説明

加熱処理装置、およびこれを備える塗布現像装置

【課題】気流制御を通して基板を均一に加熱することが可能な加熱処理装置およびこれを備える塗布現像装置を提供する。
【解決手段】基板を収容可能で、前記基板Sが通過する第1の搬入口62Iおよび第1の搬出口62Oを有する筐体と、前記第1の搬入口62Iから前記第1の搬出口62Oへ向かう方向に前記基板Sを搬送する第1の搬送機構と、前記第1の搬送機構により前記筐体内を搬送される前記基板Sを加熱するヒータ72と、前記筐体に設けられる排気口であって前記第1の搬入口62Iおよび前記第1の搬出口62Oから前記排気口に至る気流を形成可能な当該排気口と、前記第1の搬入口62Iおよび前記第1の搬出口62Oの一方または双方に臨んで設けられ、吸気により前記気流を調整する当該吸気口とを備える加熱処理装置が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板などの基板を加熱し、当該基板に形成される膜を処理する加熱処理装置およびこれを備える塗布現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造には、FPD用のガラス基板上に回路パターンを形成するため、フォトリソグラフィ技術が用いられる。フォトリソグラフィ技術においては、ガラス基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、形成される回路パターンに対応したパターンを有するフォトマスクを介してレジスト膜を露光し、現像することにより、回路パターンに対応したレジストマスクが形成される。
【0003】
レジスト膜の形成時には、レジスト膜中に残留する溶剤を蒸発させ、レジストをキュアするために加熱処理(プリベーク)が行われ、また、現像後には洗浄液で濡れたレジスト膜を乾燥させるために加熱処理(ポストベーク)が行われる。
【0004】
これらの加熱処理には、ガラス基板の搬入口および搬出口を有し、ガラス基板を収容可能な筐体と、筐体中に配置されガラス基板を加熱する加熱プレートと、搬入口から搬出口へガラス基板を搬送する搬送用ローラ(コロ)とを備える加熱処理装置が用いられる(たとえば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158253号公報
【特許文献2】特開2010−056359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の加熱処理装置においては、加熱によりレジスト膜から蒸発する溶剤等を排気するため、加熱処理装置の筐体内を換気する換気機構が設けられている。この換気機構により、筐体の搬入口および搬出口から、所定の位置に配置される排気口に至る気流が形成され、溶剤等が排気されるため、溶剤等の蒸発が促進される。
【0007】
ところが、このような加熱処理装置においては、加熱処理装置内の気流によって基板の温度分布が悪化する場合がある。たとえば、加熱処理装置の搬入口から室温(約23℃)の空気が流入すると、この空気によって搬入口付近での基板温度が低下してしまう可能性がある。特に、加熱処理装置が設置されるクリーンルーム内のダウンフローの流速や、加熱処理装置の上方に配置されるファンからのダウンフローの流速によっても加熱処理装置への流入量が変化し、加熱処理装置内の気流も変化する。
【0008】
また、2つ又は3つ以上の加熱処理装置が直列に配置され、ガラス基板の搬送方向上流側の加熱処理装置での加熱温度が高い場合には、下流側の加熱処理装置の搬入口からは高温の空気が流入するため、搬入口付近での基板温度が高くなることが予想される。さらに、加熱処理装置内の気流が不均一な場合には、気流速度が速い領域において基板温度が低く、気流速度が遅い(または滞留している)領域において基板温度が高くなる場合もあり得る。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、気流制御を通して基板を均一に加熱することが可能な加熱処理装置およびこれを備える塗布現像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、基板を収容可能で、前記基板が通過する搬入口および搬出口を有する筐体と、前記搬入口から前記搬出口へ向かう方向に前記基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により前記筐体内を搬送される前記基板を加熱する加熱プレートと、前記筐体に設けられる排気口であって、前記筐体内を排気する排気部に接続され前記搬入口および