説明

回路部品モジュールおよび電子回路装置並びに回路部品モジュールの製造方法

【課題】 高精度で信頼性が高く、かつローコストに生産が可能な回路部品モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 放熱板8と、放熱板8の一面8bに積層された樹脂層6と、樹脂層6に埋込まれるとともに一部が放熱板8に接している電子部品31と、樹脂層6の放熱板と反対側の面6aに埋込まれて電子部品31とともに回路を構成する配線パターン5とを具備してなることを特徴とする回路部品モジュール100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品モジュールおよび電子回路装置並びに回路部品モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話やPDAなどの携帯電子機器では、小型軽量化およびローコスト化のために、回路基板と各種部品とを一体化した薄板状の回路部品モジュールが採用されつつある。こうした回路部品モジュールは、例えば、特許文献1や特許文献2に示すように、樹脂などの基板内に各種部品が埋め込まれ、表面に導電性の回路パターンが形成されたものであり、凹凸の少ない平板状に形成され、薄型軽量でかつ量産性に優れているので、小型軽量化が要求される携帯電子機器の部品基板として好適である。
【特許文献1】特開2001−358465号公報
【特許文献2】特開平11−220262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された回路部品モジュールでは、部品を配置してからロールコータ等で有機ポリマーを塗布、焼成した後、配線用のコンタクトホールを形成するので、樹脂表面の凹凸による部品接合の精度を良好に保てなくなる懸念があった。また、チップパッド上の樹脂残渣による導通不良や、部品と樹脂との間に生じるストレスによる接合部での損傷などが生じやすいといった課題がある。
また、特許文献2に記載された回路部品モジュールでも、製造工程でかかる熱や応力によって、接合部での損傷などが生じやすいといった課題がある。更に、パターン同士の位置合わせ工程を多数経なければならないため、仕上がり精度の低下を招きやすく、製造コストがかかるという課題もあった。
更にまた、パワーICなどの発熱量の大きな電子部品を回路部品モジュールの構成部品として採用する場合は、パワーICの排熱方法を考慮する必要があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高精度で信頼性が高く、かつローコストに生産が可能な回路部品モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、電子部品としてパワーIC等の発熱量の大きな部品を採用した場合に、モジュール外部に効率よく排熱させることを可能とする電子回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の回路部品モジュールは、放熱板と、前記放熱板の一面に積層された樹脂層と、前記樹脂層に埋込まれるとともに一部が前記放熱板に接している電子部品と、前記樹脂層の前記放熱板と反対側の面に埋込まれて前記電子部品とともに回路を構成する配線パターンとを具備してなることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の回路部品モジュールにおいては、上記の回路部品モジュールが2つ備えられ、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向して配置されるとともに、各樹脂層同士の間に別の樹脂層が挟み込まれ、これらが一体に接合されてなる構成であっても良い。
【0007】
また本発明の回路部品モジュールにおいては、放熱板と、前記放熱板の両面に各々積層された一対の樹脂層と、前記一対の樹脂層にそれぞれ埋込まれるとともに一部が前記放熱板にそれぞれ接している電子部品と、前記一対の樹脂層の前記放熱板と反対側の面にそれぞれ埋込まれて前記各電子部品とともに回路を構成する配線パターンとを具備してなる構成であっても良い。
【0008】
上記の構成によれば、電子部品および配線パターンが各樹脂層に埋め込まれているので、配線パターンを保護することができるとともに回路部品モジュール自体の薄型化を達成できる。同時に、電子部品と配線パターンとの接続の信頼性を高めることができる。また、各電子部品が放熱板に接しているので、電子部品の駆動に伴って発生する熱をこの放熱板を介して回路部品モジュールの外部に排熱させることができる。
【0009】
また、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向するように配置させた場合には、放熱板が回路部品モジュールの外側に配置されることになり、これにより放熱板を回路部品モジュールの外装板とすることができる。また、各回路部品モジュール同士の間に別の樹脂層を挟むことにより、回路部品モジュール同士を容易に接合できる。
更に、放熱板の両面に電子部品を接合させた場合には、電子部品に対する放熱板の数を減らすことができ、構成を簡素化することができる。
【0010】
また本発明の回路部品モジュールにおいては、前記電子部品が、放熱部を有する部品本体部および該部品本体部に取り付けられた端子部とから構成され、前記放熱部が前記樹脂層の放熱板側の面に露出されるとともに、前記端子部が放熱板と反対側に配設されて前記配線パターンの一部に接続されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、放熱部が放熱板側の面に露出されているので、熱量を効率よく排熱させることができる。また樹脂層に埋め込まれた配線パターンに端子部が接続されているので、配線パターンと端子部との接続の信頼性を向上できる。
【0012】
また本発明の回路部品モジュールは、先に記載の回路部品モジュールであって、前記電子部品の放熱部と前記放熱板との間に、熱伝導性接着剤が配設されていることを特徴とする。この構成によれば、電子部品と放熱板との間の熱伝導性を高めることができ、効率よく排熱することができる。
【0013】
