説明

半導体装置

【課題】絶縁体に蓄積した電荷が放電を起こすことにより、アンテナ又は薄膜トランジスタを有する回路を破壊してしまう問題(静電気破壊の問題)を解決することを目的とする。
【解決手段】第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路と、前記回路上に設けられ、前記回路と電気的に接続されたアンテナと、前記アンテナ上に設けられた第2の絶縁体と、を有し、前記第1の絶縁体と前記回路との間に第1の導電膜が設けられ、前記第2の絶縁体と前記アンテナとの間に第2の導電膜が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野はアンテナを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタスコンピューティングの実現を目指して、アンテナを介して無線通信を行う半導体装置(RFIDタグ、無線タグ、ICチップ、無線チップ、非接触信号処理装置、半導体集積回路チップともいう)の開発が進められている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−5778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナを介して無線通信を行う半導体装置は、アンテナ及び薄膜トランジスタを有する回路を保護するために、アンテナ及び薄膜トランジスタを有する回路をエポキシ樹脂等で挟み込んでいる。
【0005】
ところが、エポキシ樹脂等の絶縁体は電荷を蓄積しやすい性質を有する。
【0006】
したがって、絶縁体に蓄積した電荷が放電を起こすことにより、アンテナ又は薄膜トランジスタを有する回路を破壊してしまう問題(静電気破壊の問題)が生じていた。
【0007】
そこで、このような静電気破壊の問題を解決する発明を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
アンテナ及び薄膜トランジスタを有する回路が一対の絶縁体に挟まれた構造を有する半導体装置であって、一対の絶縁体の外側又は内側に少なくとも一層の導電膜を形成することにより静電耐圧を向上させることによって、静電気破壊を低減させることができる。
【0009】
なお、アンテナは薄膜トランジスタを有する回路を覆う層間絶縁膜を介して設けられている。
【0010】
本発明者らの実験結果によると、アンテナ側から電圧が印加されるよりも、薄膜トランジスタ側から電圧が印加される方が静電気破壊が生じやすいことがわかっている。
【0011】
そこで、導電膜は薄膜トランジスタ側に設けると好ましい。
【0012】
また、本発明者らの実験結果によると、アンテナ側にも導電膜を設けることによって、アンテナ側の静電耐圧が向上することがわかっている。
【0013】
そこで、導電膜をアンテナ側に設けると好ましい。
【0014】
即ち、導電膜を薄膜トランジスタ側及びアンテナ側の両方に設けることによって、両方の電圧印加に対する静電耐圧が向上する。
【0015】
よって、導電膜を薄膜トランジスタ側及びアンテナ側の両方に設けると好ましい。
【0016】
特に、近年普及している駅の自動改札で用いられる非接触型ICカードのように、表も裏も関係なく、両面から電波を送受信し得る半導体装置の場合は、薄膜トランジスタ側とアンテナ側の両方に導電膜を設けると好ましい。
【0017】
なお、一対の絶縁体の外側に導電膜を設けた場合、導電膜が露出した状態となる。
【0018】
すると、使用を重ねるうちに、露出した導電膜が摩擦等により剥がれてしまい静電気破壊防止効果が著しく減少してしまうことがある。
【0019】
そこで、一対の絶縁体の内側に導電膜を設けることにより、導電膜を一対の絶縁体により保護することができる。もちろん一対の絶縁体の外側に導電膜を設けても良いし、外側と内側の両方に導電膜を設けても良い。
【0020】
なお、摩擦等により導電膜が剥がれてしまう問題は、導電物が膜状であるゆえに生じる問題である。厚さを充分に有する導電物(例えば導電性の基板等)を用いるときはこのような問題は生じない。
【0021】
また、アンテナより外側に導電膜が存在すると、導電膜により少なからず共振周波数が減少するという問題が生じる。そして、共振周波数の減少が大きいと通信距離が低下する問題が生じる。
【0022】
そこで、アンテナと薄膜トランジスタを有する回路の間に導電膜を形成することによって、アンテナが露出するので、導電膜により共振周波数が減少する問題を解決することができる。
【0023】
また、アンテナ側と薄膜トランジスタ側の両方に導電膜を設ける場合、両方の導電膜同士を電気的に接続することにより、誘電分極による静電気破壊の影響を低減することができるので好ましい。
【0024】
つまり、第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路と、前記回路上に設けられ、前記回路と電気的に接続されたアンテナと、前記アンテナ上に設けられた第2の絶縁体と、を有し、前記第1の絶縁体と前記回路との間に第1の導電膜が設けられており、前記第2の絶縁体と前記アンテナとの間に第2の導電膜が設けられていることを特徴とする半導体装置が好ましい。
【0025】
また、第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路と、前記回路上に設けられ、前記回路と電気的に接続されたアンテナと、前記アンテナ上に設けられた第2の絶縁体と、を有し、前記第1の絶縁体と前記回路との間に第1の導電膜が設けられており、前記回路と前記アンテナとの間に第2の導電膜が設けられていることを特徴とする半導体装置が好ましい。
【0026】
なお、前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体は、繊維体に有機樹脂が含浸した構造であると好ましい。また、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とが電気的に接続されていると好ましい。
【発明の効果】
【0027】
アンテナ及び薄膜トランジスタを有する回路が一対の絶縁体に挟まれた構造を有する半導体装置であって、一対の絶縁体の外側又は内側に少なくとも一層の導電膜を形成することにより静電耐圧を向上させることができる。
【0028】
また、一対の絶縁体の内側に導電膜を設けることによって、導電膜を一対の絶縁体により保護することができるので、摩擦等により膜状の導電物(導電膜)が剥がれてしまうことを防止することができる。
【0029】
また、アンテナ側と薄膜トランジスタ側の両方に導電膜を設ける場合、両方の導電膜同士を電気的に接続することにより、誘電分極による静電気破壊の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】半導体装置の一例
【図2】半導体装置の一例
【図3】半導体装置の一例
【図4】半導体装置の作製方法の一例
【図5】半導体装置の作製方法の一例
【図6】半導体装置の作製方法の一例
【図7】半導体装置の作製方法の一例
【図8】半導体装置の作製方法の一例
【図9】半導体装置の作製方法の一例
【図10】半導体装置の作製方法の一例
【図11】半導体装置の一例
【図12】半導体装置の一例
【図13】半導体装置の一例
【図14】半導体装置の一例
【図15】半導体装置の一例
【図16】プリプレグ上面図
【図17】実施例1で作製した構造の比較
【図18】回路図の一例
【図19】実施例1の測定結果
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の形態及び実施例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
但し、開示する発明は以下の説明に限定されないこと、並びに、開示する発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。
【0033】
従って、開示する発明は以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の構造について説明する。
【0036】
本実施形態の半導体装置は、有機樹脂101が含浸された繊維体102からなる第1の絶縁体と、第1の導電膜103と、第1の絶縁膜104と、薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層105と、アンテナが設けられた層106と、第2の絶縁膜107と、第2の導電膜108と、有機樹脂109が含浸された繊維体110からなる第2の絶縁体と、が順次積層された構造を有する。(図1参照)
