説明

大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法及び大気圧プラズマ処理装置用の電極システム

【課題】高いキャリア移動度を示す有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することにあり、更には、非真空系の連続生産、例えば、所謂ロールツーロール(Roll to Roll)工程により製造するのに適しており、低コストの大量生産が可能になる有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させる手段と、反応ガスと前記励起放電ガスとを接触させて前記反応ガスをプラズマ化させる手段と、を有し、前記プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う、大気圧プラズマ処理装置において、前記反応ガスが前記励起放電ガスに挟みこまれるようにして接触することを特徴とする気圧プラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法及び大気圧プラズマ処理装置用の電極システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。又、さらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。又、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたアクティブ駆動素子を用いる技術が主流になっている。
【0004】
ここでTFT素子は、通常、ガラス基板上に、主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体薄膜や、ソース、ドレイン、ゲート電極などの金属薄膜を基板上に順次形成していくことで製造される。このTFTを用いるフラットパネルディスプレイの製造には通常、CVD、スパッタリングなどの真空系設備や高温処理工程を要する薄膜形成工程に加え、精度の高いフォトリソグラフ工程が必要とされ、設備コスト、ランニングコストの負荷が非常に大きい。さらに、近年のディスプレイの大画面化のニーズに伴い、それらのコストは非常に膨大なものとなっている。
【0005】
近年、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている(特許文献1参照)。
【0006】
又、キャリア移動度を向上させるために様々な研究がなされている。例えば、ゲート絶縁膜に酸化ケイ素皮膜を用い、その表面をシランカップリング剤で処理することにより、素子のキャリア移動度を向上させる技術が開示されている(Advanced Material誌 2002年 第2号 99頁(レビュー)参照)。あるいは、ゲート絶縁膜上にフッ素系ポリマーから成る薄膜を形成することにより素子のキャリア移動度を向上させる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−190001号公報
【特許文献2】特開2001−94107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のキャリア移動度向上技術は溶液への浸漬処理を用いるため、その処理工程に多くの時間が必要となり、また、その後に引き続く洗浄にやはり多大な時間を要するという問題があり、特にシランカップリング剤を用いると、シランカップリング剤の酸化ケイ素皮膜への結合により、酸やアルコールなどの成分が発生するため、洗浄に手間がかかる問題がある。
【0009】
又、何れの技術もキャリア移動度向上の効果も充分でないという問題がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、高いキャリア移動度を示す有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することにあり、更には、非真空系の連続生産、例えば、所謂ロールツーロール(Roll to ROLL)工程により製造するのに適しており、低コストの大量生産が可能になる有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次の(1)から(20)までのいずれかに記載の技術手段により、非真空系の連続生産工程により、高いキャリア移動度を示す有機薄膜トランジスタ素子を製造することが達成される。
【0012】
(1) 放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させる手段と、反応ガスと前記励起放電ガスとを接触させて前記反応ガスをプラズマ化させる手段と、を有し、前記プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う、大気圧プラズマ処理装置において、前記反応ガスが前記励起放電ガスに挟みこまれるようにして接触することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【0013】
(2) プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理装置において、放電ガスを前記基材表面に供給する放電ガス供給手段と、前記放電ガス供給手段内部の放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させる手段と、反応ガスを前記基材表面に供給する反応ガス供給手段と、を有し、前記反応ガスを前記励起放電ガスに挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【0014】
(3) 前記放電ガス供給手段は、励起放電ガス放出口を有し、前記反応ガス供給手段は、反応ガス放出口を有しており、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口で挟み込むように配置したことを特徴とする(2)に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0015】
(4) 前記放電ガス供給手段は、第1の対向する平板電極対及び第2の対向する平板電極対により構成され、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆したことを特徴とする(2)又は(3)に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0016】
(5) 前記反応ガス供給手段は、前記第1の対向する平板電極対及び前記第2の対向する平板電極対の間に形成されていることを特徴とする(4)に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0017】
(6) 第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆し、さらに第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置した大気圧プラズマ処理装置であって、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、放電ガスを導入するための放電ガス導入口と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記放電ガスを大気圧又は大気圧近傍の圧力下で存在させ、電圧を印加して励起放電ガスを発生させる手段と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記電極間で発生した励起放電ガスを外に放出するための励起放電ガス放出口と、対向する第1の平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間に反応ガスを導入するための反応ガス導入口と、対向する第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間から前記反応ガスを外に放出するための反応ガス放出口と、を有し、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口とで挟むように配置し、前記反応ガス放出口から放出される前記反応ガスと前記励起放電ガス放出口から放出される前記励起放電ガスが接触して発生するプラズマ化した反応ガスと接触する位置に基材を配置することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【0018】
(7) 前記誘電体がセラミックス溶射後無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0019】
(8) 前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする(7)に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0020】
(9) 前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする(7)又は(8)に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【0021】
(10) 放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させ、反応ガスと前記励起放電ガスとを接触させて反応ガスをプラズマ化させ、該プラズマ化させた反応ガスを基材に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理方法において、前記反応ガスに前記励起放電ガスを挟み込むように接触させることを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【0022】
(11) プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理方法において、放電ガスを前記基材表面に供給する放電ガス供給手段と、反応ガスを前記基材表面に供給する反応ガス供給手段と、を有し、前記放電ガス供給手段内部で前記放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させ、その後前記反応ガスを前記励起放電ガスで挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【0023】
(12) 前記放電ガス供給手段は励起放電ガス放出口を有し、前記反応ガス供給手段は反応ガス放出口を有しており、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガスで挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする(11)に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【0024】
(13) 第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆し、さらに第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置した大気圧プラズマ処理装置を用いた大気圧プラズマ処理方法であって、前記大気圧プラズマ処理装置は、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、放電ガスを導入するための放電ガス導入口と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記放電ガスを大気圧又は大気圧近傍の圧力下で存在させ、電圧を印加して励起放電ガスを発生させる手段と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記励起放電ガスを外に放出するための励起放電ガス放出口と、対向する前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間に反応ガスを導入するための反応ガス導入口と、対向する前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間から反応ガスを外に放出するための反応ガス放出口と、を有し、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口とで挟むように配置して、前記反応ガス放出口から放出される前記反応ガスを前記励起放電ガス放出口から放出される前記励起放電ガスで挟み込むように接触させて前記反応ガスをプラズマ化し、該プラズマ化した反応ガスを基材に接触させて前記基材の表面処理を行うことを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【0025】
(14) 前記誘電体がセラミックス溶射後、無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする(13)に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【0026】
(15) 前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする(14)に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【0027】
(16) 前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする(14)又は(15)に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【0028】
(17) 第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆した大気圧プラズマ処理装置用の電極システムであって、前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置し、前記第1の対向する平板電極対の電極間と、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに電圧を印加することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【0029】
(18) 前記誘電体がセラミックス溶射後、無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする(17)に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【0030】
(19) 前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする(18)に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【0031】
(20) 前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする(18)又は(19)に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【0032】
即ち本発明者は、有機半導体層に接する層の接触角を高めるとキャリア移動度が向上するとの知見のもと、反応ガスを用いたCVD法により、表面の純水に対する接触角が50度以上である薄膜を形成し、その薄膜に接して有機半導体層を形成すれば、キャリア移動度に加えてON/OFF比を向上でき、連続生産工程での有機薄膜トランジスタ素子の製造を実現できることを見出して本発明に至った。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、高いキャリア移動度を示す有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することができる。又、非真空系のロールツーロール(Roll to Roll)工程により製造するのに適した低コストの大量生産が可能になる有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】プラズマ放電処理容器の一例を示す概念図である。
【図2】プラズマ放電処理容器の他の例を示す概略図である。
【図3】円筒型のロール電極の一例を示す概略斜視図である。
【図4】円筒型の固定電極の一例を示す概略斜視図である。
【図5】角柱型の固定電極の一例を示す概略斜視図である。
【図6】プラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。
【図7】プラズマ放電処理装置の他の例を示す概略図である。
【図8】大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図9】本発明のプラズマ放電処理装置の例を示した概略図である。
【図10】有機薄膜トランジスタ素子シートの一例の概略の等価回路図である。
【図11】有機薄膜トランジスタ素子の製造方法を説明するための図である。
【図12】有機薄膜トランジスタ素子の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の大きな特徴の一つは、反応ガスを用いたCVD(Chemical vapor deposition)法により形成され、かつ、表面の純水に対する接触角が50度以上である薄膜を形成することにある。
【0036】
本発明においては、CVD(Chemical vapor deposition)法として好ましくはプラズマCVD法、より好ましくは大気圧プラズマ法である。これらの方法に用いる装置としては、従来のCVD法に用いられる装置を適用することができる。
【0037】
以下に本発明に好ましく適用できる大気圧プラズマ法について説明する。
【0038】
〔プラズマ放電処理装置〕
第1図は、プラズマ放電処理装置Pに用いられるプラズマ放電処理容器20の一例を示す概念図であり、やや別の実施の形態においては、第2図に示すプラズマ放電処理容器20を用いている。
【0039】
第1図において、長尺フィルム状の基板Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極21に巻回されながら搬送される。固定電極22は複数の円筒から構成され、ロール電極21に対向させて設置される。ロール電極21に巻回された基板Fは、ニップローラ23a、23bで押圧され、ガイドローラ24で規制されてプラズマ放電処理容器20によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ25を介して次工程に搬送される。又、仕切板26は前記ニップローラ23bに近接して配置され、基板Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器20内に進入するのを抑制する。
【0040】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器20内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、前記ニップローラ23bにより、それを達成することが可能である。
【0041】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(放電ガスと反応ガス)は、給気口27からプラズマ放電処理容器20に導入され、処理後のガスは排気口28から排気される。
【0042】
第2図は、上述のように、プラズマ放電処理容器20の他の例を示す概略図であり、第1図のプラズマ放電処理容器20では円柱型の固定電極22を用いているのに対し、第2図に示すプラズマ放電処理容器20では角柱型の固定電極29を用いている。
【0043】
第1図に示した円柱型の固定電極22に比べて、第2図に示した角柱型の固定電極29は本発明の薄膜形成方法に好ましく用いられる。
【0044】
第3図(a)、(b)は、上述の円筒型のロール電極21の一例を示す概略斜視図、第4図(a)、(b)は、円筒型の固定電極22の一例を示す概略斜視図、第5図(a)、(b)は、角柱型の固定電極29の一例を示す概略斜視図である。
【0045】