また本発明の回路部品モジュールは、先に記載の回路部品モジュールであって、前記樹脂層に導電性ペーストが充填されてなるスルーホールが設けられ、導電性ペーストが充填されてなる各スルーホールが前記配線パターンに接続されていることを特徴とする。この構成によれば、相互に積層された回路部品モジュールの配線パターン同士をスルーホールを介して接続できるので、個々の回路部品モジュールの機能を備えたモジュールを構成できる。
【0014】
また本発明の回路部品モジュールは、先に記載の回路部品モジュールであって、前記放熱板に、前記導電性ペーストが充填されてなるスルーホールを貫通させるための貫通孔が設けられていることを特徴とする。この構成によれば、スルーホールと放熱板との短絡を防止できる。
【0015】
また本発明の回路部品モジュールは、先に記載の回路部品モジュールであって、前記電子部品がパワーICであることを特徴とする。この構成によれば、回路部品モジュールを高周波モジュールとして利用することができる。
【0016】
次に本発明の電子回路装置は、先に記載の回路部品モジュールを具備してなり、前記の各放熱板が接地端子を兼ねた外装カバーであることを特徴とする。
【0017】
この電子回路装置によれば、上記の回路部品モジュールを具備しているので、電子回路装置自体の薄型化を達成できる。同時に、電子部品と配線パターンとの接続の信頼性を高めることができる。また、各電子部品が放熱板に接しているため、電子部品の駆動に伴って発生する熱量をこの放熱板を介して電子回路装置の外部に排熱させることができる。また、放熱板が接地端子を兼ねた外装カバーであるので、配線パターンを伝搬する信号に対する外部電波の影響や、当該信号自体の輻射電磁界による影響を、放熱板によって遮蔽することができる。
更に、回路部品モジュールを構成する放熱板および樹脂層並びに電子部品の相互の寸法精度が高いため、特に電子回路装置を高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0018】
また本発明の電子回路装置は、先に記載の回路部品モジュールを具備してなり、該回路部品モジュールを構成する前記一対の樹脂層の外側にそれぞれ誘電体層が形成されるとともに、各誘電体層の外側に接地端子を兼ねた外装カバーが備えられていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、外装カバーと樹脂層との間に配置された誘電体層の厚みによって、接地端子を兼ねる外装カバーと樹脂層内部の電子部品および配線パターンとの間隔を調整することが可能となり、特に電子回路装置を高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0020】
次に、本発明の回路部品モジュールの製造方法は、版基板の全面にシード層を形成するとともに該シード層上に複数の配線部からなる配線パターンをメッキにより形成し、更に前記配線部上に電子部品を実装する実装工程と、前記版基板の配線パターン上に、貫通孔を有する樹脂層および放熱板を順次積層してこれらを熱圧着することにより、前記配線部を前記樹脂層に埋込むとともに前記貫通孔内に前記電子部品を挿入して該電子部品を前記放熱板に接合させる積層工程と、前記版基板および前記シード層を取り除く除去工程とを備えてなることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、配線パターンを樹脂層に埋め込むとともに貫通孔内部に電子部品を挿入させることによって、回路部品モジュール自体を薄型にすることができる。また、電子部品を放熱板に接合させることによって、電子部品と放熱板との間の熱伝導性を高めることができる。
【0022】
また、本発明の回路部品モジュールの製造方法は、先に記載の製造方法により製造された回路部品モジュールを2つ用意し、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向するように配置するとともに、各樹脂層同士の間に別の樹脂層を挟み込んで、これらを熱圧着してなることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向するように配置することで、放熱板が回路部品モジュールの外側に配置されることになり、これにより放熱板を回路部品モジュールの外装板とすることができる。また、各回路部品モジュール同士の間に別の絶縁層を挟むことにより、回路部品モジュール同士を容易に接合できる。
【0024】
また、本発明の回路部品モジュールの製造方法は、版基板の全面にシード層を形成するとともに該シード層上に複数の配線部からなる配線パターンをメッキにより形成し、更に前記配線部上に電子部品を実装する実装工程と、放熱板の両面に貫通孔を有する樹脂層をそれぞれ積層するとともに、各樹脂層側に前記配線パターンを向けた状態で一対の前記版基板を各樹脂層に積層し、これらを熱圧着するこことにより、前記各配線部を前記各樹脂層に埋込むとともに前記各貫通孔内に前記各電子部品を挿入してこれら電子部品を前記放熱板にそれぞれ接合させる積層工程と、前記各版基板および前記各シード層を取り除く除去工程とを備えてなることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、配線パターンを樹脂層に埋め込むとともに貫通孔内部に電子部品を挿入させることによって、回路部品モジュール自体を薄型にすることができる。また、電子部品を放熱板に接合させることによって、電子部品と放熱板との間の熱伝導性を高めることができる。更に、放熱板の両面に電子部品を接合させるので、電子部品に対する放熱板の数を減らすことができ、部品点数の低減が可能になって工程を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高精度で信頼性が高く、かつローコストに生産が可能な回路部品モジュールおよびその製造方法を提供することができる。また、電子部品としてパワーIC等の発熱量の大きな部品を採用した場合に、モジュール外部に効率よく排熱させることを可能とする電子回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態である回路部品モジュールおよびその製造方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の回路部品モジュールの製造方法は、版基板にシード層および配線パターンを形成するとともに電子部品を実装する実装工程と、版基板上に樹脂層および放熱板を積層する工程と、版基板およびシード層を取り除く除去工程とから概略構成されている。
