説明

電子部品用絶縁材料

【課題】高接着性、低熱膨張性、低誘電損失性及び加工性に優れた電子部品用絶縁材料を提供する。
【解決手段】電子部品用絶縁材料を、85〜99.9重量部の熱硬化性化合物に分子量1000以下の多官能架橋助剤を0.1〜15重量部添加した架橋樹脂成分と、高分子量成分10〜50重量部と、無機フィラー40〜400重量部とを含む樹脂組成物で構成し、前記高分子量成分の伸び率を700%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用絶縁材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化が進行し、それに用いる電子回路基板に関して、多層化、微細配線化、配線間距離の短縮など、配線の高密度化による基板サイズの小型化が検討されている。半導体素子などの電子部品を基板上に搭載した半導体装置においても、従来の金属キャップを設ける方式から、樹脂封止によるパッケージングによる方式へシフトしており、半導体装置の小型化、薄型化及び低コスト化が図られている。
【0003】
上記の高密度化、小型化及び薄型化を達成するためには、配線及び電子部品の接続信頼性を高めることが不可欠である。とりわけ、多層基板及び封止材料の高接着化及び低熱膨張化が強く求められる。
【0004】
また、PHS、携帯電話等の情報通信の大容量高速化、コンピュータのCPUクロック周波数の高周波数化が進行している。電気信号の伝送損失は、主に誘電損失と導体損失、放射損失からなり、電気信号の周波数が高くなるほど、伝送損失は大きくなる傾向にある。伝送損失は電気信号を減衰させ、電気信号の信頼性を損なうため、高周波信号を取り扱う配線板においては、誘電損失、導体損失、放射損失の増大を抑制する工夫が必要である。
【0005】
誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数に比例する。そのため、絶縁体として比誘電率及び誘電正接の低い絶縁材料を選定することで誘電損失の増大を抑えることができる。
【0006】
導体損失は、高周波電流が回路を流れる際に、電流密度が導体の表面に近づくほど高くなり、導体の表面から離れると低くなる現象(表皮効果)に由来する。そのため、導体層の表面粗さを小さくすることによって低減が可能となる。しかし、導体層の表面粗さを小さくすると、絶縁層との接着性が低下するという新たな問題を生じる。
【0007】
以上の点から、高接着化、低熱膨張化に加えて、低誘電損失化についても絶縁材料の満たすべき性能といえる。
【0008】
従来の代表的な低誘電損失材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は比誘電率、誘電正接が低く、古くから高周波信号用の基板材料として使用されている。しかし、PTFE等は高温で変形が起こりやすく、加工性及び接着性が低いため、封止材料や多層基板への適用は極めて困難である。
【0009】
これに対して、有機溶剤によるワニスの調製が容易であり、成型温度及び硬化温度が低く、取扱い性に優れた非フッ素系の低誘電率、低誘電正接の絶縁材料も種々検討されてきた。
【0010】
例えば、特許文献1には、ポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例が開示されている。
【0011】
特許文献2には、シアネートエステル、ジエン系ポリマー及びエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例が開示されている。
【0012】
特許文献3には、アリル化ポリフェニレンエーテル及びトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例が開示されている。
【0013】
特許文献4には、複数のスチレン基を有する架橋成分を含む低誘電正接樹脂組成物が開示されている。
【0014】
特許文献5には、全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物を架橋成分として用いる例が開示されている。
【0015】
しかし、高接着性、低熱膨張性及び低誘電損失性を全て満足する系は依然として見出されていない。
【0016】
一方、配線板の絶縁層に用いる際には、基材としてガラスクロスが含まれる場合が多く、基材の低誘電率、低誘電正接化の検討も種々行われてきた。
【0017】
例としては、特許文献6に記載の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素等の配合比を規定したNEガラスクロス、特許文献7に記載の石英ガラス繊維と非石英ガラス繊維を複合化したガラスクロス、特許文献8に記載の直径7μm以下の細線石英クロス繊維、それを用いたクロスの製造方法等を挙げることができる。
【0018】
低誘電率、かつ低誘電正接であるクロス又は不織布と、高接着性、低熱膨張性及び低誘電損失性を全て満足する絶縁材料とを複合化することによって、高周波信号の伝送特性に優れ、微細配線加工に対応しつつ、優れた信頼性を有する高周波用プリント基板、多層プリント基板及びそれに用いる積層板、プリプレグ等の配線板材料を得ることができる。
【0019】
また、特許文献9には、ポリフェニレンエーテルの優れた特性を維持しながら、低沸点の汎用溶剤に可溶であり、配線基板のプロセス加工性に優れた低誘電損失樹脂組成物を提供することを目的として、特定の構造式で示される繰り返し単位からなる共重合体である多層配線基板用低誘電損失樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平08−208856号公報
【特許文献2】特開平11−124491号公報
【特許文献3】特開平09−246429号公報
【特許文献4】特開2002−249531号公報
【特許文献5】特開2005−89691号公報
【特許文献6】特開平09−74255号公報
【特許文献7】特開2005−336695号公報
【特許文献8】特開2006−282401号公報
【特許文献9】特開2006−93690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、高接着性、低熱膨張性、低誘電損失性及び加工性に優れた電子部品用絶縁材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の電子部品用絶縁材料は、85〜99.9重量部の熱硬化性化合物に分子量1000以下の多官能架橋助剤を0.1〜15重量部添加した架橋樹脂成分と、高分子量成分10〜50重量部と、無機フィラー40〜400重量部とを含む樹脂組成物で構成され、前記高分子量成分の伸び率が700%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高接着性、低熱膨張性、低誘電損失性及び加工性に優れた電子部品用絶縁材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による実施例の電子部品用絶縁材料が有する平衡弾性率の温度依存性を示すグラフである。
【図2】本発明による実施例の電子部品用絶縁材料に含まれるエラストマーの伸び率に対する銅箔ピール強度及び熱膨張係数を示すグラフである。
【図3】本発明のモジュール前駆体の製造工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明の銅張積層板に層間配線を形成する工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、電子部品(例えば、半導体素子など)の封止材及び多層基板用プリプレグに適用可能な電子部品用絶縁材料に関し、特に、低熱膨張性及び高接着性を両立する電子部品用絶縁材料、及びこれを用いた封止材、液状ポッティング剤、封止用樹脂フィルム、電子部品用接着フィルム、プリプレグシート、積層板等の配線板材料、並びにプリント基板に関する。
【0026】
上記の背景技術に記載したように、半導体装置の小型化、薄型化及び低コスト化を達成するためには、配線及び電子部品の接続信頼性を高めることが不可欠である。とりわけ、電子部品や配線回路に接する封止材料は、回路に加わる熱や応力等による変形又は破損が起こらない構成とすることが肝要であり、多層基板及び封止材料の高接着化及び低熱膨張化が強く求められる。
【0027】
本発明の目的は、電子部品の実装及び封止を一括で行うことを可能とする、低熱膨張性及び高接着性を有する電子部品用絶縁材料、及びこの電子部品用絶縁材料を用いた電子部品用封止材、並びにこの電子部品用封止材を用いたモジュールを提供することにある。
【0028】
また、特許文献5においては、誘電正接の値が極めて低い多官能スチレン化合物を架橋成分とする樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、配線板、多層配線板等の配線板材料が開示されている。その絶縁層の誘電正接は、10GHzにおいて0.0009と極めて優れた特性を示す。しかし、特許文献5に記載された積層板、配線板及び多層配線板は、穴あけ加工性(ドリル加工性)に関して改善の余地があった。すなわち、石英ガラスクロスを適用した積層板、配線板及び多層配線板は、非常に硬く、ドリル等による穴あけ加工性が一般のガラスクロスを用いた場合と比較して十分ではない。
【0029】
我々は、石英ガラスクロスの低誘電正接を維持しながら、加工性を改善する技術として、石英繊維と、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン繊維とを複合化した複合クロスを用いた技術や、薄く粗密な構造を有する薄物石英クロスを適用する技術を見出し、検討を進めてきた。その結果、複合クロス及び薄物石英クロスの実用化に向けた共通の課題として、積層板又はプリント基板に適用した際の厚み方向(Z軸方向)の熱膨張係数(以下、熱膨張係数と略す。)の低減を見出した。
【0030】
これは、複合クロスの場合、クロス中に含まれるオレフィン繊維の影響により、熱膨張係数が大きくなる傾向にあり、薄物石英クロスの場合、プリプレグの製造時に樹脂組成物が過剰に塗布されやすいため、系内の低熱膨張成分であるガラス繊維等の含有率が低下し、積層板及びプリント基板の熱膨張係数が増大するものであった。
【0031】
熱膨張率の問題は、樹脂組成物中に石英等の低熱膨張性の無機フィラーを高充填することによって解決される。しかし、一般に、無機フィラーを高充填した樹脂組成物は硬く、脆い硬化物を形成するため、導体層との接着力が低下するという新たな問題を生じる。また、樹脂組成物の加熱硬化前の高温流動性が著しく損なわれるため、加工成型性が低く、過剰量の無機フィラー充填は好ましくない。
【0032】
無機フィラーの高充填化が必要となる根本の理由としては、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の熱膨張率が依然として高く、無機フィラー等の強固な支持が不可欠である点が挙げられる。逆に、樹脂成分の熱膨張率を低く抑えることにより、過剰量の無機フィラーを用いることなく低熱膨張化が達成可能であると推定できる。また、フィラー添加量の低減によって、樹脂組成物の接着力も向上すると考えられる。
【0033】
また、本発明のもう一つの目的は、無機フィラー充填量が高い条件は勿論、無機フィラー充填量が低い条件においても高接着性と低熱膨張性との両立が可能となる電子部品用絶縁材料を提供することにある。
【0034】
また、本発明の更にもう一つの目的は、上記の電子部品用絶縁材料と低誘電損失クロスとの複合化による配線板材料への応用、低誘電損失性、低熱膨張性、高接着性及び優れたドリル加工性を全て満たすプリプレグ、積層板、プリント配線板及び多層プリント基板を提供することにある。
【0035】
本発明は、以下の構成を特徴とする。
【0036】
(1)本発明の電子部品用絶縁材料は、85〜99.9重量部の熱硬化性化合物(A)に分子量1000以下の多官能架橋助剤(B)を0.1〜15重量部添加した架橋樹脂成分と、高分子量成分(C)10〜50重量部と、無機フィラー(D)40〜400重量部とを含む樹脂組成物で構成され、前記高分子量成分の伸び率(破断伸び率ともいう。)が700%以上であることを特徴とする。
【0037】
(2)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(1)に加え、下記数式(1)で示される前記樹脂組成物の硬化物の架橋密度が2.0mol/L(モル/リットル)以上である。
【0038】
【数1】

