説明

物体の光学的測定を行うための装置及びその装置を用いた測定方法

【課題】フォーカス調整装置を備える顕微鏡と光波干渉計とを備えた光学的測定装置においてより高い精度の測定が実現すること。
【解決手段】 顕微鏡が共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されるとともに、光源から発したフォーカスビームが対物レンズ12を経て物体1とフォーカス検出器8とにフォーカスされるとともに、フォーカス調整装置18とフォーカス検出器8とに連携しているフォーカス制御装置17に前記フォーカス検出器8が測定信号を出力することで、この測定信号に応じてフォーカス制御装置17が物体1の測定点が対物レンズ12の焦点に位置するようにフォーカス調整装置18を制御するように構成され、かつ光波干渉計はフォーカスビームをつくり出すための光源である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体の光学的測定、特に運動測定を行うために、それ自身の測定ビームの光軸方向に沿った運動を測定するための光波干渉計と、対物レンズならびにフォーカス調整装置を備える顕微鏡とからなり、フォーカス調整装置は物体と対物レンズの焦点との相対位置を変更できるように形成され、前記光波干渉計と前記顕微鏡とは光波干渉計の測定ビームが顕微鏡の光路を経て物体上にフォーカスするように互いに対応させられている、物体の光学的測定を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、光波干渉計の測定ビームの光軸方向に沿った動き(運動)を測定するための光波干渉計と、対物レンズならびにフォーカス調整装置を備える顕微鏡とからなり、フォーカス調整装置は物体と対物レンズの焦点との相対位置を変更できるように形成され、光波干渉計と顕微鏡とは光波干渉計の測定ビームが顕微鏡の光路を経て物体上にフォーカスされるように互いに対応させられている。
【0003】
光波干渉計は測定ビームの光軸方向に沿った運動つまり一般に顕微鏡の物体面に対して垂直な方向の運動の測定を可能にする。一般に、物体上の1つの測定点がコヒーレントなレーザ光で照射されるレーザドップラー振動計が使用される。物体の表面の運動は表面で反射された光の周波数のドップラー遷移を生ずる。この周数数遷移ないし等価位相ずれを復調器で評価することにより測定点での物体表面の運動の速度を算定することができ、この速度のカーブから測定点での物体表面の加速度の値も計算することが可能である。この種の測定装置の原理的構造は既に知られている(例えば非特許文献1参照。)。
【0004】
小さな物体の運動、特にマイクロシステム技術における小型化された部品の運動または振動の測定には、測定ビームが顕微鏡の光路を経て測定さるべき物体上にフォーカスされる光波干渉計が利用されることが多い。
この場合、光波干渉計の測定ビームは顕微鏡によって物体上の所定の測定点に向けられるが、物体上の測定さるべき測定点は顕微鏡のほぼ焦点に位置するようにするのが好適であり、これによって測定ビームは測定点においてできるだけ僅かな広がりを示し、したがって物体上のできるだけ小さな面を照らすこととなり、こうして高度な局部分解が可能になる。
【0005】
そのような物体の光学的測定、特に変位測定および/または振動測定を行うための装置も知られている(例えば、特許文献1参照。)が、この場合の測定はレーザ光波干渉計によって実施され、その際、測定ビームは顕微鏡の光路に入射される。物体によって反射された測定ビームはふたたび顕微鏡の光路から出て、測定システムに戻る。さらにこの装置は測定ビームをおおよそ平行にずらすための装置を有しており、その結果、測定対象を移動させることなく物体上の並列した複数の点を測定することができる。
【0006】
【非特許文献1】“Technisches Messen-tm[工学測定-tm]”(1990年)、p.335〜345
【特許文献1】米国特許第6084672号明細書(対応日本出願:特開平11−160018号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は冒頭に述べたタイプの測定技術を改良して、より高い精度の測定が達成される技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、上記タイプの測定装置において、前記顕微鏡は共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されて、フォーカス制御装置と、フォーカス検出器と、フォーカスビームをつくり出すための光源と、対物レンズの焦点外の点から対物レンズに入射される非フォーカスビームを遮光するように共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に配置されている空間フィルタとを備え、かつ前記顕微鏡は、光源から発したフォーカスビームが対物レンズを経て物体とフォーカス検出器とにフォーカスされるとともに、前記フォーカス調整装置とフォーカス検出器とに連携しているフォーカス制御装置に前記フォーカス検出器が測定信号を出力することで、この測定信号に応じて前記フォーカス制御装置が物体の測定点が対物レンズの焦点に位置するようにフォーカス調整装置を制御するように構成され、かつ前記光波干渉計はフォーカスビームをつくり出すための光源であることを特徴とすることで解決される。
【0009】
本発明は顕微鏡が共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されている点で公知の従来の技術とは根本的に異なっている。共焦点オートフォーカス顕微鏡はフォーカス制御装置、フォーカス検出器、フォーカス調整装置およびフォーカスビームを発生させる光源を備えている。
本発明による装置において光波干渉計はフォーカスビームをつくり出すための光源として使用される。つまり、光波干渉計の測定ビームはさらに共焦点オートフォーカス顕微鏡のフォーカス調整のためのフォーカスビームとして使用される。
光波干渉計によってつくり出されたフォーカスビームは共焦点オートフォーカス顕微鏡の対物レンズを経て物体上つまり測定さるべき物体の測定点にフォーカスされ、物体によって反射または散乱させられる。反射または散乱された測定ビームはふたたび共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路を経てフォーカスされフォーカス検出器に戻る。
