説明

MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子、これらを利用した光電子集積チップおよびデータ処理装置

【課題】 MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の提供、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法の提供、かかる受発光素子を利用した光電子集積チップ、データ処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたトンネルSiO層と、該トンネルSiO層上に形成されたSi殻内にGe核を内包した量子ドットと、該量子ドット上及び前記トンネルSiO層上に形成されたコントロールSiO層と、該コントロールSiO層上に形成されたゲート電極層と、を有する。MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたゲートSiO層と、該ゲートSiO層上に形成されたドープSi層、Ge層及びドープSi層を順次積層してなる積層ゲート電極層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線又は光通信を利用したMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子、光電子集積チップ、データ処理装置およびMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、半導体基板上に形成された多数のトランジスタやメモリセルから構成され、情報処理の高性能化のため回路の微細化および高集積化が進んでいる。また、半導体チップ内に共有メモリを設け、共有メモリを介して複数のプロセッサやCPU間でデータを共有し、同時進行でデータを処理する情報処理の高性能化が進んでいる。
【0003】
一方、これらの情報処理の高性能化に伴い、回路の微細化および高集積化による回路内の配線の微細化が進み、それに伴いチップ内の離れた位置の回路間を接続するグローバル配線や、チップとチップをつなぐチップ間配線等のため配線距離が長くなり、配線による信号伝達の遅延が問題になっている。
【0004】
この配線による信号伝達の遅延問題に対し、電気的信号伝達に代えて光を用いて信号伝達をおこなう方法(光配線又は光通信による方法)が提案されている。例えば、特許文献1に、GaAs等の化合物半導体を利用して光配線又は光通信を実現する方法が提案されている。また、特許文献2には、Ge又はGe−Si合金からなる量子ドットを利用して光配線又は光通信を実現する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000-332229号公報
【特許文献1】特開平6-326359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1又は2に提案された方法は、光配線又は光通通信を実現するためには、従来からSi半導体基板上にトランジスタやメモリセルを形成する手段として広く使用されているCMOS電界効果トランジスタ製造プロセスを利用できないという問題がある。このため、半導体集積回路の製造方法が複雑になり、また特別の装置、例えば高温・高真空装置を準備しなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は係る問題に鑑み、従来より広く使用されているCMOS電界効果トランジスタ製造プロセスを用いてプロセッサやメモリセルを構成した同一のSi半導体基板に光配線および光通信を実現することができるMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の提供、および、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法を提供することを目的とする。また、かかる発光素子・受光素子を利用した光電子集積チップ、データ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたトンネルSiO層と、該トンネルSiO層上に形成されたSi殻内にGe核を内包した量子ドットと、該量子ドット上及び前記トンネルSiO層上に形成されたコントロールSiO層と、該コントロールSiO層上に形成されたゲート電極層と、を有してなる。
【0008】
一方、本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型受光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたゲートSiO層と、該ゲートSiO層上に形成されたドープSi層、Ge層及びドープSi層を順次積層してなる積層ゲート電極層と、を有してなる。
【0009】
上記MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子と、MOS電界効果トランジスタ型受光素子は、半導体基板を共有するように形成してなる光電子集積チップを構成することができる。また、その光電子集積チップを、該光電子集積チップを構成するMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子と、MOS電界効果トランジスタ型受光素子とを対応させるように複数枚近接配設してデータ処理装置を構成することができる。
【0010】
上記のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子は、半導体基板上にトンネルSiO層を形成する工程、該トンネルSiO層上に金属Siが島状に分散したSiアイランドを形成する工程、該Siアイランド上に選択的にGe核を形成する工程、該Siアイランド上に前記Ge核を含んで金属Siを積層させてSi殻内にGe核を内包した量子ドットを形成する工程、該量子ドットを含みトンネルSiO層を覆うコントロ−ルSiO層を形成する工程、および、該コントロ−ルSiO層に重ねてゲート電極層を形成する工程を順次行うことによって製造することができる。
