説明

フォトセンサーおよびその製造方法

【課題】 X線撮像表示装置等に用いられるフォトセンサーの出力を安定化させる為には、フォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板におけるゲート配線およびデータ線、バイアス線の抵抗を低くする必要がある。またその後の絶縁膜形成に用いるプラズマCVDの熱履歴に耐える為に耐熱性が必要、およびコンタクト特性に優れた材料が必要である。
【解決手段】 この発明にかかるフラットパネルのフォトセンサーにおいては、データ線およびバイアス線を低抵抗で耐熱性が良く、他の導電性膜とのコンタクト特性に優れたNiを含むAl合金を含む単層あるいは積層膜で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を電荷へ変換するフォトダイオードとスイッチング素子に用いる薄膜トランジスタ(以後、TFTと呼ぶ)をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス型のTFTアレイ基板を備えたフラットパネルであるフォトセンサーとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可視光を光電変換するフォトダイオードとTFTとを配置したTFTアレイ基板を備えたフラットパネルであるフォトセンサーは、密着イメージセンサーやX線撮像表示装置などに適用され広く用いられている。特に、TFTアレイ基板上にX線を可視光に変換するシンチレーターを設けることにより構成されるフラットパネルX線撮像表示装置(以後、FPDと呼ぶ)は医療産業等への適用が有望な装置である。
【0003】
X線画像診断の分野では精密画像(静止画)とリアルタイム画像観察(動画)が使い分けられている。静止画の撮影には主にX線フィルムが今尚使用されている。一方、動画の撮影には光電子増倍管とCCDを組み合わせた撮像管(イメージインテンシファイア)が使用されている。X線フィルムは空間分解能が高い反面、感度が低く静止画しか撮影できない、撮影後に現像処理を必要とし、即時性に欠けるといった欠点がある。一方、撮像管は感度が高く動画の撮影が可能である反面、空間分解能が低い、真空デバイスであるため大型化に限界があるといった欠点がある。
【0004】
FPDにはCsIなどのシンチレーターによってX線を光に変換後、フォトダイオードにより電荷へ変換する間接変換方式と、Seを代表とするX線検出素子によりX線を直接電荷へ変換する直接変換方式がある。間接変換方式の方が量子効率が高く、シグナル/ノイズ比に優れ、少ない被爆線量で透視、撮影が可能である。間接変換方式のFPDのアレイ基板に関する構造や製造方法については従来から開示がなされている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【0005】
【特許文献1】特開2004−63660号公報
【特許文献2】特開2002−368202号公報
【特許文献3】特開2004−228516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトセンサーの出力を安定化させる為には、ゲート配線およびデータ線、バイアス線の抵抗を低くする必要がある。またその後の絶縁膜形成に用いるプラズマCVDの熱履歴に耐える為にヒロック等が出ない耐熱性が必要であるのはもちろん、さらには他の導電性膜とのコンタクト特性に優れた材料が必要である。特に、配線を半導体膜や透明な酸化物導電膜と接続させる場合、低抵抗と高耐熱性とを兼ね備えた配線材料との界面における反応により、コンタクト抵抗が増大するという問題があった。そのため、コンタクト抵抗を下げるためだけに、例えば高融点金属膜を界面に形成するという方法も知られているが、これには生産工程やコストの増大を引き起こすという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかるフラットパネルのフォトセンサーは、ゲート電極、データ線およびバイアス線を低抵抗で耐熱性が良く、他の導電性膜とのコンタクト特性に優れたNiを含むAl合金、すなわちAl−Ni合金を含む単層あるいは積層膜で形成する。
【発明の効果】
【0008】