フォーカス検出器は直接にまたは信号評価装置を経て測定信号を、フォーカス調整装置と連携して形成されているフォーカス制御装置に転送する。フォーカス制御装置はフォーカス検出器の測定信号に応じ、物体の測定点が対物レンズの焦点に位置するようにフォーカス調整装置を制御する。フォーカス調整装置は光波干渉計の測定ビームに対して基本的に垂直方向に対物レンズをずらすことができるように形成されているかおよび/または顕微鏡に対して相対的に、光波干渉計の測定ビームに対して実質的に垂直方向に物体を移動させることができるように形成されていてよい。
【0010】
さらに本発明による装置の顕微鏡は空間フィルタを備え、このフィルタは共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に、非フォーカスビームを基本的に遮光するようにして配置されている。したがって、対物レンズの焦点外から対物レンズに入り込んで顕微鏡の光路に入射されるビームは空間フィルタによって基本的に遮光され、特に、非フォーカスビームは空間フィルタによって阻止されて光波干渉計の光路に入り込むことはない。この空間フィルタは一般に遮光絞りないしピンホールとして実現されている。
したがって、本発明による装置は、非フォーカスビームが光波干渉計内で焦点ビームと重なり合うことに起因する光波干渉計の測定データの誤差は基本的に排除されているという追加的な利点を有している。
【0011】
本発明による装置により、光波干渉計の測定ビームを共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路を経て物体に集束させて、反射または散乱された測定ビームを共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路を経て光波干渉計に帰還させ、その際、フォーカス制御装置によって、ユーザが所要の操作を行なわなくても、物体が焦点に位置するように保証することが可能になる。
【0012】
物体上の測定点が対物レンズの焦点に位置している場合にのみ測定を実施するようにすることは複数の理由からして好適である。
第一に、対物レンズの焦点に位置する測定点での測定は測定点の広がりをできるだけ小さくすると同時にできるだけ高い局部分解を保証することになる。
さらに、測定に際しては、測定ビームの顕微鏡通過時に回折効果が生ずることに起因する測定誤差が光波干渉計のデータに現れることがある。
【0013】
たとえば、単色ビームのフォーカシングは位相ずれを生ずることがあるとのことは公知である。このいわゆるGuoy効果はフォーカシングの程度に依存しており、フォーカシングが大きければ位相の変化も大きくなるとの相関性が存在している。
ただし、冒頭に述べたように、光波干渉計にあってはまさしく、表面にフォーカスされた測定ビームと物体表面によって反射された測定ビームとの位相差が物体表面の運動速度の算定に利用される。それゆえ、Guoy効果による位相の変化は位相差の算定に誤差を生じ、したがって光波干渉計の測定データに誤差を生ずる。
また、Guoy効果による測定誤差の大きさは測定ビームのフォーカシングの程度に依存しているのみならず、測定ビームを反射する物体の表面が対物レンズの焦点からどれだけ離れているかにも依存している。焦点と測定ビームを反射する物体表面との間の距離が大きくなればなるほど、距離が変化する際のGuoy効果に起因する測定誤差はそれだけいっそう大きく変化することとなる。
焦点におけるGuoy効果による測定誤差の変化は0である。つまり、測定ビームを反射する表面と焦点との間隔が僅かであれば測定誤差の変化は非常に僅かにすぎず、一般に無視することができる。したがってGuoy効果による測定誤差の補正は対象の測定点が対物レンズの焦点に位置していれば極めて正確に行なうことができる。というのも、この場合には物体の運動または測定機器の不正確性、振動または衝撃によって引き起こされ得る、対象の測定点と焦点との間の間隔の変化は、前述したように、Guoy効果による測定誤差の僅かな変化を結果するにすぎないからである。したがって、Guoy効果による測定誤差が既知であれば、物体の測定点が焦点に位置している限り、高い精度でそれを補正することが可能である。
他方、物体の測定点が焦点に位置していない場合には、物体の測定点と対物レンズの焦点との間の間隔の小さな変化でさえも、Guoy効果による測定誤差の著しく大きな変化をもたらす。したがって、焦点外におけるGuoy効果による測定誤差が既知であっても、その補正は不正確にしか行うことができない。というのも、物体上の測定点と対物レンズの焦点との離間間隔の算定の不正確性がGuoy効果による測定誤差の算定に比較的大きな不正確性をもたらすからである。
実際の適用にとってはこのこと、つまり光波干渉計の測定データのGuoy効果に起因する測定誤差は対象が焦点に位置している場合にのみ現実的に補正することが可能であるという点が重要である。
【0014】
したがって、好適な実施形態の1つにおいて、本発明による装置は、光波干渉計の測定データの測定誤差、特に前述したGuoy効果に起因する誤差の補正に使用される補正装置を光波干渉計と接続させている。
光波干渉計の測定データのGuoy効果に起因する誤差は−−対象の測定点が対物レンズの焦点に位置している限り−−測定ビームのフォーカシングの程度に基本的に依存している。
このことから、Guoy効果に起因する測定誤差の補正は以下の方法で実施することができる:
【0015】
先ず、開口数の小さい対物レンズ、つまり開口数の大きい対物レンズに比較して測定ビームのフォーカシングが僅かな対物レンズを用いて、較正対象たとえば圧電振動子が測定される。圧電振動子は外部の電気的な励起によって振動し、これが本発明による装置によって光波干渉計で測定される。対物レンズの開口数が小さいことから、Guoy効果に起因する測定誤差も無視することができる。したがって、この光波干渉計の測定データにはGuoy効果に起因する極めて僅かな測定誤差しか生じていない。
続いて新たに測定が実施され、この測定に際して、Guoy効果に起因する測定誤差を無視することのできない開口数の大きい対物レンズが使用される。双方の測定を比較することにより、開口数の大きい対物レンズに関する較正を算定することができる。
【0016】
したがって、本発明による装置の補正装置が、光波干渉計のデータのGuoy効果に起因する測定誤差の補正に利用される較正データを含んでいると好適である。
一般に顕微鏡は開口数の相違する複数の対物レンズを備えているため、1つの顕微鏡で、顕微鏡を通してフォーカスされる測定ビームをさまざまに拡大ないし集束させることが可能である。
