説明

電子材料の洗浄方法および洗浄システム

【課題】電子材料のレジストの剥離処理に要する時間を短縮し、さらにレジスト剥離後のウエット洗浄によりレジスト残渣を短時間に確実に除去し得る電子材料洗浄システムを提供する。
【解決手段】電子材料洗浄システムは、薬液洗浄手段1とウエット洗浄手段2と枚葉式洗浄装置3とを備える。薬液洗浄手段1は、機能性薬液貯留槽6と、この機能性薬液貯留槽6に濃硫酸電解ライン7を介して接続した電解反応装置8とを有する。この機能性薬液貯留槽6は、機能性薬液供給ライン10を介して枚葉式洗浄装置3に機能性薬液W1を供給可能となっている。ウエット洗浄手段2は、純水の供給ライン21と窒素ガス源に連通した窒素ガス供給ライン22と、これら純水供給ライン21及び窒素ガス供給ライン22がそれぞれ接続した内部混合型の二流体ノズル23とを備える。二流体ノズル23の先端から窒素ガスと超純水とから生成される液滴W2を噴射可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて厳しい制御を要求される電子部品製造分野、具体的には、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びそのフォトマスク等の製造分野において、電子材料上のレジスト等を効率的に剥離除去するための洗浄方法及び洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程には、半導体ウエハの表面に不純物として金属イオンを局所的に注入する工程が含まれる。この工程では、所望しない部分への注入を防ぐために、感光性樹脂材などから構成されるレジストがマスク材としてパターン形成されており、レジスト表面にも同等濃度のイオンが注入される。イオン注入されたレジストは製造上、不要な産物であるため、ウエハ表面上から剥離除去するためのレジスト除去処理が行われる。
【0003】
このようなレジスト除去処理は、アッシング装置でレジストを灰化した後、洗浄装置に搬入して洗浄液によってレジスト残渣が除去される。しかし、アッシング装置による灰化処理を行うとレジストで保護されていない部分がダメージをうけてしまう問題がある。この問題に対して特許文献1では、ウエハ表面に硫酸と過酸化水素の混合液であるSPMを供給して、SPMに含まれるペルオキソ一硫酸(HSO)の酸化力により、ウエハ表面の不要なレジストを剥離して除去することが記載されている。
【0004】
また、SPMで洗浄した場合であってもイオンの注入量が高濃度の場合には、レジストの表面が変質しているため、レジストを良好に除去できなかったり、レジストを除去するに時間がかかることがある。そこで、このような場合には特許文献1には、枚葉式の洗浄装置にSPM供給ノズルと液滴を噴流する二流体ノズルとを設置し、液滴噴流を供給後、高温SPMを供給してウエハからレジストを剥離して除去する処理方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、SPMによるレジスト剥離処理においては、硫酸と過酸化水素水を混合することによって酸化力を維持しながら洗浄を行うため、一旦使用すると薬液の酸化力が低下してしまう。したがって、枚葉式洗浄装置を用いたレジスト除去工程にSPMを使用する場合は、薬液を循環して再利用すると洗浄力が安定的でなく、さらに硫酸と過酸化水素水を大量に消費するにで、ランニングコストが高く、多量の廃液を発生するという欠点がある。
【0006】
これに対して、本発明者らは、SPM洗浄液の代替として、硫酸を電気分解して得られるペルオキソ一硫酸等の酸化性物質を含有した電解硫酸液を洗浄液とし、硫酸を循環使用する洗浄方法及び洗浄システムを提案している(例えば、特許文献2,3)。この方法であれば、酸化力を容易に一定以上に維持することができるとともに、薬液の追加注入や薬液の入れ替えが殆どないため、薬液量の大幅削減を図れることが期待されている。また、高い酸化力の洗浄液を連続的に製造することができるので、アッシング処理を行わない剥離洗浄(アッシングレスでの洗浄)を実現することができることが期待されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−109167号公報
【特許文献2】特開2006−114880号公報
