説明

III−V族化合物半導体薄膜結晶の気相成長方法および気相成長装置

【課題】ガス中間室を備えるシャワーヘッド型MOCVD装置において、ヘテロ接合界面の界面急峻性が優れた結晶の成長を可能とする結晶成長方法を提供する。
【解決手段】MOCVD装置10を用いる気相成長方法であって、第1III 族元素ガスをIII 族系ガス中間室23aに供給し、被成膜基板3に第1半導体層を形成する第1成膜工程と、被成膜基板3に第2半導体層を形成する第2成膜工程とを含み、第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室23aへ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室24aへの供給のうち少なくとも一方への供給を行う残留ガス排出工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば縦型シャワーヘッド型MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の気相成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード及び半導体レーザの製造においては、トリメチルガリウム(TMG)又はトリメチルアルミニウム(TMA)等の有機金属ガスと、アンモニア(NH)、ホスフィン(PH)又はアルシン(AsH)等の水素化合物ガスとを成膜に寄与する反応ガスとして成長室に導入して化合物半導体結晶を成長させるMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)が用いられている。
【0003】
MOCVD法は、上記の反応ガスを水素等のキャリアガスと共に成長室内に導入して加熱し、所定の基板上で気相反応させることにより、上記基板上に化合物半導体結晶を成長させる方法である。MOCVD法を用いた化合物半導体結晶の製造においては、成長する化合物半導体結晶の品質を向上させながら、コストを抑えて、歩留まりと生産能力とをどのように最大限確保するかという点が常に高く要求されている。
【0004】
図6に、MOCVD法に用いられる従来の縦型シャワーヘッド型であるMOCVD装置100の一例の模式的な構成を示す。図6は、MOCVD装置100を示す断面図である。
【0005】
MOCVD装置100においては、反応炉101の内部の成長室111に反応ガス及び不活性ガスを導入するためのガス配管103がガス供給源102および反応炉101の間に接続されている。また、反応炉101内部の成長室111の上部には該成長室111に反応ガス及び不活性ガスを導入するための複数のガス吐出孔を有するシャワープレート110がガス導入部として設置されている。
【0006】
また、成長室111の下部中央には図示しないアクチュエータによって回転自在の回転軸112が設置され、この回転軸112の先端にはシャワープレート110と対向するようにしてサセプタ108が取り付けられている。上記サセプタ108の下部には該サセプタ108を加熱するためのヒータ109が取り付けられている。
【0007】
さらに、反応炉101の下部には、該反応炉101における内部の成長室111内のガスを外部に排気するためのガス排気部104が設置されている。このガス排気部104は、パージライン105を介して、排気されたガスを無害化するための排ガス処理装置106に接続されている。
【0008】
上記構成の縦型シャワーヘッド型のMOCVD装置100において、化合物半導体結晶を成長させる場合には、まず、サセプタ108に基板107を設置し、回転軸112の回転によりサセプタ108を回転させ、ヒータ109の加熱によりサセプタ108を介して基板107を所定の温度に加熱する。その後、シャワープレート110に形成されている複数のガス吐出孔から反応炉101の内部の成長室111に反応ガス及び不活性ガスを導入する。
【0009】
複数の反応ガスを供給して基板107上で反応せしめ薄膜を形成する方法として、従来は、シャワーヘッドの中で複数のガスを混合し、シャワープレート110に多数設けられているガス吐出孔から基板107に反応ガスを吹き出させる方法が採られている。
【0010】
また、近年では、複数の反応ガスそれぞれに、中間室を設け、この中間室からそれぞれの反応ガスをシャワープレートのガス吐出孔を通して、分離した状態で成長室へ供給する方法が一般的に用いられている。これは、シャワーヘッド内で気相反応が生ずるのを避けるためである。この場合、III 族系ガス吐出孔とV族系ガス吐出孔とは交互に近接配置される。
【0011】
図7は、特許文献1に開示された縦型シャワーヘッド型の気相成長装置200を示す断面図である。気相成長装置200では、III 族系ガスの中間室201とV族系ガスの中間室202とが2層上下に配置されており、それぞれのガスが成長室203以外で混合しないように、ガス流路が分離された積層構造が用いられている。
【0012】
ところで、2種類以上の異なるIII −V族化合物半導体薄膜の積層構造は、いわゆるヘテロ構造と呼ばれ、半導体レーザ、発光ダイオードなどの発光素子、あるいは電界効果トランジスタ、またはヘテロ接合バイポーラトランジスタなどの電子素子に適用されている。例えば、InGaP/GaAs系は、ヘテロ接合面の再結合速度が小さいなどの理由で最近盛んに研究がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−91989号公報(1996年4月9日公開)
【特許文献2】特開2001−93838号公報(2001年4月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のMOCVD法では、III −V族化合物半導体薄膜において急峻なヘテロ接合界面を形成することが困難であるという問題点を有している。
【0015】
具体的には、InGaP/GaAs系のIII −V族化合物半導体薄膜は、製造過程においてAsおよびPの2種類のV族元素が、ヘテロ接合界面で完全に切り替わる系が用いられ、結晶成長による作製が難しい。例えば、MOCVD法でInGaP/GaAsを作製するためには、Ga反応ガスであるトリメチルガリウム(以下、「TMG」と適宜略す)とAs反応ガスであるアルシン(AsH)とを用いてGaAs膜を形成した後に、TMGとIn反応ガスであるトリメチルインジウム(以下、「TMI」と適宜略す)およびP反応ガスであるホスフィン(PH)を用いてInGaP膜を形成するが、界面においてAs原子とP原子とは混合しやすく、急峻なヘテロ接合界面を形成することが困難である。
【0016】
この混合が発生する原因は、現在よくわかっていないが、InGaPの成長初期において、AsとPとが置換すること等が考えられる。一般的には、ガス置換のための成長中断の温度や、ガス供給のシーケンスの工夫により界面急峻性の改善がなされている(特許文献2)。しかしながら、縦型シャワーヘッド型などの、ガス中間室を有するMOCVD装置に関しては十分な検討がなされていない。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ガス中間室を備えるシャワーヘッド型MOCVD装置において、ヘテロ構造を有する結晶を成膜する際、ヘテロ接合界面の界面急峻性が優れた結晶の成長を可能とする結晶成長方法を提供することにある。また、付随する目的としては、再現性のよい結晶成長を可能とする結晶成長方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記問題点について原因を解明するため、発明者らが研究を重ねたところ、第1半導体層から第2半導体層の成長を行うために反応ガスを切り替えた際に、ガス中間室内に充満している第1半導体層の反応ガスが完全に抜け切らないまま、第2半導体層の反応ガスが流れこんでしまうことが見出された。さらに検討したところ、2種類の反応ガスを切り替える際に、この2種類の反応ガスが混合された状態で基板上に到達してしまい、ヘテロ接合界面で2種類のガスが混じり合った半導体層が形成されていることが見出された。
