説明

半導体装置とその製造方法

【課題】
高温、長時間のアニールを必要とすることなく、低いオン抵抗を実現可能な高耐圧MOSトランジスタを含む半導体装置を提供する。
【解決手段】
半導体基板の高耐圧トランジスタ用第1導電型領域上にゲート電極を形成し、ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第1のマスクをイオン注入マスクとして、ゲート電極を貫通する加速エネルギで第1導電型の不純物イオンを注入して、ソース領域で深く、ゲート電極下方で浅いチャネルドーズ領域を形成し、ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第2のマスク及びゲート電極をイオン注入マスクとして第2導電型の不純物をイオン注入してソースエクステンション領域を形成し、半導体装置を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、MOSトランジスタを含む半導体装置及びその製造方法に関する。なお、ゲート電極の下にゲート絶縁膜を有するトランジスタを、広くMOSトランジスタと呼ぶ。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路においては、低電圧駆動のMOSトランジスタのみでなく、より高電圧で駆動するMOSトランジスタが必要な場合も多い。外部回路の入出力電圧が3.5V程度であれば、3.5V程度で動作する中耐圧MOSトランジスタが必要である。さらに高い駆動電圧のMOSトランジスタが必要なこともある。
【0003】
無線携帯機器の送信モジュールに搭載するパワーアンプトランジスタにおいては、通常、入力される高周波(RF)電力に対して、ドレイン出力はバイアス点の2倍以上程度まで電圧が振れる。このためMOSトランジスタとしては、大きいドレイン耐圧が要求される。また、携帯機器に搭載される電力増幅器は、通常数百MHz〜数GHz帯で使用される。このため、優れた高周波特性も同時に要求される。携帯機器に限らず、高出力、高周波の電力増幅器においては、高耐圧と優れた高周波特性が要求されることが多い。
【0004】
高耐圧と優れた高周波特性を要求されるMOSトランジスタにおいては、オン抵抗を低くし、且つ高周波での利得を向上することが望まれる。ゲート電圧によって電流が制御される実効チャネル領域とドレイン電極がコンタクトされるドレイン領域との間に空乏層を広げると高耐圧を得ることができる。低濃度ドレイン(LDD)領域とゲート電極のオーバーラップ長を長くして、ゲート電圧の影響で空乏層を広くする拡張ドレイン(extended drain, ED)MOSトランジスタ構造は、高耐圧実現に有効な構造である。
【0005】
空乏層が広がった状態でも、閾値を確保し、パンチスルーは防止する必要がある。チャネル領域の不純物濃度を高くすれば、閾値を確保し、パンチスルーを防止するのに有効である。しかし、チャネル不純物濃度を一様に高くすると、オン抵抗が高くなりやすい。チャネル不純物濃度の横方向分布をドレインに向かって低くなるように変調した横方向変調不純物濃度構造は、不純物濃度の高い領域で閾値を確保し、且つ不純物濃度勾配による作り付け電界によりキャリアを加速できる。MOSトランジスタのオン抵抗を低減し、高周波出力電力を向上しやすくなる。ソース側にチャネル不純物を添加し、ドレイン側に向かって横方向に不純物を熱拡散させる横方向拡散(laterally diffused, LD)MOSトランジスタ構造は、ソース側からドレイン側に向かって徐々にチャネル不純物濃度が低減する構造を実現できる。しかし、不純物を長距離拡散させるためには、高温、長時間のアニール処理が必要となる。
【0006】
LDMOSトランジスタを、周辺回路のMOSトランジスタと集積化しようとすると、90nm世代以降の先端CMOSプロセスとの相性が悪い。また、ソース領域でチャネル不純物濃度を高くすると、ソース側抵抗が高くなりやすい。
【0007】
特開平6−310717号は、NMOSトランジスタを例に取ると、ゲート電極形成後に、ゲート電極をマスクとしてn型不純物をイオン注入してn型拡散層(エクステンション領域)を形成し、ドレイン側をマスクで覆い、ソース側にn型不純物をイオン注入して、ソース側n拡散層を形成し、チャネル領域形成用のp型不純物イオンを傾斜回転注入し、ソース側n拡散層を包み込むソース側p拡散層を形成することを提案している。ソース側p拡散層が存在することにより、空乏層が広がりにくくなり、パンチスルー降伏を抑制し、ドレイン・ソース間耐圧を向上することができると記載する。