各工程の概略について説明すると、まず実装工程は、版基板上にシード層を積層するとともに該シード層上に配線パターンを形成し、更に該配線パターンに電子部品を実装する工程である。また積層工程は、貫通孔を有する樹脂層および放熱板を版基板上に配置し、前記電子部品を前記貫通孔に収納させながら前記版基板に前記樹脂層および放熱板を積層する工程である。更に、除去工程は、前記絶縁基板から前記版基板および前記シード層を除去する工程である。
【0028】
以下、図面を参照して各工程の詳細について説明する。図1は実装工程を示す工程図であり、図2は積層工程および除去工程を示す工程図である。尚、本実施形態において参照する図面は回路部品モジュールおよびその製造方法を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の回路部品モジュールの寸法関係とは必ずしも一致するものではない。
【0029】
「実装工程」
まず実装工程では、図1Aに示す版基板1を用意し、次に図1Aおよび図Bに示すように版基板1の一面上1aを含む全面にシード層2を形成する。シード層2は例えば、膜厚50nmないし500nmの酸化亜鉛層2aと、酸化亜鉛層2a上に積層した膜厚2μm程度の金属銅層2bとからなる積層膜を用いることができる。版基板1の表面全部にシード層2を形成することで、版基板1と後述する配線パターンとの剥離性を向上できる。酸化亜鉛層2aは例えば、版基板1を酸化亜鉛を含むメッキ浴に投入してから無電解メッキ法で形成できる。更に金属銅層2bについても無電解メッキ法で形成できる。なお、シード層2は版基板1の一面1aのみに形成してもよい。
【0030】
また、版基板1は、全面が酸化シリコンで形成されているものが、シード層を構成する酸化亜鉛層2aとの密着性を向上でき、かつ版基板1を再利用できる点で好ましい。版基板1の具体例としては、例えば、酸化ケイ素を主成分として含むガラス板、全面を熱酸化法もしくは熱CVD法により酸化ケイ素層を形成させたシリコン基板、スパッタリング法等で酸化ケイ素層を全面に被覆させた樹脂基板または誘電体基板、などを用いることができる。また、前記のシリコン基板としてB,P,As等のドーパントを添加したものを用いることもできる。更に前記の樹脂基板として柔軟性を有するものでもよく、この場合は長尺の樹脂基板をロール状に巻き取ることができるので、連続的な製造に適しており、生産性を向上できる。版基板1の厚みは特に制限はないが、例えば30μmないし3mmのものを使用できる。
また版基板1には、硬質の基板を用いることが特に好ましい。後述する積層工程において電子部品を樹脂層に埋め込む際に、硬質の基板が配線パターンの裏当てとなり、埋め込む際の応力による配線パターンの変形を防止できる。
【0031】
次に図1Cに示すように、シード層2上に、複数のレジスト除去部4aを有するパターン化レジスト層4(レジストパターン)を形成する。具体的には、シード層2に例えば10μm程度の感光性樹脂膜またはドライフィルム(以下レジスト層と表記)を積層してから、マスクを重ねて露光、現像を行うことにより、マスクのパターンに対応するレジスト除去部4aを形成する。このようにしてレジスト除去部4aを有するパターン化レジスト層4が形成される。
【0032】
なお、パターン化レジスト層4を形成した後のレジスト除去部4aには、感光性樹脂膜またはドライフィルムの残渣が残存する場合がある。この残渣が残存すると、この後に形成する配線パターンが断線したり、配線パターンとシード層2との密着性が低下して後工程である圧着工程および剥離工程において不具合が生じる可能性ある。そこで残渣の完全除去を目的として、パターンレジスト層4を形成した後に、レジスト除去部4aにアルゴンプラズマを照射するか、あるいはレジスト除去部4aに露出するシード層2の表面を軽くエッチングすることにより、残渣を除去することが望ましい。アルゴンプラズマを照射する場合には、たとえば、プラズマパワー500W程度,雰囲気圧力10Pa以下、アルゴン流量50sccm、照射時間30秒とする条件で行うと良い。また、シード層の表面を軽くエッチングするには、10%酢酸水溶液からなるエッチャントで30秒間処理する条件で行うと良い。このような処理を行うことで、シード層2と配線パターンとの密着強度を3N/cm以上にすることができる。
【0033】
次に図1Dに示すように、レジスト除去部4aにCuからなる配線パターン(配線部)5をメッキ法で形成する。具体的には例えば、硫酸銅等を含むメッキ液をレジスト除去部4a内のシード層2に接触させてから、シード層2に直流電流を印加してCuメッキを成長させる。配線パターン5の厚みはパターン化レジスト層4の厚みよりも薄くすることが好ましく、例えば5μm程度がよい。
次に図1Eに示すように、ウエットエッチングによりパターン化レジスト層4を除去する。このようにして、版基板1に、シード層2と配線パターン5とが形成される。
【0034】
次に図1Fに示すように、配線パターン5上にパワーIC31(電子部品)を実装する。パワーIC31は、放熱部を有するIC本体(部品本体部)32と、IC本体32の下側に備えられた例えば金からなるボールバンプ33(端子部)とから概略構成されている。IC本体32にはパワーIC素子が内蔵されている。またIC本体の上面は、パワーIC素子から生じた熱をIC本体外部に放出するための放熱部32aとされている。
ボールバンプ32を配線パターン5に押し当てることにより配線パターン5にパワーIC31を実装する。パワーIC31を装着したら、配線パターン5とIC本体32の間に封止材34を充填する。封止材34の材質としては例えば、エポキシ樹脂等を例示できる。更に、パワーICの放熱部32aに熱伝導性接着剤35を塗布する。熱伝導性接着剤35の材質としては例えば(アルミナ・窒化アルミ)フィラー入りエポキシ接着剤を例示できる。
【0035】
「積層工程および除去工程」
次に図2Aに示すように、まず貫通孔7を設けた樹脂層6と、放熱板8とを用意する。また、別の版基板11を用意する。この版基板11には、シード層2が全面に形成されるとともにシード層2上に配線パターン15が形成されている。
