説明

プラズマ処理装置および半導体膜の製造方法

【課題】複数のプラズマの高周波電源の電力を投入することでエネルギー密度を高めるとともに、高周波電力が同時に供給されることによって処理が不均一となる現象を抑制する。
【解決手段】プラズマを発生させる電極120に複数の高周波電源118,119が接続されたプラズマ処理装置であって、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器112,116にはその発振が連続する時間に比べて10%以下の時間の停止と前記停止後に再発振とを繰り返し行わせるリセット回路117を接続したプラズマ処理装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜シリコン太陽電池などに用いられる半導体膜の製造方法とその製造に使用するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜シリコン太陽電池の発電層として、真性(i型)の微結晶シリコン薄膜が広く用いられている。微結晶シリコン薄膜の製造方法としては、シラン(SiH)と水素(H)の混合ガスを用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により基板上に堆積させるのが一般的である。また、これらの膜をプラズマ雰囲気で処理することも行われている。
【0003】
屋外に設置する太陽電池では、1辺が1mを超える大型の基板が用いられることが多い。このような大型の基板の上への半導体膜の製膜や膜処理では、性能の点で基板面内での処理均一性が要求されるだけでなく、生産性の点から製膜や膜処理が高速であることも要求される。
【0004】
プラズマ処理装置で高速な処理を行うには、プラズマを発生させる電力を高めることが重要である。また、従来一般的に用いられることが多かったHF周波数帯(3〜30MHz)よりさらに周波数の高いVHFの周波数帯(30MHz〜300MHz)を用いることがプラズマのエネルギー密度を高めるのに有効であるといわれている。さらに大型基板の処理ではプラズマを発生させるプラズマ電極上で電力が均一化されることも重要である。
【0005】
しかしながら、大型のプラズマ電極を有する装置で電源の周波数をVHFに高めると、定在波が発生して電力分布が不均一になることが知られている。そこで、特許文献1には定在波の発生を原理的になくす方法として、電極に2つの周波数を供給してビートを生じさせる方法が示されている。2つ以上の独立した高周波電源から電力をプラズマ電極に供給すると、周波数の違いによって生じるビートによる変調波は空間的に移動して定在波とならない。通常、たとえば60MHzの電源を2台用意した場合、それぞれに内蔵されている発振器の精度のため、数百kHz程度の周波数の違いがある。したがって、この違いにより非常に簡単なシステムで定在波の発生が抑制できる。1つの高周波電源からの電力が他の高周波電源に入力されて損傷することを防ぐために、保護回路やアイソレーターを用いる。
【0006】
また、特許文献2には大面積基板に均一なプラズマ処理を実施できるプラズマ処理方法として、プラズマ電極の離間した複数の位置に複数のパルス変調された高周波電力を供給する高周波電力供給手段を設けた方法が示されている。二つの高周波電源の高周波電力が互いに干渉しないような時間分割した二種類のパルス変調出力となるように、パルス変調の相対的な位相差を調整する。高周波電力の周波数は10〜30MHzであり、それらを1KHz〜500KHzのパルス周波数で駆動する。二種類のパルス変調の出カデューティー比を30%〜50%の範囲とし、位相差を180°と設定して出力を平均化する。パルス周波数によって膜質が変化することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−274099号公報
【特許文献2】特開2006−216679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2は二つの高周波電源の高周波電力のそれぞれをパルス変調して、それらが互いに干渉しないように、パルスの重なり合う時間を短くしたものである。しかしながら、投入される電力を時間的に平均すると、単一の高周波電源から投入される高周波電力と同程度となり、プラズマのエネルギー密度を高めるのに有効でない。
【0009】
一方、特許文献1の方法では、二つの高周波電源の高周波電力が同時に投入されるのでプラズマのエネルギー密度を高めるのに有効である。しかしながら、高周波電力が同時に供給されることによって、放電が不安定となることがある。たとえば局所的に高い密度の放電が持続して、プラズマ処理が不均一となることがある。
【0010】