前記搬出口から前記排気口に至る気流を形成する当該排気口と、前記搬入口および前記搬出口の一方または双方に臨んで設けられる吸気口であって、前記吸気口から吸気することにより前記気流を調整する当該吸気口とを備える加熱処理装置が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成ユニットと、露光された前記レジスト膜を現像する現像ユニットと、前記レジスト膜を加熱するために設けられる、第1の態様の加熱処理装置とを含むレジスト塗布現像装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、気流制御を通して基板を均一に加熱することが可能な加熱処理装置およびこれを備える塗布現像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるレジスト塗布現像装置を模式的に示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態による加熱処理装置を構成するオーブンを示す斜視図である。
【図3】図2に示すオーブンの概略断面図である。
【図4】図2に示すオーブンの他の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態による加熱処理装置を示す斜視図および一部断面図である。
【図6】図5に示す加熱処理装置に設けられる吸気ボックスを示す斜視図である。
【図7】図6に示す吸気ボックスの側面図である。
【図8】図2に示す加熱処理装置の効果を確認するために行った実験に使用した実験用の基板を説明する説明図である。
【図9】図8に示す実験用の基板を用いて行った実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態による加熱処理装置を説明する。以下の説明において、同一または対応する部品または部材には、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態による加熱処理装置が好適に利用され得るレジスト塗布現像システムを説明する。
図示のとおり、レジスト塗布・現像処理システム100は、複数のガラス基板S(以下、単に基板Sと記す)を収容するカセットCが載置されるカセットステーション1と、基板Sにレジスト塗布および現像を含む一連の処理を行う処理ステーション2と、基板Sに露光処理を施す露光装置9との間で基板Sの受け渡しを行うインターフェースステーション4とを備えている。カセットステーション1、処理ステーション2、およびインターフェースステーション4は、図中のX方向に沿って配置されている。
【0016】
カセットステーション1は、カセットCを図中のY方向に並置可能な載置台12と、載置台12のX方向側に結合され、処理ステーション2との間で基板Sの搬入出を行う搬送装置11とを備える。搬送装置11は搬送アーム11aを有し、搬送アーム11aは、Y方向に延びるガイド10に沿って移動可能であり、上下動、前後動および水平回転可能である。
【0017】
処理ステーション2には、カセットステーション1側からインターフェースステーション4側に向かって、エキシマUV照射ユニット(e−UV)21、スクラブ洗浄ユニット(SCR)22、加熱処理ユニット(HP)23、アドヒージョンユニット(AD)24、冷却ユニット(COL)25、レジスト塗布ユニット(CT)26、減圧乾燥ユニット(DP)27、加熱処理ユニット(HT)28、および冷却ユニット(COL)29が順に配列されている。
また、処理ステーション2には、インターフェースステーション4側からカセットステーション1側に向かって、現像ユニット(DEV)30、加熱処理ユニット(HT)31、冷却ユニット(COL)32、および検査装置(IP)35が順に配列されている。
【0018】
これらのユニット(およびユニット間)にはコロ搬送機構等が設けられている。これにより、基板Sは、図中の矢印Aで示す搬送ラインAと、矢印Bで示す搬送ラインBとに沿って上記のユニットに順次搬送される。
【0019】
このように構成されたレジスト塗布現像処理システム100において、基板Sは以下のように処理される。
