不揮発性半導体記憶装置
【課題】データリテンションの特性を向上しつつ消去動作や書き込み動作に要する時間を短縮する。
【解決手段】
不揮発性半導体記憶装置は、第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備える。制御回路は、複数のメモリセルに対して印加する電圧を制御する。制御回路は、複数のメモリセルに対し消去動作を実行する場合に、第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルを除いた第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、第2書き込み領域のメモリセル及び第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御する。
【解決手段】
不揮発性半導体記憶装置は、第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備える。制御回路は、複数のメモリセルに対して印加する電圧を制御する。制御回路は、複数のメモリセルに対し消去動作を実行する場合に、第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルを除いた第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、第2書き込み領域のメモリセル及び第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板上の2次元平面内に素子を集積して、LSIが形成されてきた。メモリの記憶容量を増加させるには、一素子の寸法を小さくする(微細化する)のが一般的だが、近年その微細化もコスト的、技術的に困難なものになってきた。微細化のためにはフォトリソグラフィの技術向上が必要であるが、リソグラフィ工程に要するコストは増加の一途を辿っている。また、仮に微細化が達成されたとしても、駆動電圧などがスケーリングされない限り、素子間の耐圧など物理的な限界点を迎える事が予想される。つまり、デバイスとしての動作が困難になる可能性が高い。
【0003】
そこで、近年、メモリの集積度を高めるために、メモリセルを3次元的に配置した不揮発性半導体記憶装置(積層型の不揮発性半導体記憶装置)が多数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−525933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、データリテンションの特性を向上しつつ消去動作や書き込み動作に要する時間を短縮できる不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に説明する実施の形態の不揮発性半導体記憶装置は、第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備える。制御回路は、複数のメモリセルに対して印加する電圧を制御する。制御回路は、複数のメモリセルに対し消去動作を実行する場合に、第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルを除いた第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、第2書き込み領域のメモリセル及び第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成について説明する。
【図2】図1に示すメモリセルアレイ11の一部の概略斜視図である。
【図3】メモリセルアレイ11の等価回路図である。
【図4】図3に示した回路構成を実現するメモリセルアレイ11の積層構造について説明する。
【図5】図4の一部の拡大図である。
【図6】メモリストリングMS中に定義される通常書き込み領域と高速書き込み領域を説明する概念図である。
【図7】通常書き込み領域、高速書き込み領域においてそれぞれ実行される消去動作を示す。
【図8】通常書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図9】高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図10】高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図11】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、通常書き込み領域、高速書き込み領域においてそれぞれ実行される消去動作を示す。
【図12】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、通常書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図13】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図14】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図15A】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。
【図15B】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。
【図16】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置において、高速書き込み領域で実行される書き込み動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の実施形態について説明する。
【0009】
[第1の実施の形態]
[構成]
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置のブロック図である。
【0010】
第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図1に示すように、メモリセルアレイ11、ロウデコーダ12、データ回路・ページバッファ13、カラムデコーダ14、制御回路15、入出力回路16、アドレス・コマンドレジスタ17、内部電圧発生回路18、およびコアドライバ19を備える。
【0011】
メモリセルアレイ11は、図2に示すように、カラム方向に延びた複数のビット線BLと、ビット線BLに交差するロウ方向に延びた複数のソース線CELSRCと、電気的に書き換え可能な複数のメモリセルMTrを直列に接続されたメモリストリングMSを有する。メモリセルアレイ11は、図2に示すように、データを電気的に記憶するメモリセルMTrを3次元マトリクス状に配列して構成される。すなわち、メモリセルMTrは、積層方向にマトリクス状に配列されるとともに、積層方向に直交する水平方向にも配列される。積層方向に並ぶ複数個のメモリセルMTrは直列接続され、メモリストリングMSを構成する。
【0012】
メモリストリングMSの両端には選択時に導通状態とされるドレイン側選択トランジスタSDTr、ソース側選択トランジスタSSTrが接続される。このメモリストリングMSは、積層方向を長手方向として配列される。ドレイン側選択トランジスタSDTrの一端は、ビット線BLに接続される。ソース側選択トランジスタSSTrの一端は、ソース線CELSRCに接続される。
【0013】
ロウデコーダ12は、図1に示すように、アドレス・コマンドレジスタ17から入力されたブロックアドレス信号等をデコードし、またコアドライバ19から出力されるワード線制御信号や選択ゲート制御信号を受けて、メモリセルアレイ11を制御する。データ回路・ページバッファ13は、読み出し動作時にはメモリセルアレイ11からデータを読み出し、ページバッファにデータを一時的に保持する。また、書き込み動作時にはチップ外部から書き込みデータがページバッファにロードされた後、ページバッファとデータ回路が連携して選択されたメモリセルにデータを書き込む。カラムデコーダ14は、アドレス・コマンドレジスタ17から入力されたカラムアドレス信号をデコードし、データの入出力制御を行う。制御回路15は、アドレス・コマンドレジスタ17から読み出し・書き込み・消去動作等を実行する信号を受けて、所定のシーケンスに従って、コア動作に必要な種々の電圧を発生する内部電圧発生回路18を制御したり、ワード線やビット線制御の制御を司るコアドライバ19を制御する。入出力回路16は、コマンド・アドレス・データの入出力制御を行う。この不揮発性半導体記憶装置には、高速書き込み領域と通常書き込み領域が設けられており、それぞれの領域で行われる消去動作は、互いに異なっている。詳しくは後述する。
【0014】
次に、図3を参照して、メモリセルアレイ11の回路構成について説明する。図3は、メモリセルアレイ11のカラム方向の断面に沿って形成されるメモリセルMTr、ドレイン側選択トランジスタSDTr、ソース側選択トランジスタSSTr、及びその周辺回路の等価回路図である。
【0015】
メモリセルアレイ11は、図3に示すように、複数のビット線BL、及び複数のメモリブロックMBを有する。ビット線BLは、ロウ方向に所定ピッチをもってカラム方向に複数のメモリブロックMBに跨るように延びるストライプ状に形成されている。メモリブロックMBは、所定ピッチをもってカラム方向に繰り返し設けられている。
【0016】
メモリブロックMBは、図3に示すように、ロウ方向及びロウ方向と直交するカラム方向にマトリクス状に配列された複数のメモリユニットMUを有する。メモリブロックMBにおいて、一本のビット線BLには、共通接続された複数のメモリユニットMUが設けられている。メモリユニットMUは、メモリストリングMS、ソース側選択トランジスタSSTr、及びドレイン側選択トランジスタSDTrを有する。カラム方向に隣接するメモリユニットMUは、その構成がカラム方向に互いに対称となるように形成されている。メモリユニットMUは、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に配列されている。ロウ方向において一列に並ぶ複数のメモリユニットMUは、1つのサブブロックSBを構成する。
【0017】
メモリストリングMSは、直列接続されたメモリセルMTr0〜MTr15、及びバックゲートトランジスタBTrにて構成されている。メモリセルMTr0〜MTr7は、積層方向に直列に接続されている。メモリセルMTr8〜MTr15も、同様に積層方向に直列に接続されている。メモリセルMTr0〜MTr15は、電荷蓄積層に電荷を蓄積させることで、情報を記憶する。
【0018】
バックゲートトランジスタBTrは、最下層のメモリセルMTr7とメモリセルMTr8との間に接続されている。従って、メモリセルMTr0〜MTr15、及びバックゲートトランジスタBTrは、カラム方向に沿った断面においてU字形状に接続されている。ソース側選択トランジスタSSTrのドレインは、メモリストリングMSの他端(メモリセルMTr0のソース)に接続されている。ドレイン側選択トランジスタSDTrのソースは、メモリストリングMSの一端(メモリセルMTr15のドレイン)に接続されている。
【0019】
メモリユニットMUにおいて、1つのメモリブロックMB中のメモリセルMTr0のゲートは、ワード線WL0に共通接続されている。同様に、1つのメモリブロックMB中のメモリセルMTr1〜MTr15のゲートは、ワード線WL1〜WL15に共通接続されている。また、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に配列されたバックゲートトランジスタBTrのゲートは、バックゲート線BGに共通接続されている。
【0020】
メモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ドレイン側選択トランジスタSDTrのゲートは、ロウ方向に延びるドレイン側選択ゲート線SGDに共通接続されている。また、カラム方向に一列に配列されたドレイン側選択トランジスタSDTrのドレインは、ビット線BLに共通に接続されている。
【0021】
メモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ソース側選択トランジスタSSTrのゲートは、ロウ方向に延びるソース側選択ゲート線SGSに共通接続されている。また、カラム方向に隣接する一対のメモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列されたソース側選択トランジスタSSTrのソースは、ロウ方向に延びるソース線CELSRCに共通に接続されている。
【0022】
次に、図4を参照して、図3に示した回路構成を実現するメモリセルアレイ11の積層構造について説明する。図4は、第1実施形態に係るメモリセルアレイ11の断面図であり、図5は、図4の一部の拡大図である。
【0023】
メモリセルアレイ11は、図4に示すように、基板20、下層から順に、バックゲート層30、メモリセル層40、選択トランジスタ層50、及び配線層60を有する。バックゲート層30は、バックゲートトランジスタBTrとして機能する。メモリセル層40は、メモリセルMTr0〜MTr15として機能する。選択トランジスタ層50は、ドレイン側選択トランジスタSDTr、及びソース側選択トランジスタSSTrとして機能する。配線層60は、ソース線CELSRC及びビット線BLとして機能する。