第3図(a)において、アース電極であるロール電極21は、金属等の導電性母材21aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体21bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体21bを片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後200mmとなるように製作し、アースに接地してある。
【0046】
又、第3図(b)に示すように、金属等の導電性母材21Aへライニングにより無機材料を設けたセラミック被覆処理誘電体21Bを被覆した組み合わせでロール電極21を構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材21a、21Aとしては、チタン、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスもしくはチタンが好ましい。又、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0047】
尚、本実施の形態においては、ロール電極の導電性母材21a、21Aは、液体による恒温手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0048】
第4図(a)、(b)および第5図(a)、(b)は、印加電極である固定電極22、固定電極29があり、上記記載のロール電極21と同様な組み合わせで構成されている。
【0049】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を好ましく使用出来る。また、433MHz、800MHz、1.3GHz、1.5GHz、1.9GHz、2.45GHz、5.2GHz、10GHzを発振する電源を用いてもよい。
【0050】
第6図は、本発明に用いられるプラズマ放電処理装置Pの一例を示す概念図である。
【0051】
第6図において、プラズマ放電処理容器20の部分は第2図の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置40、電源50、電極恒温ユニット70等が装置構成として配置されている。電極恒温ユニット70の恒温剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0052】
第6図に記載の電極は、第3図、第5図に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0053】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の最短距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0054】
前記プラズマ放電処理容器20内にロール電極21、固定電極29を所定位置に配置し、ガス発生装置40で発生させた混合ガスを流量制御し、ガス充填手段41を介して給気口27よりプラズマ放電処理容器20内に入れ、前記プラズマ放電処理容器20内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口28より排気する。次に電源50により電極に電圧を印加し、ロール電極21はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基板60より基板Fを供給し、ガイドローラ24を介して、プラズマ放電処理容器20内の電極間を片面接触(ロール電極21に接触している)の状態で搬送される。そして、基板Fは搬送中に放電プラズマにより表面が製膜され、表面に混合ガス中の反応性ガス由来の無機物を含有した薄膜が形成された後、ガイドローラ25を介して、次工程に搬送される。ここで、基板Fはロール電極21に接触していない面のみ製膜がなされる。
【0055】
電源50より固定電極29に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は1kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良い。
【0056】
又、放電出力については、装置の形状によって左右されるが、好ましくは0.1W/cm以上50/cm以下の放電密度がよい。
【0057】
次に2周波数の高周波電圧を印加する大気圧プラズマ放電方法および装置について説明する。本発明における2周波数の高周波電圧による放電条件は、対向する電極(ここでは第1電極と第2電極と言う)で形成される放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、前記第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有する。
【0058】
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
【0059】
前記高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、前記第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ωのサイン波上に、それより高い周波数ωのサイン波が重畳されたωのサイン波がギザギザしたような波形となる。
【0060】
本発明において、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電圧のことを放電開始電圧と言う。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0061】
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することが出来ると推定される。ここで重要なのは、このような高周波電圧が対向する電極それぞれに印加され、すなわち、同じ放電空間に両方から印加されることである。印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる周波数の高周波電圧を印加する方法では、本発明の薄膜形成は達成出来ない。
【0062】
上記でサイン波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。又、更に第3の電圧成分を有していてもよい。
【0063】
上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ωであって電圧Vである第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ωであって電圧Vである第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置である。
【0064】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、前記対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0065】
又、電極、第1電源又はそれらの間の何れかには第1フィルターを、又、電極、第2電源又はそれらの間の何れかには第2フィルターを接続することが好ましく、第1フィルターは該第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第2電源からの周波数の電流を通過し易くし、又、第2フィルターはその逆で、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするというそれぞれのフィルターには機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0066】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加出来る能力を有していることが好ましい。
【0067】
又、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
≧IV>V
又は V>IV≧V
を満たす。更に好ましくは、
>IV>V
を満たすことである。
【0068】
高周波および放電開始電圧の定義、又、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0069】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0070】
高周波電圧V及びV(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0071】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0072】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来るのである。
【0073】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0074】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。又、この電界波形としては、サイン波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0075】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0076】
このような二つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、又、第2の周波数ω側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
【0077】
本発明において、前記第1フィルターは、前記第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、且つ前記第2電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっており、又、前記第2フィルターは、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくく、且つ該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっている。本発明において、かかる性質のあるフィルターであれば制限無く使用出来る。
【0078】
例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイル又はコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用出来る。
【0079】
また、第1電源と第2電源は、必ずしも同時に用いる必要はなく、それぞれを単独で用いてもよい。その場合は、単周波の高周波電源を印加した場合と同様な効果が得られる。
【0080】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、該対向電極間に導入した少なくとも放電ガスと薄膜形成性ガス(反応ガス)をプラズマ状態とし、該対向電極間に静置あるいは移送される基板を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基板の上に薄膜を形成させるものである(例えば第1図〜第7図参照)。又、他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起し、又はプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起又はプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基板(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基板の上に薄膜を形成させるジェット方式の装置がある(後記第8図参照)。
【0081】
その他の方式として、後述する第9図に示す様に、2対の対向電極211−221、212−222によって形成された放電空間にそれぞれ放電ガスGを導入して励起し、この励起された放電ガスG’と、薄膜の原料を含有する薄膜形成ガス(反応ガス)Mとを、放電空間外で、接触または混合させることにより、基板F上に薄膜を形成させることもできる。なお213は絶縁層である。
【0082】
プラズマ放電処理容器20はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等の絶縁性材料が好ましく用いられるが、電極との絶縁が出来れば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又は、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0083】
又、放電プラズマ処理時の基板への影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処理時の基板の温度を常温(15℃〜25℃)〜300℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは常温〜200℃に調整することである。ただし、これらの条件は基板の物性、特にガラス転移温度に依存して温度の上限が決定されるため、この範囲の限りではない。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じて電極、基板は冷却手段で冷却しながら放電プラズマ処理される。
【0084】
本発明の実施の形態においては、上記のプラズマ処理が大気圧又は大気圧近傍で行われるが、真空や高圧下においてプラズマ処理を行ってもよい。なお、大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0085】
又、大気圧プラズマ処理に使用する放電用の電極においては、電極の少なくとも基板Fと接する側の表面は、JIS B 0601で規定される表面粗さの最大値(Rmax)が10μm以下になるように調整されていることが好ましく、更に、表面粗さの最大値が8μm以下であるのが好ましい。
【0086】
なお、上述した第1図および第2図に示すプラズマ放電処理装置Pは、基板Fがフィルムである場合に使用される装置であったが、例えば、フィルムよりも厚みのある基板、例えば、レンズ等であれば第7図に示すようなプラズマ放電処理装置Pを使用する。第7図は、プラズマ放電処理装置の他の例を示す概略図である。
【0087】
このプラズマ放電処理装置Pは、高周波電源101に接続される電極については、平板型の電極103を用い、該電極103上に基板(例えば、レンズL)を載置する。
【0088】
一方、低周波電源102に接続される電極として、電極103上に対向するように、角型棒状の電極104bを設けている。角型棒状の電極104aは、アースとして接地してある。この場合、混合ガスを電極104a,104bの上方より供給し、電極104a,104bの間から電極103にわたる範囲でプラズマ状態とする。
【0089】
第8図は本発明に有用な大気圧プラズマ放電装置の別の一例を示した概略図である。
【0090】
プラズマ放電処理装置Pは、第1電極111と第2電極112から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極111からは第1電源121からの第1の周波数ωの高周波電圧Vが印加され、又、第2電極112からは第2電源122からの第2の周波数ωの高周波電圧Vが印加されるようになっている。第1電源121は第2電源122より高い高周波電圧(V>V)を印加出来る能力を有しており、又、第1電源121の第1の周波数ωは第2電源122の第2の周波数ωより低い周波数を印加できるものである。
【0091】
第1電極111と第1電源121との間には、第1電源121からの電流が第1電極111に向かって流れるように第1フィルター123が設置されており、第1電源121からの電流を通過しにくくし、第2電源122からの電流が通過し易くするように設計されている。
【0092】
又、第2電極112と第2電源122との間には、第2電源122からの電流が第2電極112に向かって流れるように第2フィルター124が設置されており、第2電源122からの電流を通過しにくくし、第1電源121からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0093】
第1電極111と第2電極112との対向電極間(放電空間)113に、ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極111と第2電極112から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基板Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、基板Fの上に、処理位置114付近で薄膜を形成させる。
【0094】
第9図は本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の更に別の一例を示した概略図である。
【0095】
図の大気圧プラズマ放電処理装置は、主には、第1電極211と第2電極221、第1電極212と第2電極222とがそれぞれ対向する様に配置されている対向電極、電圧印加手段である対向電極間に高周波電界を印加する高周波電源50の他に、図示していないが、放電ガスGを放電空間に、反応(薄膜形成)ガスMを放電空間外に導入するガス供給手段、前記電極温度を制御する電極温度調整手段等から構成されている。
【0096】
第1電極211と第2電極221、あるいは第1電極212と第2電極222とで挟まれ、かつ第1電極上の斜線で示した誘電体213を有する領域が放電空間である。この放電空間に、放電ガスGを導入して励起させる。また、第2電極221と22とで挟まれた領域では放電は起こらず、ここに薄膜形成ガスMを導入する。次いで、対向電極が存在しない放電空間外の領域で、励起した放電ガスG′と、薄膜形成ガスMとを接触させて間接励起ガスとして、この間接励起ガスに、基材F表面に晒して薄膜を形成する。
【0097】
ここでは、単周波の高周波電圧を印加するように図示されているが、前述のような方法を用いて2周波数の高周波電界を印加しても良い。
【0098】
〔膜の形成〕
使用するガスは、基板上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、放電ガス(不活性ガス)と、薄膜を形成するための反応ガスの混合ガスである。反応ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0099】
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
【0100】
又、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応を制御し、良質な薄膜を形成することができる。
【0101】
又、反応ガスの原料を放電空間である電極間に導入するには、常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。
【0102】
本発明の薄膜形成用の反応ガスに使用する化合物について説明する。
【0103】
本発明の薄膜形成のためには、特に膜の最表面にアルキル基を存在させることが有効である。アルキル基としては、フルオロアルキル基もしくは炭素と水素のみで構成されたアルキル基いずれでもよい。又、アルキル基については、炭素数が1〜40、好ましくは1〜20である。より好ましくは、加水分解性基とアルキル基を共に有する有機珪素化合物を用いることである。
【0104】
ここに加水分解性基とは、水と水素を添加することによって重合を行うことのできる官能基のことをいい、本発明においては特に限定されないが、好ましくはアルコキシ基、アセチル基が挙げられる。より好ましくはアルコキシ基であり、さらにはエトキシ基を有することが、反応性や原料の物性において好ましい。
【0105】
前記の有機珪素化合物の他に、金属元素がTi、Ge、Zr又はSnである有機金属化合物、及びフッ素を有する化合物も好ましく、特に好ましいのは有機珪素化合物、Tiを有する化合物及びフッ素を有する化合物である。
【0106】
具体的には下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0107】
【化1】

