説明

作業機械のポンプトルク制御装置

【課題】基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める演算を要せずに、迅速にエンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができる。
【解決手段】可変容量型油圧ポンプ12の吐出圧を検出する吐出圧検出器17と、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角を検出する傾転角検出器19と、エンジン1とターボ式過給器4とを連絡する給気ライン5に設けられ、この給気ライン5に導かれた吸入空気量を検出する吸入空気量検出器21とを備えるとともに、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、吸入空気量検出器21で検出された吸入空気量とに基づいてポンプ入力トルク目標値を求める演算を行うコントローラ15を備え、演算されたポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号を、レギュレータ13に出力させて可変容量型油圧ポンプ12の傾転角を制御する構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に備えられ、エンジンの出力トルクと可変容量型油圧ポンプの入力トルクとのマッチングを実現させる作業機械のポンプトルク制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、作業環境に応じて予め設定される基準エンジン回転数と、現実のエンジン回転数との誤差を演算し、この演算された誤差に応じてエンジンの基準出力トルクを調整し、その調整された基準出力トルクに応じたポンプ入力トルクとし、これによりエンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させるようにしたものである。
【特許文献1】特開平10−141110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術では、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数との誤差を求める煩雑な演算を要し、したがってこの演算に時間がかかる問題がある。これに伴ってエンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させるために時間がかかる。すなわち、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとの間で応答遅れを生じる。このために、この作業機械で実施される各操作の操作性が低下しやすい。
【0004】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める演算を要することなく、迅速にエンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができる作業機械のポンプトルク制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、エンジンと、このエンジンに圧縮空気を供給するターボ式過給器と、上記エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプの押しのけ容積を制御するレギュレータとを有する作業機械のポンプトルク制御装置において、上記可変容量型油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出器と、上記可変容量型油圧ポンプの傾転角を検出する傾転角検出器とを備えるとともに、上記吐出圧検出器で検出された吐出圧と、上記傾転角検出器で検出された傾転角と、上記エンジンと上記ターボ式過給器とを連絡する給気ラインに導かれる吸入空気量とに基づいてポンプ入力トルク目標値を求める演算を行うコントローラを備え、このコントローラで演算された上記ポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号を、上記レギュレータに出力させて上記可変容量型油圧ポンプの傾転角を制御することを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明は、コントローラにおいて、吐出圧検出器で検出された吐出圧と傾転角検出器によって検出された傾転角とに基づいて、ポンプ入力トルクを求める演算が行われ、このポンプ入力トルクに相応するエンジン出力トルクが求められる。さらに、エンジンに吸入される空気量はエンジン出力トルクと関数関係を有することから、給気ラインに導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクが求められる。この現実のエンジン出力トルクに応じて、上述のポンプ入力トルクを調整し、ポンプ入力トルク目標値を求めることが行われる。求められたポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号がレギュレータに出力される。
【0007】
したがって、可変容量型油圧ポンプの傾転角が現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとなるように制御される。このようにして、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める演算を要することなく、エンジンの吸入空気量に応じて迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができる。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、上記給気ラインに設けられ、上記吸入空気量を検出する吸入空気量検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係を記憶するとともに、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、上記エンジンの回転数を制御するエンジンコントロールダイヤルの角度を検出するエンジンコントロールダイヤル角度検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、エンジンコントロールダイヤル角度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、上記エンジンから排出される排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、排気ガス温度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