ゲート配線、データ配線及びバイアス配線に少なくともNiを含むAl合金、すなわちAl−Ni合金を含む層を用いることで、多くの熱履歴を経るフラットパネルのフォトダイオード製造工程においても、熱による不良を防止できる為、後発生するヒロックによるショート等の欠陥のない製品を得ることが出来る。また、他の導電性膜とのコンタクト特性に優れるので安定したコンタクト性能が得られ十分な信頼性を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本実施の形態にかかるフォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の平面図を示したものである。図2は、図1においてA−Aで示された個所における断面図である。
【0010】
ガラス基板1上に形成されたAlNiNd、AlNiSi、AlNiMg等のAl−Ni合金を含むゲート電極2を覆うように形成されるゲート絶縁膜3上に、ゲート電極2と対向するように半導体層4が形成されている。この半導体層4上に形成されるn+a−Si:Hのオーミックコンタクト層5を介して半導体層4と接続するソース電極6とドレイン電極7とがあり、これらを覆うようにして第一のパッシベーション膜8が形成されている。
【0011】
第一のパッシベーション膜8に開口したコンタクトホールCH1を介してドレイン電極7と接続するように、Pドープしたアモルファスシリコン膜9とその上層のイントリンシックのアモルファスシリコン膜10とBドープしたアモルファスシリコン膜11との3層積層構造が形成されており、さらにその上層には透明な導電性酸化物からなる透明電極12が形成されている。これらを覆うように形成される第二のパッシベーション膜13はコンタクトホールCH2、CH3を有し、第二のパッシベーション膜13上のデータ線14はコンタクトホールCH2を介してソース電極6と接続され、第二のパッシベーション膜13上のバイアス線15はコンタクトホールCH3を介して透明電極12と接続するように形成されている。
【0012】
なお、ここでデータ線14とバイアス線15は、少なくともその最上層もしくは最下層にAl−Ni合金膜を有している。Al−Ni合金膜の単層でもよい。最上層にAl−Ni合金膜がある場合、さらに表面を窒化層としてもよい。また、図示しないが、データ線14は3層積層構造において変換された電荷を読み出すための配線であり、バイアス線15は3層積層構造の電荷をリセット等するための配線である。さらに、第二のパッシベーション膜13上には遮光層16も形成されている。そして、これらを覆うようにして第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18が形成されている。ここで、第四のパッシベーション膜18は表面が平坦な膜であり、例えば有機樹脂などからなる。
【0013】
次に、図3、図4を参照して端子部に関する説明を以下に行う。図3は、ゲート電極2から延在してなるゲート配線の端部に形成される端子部の断面図である。図4は、データ線14もしくはバイアス線15から延在されてなる配線の端部に形成される端子部の断面図である。
【0014】
図3において、ガラス基板1上にゲート電極2と同時に形成されるゲート配線の端部20が形成されている。その上層には、ゲート絶縁膜3と第一のパッシベーション膜8と第二のパッシベーション膜13とが積層されており、さらにその上層には、データ線14と同時に形成された導電パターン21が形成されている。導電パターン21はコンタクトホールCH4を介してゲート配線の端部20と接続されている。ここで、CH4はCH2やCH3と同じエッチング工程において形成してもよい。また、CH4をテーパー形状とすることにより導電パターン21の被覆性が向上するので断線を防止できる。
【0015】
また、導電パターン21の上層には第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18が形成されている。第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18上に形成される端子引き出し電極22と、導電パターン21とは第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18に開口されたコンタクトホールCH5を介して接続されている。なお、端子引き出し電極22は透明な導電性酸化物からなるが、下層に高融点金属膜が形成された積層膜でもよい。
【0016】