【特許文献3】特開2006−278687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたSPMによるレジスト剥離処理方法においては、製造工程が複雑になることにより、製造に要する時間が長くなる傾向にあることから、レジスト剥離工程を含め、各工程に要する時間を短縮することが望まれる。また、硫酸溶液を電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液を用いてアッシングレスでレジストの剥離洗浄を行った場合、剥離されなかったレジスト残渣が電子材料上に残留し易いため、後段のウエット洗浄において短時間で確実に残渣を除去することが望まれる。
【0009】
そこで特許文献2及び特許文献3に提案されている洗浄方法を適用することが考えられる。この洗浄方法により、薬液使用量、廃液量を削減すると同時に高い洗浄効果を得ることができる。また、特許文献3に記載された洗浄方法は、枚葉式の洗浄にも適用可能である。しかし、これらの特許文献に記載された洗浄方法では、不要になったレジストをシリコンウエハから完全に除去するまでの時間の面でさらに改善の余地のあるものであった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電子材料のレジストの剥離処理に要する時間を短縮し、さらにレジスト剥離後のウエット洗浄によりレジスト残渣を短時間に確実に除去し得る電子材料の洗浄方法及び洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、硫酸を電気分解して得られる機能性薬液を電子材料に接触させる薬液洗浄工程と、気体と液体とから生成される液滴の噴流を前記電子材料に接触させるウエット洗浄工程とを備えたことを特徴とする電子材料の洗浄方法を提供する(請求項1)。
【0012】
上記発明(請求項1)によれば、気体と液体とから生成される液滴の噴流を接触させるウエット洗浄工程は、高い洗浄力を有するので、その後のリンス洗浄時間を短縮もしくはリンス洗浄を不要とすることができる。このようなウエット洗浄工程を、レジストの剥離能力に優れた機能性薬液による洗浄工程の後に配することにより、洗浄に要する時間を従来法に比べて大幅に短縮することができる。
【0013】
上記発明(請求項1)においては、前記電子材料に接触させた機能性薬液を回収し、当該機能性薬液を再度電気分解して再利用するのが好ましい(請求項2)。
【0014】
上記発明(請求項2)によれば、機能性薬液を繰返し利用することによって、薬液の使用量、廃液量を大幅に削減するとともに、被洗浄材の処理時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【0015】
上記発明(請求項1,2)においては、前記機能性薬液を100〜200℃に加熱された状態で電子材料に接触させるのが好ましい(請求項3)。
【0016】
上記発明(請求項3)によれば、機能性薬液中に含有する過硫酸を有効に作用させ十分な洗浄効果を得るとともに、機能性薬液の沸騰を防止し、さらに装置を構成する部材の耐熱常用温度を超えてしまうのを防止することができる。
【0017】
上記発明(請求項1〜3)においては、前記機能性薬液が、硫酸濃度80〜96質量%であるのが好ましい(請求項4)。
【0018】
上記発明(請求項4)によれば、硫酸を電気分解して得られる機能性薬液により十分な洗浄効果を発揮させることができる。
【0019】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記硫酸の電気分解に用いる電極の少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であり、前記機能性薬液が、前記陽極での酸化反応によって生成する過硫酸を含有するのが好ましい(請求項5)。
【0020】
上記発明(請求項5)によれば、陽極に導電性ダイヤモンド電極を用いることにより、洗浄能力の高い過硫酸を効果的に製造することができるとともに電極の耐久性を高めることができる。
【0021】
上記発明(請求項1〜5)においては、前記気体と液体とから生成される液滴の噴流が、窒素、酸素、希ガス、清浄空気、二酸化炭素、オゾンから選ばれる1種のガスまたは2種以上の混合ガスと、純水とから生成されるのが好ましい(請求項6)。
【0022】
上記発明(請求項6)によれば、電子材料に悪影響を及ぼすことなく、ウエット洗浄を短時間で効率よく行うことができる。
【0023】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記電子材料が、回転装置に固定されて枚葉洗浄されるのが好ましい(請求項7)。
【0024】
上記発明(請求項7)によれば、電子材料を回転させつつ、電子材料表面に向けて機能性薬液や液滴の噴流を流しかける枚葉ごとのスピン洗浄を効率良く行うことができる。