したがって、さらに別の好適な実施形態において、本発明による装置は開口数の異なる少なくとも2つの対物レンズを備えており、これらは選択的に双方のうちの一方が顕微鏡の光路に差し込まれるようにして配置されている。そのため、対物レンズは通常1枚の回転プレート上に配置されており、回転プレートの回転によって所望の対物レンズが顕微鏡の光路に差し込まれるようになされている。
【0017】
光波干渉計のデータのGuoy効果に起因する測定誤差は基本的にフォーカシングの程度に依存し、したがって、使用される対物レンズにも基本的に依存しているため、物体の測定点が対物レンズの焦点に位置している限り、前述した方法で、開口数の異なる種々の対物レンズにつきそれぞれの較正データセットを作成することが可能である。
したがって、本発明の好適な実施形態は、装置の対物レンズに関する較正データセットを格納した較正データバンクを備えているのが好適である。補正装置は使用される対物レンズに応じて当該較正データセットを較正データバンクからセレクトし、当該較正データに依拠して光波干渉計の測定データの測定誤差を補正するように形成されているのが好適である。
較正データバンクからの較正データのセレクトはたとえば、ユーザが使用される対物レンズの特性データたとえば焦点距離または対物レンズの番号を補正装置に入力し、これに応じて補正装置が当該較正データセットをセレクトすることによって行なうことができる。
ただし、たとえば、使用される対物レンズを識別して当該信号を補正装置に出力する識別装置を顕微鏡に配備し、補正装置は、与えられたこの当該信号に応じて、使用される対物レンズに対応した較正データセットをセレクトし、このデータセットによって光波干渉計の測定データの測定誤差の補正を実施するようにした自動補正方式も同じく考えることができる。
【0018】
さらに別の好適な実施形態において、本発明による装置の共焦点オートフォーカス顕微鏡はフォーカス制御装置と接続された評価装置を備えている。この評価装置はフォーカス制御装置の制御信号を評価しおよび/または評価されたまたは未評価の制御信号を記憶する。
フォーカス制御装置は、フォーカス検出器の信号に応じ、測定物体の測定点が対物レンズの焦点に位置するようにフォーカス調整装置を制御する。したがって、フォーカス制御装置の制御信号はオートフォーカシング前の対物レンズの焦点と物体の測定点との間の間隔を表す尺度である。特に、物体上の異なった場所にある複数の測定点が測定される走査測定方式にあっては、こうして、物体の高さ勾配を作成することができる。
1つの測定点のフォーカシング後に第二の測定点を焦点に位置させるために必要なフォーカス制御装置の制御信号はこれら2つの測定点の高さ差を表す尺度である。それゆえ、並列した多数の測定点によって物体を走査することにより、測定点相互の間の相対高さ差を算定することができる。
したがって、さらに別の好適な実施形態において、本発明による装置の共焦点オートフォーカス顕微鏡は走査共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されている。この顕微鏡は、共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に配置された少なくとも1つの光学的変位手段を備えている。この光学的変位手段によって測定ビームを変位および/または偏向させることができるため、測定ビームを物体上の異なった場所にある複数の測定点に選択的に集束させることができる。
さらに、物体移動装置によって物体を顕微鏡に対して相対的に運動させることによっても物体上の異なった場所にある複数の測定点に選択的に測定ビームを向けることが可能である。所望の測定点の配置に応じ、3つの空間方向の任意の1方向、ただし好ましくは光波干渉計の測定ビームの光軸に対して垂直方向への直線変位を行なわせることが可能であるが、ただし対物レンズを回転させることも同様に考えることができる。
【0019】
さらに、光学的変位手段と物体移動装置との双方を本発明による装置に設けることも好適である。
本発明の1つの実施形態における走査共焦点オートフォーカス顕微鏡はさらに、光学的変位手段および/または物体移動装置と連携するスキャナ制御装置を備えている。この場合、スキャナ制御装置は、物体上の異なった場所にある少なくとも2つの測定点に選択的に測定ビームがフォーカスされるように、前述した手段/装置を制御する。測定さるべき測定点が測定開始前に定められて、特にスキャナ制御装置の測定点データバンクに記憶されているのが好適である。
【0020】
共焦点オートフォーカス顕微鏡が走査共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されているこの実施形態において、評価装置はさらに光波干渉計およびスキャナ制御装置と接続されていると共に記憶装置を備え、こうして、フォーカス制御装置のデータ、スキャナ制御装置のデータおよび光波干渉計のデータを格納することができるのが好適である。フォーカス制御装置のデータはフォーカス制御装置の評価されたまたは未評価の制御信号からなっていてよく、スキャナ制御装置のデータはスキャナ制御装置の評価されたまたは未評価の制御信号からなるかまたはスキャナ制御装置の測定点データバンクのデータからなっていてよい。同じく光波干渉計のデータは光波干渉計の評価されたまたは未評価の測定データからなっていてよい。
したがって、フォーカス制御装置のデータは測定点の高さつまりz空間座標に関する情報を含み、他方、スキャナ制御装置のデータは顕微鏡の物体面に対して基本的に平行な1つの空間平面内の測定点の位置つまり(x,y)空間座標に関する情報を含んでいる。
重要なことは、記憶装置が物体の各々の測定点に関するフォーカス制御装置のデータ、スキャナ制御装置のデータおよび光波干渉計のデータを互いに対応させていることである。
それゆえ、各々の測定点につき、測定点の場所での物体の運動に関するデータと測定点の(x,y,z)空間座標に関するデータとを含む1つのデータセットが存在している。
この場合、評価装置は補正装置を経て光波干渉計と接続されており、そのため光波干渉計の格納データはすでに補正済みであり、つまりもはやGuoy効果に起因する測定誤差を含んでいないのが好適である。
【0021】
光波干渉計はレーザドップラー振動計として形成されているのが好ましい。