【0039】
(3)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(1)又は(2)に加え、前記熱硬化性化合物が熱硬化性ポリフェニレンエーテル化合物であり、前記高分子量成分が水素添加されたスチレン系エラストマーであり、前記無機フィラーが球状酸化ケイ素フィラーであることを特徴とする。
【0040】
(4)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)に加え、前記熱硬化性ポリフェニレンエーテル化合物は、下記化学式(1)又は(2)で表され、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が1000〜15000の化合物であることを特徴とする。
【0041】
【化1】

【0042】
(上記化学式(1)は、1種又は2種のフェノール誘導体を含む重合体若しくはランダム共重合体を表し、l及びmは重合度であり、少なくとも一方は0ではない整数で表され、この重合体若しくはランダム共重合体は分子量分布を有していてもよい。R、R、R、R、R、R、R及びRは、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つ以上が炭素数2〜10の不飽和炭化水素基を含む炭化水素基である。Rは、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
【0043】
【化2】

【0044】
(上記化学式(2)は、フェノール誘導体を含む重合体を表し、n及びoは重合度であり、少なくとも一方は0ではない整数で表され、この重合体は分子量分布を有していてもよい。p及びqは、それぞれ独立であり、0又は1の整数を表す。R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R18、R19、R20及びR21は、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよい。W及びXは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。Y及びZは、下記化学式(3)又は(4)で表される構造を有する。)
【0045】
【化3】

【0046】
(上記化学式(3)は、スチレン骨格を有する官能基を表し、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【0047】
【化4】

【0048】
(上記化学式(4)は、エポキシ骨格を有する架橋基を表し、R29は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。R30、R31及びR32は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
(5)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)又は(4)に加え、前記多官能架橋助剤が、環構造に窒素原子を含む複素環式化合物を少なくとも1種類以上含むことを特徴とする。
【0049】
(6)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(5)に加え、前記複素環式化合物が、下記化学式(5)又は(6)で表される化合物であることを特徴とする。
【0050】
【化5】

【0051】
(上記化学式(5)において、R33、R34及びR35は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43及びR44は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【0052】
【化6】

【0053】
(上記化学式(6)において、R45、R46及びR47は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55及びR56は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
(7)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(6)のいずれかに加え、前記水素添加されたスチレン系エラストマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が50000〜100000であり、スチレン含有率が10〜40重量%であることを特徴とする。
【0054】
(8)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(7)のいずれかに加え、前記球状酸化ケイ素フィラーの平均粒径が0.2〜3μmであり、その表面にビニル系、メタクリレート系、アクリレート系又はスチレン系のシランカップリング剤が少なくとも一種類が担持されていることを特徴とする。
【0055】
(9)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(8)のいずれかに加え、さらに、下記化学式(7)若しくは(8)で表される難燃剤のうち、少なくとも一種類以上を含むことを特徴とする。
【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
(10)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(9)のいずれかに加え、さらに、下記化学式(9)で表される多官能スチレン化合物を含むことを特徴とする。
【0059】
【化9】

【0060】
(上記化学式(9)は、複数のスチレン型骨格を有する多官能スチレン化合物を表し、rは2以上の整数を表す。R57、R58、R59、R60、R61、R62及びR63は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R64は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。)
(11)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(10)のいずれかに加え、さらに下記化学式(10)で表されるビスマレイミド化合物を含むことを特徴とする。
【0061】
【化10】

【0062】
(上記化学式(10)において、R65は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72及びR73は、炭素数1〜4の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
(12)本発明の電子部品用絶縁材料は、上記の特徴(3)〜(11)のいずれかに加え、さらに、下記化学式(11)で表される1、2−ポリブタジエン化合物を含むことを特徴とする。
【0063】
【化11】