そこで、本発明は、複数のプラズマの高周波電源の電力を投入することでエネルギー密度を高めるとともに、高周波電力が同時に供給されることによって処理が不均一となる現象を抑制するプラズマ処理装置、および半導体膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、プラズマを発生させる電極に複数の高周波電源が接続されたプラズマ処理装置であって、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器にはその発振が連続する時間に比べて10%以下の時間の停止と前記停止後に再発振とを繰り返し行わせるリセット回路を接続したプラズマ処理装置である。
【0012】
また、本発明の半導体膜の製造方法は、プラズマを発生させる電極の一方に複数の高周波電源が接続されたプラズマ処理装置に半導体材料ガスを供給して基板上に半導体膜を堆積する半導体膜の製造方法であって、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器に、その発振が連続する時間に比べて10%以下の時間の停止と再発振とのリセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラズマ処理装置は、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器にはその発振が連続する時間に比べて10%以下の短時間の停止と再発振とを繰り返し行わせるリセット回路を接続したので、複数のプラズマの高周波電源の電力を投入することでエネルギー密度を高めるとともに、高周波電力が同時に供給されることによって処理が不均一となる現象を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の半導体膜の製造方法は、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器に、その発振が連続する時間に比べて10%以下の短時間の停止と再発振とのリセット動作を繰り返して行わせるので、複数のプラズマの高周波電源の電力を投入することでエネルギー密度を高めて高速な製膜が可能となるとともに、その製膜の均一性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態1のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。
【図2】本実施の形態1のプラズマ処理装置の部分構成を説明するブロック図である。
【図3】本実施の形態1のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。
【図4】本実施の形態1のプラズマ処理装置で発生する高周波信号波形の概念図である。
【図5】本実施の形態2のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。
【図6】本実施の形態2のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。
【図7】本実施の形態3のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。
【図8】本実施の形態3のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかるプラズマ処理装置および半導体膜の製造方法の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。さらに、実施の形態において同じ構成要素は同じ符号を付し、ある実施の形態において説明した構成要素については、別の実施の形態においてその詳細な説明を略すものとする。
【0017】
<実施の形態1.>
図1は、本実施の形態1のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。処理槽101の内部にアノードとして機能する基板ホルダー102及びカソードとして機能する電極120が互いに対向して配置されている。基板ホルダー102の上面には基板103が載置される。
【0018】
電極120は絶縁部材105を介して処理槽101の壁に取り付けられている。電極120の外寸は、基板ホルダー102に載置される基板103の外寸より大きくされている。本実施の形態1では、電極120はシャワーヘッド104とシャワープレート106とで構成されている。シャワーヘッド104はガス供給口108を介して図示していないガス供給源に接続される。ガス供給口108に供給されたガスGは、シャワーヘッド104とシャワープレート106とで構成されるガス室内を経たのちに、シャワープレート106の多数のガス放出孔から基板ホルダー102上の基板103に向って供給される。