本発明による装置において顕微鏡は共焦点顕微鏡として形成されているため、非共焦点ビーム、つまり対物レンズの焦点外から顕微鏡の光路に達するビームは空間フィルタによって基本的に遮光される。これは、物体によって反射されて、空間フィルタを通過した後の測定ビームの強度は物体の測定点が焦点に位置している場合に最大であるとのことを意味している。物体の測定点が対物レンズの焦点外にあれば、物体によって反射された測定ビームは空間フィルタによって遮光され、しかも測定点が対物レンズの焦点から離れていればいるほどそれだけいっそう遮光されることとなる。したがって、物体を対物レンズの焦点を通して運動させれば、物体の測定点が対物レンズの焦点に位置している箇所で最大値を示す、反射された測定ビームの強度分布が得られる。したがって、この反射された測定ビームの強度の最大値を物体の測定点の焦点ポジションの算定に使用することができる。
【0022】
フォーカス検出器は光検出器として形成されているのが好ましい。この場合、装置が測定ビームのビームスプリッタを備え、このビームスプリッタは測定ビームのビームスプリッタによって出射された測定ビーム成分がフォーカス検出器に当たるようにして装置の光路に配置されているのが特に好適である。
測定ビームのビームスプリッタは絞りタイプの光学素子と光波干渉計との間の装置光路に配置されていてよいことから、測定ビームのビームスプリッタを通して出射されなかった測定ビーム成分は光波干渉計に入射される。
【0023】
一般に光波干渉計は運動強度検出器を備えており、これは光波干渉計内で重ねられたビームが運動強度検出器にフォーカスされるようにして光波干渉計の光路に配置されている。この場合、運動強度検出器がさらにフォーカス検出器としても利用されるのが特に好適である。こうした場合には先述したビームスプリッタは不要である。
運動強度検出器は一方で、光波干渉計内で重ねられたビームの位相差の算定と、物体の測定点の運動の算出とに使用され、他方で、運動強度検出器によって自動フォーカシングも実施される。
【0024】
さらに別の好適な実施形態において、少なくとも1つの光学的変位手段は走査反射鏡、特に圧電走査反射鏡として形成されている。
ただし、測定ビームに代えて、物体を顕微鏡に対して相対的に運動させること、特に顕微鏡の物体面内で変位させることおよび/または物体を任意の空間軸を中心にして回転させることも可能であり、こうして、顕微鏡に対して相対位置固定された測定ビームを物体上の異なった場所にある測定点に当てることができる。
これは適切に形成された物体保持装置、好ましくは電動式XYテーブルとして形成された物体保持装置によって達成することができる。
したがって、先述した一連の実施形態は、光波干渉計の測定ビームの光軸に沿った物体の測定点の運動の算定、ならびに物体の測定点の高さ勾配の算定を可能にする。さらに、光学的変位手段ないし物体移動装置に関する既知の制御信号から、振動計の測定ビームに対して垂直な面内における測定点のポジションも決定することができる。それゆえ、任意の測定点につき、(X,Y,Z)空間座標を光波干渉計によって測定されたこの測定点での物体の運動に対応させることができる。
【0025】
さらに、本発明による装置によって、物体に当たる測定ビームの光軸に対して平行でない運動方向の運動、特に、基本的に顕微鏡の物体面内、つまり振動計の測定ビームに対して基本的に垂直な面内で生ずるいわゆる平面内運動も測定することができれば好適である。
このために、顕微鏡のカメラカップリングに載設されると共に他方自らも適切に形成されたカメラカップリングを備え、同所にカメラ、一般にCCDカメラを載設することのできる光学システムを使用することができる。顕微鏡のカメラカップリング部の物体像はこの光学システムの光路を経て第二のカメラカップリングにフォーカスされるため、この物体像は第二のカメラカップリングに接続されたカメラによって撮影することができる。同時にこの光学システムはストロボスコープランプのパルス光を入射させるためのビームスプリッタを内蔵している。ストロボスコープランプは測定さるべき物体が同時に励起されて周期運動する励起周波数に一致したパルス周波数で光パルスを発する。こうして、時間的にずらして撮影されたカメラ画像の評価によって、物体の平面内運動を算定することができる。
【0026】
平面内運動を測定するためのこの光学システムを本発明による装置と組み合わせるのが好適である。このため、本発明による装置は、共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に配置されて共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路からビームの一部を出射させるようにする出射ビームスプリッタを有しているのが好適である。ただしこの場合には、カメラによる物体の面集束ないしストロボスコープランプによる物体の面照明が不可欠であることから、このビームスプリッタは測定さるべき物体と空間フィルタとの間の光路に配置されていなければならない。
【0027】
したがって本発明による装置は、さらに別の光学素子用のカップリング、好ましくは、出射ビームスプリッタを通して出射されたビームがこのカップリングを通して装置から出ることができるようにして本発明による装置に配置されたCマウントカップリングを備えているのが好適である。出射ビームスプリッタとカップリングとの間には出射ビームスプリッタを通して出射されるビームの光路に少なくとも1つの光学素子、特に1つのレンズからなる光学集束系が配置され、この集束系は顕微鏡の物体像がカップリングの領域にフォーカスされるように形成されている。したがってこの光学集束系はカメラカップリングを有した光学顕微鏡における公知の光学集束系と同等である。同所では一般に同じく顕微鏡の物体像が集束系によってカメラカップリングの領域にフォーカスされることから、フォーカスされた物体像はたとえば載設されたカメラによって撮影することができる。
かくてカップリングには、平面内運動を測定するための前述したカメラ付き光学システムを載設することができる。
ただし、カメラおよび/またはストロボスコープランプを装置内に組込むことも同じく可能である。
【0028】
上述した本発明による装置を用いて、物体の光学的測定(振動測定)を行うための方法も本願の権利の対象としており、そのような測定方法は、前記光波干渉計の測定ビームが共焦点オートフォーカス顕微鏡として構成された顕微鏡によって物体にフォーカスされるステップと、前記共焦点オートフォーカス顕微鏡のフォーカス調整装置が前記フォーカス検出器から測定信号を受け取る前記フォーカス制御装置によって、物体の測定点がこの顕微鏡の対物レンズの焦点に位置するように制御されるステップと、前記光波干渉計とこの光波干渉計に接続された評価装置とにより光波干渉計の測定ビームの方向における物体の振動が測定されるステップとからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付の唯一の図面を参照し、本発明の実施形態の1つを詳細に説明、解説する。