図4において、ガラス基板1上にゲート電極2と同時に形成されるショートリング配線23が形成されている。その上層には、ゲート絶縁膜3と第一のパッシベーション膜8と第二のパッシベーション膜13とが積層されており、さらにその上層には、データ線14もしくはバイアス線15から延在されてなる配線の端部24が形成されている。配線の端部24はコンタクトホールCH6を介してショートリング配線23と接続されている。ここで、CH6はCH2やCH3と同じエッチング工程において形成してもよい。また、CH6をテーパー形状とすることにより配線の端部24の被覆性が向上するので断線を防止できる。
【0017】
また、配線の端部24の上層には第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18が形成されている。第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18上に形成される端子引き出し電極22と、配線の端部24とは第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18に開口されたコンタクトホールCH7を介して接続されている。なお、端子引き出し電極22は例えば透明な導電性酸化物からなる上層と高融点金属からなる下層との積層であってもよい。
【0018】
図1、2に示すTFTアレイ基板を用いて、公知の方法によりX線撮像装置などのようなフォトセンサーを製造することも可能である。図示しないが図2に示す第四のパッシベーション膜18の上に例えばCsIからなるX線を可視光に変換するシンチレーターを蒸着し、低ノイズアンプとA/Dコンバーターなどを有するデジタルボード、TFTを駆動するドライバーボード、および電荷を読み出す読み出しボードを接続することにより、X線撮像装置を作成することが出来る。
【0019】
本実施の形態にかかるフォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板では、データ線14やバイアス線15の少なくとも最上層もしくは最下層にAl−Ni合金膜が形成されていることを特徴としている。最上層に形成された場合はコンタクトホールCH5、CH7を介した端子引き出し電極22との接続抵抗を低減できる。また、最下層に形成した場合は、コンタクトホールCH3を介した透明電極12との接続抵抗を低減できる。これはAlとITOやIZOとの界面での酸化反応が、添加元素であるNiにより一部阻害される現象による効果である。なお、データ線14やバイアス線15をAl−Ni合金膜の単層で形成してもよい。さらに、ゲート電極2やゲート配線の端部20をAl−Ni合金で形成してもよい。
【0020】
次に、図5(a)〜(c)、図6(a)(b)を用いて本実施の形態にかかるフォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の製造方法について説明する。なお、図5、図6とも、図2に対応する個所における工程ごとの断面図である。
【0021】
最初にガラス基板1上に第一の導電性薄膜としてNiを含むAl合金、例えばAlNiNdをスパッタリング法により形成する。成膜条件は、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW パワー密度で言うなれば0.17〜0.43W/cm、成膜温度は室温〜180℃ぐらいまでの範囲を適用する。膜厚は150〜300nm形成する。また、現像液との反応を抑えるためにAlNiNdの上に窒化したAlNiNdN層を形成しても良い。AlNiNdの代わりにAlNiSiやAlNiMgなどを使用しても良い。さらに、データ線14やバイアス線15と同じ材料を用いてもよく、その場合は生産効率が向上する。
【0022】
次に第一のフォトリソ工程でゲート電極形状のレジストを形成し、エッチング工程で例えば燐酸・硝酸・酢酸の混酸を用いて第一の導電性薄膜をパターニングしてゲート電極2を形成する。尚、ゲート電極の断面形状をテーパー形状にすると、後続の膜形成における断線などの不良を低減できる。さらに、エッチングは燐酸と硝酸と酢酸との混酸を挙げたがエッチング液の種類はこの限りではない。また、ドライエッチを用いても良い。
【0023】