【0037】
なお、アンテナは層間絶縁膜を介して薄膜トランジスタを有する回路と電気的に接続されている。
【0038】
有機樹脂101及び有機樹脂109は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0039】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、またはシアネート樹脂等がある。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、またはフッ素樹脂等がある。
【0041】
熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることによって、熱圧着が可能となるので製造工程が簡便になるので有利である。
【0042】
また、繊維体102及び繊維体110は、織布または不織布である。
【0043】
織布は、複数の繊維を織って布状にしたものである。
【0044】
不織布は、複数の繊維を織らずに融着、接着、絡ませる等の方法で布状にしたものである。
【0045】
繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維等を用いることができる。
【0046】
ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維等がある。
【0047】
なお、複数の繊維の材料を一種類だけ用いて繊維体を形成しても良いし、複数の繊維の材料を複数種類用いて繊維体を形成しても良い。
【0048】
第1の絶縁体及び第2の絶縁体は、繊維体400(繊維体102、繊維体110に対応)に有機樹脂401(有機樹脂101及び有機樹脂109に対応)が含浸された構造を有する。(図16参照)
【0049】
有機樹脂が含浸された繊維体からなる絶縁体はプリプレグとも呼ばれる。
【0050】
プリプレグとして、代表的には繊維体にマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈したワニスを含浸させた後、乾燥して有機溶剤を揮発させてマトリックス樹脂を半硬化させたものがある。
【0051】
プリプレグの厚さが10μm以上100μm以下であると、薄型で湾曲することが可能な半導体装置を作製することができるので好ましい。
【0052】
なお、第1の絶縁体及び第2の絶縁体は、繊維体を有さない有機樹脂のみからなるものを用いても良い。
【0053】
この場合の有機樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、またはフッ素樹脂等を用いることができる。
【0054】
但し、プリプレグは、繊維体を有しているため、引っ張り及び曲げへの高い耐久性と、局所的な圧力を拡散する機能と、を有する。
【0055】
よって、繊維体を有するプリプレグを第1の絶縁体及び第2の絶縁体に用いた方が好ましい。
【0056】
また、第1の導電膜103及び第2の導電膜108を有することによって、第1の絶縁体及び第2の絶縁体に局所的に蓄積した静電気を拡散することができるようになるので、局所的に静電気が大量に蓄積して放電することを防止することができるようになる。
【0057】
第1の導電膜103及び第2の導電膜108としては、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、インジウム酸化物、酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物等を用いることができる。なお、導電性を有していれば静電耐圧向上効果を有することができるので、列挙した材料に限定されることはない。なお、複数の島状導電膜、網目状の導電膜等のように隙間を有する導電膜を形成すると、隙間から電磁波が透過しやすくなるので好ましい。また、両側に導電膜を設ける場合、一方を透光性導電膜(インジウム酸化物、酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物等)、他方を遮光性導電膜(チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム等)にしておくことにより、表裏の区別が付きやすくなるので好ましい。表裏の区別をつける理由は、半導体装置に信号を入力する際、アンテナが配置されている表側から信号を入力する方が読み取りがしやすくなるからである。
【0058】
薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層105について、薄膜トランジスタはスイッチング素子として機能すればどのような構造を有していても良い。例えば、トップゲート型薄膜トランジスタでも良いし、ボトムゲート型薄膜トランジスタでも良い。
【0059】
なお、スイッチング素子として機能すれば良いので、薄膜トランジスタに替えてMIM素子等のスイッチング素子を用いても良い。また、シリコンウェハを用いて形成したスイッチング素子を用いても良い。
【0060】
第1の絶縁膜104は、薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層105の下に設けられる下地絶縁膜である。
【0061】
第1の導電膜103と薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層105との間に、下地絶縁膜が存在することによって、第1の導電膜103により薄膜トランジスタ同士が電気的に接続されてしまうことによる回路のショートを防止することができる。
【0062】
第1の絶縁膜104(下地絶縁膜)としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。
【0063】
アンテナが設けられた層106のアンテナとしては、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉄等を用いることができる。
【0064】
アンテナの形状は、直線状、曲線状、蛇行形状、コイル状、リボン状又はこれらを組み合わせた形状等を用いることができる。
【0065】
なお、2種類のアンテナを用いる電磁誘導方式のアンテナとしても良い。
【0066】
例えば、回路と電気的に接続される第1のアンテナをコイル状とし、絶縁膜を介して前記第1のアンテナ上に第2のアンテナを設ける。絶縁膜は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。
【0067】
第2のアンテナの形状は、少なくともコイル状の第1の領域と、直線状、曲線状、蛇行形状、リボン状又はこれらを組み合わせた形状等を有する第2の領域とを有する。
【0068】
第1の領域は第1のアンテナと重なる位置に配置されているので、第2の領域で受信した信号が電磁誘導により第1のアンテナに供給される。
【0069】
このように2種類のアンテナを用いて電磁誘導により信号を伝える方式を電磁誘導方式という。
【0070】
また、第2の絶縁膜107はアンテナの保護膜である。
【0071】
保護膜を有することによって、プリプレグ等の熱圧着時にアンテナを保護することができる。
【0072】
さらに、第2の導電膜108とアンテナが設けられた層106との間に第2の絶縁膜107が設けられていることによって、第2の導電膜108とアンテナとのショートを防止できる。
【0073】
第2の絶縁膜107としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。
【0074】
なお、第1の導電膜103、第1の絶縁膜104、アンテナ、第2の絶縁膜107、及び第2の導電膜108は、単層構造及び積層構造のいずれを用いても良い。
【0075】
また、第1の絶縁体及び第2の絶縁体は、片面又は両面にアラミド等の緩衝体を設けることにより圧力に対する耐性を向上させることができるので好ましい。
【0076】
特に、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の外側に設けると外部からの圧力を直接的に緩和できるので好ましい。
【0077】
以上のように、第1の導電膜103及び第2の導電膜108を設けることによって、静電耐圧を向上させることができる。
【0078】
特に、繊維体を用いる場合、膜状の導電物(第1の導電膜103、第2の導電膜108等)を少なくとも一層設けることによって、圧力及び応力という力学的な力に対する耐性向上と、静電気という電気的な力に対する耐性向上と、の双方を同時に達成できる。