【0025】
また、第二に本発明は、硫酸を電気分解して得られる機能性薬液を電子材料に接触させる薬液洗浄手段と、気体と液体とから生成される液滴の噴流を電子材料に接触させるウエット洗浄手段とを備えたことを特徴とする電子材料洗浄システムを提供する(請求項8)。
【0026】
上記発明(請求項8)によれば、気体と液体とから生成される液滴の噴流を接触させるウエット洗浄手段は、高い洗浄力を有するので、その後のリンス洗浄時間を短縮もしくはリンス洗浄を不要とすることができる。このようなウエット洗浄手段と、レジストの剥離能力に優れた機能性薬液による洗浄手段とを有することにより、洗浄に要する時間を従来法に比べて大幅に短縮することができる。
【0027】
上記発明(請求項8)においては、前記電子材料に接触させた機能性薬液を回収する回収手段を備えるのが好ましい(請求項9)。
【0028】
上記発明(請求項9)によれば、機能性薬液で薬液洗浄手段により電子材料を洗浄した後、この機能性薬液を回収手段により回収して再び電気分解装置で電気分解して繰返し利用することによって、薬液の使用量、廃液量を大幅に削減するとともに、被洗浄材の処理時間を短縮し、スループットの向上を図ることができる。
【0029】
上記発明(請求項8,9)においては、前記機能性薬液を加熱する加熱手段を備えるのが好ましい(請求項10)。
【0030】
上記発明(請求項10)によれば、機能性薬液中に含有する過硫酸を有効に作用させ十分な洗浄効果を得るとともに、機能性薬液の沸騰を防止し、さらに装置を構成する部材の耐熱常用温度を超えてしまうのを防止し得る温度に加熱して、効率よく洗浄を行うことができる。
【0031】
上記発明(請求項8〜10)においては、前記薬液洗浄手段が、硫酸溶液を電気分解して過硫酸含有硫酸溶液を製造する電解反応装置を有するのが好ましい(請求項11)。
【0032】
上記発明(請求項11)によれば、硫酸を電解反応装置により電気分解して、洗浄に好適な過硫酸含有硫酸溶液を製造し、十分な洗浄効果を発揮させることができる。
【0033】
上記発明(請求項8〜11)においては、前記電解反応装置の電極の少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であるのが好ましい(請求項12)。
【0034】
上記発明(請求項12)によれば、陽極に導電性ダイヤモンド電極を用いることにより、洗浄能力の高い過硫酸を効果的に製造することができるとともに電極の耐久性を高めることができる。
【0035】
上記発明(請求項8〜12)においては、前記ウエット洗浄手段が、純水供給ラインと気体供給ラインとを有する二流体ノズルを備えるのが好ましい(請求項13)。
【0036】
上記発明(請求項13)によれば、気体と液体とから生成される液滴を効率よく噴出し、電子材料に悪影響を及ぼすことなく、ウエット洗浄を短時間で効率よく行うことができる。
【0037】
上記発明(請求項8〜13)においては、前記電子材料を固定可能な回転装置を備えるのが好ましい(請求項14)。
【0038】
上記発明(請求項14)によれば、電子材料を回転させつつ、電子材料表面に向けて機能性薬液や液滴の噴流を流しかける枚葉ごとのスピン洗浄を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の電子材料の洗浄方法によれば、気体と液体とから生成される液滴の噴流を接触させるウエット洗浄工程は、従来、ウエット洗浄に用いられてきたAPMやHPMに比べて、高い洗浄力を有するので、その後のリンス洗浄時間を短縮もしくはリンス洗浄を不要とすることができる。このようなウエット洗浄工程を、レジストの剥離能力に優れた機能性薬液による洗浄工程の後に配することにより、洗浄に要する時間を従来法に比べて大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子材料洗浄システムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電子材料洗浄システムを示すフロー図である。
【0042】
