説明

電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器

【課題】表示品質を向上させることが可能な電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器を提供する。
【解決手段】液晶装置100は、TFT30と、TFT30に電気的に接続された容量素子16とを備え、容量素子16は、TFT30と第2層間絶縁層11cを介して形成された第1容量電極16aと、第1容量電極16aに第1誘電体層16bを介して対向配置され、TFT30の半導体層30aに第2層間絶縁層11cに形成されたコンタクトホールCNT53を介して電気的に接続された第2容量電極16cとを有し、第2容量電極16cは、第1導電層16c1と第1導電層16c1上に積層された第2導電層16c2を有し、第1導電層16c1は、コンタクトホールCNT53と重なる領域が除去されてなり、第2導電層16c2と半導体層30aとがコンタクトホールCNT53を介して電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電気光学装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、例えば、画素電極をスイッチング制御する素子としてトランジスターを画素ごとに備えたアクティブ駆動方式の液晶装置が知られている。この液晶装置には、例えば、特許文献1に記載のように、画像信号の供給に応じて各画素電極の電位を一時的に保持するための容量素子が設けられている。
【0003】
液晶装置の製造方法(特に、容量素子の製造方法)としては、例えば、基板上にトランジスターの半導体層を形成する。次に、容量素子を構成する下部電極層を成膜し、その上に誘電体層を成膜する。その後、誘電体層及び下部電極層を貫通して半導体層に繋がるコンタクトホールを形成し、上部電極層をコンタクトホール内に埋めることにより、半導体層と電気的に接続された容量素子を形成することができる。
【0004】
しかし、コンタクトホールの形成によって露出した半導体層上に自然酸化膜が形成される場合があり、その後、コンタクトホール内に上部電極層を埋めて接続したとしても、自然酸化膜による抵抗によって電気が流れにくくなるという問題がある。
【0005】
そこで、コンタクトホール形成後、露出する誘電体層及びコンタクトホール内にフッ酸処理(DHF処理)を施し、半導体層上に形成された自然酸化膜を除去する。その後、容量素子を構成する上部電極層を成膜することにより、半導体層と上部電極とが電気的に接続された容量素子が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−26719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記方法によれば、露出する誘電体層にもフッ酸処理を行うことになり、容量素子を構成する誘電体層の耐圧が低下するという課題がある。
また、これらの要因により、電気光学装置の寿命が短くなってしまうことが、本願発明者の研究により判明している。従って、上述した技術には、表示画像の品質を低下させてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置は、トランジスターと、前記トランジスターに電気的に接続された容量素子と、を備え、前記容量素子は、前記トランジスターと層間絶縁層を介して形成された第1容量電極と、前記第1容量電極に第1容量絶縁層を介して対向配置され、前記トランジスターの半導体層に前記層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続された第2容量電極とを有し、前記第2容量電極は、第1導電層と該第1導電層上に積層された第2導電層を有し、前記第1導電層は、前記コンタクトホールと重なる領域が除去されてなり、前記第2導電層と前記トランジスターの半導体層とが前記コンタクトホールを介して電気的に接続されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第2容量電極が2つの導電層で構成されており、第1容量絶縁層が第1導電層によって覆われた状態で、コンタクトホール及び第2導電層が設けられるので、例えば、コンタクトホールを形成した後に、コンタクトホール内の半導体層上に自然酸化膜が形成され、この自然酸化膜を除去するためにフッ酸処理を行った場合でも、第1容量絶縁層が第1導電層で覆われているため、第1容量絶縁層がフッ酸に晒されることを抑えることが可能となり、第1容量絶縁層の耐圧が低下することを抑えることができると共に、自然酸化膜を除去することができる。更に、第1導電層上及びコンタクトホール内に第2導電層を成膜することにより、容量素子と半導体層とを電気的に接続させることができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に係る電気光学装置において、前記第1容量電極の端部を覆うように設けられた第1絶縁膜を有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1絶縁膜を設けることにより、第1容量電極の端面と第2容量電極の端面との間においてそれぞれの電気的なショートを防止することができる。また、コンタクトホールを、例えばドライエッチング等のエッチング処理により形成する際の第1容量電極へのダメージを軽減することができる。また、第2容量電極をドライエッチング等のエッチング処理により形成する際のエッチングストッパーとして用いることができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例に係る電気光学装置において、前記第2容量電極における前記第1容量絶縁層と反対側に設けられた第2容量絶縁層と、前記第2容量絶縁層を介して前記第2容量電極と対向配置された第3容量電極と、を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第2容量絶縁層を介して配置された第2容量電極と第3容量電極とによって容量素子を形成することができる。よって、容量素子は、第1容量電極及び第2容量電極と、第2容量電極及び第3容量電極との2箇所に配置することができる、言い換えれば、容量素子が並列に接続された構成にすることが可能となり、単位面積当たりの容量値を高くすることができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例に係る電気光学装置において、前記第2容量電極の端部を覆うように設けられた第2絶縁膜を有することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第2絶縁膜が設けられているので、第2容量電極の端面と第3容量電極の端面との間においてそれぞれの電気的なショートを防止することができる。また、第3容量電極をドライエッチング等のエッチング処理により形成する際のエッチングストッパーとして用いることができる。