【0008】
特開平10−116983号は、レジストマスクを用いてn型シリコン基板のLDD予定領域にn型不純物Asをイオン注入した後、p型不純物Bを広くイオン注入し、例えば1200℃、8時間の熱拡散により、同時に拡散させることでp型のウェル領域内にn型不純物の補償で実効濃度を下げた低濃度のp型拡散層を形成し、低濃度のp型拡散層内にn型不純物例えばPをイオン注入し、1200℃で2時間熱拡散することにより、n型ドレイン拡散層を形成することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−310717号公報、
【特許文献2】特開平10−116983号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、所望のオン抵抗と耐圧を有するMOSトランジスタを含む半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1観点によれば、
半導体基板の高耐圧トランジスタ用第1導電型領域上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第1のマスクを形成し、
前記第1のマスクをイオン注入マスクとして、前記ゲート電極を貫通する加速エネルギで前記第1導電型の不純物イオンを注入して、ソース領域で深く、前記ゲート電極下方で浅いチャネルドーズ領域を形成し、
前記ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第2のマスク及び前記ゲート電極をイオン注入マスクとして第2導電型の不純物をイオン注入してソース・エクステンション領域を形成し、
半導体装置を製造する方法
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
高温、長時間のアニールを必要とすることなく、低いオン抵抗を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1A−1Fは、第1の実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す半導体基板の断面図である。
【図2】図2A,2Bは、第1の実施例による半導体装置の構成例と、チャネルドーズ領域の分布形状を説明するための断面図である。
【図3】図3は、第2の実施例による半導体装置の製造方法を示す半導体基板の断面図である。
【図4−1】と、
【図4−2】図4A−4Iは、第3の実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す半導体基板の断面図である。
【図5】図5A、5Bは試作例および比較例の構造を示す断面図、図5Cは測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施例を説明する。図1A−1Fは、第1の実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す半導体基板の断面図である。
【0015】
図1Aに示すように、シリコン基板1に分離溝をエッチし、酸化膜等を埋め込んで、シャロートレンチアイソレーションによる分離領域STIを形成し、活性領域を画定する。複数の活性領域に種々のトランジスタを形成する。以下、主に、nチャネル高耐圧トランジスタの製造工程を説明する。高耐圧トランジスタ用活性領域に、p型不純物、例えばBを加速エネルギ100keVー200keV、ドーズ量2×1013(2E13のように表記する)−5E13(cm−2)でイオン注入し、p型ウェルPWを形成する。なお、個別デバイスの場合は、ここまでの工程は省略してもよい。
【0016】
シリコン基板1上に、低濃度ドレイン(LDD)領域に開口を有するレジストマスクPR1を形成し、n型不純物、例えばPを加速エネルギ50keV―200keV、ドーズ量1E13−3E13(cm−2)でイオン注入し、LDD領域11を形成する。レジストマスクPR1を除去した後、イオン注入した不純物を活性化するため、例えば1000℃、10秒のアニールを行なう。
【0017】
図1Bに示すように、活性領域表面を熱酸化し、例えば厚さ7nmのゲート絶縁膜12を形成する。ゲート絶縁膜12上に、ポリシリコン膜13を例えば厚さ100nm化学気相堆積(CVD)により堆積する。ポリシリコン膜13上にゲート電極形状のレジストパターンPR2を形成し、反応性イオンエッチング(RIE)によるドライエッチングを行なうことでゲート電極Gを形成する。その後、レジストパターンPR2は除去する。