【0019】
例えば、InGaP/GaAs系では、GaAsを作製する際のV族元素ガスであるアルシン(AsH)がガス中間室内に残留した状態で、ガス中間室内にInGaP作製のためのV族元素ガスであるホスフィン(PH)を導入すると、AsHおよびPHが混合した状態で成長室へ導入されてしまい、ヘテロ接合界面で残留したAsが、成長中のInGaP結晶中に混入してしまっていた。
【0020】
また、ヘテロ接合界面の急峻性が悪いという同様の問題は、III 族元素ガスを切り替えるInGaN/GaN系でも確認された。
【0021】
本発明に係る気相成長方法は、上記課題を解決するために、キャリアガスと共に、III族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で成長室へ吐出するガス吐出孔が配設されたシャワープレートと、上記III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するIII 族系ガス中間室と、V族元素ガスおよびV族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するV族系ガス中間室と、被成膜基板を収容し、成長室とを備える気相成長装置を用いて、上記被成膜基板に複数層のIII-V族化合物半導体結晶を成膜する気相成長方法であって、第1III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第1V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給して上記被成膜基板に第1半導体層を形成する第1成膜工程と、第2III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第2V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給して上記被成膜基板に第2半導体層を形成する第2成膜工程とを含み、上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっており、上記第1成膜工程および第2成膜工程の間に、第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量(増分)してIII 族系ガス中間室へ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室への供給のうち少なくとも一方への供給を行う残留ガス排出工程を含むことを特徴としている。
【0022】
上記の発明によれば、第1成膜工程および第2成膜工程にて、異なる元素ガス、すなわち、切り替える元素ガスに係るIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの少なくとも一方を第1成膜工程よりも増量してガス中間室に供給する。このため、第1成膜工程にて、ガス中間室に残留していた元素ガスを速やかに排出させることができる。これにより、第2成膜工程において、第1成膜工程と異なる元素ガスを供給する際、第2成膜工程にて不要なガスが中間室に残存することを抑制できる。従って、第2成膜工程において、残留したガスが第1半導体層の状態を損ねることなく、成膜を行うことができる。このため、第1結晶膜の状態に悪影響を与えず第2半導体層を形成することができ、第1半導体層と第2半導体層の界面急峻性を向上させることができる。また、均一で、結晶性の良い結晶を再現性よく成長させることが可能である。
【0023】
また、本発明に係る気相成長方法では、第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに同一であり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なり、上記残留ガス排出工程において、上記V族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも増量(増分)してV族系ガス中間室へ供給し、上記III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量(減分)してIII 族系ガス中間室に供給することが好ましい。
【0024】
上記のように、第1成膜工程に比較して、III 族用キャリアガスを増量させ、V族用キャリアガスを減量させることによって、成長室2内の被成膜基板3上に供給されるキャリアガスの総流量が過度に増量されることを抑制できる。これによって、結晶をより安定して成長させることができるので、再現性のよい結晶成長が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る気相成長方法では、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに同一であり、第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、上記残留ガス排出工程において、上記III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室へ供給し、上記V族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量してV族系ガス中間室へ供給することが好ましい。
【0026】
上記のように、第1成膜工程に比較して、V族用キャリアガスを増量させ、III 族用キャリアガスを減量させることによって、成長室2内の被成膜基板3上に供給されるガスの総流量が過度に増量されることを抑制できる。これによって、結晶をより安定して成長させることができるので、再現性のよい結晶成長が可能となる。
【0027】
また、本発明に係る気相成長方法では、上記残留ガス排出工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの総流量が、上記第1成膜工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの総流量と等しいことが好ましい。
【0028】
これにより、第1成膜工程および残留ガス排出工程において、材料ガスの流量は等しい。したがって、残留ガス排出工程において、成長室内部のガスの流れが乱れることを抑制することができ、その状態を保ちつつ第2成膜工程にて第2半導体層を積層することができる。このため、さらに、均一で結晶性のよい結晶を、非常に再現性よく成長させることができる。
【0029】
また、本発明に係る気相成長装置は、上記課題を解決するために、キャリアガスと共に、III 族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で成長室へ吐出するガス吐出孔が配設されたシャワープレートと、上記III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するIII 族系ガス中間室と、V族元素ガスおよびV族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するV族系ガス中間室と、被成膜基板を収容し、成長室とを備える気相成長装置において、III 族元素ガス、V族元素ガス、III 族系キャリアガスおよびV族系キャリアガスの流量を制御する制御部が備えられており、上記制御部は、第1III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第1V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給する第1供給を制御し、上記被成膜基板に第1半導体層が形成された後、第2III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第2V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給する第2供給を制御し、上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっており、上記第1半導体層が形成された後であって、第2供給の前に、第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1供給時よりも増量してIII 族系ガス中間室へ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1供給時よりも増量してV族系ガス中間室への供給のうち少なくとも一方への供給を行うことを特徴としている。
