本来レーンチェンジすべき場所であってもレーンを変えずにそのまま直進しなければならないと運転者が勘違いしてしまい、運転者がうまくレーンチェンジできない可能性がある。このようなことがないよう、本発明では経路案内オブジェクト上にレーンチェンジ方向を指示するレーンチェンジオブジェクトを重畳表示することができるので、運転者は安心である。また、レーンチェンジオブジェクトは経路案内オブジェクト上に重畳表示されるので、その他の部分に重畳表示する場合と比べて、実写画像の背景部分を隠蔽することがないので、運転者は実風景と実写画像を容易に対比することができる。
【0024】
本発明は、取得した実写画像を画面に表示する方式のナビゲーション装置に適用できるのは勿論、取得した実写画像を画面に表示しない方式のナビゲーション装置にも適用可能である。例えば、表示部としてウィンドシールドディスプレイやヘッドアップディスプレイを使用する場合には、取得した実写画像を当該ディスプレイの画面に表示しなくて良い。実風景がディスプレイ越しに視認できるためである。
【0025】
ウィンドシールドディスプレイやヘッドアップディスプレイを使用する場合、例えば、運転者の視点の高さに応じて予め経路案内オブジェクトの表示位置を調節しておくことにより、経路案内オブジェクトを、フロントガラス越しに見える実風景の道路に重なるように表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のナビゲーション装置について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、本発明に関係のない構成要素の図示は省略している。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。図1に示されるように、ナビゲーション装置100は、撮像部101と、測位部102と、地図情報格納部103と、入力部104と、制御部105と、経路探索部106と、画像処理部107と、信頼度判定部108と、道路形状補正部109と、経路案内オブジェクト生成部110と、表示合成部111と、表示部112とを備える。
【0028】
撮像部101は、車両前方を撮像し、その実写画像を取得する。撮像部101は、例えば、デジタルカメラである。撮像部101は、例えば、ルームミラー背面に車両前方に向けて設置され、或いは車両天井部外側に車両前方に向けて設置される。なお、撮像部101は、2個以上のカメラから構成されていても良い。2個以上のカメラから構成されるときは、それらの実写画像を合成することもできる。
【0029】
測位部102は、ナビゲーション装置100が設置される車両に取り付けられ、当該車両(自車)の現在位置や速度、方位を測位するための手段である。測位部102は、例えば、GNSS(GLOBAL Navigation Satellite System)受信機、車速センサ、ジャイロ(角速度)センサ、加速度センサ等である。GNSS受信機は、例えば、GPS受信機であり、複数の衛星からの電波を受信し、受信した電波を復調することで受信機の絶対位置を計測するものである。GNSS受信機は、搬送波位相を使用する測位方式であっても良い。なお、自車の現在位置や速度、方位の測位は、GNSS受信機や各種センサを単独又は複合利用して行う。測位部102で測位された自車位置を基に、後述する地図情報に対しマップマッチング処理を行うことができる。
【0030】
地図情報格納部103は、道路や交差点に関するデータを含む地図情報を格納するものであり、例えば、HDDやDVD、フラッシュメモリである。なお、地図情報格納部103は、図示しない携帯電話等の図示しない通信手段によって、センター設備から地図情報を適宜ダウンロードするものであってもよい。
【0031】
ここで、地図情報格納部103に格納されている地図情報について説明する。
図2及び図3は、地図情報格納部103に格納されている地図情報の内、本実施形態に関連する情報のレコード形式を示す図である。
【0032】
地図情報格納部103には、本実施形態に関連する情報として、(A)ノードデータ、(B)リンクデータ、(C)道路種別データ、(D)形状ノードデータが格納されている。
【0033】
ノードは、交差点や合流地点など、幾方向かに道路が分岐する地点を表す。ノードデータは、ノード毎の緯度・経度等の位置情報と、当該ノードに接続する、後述するリンクの数と、リンクのIDとを含む。なお、ノードの位置情報は地図メッシュの四隅のいずれかを始点とする正規化座標で表現しても良い。
【0034】
リンクは、ノードとノードを結ぶ道路を表す。リンクデータは、リンクの端点である始点ノード及び終点ノードの各IDと、リンクコスト(例えば、リンクの長さであり、単位はメートルやキロメートルなど)と、リンク幅(道路幅であり、単位はメートルなど)と、道路種別と、後述する形状ノードのIDとを含む。ここで、リンクコストは、経路探索部106が経路探索を行う際のコスト計算に用いられる。
【0035】
道路種別データは、上述したリンクの種別、すなわち道路種別を識別するためのデータである。道路種別データは、高速道や一般道といった道路の種類毎に付与される固有の値である。この道路種別データによって、経路探索部106は一般道優先や高速道優先といった探索条件を設定した上で経路探索を行うことができる。
【0036】
形状ノードは、上述のリンク上に存在するノードであって、当該リンクが直線状でない場合に、その形状を表現するための曲折点を表すものである。形状ノードデータは、当該形状ノードの緯度・経度等の位置情報と、当該形状ノードが存在するリンクのIDとを含む。なお、形状ノードの位置情報はノードの端点を始点とする正規化座標で表現しても良い。
【0037】
