説明

自動車およびその制御方法

【課題】先行車両に追従する定速走行中の制御時における車両のエネルギ効率の向上を図る。
【解決手段】レーダクルーズコントロール制御によって車両に比較的大きな制動力が要求されているときには、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれたときより小さな速度V2を置き換え車速Vchに設定し(S230)、車速Vが置き換え車速Vch以上のときには、要求制動トルクTr*の範囲内でモータを回生制御し(S150〜S170)、車速Vが置き換え車速Vch未満のときには、モータによる制動トルク(回生トルク)を油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換える(S180,S190)。これにより、レーダクルーズコントロール制御中の車両のエネルギ効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関し、詳しくは、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに車速と先行車両との車間距離とに基づいて目標車速までの範囲内で先行車両に接触せずに走行する自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、走行用のモータと、油圧を制御することにより所望の制動力を付与可能な液圧ブレーキとを備える自動車において、車両に制動力を付与するときには、車速が所定車速未満に至るまではモータを回生制御することによる回生制動力を伴って制動力を付与し、車速が所定車速未満に至ったときにモータによる回生制動力を液圧ブレーキによる制動力に徐々に置き換えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、こうした制動力の置き換えにより、極低車速における回生制動力の低下に基づく制動力不足を抑制している。
【特許文献1】特開2005−329740号公報
【0003】
また、走行用のモータと、走行用の動力を出力可能なエンジンとを搭載するハイブリッド車において、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに車速と先行車両の走行状態とに基づいて目標車速までの範囲内で先行車両に接触せずに走行する際に、制動力を付与するときには、モータを回生制御することによる回生制動力を伴って制動力を付与するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このハイブリッド車では、定速走行時の制動時にモータによる回生制動力を用いることにより、制動エネルギを回生し、車両の燃費の向上を図っている。
【特許文献2】特開2007−186045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに車速と先行車両の走行状態とに基づいて目標車速までの範囲内で先行車両に接触せずに走行する自動車において、定速走行中の制動時に、車速が所定車速未満に至るまではモータを回生制御することによる回生制動力を伴って制動力を付与し、車速が所定車速未満に至ったときにモータによる回生制動力を液圧ブレーキによる制動力に徐々に置き換えることを考えることもできるが、定速走行中の制動は運転者のブレーキ操作による制動とは異なるため、運転者の運転フィーリングを十分に考慮する必要はない。このため、定速走行中の制動を運転者のブレーキ操作による制動に比してエネルギ効率が高いものとすることも可能である。
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、先行車両に追従する定速走行中の制御時における車両のエネルギ効率の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
走行用の動力を出力する電動機と、車両に制動力を付与する制動力付与手段と、先行車両との距離である車間距離を検出する車間距離検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに前記検出された車速と前記検出された車間距離とに基づいて前記目標車速までの範囲内で前記先行車両に接触せずに走行するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する定速走行制御手段と、を備える自動車であって、
前記定速走行制御手段は、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには前記検出された車速が第1の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に前記検出された車速が前記第1の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御し、前記検出された車間距離に基づいて制動力を付与するときには前記検出された車速が前記第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴って前記検出された車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に前記検出された車速が前記第2の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えて前記検出された車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する手段である、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動車では、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第1の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御する。これにより、極低車速における回生制動力の低下に基づく制動力不足を抑制することができると共に運転者の運転フィーリングを良好にすることができる。一方、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴って先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第2の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えて先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御する。即ち、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときの車速より小さな車速に至ったときに電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えるのである。これにより、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときに電力として回収するエネルギを多くすることができ、車両のエネルギ効率を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明の自動車において、前記定速走行制御手段は、前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換える際には、前記電動機による回生制動力が徐々に前記制動力付与手段による制動力に置き換わるよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換える際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の自動車において、内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力時に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、を備えるものとすることもできる。
【0011】
本発明の自動車の制御方法は、
走行用の動力を出力する電動機と、車両に制動力を付与する制動力付与手段と、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに車速と先行車両との車間距離とに基づいて前記目標車速までの範囲内で前記先行車両に接触せずに走行する定速走行を実行可能な自動車の定速走行時に車両に制動力を作用させる際の制御方法であって、