【0064】
(上記化学式(11)において、sは重合度であり、1以上の整数で表される。この化合物は、分子量分布を有していてもよく、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が100000〜200000である。)
(13)本発明の電子部品用封止材は、上記の特徴(1)〜(12)のいずれかを有する電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする。
【0065】
(14)本発明のモジュールは、上記の特徴(13)を有する電子部品用封止材と、配線パターンが形成された基板と、電子部品とを積層した構成を有することを特徴とする。
【0066】
(15)本発明の液状ポッティング剤は、上記の特徴(1)〜(12)のいずれかを有する電子部品用絶縁材料50〜90重量部を有機溶媒に溶解させた構成であることを特徴とする。
【0067】
(16)本発明の電子部品封止用樹脂フィルムは、上記の特徴(1)〜(12)のいずれかを有する電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする。
【0068】
(17)本発明の電子部品用接着フィルムは、上記の特徴(1)〜(12)のいずれかを有する電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする。
【0069】
(18)本発明のプリプレグは、上記の特徴(1)〜(12)のいずれかを有する電子部品用絶縁材料を、クロス又は不織布に含浸した構成であることを特徴とする。
【0070】
(19)本発明のプリプレグは、上記の特徴(18)に加え、クロス又は不織布が石英繊維を含むことを特徴とする。
【0071】
(20)本発明のプリプレグシートは、上記の特徴(18)又は(19)に加え、クロス又は不織布がポリオレフィン繊維を含むことを特徴とする。
【0072】
(21)本発明の積層板は、上記の特徴(18)〜(20)のいずれかを有するプリプレグを硬化させた硬化物の片面又は両面に導体層を設けたことを特徴とする。
【0073】
(22)本発明のプリント基板は、上記の特徴(18)〜(20)のいずれかを有するプリプレグを硬化させた硬化物の片面又は両面に導体配線を設けたことを特徴とする。
【0074】
(23)本発明の多層プリント基板は、上記の特徴(22)を有するプリント基板と、上記の特徴(18)〜(20)のいずれかを有するプリプレグとを交互に複数枚積層して接着した構成を有し、前記プリント基板及び前記プリプレグを電気的に接続する層間配線を有することを特徴とする。
【0075】
(24)本発明のモジュールの製造方法は、上記の特徴(13)を有する電子部品用封止材と、配線パターンが形成された基板と、電子部品とを積層した構成を有するモジュールの製造方法であって、前記基板の上に前記電子部品を設置して固定する部品固定工程と、前記電子部品を固定した前記基板の上に前記電子部品用封止材を設置し、加熱成型によって固定する成型工程とを含むことを特徴とする。
【0076】
半導体の封止材やプリント基板においては、絶縁材料の低熱膨張化が求められており、とりわけ多層プリント基板においては、Z軸方向の低熱膨張化がスルーホール、ブラインドビアホールを用いた層間接続の信頼性向上の観点から重要な課題である。一般に、樹脂を低熱膨張化する技術としては、フィラーを高充填化する技術が知られている。
【0077】
しかし、フィラーを高充填化した絶縁層は硬く、脆いことから、導体層及び電子部品と絶縁層との接着性が損なわれる。当該接着性の向上についても重要な課題であり、本業界では0.7kN/m以上が好ましいとされる。
【0078】
プリント基板において、導体層と絶縁層との接着性を改善する技術としては、表面粗さの大きな導体層を適用する技術、或いは樹脂系内にエラストマー成分を添加する技術が知られている。しかし、表面粗さの増大は、導体損失の増大を招くことから好ましくない。
【0079】
通常、導体の表面粗さ(10点平均表面粗さ、Rz、以下、表面粗さと称す)は7μm程度であるが、高周波信号用プリント基板においては導体層の表面粗さは3μm以下が好ましいとされている。
【0080】
また、エラストマー成分の増量は接着性の向上に一定の効果を示すものの、熱膨張係数が著しく増加するため、高温条件下での形状維持が困難となる。加えて、エラストマー成分の増量は吸湿耐熱性及び耐溶剤性の劣化を招くという問題があるため、従来の絶縁材料では、本検討の課題に合致する低熱膨張性と高接着性との両立は困難であった。
【0081】
我々は、上記の課題に対して、低熱膨張化の方策について鋭意検討した結果、複数の成分が含まれる樹脂複合化物において、樹脂中に含まれる架橋成分の架橋密度と熱膨張係数との間に密接な関係にあることを見出した。また、多官能の架橋助剤を加えることにより緻密な三次元網目構造が形成され、樹脂複合化物の架橋密度が上昇し、その結果として低熱膨張化が達成できることを新規に見出した。
【0082】
架橋成分の架橋密度n(mol/L)は、一般的に、動的熱弾性測定における平衡弾性率E’(Pa)(ガラス転移温度以上の温度において、平衡に達した際の貯蔵弾性率の値)と平衡弾性率到達時の絶対温度Tとから求めることができる。架橋助剤の添加によって緻密な三次元網目構造を形成することで、架橋密度は2.0(mol/L)以上の値を示し、架橋密度の上昇に伴って低熱膨張化が進んだと推定できる。
【0083】
また、樹脂材料の低熱膨張化によって、過剰量の無機フィラー添加時は言うまでもなく、添加量の少ない条件においても本検討の課題に合致する低熱膨張性を維持できることを見出した。
【0084】
また、少量のエラストマー成分添加によっても樹脂系の接着性が高められる方法として、エラストマーの破断伸びに着目し、破断伸びが700%以上となる材料を適用することで、特異的に高い接着性が発現することを見出した。緻密な三次元網目構造を形成した架橋成分の中に、伸び率が高く柔軟なエラストマー成分を含む微小なドメインが含まれることで、接着界面の生じる応力を系内のエラストマー成分が効果的に分散し、剥離部分への応力集中を緩和するためであると考えられる。
【0085】
低熱膨張性と高接着性とを両立する樹脂組成物の基本構成は、架橋成分(A)を85〜99.9重量部に分子量1000以下の多官能架橋助剤(B)を0.1〜15重量部添加した架橋樹脂成分、伸び率が700%以上である高分子成分(C)を10〜50重量部含む接着成分及び無機フィラー(D)を40〜400重量部含有する樹脂組成物であることが望ましい。上記の構成において、無機フィラー(D)は、40〜400重量部であることが望ましく、ドリル穴あけや加工性等を勘案した構成とする場合には40〜100重量部であることがより好ましい。本構成比とすることによって、低熱膨張性と高接着性との両立が可能となる。
【0086】
架橋成分と高分子量成分との組み合わせは自由に選定できる。この組み合わせにおいては、両者が同一の単独溶媒又は同一組成の混合溶媒に溶解可能な性質を有するものとすることが、ワニス化、プリプレグ化等の作業性の観点から好ましい。
【0087】
具体的には、架橋成分が複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有するフェノール樹脂、複数のシアネート基を有するシアネート樹脂、複数のアクリレート基又はメタクリレート基を有するアクリレート樹脂及びエポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。架橋助剤としては、分子量1000以下の化合物であり、一分子の中に複数の架橋基を含む多官能性の化合物であれば本検討に挙げる効果を得ることが可能となるが、特に好ましい化合物としては、窒素原子を構造に含む多官能性複素環式化合物である。
【0088】
具体的には、トリアジン環を骨格に含む化合物であり、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。高分子量体としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エポキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ポリアミドエラストマー、スチレン−ブタジエンの共重合体、スチレン−ブタジエン−エチレンの共重合体、スチレン−エチレン、ブチレンの共重合体等の組み合わせが挙げられる。
【0089】
架橋成分(A)と架橋助剤(B)との配合比は、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、架橋成分を85〜99.9重量部配合することが好ましく、より好ましくは90〜99.9重量部である。架橋助剤は極めて少量の添加においても架橋密度の向上を達成することが可能である。逆に、過剰に架橋助剤を添加すると架橋樹脂成分が密になりすぎてしまい、高分子量体の微小なドメインが破れる場合がある。また、この結果として高分子量体の効果によって接着性は高いものの、樹脂成分の熱膨張が増大する場合がある。
【0090】
また、高分子成分(C)の配合比は、概ね、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、高分子成分を10〜50重量部配合することが好ましく、より好ましくは15〜30重量部である。高分子成分の添加量が多いと熱膨張係数が大きくなる場合があるほか、耐溶剤性及び耐熱性の低下を招く場合がある。
【0091】
無機フィラー(D)の配合比は、フィラーの形状、所望の熱膨張係数により任意に調整することが可能であるが、樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数αが50ppm/℃以下、より好ましくは、30ppm/℃以下となるように調整することである。このような構成とすることによって、封止材の低熱膨張化及び、クロスや不織布の種類によらない積層板、プリント基板及び多層プリント基板の低熱膨張化が可能となる。
【0092】
具体的な無機フィラーの配合比は、樹脂そのものの熱膨張係数や、要求される加熱成型時の加工性などにも影響されるが、概ね、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、40重量部以上添加することが好ましい。より好ましくは50〜400重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。
【0093】
球状酸化ケイ素フィラーの添加量の限界は、概ね75vol%とされており、樹脂成分の比重を1g/cm、酸化ケイ素の比重を2.65g/cmとした場合には、樹脂成分100重量部に対して796重量部である。なお、成形性を考慮した場合の酸化ケイ素フィラーの添加量は、およそ400重量部以下であることが好ましい。
【0094】
本発明の低熱膨張性樹脂組成物を高周波機器の絶縁材料に適用する場合には、架橋成分(A)として熱硬化性のポリ(フェニレンエーテル)樹脂を適用することが好ましく、特に好ましい例としては、ワニス化溶媒に対する溶解性が高く、誘電特性も優れているスチレン換算数平均分子量が1000〜15000である、上記化学式(1)及び(2)で表される熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)を挙げることができる。また、上記化学式(2)におけるポリ(フェニレンエーテル)において、その末端官能基の構造が上記化学式(3)に示すようなスチレン骨格を有する官能基、又は上記化学式(4)に示すようなエポキシ骨格を有する官能基を用いることで、熱硬化反応性に優れた架橋成分とすることができる。
【0095】
本発明の低熱膨張性樹脂組成物の架橋助剤(B)として分子量1000以下の化合物であり、好ましい化合物としては、上記化学式(5)及び(6)で表される窒素原子を構造に含む多官能性複素環式化合物である。具体的には、トリアジン環を骨格に含む化合物であり、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0096】
架橋成分(A)として熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)を使用した場合には、高分子量成分(C)としてはポリ(フェニレンエーテル)との相溶性に優れたスチレン系エラストマーを用いることが好ましく、特に、その中でも水素添加されたスチレン系エラストマーを使用することが誘電特性の観点から好ましい。水素添加されたスチレン系エラストマーの好ましい例としては、スチレン含有率が10〜40wt%であり、スチレン換算数平均分子量が50000〜100000である水素添加されたスチレン−エチレン、ブチレンの共重合体のうち、伸び率が700%以上の高分子量体を挙げることができる。そのような高分子量成分の具体例としては、旭化成ケミカルズ製、タフテック(登録商標)H1052、H1221、H1272等を挙げることができる。
【0097】
無機フィラーとしては、樹脂組成物の硬化物の誘電特性を改善するために、酸化ケイ素フィラーを用いることが好ましく、また、フィラーを高充填化するためには球状のフィラーを用いることが好ましい。球状酸化ケイ素フィラーの粒径には特に制限は無いが、低熱膨張性樹脂組成物をワニス化した際、ワニス中で著しい沈殿が生じず、かつ表面積が大きいことに起因して低熱膨張化への寄与が大きい小径フィラーを好ましく使用する。具体的な球状酸化ケイ素フィラーの粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.2〜3μmの範囲であることがより好ましい。球状酸化ケイ素フィラーは、その表面をシラン系カップリング剤にて表面処理して用いることが、誘電特性、低吸湿性、はんだ耐熱性を改善する観点から好ましい。