【0018】
図1Cに示すように、ソース領域、及びゲート電極Gのソース側(チャネルドーズ領域の長さ分)開口し、ゲート電極Gのドレイン側及びドレイン領域を覆うレジストパターンPR3を形成する。本実施例では、この状態で、チャネルドーズ領域のイオン注入、及びエクステンション領域のイオン注入を行なう。
【0019】
例えば、チャネル不純物としてBを、ゲート電極Gを貫通する加速エネルギ、例えば40keVー50keVで、ドーズ量2E12−6E12(cm−2)イオン注入してチャネルドーズ領域15を形成する。なお、イオン注入の入射角は基板法線から0度−7度程度とする。ポリシリコン、酸化シリコン、単結晶シリコン内における飛程がほぼ同じであるとすると、ゲート電極の存在しないソース領域におけるイオン注入深さと較べ、ゲート電極下ではゲート電極の厚さ分、シリコン基板に対するイオン注入深さが浅くなる。即ち、チャネルドーズ領域15は、ゲート電極下方の浅いp型領域15a、ソース領域の深いp型領域15bを含む。なお、ソース領域の深いp型領域15bにおいては、表面近傍の不純物濃度は低くなる。
【0020】
エクステンション領域として、n型不純物、例えばPをチャネルドーズ領域15bよりは浅い位置にピークを持つエネルギ、例えば30keVでドーズ量1E13(cm−2)イオン注入し、ソース側のエクステンション領域16を形成する。その後、レジストパターンPR3は除去する。なお、チャネルドーズ領域15のイオン注入とエクステンション領域16のイオン注入は順序を逆にしてもよい。
【0021】
図1Dに示すように、基板上にゲート電極Gを覆って、厚さ10nmの酸化シリコン膜、厚さ30nmの窒化シリコン膜をCVDによって積層して、絶縁膜18を形成する。絶縁膜18上に、ゲート電極Gのドレイン側から、ドレイン領域上にオフセット距離(例えば0.2μm)張り出すレジストパターンPR4を形成する。レジストパターンPR4をエッチングマスクとして、絶縁膜18をRIEにより異方性エッチングする。レジストパターンPR4で覆われていない領域で、平坦部上の絶縁膜18をエッチングし、ゲート電極Gのソース側に側壁絶縁膜SW、ゲート電極G上のドレイン側からドレイン領域にオフセット距離張り出すオフセットマスク19を残す。
【0022】
図1Eに示すように、n型不純物、例えばPを加速エネルギ10keV、ドーズ量5E15(cm−2)でイオン注入し、高濃度で深いソース/ドレイン領域S/Dを形成する。ソース領域はゲート電極Gから側壁絶縁膜SWの厚さ分離して形成される。側壁絶縁膜SW下方にはエクステンション領域16が残り、浅い接合を形成する。ドレイン領域はゲート電極Gからオフセット距離離して形成される。その後、レジストパターンPR4は除去し、1000℃、1秒間のアニールを行なって、不純物を活性化する。
【0023】
図1Fに示すように、基板上にNiまたはCo層を堆積し、アニールを行なってシリサイド層21,22を形成する。未反応金属層はウォッシュアウト又はエッチングで除去する。シリサイド層21はソース/ドレイン電極を構成し、シリサイド層22はゲート電極を構成する。このようにして、高耐圧MOSトランジスタが形成される。その後、周知の構成で層間絶縁膜、配線等を形成できる。
【0024】
図2Aは、本実施例による高耐圧MOSトランジスタの構成例を示す。STIの深さは、250nm−400nm、LDD11の深さ11dは200nm−300nm、ゲート電極とのオーバラップ距離Lovは100nm−300nm、ゲート電極のポリシリコン膜13の厚さ13hは80nm−120nm、長さ13dは400nm−600nm、ゲート電極上のドレイン側をオフセットマスク19が覆う長さLolは10nm−100nm、低抵抗ドレイン領域Dがゲート電極G端部からオフセットされるオフセット距離Lofは100nm−300nm、エクステンション領域16の深さ16dは40nm−70nm、ゲート電極よりソース側のチャネルドーズ領域15bの深さ15dは120nm−150nm、ゲート電極下方のチャネルドーズ領域15aの深さ15fは20nm−50nm、チャネルドーズ領域15aがゲート電極Gのソース側端部からゲート電極下方に入り込む距離15cは100nm−200nm、高濃度ソース領域S、高濃度ドレイン領域Dの深さは100nm−200nmである。
【0025】
図2Bに示すように、レジストパターンPR3により、ソース領域とゲート電極のソース側領域を露出した状態で、ゲート電極Gを貫通する加速エネルギでイオン注入を行ないチャネルドーズ領域15を形成する。ゲート電極下方にp型不純物が添加されたチャネルドーズ領域15aが形成され、チャネル領域の不純物濃度を増加して、閾値を確保する。チャネルドーズ領域15aよりドレイン側のチャネル領域のp型不純物濃度は十分低くでき、広い空乏層を形成することができる。ゲート電極とオーバラップするLDD領域11と共に、高耐圧を実現しやすい。