運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に車速が前記第1の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御し、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには車速が前記第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴って先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に車速が前記第2の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えて先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の自動車の制御方法では、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第1の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御する。これにより、極低車速における回生制動力の低下に基づく制動力不足を抑制することができると共に運転者の運転フィーリングを良好にすることができる。一方、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴って先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第2の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えて先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御する。即ち、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときの車速より小さな車速に至ったときに電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えるのである。これにより、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときに電力として回収するエネルギを多くすることができ、車両のエネルギ効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動輪63a,63bや図示しない従動輪のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、車両の駆動系全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0015】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0016】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0017】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0018】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0019】
ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪63a,63bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したり、ブレーキペダル85の踏み込みに無関係に、駆動輪63a,63bや従動輪に制動トルクが作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。以下、ブレーキアクチュエータ92の作動により駆動輪63a,63bや図示しない従動輪に制動力を作用させる場合を油圧ブレーキと称する。ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)94により制御されている。ブレーキECU94は、図示しない信号ラインにより、駆動輪63a,63bや従動輪に取り付けられた図示しない車輪速センサからの車輪速や図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル85を踏み込んだときに駆動輪63a,63bや従動輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル83を踏み込んだときに駆動輪63a,63bのいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU94は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってブレーキアクチュエータ92を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,後述するレーダクルーズコントロール制御による走行を指示するクルーズコントロールスイッチ100からのスイッチ信号SW,要求車速設定スイッチ102からのレーダクルーズコントロール制御による走行時の要求車速Vd,車間距離センサ104からの先行車両との車間距離Lngなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、シフトポジションセンサ82により検出するシフトレバー81のポジションとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),ドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。また、車間距離センサ104としては、レーザ光や電磁波,超音波などを用いて先行車両との車間距離Lngを計測するものや、GPS衛星からの情報に基づいて車間距離Lngを検出するものなどを用いることができる。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0022】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、クルーズコントロールスイッチ100がONされたときには、運転者によって設定される要求車速Vdの範囲内で先行車両に追従走行するレーダクルーズコントロール制御が実行される。レーダクルーズコントロール制御が実行されているときには、先行車両との車間距離Lngが大きいときに要求車速Vdで定常走行し、車間距離Lngが小さいときに要求車速Vd以下の車速で追従走行するようリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。このレーダクルーズコントロール制御は、実施例では、レーダクルーズコントロールスイッチ100がOFFされたときに加えて、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれたときやシフトポジションがDポジションから変更されたときなどにも解除されるものとした。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に車両に制動力が要求されて減速するときの動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される減速時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。ここで、車両に制動力が要求されるときとしては、運転者によりブレーキペダル85が踏み込まれたときと、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御中に車間距離Lngが減少するとき(車両が先行車両に近づくとき)と、が該当する。なお、車両に制動力が要求されるときには、図2の減速時制御ルーチンと並行して、モータMG1からトルクが出力されずにエンジン22がアイドル回転数Nidlで自立運転するようモータECU40によるモータMG1の制御とエンジンECU24によるエンジン22の制御が実行される。このモータMG1とエンジン22の制御は本発明の中核をなさないから、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0024】