、上記タービン式過給器の排気タービンの回転数を検出するタービン回転数検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、タービン回転数と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、上記ターボ式過給器の遠心式圧縮機の出口空気温度を検出する遠心式圧縮機出口空気温度検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、遠心式圧縮機出口空気温度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、上記ターボ式過給器の遠心式圧縮機で圧縮された吸入空気の過給圧を検出する過給圧検出器を備え、上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、過給圧と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、上記コントローラでポンプトルク目標値を求める演算を行う際に、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を求める演算を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来のように基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める演算を要することなく、エンジンの吸入空気量に応じて迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、これにより従来のようなエンジン出力トルクとポンプ入力トルクとの間の応答遅れを少なくし、この作業機械で実施される各操作の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明に係る作業機械のポンプトルク制御装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る作業機械のポンプトルク制御装置の第1実施形態を示す油圧回路図、図2は図1に示す第1実施形態に備えられるコントローラの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように第1実施形態は、作業機械例えば油圧ショベルに備えられるものであり、エンジン1と、このエンジン1に供給ライン3を介して燃料を供給する燃料噴射ポンプ2とを備えている。また、エンジン1に圧縮空気を供給するターボ式過給器4と、外部の空気をエンジン1へ導く給気ライン5と、エンジン1からの排気ガスを外部へ排出する排出ライン6とを備えている。給気ライン5には、過給のために外部から取り入れた空気を圧縮するターボ式過給器4の遠心式圧縮機7と、この遠心式圧縮機7で圧縮された空気を冷却するインタークーラ8と、エンジン1へ送る空気の流量を調節するスロットルバルブ9を配置してある。排気ライン6には、給気ライン5側の遠心式圧縮機7を駆動するターボ式過給器4の排気タービン10と、この排気タービン10の下流側に設けたマフラー11とを配置してある。
【0019】
また、エンジン1によって駆動される可変容量型油圧ポンプ12と、この可変容量型油圧ポンプ12の押しのけ容積、すなわち傾転角を制御するレギュレータ13と、このレギュレータ13を駆動する制御信号を信号ライン16を介して出力するコントローラ15と、可変容量型油圧ポンプ12から吐出される圧油によって駆動し、ブーム、アーム、バケット等を作動させる油圧アクチュエータ、及びこれらの油圧アクチュエータを制御するコントロールバルブ等が含まれる油圧駆動回路14とを備えている。
【0020】
特にこの第1実施形態は、可変容量型油圧ポンプ12の吐出圧を検出し、信号ライン18を介してコントローラ15に出力する吐出圧検出器17と、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角を検出し、信号ライン20を介してコントローラ15に出力する傾転角検出器19と、上述の給気ライン5のスロットルバルブ9の下流に配置され、エンジン1に吸入される吸入空気量を検出し、信号ライン22を介してコントローラ15に出力する吸入空気量検出器21とを備えている。
【0021】
コントローラ15は、図2に示すように、吐出圧検出器17から出力される吐出圧、傾転角検出器17から出力される傾転角、及び吸入空気量検出器21から出力される吸入空気量が入力される入力部15a、上述の制御信号をレギュレータ2に出力する出力部15bと、記憶部15cと、各種の演算処理を実行する演算処理部15dとを備えている。
【0022】
コントローラ15の記憶部15cには、図4に示すように、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との関数関係、すなわちP−Q線図がパラメータとして予め記憶されるとともに、図3に示すように、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係が予め記憶されている。上述の吸入空気量とエンジン出力トルクとの間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0023】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、吸入空気量検出器21、及びレギュレータ13によって、この第1実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第1実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、吸入空気量検出器21で検出された吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0024】
このように構成したこの第1実施形態は、エンジン1の駆動によって可変容量型油圧ポンプ12が駆動し、油圧駆動回路14に圧油が供給されて、例えばブーム、アーム、バケット等による掘削作業などが実施されている状態において、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及び吸入空気量検出器21から出力される吐出圧、傾転角、及び吸入空気量がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dでは、入力した吐出圧と傾転角とに基づいて、ポンプ入力トルクすなわち該当するP−Q線図を求める演算を行う。
【0025】
