説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】運転者が期待する駆動力をより精度よく反映した駆動力を得る。
【解決手段】ECUは、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度を検出するステップ(S100)と、車両から実際に出力される現在の駆動力を算出するステップ(S102)と、車両から実際に出力される現在の駆動力およびアクセル開度に応じて、運転者が期待する駆動力を推定するステップ(S104)と、運転者が期待する駆動力と、車両が実際に出力する現在の駆動力との差が小さくなるように、スロットル開度の目標値を決定するステップ(S106)と、実際のスロットル開度が目標値と一致するように電子スロットルバルブ8016を制御するステップ(S108)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置および制御方法に関し、特に、車両の駆動力を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に応じた駆動力を出力するように制御される車両の駆動源および自動変速機が知られている。たとえば、アクセルペダルの操作量に応じて定められたスロットル開度の目標値を実現するようにエンジンが制御される。また、アクセルペダルの操作量に応じて定められたギヤ段を形成するように自動変速機が制御される。
【0003】
ところが、吸気系におけるエンジンの応答遅れ、駆動力の伝達系の応答遅れなどにより、アクセルペダルの操作に対して実際の駆動力が遅れて追従する。また、トルクコンバータを介してエンジンと自動変速機とを連結した車両においては、トルクコンバータによるトルクの増幅作用により、アクセルペダルの操作に遅れてトルクが増大する場合がある。いずれの場合においても、アクセルペダルを操作した時点では駆動力が不足していると運転者が判断し、アクセルペダルを必要以上に操作し得る。この場合、最終的には駆動力が過剰になる。したがって、運転者が期待する駆動力とは異なる駆動力が出力される。そこで、運転者が期待する駆動力を算出して車両の駆動力を制御する技術が提案されている。
【0004】
特開平2−138561号公報(特許文献1)は、スロットル開度から運転者が期待する駆動力を算出し、スロットル開度および機関回転数から車両が実際に出力する駆動力を算出し、運転者が期待する駆動力および車両が実際に出力する駆動力の比に応じて変速する自動変速機の制御装置を開示する。
【特許文献1】特開平2−138561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転者は、期待する駆動力に対する実際の駆動力の過不足を補うようにアクセルペダル(スロットルバルブ)を操作する。そのため、たとえばアクセル開度(スロットル開度)が同じであっても、期待する駆動力が異なる場合がある。しかしながら、特開平2−138561号公報に記載の制御装置においては、運転者が期待する駆動力を算出する際、車両が実際に出力する駆動力が考慮されない。そのため、運転者が期待する駆動力を得るためにはさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者が期待する駆動力をより精度よく反映した駆動力を得ることができる車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る車両の制御装置は、アクセルペダルの操作量を検出するための手段と、車両から出力される第1の駆動力を算出するための手段と、第1の駆動力およびアクセルペダルの操作量に応じて、運転者が期待する第2の駆動力を推定するための推定手段と、第2の駆動力に応じて車両の駆動力を制御するための制御手段とを備える。第4の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の要件を備える。
【0008】
この構成によると、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)が検出される。また、車両から出力される第1の駆動力が算出される。運転者は、期待する駆動力に対する実際の駆動力の過不足を補うようにアクセルペダルを操作する。したがって、運転者が期待する駆動力は、車両が実際に出力する駆動力にアクセルペダルの操作量を反映したものであると推定される。そこで、車両から出力される駆動力である第1の駆動力およびアクセルペダルの操作量に応じて、運転者が期待する第2の駆動力が推定される。これにより、運転者が期待する駆動力をより精度よく推定することができる。運転者が期待する駆動力として推定された第2の駆動力に応じて車両の駆動力が制御される。たとえば、運転者が期待する第2の駆動力と車両が出力する第1の駆動力との差が小さくなるように車両の駆動力が制御される。これにより、運転者が期待する駆動力をより精度よく反映した駆動力を得ることができる車両の制御装置もしくは制御方法を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御手段は、第2の駆動力と第1の駆動力との差が小さくなるように車両の駆動力を制御するための手段を含む。第5の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の要件を備える。
【0010】
この構成によると、運転者が期待する第2の駆動力と車両が出力する第1の駆動力との差が小さくなるように車両の駆動力が制御される。これにより、運転者が期待する駆動力をより精度よく反映した駆動力を得ることができる。