【0108】
前記一般式(1)において、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表す。また、R〜Rは各々水素原子または一価の基を表し、R〜Rで表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であり、例えば、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基又はアリール基を含有する有機基が好ましく、フッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、また、フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。また、これらフッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、またアリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることができる。
【0109】
また、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、また、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
【0110】
〜Rで表される基のうち、前記フッ素原子を有する有機基以外は、水素原子又は1価の基を表し、1価の基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等の基が挙げられるが、これに限定されない。jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、更に好ましいのはjが0〜20の範囲である。
【0111】
前記1価の基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。また、前記1価の基である前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のうち、好ましいのは、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基である。
【0112】
また、Mで表される金属原子のうち、好ましいのは、Si、Tiである。
【0113】
前記1価の基は、更にその他の基で置換されていてもよく、特に限定されないが、好ましい置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フェニル基等のアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカンアミド基、アリールアミド基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等の基が挙げられる。
【0114】
また、前記フッ素原子を有する有機基、又はそれ以外のこれらR〜Rで表される基は、RM−(Mは、前記金属原子を表し、R、R、Rはそれぞれ1価の基を表し、1価の基としては前記フッ素原子を有する有機基又はR〜Rとして挙げられた前記フッ素原子を有する有機基以外の基を表す。)で表される基によって更に置換された複数の金属原子を有する構造であっても良い。これらの金属原子としては、Si、Tiなどが挙げられ、例えば、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0115】
前記R〜Rにおいて挙げられたフッ素原子を有する基であるアルキル基、アルケニル基、またこれらから形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基におけるアルキル基、アルケニル基としては、下記一般式(F)で表される基が好ましい。
【0116】
一般式(F)
Rf−X−(CH
ここにおいてRfは、水素の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基、アルケニル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなパーフルオロアルキル基等の基、又、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基、又、1,1,1−トリフルオロ−2−クロルプロペニル基等のようなフッ素原子により置換されたアルケニル基が好ましく、中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の少なくとも2つ以上のフッ素原子有するアルキル基が好ましい。
【0117】
また、Xは単なる結合手または2価の基である、2価の基としては−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す)等の基、−CO−、−CO−O−、−CONH−、−SONH−、−SO−O−、−OCONH−、
【0118】
【化2】