【0024】
バックゲート層30は、図4に示すように、基板20の上に絶縁層21を介して形成されたバックゲート導電層31を有する。バックゲート導電層31は、バックゲート線BG、及びバックゲートトランジスタBTrのゲートとして機能する。バックゲート導電層31は、ロウ方向及びカラム方向に広がる板状に形成されている。バックゲート導電層31は、後述するU字状半導体層45の連結部45Bの下面及び側面を覆い且つ連結部45Bの上面と同じ高さまで形成されている。バックゲート導電層31は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0025】
また、バックゲート層30は、図4に示すように、バックゲート導電層31を堀込むように形成されたバックゲート溝32を有する。バックゲート溝32は、ロウ方向に短手方向、カラム方向に長手方向を有する開口にて構成されている。バックゲート溝32は、ロウ方向及びカラム方向に所定間隔毎にマトリクス状に形成されている。
【0026】
メモリセル層40は、図4に示すように、積層方向に絶縁層42を介して形成されたワード線導電層41a〜41dを有する。ワード線導電層41a〜41dは、ワード線WL0〜WL15、及びメモリセルMTr0〜MTr15の制御ゲートとして機能する。ワード線導電層41a〜41dは、メモリブロックMB毎に分断され、ロウ方向に対向する一対の櫛歯状に形成されている。あるいは、メモリユニットMU毎に、ワード線WLが独立に駆動になるよう、ワード線導電層41a〜41dも1つのメモリユニット毎に独立のコンタクトに接続されていてもよい。
ワード線導電層41a〜41dは、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成された部分を有する。ワード線導電層41a〜41dは、ポリシリコン(poly−Si)あるいはポリサイドにて構成されている。
【0027】
また、メモリセル層40は、図4に示すように、ワード線導電層41a〜41d、及び絶縁層42を貫通するように形成されたメモリホール43を有する。
【0028】
メモリホール43は、各バックゲート溝32のカラム方向の両端近傍の位置に整合するように形成されている。メモリホール43は、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に形成されている。
【0029】
また、上記バックゲートトランジスタ層30及びメモリセル層40は、図4に示すように、メモリゲート絶縁層44、及びU字状半導体層45を有する。U字状半導体層45は、メモリセルMTr0〜MTr15及びバックゲートトランジスタBTrのボディとして機能する。
【0030】
メモリゲート絶縁層44は、図4に示すように、メモリホール43、及びバックゲート溝32に面する側面に、メモリセル間においても分断されず、連続的に形成されている。メモリゲート絶縁層44は、図5に示すように、ブロック絶縁層44a、電荷蓄積層44b、及びトンネル絶縁層44cにて構成されている。ブロック絶縁層44aは、メモリホール43、及びバックゲート溝32に面する側面に亘ってワード線導電層41a〜41d及びバックゲート導電層31と接するように形成されている。ブロック絶縁層44aは、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。電荷蓄積層44bは、ブロック絶縁層44aの側面に形成されている。電荷絶縁層44bは、電荷を蓄積し、メモリセルMTr0〜MTr15のデータを保有するために用いられる。電荷蓄積層44bは、窒化シリコン(SiN)にて構成されている。トンネル絶縁層44cは、電荷蓄積層44bの側面に形成されている。トンネル絶縁層44cは、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。
【0031】
U字状半導体層45は、図4に示すように、ロウ方向からみてU字状に形成されている。U字状半導体層45は、図5に示すように、トンネル絶縁層44cに接し且つバックゲート溝32及びメモリホール43を埋めるように形成されている。U字状半導体層45は、ロウ方向からみて基板20に対して垂直方向に延びる一対の柱状部45A、及び一対の柱状部45Aの下端を連結させるように形成された連結部45Bを有する。U字状半導体層45は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0032】
上記メモリセル層40の構成を換言すると、トンネル絶縁層44cは、柱状部45Aの側面を取り囲むように形成されている。電荷蓄積層44bは、トンネル絶縁層44cの側面を取り囲むように形成されている。ブロック絶縁層44aは、電荷蓄積層44bの側面を取り囲むように形成されている。ワード線導電層41a〜41dは、ブロック絶縁層44aの側面を取り囲むように形成されている。なお、電荷蓄積層44bは、ワード線導電層41a〜41dの側面だけでなく、それらの間の層間絶縁膜の側面にも形成され、柱状部45aの側面に上下方向に連続的に形成されている。ブロック絶縁層44a、トンネル絶縁層44cも同様である。
【0033】
選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側導電層51、及びそのドレイン側導電層51と同層に形成されたソース側導電層52を有する。ドレイン側導電層51は、ドレイン側選択ゲート線SGD、及びドレイン側選択トランジスタSDTrのゲート電極として機能する。ソース側導電層52は、ソース側選択ゲート線SGS、及びソース側選択トランジスタSSTrのゲート電極として機能する。
【0034】
ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成されている。ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、カラム方向に2つずつ交互に設けられている。ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0035】
また、選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側ホール53、及びソース側ホール54を有する。ドレイン側ホール53は、ドレイン側導電層51を貫通するように形成されている。ソース側ホール54は、ソース側導電層52を貫通するように形成されている。ドレイン側ホール53及びソース側ホール54は、メモリホール43に整合する位置に形成されている。
【0036】
また、選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側ゲート絶縁層55、ソース側ゲート絶縁層56、ドレイン側柱状半導体層57、及びソース側柱状半導体層58を有する。ドレイン側柱状半導体層57は、ドレイン側選択トランジスタSDTrのボディとして機能する。ソース側柱状半導体層58は、ソース側選択トランジスタSSTrのボディと機能する。
【0037】
ドレイン側ゲート絶縁層55は、ドレイン側ホール53に面する側面に形成されている。ソース側ゲート絶縁層56は、ソース側ホール54に面する側面に形成されている。ドレイン側ゲート絶縁層55及びソース側ゲート絶縁層56は、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。
【0038】
ドレイン側柱状半導体層57は、ドレイン側ホール53を埋めるように、ドレイン側ゲート絶縁層55と接して積層方向に延びる柱状に形成されている。ソース側柱状半導体層58は、ソース側ホール54を埋めるように、ソース側ゲート絶縁層56と接して積層方向に延びる柱状に形成されている。ドレイン側柱状半導体層57、及びソース側柱状半導体層58は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0039】
上記選択トランジスタ層50の構成を換言すると、ドレイン側ゲート絶縁層55は、ドレイン側柱状半導体層57の側面を取り囲むように形成されている。ドレイン側導電層51は、ドレイン側ゲート絶縁層55の側面を取り囲むように形成されている。ソース側ゲート絶縁層56は、ソース側柱状半導体層58の側面を取り囲むように形成されている。ソース側導電層52は、ソース側ゲート絶縁層56の側面を取り囲むように形成されている。
【0040】
配線層60は、図4に示すように、第1配線層61、第2配線層62、及びプラグ層63を有する。第1配線層61は、ソース線CELSRCとして機能する。第2配線層62は、ビット線BLとして機能する。
【0041】
第1配線層61は、図4に示すように、隣接する2本のソース側柱状半導体層58の上面に共通に接するように形成されている。第1配線層61は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成されている。第1配線層61は、タングステン(W)等の金属にて構成されている。
【0042】
第2配線層62は、図4に示すように、プラグ層63を介してドレイン側柱状半導体層57の上面に接続されている。第2配線層62は、ロウ方向に所定ピッチをもってカラム方向に延びるストライプ状に形成されている。第2配線層62は、銅(Cu)、プラグ層63は、タングステン(W)等の金属にて構成されている。
【0043】
この不揮発性半導体記憶装置では、メモリセルアレイ11中において、通常書き込み領域と、高速書き込み領域とが定義されている。例えば図6に示すように、1メモリストリングMS中で、ワード線WL0およびWL1に沿ったメモリセルMC0およびMC1が高速書き込み領域(第1書込み領域)として定義され、ワード線WL2〜15に沿ったメモリセルMC2〜MC15が通常書き込み領域(第2書き込み領域)として定義される。
【0044】
図7〜図9は、両書き込み領域における消去動作、書き込み動作の違いを説明する概念図である。書き込み動作完了後においては、データ”1”(消去状態)を示す閾値電圧分布E’又はデータ”0”を示す閾値電圧分布Aのいずれかが1つのメモリセルMCに与えられているものとする。閾値電圧分布E’は、消去動作により閾値電圧分布Eが得られた後、このような閾値電圧分布Eを有するメモリセルに対し弱い書き込み動作を行うことにより得られる分布である。すなわち、閾値電圧分布Eは、閾値電圧分布E’よりも低い分布である。
ここで、閾値電圧分布E’を与える必要性と、そのような閾値電圧分布E’を得るための制御方法について説明する。本実施の形態では、メモリセル構造の一例として、電荷蓄積層44bがメモリストリングMSの長手方向のメモリセルMC間でも分断されず繋がっているセルアレイ構造を挙げている。このようなセルアレイ構造において、あるメモリセルMTriが消去動作を受けた後閾値電圧分布Eに維持され、これによりメモリセルMTriの電荷蓄積層44bにホール(正孔)がトラップされている一方、それに隣接するメモリセルMTri+1が書き込み動作の対象とされ電荷蓄積層44bに電子がトラップされている場合を考える。この場合、メモリセルMTri+1の電荷蓄積層44bにトラップされている電子は、隣接するメモリセルMtriの電荷蓄積層44bにトラップされたホールの影響を受けてメモリセルMTri側に引き寄せられメモリセルMTri+1の電荷蓄積膜から抜け出し易くなる。その結果、書き込み状態にあったメモリセルMTri+1の閾値電圧が低下しやすくなりデータリテンション特性の悪化に繋がる。そこで、このような現象を緩和する一つの対策として、書き込み状態のメモリセルMTri+1に隣接するメモリセルMTri+1の電荷蓄積膜にホールが存在しないようにすることが有効であると考えられる。すなわち、データを書き込んだメモリセルMTri+1とメモリストリングMSの長手方向において隣接するメモリセルMTriには、その電荷蓄積層44bにホールが存在しない状態を保証する制御方法を採用する。ここで、メモリセルMTrで、1ビット/セル(2値記憶セル)の記憶方式を実行する場合には、メモリセルMTrは“1”と“0”の2状態のいずれかを保持する。また、2ビット/セル(4値記憶セル)の記憶方式を実行する場合には、メモリセルMTrは“11”/“10”/“00”/“01”の4状態のいずれかを保持する。いずれの記憶方式を実行する場合にも、複数の状態のうちのいずれか一つの状態、例えば最も低い閾値電圧分布を有する状態(例えば“1”状態または“11”状態)を消去状態に設定するが、その消去状態のメモリセルの閾値電圧分布は、隣接メモリセルのデータリテンションを悪化させないような所定レベルに設定される。そのように制御された消去状態の分布を、以下では閾値電圧分布E’と称する。
以下に通常書き込み領域、高速書き込み領域のそれぞれにおける書き込み動作、消去動作の制御方法を説明する。通常書き込み領域のメモリセルと高速書き込み領域のメモリセルとが同等のデータリテンション特性をもつように、通常書き込み領域又は高速書き込み領域に存在するメモリセルMTriにデータを書き終えた後には、メモリストリングMSの長手方向において隣接するメモリセルMTri+1には閾値電圧分布E’分布以上の閾値電圧分布が与えられるよう、メモリセルMTr+1の電圧印加が制御される。
【0045】