樹脂層6の貫通孔7を平面視したときの形状は、円形、楕円形、三角形および矩形を含む多角形のいずれの形状でもよい。貫通孔7の大きさについては、パワーIC31が収まる程度の大きさで良い。貫通孔7の形成には、例えば金型を用いたパンチングやレーザー加工法といった手段を用いることができる。なお、樹脂層6の具体例としては、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を材質とした厚さ50μm程度の板材や、厚さ50μm程度のガラスエポキシ樹脂板を例示できる。
また放熱板8は、例えばCu、Al等の熱伝導性に優れた金属板を用いることができる。放熱板8の厚みは例えば0.02−0.2mm程度の範囲が好ましい。また図2Aに示すように、放熱板8にはスルーホール用の貫通孔8aを設けておくことが好ましい。
そして、版基板1上に樹脂層6および放熱板8を順次配置し、更に放熱板8上に別の版基板11を配置する。樹脂層6を配置する際には、樹脂層6の貫通孔7と版基板1上のパワーIC31とが重なるように樹脂層6と版基板1とを位置合わせする。また、放熱板8を配置する際には、放熱板8の貫通孔8aと、版基板1上のパワーIC31に接続されていない配線パターン5aとが重なるように放熱板8と版基板1とを位置合わせする。更に、別の版基板11を配置する際には、この別の基板11に形成した配線パターン15と放熱板8の貫通孔8aとが重なるように位置合わせする。
【0036】
次に図2Bに示すように、版基板1と樹脂層6と放熱板8と別の版基板11とを積層して熱プレスする。この熱プレスの際に、配線パターン5により樹脂層6が変形して樹脂層の一面6a上に配線パターン5が埋込まれる。同時に、パワーIC31が貫通孔7の内部に挿入される。樹脂層6は、その厚み方向からプレスされることにより薄板状に変形し、この変形に伴って、図2Bに示すように、貫通孔7およびパワーIC31の間に樹脂層6の一部が押し出されて充填される。このようにして、パワーIC31が樹脂層6の内部に完全に埋め込まれる。また、貫通孔7へのパワーIC31の挿入に伴って、パワーIC31の放熱部32aが樹脂層6の他面6b側に露出した状態となる。
また、この熱プレスによって放熱板8と樹脂層6とが接合される。このとき、樹脂層6の他面6b側に露出したパワーICの放熱部32aが熱伝導性接着剤35を介して放熱板8に接合される。
更に、この熱プレスによって、別の版基板11に形成された配線パターン15が放熱板8の貫通孔8a内部に挿入される。この貫通孔8aには更に、樹脂層6の変形に伴って樹脂層の一部が押し出されて充填される。この充填された樹脂層によって放熱板8と配線パターン15とが絶縁状態になる。
【0037】
熱プレス時の温度は、樹脂層6の材質にもよるが、140〜180℃の範囲が好ましい。また熱プレスの圧力は15〜25Pa程度が好ましい。さらにプレス時間は30〜50分程度が好ましい。このようにして、配線パターン5およびパワーIC31が樹脂層6に埋め込まれる。
【0038】
「除去工程」
次に図2Cに示すように、各版基板1、11と樹脂層6および放熱板8との間に応力を与えて版基板1、11を剥離させる。このとき、各版基板1、11と各シード層2との間で剥離が起こり、シード層2が配線パターン5とともに樹脂層6および放熱板8側に転写される。転写された各シード層2はウエットエッチングにより除去される。エッチング液には例えば過硫酸水溶液を用いることができる。なお、剥離後の版基板1、11については、転写されずに残存したシード層2を酸またはアルカリで除去することで、再利用することができる。
【0039】
版基板1とシード層2との間で剥離が起こるのは次のようなメカニズムによると考えられる。
すなわち、版基板1を樹脂層6から剥離させると、シード層2にはその膜厚方向に引張応力が加えられる。このとき、シード層2を構成する金属銅層には配線パターン5が接合され、この配線パターン5は樹脂層6に埋込まれてこの樹脂層6と強固に接合されていることから、樹脂層6側への引張応力が勝ることになり、これにより、シード層2が配線パターン5とともに樹脂層6側に転写されるものと考えられる。また、シード層2を構成する金属銅層2bには、剥離の際に配線パターン5に引張られてせん断応力が加えられるが、金属銅層2bには酸化亜鉛層2aが下地層として裏打ちされているので、金属銅層2b自体が破れるおそれがなく、酸化亜鉛層2aとともに版基板1からきれいに剥離される。また、酸化亜鉛層2a自体も50nmないし500nmの膜厚で形成されているため、酸化亜鉛層2aの膜強度が高くなっており、酸化亜鉛層2a自体も破れる虞がなく、版基板1からきれいに剥離される。
別の版基板11と、放熱板8の貫通孔8aに充填された樹脂層6との間でも、上記と同様の現象が起こり、版基板11とシード層2との間で剥離が起きる。
【0040】
なお、上記のシード層2のエッチングの際には配線パターン5、15も若干エッチングされるが、配線パターン5、15の線幅が減少するおそれはない。この理由は、配線パターン5、15の大部分が樹脂層6に埋込まれるため、配線パターン5、15の露出部分が少なくなっており、樹脂層6により配線パターン5、15が保護されているためである。このように配線パターン5、15が樹脂層6で保護されているので、エッチング液による配線パターン5、15の腐食が防止されて、配線パターン5、15の線幅の減少を防止することができる。これにより、従来の転写法では不可能であった10μm/10μmのラインアンドスペース(L/S)を実現することができる。
このようにして、上記の製造方法によって回路部品モジュール100が製造される。
【0041】
上記の製造方法によれば、配線パターン5,15を樹脂層6に埋め込むとともに貫通孔7内部にパワーIC31を挿入させることによって、回路部品モジュール100自体を薄型にすることができる。また、パワーIC31を放熱板8に接合させることによって、パワーIC31と放熱板8との間の熱伝導性を高めることができる。
【0042】
「回路部品モジュールの一例」
図2Cに示す回路部品モジュール100は、放熱板8と、放熱板8の一面8bに積層された樹脂層6と、樹脂層6に埋込まれるとともに一部が放熱板8に接しているパワーIC(電子部品)31と、樹脂層6の放熱板と反対側の面6aに埋込まれてパワーIC31とともに回路を構成する配線パターン5とを具備して概略構成されている。また放熱板8には貫通孔8aが設けられ、この貫通孔8a内に別の配線パターン15が配設されている。また、貫通孔8aと配線パターン15の間には、樹脂層6の一部が充填されている。またこの放熱板8は、図示略の他の放熱部材に接続されるか、あるいは放熱板8自体が回路部品モジュール100の外部雰囲気に露出されている。