【0030】
上記の発明によれば、第1供給および第2供給にて、異なる元素ガス、すなわち、切り替える元素ガスに係るIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの少なくとも一方を第1供給時よりも増量してガス中間室に供給する。このため、第1供給にて、ガス中間室に残留していた元素ガスを速やかに排出させることができる。これにより、第2成膜工程において、第1成膜工程と異なる元素ガスを供給する際、第2成膜工程にて不要なガスが中間室に残存することを抑制できる。従って、第2供給後の成膜において、残留したガスが第1半導体層の状態を損ねることなく、成膜を行うことができる。このため、第1結晶膜の状態に悪影響を与えずさらに第2半導体層を形成することができ、第1半導体層と第2半導体層の界面急峻性を向上させることができる。また、均一で、結晶性の良い結晶を再現性よく成長させることが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の気相成長方法は、以上のように、上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっており、上記第1成膜工程および第2成膜工程の間に、第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室へ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室への供給のうち少なくとも一方への供給を行う残留ガス排出工程を含む方法である。
【0032】
それゆえ、第1成膜工程にて、ガス中間室に残留していた元素ガスをキャリアガスによって速やかに排出させることができる。これにより、第2成膜工程において、第1成膜工程と異なる元素ガスを供給する際、第2成膜工程にて不要なガスが中間室に残存することを抑制できる。従って、第2成膜工程において、残留したガスが第1半導体層の状態を損ねることなく、成膜を行うことができ、第1半導体層と第2半導体層の界面急峻性を向上させることができる。また、均一で、結晶性の良い結晶を再現性よく成長させることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る気相成長装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の気相成長装置におけるシャワーヘッドを示す断面図である。
【図3】本発明に係る気相成長方法を示すフローチャートである。
【図4】V族系ガス中間室内のAsH濃度の計算結果を示すグラフである。
【図5】V族系ガス中間室内のAsH濃度の計算結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係るInGaPおよび比較例であるInGaP表面を示す走査電子顕微鏡図である。
【図7】本発明に係る気相成長方法を示すフローチャートである。
【図8】従来の縦型シャワーヘッド型の気相成長装置を示す断面図である。
【図9】従来の他の縦型シャワーヘッド型の気相成長装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表わすものとする。
【0035】
〔気相成長装置〕
図1に本発明の気相成長方法に用いるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属気相堆積)装置の一例である縦型シャワーヘッド型のMOCVD装置10の模式的な構成の一例を示す。図1は、MOCVD装置10の断面図である。
【0036】
同図に示すように、MOCVD装置10は、気相成長が行われる反応炉1およびシャワーヘッド20を有している。
【0037】
反応炉1には、中空部である成長室2が設けられており、さらに被成膜基板3を載置するサセプタ4と、サセプタ4の下側には被成膜基板3を加熱するヒータ5及び支持台6が設けられている。支持台6に取り付けた回転軸7が図示しないアクチュエータ等によって回転することにより、サセプタ4及びヒータ5が、回転する構造となっている。サセプタ4とシャワープレート21とは対向しており、サセプタ4及びヒータ5の回転時には、サセプタ4の上面(シャワープレート21側の面)がシャワープレート21と平行な状態を保ちながら回転する。また、サセプタ4、ヒータ5、支持台6及び回転軸7の周囲には、ヒータカバーである被覆板8が、これらサセプタ4、ヒータ5、支持台6及び回転軸7を取り囲むように設けられている。
【0038】
MOCVD装置10では、説明の便宜のため被成膜基板3が1枚設置された構成となっているが、被成膜基板3は複数枚備えられていてもよい。被成膜基板3の材料としては、例えば、サファイア、石英などを用いることができる。また、MOCVD装置10を構成する反応炉1、シャワープレート21及びその他の部材の形状は、図1に示す形状に限定されない。
【0039】
さらに、MOCVD装置10は、反応炉1内部のガスを反応炉1周辺に備えられたガス排出口を通して外部に排出するためのガス排出部11と、このガス排出部11に接続されたパージライン12と、このパージライン12に接続された排ガス処理装置13とを有している。これにより、反応炉1の内部に導入されたガスはガス排出部11を通して反応炉1の外部に排出される。排出されたガスはパージライン12を通って排ガス処理装置13に導入され、排ガス処理装置13において無害化される。
【0040】
さらに、シャワーヘッド20は、下方から順番に、シャワープレート21、冷媒供給部22、III 族系ガス供給部23およびV族系ガス供給部24が積層された構成となっている。シャワープレート21は、サセプタ4と対向しており、ガス供給手段として機能する部材である。シャワーヘッド20の周囲には各種ガス、冷媒を供給するための部材が備えられている。
【0041】
III 族系ガス供給源31は、マスフローコントローラ33を介して、III 族系ガス配管32によってシャワーヘッド20のIII 族系ガス供給部23に接続されている。MOCVD装置10では、冷媒中間室22aの上にIII 族系ガス中間室23aとV族系ガス中間室24aとが異なる2層として積層されているが、例えば、逆の順序で積層されていてもよい。すなわち、III 族系ガス中間室23aおよびV族系ガス中間室24aは、III 族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で、成長室2に供給することができればよく、上記の構成に限定されるものではない。
【0042】
III 族系ガス供給源31は、III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスの供給源となる部材である。なお、III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスは別個に供給される構成であってもよい。
【0043】
上記III 族ガスはIII 族元素を含んでいる。上記III 族元素としては、例えば、Ga(ガリウム)、Al(アルミニウム)又はIn(インジウム)等を挙げることができる。また、III 族元素ガスとしては、例えば、トリメチルガリウム(TMG)又はトリメチルアルミニウム(TMA)等の有機金属ガスの1種類以上を挙げることができる。なお、複数種類のIII 族元素ガスを用いてもよい。