今、例えば吸入空気量がA1であったとすると、演算処理部15dにおいて、記憶部15cに記憶される図3の関数関係から、A1に対応するエンジン出力トルクB1が求められる。このエンジン出力トルクB1よりも大きくならない範囲で、しかもエンジン出力トルクB1に近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図は、記憶部15cに記憶される図4のF1と求められる。すなわち、ポンプ入力トルク目標値が求められる。このF1のP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が、吸入空気量A1に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0026】
また、このような状態から例えば吸入空気量がA1よりも小さいA2になったとすると、演算処理部15dにおいて、記憶部15cに記憶される図3の関数関係から、A2に対応するエンジン出力トルクB2、すなわち上述のB1よりも小さいB2と求められる。このエンジン出力トルクB2よりも大きくならない範囲で、しかもエンジン出力トルクB2に近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図は、記憶部15cに記憶される図4のF2と求められる。すなわち、ポンプ入力トルク目標値が求められる。このF2のP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が、吸入空気量A2に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0027】
以上のように構成した本実施形態によれば、上述した従来技術におけるような基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、エンジン1の吸入空気量を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができる。これにより、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとの間の応答遅れを少なくし、この油圧ショベルで実施される各操作の操作性を向上させることができる。
【0028】
図5は本発明の第2実施形態を示す回路ブロック図、図6は図5に示すコントローラの記憶部に記憶されるコントロールダイヤル角度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【0029】
図5に示す本発明の第2実施形態は、エンジン1の回転数を制御するエンジンコントロールダイヤルの角度を検出し、信号ライン33を介してコントローラ15に出力するエンジンコントロールダイヤル角度検出器23を備えている。また、コントローラ15の記憶部15cには、第1実施形態におけるのと同様に、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との図4に示す関数関係と、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの図3に示す関数関係を予め記憶させてあるとともに、図6に示すように、エンジンコントロールダイヤル角度と吸入空気量との関数関係を予め記憶させてある。上述のエンジンコントロールダイヤル角度と吸入空気量との間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0030】
他の構成は、第1実施形態における構成から吸入空気量検出器21及び信号ライン22を除いた構成と同等である。
【0031】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、エンジンコントロールダイヤル角度検出器23、及びレギュレータ13によって、この第2実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第2実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、エンジンコントロールダイヤル角度検出器23で検出されたエンジンコントロールダイヤル角度に相応する吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0032】
この第2実施形態では、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及びエンジンコントロールダイヤル角度検出器23から出力される吐出圧、傾転角、及びエンジンコントロールダイヤル角度がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dは、入力した吐出圧と傾転角に基づいて、ポンプ入力トルクすなわち図4に示すような該当するP−Q線図を求める演算を行なう。また、エンジンコントロールダイヤル角度検出器23で検出されたエンジンコントロールダイヤル角度に応じた吸入空気量が記憶部15cに記憶されている図6の関係から求められ、さらに、この求められた吸入空気量に応じたエンジン出力トルクが、記憶部15cに記憶されている図3の関係から求められる。このようにして求められたエンジン出力トルクより大きくしない範囲で、しかも求められたエンジン出力トルクに近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図が求められる。このようにして求められたP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が給気ライン5に導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0033】
このように構成した第2実施形態も、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、エンジンコントロールダイヤル角度を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、上述した第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0034】
図7は本発明の第3実施形態を示す回路ブロック図、図8は図7に示すコントローラの記憶部で記憶される排気ガス温度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【0035】
図7に示す本発明の第3実施形態は、エンジン1から排出される排気ガスの温度を検出し、信号ライン34を介してコントローラ15に出力する排気ガス温度検出器24を備えている。また、コントローラ15の記憶部15cには、第1実施形態におけるのと同様に、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との図4に示す関数関係と、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの図3に示す関数関係を予め記憶させてあるとともに、図8に示すように、排気ガス温度と吸入空気量との関数関係を予め記憶させてある。上述の排気ガス温度と吸入空気量との間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0036】