【0019】
基板ホルダー102は、図示していない昇降機構によって昇降可能であり、これにより電極120と基板103との距離はプラズマ放電に適した距離に調節される。基板103に向ってガスを供給しながら基板ホルダー102と電極120との間に高周波電界を印加してプラズマを発生させて基板103に製膜やエッチングなどの処理をおこなう。基板ホルダー102は接地電極としても良い。使用後のガスVは処理槽101の排気口107に接続した図示しない排気装置により処理槽101から外に排気される。
【0020】
電極120は基板103と反対側のシャワーヘッド104が処理槽1より外部に露出する。このシャワーヘッド104の互いに離れた2か所以上の位置に高周波電力を入力する給電点を備える。図は2か所の給電点として第1給電点109、第2給電点113を備える場合を示している。
【0021】
第1給電点109、第2給電点113にはそれぞれ異なる高周波電力供給系から電力が給電される。第1給電点109に接続される第1高周波電力供給系は第1高周波電源118、第1整合器110等で構成される。第2給電点113に接続される第2高周波電力供給系は第2高周波電源119、第2整合器114などで構成される。第1高周波電源118と第2高周波電源119とは互いに独立した高周波電源である。第1高周波電源118は第1発振器112と第1高周波増幅器111とで構成される。第1発振器112により出力された高周波信号は第1高周波増幅器111で増幅されて、第1整合器110を経たのちに第1給電点109に入力される。同様に、第2高周波電源119は第2発振器116と第2高周波増幅器115とで構成される。第2発振器116により出力された高周波信号は第2高周波増幅器115で増幅されて、第2整合器114を経たのちに第2給電点114に入力される。第1発振器112および第2発振器116はいずれも30MHzを超えるVHF帯の信号を発生するものを使用するとよい。また、第1高周波増幅器111と第1給電点109に設置された第1整合器110、第2高周波増幅器115と第2給電点113に設置された第2整合器114は、それぞれの増幅器で増幅された高周波信号が、効率よく電極120に入力されるように、インピーダンスを調整される。
【0022】
なお、第1高周波電源118からの信号のうち一部は電極120、第2給電点113を経て第2高周波電源119側に、また逆に第2高周波電源119からの電極120、第1給電点109を経て第1高周波電源118側に混入して問題となることがある。これを防止するには、図では示さないが、各電源の出力側にアイソレーター等を設置するとよい。
【0023】
以上の構成において、ガス供給口108から、SiHとHとの混合ガスを導入して、第1給電点109、第2給電点113に高周波電力を給電すると、電極120と基板ホルダー102上の基板103との間にプラズマが生成され、基板103上に、たとえば微結晶シリコンなどの半導体膜を形成することができる。また、ガス供給口108にフッ素を含有するガス、たとえばSFなど導入してプラズマを発生させて、シリコンなどの材料をエッチングすることに用いることもできる。VHF帯の信号用いると高密度のプラズマが生成されるので、プラズマ処理を高速に行うことができる。
【0024】
第1発振器112、第2発振器116の少なくともいずれか一方にリセット回路117が接続される。図はリセット回路117を第2発振器116の外部に設置した場合を示す。リセット回路117は発振器の内部に設置されてもよい。このリセット回路117は、第2発振器116中の発振素子の発振を短時間停止させて、再びすぐに発振を開始させる動作を繰り返し行うものである。停止させる時間は発振が連続する時間に比べて10%以下の時間とする。
【0025】
図2は本実施の形態1のプラズマ処理装置の部分構成を説明するブロック図であり。第2発振器116とリセット回路117とを接続した部分の図である。第2発振器116は固体振動子22と発振モジュール21とで構成される。発振モジュール21は内部に帰還型の増幅回路があり、その増幅回路に固体振動子22が接続されて、固体振動子22の固有振動により発振する。固体振動子22は水晶振動子やセラミック発振子等が用いられる。特に水晶振動子を用いたものが発振周波数の精度が非常に高く優れている。
【0026】
発振モジュール21を駆動する電源を供給する駆動電源端子24には、リセット回路117が接続される。リセット回路117は駆動信号26のように、発振器の発振を持続する信号と、その信号に比べて非常に短い期間の発振を停止する信号と、を繰り返して出力する。この駆動信号26に応じて、固体振動子22は発振開始、継続、停止、すぐ再発振、の動作を繰り返す。その結果、発振モジュール21の出力部23から、リセット動作が繰り返された高周波信号27が出力される。一方、第1発振器112はリセット回路が接続されないので連続した発振となる。