図1は物体1を測定するための本発明による装置の構造を概略的に示したものである。本装置はレーザドップラー振動計として形成された光波干渉計を含んでいる。レーザ2は装置の光路を経て物体1にフォーカスされる測定ビーム3をつくりだし、物体1によって反射または散乱された測定ビームはふたたび装置の光路を経て光波干渉計に入射する。同所で、2つのビームはマッハ-ツェーンダ干渉計のような公知の方法で3つのビームスプリッタ4,5,6と1つの反射鏡7により光検出器8で重ねられる。
光検出器8の出力信号は復調器8aに転送される。復調器8aはそれ自体公知の方法で光検出器8の出力信号から光波干渉計内部で重ねられたビームの位相ずれないしその時間カーブを求め、それを補正装置9に転送する。
【0030】
補正装置9は復調器8aの信号の先述したGuoy効果に起因する測定誤差を補正するように形成されている。
このため補正装置9は、顕微鏡の対物レンズ12に関する較正データが記憶された(不図示の)記憶装置を内蔵している。較正データは先述した方法で求められている。補正装置9はこうして、各々の測定点につき較正データを用い、光波干渉計で測定された測定点での物体1の運動の補正を実施し、補正されたデータを評価装置10に転送する。
評価装置10は補正装置の出力データからそれ自体公知の方法で測定点での物体1の運動を算出する。評価装置10は評価されたデータおよび/または補正装置の出力データを格納する(不図示の)記憶装置を内蔵している。
【0031】
測定ビーム3は共焦点オートフォーカス顕微鏡を経て物体1の測定さるべき測定点にフォーカスされる。顕微鏡は遮光絞り11を備えており、この絞りは顕微鏡の対物レンズ12の焦点外から入射する非フォーカスビームを基本的に遮光するため、それらのビームは光波干渉計の光路に入射することはない。
非フォーカスビームとは特に、対物レンズ12の焦点に位置しない物体の測定点から反射ないし散乱によってふたたび顕微鏡の光路に入射される測定ビームのことである。
測定ビーム3は顕微鏡の光路において、2つの走査反射鏡13,14、1つのレンズ15および出射ビームスプリッタ16ならびに対物レンズ12を経て測定物体1にフォーカスされる。測定ビーム3は走査反射鏡13と14を経てそれぞれ1つの空間方向に偏向されるが、この場合、これらの2つの空間方向は2つの偏向運動の組合わせによって任意の空間方向への測定ビームの偏向が可能となるように互いに位置している。これはたとえば2つの走査反射鏡13,14の回転軸が互いに垂直をなすことによって達成することができる。
したがって、走査反射鏡13と14による測定ビーム3の偏向によって、物体1上の異なった場所にある測定点に測定ビーム3を向けることができる。
図1に示した実施形態において、光検出器8は光検出器8で重ねられたビームの位相ずれの測定に使用されるだけでなく、同じく、オートフォーカス機能用のフォーカス検出器としても用いられる。
【0032】
前述したように、本発明による装置において、光波干渉計の測定ビーム3は同じく顕微鏡のオートフォーカス機能用のフォーカスビームとしても使用される。共焦点オートフォーカス顕微鏡において、フォーカスビームは測定さるべき測定点が焦点に位置していれば最大強度を有し、測定さるべき測定点が顕微鏡対物レンズの焦点から外れればその強度は低下する。
これは測定点で反射されて、絞り11を通過した後の測定ビーム3にも当てはまることから、この測定ビームは物体1の測定点が対物レンズ12の焦点に位置している場合に最大強度を有している。
【0033】
したがって、本発明による本実施形態は、物体1の測定点で反射されて、絞り11を通過した後の測定ビーム3の強度を測定するために、光検出器8と接続された振幅評価装置8bを有している。この振幅評価装置は光検出器8の測定信号、つまり光検出器8で重ねられたビームの測定信号のそれ自体公知の方法による変調振幅の算定を実施するように形成されている。
【0034】
光検出器8の測定信号の振幅は複数の因子によって決定されている。この場合に重要なのは、レーザ2から発射されて、ビームスプリッタ4と6ならびに反射鏡7を経て光検出器にフォーカスされた参照ビームと、物体1によって反射されて、顕微鏡の光路を通り、絞り11を通過した後に、ビームスプリッタ5と6を経て光検出器8にフォーカスされた反射測定ビームとの重なりである。
光検出器の信号強度は基本的にこれら2つのビームの位相ずれ、つまりそれらの干渉に依存している。位相ずれが変化すれば、光検出器の信号強度も変化し、強め合う干渉が存在すれば最大振幅に達し、弱め合う干渉が存在すれば最小振幅に達する。したがって、振幅それ自体は絞り11の通過後の反射測定ビームの強度の尺度としては適していない。
ただし、最小振幅と最大振幅の差は、先述したように、本発明による装置の共焦点特性により、測定ビーム3を反射する物体1の測定点と対物レンズ12の焦点との距離に依存している。この差は測定点が焦点に位置していれば最大であり、測定点が焦点から離れていれば減少する。したがって、光検出器8の信号強度の最小振幅と最大振幅の差を測定することにより、絞り11の通過後の反射測定ビーム3の強度を求めることができる。
したがって、最小振幅と最大振幅の差を算定するには、参照ビームと反射ビームとの間の位相がずらされなければならず、しかも少なくとも測定ビームの1周期分だけずらされなければならない。この位相ずらしは異なった方法で行なうことができる。
【0035】
そこで、たとえばレーザ2と物体1との間の光路長を、レーザ2と光検出器8との間の参照ビームの光路長に比較して、測定ビーム3の1波長分だけ変化させることができる。これはたとえば物体を光軸方向Aに沿ってずらすことによって可能である。これによって、反射された測定ビーム3と参照ビームとの光路長の比が変化する。これは位相変化と同じであり、つまり光軸方向Aに沿った1波長分の物体1のずれは光検出器8の信号を変調する。
【0036】
さらに、振動計は、やや異なった周波数を有する2つの光学波が重ねられる、それ自体公知のヘテロダイン干渉計として形成されていてもよい。これはたとえば、反射鏡7とビームスプリッタ6との間に、光波の周波数をずらすことのできる光学部品たとえば音響光学変調器を光路に組込むことによって達成することができる。