図1において、電子材料洗浄システムは、薬液洗浄手段1とウエット洗浄手段2と枚葉式洗浄装置3とを備える。薬液洗浄手段1は、図示しない濃硫酸タンクに接続した濃硫酸供給ライン4及び図示しない超純水製造装置に接続した純水供給ライン5がそれぞれ連通した機能性薬液貯留槽6と、この機能性薬液貯留槽6に濃硫酸電解ライン7を介して接続した電解反応装置8とを有し、この電解反応装置8は過硫酸供給ライン9を介して機能性薬液貯留槽6に連通することで循環ラインが形成されている。そして、この機能性薬液貯留槽6は、機能性薬液供給ライン10を介して枚葉式洗浄装置3に機能性薬液W1を供給可能となっている。なお、濃硫酸電解ライン7には送液ポンプ11及び冷却器12が、過硫酸供給ライン9には気液分離装置13が、機能性薬液供給ライン10には、薬液供給ポンプ14、フィルタ15及び加熱手段たる加熱器16がそれぞれ設けられている。この加熱器16は図示しない制御機構により、機能性薬液W1を後述する所定の温度に制御可能となっている。
【0043】
また、ウエット洗浄手段2は、図示しない超純水製造装置に接続した液体としての純水の供給ライン21と、気体としての窒素ガス源(図示せず)に連通した窒素ガス供給ライン22と、これら純水供給ライン21及び窒素ガス供給ライン22がそれぞれ接続した内部混合型の二流体ノズル23とを備え、二流体ノズル23の先端から窒素ガスと超純水とから生成される液滴W2を噴射可能となっている。
【0044】
枚葉式洗浄装置3は、洗浄ケース31と、この洗浄ケース31に設けられた回転装置32とを備え、この回転装置32には洗浄対象となる電子材料たるシリコンウエハ33が固定可能となっている。
【0045】
そして、枚葉式洗浄装置3には、回収手段41が付設されている。この回収手段41は、硫酸排液槽42と硫酸排液供給ライン43とからなり、この硫酸排液供給ライン43には、送液ポンプ44、フィルタ45及び冷却器46がそれぞれ設けられている。さらに、枚葉式洗浄装置3には、純水系廃液槽47が付設されている。
【0046】
上述したような構成の洗浄システムにおいて、電解反応装置8では、陽極と陰極とを対にして電気分解を行う。この電極の材質には、特に制限はないが、電極として一般に広く利用されている白金を陽極として使用した場合、過硫酸を効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。そこで、本実施形態においては、電極の少なくとも陽極に導電性ダイヤモンド電極を使用する。導電性ダイヤモンド電極を用い、電流密度0.2A/cm程度の条件下において、硫酸イオン又は硫酸水素イオンからペルオキソ二硫酸イオンを生成し得ることが知られている(Ch.Comninellis et al., Electrochemical and Solid-State Letters, Vol.3, No.2, pp.77-79, 2000)。
【0047】
上記導電性ダイヤモンド電極としては、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、この基板表面に導電性ダイヤモンド薄膜を膜厚20μm以上に合成させたものや、基板を用いず板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。なお、導電性ダイヤモンド薄膜はダイヤモンド薄膜の合成の際にホウ素又は窒素をドープして導電性を付与したものであり、通常はホウ素ドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20000ppmの範囲のものが適している。本実施形態において、導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。この電解反応装置8における電解処理においては、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100000A/mとし、濃硫酸をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を10〜10000m/hで接触処理させることが望ましい。
【0048】
また、洗浄対象となるシリコンウエハ33としては、例えば、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びそのフォトマスク等の製造工程において、レジストパターンが形成された電子材料を用いることができる。なお、通常、電子材料上のレジスト膜の厚さは0.1〜2.0μm程度であるが、何らこの厚さに限定されるものではない。
【0049】
前記構成の洗浄システムについてその作用を説明する。まず、濃硫酸供給ライン4より機能性薬液貯留槽6に濃硫酸を供給するとともに純水供給ライン5から純水を供給することで硫酸の濃度を調整する。このとき機能性薬液貯留槽6中の硫酸の濃度が80〜96質量%となるようにするのが好ましい。
【0050】