【0026】
ソース領域のチャネルドーズ領域15bは、120nm−150nmと深く、ピーク位置より浅い領域の不純物濃度は低い。エクステンション領域16は深さ40nm−70nm、高濃度ソース領域Sは深さ100nm−200nmであり、これらの領域と重なるチャネルドーズ領域15bの不純物濃度は低い。従って、チャネル不純物濃度分布によるソース抵抗増大を抑制することができる。チャネルドーズ領域15bはイオン注入時の拡がりが、エクステンション領域16のイオン注入時の拡がりより大きいため、エクステンション領域16の側面も覆うように分布する。
【0027】
このように、本実施例により、高温、長時間のアニール工程を行うことなく、低オン抵抗の高耐圧MOSトランジスタを形成することができる。
【0028】
図3は、第2の実施例による半導体装置の製造方法を示す断面図である。本実施例では、チャネル不純物の注入を、斜めイオン注入で行なう。第1の実施例同様に、図1A−1Bの工程を行う。図3に示すように、ゲート電極Gのドレイン側及びドレイン領域をレジストパターンPR3で覆う。レジストパターンPR3のソース側端部は、斜めイオン注入分、図1Cのレジストパターンよりソース側に配置する。この状態で、チャネルドーズ領域のイオン注入、及びエクステンション領域のイオン注入を行なう。
【0029】
例えば、チャネル不純物としてBを、ゲート電極Gを貫通する加速エネルギ、例えば45keV−60keVで、ドーズ量3E12−1E13(cm−2)、基板法線からソース領域側に20度−45度、例えば30度、傾けた方向からイオン注入する。第1の実施例同様、浅いp型領域15aと深いp型領域15bが形成される。ゲート電極Gの側壁を転写する、チャネルドーズ領域15の段差部の側壁15zは、イオンの入射角をθ、飛程をfとすると、g=fsinθゲート電極側壁からチャネル領域内部に入り込むと考えることができよう。
【0030】
エクステンション領域16のイオン注入は、第1の実施例同様、ほぼ基板法線方向に沿って行なう。n型不純物、例えばPをチャネルドーズ領域15bより浅い位置にピークを持つエネルギ、例えば30keVで、ドーズ量1E13(cm−2)イオン注入し、エクステンション領域16を形成する。エクステンション領域16の端部はゲート電極Gの側壁を転写すると考えることができよう。その後、レジストパターンPR3は除去する。勿論、チャネル不純物のイオン注入とエクステンション領域のイオン注入は順序を逆にしてもよい。その後、図1D−図1Fに示した工程と同様の工程を行い、高耐圧MOSトランジスタを完成する。
【0031】
本実施例によれば、チャネルドーズ領域を積極的にチャネル内部に移行させることができる。このため、エクステンション領域16の端面が十分な厚さ、例えば70nm程度以上、のチャネルドーズ領域15で覆われ、パンチスルーしにくくなる。例えば、入射角30度でボロンの注入深さ120nmの場合、120*tan(30°)≒70となる。
【0032】
無線携帯機器等において、1つのシリコンチップに種々のMOSトランジスタを集積することが望まれる。例えば、パワーアンプ用高耐圧トランジスタと共に、3.5V入出力用(I/O)中耐圧トランジスタ、ロジック回路用低耐圧コアトランジスタ等を集積化する。図4A−図4Iは、第3の実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す断面図である。
【0033】
図4Aに示すように、シリコン基板1にシャロートレンチアイソレーションによる分離領域STIを形成し、活性領域を画定する。左側の活性領域がコアトランジスタ領域、中間の活性領域がI/Oトランジスタ領域、右側の活性領域が高耐圧トランジスタ領域を示す。nチャネルトランジスタを形成する場合を例にとって説明する。各活性領域にp型不純物、例えばBを加速エネルギ100keV−200keV、ドーズ量2E13−5E13(cm−2)でイオン注入し、p型ウェルPWを形成する。
【0034】
レジストマスクの開口内にI/Oトランジスタ領域を露出し、p型不純物、例えばBを加速エネルギ30keV−40keV、ドーズ量3E12−6E12(cm−2)でイオン注入し、I/Oトランジスタのチャネルドーズ領域31を形成する。次に別のレジストマスクの開口内にコアトランジスタ領域を露出し、p型不純物、例えばBを加速エネルギ15keV−25keV、ドーズ量1E13−3E13(cm−2)でイオン注入し、コアトランジスタのチャネルドーズ領域32を形成する。