まず、搬送装置11の搬送アーム11aにより、カセットステーション1の載置台12に載置されたカセットCから基板Sが取り出され、搬送ラインAに沿って、処理ステーション2のエキシマUV照射ユニット21へと搬送される。ここで、紫外域光を発する紫外域光ランプから基板Sに対して紫外域光が照射され、基板S上に吸着した有機物が除去される。次にスクラブ洗浄ユニット22へ基板Sが搬送され、洗浄液(たとえば脱イオン水(DIW))が基板Sに供給されつつブラシ等の洗浄部材により基板Sの表面が洗浄され、ブロワー等により乾燥される。洗浄乾燥された基板Sは、加熱処理ユニット23へ搬送され、加熱されて更に乾燥される。次いで基板Sは、アドヒージョンユニット24へ搬送され、加熱した基板Sに対してヘキサメチルジシラン(HMDS)を吹き付けることにより基板Sに対して疎水化処理が行われる。疎水化処理後、基板Sは冷却ユニット25へ搬送され、基板Sに対して冷風を吹き付けることによって基板Sが冷却され、所定の温度に維持される。
【0020】
続けて基板Sは、フォトレジスト塗布ユニット26へ搬送される。フォトレジスト塗布ユニット26内では、基板Sが搬送ラインAに沿って移動しながら、基板S上にフォトレジスト液が供給され、基板S上にフォトレジスト膜が形成される。
【0021】
フォトレジスト膜が形成された基板Sは、搬送ラインA上を搬送されて、内部空間を減圧可能に構成される減圧乾燥ユニット27へ搬送され、減圧雰囲気下でフォトレジスト膜が乾燥される。次に、基板Sは加熱処理ユニット28へ搬送される。ここでは、基板Sが加熱され、フォトレジスト膜に含まれる溶剤等が除去される。加熱処理後、基板Sは冷却ユニット29へ搬送され、基板Sに対して冷風を吹き付けることによって基板Sが冷却される。
【0022】
冷却ユニット29で冷却された基板Sは、搬送ラインA上を下流側端部まで搬送された後、インターフェースステーション4の上下動、前後動および水平回転可能な搬送アーム43によって基板Sの受け渡し部であるロータリーステージ(RS)44に搬送される。次に、基板Sは、搬送アーム43によって外部装置ブロック90の周辺露光装置(EE)に搬送される。周辺露光装置(EE)では、基板Sの外周部のフォトレジスト膜を除去するため、基板Sに対して露光処理が行われる。続いて、基板Sは、搬送アーム43により露光装置9に搬送され、回路パターンに対応したパターンを有するフォトマスクを介してフォトレジスト膜が露光される。なお、基板Sは、ロータリーステージ44上のバッファカセットに一時的に収容された後に、露光装置9に搬送される場合がある。露光処理が終了した基板Sは、搬送アーム43により外部装置ブロック90のタイトラー(TITLER)に搬送され、ここで所定の情報が基板Sに書き込まれる。
【0023】
その後、基板Sは搬送ラインB上を搬送されて現像ユニット30に至る。現像ユニット30では、後述するように、露光されたフォトレジスト膜が現像液により現像され、リンス液により現像液が洗い流され、リンス液が乾燥される。
【0024】
次に、基板Sは、搬送ラインB上を搬送されて加熱処理ユニット31に至り、ここで加熱され、フォトレジスト膜に残る溶剤およびリンス液(水分)が除去される。なお、加熱処理ユニット31においても、基板Sは、コロ搬送機構によって搬送ラインB上を搬送されながら加熱される。現像ユニット30と加熱処理ユニット31との間には、現像液の脱色処理を行うi線UV照射ユニットを設けても良い。加熱処理ユニット31での加熱処理が終了した基板Sは、冷却ユニット32搬送されて、ここで冷却される。
【0025】
冷却された基板Sは、検査ユニット35へ搬送され、たとえばフォトレジストパターン(ライン)の限界寸法(CD)の測定などの検査が行われる。この後、基板Sは、カセットステーション1に設けられた搬送装置11の搬送アーム11aにより載置台12に載置された所定のカセットCに収容され、一連の処理が終了する。
【0026】
次に、図2から図9を参照しながら、上記のレジスト塗布現像システム100の加熱処理ユニット28および31(本発明の実施形態による加熱処理装置)について説明する。
図2は、加熱処理ユニット28および31を構成するオーブン28aの斜視図である。加熱処理ユニット28(プリベーク用)は、基板搬送方向に組み合わされた2つのオーブン28aを有している。また、加熱処理ユニット31(ポストベーク用)は、基板搬送方向に組み合わされた3つのオーブン28aを有している。これらの加熱処理ユニット28および31は、組み合わされるオーブン28aの数が異なる以外には、ほぼ同一の構成を有しているため、以下では、加熱処理ユニット28を説明する。
【0027】
加熱処理ユニット28を構成するオーブン28aは、図2に示すように筐体6と、筐体6内において基板を搬送するための複数のコロ部材50とを有している。筐体6は、ヒンジ6hにより結合される上部筐体6tおよび下部筐体6bより構成され、ヒンジ6hにより上部筐体6tは開閉可能である。