【0044】
さらに、III 族系ガス供給源31から、III 族元素ガスと共にまたは単独にてIII 族系ガス中間室23aへ供給されるIII 族用キャリアガスとしては、水素または窒素などを挙げることができる。
【0045】
マスフローコントローラ33は、III 族系ガス供給源31から供給されたIII 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスの流量(供給量)を調節する機能を有しており、図示しない制御部にて制御される構成となっている。
【0046】
また、V族系ガス供給源34がマスフローコントローラ36を介して、V族系ガス配管35によってシャワーヘッド20のV族系ガス供給部24に接続されている。V族系ガス供給源34は、V族元素ガスの供給源となる部材である。
【0047】
なお、本実施の形態において、V族元素としては、例えば、N(窒素)、P(リン)又はAs(ヒ素)等があり、V族元素を含むV族元素ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)、ホスフィン(PH)又はアルシン(AsH)等の水素化合物ガスの1種類以上を用いることができる。なお、複数種類のV族元素ガスを用いてもよい。
【0048】
さらに、V族系ガス供給源34から、V族元素ガスと共にまたは単独にてV族系ガス中間室24aに供給されるV族用キャリアガスとしては、水素または窒素などを挙げることができる。
【0049】
マスフローコントローラ36は、V族系ガス供給源34から供給されたV族元素ガスおよびV族用キャリアガスの流量(供給量)を調節する機能を有しており、上述した図示しない制御部にて制御される構成となっている。
【0050】
上記制御部によって制御されたマスフローコントローラ33およびマスフローコントローラ36によって、III 族元素ガスがIII 族系ガス供給源31からIII 族系ガス中間室23aに供給され、V族元素ガスがV族系ガス供給源31からV 族系ガス中間室24aに供給される。
【0051】
上記制御部は、例えばハートウェアロジックによって構成されていてもよいし、CPU(central processing unit)などのソフトウェアロジックによって構成されていてもよい。また、上記制御部には、図示しない表示部、キーボードなどの入力部が備えられていてもよい。
【0052】
また、MOCVD装置10では、III 族系ガス供給部23とシャワープレート21との間に冷媒供給部22が設けられており、この冷媒供給部22には、シャワープレート21を冷却するために、冷媒装置37から冷媒供給配管38を通して冷媒が供給されるようになっている。この冷媒は、シャワープレート21の冷却を行った後、冷媒排出配管39を通して図示しない排出ユーティリティへ排出されるようになっている。なお、冷媒は、例えば、一般的な水を用いることができるが、必ずしも水に限らず、他の液体及び気体による冷媒を用いることが可能である。
【0053】
次に、図2を用いてシャワーヘッド20の構成を説明する。図2は、シャワーヘッド20を示す断面図である。冷媒供給部22およびIII 族系ガス供給部23は境界として境界板26aが設置されており、III 族系ガス供給部23およびV族系ガス供給部24は境界として境界板26bが設置されている。さらに、シャワーヘッド20の上部に該当するV族系ガス供給部24の上部には天板26cが設置されている。
【0054】
本実施の形態では、シャワープレート21、冷媒供給部22、III 族系ガス供給部23およびV族系ガス供給部24は積層に配置されている。
【0055】
III 族系ガス供給部23およびシャワープレート21の間には、冷媒中間室22aを貫通して設けられたガス供給管であるIII 族系ガス供給管23bが設けられている。III 族ガスは、III 族系ガス供給管23bを通過してシャワープレート21のガス吐出孔であるIII 族系ガス吐出孔(ガス吐出孔)H3から成長室2に吐出される。
【0056】
また、V族系ガス供給部24およびシャワープレート21の間には、ガス個別中間室であるIII 族系ガス中間室(ガス中間室)23aおよび冷媒中間室22aを貫通したガス供給管であるV族系ガス供給管24bが設けられている。V族元素ガスは、V族系ガス供給管24bを通過してシャワープレート21のV族系ガス吐出孔(ガス吐出孔)H4から成長室2に吐出される。
【0057】
III 族系ガス中間室23aおよびV族系ガス中間室24aはそれぞれ分離して配置されており、III 族材料ガスおよびV族材料ガスはそれぞれ分離した状態で、III 族系ガス吐出孔H3およびV族系ガス吐出孔H4から成長室に吐出される。上記分離した状態とは、III 族材料ガスおよびV族材料ガスが混合していない状態を示す。
【0058】
なお、シャワーヘッド20は、シャワー上記に各種ガスを供給するガス供給手段として機能することができればよく、上記構成に限定されるものではない。すなわち、冷媒供給部22、III 族系ガス供給部23およびV族系ガス供給部24が積層された構造でなくともよく、各供給部が独立したものであってもよい。しかし、上記のように積層構造であれば、各種のガスを均一にシャワープレートから供給し易いため好ましい。
【0059】
以下、各部材について、詳細に説明する。図2に示すように、シャワープレート21には、成長室2にIII 族系ガスを供給するためのIII 族系ガス吐出孔H3およびV族系ガスを供給するためのV族系ガス吐出孔H4がそれぞれ複数形成されている。そして、シャワープレート21の面内(前記サセプタ4に対向している表面内)において、III 族系ガス吐出孔H3とV族系ガス吐出孔H4とが交互に配列されている。また、III 族系ガス吐出孔H3及びV族系ガス吐出孔H4の配列方向は、水平方向及び垂直方向となっている。つまり、格子状となっている。なお、上記配列方向は正方格子状に限らず、均一にガスが吐出される配列であればよく、例えば菱形状などの格子状であってもよい。
【0060】
次に、各ガス供給部について説明する。図2に示すように、III 族系ガス供給部23は、シャワーヘッド20の例えば周辺部から供給されたIII 族系ガスを均一にIII 族系ガス吐出孔H3に導くため、III 族系ガス中間室23aと、このIII 族系ガス中間室23aから成長室2に連通するIII 族系ガス供給管23bとにより構成されている。なお、III 族系ガス供給管23bの断面は、必ずしも円形に限ることはなく、多角形管、楕円管又はその他の断面であってもよい。
【0061】
一方、同様に、V族系ガス供給部24は、シャワーヘッド20の周辺部より供給された反応ガスを均一にV族系ガス吐出孔H4に導くため、V族系ガス中間室24aと、V族系ガス供給管24bとにより構成されている。III 族系ガス供給管23bの断面と同様に、V族系ガス供給管24bの断面についても、必ずしも円形に限ることはなく、多角形管、楕円管又はその他の断面であってもよい。
【0062】
V族系ガス供給管24bの内部は、III 族系ガス中間室23aと通じていない。同様に、III族系ガス供給管23bの内部も、V族系ガス中間室24aと通じていない。このため、III族系ガスおよびV族系ガスのガスは互いに混合しない。
【0063】
上記構造のため、境界板26aにおいて、III 族系ガス吐出孔H3の位置には、III 族系ガス中間室23aからIII 族系ガス吐出孔H3へ連通されるIII 族系ガス供給管23bが配置されていると共に、V族系ガス吐出孔H4の位置には、V族系ガス中間室24aからV族系ガス吐出孔H4に連通されるV族系ガス供給管24bが柱のように林立している。
【0064】
〔気相成長方法〕
MOCVD装置10を用いたMOCVD法によりIII −V族化合物半導体結晶を成長させて、III −V族化合物半導体を製造する本実施の形態の方法を、図1,図3〜7に基づいて説明する。
【0065】