【0119】
等の基を表す。
【0120】
kは0〜50、好ましくは0〜30の整数を表す。
【0121】
Rf中にはフッ素原子のほか、他の置換基が置換されていてもよく、置換可能な基としては、前記R〜Rにおいて置換基として挙げられた基と同様の基が挙げられる。また、Rf中の骨格炭素原子が他の原子、例えば、−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し、また前記一般式(F)で表される基であってもよい)、カルボニル基、−NHCO−、−CO−O−、−SONH−等の基によって一部置換されていてもよい。
【0122】
前記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましいのは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0123】
一般式(2)
[Rf−X−(CH−M(R10(OR11
一般式(2)において、Mは前記一般式(1)と同様の金属原子を表し、Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、kについても同じ整数を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR〜Rの置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよいが、好ましくは、非置換のアルキル基、アルケニル基を表す。また、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。
【0124】
一般式(2)のうち、更に好ましいものは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0125】
一般式(3)
Rf−X−(CH−M(OR12
ここにおいて、Rf、Xまたkは、前記一般式(2)におけるものと同義である。又、R12も、前記一般式(2)におけるR11と同義である。又、Mも前記一般式(2)におけるMと同様であるが、特に、Si、Tiが好ましく、最も好ましいのはSiである。
【0126】
本発明において、フッ素原子を有する有機金属化合物の他の好ましい例としは、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
【化3】

【0128】
ここに、M及びR〜Rは、前記一般式(1)におけるR〜Rと同義である。ここにおいても、R〜Rの少なくとも1つは、前記フッ素原子を有する有機基であり、前記一般式(F)で表される基が好ましい。Rは水素原子、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表す。また、jは0〜100の整数を表し、好ましくは0〜50、最も好ましいのはjが0〜20の範囲である。
【0129】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(5)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
【0130】
一般式(5)
[Rf−X−(CH−Y]−M(R(OR
一般式(5)において、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表す。Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、Yは単なる結合手または酸素を表す。kについても同じく0〜50の整数を表し、好ましくは30以下の整数である。Rはアルキル基又はアルケニル基を、またRはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR〜Rの置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよい。また、一般式(5)において、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、nは0〜2を、またpも0〜2の整数を表す。m+p=3、即ちn=0であることが好ましい。
【0131】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(6)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
【0132】
一般式(6)
f1(OCm1−O−(CFn1−(CHp1−Z−(CHq1−Si−(R
一般式(6)において、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、Rは加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。
【0133】
f1に導入しうる直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜16がより好ましく、1〜3が最も好ましい。従って、Rf1としては、−CF、−C、−C等が好ましい。
【0134】
に導入しうる加水分解基としては、−Cl、−Br、−I、−OR11、−OCOR11、−CO(R11)C=C(R12、−ON=C(R11、−ON=CR13、−N(R12、−R12NOCR11などが好ましい。R11はアルキル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を、又はフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R12は水素原子又はアルキル基などの炭素数1〜5の脂肪族炭化水素を表し、R13はアルキリデン基などの炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基を表す。これらの加水分解基の中でも、−OCH、−OC、−OC、−OCOCH及び−NHが好ましい。
【0135】
m1は1〜30であることがより好ましく、5〜20であることが更に好ましい。n1は1又は2であることがより好ましく、p1は1又は2であることがより好ましい。また、q1は1〜3であることがより好ましい。
【0136】
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(7)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
【0137】
【化4】