この場合において、通常書き込み領域における消去動作では、閾値電圧分布A及びE’を有するメモリセルの閾値電圧を、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eに移行させる(図7の動作(1))。この積層型不揮発性メモリの消去動作は、セルソースCELSRCに消去電圧Veraを印加し、ソース側選択ゲート線SGSのレベルを所定電圧に制御することによってSSTrのソース端でGIDL(Gate Induced Drain Current)を引き起こし、そこで発生したホールによって柱状半導体層58および57を充電してメモリセルのチャネル側を消去電圧Veraに高める一方、制御ゲートには電圧Veraよりも低い電圧(例えば接地電圧Vss)を印加することにより行う。ここで、消去動作の単位は、前述した複数のメモリセルユニットMUからなるブロックMBとなり、これらを基本的にはほぼ同一の消去電圧Veraと選択ワード線電圧の関係で、同時に消去する。後述の書き込み動作で行うようなビット毎制御による個々のメモリセルの精細な制御ができないため、消去後の閾値電圧分布Eの分布幅は個々のメモリセルのばらつきを反映した広い分布幅となり、閾値電圧分布Eを狭い分布とすることが難しい。この消去動作後の閾値電圧分布Eは、データ“1”に相当するものであるが、データ“1”の分布として完成していない状態の分布と考えることができる。
【0046】
一方、高速書き込み領域における消去動作では、動作(1)に加え、メモリセルの閾値電圧分布が、消去動作後の閾値電圧分布Eから、所定の正の値をもった閾値電圧分布E’に変わるよう弱書き込み動作(図7の動作(2))を行う。この正の閾値電圧分布E’は、前述の消去動作後の閾値電圧分布Eから弱い書きこみ動作を行って、閾値電圧分布Eを正方向に移動させて得られる分布である。この閾値電圧分布E’には、メモリセルの消去状態(データ”1”)が割り当てられており、これが消去状態の閾値電圧分布の完成形となる。閾値電圧分布E’の書き込み時間は、書き込み方法や閾値電圧分布幅の割り当てに依存するが、図7に示すような2値の動作であれば、ページ毎に300μS程度かかる。したがって、(1)の消去動作自体に1.5msかかるとすると、消去時間の合計は、高速書き込み領域が2ページある場合には、2.4ms(=1.5ms+(2+1)*300us)、10ページある場合には、4.8ms(=1.5ms+(10+1)*300us)に達する。このように、消去動作に関しては、高速書き込み領域における消去時間は、通常書き込み領域における消去時間よりも長くなる。
【0047】
通常書き込み領域における書き込み動作は、図8に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、通常書き込み領域内(WL2〜15)のメモリセルの殆どは、閾値電圧分布Eを有している。この状態から、データ”1”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布EからE’に移行させる書き込み動作を実行する(図8の動作(3)))一方、データ”0”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布Eから閾値電圧分布Aに移行させる書き込み動作(図8の動作(4))を実行する。
【0048】
ここで、図8は、1本の選択ワード線WL上にある複数のメモリセルの書き込みについて着目した図になっている。このようなデータ書き込みがメモリストリングMSの長手方向に隣接する複数のメモリセルに対して連続して行われる場合には問題ない。しかし、1本のワード線のみの書き込みであったり、連続したページ書込みの最後のページへの書き込みである場合には、選択メモリセルに隣接するセルの閾値電圧が閾値電圧分布Eとなることがある。前述のように、閾値電圧分布Eを書き込まれたメモリセルと、書き込み動作後の閾値電圧分布A,B,Cを書き込まれたメモリセルとが隣接すると、データリテンション特性が悪化して信頼性上問題となる。したがって、上記の場合には、選択メモリセル自身の書き込みだけでなく、何らかの方法で、隣接メモリセルに閾値電圧分布E’を書き込む手段、制御があるものと仮定する。
【0049】
一方、高速書き込み領域における書き込み動作は、図9に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、高速書き込み領域内の全てのメモリセルは、閾値電圧分布Eよりも大きい閾値電圧分布E’を有している。この状態から、データ”1”を書き込みたいメモリセルでは、閾値電圧分布E’を維持するべく、書き込み禁止動作が行われる。一方、データ”0”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布E’から閾値電圧分布Aに移行させる書き込み動作が実行される。データ”1”を書き込みたいメモリセルにおいて書き込みのための電圧印加動作が不要であるため、書き込み動作の速度は、図8の場合より図9の場合の方が速くなる。つまり、高速書き込み領域における書き込み動作は、通常書き込み領域における書き込み動作に比べ、得るべき閾値電圧分布の数が少ないため(前者は1個、後者は2個)、書き込みスピードがおよそ2倍程度向上する。
なお、メモリストリングMSへの書き込み動作は、従来のNAND型フラッシュメモリと同様に、ソース線CELSRC側のメモリセルMC0を最初に書き込みセルとして選択し、以下順にビット線BLに近付く順に書き込みを実行するという順序で実行される。上記のように、1つのメモリセルに1ビットのデータを記憶する場合、1本のワード線WLi(i=0〜15)に沿った複数のメモリセルMCiに記憶されるデータは、1ページを構成する。これら1つのページには、1つのページデータが割り当てられる。本実施の形態では、図10に示すように、1本のメモリストリングMS中の高速書き込み領域に対応するワード線WL0に沿った複数のメモリセルMC0が、1つのページPAGE0を構成する。同様に、ワード線WL1に沿った複数のメモリセルMC1が、1つのページPAGE1を構成する。高速書き込み領域のみ選択して書き込みを行う場合には、図10に示すように、各メモリストリングMS内での書き込み順に従いページ選択をしつつ、その後適宜アドレス入力を行って別のメモリストリングを選択して、同様に高速書き込み領域のページ選択を行う。
なお、ワード線WL2の沿った複数のメモリセルMC2は、通常書き込み領域(WL2〜15)内に存在し且つ高速書き込み領域(WL0〜1)に隣接するメモリセルである。このメモリセルMC2は、他の通常書き込み領域内のメモリセルMC3〜15とは異なり(高速書き込み領域内のメモリセルMC0、MC1と同様に)、消去動作時において、消去動作後に閾値電圧分布Eから閾値電圧分布E’への弱書き込み動作の対象とされる。通常書き込み領域でありながら消去動作時において閾値電圧分布E’を書き込む必要がある理由は、以下の通りである。高速書き込み領域においては、書き込み時にどのワード線を選択した場合においても、その隣のワード線に沿ったメモリセルにおいて閾値電圧分布EからE’への書き込みが必要ないようにすることが求められる。そのような書き込みが必要になると、高速書き込み領域における書き込み速度が低下してしまうからである。前述のように、データ書き込みを行ったメモリセルの隣のメモリセルは、データリテンション特性の改善のため、閾値電圧分布EでなくE’を有している必要がある。しかし、高速書き込み領域の端部のメモリセルMCheに書き込みをする場合に、隣接する通常書き込み領域中のメモリセルMCneが閾値電圧分布Eを有していると、このため高速書き込み領域のメモリセルMCheへのデータ書き込みと共に、メモリセルMCneでの閾値電圧分布EからE’への弱書き込み動作も必要になってしまう。これでは、高速書き込み領域での書き込み速度が低下してしまう。このため、メモリセルMCneには、消去動作時において、閾値電圧分布EをE’に変える弱書き込み動作を実行している。
【0050】
この高速書き込み領域のアドレス空間上の位置及び範囲は、この不揮発性記憶装置を利用するメモリーコントローラを含むメモリシステムの性能がもっとも向上するように設定される。よって、高速書き込み領域は、ブロックの中で、所定の1ページだけ(先頭ページ、最終ページ、あるいは所定のページ)でもよいし、所定ページ連続した領域(先頭ページから所定数、最終ページから所定数、あるいは所定ページから所定数)であってもよい。例えば、ブロックを消去する際に実際に消去動作を行わずに消去可能ブロックとしてフラグを書き込むメモリ制御方法がある。このように、データサイズは大きい必要はないが、所定のメモリアクセス情報を確実には速く書きこみたい場合に、上記先頭ページや最終ページに設定した小領域の高速書き込み領域が有効利用される。高速書き込み領域では、隣接セルの隣接セルも含めてあらかじめ閾値電圧分布E’が書き込まれているため、特にデータリテンション特性に関しては信頼性を満たし、かつ、書き込みが通常領域よりも速いメリットがある。
また、高速書き込み領域を所望のサイズにすることで、例えば、高いスループットで一時的にメモリセルアレイ内に書き込むデータバッファ領域として活用することができる。
【0051】
図7〜図9では、1つのメモリセルに1ビット(2値)のデータが記憶される例を説明したが、1つのメモリセルに2ビット以上のデータを記憶させる場合にも、同様の動作が実行可能である。図11〜図13は、1つのメモリセルに2ビット(4値)のデータを記憶する場合における、通常書き込み領域と高速書き込み領域とにおける消去動作及び書き込み動作を概念的に示している。
書き込み動作完了後においては、閾値電圧分布E’、A,B,Cのいずれかが1つのメモリセルに与えられる。閾値電圧分布E’が2ビットデータ”11”(消去状態)に対応し、閾値電圧分布A,B,Cがそれぞれ例えばデータ”10”、”01”、”00”に対応している。
【0052】
この場合において、通常書き込み領域における消去動作では、図11に示すように、閾値電圧分布E’、A,B,またはCを有するメモリセルの閾値電圧を、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eとなるまで消去動作を実行する(図11の動作(1))。一方、高速書き込み領域における消去動作では、動作(1)に加え、閾値電圧分布Eを所定の正の値を有する閾値電圧分布E’に移行させる弱書き込み動作(図11の動作(2))を行う。
【0053】
通常書き込み領域における書き込み動作は、図12に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、通常書き込み領域内の全てのメモリトランジスタは、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eを有している。この状態から、データ”11”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布EからE’に移行させる書き込み動作を実行する(図12の動作(3)))。一方、データ”10”、”01”、及び”00”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布Eから閾値電圧分布A,B,Cに移行させる書き込み動作(図12の動作(4))を実行する。
【0054】
一方、高速書き込み領域における書き込み動作は、図13に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、高速書き込み領域内の全てのメモリセルは、すでに閾値電圧分布E’を有している。この状態から、データ”11”を書き込みたいメモリセルでは、閾値電圧分布E’を維持するべく、書き込み禁止動作が行われる。一方、データ”10”、”01”、及び”00”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布E’から閾値電圧分布A,B,Cに移行させる書き込み動作が実行される。データ”11”を書き込みたいメモリセルにおいて書き込みのための電圧印加動作が不要であるため、書き込み動作の速度は、図12の場合より図13の場合の方が速くなる。つまり、高速書き込み領域における書き込み動作は、通常書き込み領域における書き込み動作に比べ、得るべき閾値電圧分布の数が少ないため(前者は3個、後者は4個)、書き込みスピードがおよそ4/3倍程度向上する。
【0055】
なお、図12、図13に示すような2ビット/セルの書き込み動作においては、1本のワード線WLi(i=0〜15)に沿った複数のメモリセルMCiに記憶されるデータは、2ページを構成する。従って、図12、図13に示すような2ビット/セルの書き込み動作においては、図14に示すように、1本のメモリストリングMS中の高速書き込み領域に対応するワード線WL0に沿った複数のメモリセルMC0が、2つのページPAGE0,1を構成する。同様に、ワード線WL1に沿った複数のメモリセルMC1が、2つのページPAGE2、3を構成する。高速書き込み領域のみに連続して書き込み動作を実行する場合には、図14に示すように、所望のブロックアドレスおよび所定の高速書き込み領域に対応するページアドレスを指定してアクセスする。
以上説明したように、本実施の形態によれば、1ビット/セル、2ビット/セルまたはそれ以上の多値記憶動作を行う積層型の不揮発性半導体記憶装置において、通常書き込み領域と閾値電圧制御の異なる高速書き込み領域を有することによって、データの信頼性を劣化させずに高速なデータ書き込みを行うことができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