図3(図2に示すオーブン28aの基板搬送方向に沿った断面図)を参照すると、オーブン28aには、基板搬送方向の上流端および下流端において基板Sの搬送口61,62が設けられている。本実施形態においては、搬送口61,62の高さは約40mmであり、搬送口61,62の幅は、使用される基板Sの幅より数10mm広い。
【0028】
複数のコロ部材50は、基板搬送方向に沿って所定の間隔で配置されており、各々は基板搬送方向と直交する方向(紙面垂直方向)に延びている。また、コロ部材50は、図示しない駆動機構により、中心軸を回転中心として回転可能である。これにより、コロ部材50は基板Sを支持すると共に、基板搬送方向に所定の搬送速度で基板Sを搬送することができる。
【0029】
複数のコロ部材50の間には下部ヒータ71が配置されている。下部ヒータ71は、コロ部材50により支持される基板Sの下面に接しない限りにおいて、基板Sの下面に近接している。下部ヒータ71は、たとえばマイカヒータやセラミックヒータなどにより構成することができる。また、下部ヒータ71には図示しない温度センサ(たとえば熱電対や測温抵抗体)が設けられ、所定の温度に維持され得る。下部ヒータ71により、基板Sの下方から、コロ部材50により搬送される基板Sが加熱される。なお、下部ヒータ71によって下部筐体6bが過度に加熱されないように、コロ部材50および下部ヒータ71の下方には断熱材6sが配置されている。
【0030】
上部筐体6tの下面には、上部ヒータ72が所定の間隔で配置されている。上部ヒータ72は、下部ヒータ71の幅(基板搬送方向に沿った長さ)よりも大きい幅を有している以外は、下部ヒータ71と同じ構成を有しており、図示しない温度センサにより下部ヒータ71と同じ温度に維持される。上部ヒータ72により、コロ部材50により搬送される基板Sは上方からも加熱される。上部ヒータ72および下部ヒータ71より、基板Sは、所定の温度まで速やかに且つ均一に加熱され得る。
なお、上部ヒータ72および下部ヒータ71の双方を設けることが好ましいが、他の実施形態においては、上部ヒータ72を設けることなく下部ヒータ71のみを設けても良い。
【0031】
また、ヒンジ6hにより上部筐体6tを開いた状態を図4に示す。このように開くことにより、筐体6内のコロ部材50、上部ヒータ72、および下部ヒータ71のメンテナンスを容易に行うことができる。図示のとおり、コロ部材50は、筐体6における基板搬送方向に沿った側壁に支持されている。この場合、軸受けなどが用いられることは勿論である。
【0032】
次に、図5から図7までを参照しながら、上述のオーブン28aを含む加熱処理ユニット28について説明する。
図5(a)を参照すると、加熱処理ユニット28は、排気ユニット67を介して基板搬送方向に組み合わされる2つのオーブン28aと、これら2つのオーブン28aに対し図中の基板搬送方向の上流側および下流側にそれぞれ取り付けられる2つの吸気ボックス68とを備えている。ただし、説明の便宜上、図中では吸気ボックス68を加熱処理ユニット28から離して図示している。
【0033】
2つのオーブン28aは、図3と図5(a)とを対比すると容易に理解されるように、搬送口61(図3参照)どうしで連結されている。2つのオーブン28aの筐体6が加熱処理ユニット28の筐体に相当し、基板搬送方向の上流側のオーブン28aの搬送口62が加熱処理ユニット28における基板Sの搬入口に相当し、下流側のオーブン28aの搬送口62が加熱処理ユニット28における基板Sの搬出口に相当する。以下の説明の便宜上、加熱処理ユニット28の搬入口を搬入口62Iと記し、搬出口を搬出口62Oと記す。
【0034】
加熱処理ユニット28においては、上流側のオーブン28aの上部ヒータ72および下部ヒータ71と、下流側のオーブン28aの上部ヒータ72および下部ヒータ71とを別個に制御してもよい。たとえば、基板Sを130℃程度の目標温度に加熱する場合、上流側のオーブン28aにおける温度を例えば170℃から180℃までの範囲に設定し、下流側のオーブン28aにおける温度を例えば140℃から150℃までの範囲に設定すれば、コロ部材50により搬送される(つまり移動している)基板Sを、上流側のオーブン28aにて急速に加熱した後に、下流側のオーブン28aにて実温度がほぼ130℃となるように加熱することができる。すなわち、基板Sを短時間に所定温度まで加熱することが可能となる。
【0035】