図4は、地図情報格納部103に格納された地図情報を基に、ノード、形状ノード、及びリンクから構成される道路ネットワークを復元した様子を示す模式図である。各ノードには2本以上のリンクが接続して別のノードと結ばれており、一部のリンク(例えばリンクL100)上には当該リンクの湾曲形状を表す形状ノードが存在する。なお、リンクが直線的な道路である場合には、形状ノードは必ずしも存在しない。また、ノード間隔が小さく設定されている場合(例えば、ノード間隔が5m以下)には、形状ノードは必ずしも存在しない。以下の説明では、ノードと形状ノードを総称して道路形状点と呼ぶことがある。
【0038】
なお、このような道路ネットワークを復元可能な道路形状データだけではなく、背景データ(河川、緑地など)、施設データ(例えば、ファミリーレストランやガソリンスタンドの位置を管理する情報)なども地図情報格納部103に含まれるが、本実施形態ではその説明を割愛する。
【0039】
図1に戻って、ナビゲーション装置100の構成要素について説明する。
入力部104は、ユーザからの指示を入力するものである。入力部104は、例えば、押圧式のスイッチを複数並べたもの、タッチパネル式のもの、リモコン式のもの、あるいは利用者の声を認識してナビゲーション装置への入力情報に変換するマイクロフォン及び音声認識エンジン等である。ユーザからの指示内容としては、例えば、目的地検索、経由地設定、目的地設定、経路探索条件設定、経路探索実行、縮尺変更(拡大/縮小)、表示モードを地図モードと実写モードに切り替える指示等がある。実写モードでは、経路情報が実写画像に重畳表示される。地図モードでは、経路情報が地図上に重畳表示される。
【0040】
制御部105は、ナビゲーション装置100全体の動作を制御するものである。制御部105は、CPU或いはMPUと、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。CPU或いはMPUは、ROMに格納されるプログラムを実行することによって、図1に示す各機能ブロックの動作を制御する。また、CPU及びMPUは、プログラムの実行中、RAMを作業領域として使用する。
【0041】
経路探索部106は、入力部104から入力された目的地に関する情報と、測位部102から取得した自車位置情報と、地図情報格納部103に格納されたデータとに基づいて、目的地に至る最適経路を探索する。探索された経路にはいくつかの案内点(案内対象の交差点)が含まれる。なお、交差点が案内点であるかどうかの判定は、最適経路を構成するノードのうち、判定対象である交差点に対応するノードに進入するリンクと当該ノードから脱出するリンクとがなす角度を参照することで行われる。また、最適経路の探索はダイクストラ法、横型探索法などの公知の手法を用いることができ、最適経路データは典型的にはリンクデータ列として表現される。
【0042】
画像処理部107は、撮像部101によって取得した実写画像から道路白線を検出する機能を有している。白線検出は、公知の手法で行うことができる。具体的には、まず撮像部101で取得した実写画像をメモリにストアする。ストアした画像がカラー画像である場合は、カラー画像のグレー画像化を行う。次に、ストアした画像に対してSobelフィルタ等のフィルタでエッジ抽出を行い、抽出した値を2値化する。次いで、2値化した値に対してHough変換を行い、複数の直線式を求める。次いで、類似した直線同士を一つにまとめることで得た直線を道路白線として検出する。なお、水平方向、垂直方向のエッジを除去し誤認識を防止することが望ましい。その他、特開平9−319872号公報記載の方法を用いることもできる。
【0043】
信頼度判定部108は、画像処理部107の白線検出結果の信頼度を判定する機能を有している。具体的な信頼度判定方法は後述する。
【0044】
道路形状補正部109は、信頼度判定部108が白線検出結果を信頼性有りと判定した場合に、その白線検出結果を基に地図情報格納部103が格納する道路形状データを補正する機能を有している。なお、信頼度判定部108が白線検出結果を信頼性無しと判定した場合は、道路形状補正部109は、道路形状データを補正しない。
【0045】
経路案内オブジェクト生成部110は、経路探索部106によって探索された最適経路に該当する道路に沿った形状の経路案内オブジェクトを生成する機能を有している。経路案内オブジェクトは、一定の幅(例えば、実写画像の道路の幅)を持った矢印図形として生成される。この幅は、リンクデータのリンク幅に基づき設定することができる。なお、経路案内オブジェクトは、矢印図形に限らず、先端の三角形を除いた折れ線図形、その他の任意の図形とすることができる。経路案内オブジェクトは、長さや幅だけでなく、高さ方向の厚みを有するものであってもよい。
【0046】
表示合成部111は、実写画像に案内オブジェクトを重畳し、この重畳画像を表示部112に表示させる機能を有している(実写モード時)。また、表示合成部111は、自車位置周辺の地図画像を、必要に応じて自車位置マーク、最適経路などとともに表示部110に表示する機能を有している(地図モード時)。地図モード時は、実写画像は表示されない。
【0047】
表示部112は、実写モード時、地図モード時の双方において、道路案内画像を表示するものである。表示部112は、例えば、液晶ディスプレイ、ウィンドシールドディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなどの表示デバイスである。なお、ウィンドシールドディスプレイやヘッドアップディスプレイとする場合は、取得した実写画像を当該ディスプレイに表示しなくても良い。実風景がディスプレイ越しに視認できるためである。また、運転者の視線移動を最小にすることができ安全である。
ウィンドシールドディスプレイ、ヘッドアップディスプレイを使用する場合、例えば、運転者の視点の高さに応じて予め経路案内オブジェクトの表示位置を調節しておくことにより、経路案内オブジェクトを、フロントガラス越しに見える実風景の道路に重なるように表示することができる。
【0048】
次に本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置100の実写モード時の動作について図5に従って説明する。図5は、本実施形態に係るナビゲーション装置100の動作を示すフロー図である。