次に、図15A及び図15Bを参照して、第2の実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置を説明する。全体構成は図1に示すのと同様である。ただし、この実施の形態では、図15Aに示すように、メモリストリングMSの一端とドレイン側選択トランジスタSDTr又はソース側選択トランジスタSSTrとの間にダミーメモリセルDMCD、DMCSを更に備えている。ダミーメモリセルDMCD、DMCSは、いずれもメモリセルMCと同一の構造を有しているが、データの記憶には用いられない。そのゲートにはダミーワード線WLDD,WLDSが接続されている。その他は、第1の実施の形態と同様である。
また、図15Bに示すように、バックゲートトランジスタBTrのドレイン側とソース側の隣接セルがそれぞれダミーメモリセルDMCBD、DMCBSとなって、そのゲートにはそれぞれダミーワード線WLBD、WLBSが接続される構成となってもよい。これらのダミーセルもメモリセルと同一の構造を有しているが、データの記憶には用いられないものとする。
ダミーメモリセルDMCD、DMCS、DMCBD,DMCBSは、消去パルス印加動作時において、データを記憶するメモリセルと同様の消去バイアス、または、データを記憶するメモリセルの消去動作のために最適化された所定のバイアス印加を受けて閾値電圧が消去動作後の閾値電圧分布Eと同程度までに低下する可能性があるが、高速書き込み領域と同様に、消去動作中に弱書き込み動作が行われて、閾値電圧が分布E’と同程度になるように制御される。これにより、ダミーセルトランジスタDMCD、DMCS、DMCBD,DMCBSの電荷蓄積膜には、ホールがほとんど存在しない状態に制御されることになる。このようにすることにより、ダミーセルトランジスタの電荷蓄積膜に保持されたホールが流出して隣接するメモリセルMCの電荷蓄積膜に保持された電子と打ち消しあうことがなくなり、ダミーセルをメモリユニット内に挿入した場合においても、データ記憶用のメモリセルのデータリテンションの特性を向上させることができる。
【0057】
[第3の実施の形態]
次に、図16を参照して、第3の実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置を説明する。全体構成は図1に示すのと同様である。また、この実施の形態では、第2の実施の形態と同様のダミーメモリセルDMCD、DMCS、および、DMCBD,DMCBSを備えている。
この第3の実施の形態の特徴は、消去動作時における最小単位が、メモリブロックよりも小さいサブブロックとされている点である。そして、サブブロック単位での消去動作に対応して、高速書き込み領域の配置が前述の実施の形態とは異なっている。
【0058】
第1及び第2の実施の形態では、一つのメモリブロックが消去単位であることを前提としていたが、図16に示す第3の実施の形態では、4個のサブブロックSB0〜SB3のいずれかが最小消去単位として選択可能とされるものとする。また、図16において、同じワード線WLiの符号が与えられているものは、配線の共有化によって物理的に直接接続された状態となっているか、もしくは共有はされないが電気的に接続されているものとする。
【0059】
選択ゲート線については、図16においては、サブブロックSB0〜3の各々が固有のドレイン側選択ゲート線SGD_0〜3、ソース側選択ゲート線SGS(SGS_0〜3)を有し、独立に制御が可能な構成とされている。しかし、これに限らずサブブロックSB0〜3で同一の選択ゲート線SGD、SGSを共有し、回路の制御方法によって、各サブブロックを個別制御とすることも共通制御とすることも可能なように構成してもよい。
【0060】
本実施の形態において、4個のサブブロックSB0〜3を同時に消去するためには、例えばソース側選択ゲート線SGS_0〜3に消去のためのGIDL電流を引き起こす所定電位が同時に印加されることが必要となる。消去動作時において、そのような構成や制御方法によって、複数のサブブロックSB_0〜3に共通の消去バイアスが印加されると、4個のサブブロックを同時に消去することができる。
【0061】
サブブロックSBを最小消去単位とする場合、サブブロック単位の消去動作に最適なページアドレス割り当てがあり、高速書き込み領域もそのページアドレスの割り当てに沿ったものであることが望ましい。このとき、NANDストリング型構造をもつメモリセルの書込み特性について考えると、主に2種類の書き込みディスターブがある。一つは、選択されたNANDストリングの中の非選択メモリセルにおける書き込みパス電圧VPASSによるストレスであり、もう一つは、書き込み動作時に選択された選択メモリセルが書き込み禁止状態(”1”書き込み)になった場合のストレスである。
【0062】
第1の書き込みディスターブは、次のようにして生じる。まず、データ書き込みのためにビット線BLに電圧(例えば0V)が印加される。そして、この0Vを選択メモリセルのチャネルに転送するため、NANDストリング内の非選択メモリセルの制御ゲートには、書き込みパス電圧VPASS(例えば10V)が印加される。第1の書き込みディスターブは、書き込みパス電圧VPASSとチャネルに印加される電圧0Vとにより生じる。
また、第2の書き込みディスターブは、次のようにして生じる。選択メモリセルが最初から書き込み禁止状態であるか、書き込み動作の途中から書き込み状態から書き込み禁止状態に切り替えられる場合に、選択メモリセルの制御ゲートには、書き込み電圧VPGM(例えば20V)が印加される。選択されたNANDストリングのチャネルは、例えば電源電圧Vddまで充電された後、ドレイン側選択ゲートトランジスタSDTrがカットオフされることにより、フローティング状態となる。選択されたNANDストリング内の非選択ワード線に書き込みパス電圧VPASSが印加されると、この電圧VPASSによって、フローティング状態であるチャネルの電位が上昇する。この電位の上昇により、書き込みディスターブが引き起こされ得る。
第1、第2の書き込みディスターブともに書込みパス電圧VPASSの最適化が必要であり、第1の書き込みディスターブにより、書き込みパス電圧VPASSの上限値が決定され、第2の書き込みディスターブにより、書き込みパス電圧VPASSの下限値が決定される。
更に、書き込みディスターブは、NANDストリング内のデータの書き込み状態によっても特性が大きく変わる。書き込み禁止状態のNANDストリングにおける第2の書き込みディスターブを考慮すると、NANDストリング内のチャネル電位を効率よく、できるだけ高く上昇させることが望ましい。そのためには、書込み電圧Vpgmがワード線に印加される場合に、できるだけ多くのメモリセルが消去状態にあることが望ましい。なぜなら、セルの閾値電圧が低いほど、非選択ワード線を書き込みパス電圧VPASSに立ち上げる際に、非選択ワード線の電位が低い状態からチャネル電位に作用して大きなカップリングを与えられるからである。したがって、NANDストリング内にデータが書き込まれてしまってから、延々と書き込みストレスが印加され続ける状態は、書き込みディスターブの観点で好ましくない。
【0063】
本実施の形態においては、1本のワード線WLが複数のサブブロックSB間で共有され、あるいは、ワード線WLは複数のサブブロックSB間で共有されないがそれぞれのワード線WLが電気的に同電位となる制御が行われる場合を想定している。上記の書き込みディスターブの観点で望ましいページ割り当てを考えると、複数のサブブロック(NANDストリング)の書き込みが同程度に進行していくことが望ましい。
すなわち、本実施の形態における書き込み動作では、図16に示すように、メモリブロックMB中の複数のサブブロックSB0〜3の各々のワード線WL0に沿ったメモリセルMC0が、サブブロック番号の若い順(SB0→SB1→SB2→SB3)に書き込まれる。全てのサブブロックSBにおいてワード線WL0への書き込みが終了したら、次は各サブブロックSB0〜3のワード線WL1に沿ったメモリセルMC1が、サブブロック番号の若い順に書き込まれていく。以後、同様にして、書き込みが進められる。
【0064】
上記の説明は、最小消去単位がサブブロックSBにより構成され、かつ、複数のサブブロックSB中でワード線WLが共有されるか、或いは共有はされないが同時に駆動される場合におけるページアドレスの割り当て、及びび書き込み順に関する基本的な考え方を説明したものである。そこで、高速書き込み領域は、割り当てられたページアドレスを考慮して、メモリシステムの性能が最も向上するように設定すればよい。消去ブロックの先頭ページから所定の連続ページを高速書き込み領域に設定する場合、例えば、図16に示すとおり、サブブロックSB0のWL0からSB3のWL1を高速書き込み領域と定義することができる。
1つのメモリセルに複数ビットのデータを記憶する場合にも、多値記憶になることによる論理ページの増加分を考慮しながら同様にしてページアドレスを割り当てることができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上記の実施の形態では、1メモリストリング中で、電荷蓄積膜がメモリセル間でも分断されず連続して形成されるものの例として、半導体層がU字型の積層型メモリセルアレイを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1メモリストリング中で、複数のメモリセルが半導体基板に垂直な積層方向に一直線状に配列されたI字型の積層型メモリセルも、本発明とその均等の範囲に含まれ得る。また、全てのメモリセルが半導体基板上に形成された平面型のメモリセルアレイであっても、電荷蓄積層が同様にメモリセル間でも分断されず連続的に形成されているものである場合には、本発明が適用され得る。
【0067】
また、上記の実施の形態では、通常書き込み領域に対する書き込み動作において、消去状態を維持すべき全てのメモリセルに対し閾値電圧分布EからE’に移行させる弱書き込み動作を行っている。しかし、必ずしもこの弱書き込み動作(E→E’)を全てのメモリセルについて実行する必要はない。例えば、あるメモリセルが消去状態を維持すべきメモリセルMCcがあり、そのメモリセルMCcに隣接するメモリセルも消去状態を維持すべきトランジスタである場合を考える。この場合には、そのメモリセルMCcに対しては弱書き込み動作を実行せず、閾値電圧分布Eのまま維持してもよい。すなわち、弱書き込み動作は、閾値電圧分布A,B、またはCまで書き込まれるメモリセルに隣接し、且つ消去状態を維持すべきメモリセルにのみ実行することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
MS…メモリストリング、 MTr、MTr1〜MTr8…メモリセル、 SDTr…ドレイン側選択トランジスタ、 SSTr…ソース側選択トランジスタ、 BTr…バックゲートトランジスタ、 20…基板、 30…バックゲート層、 40…メモリセル層、 50…選択トランジスタ層、 60…配線層。
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板上の2次元平面内に素子を集積して、LSIが形成されてきた。メモリの記憶容量を増加させるには、一素子の寸法を小さくする(微細化する)のが一般的だが、近年その微細化もコスト的、技術的に困難なものになってきた。微細化のためにはフォトリソグラフィの技術向上が必要であるが、リソグラフィ工程に要するコストは増加の一途を辿っている。また、仮に微細化が達成されたとしても、駆動電圧などがスケーリングされない限り、素子間の耐圧など物理的な限界点を迎える事が予想される。つまり、デバイスとしての動作が困難になる可能性が高い。
【0003】
そこで、近年、メモリの集積度を高めるために、メモリセルを3次元的に配置した不揮発性半導体記憶装置(積層型の不揮発性半導体記憶装置)が多数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−525933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、データリテンションの特性を向上しつつ消去動作や書き込み動作に要する時間を短縮できる不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に説明する実施の形態の不揮発性半導体記憶装置は、第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを備える。制御回路は、複数のメモリセルに対して印加する電圧を制御する。制御回路は、複数のメモリセルに対し消去動作を実行する場合に、第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルを除いた第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、第2書き込み領域のメモリセル及び第2書き込み領域のメモリセルに隣接する第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成について説明する。
【図2】図1に示すメモリセルアレイ11の一部の概略斜視図である。
【図3】メモリセルアレイ11の等価回路図である。
【図4】図3に示した回路構成を実現するメモリセルアレイ11の積層構造について説明する。
【図5】図4の一部の拡大図である。
【図6】メモリストリングMS中に定義される通常書き込み領域と高速書き込み領域を説明する概念図である。
【図7】通常書き込み領域、高速書き込み領域においてそれぞれ実行される消去動作を示す。