【0098】
カップリング剤による球状酸化ケイ素フィラーの表面処理は、予め表面処理を実施したフィラーを樹脂組成物に添加しても良いし、樹脂組成物にシラン系カップリング剤を添加して樹脂組成物調製時に実施してもよい。本発明において好ましく用いられるシラン系カップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、p−スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0099】
プリント基板及び多層プリント基板においては、安全性の観点から難燃性が求められる場合が多く、樹脂材料においては、通常、難燃剤の添加による難燃化技術が用いられる。本発明においては、絶縁層の低熱膨張性と接着性とを両立するために、少なくとも室温においては固形である難燃剤を用いることが好ましく、さらに低誘電損失性を保つためには上記化学式(7)及び(8)の構造を有する難燃剤の適用が好ましい。上記化学式(7)及び(8)で表される難燃剤は誘電正接が低く、高周波信号を取り扱う電気部品の難燃化には好適である。
【0100】
さらに、難燃剤の平均粒径には特に制限は無いが、平均粒径を0.2〜3.0μmとすることにより、ワニス中における難燃剤の沈殿を抑制することができ、ワニスの保存安定性を改善できることから好ましい。ワニス粘度にもよるが、0.1〜10Pa・s(パスカル・秒)のワニスにおいて本粒径範囲の難燃剤、酸化ケイ素フィラーを用いることで、その沈殿の発生を抑制することができる。
【0101】
難燃剤の添加量は、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、5〜200重量部の範囲で添加することが好ましく、求める難燃性のレベル、使用するクロス、不織布の種類に合わせて配合量を決定することが好ましい。クロス、不織布にオレフィン繊維を含有する場合には、100重量部以上添加することが望ましい。
【0102】
本発明では、更に、誘電特性、ワニス粘度及び成膜性を調整することを目的として、上記化学式(9)、(10)、及び(11)で表される添加剤を加えることができる。上記化学式(9)で表される化合物のうち、より好ましくは、その構造中にヘテロ原子を含有しない全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物である。これによって樹脂組成物の硬化物の誘電正接を一層低減する機能を有する。
【0103】
上記化学式(9)の多官能スチレン化合物は反応性が高いことから、硬化触媒を添加することなく樹脂系を硬化することが可能となる。硬化触媒は構造中にヘテロ原子を有することから、全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物を用いることで、一層の低誘電正接化が期待できる。
【0104】
上記化学式(10)で表される特定構造のビスマレイミド化合物は、詳細は不明であるが、ワニスに添加することによってワニス粘度を低減できる効果を有し、その誘電正接は、マレイミド化合物としては小さい。
【0105】
上記化学式(11)で表される1、2−ポリブタジエン化合物は、高分子量体であるためにワニス粘度を増加させる効果を有し、プリプレグの成膜性を向上するとともに、プリプレグの可とう性向上に寄与する。また、全炭化水素骨格であり、芳香環を持たないため、誘電率の低減に寄与する。
【0106】
各添加剤の配合比は、低熱膨張性、接着性、誘電特性を損なわないために、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、添加剤を10〜100重量部とすることが好ましい。
【0107】
上記化学式(9)で表される多官能スチレン化合物の例としては、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、ビス(p−ビニルフェニル)メタン、ビス(m−ビニルフェニル)メタン、p−ビニルフェニル−m−ビニルフェニルメタン、1、4−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、4−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−4−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−3−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、6−ビス(p−ビニルフェニル)ヘキサン、1、6−ビス(m−ビニルフェニル)ヘキサン、及び1−(p−ビニルフェニル)−6−(m−ビニルフェニル)ヘキサン、並びに側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体(オリゴマー)等を挙げることができる。これらの化合物のうち、官能基の一部がハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子、或いはハロゲン原子を含む炭化水素基で置換されていてもよいが、より好ましくは全炭化水素骨格の化合物である。これらは単独或いは2種類以上の混合物として使用される。
【0108】
上記化学式(10)で表されるビスマレイミドの例としては、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−n−ブチル−4−マレイミドフェニル)メタン等がある。
【0109】
上記化学式(11)で表される1、2−ポリブタジエン化合物の例としては、JSR製、RB810、RB820及びRB830を挙げることができる。
【0110】
本発明においては、熱硬化反応の促進及び低温化を目的として、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤は、架橋成分の官能基の種類によって適宜選定する。上記化学式(1)又は(3)で表される熱硬化基を含む(2)で表される熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)を架橋成分とする場合には、ラジカル重合開始剤を適用することが好ましい。ラジカル重合開始剤の種類によって、硬化反応の開始温度を調整することができる。
【0111】
ラジカル重合開始剤の例としては、イソブチルパーオキサイド、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカルボネート、1、1、3、3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジデカネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカルボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、1、1、3、3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2、5−ジメチル−2、5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド等を挙げることができ、これらの開始剤は複合化して用いることができる。
【0112】
また、(4)で表される熱硬化基を含む(2)で表される熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)を架橋成分とする場合には、上記重合開始剤に加えて、例えば、1、8−ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類等などに含まれるエポキシ基の反応を促進する促進剤の添加が望ましい。なかでも、トリフェニルホスフィンは封止層の電気特性を良好とするので好ましい。これらの架橋促進剤について、その添加量は架橋樹脂成分の総量を100重量部として、0.0005〜20重量部の範囲で調整される。
【0113】
さらに、ワニス、プリプレグ作製時の加熱による硬化反応を抑制するとともに、封止用フィルムやポッティング剤及びプリプレグ等を保管する際の硬化反応の進行を抑制することを目的として、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤は、架橋成分の官能基の種類によって適宜選定する。上記化学式(1)又は(2)で表される熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)を架橋成分とする場合には、ラジカル重合禁止剤を適用してもよい。その例としてはハイドロキノン、p−ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類及び芳香族ジオール類が挙げられる。好ましい添加量の範囲は、架橋樹脂成分の総量を100重量部として、0.0005〜5重量部である。
【0114】
本発明で用いられる樹脂組成物のワニス化溶媒は、その沸点が140℃以下であることが好ましく、そのような溶媒の例としては、キシレンを挙げることができ、より好ましくは、沸点が110℃以下であることが好ましく、そのような溶媒としては、トルエン、シクロヘキサン等が例示される。これらの溶媒は、混合して用いてもよく、更に、無機フィラーのカップリング処理に使用されるメチルエチルケトン、メタノール等の極性溶媒を含んでもよい。ワニス濃度は、40〜65wt%が好ましく、樹脂組成物を構成する成分の種類、配合量によってワニス粘度が0.1〜10Pa・sの範囲、より好ましくは0.1〜1Pa・sの範囲で適宜調整する。
【0115】
本発明の封止材は、配線パターンが形成された基板上に実装される電子部品を封止するための封止材料である。封止する前駆体の形状は特に規定されないが、より好ましくはフィルム状の樹脂複合化物若しくは有機溶剤に樹脂複合化物が溶解若しくは分散したポッティング剤である。封止する際の作業性及び取扱い性の観点から、加熱時の最低粘度が1〜10Pa・sとなる構成である。
【0116】
ここで、本発明において「加熱時の最低粘度」とは、回転粘度計(RS−100、HAAKE社)を用いて、回転数10rpm、回転盤直径20mm、昇温速度2℃/min(℃/分)の条件で、測定することができる50〜200℃での粘度の最低値のことをいう。本発明における加熱時の最低粘度は、低圧で封止が可能であるという観点から、1〜10Pa・sとなる構成が好ましく、1〜10Pa・sとなる構成がより好ましい。
【0117】
このような粘度物性を有する樹脂組成物を封止材として用いることで、電子部品の実装と封止を一括かつ低圧で行うことが可能となる。これは、後述する本発明のモジュールの製造方法に示すように、60〜300℃で電子部品を封止することにより、得られる本発明の封止材の電子部品間への埋め込み性が良好となり、かつ、基板上に位置決めした電子部品がずれず、厚みの設計精度も良好となるためと考えられる。また、このような粘度物性を有する樹脂組成物を封止材として用いることで、薄型の電子部品や高周波電子部品であっても破損は無く、信頼性に優れた封止を施すことができる。
【0118】
本発明におけるプリプレグは、上記樹脂組成物のワニスをクロス又は不織布に含浸、乾燥して作製することができる。乾燥条件は、乾燥温度が80〜150℃であることが好ましく、さらに、乾燥時の不要な硬化反応を抑制しつつ、十分に乾燥するためには、乾燥温度が80〜110℃であることが好ましい。
【0119】
クロス及び不織布の材質には特に制限は無いが、高周波機器用絶縁材料に適用する場合には、石英繊維とオレフィン繊維とを複合化した複合クロス、薄く粗密な構造を有する薄物石英クロスを適用することが好ましい。複合クロスは、オレフィン繊維とガラス繊維とをともに含む糸を作製し、この混合糸を用いて作製するのが好ましい。オレフィン繊維とガラス繊維は伸び率が異なるため、オレフィン繊維糸とガラス繊維糸を用いて交互織りした場合には、両繊維の伸縮度の違いによって、クロスにしわやよじれが発生する場合があるためである。
【0120】
また、ガラス繊維とオレフィン繊維の直径は、5〜20μmであることが望ましい。繊維径が大きすぎると、基材の折り目が粗く、表面の凹凸が大きくなることから、プリプレグ及び積層板の外観を損なうため好ましくない。また、繊維径が小さすぎると、織りの際に繊維の切断が生じやすくなるため好ましくない。石英繊維とポリオレフィン繊維との配合比は、積層板、プリント基板及び多層プリント基板の低熱膨張性を保つために40/60重量比〜60/40重量比であることが好ましい。
【0121】
薄物石英ガラスクロスの好ましい構成は、フィラメント径が5〜9μmである溶融石英ガラス繊維を15〜49本含有する石英ガラス糸を用いて作製される石英ガラスクロスであって、縦糸及び横糸の織り密度が30〜70本/25mmであり、単位面積あたりの重量が10〜18g/m、厚さが10〜30μmである疎な石英ガラスクロスである。
【0122】
本構成をとることによって、プリプレグ1層あたりの石英繊維含有量が低減できるため、ドリル加工性を改善することができる。薄物石英クロスを適用したプリプレグは1層あたりの膜厚を10〜100μmとすることが可能であり、電子機器の薄型化に寄与できる。また、樹脂含有率の調整によって厚みは任意にコントロールすることができる。
【0123】
本発明のプリプレグの樹脂含有率は50〜90wt%である。樹脂含有率が50wt%より低いと、十分な成形性を確保することができない場合があり、樹脂含有率が90wt%を超えると、成型時に樹脂の流動性が高くなりすぎてクロスが破断する場合がある。より好ましい樹脂含有率の範囲は50〜80wt%である。