【0049】
まず、制御部105が、入力部104から目的地が設定されたか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101において、目的地が設定されなかった場合、制御部105は、S101に処理を戻す。一方、ステップS101において、目的地が設定された場合、経路探索部106は、測位部102で取得した自車位置情報に基づいて、地図情報格納部103を参照し、目的地に至る最適経路を探索する(ステップS102)。目的地に至る最適経路が探索されると、制御部105は、道路案内を開始する(ステップS103)。
【0050】
次いで、制御部105は、撮像部101の撮像方向、撮像範囲を定めるパラメータであるカメラ位置、カメラ姿勢(水平角、仰角)、焦点距離、及び画像サイズに基づいて、カメラの視野空間を算出する(ステップS104)。
【0051】
図6は、カメラ視野空間とウィンドウ座標系を示す図である。制御部105は、三次元空間において、カメラ位置(視点O)からカメラ正面方向にkだけ進んだ点(点K)を求め、画像サイズに相当する横WDx、縦WDyの平面(ウィンドウWD)を、視点Oと点Kを結んだベクトルに垂直になるように配置する。ここで、ウィンドウWDは表示部112の画面と縦横比が同じである。また、ウィンドウWD上の点Kを原点とし、座標軸のXw軸は右向きが正、Yw軸は上向きが正とする座標系をウィンドウ座標系と定義する。また、kは撮像部101の光学的条件(視野角、焦点距離等)とウィンドウWDの大きさに応じて定められ、撮像部101で自車前方の風景を捉えたときと、ウィンドウWD内を視点Oから覗いたときとで同じ視野範囲になるように定められる。視点OとウィンドウWDの4隅の点とをそれぞれ結ぶ4本の直線で囲まれる四角錐状の領域が、カメラ視野空間である。
【0052】
図5のフロー図に戻り、説明を続ける。
制御部105は、自車が目的地に到達したか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105において、目的地に到達したと判定された場合、制御部105は、処理を終了する。一方、ステップS105において、目的地に到達していないと判定された場合、制御部105は、カメラ視野空間内の道路形状点を抽出する(ステップS106)。具体的には図7を用いて説明する。
【0053】
図7は、カメラ視野空間(図7において破線で囲まれた三角形状の領域)内の道路形状点が抽出された様子を示す図であり、三次元地図空間とカメラ視野空間とを自車上方から見た図である。ここでは、経路探索部106が探索した最適経路のリンクデータから自車近傍の道路形状点が抽出される。図7においては、最適経路が道路R1から道路R2へ分岐するものとしており、道路R1、道路R2に対応する道路形状点が抽出されている。なお、道路形状点は、自車位置を原点、自車右方向を座標軸Xl軸、自車進行方向をZl軸とするローカル座標系で抽出される。また、このときマップマッチングした経路上の自車位置を道路形状点として追加する。なお、自車位置の移動とともにカメラ視野空間内の道路形状点が順次抽出されることになる。
【0054】
図5のフロー図に戻り、説明を続ける。
次いで、画像処理部107が白線検出処理を行う(S107)。そして、信頼度判定部108が白線検出結果の信頼度の判定を行う(S108)。信頼度の判定方法を、具体的に図8を用いて説明する。
【0055】
図8は、信頼度判定部108が白線検出結果を基に信頼度を判定する処理を示す図である。白線検出処理は、時間ΔT毎に行われるものとする。図8に示すように、時間ΔT毎の白線検出処理において、自車の左右両側で白線検出できた場合は「信頼性あり」と判定する。自車の左右いずれか片側でしか白線検出できなかった場合は、2回以上連続して片側で白線検出できたときのみ「信頼性あり」と判定する。それ以外については「信頼性なし」と判定する。このように信頼度の判定を行うことで、白線の誤検出の影響を排除することができる。なお、信頼度判定部108の処理としては、上記の説明では画像処理の結果を利用したが、他にも任意のものを利用することができる。例えば、道路種別によって信頼度を判定しても良い。道路種別によって信頼度を判定するときは、高速道、都市高速のときだけ「信頼性あり」とし、それ以外は「信頼性なし」とする。また、地図情報格納部103に予め信頼度データを格納しておき、それを読込んで使用しても良い。また、図示しない通信手段から信頼度データをダウンロードとして使用することもできる。
【0056】
図5のフロー図に戻り、説明を続ける。
道路形状補正部109は、白線検出結果が「信頼性あり」であるか或いは「信頼性なし」であるかに応じて、道路形状データを補正するか否かを決定する(S109)。「信頼性なし」の場合は、道路形状補正部109は道路形状データを補正せず、経路案内オブジェクト生成部110が補正なしの道路形状データを基に経路案内オブジェクトを生成する。一方、「信頼性あり」の場合は、まず道路形状補正部109は白線検出結果をウィンドウ座標系からローカル座標系へ座標変換する(S110)。そして、道路形状補正部109が道路形状データを補正し、経路案内オブジェクト生成部110が補正後の道路形状データを基に経路案内オブジェクトを生成する(S111)。道路形状データの補正方法を、具体的に図9、図10を用いて説明する。
【0057】
図9は、自車の左右両側の白線を検出した場合に、道路形状データを補正する様子を示す図である。
図9に示すように、まず、検出した左右両側の白線(一点鎖線で示す)の中点を通る線として道路形状ベクトル(破線で示す)を求め、道路形状点(黒丸で示す)から当該道路形状ベクトルに垂線を下ろし、当該垂線と当該道路形状ベクトルの交点を補正後の道路形状点(点々模様のある丸で示す)とする補正を行う。
【0058】
図10は、自車の左右いずれか片方の白線を検出した場合に、道路形状データを補正する様子を示す図である。