【0138】
一般式(7)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子又は水素原子、Yは水素原子又は低級アルキル基、Zはフッ素原子又はトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子又は不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0又は1、m及びnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。
【0139】
前記一般式(7)において、Rfは、通常、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、CF基、C基、C基である。Yにおける低級アルキル基としては、通常、炭素数1〜5のものが挙げられる。
【0140】
21の加水分解可能な基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、R23O基、R23COO基、(R24C=C(R23)CO基、(R23C=NO基、R25C=NO基、(R24N基、及びR23CONR24基が好ましい。ここで、R23はアルキル基等の通常は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又はフェニル基等の通常は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R24は水素原子またはアルキル基等の通常は炭素数1〜5の低級脂肪族炭化水素基、R25はアルキリデン基等の通常は炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。さらに好ましくは、塩素原子、CHO基、CO基、CO基である。
【0141】
22は水素原子又は不活性な一価の有機基であり、好ましくは、アルキル基等の通常は炭素数1〜4の一価の炭化水素基である。a、b、c、dは0〜200の整数であり、好ましくは1〜50である。m及びnは、0〜2の整数であり、好ましくは0である。pは1又は2以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、さらに好ましくは1〜5の整数である。又、数平均分子量は5×10〜1×10であり、好ましくは1×10〜1×10である。
【0142】
また、前記一般式(7)で表されるシラン化合物の好ましい構造のものとして、RfがC基であり、aが1〜50の整数であり、b、c及びdが0であり、eが1であり、Zがフッ素原子であり、nが0である化合物である。
【0143】
本発明において、フッ素原子を有するシラン化合物として好ましく用いられるフッ素を有する有機基を有する有機金属化合物、及び前記一般式(1)〜(7)で表される化合物の代表的化合物を以下に挙げるが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0144】
1:(CFCHCHSi
2:(CFCHCH(CHSi
3:(C17CHCH)Si(OC
4:CH=CHSi(CF
5:(CH=CHCOO)Si(CF
6:(CFCHCHSiCl(CH
7:C17CHCHSi(Cl)
8:(C17CHCHSi(OC
9:CFCHCHSi(OCH
10:CFCHCHSiCl
11:CF(CFCHCHSiCl
12:CF(CFCHCHSiCl
13:CF(CFCHCHSi(OCH
14:CF(CFCHCHSiCl
15:CF(CFCHCHSi(OCH
16:CF(CFCHSi(OC
17:CF(CHSi(OC
18:CF(CHSi(OC
19:CF(CHSi(OC
20:CF(CF(CHSi(OC
21:CF(CF(CHSi(OC
22:CF(CF(CHSi(OC
23:CF(CF(CHSi(OC
24:CF(CF(CHSi(OCH)(OC
25:CF(CF(CHSi(OCHOC
26:CF(CF(CHSiCH(OCH
27:CF(CF(CHSiCH(OC
28:CF(CF(CHSiCH(OC
29:(CFCF(CF(CHSi(OCH
30:C15CONH(CHSi(OC
31:C17SONH(CHSi(OC
32:C17(CHOCONH(CHSi(OCH
33:CF(CF(CHSi(CH)(OCH
34:CF(CF(CHSi(CH)(OC
35:CF(CF(CHSi(CH)(OC
36:CF(CF(CHSi(C)(OCH
37:CF(CF(CHSi(C)(OC
38:CF(CHSi(CH)(OCH
39:CF(CHSi(CH)(OC
40:CF(CHSi(CH)(OC
41:CF(CF(CHSi(CH)(OCH
42:CF(CF(CHSi(CH)(OC
43:CF(CFO(CF(CHSi(OC
44:C15CHO(CHSi(OC
45:C17SOO(CHSi(OC
46:C17(CHOCHO(CHSi(OCH
47:CF(CFCH(C)CHSi(OCH
48:CF(CFCH(C)CHSi(OCH
49:(CF(p−CH−C)COCHCHCHSi(OCH
50:CFCO−O−CHCHCHSi(OCH
51:CF(CFCHCHSi(CH)Cl
52:CFCHCH(CH)Si(OCH
53:CFCO−O−Si(CH
54:CFCHCHSi(CH)Cl
55:(CF(p−CH−C)COCHCHSi(OCH
56:(CF(p−CH−C)COCHCHSi(OC
57:(CF)(CHSi−O−Si(CH
58:(CF)(CHSi−O−Si(CF)(CH
59:CF(OC24−O−(CF−CH−O−CHSi(OCH
60:CF30(CF(CF)CFO)CFCONHCSi(OC (m=11〜30)、
61:(CO)SiCNHCOCFO(CFO)(CFCFO)CFCONHCSi(OC
(n/p=約0.5、数平均分子量=約3000)
62:C−(OCFCFCF−O−(CF−[CHCH{Si−(OCH}]−H (q=約10)
63:F(CF(CF)CFO)15CF(CF)CONHCHCHCHSi(OC
64:F(CF[CHCH(Si(OCH)]2.02OCH
65:(CO)SiCNHCO−[CF(OC10(OCFOCF]−CONHCSi(OC
66:C(OC24O(CFCHOCHSi(OCH
67:CF(CF(C)CSi(OCH
68:(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
69:CF(CF(C)CSiCH(OCH
70:CF(CF(C)CSi(OC
71:CF(CFSi(NCO)
72:CF(CFSi(NCO)
73:C19CONH(CHSi(OC
74:C19CONH(CHSiCl
75:C19CONH(CHSi(OC
76:C70(CF(CF)CFO)−CF(CF)−CONH(CH)Si(OC
77:CFO(CF(CF)CFO)CFCONH(CHSiOSi(OC(CHNHCOCF(OCFCF(CF))OCF
78:CCOOCHSi(CHOSi(CHCHOCOC
79:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH(CHOCHCH(CFCF
80:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH(OC
81:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CH)(OC
82:CF(CFCHCHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(OC
上記例示した化合物の他には、フッ素置換アルコキシシランとして、
83:(パーフルオロプロピルオキシ)ジメチルシラン
84:トリス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルシラン
85:ジメチルビス(ノナフルオロブトキシ)シラン
86:メチルトリス(ノナフルオロブトキシ)シラン
87:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)ジフェニルシラン
88:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルビニルシラン
89:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブトキシ)ジメチルシラン
90:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジメチルシラン
91:トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)メチルシラン
92:テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン
93:ジメチルビス(ノナフルオロ−t−ブトキシ)シラン
94:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジフェニルシラン
95:テトラキス(1,1,3,3−テトラフルオロイソプロポキシ)シラン
96:ビス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ジメチルシラン
97:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブトキシ)ジメチルシラン
98:メチルトリス〔2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ〕シラン
99:ジフェニルビス〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエトキシ〕シラン
等の化合物や、以下の化合物、
100:(CFCHSi(CH−NH
101:(CFCHSi−N(CH
【0145】
【化5】

【0146】
更に、
【0147】
【化6】

【0148】
等のシラザン類や、
106:CFCH−CHTiCl
107:CF(CFCHCHTiCl
108:CF(CFCHCHTi(OCH
109:CF(CFCHCHTiCl
110:Ti(OC
111:(CFCH−CHO)TiCl
112:(CF)(CHTi−O−Ti(CH
等のフッ素を有する有機チタン化合物、又、以下のようなフッ素含有有機金属化合物を例として挙げることができる。
【0149】
113:CF(CFCHCHO(CHGeCl
114:CF(CFCHCHOCHGe(OCH
115:(CO)Ge(OCH
116:[(CFCHO]Ge
117:[(CFCHO]Zr
118:(CCHCHSn(OC
119:(CCHCH)Sn(OC
120:Sn(OC
121:CFCHCHIn(OCH
122:In(OCHCHOC
123:Al(OCHCHOC
124:Al(OC
125:Sb(OC
126:Fe(OC
127:Cu(OCHCHOC
128:C(OC24O(CFCHOCHSi(OCH
【0150】
【化7】