減速時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、ブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBPや車速センサ88からの車速V,モータMG2の回転数Nm2,バッテリ50の入力制限Win,車間距離センサ104からの車間距離Lngなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG2の回転数Nm2は、回転位置検出センサ44により検出されたモータMG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入力制限Winは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したブレーキペダルポジションBPの値を調べる(ステップS110)。この処理は車両に制動力が要求されている理由を調べるものであり、ブレーキペダルポジションBPが0%でないときには、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれて車両に制動力が要求されていると判断し、ブレーキペダルポジションBPが0%のときには、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御によって車両に制動力が要求されていると判断する。ブレーキペダルポジションBPが0%でないときには、ブレーキペダルポジションBPと車速Vとに基づいて車両に要求される制動力として駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求制動トルクTr*を設定する(ステップS120)。要求制動トルクTr*は、実施例では、ブレーキペダルポジションBPと車速Vと要求制動トルクTr*との関係を予め定めて要求制動トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、ブレーキペダルポジションBPと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求制動トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求制動トルク設定用マップの一例を示す。
【0026】
続いて、モータMG2による制動トルク(回生トルク)を油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換える動作を開始する車速としての置き換え車速Vchに速度V1を設定する(ステップS130)。ここで、速度V1としては、モータMG2による制動トルクがモータMG2のトルク指令Tm2*より低下するおそれがある車速の上限速度より若干高い速度として、モータMG2の性能などに基づいて予め定めることができ、例えば、15km/hや17km/hなどを用いることができる。
【0027】
そして、車速Vを置き換え車速Vchと比較し(ステップS140)、車速Vが置き換え車速Vch以上のときには、要求制動トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによってモータMG2の仮トルクTm2tmpに設定すると共に(ステップS150)、バッテリ50の入力制限WinをモータMG2の回転数Nm2で割ることによってモータMG2から出力してもよいトルクの下限としてのトルク制限Tminを計算し(ステップS160)、設定した仮トルクTm2tmpをトルク制限Tminで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*に設定する(ステップS170)。このように、車速Vが置き換え車速Vch以上のときには、トルク制限Tminの範囲内で要求制動トルクTr*に対応するトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*に設定することにより、車両の運動エネルギを効率よく回生することができる。
【0028】
こうしてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定すると、要求制動トルクTr*からトルク指令Tm2*とギヤ比Grとの積を減じたものをリングギヤ軸32aに換算したときの油圧ブレーキに要求されるブレーキトルクTb*に設定し(ステップS200)、モータMG2のトルク指令Tm2*についてはモータECU40に、ブレーキトルクTb*についてはブレーキECU94に送信して(ステップS210)、減速時制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ42のスイッチング素子をスイッチング制御する。また、ブレーキトルクTb*を受信したブレーキECU94は、ブレーキホイールシリンダ96a〜96dによる制動力がリングギヤ軸32aに換算したときにブレーキトルクTb*に相当するトルクとなるようブレーキアクチュエータ92を駆動制御する。これにより、モータMG2から出力される制動トルクとブレーキホイールシリンダ96a〜96dによる制動力とによってリングギヤ軸32aに換算したときに要求制動トルクTr*となる制動力を車両に作用させることができる。
【0029】
ステップS140で車速Vが置き換え車速Vch未満のときには、前回のトルク指令Tm2*に負のレート値Trtを減じたものをモータMG2の仮トルクTm2tmpに設定し(ステップS180)、モータMG2が力行駆動とならないように仮トルクTm2tmpを値0で制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定すると共に(ステップS190)、設定したトルク指令Tm2*を用いてブレーキトルクTb*を設定し(ステップS200)、モータMG2のトルク指令Tm2*についてはモータECU40に、ブレーキトルクTb*についてはブレーキECU94に送信して(ステップS210)、減速時制御ルーチンを終了する。ここで、レート値Trtは、モータMG2による制動トルク(回生トルク)を油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えられるよう用いられる値であり、減速時制御ルーチンを繰り返し実行する間隔などにより定めることができる。このように、車速Vが置き換え車速Vch未満に至ったときには、モータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力に置き換えるから、モータMG2による制動トルクがトルク指令Tm2*より低下して車両に実際に作用する制動力が運転者が要求する制動力に対して不足するのを抑制することができ、運転者の運転フィーリングを良好にすることができる。また、レート処理を用いてモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるから、制動力の置き換えの際に生じ得るトルクショックを抑制することができる。
【0030】
ステップS110でブレーキペダルポジションBPが0%のときには、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御によって車両に制動力が要求されていると判断し、車間距離Lngと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する(ステップS220)。要求制動トルクTr*は、実施例では、車間距離Lngから推奨車速Vtmpを設定すると共に設定した推奨車速Vtmpを運転者により設定される要求車速Vdで制限して目標車速V*を設定し、現在の車速Vと目標車速V*との偏差に基づいてフィードバック制御により要求制動トルクTr*を設定するものとした。
【0031】
そして、運転者によってブレーキペダル84が踏み込まれたときに用いられる速度V1より低い速度V2を置き換え車速Vchに設定し(ステップS230)、車速Vが置き換え車速Vch以上のときには要求制動トルクTr*に基づいてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS150〜S170)、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルク(回生トルク)を油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるようトルク指令Tm2*を設定し(ステップS180,S190)、設定したトルク指令Tm2*を用いてブレーキトルクTb*を設定すると共に(ステップS200)、モータMG2のトルク指令Tm2*についてはモータECU40に、ブレーキトルクTb*についてはブレーキECU94に送信して(ステップS210)、減速時制御ルーチンを終了する。ここで、速度V2としては、最終的にモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力に置き換えるべき車速の下限速度やそれより若干高い速度として、例えば、10km/hや12km/hなどを用いることができる。これは、レーダクルーズコントロール制御によって車両に制動力が要求されているときには、運転者の操作によらずに要求制動トルクTr*が設定されるから、モータMG2による制動トルクがトルク指令Tm2*より低下して車両に実際に作用する制動力が要求制動トルクTr*に対応する制動力に対して不足しても、運転者が制動力不足を感じることがないことに基づく。このように、レーダクルーズコントロール制御によって車両に制動力が要求されているときには、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれて車両に制動力が要求されているときよりも小さな車速までモータMG2を回生制御するから、より多くの運動エネルギを回収することができ、車両のエネルギ効率を向上させることができる。