次にゲート絶縁膜3を200〜400nm、a−Si:H(水素原子が添加されたアモルファスシリコン)半導体層4を100〜200nm、n+a−Si:Hのオーミックコンタクト層5を20〜50nmの膜厚でプラズマCVD法で積層する。なお、フォトセンサーは高い電荷読み出し効率が求められ駆動能力の高いトランジスタが求められる為、a−Si:H半導体層4を2ステップに分割して成膜してトランジスタの高性能化を図っても良い。その場合の成膜条件として、1層目はデポレートが50〜200Å/分の低速レートで良質な膜を形成し、その後の残りを300Å/分以上のデポレートで成膜する。また、ゲート絶縁膜3、a−Si:H(水素原子が添加されたアモルファスシリコン)半導体層4、n+a−Si:Hのオーミックコンタクト層5を成膜温度が250〜350℃で成膜する。
【0024】
次に第二のフォトリソ工程でチャネル形状のレジストを形成しエッチング工程で半導体層4とオーミックコンタクト層5を、チャネルを形成する部分を残すようにアイランド状にパターニングする。エッチングでは例えばSFとHClの混合ガスを用いたプラズマを用いて行う。尚、チャネルの断面形状をテーパー形状にすると、後続の膜形成における断線などの不良を低減できる。さらに、エッチングガスとしてSFとHClの混合ガスを挙げたがガス種はこの限りではない。
【0025】
次に第二の導電性薄膜を成膜する。第二の導電性薄膜の形成は、例えばスパッタリング法を用いて、少なくともNiを添加したAl合金を成膜することにより行う。スパッタ成膜には、少なくともNiを添加したAl合金のターゲットを用い、成膜条件は、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言うなれば0.17〜0.43W/cm2、成膜温度は室温〜180℃ぐらいまでの範囲を適用する。膜厚は150〜300nm形成する。また、現像液との反応を抑えるためにAlNiNdの上に窒化したAlNiNdNを形成しても良い。AlNiNdの代わりにAlNiSiやAlNiMgなどを使用しても良い。
【0026】
次に第三のフォトリソ工程でソース電極とドレイン電極に対応するレジスト(図示せず)を形成しエッチング工程例えば硝酸セリウムアンモニウムと硝酸の混酸を用いて第二の導電性薄膜をパターニングしてソース電極6、ドレイン電極7を形成する。その後、形成した電極をマスクにして、例えばSFとHClの混合ガスを用いたプラズマを用いてオーミックコンタクト層5をエッチングして薄膜トランジスタを形成する。ここまでの工程で3枚のマスクを使用しているが、シリコンアイランド化とソース電極6、ドレイン電極7およびオーミックコンタクト層5の形成という第二、第三のフォトリソ工程における形成をグレートーンマスク等を利用した処理工程を行う1枚のマスク工程で形成する方法を用いても良い。また、ソース電極6とドレイン電極7の形成のエッチング液として硝酸セリウムアンモニウムと硝酸の混酸を挙げ、オーミックコンタクト層5のエッチングガスとしてSFとHClの混合ガスを挙げたがこの限りではない。この状態の断面図を図5(a)に示す。薄膜トランジスタの特性を向上させるために、この後、パッシベーション膜8を形成する前に水素ガスを用いたプラズマ処理を行い、バックチャネル側、すなわち半導体層4の表面を荒らしてもよい。
【0027】
次にプラズマCVD等の方法で第一のパッシベーション膜8を形成し、第四のフォトリソ工程でドレイン電極7とPドープしたアモルファスシリコン膜9とのコンタクトをとるためのコンタクトホールCH1をレジスト(図示せず)にて形成する。例えばCFとOの混合ガスのプラズマを用いて第一のパッシベーション膜8をエッチングしてパターニングする。この状態の断面図を図5(b)に示す。第一のパッシベーション膜8としては、誘電率の低い酸化珪素(SiO)膜を膜厚200〜400nmで形成する。酸化珪素膜の成膜条件はSiH流量が10〜50sccm、NO流量が200〜500sccm、成膜圧力は50Pa、RFパワーが50〜200W、パワー密度で言うなれば0.015〜0.67W/cm、成膜温度は200〜300℃とした。尚、エッチングガスにCFとOの混合ガスを挙げたがこの限りでは無い。さらには、第一のパッシベーション膜8として酸化珪素を挙げたがこの限りでは無い。SiNやSiONでもよく、この場合は、上記ガスに水素、窒素、NHを加えて形成する。
【0028】