排気ユニット67は、連結されるオーブン28aの搬送口61(図3参照)の上方においてオーブン28aの側壁により支持されるとともに、上部筐体6tとの間に隙間ができないように載置されている。排気ユニット67には、複数(図示の例では3つ)の排気ポート67pが、基板搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配置されている。排気ポート67pの下端は、筐体6内に向けて開口しており、上端は、所定の集合管に合流した後に又は別個に排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は、レジスト塗布現像システム100が設置されるクリーンルーム等に配備される排気設備(用役設備)であってよく、レジスト塗布現像システム100用に設けられる排気設備であってもよい。
【0036】
また、図5(a)のI−I線に沿った断面図である図5(b)を参照すると、排気ポート67pの下方には、排気ユニット67に沿って延びるプレート67dが設けられている。オーブン28aにより加熱されるレジスト膜からはレジスト中に含まれる溶剤等が放出され、図5(b)中の矢印Bのように、プレート67dの上方を流れて排気ポート67pを通して排気される。排気ポート67p内で溶剤等が冷やされると、排気ポート67pの内壁に溶剤等が吸着するが、吸着した溶剤等が内壁から剥離し、基板Sの上に落下すると、欠陥が生じることとなる。プレート67dは、そのような落下物が基板S上に落下させないために設けられている。なお、プレート67dは、排気ユニット67とプレート67dとの間を流れる排気の温度が高いため、溶剤等が吸着することは殆どない。
【0037】
図6は、加熱処理ユニット28の吸気ボックス68を示す斜視図である。この図では、特に加熱処理ユニット28の搬入口62Iに設けられる吸気ボックス68を示している。
図示のとおり、吸気ボックス68は、基板Sの搬送経路を画定する本体68aと、本体68a上に配置される吸気部68bとを有している。本体68aは、扁平な方形筒形状を有し、一方の開口が、基板Sが搬入される搬入口68Iであり、他の開口が、加熱処理ユニットの搬入口62Iと結合される搬出口68Oである。吸気部68bは、基板搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配置される複数(図示の例では4つの)吸気導管68c1〜68c4を有している。なお、以下の説明において、各吸気導管68c1〜68c4を区別する必要がない場合、単に吸気導管68cと記す。
【0038】
図7(図6のA−A線に沿った断面図)を参照すると、本体68の内部には、オーブン28a内に設けられるコロ部材50とほぼ同様の構成を有するコロ部材68Rが設けられており、これにより、搬入口68Iから搬入される基板Sを搬出口68O、すなわち、加熱処理ユニットの搬入口62Iへ搬送することができる。
また、吸気部68bは、第1室681および第2室682を有し、これらはコの字形状を有する吸気導管68cにより連通している。第1室681は、吸気導管68c1〜68c4に対応して区画室に区画されており、各区画室の底面に本体68内に開口する孔68hが形成されている。一方、第2室682は、区画されておらず、基板搬送方向と直交する方向に沿って一端から他端まで延びる一の空間を画成する。また、第2室682の一端には開口部68eが形成され、開口部68eは吸気装置(図示せず)に接続されている。このため、第2室682は、複数の吸気導管68c1〜68c4に対する集合管として機能する。以上の構成により、本体68a内の空気は、孔68hから第1室681、吸気導管68c1〜68c4、第2室682、および開口部68eを通して吸気される。このため、図7中の矢印Aで示すように吸気ボックス68の搬入口68Iから流入し、加熱処理ユニット28の搬入口62I加熱処理ユニット28内へ流入する空気(矢印B)の流量を調整することができる。なお、開口部68eに接続される吸気装置は、加熱処理装置28を備えるレジスト塗布現像システム100が設置されるクリーンルーム等に配備される排気設備(用役設備)であってよく、加熱処理装置28用に設けられる排気設備であってもよい。
【0039】
なお、図7に示すように、吸気導管68cにはダンパー68dが設けられており、第1室681が吸気導管68cごとに区画されていることもあって、吸気導管68cを通して吸気される空気の吸気量を調整することが可能となる。
【0040】
また、図5に示す、加熱処理ユニット28の搬出口62Oに取り付けられる吸気ボックス68もまた、図6および図7を参照して説明した吸気ボックス68と同様に、加熱処理ユニット28の搬出口62Oから加熱処理ユニット28内へ流入する空気の流量を調整することができる。
【0041】