【0017】
[適用例5]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、トランジスターを形成する工程と、前記トランジスターを覆うように層間絶縁層を形成する工程と、前記層間絶縁層上に第1容量電極を形成する工程と、前記第1容量電極に第1容量絶縁層を介して第2容量電極を構成する第1導電層を形成する工程と、前記第1導電層、前記第1容量絶縁層、前記第1容量電極及び前記層間絶縁層を貫通して前記トランジスターの半導体層まで達するコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホール内に露出した前記トランジスターの半導体層にフッ酸を含む薬液が接するように薬液処理を施す工程と、前記第2容量電極を構成する第1導電層上及び前記コンタクトホールの内側に、前記第2容量電極を構成する第2導電層を前記トランジスターの半導体層と接するように形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、コンタクトホールを形成した後に、コンタクトホール内の半導体層上に自然酸化膜が形成され、この自然酸化膜を除去するためにフッ酸を含む薬液を用いた薬液処理を行っても、第1容量絶縁層が第1導電層で覆われているため、第1容量絶縁層がフッ酸に晒されることを抑えることが可能となり、第1容量絶縁層の耐圧が低下することを抑えることができると共に、自然酸化膜を除去することができる。更に、第1導電層上及びコンタクトホール内を含む基板上の全体に第2導電層を成膜することにより、容量素子と半導体層とを電気的に接続させることができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例に係る電気光学装置の製造方法において、前記第2容量電極上に第2容量絶縁層を形成する工程と、前記第2容量絶縁層上に第3容量電極を形成する工程と、を有することが好ましい。
【0020】
この方法によれば、第2容量絶縁層上に第3容量電極を形成するので、第2容量電極と第3容量電極とによって容量素子を形成することができる。よって、容量素子は、第1容量電極及び第2容量電極と、第2容量電極及び第3容量電極との2箇所に形成する、言い換えれば、容量素子を並列に接続することが可能となり、単位面積当たりの容量値を高くすることができる。
【0021】
[適用例7]本適用例に係る電子機器は、上記した電気光学装置を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記に記載の電気光学装置を備えているので、各画素電極の電位を確実に保持することが可能となり、表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電気光学装置としての液晶装置の構成を示す模式平面図。
【図2】図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図。
【図3】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図4】液晶装置における画素の構成を示す模式平面図。
【図5】液晶装置における画素の構成を示す模式平面図。
【図6】液晶装置における画素の構成を示す模式平面図。
【図7】液晶装置における画素の構成を示す模式平面図。
【図8】図4〜図7に示す画素の模式断面図。
【図9】液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャート。
【図10】液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図。
【図11】液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図。
【図12】容量素子と半導体層とを接続するコンタクトホールにフッ酸処理(DHF処理)を行った場合と行わなかった場合における、コンタクトサイズとコンタクト抵抗との関係を示すグラフ。
【図13】第1誘電体層が第1導電層で覆われている場合と覆われていない場合とにおける、フッ酸処理を行った場合の寿命を比較したグラフ。
【図14】電気光学装置を備えた電子機器としての投射型表示装置(プロジェクター)の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0025】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0026】
本実施形態では、電気光学装置として、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0027】
<電気光学装置の構成>
図1は、電気光学装置としての液晶装置の構成を示す模式平面図である。図2は、図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図3は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構造を、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10および対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層15とを有する。素子基板10を構成する第1基板11、および対向基板20を構成する第2基板12は、例えば、ガラス基板、石英基板等の透明基板、又はシリコン基板が用いられている。
【0029】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材14を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層15を構成している。シール材14は、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材14には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのギャップ材が混入されている。