【0079】
膜状の導電物を少なくとも一層設けるという構成は非常にシンプルであるので、どのような絶縁体にも適用できる。
【0080】
よって、適用の幅が非常に広い構成であるといえる。
【0081】
なお、変形例としてプリプレグを構成する有機樹脂の中に複数の導電性粒子を含有させる方法(プリプレグの内部に導電性を持たせる方法)も適用可能である。
【0082】
ただし、複雑な形状で絡み合った繊維の全てを複数の導電性粒子で電気的に接続させることは不可能に近いので局所的な静電気の蓄積を避けることは難しいかもしれない。
【0083】
また、粒子と有機樹脂の混合物である以上、絶縁性の部分が必然的に残ってしまい、当該絶縁性の部分に静電気が局所的に蓄積する可能性がある。
【0084】
よって、膜状の導電物を少なくとも一層設ける構成の方がより確実に静電気の蓄積が避けられるので好ましい。
【0085】
膜状の導電物を全面を覆うように設けるので局所的な電荷の蓄積の防止効果が高くなるからである。
【0086】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0087】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1の変形例について説明する。
【0088】
本実施の形態の半導体装置も実施の形態1と同様に、有機樹脂101が含浸された繊維体102からなる第1の絶縁体と、第1の導電膜103と、第1の絶縁膜104と、薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層105と、アンテナが設けられた層106と、第2の絶縁膜107と、第2の導電膜108と、有機樹脂109が含浸された繊維体110からなる第2の絶縁体と、が順次積層された構造を有する。(図2参照)
【0089】
実施の形態1と異なる点は、第1の導電膜103と第2の導電膜108との導通を取るための導電体111と導電体112とを有する点である。(図2参照)
【0090】
本実施の形態においては、導電体111と導電体112との2つの導電体を設けたが、第1の導電膜103と第2の導電膜108との導通を取ることができれば良いので、導電体の数は1つでも3つ以上でも良い。
【0091】
第1の導電膜103と第2の導電膜108との導通を取る導電体を有することによって、第1の導電膜103と第2の導電膜108とが同電位に保たれる。
【0092】
すると、第1の導電膜103と第2の導電膜108に挟まれた領域を通る経路に電流が流れることを防止することができる。
【0093】
したがって、回路と垂直方向の電流により回路が破壊されてしまうことを防止することができるようになるのである。
【0094】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0095】
(実施の形態3)
本実施形態では、実施の形態1又は実施の形態2の変形例について説明する。
【0096】
膜状の導電物を少なくとも一層設ける構成であれば、如何なる構成でも静電耐圧向上効果を奏するので、図3(A)〜(F)に示すような構成も適用可能である。
【0097】
図3(A)〜(F)において、第1の絶縁体201、下地絶縁膜上に回路が設けられた層202、アンテナが設けられた層203、保護膜204、第2の絶縁体205が順次積層された構造を有する。
【0098】
そして、導電膜206〜212の形成位置がそれぞれ異なる。
【0099】
なお、第1の絶縁体201、下地絶縁膜、回路、アンテナ、保護膜204、第2の絶縁体205の材料はそれぞれ、実施の形態1で説明した第1の絶縁体、下地絶縁膜、回路、アンテナ、保護膜、第2の絶縁体の材料を用いることができる。
【0100】
図3(A)は、導電膜206を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の外側であって、アンテナ側に形成したものである。
【0101】
図3(B)は、導電膜207を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の外側であって、薄膜トランジスタ側に形成したものである。
【0102】
図3(C)は、導電膜208を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の外側であって、アンテナ側に形成し、導電膜209を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の外側であって、薄膜トランジスタ側に形成したものである。なお、導電膜208と導電膜209とは電気的に接続されていない。
【0103】
図3(D)は、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の外側全面を導電膜210で囲ったものである。
【0104】
図3(E)は、導電膜211を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の内側であって、アンテナ側に形成したものである。
【0105】
図3(F)は、導電膜212を、第1の絶縁体201及び第2の絶縁体205の内側であって、薄膜トランジスタ側に形成したものである。
【0106】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0107】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至3で説明した半導体装置の作製方法の一例について説明する。
【0108】
まず、基板300(支持基板、回路作製用基板)上に、絶縁膜301、金属膜302、絶縁膜303、第1の導電膜501を順次形成する。(図4(A)参照)
【0109】
基板300(支持基板、回路作製用基板)は、ガラス基板、石英基板、金属基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0110】
絶縁膜301は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜等を用いることができる。絶縁膜301は、CVD法、スパッタ法等で形成することができる。絶縁膜301の膜厚は10nm〜500nmが好ましい。なお、絶縁膜301の形成を省略しても良い。
【0111】
金属膜302は、タングステン膜、モリブデン膜、チタン膜、タンタル膜等を用いることができる。金属膜302は、CVD法、スパッタ法等で形成することができる。金属膜302の膜厚は、100nm〜1000nmが好ましい。
【0112】
絶縁膜303は、酸化珪素膜、窒化珪素膜等を用いることができる。絶縁膜303は、CVD法、スパッタ法等で形成することができる。絶縁膜303の膜厚は10nm〜100nmが好ましい。
【0113】
第1の導電膜501は、静電気破壊対策用の導電膜である。第1の導電膜501としては、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、インジウム酸化物、酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物等を用いることができる。なお、導電性を有していれば静電耐圧向上効果を有することができるので、列挙した材料に限定されることはない。第1の導電膜501は、CVD法、蒸着法、スパッタ法等で形成することができる。第1の導電膜501の膜厚は、5nm〜200nm(若しくは、10nm〜100nm)が好ましい。なお、複数の島状導電膜、網目状の導電膜等のように隙間を有する導電膜を形成すると、隙間から電磁波が透過しやすくなるので好ましい。
【0114】
なお、静電気による半導体装置の破壊を効果的に防止するためには、第1の導電膜501のシート抵抗が1.0×10Ω/□以下、好ましくは1.0×10Ω/□以下、より好ましくは1.0×10Ω/□以下となるように膜厚とすることが好ましい。
【0115】
ここで、シリコンターゲットを酸素を含むアルゴンガスでスパッタリングすることによって、酸化珪素からなる絶縁膜303を形成することができる。
【0116】
このとき、金属膜302の表面は酸素によって酸化されて剥離層が形成されるので、後の剥離工程において力学的な力による剥離が可能になる。
【0117】
なお、シリコンターゲットを窒素を含むアルゴンガスでスパッタリングすることによって、金属膜302の表面を窒化させて剥離層を形成するとともに、窒化珪素膜からなる絶縁膜303を形成しても良い。
【0118】