他の構成は、第1実施形態における構成から吸入空気量検出器21及び信号ライン22を除いた構成と同等である。
【0037】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、排気ガス温度検出器24、及びレギュレータ13によって、この第3実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第3実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、排気ガス温度検出器24で検出された排気ガス温度に相応する吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0038】
この第3実施形態では、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及び排気ガス温度検出器24から出力される吐出圧、傾転角、及び排気ガス温度がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dは、入力した吐出圧と傾転角に基づいて、ポンプ入力トルクすなわち図4に示すような該当するP−Q線図を求める演算を行なう。また、排気ガス温度検出器24で検出された排気ガス温度に応じた吸入空気量が記憶部15cに記憶されている図8の関係から求められ、さらに、この求められた吸入空気量に応じたエンジン出力トルクが、記憶部15cに記憶されている図3の関係から求められる。このようにして求められたエンジン出力トルクより大きくしない範囲で、しかも求められたエンジン出力トルクに近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図が求められる。このようにして求められたP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が給気ライン5に導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0039】
このように構成した第3実施形態も、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、排気ライン6の排気ガス温度を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、上述した第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0040】
図9は本発明の第4実施形態を示す回路ブロック図、図10は図9に示すコントローラの記憶部に記憶されるタービン回転数と吸入空気量の関数関係を示す図である。
【0041】
図9に示す本発明の第4実施形態は、排気タービン10の回転数を検出し、信号ライン35を介してコントローラ15に出力するタービン回転数検出器25を備えている。また、コントローラ15の記憶部15cには、第1実施形態におけるのと同様に、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との図4に示す関数関係と、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの図3に示す関数関係を予め記憶させてあるとともに、図10に示すように、排気タービン10の回転数と吸入空気量との関数関係を予め記憶させてある。上述の排気タービン10の回転数と吸入空気量との間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0042】
他の構成は、第1実施形態における構成から吸入空気量検出器21及び信号ライン22を除いた構成と同等である。
【0043】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、タービン回転数検出器25、及びレギュレータ13によって、この第4実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第4実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、タービン回転数検出器25で検出された排気タービン10の回転数に相応する吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0044】
この第4実施形態では、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及びタービン回転数検出器25から出力される吐出圧、傾転角、及び排気タービン10の回転数がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dは、入力した吐出圧と傾転角に基づいて、ポンプ入力トルクすなわち図4に示すような該当するP−Q線図を求める演算を行なう。また、タービン回転数検出器25で検出された排気タービン10の回転数に応じた吸入空気量が記憶部15cに記憶されている図10の関係から求められ、さらに、この求められた吸入空気量に応じたエンジン出力トルクが、記憶部15cに記憶されている図3の関係から求められる。このようにして求められたエンジン出力トルクより大きくしない範囲で、しかも求められたエンジン出力トルクに近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図が求められる。このようにして求められたP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が給気ライン5に導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0045】
このように構成した第4実施形態も、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、排気タービン10の回転数を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、上述した第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0046】
図11は本発明の第5実施形態を示す回路ブロック図、図12は図11に示すコントローラの記憶部に記憶される遠心式圧縮機出口空気温度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【0047】