【0035】
図4Bに示すように、コアトランジスタ領域、I/Oトランジスタ領域、及び高耐圧トランジスタ領域のLDD領域以外を覆うレジストパターンPR1を形成し、例えばPを加速エネルギ50keV−200keV、ドーズ量1E13−3E13(cm−2)でイオン注入し、LDD領域11を形成する。その後、レジストパターンPR1を除去し、1000℃、10秒間のアニールを行なって、不純物を活性化し、拡散させる。図1Aの工程に対応する。
【0036】
図4Cに示すように、活性領域表面を熱酸化し、例えば厚さ7nmのゲート絶縁膜12を形成し、その上にポリシリコン膜13を厚さ100nm程度CVDで堆積する。ポリシリコン膜13の上にゲート電極形状のレジストパターンを形成し、ポリシリコン膜13、ゲート絶縁膜12をエッチングして、ゲート電極Gを形成する。その後、レジストパターンは除去する。図1Bの工程に対応する。
【0037】
図4Dに示すように、高耐圧トランジスタのソース領域及びゲート電極のソース側所定領域上に開口を有するレジストマスクPR3を形成する。露出したゲート電極Gを貫通する加速エネルギで、高耐圧トランジスタのチャネル不純物をイオン注入する。例えば、第1の実施例、図1Cの工程同様、p型不純物、Bを、加速エネルギ40keV−50keV、ドーズ量2E12−6E12でほぼ垂直にイオン注入して、チャネルドーズ領域15を形成する。又は、第2の実施例、図3の工程同様、Bを加速エネルギ45keV−60keVで、ドーズ量3E12−1E13(cm−2)、基板法線から20度−45度、例えば30度、傾けた方向からイオン注入する。これらに限らず、高耐圧トランジスタのチャネル不純物のイオン注入は、Bを加速エネルギ30keV−50keV、ドーズ量1E12−5E12(cm−2)で行なうことが好ましい。その後、レジストパターンPR3は除去する。
【0038】
後に作成するコアトランジスタのポケット領域もエクステンション領域を取り囲む逆導電型領域である。両者を比較すると、高耐圧トランジスタのチャネルドーズ領域は、深さが2倍以上、ドーズ量が約1桁低い特徴を有する。
【0039】
図4Eに示すように、新たに中耐圧トランジスタ領域全体と高耐圧トランジスタ領域のソース側を開口するレジストパターンPR6を形成する。n型不純物Pをチャネルドーズ領域より浅い位置にピークを持つ加速エネルギ、例えば30keV、ドーズ量1E13(cm−2)でイオン注入して、エクステンション領域16を形成する。その後、レジストパターンPR6は除去する。なお、図4Eと図4Dの順序を逆にしてもよい。
【0040】
なお、第1の実施例、第2の実施例においては同一のレジストパターンでチャネルドーズ領域とエクステンション領域のイオン注入を行なった。本実施例では、チャネルドーズ領域のイオン注入は高耐圧トランジスタに対してのみ行い、エクステンション領域のイオン注入は中耐圧トランジスタと高耐圧トランジスタの両者に対して行なうので、別のマスクを形成する。
【0041】
図4Fに示すように、低耐圧コアトランジスタ領域を開口するレジストパターンPR7を形成する。Bを、加速エネルギ10keV、ドーズ量1E13−5E13(cm−2)、基板法線から25度−45度傾けた4方向からイオン注入してポケット領域35を形成する。Asを、加速エネルギ1keV―5keV、ドーズ量1E15−3E15(cm−2)、基板法線から0度−7度の方向からイオン注入してエクステンション領域36を形成する。エクステンション領域36はポケット領域35に包まれた形状となる。その後、レジストパターンPR7は除去する。上述のように、ポケット領域のイオン注入は、チャネルドーズ領域のイオン注入と較べ、深さが半分以下、ドーズ量が約1桁高い。条件が変わっても、通常、イオン注入深さは半分以下、ドーズ量は5倍以上となる。
【0042】
図4Gに示すように、ゲート電極Gを覆って、シリコン基板上に厚さ10nmの酸化シリコン膜、厚さ30nmの窒化シリコン膜をCVDで堆積し、絶縁膜を形成する。絶縁膜上に高耐圧トランジスタのゲート電極ドレイン側からドレイン領域に所定長(オフセット長)延在するオフセット用のレジストパターンPR4を形成し、絶縁膜を異方性エッチングしてサイドウォールスペーサSW,オフセットマスク19を形成する。図1D同様の工程である。
【0043】