また、絶縁膜303形成前に、金属膜302表面に酸素プラズマ処理又は窒素プラズマ処理を行うことにより、剥離層を形成しても良い。
【0119】
金属膜302表面に酸素プラズマ処理又は窒素プラズマ処理を行う場合は、絶縁膜303を形成せず金属膜302上に第1の導電膜501が形成された構造としても良い。
【0120】
また、金属膜302を形成するかわりに、シリコンからなる剥離層を絶縁膜301と絶縁膜303の間に形成しても良い。
【0121】
シリコンからなる剥離層を用いる場合は、後の剥離工程において、フッ化ハロゲン(例えば、一フッ化塩素(ClF)、三フッ化塩素(ClF)、一フッ化臭素(BrF)、三フッ化臭素(BrF)、一フッ化沃素(IF)、三フッ化沃素(IF))を用いることによって、シリコンがエッチングされて剥離を行うことができる。
【0122】
なお、フッ化ハロゲンはシリコン、金属(例えば、アルミニウム等)等をエッチングする作用を有するので、シリコンを剥離層として用いる際、絶縁膜303が第1の導電膜501を保護する効果を奏することになる。
【0123】
よって、シリコンのかわりに金属(例えば、アルミニウム等)を剥離層として用い、剥離層のエッチング材料としてフッ化ハロゲンを用いる構成としても良い。
【0124】
なお、第1の導電膜がフッ化ハロゲンによってエッチングされない材料(例えば、酸化物導電体(インジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム酸化物、酸化亜鉛等))の場合は、絶縁膜303を設けなくても良い。
【0125】
以上のように、少なくとも基板300と第1の導電膜501との間に剥離層が設けられる構造を形成することによって、後の剥離工程において、基板300と、第1の導電膜501及び第1の導電膜上に設けられる回路等と、を分離することができる。
【0126】
次に、第1の絶縁膜304(下地絶縁膜)を形成し、第1の絶縁膜304上に薄膜トランジスタ305及び薄膜トランジスタ306を形成する。(図4(B)参照)
【0127】
薄膜トランジスタ305は、半導体層305aと、半導体層305a上に形成されたゲート絶縁膜305bと、ゲート絶縁膜305b上に形成されたゲート電極305cと、ゲート絶縁膜305b上に形成され、ゲート電極305cの側壁と接するサイドウォール305d及びサイドウォール305eと、を有する。(図4(B)参照)
【0128】
薄膜トランジスタ306は、半導体層306aと、半導体層306a上に形成されたゲート絶縁膜306bと、ゲート絶縁膜306b上に形成されたゲート電極306cと、ゲート絶縁膜306b上に形成され、ゲート電極306cの側壁と接するサイドウォール306d及びサイドウォール306eと、を有する。(図4(B)参照)
【0129】
なお、薄膜トランジスタは回路に必要な数だけ複数形成される。
【0130】
また、本実施の形態においては、トップゲート型薄膜トランジスタを例示したが、ボトムゲート型薄膜トランジスタも適用可能である。
【0131】
また、LDD構造を有する薄膜トランジスタを例示したが、LDD構造を有さなくても良い。
【0132】
さらに、スイッチング素子として機能すれば良いので、薄膜トランジスタに替えて、MIM素子等を形成しても良い。
【0133】
なお、薄膜トランジスタに用いる半導体層は、シリコン、シリコンゲルマニウム、酸化物半導体、有機物半導体等を用いることができる。
【0134】
また、薄膜トランジスタに用いるゲート絶縁膜及びサイドウォールは、酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
【0135】
また、薄膜トランジスタに用いるゲート電極は、タングステン、モリブデン、アルミニウム、チタン、シリコン等を用いることができる。
【0136】
次に、薄膜トランジスタ305及び薄膜トランジスタ306を覆う第1の層間絶縁膜307を形成し、第1の層間絶縁膜307上に第2の層間絶縁膜308を形成し、第1の層間絶縁膜307及び第2の層間絶縁膜308に薄膜トランジスタ305及び薄膜トランジスタ306に達するコンタクトホールを形成し、第2の層間絶縁膜308上に薄膜トランジスタ305及び薄膜トランジスタ306と電気的に接続される配線309a〜309dを形成する。(図5(A)参照)
【0137】
そして、薄膜トランジスタを配線で電気的に接続することによって回路が形成される。
【0138】
第1の層間絶縁膜307は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。第1の層間絶縁膜307の膜厚は50nm〜200nmが好ましい。
【0139】
第2の層間絶縁膜308は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。第2の層間絶縁膜308の膜厚は300nm〜5000nmが好ましい。
【0140】
なお、本実施の形態では2層の層間絶縁膜を層間絶縁膜として用いたが、1層の層間絶縁膜を用いても良いし、3層以上の層間絶縁膜を用いても良い。
【0141】
配線309a〜309dは、アルミ、チタン、モリブデン、タングステン、金、銀、銅等を用いることができる。配線309a〜309dの膜厚は、1000nm〜5000nmが好ましい。なお、配線309a〜309dは、単層構造でも積層構造でも良い。
【0142】
次に、配線309a〜309dを覆う第3の層間絶縁膜310を形成し、第3の層間絶縁膜310に配線309aに達するコンタクトホールを形成し、第3の層間絶縁膜310上にアンテナを有する層311を形成し、アンテナを有する層311上に第2の絶縁膜312(保護膜)を形成し、第2の絶縁膜312(保護膜)上に第2の導電膜502を形成する。(図5(B)参照)
【0143】
第3の層間絶縁膜310は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等を用いることができる。第3の層間絶縁膜310の膜厚は300nm〜5000nmが好ましい。
【0144】
アンテナを有する層311は、アルミ、チタン、モリブデン、タングステン、金、銀、銅等を用いることができる。アンテナを有する層311の膜厚は、1000nm〜5000nmが好ましい。なお、アンテナを有する層311は、単層構造でも積層構造でも良い。
【0145】
なお、アンテナを有する層311は、アンテナ311aと配線部311bを有する。
【0146】
第2の絶縁膜312(保護膜)は、酸化珪素膜、窒化珪素膜等を用いることができる。第2の絶縁膜312(保護膜)の膜厚は、100nm〜1000nmが好ましい。
【0147】
第2の絶縁膜312(保護膜)は、プリプレグ等の熱圧着時にアンテナを保護する。また、第2の導電膜502とアンテナを有する層311とがショートすることを防止することができる。
【0148】
なお、第2の導電膜502とアンテナを有する層311とは電気的に接続されていない。
【0149】
第2の導電膜502は、静電気破壊対策用の導電膜である。第2の導電膜502としては、チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、インジウム酸化物、酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物等を用いることができる。なお、導電性を有していれば静電耐圧向上効果を有することができるので、列挙した材料に限定されることはない。第2の導電膜502は、CVD法、蒸着法、スパッタ法等で形成することができる。第2の導電膜502の膜厚は、5nm〜200nm(若しくは、10nm〜100nm)が好ましい。なお、複数の島状導電膜、網目状の導電膜等のように隙間を有する導電膜を形成すると、隙間から電磁波が透過しやすくなるので好ましい。
【0150】
なお、静電気による半導体装置の破壊を効果的に防止するためには、第2の導電膜502のシート抵抗が1.0×10Ω/□以下、好ましくは1.0×10Ω/□以下、より好ましくは1.0×10Ω/□以下となるように膜厚とすることが好ましい。
【0151】
次に、第2の導電膜502上に繊維体313に有機樹脂314を含浸させた第1の絶縁体を熱圧着する。そして、熱圧着後、力学的な力を加える(引っ張る、押す等)ことにより基板300、絶縁膜301、金属膜302を分離する剥離工程を行う。(図6参照)
【0152】
金属膜302表面は酸化又は窒化されているので、金属膜302と絶縁膜303との密着性が弱くなっている。
【0153】
よって、力学的な力を加えることによって、基板300、絶縁膜301、金属膜302が選択的に分離されることになる。
【0154】