【0030】
対向基板20側における額縁状に配置されたシール材14の内側には、同じく額縁状に遮光層18が設けられている。遮光層18は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光層18の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0031】
第1基板11の1辺部と、1辺部に沿ったシール材14との間にデータ線駆動回路22が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材14の内側に検査回路25が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材14の内側に走査線駆動回路24が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材14の内側には、2つの走査線駆動回路24を繋ぐ複数の配線(図示せず)が設けられている。
【0032】
これらデータ線駆動回路22及び走査線駆動回路24に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子61に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路25の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路22と表示領域Eとの間のシール材14の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0033】
図2に示すように、第1基板11の液晶層15側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極27およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター30(以降、「TFT30」と称する。)と、信号配線と、これらを覆う配向膜28とが形成されている。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0034】
第2基板12の液晶層15側の表面には、遮光層18と、これを覆うように成膜された層間絶縁層(図示せず)と、層間絶縁層を覆うように設けられた共通電極31と、共通電極31を覆う配向膜32とが設けられている。
【0035】
遮光層18は、図1に示すように、平面的に走査線駆動回路24、検査回路25と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0036】
層間絶縁層は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光層18を覆うように設けられている。このような層間絶縁層の形成方法としては、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0037】
共通電極31は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、層間絶縁層を覆うと共に、図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部26により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0038】
画素電極27を覆う配向膜28および共通電極31を覆う配向膜32は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、液晶分子に対して略垂直配向させたものが挙げられる。
【0039】
図3に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0040】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極27と、TFT30と、容量素子16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0041】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。画素電極27は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。
【0042】
データ線6aは、データ線駆動回路22(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路24(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路24から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0043】
データ線駆動回路22からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路24は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0044】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極27に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極27を介して液晶層15に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極27と液晶層15を介して対向配置された共通電極31との間で一定期間保持される。
【0045】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極27と共通電極31との間に形成される液晶容量と並列に容量素子16が接続されている。容量素子16は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域と容量線3bとの間に設けられている。容量素子16は、2つの容量電極の間に誘電体層を有するものである。
【0046】
このような液晶装置100は、例えば透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0047】