左側の白線(左側の一点鎖線で示す)を検出し、右側の白線(右側の一点鎖線で示す)を検出できなかったとする。この場合、左側の白線と平行に右側にも白線が存在すると仮定して、右側の白線位置を推定する。つまり、右側の白線位置を、左側の白線位置と地図情報格納部103に格納されたリンク幅(道路幅)とを基に推定する。そして、左側白線と仮想右側白線の中点を通る線を道路形状ベクトル(破線で示す)とする。この道路形状ベクトルに対し道路形状点から垂線を下ろし、当該垂線と当該道路形状ベクトルとの交点を補正後の道路形状点(点々模様のある丸で示す)とする補正を行う。
【0059】
図5のフロー図に戻り、説明を続ける。
次に制御部105は経路案内オブジェクトの投影処理を行う(S113)。次いで、表示合成部111は、実写画像に経路案内オブジェクトを重畳させた画像を表示部112の画面に表示させる(S114)。ここで投影処理について、具体的に図11を用いて説明する。
【0060】
図11は、経路案内オブジェクトの投影処理を説明する図である。図11に示されるように、まずローカル座標系において経路案内オブジェクトを構成する各点を3次元の視線座標系(Xe,Ye,Ze)上に移す。変換式は、
(式1)
Xe=Xl
Ye=−h
Ze=Zl
となる。視線座標系は、原点Oが視点位置であり、Ze軸方向を視線方向を正、Ye軸方向を高さ方向を正、Xe軸を視線方向に対して右に90度傾けた方向を正とする座標系である。ここで、hは、撮像部101の設置高さである。これにより、経路案内オブジェクトを視線座標系で視点より一定距離だけ下の平面内(つまり、路面上)に置くことができる。
【0061】
そして、視線座標系上で経路案内オブジェクトを形成する各点を、さらに、Ze=kの位置にZe軸に対して垂直に置かれた投影面に中心投影する。計算式は、
(式2)
Xw=kXe/Ze
Yw=kYe/Ze
となる。ここで、kは図6の定義と同じである。これによって、視線座標系で視点からウィンドウWD内を覗いた視野が撮像部101で実際の風景を捉える視野と等価になることから、図12に示すように経路案内オブジェクトが精度良く表示され、実写画像上で路面や案内対象交差点に相当する位置を特定することができる。なお、上記(式1)及び(式2)は座標系の定義の仕方やカメラパラメータに応じて、最適なものを選択することができる。
【0062】
図12は実写画像に重畳表示される経路案内オブジェクトの様子を示す図である。
図12に示すように、実写画像に重畳表示される経路案内オブジェクトを白線検出結果に基づき補正するので、地図の道路形状データ精度は現状レベルでも、実写画像に重畳表示される経路案内オブジェクトを道路に対して高精度に位置合わせして描画することができるナビゲーション装置を提供することができる。ただし、画像認識の認識精度は限界がある(例えば、白線が前方車両に遮られていると認識できない、白線が薄くなっていると認識しづらくなる、白線ではない所を誤検出する)ため、信頼度という指標に基づき、白線を正しく認識できたときのみ白線検出結果を使用するという工夫をしている。
【0063】
また、上述の実施形態では、車両前方を向いたカメラで撮像された実写画像を用いる例を説明したが、予め記憶媒体に保存されている実写画像や通信によって取得した実写画像上に経路案内オブジェクトを重畳表示するようにしても構わない。
【0064】
(実施の形態2)
次に、第2実施形態について、図面を参照し説明する。
図13は、本発明の第2実施形態に係るナビゲーション装置200の全体構成を示すブロック図である。図13に示されるように、ナビゲーション装置200は、撮像部101と、測位部102と、地図情報格納部103と、入力部104と、制御部105と、経路探索部106と、画像処理部207と、信頼度判定部208と、道路形状補正部209と、経路案内オブジェクト生成部110と、表示合成部111と、表示部112とを備える。
【0065】
図13に示す各ブロックの構成要素のうち、図1(第1実施形態)と同じ構成要素であるものについては同一の参照符号を付してその説明を省略する。以下、第1実施形態とは機能が異なる画像処理部207、信頼度判定部208、道路形状補正部209について説明する。
【0066】
画像処理部207は、撮像部101が取得した実写画像から道路白線を検出する機能を有している。ここで、第1実施形態と異なる点は、実写画像を複数の領域に分割し、分割した領域毎に手前側から奥側へ順番に白線検出を行う点である。また、上記領域の大きさを前回の白線検出結果に応じて動的に変更し、処理負荷を低減させる機能を有している。なお、各領域における白線検出は、第1実施形態と同様の手法で行うことができる。
【0067】
信頼度判定部208は、画像処理部207の白線検出結果の信頼度を判定する機能を有している。具体的な信頼度判定方法は後述する。
【0068】
道路形状補正部209は、画像処理部207の白線検出結果及び信頼度判定部208の信頼度に応じて、地図情報格納部103に格納された道路形状データを補正する機能を有している。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、画像処理を行う領域を複数設けたため、実写画像中に白線検出ができた領域とできなかった領域とが混在する場合がある。このような場合でも、領域境界付近で経路案内オブジェクトの形状が歪とならないように道路形状データを補正する機能を道路形状補正部209は有している。
【0069】
次に本実施形態に係るナビゲーション装置200の実写モード時の動作について図14、図15に従って説明する。図14は、本実施形態に係るナビゲーション装置200の動作を示すフロー図である。図14において、図5(第1実施形態)と同じステップについては同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図5のフロー図と異なるのは、ステップS201の白線検出、信頼度判定、経路案内オブジェクト生成処理である。このステップS201の処理内容について図15を用いて説明する。