側面から水を注入して基板300、絶縁膜301、金属膜302を選択的に分離しても良い。
【0155】
水を注入すると剥離界面に水が侵入するので、回路側と基板側が水によって電気的に接続された状態となる。
【0156】
剥離時には静電気が生ずるが、水で電気的な接続をとることによって、剥離時の静電気破壊の問題を防止しやすくなる。
【0157】
なお、水の導電性を向上させるために、食塩水、炭酸水等の水溶液を用いても良い。ただし、食塩は回路に悪影響を与えるので、炭酸水が好適であると言える。
【0158】
なお、金属膜302の代わりにシリコンからなる剥離層を形成した場合は、フッ化ハロゲンでシリコンからなる剥離層が選択的にエッチングされ、基板300、絶縁膜301が選択的に分離されることになる。
【0159】
このように、剥離層を用いて少なくとも基板300を選択的に分離する工程を剥離工程という。また、剥離工程により基板が選択的に分離された回路を剥離回路と呼ぶことにする。また、基板が分離されて皮のように薄い回路だけが残ることからピール回路と呼んでも良い。なお、基板をエッチング液によって除去してピール回路を作製する方法、可撓性基板に回路を形成してピール回路を作製する方法等の他の方法を用いてピール回路を形成しても良い。
【0160】
薄膜トランジスタを有する剥離回路(ピール回路)は非常に薄い。よって、引っ張り、外部からの圧力等に対して非常に脆い。
【0161】
一方、繊維体に有機樹脂を含浸させた絶縁体は、繊維体を有するため、引っ張り耐性が強く、外部からの圧力を拡散することができる。
【0162】
したがって、薄膜トランジスタを有する剥離回路(ピール回路)を、繊維体に有機樹脂を含浸させた絶縁体で挟み込むことによって、引っ張り及び外部からの圧力から保護することができるようになる。
【0163】
そこで、剥離工程の後、絶縁膜303の下に繊維体315に有機樹脂316を含浸させた第2の絶縁体を熱圧着する。(図7参照)
【0164】
なお、第1の絶縁体及び第2の絶縁体は、実施の形態1で説明したプリプレグを用いたが、剥離回路(ピール回路)を用いない場合、引っ張り及び外部からの圧力等の耐性を考慮しない場合は、繊維体を有しない絶縁体を用いても良い。
【0165】
ただし、剥離回路(ピール回路)を用いる際にプリプレグを適用することによって、引っ張り及び外部からの圧力等に対して耐性を有するフレキシブルな半導体装置を適用することができるので好ましい。
【0166】
また、第1の導電膜501及び第2の導電膜502を有することによって、静電耐圧の高い半導体装置を提供することができる。
【0167】
特に、繊維体という複雑な形状を有するプリプレグを適用した場合、プリプレグ内部に導電性の粒子を用いるよりも、本実施形態のように膜状の導電物を設けた方が静電耐圧が上昇する。
【0168】
また、製造工程において膜を形成するだけで済むので、簡便な製造工程とすることができるので好ましい。
【0169】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0170】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4の変形例について説明する。
【0171】
図5(A)の工程の後、配線309a〜309dを覆う第3の層間絶縁膜310を形成し、第3の層間絶縁膜310に配線309aに達するコンタクトホールを形成し、第3の層間絶縁膜310上にアンテナを有する層311を形成し、アンテナを有する層311上に第2の絶縁膜312(保護膜)を形成し、アンテナを有する層311及び薄膜トランジスタの形成されていない位置に第1の導電膜501まで達するコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールに導電物317を埋め込む。(図8(A)参照)
【0172】
導電物317は、アルミ、チタン、モリブデン、タングステン、金、銀、銅等を用いることができる。埋め込む方法は、導電膜をコンタクトホールの深さよりも厚い膜厚で形成した後、エッチバック又はCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)等で保護膜表面が露出するまでエッチングを行う方法を採用できる。
【0173】
なお、図8では第1の導電膜501と第2の導電膜502とのコンタクト箇所を一箇所だけとしたが、複数箇所としても良い。
【0174】
ただし、コンタクト箇所はアンテナを有する層311及び薄膜トランジスタの形成されていない位置に形成する。
【0175】
次に、第2の絶縁膜312上に導電物317と電気的に接続する第2の導電膜502を形成する。(図8(B)参照)
【0176】
次に、第2の導電膜502上に繊維体313に有機樹脂314を含浸させた第1の絶縁体を熱圧着する。そして、熱圧着後、力学的な力を加える(引っ張る、押す等)ことにより基板300、絶縁膜301、金属膜302を分離する剥離工程を行う。(図9参照)
【0177】
次に、剥離工程の後、絶縁膜303の下に繊維体315に有機樹脂316を含浸させた第2の絶縁体を熱圧着する。(図10参照)
【0178】
以上のように、第1の導電膜501と第2の導電膜502とが電気的に接続された構造を有することによって、第1の導電膜501と第2の導電膜502とが同電位に保たれるので、静電耐圧を上昇させることができる。
【0179】
なお、導電物317を形成せずに第2の導電膜502を用いて第1の導電膜501と第2の導電膜502とのコンタクトをとっても良い。また、第2の導電膜502を形成した後、レーザー光を照射して第1の導電膜501と第2の導電膜502とを溶融させて接触させても良い。
【0180】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0181】
(実施の形態6)
実施の形態4、5では、第2の導電膜をアンテナの上側に設ける構成としたが、第2の導電膜をアンテナと薄膜トランジスタを有する回路との間に配置しても良い。
【0182】
具体的には、第3の層間絶縁膜310上に開口部を有する第3の導電膜503を配置する。第3の導電膜503の上にはアンテナとショートがおきないように第4の層間絶縁膜318が形成されている。(図11参照)
【0183】
なお、第3の導電膜503の開口部は、アンテナとショートがおこらないように第4の層間絶縁膜318に設けられるコンタクトホールよりも大きく形成されている。
【0184】
第4の層間絶縁膜318の材料は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、有機樹脂膜等が適用できる。
【0185】
以上のような構成とすることによって、アンテナを遮る導電膜が無くなるので、導電膜による共振周波数のずれの問題を防止することができる。
【0186】
なお、実施の形態5と同様、第1の導電膜501と第3の導電膜503とをコンタクトホールを介して電気的に接続しても良い。
【0187】
また、第3の導電膜503の材料は、第1の導電膜501及び第2の導電膜502と同様である。
【0188】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0189】
(実施の形態7)
実施の形態4乃至6では、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の内側に静電気破壊対策用の導電膜を設ける構成としたが、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の外側に静電気破壊対策用の導電膜を設ける構成としても良い。
【0190】
具体的には、繊維体315に有機樹脂316を含浸させた第2の絶縁体の下側表面に第4の導電膜504を形成し、繊維体313に有機樹脂314を含浸させた第1の絶縁体の上側表面に第5の導電膜505を形成する。(図12参照)
【0191】
作製方法としては、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の表面に導電膜を形成した後、熱圧着を行っても良いし、熱圧着を行った後に導電膜を形成しても良い。
【0192】
また、第4の導電膜504と第5の導電膜505と電気的に接続して第6の導電膜506とする構成としても良い。(図13参照)
【0193】
第4の導電膜504と第5の導電膜505と電気的に接続させる方法としては、側面に導電膜を形成しても良いし、レーザー光を照射して第4の導電膜504と第5の導電膜505を溶融させて接触させても良い。
【0194】