【0124】
前述のように作製されたプリプレグの硬化物の両面又は片面に導体層を設置して積層板が製造される。導体層の設置は、プリプレグ上に導体層を重ね、熱プレスによって加熱、加圧して導体層との接着とプリプレグの硬化を同時に行うことが作業性の観点から好ましい。
【0125】
なお、本発明の樹脂組成物は低熱膨張性を有することから、導体箔上に樹脂組成物ワニスを塗布、乾燥して作製した樹脂付導体箔をプリプレグの代わりに使用してもよい。また、フィルム化した絶縁材料を電子部品用接着フィルムとして、プリント基板の接着に用いてもよい。樹脂付導体箔や接着フィルムはクロス、不織布を含まないため、ドリル加工性が更に向上するほか、レーザー穴あけが容易になる。
【0126】
本発明のプリプレグや積層板を用いて、定法の配線加工、多層化及び層間接続の工程を経て、プリント基板や多層プリント基板を作製することができる。
【0127】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0128】
まず、試薬及び評価方法を示す。
【0129】
(1)熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)(上記化学式(1)の化合物、熱硬化性PPEと略記)
攪拌子を入れた2口フラスコに、ジ−μ−ヒドロキソビス〔(N、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)〕二塩化物(東京化成製)0.464g(1.0mmol(ミリモル))、水:4mL(ミリリットル)、テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬製)1mLを加えて攪拌した。攪拌停止後、2、6-ジメチルフェノール(東京化成製)9.90g(81.0mmol)、2−アリル−6−メチルフェノール(アルドリッチ製)1.34g(9.0mmol)をトルエン:500mLに溶解した溶液をフラスコに静かに加え、三方コック及びガラス栓にて密栓した。ゴム製の酸素バルーンを三方コックに接続し、系内を脱気及び酸素封入を繰り返して置換した後、40℃の酸素雰囲気下、500〜800rpmで6時間攪拌した。重合終了後にトルエンで希釈した後に大過剰の塩酸/メタノール溶液(1〜5M程度)に沈殿させ、沈殿物をメタノールで洗浄、乾燥後再びトルエンに溶解して大過剰の塩酸/メタノール(1M程度)に再沈殿させ、メタノールで洗浄後、120℃/2時間、140℃/30分真空乾燥して白色の固形物を得た。収率は93%であった。1H−NMR及び13C−NMRにより、その構造を同定した。固形物の分子量及び分子量分布はMn=15000、Mw/Mn=1.7であった。ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。
【0130】
(2)1、2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成(上記化学式(9)の化合物)
500mLの三口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)536g(220mmol)を取り、滴下ロート、窒素導入菅及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体を加熱して脱水処理を行った。乾燥テトラヒドロフラン300mLをシリンジに取り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5度に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で20時間攪拌を続けた。
【0131】
反応終了後、溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレータで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈して、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通じて生成し、最後に真空管層により目的のBVPEを得た。得られたBVPEは、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン(p−p体、固体)、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン(m−m体、液体)、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン(m−p体、液体)の混合物で、収率は90%であった。得られたBVPEの構造は文献値と一致しており、添加剤として用いた。
【0132】
(3)その他の試薬
熱硬化性ポリ(フェニレンエーテル)(上記化学式(2)の化合物):(1)OPE−2St、スチレン換算数平均分子量2200、三菱ガス化学製(スチレン骨格末端)、(2)OPE−2Ep、スチレン換算数平均分子量2200、三菱ガス化学製(エポキシ骨格末端)。
【0133】
多官能架橋助剤(上記化学式(5)の化合物):(1)TAIC(商標)、トリアリルイソシアヌレート、日本化成工業製、(2)TMAIC(商標)、トリメタリルイソシアヌレート、日本化成工業製
多官能架橋助剤(上記化学式(6)の化合物):トリアリルシアヌレート、東京化成製
スチレン系エラストマー:(1)タフテック(商標)H1043、スチレン含有率67wt%、Mn=76000、伸び率20%、旭化成ケミカルズ製、(2)タフテック(商標)H1051、スチレン含有率42wt%、Mn=75000、伸び率600%、旭化成ケミカルズ製、(3)タフテック(商標)H1031、スチレン含有率30wt%、Mn=53000、伸び率650%、旭化成ケミカルズ製、(4)タフテック(商標)H1052、スチレン含有率20wt%、Mn=72000、伸び率700%、旭化成ケミカルズ製、(5)タフテック(商標)H1221、スチレン含有率12wt%、Mn=71000、伸び率980%、旭化成ケミカルズ製、(6)タフテック(商標)H1272、スチレン含有率35wt%、Mn=74000、伸び率950%、旭化成ケミカルズ製
難燃剤(上記化学式(7)の化合物):SAYTEX 8010、1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、アルベマール日本製
難燃剤(上記化学式(8)の化合物):SAYTEX BT−93/W、エチレンビステトラブロモフタルイミド、アルベマール日本製
酸化ケイ素フィラー:アドマファイン、平均粒径0.5μm、アドマテックス製
カップリング剤:KBM−503、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、信越化学工業製
銅箔:AMFN箔(1/2Oz)、カップリング処理付ロープロファイル銅箔、厚さ18μm、Rz≒2.1μm、日鉱マテリアルズ製
ビスマレイミド(上記化学式(10)の化合物):BMI−5100、3、3’−ジメチル−5、5’−ジエチル−4、4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業製
高分子量ポリブタジエン(上記化学式(11)の化合物):RB810、Mn=130000、JSR製
硬化触媒:2、5−ジメチル−2、5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(略称25B)、日本油脂製
硬化触媒:トリフェニルホスフィン、東京化成製
ガラスクロス:#2116、NEガラス系ガラスクロス、日東紡製
複合クロス:石英繊維φ=7μm:60wt%、ポリプロピレン繊維φ=20μm:40wt%、信越石英製
薄物石英クロス:石英繊維φ=7μm、縦糸60本/25mm、横糸60本/25mm、信越石英製
(4)ワニスの調製方法
所定量のカップリング剤及びフィラーをメチルエチルケトン溶液中でボールミルにて2時間攪拌し、フィラー表面にカップリング処理を施した。次いで、所定量の架橋剤、樹脂材料、難燃剤、硬化触媒、架橋助剤、トルエンを加えて樹脂成分が完全に溶解するまで攪拌を続けてワニスを作製した。ワニス濃度は45〜65wt%とした。
【0134】
(5)樹脂フィルム、硬化物(樹脂板)の作製方法
樹脂ワニスをPETフィルム上に塗布して、室温で乾燥を行った後、100℃で10分間乾燥を行い、絶縁フィルムを得た。フィルムをPTFE製の厚さ1.0mmのスペーサー内に充填し、真空プレス成型によって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は真空中室温から2MPaに加圧し、10℃/minで昇温、210℃で60分間保持した。
【0135】
(6)硬化物−銅箔間接着強度評価用試験片の作製方法
絶縁フィルムをPTFE製の厚さ1.0mmのスペーサー内に充填し、上下面を銅箔で挟み、真空プレス成型によって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は真空中室温から2MPaに加圧し、10℃/minで昇温、210℃で60分間保持した。絶縁フィルムの接着評価は銅箔のピール強度(後述)を用いて行った。
【0136】
(7)ガラスクロスの表面処理
ガラスクロスを0.5wt%のKBM−503メタノール溶液に1時間浸し、取り出したガラスクロスを大気中100℃で30分間乾燥し、表面処理を行った。
【0137】
(8)プリプレグの作製方法
先に示した方法で調製したワニスにクロスを浸漬した後、所定のギャップ長のスリット間を一定速度で垂直に引き上げて、その後乾燥して作製した。スリットのギャップにより樹脂の塗布量を調節した。乾燥条件は100℃、10分間とした。
【0138】
(9)銅張積層板の作製方法
上記方法により作製したプリプレグを4枚〜6枚積層し、上下面を銅箔で挟み、真空プレス成型によって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は、真空中室温から4MPaに加圧し、10℃/minで昇温、210℃で60分間保持した。
【0139】
(10)ピール強度の測定
ピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。
【0140】
(11)熱膨張率の測定
熱膨張係数は、熱機械測定装置(TM−9300型熱機械試験機、アルバック理工製)を用い、窒素雰囲気下、測定サンプルの厚さ方向(Z軸方向)で測定した。試料は5×5mmの寸法に切り出し、175℃でアニール処理してサンプルとした。昇温時間は10℃/min、50〜100℃の間の熱膨張係数を求めた。
【0141】
(12)硬化物の架橋密度の測定
樹脂硬化物の架橋密度n(mol/L)は、動的粘弾性測定(Rheogel−E4000、ユービーエム製)によって、ガラス転移温度より高い温度条件において、貯蔵弾性率変化が平衡に達した際の平衡弾性率E’及び平衡到達時の温度Tの値から、上記数式(1)を用いて算出した。
【0142】
(13)比誘電率及び誘電正接の測定
空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザ、アジレントテクノロジー製:空洞共振器、関東応用電子開発製)によって、10GHzの値を測定した。
【0143】
銅張積層板から作製される試料は銅をエッチング除去した後、1.0×80mmの大きさに切り出して作製した。樹脂板から作製される試料は、樹脂板から1.0×80mmの大きさに切り出して作製した。
【0144】
(14)破断伸び率の測定
破断伸び率の測定は、日本工業規格(JIS K6251)に準拠して行った。サンプル片は3号ダンベル、引っ張り速度は500mm/minとし、サンプルが破断するまでの伸び変化を測定した。
【0145】
(15)難燃性の評価
難燃性は70×3mmに切り出した試料を用いて、UL−94規格に従って評価した。
【0146】
(16)耐溶剤性の評価(銅張積層板)
硬化後の積層板から銅箔をエッチング除去して20×20mmのサイズに切り出した後、110℃で2時間乾燥してサンプルとした。サンプルの初期重量を観測した後、室温でトルエンに20時間浸漬した。その後、トルエン中から試料を取り出し、110℃で2時間乾燥し、処理後のサンプル重量を観測した。溶出した樹脂の量/初期重量の百分率より溶出率を求め、溶出率が0.1wt%以上の試料を不良とした。
【0147】
(17)加熱時の最低粘度評価
最低粘度の測定は、回転粘度計(RS−100、HAAKE社)を用いて、回転数10rpm、回転盤直径20mm、昇温速度2℃/minの条件で、測定することができる50〜200℃での粘度の最低値により評価した。
【0148】
(実施例1〜4)
実施例1〜4は、高分子量成分として伸び率が700%のエラストマーを30重量部含む樹脂組成物について、トリアリルイソシアヌレートを架橋助剤として添加した例である。
【0149】
表1は、実施例1〜4並びに比較例1及び2の組成及び評価結果を示したものである。
【0150】
表中、ε’(10GHz)、tanδ(10GHz)、T及びαはそれぞれ、比誘電率、誘電正接、ガラス転移温度及び熱膨張係数(熱膨張率ともいう。)を表す。
【0151】
架橋助剤を加えることで、架橋助剤を添加しなかった比較例1と比較して、硬化物の熱膨張率を大幅に低減することに成功した。また、このときの貯蔵弾性率変化から、200℃付近に架橋助剤の添加によるピークを確認した。また、平衡弾性率から算出した架橋密度nは2.0mol/L以上である。
【0152】
【表1】