【0011】
上記MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法においては、Si殻内にGe核を内包した量子ドットを形成するに先立ち、トンネルSiO層の表面層をOH結合で終端されたトンネルSiO層に改質するのが好ましい。
【0012】
また、量子ドットを含みトンネルSiO層を覆うコントロ−ルSiO層を形成するに先立ち、量子ドット表面に酸化薄膜を形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子を利用して光配線を半導体集積回路内に形成することによって、半導体集積回路を構成するCPU等のプロセッサ、メモリセル間の信号伝達、あるいは異なるチップに形成された半導体集積回路間での光通信による信号伝達が可能になる。これにより、共有メモリを介してデータを共有し、各プロセッサにおける並列処理により、高速かつ高度の情報処理を行うことができる。また、本発明は係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子を、CMOS電界効果トランジスタ製造プロセスにより多数のMOS電界効果トランジスタやメモリセルと同一の製造方法で同一の半導体集積回路内に容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の実施の形態について説明する。本MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10は、図1に示すように、半導体基板11と、該半導体基板11上のトンネルSiO層21と、該トンネルSiO層21上のSi殻23内にGe核24を内包した量子ドット22と、該量子ドット22上およびトンネル層21上のコントロールSiO層25と、該コントロールSiO2層25上のゲート電極層27と、を有してなる。
【0015】
半導体基板11はその種類を問わないが。半導体材料であればどんなものでもよい。しかしながら、現在大規模集積回路(LSI)に広く使用されているSi単結晶基板あるいはSiO上に形成したSi単結晶薄膜(SOI)を用いるのが好ましい。この半導体基板11は、その半導体能動層の両端に電子および正孔を供給するためのソース領域13およびドレイン領域15を有する。ソース領域13およびドレイン領域15領域は、ゲート電極層27に印加される電圧に従い半導体基板11に形成される反転層が短時間で反転するようにヘビードープn型およびp型半導体とするのがよい。
【0016】
トンネルSiO層21は、その膜厚が2〜4nmで、半導体基板11上に積層されている。これにより、半導体基板11からトンネル効果を利用して量子ドット22へキャリアを注入することができる。
【0017】
量子ドット22は、Si殻23内にGe核24を内包したほぼ球又は半球形の構造をしており、トンネルSiO層21上にアイランドを形成している。量子ドット22の外径は、10〜20nmが好ましく、その数密度は1×1011cm-2以上にするのが好ましい。Si殻23内に内包されるGe核24は、その直径が2〜5nmであるのが好ましい。
【0018】
コントロールSiO層25は、量子ドット22を覆うようにトンネルSiO層21上に積層されている。コントロールSiO層25の厚みは5〜10nmである。ゲート電極層27は、ドープポリシリコンが適用でき、量子ドット22に電子又は正孔を導入し発光を促す機能を有する。
【0019】
一方、本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型受光素子30は、図2に示すように、半導体基板12と、該半導体基板12上に積層されたゲートSiO層31と、該ゲートSiO層31上にドープSi層33、Ge層35およびドープSi層37を順次積層してなる積層ゲート電極層32を有してなる。
【0020】
半導体基板12は、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10を形成する半導体基板11と同様なものでよい。このため、MOS電界効果トランジスタ型受光素子30とMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10を同一の半導体基板上に形成することができる。
【0021】
ゲートSiO層31は、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10のコントロールSiO層25と同様のSiO膜が適用できる。
【0022】
積層ゲート電極層32は、ドープSi層33と37の間にGe層35を挟んだ構造をしており、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10から放射された赤外光を受けGe層35で発生する電子を電流として取り出す機能を有す。ドープSi層33および37は、ゲート電極層27と同様なドープポリシリコンが適用できる。
【0023】
このような構造を有するMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の動作を図3〜6に基づいて説明する。図3(a)に示すように、ゲート電極層27に負電圧を印加すると、半導体基板11の表面に蓄積された正孔410は薄いトンネルSiO層21をトンネルして量子ドット22へと注入される。これをバンド図で説明すると、図4(a)に示すように、ゲート電極層27のフェルミレベル(413)の上昇により、正孔410が半導体基板11の表面に蓄積され、薄いトンネルSiO層21をトンネルし(411)量子ドット22へ注入される。量子ドット22に注入された正孔410は、図4(a)に示すように、Ge核24が正孔410に対して量子井戸構造を形成しているのでGe核24中に閉じ込められる(412)。
【0024】