また、第4乃至6の導電膜の材料は、第1の導電膜501及び第2の導電膜502と同様である。
【0195】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0196】
(実施の形態8)
静電耐圧上昇効果を上昇させるためには導電膜の抵抗値を下げることが効果的である。
【0197】
導電膜の抵抗値を下げるためには、単純には導電膜の膜厚を厚くすれば良い。
【0198】
しかし、アンテナ導電膜の膜厚を厚くすると、共振周波数がずれてしまい通信距離が減少してしまう。
【0199】
そこで、図13の変形例として、アンテナ311aと重ならない位置に第7の導電膜507を形成する。なお、第7の導電膜507と配線部311bとは重なる位置に配置されていても良いし、重ならない位置に配置されていても良い。(図14参照)
【0200】
図14の構成によって、アンテナ領域の共振周波数のずれを最小限にとどめつつ、静電耐圧上昇効果を上昇させることが可能となる。
【0201】
なお、第7の導電膜507は、第6の導電膜506よりも厚い方が好ましい。
【0202】
また、アンテナ311aと重なる位置の導電膜を除去した形状を有する第8の導電膜508を設ける構成としても良い。(図15参照)
【0203】
第7及び8の導電膜の形成方法は、成膜時にメタルマスクを用いてパターンを形成する方法、全面に導電膜を成膜したあとフォトリソグラフィ法等を用いてマスクを形成した後、選択的に導電膜の一部を除去する方法等を用いることができる。
【0204】
また、第7及び8の導電膜の材料は、第1の導電膜501及び第2の導電膜502と同様である。なお、本実施の形態では導電膜を絶縁体の外側に設けた例を示したが、導電膜を絶縁体の内側に設けた上で本実施の形態の構造を採用しても良い。また、アンテナと重なる領域に配置された導電膜の形状を、複数の島状導電膜、網目状の導電膜等のように隙間から電磁波が透過しやすい形状にするとともに、他の領域は全面に導電膜を設けた構成としても良い。
【0205】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0206】
(実施の形態9)
実施の形態1乃至8において、衝撃拡散層を設ける例を示す。
【0207】
衝撃拡散層としては、アラミド樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂などを用いることができる。
【0208】
衝撃拡散層は、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の外側表面に接して設けると良い。
【0209】
即ち、当該構成によって、衝撃拡散層が露出するので、外部からの押圧に対しての耐久性が向上することになる。
【0210】
なお、図12又は図13のような構造の場合、衝撃拡散層は導電膜と絶縁体の間に設けても良いし、導電膜の外側表面に設けても良い。
【0211】
特に、導電膜の外側表面に設けると衝撃拡散層が露出し且つ導電膜が露出しない構造となる。
【0212】
すると、導電膜が衝撃拡散層によって摩擦等から保護されるので、摩擦により導電膜が剥がれてしまうことを防止できるので好ましい。
【0213】
なお、作製方法としては、第1の絶縁体及び第2の絶縁体の表面に衝撃拡散層を形成した後、熱圧着を行っても良いし、熱圧着を行った後に衝撃拡散層を形成しても良い。
【0214】
なお、導電膜表面に設ける場合は、導電膜形成後に衝撃拡散層を形成すれば良い。
【0215】
衝撃拡散層は熱圧着等により設けることができる。接着剤を用いてフィルム状の衝撃拡散層を貼り付けても良い。
【0216】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0217】
(実施の形態10)
本実施の形態では、半導体装置の回路の一例及び動作の一例について説明する。
【0218】
非接触でデータを交信する機能を有する半導体装置800は、高周波回路810、電源回路820、リセット回路830、クロック発生回路840、データ復調回路850、データ変調回路860、他の回路の制御を行う制御回路870、記憶回路880およびアンテナ890を有している。(図18参照)
【0219】
高周波回路810はアンテナ890より信号を受信して、データ変調回路860より受信した信号をアンテナ890から出力する回路である。
【0220】
電源回路820は受信信号から電源電位を生成する回路である。
【0221】
リセット回路830はリセット信号を生成する回路である。
【0222】
クロック発生回路840はアンテナ890から入力された受信信号を基に各種クロック信号を生成する回路である。
【0223】
データ復調回路850は受信信号を復調して制御回路870に出力する回路である。
【0224】
データ変調回路860は制御回路870から受信した信号を変調する回路である。
【0225】
また、制御回路870としては、例えばコード抽出回路910、コード判定回路920、CRC判定回路930および出力ユニット回路940が設けられている。
【0226】
なお、コード抽出回路910は制御回路870に送られてきた命令に含まれる複数のコードをそれぞれ抽出する回路である。
【0227】
コード判定回路920は抽出されたコードとリファレンスに相当するコードとを比較して命令の内容を判定する回路である。
【0228】
CRC判定回路930は判定されたコードに基づいて送信エラー等の有無を検出する回路である。
【0229】
次に、上述した半導体装置の動作の一例について説明する。
【0230】
まず、アンテナ890により無線信号が受信される。
【0231】
無線信号は高周波回路810を介して電源回路820に送られ、高電源電位(以下、VDDと記す)が生成される。
【0232】
VDDは半導体装置800が有する各回路に供給される。
【0233】
また、高周波回路810を介してデータ復調回路850に送られた信号は復調されて復調信号となる。
【0234】
さらに、高周波回路810を介してリセット回路830およびクロック発生回路840を通った信号及び復調信号は制御回路870に送られる。
【0235】
制御回路870に送られた信号は、コード抽出回路910、コード判定回路920およびCRC判定回路930等によって解析される。
【0236】
そして、解析された信号にしたがって、記憶回路880内に記憶されている半導体装置の情報が出力される。
【0237】
出力された半導体装置の情報は出力ユニット回路940を通って符号化される。
【0238】
さらに、符号化された半導体装置800の情報はデータ変調回路860を通って、アンテナ890により無線信号に載せて送信される。
【0239】
なお、半導体装置800を構成する複数の回路においては、低電源電位(以下、VSS)は共通であり、VSSはGNDとすることができる。
【0240】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0241】
(実施の形態11)
実施の形態1乃至10のアンテナを介して無線通信を行う半導体装置(RFIDタグ、無線タグ、ICチップ、無線チップ、非接触信号処理装置、半導体集積回路チップ)は、物品又は生物(ヒト、動物、植物等)の表面に貼る、又は物品又は生物(ヒト、動物、植物等)の内部に埋め込む等の利用形態を取ることができる。
【0242】
アンテナを介して無線通信を行う半導体装置を用いることによって、非接触での情報管理が可能になる。
【0243】
非接触であるため、いつでもどこでも利用者が意識せずに情報通信技術を活用できる環境(ユビキタスコンピューティング)につながっていく。
【0244】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0245】
静電気破壊対策の効果を実証するため、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)測定を行った。
【0246】
ESD測定は以下のように行う。
【0247】
まず、ガラス基板(厚さ0.5nm)の上にアルミ板を載せ、前記アルミ板の上に導電性シートを載せ、前記導電シートの上に試料を載せる。
【0248】
そして、試料(チップ)の上方からESD試験機(簡易応答評価 Takaya株式会社製))を用いて所定の電圧を印加する。
【0249】
次に、所定の電圧を印加した試料(チップ)の除電を一分間行う。
【0250】
その後、除電を行った試料(チップ)が動作するか否かの判定を行う。
【0251】
そして、所定の電圧を1kVから15kVまで増加させていって試料(チップ)が動作不能になる電圧を測定した。
【0252】