なお、吸気ボックス68では、本体68aが扁平な方形筒形状を有し、基板Sの上方、下方、および両側方を覆っているため(基板Sに対してトンネル構造となっているため)、これらの方向から加熱処理ユニット28の搬入口62Iへ流入する空気を低減できる。よって、加熱処理ユニット28の搬入口62Iへ流入する空気を確実に制御することができる。実際のところ、吸気ボックス68による吸気を行わずに、加熱処理ユニット28の搬入口62Iへ流入する空気の流量を、トンネル構造としなかった場合とトンネル構造とした場合とにおいて測定したところ、前者では約7.83m/分、後者では約2.71m/分という結果が得られた。すなわち、吸気ボックス68の搬入口68Iから流入して加熱処理ユニット28へ至る気流を吸気ボックス68により効率よく調整できることが示唆される。
【0042】
次に、加熱処理ユニット28において、吸気ボックス68により加熱処理ユニット28内へ流入する空気の流量を制御することにより、基板Sの温度均一性を改善できることを確認するために行った実験について説明する。
図8は、基板Sの温度均一性を調べるにあたって用意した実験用の基板を示す図である。図示のとおり、実験用の基板Sには、温度センサFP1〜FP5、MP1〜MP5、およびEP1〜EP5が設けられている。具体的には、温度センサFP1〜FP5は、基板Sの搬送方向の前端から約20mmの位置に、搬送方向と直交する方向に所定の間隔(図示の例では452.5mm)をおいて配置されている。温度センサMP1〜MP5は、基板Sにおける搬送方向の中間位置において所定の間隔をおいて配置され、温度センサEP1〜EP5は、基板Sの搬送方向の後端から約20mmの位置に所定の間隔をおいて配置されている。
【0043】
このよう実験用の基板Sを加熱処理ユニット28へ搬送するとともに、上流側の吸気ボックス68における吸気条件を変えることにより、基板S内の温度分布を調べた。上流側の吸気ボックス68の各吸気導管68c1〜68c4(図6参照)における圧力は、以下のとおりである。
【0044】
<条件1>
・吸気導管68c1: 40Pa
・吸気導管68c2: 40Pa
・吸気導管68c3: 80Pa
・吸気導管68c4: 85Pa
<条件2>
・吸気導管68c1: 20Pa
・吸気導管68c2: 20Pa
・吸気導管68c3: 70Pa
・吸気導管68c4: 70Pa
なお、これらの圧力は、吸気導管68c1〜68c4にマノメータを取り付け、ダンパー68d調整することにより設定した。吸気導管68c3および68c4における圧力が、吸気導管68c1および68c2における圧力よりも高い(すなわち吸気量が多い)理由は、この実験を行った環境によるものである。具体的には、実験に使用した加熱処理ユニット28の上流側であって、吸気導管68c3および68c4に近い位置に他のユニットが配置され、このユニットから空気が送出されているためである。また、この実験においては、加熱処理ユニット28の下流側には吸気ボックス68を設けなかった。さらに、加熱処理ユニット28の下部ヒータ71および上部ヒータ72の設定温度は、上記の条件1および2において同一とし、基板Sの搬送速度も条件1および2おいて同一とした。
【0045】
図9(a)は、上記の条件1で行った実験の結果を示すグラフであり、図9(b)は、条件2で行った実験の結果を示すグラフである。いずれのグラフにおいても、曲線Fは、温度センサFP1、FP3、およびFP5(搬送方向前端側)の測定値の平均値を示し、曲線Mは、温度センサMP1、MP3、およびMP5の測定値の平均値を示し、曲線Eは、温度センサEP1、EP3、およびEP5(搬送方向後端側)の測定値の平均値を示している。
【0046】
図9(a)のグラフに示されるように、加熱処理ユニット28へ基板Sを搬入していくと、基板Sの前端側から温度が上昇し始め、続けて中央部および後端側においても温度が上昇していく。その後、加熱処理ユニット28から搬出されるまで温度が徐々に上昇し、搬出されるとともに温度は急激に低下していく。
図9(a)と図9(b)とを比較すると、条件1の場合には、基板Sの搬送方向の前端側における温度に比べて後端側における温度が比較的顕著に低くなっているが、条件2の場合には、基板Sの搬送方向の前端側における温度と、後端側における温度がほぼ等しい(温度均一性に優れている)ことが分かる。各吸気導管68c1〜68c4の圧力は、条件1に比べ条件2において低いため、吸気導管68c1〜68c4から吸気される空気の吸気量は、条件2の方が少ない。このため、加熱処理ユニット28へ流入する空気の量は、条件2の方が多い。基板Sは、下部ヒータ71および上部ヒータ72からの輻射熱だけでなく、加熱処理ユニット28へ流入し、特に上部ヒータ72により加熱される空気によっても加熱されるため、流入量の多い条件2の場合に、特に後端側において、より効率よく加熱されたものと考えることができる。このように吸気ボックス68における吸気量を調整することにより、基板温度均一性を改善できることが理解される。