図4〜図7は、液晶装置における画素の構成を示す模式平面図である。図8は、図4〜図7に示す画素の模式断面図である。以下、画素の平面的な構造と断面構造について、図4〜図8を参照しながら説明する。
【0048】
なお、図4は、画素Pのうち遮光膜からゲート電極までの層を示す模式平面図である。図5は、第1容量電極から第2容量電極までの層を示す模式平面図である。図6は、第3容量電極からデータ線までの層を示す模式平面図である。図7は、容量線から画素電極までの層を示す模式平面図である。
【0049】
まず、図4に示すように、X方向に延在する非開口領域には、遮光膜の一例である走査線3aが設けられている。走査線3aは、遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。遮光性の導電材料としては、例えば、W(タングステン)、Ti(チタン)、TiN(窒化チタン)等が挙げられる。
【0050】
Y方向に延在する非開口領域には、図3に示したTFT30が設けられている。遮光性を有する非開口領域にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。
【0051】
具体的には、図4に示すように、TFT30は、データ線側ソースドレイン領域30sと、画素電極側ソースドレイン領域30dと、チャネル領域30cと、を有する半導体層30aを備えている。半導体層30aは、上記したように、Y方向に延在する非開口領域に配置されている。
【0052】
更に、TFT30は、非開口領域において走査線3aに沿うようにゲート電極30gが設けられている。ゲート電極30gは、X方向に延在した部分が平面的にチャネル領域30cと重なっている。また、ゲート電極30gは、X方向に延在した一部分と走査線3aとの間に設けられたコンタクトホールCNT51,CNT52によって、電気的に走査線3aと接続されている。なお、ゲート電極30gは、TFT30下方に設けられた遮光膜を兼ねる走査線3aと同様に、走査線として機能するものであり、第2の走査線ということができる。
【0053】
走査線3aは半導体層30aより下層側に配置されているので、走査線3aをTFT30の半導体層30aよりも幅広に形成することによって、液晶プロジェクター等からの光に対して、TFT30のチャネル領域30cを殆ど或いは完全に遮光できる。その結果、液晶装置100の動作時に、TFT30における光リーク電流が低減され、コントラスト比を向上させることができ、高品位の画像表示が可能となる。なお、非開口領域で囲まれた略四角形の開口領域が画素Pの領域となる。
【0054】
次に、図5に示すように、非開口領域におけるゲート電極30g上には、島状の第1容量電極16aと、第1容量絶縁層としての第1誘電体層16bと、第2容量電極16cとが、第1基板11側から順に積層されている。
【0055】
第2容量電極16cは、2層で構成されており、第1基板11側から第1導電層16c1と第2導電層16c2とが積層されている。なお、第2容量電極16cのうち第2導電層16c2が、半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域30dと平面的に重なる領域まで設けられている。具体的には、第2導電層16c2と画素電極側ソースドレイン領域30dとが、コンタクトホールCNT53を介して電気的に接続されている。
【0056】
また、第2容量電極16cの外縁の一部と平面的に重なる領域には、第2容量電極16cの形成(エッチングストッパー)の際に用いられる第1絶縁膜CAPA41aが設けられている。
【0057】
次に、図6に示すように、第2容量電極16c上には、第2容量絶縁層としての第2誘電体層16d、第3容量電極16eが、第1基板11側から順に積層されている。第3容量電極16eは、第1容量電極16aと略平面的に重なるように島状に設けられている。
【0058】
また、非開口領域におけるX方向に沿うように、第1中継電極42と第3中継電極43とが、それぞれ島状に設けられている。第3中継電極43は、X方向に延在した一部分と第3容量電極16eとの間に設けられたコンタクトホールCNT54を介して、第3容量電極16eと電気的に接続されている。
【0059】
また、Y方向に延在する非開口領域には、データ線6aが設けられている。データ線6aは、Y方向に延在した一部分とデータ線側ソースドレイン領域30sとの間に設けられたコンタクトホールCNT60を介して、データ線側ソースドレイン領域30sと電気的に接続されている。データ線6aは遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0060】
次に、図7に示すように、データ線6a上には、容量線3b、第2中継電極44、及び画素電極27が設けられている。第2中継電極44は、X方向に延在した一部分と第1中継電極42との間に設けられたコンタクトホールCNT57を介して、第1中継電極42と電気的に接続されている。
【0061】
また、容量線3bは、データ線6aに沿うように設けられている。具体的には、容量線3bは、X方向に延在した一部分と第3中継電極43との間に設けられたコンタクトホールCNT58を介して、第3中継電極43と電気的に接続されている。
【0062】
画素電極27は、画素P毎に島状に形成されており、走査線3aやデータ線6aと外縁部とが平面的に重なるように設けられている。各画素Pは、データ線6a及び走査線3aによってマトリックス状に区分けされており、各画素Pの端部がデータ線6a及び走査線3aに部分的に重なるように形成されている。
【0063】
次に、図8を参照しながら、画素Pの構造について更に詳しく説明する。図8に示すように、第1基板11上には、走査線3aが設けられている。走査線3aは、遮光性を有し、例えば、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができる。
【0064】
走査線3a上には、第1基板11及び走査線3aを覆うように、例えば、酸化シリコンなどからなる下地絶縁層11aが設けられている。更に、下地絶縁層11a上には、島状に半導体層30aが設けられている。
【0065】
半導体層30aは、例えば、多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、データ線側ソースドレイン領域30s、チャネル領域30c、画素電極側ソースドレイン領域30dを有する。
【0066】