また、試料(チップ)の表面(アンテナ側)から電圧を印加する場合と、試料(チップ)の裏面(薄膜トランジスタ側)から電圧を印加する場合と、の2パターンの測定を行った。
【0253】
なお、15kVの電圧を印加した後に動作した試料(チップ)は、少なくとも15kV以上の静電耐圧を有すると判断した。
【0254】
ここで、測定を行った試料の説明を行う。
【0255】
(比較構造:静電気破壊対策用の導電膜を有さない構造)
比較構造として、第1の絶縁体11と、第1の絶縁体11上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路12と、薄膜トランジスタを有する回路12の上に設けられ且つ薄膜トランジスタを有する回路12と電気的に接続されたアンテナ13と、アンテナ13上に設けられた保護膜14(窒化珪素膜)と、保護膜14上に設けられた第2の絶縁体15とを有する構造を作製した。(図17(A)参照)
【0256】
比較構造には、静電気破壊対策用の導電膜は設けていない。
【0257】
なお、前記第1の絶縁体及び第2の絶縁体は、繊維体(ガラス繊維)に有機樹脂(臭素化エポキシ樹脂)が含浸された構造体であるプリプレグ(膜厚20μm)を用いた。
【0258】
以下作製した試料について説明する。
【0259】
(構造1:表側(アンテナ側)のみに静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造)
構造1として、比較構造の表側(アンテナ側)のみに静電気破壊対策用の導電膜16を設けた構造を作製した。(図17(B)参照)
【0260】
構造1の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0261】
導電膜としては、10nmの膜厚のチタン(Ti)膜を形成した試料を作製した。
【0262】
(構造2:裏側(薄膜トランジスタ側)のみに静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造)
構造2として、比較構造の裏側(薄膜トランジスタ側)のみに静電気破壊対策用の導電膜17を設けた構造を作製した。(図17(C)参照)
【0263】
構造2の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0264】
導電膜としては、10nmの膜厚のチタン(Ti)膜を形成した試料を作製した。
【0265】
(構造3:表側(アンテナ側)及び裏側(薄膜トランジスタ側)に静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造(上下導通無し))
構造3として、比較構造の表側(アンテナ側)及び裏側(薄膜トランジスタ側)に静電気破壊対策用の導電膜18、導電膜19を設けた構造を作製した。(図17(D)参照)
【0266】
構造3の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0267】
なお、表側(アンテナ側)の導電膜と、裏側(薄膜トランジスタ側)の導電膜と、は電気的に分離されている。
【0268】
導電膜としては、10nmの膜厚のチタン(Ti)膜を形成した試料と、10nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物(ITO(SiO含有))膜を形成した試料と、を作製した。
【0269】
(構造4:表側(アンテナ側)及び裏側(薄膜トランジスタ側)に静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造(上下導通あり))
構造4として、比較構造の表側(アンテナ側)及び裏側(薄膜トランジスタ側)に静電気破壊対策用の導電膜を設け且つ双方の導電膜を電気的に接続させることにより、第1の絶縁体11、薄膜トランジスタを有する回路12、アンテナ13、保護膜14、及び第2の絶縁体15を導電膜20で囲んだ構造を作製した。(図17(E)参照)
【0270】
構造4の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0271】
なお、表側(アンテナ側)の導電膜と、裏側(薄膜トランジスタ側)の導電膜と、は電気的に接続されている。
【0272】
導電膜としては、10nmの膜厚のチタン(Ti)膜を形成した試料と、10nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物(ITO(SiO含有))膜を形成した試料と、100nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物(ITO(SiO含有))膜を形成した試料と、を作製した。
【0273】
(構造5:絶縁体の内側の表側(アンテナ側)及び裏側(薄膜トランジスタ側)に静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造)
構造5として、比較構造の絶縁体の内側に静電気破壊対策用の導電膜21、22を設けた構造を作製した。具体的には、第1の絶縁体と薄膜トランジスタを有する回路の間に導電膜21を設け、第2の絶縁体と保護膜の間に導電膜22を設けた構造とした。(図17(F)参照)
【0274】
構造5の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0275】
なお、表側(アンテナ側)の導電膜と、裏側(薄膜トランジスタ側)の導電膜と、は電気的に接続されている。
【0276】
導電膜としては、10nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物(ITO(SiO含有))膜を形成した試料を作製した。
【0277】
(構造6:絶縁体の内側の表側(アンテナ側)のみに静電気破壊対策用の導電膜を設けた構造)
構造6として、比較構造の絶縁体の内側に静電気破壊対策用の導電膜23を設けた構造を作製した。具体的には、第2の絶縁体と保護膜の間に導電膜23を設けた構造とした。(図17(G)参照)
【0278】
構造6の薄膜トランジスタの構造、回路の構成、アンテナの形状、作製材料等は、比較構造と同じである。
【0279】
導電膜としては、10nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物(ITO(SiO含有))膜を形成した試料を作製した。
【0280】
(測定結果と考察)
比較構造、並びに構造1〜6の測定結果を図19に示す。
【0281】
なお、比較構造は4個の試料の平均値であり、構造1〜6は5個の試料の平均値である。
【0282】
比較構造の結果と構造1〜6の結果とを比較すると、静電気破壊対策のための導電膜を設けた面からの電圧印加に対して、静電耐圧が上昇していることがわかる。
【0283】
したがって、導電膜を設けることによって静電耐圧が向上することは明らかである。
【0284】
よって、ICカードのように両面から電波を送受信し得る半導体装置の場合は、表面と裏面の両方に導電膜を設けると好ましい。
【0285】
もちろん、片面だけに導電膜を設けても静電耐圧向上効果があるので、本願発明は表面と裏面の両方に導電膜を設けることに限定されるものではない。
【0286】
また、比較構造(図17(A))、構造1(図17(B))、構造6(図17(G))の測定結果から、チップは裏面側(薄膜トランジスタ側)の方が静電耐圧が弱いことが理解できる。
【0287】
裏面側(薄膜トランジスタ側)の方が静電耐圧が弱い理由は、薄膜トランジスタ又は回路を構成する配線が静電気破壊されることによってチップが動作不能になるからである。
【0288】
したがって、片面だけ導電膜を設ける場合は、裏面側(薄膜トランジスタ側)に導電膜を設けることが好ましい。
【0289】
また、比較構造(図17(A))、構造5(図17(F))、構造6(図17(G))の測定結果から、導電膜は絶縁体の内部に配置されていても静電耐圧向上効果があることが理解できる。
【0290】
また、酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物膜及びチタン膜のいずれも静電耐圧向上効果があったため、導電膜であれば材料を問わずに静電耐圧向上効果があることが理解できる。
【0291】
また、構造4(図17(E))において、膜厚を厚くした方(導電膜の抵抗値を下げた方)が静電耐圧向上効果が上昇した。
【0292】
したがって、導電膜の抵抗値が低い方が静電耐圧向上効果があることが理解できる。
【0293】