この場合には光検出器8に双方の波の差周波数(いわゆるヘテロダイン周波数)を有した信号が生ずる。つまり、光検出器8の信号は物体1をずらさなくとも変調されることとなる。この変調の振幅差も物体の測定点が対物レンズ12の焦点に位置していれば最大であり、測定点が焦点から外れれば減少する。
いずれの方式にあっても、振幅評価装置8bによって光検出器8の信号の変調振幅の算定が行われ、こうして、物体1の測定点で反射されて、絞り11を通過した後の測定ビーム3の強度に関する尺度を表す結果が得られる。
【0037】
この変調振幅は振幅評価装置8bからフォーカス制御装置17に転送される。
フォーカス制御装置17はフォーカス調整装置18と接続されている。フォーカス調整装置18は、本実施例において、電子制御式のポジショニングキャリッジとして形成されており、これは圧電素子を経て、物体に当たる測定ビーム3の光軸方向Aに沿って対物レンズ12を移動させることができる。
フォーカス制御装置17は振幅評価装置8bから与えられた信号が最大になるようにフォーカス調整装置18を制御する。これによって、物体1の測定点が対物レンズ12の焦点に位置することが保証される。
フォーカス制御装置17は、補正装置9もそうであるが、評価装置10と接続されている。評価装置10はフォーカス調整装置17の制御信号を受け取り、こうして、物体1の測定点を対物レンズ12の焦点に位置させるために必要な、フォーカス調整装置18による対物レンズ12の移動距離を算定することができる。物体1上の異なった場所にある複数の点が順次測定される走査測定方式にあっては、こうして、移動距離の比較によって測定点の高さ勾配を求めることができる。
【0038】
したがって、図1に示した実施形態において、評価装置10の記憶装置は各々の測定点に、一方で、その他の測定点と比較した相対高さを対応させ、他方で、光波干渉計によって測定された物体1の測定点の運動を対応させることとなる。
評価装置10はさらに、走査反射鏡13と14の(不図示の)スキャナ制御装置と接続されている。このスキャナ制御装置は、個々の測定プロセスにつき、物体1上のそれぞれ前以てセレクトされた測定点に測定ビーム3が当たるように双方の走査反射鏡13と14の傾倒姿勢を制御する。スキャナ制御装置はそのために必要な制御信号を評価装置10に転送する。こうして、評価装置10は測定面Bつまり測定ビーム3の光軸方向Aに対して垂直をなす面内における測定点相互の相対ポジションも求めることができる。
これによって記憶装置には測定点に関して、測定点の(x,y,z)空間座標と、光波干渉計によって測定された測定点の運動とが互いに対応されて格納されることとなる。
【0039】
図1に示した実施例によって、測定ビーム3の光軸方向Aに沿ってではなく、特に、顕微鏡の物体面B内で生ずる平面内運動も求めることができるように、本実施例はさらにCCDカメラ19、ストロボスコープランプ20および、ストロボスコープランプ20のパルス光を顕微鏡の光路に入射するためのストロボスコープのビームスプリッタ21を含んでいる。こうして、ストロボスコープランプ20のパルス光はストロボスコープ・ビームスプリッタ21から出射ビームスプリッタ16と対物レンズ12とを経て物体1にフォーカスされる。
物体1によって反射ないし散乱されたストロボスコープランプ20の光パルスは対物レンズ12、出射ビームスプリッタ16、ストロボスコープのビームスプリッタ21ともう一つのレンズ22を経てCCDカメラ19にフォーカスされる。
【0040】
遮光絞り11はストロボスコープランプ20と物体との間の光路、ないし物体とCCDカメラ19との間の光路には位置していないことから、ストロボスコープランプ20による平面の照明とCCDカメラによる平面の撮像とが可能である。したがって、CCDカメラ19によって時間的にずらして撮影された画像の比較から、それ自体公知の方法で、物体の平面内振動を算定することができる。このために本装置はさらに、評価装置10と接続された(不図示の)平面内運動評価装置を有している。
【0041】
これにより、評価装置10の記憶装置には、各々の測定点につき、(x,y,z)空間座標と測定ビーム3の光軸方向Aに沿った運動だけでなく、平面内運動評価装置によって算定された物体面B内での運動情報も格納されることとなる。
測定の時間的フローについては複数の変法が可能である。したがって一例として以下のステップを通じて測定を行うことができる:
1.)測定ビームは先ず走査反射鏡13と14によって測定さるべき物体1の測定点に向けられて、当該場所情報(x,y座標)が評価装置10に転送される。
2.)対物レンズ12はフォーカス制御装置17とフォーカス調整装置18によって、物体1の測定点が対物レンズ12の焦点に位置するように移動させられ、当該制御信号が高さ情報(z軸)を求めるために評価装置10に転送される。この場合、振幅評価装置8bは、それぞれ測定ビーム3の1波長分だけ物体を変位させた後に、光検出器8の信号の変調振幅を評価し、フォーカス制御装置17は変調振幅が最大となるようにフォーカス調整装置18を制御する。
3.)光波干渉計の測定ビームの光軸に沿った物体1 の測定点の運動が光波干渉計で測定され、その際、補正装置は光検出器8の測定データのGuoy効果に起因する測定誤差を補正し、補正された測定データは測定点での物体1の運動を算定するために評価装置10に転送される。
4.)記憶装置はこの測定点につき、(x,y,z)空間座標とこの測定点の運動データとからなるデータセットを格納する。
この測定プロセスは予定された各々の測定点につき反復される。
【0042】
続いて、ストロボスコープランプ20とCCDカメラ19によって平面内測定を行うことができ、その際、求められた平面内測定データは評価装置10によってすでに格納されていた測定データに重ねられ、こうして、各測定点につき、既知の情報に加えてさらに顕微鏡の物体面B内の運動も格納される。
一般に物体1はこうした測定のため(不図示の)外部励起装置によって励起されて周期的に振動する。
上述した測定プロセスにおいて、この励起を、つまりオートフォーカス機能の間、遮断しておくことを考えることができる。ただし、一般に外部の励起による物体の振動は種々の測定点同士の間の高さ差に比較して小さいことから、物体1をオートフォーカス機能の間も外部の励起によって振動させることも可能である。この場合には、振幅評価装置8bは光検出器8から補正装置9を経て伝達される測定信号に場合により測定物体1の振動に起因する変動があればそれを平均化法によって除去することになろう。
【0043】
