説明

車両の道路適応走行制御装置

【課題】 自車両の進行方向の道路状況を的確に把握し、適切な走行支援を行う。
【解決手段】 道路形状認識部26は、地図データ記憶部14に格納された地図データと、外界監視装置11の検知結果とに基づき、自車両の進行方向の道路形状を認識する。道路状況推定部27は、道路形状認識部26にて認識した道路形状を走行する他車両に対して、対象物走行情報抽出部21にて抽出された走行情報や道路状態および対象物走行軌跡算出部22にて算出された走行軌跡に基づき、自車両が走行予定の道路の道路状況を推定する。走行情報比較部30は、道路状況推定部27にて推定した道路状況を適正に通過可能な適正車両状態(適正速度VS)と自車両の走行状態(現在速度VP)とを比較し、走行支援判定部31は、自車両の走行状態が適正車両状態になるように制動装置16および警報装置17を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の道路適応走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自車両の進行方向前方に存在するカーブの形状(曲率等)を検出し、検出したカーブを適正に通過可能な速度まで減速が必要であるか否かを判定し、この判定結果に応じて、運転者に減速操作の実行を促す警報を出力したり、自動的に減速動作を実行するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば自車両の進行方向前方に存在するカーブの形状(曲率等)を検出すると共に、検出したカーブを通過する際に自車両とすれ違う他車両の走行状態(速度等)を通信により取得し、カーブにおいて他車両とすれ違う際の難易度を自車両の乗員に報知する装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−195692号公報
【特許文献2】特開平7−121800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係るシステムや装置において、例えばカーブや交差点等を含む所定道路領域をサービスエリアとして、このサービスエリア内を走行中の車両に対して各種の情報提供を行う路車間通信システムが設定されていない領域では、例えば車載ナビゲーション装置の地図データや車載カメラの撮影画像等に基づき、自車両の進行方向前方に存在するカーブの形状を検知することになる。
しかしながら、例えば車載カメラの撮影画像に基づきカーブの形状を検知する場合には、車載カメラの撮影可能領域を超える領域や、障害物等により撮影不可能な領域に存在するカーブの形状を検出することができないという問題が生じる。
また、車載ナビゲーション装置の地図データに基づきカーブの形状を検知する場合には、例えば突発的な事故や臨時の工事等による走行路の変更(例えば、走行車線数の減少や仮設迂回路の設置等)を検知することができないという問題が生じる。
【0004】
しかも、検出したカーブを適正に通過する際には、このカーブの形状として曲率に係る情報に加えて、勾配に係る情報や路面の摩擦状態に係る情報が必要となる。
しかしながら、車載ナビゲーション装置の地図データやGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号に基づく算出処理によって走行路の勾配に係る情報を算出する場合には、所望の算出精度を確保することが困難であり、さらに、車載カメラの撮影可能領域を超える領域や、障害物等により撮影不可能な領域では、路面の摩擦状態に係る情報を精度良く検知あるいは推定することが困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の進行方向の道路状況を的確に把握し、適切な走行支援を行うことが可能な車両の道路適応走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置は、他車両から出力される他車両情報を通信により取得する通信手段(例えば、実施の形態での情報送受信部12)と、予め道路地図データを記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部14)または自車両の外部から道路地図データを取得するデータ取得手段と、前記道路地図データ上での車両の位置を検知する位置検知手段(例えば、実施の形態での道路状況推定部27)と、自車両の走行状態が自車両の進行方向の道路状況に適応するように支援する走行支援手段(例えば、実施の形態での制動装置16および警報装置17)とを備える車両の道路適応走行制御装置であって、前記他車両情報は他車両の少なくとも位置および走行状態を含み、前記位置検知手段は、前記道路地図データおよび前記他車両情報に基づき、前記道路地図データ上における自車両が走行中の道路の進行方向に存在する他車両の位置を検知し、前記走行支援手段は、前記位置検知手段にて検知した自車両が走行中の道路の進行方向に存在する他車両の前記走行状態に基づき、自車両の走行状態が自車両の進行方向の道路状況に適応するように支援することを特徴としている。
【0006】
上記構成の車両の道路適応走行制御装置によれば、自車両の進行方向に存在する道路を適正な車両状態にて通過するように支援を行う際に、予め実際にこの道路を通過した他車両から取得した走行状態に基づき、実際の道路状況、例えば、障害物の存在や突発的な事故や臨時の工事等による走行路の変更(例えば、走行車線数の減少や仮設迂回路の設置等)や、降雨や降雪や凍結等に起因する路面の状態や、登坂路や降坂路の路面勾配等に対応した適正な車両状態を的確に把握することができ、自車両の走行状態が実際の道路状況に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
