説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体基板の結晶性の悪化を招くことなく、素子分離トレンチの幅を小さくできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】マスク用窒化膜51およびパッド酸化膜52からなるハードマスクを用いて、シリコン基板2がエッチングされることにより、素子分離トレンチ21が形成される。素子分離トレンチ21の内面に熱酸化法によりライナー酸化膜22が形成される。続いて、半導体基板2を窒素雰囲気中に配置して、半導体基板2が熱処理される。熱処理後に、エッチングにより、ライナー酸化膜22が薄膜化される。そして、HDP−CVD法により、絶縁物23が素子分離トレンチ21内に埋め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置として、シリコン基板の表層部に複数の素子分離部と素子分離部に挟まれた活性領域(アクティブ領域)とが形成され、活性領域にメモリセル等の半導体素子が形成されているものが知られている。
素子分離部は、一般に、次のように形成される。まず、シリコン基板上にパッド酸化膜を形成する。次に、パッド酸化膜上に、窒化膜を形成する。エッチングにより、窒化膜およびパッド酸化膜を、活性領域に対応する部分を残して選択的に除去する。窒化膜およびパッド酸化膜をハードマスクとして用いてシリコン基板をエッチングすることにより、シリコン基板上に素子分離トレンチを形成する。次に、素子分離トレンチの内面にライナー酸化膜を形成する。続いて、素子分離トレンチを形成するためのエッチング時の結晶ダメージを回復させるために、窒素雰囲中で熱処理を行なう。より具体的には、この熱処理は、ハードマスクを構成する窒化膜に起因する応力によって活性領域縁部に生じる結晶欠陥をキュアするために行われる。この後、素子分離トレンチ内に絶縁物が堆積させられる。ライナー酸化膜は、熱処理時にシリコン表面が窒化することを防ぐために形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-87134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した半導体装置においては、活性領域上部の面積を大きくとることができれば、ゲート幅が拡大されるから、セル電流を大きくすることができる。アクティブ領域上部の面積を大きくするためには、素子分離トレンチの幅を小さくすればよい。しかし、素子分離トレンチの幅を狭くすると、素子分離トレンチ内へ絶縁物の埋め込み性が悪くなり、ボイドが生じるおそれがある。
【0005】
ライナー酸化膜を薄くしておけば、この問題を解決できる。ところが、ライナー酸化膜の膜厚を小さくすると、ライナー酸化膜の形成後に行われる窒素雰囲気中での熱処理のときに、素子分離トレンチの側壁のシリコン表面が窒化される。つまり、シリコン表面にSiNからなる窒化膜が形成される。窒化膜は、酸化膜より応力が大きいので、熱処理後の降温時の温度変化によって、Si/SiN界面に大きな応力が生じ、活性領域に転位が発生する。したがって、活性領域の結晶性が悪くなるから、半導体装置の特性が悪化する。
【0006】
この発明の目的は、半導体基板の結晶性の悪化を招くことなく、素子分離トレンチの幅を小さくできる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の半導体装置の製造方法は、活性領域を分離するための素子分離トレンチを半導体基板に形成する工程と、熱酸化処理によって、前記素子分離トレンチの内表面にライナー酸化膜を形成する工程と、前記ライナー酸化膜の形成後に、前記半導体基板を窒素雰囲気中に配置して、前記半導体基板を熱処理する熱処理工程と、前記ライナー酸化膜を薄膜化する工程と、前記素子分離トレンチ内に絶縁物を埋め込む工程とを含む(請求項1)。
【0008】
この半導体装置の製造方法では、素子分離トレンチの内表面に厚いライナー酸化膜が形成された状態で、熱処理が行われる。ライナー酸化膜はその後に薄膜化されるので、熱処理時には、ライナー酸化膜は、素子分離トレンチの内表面が窒化するのを防止するのに十分な膜厚を有していればよい。これにより、活性領域の結晶性が悪化するのを防止できる。そして、熱処理後に、ライナー酸化膜が薄膜化されることにより、素子分離トレンチの幅(ライナー酸化膜により区画されるトレンチ空間の幅)が広げられる。素子分離トレンチの幅が広げられた状態で、素子分離トレンチ内に絶縁物が埋め込まれる。したがって、絶縁物中にボイドが生じることを抑制または防止できる。