【0153】
図1は、本発明による実施例の電子部品用絶縁材料が有する平衡弾性率の温度依存性を示すグラフである。横軸に温度、縦軸に平衡弾性率E’をとっている。実施例1及び4並びに比較例1及び2のデータを示している。
【0154】
本図に示すように、架橋密度を高くすることによって貯蔵弾性率の値は上昇しており、架橋密度を高くすることによって低熱膨張率化を達成したと推定することができる。
【0155】
一方で、架橋助剤の添加量が20重量部以上の比較例2の場合、架橋密度が著しく低下し、熱膨張率も上昇した。これは、架橋助剤の過剰な添加によって高分子量体と架橋成分のバランスが崩れてしまい、硬化物中に相分離が生じたためと推定される。
【0156】
以上の点から、架橋助剤の添加は0.1〜15重量部の間とすることが望ましいといえる。
【0157】
(実施例5〜7)
実施例5〜7及び比較例3〜5は、高分子量成分として伸び率の異なるエラストマーを30重量部含む樹脂組成物の例である。
【0158】
表2は、実施例5〜7及び比較例3〜5の組成及び評価結果を示したものである。
【0159】
【表2】

【0160】
また、図2は、表2のデータをまとめて、エラストマーの破断伸び率に対する銅箔ピール強度及び熱膨張係数を示すグラフである。
【0161】
架橋助剤を添加することで、比較例を含むいずれの条件においても熱膨張率の低い硬化物となった。
【0162】
一方、破断伸び率が700%以上のエラストマーを配合することにより、表面粗さ(Rz)が2.1μmと小さな銅箔を用いたにも関わらず、銅箔との接着性が銅箔のピール強度が0.7kN/m以上の高い接着強度を示すことが確認された。また、緻密な架橋構造と銅箔との接着性も良好である。以上の点から、複合化に用いる樹脂の伸び率は700%以上とすることが望ましいといえる。
【0163】
(実施例8〜11)
表3は、実施例8〜11の組成及び評価結果を示したものである。
【0164】
実施例8〜11は架橋成分及び架橋助剤の種類を変更した例である。
【0165】
【表3】