【0007】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置は、前記他車両情報に含まれる前記他車両の位置に基づき前記他車両の走行軌跡を算出する走行軌跡算出手段(例えば、実施の形態での対象物走行軌跡算出部22)と、該走行軌跡算出手段により算出された前記走行軌跡に基づき、自車両の進行方向の道路状況を推定する道路状況推定手段(例えば、実施の形態での道路状況推定部27)とを備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、例えば、障害物の存在や突発的な事故や臨時の工事等による走行路の変更(例えば、走行車線数の減少や仮設迂回路の設置等)の有無を精度良く推定することができ、自車両の走行軌跡が実際の道路状況に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置は、自車両の少なくとも速度を含む車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態での自車両情報検出部13)と、前記走行軌跡算出手段により算出された前記走行軌跡に基づき、自車両の進行方向にカーブが存在するか否かを判定し、該判定にてカーブが存在する場合にカーブの半径あるいは曲率を含むカーブの形状を推定するカーブ推定手段(例えば、実施の形態でのステップS04およびステップS05)と、該カーブ推定手段により推定されたカーブの形状に基づき、該カーブを適正に通過可能な少なくとも適正速度を含む適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部28および横加速度算出部29)と、前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での走行情報比較部30)とを備え、前記走行支援手段は、前記比較手段による比較結果において前記車両状態と前記適正車両状態とが相違する場合に、前記車両状態が前記適正車両状態と同等になるように自車両の走行状態を制御する、あるいは、前記車両状態が前記適正車両状態と同等になるような運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力することを特徴としている。
【0010】
上記構成の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、カーブ形状を精度良く推定することができ、自車両の走行状態が適正車両状態に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置では、前記他車両情報は、他車両の少なくとも位置および走行状態に加えて、他車両が走行中の道路の少なくとも道路勾配またはタイヤと路面間の摩擦係数を含み、前記適正車両状態設定手段は、少なくとも前記カーブ推定手段により推定されたカーブの形状または前記他車両情報に基づき、前記適正車両状態を設定することを特徴としている。
【0012】
上記構成の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、少なくともカーブ形状または降雨や降雪や凍結等に起因する路面の状態を精度良く推定することができ、自車両の走行状態が適正車両状態に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置は、前記道路地図データに基づき、自車両の進行方向にカーブが存在するか否かを判定し、該判定にてカーブが存在する場合にカーブの半径あるいは曲率を含むカーブの形状を認識するカーブ認識手段(例えば、実施の形態での道路形状認識部26)を備え、前記適正車両状態設定手段は、前記カーブ推定手段により推定されたカーブの形状と、前記カーブ認識手段により認識されたカーブの形状とのうち、カーブの半径が何れか小さい方あるいは曲率が何れか大きい方のカーブの形状に基づき、該カーブを適正に通過可能な少なくとも適正速度を含む適正車両状態を設定することを特徴としている。
【0014】
上記構成の車両の道路適応走行制御装置によれば、カーブ推定手段により推定されたカーブの形状と、カーブ認識手段により認識されたカーブの形状とのうち、カーブの半径が何れか小さい方あるいは曲率が何れか大きい方のカーブの形状に基づき、該カーブを適正に通過可能な少なくとも適正速度を含む適正車両状態を設定することにより、自車両の走行状態が適正車両状態から逸脱してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置によれば、自車両が走行予定の道路を予め実際に通過した他車両から取得した走行状態に基づき、実際の道路状況に対応した適正な車両状態を的確に把握することができ、自車両の走行状態が実際の道路状況に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、例えば、障害物の存在や突発的な事故や臨時の工事等による走行路の変更(例えば、走行車線数の減少や仮設迂回路の設置等)の有無を精度良く推定することができ、自車両の走行軌跡が実際の道路状況に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、カーブ形状を精度良く推定することができ、自車両の走行状態が適正車両状態に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置によれば、実際の道路状況として、少なくともカーブ形状または降雨や降雪や凍結等に起因する路面の状態を精度良く推定することができ、自車両の走行状態が適正車両状態に適応するようにして適切な支援を行うことができる。