【図8】通常書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図9】高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図10】高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図11】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、通常書き込み領域、高速書き込み領域においてそれぞれ実行される消去動作を示す。
【図12】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、通常書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図13】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図14】1つのメモリセルMTrに2ビットのデータを記憶させる場合において、高速書き込み領域において実行される書き込み動作を示す。
【図15A】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。
【図15B】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。
【図16】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置において、高速書き込み領域で実行される書き込み動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の実施形態について説明する。
【0009】
[第1の実施の形態]
[構成]
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置のブロック図である。
【0010】
第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図1に示すように、メモリセルアレイ11、ロウデコーダ12、データ回路・ページバッファ13、カラムデコーダ14、制御回路15、入出力回路16、アドレス・コマンドレジスタ17、内部電圧発生回路18、およびコアドライバ19を備える。
【0011】
メモリセルアレイ11は、図2に示すように、カラム方向に延びた複数のビット線BLと、ビット線BLに交差するロウ方向に延びた複数のソース線CELSRCと、電気的に書き換え可能な複数のメモリセルMTrを直列に接続されたメモリストリングMSを有する。メモリセルアレイ11は、図2に示すように、データを電気的に記憶するメモリセルMTrを3次元マトリクス状に配列して構成される。すなわち、メモリセルMTrは、積層方向にマトリクス状に配列されるとともに、積層方向に直交する水平方向にも配列される。積層方向に並ぶ複数個のメモリセルMTrは直列接続され、メモリストリングMSを構成する。
【0012】
メモリストリングMSの両端には選択時に導通状態とされるドレイン側選択トランジスタSDTr、ソース側選択トランジスタSSTrが接続される。このメモリストリングMSは、積層方向を長手方向として配列される。ドレイン側選択トランジスタSDTrの一端は、ビット線BLに接続される。ソース側選択トランジスタSSTrの一端は、ソース線CELSRCに接続される。
【0013】
ロウデコーダ12は、図1に示すように、アドレス・コマンドレジスタ17から入力されたブロックアドレス信号等をデコードし、またコアドライバ19から出力されるワード線制御信号や選択ゲート制御信号を受けて、メモリセルアレイ11を制御する。データ回路・ページバッファ13は、読み出し動作時にはメモリセルアレイ11からデータを読み出し、ページバッファにデータを一時的に保持する。また、書き込み動作時にはチップ外部から書き込みデータがページバッファにロードされた後、ページバッファとデータ回路が連携して選択されたメモリセルにデータを書き込む。カラムデコーダ14は、アドレス・コマンドレジスタ17から入力されたカラムアドレス信号をデコードし、データの入出力制御を行う。制御回路15は、アドレス・コマンドレジスタ17から読み出し・書き込み・消去動作等を実行する信号を受けて、所定のシーケンスに従って、コア動作に必要な種々の電圧を発生する内部電圧発生回路18を制御したり、ワード線やビット線制御の制御を司るコアドライバ19を制御する。入出力回路16は、コマンド・アドレス・データの入出力制御を行う。この不揮発性半導体記憶装置には、高速書き込み領域と通常書き込み領域が設けられており、それぞれの領域で行われる消去動作は、互いに異なっている。詳しくは後述する。
【0014】
次に、図3を参照して、メモリセルアレイ11の回路構成について説明する。図3は、メモリセルアレイ11のカラム方向の断面に沿って形成されるメモリセルMTr、ドレイン側選択トランジスタSDTr、ソース側選択トランジスタSSTr、及びその周辺回路の等価回路図である。
【0015】
メモリセルアレイ11は、図3に示すように、複数のビット線BL、及び複数のメモリブロックMBを有する。ビット線BLは、ロウ方向に所定ピッチをもってカラム方向に複数のメモリブロックMBに跨るように延びるストライプ状に形成されている。メモリブロックMBは、所定ピッチをもってカラム方向に繰り返し設けられている。
【0016】
メモリブロックMBは、図3に示すように、ロウ方向及びロウ方向と直交するカラム方向にマトリクス状に配列された複数のメモリユニットMUを有する。メモリブロックMBにおいて、一本のビット線BLには、共通接続された複数のメモリユニットMUが設けられている。メモリユニットMUは、メモリストリングMS、ソース側選択トランジスタSSTr、及びドレイン側選択トランジスタSDTrを有する。カラム方向に隣接するメモリユニットMUは、その構成がカラム方向に互いに対称となるように形成されている。メモリユニットMUは、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に配列されている。ロウ方向において一列に並ぶ複数のメモリユニットMUは、1つのサブブロックSBを構成する。
【0017】
メモリストリングMSは、直列接続されたメモリセルMTr0〜MTr15、及びバックゲートトランジスタBTrにて構成されている。メモリセルMTr0〜MTr7は、積層方向に直列に接続されている。メモリセルMTr8〜MTr15も、同様に積層方向に直列に接続されている。メモリセルMTr0〜MTr15は、電荷蓄積層に電荷を蓄積させることで、情報を記憶する。
【0018】
バックゲートトランジスタBTrは、最下層のメモリセルMTr7とメモリセルMTr8との間に接続されている。従って、メモリセルMTr0〜MTr15、及びバックゲートトランジスタBTrは、カラム方向に沿った断面においてU字形状に接続されている。ソース側選択トランジスタSSTrのドレインは、メモリストリングMSの他端(メモリセルMTr0のソース)に接続されている。ドレイン側選択トランジスタSDTrのソースは、メモリストリングMSの一端(メモリセルMTr15のドレイン)に接続されている。
【0019】
メモリユニットMUにおいて、1つのメモリブロックMB中のメモリセルMTr0のゲートは、ワード線WL0に共通接続されている。同様に、1つのメモリブロックMB中のメモリセルMTr1〜MTr15のゲートは、ワード線WL1〜WL15に共通接続されている。また、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に配列されたバックゲートトランジスタBTrのゲートは、バックゲート線BGに共通接続されている。
【0020】
メモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ドレイン側選択トランジスタSDTrのゲートは、ロウ方向に延びるドレイン側選択ゲート線SGDに共通接続されている。また、カラム方向に一列に配列されたドレイン側選択トランジスタSDTrのドレインは、ビット線BLに共通に接続されている。
【0021】
メモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ソース側選択トランジスタSSTrのゲートは、ロウ方向に延びるソース側選択ゲート線SGSに共通接続されている。また、カラム方向に隣接する一対のメモリユニットMUにおいて、ロウ方向に一列に配列されたソース側選択トランジスタSSTrのソースは、ロウ方向に延びるソース線CELSRCに共通に接続されている。
【0022】
次に、図4を参照して、図3に示した回路構成を実現するメモリセルアレイ11の積層構造について説明する。図4は、第1実施形態に係るメモリセルアレイ11の断面図であり、図5は、図4の一部の拡大図である。
【0023】
メモリセルアレイ11は、図4に示すように、基板20、下層から順に、バックゲート層30、メモリセル層40、選択トランジスタ層50、及び配線層60を有する。バックゲート層30は、バックゲートトランジスタBTrとして機能する。メモリセル層40は、メモリセルMTr0〜MTr15として機能する。選択トランジスタ層50は、ドレイン側選択トランジスタSDTr、及びソース側選択トランジスタSSTrとして機能する。配線層60は、ソース線CELSRC及びビット線BLとして機能する。
【0024】
バックゲート層30は、図4に示すように、基板20の上に絶縁層21を介して形成されたバックゲート導電層31を有する。バックゲート導電層31は、バックゲート線BG、及びバックゲートトランジスタBTrのゲートとして機能する。バックゲート導電層31は、ロウ方向及びカラム方向に広がる板状に形成されている。バックゲート導電層31は、後述するU字状半導体層45の連結部45Bの下面及び側面を覆い且つ連結部45Bの上面と同じ高さまで形成されている。バックゲート導電層31は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0025】
また、バックゲート層30は、図4に示すように、バックゲート導電層31を堀込むように形成されたバックゲート溝32を有する。バックゲート溝32は、ロウ方向に短手方向、カラム方向に長手方向を有する開口にて構成されている。バックゲート溝32は、ロウ方向及びカラム方向に所定間隔毎にマトリクス状に形成されている。
【0026】
メモリセル層40は、図4に示すように、積層方向に絶縁層42を介して形成されたワード線導電層41a〜41dを有する。ワード線導電層41a〜41dは、ワード線WL0〜WL15、及びメモリセルMTr0〜MTr15の制御ゲートとして機能する。ワード線導電層41a〜41dは、メモリブロックMB毎に分断され、ロウ方向に対向する一対の櫛歯状に形成されている。あるいは、メモリユニットMU毎に、ワード線WLが独立に駆動になるよう、ワード線導電層41a〜41dも1つのメモリユニット毎に独立のコンタクトに接続されていてもよい。
ワード線導電層41a〜41dは、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成された部分を有する。ワード線導電層41a〜41dは、ポリシリコン(poly−Si)あるいはポリサイドにて構成されている。
【0027】
また、メモリセル層40は、図4に示すように、ワード線導電層41a〜41d、及び絶縁層42を貫通するように形成されたメモリホール43を有する。
【0028】
メモリホール43は、各バックゲート溝32のカラム方向の両端近傍の位置に整合するように形成されている。メモリホール43は、ロウ方向及びカラム方向にマトリクス状に形成されている。
【0029】
また、上記バックゲートトランジスタ層30及びメモリセル層40は、図4に示すように、メモリゲート絶縁層44、及びU字状半導体層45を有する。U字状半導体層45は、メモリセルMTr0〜MTr15及びバックゲートトランジスタBTrのボディとして機能する。
【0030】
メモリゲート絶縁層44は、図4に示すように、メモリホール43、及びバックゲート溝32に面する側面に、メモリセル間においても分断されず、連続的に形成されている。メモリゲート絶縁層44は、図5に示すように、ブロック絶縁層44a、電荷蓄積層44b、及びトンネル絶縁層44cにて構成されている。ブロック絶縁層44aは、メモリホール43、及びバックゲート溝32に面する側面に亘ってワード線導電層41a〜41d及びバックゲート導電層31と接するように形成されている。ブロック絶縁層44aは、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。電荷蓄積層44bは、ブロック絶縁層44aの側面に形成されている。電荷絶縁層44bは、電荷を蓄積し、メモリセルMTr0〜MTr15のデータを保有するために用いられる。電荷蓄積層44bは、窒化シリコン(SiN)にて構成されている。トンネル絶縁層44cは、電荷蓄積層44bの側面に形成されている。トンネル絶縁層44cは、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。
【0031】
U字状半導体層45は、図4に示すように、ロウ方向からみてU字状に形成されている。U字状半導体層45は、図5に示すように、トンネル絶縁層44cに接し且つバックゲート溝32及びメモリホール43を埋めるように形成されている。U字状半導体層45は、ロウ方向からみて基板20に対して垂直方向に延びる一対の柱状部45A、及び一対の柱状部45Aの下端を連結させるように形成された連結部45Bを有する。U字状半導体層45は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0032】