【0011】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、推定手段は、第2の駆動力および第1の駆動力の差に対応したアクセルペダルの操作量を得るように予め定められた演算を、第1の駆動力およびアクセルペダルの操作量を用いて逆算することにより、第2の駆動力を推定するための手段を含む。第6の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の要件を備える。
【0012】
この構成によると、期待する駆動力に対して実際の駆動力をフィードバックした結果がアクセルペダルの操作量として運転者により出力されるといえるため、運転者が期待する第2の駆動力および車両が出力する第1の駆動力の差に対応したアクセルペダルの操作量を得る演算が予め定められる。たとえば、実験やシミュレーションにより、アクセルペダルの操作量を得る演算が予め定められる。この演算を、第1の駆動力およびアクセルペダルの操作量を用いて逆算することにより、第2の駆動力が推定される。これにより、運転者が期待する駆動力をより精度よく推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、その他、FR(Front engine Rear drive)など、FF以外の車両であってもよい。
【0015】
車両は、エンジン1000と、トルクコンバータ2000と、オートマチックトランスミッション3000と、ディファレンシャルギヤ4000と、ドライブシャフト5000と、前輪6000と、ECU(Electronic Control Unit)7000とを含む。
【0016】
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。インジェクタから噴射される燃料量は、所望の空燃比(たとえば理論空燃比)になるよう、エンジン1000に吸入される空気量に応じて定められる。なお、エンジン1000の代わりに、モータを駆動源として用いるようにしてもよい。
【0017】
オートマチックトランスミッション3000は、トルクコンバータ2000を介してエンジン1000に連結される。したがって、トルクコンバータ2000の出力軸回転数(タービン回転数NT)とオートマチックトランスミッション3000の入力軸回転数とは同じである。
【0018】
オートマチックトランスミッション3000は、プラネタリギヤユニットを有する。オートマチックトランスミッション3000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。なお、ギヤ段を形成するオートマチックトランスミッションの代わりに、ギヤ比を無段階に変更するCVT(Continuously Variable Transmission)を搭載するようにしてもよい。さらに、油圧アクチュエータにより変速される常時噛合式歯車からなる自動変速機を搭載するようにしてもよい。
【0019】
オートマチックトランスミッション3000の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤ4000と噛合っている。ディファレンシャルギヤ4000にはドライブシャフト5000がスプライン嵌合などによって連結される。ドライブシャフト5000を介して、左右の前輪6000に動力が伝達される。
【0020】
ECU7000には、車輪速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションセンサ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012のストロークセンサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024とがハーネスなどを介して接続されている。
【0021】
車輪速センサ8002は、車両の4つの車輪毎に回転数を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。シフトレバー8004の位置は、ポジションセンサ8006により検出され、検出結果を表す信号がECU7000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション3000のギヤ段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
【0022】
アクセル開度センサ8010は、運転者により操作されるアクセルペダル8008の操作量(アクセル開度)を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。ストロークセンサ8014は、運転者により操作されるブレーキペダル8012のストローク量を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。
【0023】
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度(スロットル開度)を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。スロットル開度が大きいほど、エンジン1000に吸入される空気量が大きくなる。すなわち、スロットル開度は、エンジン1000の出力を表わす値として用いられる。なお、シリンダに設けられた吸気バルブ(図示せず)のリフト量や作用角により、空気量を調整するようにしてもよい。この場合、リフト量や作用角が大きいほど、空気量が大きくなる。
【0024】
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数(エンジン回転数NE)を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション3000の入力軸回転数NI(タービン回転数NT)を検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。