【0009】
この半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の結晶性の悪化を招くことなく、ライナー酸化膜の最終的な厚さを薄くすることができる。したがって、半導体基板の結晶性の悪化を招くことなく、素子分離トレンチの幅(ライナー酸化膜形成前の幅)を狭くすることができるようになる。
この発明の一実施形態では、前記ライナー酸化膜を薄膜化する工程が、前記ライナー酸化膜の当初(前記薄膜化する工程の前)の膜厚の半分以上の部分をエッチングする工程を含む(請求項2)。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記熱処理工程が、前記ライナー酸化膜形成のための熱酸化処理時の温度よりも高温の熱処理を含む(請求項3)。
この発明の一実施形態では、前記熱処理工程が、1100℃〜1200℃の熱処理工程を含む(請求項4)。
この発明の一実施形態では、前記ライナー酸化膜の当初(前記薄膜化する工程の前)の膜厚が8nm以上である(請求項5)。
【0011】
この発明の半導体装置は、活性領域を分離する素子分離トレンチが形成された半導体基板と、前記素子分離トレンチの内表面に形成された膜厚50Å以下のライナー酸化膜と、前記素子分離トレンチ内に埋め込まれた絶縁物とを含む(請求項6)。この半導体装置では、素子分離トレンチ内表面上のライナー酸化膜の膜厚が薄いので、素子分離トレンチの幅を狭くして、活性領域の上面部の幅を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置に形成されたメモリセルの構造を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、メモリセル領域の一部を示す模式的な平面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5A】図5Aは、図2〜図4に示す半導体装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの次の工程を示す模式的な斜視図である。
【図5C】図5Cは、図5Bの次の工程を示す模式的な斜視図である。
【図5D】図5Dは、図5Cの次の工程を示す模式的な斜視図である。
【図5E】図5Eは、図5Dの次の工程を示す模式的な斜視図である。
【図5F】図5Fは、図5Eの次の工程を示す模式的な斜視図である。
【図5G】図5Gは、図5Fの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図5H】図5Hは、図5Gの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図5I】図5Iは、図5Hの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図6】図6A〜図6Dは、図5Aから図5Bまでの製造工程の詳細を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置に設けられたメモリセルの構造を模式的に示す断面図である。
この半導体装置は、シリコン基板2を備えている。シリコン基板2には、メモリセル領域が設定されている。メモリセル領域には、図1に示すようなメモリセル1が複数個アレイ状に形成されている。メモリセル1は、シリコン基板2に形成されたMOS型電界効果トランジタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor。以下、「MOSトランジスタ」という。)と、電荷蓄積部として機能する第1および第2のサイドウォール12a,12bとを含む。MOSトランジスタは、ゲート部3と、第1および第2のLDD(Lightly Doped Drain)領域4a,4bと、第1および第2の不純物拡散領域5a,5bとを備えている。
【0014】
ゲート部3は、シリコン基板2の一主面上に形成されたゲート酸化膜6と、ゲート酸化膜6上に形成されたゲート電極7と、ゲート電極7上に形成された絶縁層8とを含む。ゲート酸化膜6は、たとえば、SiOからなる。ゲート電極7は、ゲート酸化膜6上に形成されたポリシリコン層9と、ポリシリコン層9上に積層されたタングステンシリサイド層10とを含む。つまり、ゲート電極7は、いわゆるポリサイド構造とされている。絶縁層8は、たとえば、SiNからなる。