上記メモリセル層40の構成を換言すると、トンネル絶縁層44cは、柱状部45Aの側面を取り囲むように形成されている。電荷蓄積層44bは、トンネル絶縁層44cの側面を取り囲むように形成されている。ブロック絶縁層44aは、電荷蓄積層44bの側面を取り囲むように形成されている。ワード線導電層41a〜41dは、ブロック絶縁層44aの側面を取り囲むように形成されている。なお、電荷蓄積層44bは、ワード線導電層41a〜41dの側面だけでなく、それらの間の層間絶縁膜の側面にも形成され、柱状部45aの側面に上下方向に連続的に形成されている。ブロック絶縁層44a、トンネル絶縁層44cも同様である。
【0033】
選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側導電層51、及びそのドレイン側導電層51と同層に形成されたソース側導電層52を有する。ドレイン側導電層51は、ドレイン側選択ゲート線SGD、及びドレイン側選択トランジスタSDTrのゲート電極として機能する。ソース側導電層52は、ソース側選択ゲート線SGS、及びソース側選択トランジスタSSTrのゲート電極として機能する。
【0034】
ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成されている。ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、カラム方向に2つずつ交互に設けられている。ドレイン側導電層51、及びソース側導電層52は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0035】
また、選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側ホール53、及びソース側ホール54を有する。ドレイン側ホール53は、ドレイン側導電層51を貫通するように形成されている。ソース側ホール54は、ソース側導電層52を貫通するように形成されている。ドレイン側ホール53及びソース側ホール54は、メモリホール43に整合する位置に形成されている。
【0036】
また、選択トランジスタ層50は、図4に示すように、ドレイン側ゲート絶縁層55、ソース側ゲート絶縁層56、ドレイン側柱状半導体層57、及びソース側柱状半導体層58を有する。ドレイン側柱状半導体層57は、ドレイン側選択トランジスタSDTrのボディとして機能する。ソース側柱状半導体層58は、ソース側選択トランジスタSSTrのボディと機能する。
【0037】
ドレイン側ゲート絶縁層55は、ドレイン側ホール53に面する側面に形成されている。ソース側ゲート絶縁層56は、ソース側ホール54に面する側面に形成されている。ドレイン側ゲート絶縁層55及びソース側ゲート絶縁層56は、酸化シリコン(SiO2)にて構成されている。
【0038】
ドレイン側柱状半導体層57は、ドレイン側ホール53を埋めるように、ドレイン側ゲート絶縁層55と接して積層方向に延びる柱状に形成されている。ソース側柱状半導体層58は、ソース側ホール54を埋めるように、ソース側ゲート絶縁層56と接して積層方向に延びる柱状に形成されている。ドレイン側柱状半導体層57、及びソース側柱状半導体層58は、ポリシリコン(poly−Si)にて構成されている。
【0039】
上記選択トランジスタ層50の構成を換言すると、ドレイン側ゲート絶縁層55は、ドレイン側柱状半導体層57の側面を取り囲むように形成されている。ドレイン側導電層51は、ドレイン側ゲート絶縁層55の側面を取り囲むように形成されている。ソース側ゲート絶縁層56は、ソース側柱状半導体層58の側面を取り囲むように形成されている。ソース側導電層52は、ソース側ゲート絶縁層56の側面を取り囲むように形成されている。
【0040】
配線層60は、図4に示すように、第1配線層61、第2配線層62、及びプラグ層63を有する。第1配線層61は、ソース線CELSRCとして機能する。第2配線層62は、ビット線BLとして機能する。
【0041】
第1配線層61は、図4に示すように、隣接する2本のソース側柱状半導体層58の上面に共通に接するように形成されている。第1配線層61は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に形成されている。第1配線層61は、タングステン(W)等の金属にて構成されている。
【0042】
第2配線層62は、図4に示すように、プラグ層63を介してドレイン側柱状半導体層57の上面に接続されている。第2配線層62は、ロウ方向に所定ピッチをもってカラム方向に延びるストライプ状に形成されている。第2配線層62は、銅(Cu)、プラグ層63は、タングステン(W)等の金属にて構成されている。
【0043】
この不揮発性半導体記憶装置では、メモリセルアレイ11中において、通常書き込み領域と、高速書き込み領域とが定義されている。例えば図6に示すように、1メモリストリングMS中で、ワード線WL0およびWL1に沿ったメモリセルMC0およびMC1が高速書き込み領域(第1書込み領域)として定義され、ワード線WL2〜15に沿ったメモリセルMC2〜MC15が通常書き込み領域(第2書き込み領域)として定義される。
【0044】
図7〜図9は、両書き込み領域における消去動作、書き込み動作の違いを説明する概念図である。書き込み動作完了後においては、データ”1”(消去状態)を示す閾値電圧分布E’又はデータ”0”を示す閾値電圧分布Aのいずれかが1つのメモリセルMCに与えられているものとする。閾値電圧分布E’は、消去動作により閾値電圧分布Eが得られた後、このような閾値電圧分布Eを有するメモリセルに対し弱い書き込み動作を行うことにより得られる分布である。すなわち、閾値電圧分布Eは、閾値電圧分布E’よりも低い分布である。
ここで、閾値電圧分布E’を与える必要性と、そのような閾値電圧分布E’を得るための制御方法について説明する。本実施の形態では、メモリセル構造の一例として、電荷蓄積層44bがメモリストリングMSの長手方向のメモリセルMC間でも分断されず繋がっているセルアレイ構造を挙げている。このようなセルアレイ構造において、あるメモリセルMTriが消去動作を受けた後閾値電圧分布Eに維持され、これによりメモリセルMTriの電荷蓄積層44bにホール(正孔)がトラップされている一方、それに隣接するメモリセルMTri+1が書き込み動作の対象とされ電荷蓄積層44bに電子がトラップされている場合を考える。この場合、メモリセルMTri+1の電荷蓄積層44bにトラップされている電子は、隣接するメモリセルMtriの電荷蓄積層44bにトラップされたホールの影響を受けてメモリセルMTri側に引き寄せられメモリセルMTri+1の電荷蓄積膜から抜け出し易くなる。その結果、書き込み状態にあったメモリセルMTri+1の閾値電圧が低下しやすくなりデータリテンション特性の悪化に繋がる。そこで、このような現象を緩和する一つの対策として、書き込み状態のメモリセルMTri+1に隣接するメモリセルMTri+1の電荷蓄積膜にホールが存在しないようにすることが有効であると考えられる。すなわち、データを書き込んだメモリセルMTri+1とメモリストリングMSの長手方向において隣接するメモリセルMTriには、その電荷蓄積層44bにホールが存在しない状態を保証する制御方法を採用する。ここで、メモリセルMTrで、1ビット/セル(2値記憶セル)の記憶方式を実行する場合には、メモリセルMTrは“1”と“0”の2状態のいずれかを保持する。また、2ビット/セル(4値記憶セル)の記憶方式を実行する場合には、メモリセルMTrは“11”/“10”/“00”/“01”の4状態のいずれかを保持する。いずれの記憶方式を実行する場合にも、複数の状態のうちのいずれか一つの状態、例えば最も低い閾値電圧分布を有する状態(例えば“1”状態または“11”状態)を消去状態に設定するが、その消去状態のメモリセルの閾値電圧分布は、隣接メモリセルのデータリテンションを悪化させないような所定レベルに設定される。そのように制御された消去状態の分布を、以下では閾値電圧分布E’と称する。
以下に通常書き込み領域、高速書き込み領域のそれぞれにおける書き込み動作、消去動作の制御方法を説明する。通常書き込み領域のメモリセルと高速書き込み領域のメモリセルとが同等のデータリテンション特性をもつように、通常書き込み領域又は高速書き込み領域に存在するメモリセルMTriにデータを書き終えた後には、メモリストリングMSの長手方向において隣接するメモリセルMTri+1には閾値電圧分布E’分布以上の閾値電圧分布が与えられるよう、メモリセルMTr+1の電圧印加が制御される。
【0045】
この場合において、通常書き込み領域における消去動作では、閾値電圧分布A及びE’を有するメモリセルの閾値電圧を、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eに移行させる(図7の動作(1))。この積層型不揮発性メモリの消去動作は、セルソースCELSRCに消去電圧Veraを印加し、ソース側選択ゲート線SGSのレベルを所定電圧に制御することによってSSTrのソース端でGIDL(Gate Induced Drain Current)を引き起こし、そこで発生したホールによって柱状半導体層58および57を充電してメモリセルのチャネル側を消去電圧Veraに高める一方、制御ゲートには電圧Veraよりも低い電圧(例えば接地電圧Vss)を印加することにより行う。ここで、消去動作の単位は、前述した複数のメモリセルユニットMUからなるブロックMBとなり、これらを基本的にはほぼ同一の消去電圧Veraと選択ワード線電圧の関係で、同時に消去する。後述の書き込み動作で行うようなビット毎制御による個々のメモリセルの精細な制御ができないため、消去後の閾値電圧分布Eの分布幅は個々のメモリセルのばらつきを反映した広い分布幅となり、閾値電圧分布Eを狭い分布とすることが難しい。この消去動作後の閾値電圧分布Eは、データ“1”に相当するものであるが、データ“1”の分布として完成していない状態の分布と考えることができる。
【0046】
一方、高速書き込み領域における消去動作では、動作(1)に加え、メモリセルの閾値電圧分布が、消去動作後の閾値電圧分布Eから、所定の正の値をもった閾値電圧分布E’に変わるよう弱書き込み動作(図7の動作(2))を行う。この正の閾値電圧分布E’は、前述の消去動作後の閾値電圧分布Eから弱い書きこみ動作を行って、閾値電圧分布Eを正方向に移動させて得られる分布である。この閾値電圧分布E’には、メモリセルの消去状態(データ”1”)が割り当てられており、これが消去状態の閾値電圧分布の完成形となる。閾値電圧分布E’の書き込み時間は、書き込み方法や閾値電圧分布幅の割り当てに依存するが、図7に示すような2値の動作であれば、ページ毎に300μS程度かかる。したがって、(1)の消去動作自体に1.5msかかるとすると、消去時間の合計は、高速書き込み領域が2ページある場合には、2.4ms(=1.5ms+(2+1)*300us)、10ページある場合には、4.8ms(=1.5ms+(10+1)*300us)に達する。このように、消去動作に関しては、高速書き込み領域における消去時間は、通常書き込み領域における消去時間よりも長くなる。
【0047】
通常書き込み領域における書き込み動作は、図8に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、通常書き込み領域内(WL2〜15)のメモリセルの殆どは、閾値電圧分布Eを有している。この状態から、データ”1”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布EからE’に移行させる書き込み動作を実行する(図8の動作(3)))一方、データ”0”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布Eから閾値電圧分布Aに移行させる書き込み動作(図8の動作(4))を実行する。
【0048】
ここで、図8は、1本の選択ワード線WL上にある複数のメモリセルの書き込みについて着目した図になっている。このようなデータ書き込みがメモリストリングMSの長手方向に隣接する複数のメモリセルに対して連続して行われる場合には問題ない。しかし、1本のワード線のみの書き込みであったり、連続したページ書込みの最後のページへの書き込みである場合には、選択メモリセルに隣接するセルの閾値電圧が閾値電圧分布Eとなることがある。前述のように、閾値電圧分布Eを書き込まれたメモリセルと、書き込み動作後の閾値電圧分布A,B,Cを書き込まれたメモリセルとが隣接すると、データリテンション特性が悪化して信頼性上問題となる。したがって、上記の場合には、選択メモリセル自身の書き込みだけでなく、何らかの方法で、隣接メモリセルに閾値電圧分布E’を書き込む手段、制御があるものと仮定する。
【0049】
一方、高速書き込み領域における書き込み動作は、図9に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、高速書き込み領域内の全てのメモリセルは、閾値電圧分布Eよりも大きい閾値電圧分布E’を有している。この状態から、データ”1”を書き込みたいメモリセルでは、閾値電圧分布E’を維持するべく、書き込み禁止動作が行われる。一方、データ”0”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布E’から閾値電圧分布Aに移行させる書き込み動作が実行される。データ”1”を書き込みたいメモリセルにおいて書き込みのための電圧印加動作が不要であるため、書き込み動作の速度は、図8の場合より図9の場合の方が速くなる。つまり、高速書き込み領域における書き込み動作は、通常書き込み領域における書き込み動作に比べ、得るべき閾値電圧分布の数が少ないため(前者は1個、後者は2個)、書き込みスピードがおよそ2倍程度向上する。