【0166】
架橋成分としてOPE−2Ep及び熱硬化性PPEを用いた場合でも、OPE−2Stと同様の性能を得ることができた。また、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートと構造の異なるトリメタリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートを用いた場合でも、1重量部の添加で十分な低熱膨張率化を達成できた。以上の結果から、いずれの条件においても、架橋成分と架橋助剤とによる緻密な三次元網目構造の構築によって架橋密度が高まり、樹脂の低熱膨張率化が達成されたと推定することができる。
【0167】
(実施例12〜16)
表4は、実施例12〜16の組成及び評価結果を示したものである。
【0168】
実施例12〜16は、上記の実施例に対し、更に添加成分を加えた例である。
【0169】
【表4】

【0170】
添加成分として多官能スチレン化合物であるBVPEを添加した系は、絶縁材料の誘電特性、特に誘電正接の低減に効果を示す。また、特定構造の難燃剤を添加した系は、絶縁材料の誘電損失を維持しながら難燃化(UL94 V−0)を達成した。添加成分として特定構造のビスマレイミド化合物を添加した系では、ワニス粘度が他の系よりも低く、ポリブタジエンを添加した系ではワニス粘度が上昇した。また、熱膨張率及び接着性への影響はほとんど見られなかった。
【0171】
以上の結果から、上記の添加剤によって誘電特性の改善、難燃化及びワニス粘度の調整が可能であることが確認された。
【0172】
(実施例17)
表5は、実施例17の組成及び評価結果を示したものである。
【0173】
実施例17は、上記の実施例2から調製した樹脂フィルムを用いて、電子部品(Siチップ、寸法:5mm×5mm×250μm)の封止を行った。
【0174】
【表5】

【0175】
図3は、本発明のモジュール前駆体の製造工程を示す模式断面図である。
【0176】
まず、第一の基材1(基板とも呼ぶ。)の表面に第一の封止フィルム2(封止材とも呼ぶ。)を設置する。第一の基材1は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)クッション付きのPET基材であり、第一の封止フィルム2は、10μmの樹脂フィルムである。150℃で第一の封止フィルム2(樹脂フィルム)の上に電子部品5を設置する(図3(A))。
【0177】
そして、第一の封止フィルム2により電子部品5を第一の基材1(PET基材)の上に固定する(図3(B))。
【0178】
つぎに、電子部品5を固定した第一の基材1の上に厚さ135μmの第二の封止フィルム3(樹脂フィルム)を設置し、さらに、その上に第二の基材4(PTFEクッション付き基材)を設置する(図3(C))。
【0179】
その後、高温真空プレスを用いて、210℃、プレス圧1MPaで60分間真空プレスし、モジュール前駆体を得る(図3(D))。
【0180】
(実施例18)
表6は、実施例18の組成及び評価結果を示したものである。
【0181】
実施例18は、実施例2から調製した樹脂組成物を含み、低誘電率、低誘電正接な硬化物を形成する液状樹脂組成物である。液状の樹脂組成物は、常温かつ低圧での注型が可能である。実施例2に限らず、ワニスが調製可能な系においては液状樹脂組成物の調製が可能である。
【0182】
【表6】

【0183】
(実施例19〜21)
表7は、実施例19〜21の組成及び評価結果を示したものである。
【0184】
実施例19〜21は、実施例12から調製したワニスを用いた銅張積層板の例である。
【0185】
【表7】