本実施の形態に係るIII-V族化合物半導体の結晶を成膜する気相成長方法は、キャリアガスと共に、III 族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で成長室へ吐出するガス吐出孔が配設されたシャワープレートと、上記III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するIII 族系ガス中間室と、V族元素ガスおよびV族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するV族系ガス中間室と、被成膜基板を収容し、成長室とを備える気相成長装置を用いて、上記被成膜基板に複数層のIII-V族化合物半導体結晶を成膜する気相成長方法である。
【0066】
上記気相成長装置としては、例えば、図1のMOCVD装置10を用いることができる。なお、MOCVD装置10はあくまでMOCVD装置の一例として用いるものであり、本発明に係る気相成長方法は、他のMOCVD装置を用いてももちろん実施可能である。
【0067】
本実施の形態に係る気相成長方法は、複数層のIII-V族化合物半導体結晶を成膜する方法である。上記気相成長方法は、第1成膜工程、残留ガス排出工程、および、第2成膜工程を含んでいる。
【0068】
<準備工程>
気相成長を行う準備工程について説明する。準備工程では、第1成膜工程の前工程として、気相成長装置の作動準備を行う。以下、MOCVD装置10の準備工程について説明する。
【0069】
まず、サセプタ4上に下地となる被成膜基板3をサセプタ4に設置する。その後、成長室2を減圧する。減圧は、用いるIII 族元素ガスおよびV族元素ガスの量によって適宜設定されるが、概して1.33kPa以上、101.33kPa以下(10torr以上、760torr以下)とすることができる。上記減圧は図示しない真空ポンプ等によってなされる。
【0070】
その後、回転軸7の回転により、サセプタ4の上面に設置された被成膜基板3の表面がシャワープレート21と平行な状態を保ちながら回転し、ヒータ5の加熱により、サセプタ4を介して被成膜基板3を所定の温度に加熱する。
【0071】
被成膜基板3の加熱温度は成膜する結晶の種類に応じて適宜設定されるが、GaAsの場合、650℃以上、730℃以下に設定することができる。その後、第1成膜工程に移行する。なお、被成膜基板3に予め反応ガスを供給しながら上記加熱を行ってもよい。例えば、被成膜基板3がGaAsの場合、GaAsを被成膜基板3に供給することによって、被成膜基板3が加熱された際に、被成膜基板3の表面からGaAsが蒸発することを抑制することができるため好ましい。
【0072】
<第1成膜工程>
第1成膜工程は、上記被成膜基板に第1半導体層を形成する工程である。まず、III 族元素ガスおよびV族元素ガスを、ガス中間室であるIII 族系ガス中間室23aおよびV族系ガス中間室24aにそれぞれ供給する。
【0073】
ここで、工程1aにおけるIII 族元素ガスおよびV族元素ガスの供給を第1供給と称する。第1供給は図示しない制御部によってマスフローコントローラ33およびマスフローコントローラ36が制御され、これらによってなされる。なお、上記第1供給において供給されるIII 族元素ガスを第1III 族元素ガスと称し、V族元素ガスを第1V族元素ガスと称する。
【0074】
III 族元素ガスまたはV族元素ガスは、キャリアガスの流量を規定することによって調節することができる。キャリアガの流量(キャリアガス流量)は、特に限定されるものではないが、キャリアガス流量が低すぎると供給される元素ガスの量が低下し、成膜量が低下することとなる。一方、キャリアガス流量が高すぎると、成長室2内に付着しているフレークの巻き上げなどを起こし、成膜された結晶の結晶性の低下を招くだけでなく、再現性が悪くなる。このため、キャリアガス流量は、1SLM(リットル/分)以上、50SLM以下の範囲内とすることが好ましい。
【0075】
また、第1成膜にて成膜対象となる第1半導体層としては、後述する第2半導体層と共にIII-V族化合物半導体の結晶を構成するものであれば特に限定されない。例えば、第1半導体層/第2半導体層として、GaAs/InGaP、InGaN/GaNなどを挙げることができる。また、第1半導体層および第2半導体層を繰返し積層して3層以上のIII-V族化合物半導体の結晶を成膜してもよい。
【0076】
第1成膜工程では、準備工程を経たMOCVD装置10に、III 族元素ガスおよびV族元素ガスを供給すると、シャワープレート21に形成されているIII 族系ガス吐出孔H3からIII 族元素ガスが成長室2へ、被成膜基板3の表面に対して垂直方向に導入される。これと共に、シャワープレート21に形成されているV族系ガス吐出孔H4からV族元素ガスが成長室2に、被成膜基板3の表面に対して垂直方向に導入される。
【0077】
これにより、被成膜基板3の表面上にIII −V族化合物半導体結晶が成長することになる。なお、ここでは、III 族元素ガスの供給量及びV族元素ガスの供給量は、図示しない制御部を介してマスフローコントローラ33およびマスフローコントローラ36にて制御され、III 族元素ガス及びV族元素ガスのそれぞれが成長室2に供給されることになる。
【0078】
この際、III 族元素ガス及びV族元素ガスは、シャワープレート21に交互に配列されたIII 族系ガス吐出孔H3及びV族系ガス吐出孔H4からそれぞれ供給される。このため、被成膜基板3表面の上方におけるIII 族系ガス吐出孔H3とV族系ガス吐出孔H4との分布の偏りを低減することができる。
【0079】
III 族元素ガスとV族元素ガスとが混合して濃度分布が均一となると、ヒータ5による被成膜基板3の加熱と相俟ってIII 族元素ガスとV族元素ガスとの気相反応が被成膜基板3の表面近傍において進行する。これにより、第1半導体層が被成膜基板3に形成される。
【0080】
<第2成膜工程>
第2成膜工程は、第1成膜工程とは異なる組成のIII-V族化合物半導体結晶を第1半導体層上に成膜する工程である。すなわち、第1半導体層および第2半導体層とは互いに組成が異なる。
【0081】
ここで、工程1cにおけるIII 族元素ガスおよびV族元素ガスの供給を第2供給と称する。第2供給は図示しない制御部によってマスフローコントローラ33およびマスフローコントローラ36が制御され、これらによってなされる。なお、第2供給において供給されるIII 族元素ガスを第2III 族元素ガスと称し、V族元素ガスを第2V族元素ガスと称する。
【0082】
第2成膜工程では、第2III 族元素ガスおよび第2V族元素ガスを用いるが、上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっている。すなわち、(1)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なる場合、(2)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに同一である場合、(3)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに同一であり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なる場合の3つの場合が生じ得る。
【0083】
第2成膜工程では、第2III 族元素ガスおよび第2V族元素ガスをIII 族系ガス中間室23aおよびV族系ガス中間室24aにそれぞれ分離した状態で供給する。
【0084】
III 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスを供給する条件については、第1成膜工程における条件を用いることができる。なお、第1成膜工程にて用いた両キャリアガスの流量と異なる流量を採用することもできる。
【0085】
なお、第1成膜工程および第2成膜工程は、複数回なされることによって、複数層のIII-V族化合物半導体結晶を成膜することができる。
【0086】
<残留ガス排出工程>