なお、メモリストリングMSへの書き込み動作は、従来のNAND型フラッシュメモリと同様に、ソース線CELSRC側のメモリセルMC0を最初に書き込みセルとして選択し、以下順にビット線BLに近付く順に書き込みを実行するという順序で実行される。上記のように、1つのメモリセルに1ビットのデータを記憶する場合、1本のワード線WLi(i=0〜15)に沿った複数のメモリセルMCiに記憶されるデータは、1ページを構成する。これら1つのページには、1つのページデータが割り当てられる。本実施の形態では、図10に示すように、1本のメモリストリングMS中の高速書き込み領域に対応するワード線WL0に沿った複数のメモリセルMC0が、1つのページPAGE0を構成する。同様に、ワード線WL1に沿った複数のメモリセルMC1が、1つのページPAGE1を構成する。高速書き込み領域のみ選択して書き込みを行う場合には、図10に示すように、各メモリストリングMS内での書き込み順に従いページ選択をしつつ、その後適宜アドレス入力を行って別のメモリストリングを選択して、同様に高速書き込み領域のページ選択を行う。
なお、ワード線WL2の沿った複数のメモリセルMC2は、通常書き込み領域(WL2〜15)内に存在し且つ高速書き込み領域(WL0〜1)に隣接するメモリセルである。このメモリセルMC2は、他の通常書き込み領域内のメモリセルMC3〜15とは異なり(高速書き込み領域内のメモリセルMC0、MC1と同様に)、消去動作時において、消去動作後に閾値電圧分布Eから閾値電圧分布E’への弱書き込み動作の対象とされる。通常書き込み領域でありながら消去動作時において閾値電圧分布E’を書き込む必要がある理由は、以下の通りである。高速書き込み領域においては、書き込み時にどのワード線を選択した場合においても、その隣のワード線に沿ったメモリセルにおいて閾値電圧分布EからE’への書き込みが必要ないようにすることが求められる。そのような書き込みが必要になると、高速書き込み領域における書き込み速度が低下してしまうからである。前述のように、データ書き込みを行ったメモリセルの隣のメモリセルは、データリテンション特性の改善のため、閾値電圧分布EでなくE’を有している必要がある。しかし、高速書き込み領域の端部のメモリセルMCheに書き込みをする場合に、隣接する通常書き込み領域中のメモリセルMCneが閾値電圧分布Eを有していると、このため高速書き込み領域のメモリセルMCheへのデータ書き込みと共に、メモリセルMCneでの閾値電圧分布EからE’への弱書き込み動作も必要になってしまう。これでは、高速書き込み領域での書き込み速度が低下してしまう。このため、メモリセルMCneには、消去動作時において、閾値電圧分布EをE’に変える弱書き込み動作を実行している。
【0050】
この高速書き込み領域のアドレス空間上の位置及び範囲は、この不揮発性記憶装置を利用するメモリーコントローラを含むメモリシステムの性能がもっとも向上するように設定される。よって、高速書き込み領域は、ブロックの中で、所定の1ページだけ(先頭ページ、最終ページ、あるいは所定のページ)でもよいし、所定ページ連続した領域(先頭ページから所定数、最終ページから所定数、あるいは所定ページから所定数)であってもよい。例えば、ブロックを消去する際に実際に消去動作を行わずに消去可能ブロックとしてフラグを書き込むメモリ制御方法がある。このように、データサイズは大きい必要はないが、所定のメモリアクセス情報を確実には速く書きこみたい場合に、上記先頭ページや最終ページに設定した小領域の高速書き込み領域が有効利用される。高速書き込み領域では、隣接セルの隣接セルも含めてあらかじめ閾値電圧分布E’が書き込まれているため、特にデータリテンション特性に関しては信頼性を満たし、かつ、書き込みが通常領域よりも速いメリットがある。
また、高速書き込み領域を所望のサイズにすることで、例えば、高いスループットで一時的にメモリセルアレイ内に書き込むデータバッファ領域として活用することができる。
【0051】
図7〜図9では、1つのメモリセルに1ビット(2値)のデータが記憶される例を説明したが、1つのメモリセルに2ビット以上のデータを記憶させる場合にも、同様の動作が実行可能である。図11〜図13は、1つのメモリセルに2ビット(4値)のデータを記憶する場合における、通常書き込み領域と高速書き込み領域とにおける消去動作及び書き込み動作を概念的に示している。
書き込み動作完了後においては、閾値電圧分布E’、A,B,Cのいずれかが1つのメモリセルに与えられる。閾値電圧分布E’が2ビットデータ”11”(消去状態)に対応し、閾値電圧分布A,B,Cがそれぞれ例えばデータ”10”、”01”、”00”に対応している。
【0052】
この場合において、通常書き込み領域における消去動作では、図11に示すように、閾値電圧分布E’、A,B,またはCを有するメモリセルの閾値電圧を、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eとなるまで消去動作を実行する(図11の動作(1))。一方、高速書き込み領域における消去動作では、動作(1)に加え、閾値電圧分布Eを所定の正の値を有する閾値電圧分布E’に移行させる弱書き込み動作(図11の動作(2))を行う。
【0053】
通常書き込み領域における書き込み動作は、図12に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、通常書き込み領域内の全てのメモリトランジスタは、閾値電圧分布E’以下の閾値電圧分布Eを有している。この状態から、データ”11”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布EからE’に移行させる書き込み動作を実行する(図12の動作(3)))。一方、データ”10”、”01”、及び”00”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布Eから閾値電圧分布A,B,Cに移行させる書き込み動作(図12の動作(4))を実行する。
【0054】
一方、高速書き込み領域における書き込み動作は、図13に示すような手順で行われる。書き込み動作の開始前においては、高速書き込み領域内の全てのメモリセルは、すでに閾値電圧分布E’を有している。この状態から、データ”11”を書き込みたいメモリセルでは、閾値電圧分布E’を維持するべく、書き込み禁止動作が行われる。一方、データ”10”、”01”、及び”00”を書き込みたいメモリセルには、閾値電圧分布E’から閾値電圧分布A,B,Cに移行させる書き込み動作が実行される。データ”11”を書き込みたいメモリセルにおいて書き込みのための電圧印加動作が不要であるため、書き込み動作の速度は、図12の場合より図13の場合の方が速くなる。つまり、高速書き込み領域における書き込み動作は、通常書き込み領域における書き込み動作に比べ、得るべき閾値電圧分布の数が少ないため(前者は3個、後者は4個)、書き込みスピードがおよそ4/3倍程度向上する。
【0055】
なお、図12、図13に示すような2ビット/セルの書き込み動作においては、1本のワード線WLi(i=0〜15)に沿った複数のメモリセルMCiに記憶されるデータは、2ページを構成する。従って、図12、図13に示すような2ビット/セルの書き込み動作においては、図14に示すように、1本のメモリストリングMS中の高速書き込み領域に対応するワード線WL0に沿った複数のメモリセルMC0が、2つのページPAGE0,1を構成する。同様に、ワード線WL1に沿った複数のメモリセルMC1が、2つのページPAGE2、3を構成する。高速書き込み領域のみに連続して書き込み動作を実行する場合には、図14に示すように、所望のブロックアドレスおよび所定の高速書き込み領域に対応するページアドレスを指定してアクセスする。
以上説明したように、本実施の形態によれば、1ビット/セル、2ビット/セルまたはそれ以上の多値記憶動作を行う積層型の不揮発性半導体記憶装置において、通常書き込み領域と閾値電圧制御の異なる高速書き込み領域を有することによって、データの信頼性を劣化させずに高速なデータ書き込みを行うことができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
次に、図15A及び図15Bを参照して、第2の実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置を説明する。全体構成は図1に示すのと同様である。ただし、この実施の形態では、図15Aに示すように、メモリストリングMSの一端とドレイン側選択トランジスタSDTr又はソース側選択トランジスタSSTrとの間にダミーメモリセルDMCD、DMCSを更に備えている。ダミーメモリセルDMCD、DMCSは、いずれもメモリセルMCと同一の構造を有しているが、データの記憶には用いられない。そのゲートにはダミーワード線WLDD,WLDSが接続されている。その他は、第1の実施の形態と同様である。
また、図15Bに示すように、バックゲートトランジスタBTrのドレイン側とソース側の隣接セルがそれぞれダミーメモリセルDMCBD、DMCBSとなって、そのゲートにはそれぞれダミーワード線WLBD、WLBSが接続される構成となってもよい。これらのダミーセルもメモリセルと同一の構造を有しているが、データの記憶には用いられないものとする。
ダミーメモリセルDMCD、DMCS、DMCBD,DMCBSは、消去パルス印加動作時において、データを記憶するメモリセルと同様の消去バイアス、または、データを記憶するメモリセルの消去動作のために最適化された所定のバイアス印加を受けて閾値電圧が消去動作後の閾値電圧分布Eと同程度までに低下する可能性があるが、高速書き込み領域と同様に、消去動作中に弱書き込み動作が行われて、閾値電圧が分布E’と同程度になるように制御される。これにより、ダミーセルトランジスタDMCD、DMCS、DMCBD,DMCBSの電荷蓄積膜には、ホールがほとんど存在しない状態に制御されることになる。このようにすることにより、ダミーセルトランジスタの電荷蓄積膜に保持されたホールが流出して隣接するメモリセルMCの電荷蓄積膜に保持された電子と打ち消しあうことがなくなり、ダミーセルをメモリユニット内に挿入した場合においても、データ記憶用のメモリセルのデータリテンションの特性を向上させることができる。
【0057】
[第3の実施の形態]
次に、図16を参照して、第3の実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置を説明する。全体構成は図1に示すのと同様である。また、この実施の形態では、第2の実施の形態と同様のダミーメモリセルDMCD、DMCS、および、DMCBD,DMCBSを備えている。
この第3の実施の形態の特徴は、消去動作時における最小単位が、メモリブロックよりも小さいサブブロックとされている点である。そして、サブブロック単位での消去動作に対応して、高速書き込み領域の配置が前述の実施の形態とは異なっている。
【0058】
第1及び第2の実施の形態では、一つのメモリブロックが消去単位であることを前提としていたが、図16に示す第3の実施の形態では、4個のサブブロックSB0〜SB3のいずれかが最小消去単位として選択可能とされるものとする。また、図16において、同じワード線WLiの符号が与えられているものは、配線の共有化によって物理的に直接接続された状態となっているか、もしくは共有はされないが電気的に接続されているものとする。
【0059】
選択ゲート線については、図16においては、サブブロックSB0〜3の各々が固有のドレイン側選択ゲート線SGD_0〜3、ソース側選択ゲート線SGS(SGS_0〜3)を有し、独立に制御が可能な構成とされている。しかし、これに限らずサブブロックSB0〜3で同一の選択ゲート線SGD、SGSを共有し、回路の制御方法によって、各サブブロックを個別制御とすることも共通制御とすることも可能なように構成してもよい。
【0060】
本実施の形態において、4個のサブブロックSB0〜3を同時に消去するためには、例えばソース側選択ゲート線SGS_0〜3に消去のためのGIDL電流を引き起こす所定電位が同時に印加されることが必要となる。消去動作時において、そのような構成や制御方法によって、複数のサブブロックSB_0〜3に共通の消去バイアスが印加されると、4個のサブブロックを同時に消去することができる。
【0061】
サブブロックSBを最小消去単位とする場合、サブブロック単位の消去動作に最適なページアドレス割り当てがあり、高速書き込み領域もそのページアドレスの割り当てに沿ったものであることが望ましい。このとき、NANDストリング型構造をもつメモリセルの書込み特性について考えると、主に2種類の書き込みディスターブがある。一つは、選択されたNANDストリングの中の非選択メモリセルにおける書き込みパス電圧VPASSによるストレスであり、もう一つは、書き込み動作時に選択された選択メモリセルが書き込み禁止状態(”1”書き込み)になった場合のストレスである。
【0062】
第1の書き込みディスターブは、次のようにして生じる。まず、データ書き込みのためにビット線BLに電圧(例えば0V)が印加される。そして、この0Vを選択メモリセルのチャネルに転送するため、NANDストリング内の非選択メモリセルの制御ゲートには、書き込みパス電圧VPASS(例えば10V)が印加される。第1の書き込みディスターブは、書き込みパス電圧VPASSとチャネルに印加される電圧0Vとにより生じる。