次にプラズマCVD法でフォトダイオードを形成する為のPドープしたアモルファスシリコン膜9、イントリンシックのアモルファスシリコン膜10、Bドープしたアモルファスシリコン膜11を一度も真空を破らずに同一成膜室で順番に成膜する。この時の膜厚はPドープしたアモルファスシリコン膜9の膜厚が30〜80nm、イントリンシックのアモルファスシリコン膜10の膜厚が0.5〜2.0μm、Bドープしたアモルファスシリコン膜11の膜厚が30〜80nmである。イントリンシックのアモルファスシリコン膜10は例えばSiH流量が100〜200sccm、H流量が100〜300sccm、成膜圧力は100〜300Pa、RFパワーが30〜150W、パワー密度で言うなれば0.01〜0.05W/cm、成膜温度は200〜300℃で成膜する。PあるいはBのドープトシリコンはそれぞれ0.2〜1.0%のPHあるいはBを上記成膜条件のガスに混合した成膜ガスで成膜する。
【0029】
Bドープしたアモルファスシリコン膜11は、イオンシャワードーピング方法またはイオン注入方法により、イントリンシックのアモルファスシリコン膜10の上層部にBを注入して形成しても良い。尚、イオン注入を用いてBドープしたアモルファスシリコン膜11を形成する場合、それに先立ってイントリンシックのアモルファスシリコン膜10の表面に膜厚5〜40nmのSiO膜を形成してもよい。これは、Bを注入する際のダメージを軽減させるためである。その場合、イオン注入後にSiO膜をBHF等により除去してもよい。
【0030】
次に例えばIZO、ITZO、ITSO等の非結晶透明導電膜を成膜する。成膜条件は0.3〜0.6Pa、DCパワーは3〜10kW、パワー密度で言うなれば0.65〜2.3W/cm、Ar流量50〜150sccm、酸素流量1〜2sccm、成膜温度は室温から180℃くらいまでで成膜する。非結晶透明導電膜の成膜後、第五のフォトリソ工程でレジスト(図示せず)を形成し例えばシュウ酸を用いてエッチングを行い、パターニングし、透明電極12を形成する。この状態の断面図を図5(c)に示す。尚、エッチング液としてシュウ酸を挙げたがこの限りではない。
【0031】
次に第六のフォトリソ工程で透明電極12のパターンより一回り大きいレジストパターンを形成し、次に例えばSFとHClの混合ガスのプラズマを用いてアモルファスシリコン層すなわち、Pドープしたアモルファスシリコン膜9、イントリンシックのアモルファスシリコン膜10、Bドープしたアモルファスシリコン膜11の3層をパターニングする。これにより、3層構造からなるフォトダイオードが形成される。この状態の断面図を図6(a)に示す。尚、エッチングガスとしてSFとHClの混合ガスを挙げたがこの限りではない。
【0032】
次に、フォトダイオードを保護する為の第二のパッシベーション膜13を成膜した後、第七のフォトリソ工程でソース電極6とデータ配線14とを接続するコンタクトホールCH2、およびフォトダイオードの透明電極12とバイアス線15とを接続するコンタクトホールCH3に対応するレジストパターン(図示せず)を形成し、CFとArの混合ガスを用いたプラズマを用いてコンタクトホールをパターニングする。この時、ゲート配線の端部20と導電パターン21とを接続するコンタクトホールCH4やコンタクトホールCH6を開口してもよい。第二のパッシベーション膜13はデータ配線14とバイアス線15にかかる付加容量を小さくする為に誘電率の低い酸化珪素膜を0.5〜1.5μmの厚膜で成膜する。酸化珪素膜の成膜条件はSiH流量が10〜50sccm、NO流量が200〜500sccm、成膜圧力は50Pa、RFパワーが50〜200W、パワー密度で言うなれば0.015〜0.67W/cm、成膜温度は200〜300℃とした。尚、第二のパッシベーション膜13の材料として酸化珪素膜を挙げたがこの限りではない。SiN等でもよい。また、コンタクトホールの開口の際には、その断面がテーパー形状となるように加工すると上層の被覆性が向上し、断線等を低減できる。
【0033】
次に、データ線14、バイアス線15、および遮光層16を形成する為に、第三の導電性薄膜を成膜する。第三の導電性薄膜としては、抵抗が低く、かつ耐熱性に優れ、かつ透明導電膜とのコンタクト特性に優れたNiを含むAl合金で例えばAlNiNdを膜厚0.5〜1.5μmで成膜する。データ線14、およびバイアス線15はAlNiNd単層でも良く、AlNiNdとMoやMo合金、あるいはCrなどの高融点金属との積層でも良く、また、現像液との反応を抑えるためにAlNiNdの上に窒化したAlNiNdNを形成しても良い。例えばスパッタリング法により下地をMo合金、その上にAlNiNdを連続成膜する。成膜条件は圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言うなれば0.17〜0.43W/cm、成膜温度は室温から180℃ぐらいまでの範囲で行う。