【0015】
第1および第2のLDD領域4a,4bは、シリコン基板2の表層部のうち、ゲート部3直下のチャネル領域を挟む領域に、たとえば、n型の不純物を拡散することにより形成されている。第1および第2の不純物拡散領域5a,5bは、それぞれ、シリコン基板2の表層部のうちの第1および第2のLDD部4a,4bの外側領域に、たとえば、n型の不純物を拡散することにより形成されている。第1および第2の不純物拡散領域5a,5bは、MOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域として機能する領域である。たとえば、第1の不純物拡散領域5aがドレイン領域として使用され、第2の不純物拡散領域5bがソース領域として使用されてもよい。以下、第1の不純物拡散領域5aを「ドレイン領域5a」といい、第2の不純物拡散領域5bを「ソース領域5b」という場合がある。
【0016】
第1および第2のLDD領域4a,4bの深さおよび不純物濃度は、第1および第2の不純物拡散領域5a,5bの深さおよび不純物濃度よりも小さくされている。つまり、このMOSトランジスタでは、LDD(Lightly Doped Drain)構造が採用されている。
第1のサイドウォール12aおよび第2のサイドウォール12bは、ゲート部3の一方の側壁および他方の側壁にそれぞれ形成されている。以下、ドレイン領域5a側にあるサイドウォールを「ドレイン側サイドウォール」といい、ソース領域5b側にあるサイドウォールを「ソース側サイドウォール」という場合がある。第1のサイドウォール12a(ドレイン側サイドウォール)は、第1のLDD領域4a上に設けられている。第2のサイドウォール12b(ソース側サイドウォール)は、第2のLDD領域4b上に設けられている。
【0017】
各サイドウォール12a,12bは、内側酸化膜13と、内側窒化膜14と、外側酸化膜15と、外側窒化膜16をゲート部3の側面に順に積層したONON(Oxide-Nitride-Oxide-Nitride)層構造を有している。内側窒化膜14は、電荷を蓄積するための電荷蓄積膜である。内側酸化膜13および外側酸化膜15は、たとえば、SiOからなる。内側窒化膜(電荷蓄積膜)14および外側窒化膜16は、たとえば、SiNからなる。
【0018】
内側酸化膜13は、ゲート部3の側壁面における下端部を除いた部分に形成されている。電荷蓄積膜14は、内側酸化膜13の外側面とゲート部3の側壁面の下端部に形成されている。電荷蓄積膜14の下端部は、ゲート部3の下端部の側壁内に入り込んでいる。電荷蓄積膜14におけるゲート部3の側壁内に入り込んでいる部分の長さは、たとえば、1〜5nm程度である。外側酸化膜15は、電荷蓄積膜14の外側面に形成されている。シリコン基板2の露出面には、外側酸化膜15の下端部と繋がる酸化膜19が形成されている。外側窒化膜16は、外側酸化膜15の外側面と、酸化膜19におけるゲート部3の近傍部分とを覆うように形成されている。
【0019】
この実施形態では、電荷蓄積膜14の下端部がゲート部3の側壁内に入り込んでいるので、電荷蓄積膜14にホットエレクトロンが捕捉されやすくなる。なお、ゲート部3の上側に、ゲート部3の上面、内側酸化膜13の上端、電荷蓄積膜14の上端および外側酸化膜15の上端を覆うトップ酸化膜を形成してもよい。
メモリセル1への書き込み動作、読み出し動作および消去動作について説明する。メモリセル1への書き込み動作は、たとえば、第1の書き込み動作と、第2の書き込み動作とを含む。また、メモリセル1の読み出し動作は、たとえば、第1の読み出し動作と、第2の読み出し動作とを含む。以下、これらの各動作について説明する。
(a)第1の書き込み動作
ソース領域5bおよびシリコン基板2を接地し、ゲート電極7にたとえば10Vの書込電圧を印加し、ドレイン領域5aにたとえば6Vの電圧(ソースより高い電圧)を印加する。これにより、ソース領域5bからドレイン領域5aへと電子が向かい、ドレイン領域5aの近傍で生じたホットエレクトロンがドレイン側サイドウォール12a内の電荷蓄積膜14に飛び込んで捕捉される。
(b)第2の書き込み動作
ドレイン領域5aおよびシリコン基板2を接地し、ゲート電極7にたとえば10Vの書込電圧を印加し、ソース領域5bにたとえば6Vの電圧(ドレインより高い電圧)を印加する。これにより、ドレイン領域5aからソース領域5bへと電子が向かい、ソース領域5bの近傍で生じたホットエレクトロンがソース側サイドウォール12b内の電荷蓄積膜14に飛び込んで捕捉される。