【0025】
出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション3000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU7000に送信する。ECU7000は、出力軸回転数NOおよび車輪の半径などに基づいて車速を検出する。なお、車速を検出する方法については周知の一般的な技術を利用すればよいためここではその詳細な説明は繰り返さない。なお、車速の代わりに出力軸回転数NOをそのまま用いるようにしてもよい。
【0026】
ECU7000は、これらのセンサ等から送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムなどに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。なお、ECU7000は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0027】
本実施の形態において、ECU7000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション3000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、1速〜6速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション3000を制御する。1速〜6速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション3000は前輪6000に駆動力を伝達し得る。なお形成されるギヤ段の数は「6」に限らず、その他「7」や「8」であってもよい。オートマチックトランスミッション3000のギヤ段は、たとえば、スロットル開度および車速を用いて定められた変速マップに従って設定される。なお、スロットル開度の代わりにアクセル開度を用いるようにしてもよい。
【0028】
図2を参照して、ECU7000の機能について説明する。なお、以下に説明するECU7000の機能は、ハードウェアにより実現するようにしてもよく、ソフトウェアにより実現するようにしてもよい。
【0029】
ECU7000は、アクセル開度検出部7010と、駆動力算出部7020と、駆動力推定部7030と、エンジン制御部7040と、変速制御部7050とを含む。アクセル開度検出部7010は、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度を検出する。
【0030】
駆動力算出部7020は、車両から実際に出力される駆動力を算出する。車両から実際に出力される駆動力は、たとえば、エンジン1000の出力トルク、トルクコンバータ2000の効率およびトルク比、オートマチックトランスミッション3000のギヤ比、ディファレンシャルギヤ4000のギヤ比、車輪の半径などをパラメータに有する車両モデルを用いて算出される。エンジン1000の出力トルクは、アクセル開度、エンジン回転数NE、スロットル開度などに基づいて算出される。その他、車両の加速度、吸入空気量から算出されたエンジン1000の出力トルク、車両に搭載された各アクチュエータの作動量などを用いて駆動力を算出するようにしてもよい。なお、車両から実際に出力される駆動力を算出する方法については、周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0031】
駆動力推定部7030は、車両から実際に出力される駆動力およびアクセル開度に応じて、運転者が期待する駆動力を推定する。以下、運転者が期待する駆動力を推定する方法について詳述する。
【0032】
図3に示すように、運転者は、期待する駆動力に対して車両から実際に出力される現在の駆動力の過不足を補うためにアクセルペダル8008を操作する。たとえば、期待する駆動力に対して車両から実際に出力される現在の駆動力が小さい場合、アクセル開度が大きくなるようにアクセルペダル8008が操作される。期待する駆動力に対して車両から実際に出力される現在の駆動力が大きい場合、アクセル開度が小さくなるようにアクセルペダル8008が操作される。したがって、期待する駆動力に対して実際の駆動力をフィードバックした結果がアクセルペダル開度として運転者により出力されるといえる。
【0033】
そこで、運転者の思考を図4に示すようにモデル化することができる。図4において破線で囲まれた部分が、運転者の思考のモデルを示す。車両が実際に出力する駆動力は、前述したように、車両モデルを用いて算出される。
【0034】
図4に示すモデルにおいて、運転者は、期待する駆動力と車両から実際に出力される現在の駆動力との差をPID(Proportional-plus-Integral-plus-Derivative)制御に入力してアクセル開度を出力するといえる。
【0035】
そこで、運転者が期待する駆動力、アクセル開度および車両が出力する駆動力を用いて、PID制御において運転者が行なっていると推定される演算が予め定められる。なお、運転者が期待する駆動力は、たとえば、実験およびシミュレーションなどにより設計者が定める。アクセル開度および車両が出力する駆動力は、実験およびシミュレーションなどにより得られた値が用いられる。
【0036】
運転者が期待する駆動力を車両の走行中に推定する際には、図5に示すように、検出されたアクセル開度および車両が出力する駆動力として算出された駆動力を用いて、予め定められた演算を逆算することにより、運転者が期待する駆動力が推定(算出)される。すなわち、本実施の形態においては、アクセル開度および車両が実際に出力する現在の駆動力に応じて、運転者が期待する駆動力が推定される。