【0034】
次に、第八のフォトリソ工程でデータ線14、バイアス線15、および遮光層16に対応するレジストを形成し、AlNiNdとMoの積層膜の場合は例えば燐酸、硝酸、酢酸の混酸を用いてパターニングする。この状態の断面図を図6(b)に示す。なお、エッチング液としては燐酸と硝酸と酢酸の混酸を挙げたがエッチング液の種類はこの限りではない。
【0035】
次に、データ線14、およびバイアス線15を保護する為に第三のパッシベーション膜17、第四のパッシベーション膜18を形成する。例えば、第三のパッシベーション膜17にSiNを用い、第四のパッシベーション膜18に平坦化膜を用いる。
【0036】
第九のフォトリソ工程で、端子との接続を取る為のコンタクトホールCH5やCH7をレジストにて形成し、CFとOの混合ガスのプラズマを用いてパターニングする。エッチングガスとしてCFとOの混合ガスを挙げたがこの限りでは無い。なお、第四のパッシベーション膜18として感光性を持つ平坦化膜を用いることにより、第9のフォトリソ工程における第四のパッシベーション膜18のパターニングは、露光と現像処理によって行ってもよい。
【0037】
次に端子引き出し電極22となる導電膜を成膜する。電極材料は信頼性を確保する為に例えばアモルファスITOなどの透明導電膜を成膜する。次に第10のフォトリソ工程にて端子形状のレジストを形成し、例えばシュウ酸を用いてエッチングして端子引き出し電極22を形成する。その後、アニールによりITOを結晶化する。ここで、端子引き出し電極22は、図3、4に示すように、コンタクトホールCH5やCH7を介して、導電パターン21や配線の端部24と接続される。
【0038】
尚、本実施例のTFTはアモルファスシリコンを用いた、逆スタガ型のチャネルエッチタイプについて記述したが、ポリシリコンTFTやクリスタルシリコンを用いたMOSを用いても良く、さらにはスイッチング機能をもつ素子とフォトダイオードを組み合わせても良い。
【0039】
上記の様に得られるアレイ基板を用いて、公知の方法によりX線撮像装置などのようなフォトセンサーを製造することも可能である。図示しないが図2に示すパッシベーション膜17の上に例えばCsIからなるX線を可視光に変換するシンチレーターを蒸着により形成し、低ノイズアンプとA/Dコンバーターなどを有するデジタルボード、TFTを駆動するドライバーボード、および電荷を読み出す読み出しボードを接続し、X線撮像装置を作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】フォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の平面図
【図2】フォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の断面図
【図3】端子部の断面図
【図4】端子部の断面図
【図5】フォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の断面図
【図6】フォトセンサーに備えられるTFTアレイ基板の断面図
【符号の説明】
【0041】
1 ガラス基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 半導体層
5 オーミックコンタクト層
6 ソース電極
7 ドレイン電極
8 第一のパッシベーション膜
9 Pドープしたアモルファスシリコン膜
10 アモルファスシリコン膜
11 Bドープしたアモルファスシリコン膜
12 透明電極
13 第二のパッシベーション膜
14 データ線
15 バイアス線
16 遮光層
17 第三のパッシベーション膜
18 第四のパッシベーション膜
20 配線の端部、21 導電パターン
22 端子引き出し電極、23 ショートリング配線
24 配線の端部
CH1〜CH7 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードと薄膜トランジスタをマトリクス状に配置したアクティブマトリクス型のTFTアレイ基板を備えたフォトセンサーであって、