【0032】
以上説明した実施例のハイブリッド車20によれば、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御によって車両に比較的大きな制動力が要求されているときには、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれたときに用いられる速度V1より小さな速度V2を置き換え車速Vchに設定し、車速Vが置き換え車速Vch以上のときにはモータMG2が要求制動トルクTr*の範囲内で回生制御して要求制動トルクTr*に対応する制動力が車両に作用するようモータMG2とブレーキアクチュエータ92とを制御し、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルク(回生トルク)を油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えて要求制動トルクTr*が車両に作用するようモータMG2とブレーキアクチュエータ92とを制御するから、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれて車両に大きな制動力が要求されているときよりも電力として回収するエネルギを多くすることができ、車両のエネルギ効率を向上させることができる。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、レーダクルーズコントロール制御によって減速するときには、車間距離Lngから推奨車速Vtmpを設定すると共に設定した推奨車速Vtmpを運転者により設定される要求車速Vdで制限して目標車速V*を設定し、現在の車速Vと目標車速V*との偏差に基づいてフィードバック制御により要求制動トルクTr*を設定するものとしたが、車速Vと車間距離Lngとに基づいて要求車速Vdまでの範囲内で先行車両に接触せずに走行するものであれば如何なる方法で要求制動トルクTr*を設定するものとしてもよい。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力に置き換えるときには、レート処理をもって徐々に置き換えるものとしたが、レート処理以外の方法を用いて徐々に置き換えてもよく、例えば、時定数Tを用いたなまし処理を施してモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるものとしてもよい。また、こうしたレート処理やなまし処理によらず直ちに油圧ブレーキによる制動力へ置き換えるものとしてもよい。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、車両に制動力が要求されるときには、図2の減速時制御ルーチンと並行して、モータMG1からトルクが出力されずにエンジン22がアイドル回転数Nidlで自立運転するものとして説明したが、エンジン22の駆動を停止して走行する場合についても同様の制御を行なうことができる。また、車両に制動力が要求されるときには、エンジン22への燃料噴射を停止すると共にモータMG1によってエンジン22をモータリングすること(いわゆるエンジンブレーキ)によって車両に制動力を作用させるものとしても構わず、この場合にも車両に作用するエンジンブレーキを考慮して同様の制御を行なうことができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図4の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図4における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0039】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、電動機と制動力付与手段とを搭載した車両であれば如何なる形態のものに適用してもよく、走行用の動力源としてモータのみを搭載した電気自動車に適用しても構わない。また、こうした自動車の制御方法の形態としてもよい。
【0040】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、ブレーキアクチュエータ92やブレーキホイールシリンダ96a〜96d,ブレーキECU94が「制動力付与手段」に相当し、車間距離センサ104が「車間距離検出手段」に相当し、車速センサ88が「車速検出手段」に相当し、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれて車両に大きな制動力が要求されるときには、置き換え車速Vchに速度V1を設定し、車速Vが置き換え車速Vch以上のときにはモータMG2が要求制動トルクTr*の範囲内で回生制御するようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定すると共に設定したトルク指令Tm2*と要求制動トルクTr*とを用いてブレーキトルクTb*を設定してトルク指令Tm2*とブレーキトルクTb*とをそれぞれモータECU40とブレーキECU94とに送信し、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるようトルク指令Tm2*を設定すると共に設定したトルク指令Tm2*と要求制動トルクTr*とを用いてブレーキトルクTb*を設定してトルク指令Tm2*とブレーキトルクTb*とをそれぞれモータECU40とブレーキECU94とに送信し、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御によって車両に比較的大きな制動力が要求されるときには、置き換え車速Vchに速度V1より小さな速度V2を設定し、車速Vが置き換え車速Vch以上のときにはモータMG2が要求制動トルクTr*の範囲内で回生制御するようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定すると共に設定したトルク指令Tm2*と要求制動トルクTr*とを用いてブレーキトルクTb*を設定してトルク指令Tm2*とブレーキトルクTb*とをそれぞれモータECU40とブレーキECU94とに送信し、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるようトルク指令Tm2*を設定すると共に設定したトルク指令Tm2*と要求制動トルクTr*とを用いてブレーキトルクTb*を設定してトルク指令Tm2*とブレーキトルクTb*とをそれぞれモータECU40とブレーキECU94とに送信する図2の減速時制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、ブレーキトルクTb*に基づいてブレーキアクチュエータ92を制御するブレーキECU94とが「制御手段」に相当する。また、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものや対ロータ電動機230が「電力動力入出力手段」に相当する。