残留ガス排出工程は、上記第1成膜工程および第2成膜工程の間にてなされる。すなわち、第1成膜工程、残留ガス排出工程および第2成膜工程の順序でなされてもよいし、第2成膜工程、残留ガス排出工程および第1成膜工程の順序でなされてもよい。また、第1成膜工程および第2成膜工程の間で常に残留ガス排出工程がなされることが望ましいが、第1成膜工程および第2成膜工程が繰り返される場合、上記第1成膜工程および第2成膜工程の間にて少なくとも1回なされればよい。
【0087】
残留ガス排出工程では、第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室23aへ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室24aへの供給のうち少なくとも一方への供給を行う。
【0088】
すなわち、上記<第2成膜工程>における(1)の場合、III 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスのうち少なくとも一方をIII 族系ガス中間室23aおよび/またはV族系ガス中間室24aに、(2)の場合、III 族用キャリアガスをIII 族系ガス中間室23aに、(3)の場合、V族用キャリアガスをV族系ガス中間室24aに、第1成膜工程よりも増量して供給する。
【0089】
このように、第1成膜工程および第2成膜工程にて、切り替える元素ガスに係るIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してガス中間室に供給する。このため第1成膜工程にて、ガス中間室に残留していた元素ガスを速やかに排出させることができる。これにより、第2成膜工程において、第1成膜工程と異なる元素ガスを供給する際、第2成膜工程にて不要なガスが中間室に残存することを抑制できる。従って、第2成膜工程において、残留したガスが第1半導体層の状態を損ねることなく、成膜を行うことができる。このため、第1結晶膜の状態に悪影響を与えず第2半導体層を形成することができ、第1半導体層と第2半導体層の界面急峻性を向上させることができる。また、均一で、結晶性の良い結晶を再現性よく成長させることが可能である。
【0090】
本工程において、成長室に供給するIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスのそれぞれの流量は、第1成膜工程において対応するIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガス以上の流量である。上記ガス流量は、上述したように、得られる成膜量の低下、および、成長室2内部におけるフレークの巻上げの抑制を鑑みて、1SLM以上、5SLM以下の範囲内とすることが好ましい。
【0091】
なお、(1)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なる場合、III 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの両方を、それぞれ第1成膜工程以上の流量にて供給することが好ましいが、一方を供給した場合であっても本発明の効果を得ることは可能である。
【0092】
また、(2)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに同一である場合、III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室23aに供給し、V族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量してV族系ガス中間室24aに供給することが好ましい。
【0093】
上記のように、第1成膜工程に比較して、III 族用キャリアガスを増量させ、V族用キャリアガスを減量させることによって、成長室2内の被成膜基板3上に供給されるキャリアガスの総流量が過度に増量されることを抑制できる。これによって、結晶をより安定して成長させることができるので、再現性のよい結晶成長が可能となる。
【0094】
一方、(3)第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに同一であり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なる場合、V族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室へV族系ガス中間室24aに供給し、III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量してIII 族系ガス中間室23aに供給することが好ましい。
【0095】
上記のように、第1成膜工程に比較して、V族用キャリアガスを増量させ、III 族用キャリアガスを減量させることによって、成長室2内の被成膜基板3上に供給されるガスの総流量が過度に増量されることを抑制できる。これによって、結晶をより安定して成長させることができるので、再現性のよい結晶成長が可能となる。
【0096】
さらに、残留ガス排出工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスのガス総流量が、第1成膜工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスのガス総流量のガス総流量と等しいことがさらに好ましい。これにより、第1成膜工程および残留ガス排出工程において、材料ガスの流量は等しい。したがって、残留ガス排出工程において、成長室2内部のガスの流れが乱れることを抑制することができ、その状態を保ちつつ第2成膜工程にて第2半導体層を積層することができる。このため、さらに、均一で結晶性のよい結晶を、非常に再現性よく成長させることができる。
【0097】
また、残留ガス排出工程は、より長い時間行うことが残留ガスを多く排出する観点から、好ましいが作業効率等を考慮すると、1秒以上、10秒以下の時間行うことが望ましい。
【0098】
<InGaP/GaAsの成膜>
具体的に、V族元素ガスを切り替える例として、InGaP/GaAsへテロ構造を有する作製する方法を詳細に説明する。図3は、本発明に係る気相成長方法のフローを示すフローチャートである。
【0099】
まず、図示しない準備工程では、GaAsの被成膜基板3を成長室2のサセプタ4に設置する。その後、成長室2を1.33kPa以上、13.33kPa以下に減圧し、V族元素ガスであるAsHをV族系ガス供給源34からV族系ガス供給部24を経由して、V族系ガス吐出孔H4から被成膜基板3に供給する。その後、ヒータ5によって被成膜基板3を加熱し、基板温度を650℃以上、730℃以下に上昇させる。加熱中にAsHを導入している理由としては、基板表面からAsが蒸発するのを防ぐためである。
【0100】
次に、工程1aでは、第1半導体層であるGaAsを成長させるために、上記AsH(第1V族元素ガス)を成長室2に吐出した状態で、III 族系ガス供給部23からIII族元素ガスであるTMG(第1III 族元素ガス)を成長室2に吐出させる。この時のIII族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスである水素キャリアガス流量はそれぞれ1.0SLMである。これにより、成長室内に導入されたTMGおよびAsHが基板近傍で気相反応を起こし、GaAsが基板上に成膜される。GaAsが所定の膜厚となった時点にて、TMGおよびAsHの導入を停止する。これにより、工程1aが終了する。
【0101】
工程1bでは、上記AsHに替えてV族元素ガスであるPH(第2V族元素ガス)を成長室2に導入する。このときPHの水素キャリアガスの流量を2.0SLMとする。PHの供給によって、V族系ガス中間室24aに残存していたAsHが成長室2に吐出され、さらに成長室2外へ速やかに排出されることとなる。
【0102】