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の道路適応走行制御装置によれば、自車両の走行状態が適正車両状態から逸脱してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の道路適応走行制御装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の道路適応走行制御装置10は、例えば、外界監視装置11と、情報送受信部12と、自車両情報検出部13と、地図データ記憶部14と、処理装置15と、制動装置16と、警報装置17とを備えて構成されている。
【0018】
外界監視装置11は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等からなるカメラおよび画像処理部と、例えばレーザ光やミリ波等のレーダおよびレーダ制御部とを備えて構成されている。
カメラは、例えばフロントウィンドウの車室内側でルームミラー近傍の位置に配置され、フロントウィンドウ越しに自車両の進行方向前方の所定検知範囲の外界を撮影する。
画像処理部は、カメラにより撮影して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成して処理装置15へ出力する。
また、レーダは、例えば自車両のボディのノーズ部や車室内のフロントウィンドウ近傍等に配置され、処理装置15からレーダ制御部へ入力される制御指令に応じたレーダ制御部の制御により、レーザ光やミリ波等の発信信号を適宜の検知方向(例えば、自車両の進行方向前方等)に向けて発信すると共に、この発信信号が自車両の外部の物体(検知対象物)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を生成して処理装置15へ出力する。
【0019】
情報送受信部12は、他車両に搭載された情報送受信部との間の車車間通信により各種情報の送受信を行う。ここで、他車両から発信される対象物情報は、他車両の車両状態に係る情報、例えば速度および位置に加えて、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)や操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)や、方向指示器やブレーキのオン/オフ状態や、道路状態(例えば、タイヤに対する路面の摩擦係数や路面勾配等)等である。
【0020】
自車両情報検出部13は、自車両情報として、例えば自車両の走行速度(車速)を検出する車速センサや、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号や自車両の外部の情報発信装置から発信される位置信号や例えば道路上に配置された基点マーカとの磁気作用等、さらには、適宜のジャイロセンサや加速度センサ等の検出結果に基づいて自車両の現在位置や進行方向を検出する位置センサや、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)やヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)や操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)や各タイヤと路面間の摩擦係数を検出する各センサや、方向指示器やブレーキのオン/オフ状態を検知する各センサ等を備えて構成されている。
【0021】
地図データ記憶部14は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部14は、例えばナビゲーション装置(図示略)や表示装置において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路情報を格納している。
【0022】
処理装置15は、例えば、対象物走行情報抽出部21と、対象物走行軌跡算出部22と、自車両位置情報抽出部23と、自車両走行情報抽出部24と、道路状態抽出部25と、道路形状認識部26と、道路状況推定部27と、適正車速設定部28と、横加速度算出部29と、走行情報比較部30と、走行支援判定部31とを備えて構成されている。
【0023】
対象物走行情報抽出部21は、情報送受信部12にて受信した対象物情報から他車両の走行情報、例えば位置や速度やヨー角や操舵角、方向指示器やブレーキのオン/オフ状態、さらに、他車両の走行路の路面勾配や摩擦係数等の道路状態等の各情報を抽出する。
対象物走行軌跡算出部22は、情報送受信部12にて受信した対象物情報のうち、例えば他車両の位置の時間変化、あるいは、例えば舵角センサにて検出される他車両の舵角やジャイロセンサにて検出される他車両のヨーレートと、車速センサにて検出される他車両の速度とに基づき、他車両の走行軌跡を算出する。
【0024】
自車両位置情報抽出部23は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の現在の位置情報を抽出する。
自車両走行情報抽出部24は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の走行情報、例えば速度やヨー角や操舵角等を抽出する。
道路状態抽出部25は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の走行路の摩擦係数や路面勾配に係る情報(例えば、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の水平軸周りの回転角であるピッチ角等)を抽出する。
【0025】
道路形状認識部26は、地図データ記憶部14に格納された地図データと、外界監視装置11から入力される画像データまたはビート信号とに基づき、自車両の進行方向の道路形状を認識する。
例えば、自車両の進行方向前方の道路上にカーブ形状が存在する場合、道路形状認識部26は、地図データに含まれる道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点と、リンクつまり各ノードを結ぶ線とに基づいて、例えば曲率や極性や旋回角や長さ等のカーブの形状を認識する。