(c)第1の読み出し動作
ドレイン領域5aおよびシリコン基板2を接地し、ゲート電極7にたとえば3Vの読出電圧を印加し、ソース領域5bにたとえば2Vの電圧(ドレインよりも高い電圧)を印加する。これにより、ソース領域5b近傍に大きな電界がかかる。したがって、ソース側サイドウォール12bの直下に電位障壁があっても(ソース側サイドウォール12bに電子が捕捉されていても)、電子は移動できる。しかし、ドレイン領域5a側には大きな電界がかからないので、ドレイン側サイドウォール12aの直下に電位障壁があると(ドレイン側サイドウォール12aに電子が捕捉されていると)電子が移動できず、電流が流れない。ドレイン側サイドウォール12aの直下に電位障壁がなければ、電子が移動できるので、電流が流れる。これにより、ドレイン側サイドウォール12aの捕捉電子の有無を検出できる。つまり、記憶値が「1」か「0」かを区別できる。
(d)第2の読み出し動作
ソース領域5bおよびシリコン基板2を接地し、ゲート電極7にたとえば3Vの読出電圧を印加し、ドレイン領域5aにたとえば2Vの電圧(ソースよりも高い電圧)を印加する。これにより、ドレイン領域5a近傍に大きな電界がかかる。したがって、ドレイン側サイドウォール12aの直下に電位障壁があっても(ドレイン側サイドウォール12aに電子が捕捉されていても)、電子は移動できる。しかし、ソース領域5b側には大きな電界がかからないので、ソース側サイドウォール12bの直下に電位障壁があると(ソース側サイドウォール12bに電子が捕捉されていると)電子が移動できず、電流が流れない。ソース側サイドウォール12bの直下に電位障壁がなければ、電子が移動できるので、電流が流れる。これにより、ソース側サイドウォール12bの捕捉電子の有無を検出できる。つまり、記憶値が「1」か「0」かを区別できる。
(e)消去動作
シリコン基板2を接地し、ゲート電極7にたとえば−6Vの負電圧(消去電圧)を印加し、ドレイン領域5aに−6Vの負電圧を印加し、ソース領域5bに6Vの正電圧を印加する。これにより、ソース領域5bおよびドレイン領域5aの界面付近で電子と正孔が対生成される。対生成された電子と正孔のうちの正孔が、ゲート電極7側に引かれて両サイドウォール12a,12bに入る。各サイドウォール12a,12bに入った正孔によって、そのサイドウォール12a,12b内のマイナス電荷(捕捉電子)が打ち消される。
【0020】
図2は、前記半導体装置のメモリセル領域の一部を示す模式的な平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
シリコン基板2の表層部には、直線状に延びた複数の素子分離部20が、所定間隔をおいて互いに平行に形成されている。複数のゲート電極7は、平面視において素子分離部20に直交する方向に、直線状に素子分離部20の長手方向に所定間隔をあけて互いに平行に形成されている。隣り合う素子分離部20の間の領域がアクティブ領域(活性領域)30となる。各素子分離部20の上方には、平面視において素子分離部20の長手方向に延びた直線状のビットライン25が配置されている。素子分離部20は、シリコン基板2の表層部に形成された素子分離トレンチ21と、素子分離トレンチ21の内面に形成されたライナー酸化膜22と、素子分離トレンチ21間のアクティブ領域30が突出するように、素子分離トレンチ21の深さ方向途中まで埋め込まれた絶縁物(たとえば酸化膜)23とを含む。
【0021】
絶縁物23は、素子分離トレンチ21内全体に埋め込まれているのではなく、その深さ途中まで埋め込まれている。このため、隣り合う素子分離部20間のアクティブ領域30の上部の表面積を大きくできる。これにより、ゲート電極7は、平面視におけるアクティブ領域30との重なり領域の面積よりも大きな面積でアクティブ領域30に対向する。したがって、ゲート幅を拡大することができるので、チャネルに大きな電流を流せるようになる。つまり、この実施形態では、メモリセル1に含まれるMOSトランジスタがフィン型トランジスタ構造とされている。
【0022】