【0151】
これら具体例で挙げられた各化合物等は、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)また、Gelest Inc.、ソルベイ ソレクシス(株)等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000−64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
【0152】
その他好ましく用いられる有機珪素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリジドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、トリフェノキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシレン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン、ジフェノキシシラン、ジアシルオキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、フルオロアルキルシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独で使用しても異なる2種以上を同時に使用することもできる。
【0153】
上記化合物の中でも、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなどが好ましい。
【0154】
また、他の有機ケイ素化合物として、下記一般式(8)で表される化合物が用いられるが、ここにおいて、nは0〜2000である。また、R81〜R88は、水素原子又は各々飽和、不飽和のいずれでもよい直鎖、分岐又は環状炭化水素基であり、各々は同一のものであっても異なっていてもよい。
【0155】
【化8】

【0156】
具体的には、信越化学社製のケイ素化合物試薬、又は米国のGelest,Inc,Metal−Organics for Material&Polyer Technology、チッソ社製SILICON CHEMICALS等の化合物カタログに記載されているものの中から、一般式(1)に適合するものを選定し使用することが出来、下記に使用し得る化合物を例示するが、無論これらに限定されるものではない。
【0157】
【化9】

【0158】
その他の原料としては、フッ素化合物を用いることができ、有機フッ素化合物として、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等を好ましく用いることが出来る。フッ化炭素ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン等を挙げることが出来る。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、例えば、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン等を挙げることが出来る。更に、例えば、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロシクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やトリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフルオロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を用いることが出来るが、これらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にフッ素化エチレン性不飽和基を有していても良い。
【0159】
本発明に係る薄膜は、後述するゲート絶縁膜上に形成し、さらにその上に、有機半導体層を形成するのが好ましい。該薄膜の厚さは、単分子層から100nm以下が好ましく、単分子層から10nm以下がより好ましい。
【0160】
また、本発明の効果を得るには、本発明に係る薄膜の表面の純水に対する接触角を、50度以上とする必要があり、好ましくは70〜170度、より好ましくは90〜130度である。接触角が低いと、トランジスタ素子のキャリア移動度やon/off比を著しく低下させ、高すぎると半導体材料の溶液の塗布性を低下させる。
【0161】
さらに、薄膜表面の表面粗さRaは、薄膜トランジスタが後述のボトムゲート型では、その基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜の表面性にも大きく影響を受けるが、概して0.01nm〜10nmとすることが、トランジスタ素子のキャリア移動度の観点から好ましい。
【0162】
薄膜の形成方法としては、前述した大気圧プラズマ法以外に、原料を含む反応ガスを50℃〜500℃の範囲で加熱された基板上に供給し、熱的反応により薄膜を形成する熱CVD法や、前述の装置と放電ガス、反応ガスを用いて、0.01〜100Paの減圧下で行う一般的なプラズマCVD法を用いた場合にも、本発明の効果を得ることができるが、移動度の向上、薄膜の均一性、薄膜の形成速度、非真空系での効率的生産という観点から、大気圧プラズマ法が最も好ましい。
【0163】
また、本発明においては、本発明に係る薄膜を形成する基材を、放電空間、または励起放電ガスに晒して前処理(洗浄)を行った後、薄膜形成を行うことが好ましい。このときの混合ガスとしては、前述した不活性ガスを90〜99.9体積%の濃度で、酸素、オゾン、過酸化水素、水素から選ばれる少なくとも1種を0.01〜10体積%の濃度で使用する。好ましくは、窒素、アルゴンのいずれかと、酸素を用いる。これにより、トランジスタ素子の特性に悪影響を及ぼす不純物を除去する効果を得ることができる。さらに、このときの基材の表面が、酸化ケイ素などの金属酸化物である場合には、本発明に係る薄膜を形成する反応ガスとの反応性を高める効果があり、当該薄膜の均一性、緻密性を高め、トランジスタ素子のキャリア移動度を高める効果が得られる。
【0164】
基材の表面が、酸化ケイ素などの金属酸化物である場合、前処理(洗浄)によって、基材の表面の純水に対する接触角を1〜30度、好ましくは3〜20度とするのが望ましい。
【0165】
次に、本発明に係る有機薄膜トランジスタ素子及びその製造方法が関係する一般的なことについて述べる。
【0166】
有機薄膜トランジスタ素子は、第12図に示す如く、基板Fの表面に、有機半導体層5で連結されたソース電極6とドレイン電極7を有し、その上にゲート絶縁層3を介してゲート電極2を有するトップゲート型(第12図の(a)、(b))と、基板Fの表面に、まずゲート電極2を有し、ゲート絶縁層3を介して有機半導体層5で連結されたソース電極6とドレイン電極7を有するボトムゲート型(第12図(c))に大別される。本発明においては、いずれのタイプも好ましく適用できるが、ボトムゲート型が特に好ましい。
【0167】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子は、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引層及びポリマーを含む下引層の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0168】
下引層に含有される無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。又、無機窒化物としては窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0169】
それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素である。
【0170】
本発明において、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引層は上述した大気圧プラズマ法で形成されるのが好ましい。
【0171】
ポリマーを含む下引層に用いるポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、エチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0172】
本発明の有機薄膜トランジスタ素子に用いる有機半導体層の材料としては、π共役系材料が用いられ、例えばポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類、ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン)類、ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリダジンなどのポリピリダジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類およびポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど)、ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーや特開平11−195790に記載された多環縮合体などを用いることができる。
【0173】
又、これらのポリマーと同じ繰返し単位を有するたとえばチオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーも好適に用いることができる。
【0174】
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601に記載のフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84等フラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などがあげられる。
【0175】
これらのπ共役系材料のうちでも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体又はこれらの2種以上を繰返し単位とし、かつ該繰返し単位の数nが4〜10であるオリゴマーもしくは該繰返し単位の数nが20以上であるポリマー、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0176】
又、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0177】
本発明においては、有機半導体層に、たとえば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、たとえばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を施してもよい。
【0178】
前記ドーピングとは電子授与性分子(アクセプター)又は電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして該薄膜に導入することを意味する。従って、ドーピングが施された薄膜は、前記の縮合多環芳香族化合物とドーパントを含有する薄膜である。本発明に用いるドーパントとしては公知のものを採用することができる。
【0179】
これら有機半導体層の作製法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、ズピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法およびLB法等が挙げられ、材料に応じて使用できる。ただし、この中で生産性の点で、有機半導体の溶液を用いて簡単かつ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等が好まれる。ここで、半導体材料の溶液に用いられる有機溶媒としては、主に、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)などを用いることができる。
【0180】
なおAdvanced Material誌 1999年 第6号、p480〜483に記載の様に、ペンタセン等前駆体が溶媒に可溶であるものは、塗布により形成した前駆体の膜を熱処理して目的とする有機材料の薄膜を形成しても良い。
【0181】
これら有機半導体からなる薄膜の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0182】
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0183】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。又、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0184】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0185】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0186】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0187】
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法である。前述した装置と成膜の方法により、大気圧近傍でのゲート絶縁膜の形成が可能となる。
【0188】
例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスを放電ガスに用い、反応ガスとして、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシランなどと、酸素を混合して用いることで、酸化ケイ素皮膜が得られる。また、これらのシラン化合物を、テトラエトキシチタンや、テトライソプロポキシチタンなどのチタン化合物に替えることで、酸化チタン皮膜を得ることができる。さらに、本発明の別の方法と組み合わせて、ゲート絶縁膜の形成、前述したゲート絶縁膜の表面洗浄、表面処理薄膜と、連続的に生産性高く製造することができる。
【0189】
又、有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
【0190】
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。これら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0191】
基板としては、ガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0192】
第10図は、本発明の有機薄膜トランジスタ素子が複数配置される有機薄膜トランジスタ素子シート10の1例の概略の等価回路図である。
【0193】
有機薄膜トランジスタシート1はマトリクス配置された多数の有機薄膜トランジスタ素子14を有する。11は各有機薄膜トランジスタ素子14のゲート電極のゲートバスラインであり、12は各有機薄膜トランジスタ素子14のソース電極のソースバスラインである。各有機薄膜トランジスタ素子14のドレイン電極には、出力素子16が接続され、この出力素子16は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子16として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。15は蓄積コンデンサ、17は垂直駆動回路、18は水平駆動回路である。
【0194】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0195】
実施例1
厚さ100μmのPESフィルム基板Fの表面に50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施し、下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
【0196】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
さらに、その層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設けた。以上のようにして、基板F上に2層構成の下引層1を設けた。
【0197】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム 98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス 1.50体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気 0.25体積%
(ヘリウムガスにてバブリング)
(放電条件)
放電出力:10W/cm
ここでは、パール工業製高周波電源を用い、周波数13.56MHzで放電させた。
【0198】
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
【0199】
下引層1の上に、スパッタ法により、厚さ200nmのアルミニウム皮膜を成膜しゲート電極2を設けた(第11図−a)。さらに、フィルム温度200℃にて、上述した大気圧プラズマ法により、ゲート絶縁層3として厚さ200nmの酸化ケイ素層を設けた(第11図−b)。
【0200】
次に、ゲート絶縁層3の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ法による表面処理を5秒行い、本発明に係るシラン化合物を含む薄膜4を形成した(第11図−c)。
【0201】
不活性ガス:ヘリウム 98.9体積%
反応性ガス:水素ガス 1.0体積%
反応性ガス:メチルトリエトキシシラン蒸気 0.1体積%
(ヘリウムガスにてバブリング)
(放電条件)
放電出力:3.0W/cm
ここでは、パール工業製高周波電源を用い、周波数13.56MHzで放電させた。
【0202】
次に、その上に、下記構造のペンタセン前駆体のクロロホルム溶液を、ピエゾ方式のインクジェット法を用いて、チャネルを形成すべき領域に吐出し、窒素ガス中で、200℃で10分の熱処理を行ったところ、厚さ50nmのペンタセン薄膜である有機半導体層5を形成した(第11図−d)。
【0203】
【化10】