図11に示す本発明の第5実施形態は、ターボ式過給器4の遠心式圧縮機7の出口空気温度を検出し、信号ライン36を介してコントローラ15に出力する遠心式圧縮機出口空気温度検出器26を備えている。また、コントローラ15の記憶部15cには、第1実施形態におけるのと同様に、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との図4に示す関数関係と、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの図3に示す関数関係を予め記憶させてあるとともに、図12に示すように、遠心式圧縮機出口空気温度と吸入空気量との関数関係を予め記憶させてある。上述の遠心式圧縮機出口空気温度と吸入空気量との間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0048】
他の構成は、第1実施形態における構成から吸入空気量検出器21及び信号ライン22を除いた構成と同等である。
【0049】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、遠心式圧縮機出口空気温度検出器26、及びレギュレータ13によって、この第5実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第5実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、遠心式圧縮機出口空気温度検出器26で検出された遠心式圧縮機7の出口空気温度に相応する吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0050】
この第5実施形態では、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及び遠心式圧縮機出口空気温度検出器26から出力される吐出圧、傾転角、及び遠心式圧縮機7の出口空気温度がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dは、入力した吐出圧と傾転角に基づいて、ポンプ入力トルクすなわち図4に示すような該当するP−Q線図を求める演算を行なう。また、遠心式圧縮機出口空気温度検出器26で検出された遠心式圧縮機7の出口空気温度に応じた吸入空気量が記憶部15cに記憶されている図12の関係から求められ、さらに、この求められた吸入空気量に応じたエンジン出力トルクが、記憶部15cに記憶されている図3の関係から求められる。このようにして求められたエンジン出力トルクより大きくしない範囲で、しかも求められたエンジン出力トルクに近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図が求められる。このようにして求められたP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が給気ライン5に導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0051】
このように構成した第5実施形態も、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、遠心式圧縮機7の出口空気温度を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、上述した第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0052】
図13は本発明の第6実施形態を示す回路ブロック図、図14は図13に示すコントローラの記憶部に記憶される過給圧と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【0053】
図13に示す本発明の第6実施形態は、ターボ式過給器4の遠心式圧縮機7で圧縮された吸入空気の過給圧を検出し、信号ライン37を介してコントローラ15に出力する過給圧検出器27を備えている。また、コントローラ15の記憶部15cには、第1実施形態におけるのと同様に、可変容量型油圧ポンプ12に関連した傾転角と吐出圧との図4に示す関数関係と、エンジン1の吸入空気量とエンジン出力トルクとの図3に示す関数関係を予め記憶させてあるとともに、図14に示すように、過給圧と吸入空気量との関数関係を予め記憶させてある。上述の過給圧と吸入空気量との間には、ほぼ比例的な関係が存在することを発明者は確認している。
【0054】
他の構成は、第1実施形態における構成から吸入空気量検出器21及び信号ライン22を除いた構成と同等である。
【0055】
上述したコントローラ15、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、過給圧検出器27、及びレギュレータ13によって、この第6実施形態に係るポンプトルク制御装置が構成されている。すなわち、この第6実施形態におけるコントローラ15は、吐出圧検出器17で検出された吐出圧と、傾転角検出器19で検出された傾転角と、過給圧検出器27で検出された過給圧に相応する吸入空気量とに基づいて、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を演算し、そのポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号をレギュレータ13に出力するものである。
【0056】
この第2実施形態では、吐出圧検出器17、傾転角検出器19、及び過給圧検出器27から出力される吐出圧、傾転角、及び過給圧がコントローラ15の入力部15aから演算処理部15dに入力される。演算処理部15dは、入力した吐出圧と傾転角に基づいて、ポンプ入力トルクすなわち図4に示すような該当するP−Q線図を求める演算を行なう。また、過給圧検出器27で検出された過給圧に応じた吸入空気量が記憶部15cに記憶されている図14の関係から求められ、さらに、この求められた吸入空気量に応じたエンジン出力トルクが、記憶部15cに記憶されている図3の関係から求められる。このようにして求められたエンジン出力トルクより大きくしない範囲で、しかも求められたエンジン出力トルクに近い値を取り得るものとして、上述のP−Q線図が求められる。このようにして求められたP−Q線図に基づいて、吐出圧に相応する傾転角が求められる。その傾転角に相応する制御信号がレギュレータ13に出力される。したがって、可変容量型油圧ポンプ12の傾転角が給気ライン5に導かれる吸入空気量に応じた現実のエンジン出力トルクに相応するポンプ入力トルクとするように制御される。
【0057】
このように構成した第6実施形態も、基準エンジン回転数と現実のエンジン回転数の誤差を求める煩雑な演算を要することなく、過給圧を検出することによって迅速に、エンジン出力トルクとポンプ入力トルクとのマッチングを実現させることができ、上述した第1実施形態と同等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る作業機械のポンプトルク制御装置の第1実施形態を示す油圧回路図である。