メモリセル領域において、シリコン基板2上には、図4に示すように、複数のメモリセル1(ゲート部3)が250nm以下(たとえば、240nm)の一定ピッチで形成されている。ゲート部3の長さ(チャネル幅方向の長さ)は、たとえば、100nm〜120nm程度である。ゲート電極7と直交する方向に隣り合う一対のメモリセル1においては、ゲート部3(ゲート電極7)を中心とするドレイン領域とソース領域との位置が互いに反対になるように形成されている。より具体的には、一方のメモリセル1のドレイン領域と、他方のメモリセル1のソース領域とは共通の不純物拡散領域5a,5bからなる。したがって、隣り合う2つのメモリセル1においては、ドレイン側サイドウォール12aどうしまたはソース側サイドウォール12bどうしが向かい合っている。
【0023】
シリコン基板2上の酸化膜19の表面、サイドウォール12a,12bの表面およびゲート部3の表面には、たとえばSiNからなる窒化膜17が形成されている。窒化膜17の表面上には、たとえばBPSG(Boron Phosphorous Silicate Glass)からなる層間絶縁膜18が形成されている。層間絶縁膜18には、隣り合う2つのメモリセル1によって共有される不純物拡散領域(ドレイン領域5aまたはソース領域5b)をビットライン25に電気的に接続するためのコンタクトプラグ40が貫通して設けられている。
【0024】
コンタクトプラグ40は、バリアメタル膜43と金属プラグ44とを含む。層間絶縁膜18を貫通して形成されたコンタクト孔41の側壁は、層間絶縁膜18より緻密なシール膜42によって覆われている。バリアメタル膜43は、シール膜42の表面およびコンタクト孔41の底面部を覆うように形成されている。金属プラグ44は、バリアメタル膜43に包囲された状態でコンタクト孔41内に埋め込まれている。
【0025】
シール膜42は、たとえばSiNからなり、厚さは5nm〜10nm程度であってもよい。この実施形態では、シール膜42の厚さは約7nmである。バリアメタル膜43は、Ti/TiNの2層構造膜からなっていてもよい。Ti層は、シール膜42に接し、その厚さは30nm程度であってもよい。TiN層は、Ti層上に積層され、その厚さは5nm〜100nm程度、より好ましくは10nm〜20nm程度であってもよい。金属プラグ44は、たとえばタングステン(W)からなる。金属プラグ44は、たとえば、フッ素を含む原料ガスを用いて、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により形成される。フッ素を含む原料ガスは、BPSGからなる層間絶縁膜18に対する腐食性を有しているけれども、シール膜42により、層間絶縁膜18の腐食が回避される。
【0026】
この実施形態では、コンタクト孔41の側壁を覆うように、層間絶縁膜18より緻密なシール膜42が形成されているので、その表面が滑らかである。したがって、バリアメタル膜43をシール膜42に密着させることができ、かつバリアメタル膜43は貫通孔のない良好な膜質を有することができる。このため、コンタクトホール41内に金属プラグ44を堆積させるときに、原料ガスがバリアメタル膜43およびシール膜42を透過して、層間絶縁膜18に達するのを防止できる。このため、フッ素を含む原料ガスによって、層間絶縁膜18が腐食したり、金属プラグ44の材料であるタングステンが層間絶縁膜18内に染み出したりするのを防止できる。つまり、層間絶縁膜18とコンタクトプラグ40との間に明瞭な界面を形成できるから、コンタクト間ショート等の異常を抑制できる。
【0027】
図5A〜図5Fは、図2〜図4に示す半導体装置の製造工程の一例を示す模式的な斜視図である。図5G〜図5Iは、図5Fに続く製造工程を順に示す模式的な断面図である。
まず、熱酸化法により、シリコン基板2上に、図5には図示しないSiOからなるパッド酸化膜51(図6参照。たとえば、10nm厚)が形成される。次に、パッド酸化膜上に、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、図5には図示しないマスク用窒化膜52(図6参照。たとえば、80nm厚))が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、マスク用窒化膜およびパッド酸化膜のうち、シリコン基板2に素子分離トレンチ21を形成すべき領域に対応する部分が除去される。そして、マスク用窒化膜およびパッド酸化膜からなるハードマスクを用いて、シリコン基板2がエッチングされることにより、図5Aに示すように、複数本の直線状素子分離トレンチ21(たとえば、深さ180nm)がストライプ状に形成される。
【0028】