【0027】
リセット回路117として、たとえば波形発生器を用いることができる。波形発生器を用いて、所定の期間は一定の電圧が出力させて、その後、所定の短期間は出力電圧をゼロとする波形を繰り返し出力させるとよい。その場合、波形発生器は電圧、電圧出力時間、電圧ゼロ時間を任意に調整できるものが望ましい。
【0028】
図3は本実施の形態1のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。図3(a)は第1高周波電源118から給電される連続した高周波信号である。図3(b)は第2高周波電源119から給電される高周波信号であり、信号のないリセット期間Rと信号が継続する継続期間Sとが交互に繰り返される。リセット期間Rは継続期間Sに比べて充分小さく、継続期間Sの10%以下とするとよく、1%以下とするとさらによく、0.5%よりも短くするとよりよい。また、図3の(b)では、リセット期間R直後の高周波信号が小信号から徐々に大きくなることを示すが、これは第2発振器116の立ち上がり特性によるものである。この、立ち上がり期間では周波数、振幅が変動して安定しないので所定の発振とはならない。固体振動子22が水晶振動子である場合、この立ち上がりに必要な時間は1〜5ミリ秒である。リセット期間Rもこの期間と同程度に短くするとよい。また、立ち上がりの小信号期間をリセット期間Rとしてもよく、その場合はリセット回路117における発振を停止する信号の期間がほぼゼロになる。これらのリセット期間Rや発振の立ち上がり時間はプラズマ処理がほとんど行われないので、継続期間Sよりも充分に短くするとよい。リセット期間Rも1〜5ミリ秒とするのが良い。特に水晶振動子を用いた発振器を用いる場合は継続期間Sを0.1秒以上の長さとするとよい。一方、処理効率を大幅に低下させない範囲でリセット動作を頻繁に繰り返すことが望ましい。このため継続期間Sは1秒以下とすると望ましい。また、継続期間Sやリセット期間Rは固定の周期で繰り返す必要はなく、プラズマ処理中に多数回数のリセット期間Rが含まれるようにするとよい。処理期間中に100回以上のリセット動作がおこなわれることが望ましい。
【0029】
図4は本実施の形態1のプラズマ処理装置で発生する高周波信号波形の概念図である。第1高周波電源118から給電される連続した高周波信号とリセット期間Rを含む第2高周波電源119から給電される高周波信号とが重なり合って図4のような波形となる。なお図において、実線の波形がVHF周波数の波形を示し、そのピークの包絡線の点線がビート波形を示す。実際にはVHF周波数の波形は非常に密であるが図では簡略化している。
【0030】
第1発振器112と第2発振器116は別個の発振器であるので、発生する信号の位相や周波数は独立である。通常、発振器の精度は1ppm程度であり、30MHz以上のVHFの発振器で、数10〜数100Hzのばらつきを有している。任意の2つの発振器どうしには、この程度の発振周波数の違いがあり、2つの異なる周波数を重ね合わせることになってビート信号を発生する。図のように2つの信号が同時に供給される継続期間S1では、2つ信号の周波数差の倍の周波数b1のビート信号となる。ビート信号は数10〜数100Hz程度の周波数で強度が変化する。なお、ビート信号の腹と節の位置は電極120上で順次移動する。一方、リセット期間R1、R2では第1高周波電源118からの信号のみとなる。
【0031】
リセット期間Rは発振器が出力する信号の位相と相関がない。このため、リセット期間R1、R2それぞれの後の継続期間S1、S2では、ビート信号の位相がずれることになる。このように、リセット回路117によるリセット動作によって、一定のビート信号が行われずに、異なる位相のビート信号がランダムに発生し、その信号はリセット期間Rをはさんで不連続的に変化する。ビート信号が一定であればそのエネルギーも一定の変化であるが、本実施の形態1ではリセット期間Rおよびその前後でエネルギーも不連続に変化する。
【0032】
以上のように、本実施の形態1のプラズマ処理装置では、不連続に変化する信号を給電することができる。このため、たとえば、局所的に高い密度の放電が持続して、プラズマ処理が不均一となる場合に、不連続な信号によって、異常な放電をリセットして正常な放電に導く効果がある。とくに異常な放電がビート信号と相関がある場合に効果が顕著となる。その場合リセット期間Rはビート信号の周期以上であるとより効果的である。また、不連続に変化がランダムに繰り返されることで、時間的に平均して均一な処理結果を得ることができる。
【0033】