【0071】
図15は、図14におけるステップS201の処理内容の詳細を示すフロー図である。
図15に示されるように、まず、画像処理部207は、全領域で白線検出と白線検出結果の信頼度判定を行ったかどうかを判断する(ステップS301)。もし、全領域で白線検出と信頼度判定が終了していない場合、ステップS301に処理を戻す。具体的に図16を用いて説明する。
【0072】
図16は、画像処理部207と信頼度判定部208が、白線検出と信頼度判定を行う領域の一例を示している。図16に示す例では、実写画像の道路部分を、まず右側と左側に分割し、さらに、手前側(画像の下側)から奥側(画像の上側)に向かって3つの領域にそれぞれ分割している。これにより、計6つの領域に分割されており、画像処理部207は左側の領域で左側白線を、右側の領域で右側白線を検出する。
【0073】
奥行き方向の各領域サイズは手前側程大きいサイズとされており、領域WR1と領域WL1は自車前方0m〜16mの領域、領域WR2と領域WL2は自車前方16m〜50mの領域、領域WR3と領域WL3は自車前方50m〜150mの領域とされている。
【0074】
道路の消失点より奥側の画像に対しては白線検出のための領域設定をせず、白線検出と信頼度判定処理の対象から外すことで演算量を削減する。
【0075】
なお、領域の分割数、各領域のサイズは任意に設定することができる。特に車線数に応じて、横方向の分割数を増減しても良い。
【0076】
白線検出と信頼度判定は手前側から奥側に向かって順番に行われる。信頼度判定処理は、自車左右両側の白線検出が終わった段階で行われる。信頼度判定の対象となる領域は自車前方0m〜16mの領域については領域WR1と領域WL1であり、このように左右の領域をセットにして信頼度判定が行われる。なお、信頼度判定の具体的処理内容は図8に示す方法と同じである。
【0077】
もし、左右両側で白線を検出できなかったら、その検出できなかった領域より奥側の領域では白線検出処理は実施せず、信頼度を「信頼性なし」とすることができる。これにより、演算量を削減することができる。
【0078】
また、図17に示すように、白線を検出できた場合は時間ΔT後の検出対象領域(次回
の検出対象領域)を狭め、演算量を削減することができる。図17(a)は、時刻Tにおける検出対象領域を示しており、デフォルト状態である。時刻Tで白線を検出した場合、時刻T+ΔTでは、図17(b)に示すように、時刻Tで白線を検出した付近の領域に領
域サイズを絞り込む。なお、白線を検出ができなかった場合は、時間ΔT後の領域サイズ
をデフォルト状態に戻せばよい。
【0079】
図15のフロー図に戻り、説明を続ける。
ステップS302では、「信頼性あり」、「信頼性なし」の領域が混在するかどうかを判定する。「信頼性あり」、「信頼性なし」の領域が混在しない場合、ステップS303に処理を進める。ステップS303では、全ての領域で「信頼性あり」かどうかを判定する。全ての領域で「信頼性あり」の場合、ステップS110、S111へ処理を進める。全ての領域で「信頼性あり」ではない、すなわち、全ての領域で「信頼性なし」の場合、ステップS112に処理を進める。ここで、ステップS110、S111、S112は、図5のフロー図と同じであるため、その説明を省略する。
【0080】
一方、「信頼性あり」、「信頼性なし」の領域が混在する場合、ステップS304に処理を進める。「信頼性あり」、「信頼性なし」の領域が混在するとは、例えば、図16の実写画像に設けられた各領域において、領域WR1と領域WL1が「信頼性あり」、領域WR2と領域WL2が「信頼性あり」、領域WR3と領域WL3が「信頼性なし」であるような場合である。
【0081】
ステップS304では、「信頼性あり」の領域について、検出した白線をウィンドウ座標系からローカル座標系へ座標変換する。
【0082】
次いで、白線検出できた領域については白線検出結果に基づき道路形状データを補正し、白線検出できなかった領域については道路形状データを適切に補正し、白線検知できた領域とできなかった領域の境界部分においてデータ上の道路形状が歪とならないように補正する(ステップS305)。ここで、領域境界付近においてデータ上の道路形状が歪とならないように補正する処理内容について、図18乃至図21を参照しつつ説明する。
【0083】
図18は、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられるときに、その領域境界付近においてデータ上の道路形状が歪とならないように道路形状データが補正される様子を示す図である。なお、図18は各道路形状点を上記のローカル座標系で示している。
【0084】
図18において、N1〜N5は地図の道路形状点を示している。L1は自車位置と道路形状点N1を接続する線(リンク)であり、L2は道路形状点N1と道路形状点N2を接続する線(リンク)であり、L3は道路形状点N2と道路形状点N3を接続する線(リンク)であり、L4は道路形状点N3と道路形状点N4を接続する線(リンク)であり、L5は道路形状点N4と道路形状点N5を接続する線(リンク)である。リンクL4は、白線検出できた領域内のL41と白線検出できなかった領域内のL42とに分けて示されている。V1は白線検出結果に基づいて作成された道路形状ベクトル(第1の道路形状ベクトル)である。
【0085】
図18に示されるように、白線検出できた領域内では、道路形状点から道路形状ベクトルV1へ垂線を下ろし、当該垂線と当該道路形状ベクトルの交点を補正後の道路形状点とする補正をする。C1〜C3は、補正後の道路形状点を示している。
【0086】