最後に、工程1cでは、第2半導体層であるInGaPを成長させるために、上記PH(第2V族元素ガス)を成長室2に吐出した状態で、III族元素ガスであるTMGおよびTMI(第2III 族元素ガス)を成長室2に吐出し、GaAs層上にInGaPを成長させる。
【0103】
なお、この工程1cでは、PHのV族用キャリアガス流量を工程1aのAsHのV族用キャリアガス流量と同じ1.0SLMに戻してもよい。
【0104】
ここで、工程1aから工程1bに移行する間における、V族元素ガスの切り替えによる効果を示す。図4および図5は、V族元素ガスの切り替え時の水素キャリアガス流量を変更することによって、流体力学に基づきV族系ガス中間室24a内のAsH濃度を計算した結果を示すグラフである。
【0105】
計算に用いたV族系ガス中間室24aの大きさは直径15mm、高さ6mmである。工程1bでは、V族系ガス中間室24aの側面からPHが供給されてV族系ガス吐出孔H4から排出される。
【0106】
図4のグラフにおける縦軸は、水素キャリアガス流量が1.0SLMの場合におけるV族系ガス中間室24a内のAsH濃度を示しており、横軸は、V族系ガス中間室24aの中心位置からの距離の割合を示している。また、各グラフは、工程1aでのAsH停止後から1.0秒後、2.0秒後、3.0秒後、および、4.0秒後に対応している。
【0107】
図4のグラフに示されるように、AsH停止から4.0秒経過した後には、ほとんど中心位置から0.6の距離割合の位置では、ほとんどAsHが残存していないことがわかる。
【0108】
これに対し、図5では、図4の水素キャリアガスを2倍の2.0SLMにした場合、AsH導入停止後1.0秒であっても、図4の2.0秒後のグラフと同程度の残留ガス濃度比率が示されていることがわかる。さらに、図5の2.0秒後のグラフでは、ガス中間室内のAsHがほとんど残留していないことが確認できる。
【0109】
装置サイズが大型になればガス中間室の体積も大きくなるため、この場合、さらに残留ガスが排出され難くなり、本発明の効果はより顕著に現れると考えられる。また、図3,4を用いて示したように、キャリアガス流量を2倍以上に増大させるとさらに時間が短縮できることは明らかである。
【0110】
ここで、本実施の形態では、工程1bにおいて、III 族系ガス中間室23aに供給されるIII 族用キャリアガスの流量を工程1aよりも減量することができる。
【0111】
例えば、工程1bでV族用キャリアガスのキャリアガス流量を1.0SLMから2.0SLMに増量させた場合、III 族用キャリアガスのキャリアガス流量を1.0SLMから0.5SLMに減量させる。
【0112】
従来の気相成長方法では、キャリアガスの流量が大きくなると成長室内のガスの流れが大きく変わり、工程1cが開始された際に結晶成長がうまくいかないことが多い。しかしながら、上記のようにキャリアガス流量を調整することによって、工程1bにおいて過度にキャリアガスの流量が増量されることを抑制することができる。特にキャリアガスの流量が大きくなると、成長室内に付着しているフレークの巻き上げなどを起こし、結晶性の低下を招くだけでなく、気相成長方法の再現性が悪くなるため、これらを回避できる。
【0113】
さらに、本実施の形態では、工程1bにおいて、第1成膜工程に比較してV族用キャリアガス流量の増量とIII族用キャリアガス流量の減量とを等しくすることもできる。例えば、工程1aで、V族用キャリアガス流量を1.5SLMとし、工程1bでV族用キャリアガス流量を2.5SLMに増分させた場合、III族元素ガスのキャリアガス流量を工程1aの1.5SLMから工程1bの0.5SLMに減量させる。
【0114】
これによって工程1a〜1cにおいてガス総流量が変わらないことになり、成長室内のガスの流れが安定するため、気相成長方法の再現性が大きく向上する。
【0115】
上記のように、図3に示す本発明の結晶成長方法で成膜したInGaP表面の走査電子顕微鏡像を図6の(a)に、比較例として工程1bを行わず工程1aおよび工程1cのみにて成膜したInGaP表面の走査電子顕微鏡像を図6の(b)に示す。本発明の結晶成長方法で成膜したInGaP表面は鏡面であるのに対し、比較例の表面は小さな凹凸があり、白濁している。これは、工程1bを行わなかったため、InGaPにおいて、急峻なヘテロ界面が形成されなかった結果、As原子とP原子との置換が生じた影響が現れたものと考えられる。しかし、本発明に係る図6の(a)に示す走査電子顕微鏡像では、そのような白濁が認められず、本発明の優位性が示されている。
【0116】
<InGaN/GaNの成膜>
次に、III族元素ガスを切り替える例として、InGaN/GaNの多重量子井戸(multiple quantum well:MQW)構造を作製する場合を取り上げて、本発明の結晶成長方法の詳細を述べる。
【0117】
まず、準備工程では、被成膜基板3としてサファイア基板を用い、被成膜基板3上にGaNバッファ層およびn型GaN層を成長させる。
【0118】
第1成膜工程である工程2aとして第1半導体層のGaNを成長させるために、成長室2内にIII 族系ガス供給部23からIII族元素ガスであるTMGを、V族系ガス供給部24からV族元素ガスであるNHを導入する。III 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスとしては、共に窒素を用い、両キャリアガス流量を一例として1.0SLMに設定する。
【0119】
次に、第2成膜工程である工程2bでは、第2半導体層のInGaNを成長させるために、III族元素ガスであるTMGおよびTMIをIII 族系ガス中間室23aに供給し、GaN層上にInGaNを成長させる。工程2b終了後、TMGおよびTMIの導入を停止する。工程2aと同様に、III 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスとしては、共に窒素を用い、両キャリアガス流量を1.0SLMに設定する。
【0120】
その後、残留ガス排出工程である工程2cとして、III族元素ガスの窒素キャリアガス流量を例えば2.0SLMに増大させて、中間室内に残留しているTMIを排出する。V族用キャリアガスの流量は、1.0SLMのままである。
【0121】
工程2c終了後、少なくとも1回以上再び工程2aを行い(工程2dでのNO)、InGaN層上にGaNを成長させる。このように工程2a〜2cを繰り返すことによってInGaN/GaNのヘテロ界面が急峻なMQW構造を作製することができる。すなわち、本発明に係る気相成長方法では、第1成膜工程と第2成膜工程とを連続して行ってもよく、少なくとも1回、第1成膜工程および第2成膜工程の間で残留ガス排出工程がなされれば、ヘテロ界面が急峻な結晶を成長させることが可能である。
【0122】
ここで、本実施の形態では、工程2cにおいて、V族元素ガスのキャリアガス流量を減らすこともできる。例えば、工程2cでIII族用キャリアガスの流量を1.0SLMから2.0SLMに増分させた場合、V族元素ガスのキャリアガス流量を1.0SLMから0.5SLMに減分させる。
【0123】
さらに、本実施の形態では、さらに工程2cにおいて、III族用キャリアガス流量の増分量とV族用キャリアガス流量の減分量を等しくすることができる。例えば、工程2cでV族用キャリアガス流量を1.5SLMから2.5SLMに増分させた場合、III族用キャリアガスの流量を1.5SLMから0.5SLMに減分させる。
【0124】
これにより、工程2a〜2cにおいてガス総流量が変わらないことになり、成長室内のガスの流れが安定する。特にMQW作製のような短時間にガスの切り替えを頻繁に行う場合、成長室2のガス流れが安定することは結晶性、再現性の両方の観点から非常に重要である。
【0125】
なお、工程1aおよび工程1cにおいて、III 族元素ガスとして、TMGを共通して用いているが、第2成膜工程では、第2III 族元素ガスとして、TMGと共にTMIを用いているため、工程1cから再度工程1aに移行する場合、成長室2内に残留したTMIを排出するために、工程1cおよび工程1a間に残留ガス排出工程を設け、III 族用キャリアガスだけでなく、V族用キャリアガスの供給を行うことが好ましい。