半導体層30a上には、半導体層30a及び下地絶縁層11aを覆うように、第1層間絶縁層(ゲート絶縁層)11bが形成される。更に、第1層間絶縁層11bを挟んでチャネル領域30cに対向する位置にゲート電極30gが設けられている。
【0067】
ゲート電極30g上には、ゲート電極30g及び第1層間絶縁層11bとを覆うようにして第2層間絶縁層11cが設けられている。
【0068】
第2層間絶縁層11c上には、容量素子16が設けられており、容量素子16を構成する第1容量素子116と第2容量素子216とが積層されて形成されている。つまり、容量素子16は、2つの容量素子116,216が並列に接続された構造になっている。
【0069】
具体的には、第2層間絶縁層11c上に、第1容量素子116を構成する第1容量電極16aがパターニングして設けられている。第1容量電極16aは、定電位に接続されている。第1容量電極16aは、例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属、合金を含んだ非透明な金属膜又はポリシリコン膜から形成されており、TFT30を遮光する遮光膜としても機能する。
【0070】
第1誘電体層16bは、例えば、HTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。第1誘電体層16b上には、第2容量電極16cがパターニングして設けられている。
【0071】
第2容量電極16cは、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域30d及び画素電極27に電気的に接続された画素電位側容量電極である。具体的には、第2容量電極16cは、2層のポリシリコン膜又は2層の金属膜で構成されており、TFT30側にパターニングして形成された第1導電層16c1と、画素電極27側にパターニングして形成された第2導電層16c2とを有する。
【0072】
より具体的には、画素電極27側に設けられた第2導電層16c2が、コンタクトホールCNT53を介して画素電極側ソースドレイン領域30dと電気的に接続されると共に、コンタクトホールCNT56を介して第1中継電極42に電気的に接続されている。第1中継電極42は、コンタクトホールCNT57を介して第2中継電極44に電気的に接続されている。第2中継電極44は、コンタクトホールCNT59を介して画素電極27に電気的に接続されている。
【0073】
即ち、第2容量電極16cを構成する第2導電層16c2は、第1中継電極42及び第2中継電極44と共に、画素電極側ソースドレイン領域30d及び画素電極27間の電気的な接続を中継する。なお、第1容量電極16a、第1誘電体層16b、及び第1導電層16c1によって第1容量素子116を構成する。
【0074】
なお、第1容量電極16aの端部を覆うように第1絶縁膜CAPA41a、第2容量電極16cの端部を覆うように第2絶縁膜CAPA41bが形成されている。第1絶縁膜CAPA41aは、第1容量電極16aの端面と第2容量電極16cの端面との間においてそれぞれの電気的なショートを防止し、また、コンタクトホールCNT53を、例えばドライエッチング等のエッチング処理により形成する際の第1容量電極16aへのダメージを軽減するものである。また、第2容量電極16cをドライエッチング等のエッチング処理により形成する際のエッチングストッパーとして用いられる。第2絶縁膜CAPA41bは、第2容量電極16cの端面と第3容量電極16eの端面との間においてそれぞれの電気的なショートを防止し、また、第3容量電極16eをドライエッチング等のエッチング処理により形成する際のエッチングストッパーとして用いられる。
【0075】
第2容量電極16c上には、第2容量素子216を構成する第2誘電体層16dが設けられている。第2誘電体層16dは、第1誘電体層16bと同様に構成されており、例えば、HTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
【0076】
第2誘電体層16d上には、第2容量素子216を構成する第3容量電極16eがパターニングして設けられている。第3容量電極16eは、第1容量電極16aと同様に構成されており、固定電位に接続されている。また、第3容量電極16eは、例えば、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又はWSi等の合金を含んだ非透明な金属膜から形成されている。
【0077】
このように形成された容量素子16によれば、画素電極27における電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカーの低減といった表示特性の向上が可能となる。なお、第2導電層16c2、第2誘電体層16d、及び第3容量電極16eによって第2容量素子216を構成する。つまり、2つの容量素子116,216が並列に設けられている。
【0078】
また、並列に容量素子116,216を設けるため、容量素子16の容量値を高めることができる。また、第1容量素子116と第2容量素子216は、平面的に重なる領域において形成される。従って、単位面積当たりの容量値を高くすることが可能である。
【0079】
容量素子16の上には、第2絶縁膜CAPA41bを介して第3層間絶縁層11dが設けられている。第3層間絶縁層11d上には、データ線6a、第1中継電極42、及び第3中継電極43がパターニングして設けられている。
【0080】
データ線6aは、第3層間絶縁層11d〜第1層間絶縁層11bを貫通するコンタクトホールCNT60を介して、半導体層30aのデータ線側ソースドレイン領域30sに電気的に接続されている。また、データ線6a、第1中継電極42、及び第3中継電極43は、例えば、金属膜等の導電材料で構成される。
【0081】
第1中継電極42は、第3層間絶縁層11d及び第2絶縁膜CAPA41bを貫通するコンタクトホールCNT56を介して第2容量電極16cと電気的に接続されている。
【0082】
第3中継電極43は、第3層間絶縁層11dを貫通するコンタクトホールCNT54を介して、第3容量電極16eと電気的に接続されている。また、第3中継電極43は、第3層間絶縁層11d及び第2絶縁膜CAPA41bを貫通するコンタクトホールCNT55を介して、第1容量電極16aと電気的に接続されている。
【0083】
データ線6a、第3中継電極43、及び第1中継電極42上には、第3層間絶縁層11dを介して第4層間絶縁層11eが設けられている。第4層間絶縁層11e上には、容量線3b及び第2中継電極44がパターニングして設けられている。
【0084】