【0037】
エンジン制御部7040は、運転者が期待する駆動力と車両が実際に出力する駆動力との差が小さくなるように、車両の駆動力を制御する。より具体的には、図6に示すように、運転者が期待する駆動力と、車両が実際に出力する現在の駆動力との差が小さくなるように、PID制御によりスロットル開度の目標値が決定される。
【0038】
たとえば、運転者が期待する駆動力よりも車両が実際に出力する現在の駆動力が小さい場合は、運転者が期待する駆動力と車両が出力する駆動力との差(差の絶対値)が大きいほど、より大きい目標値が設定される。一方、運転者が期待する駆動力よりも車両が実際に出力する現在の駆動力が大きい場合は、運転者が期待する駆動力と車両が出力する駆動力との差(差の絶対値)が大きいほど、より小さい目標値が設定される。スロットル開度の目標値は、エンジン1000および駆動力の伝達系の無駄時間、応答遅れ、トルクコンバータ2000により増幅されたトルクなどを考慮して設定される。なお、スロットル開度の目標値を設定する方法はこれに限らない。
【0039】
実際のスロットル開度が目標値と一致するように電子スロットルバルブ8016が制御される。電子スロットルバルブ8016が制御されることにより、エンジン1000の出力トルクが制御される。その結果、運転者が期待する駆動力と車両が実際に出力する駆動力との差が小さくなるように、車両の駆動力が制御される。なお、スロットル開度の代わりに、吸入空気量、出力トルク、燃料の噴射量などの目標値を決定するようにしてもよい。
【0040】
変速制御部7050は、運転者が期待する駆動力を用いて、オートマチックトランスミッション3000の変速を制御する。より具体的には、運転者が期待する駆動力が、変速の要否、すなわちギヤ段を決定するために用いられるスロットル開度に変換される。たとえば、予め定められたマップに従って、運転者が期待する駆動力がスロットル開度に変換される。このスロットル開度は、エンジン制御部7040において算出されるスロットル開度の目標値とは異なり得る。
【0041】
変速制御部7050は、運転者が期待する駆動力を変換することにより得られたスロットル開度を用いて、変速マップに従ってギヤ段を決定する。決定されたギヤ段を形成するようにオートマチックトランスミッション3000が制御される。
【0042】
なお、運転者が期待する駆動力をスロットル開度に変換する代わりにアクセル開度に変換してギヤ段を決定するようにしてもよい。また、運転者が期待する駆動力をそのまま用いてギヤ段を決定するようにしてもよい。
【0043】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU7000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは予め定められた周期で繰り返し実行される。また、ECU7000により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
【0044】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU7000は、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度を検出する。S102にて、ECU7000は、車両から実際に出力される現在の駆動力を算出する。S104にて、ECU7000は、車両から実際に出力される現在の駆動力およびアクセル開度に応じて、運転者が期待する駆動力を推定する。
【0045】
S106にて、ECU7000は、運転者が期待する駆動力と、車両が実際に出力する現在の駆動力との差が小さくなるように、スロットル開度の目標値を決定する。S108にて、ECU7000は、実際のスロットル開度が目標値と一致するように電子スロットルバルブ8016を制御する。
【0046】
S110にて、ECU7000にて、運転者が期待する駆動力を、ギヤ段を決定するために用いられるスロットル開度に変換する。S112にて、ECU7000は、運転者が期待する駆動力を変換することにより得られたスロットル開度を用いて、変速マップに従ってギヤ段を決定する。S114にて、ECU7000は、決定されたギヤ段を形成するようにオートマチックトランスミッション3000を制御する。
【0047】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、ECU7000の動作について説明する。
【0048】
車両の走行中、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度が検出される(S100)。また、車両から実際に出力される現在の駆動力が算出される(S102)。車両から実際に出力される現在の駆動力およびアクセル開度に応じて、運転者が期待する駆動力が推定される(S104)。
【0049】
運転者が期待する駆動力と、車両が実際に出力する現在の駆動力との差が小さくなるように、スロットル開度の目標値が決定される(S106)。実際のスロットル開度が目標値と一致するように電子スロットルバルブ8016が制御される(S108)。
【0050】
これにより、図8において一点鎖線で示すように、運転者が期待する駆動力に対する実際の駆動力の不足分を小さくすることができる。そのため、図8において二点鎖線で示すように、アクセルペダル8008の余分な操作量を低減することができる。その結果、駆動力のオーバーシュートを抑制し、運転者が期待する駆動力を速やかに得ることができる。
【0051】
ところで、ギヤ段を決定する際、アクセル開度から変換されたスロットル開度を用いると、図9に示すように、車両から実際に出力される駆動力の応答遅れを補うようにアクセルペダル8008が操作されることにより、スロットル開度がオーバーシュートし得る。スロットル開度がオーバーシュートした場合、不必要なダウンシフトが行なわれ得る。