図4Hに示すように、n型不純物、例えばPを加速エネルギ10keV、ドーズ量5E15(cm−2)イオン注入し、高濃度、低抵抗のソース/ドレイン領域S/Dを形成する。その後、レジストパターンPR4は除去し、1000℃、1秒間のアニールを行なって、不純物を活性化する。図1Eの工程に対応する。
【0044】
図4Iに示すように、シリサイド領域を形成する。例えばニッケルシリサイド、又はコバルトシリサイドを形成する。図1F同様の工程である。なお、NMOSトランジスタを例として説明したが、導電型を反転すれば、PMOSトランジスタを形成できる。NMOSトランジスタとPMOSトランジスタはレジストパターンを用いて選択的に処理できる。NMOSトランジスタとPMOSトランジスタを形成することにより、CMOS回路を形成できる。
【0045】
図5Aに示すように、第1の実施例に従い、高耐圧トランジスタの例を試作した。ゲート電極Gのチャネル長方向のゲート長を440nmとした。低濃度ドレイン領域LDDはゲート電極Gと120nmのオーバラップ長Lovを有した。ゲート電極G下方のチャネルドーズ領域CDは、チャネル長方向に120nmのチャネルドーズ長CDLを有した。オフセットマスクOFMは、ゲート電極Gのドレイン側領域上を長さ100nm覆い、ゲート電極Gのドレイン側側壁からドレイン領域上に長さ190nm延在した。
【0046】
図5Bは、比較のために作成した比較例の構成を示す。チャネルドーズ領域CDを、ゲート下方ソース側領域およびソース領域に形成する代わりに、活性領域全体に一様に形成した点以外は、図5Aに示す例と同じ構成である。
【0047】
図5Cは例および比較例のドレイン電圧対ドレイン電流特性を示すグラフである。横軸がドレイン電圧(ソース‐ドレイン電圧)Vdsを単位Vで示し、縦軸がドレイン電流Idを単位A/μmで示す。Vg=0,1.1,2.2,3.3Vの時の、例の測定値を中空丸○で示し、比較例の測定値を中空三角△で示す。ゲート電圧0.55V、1.1V、2.2V、3.3Vでの参考IV特性を破線で示す。Vds=1.1V、Vg=3.3Vの時、比較例と較べて例のドレイン電圧が大きく向上している。
【0048】
このように、高温、長時間のアニール工程を行うことなく、先端CMOSトランジスタと集積可能な形で低オン抵抗の高耐圧トランジスタを形成できる。高耐圧トランジスタのソース側チャネルドーズ領域は深いところに不純物濃度のピークを有しており、ソース側寄生抵抗を低減可能であり、オン抵抗を低減可能である。
【0049】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されず、種々の変更、置換、組み合わせ、改良等が可能である。
【0050】
以下、本発明の特徴を付記する。
(付記1)
半導体基板の第1導電型の第1トランジスタ用領域上に第1ゲート電極を形成し、
前記第1ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第1のマスクをイオン注入マスクとして、前記第1ゲート電極を貫通する加速エネルギで前記第1導電型の第1不純物をイオン注入して、ソース領域で第1の深さ、前記ゲート電極下方で前記第1の深さより浅い第2の深さを有するチャネルドーズ領域を形成し、
前記第1ゲート電極の前記ドレイン側部分及び前記ドレイン領域を覆う第2のマスク及び前記ゲート電極をイオン注入マスクとして前記第1導電型と逆の第2導電型の第2不純物をイオン注入して第1ソースエクステンション領域を形成し、
半導体装置を製造する方法。
(付記2)
前記チャネルドーズ領域を形成するイオン注入と、前記第1ソースエクステンション領域を形成するイオン注入が、共に基板法線から0度−7度の範囲内の入射角度で行なわれる付記1記載の半導体装置を製造する方法。
(付記3)
前記チャネルドーズ領域を形成するイオン注入が基板法線からソース領域側に20度−45度傾いた入射角度で行なわれ、前記第1ソースエクステンション領域を形成するイオン注入が、基板法線から0度−7度の入射角度で行なわれる付記1記載の半導体装置を製造する方法。
(付記4)
前記第1ゲート電極を形成する前に、前記ゲート電極のドレイン側部分とオーバラップする前記第2導電型のドレイン領域を前記第1トランジスタ用領域に形成する、付記1〜3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
前記第2のマスクが、前記第1のマスクである付記1〜4のいずれか1項記載の半導体装置を製造する方法。
(付記6)
前記半導体基板が、第1導電型の第2トランジスタ用領域、第1導電型の第3トランジスタ用領域も含み、前記第2トランジスタ用領域上に第2ゲート電極を、前記第3トランジスタ用領域上に第3ゲート電極を形成し、