したがって、図1に示した本発明による実施例によって初めて、測定ビームが共焦点オートフォーカス顕微鏡を経て物体にフォーカスされる光波干渉計のデータの、Guoy効果に起因する測定誤差を補正することが可能になる。さらにまた、測定点の場所座標も、光波干渉計の光軸に沿った運動の運動データも、またさらに顕微鏡の物体面内の平面内運動の運動データも1つの装置によって求めることが初めて可能になる。
【0044】
したがって、本装置は総合的な、しかもこの精度では従来不可能であったミニチュア部品の解析を可能にする。特にマイクロシステム技術におけるシミュレーションモデルと実際のテスト物体との間の比較には、各測定点につき、(x,y,z)空間座標の算定も、それらの測定点での光波干渉計の光軸に沿った運動の運動データの算定も共に可能にするデータセットが不可欠である。本発明はこれを高い精度で保証することができる。
【0045】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】物体を測定するための本発明による装置の概略的構造を示す図
【符号の説明】
【0047】
1:物体
3:測定ビーム
8:フォーカス検出器
9:補正装置
11:空間フィルタ(絞り、ピンホール)
12:対物レンズ
17:フォーカス制御装置
18:フォーカス調整装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それ自身の測定ビーム(3)の光軸方向(A)に沿った運動を測定するための光波干渉計と、対物レンズ(12)ならびにフォーカス調整装置(18)を備える顕微鏡とからなり、フォーカス調整装置(18)は物体(1)と対物レンズ(12)の焦点との相対位置を変更できるように形成され、前記光波干渉計と前記顕微鏡とは光波干渉計の測定ビーム(3)が顕微鏡の光路を経て物体(1)上にフォーカスするように互いに対応させられている、物体(1)の光学的測定を行うための装置において、
前記顕微鏡は共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成されて、フォーカス制御装置(17)と、フォーカス検出器(8)と、フォーカスビームをつくり出すための光源と、対物レンズ(12)の焦点外の点から対物レンズ(12)に入射される非フォーカスビームを遮光するように共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に配置されている空間フィルタ(11)とを備え、かつ
前記顕微鏡は、光源から発したフォーカスビームが対物レンズ(12)を経て物体(1)とフォーカス検出器(8)とにフォーカスされるとともに、前記フォーカス調整装置(18)とフォーカス検出器(8)とに連携しているフォーカス制御装置(17)に前記フォーカス検出器(8)が測定信号を出力することで、この測定信号に応じて前記フォーカス制御装置(17)が物体(1)の測定点が対物レンズ(12)の焦点に位置するようにフォーカス調整装置(18)を制御するように構成され、かつ
前記光波干渉計はフォーカスビームをつくり出すための光源であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記光波干渉計と接続されて、この光波干渉計の測定データの測定誤差を補正するように形成された補正装置(9)が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記補正装置(9)は、前記光波干渉計の測定データの測定誤差を補正するために用いる較正データを含んでいることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記顕微鏡は少なくとも1つの第二の対物レンズを有し、第一と第二の対物レンズとは第二の対物レンズが選択的に第一の対物レンズに代替し得るようにして顕微鏡に配置され、
前記補正装置(9)は、それぞれ2つの対物レンズの一方に対応した少なくとも2つの較正データセットが記憶された較正データバンクを内蔵し、
前記補正装置(9)は前記較正データセットを選択的にセレクトし得るように構成され、前記補正装置(9)はセレクトされた較正データセットによって光波干渉計の測定データの補正を行うことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記顕微鏡は、フォーカス制御装置(17)と接続されるとともにフォーカス制御装置(17)の制御信号を評価または記憶あるいは評価して記憶するように形成された評価装置(10)を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記顕微鏡は走査共焦点オートフォーカス顕微鏡として形成され、
この顕微鏡はスキャナ制御装置と光学的変位手段(13,14)
または物体移動装置あるいはその両方を備え、
前記スキャナ制御装置は光学的変位手段(13,14)または物体移動装置あるいはその両方と連携し、制御信号によって、測定ビームが選択的に物体(1)上の異なった場所にある少なくとも2つの測定点にフォーカスされるように光学的変位手段(13,14)または物体移動装置あるいはその両方を制御し、かつ
前記光学的変位手段(13,14)はこの共焦点オートフォーカス顕微鏡の光路に配置されるとともに、スキャナ制御装置の制御信号に応じて、測定ビームが選択的に物体(1)上の異なった場所にある少なくとも2つの測定点にフォーカスされるように測定ビーム(3)を変位および/または偏向させるように形成され、
前記物体移動装置は、スキャナ制御装置の制御信号に応じて、測定ビーム(3)が選択的に物体(1)上の異なった場所にある少なくとも2つの測定点にフォーカスされるように物体(1)を測定ビーム(3)に対して相対的に移動または回転あるいは移動と回転をさせるように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記評価装置(10)は前記光波干渉計およびスキャナ制御装置と接続されているとともに、
前記評価装置(10)は、前記フォーカス制御装置(17)の制御信号またはフォーカス制御装置(17)の評価された制御信号あるいはその両方からなるフォーカス制御装置(17)のデータと、前記スキャナ制御装置の制御信号またはスキャナ制御装置の評価された制御信号あるいはその両方からなるスキャナ制御装置のデータと、前記光波干渉計の測定データまたは光波干渉計の評価された測定データあるいはその両方からなる光波干渉計のデータとを格納する記憶装置を内蔵し、