そして、機能性薬液貯留槽6に所定量の濃硫酸が貯まったら、送液ポンプ11を起動して電解反応装置8に濃硫酸を供給する。このとき電気分解温度が過度に高いと電解効率が低下し、また、電極の損耗も大きくなる。ただし、電気分解温度を過度に低くすると、後述する薬液洗浄工程に用いる際の加熱エネルギーが大きくなることから、冷却器12で10〜90℃、特に40〜80℃に濃硫酸を冷却するのが好ましい。そして、電解反応装置8で硫酸を電気分解することにより、過硫酸を生成させる。
【0051】
本実施形態で生成させる過硫酸とは、ペルオキソ一硫酸(HSO)及びペルオキソ二硫酸(H)を示す。これらペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸は、いずれも高い酸化力を有する。
【0052】
このようして生成した過硫酸は、過硫酸供給ライン9から機能性薬液貯留槽6に還流する。これを繰り返すことにより機能性薬液貯留槽6に過硫酸と硫酸とからなる機能性薬液W1を貯留し、硫酸濃度が80〜96質量%(過硫酸濃度2〜20[g/L(asS)])になったら、薬液供給ポンプ14を起動して、機能性薬液供給ライン10から機能性薬液W1を枚葉式洗浄装置3に供給する。過硫酸濃度が2[g/L(asS)]未満では酸化力が不足し、レジストの剥離効果等十分なシリコンウエハ33の洗浄効果が得られない一方、20[g/L(asS)]を超えると電流効率の面から非効率的である。
【0053】
このとき機能性薬液W1の温度が低温過ぎると十分な洗浄効果を得ることができない一方、高温過ぎると、硫酸濃度等にもよるが硫酸溶液が沸騰してしまうことから、加熱器16により100〜200℃、特に100〜180℃に加熱するのが好ましい。
【0054】
そして、機能性薬液供給ライン10から枚葉式洗浄装置3の回転装置32に固定されたシリコンウエハ33に、機能性薬液W1を供給するとともにシリコンウエハ33を回転させて、機能性薬液W1をシリコンウエハ33に接触させることにより、シリコンウエハ33上のレジスト等を剥離する(薬液洗浄工程)。
【0055】
上述したような薬液洗浄工程の洗浄の時間は特に制限はなく、被洗浄材であるシリコンウエハ33へのレジストの付着状況、この剥離洗浄に先立つアッシング処理の有無、機能性薬液W1中の過硫酸濃度や溶液温度、その後のウエット洗浄工程の条件等によっても異なるが、通常10〜300秒、特に15〜120秒程度とすることが好ましい。
【0056】
このようにして洗浄した機能性薬液W1は、回収手段41の硫酸排液槽42に貯留された後、送液ポンプ44により硫酸排液供給ライン43から、機能性薬液貯留槽6に戻される。このとき、前述したように硫酸の温度が過度に高温であると電解効率が低下し、また、電極の損耗も大きくなるので、冷却器46により10〜90℃、特に40〜80℃に硫酸排液を冷却した後、機能性薬液貯留槽6に戻すのが好ましい。
【0057】
このようにして薬液洗浄工程を終了したらウエット洗浄工程に移行するが、このレジストの剥離洗浄工程とウエット洗浄工程との間で、リンス水によるリンス洗浄を行っても良い。ただし、リンス洗浄は必須ではなく、これを行わずにウエット洗浄を行っても良い。リンス洗浄工程を行う場合、リンス水としては通常超純水が使用される。ここで、超純水とは、例えば、電気比抵抗が18MΩ・cm以上で、金属イオン濃度が5ng/L以下で、残留イオン濃度が10ng/L以下で、1mL中に0.1μm以上の微粒子数が5個以下で、TOCが0.1〜10μg/Lの水質を有する水をいう。
【0058】
ウエット洗浄工程では、純水供給ライン21から純水を供給するとともに、窒素ガス供給ライン22から窒素ガスを供給して内部混合型の二流体ノズル23で合流させる。この二流体ノズル23では、窒素ガスと純水とをノズル内部にて混合して、二流体ノズル23から枚葉式洗浄装置3の回転装置32に固定されたシリコンウエハ33に、窒素ガスと超純水とから生成される液滴W2をシリコンウエハ33に接触させることにより、シリコンウエハ33を洗浄する(ウエット洗浄工程)。
【0059】
上述したようなウエット洗浄工程の洗浄の時間は特に制限はなく、前述の薬液洗浄工程の条件や、ウエット洗浄工程の条件等によっても異なるが、通常10〜300秒、特に15〜120秒程度とすることが好ましい。また、窒素ガス(気体)と純水とは、純水の体積1に対して窒素ガス(気体)を10〜10000供給すればよい。
【0060】
上記ウエット洗浄後は、常法に従って、スピン乾燥、IPA乾燥することにより一連のレジスト剥離洗浄除去処理を終了し、レジストを除去した電子材料は、次工程へ送給される。
【0061】
また、上述したように洗浄した後の液滴W2は、純水系廃液槽47に貯留された後、所定の処理を経由した後、外部環境に放出あるいは再利用される。