【0052】
そこで、本実施の形態においては、運転者が期待する駆動力が、ギヤ段を決定するために用いられるスロットル開度に変換される(S110)。運転者が期待する駆動力を変換することにより得られたスロットル開度を用いて、変速マップに従ってギヤ段が決定される(S112)。決定されたギヤ段を形成するようにオートマチックトランスミッション3000が制御される(S114)。これにより、図10に示すように、ギヤ段を決定するために用いられるスロットル開度のオーバーシュートを抑制することができる。そのため、不必要なダウンシフトがなされる回数を低減することができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、車両から実際に出力される現在の駆動力およびアクセル開度に応じて、運転者が期待する駆動力が推定される。運転者は、期待する駆動力に対する実際の駆動力の過不足を補うようにアクセルペダルを操作する。そのため、運転者が期待する駆動力は、車両が実際に出力する駆動力にアクセルペダルの操作量を反映したものであると推定される。したがって、車両から実際に出力される現在の駆動力およびアクセル開度を用いることにより、運転者が期待する駆動力をより精度よく推定することができる。運転者が期待する駆動力と、車両が実際に出力する現在の駆動力との差が小さくなるように、スロットル開度の目標値が決定される。実際のスロットル開度が目標値と一致するように電子スロットルバルブが制御される。これにより、運転者が期待する駆動力を精度よく反映した駆動力を得ることができる。
【0054】
なお、駆動力の代わりに、トルクもしくは加速度を用いるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】車両を示す概略構成図である。
【図2】ECUの機能ブロック図である。
【図3】運転者が期待する駆動力、実際に出力される駆動力およびアクセル開度を示す図(その1)である。
【図4】運転者の思考のモデルを示す図である。
【図5】運転者が期待する駆動力を推定するモデルを示す図である。
【図6】スロットル開度の目標値を決定するモデルを示す図である。
【図7】ECUが実行するプログラムの制御構造を示す図である。
【図8】運転者が期待する駆動力、実際に出力される駆動力およびアクセル開度を示す図(その2)である。
【図9】運転者が期待する駆動力、実際に出力される駆動力およびアクセル開度を示す図(その3)である。
【図10】運転者が期待する駆動力、実際に出力される駆動力およびアクセル開度を示す図(その4)である。
【符号の説明】
【0056】
1000 エンジン、2000 トルクコンバータ、3000 オートマチックトランスミッション、4000 ディファレンシャルギヤ、5000 ドライブシャフト、6000 前輪、7000 ECU、7010 アクセル開度検出部、7020 駆動力算出部、7030 駆動力推定部、7040 エンジン制御部、7050 変速制御部、8002 車輪速センサ、8004 シフトレバー、8006 ポジションセンサ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 ストロークセンサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの操作量を検出するための手段と、
車両から出力される第1の駆動力を算出するための手段と、
前記第1の駆動力および前記アクセルペダルの操作量に応じて、運転者が期待する第2の駆動力を推定するための推定手段と、
前記第2の駆動力に応じて前記車両の駆動力を制御するための制御手段とを備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2の駆動力と前記第1の駆動力との差が小さくなるように前記車両の駆動力を制御するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記第2の駆動力および前記第1の駆動力の差に対応した前記アクセルペダルの操作量を得るように予め定められた演算を、前記第1の駆動力および前記アクセルペダルの操作量を用いて逆算することにより、前記第2の駆動力を推定するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
アクセルペダルの操作量を検出するステップと、
車両から出力される第1の駆動力を算出するステップと、
前記第1の駆動力および前記アクセルペダルの操作量に応じて、運転者が期待する第2の駆動力を推定するステップと、
前記第2の駆動力に応じて前記車両の駆動力を制御するステップとを備える、車両の制御方法。
【請求項5】
前記第2の駆動力に応じて前記車両の駆動力を制御するステップは、前記第2の駆動力と前記第1の駆動力との差が小さくなるように前記車両の駆動力を制御するステップを含む、請求項4に記載の車両の制御方法。
【請求項6】
前記第2の駆動力を推定するステップは、前記第2の駆動力および前記第1の駆動力の差に対応した前記アクセルペダルの操作量を得るように予め定められた演算を、前記第1の駆動力および前記アクセルペダルの操作量を用いて逆算することにより、前記第2の駆動力を推定するステップを含む、請求項4または5に記載の車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−24535(P2009−24535A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186548(P2007−186548)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】