また、第2の書き込みディスターブは、次のようにして生じる。選択メモリセルが最初から書き込み禁止状態であるか、書き込み動作の途中から書き込み状態から書き込み禁止状態に切り替えられる場合に、選択メモリセルの制御ゲートには、書き込み電圧VPGM(例えば20V)が印加される。選択されたNANDストリングのチャネルは、例えば電源電圧Vddまで充電された後、ドレイン側選択ゲートトランジスタSDTrがカットオフされることにより、フローティング状態となる。選択されたNANDストリング内の非選択ワード線に書き込みパス電圧VPASSが印加されると、この電圧VPASSによって、フローティング状態であるチャネルの電位が上昇する。この電位の上昇により、書き込みディスターブが引き起こされ得る。
第1、第2の書き込みディスターブともに書込みパス電圧VPASSの最適化が必要であり、第1の書き込みディスターブにより、書き込みパス電圧VPASSの上限値が決定され、第2の書き込みディスターブにより、書き込みパス電圧VPASSの下限値が決定される。
更に、書き込みディスターブは、NANDストリング内のデータの書き込み状態によっても特性が大きく変わる。書き込み禁止状態のNANDストリングにおける第2の書き込みディスターブを考慮すると、NANDストリング内のチャネル電位を効率よく、できるだけ高く上昇させることが望ましい。そのためには、書込み電圧Vpgmがワード線に印加される場合に、できるだけ多くのメモリセルが消去状態にあることが望ましい。なぜなら、セルの閾値電圧が低いほど、非選択ワード線を書き込みパス電圧VPASSに立ち上げる際に、非選択ワード線の電位が低い状態からチャネル電位に作用して大きなカップリングを与えられるからである。したがって、NANDストリング内にデータが書き込まれてしまってから、延々と書き込みストレスが印加され続ける状態は、書き込みディスターブの観点で好ましくない。
【0063】
本実施の形態においては、1本のワード線WLが複数のサブブロックSB間で共有され、あるいは、ワード線WLは複数のサブブロックSB間で共有されないがそれぞれのワード線WLが電気的に同電位となる制御が行われる場合を想定している。上記の書き込みディスターブの観点で望ましいページ割り当てを考えると、複数のサブブロック(NANDストリング)の書き込みが同程度に進行していくことが望ましい。
すなわち、本実施の形態における書き込み動作では、図16に示すように、メモリブロックMB中の複数のサブブロックSB0〜3の各々のワード線WL0に沿ったメモリセルMC0が、サブブロック番号の若い順(SB0→SB1→SB2→SB3)に書き込まれる。全てのサブブロックSBにおいてワード線WL0への書き込みが終了したら、次は各サブブロックSB0〜3のワード線WL1に沿ったメモリセルMC1が、サブブロック番号の若い順に書き込まれていく。以後、同様にして、書き込みが進められる。
【0064】
上記の説明は、最小消去単位がサブブロックSBにより構成され、かつ、複数のサブブロックSB中でワード線WLが共有されるか、或いは共有はされないが同時に駆動される場合におけるページアドレスの割り当て、及びび書き込み順に関する基本的な考え方を説明したものである。そこで、高速書き込み領域は、割り当てられたページアドレスを考慮して、メモリシステムの性能が最も向上するように設定すればよい。消去ブロックの先頭ページから所定の連続ページを高速書き込み領域に設定する場合、例えば、図16に示すとおり、サブブロックSB0のWL0からSB3のWL1を高速書き込み領域と定義することができる。
1つのメモリセルに複数ビットのデータを記憶する場合にも、多値記憶になることによる論理ページの増加分を考慮しながら同様にしてページアドレスを割り当てることができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上記の実施の形態では、1メモリストリング中で、電荷蓄積膜がメモリセル間でも分断されず連続して形成されるものの例として、半導体層がU字型の積層型メモリセルアレイを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1メモリストリング中で、複数のメモリセルが半導体基板に垂直な積層方向に一直線状に配列されたI字型の積層型メモリセルも、本発明とその均等の範囲に含まれ得る。また、全てのメモリセルが半導体基板上に形成された平面型のメモリセルアレイであっても、電荷蓄積層が同様にメモリセル間でも分断されず連続的に形成されているものである場合には、本発明が適用され得る。
【0067】
また、上記の実施の形態では、通常書き込み領域に対する書き込み動作において、消去状態を維持すべき全てのメモリセルに対し閾値電圧分布EからE’に移行させる弱書き込み動作を行っている。しかし、必ずしもこの弱書き込み動作(E→E’)を全てのメモリセルについて実行する必要はない。例えば、あるメモリセルが消去状態を維持すべきメモリセルMCcがあり、そのメモリセルMCcに隣接するメモリセルも消去状態を維持すべきトランジスタである場合を考える。この場合には、そのメモリセルMCcに対しては弱書き込み動作を実行せず、閾値電圧分布Eのまま維持してもよい。すなわち、弱書き込み動作は、閾値電圧分布A,B、またはCまで書き込まれるメモリセルに隣接し、且つ消去状態を維持すべきメモリセルにのみ実行することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
MS…メモリストリング、 MTr、MTr1〜MTr8…メモリセル、 SDTr…ドレイン側選択トランジスタ、 SSTr…ソース側選択トランジスタ、 BTr…バックゲートトランジスタ、 20…基板、 30…バックゲート層、 40…メモリセル層、 50…選択トランジスタ層、 60…配線層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、
複数の前記メモリセルに対して印加する電圧を制御する制御回路と
を備え、
前記制御回路は、複数の前記メモリセルに対し消去動作を実行する場合に、前記第2書き込み領域のメモリセルに隣接する前記第1書き込み領域のメモリセルを除いた前記第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、前記第2書き込み領域のメモリセル及び前記第2書き込み領域のメモリセルに隣接する前記第1書き込み領域のメモリセルに前記第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御するよう構成された
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1書き込み領域のメモリセルに、前記第2閾値電圧より大きな第3閾値電圧を与える書き込み動作を実行する場合、消去状態を維持すべきメモリセルに前記第2閾値電圧を与えるよう制御することを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記メモリセルに対し消去動作を実行する場合、
前記第2書き込み領域においては、前記第1閾値電圧を前記メモリセルに与える消去動作を行った後、前記第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す前記第2閾値電圧を与える弱書き込み動作を実行する一方、
前記第1書き込み領域においては、前記第1閾値電圧を前記メモリセルに与える消去動作を行った後、前記弱書き込み動作を実行せず前記メモリセルに前記第1閾値電圧を与えた状態のまま保持するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
複数のメモリブロックを有するメモリセルアレイと、
前記複数のメモリブロックの各々に配置されそれぞれ電気的に書き換え可能な複数のメモリセルを直列接続してなる複数のメモリストリングと、
前記メモリストリングの第1の端部に接続されるドレイン側選択トランジスタと、
前記メモリストリングの第2の端部に接続されるソース側選択トランジスタと、
前記複数のメモリブロックの1つに配置される複数の前記メモリストリングに共通に接続されるように配置される複数のワード線と、
第1方向に延びて前記複数のメモリブロックに存在する前記ドレイン側選択トランジスタの一端に接続される複数のビット線と、
前記ソース側選択トランジスタの一端に共通に接続されるソース線と、
前記第1方向とは直交する第2方向に並ぶ前記ドレイン側選択トランジスタのゲートを共通に接続するように前記第2方向を長手方向として配設されるドレイン側選択ゲート線と、
前記第2方向に並ぶ前記ソース側選択トランジスタのゲートを共通に接続するように前記第2方向を長手方向として配設されるソース側選択ゲート線と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
複数の前記メモリストリングの各々は、
前記メモリセルのボディとして機能する半導体層と、
前記半導体層に沿って複数のメモリセルが並ぶ方向において、複数の前記メモリセル間も含めて連続的に形成され電荷を蓄積可能電荷蓄積層を含むメモリゲート絶縁膜と、
前記メモリゲート絶縁膜を挟んで前記半導体層と対向するよう形成され前記メモリセルのゲート及び前記ワード線として機能するワード線導電層とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項1】
第1書き込み領域と第2書き込み領域を有し、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、
複数の前記メモリセルに対して印加する電圧を制御する制御回路と
を備え、
前記制御回路は、複数の前記メモリセルに対し消去動作を実行する場合に、前記第2書き込み領域のメモリセルに隣接する前記第1書き込み領域のメモリセルを除いた前記第1書き込み領域のメモリセルに第1閾値電圧を与える一方、前記第2書き込み領域のメモリセル及び前記第2書き込み領域のメモリセルに隣接する前記第1書き込み領域のメモリセルに前記第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す正の第2閾値電圧を与えるよう制御するよう構成された
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1書き込み領域のメモリセルに、前記第2閾値電圧より大きな第3閾値電圧を与える書き込み動作を実行する場合、消去状態を維持すべきメモリセルに前記第2閾値電圧を与えるよう制御することを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記メモリセルに対し消去動作を実行する場合、
前記第2書き込み領域においては、前記第1閾値電圧を前記メモリセルに与える消去動作を行った後、前記第1閾値電圧より電圧値が大きい消去状態を示す前記第2閾値電圧を与える弱書き込み動作を実行する一方、
前記第1書き込み領域においては、前記第1閾値電圧を前記メモリセルに与える消去動作を行った後、前記弱書き込み動作を実行せず前記メモリセルに前記第1閾値電圧を与えた状態のまま保持するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
複数のメモリブロックを有するメモリセルアレイと、
前記複数のメモリブロックの各々に配置されそれぞれ電気的に書き換え可能な複数のメモリセルを直列接続してなる複数のメモリストリングと、
前記メモリストリングの第1の端部に接続されるドレイン側選択トランジスタと、
前記メモリストリングの第2の端部に接続されるソース側選択トランジスタと、
前記複数のメモリブロックの1つに配置される複数の前記メモリストリングに共通に接続されるように配置される複数のワード線と、
第1方向に延びて前記複数のメモリブロックに存在する前記ドレイン側選択トランジスタの一端に接続される複数のビット線と、
前記ソース側選択トランジスタの一端に共通に接続されるソース線と、
前記第1方向とは直交する第2方向に並ぶ前記ドレイン側選択トランジスタのゲートを共通に接続するように前記第2方向を長手方向として配設されるドレイン側選択ゲート線と、
前記第2方向に並ぶ前記ソース側選択トランジスタのゲートを共通に接続するように前記第2方向を長手方向として配設されるソース側選択ゲート線と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
複数の前記メモリストリングの各々は、
前記メモリセルのボディとして機能する半導体層と、
前記半導体層に沿って複数のメモリセルが並ぶ方向において、複数の前記メモリセル間も含めて連続的に形成され電荷を蓄積可能電荷蓄積層を含むメモリゲート絶縁膜と、
前記メモリゲート絶縁膜を挟んで前記半導体層と対向するよう形成され前記メモリセルのゲート及び前記ワード線として機能するワード線導電層とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【公開番号】特開2012−69224(P2012−69224A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214243(P2010−214243)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]