一方、白線検出できなかった領域で道路形状データを保持した場合、補正後の道路形状点C3と補正しない道路形状点N4を繋ぐ直線は、データ上の道路形状を歪にする。ここで、「道路形状を歪にする」とは、白線検知できた領域と白線検知できなかった領域の境界付近で道路形状が急激に折れ曲がった状態にすることを指す。その結果、生成される経路案内オブジェクトも途中で歪に折れ曲がった状態となり、当該オブジェクトの視認性が悪くなる。なお、「道路形状が歪になる」とは、自車進行方位(図では上向き)に対して道路形状点N3と道路形状点N4を結ぶベクトルがなす角度と、自車進行方位に対して道路形状点C3と道路形状点N4を結ぶベクトルの角度を比べたとき、後者が大きくなる現象と表現することもできる。
【0087】
そこで、図18に示すように、領域境界付近で道路形状が歪とならないように、白線検出できなかった領域内の道路形状点N4,N5及びリンクL42,L5を、道路形状点N3がC3に移動する向きと同じ向きに移動させる。つまり、移動する方向は、自車の進行方位すなわち道路形状ベクトルV1に対して垂直な方向であり、白線検知できた領域と白線検知できなかった領域の境界付近での道路形状の折れ曲がり角度が小さくなる方向である。なお、リンクL42の下端部が、道路形状ベクトルV1の上端部と一致するように道路形状点N4,N5及びリンクL42,L5を移動させる。これにより、道路白線を検出できた領域と道路白線を検出できなかった領域の境界に各領域でそれぞれ最も近い補正後の道路形状点(図18では、C3とC4)同士を結ぶ線分と道路形状ベクトルV1とがなす角度が緩やかになる。よって、領域境界付近で道路形状が急激な角度で折れ曲がってしまうことを抑制し、経路案内オブジェクトの形状を滑らかな形状にしてその視認性を向上させることができる。
【0088】
図19は、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられる場合に、その領域境界付近でデータ上の道路形状が歪にならないよう道路形状データを補正する他の例を示す図である。なお、図19は各道路形状点をローカル座標系で示している。
【0089】
図19に示される例は、図18に示される例に比べて、白線検出できなかった領域の道路形状点N4,N5の移動量が異なる。
【0090】
図19においては、まず、白線検出できなかった領域内の最も自車位置に近い道路形状点N4から、道路形状ベクトルV1を延長した線(道路形状ベクトルV1の先に点線で示す)に対して垂線を下ろし、当該垂線と当該延長線との交点を求め、その交点を補正後の道路形状点C6とする。つまり、当該交点まで道路形状点を移動する。次いで、N4からC6へ移動したのと同じ量だけ、N4以降の道路形状点(図示例ではN5)をN4と同じ方向へ移動させる。これによって、N5がC7へ移動する。図19に示すように、補正後の道路形状点C6は、道路形状ベクトルV1の延長線上にある。これにより、領域境界付近で道路形状が急激な角度で折れ曲がってしまうことを抑制し、経路案内オブジェクトの形状を滑らかな形状にしてその視認性を向上させることができる。
【0091】
図18、図19に示した移動方法以外にも、道路形状点を回転移動することで道路形状が歪になるのを抑制することができる。図20、図21を用いて詳細に説明する。
【0092】
図20は、白線検出結果に基づき作成した道路形状ベクトルと、道路形状データを基に作成した道路形状ベクトルの角度差θを示す図である。なお、図20は各道路形状点をローカル座標系で示している。
【0093】
図20において、N10〜N14は地図の道路形状点である。V3は白線検出結果に基づき作成した道路形状ベクトル(第1の道路形状ベクトル)であり、V4は白線検知できた領域内で自車位置から最遠にある道路形状点と自車位置とを結ぶ、地図の道路形状ベクトル(第2の道路形状ベクトル)である。角度θは、道路形状ベクトルV3と道路形状ベクトルV4間の角度である。
【0094】
このような状態において、図21に示すように地図の道路形状点N10〜N14を角度θ分回転させることにより、N12を道路形状ベクトルV3上に移動させる。そして、角度θ回転後の道路形状点(白線検出できた領域内のみ)から道路形状ベクトルV3に対して垂線を下ろし、当該垂線と当該道路形状ベクトルV3の交点を補正後の道路形状点とする補正を行う。補正後の道路形状点が、C10〜C12である。白線検出できなかった領域内の道路形状点については、角度θ回転後の位置を補正後の位置とする。その結果得られる道路形状点がC13,C14である。これにより、領域境界付近で道路形状が急激な角度で折れ曲がってしまうことを抑制し、経路案内オブジェクトの形状を滑らかな形状にしてその視認性を向上させることができる。
【0095】
なお、上記以外の方法であっても、領域境界付近で道路形状が歪とならない方法であれば、どのような方法で道路形状を補正してもよい。
【0096】
以上の説明から、実写画像を複数の領域に分けて画像認識すると前方の道路状況によっては、手前側は白線を認識できているが、奥側は白線を認識できていない場合がある。このような場合でも、白線検出できた領域内では積極的に白線検出結果に基づき道路形状データを補正する。また、白線検出できた領域とできなかった領域の境界付近で道路形状が歪にならないように、白線検出できなかった領域内の道路形状データも補正することにより、経路案内オブジェクトが領域境界付近で極端に折れ曲がったりしないので、視認性に優れた経路案内オブジェクト表示をすることができる。
【0097】
なお、上記第1実施形態、第2実施形態においては、以下のような変更をすることもできる。
例えば、白線検出できなかった場合の案内オブジェクト生成(例えば、図5、図15のフロー図におけるステップS112)において、それ以前に一旦白線検出できていたときは、以下のように道路形状ベクトル生成を行ってもよい。すなわち、図20における角度θと同様の手法で算出した角度の平均値を記憶しておき、白線検出できなかったときに道路形状点を当該平均値分回転させ、白線検知できた領域については更に図21に示したように道路形状点を移動させることで道路形状データの補正を行い、その補正後の道路形状データを用いて経路案内オブジェクトを生成するようにしても良い。これにより、カメラの取り付け誤差等によるオフセット誤差(一定方位の誤差)の影響を無くすことができる。自車方位をリンク方位とする場合に特に顕著な効果がある。