【0126】
なお、上記においては、InGaP/GaAs系、InGaN/GaN系について詳細に説明したが、これらは一例にすぎず、本発明においては上記の系に限ったことではない。また、III 族元素ガス、V族元素ガスを導入する場合について説明したが、本発明においては、III 族元素ガス及びV族元素ガスと共に、不活性ガスやドーパント源となるガス等を成長室2に供給してもよい。
【0127】
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、急峻なヘテロ接合界面を有するIII-V族化合物半導体結晶を成膜することができるため、優れたIII-V族化合物半導体結晶を提供できる。したがって、本発明は、半導体結晶を製造する分野、および、半導体結晶を部品として用いる電気機器などを用いる分野にて利用が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 反応炉
2 成長室
3 被成膜基板
4 サセプタ
5 ヒータ
6 支持台
7 回転軸
8 被覆板
10 MOCVD装置(気相成長装置)
11 ガス排出部
12 パージライン
20 シャワーヘッド
21 シャワープレート
22 冷媒供給部
22a 冷媒中間室
23 III 族系ガス供給部
23a III 族系ガス中間室
23b III 族系ガス供給管
24 V族系ガス供給部
24a V族系ガス中間室
24b V族系ガス供給管
26a 境界板
26b 境界板
26c 天板
31 III 族系ガス供給源
32 III 族系ガス配管
33 マスフローコントローラ
34 V族系ガス供給源
35 V族系ガス配管
36 マスフローコントローラ
37 冷媒装置
38 冷媒供給配管
39 冷媒排出配管
H3 III 族系ガス吐出孔(ガス吐出孔)
H4 V族系ガス吐出孔(ガス吐出孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスと共に、III 族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で成長室へ吐出するガス吐出孔が配設されたシャワープレートと、上記III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するIII 族系ガス中間室と、V族元素ガスおよびV族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するV族系ガス中間室と、被成膜基板を収容し、成長室とを備える気相成長装置を用いて、上記被成膜基板に複数層のIII-V族化合物半導体結晶を成膜する気相成長方法であって、
第1III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第1V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給して上記被成膜基板に第1半導体層を形成する第1成膜工程と、
第2III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第2V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給して上記被成膜基板に第2半導体層を形成する第2成膜工程とを含み、
上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっており、
上記第1成膜工程および第2成膜工程の間に、
第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室へ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室への供給のうち少なくとも一方への供給を行う残留ガス排出工程を含むことを特徴とする気相成長方法。
【請求項2】
第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに同一であり、第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに異なり、
上記残留ガス排出工程において、
上記V族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも増量してV族系ガス中間室へ供給し、
上記III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量してIII 族系ガス中間室に供給することを特徴とする請求項1に記載の気相成長方法。
【請求項3】
第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスが互いに同一であり、第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガスが互いに異なり、
上記残留ガス排出工程において、
上記III 族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも増量してIII 族系ガス中間室へ供給し、
上記V族用キャリアガスを、第1成膜工程よりも減量してV族系ガス中間室へ供給することを特徴とする請求項1に記載の気相成長方法。
【請求項4】
上記残留ガス排出工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの総流量が、上記第1成膜工程におけるIII 族用キャリアガスおよびV族用キャリアガスの総流量と等しいことを特徴とする請求項2または3に記載の気相成長方法。
【請求項5】
キャリアガスと共に、III 族元素ガスおよびV族元素ガスをそれぞれ分離した状態で成長室へ吐出するガス吐出孔が配設されたシャワープレートと、上記III 族元素ガスおよびIII 族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するIII 族系ガス中間室と、V族元素ガスおよびV族用キャリアガスを上記ガス吐出孔に供給するV族系ガス中間室と、被成膜基板を収容し、成長室とを備える気相成長装置において、
III 族元素ガス、V族元素ガス、III 族系キャリアガスおよびV族系キャリアガスの流量を制御する制御部が備えられており、
上記制御部は、
第1III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第1V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給する第1供給を制御し、上記被成膜基板に第1半導体層が形成された後、第2III 族元素ガスを上記III 族系ガス中間室に供給し、第2V族元素ガスを上記V族系ガス中間室に供給する第2供給を制御し、
上記第1III 族元素ガスおよび第2III 族元素ガス、並びに、上記第1V族元素ガスおよび第2V族元素ガスの組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに係る元素ガス同士は互いに異なっており、
上記第1半導体層が形成された後であって、第2供給の前に、
第1III 族元素ガスと第2III 族元素ガスとが異なる場合、III 族用キャリアガスを第1供給時よりも増量してIII 族系ガス中間室へ、または、第1V族元素ガスと第2V族元素ガスとが異なる場合、V族系キャリアガスを第1供給時よりも増量してV族系ガス中間室への供給のうち少なくとも一方への供給を行うことを特徴とする気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−238810(P2010−238810A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83449(P2009−83449)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】