【0204】
次いで、ピエゾ方式のインクジェットを用い、ポリスチレンスルホン酸とポリ(エチレンジオキシチオフェン)の水分散液(バイエル製 Baytron P)をソース及びドレイン電極状に吐出し、パターニングし、自然乾燥させた後、窒素ガス雰囲気中、70℃にて10分間の熱処理を行い、ソース電極6及びドレイン電極7を形成した(第11図−e)。以上の方法で、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ(本発明試料No.1)を作製した。
【0205】
本発明試料No.1においてメチルトリエトキシシランに代えてヘキシルトリエトキシシランを適用した以外は、本発明試料No.1と同様にして本発明試料No.2を作製した。又、以下同様にして、メチルトリエトキシシランに代えてトリフルオロメチルエチルトリエトキシシランを適用した以外は、本発明試料No.1と同様にして本発明試料No.3を、メチルトリエトキシシランに代えてメチルトリイソプロポキシチタンを適用した以外は、本発明試料No.1と同様にして本発明の試料No.4を、それぞれ作製した。
【0206】
さらに、大気圧プラズマによる表面処理を行なわない有機薄膜トランジスタ(比較試料No.1)も作製した。
【0207】
試料No.1から試料No.4の本発明に係る薄膜と大気圧プラズマによる表面処理を行なわない場合の、純水に対する接触角測定結果を示す。純水を滴下してから40秒後の値を示す。
【0208】
試料No.1 78°
2 85°
3 95°
4 76°
比較試料 1 43°
本発明に係る有機薄膜トランジスタである本発明試料No.1〜本発明試料No.4はいずれも、pチャネルエンハンスメント型FET(field−effect transistor)の良好な動作特性を示した。又、各試料について、ドレインバイアスを−60Vとして、ゲートバイアスを−20Vから+70Vまで掃引して、ドレイン電流を測定し、飽和領域におけるキャリア移動度を測定した。測定結果を表に示す。
【0209】
【表1】

【0210】
表から、本発明試料は比較試料に比べて高いキャリア移動度を示していることがわかる。
【0211】
実施例2
実施例1における本発明試料No.1〜本発明試料No.4及び比較試料No.1における有機半導体材料を下記のものに代えた以外は、本発明試料No.1〜本発明試料No.4及び比較試料No.1と同様にして、それぞれ、本発明試料No.5〜本発明試料No.8及び比較試料No.2を作製した。
【0212】
有機半導体材料;
ZnおよびNiの含有量が10ppm以下になるよう良く精製した、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のregioregular体(アルドリッチ社製)のクロロホルム溶液を調製した。この溶液を、ピエゾ型のインクジェットを用いて、吐出しパターニングし、室温で乾燥させた後、Nガス置換雰囲気中で、50℃、30分間の熱処理を施した。このとき、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の膜厚は30nmであった。
【0213】
本発明に係る有機薄膜トランジスタである本発明試料No.5〜本発明試料No.8はいずれも、pチャネルエンハンスメント型FET(field−effect transistor)の良好な動作特性を示した。又、各試料の飽和領域におけるキャリア移動度を測定した。測定結果を表に示す。
【0214】
【表2】

【0215】
実施例3
半導体層形成前の基板を以下のように作製した。
【0216】
(基板1)
実施例1と同様に大気圧プラズマ法により、ゲート絶縁層(膜厚200nmの酸化ケイ素層)を設けた後、薄膜4を形成する前に、第8図に記載の大気圧プラズマ放電処理装置に、放電ガスとして窒素:酸素=99:1(体積比)を流し、基材をその励起放電ガスに3秒間晒し前処理を行った。尚、高周波電源として、ハイデン研究所製高周波電源(周波数:40kHz)を用い、放電出力は10W/cmに設定して行った。
【0217】
次いで、実施例1と同様に、薄膜4を形成した。
【0218】
(基板2〜4)
大気圧プラズマ法に用いる反応ガスの材料を表3のように変更した以外は、基板1と同様にして基板を作製した。
【0219】
(基板5(比較))
薄膜4を形成しなかったこと以外は、基板1と同様にして基板を作製した。
【0220】
(基板6(比較))
以下のように薄膜4を形成した以外は、基板1と同様にして基板を作製した。
【0221】
40℃に保温した、オクタデシルトリクロロシランの1mMトルエン溶液に基板を60分浸漬した後、トルエン中に3分間浸漬して超音波洗浄を行い、室温空気中で乾燥させた。
【0222】
以上のように作製した基板の上に、昇華精製したペンタセン(アルドリッチ製)を3×10−4Paの真空下で加熱蒸着し、厚さ50nmの有機半導体層を形成した。更に、実施例1と同様にして、ソース電極、ドレイン電極を形成して試料を作成した。
【0223】
各試料について、ドレインバイアスを−60Vとして、ゲートバイアスを+20Vから−70Vまで掃引して、ドレイン電流を測定し、飽和領域におけるキャリア移動度、および測定したドレイン電流の最大値と最小値の比率(on/off比)を測定した。測定結果を下表中欄に示す。
【0224】
実施例4
実施例3と同じ条件で作製した各基板の上に、実施例2と同様にして、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のregioregular体から成る有機半導体層を形成し、実施例3と同様に評価した。測定結果を下表右欄に示す。
【0225】
【表3】