【0043】
パワーIC31は、放熱部32aを有するIC本体(部品本体部)32およびIC本体32に取り付けられたボールバンプ(端子部)33とから構成されている。またIC本体332には図示略のパワーIC素子が内蔵されている。そして、放熱部32aが樹脂層6の放熱板側の面6bに露出されるとともに、端子部33が放熱板8と反対側に配設されて配線パターン5の一部に接続されている。また、放熱部32aが熱伝導性接着剤35を介して放熱板8に接合されている。
【0044】
上記の構成によって、パワーIC素子の駆動に伴って発生した熱が、IC本体32の内部を熱伝導して放熱部32aまで達する。更にこの熱は、放熱部32aから熱伝導性接着剤35を介して放熱板8まで伝導される。放熱板8に伝導された熱は、図示略の他の放熱部材に更に伝導されるか、あるいは放熱板8によって外部雰囲気に対して放熱される。
【0045】
上記の回路部品モジュール100によれば、パワーIC31が放熱板8に接しているので、パワーIC31の駆動に伴って発生する熱をこの放熱板8を介して回路部品モジュール100の外部に排熱させることができる。また、パワーIC31および配線パターン5、15が樹脂層6に埋め込まれているので、配線パターン5,15を保護することができるとともに回路部品モジュール100自体の薄型化を達成できる。同時に、パワーIC31と配線パターン5との接続の信頼性を高めることができる。
【0046】
「スルーホールを備えた回路部品モジュールの製造方法」
次に、図2Cに示す回路部品モジュール100を更に加工してスルーホールを備えてなる回路部品モジュールの製造方法について説明する。
まず図3Aに示すように、回路部品モジュール100にスルーホール用の貫通孔101、101を設ける。この貫通孔101、101は、樹脂層6を貫通するとともに、放熱板8の貫通孔8a内部に配設された配線パターン15およびパワーIC31が接続されていない配線パターン5aを貫通するように設ける。
【0047】
次に図3Bに示すように、貫通孔101、101の内部に導電性ペースト102を充填し、更に貫通孔101を塞ぐ蓋メッキ103を形成する。蓋メッキ103には例えばCuメッキを利用できる。このようにして、導電性ペースト102および蓋メッキ103からなるスルーホール104が形成される。このスルーホール104によって、放熱板側の配線パターン15と樹脂層側の配線パターン5とが接続される。
【0048】
「回路部品モジュールを複数備えた回路部品モジュール(電子回路装置)の製造方法」
次に、図3Cに示すように、スルーホール104が形成されてなる回路部品モジュール100,100を2つ用意する。ここで、各樹脂層6、6が相互に対向するように各回路部品モジュール100,100を配置する。更に、各回路部品モジュール100,100の間に厚み20μm−50μm程度の別の樹脂層106を配置する。この別の樹脂層106には、回路部品モジュール100のスルーホール104に対応する位置に導電性ペースト107が充填されている。樹脂層106の材質には、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を例示できる。
【0049】
次に図3Dに示すように、回路部品モジュール100,100と樹脂層106とを積層して熱プレスする。この熱プレスによって、別の樹脂層106の両面106a、106bに、回路部品モジュール100,100の各樹脂層6,6が接合される。またこのとき、回路部品モジュール100のスルーホール104を構成する蓋メッキ103と、別の樹脂層106の導電性ペースト107とが接合される。これにより、各スルーホール104、104と導電性ペースト107によって、各回路部品モジュール100、100の配線パターン5,15を相互に接続するスルーホール108が形成される。このようにして図3Dに示す回路部品モジュール200が製造される。
【0050】
上記の製造方法によれば、各回路部品モジュール100、100の樹脂層6,6同士が相互に対向するように配置することで、放熱板8が回路部品モジュール200の外側に配置されることになり、これにより放熱板8を回路部品モジュール200の外装板とすることができる。また、各回路部品モジュール100,100同士の間に別の絶縁層106を挟むことにより、回路部品モジュール100、100同士を容易に接合できる。
【0051】
「回路部品モジュールを2つ備えてなる回路部品モジュール(電子回路装置)」
この図3Dに示す回路部品モジュール200は、図2Cにおける回路部品モジュール100,100が2つ備えられ、各回路部品モジュール100,100の樹脂層6,6同士が相互に対向して配置されるとともに、各樹脂層6,6同士の間に別の樹脂層106が挟み込まれ、これらが一体に接合されて構成されている。樹脂層6,6同士を対向配置させたことで、各放熱板8,8が回路部品モジュール200の外側に配置され、これにより各放熱板8,8を回路部品モジュール200の外装板とすることができる。
また各樹脂層6,6、106には導電性ペースト102,107が充填されてなるスルーホール108が設けられており、これらのスルーホール108が配線パターン5,15に接続されている。これにより、各回路部品モジュール100、100の各パワーIC31,31および各配線パターン5,15を相互に接続することができる。
【0052】
図3Dに示す回路部品モジュール200は、パワーIC31,31を2つ備えた電子回路装置として用いることができる。この電子装置には、外装板を兼ねる放熱板8,8が備えられており、配線パターン5,15を伝搬する信号に対する外部電波の影響や、当該信号自体の輻射電磁界による影響を、この放熱板8,8によって遮蔽することができる。また、回路部品モジュール100を構成する放熱板8および樹脂層6並びにパワーIC31の相互の寸法精度が高いため、特に高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0053】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態である回路部品モジュールおよびその製造方法について説明する。図4には積層工程および除去工程の工程図を示す。尚本実施形態において参照する図面は回路部品モジュールおよびその製造方法を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の回路部品モジュールの寸法関係とは必ずしも一致するものではない。