容量線3bは、例えば、アルミニウム等の金属を含んで構成されており、定電位(LCCOM)が供給される。また、容量線3bは、第4層間絶縁層11eを貫通するコンタクトホールCNT58を介して第3中継電極43と電気的に接続されている。また、第2中継電極44は、第4層間絶縁層11eを貫通するコンタクトホールCNT57を介して第1中継電極42と電気的に接続されている。
【0085】
容量線3b及び第2中継電極44上には、第4層間絶縁層11eを介して第5層間絶縁層11fが設けられている。第5層間絶縁層11f上には、ITO膜などからなる画素電極27がパターニングして設けられている。画素電極27は、第2中継電極44、第1中継電極42、及び第2容量電極16cを介して、半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域30dに電気的に接続されている。画素電極27の上層には、図示しない配向膜が設けられている。
【0086】
<液晶装置の製造方法>
図9は、液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。図10及び図11は、液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図である。以下、液晶装置の製造方法を、図9〜図11を参照しながら説明する。なお、素子基板上に設けられた各層を含めて素子基板と称する場合がある。また、対向基板上に設けられた各層を含めて対向基板と称する場合がある。
【0087】
最初に、素子基板10側の製造方法を説明する。ステップS11では、ガラス基板などからなる第1基板11上にTFT30等を形成する。具体的には、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第1基板11上にTFT30などを形成する。
【0088】
ステップS12では、TFT30の上方に容量素子16を形成する。具体的には、図10及び図11を参照しながら説明する。まず、図10(a)に示すように、第2層間絶縁層11c上に、例えば、公知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、及びエッチング技術を用いて、第1容量電極16aをパターニングする。第1容量電極16aは、ポリシリコン膜で構成されており、膜厚が例えば100nmである。
【0089】
次に、第1誘電体層16bをベタ状に成膜する。第1誘電体層16bは、例えば、HTO及びSiNが積層されて構成されている。その後、第2容量電極16cを構成する第1導電層16c1をベタ状に成膜する。第1導電層16c1は、ポリシリコン膜で構成されており、膜厚が例えば60nmである。
【0090】
次に、図10(b)に示すように、コンタクトホールCNT53を形成する。具体的には、まず、第1導電層16c1上にレジスト膜45を成膜する。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて、レジスト膜45を開口する。そして、開口孔を有するレジストパターンをマスクとして、第1導電層16c1、第1誘電体層16b、第1容量電極16a、及び第2層間絶縁層11cをエッチングしてコンタクトホールCNT53を形成する。これにより、半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域30dまで貫通する。
【0091】
次に、図10(c)に示すように、コンタクトホールCNT53に、例えば、フッ酸処理(HF処理)を施す。具体的には、コンタクトホールCNT53を開口した後、露出した半導体層30aの表面に形成される自然酸化膜を除去するために行う。フッ酸処理を施すことにより、コンタクトホールCNT53内に発生した酸化膜を除去することができる。なお本実施例では、自然酸化膜を除去するためにフッ酸処理(HF処理)を行なうこととしたが、バッファードフッ酸(BHF)或いはその水希釈液等、その他のフッ酸(HF)を含む薬液を用いることも可能である。
【0092】
また、第1誘電体層16bにフッ酸処理を施した場合、誘電体としての耐圧が低下することが考えられるが、本実施形態では、第1誘電体層16bを第1導電層16c1で覆っているので、第1誘電体層16bの耐圧が低下することを抑えることができる。
【0093】
次に、図11(d)に示すように、第1導電層16c1及びコンタクトホールCNT53を覆うように第2導電層16c2を成膜する。第2導電層16c2は、ポリシリコン膜で構成されており、膜厚が例えば60nmである。これにより、第1導電層16c1に加えて第2導電層16c2を積層して第2容量電極16cを形成することができると共に、コンタクトホールCNT53内が第2導電層16c2によって覆われるので、第2容量電極16cと画素電極側ソースドレイン領域30dとを電気的に接続させることができる。
【0094】
次に、図11(e)に示すように、第1導電層16c1及び第2導電層16c2を有する第2容量電極16cをパターニングする。これにより、第2容量電極16cが完成する。その後、図示しないが、第2誘電体層16d、第3容量電極16eをパターニングして形成することにより、2つの容量素子116,216が並列に接続された容量素子16が完成する。
【0095】
ステップS13では、画素電極27を形成する。具体的には、第5層間絶縁層11f上に、ITO膜などからなる画素電極27を、公知のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて形成する。
【0096】
ステップS14では、画素電極27の上方に配向膜28を形成する。配向膜28の製造方法としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を斜方蒸着する斜方蒸着法が用いられる。以上により、素子基板10側が完成する。
【0097】
次に、対向基板20側の製造方法を説明する。まず、ステップS21では、ガラス基板等の透光性材料からなる第2基板12上に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、共通電極31を形成する。
【0098】
ステップS22では、共通電極31上に配向膜32を形成する。配向膜32の製造方法は、配向膜28と場合と同様であり、例えば、斜方蒸着法を用いて形成する。以上により、対向基板20側が完成する。次に、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる方法を説明する。