【0062】
このような操作を連続的あるいは断続的に繰り返すことにより、シリコンウエハ33を順次処理することができる。なお、一枚のシリコンウエハ33に対して上記操作を複数回繰り返してもよい。
【0063】
以上、本発明を前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されない。
【0064】
例えば、本実施形態においては、枚葉式洗浄の場合について説明してきたが、バッチ式洗浄にも適用可能である。
【0065】
また、本実施形態においては、気体と液体とから生成される液滴として、窒素ガスと純水とからなるものを用いたが、この気体としては、オゾンガス、水素ガス、酸素ガス等の種々のガスを用いることができる。
【0066】
さらに、前記実施形態においては、電子材料に対してアッシングを行わない場合について説明してきたが、機能性薬液洗浄を行うに先立ち、アッシング処理を行ってもよい。アッシング処理は、常法に従って、酸素プラズマ等により、電子材料上のレジストを灰化処理することにより行われる。ただし、本発明において、硫酸溶液の電気分解により製造した過硫酸含有硫酸溶液を用いればアッシング処理を省略しても、レジスト残渣の問題を引き起こすことなく、確実にレジストを洗浄除去することができ、アッシング処理の省略で、一連のレジスト剥離処理に要する時間とコストの大幅な削減が可能となる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0068】
〔実施例1〕
図1に示す試験装置を使用して、KrFエキシマレーザ用でパターン有、Asイオンの注入濃度1E+15[atoms/cm]でレジストを形成した12インチウエハのレジストを剥離除去する試験を行った。
【0069】
試験条件は、硫酸濃度が92質量%、過硫酸濃度が10g/L(asS)程度になるように調整しながら電解反応装置8で電解した硫酸(機能性薬液W1)を、機能性薬液貯留槽6に約30L保有させ、この機能性薬液W1を薬液供給ポンプ14により加熱器16で加熱しながら枚葉式洗浄装置3に供給した。加熱器16では機能性薬液W1を180℃まで加熱し、枚葉式洗浄装置3内に固定されたシリコンウエハ33に160〜170℃で供給して薬液洗浄工程を行った。この薬液洗浄工程は、機能性薬液W1のシリコンウエハ33への供給量を約1L/分とし、2分間連続して機能性薬液W1を供給することにより行った。続いて、純水100mL/分、Nガス50L/分の流量で二流体ノズル23に供給した液滴W2の噴流によって60秒間洗浄し、ウエット洗浄工程を行った。その後スピン乾燥を行ってレジスト剥離処理を完了したところ、機能性薬液W1の供給開始から、レジスト剥離処理の完了まで、スピン乾燥を含めて4分間で完了することができた。
【0070】
〔実施例2〕
実施例1において、薬液洗浄工程の時間を30秒間とするとともにウエット洗浄工程の時間を30秒間とし、これを2度繰り返した後、スピン乾燥を行った以外は同様にしてレジスト剥離処理を行った。その結果、機能性薬液W1の供給開始から、レジスト剥離処理の完了まで、スピン乾燥を含めて4分で完了することができた。
【0071】
〔比較例1〕
実施例1において、ウエット洗浄工程を純水2L/分で1分間とした後、スピン乾燥を行った以外は同様にしてレジスト剥離処理を行った。その結果、シリコンウエハ33上にレジスト残渣が多数付着したままで、レジスト剥離処理は完了していなかった。そこで、処理の完了しなかったレジスト残渣付きのシリコンウエハ33に対し、さらに機能性薬液W1による洗浄を2分間行い、純水2L/分で1分間処理したが、レジスト残渣は目視でも完全に取れないことが確認された。これらのことから、ウエット洗浄工程を純水で行っただけでは、薬液洗浄工程における機能製薬液W1の量又は洗浄時間を2倍としてもレジストの剥離が困難であることがわかった。
【0072】
〔比較例2〕
実施例1において、薬液洗浄工程の時間を10分間とするとともにウエット洗浄工程を純水2L/分で1分間とした後、スピン乾燥を行った以外は同様にしてレジスト剥離処理を行った。その結果、シリコンウエハ33上にレジスト残渣が多数付着したままで、レジスト剥離処理は完了していなかった。そこで、薬液洗浄工程の時間をレジストの残留がなくなるまで順次延長したところ、薬液洗浄工程が15分は必要であることが確認された。これらのことからウエット洗浄工程を純水のみで行った場合には、薬液洗浄工程における洗浄時間を非常に長くとる必要があり、洗浄効率が良好でないことがわかった。
【符号の説明】
【0073】
1…薬液洗浄手段
2…ウエット洗浄手段