【0054】
「回路部品モジュールの製造方法」
まず、図4Aに示すように、2つの版基板1,1と、2つの樹脂層6,6と、放熱板8とを用意する。
版基板1は第1の実施形態で説明した同一構成の基板であり、シード層2および配線パターン5が形成され、更にパワーIC31が実装されている。また、樹脂層6は、厚み100μm−500μm程度の熱可塑性樹脂板若しくはガラスエポキシ樹脂板から構成されており、貫通孔7が設けられている。また、放熱板8は、Al等の熱伝導性に優れた厚み100μm程度の金属板から構成され、複数の貫通孔8aが設けられている。
【0055】
そして図4Aに示すように、放熱板8の両面8b、8c側に樹脂層6,6を配置するとともに、各樹脂層6,6の外側、すなわち放熱板8とは反対側に版基板1,1を配置する。版基板1は、パワーIC31が樹脂層6の貫通孔7に重なるように位置合わせする。また、版基板1は、パワーIC31に接続されていない配線パターン5aの形成位置が、放熱板の貫通孔8aと重なるように位置合わせする。
【0056】
次に図4Bに示すように、各版基板1、1と各樹脂層6、6と放熱板8とを積層して熱プレスする。この熱プレスの際に、配線パターン5により樹脂層6が変形して樹脂層6の一面6a上に配線パターン5が埋込まれる。同時に、パワーIC31が貫通孔7の内部に挿入される。樹脂層6は、その厚み方向からプレスされることにより薄板状に変形し、この変形に伴って、図4Bに示すように、貫通孔7およびパワーIC31の間に樹脂層6の一部が押し出されて充填される。このようにして、パワーIC31が樹脂層6の内部に完全に埋め込まれる。また、貫通孔7へのパワーIC31の挿入に伴って、パワーICの放熱部32aが樹脂層の他面6b側に露出した状態となる。
また、この熱プレスによって放熱板8と各樹脂層6,6とが接合される。またこのとき、放熱板8の貫通孔8aに樹脂層6の一部が押出されて充填される。更に、樹脂層6の他面6b側に露出したパワーICの放熱部32aが、熱伝導性接着剤35を介して放熱板8に接合される。
【0057】
次に図4Cに示すように、各版基板1、1と樹脂層6、6との間に応力を与えて版基板1、1を剥離させる。このとき、各版基板1と各シード層2との間で剥離が起こり、シード層2が配線パターン5とともに樹脂層6側に転写される。転写された各シード層2はウエットエッチングにより除去される。
このようにして、本実施形態の一例である回路部品モジュール300が製造される。
【0058】
「回路部品モジュールの一例」
図4Cに示す回路部品モジュール300は、放熱板8と、放熱板8の両面8b、8cに各々積層された一対の樹脂層6,6と、各樹脂層6にそれぞれ埋込まれるとともに一部が放熱板8にそれぞれ接しているパワーIC31と、各樹脂層6,6の放熱板と反対側の面6aにそれぞれ埋込まれて各パワーIC31とともに回路を構成する配線パターン5とを具備して構成されている。また放熱板8は、第1の実施形態と同様に、図示略の他の放熱部材に接続されるか、あるいは放熱板自体が回路部品モジュールの外部雰囲気に露出されている。
【0059】
上記の回路部品モジュール300によれば、パワーIC31が放熱板8に接しているので、パワーIC31の駆動に伴って発生する熱をこの放熱板8を介して回路部品モジュール300の外部に排熱させることができる。また、パワーIC31および配線パターン5が樹脂層6に埋め込まれているので、配線パターン5を保護することができるとともに回路部品モジュール300自体の薄型化を達成できる。同時に、パワーIC31と配線パターン5との接続の信頼性を高めることができる。更に、放熱板の両面8b、8cにパワーIC31を接合させているので、パワーIC31に対する放熱板8の数を減らすことができ、構成を簡素化することができる。
【0060】
「複数の回路部品モジュールを備えた回路部品モジュール(電子回路装置)の製造方法」
次に、図4Cに示す回路部品モジュール300を更に加工して、複数の回路部品モジュールを備えてなる回路部品モジュール(電子回路装置)を製造する方法について説明する。
まず図5Aに示すように、回路部品モジュール300にスルーホール用の貫通孔301を設ける。この貫通孔301は、樹脂層6,6を貫通するとともに、放熱板8の貫通孔8aを貫通するように設ける。更に貫通孔301は、パワーIC31に接続されていない配線パターン5aを貫通するように設ける。
【0061】
次に図5Bに示すように、貫通孔301の内部に導電性ペースト302を充填し、更に貫通孔301を塞ぐ蓋メッキ303を形成する。このようにして、導電性ペースト302および蓋メッキ303からなるスルーホール304が形成される。このスルーホール304によって、放熱板の両側に位置する配線パターン5a、5a同士が接続される。
【0062】
次に、図5Cに示すように、図5Bに示したスルーホール304を具備してなる回路部品モジュール300a、300bを2つ用意する。このとき、一方の回路部品モジュール300aには、別の樹脂層306を予め積層しておく。この別の樹脂層306には導電性ペースト307が充填された貫通孔308が設けられており、この導電性ペースト307がスルーホール304に重なるように位置合わせされている。そして、他方の回路部品モジュール300bのスルーホール304がこの導電性ペースト307に重なるように位置合わせする。
【0063】
次に図5Dに示すように、回路部品モジュール300a、300bを積層して熱プレスする。この熱プレスによって、回路部品モジュール300a,300b同士が樹脂層306を介して接合される。またこのとき、各回路部品モジュール300a、300bのスルーホール304を構成する蓋メッキ303と、別の樹脂層306の導電性ペースト307とが相互に接合される。これにより、各スルーホール304と導電性ペースト307によって、各回路部品モジュール300a、300bの配線パターン5a、5aを相互に接続するスルーホール310が形成される。このようにして本実施形態の別の例である回路部品モジュール400が製造される。
【0064】
「回路部品モジュールを2つ備えてなる回路部品モジュール(電子回路装置)」