【0186】
ガラスクロス、複合クロス及び薄物石英クロスともにワニスにクロスを浸漬することでプリプレグ化が可能となった。また、いずれの銅張積層板も表面粗さ(Rz)が2.1μmと小さな銅箔を用いたにも関わらず、銅箔との接着性が銅箔のピール強度が0.7kN/m以上の高い接着強度を示すことが確認された。
【0187】
オレフィン繊維を含有する複合クロスでは、塗工ギャップを広げてプリプレグを厚くすることで、積層板の厚さ方向の熱膨張係数を30ppm/℃レベルの低熱膨張性と極めて優れた低誘電損失性能が確認された。さらに、薄物石英クロスを用いることで、塗工ギャップを狭めて薄く塗工したプリプレグにおいても低熱膨張率を達成することができた。また、1層当たりのプリプレグを薄膜化することで、単位面積あたりの化学物質の使用量を低減できることが確認された。
【0188】
(実施例22)
図4は、本発明の銅張積層板に層間配線を形成する工程を示す模式断面図である。
【0189】
まず、6層を積層したプリプレグ硬化物6に銅箔7を重ねて形成した、実施例20の銅張積層板の表面に任意の感光性レジスト8を塗布する(図4(A))。
【0190】
つぎに、エッチング処理によって導体配線を描画して感光性レジスト8を除去し、回路を描画した銅張積層板9を作製する(図4(B))。
【0191】
この銅張積層板9に残存する銅箔7の表面を粗化(黒化処理)し、接着層であるプリプレグ10を介して複数の銅張積層板11を積層して接着する(図4(C)及び(D))。
【0192】
さらに、レーザー加工による穴あけによりビアホール形成用空洞12を形成し(図4(E))、無電解めっきによってビアホール接続部13(層間配線)を形成する(図4(F))。
【0193】
本発明においては、この実施例に限定されるものではなく、種々の配線基板を形成することができる。例えば、レーザー加工又はドライエッチング加工によって形成されるブラインドビアホールによって層間を電気的に接続するビルドアップ多層配線基板が作製できる。多層配線基板の作製にあたっては、各絶縁層の誘電率及び誘電正接は任意に選択でき、異なる特性の絶縁層を混載して、低誘電損失、高速伝送、小型化、低価格化等の目的に応じて組み合わせることができる。
【0194】
本発明によれば、導体層との高接着性及び低熱膨張性を両立した電子部品用絶縁材料、並びにこれを用いた封止材、液状ポッティング剤、封止用樹脂フィルム、電子部品用接着フィルム、プリプレグシート、積層板等の配線板材料、プリント基板及び多層プリント基板を得ることができる。
【0195】
さらに、本発明によれば、低誘電損失材料である熱硬化性ポリフェニレンエーテル、トリアリルイソシアヌレートの硬化反応により形成される緻密な架橋構造により、剛直な架橋構造を形成し、さらにスチレン系エラストマーによる柔軟で接着性にすぐれた微小なドメインをそれぞれ形成することで、低熱膨張性及び高接着性の両者を満たす樹脂成分の形成に成功した。無機フィラーの添加量は任意に変化させることが可能であるため、ドリル穴あけをはじめとした加工性及び接着性が要求される構成と、より一層の低熱膨張化が必要な構成で無機フィラーの量は調整可能である。いずれの条件においても、従来のような過剰量フィラーに依存せず、樹脂成分の低熱膨張化を達成することができる。
【符号の説明】
【0196】
1:第一の基材、2:第一の封止フィルム、3:第二の封止フィルム、4:第二の基材、5:電子部品、6:プリプレグ硬化物(6層積層)、7:銅箔、8:感光性レジスト、9:銅張積層板(回路描画)、10:プリプレグ(接着層)、11:銅張積層板、12:ビアホール形成用空洞、13:ビアホール接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
85〜99.9重量部の熱硬化性化合物に分子量1000以下の多官能架橋助剤を0.1〜15重量部添加した架橋樹脂成分と、高分子量成分10〜50重量部と、無機フィラー40〜400重量部とを含む樹脂組成物で構成され、前記高分子量成分の伸び率が700%以上であることを特徴とする電子部品用絶縁材料。
【請求項2】
前記樹脂組成物の硬化物の架橋密度が2.0mol/L以上であることを特徴とする請求項1記載の電子部品用絶縁材料。
【請求項3】
前記熱硬化性化合物が熱硬化性ポリフェニレンエーテル化合物であり、前記高分子量成分が水素添加されたスチレン系エラストマーであり、前記無機フィラーが球状酸化ケイ素フィラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品用絶縁材料。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリフェニレンエーテル化合物は、下記化学式(1)又は(2)で表され、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が1000〜15000の化合物であることを特徴とする請求項3記載の電子部品用絶縁材料。
【化1】

(上記化学式(1)は、1種又は2種のフェノール誘導体を含む重合体若しくはランダム共重合体を表し、l及びmは重合度であり、少なくとも一方は0ではない整数で表され、この重合体若しくはランダム共重合体は分子量分布を有していてもよい。R、R、R、R、R、R、R及びRは、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つ以上が炭素数2〜10の不飽和炭化水素基を含む炭化水素基である。Rは、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
【化2】

(上記化学式(2)は、フェノール誘導体を含む重合体を表し、n及びoは重合度であり、少なくとも一方は0ではない整数で表され、この重合体は分子量分布を有していてもよい。p及びqは、それぞれ独立であり、0又は1の整数を表す。R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R18、R19、R20及びR21は、水素原子又はハロゲン原子、或いは炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよい。W及びXは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。Y及びZは、下記化学式(3)又は(4)で表される構造を有する。)
【化3】

(上記化学式(3)は、スチレン骨格を有する官能基を表し、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

(上記化学式(4)は、エポキシ骨格を有する架橋基を表し、R29は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。R30、R31及びR32は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記多官能架橋助剤が、環構造に窒素原子を含む複素環式化合物を少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の電子部品用絶縁材料。
【請求項6】
前記複素環式化合物が、下記化学式(5)又は(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項5記載の電子部品用絶縁材料。
【化5】

(上記化学式(5)において、R33、R34及びR35は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43及びR44は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【化6】

(上記化学式(6)において、R45、R46及びR47は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55及びR56は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記水素添加されたスチレン系エラストマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が50000〜100000であり、スチレン含有率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【請求項8】
前記球状酸化ケイ素フィラーの平均粒径が0.2〜3μmであり、その表面にビニル系、メタクリレート系、アクリレート系又はスチレン系のシランカップリング剤が少なくとも一種類が担持されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【請求項9】
さらに、下記化学式(7)若しくは(8)で表される難燃剤のうち、少なくとも一種類以上を含むことを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【化7】

【化8】

【請求項10】
さらに、下記化学式(9)で表される多官能スチレン化合物を含むことを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【化9】

(上記化学式(9)は、複数のスチレン型骨格を有する多官能スチレン化合物を表し、rは2以上の整数を表す。R57、R58、R59、R60、R61、R62及びR63は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。R64は、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。)
【請求項11】
さらに、下記化学式(10)で表されるビスマレイミド化合物を含むことを特徴とする請求項3〜10のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【化10】

(上記化学式(10)において、R65は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよい。R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72及びR73は、炭素数1〜4の炭化水素基であり、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含んでいてもよく、それぞれが同一でも異なっていてもよい。)
【請求項12】
さらに、下記化学式(11)で表される1、2−ポリブタジエン化合物を含むことを特徴とする請求項3〜11のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料。
【化11】

(上記化学式(11)において、sは重合度であり、1以上の整数で表される。この化合物は、分子量分布を有していてもよく、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるスチレン換算数平均分子量が100000〜200000である。)
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする電子部品用封止材。
【請求項14】
請求項13に記載の電子部品用封止材と、配線パターンが形成された基板と、電子部品とを積層した構成を有することを特徴とするモジュール。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料50〜90重量部を有機溶媒に溶解させた構成であることを特徴とする液状ポッティング剤。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする電子部品封止用樹脂フィルム。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料を含むことを特徴とする電子部品用接着フィルム。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子部品用絶縁材料を、クロス又は不織布に含浸した構成であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項19】
クロス又は不織布が石英繊維を含むことを特徴とする請求項18記載のプリプレグ。
【請求項20】
クロス又は不織布がポリオレフィン繊維を含むことを特徴とする請求項18又は19に記載のプリプレグ。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれか一項に記載のプリプレグを硬化させた硬化物の片面又は両面に導体層を設けたことを特徴とする積層板。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれか一項に記載のプリプレグを硬化させた硬化物の片面又は両面に導体配線を設けたことを特徴とするプリント基板。
【請求項23】
請求項22記載のプリント基板と、請求項18〜20のいずれか一項に記載のプリプレグとを交互に複数枚積層して接着した構成を有し、前記プリント基板及び前記プリプレグを電気的に接続する層間配線を有することを特徴とする多層プリント基板。
【請求項24】
請求項13に記載の電子部品用封止材と、配線パターンが形成された基板と、電子部品とを積層した構成を有するモジュールの製造方法であって、前記基板の上に前記電子部品を設置して固定する部品固定工程と、前記電子部品を固定した前記基板の上に前記電子部品用封止材を設置し、加熱成型によって固定する成型工程とを含むことを特徴とするモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−1473(P2011−1473A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145894(P2009−145894)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】