【0098】
また、白線検出できた場合、その後同じ箇所を走行するときは白線検出処理を省略し、前回の補正後の道路形状点を呼び出すようにしても良い。
【0099】
また、自車の他、他車にもナビゲーション装置100或いは200を搭載している場合においては、他車が白線検出できなかった場所に関する情報を自車が通信手段(図示せず)を介して受信し、同じ場所を走行するときは自車において白線検出処理を省略することもできる。この場合、演算量を削減することができる。
【0100】
また、自車前方に複数レーンがあるとき、白線検出を行って道路形状を補正した結果、現在走行中のレーン上に経路案内オブジェクトが重畳表示されてしまうため、本来レーンチェンジすべき場所であるのにレーンチェンジせずにそのまま走行しなければならないと運転手が勘違いしてしまう可能性がある。
【0101】
このようなときには、ナビゲーション装置100又は200に設けたレーンチェンジオブジェクト生成部(図示せず)がレーンチェンジオブジェクトを生成し、図22に示すように経路案内オブジェクト上にレーンチェンジオブジェクトを重畳することができる。
【0102】
図22は、経路案内オブジェクト上にレーンチェンジ方向を示すレーンチェンジオブジェクトを重畳表示した様子を示す図である。
図22に示すように、経路案内オブジェクト上にレーンチェンジ方向を指示するオブジェクトが重畳される。このため、運転者は本来レーンチェンジすべき場所で的確にレーンチェンジ方向が分かるので、運転者は安心である。また、レーンチェンジオブジェクトは経路案内オブジェクト上に重畳表示されるので、その他の部分に重畳する場合と比べて、背景の実風景を隠蔽することがなく、また、レーンチェンジオブジェクトの視認性に優れている。
【0103】
上述の各実施形態では、車両前方を向いたカメラで取得した実写画像を用いる例を説明したが、予め記憶媒体に保存されている実写画像や通信によって取得した実写画像上に経路案内オブジェクトを重畳表示しても構わない。
【0104】
上述の各実施形態の構成は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を制限するものではない。本願の技術的範囲内において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のナビゲーション装置は、車両に設置されるカーナビゲーション装置等として有用である。また、携帯電話におけるナビゲーション装置等としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態において、地図データベースに記憶されている情報の一例を示す図
【図3】第1実施形態において、地図データベースに記憶されている情報の一例を示す図
【図4】第1実施形態において、地図データベースに記憶されているノードデータ、形状ノードデータ、及びリンクデータに基づき作成された道路ネットワークの一例を示す図
【図5】第1実施形態に係るナビゲーション装置の動作を示すフロー図
【図6】第1実施形態におけるカメラ視野空間とウィンドウ座標系を示す図
【図7】第1実施形態において、カメラ視野空間内の道路形状点が抽出された様子を示す図
【図8】第1実施形態において、信頼度判定部が白線検出結果を基に信頼度を判定する処理を示す図
【図9】第1実施形態において、自車左右両側の白線を検出したときに道路形状データを補正する様子を示す図
【図10】第1実施形態において、自車左右いずれか片側の白線を検出したときに道路形状データを補正する様子を示す図
【図11】第1実施形態において、経路案内オブジェクトの投影処理を説明する図
【図12】第1実施形態において、実写画像に経路案内オブジェクトを重畳表示した状態を示す図
【図13】本発明の第2実施形態に係るナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図
【図14】第2実施形態に係るナビゲーション装置の動作を示すフロー図
【図15】第2実施形態に係るナビゲーション装置の動作を示すフロー図
【図16】第2実施形態において、実写画像における白線検出と信頼度判定を行う領域を分割した様子を示す図
【図17】第2実施形態において、白線検出する領域を絞り込む様子を示す図
【図18】第2実施形態において、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられるときに、その領域境界付近で道路形状が歪にならないように道路形状データを補正する様子の第1例を示す図
【図19】第2実施形態において、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられるときに、その領域境界付近で道路形状が歪にならないように道路形状データを補正する様子の第2例を示す図
【図20】第2実施形態において、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられるときに、その領域境界付近で道路形状が歪にならないように道路形状データを補正する様子の第3例を示す図
【図21】第2実施形態において、視野空間内の道路形状点が白線検出できた領域とできなかった領域に分けられるときに、その領域境界付近で道路形状が歪にならないように道路形状データを補正する様子の第3例を示す図
【図22】第1実施形態又は第2実施形態において、経路案内オブジェクト上にレーンチェンジオブジェクトを重畳表示した状態を示す図
【図23】地図データ上の道路形状と実際の道路形状がずれている様子を示す図
【図24】従来技術として、実写画像に経路案内オブジェクトを重畳表示した状態を示す図
【符号の説明】
【0107】
100 ナビゲーション装置
101 撮像部
102 測位部
103 地図情報格納部
104 入力部
105 制御部
106 経路探索部
107 画像処理部
108 信頼度判定部
109 道路形状補正部
110 経路案内オブジェクト生成部