その際前記記憶装置は物体(1)の各々の測定点につき、フォーカス制御装置のデータ、スキャナ制御装置のデータおよび光波干渉計のデータを互いに対応させていることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記評価装置(10)は補正装置(9)を経て光波干渉計と接続されており、前記記憶装置は光波干渉計の補正済みの測定データからなる光波干渉計のデータを格納するように形成されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光波干渉計はレーザドップラー振動計であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記フォーカス検出器(8)は光検出器として形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
測定ビームのビームスプリッタが備えられ、この測定ビームのビームスプリッタはそれによって出射された測定ビーム成分がフォーカス検出器(8)に当たるように装置光路に配置されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記測定ビームのビームスプリッタは前記空間フィルタ(11)と光波干渉計との間の装置光路に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光波干渉計は、この光波干渉計内で重ねられたビームがそれ自身にフォーカスされるように光波干渉計の光路に配置されている運動強度検出器を備え、
この運動強度検出器は同時に前記フォーカス検出器(8)であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの光学的変位手段は走査反射鏡(13,14)として形成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記フォーカス調整装置(18)は対物レンズ(12)のポジショニングキャリッジとして形成されて、光波干渉計の測定ビームの光軸方向(A)に沿って対物レンズ(12)を移動させることができるように形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記顕微鏡はこの顕微鏡の光路に配置されてこの顕微鏡の光路からビームの一部を出射させるための出射ビームスプリッタ(16)を有し、
出射ビームスプリッタ(16)が物体(1)と空間フィルタ(11)との間の光路に配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
別の光学素子用のカップリングが備えられ、このカップリングは出射ビームスプリッタ(16)によって出射されるビームの光路に位置するようにして配置され、かつ
少なくとも1つの光学素子からなる光学集束系が備えられ、この光学集束系は出射ビームスプリッタ(16)と出射ビームスプリッタ(16)によって出射されるビームの光路に配されたカップリングとの間に配置されて、顕微鏡の物体像がこのカップリングの領域にフォーカスされるように形成されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
カメラ(19)と物体(1)の面照明用の照明装置が備えられ、前記カメラ(19)または照明装置あるいはその両方は出射ビームスプリッタ(16)によって出射されるビームの光路に配置されていることを特徴とする請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
前記照明装置はストロボスコープ照明装置(20,21)として形成され、かつ平面内運動評価装置が備えられ、この平面内運動評価装置は前記カメラ(19)と接続されて、このカメラ(19)によって時間的にずらして撮影された複数の画像を評価し、測定ビーム(3)に対して垂直な平面内における物体(1)の運動を検出し得るように形成されていることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の装置による物体(1)の光学的測定を行うための方法において、
前記光波干渉計の測定ビーム(3)が共焦点オートフォーカス顕微鏡として構成された顕微鏡によって物体(1)にフォーカスされるステップと、
前記共焦点オートフォーカス顕微鏡のフォーカス調整装置(18)が前記フォーカス検出器(8)から測定信号を受け取る前記フォーカス制御装置(17)によって、物体(1)の測定点がこの顕微鏡の対物レンズ(12)の焦点に位置するように制御されるステップと、
前記光波干渉計とこの光波干渉計に接続された評価装置(10)とにより光波干渉計の測定ビーム(3)の方向における物体(1)の振動が測定されるステップと、
からなることを特徴とする方法。
【請求項21】
さらに、前記光波干渉計の測定データの補正が光波干渉計ならびに評価装置(10)と接続された前記補正装置(9)によって実施されるステップを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光波干渉計の測定データの補正は以下のステップ、すなわち
前記オートフォーカス顕微鏡の対物レンズ(12)の特性データを求めるステップと、
複数の対物レンズ特性データにつきそれぞれ1つの対物レンズ固有較正データセットを含んでいる補正装置(9)の較正データバンクから、対物レンズ(12)の特性データによって対物レンズ固有較正データセットをセレクトするステップと、
前記光波干渉計の測定データにGuoy効果に起因して生ずる測定誤差を補正装置(9)により対物レンズ固有較正データセットに依拠して補正するステップと、
を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−10693(P2006−10693A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181363(P2005−181363)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(598126324)ポリテック・ゲー・エム・ベー・ハー (8)
【氏名又は名称原語表記】POLYTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】POLYTECPLATZ 1‐7, D‐76337 WALDBRONN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】