【図2】図1に示す第1実施形態に備えられるコントローラの構成を示す回路ブロック図である。
【図3】図2に示すコントローラの記憶部に記憶される吸入空気量とエンジン出力トルクの関数関係を示す図である。
【図4】図2に示すコントローラの記憶部に記憶される傾転角と吐出圧の関数関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す回路ブロック図である。
【図6】図5に示すコントローラの記憶部に記憶されるコントロールダイヤル角度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す回路ブロック図である。
【図8】図7に示すコントローラの記憶部で記憶される排気ガス温度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す回路ブロック図である。
【図10】図9に示すコントローラの記憶部に記憶されるタービン回転数と吸入空気量の関数関係を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示す回路ブロック図である。
【図12】図11に示すコントローラの記憶部に記憶される遠心式圧縮機出口空気温度と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【図13】本発明の第6実施形態を示す回路ブロック図である。
【図14】図13に示すコントローラの記憶部に記憶される過給圧と吸入空気量との関数関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
4 ターボ式過給器
5 給気ライン
6 排気ライン
7 遠心式圧縮機
10 排気タービン
12 可変容量型油圧ポンプ
13 レギュレータ
14 油圧駆動回路
15 コントローラ
15a 入力部
15b 出力部
15c 記憶部
15d 演算処理部
16 信号ライン
17 吐出圧検出器
18 信号ライン
19 傾転角検出器
20 信号ライン
21 吸入空気量検出器
22 信号ライン
23 エンジンコントロールダイヤル角度検出器
24 排気ガス温度検出器
25 タービン回転数検出器
26 遠心式圧縮機出口空気温度検出器
27 過給圧検出器
33 信号ライン
34 信号ライン
35 信号ライン
36 信号ライン
37 信号ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンに圧縮空気を供給するターボ式過給器と、上記エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、この可変容量型油圧ポンプの押しのけ容積を制御するレギュレータとを有する作業機械のポンプトルク制御装置において、
上記可変容量型油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出器と、上記可変容量型油圧ポンプの傾転角を検出する傾転角検出器とを備えるとともに、
上記吐出圧検出器で検出された吐出圧と、上記傾転角検出器で検出された傾転角と、上記エンジンと上記ターボ式過給器とを連絡する給気ラインに導かれる吸入空気量とに基づいてポンプ入力トルク目標値を求める演算を行うコントローラを備え、
このコントローラで演算された上記ポンプ入力トルク目標値に相応する制御信号を、上記レギュレータに出力させて上記可変容量型油圧ポンプの傾転角を制御することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記給気ラインに設けられ、上記吸入空気量を検出する吸入空気量検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係を記憶するとともに、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項3】
上記請求項1記載の発明において、
上記エンジンの回転数を制御するエンジンコントロールダイヤルの角度を検出するエンジンコントロールダイヤル角度検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、エンジンコントロールダイヤル角度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記エンジンから排出される排気ガスの温度を検出する排気ガス温度検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、排気ガス温度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項5】
上記請求項1記載の発明において、
上記タービン式過給器の排気タービンの回転数を検出するタービン回転数検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、タービン回転数と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項6】
上記請求項1記載の発明において、
上記ターボ式過給器の遠心式圧縮機の出口空気温度を検出する遠心式圧縮機出口空気温度検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、遠心式圧縮機出口空気温度と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項7】
上記請求項1記載の発明において、
上記ターボ式過給器の遠心式圧縮機で圧縮された吸入空気の過給圧を検出する過給圧検出器を備え、
上記コントローラが、上記傾転角と上記吐出圧との関数関係と、上記吸入空気量とエンジン出力トルクとの関数関係とを記憶するとともに、過給圧と上記吸入空気量との関数関係を記憶する記憶部を有することを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。
【請求項8】
上記請求項1〜7のいずれか1項記載の発明において、
上記コントローラでポンプトルク目標値を求める演算を行う際に、エンジンストールを生じさせないポンプ入力トルク目標値を求める演算を行うことを特徴とする作業機械のポンプトルク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−270820(P2007−270820A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264006(P2006−264006)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】