上記は、2つの高周波電源の信号の周波数差がある程度大きい場合を述べたが、非常に近接した場合、たとえば1Hz以下となった場合に電極120上に定在波と同様の影響が発生することがある。この場合でも、本実施の形態1のプラズマ処理装置によれば、リセット動作により第2発振器116の信号の位相を不連続に変化するので影響を抑制する効果がある。複数の発振器が同時に発振して給電する継続期間S中は相互の位相は変化しないが、いずれかの発振器が発生する信号の位相はリセット期間Rを挟んで不連続に変化することになる。特に固体振動子22を有する発振器では、立ち上がりにおいても位相が変動する。これにより、相互の位相差が断続的にランダムに変化するので干渉の影響が大幅に低減する。
【0034】
上記では2つの高周波電力供給系を備えた場合について述べたが、3つ以上であってもよい。その場合、リセット回路117はいずれか1つの高周波電力供給系に備えられていれば、不連続に信号を変化させることができるので効果がある。また、1つを連続動作して、それ以外をリセット動作させるようにしてもよい。その場合、各信号の位相差が相互にランダムに変化するので、周波数が近接した場合の定在波と同様の影響を低減できる。また、連続動作する高周波電力供給系を備えると、プラズマ放電が着火しにくいような条件でも安定して処理を継続できるので望ましい。
【0035】
次に、本実施の形態1のプラズマ処理装置を用いた半導体膜の製造方法について述べる。図1のプラズマ処理装置に、たとえば基板103として長辺1.4m短辺1.1mのサイズの矩形のガラス基板など基板ホルダー102に設置する。対向する電極120のサイズは長辺1.5m短辺1.2mのサイズとした。薄膜太陽電池用の基板として、透明電極が形成された基板であってもよい。SiHガスを500sccm、Hガスを9500sccm程度混合したガスをガス供給口108に供給する。図とは異なるが、電極120にはその4隅に高周波給電点を配置し、4台の高周波電源から60MHzのVHF高周波電力を給電した。4台のうちの2台は連続動作させ、2台についてリセット回路117を接続して、継続期間Sが0.1秒、リセット期間Rが1ミリ秒のリセット動作を繰り返させた。発振が連続する時間にくらべて停止する時間は1%とした。他の成膜条件は、処理槽101内の圧力を800Pa程度、各高周波電源の高周波電力を3000W、プラズマ電極と基板との距離を5mm、基板ステージ温度を200℃、製膜時間を10分などとした。製膜時間を10分であり、リセットの繰り返し周期がおおよそ0.1秒であるので、100回よりもはるかに多い6000程度のリセット動作が実施される。本条件にてシリコン膜を製膜した結果、基板周辺部と中央部付近の膜厚のばらつきは約10%で、堆積レートの平均は約7nm/秒であった。また、ラマン分光法により見積もった膜の結晶化率はIc/Ia=7.2であり、微結晶シリコンを用いた薄膜太陽電池に適する微結晶シリコン薄膜が得られた。一方、リセット回路117を用いずに、全ての高周波電源を連続動作させると、基板周辺部と中央部付近の膜厚のばらつきは約30%と不均一となった。なお、以上はプラズマ製膜装置に関する場合であるが、プラズマエッチングなどでも同様な効果がある。また、上記例でのガス流量、圧力および電力等のパラメータは一例として示したものであり、記載の値に限定するものではなく、他の条件であっても効果が得られる。
【0036】
以上のように、本発明のプラズマ処理装置は、プラズマを発生させる電極対の一方の電極に複数の高周波電源が接続されたプラズマ処理装置であって、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器にはその発振が連続する時間に比べて10%以下の短時間の停止とその停止後に再発振とを繰り返し行わせるリセット回路を接続した。複数の高周波電源の電力を投入することでエネルギー密度を高めることができる。また、リセット回路のリセット動作によって給電される信号が断続的にランダムに変化するので、高周波電力が同時に供給されることによる成膜が不均一となる現象を抑制することができる。また、位相シフタや位相検出器など等を用いないので装置構成が簡単であり、高速処理に適したプラズマ処理装置を安価に作成することができる。停止の時間は発振が連続する時間に比べて1%以下とするとさらに処理効率が向上できる。また、水晶振動子を有する発振器では停止の時間をその立ち上がり時間と同程度である1〜5ミリ秒とすると、停止の時間を短くしながら再現性の良い処理となる。
【0037】
また、本実施の形態1では少なくとも1つの高周波電源はリセット動作せずに定常的な連続動作を行わせ、他の高周波電源をリセット動作するので、プラズマが連続に発生するので、プラズマの着火ミスも防止できる。
【0038】