【0041】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、回転軸に回転子が接続され固定子の回転磁界により回転子を回転駆動させて回転軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「制動力付与手段」としては、ブレーキアクチュエータ92やブレーキホイールシリンダ96a〜96d,ブレーキECU94からなる油圧ブレーキに限定されるものではなく、油圧駆動でないブレーキなど、車両に制動力を付与するものであれば如何なるものとしても構わない。「車間距離検出手段」としては、車間距離センサ104に限定されるものではなく、先行車両との距離である車間距離を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「車速検出手段」としては、車速センサ88に限定されるものではなく、モータMG2の回転数Nm2から演算するものや車輪速センサからの信号に基づいて演算するものなど、車速を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とモータECU40とブレーキECU94とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、運転者によってブレーキペダル85が踏み込まれて車両に大きな制動力が要求されるときには、置き換え車速Vchに速度V1を設定し、車速Vが置き換え車速Vch以上のときにはモータMG2が要求制動トルクTr*の範囲内でモータMG2を回生制御すると共に車両に要求制動トルクTr*に対応した制動力が作用するようブレーキアクチュエータ92を制御し、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるようモータMG2を制御すると共に車両に要求制動トルクTr*に対応した制動力が作用するようブレーキアクチュエータ92を制御し、運転者の操作によらずレーダクルーズコントロール制御によって車両に比較的大きな制動力が要求されるときには、置き換え車速Vchに速度V1より小さな速度V2を設定し、車速Vが置き換え車速Vch以上のときにはモータMG2が要求制動トルクTr*の範囲内でモータMG2を回生制御すると共に車両に要求制動トルクTr*に対応した制動力が作用するようブレーキアクチュエータ92を制御し、車速Vが置き換え車速Vch未満のときにはモータMG2による制動トルクを油圧ブレーキによる制動力にスムーズに置き換えるようモータMG2を制御すると共に車両に要求制動トルクTr*に対応した制動力が作用するようブレーキアクチュエータ92を制御するものに限定されるものではなく、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第1の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、一方、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは電動機による回生制動力を伴って先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御し、車速が第2の車速未満に至った以降は電動機による回生制動力を制動力付与手段による制動力に置き換えて先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう電動機と制動力付与手段とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「電力動力入出力手段」としては、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるものではなく、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って駆動軸と出力軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される減速時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求制動トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図5】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0045】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 タイマ、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 ブレーキマスターシリンダ、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、100 クルーズコントロールスイッチ、102 目標車速設定スイッチ、104 車間距離センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力する電動機と、車両に制動力を付与する制動力付与手段と、先行車両との距離である車間距離を検出する車間距離検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに前記検出された車速と前記検出された車間距離とに基づいて前記目標車速までの範囲内で前記先行車両に接触せずに走行するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する定速走行制御手段と、を備える自動車であって、
前記定速走行制御手段は、運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには前記検出された車速が第1の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に前記検出された車速が前記第1の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御し、前記検出された車間距離に基づいて制動力を付与するときには前記検出された車速が前記第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴って前記検出された車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に前記検出された車速が前記第2の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えて前記検出された車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する手段である、
ことを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記定速走行制御手段は、前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換える際には、前記電動機による回生制動力が徐々に前記制動力付与手段による制動力に置き換わるよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する手段である請求項1記載の自動車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車であって、
内燃機関と、
車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、
を備える自動車。
【請求項4】
走行用の動力を出力する電動機と、車両に制動力を付与する制動力付与手段と、目標車速が設定されて定速走行が指示されたときに車速と先行車両との車間距離とに基づいて前記目標車速までの範囲内で前記先行車両に接触せずに走行する定速走行を実行可能な自動車の定速走行時に車両に制動力を作用させる際の制御方法であって、
運転者のブレーキ操作に基づいて制動力を付与するときには車速が第1の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴ってブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に車速が前記第1の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えてブレーキ操作に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御し、先行車両との車間距離に基づいて制動力を付与するときには車速が前記第1の車速より小さい第2の車速未満に至るまでは前記電動機による回生制動力を伴って先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御すると共に車速が前記第2の車速未満に至った以降は前記電動機による回生制動力を前記制動力付与手段による制動力に置き換えて先行車両との車間距離に応じた制動力が車両に作用するよう前記電動機と前記制動力付与手段とを制御する、
ことを特徴とする自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−189217(P2009−189217A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29565(P2008−29565)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】