この図5Dに示す回路部品モジュール400は、図4Cにおける回路部品モジュール300,300が2つ備えられ、各回路部品モジュール300,300同士の間に別の樹脂層306が挟み込まれ、これらが一体に接合されて構成されている。また樹脂層306には導電性ペースト307が充填されてなる貫通孔308が設けられており、各導電性ペースト307が各スルーホール304,304に接続されている。これにより、各回路部品モジュール30の各パワーIC31および各配線パターン5を相互に接続することができる。
【0065】
図5Dに示す回路部品モジュール400は、パワーIC31を4つ備えた電子回路装置として用いることができる。この電子装置には、4つのパワーIC31に対して2枚の放熱板8,8が備えられており、パワーIC31に対する放熱板8の数を少なくすることで、構造を簡素化することができる。また、回路部品モジュール400を構成する放熱板8および樹脂層6,306並びにパワーIC31の相互の寸法精度が高いため、特に高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0066】
[第3の実施形態]
図6には、第3の実施形態である電子回路装置500の断面模式図を示す。図6に示す電子回路装置500は、第1の実施形態における回路部品モジュール100,100が2つ備えられ、各回路部品モジュール100の樹脂層6,6同士が相互に対向して配置されるとともに、各樹脂層6,6同士の間に別の樹脂層106が挟み込まれ、これらが一体に接合されて構成されている。また各回路部品モジュール100,100には、厚み20μm−500μm程度の外装板を兼ねた放熱板508,508が備えられている。この放熱板508には導電性接着剤35を介してパワーIC31の放熱部32aがそれぞれ接合されている。
【0067】
上記の電子回路装置500によれば、外装板を兼ねる放熱板508が備えられており、配線パターン5を伝搬する信号に対する外部電波の影響や、当該信号自体の輻射電磁界による影響を、この放熱板508によって遮蔽することができる。また、放熱板508および樹脂層6、106並びにパワーIC31の相互の寸法精度が高いため、当該電子回路装置500を高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0068】
[第4の実施形態]
図7には、第4の実施形態である電子回路装置およびその製造方法を示す。この電子回路装置600は、図7Aに示すように、第2の実施形態の回路部品モジュール300の厚み方向両側に、誘電体層付き外装板601を誘電体層602が回路部品モジュール300に向いた状態で配置する。誘電体層付き外装板601は誘電体層602と外装板603が積層されて構成されている。次に図7Bに示すように、誘電体層付き外装板601と回路部品モジュールと300を相互に積層してから熱プレスすることにより製造される。熱プレスによって、回路部品モジュール300を構成する樹脂層6,6と、誘電体層602が接合されて一体化される。誘電体層602にはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等からなる厚み20μm−250μm程度の誘電体が用いられる。誘電体層602の厚みによって、回路部品モジュール300と外装板603との間隔が制御される。また、外装板603には、Al等の厚さ200μm程度の金属板が用いられ、この外装板603は電子回路装置600の接地端子として使用される。
【0069】
上記の電子回路装置600によれば、外装板603と樹脂層6との間に配置された誘電体層602の厚みによって、接地端子を兼ねる外装板603と樹脂層6内部のパワーIC31および配線パターン5との間隔を調整することが可能となり、特に電子回路装置600を高周波モジュールとして利用する場合において、設計性能通りのモジュール性能を発揮させることができる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の各実施形態では、配線パターンとしてCu単層からなるものを用いたが、図8Aに示すように、複数の金属層からなる積層構造の配線パターン115を用いても良い。この配線パターン115は、シード層2上に形成されたAu層121と、Au層121上に積層されたCu層122と、Cu層122上に積層されたNi層123と、Ni層123上に形成されたAu層124とから構成されている。このように本実施形態の配線パターン115は、Cu層122とNi層123の厚み方向両側にAu層121,124が形成されてなるものである。Au層121の膜厚は0.01μm−0.1μmの範囲が好ましく、Cu層122の膜厚は5μm−10μmの範囲が好ましく、Ni層123の膜厚は2μm−4μmの範囲が好ましく、Au層124の膜厚は0.1μm−0.5μmの範囲が好ましい。より具体的には、Au層121を0.03μmとし、Cu層122を10μmとし、Ni層123を2μmとし、Au層124を0.2μmとするとよい。これらの各層はいずれも電気メッキ法で形成される。
なお、配線パターンの積層構造は図8Aに示した形態に限定されるものではなく、例えば図8Bに示すように、Au層126、Ni層127,Cu層128、Ni層129およびAu層130からなる5層構造の配線パターン125を用いても良い。
【0071】
これらの積層構造の配線パターンには、比較的高強度のNi層が含まれているので、積層工程において電子部品を樹脂層に埋め込む際に配線パターンに応力が印加された場合でも配線パターンの変形を防止することができる。また、配線パターンの表面がAu層であるので、電子部品と配線パターンとの接触抵抗を低減することができ、配線パターンと電子部品との接続の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態である回路部品モジュールの製造工程の一例を示す断面模式図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態である回路部品モジュールの製造工程の一例を示す断面模式図である。
【図3】図3は2つの回路部品モジュールを積層する工程を示す断面模式図である。
【図4】図4は本発明の第2の実施形態である回路部品モジュールの製造工程の一例を示す断面模式図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施形態である回路部品モジュールの製造工程の一例を示す断面模式図である。