本発明のプラズマ処理装置は特に高速な処理が要求される薄膜太陽電池の製膜などに適している。本発明のプラズマ処理装置を用いた半導体膜の製造方法では、プラズマ処理装置の1つの電極に複数の高周波電源が接続され、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器に、その発振が連続する時間に比べて10%以下の短時間の停止と停止後の再発振とからなるリセット動作を繰り返して行わせるので、高速で均一な製膜が可能となる。高周波電源を停止する時間が10%以下の短時間であり、高出力の電力を供給できる。また、停止する時間を発振が連続する時間に比べて1%以下とするとさらに良い。また、水晶振動子を有する発振器では停止の時間をその立ち上がり時間と同程度である1〜5ミリ秒とすると、停止の時間を短くしながら再現性の良い処理となる。製膜期間中に100回以上のリセット動作が行われると、その効果が顕著となる。
【0039】
<実施の形態2.>
図5は本実施の形態2のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。実施の形態1と異なるのは、リセット回路117を第2発振器116だけでなく第1発振器112にも接続した点である。これにより第2高周波電源119と第1高周波電源118とがともにリセット動作されるようにした。この構成により複数の高周波電源のそれぞれの発振が連続する時間と停止する時間とが同時となる。
【0040】
図6は本実施の形態2のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。図6(a)は第1高周波電源118から給電される連続した高周波信号である。図6(b)は第2高周波電源119から給電される高周波信号であり、いずれも信号のないリセット期間Rと信号が継続する継続期間Sとが交互に同時に繰り返される。
【0041】
この構成では、リセット期間R中にプラズマの停止と着火とが繰り返されるので、着火しやすい条件で処理する場合に適している。複数の電力の供給が同様になるので、均一性を高めるのに適している。
【0042】
本実施の形態2でもリセット期間Rを挟んで高周波信号の状態が不連続に変化するので、実施の形態1で述べたのと同様な効果がある。また、一旦プラズマが消えるので、異常な放電が起きた場合に正常化する効果がさらに顕著である。また、リセット期間Rや発振の立ち上がり時間はVHFの周期に比べてはるかに長い。同時にリセット動作しても、第1発振器112と第2発振器116との位相はリセット期間Rを挟んで互いに相関なく変化する。このため、周波数が近い場合に起こる定常波と同様な影響も抑制できる。
【0043】
<実施の形態3.>
図7は、本実施の形態3のプラズマ処理装置の構成を説明するブロック断面図である。実施の形態1と異なるのは、第1発振器112にリセット回路217を接続した点である。リセット回路217は第2発振器116に接続したリセット回路117とは独立に第1発振器112をリセット動作させる。この構成により複数の高周波電源のそれぞれの発振が連続する時間と停止する時間とが相互にずれるようにした。
【0044】
図8は本実施の形態3のプラズマ処理装置に入力される高周波信号の概念図である。図8(a)は第1高周波電源118から給電される連続した高周波信号である。図8(b)は第2高周波電源119から給電される高周波信号である。それぞれの高周波電源に独立にリセット回路を設けたことにより、第1発振器112のリセット期間Raと第2発振器116のリセット期間Rbとがずれるので、重ね合わせた際に第1発振器112の継続期間Saや第2発振器116の継続期間Sbの途中にそれぞれ不連続な変化が起こる。不連続な変化の回数が頻繁となるので実施の形態1の効果が顕著になる。
【0045】
なお、異なる駆動信号を発生する1台のリセット回路を第1発振器112と第2発振器116に接続してそのリセット期間が異なるようにしてもよい。3台以上の高周波電源を備える場合に、そのリセット期間Rが相互に重なり合わなわないようにすると、不連続回数を多くできるので望ましい。
【0046】
なお、本発明の主旨を逸脱しない範囲で上記の実施の形態に種々の変更を行ってもよい。たとえば電極の形状や構造などを変更しても本実施の効果が得られる。また、ある実施の形態内に記載した内容を技術的に不都合が生じない範囲内で他の実施の形態に書かれた構成に置き換えたり、組み合わせたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように本発明のプラズマ処理装置は、高速で均一なプラズマ処理に適している。また、半導体膜の製造方法は、高速で均一な製膜が要求される薄膜太陽電池の製造に適している。
【符号の説明】
【0048】