次に、素子分離トレンチ21の内面に熱酸化法によりライナー酸化膜22(図3参照。図5には図示せず。)が形成される。続いて、シリコン基板2が窒素雰囲気中で熱処理される。この後、ライナー酸化膜22が薄膜化される。そして、たとえば、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)−CVD法により、SiOからなる絶縁物(酸化膜)23が素子分離トレンチ21を含むシリコン基板2上に堆積される。この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、絶縁物23がその表面から研削される。この絶縁物23の研削は、絶縁物23の表面と、マスク用窒化膜の表面とが面一となるまで続けられる。これにより、図5Bに示すように、素子分離トレンチ21内に絶縁物23が埋め込まれた状態となる。
【0029】
図6A〜図6Dは、図5Aに示すように素子分離トレンチ21が形成されてから、図5Bに示すように素子分離トレンチ21内に絶縁物23が堆積させるまでの製造工程の詳細を模式的に示す断面図である。
図6Aは、シリコン基板2の表層部に素子分離トレンチ21が形成された状態を示している。この素子分離トレンチ21は、前述したように、パッド酸化膜51およびマスク用窒化膜52からなるハードマスクを用いてシリコン基板2がエッチングされることによって形成される。この実施形態では、素子分離トレンチ21の上面の幅D1は、約80〜100nmである。アクティブ領域30の上面の幅D2は、約80〜100nmである。
【0030】
図6Bに示すように、素子分離トレンチ21の内表面がライナー酸化(熱酸化)される。このライナー酸化は、1000℃の温度で行われる。ライナー酸化は、この次に行われる熱処理で、素子分離トレンチ21の内表面が窒化されるのを防止するために行われる。ライナー酸化により、素子分離トレンチ21の内表面にほぼ均一な厚さのライナー酸化膜22が成長する。ライナー酸化膜22の当初の厚さは、8nm(80Å)以上の厚さとされる。この実施形態では、ライナー酸化膜22の当初の厚さは、約10nm(100Å)である。
【0031】
この後、窒素雰囲気中でシリコン基板2が熱処理される。窒素雰囲気の温度は、ライナー酸化膜形成時の温度より高い1100℃〜1200℃(たとえば、1150℃)であり、処理時間は6時間程度である。この熱処理は、マスク用窒化膜52の応力に起因してアクティブ領域30の縁部に結晶欠陥が生じるので、それをキュアするために行われる。より具体的には、マスク用窒化膜52の縁部に大きな応力が生じ、それによってアクティブ領域30の縁部に結晶欠陥が引き起こされる。この結晶欠陥が窒化膜中での熱処理によって修復される。前記熱処理は、厚いライナー酸化膜22が素子分離トレンチ21の内表面に形成された状態で行われるので、素子分離トレンチ21の側壁のシリコン表面が窒化されるのを防止できる。このため、応力の大きな意図しない窒化膜に起因して結晶性が悪化(転位の発生)したりすることがない。
【0032】
次に、図6Cに示すように、エッチングにより、ライナー酸化膜22が当初の膜厚の半分以下の厚さに薄膜化される。この実施形態では、ライナー酸化膜23の厚さは、約5nmにされる。これにより、ライナー酸化膜23の最終的な厚さを薄くすることができるので、それに応じて、素子分離トレンチ21の幅D1を予め狭くしておくことができる。その後、HDP−CVD法により、素子分離トレンチ21の内表面上に形成されたライナー酸化膜23上および基板2上に形成された窒化膜上に、SiOからなる絶縁物(酸化膜)23が形成される。そして、CMP法により、絶縁物23がその表面から研削される。この絶縁物23の研削は、絶縁物23の表面と、マスク用窒化膜52の表面とが面一となるまで続けられる。これにより、図6Dに示すように、素子分離トレンチ21内に絶縁物23が埋め込まれた状態となる。
【0033】
このようして得られた結果物においては、ライナー酸化膜22が薄いのに、素子分離トレンチ21の側壁のシリコン表面に窒化膜が存在しなくなる。また、ライナー酸化膜22が薄いのに、素子分離トレンチ21の底部両側縁が面取り形状となる。当初から薄いライナー酸化膜を形成し、ライナー酸化膜の薄膜化を行わない場合には、素子分離トレンチ21の底部両側縁の形状は当初のトレンチの形状に従う。当初に厚いライナー酸化膜を形成した場合には、素子分離トレンチ21の底部両側縁の形状は丸みを帯びることになる。したがって、この実施形態のように、当初は厚いライナー酸化膜を形成し、熱処理後にライナー酸化膜を薄膜化した場合には、ライナー酸化膜は薄いのに、素子分離トレンチ21の底部両側縁の形状は丸みを帯びたものとなる。
【0034】