【図6】図6は本発明の第3の実施形態である電子回路装置の一例を示す断面模式図である。
【図7】図7は本発明の第4の実施形態である電子回路装置の製造工程の一例を示す断面模式図である。
【図8】図8は配線パターンの他の例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1…版基板、2…シード層、5…配線パターン(配線部)、5a…電子部品に接続されていない配線パターン、6…樹脂層、6a…一面(樹脂層の放熱板と反対側の面)、6b…(他面樹脂層の放熱板側の面)、8…放熱板、8a…貫通孔、8b…一面、100、300…回路部品モジュール、106、306…別の樹脂層、31…パワーIC(電子部品)、32…IC本体(部品本体部)、32a…放熱部、33…ボールバンプ(端子部)、35…熱伝導性接着剤、102…導電性ペースト、104、108、304、310…スルーホール、400,500、600…電子回路装置、508、603…放熱板(接地端子を兼ねた外装カバー)、602…誘電体層、603…外装板(接地端子を兼ねた外装カバー)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板と、前記放熱板の一面に積層された樹脂層と、前記樹脂層に埋込まれるとともに一部が前記放熱板に接している電子部品と、前記樹脂層の前記放熱板と反対側の面に埋込まれて前記電子部品とともに回路を構成する配線パターンとを具備してなることを特徴とする回路部品モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の回路部品モジュールが2つ備えられ、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向して配置されるとともに、各樹脂層同士の間に別の樹脂層が挟み込まれ、これらが一体に接合されてなることを特徴とする回路部品モジュール。
【請求項3】
放熱板と、前記放熱板の両面に各々積層された一対の樹脂層と、前記一対の樹脂層にそれぞれ埋込まれるとともに一部が前記放熱板にそれぞれ接している電子部品と、前記一対の樹脂層の前記放熱板と反対側の面にそれぞれ埋込まれて前記各電子部品とともに回路を構成する配線パターンとを具備してなることを特徴とする回路部品モジュール。
【請求項4】
前記電子部品が、放熱部を有する部品本体部および該部品本体部に取り付けられた端子部とから構成され、前記放熱部が前記樹脂層の放熱板側の面に露出されるとともに、前記端子部が放熱板と反対側に配設されて前記配線パターンの一部に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の回路部品モジュール。
【請求項5】
前記電子部品の放熱部と前記放熱板との間に、熱伝導性接着剤が配設されていることを特徴とする請求項4に記載の回路部品モジュール。
【請求項6】
前記樹脂層に導電性ペーストが充填されてなるスルーホールが設けられ、導電性ペーストが充填されてなる各スルーホールが前記配線パターンに接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の回路部品モジュール。
【請求項7】
前記放熱板に、前記導電性ペーストが充填されてなるスルーホールを貫通させるための貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の回路部品モジュール。
【請求項8】
前記電子部品がパワーICであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の回路部品モジュール。
【請求項9】
請求項2に記載の回路部品モジュールを具備してなり、前記の各放熱板が接地端子を兼ねた外装カバーであることを特徴とする電子回路装置。
【請求項10】
請求項3に記載の回路部品モジュールを具備してなり、該回路部品モジュールを構成する前記一対の樹脂層の外側にそれぞれ誘電体層が形成されるとともに、各誘電体層の外側に接地端子を兼ねた外装カバーが備えられていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項11】
版基板の全面にシード層を形成するとともに該シード層上に複数の配線部からなる配線パターンをメッキにより形成し、更に前記配線部上に電子部品を実装する実装工程と、
前記版基板の配線パターン上に、貫通孔を有する樹脂層および放熱板を順次積層してこれらを熱圧着することにより、前記配線部を前記樹脂層に埋込むとともに前記貫通孔内に前記電子部品を挿入して該電子部品を前記放熱板に接合させる積層工程と、
前記版基板および前記シード層を取り除く除去工程とを備えてなることを特徴とする回路部品モジュールの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により製造された回路部品モジュールを2つ用意し、各回路部品モジュールの樹脂層同士が相互に対向するように配置するとともに、各樹脂層同士の間に別の樹脂層を挟み込んで、これらを熱圧着してなることを特徴とする回路部品モジュールの製造方法。
【請求項13】
版基板の全面にシード層を形成するとともに該シード層上に複数の配線部からなる配線パターンをメッキにより形成し、更に前記配線部上に電子部品を実装する実装工程と、
放熱板の両面に貫通孔を有する樹脂層をそれぞれ積層するとともに、各樹脂層側に前記配線パターンを向けた状態で一対の前記版基板を各樹脂層に積層し、これらを熱圧着するこことにより、前記各配線部を前記各樹脂層に埋込むとともに前記各貫通孔内に前記各電子部品を挿入してこれら電子部品を前記放熱板にそれぞれ接合させる積層工程と、
前記各版基板および前記各シード層を取り除く除去工程とを備えてなることを特徴とする回路部品モジュールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−165175(P2006−165175A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352814(P2004−352814)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】