道路状況推定部27は、地図データ記憶部14に格納された地図データと、対象物走行情報抽出部21にて抽出された他車両の位置とに基づき、例えばマップマッチング等を行い、地図データ上における他車両の位置を検知し、道路形状認識部26にて認識した道路形状を走行する他車両に対して、対象物走行情報抽出部21にて抽出された走行情報や道路状態および対象物走行軌跡算出部22にて算出された走行軌跡に基づき、自車両が走行予定の道路の道路状況を推定する。
【0026】
この道路状況は、例えば障害物の存在や突発的な事故や臨時の工事等による走行路の変更(例えば、走行車線数の減少や仮設迂回路の設置等)や、降雨や降雪や凍結等に起因する路面の状態や、登坂路や降坂路の路面勾配等である。そして、例えば他車両が自車両と同等の車線を走行する前走車両である場合には、この前走車両の走行路の道路状況が直接的に自車両の走行予定の道路の道路状況となり、例えば他車両が自車両に対して対向車線を走行する対向車両である場合には、この対向車両の走行路の道路状況に基づき自車両の走行予定の道路の道路状況が推定される。例えば対向車両の旋回走行時の走行軌跡に対しては、車線幅相当の距離の補正を行うことで、自車両の走行予定の道路の走行軌跡や曲率等を推定することができる。
【0027】
適正車速設定部28は、道路状況推定部27にて推定された道路状況に基づき、自車両が適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部28は設定した適正速度VSのデータを走行情報比較部30へ出力する。
例えば、適正車速設定部28は、道路形状認識部26にて地図データや外界監視装置11の検知結果に基づき認識されたカーブ形状と、道路状況推定部27にて車車間通信により取得した他車両情報に基づき推定したカーブ形状とのうち、カーブの半径が何れか小さい方あるいは曲率が何れか大きい方のカーブ形状に基づき、該カーブ形状を適正に通過可能な少なくとも適正速度VSを含む適正車両状態を設定する。
【0028】
また、この適正車速設定部28は、例えばカーブ等の道路形状の通過時に自車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部29を備えている。例えば、横加速度算出部29は、道路状況推定部27にて推定された自車両の走行予定の道路の走行軌跡や曲率等に基づいて、この道路を適正に通過する際に許容される適正横加速度ASを算出する。次に、適正車速設定部28は、この適正横加速度ASを自車両に発生させる速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、旋回走行時に自車両に許容される横加速度は、例えば路面状況、タイヤの状況、積載の状態等により変化するため、これらを更に考慮して適正速度VSを設定するようにしてもよい。
【0029】
走行情報比較部30は、自車両走行情報抽出部24にて抽出した自車両情報のうち、例えば自車両の速度(現在速度VP)と、適正車速設定部28にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を走行支援判定部31へ出力する。
また、走行情報比較部30は、自車両の速度(現在速度VP)と道路状況推定部27にて推定された道路状況とに基づき、この道路状況を現在速度VPで通過する際に発生する横加速度を推定し、この横加速度の推定値と、適正車速設定部28の横加速度算出部29にて設定した適正横加速度ASとを比較して、この比較結果を走行支援判定部31へ出力する。
【0030】
走行支援判定部31は、走行情報比較部30において、自車両情報検出部13にて検出した自車両の現在速度VPと適正車速設定部28にて設定した適正速度VSとを比較した結果として、自車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態で、自車両が適正車両状態にない場合には、自車両が適正車両状態になるようにして、制動装置16および警報装置17を作動させる。
また、走行支援判定部31は、横加速度の推定値が適正横加速度ASよりも高い状態で、自車両が適正車両状態にない場合には、自車両の走行状態が適正車両状態になるようにして、制動装置16および警報装置17を作動させる。
【0031】
制動装置16は、例えばブレーキ制御装置やスロットル制御装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えばブレーキ液圧やスロットル開度等を制御して自車両に制動力を作用させる。
【0032】
警報装置17は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えばシートベルト装置や操舵制御装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて自車両の乗員が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイールに自車両の運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させることによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させることによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて所定の警報音や音声等を出力することによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
【0033】
本実施の形態による車両の道路適応走行制御装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の道路適応走行制御装置10の動作として、例えば自車両の進行方向前方にカーブ形状が存在する場合の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0034】