さらに、構造4(図17(E))、構造5(図17(F))の静電耐圧は、他の構造と比較すると非常に高かった。他の構造の平均が一桁(10kV未満)なのに対して、構造4、5はいずれも平均が二桁(10kV以上)であった。
【0294】
この点は、誘電分極を考慮すると説明がつく。
【0295】
即ち、本実施例の試料は第1の絶縁体と第2の絶縁体を有している。
【0296】
すると、第1の絶縁体又は第2の絶縁体のいずれか一方の面が帯電すると、誘電分極が生ずることになるので、他方の面は一方の面と逆極性の電荷が帯電することになる。
【0297】
そして、誘電分極が生ずると、第1の絶縁体と第2の絶縁体の間に挟まれた回路に電流が流れてしまうことになるので、回路が静電気破壊されてしまうことがある。
【0298】
一方、構造4(図17(E))、構造5(図17(F))のように表面の導電膜と裏面の導電膜とが電気的に接続された構造とすることによって、表面の導電膜と裏面の導電膜が同電位に保たれることになる。
【0299】
よって、表面の導電膜と裏面の導電膜とが電気的に接続された構造においては、第1の絶縁体又は第2の絶縁体のいずれか一方の面が帯電しても、他方の面も同電位に帯電することになる。
【0300】
したがって、構造4(図17(E))、構造5(図17(F))では誘電分極による静電気破壊の影響を低減できるので、静電耐圧が他の構造と比較して向上したのである。
【0301】
なお、本発明が本実施例の形状に限定されることはないことはいうまでもない。
【0302】
なお、構造4では図17(E)のように導電膜で周囲全面を囲う構造としたが、表面の導電膜と裏面の導電膜とを電気的に接続された構造とすればどのような構造であっても誘電分極の影響を低減できることは本実施例の結果から明らかである。
【0303】
以上のように、本発明者らは本実施例における実験結果から多くの新規な知見を得ることができた。
【実施例2】
【0304】
実施例1において、導電膜を厚くすれば静電耐圧向上効果が上昇することを述べた。
【0305】
一方、導電膜の膜厚を厚くすることによる回路の共振周波数の変化が懸念点としてあった。
【0306】
即ち、無線チップは外部から一定の周波数の電波を入力して動作させるものである。
【0307】
そして、回路の共振周波数が外部から入力される電波の周波数と近い値であれば、無線チップが動作しやすくなる。
【0308】
一方、回路の共振周波数が外部から入力される電波の周波数と近い値でなければ、無線チップが動作しにくくなる。
【0309】
また、共振周波数はアンテナの巻き数又は回路設計によって、設計者が設定できるものである。
【0310】
したがって、導電膜を設けることにより、設計者が設定した共振周波数よりも、実際の共振周波数がずれてしまうと無線チップの性能が低下してしまうのである。
【0311】
そこで、本実施例では、導電膜の膜厚の違いによる共振周波数の影響を調べた。
【0312】
試料は、実施例1の比較構造の試料と、実施例1の構造4(図17(E))において10nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物膜(ITO(SiO含有))を形成した試料と、実施例1の構造4において100nmの膜厚の酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物膜(ITO(SiO含有))を形成した試料と、を作製した。
【0313】
なお、構造及び導電膜の膜厚以外の他の構成は全て同一となるように試料を作製した。
【0314】
測定結果は以下のようになった。
【0315】
導電膜を設けていない比較構造(図17(A))の試料では、共振周波数は15.5MHzであった。
【0316】
構造4(図17(E))で膜厚を10nmとした試料では、共振周波数は14.3MHzであった。
【0317】
構造4(図17(E))で膜厚を100nmとした試料では、共振周波数は13.0MHzであった。
【0318】
以上のことから、膜厚を厚くすればするほど、共振周波数のずれが大きくなることがわかった。
【0319】
本実施例の結果から、静電気破壊防止効果を向上させ、且つ、共振周波数の影響を下げるために、アンテナと重なる領域の導電膜の膜厚を他の領域の導電膜の膜厚よりも薄くするという構成を考え出した。(図14参照)
【0320】
若しくは、アンテナと重なる領域の導電膜を除去しても良い。(図15参照)
【0321】
但し、導電膜を除去した場合はその領域に局部的に電荷が蓄積されやすくなるので、図14のようにアンテナと重なる領域には薄い導電膜を設けておく方が好ましい形態である。
【0322】
若しくは、アンテナと薄膜トランジスタを有する回路の間に導電膜を設ける構成としても良い。(図11参照)
【符号の説明】
【0323】
11 第1の絶縁体
12 薄膜トランジスタを有する回路
13 アンテナ
14 保護膜
15 第2の絶縁体
16 導電膜
17 導電膜
18 導電膜
19 導電膜
20 導電膜
21 導電膜
22 導電膜
23 導電膜
101 有機樹脂
102 繊維体
103 第1の導電膜
104 第1の絶縁膜
105 薄膜トランジスタを有する回路が設けられた層
106 アンテナが設けられた層
107 第2の絶縁膜
108 第2の導電膜
109 有機樹脂
110 繊維体
111 導電体
112 導電体
201 第1の絶縁体
202 下地絶縁膜上に回路が設けられた層
203 アンテナが設けられた層
204 保護膜
205 第2の絶縁体
206 導電膜
207 導電膜
208 導電膜
209 導電膜
210 導電膜
211 導電膜
212 導電膜
300 基板
301 絶縁膜
302 金属膜
303 絶縁膜
304 第1の絶縁膜
305 薄膜トランジスタ
305a 半導体層
305b ゲート絶縁膜
305c ゲート電極
305d サイドウォール
305e サイドウォール
306 薄膜トランジスタ
306a 半導体層
306b ゲート絶縁膜
306c ゲート電極
306d サイドウォール
306e サイドウォール
307 第1の層間絶縁膜
308 第2の層間絶縁膜
309a 配線
309b 配線
309c 配線
309d 配線
310 第3の層間絶縁膜
311 アンテナを有する層
311a アンテナ
311b 配線部
312 第2の絶縁膜
313 繊維体
314 有機樹脂
315 繊維体
316 有機樹脂
317 導電物
318 第4の層間絶縁膜
400 繊維体
401 有機樹脂
501 第1の導電膜
502 第2の導電膜
503 第3の導電膜
504 第4の導電膜
505 第5の導電膜
506 第6の導電膜
507 第7の導電膜
508 第8の導電膜
800 半導体装置
810 高周波回路
820 電源回路
830 リセット回路
840 クロック発生回路
850 データ復調回路
860 データ変調回路
870 制御回路
880 記憶回路
890 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体と、
前記第1の絶縁体上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路と、
前記回路上に設けられ、前記回路と電気的に接続されたアンテナと、
前記アンテナ上に設けられた第2の絶縁体と、を有し、
前記第1の絶縁体と前記回路との間に第1の導電膜が設けられており、
前記第2の絶縁体と前記アンテナとの間に第2の導電膜が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1の絶縁体と、
前記第1の絶縁体上に設けられた薄膜トランジスタを有する回路と、
前記回路上に設けられ、前記回路と電気的に接続されたアンテナと、
前記アンテナ上に設けられた第2の絶縁体と、を有し、
前記第1の絶縁体と前記回路との間に第1の導電膜が設けられており、
前記回路と前記アンテナとの間に第2の導電膜が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1の絶縁体及び前記第2の絶縁体は、繊維体に有機樹脂が含浸した構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とは電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−97601(P2010−97601A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211223(P2009−211223)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】