前記薄膜トランジスタは、ゲート電極を有する複数本のゲート配線、前記ゲート電極にゲート絶縁膜を介して設けられた半導体層、前記半導体層に接続するソース電極およびドレイン電極とを備えており、
前記TFTアレイ基板は、前記薄膜トランジスタと、前記ドレイン電極と接続されたフォトダイオードと、前記フォトダイオードの上層に設けられた透明電極と、前記透明電極と接続するバイアス線と、前記ソース電極と接続するデータ線とを備えており、
前記透明電極は酸化物導電性材料からなり、前記バイアス線と前記データ線とは、Niを含むAl合金からなる層を含むことを特徴とするフォトセンサー。
【請求項2】
前記データ線と前記バイアス線との上層に形成されたパッシベーション膜と、前記パッシベーション膜上に設けられた端子引き出し電極と、前記パッシベーション膜に設けられたコンタクトホールとをさらに備え、
前記端子引き出し電極は透明な導電性酸化物を含み、前記コンタクトホールを介して前記データ線または前記バイアス線と接続することを特徴とする請求項1に記載のフォトセンサー。
【請求項3】
前記Niを含むAl合金は、AlNiNd、AlNiSi、AlNiMgのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトセンサー。
【請求項4】
前記ゲート電極と、前記ゲート配線とは、Niを含むAl合金からなる層を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフォトセンサー。
【請求項5】
前記パッシベーション膜の上層にシンチレーターが形成されており、少なくとも低ノイズアンプとA/Dコンバーターを有するデジタルボード、前記薄膜トランジスタを駆動するドライバーボード、および電荷を読み出す読み出しボードが接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフォトセンサー。
【請求項6】
X線を前記シンチレーターにより可視光に変換することによりX線撮像表示を行う機能を有することを特徴とする請求項5に記載のフォトセンサー。
【請求項7】
フォトダイオードと薄膜トランジスタをマトリクス状に配置したアクティブマトリクス型のTFTアレイ基板を備えたフォトセンサーの製造方法であって、
絶縁性基板上に第一の導電性薄膜を成膜してゲート電極、ゲート配線を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ゲート配線と接するようにゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように半導体層を形成する工程と、前記半導体層上にオーミックコンタクト層を形成する工程と、
第二の導電性薄膜を形成する工程と、
前記オーミックコンタクト層を介して前記半導体層と接するように、前記第二の導電性薄膜をソース電極とドレイン電極とに形成する工程と、
前記ドレイン電極と接続するようにBドープしたアモルファスシリコン層と、イントリンシックのアモルファスシリコン層と、Pドープしたアモルファスシリコン層とを積層したフォトダイオードを形成する工程と、
前記Pドープしたアモルファスシリコン層上に透明電極を形成する工程と、
第三の導電性薄膜を成膜する工程と、
前記第三の導電性薄膜をパターニングすることにより、前記透明電極と接続するようにバイアス線を形成し、前記ソース電極と接続するようにソース配線を形成する工程とを備え、
前記第三の導電性薄膜を成膜する工程は、Niを含むAl合金からなる層を成膜する工程を含むことを特徴とするフォトセンサーの製造方法。
【請求項8】
前記データ線と前記バイアス線との上層にコンタクトホールを備えたパッシベーション膜を形成する工程と、前記パッシベーション膜上に端子引き出し電極を形成する工程とをさらに備え、
前記端子引き出し電極を形成する工程においては、前記端子引き出し電極は前記コンタクトホールを介して、前記データ線と前記バイアス線と接続するように形成することを特徴とする請求項7に記載のフォトセンサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−251609(P2008−251609A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87685(P2007−87685)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】