先ず、図2に示すステップS01においては、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報として、自車両の現在位置および現在速度等の情報を取得する。
次に、ステップS02においては、情報送受信部12にて受信した対象物情報から他車両情報として、位置および速度および走行路の道路状態等を取得する。
次に、ステップS03においては、例えば他車両の位置の時間変化や、例えば他車両の舵角やヨーレートや速度等に基づき、他車両の走行軌跡を算出する。
【0035】
次に、ステップS04においては、地図データ記憶部14に格納された地図データや外界監視装置11の検知結果やに基づいて、自車両の進行方向前方にカーブ形状が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
ステップS05においては、検出したカーブ形状に対して、例えばカーブの最小径や最大曲率、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を推定する。
【0036】
次に、ステップS06においては、推定したカーブ形状値に基づいてカーブ形状を適正に通過可能な適正速度VS(又は、適正横加速度AS)を算出する。
次に、ステップS07においては、検出した自車両の現在速度VPが、算出した適正速度VSよりも高いか否か(または、推定した自車両の横加速度が適正横加速度ASよりも高いか否か)を判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
【0037】
ステップS08においては、走行支援つまり制動装置16および警報装置17の作動対象となる地点(走行支援作動対象地点)を推定する。この走行支援対象地点は、例えば図3に示すように、道路形状認識部26や道路状況推定部27にて認識された自車両Pの進行方向前方に存在するカーブ形状Cの入口位置CSであったり、例えば道路状況推定部27にてカーブ形状C内に、このカーブ形状Cの半径Raよりも小さな半径Rbを有する迂回路Dの存在が推定された場合には、この迂回路Dの入口位置DSとなる。
次に、ステップS09においては、自車位置検出部12にて検出した自車両の現在位置から走行支援作動対象地点(例えば図3に示すカーブ形状Cの入口位置CS)までの距離、つまり作動対象地点間距離Lnを算出する。
【0038】
次に、ステップS10においては、例えば自車両の運転者がブレーキを踏み込んでから実際にブレーキが効き始めるまでの空走時間での走行距離(空走距離ΔLs)と、所定の減速度にて現在速度VPから適正速度VSまで減速するのに要する時間での自車両の走行距離(減速必要距離Ls)とを加算して得た値を、警報を発して運転者に注意を促してから、実際に運転者が反応してブレーキを踏み込み、自車両を適正速度VSまで減速するのに要する距離(警報必要距離Lw)として設定する。
次に、ステップS11においては、作動対象地点間距離Lnが警報必要距離Lw以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS12においては、警報装置17を作動させ、自車両の運転者に適正速度VSまで減速するように注意を促す警報を出力する。
次に、ステップS13においては、作動対象地点間距離Lnが減速必要距離Ls以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
ステップS14においては、制動装置16を作動させ、自車両の速度が適正速度VSになるようにして自車両を自動的に減速させると共に、この制御動作の実行を自車両の運転者に報知する。
【0040】
そして、ステップS15においては、自車両が走行支援作動対象地点(例えば図3に示すカーブ形状Cの入口位置CS)を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進み、制動装置16および警報装置17の作動を停止し、一連の処理を終了する。
【0041】
なお、上述したステップS01からステップS13の処理では、例えば自車両の進行方向前方に存在するカーブ形状C(例えば、半径Ra)を適正に通過するように走行支援を行う場合について説明したが、例えば図3に示すように、自車両Pと同等の走行車線を走行する前走車両Qから通信により取得した情報に基づき、カーブ形状C内に、このカーブ形状Cの半径Raよりも小さな半径Rbを有する迂回路Dの存在が推定された場合等のように、カーブ形状値が異なる複数のカーブ形状の存在が推定された場合には、これら全てのカーブ形状を適正に通過するように走行支援を行う。
【0042】
また、例えば図3に示すように、自車両Pに対する対向車線を走行する対向車両R等のように、自車両の走行車線とは異なる走行車線を走行する他車両との間の車車間通信により取得した情報に基づきカーブ形状を推定する場合には、この他車両の走行軌跡に対して、車線幅相当の距離の補正を行うことで、自車両が走行予定の走行路の道路形状を推定することができる。例えば図3に示す対向車両Rの走行軌跡からカーブ形状E(例えば、半径Rc)を検知した場合には、このカーブ形状Eに車線幅相当の距離を加算して、自車両が走行予定のカーブ形状C(例えば、半径Ra)を推定する。
【0043】
上述したように、本実施の形態による車両の道路適応走行制御装置10によれば、地図データ記憶部14に格納された地図データや外界監視装置11の検知結果に加えて、自車両が走行予定の道路を実際に通過した他車両(例えば、前走車両や対向車両)との車車間通信により取得した情報に基づき、実際の道路状況を認識あるいは精度良く推定することができ、道路状況の変化に適切に対応して自車両を適正に走行させることができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態において、車両の道路適応走行制御装置10は、地図データ記憶部14を備えるとしたが、これに限定されず、例えば自車両の外部に設置された地図データサーバから適宜のタイミングで通信により地図データを取得する地図データ取得部を備えてもよい。