21 発振モジュール、22 固体振動子、23 出力部、24 駆動電源端子、26 駆動信号、27 高周波信号、101 処理槽、102 基板ホルダー、103 基板、104 シャワーヘッド、105 絶縁部材、106 シャワープレート、107 排気口、108 ガス供給口、109 第1給電点、110 第1整合器、111 第1高周波増幅器、112 第1発振器、113 第2給電点、114 第2整合器、115 第2高周波増幅器、116 第2発振器、117 リセット回路、118 第1高周波電源、119 第2高周波電源、120 電極、217 リセット回路、G 供給されたガス、V 使用後のガス、R、R1、R2、Ra、Rb リセット期間、S、S1、S2、Sa、Sb 継続期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生させる電極に複数の高周波電源が接続されたプラズマ処理装置であって、いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器にはその発振が連続する時間に比べて10%以下の時間の停止と前記停止後に再発振とを繰り返し行わせるリセット回路を接続したプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記停止の時間は前記発振が連続する時間の1%以下であるプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記発振器は水晶振動子を有し、前記停止の時間は1〜5ミリ秒の範囲であるプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置であって、
複数の高周波電源のうち、1つの高周波電源の発振器にはリセット回路が接続されず、他の高周波電源の発振器にはリセット回路が接続されるプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数の高周波電源の発振器に、それぞれの発振が連続する時間と停止する時間とを同時とする前記リセット回路が接続されるプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数の高周波電源の発振器に、それぞれの発振が連続する時間と停止する時間とを相互にずらす前記リセット回路が接続されるプラズマ処理装置。
【請求項7】
プラズマを発生させる電極に複数の高周波電源が接続されたプラズマ処理装置に半導体材料ガスを供給して基板上に半導体膜を堆積する半導体膜の製造方法であって、
いずれかの高周波電源の高周波信号を生成する発振器に、その発振が連続する時間に比べて10%以下の時間の停止と前記停止後の再発振とからなるリセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体膜の製造方法であって、
前記停止の時間は前記発振が連続する時間の1%以下とする半導体膜の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の半導体膜の製造方法であって、
基板に半導体膜を堆積する製膜時間中に100回以上のリセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法であって、
前記発振器は水晶振動子を有し、前記停止の時間は1〜5ミリ秒の範囲である半導体膜の製造方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法であって、
少なくとも1つの高周波電源は連続発振させて、他の高周波電源は前記リセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法。
【請求項12】
請求項7から10のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法であって、
複数の高周波電源のそれぞれの発振が連続する時間と停止する時間とが同時となるように前記リセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法。
【請求項13】
請求項7から10のいずれか1項に記載の半導体膜の製造方法であって、
複数の高周波電源のそれぞれの発振が連続する時間と停止する時間とが相互にずれるように前記リセット動作を繰り返して行わせることを特徴とする半導体膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29069(P2011−29069A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175321(P2009−175321)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】