図5Bに戻り、エッチングにより、シリコン基板2上のマスク用窒化膜51が除去される。続いて、エッチングにより、シリコン基板2上のパッド酸化膜52が除去される。そして、図5Cに示すように、エッチングにより、素子分離トレンチ21内の絶縁物23が掘り下げられる。シリコン基板2の表面から素子分離トレンチ21内の絶縁物23の表面までの深さ(掘り込み量)は、たとえば、26nm程度である。これにより、素子分離部20が形成される。シリコン基板2の表層部における隣り合う素子分離部20の間の領域がアクティブ領域30となる。すなわち、素子分離部20を形成することにより、複数の直線状アクティブ領域30がストライプ状に形成されることになる。
【0035】
次に、図5Dを参照して、シリコン基板2の表面に、たとえば熱酸化法によって、SiOからなるゲート酸化膜6(たとえば、7nm厚)が形成される。それから、CVD法により、ゲート酸化膜6上に、ポリシリコン層9(たとえば、70nm厚)が形成される。その後、イオン注入法により、ポリシリコン層9に不純物(たとえばP(リン))が導入される。そして、CVD法により、ポリシリコン層9上に、タングステンシリサイド層10(たとえば、100nm厚)が積層される。続いて、CVD法により、タングステンシリサイド層10上に、SiNからなる絶縁層8(たとえば、180nm厚)が形成される。
【0036】
その後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ゲート酸化膜6、ポリシリコン層9、タングステンシリサイド層10および絶縁層8を含む積層体がパターニングされる。これにより、図5Dに示すように、複数本の直線状ゲート部3がストライプ状に形成される。ゲート部3は、ゲート酸化膜6と、ポリシリコン層9およびタングステンシリサイド層10からなるゲート電極7と、絶縁層8とを含む。
【0037】
次に、図5Eに示すように、イオン注入法により、アクティブ領域30の表層部のうち、各ゲート部3の直下のチャネル領域を挟む領域に、LDD構造を作製するための不純物が導入される。これにより、LDD部4が形成される。その後、各ゲート部3の側壁面およびシリコン基板2の表面を覆うように、たとえばCVD法により、SiOからなる内側酸化膜13が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、ゲート部3の側壁面上の酸化膜13を残して、シリコン基板2上の酸化膜13が除去される。ゲート部3の側壁面上の酸化膜13が内側酸化膜13となる。エッチングによってシリコン基板2上の酸化膜13が除去される際に、ゲート部3の側壁の下端部表面の酸化膜13およびゲート部3の側壁の下端部の表層部が除去される。これにより、ゲート部3の側壁面の下端部にゲート電極7方向に延びた凹部が形成される。そして、たとえば、LP−CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition:減圧CVD)法により、内側酸化膜13上およびゲート部3の側壁面の下端部上に、SiNからなる電荷蓄積膜14が形成される。電荷蓄積膜14の下端部は、ゲート部3の側壁面の下端部の凹部に入り込んでいる。 次に、図5Fに示すように、たとえばCVD法により、電荷蓄積膜14の側壁面に外側酸化膜15が形成されると同時にシリコン基板2の表面に酸化膜19が形成される。そして、たとえばCVD法により、メモリセル領域の表面全体にSiNからなる窒化膜が形成される。この窒化膜の一部(より具体的には、隣り合うゲート部3の間から露出する酸化膜19の幅方向中央部)がエッチングによって除去されることにより、外側酸化膜15の表面および酸化膜19のゲート部3近傍部分の表面を覆う外側窒化膜16が形成される。これにより、ゲート部3の両側壁には、ONON構造のドレイン側サイドウォール12aおよびソース側サイドウォール12bがそれぞれ形成される。
【0038】
その後、アクティブ領域30の表層部のうち、外側窒化膜16から酸化膜19が露出している部分に対応する領域に、ドレイン領域およびソース領域を作成するための不純物がイオン注入される。これにより、ドレイン領域5aおよびソース領域5bが形成され、LDD部4がLDD部4a,4bに分けられる。続いて、ドレイン領域5aおよびソース領域5bならびにLDD部4a,4bに導入された不純物イオンを活性化するための熱処理が行われる。これにより、メモリセル領域に複数のメモリセル1が形成される。
【0039】