111 表示合成部
112 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを画面に表示するナビゲーション装置であって、
自車前方の実写画像を取得する撮像部と、
前記実写画像の道路白線を検出する白線検出部と、
道路形状を表す道路形状データを含む地図情報を格納する地図情報格納部と、
前記道路白線に沿って前記経路案内オブジェクトが表示されるように、前記道路白線の検出結果に基づき前記道路形状データを補正する道路形状データ補正部と、
補正された前記道路形状データに基づき、前記経路案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成部と、
生成された前記経路案内オブジェクトを前記画面に表示する表示部とを備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記経路案内オブジェクトを前記実写画像上に重畳表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記道路形状データは、複数の道路形状点の集合であり、
前記道路形状データ補正部は、前記白線検出部が検出した前記道路白線に沿って第1の道路形状ベクトルを生成し、当該道路形状ベクトルに対して前記道路形状点から垂線を下ろし、当該道路形状ベクトルと当該垂線との交点を補正後の道路形状点とすることで前記道路形状データを補正することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記道路白線の検出結果の信頼性有無を判定する信頼度判定部を備え、
前記信頼度判定部において信頼性有りと判定された場合に限り、前記道路形状補正部は前記道路形状データを補正することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記道路形状データは、複数の道路形状点の集合であり、
前記道路形状データ補正部は、
前記実写画像上に前記道路白線を検出できた領域と前記道路白線を検出できなかった領域が混在する場合に、前記道路白線を検出できた領域と前記道路白線を検出できなかった領域の境界に各前記領域でそれぞれ最も近い前記道路形状点同士を結ぶ線分と前記第1の道路形状ベクトルとがなす角度が緩やかになるように、前記道路白線を検出できなかった領域の前記道路形状データを補正することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記道路形状データ補正部は、
前記道路白線を検出できなかった領域の前記道路形状点を前記垂線と平行に移動することで前記道路形状データを補正することを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記道路形状データ補正部は、
前記第1の道路形状ベクトルと、前記白線を検出できた領域内で自車位置から最遠の前記道路形状点と自車位置を結ぶことで得られる第2の道路形状ベクトルとがなす角度θを算出し、前記道路白線を検出した領域と前記道路白線を検出できなかった領域の各前記道路形状点を、前記最遠の道路形状点が前記第1の道路形状ベクトル上に位置するように前記角度θ回転させることで前記道路形状データを補正することを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記角度θを記憶する角度差記憶部を備え、
前記道路形状データ補正部は、前記白線検出部が白線を検出できなかった場合には、過去に記憶した前記角度θの平均値を算出し、前記道路形状点を前記平均値分回転させることで補正することを特徴とする請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
レーンチェンジ方向を指示するオブジェクトを生成するレーンチェンジオブジェクト生成部を備え、
前記表示部は、前記経路案内オブジェクト上にレーンチェンジオブジェクトを重畳表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを画面に表示するナビゲーション方法であって、
前記実写画像の道路白線を検出する白線検出ステップと、
道路形状を表す道路形状データを含む地図情報を格納する地図情報格納ステップと、
前記道路白線に沿って前記経路案内オブジェクトが表示されるように、前記道路白線の検出結果に基づき前記道路形状データを補正する道路形状データ補正ステップと、
補正された前記道路形状データに基づき、前記経路案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、
生成された前記経路案内オブジェクトを前記画面に表示する表示ステップとを備えたナビゲーション方法。
【請求項11】
自車が進むべき進路を示す経路案内オブジェクトを画面に表示するためにコンピュータに下記のステップを実行させるナビゲーション用プログラムであって、
前記実写画像の道路白線を検出する白線検出ステップと、
道路形状を表す道路形状データを含む地図情報を格納する地図情報格納ステップと、
前記道路白線に沿って前記経路案内オブジェクトが表示されるように、前記道路白線の検出結果に基づき前記道路形状データを補正する道路形状データ補正ステップと、
補正された前記道路形状データに基づき、前記経路案内オブジェクトを生成する経路案内オブジェクト生成ステップと、
生成された前記経路案内オブジェクトを前記画面に表示する表示ステップとを、前記コンピュータに実行させるナビゲーション用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−309529(P2008−309529A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155603(P2007−155603)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】