【0099】
ステップS31では、素子基板10上にシール材14を塗布する。詳しくは、素子基板10とディスペンサー(吐出装置でも可能)との相対的な位置関係を変化させて、素子基板10における表示領域Eの周縁部に(表示領域Eを囲むように)シール材14を塗布する。
【0100】
ステップS32では、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。具体的には、素子基板10に塗布されたシール材14を介して素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。より具体的には、互いの基板10,20の平面的な縦方向や横方向の位置精度を確保しながら行う。
【0101】
ステップS33では、液晶注入口(図示せず)から構造体の内部に液晶を注入し、その後、液晶注入口を封止する。封止には、例えば、樹脂等の封止材が用いられる。以上により、液晶装置100が完成する。
【0102】
図12は、容量素子と半導体層とを接続するコンタクトホールにフッ酸処理(HF処理)を行った場合と行わなかった場合における、コンタクトサイズとコンタクト抵抗との関係を示すグラフである。以下、コンタクトサイズとコンタクト抵抗との関係について、図12を参照しながら説明する。
【0103】
図12に示すグラフは、横軸にコンタクトサイズを示しており、図示右側にいくに従ってコンタクトサイズが大きくなっている。一方、縦軸にコンタクト抵抗を示しており、図示上側にいくに従ってコンタクト抵抗が大きくなっている。
【0104】
図10(c)に示す工程において、フッ酸処理(HF処理)を行わなかった場合、コンタクトサイズを5種類に分けてみた結果、どのサイズもおよそ1×109(Ω)程度あることがわかる。一方、本実施形態のように、フッ酸処理を行った場合、コンタクトサイズを5種類に分けてみた結果、およそ1×105(Ω)程度であることがわかる。
【0105】
このように、コンタクトホールCNT53を形成した後、フッ酸処理を行うことによって、半導体層30a上に発生する自然酸化膜(SiO2)を除去することが可能となり、コンタクト抵抗を小さくすることができる。その結果、電気的な特性が低下することを抑えることができる。
【0106】
図13は、第1誘電体層が第1導電層で覆われている場合と覆われていない場合とにおける、フッ酸処理を行った場合の寿命を比較したグラフである。以下、液晶装置の寿命について、図13を参照しながら説明する。
【0107】
図13に示すグラフは、横軸に液晶装置100の機種を示している。Aは、第1誘電体層16bが第1導電層16c1で覆われている状態でフッ酸処理を行った液晶装置100である。Bは、第1誘電体層16bが第1導電層16c1で覆われていない状態でフッ酸処理を行った液晶装置100である。一方、縦軸に液晶装置100の寿命(年)を示している。
【0108】
図10(c)に示す工程において、本実施形態のように、第1誘電体層16bが第1導電層16c1で覆われた状態でフッ酸処理を施した場合、寿命年数はα年である。一方、従来のように、第1誘電体層16bが第1導電層16c1で覆われていない状態でフッ酸処理を施した場合、寿命年数はβ年となり、α年のおよそ1/1000倍である。
【0109】
本実施形態のように、容量素子16を構成する第1誘電体層16bが、第2容量電極16cの一部である第1導電層16c1で覆われた状態でフッ酸処理を施すことにより、コンタクト抵抗を下げることができると共に、容量素子16(液晶装置100)の寿命を延ばすことができる。
【0110】
<電子機器の構成>
図14は、上記した液晶装置を備えた電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。以下、液晶装置を備えた投射型表示装置の構成を、図14を参照しながら説明する。
【0111】
図14に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0112】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0113】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0114】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0115】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0116】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0117】
このような投射型表示装置1000によれば、上記した液晶装置100が採用された液晶モジュールを介すことによって、表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
【0118】
以上詳述したように、本実施形態の液晶装置100、液晶装置100の製造方法、及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0119】
(1)本実施形態の液晶装置100及び液晶装置100の製造方法によれば、第2容量電極16cが2つの導電層(第1導電層16c1、第2導電層16c2)で構成されており、第1誘電体層16bが第1導電層16c1によって覆われた状態で、コンタクトホールCNT53及び第2導電層16c2を形成するので、例えば、コンタクトホールCNT53を形成した後に、コンタクトホールCNT53内の半導体層30a上に自然酸化膜が形成され、この自然酸化膜を除去するためにフッ酸処理(HF処理)を行った場合でも、第1誘電体層16bが第1導電層16c1で覆われているため、第1誘電体層16bがフッ酸に晒されることを抑えることが可能となり、第1誘電体層16bの耐圧が低下することを抑えることができると共に、自然酸化膜を除去することができる。更に、第1導電層16c1上及びコンタクトホールCNT53内に第2導電層16c2を成膜することにより、容量素子16と半導体層30a(30d)とを電気的に接続させることができる。
【0120】
(2)本実施形態の液晶装置100及び液晶装置100の製造方法によれば、第2誘電体層16dを介して配置された第2容量電極16cを構成する第2導電層16c2と第3容量電極16eとによって第2容量素子216を形成することができる。よって、第1容量電極16a及び第1導電層16c1と、第2導電層16c2及び第3容量電極16eとの2箇所に容量素子116,216を配置することができる、言い換えれば、2つの容量素子116,216が並列に接続された構成にすることが可能となり、単位面積当たりの容量値を高くすることができる。