【0047】
なお、加熱処理ユニット28の基板搬送方向の下流側にのみ吸気ボックス68を設ける場合であっても、この吸気ボックス68からの吸気により気流を制御し、基板温度の均一性を制御できる。もちろん、上流側および下流側の双方に設けても、気流の制御を通して基板温度均一性を制御することは可能である。
【0048】
以上説明したとおり、本発明の実施形態による加熱処理装置(加熱処理ユニット28および31)によれば、基板Sの搬入口62Iおよび搬出口62Oにおける吸気導管68c1〜68c4からの吸気によって、搬入口62Iおよび搬出口62Oから筐体6内へ流入し、筐体6の上部の排気ポート67pから排気される空気の気流(流量、フローパターン等)を制御することができる。したがって、筐体6内の気流により生じ得る基板温度の不均一化を排除して、均一な加熱処理を実現することが可能となる。
【0049】
仮に、搬入口62Iから流入する空気の量を低下させるべき状況において、排気ポート67pからの排気量を低下させるとすれば、レジスト膜から放出される溶剤等を十分に排気できない事態ともなる。この場合、溶剤等が筐体6の内部に付着し、やがては剥離して基板を汚染するおそれがある。しかし、加熱処理ユニット28および31によれば、搬入口62Iおよび搬出口62Oに臨む位置において吸気導管68c1〜68c4から吸気することにより筐体6内への流入量を制御できるため、排気ポート67pからの排気量を低下させることなく、レジスト膜からの溶剤等を十分に排気することができる。換言すると、溶剤等の排気制御と気流制御とを独立して行うことが可能となり、プロセスウィンドウを拡大することができる。
【0050】
また、加熱処理ユニット28および31においては、基板搬送方向と直交する方向に配置される複数の排気ポート67pにより筐体6内が排気され、しかも、複数の吸気導管68c1〜68c4も同じ方向に配置されているため、その方向において均一な気流を形成することができる。しかも、吸気導管68c1〜68c2の各々に設けられたダンパー67dを調整することによっても、加熱処理ユニット28および31内の気流を制御することができる。このことは、上述の実験結果の説明において、実験を行った環境に固有の影響を調整したことからも明らかである。
【0051】
また、本実施形態においては、加熱処理ユニット28および31は、オーブン28aを組み合わせることにより構成されるため、加熱されるレジスト膜の厚さや性質および他のユニットにおけるタクトタイム等に応じてオーブン28aの数を決定することができる。すなわち、加熱処理ユニット28および31の設計の自由度を高くすることができる。
【0052】
以上、実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲内において種々に変形および変更することができる。
たとえば、図6および図7を参照しながら説明した吸気ボックス68によらず、加熱処理ユニット28および31の搬入口62Iおよび搬出口62Oの上方に(筐体6に)複数の吸気口を設け、これらの吸気口からの吸気により、搬入口62Iから排気ポート67pに至る空気の流れを調整するようにしてもよい。また、図5を参照しながら説明した排気ユニット67と同様な構成を有するユニットを搬入口62Iおよび搬出口62Oを臨む位置に(加熱処理ユニット28および31へ流入する空気を吸気可能な位置に)配置してもよい。
【0053】
また、排気ユニット67には、複数の排気ポート67pの代わりに、排気ユニット67の長手方向(基板搬送方向と直交する方向)に延びるスリットを設けてもよい。
さらに、加熱処理ユニット28および31は、オーブン28aの組み合わせによらず、基板Sの搬入口および搬出口と、排気ポートとを有する一体の筐体により構成してもよい。
また、加熱処理ユニット28について説明したが、上述のとおり加熱処理ユニット31も同様の構成を有して良く、また、加熱処理ユニット23(図1参照)もまた同様の構成を有して良い。換言すると、加熱処理ユニット23、28、および31の少なくとも一つが上述の構成を有して良い。
【0054】
また、上述の吸気ボックス68では、コの字形状を有する吸気導管68cを用い、筐体6からの空気を、集合管として機能する第2室682に合流した後、吸気ボックス68の側壁に形成された開口部68eから外部へ排気しているが、上方に延びる吸気導管を吸気ボックス68に設けてもよい。この場合、上方に延びる吸気導管は、集合管により互いに合流した後に吸気装置に接続してもよいし、別個に吸気装置に接続してもよい。