前記第1のマスクが前記第2トランジスタ用領域、前記第3トランジスタ用領域を覆い、
前記第2のマスクが前記第3トランジスタ用領域を覆い、前記第2トランジスタ用領域は露出する、
付記1〜4のいずれか1項記載の半導体装置を製造する方法。
(付記7)
前記第2トランジスタ用領域、前記第1トランジスタ用領域を覆う第3のマスク及び前記第3トランジスタ用領域の前記第3ゲート電極をイオン注入マスクとし、前記第3トランジスタ用領域に前記第1導電型の第3不純物を斜めイオン注入してポケット領域を形成し、
前記第3のマスク及び前記第3トランジスタ用領域の前記第3ゲート電極をイオン注入マスクとし、前記第3トランジスタ用領域に前記第2導電型の第4不純物を、前記ポケット領域より浅いピーク位置でイオン注入して第3ソースエクステンション領域を形成する、
付記6記載の半導体装置を製造する方法。
(付記8)
前記ポケット領域のイオン注入は、前記チャネルドーズ領域のイオン注入と較べ、半分以下の深さと5倍以上高いドーズ量を有する付記7記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記第1トランジスタ用領域の前記第1ゲート電極のドレイン側側壁から前記ドレイン領域上に所定長延在する絶縁性オフセットマスクと、前記第1ゲート電極のソース側側壁上に形成されたサイドウォールスペーサとを形成し、
前記サイドウォールスペーサ及び前記絶縁性オフセットマスクの外側に第2導電型の拡散領域を形成し、
前記拡散領域上にシリサイド層を形成する、
付記6〜8のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する方法。
(付記10)
第1導電型の第1トランジスタ用領域を有する半導体基板と、
前記第1トランジスタ用領域上に形成された第1ゲート電極と、
ソース領域から前記第1ゲート電極下方に形成され、前記ソース領域で第1の深さを有し、前記第1ゲート電極下方で前記第1の深さよりも浅い第2の深さを有する、前記第1導電型のチャネルドーズ領域と、
前記ソース領域に形成され、前記チャネルドーズ領域より浅い、前記第1導電型と逆の第2導電型の第1ソースエクステンション領域と、
を有する半導体装置。
(付記11)
前記チャネルドーズ領域の前記第1の深さを有する領域から前記第2の深さを有する領域に切り換わる位置が、前記第1ゲート電極下方に位置する付記10記載の半導体装置。
(付記12)
前記半導体基板が更に前記第1導電型の第2トランジスタ用領域を有し、
前記第2トランジスタ用領域上に形成された第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極のソース側に形成された、前記第2導電型の第2ソースエクステンション領域と、前記第2ソースエクステンション領域を包み込む、前記第1導電型のポケット領域とを有し、
前記ポケット領域は前記チャネルドーズ領域の前記第1の深さの半分以下の第3の深さを有する、
付記10又は11記載の半導体装置。
(付記13)
前記第1トランジスタ用領域に形成され、前記第1ゲート電極とオーバラップするドレイン領域を有する、付記10〜12のいずれか1項記載の半導体装置。
(付記14)
前記第1ゲート電極のドレイン側部分から、前記第1ゲート電極のドレイン側側壁から所定長だけ前記ドレイン領域上に延在する絶縁性オフセットマスクと、前記第1ゲート電極のソース側側壁、及び前記第2ゲート電極の側壁外側に形成された、サイドウォールスペーサと、
前記絶縁性オフセットマスク及び前記サイドウォールスペーサの外側に形成された第2導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたシリサイド層と、
を有する付記10〜13のいずれか1項記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0051】
1 シリコン基板、
STI 素子分離領域、
PW p型ウェル、
11 LDD領域、
12 ゲート絶縁膜、
13 ポリシリコンゲート電極、
G ゲート電極、
15 チャネルドーズ領域、
16 エクステンション領域、
19 オフセットマスク、
S/D 低抵抗ソース/ドレイン領域、
21,22 シリサイド領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1導電型の第1トランジスタ用領域上に第1ゲート電極を形成し、