【0121】
(3)本実施形態の電子機器によれば、上記に記載の液晶装置100を備えているので、各画素電極27の電位を確実に保持することが可能となり、表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
【0122】
なお、本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
【0123】
(変形例1)
上記した電気光学装置は、液晶装置100であることに限定されず、例えば、有機EL(Electro Luminescence)装置、電気泳動装置などの表示装置にも適用することができる。また、反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)にも適用可能である。
【0124】
(変形例2)
上記したように、電子機器として投射型表示装置1000(プロジェクター)を例に説明してきたが、これに限定されず、例えば、ビューワー、ビューファインダー、ヘッドマウントディスプレイなどに適用するようにしてもよい。また、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、モバイル型のパーソナルコンピューター、テレビ電話、POS端末、ページャー、電卓、タッチパネルなどの各種電子機器、また、電子ペーパーなどの電気泳動装置、カーナビゲーション装置等に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0125】
3a…走査線、3b…容量線、6a…データ線、10…素子基板、11…第1基板、11a…下地絶縁層、11b…第1層間絶縁層(ゲート絶縁層)、11c…第2層間絶縁層、11d…第3層間絶縁層、11e…第4層間絶縁層、11f…第5層間絶縁層、11g…第6層間絶縁層、12…第2基板、14…シール材、15…液晶層、16…容量素子、16a…第1容量電極、16b…第1容量絶縁層としての第1誘電体層、16c…第2容量電極、16c1…第1導電層、16c2…第2導電層、16d…第2容量絶縁層としての第2誘電体層、16e…第3容量電極、18…遮光層、20…対向基板、22…データ線駆動回路、24…走査線駆動回路、25…検査回路、26…上下導通部、27…画素電極、28,32…配向膜、30…TFT、30a…半導体層、30c…チャネル領域、30d…画素電極側ソースドレイン領域、30g…ゲート電極、30s…データ線側ソースドレイン領域、31…共通電極、41a…第1絶縁膜CAPA、41b…第2絶縁膜CAPA、42…第1中継電極、43…第3中継電極、44…第2中継電極、45…レジスト膜、CNT51〜CNT60…コンタクトホール、61…外部接続端子、100…電気光学装置としての液晶装置、116…第1容量素子、216…第2容量素子、1000…投射型表示装置、1100…偏光照明装置、1101…ランプユニット、1102…インテグレーターレンズ、1103…偏光変換素子、1104,1105…ダイクロイックミラー、1106,1107,1108…反射ミラー、1201,1202,1203,1204,1205…リレーレンズ、1206…クロスダイクロイックプリズム、1207…投射レンズ、1210,1220,1230…液晶ライトバルブ、1300…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスターと、
前記トランジスターに電気的に接続された容量素子と、を備え、
前記容量素子は、前記トランジスターと層間絶縁層を介して形成された第1容量電極と、前記第1容量電極に第1容量絶縁層を介して対向配置され、前記トランジスターの半導体層に前記層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続された第2容量電極とを有し、
前記第2容量電極は、第1導電層と該第1導電層上に積層された第2導電層を有し、
前記第1導電層は、前記コンタクトホールと重なる領域が除去されてなり、前記第2導電層と前記トランジスターの半導体層とが前記コンタクトホールを介して電気的に接続されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記第1容量電極の端部を覆うように設けられた第1絶縁膜を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記第2容量電極における前記第1容量絶縁層と反対側に設けられた第2容量絶縁層と、
前記第2容量絶縁層を介して前記第2容量電極と対向配置された第3容量電極と、
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置であって、
前記第2容量電極の端部を覆うように設けられた第2絶縁膜を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
トランジスターを形成する工程と、
前記トランジスターを覆うように層間絶縁層を形成する工程と、
前記層間絶縁層上に第1容量電極を形成する工程と、
前記第1容量電極に第1容量絶縁層を介して第2容量電極を構成する第1導電層を形成する工程と、
前記第1導電層、前記第1容量絶縁層、前記第1容量電極及び前記層間絶縁層を貫通して前記トランジスターの半導体層まで達するコンタクトホールを形成する工程と、
前記コンタクトホール内に露出した前記トランジスターの半導体層にフッ酸を含む薬液が接するように薬液処理を施す工程と、
前記第2容量電極を構成する第1導電層上及び前記コンタクトホールの内側に、前記第2容量電極を構成する第2導電層を前記トランジスターの半導体層と接するように形成する工程と、
を備えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第2容量電極上に第2容量絶縁層を形成する工程と、
前記第2容量絶縁層上に第3容量電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−80040(P2013−80040A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218978(P2011−218978)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】