【0226】
実施例5
薄膜4を変更した以外は実施例4と同様にして試料を作成した。
【0227】
薄膜4の形成には第9図の装置を用い、さらに大気圧プラズマ法に使用した材料、ガス、出力は表に示す。なおガス導入部Mにガス種Aを、ガス導入部Gにガス種Bを、それぞれ導入した。ここで、基板7の薄膜4の形成の際、放電には、パール工業製高周波電源を用い、周波数13.56MHzで放電させた。又、基板8〜12の薄膜4の形成の際、放電には、神鋼電機製高周波電源を用い、周波数50kHzで放電させた。放電時間は何れも5秒とした。
【0228】
作製した試料について、実施例4と同様に測定した結果を表に示す。
【0229】
【表4】

【0230】
【表5】

【符号の説明】
【0231】
20 プラズマ放電処理容器
F 長尺フィルム状の基板
21 ロール電極
22 固定電極
23 ニップローラ
24 ガイドローラ
25 ガイドローラ
27 給気口
28 排気口
29 角柱型の固定電極
40 ガス発生装置
50 電源
111 第1電極
112 第2電極
121 第1電源
122 第2電源
123 第1フィルター
124 第2フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させる手段と、反応ガスと前記励起放電ガスとを接触させて前記反応ガスをプラズマ化させる手段と、を有し、前記プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う、大気圧プラズマ処理装置において、前記反応ガスが前記励起放電ガスに挟みこまれるようにして接触することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項2】
プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理装置において、放電ガスを前記基材表面に供給する放電ガス供給手段と、前記放電ガス供給手段内部の放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させる手段と、反応ガスを前記基材表面に供給する反応ガス供給手段と、を有し、前記反応ガスを前記励起放電ガスに挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記放電ガス供給手段は、励起放電ガス放出口を有し、前記反応ガス供給手段は、反応ガス放出口を有しており、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口で挟み込むように配置したことを特徴とする請求項2に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記放電ガス供給手段は、第1の対向する平板電極対及び第2の対向する平板電極対により構成され、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆したことを特徴とする請求項2又は3に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記反応ガス供給手段は、前記第1の対向する平板電極対及び前記第2の対向する平板電極対の間に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項6】
第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆し、さらに第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置した大気圧プラズマ処理装置であって、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、放電ガスを導入するための放電ガス導入口と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記放電ガスを大気圧又は大気圧近傍の圧力下で存在させ、電圧を印加して励起放電ガスを発生させる手段と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記電極間で発生した励起放電ガスを外に放出するための励起放電ガス放出口と、対向する第1の平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間に反応ガスを導入するための反応ガス導入口と、対向する第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間から前記反応ガスを外に放出するための反応ガス放出口と、を有し、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口とで挟むように配置し、前記反応ガス放出口から放出される前記反応ガスと前記励起放電ガス放出口から放出される前記励起放電ガスが接触して発生するプラズマ化した反応ガスと接触する位置に基材を配置することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項7】
前記誘電体がセラミックス溶射後無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項8】
前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする請求項7に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項9】
前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする請求項7又は8に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項10】
放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させ、反応ガスと前記励起放電ガスとを接触させて反応ガスをプラズマ化させ、該プラズマ化させた反応ガスを基材に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理方法において、前記反応ガスに前記励起放電ガスを挟み込むように接触させることを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【請求項11】
プラズマ化した反応ガスを基材の表面に接触させて前記基材の表面処理を行う大気圧プラズマ処理方法において、放電ガスを前記基材表面に供給する放電ガス供給手段と、反応ガスを前記基材表面に供給する反応ガス供給手段と、を有し、前記放電ガス供給手段内部で前記放電ガスを励起させて励起放電ガスを発生させ、その後前記反応ガスを前記励起放電ガスで挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【請求項12】
前記放電ガス供給手段は励起放電ガス放出口を有し、前記反応ガス供給手段は反応ガス放出口を有しており、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガスで挟み込むことにより、前記反応ガスをプラズマ化することを特徴とする請求項11に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【請求項13】
第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆し、さらに第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置した大気圧プラズマ処理装置を用いた大気圧プラズマ処理方法であって、前記大気圧プラズマ処理装置は、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、放電ガスを導入するための放電ガス導入口と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記放電ガスを大気圧又は大気圧近傍の圧力下で存在させ、電圧を印加して励起放電ガスを発生させる手段と、前記第1の対向する平板電極対の電極間、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに、前記励起放電ガスを外に放出するための励起放電ガス放出口と、対向する前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間に反応ガスを導入するための反応ガス導入口と、対向する前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極との間から反応ガスを外に放出するための反応ガス放出口と、を有し、前記反応ガス放出口を前記励起放電ガス放出口とで挟むように配置して、前記反応ガス放出口から放出される前記反応ガスを前記励起放電ガス放出口から放出される前記励起放電ガスで挟み込むように接触させて前記反応ガスをプラズマ化し、該プラズマ化した反応ガスを基材に接触させて前記基材の表面処理を行うことを特徴とする大気圧プラズマ処理方法。
【請求項14】
前記誘電体がセラミックス溶射後、無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする請求項13に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【請求項15】
前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする請求項14に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【請求項16】
前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする請求項14又は15に記載の大気圧プラズマ処理方法。
【請求項17】
第1の対向する平板電極対と、第2の対向する平板電極対と、を有し、前記第1の対向する平板電極対の電極の対向する面と前記第2の対向する平板電極対の電極の対向する面に誘電体を被覆した大気圧プラズマ処理装置用の電極システムであって、前記第1の対向する平板電極対の一方の電極と前記第2の対向する平板電極対の一方の電極とを対向するように配置し、前記第1の対向する平板電極対の電極間と、前記第2の対向する平板電極対の電極間それぞれに電圧を印加することを特徴とする大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【請求項18】
前記誘電体がセラミックス溶射後、無機質材料で封孔処理したものであることを特徴とする請求項17に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【請求項19】
前記セラミックス溶射膜がアルミナであることを特徴とする請求項18に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。
【請求項20】
前記無機質材料が、ケイ酸塩系ガラスであることを特徴とする請求項18又は19に記載の大気圧プラズマ処理装置用の電極システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−265548(P2010−265548A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126609(P2010−126609)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2005−502705(P2005−502705)の分割
【原出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】