前記第1ゲート電極のドレイン側部分及びドレイン領域を覆う第1のマスクをイオン注入マスクとして、前記第1ゲート電極を貫通する加速エネルギで前記第1導電型の第1不純物をイオン注入して、ソース領域で第1の深さ、前記ゲート電極下方で前記第1の深さより浅い第2の深さを有するチャネルドーズ領域を形成し、
前記第1ゲート電極の前記ドレイン側部分及び前記ドレイン領域を覆う第2のマスク及び前記ゲート電極をイオン注入マスクとして前記第1導電型と逆の第2導電型の第2不純物をイオン注入して第1ソースエクステンション領域を形成し、
半導体装置を製造する方法。
【請求項2】
前記チャネルドーズ領域を形成するイオン注入と、前記第1ソースエクステンション領域を形成するイオン注入が、共に基板法線から0度−7度の範囲内の入射角度で行なわれる請求項1記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項3】
前記チャネルドーズ領域を形成するイオン注入が基板法線からソース領域側に20度−45度傾いた入射角度で行なわれ、前記第1ソースエクステンション領域を形成するイオン注入が、基板法線から0度−7度の入射角度で行なわれる請求項1記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項4】
前記第2のマスクが、前記第1のマスクである請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項5】
前記半導体基板が、第1導電型の第2トランジスタ用領域、第1導電型の第3トランジスタ用領域も含み、前記第2トランジスタ用領域上に第2ゲート電極を、前記第3トランジスタ用領域上に第3ゲート電極を形成し、
前記第1のマスクが前記第2トランジスタ用領域、前記第3トランジスタ用領域を覆い、
前記第2のマスクが前記第3トランジスタ用領域を覆い、前記第2トランジスタ用領域は露出する、
請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項6】
前記第2トランジスタ用領域、前記第1トランジスタ用領域を覆う第3のマスク及び前記第3トランジスタ用領域の前記第3ゲート電極をイオン注入マスクとし、前記第3トランジスタ用領域に前記第1導電型の第3不純物を斜めイオン注入してポケット領域を形成し、
前記第3のマスク及び前記第3トランジスタ用領域の前記第3ゲート電極をイオン注入マスクとし、前記第3トランジスタ用領域に前記第2導電型の第4不純物を、前記ポケット領域より浅いピーク位置でイオン注入して第3ソースエクステンション領域を形成する、
請求項5記載の半導体装置を製造する方法。
【請求項7】
前記ポケット領域のイオン注入は、前記チャネルドーズ領域のイオン注入と較べ、半分以下の深さと5倍以上高いドーズ量を有する請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1導電型の第1トランジスタ用領域を有する半導体基板と、
前記第1トランジスタ用領域上に形成された第1ゲート電極と、
ソース領域から前記第1ゲート電極下方に形成され、前記ソース領域で第1の深さを有し、前記第1ゲート電極下方で前記第1の深さよりも浅い第2の深さを有する、前記第1導電型のチャネルドーズ領域と、
前記ソース領域に形成され、前記チャネルドーズ領域より浅い、前記第1導電型と逆の第2導電型の第1ソースエクステンション領域と、
を有する半導体装置。
【請求項9】
前記チャネルドーズ領域の前記第1の深さを有する領域から前記第2の深さを有する領域に切り換わる位置が、前記第1ゲート電極下方に位置する請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板が更に前記第1導電型の第2トランジスタ用領域を有し、
前記第2トランジスタ用領域上に形成された第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極のソース側に形成された、前記第2導電型の第2ソースエクステンション領域と、前記第2ソースエクステンション領域を包み込む、前記第1導電型のポケット領域とを有し、
前記ポケット領域は前記チャネルドーズ領域の前記第1の深さの半分以下の第3の深さを有する、
請求項8又は9記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−66055(P2011−66055A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213189(P2009−213189)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】