次に、図5Gに示すように、たとえば減圧CVD法により、メモリセル領域の表面全体にエッチングストップ膜として機能する窒化膜17が形成される。この後、CVD法により、窒化膜17上に、BPSGからなる層間絶縁膜18が形成される。そして、CMP法により、層間絶縁膜18が平坦化される。
次に、図5Hに示すように、たとえばプラズマエッチング法により、層間絶縁膜18における隣り合うゲート部3の間に対応する領域に、層間絶縁膜18を貫通するコンタクト孔41が形成される。それから、図5Iに示すように、たとえば減圧CVD法により、コンタクト孔41の側壁を覆うようにSiNからなるシール膜42(たとえば、7nm厚)が形成される。続いて、コンタクト孔内のシール膜42の表面およびコンタクト孔41の底面部を覆うように、Ti/TiNからなる2層構造のバリアメタル層43(たとえば、Ti層は30nm厚、TiN層は5nm〜100nm厚、より好ましくは10nm〜20nm厚)が形成される。Ti層は、たとえばスパッタ法により形成され、TiN層はたとえばCVD法で形成される。そして、WFガスを用いたCVD法により、バリアメタル層43に包囲されたコンタクト孔41内を含む表面全域に、タングステン(W)が成長される。その後、CMP法によって、コンタクト孔41外のタングステン、バリアメタル層43およびシール膜42が除去される。
【0040】
これにより、バリアメタル層43に包囲された状態で、コンタクト孔41内にタングステンからなる金属プラグ44が埋め込まれた構造が得られる。このようにして、層間絶縁膜18内に、層間絶縁膜18を貫通するコンタクトプラグ40が形成される。なお、図5Iは、2つのゲート部3の間のソース領域(一対のメモリセル1によって共通なソース領域)5bに電気的に接続されるコンタクトプラグ40の例を示している。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、素子分離トレンチ21内の絶縁物23は掘り下げられているが、掘り下げられていなくてもよい。また、この発明は、メモリセル以外の半導体素子が形成される半導体装置にも適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 メモリセル
2 シリコン基板
3 ゲート部
20 素子分離部
21 素子分離トレンチ
22 ライナー酸化膜
23 絶縁物
51 パッド酸化膜
52 マスク用窒化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性領域を分離するための素子分離トレンチを半導体基板に形成する工程と、
熱酸化処理によって、前記素子分離トレンチの内表面にライナー酸化膜を形成する工程と、
前記ライナー酸化膜の形成後に、前記半導体基板を窒素雰囲気中に配置して、前記半導体基板を熱処理する熱処理工程と、
前記ライナー酸化膜を薄膜化する工程と、
前記素子分離トレンチ内に絶縁物を埋め込む工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ライナー酸化膜を薄膜化する工程が、前記薄膜化する工程の前の前記ライナー酸化膜の膜厚の半分以上の部分をエッチングする工程を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程が、前記ライナー酸化膜形成のための熱酸化処理時の温度よりも高温の熱処理を含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理工程が、1100℃〜1200℃の熱処理工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記薄膜化する工程の前の前記ライナー酸化膜の膜厚が8nm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
活性領域を分離する素子分離トレンチが形成された半導体基板と、
前記素子分離トレンチの内表面に形成された膜厚50Å以下のライナー酸化膜と、
前記素子分離トレンチ内に埋め込まれた絶縁物とを含む、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59960(P2012−59960A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202371(P2010−202371)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】