【0045】
なお、上述した実施の形態においては、対象物走行軌跡算出部22にて他車両の走行軌跡を算出するとしたが、これに限定されず、予め他車両にて算出された走行軌跡を、情報送受信部12を介して取得してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の道路適応走行制御装置の構成図である。
【図2】図1に示す車両の道路適応走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】自車両Pと、自車両Pの進行方向前方のカーブを通過した前走車両Qおよび対向車両Rとの相対位置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 車両の道路適応走行制御装置
12 情報送受信部(通信手段)
14 地図データ記憶部(データ記憶手段)
16 制動装置(走行支援手段)
17 警報装置(走行支援手段)
22 対象物走行軌跡算出部(走行軌跡算出手段)
26 道路形状認識部(カーブ認識手段)
27 道路状況推定部(位置検知手段、道路状況推定手段)
28 適正車速設定部(適正車両状態設定手段)
29 横加速度算出部(適正車両状態設定手段)
30 走行情報比較部(比較手段)
ステップS04およびステップS05 カーブ推定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両から出力される他車両情報を通信により取得する通信手段と、
予め道路地図データを記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段または自車両の外部から道路地図データを取得するデータ取得手段と、前記道路地図データ上での車両の位置を検知する位置検知手段と、自車両の走行状態が自車両の進行方向の道路状況に適応するように支援する走行支援手段とを備える車両の道路適応走行制御装置であって、
前記他車両情報は他車両の少なくとも位置および走行状態を含み、
前記位置検知手段は、前記道路地図データおよび前記他車両情報に基づき、前記道路地図データ上における自車両が走行中の道路の進行方向に存在する他車両の位置を検知し、
前記走行支援手段は、前記位置検知手段にて検知した自車両が走行中の道路の進行方向に存在する他車両の前記走行状態に基づき、自車両の走行状態が自車両の進行方向の道路状況に適応するように支援することを特徴とする車両の道路適応走行制御装置。
【請求項2】
前記他車両情報に含まれる前記他車両の位置に基づき前記他車両の走行軌跡を算出する走行軌跡算出手段と、
該走行軌跡算出手段により算出された前記走行軌跡に基づき、自車両の進行方向の道路状況を推定する道路状況推定手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両の道路適応走行制御装置。
【請求項3】
自車両の少なくとも速度を含む車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記走行軌跡算出手段により算出された前記走行軌跡に基づき、自車両の進行方向にカーブが存在するか否かを判定し、該判定にてカーブが存在する場合にカーブの半径あるいは曲率を含むカーブの形状を推定するカーブ推定手段と、
該カーブ推定手段により推定されたカーブの形状に基づき、該カーブを適正に通過可能な少なくとも適正速度を含む適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段とを備え、
前記走行支援手段は、前記比較手段による比較結果において前記車両状態と前記適正車両状態とが相違する場合に、前記車両状態が前記適正車両状態と同等になるように自車両の走行状態を制御する、あるいは、前記車両状態が前記適正車両状態と同等になるような運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力することを特徴とする請求項2に記載の車両の道路適応走行制御装置。
【請求項4】
前記他車両情報は、他車両の少なくとも位置および走行状態に加えて、他車両が走行中の道路の少なくとも道路勾配またはタイヤと路面間の摩擦係数を含み、
前記適正車両状態設定手段は、少なくとも前記カーブ推定手段により推定されたカーブの形状または前記他車両情報に基づき、前記適正車両状態を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両の道路適応走行制御装置。
【請求項5】
前記道路地図データに基づき、自車両の進行方向にカーブが存在するか否かを判定し、該判定にてカーブが存在する場合にカーブの半径あるいは曲率を含むカーブの形状を認識するカーブ認識手段を備え、
前記適正車両状態設定手段は、前記カーブ推定手段により推定されたカーブの形状と、前記カーブ認識手段により認識されたカーブの形状とのうち、カーブの半径が何れか小さい方あるいは曲率が何れか大きい方のカーブの形状に基づき、該カーブを適正に通過可能な少なくとも適正速度を含む適正車両状態を設定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両の道路適応走行制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−24104(P2006−24104A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203296(P2004−203296)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】