3…枚葉式洗浄装置
6…機能性薬液貯留槽(薬液洗浄手段)
8…電解反応装置(薬液洗浄手段)
10…機能性薬液供給ライン(薬液洗浄手段)
14…薬液供給ポンプ(薬液洗浄手段)
16…加熱器(加熱手段:薬液洗浄手段)
21…純水供給ライン(ウエット洗浄手段)
22…窒素ガス供給ライン(ウエット洗浄手段)
23…二流体ノズル(ウエット洗浄手段)
33…シリコンウエハ(電子材料)
41…回収手段
42…硫酸排液槽(回収手段)
43…硫酸排液供給ライン(回収手段)
W1…機能性薬液
W2…窒素ガスと超純水とから生成される液滴(気体と液体とから生成される液滴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸を電気分解して得られる機能性薬液を電子材料に接触させる薬液洗浄工程と、
気体と液体とから生成される液滴の噴流を前記電子材料に接触させるウエット洗浄工程と
を有することを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【請求項2】
前記電子材料に接触させた機能性薬液を回収し、当該機能性薬液を再度電気分解して再利用することを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項3】
前記機能性薬液を100〜200℃に加熱された状態で電子材料に接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項4】
前記機能性薬液が、硫酸濃度80〜96質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項5】
前記硫酸の電気分解に用いる電極の少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であり、
前記機能性薬液が、前記陽極での酸化反応によって生成する過硫酸を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項6】
前記気体と液体とから生成される液滴の噴流が、窒素、酸素、希ガス、清浄空気、二酸化炭素、オゾンから選ばれる1種のガスまたは2種以上の混合ガスと、純水とから生成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項7】
前記電子材料が、回転装置に固定されて枚葉洗浄されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項8】
硫酸を電気分解して得られる機能性薬液を電子材料に接触させる薬液洗浄手段と、
気体と液体とから生成される液滴の噴流を前記電子材料に接触させるウエット洗浄手段と
を備えたことを特徴とする電子材料洗浄システム。
【請求項9】
前記電子材料に接触させた機能性薬液を回収する回収手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の電子材料洗浄システム。
【請求項10】
前記機能性薬液を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の電子材料洗浄システム。
【請求項11】
前記薬液洗浄手段が、硫酸溶液を電気分解して過硫酸含有硫酸溶液を製造する電解反応装置を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の電子材料洗浄システム。
【請求項12】
前記電解反応装置の電極の少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の電子材料洗浄システム。
【請求項13】
前記ウエット洗浄手段が、純水供給ラインと不活性ガス供給ラインとを有する二流体ノズルを備えることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の電子材料洗浄システム。
【請求項14】
前記電子材料を固定可能な回転装置を備えることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の電子材料洗浄システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−192779(P2011−192779A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57246(P2010−57246)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】