【0055】
また、排気ポート67p内の圧力と吸気導管68c内の圧力との差を測定する差圧計を設け、両者間の差圧をモニターしてもよい。これによれば、加熱処理ユニット28および31内の気流の変化を把握することが可能となる。たとえば排気ポート67pの内壁に溶剤等が堆積することにより排気能力が低下した場合でも、その事実を差圧計から知ることができる。
【0056】
また、本発明の実施形態による加熱処理装置および塗布現像装置は、ガラス基板を使用する場合だけでなく、半導体ウエハや樹脂基板(シート)を使用する場合にも適用可能である。また、基板に形成される膜は、レジスト膜に限られず、他の塗布膜を基板に形成する場合にも、本発明の実施形態による加熱処理装置および塗布現像装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100・・・レジスト塗布現像装置、28a・・・オーブン、50・・・コロ部材、71・・・下部ヒータ、72・・・上部ヒータ、61,62・・・(オーブン28aの)搬送口、28,31・・・加熱処理ユニット、67・・・排気ユニット、67p・・・排気ポート、68・・・吸気ボックス、68c1〜68c4・・・吸気導管、S・・・基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容可能で、前記基板が通過する第1の搬入口および第1の搬出口を有する筐体と、
前記第1の搬入口から前記第1の搬出口へ向かう方向に前記基板を搬送する第1の搬送機構と、
前記第1の搬送機構により前記筐体内を搬送される前記基板を加熱するヒータと、
前記筐体に設けられる排気口であって前記第1の搬入口および前記第1の搬出口から前記排気口に至る気流を形成可能な当該排気口と、
前記第1の搬入口および前記第1の搬出口の一方または双方に臨んで設けられ、吸気により前記気流を調整する当該吸気口と
を備える加熱処理装置。
【請求項2】
前記第1の搬入口および前記第1の搬出口の一方または双方に取り付けられる吸気ユニットを更に備え、
前記吸気口が前記吸気ユニットに設けられる、請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記吸気ユニットが、
前記基板が搬入される第2の搬入口と、前記第2の搬入口から搬入された基板を搬出する第2の搬出口であって前記第1の搬入口と結合可能な当該第2の搬出口とを有し、前記第2の搬入口および前記第1の搬出口を除いて板部材で覆われるケーシング;並びに
前記ケーシングに設けられ、前記第2の搬入口から搬入される前記基板を前記第2の搬出口へ搬送する第2の搬送機構;
を備える、請求項2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記吸気ユニットには複数の前記吸気口が設けられる、請求項2または3に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記吸気口に、吸気量調整器を有する吸気ダクトが接続される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記排気口が前記筐体の上面に設けられる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の加熱処理装置。
【請求項7】
前記ヒータが、前記第1の搬入口から前記第1の搬出口へ向かう方向に並置される第1の加熱プレートと第2の加熱プレートを含み、前記第1および第2の加熱プレートの温度を別個に制御され得る、請求項1から6までのいずれか一項に記載の加熱処理装置。
【請求項8】
基板にレジスト膜を形成するレジスト膜形成ユニットと、
露光された前記レジスト膜を現像する現像ユニットと、
前記レジスト膜を加熱するために設けられる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の加熱処理装置と
を含むレジスト塗布現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−124365(P2012−124365A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274611(P2010−274611)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】