次に図3(b)に示すように、ゲート電極層27に正電圧を印加すると、半導体基板11の反転層から電子420が量子ドット22へ注入される。これをバンド図で説明すると、図4(b)に示すように、ゲート電極層27のフェルミレベル(413)の低下により、電子420が、半導体基板11表面の反転層に誘起され薄いトンネルSiO層21をトンネルし(421)、量子ドット22へ注入される。注入された電子420は、量子ドット22に閉じ込められていた正孔410と再結合(422)して発光(423)する。このときの発光エネルギーは,Geのバンドギャップ程度のエネルギーであるから、赤外域の波長を有する赤外光424が発光される。
【0025】
このようにMOS電界効果トランジスタ型量子ドット受光素子10から発光された赤外光424は、図5(a)に示すように、半導体基板12、ゲートSiO層31およびドープSi層33を透過し、Ge層35へ到達する。Geはバンドギャップが小さいので赤外光424を吸収し電子・正孔対509を発生する。このとき、図5(b)に示すように、積層ゲート電極層32のドープSi層37側に正電圧を印加しておくと、発生した電子420はドープSi層37に流れ込み、正孔410はゲートSiO層31側に移動する。
【0026】
これをバンド図で説明すると、赤外光424の吸収により電子・正孔対509が生成され、図6(a)に示すように、電子420が、積層ゲート電極層32のフェルミレベル(604)の低下によりゲルマニウムバンド(603)の価電子帯を移動しドープSi層37へ流れ込む。一方、図6(b)に示すように、正孔410はゲルマニウムバンド(603)とシリコンバンド(602)の境界に発生するバリアに捉えられるため、この領域に蓄積されることとなる。これによって、赤外光により電子・正孔対509が次々に発生し、Ge層35には正の電荷が蓄積され半導体12層のバンドが曲がり(611)反転層が形成されていく。
【0027】
Ge層35への正電荷の蓄積により、実効的に正のゲート電圧が増加し、半導体基板12中に形成される反転層のキャリア密度が増加する。これをソース−ドレイン間電流として検出すればこのMOS電界効果トランジスタは光検出素子として動作する。すなわち、図5(c)に示すように、受光中のゲート電圧(621)をMOSトランジスタのサブスレッショルド領域に設定すれば、赤外光424の入力による積層ゲート電極層32のわずかなゲート電圧の増加(621→622)でもドレイン電流(623→624)は劇的に増大する。このようにトランジスタの増幅作用を利用することによって、わずかな光でも高感度に検出できるので、本発明のMOS電界効果トランジスタ型受光素子30は高感度の光検出器として動作する。
【0028】
以上説明したように、このようなMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の構成により、上記MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10の量子ドット22部分のバンド構造は、伝導帯側にわずか飛び出たようなバンド整合をとり、正孔に対して量子井戸構造を形成する。このため、Ge核24内での正孔の強い閉じ込めが可能となり、効率的発光再結合を実現できる。また、MOS電界効果トランジスタ型受光素子30は、トランジスタの増幅作用を利用することによって、わずかな赤外光でも高感度に検出することができる。これらにより、CPU等のプロセッサ、メモリセルあるいは異なるチップに形成された導体集積回路間の高速かつ安定した光通信が可能になる。
【0029】
上記に説明したように、本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子は、正孔に対して量子井戸構造を有する量子ドット22をトンネルSiO層21上にアイランド状に分布させているから、効率的な発光再結合を実現することができる。このMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子を製造するには、半導体基板11上にトンネルSiO層21を形成する工程、該トンネルSiO層21上に金属Siが島状に分散したSiアイランドを形成する工程、該Siアイランド上に選択的にGe核24を形成する工程、該Siアイランド上に前記Ge核24を含んで金属Siを積層させてSi殻23内にGe核24を内包した量子ドット22を形成する工程、該量子ドット22を含みトンネルSiO層21を覆うコントロ−ルSiO層25を形成する工程、および、該コントロ−ルSiO層25に重ねてゲート電極層27を形成する工程を順次行う。
【0030】
先ず、公知の方法を使用して半導体基板11上にトンネルSiO層21を形成する。例えばSi基板表面をドライO雰囲気中850℃で熱酸化を行って、2〜4nmのSiO膜を形成する。
【0031】
次に、トンネルSiO層21上に金属Siが島状に分散したSiアイランドを形成する。この際、予めトンネルSiO層21表面に金属Siの核形成サイトを形成しておくのが好ましい。すなわち、トンネルSiO層21部分を0.1%フッ酸に3〜5min浸漬した後、純水で2〜4min間洗浄することによって表面がOH結合で終端された2〜4nmの改質されたトンネルSiO層21を形成する。その後、LPCVD法により、SiHガスを用いて0.5Torr、560〜600℃、50〜70sec間SiをトンネルSiO層21上に積層させる。これにより、トンネルSiO層21に高密度のSiアイランドを形成することができる。また、形成されたSiアイランドはSi量子ドットとして機能させることができる。
【0032】
次に、Ge核をSiアイランド上に選択的に形成させ、その後Siアイランド上に付着したGe核を含んでさらに金属Siを積層させてSi殻内にGe核を内包した量子ドットを形成する。本工程もLPCVD法を利用する。先ず、Hで5%に希釈した0.2Torr、380〜450℃のGeHガスを用いて、Geを150〜250sec間Siアイランド上に付着させる。本条件により、GeはトンネルSiO層21上に付着することなく、Siアイランド上に選択的に付着する。次に、GeHガスを0.5Torr、560〜600℃のSiHガスに切替え、50〜70sec間Ge上にSiを堆積させる。このとき、SiはSiアイランド上に付着したGe核24を包含するように積層する。
【0033】
次に、量子ドット22を含みトンネルSiO層21を覆うコントロ−ルSiO層25を形成する。この際、予め量子ドット22表面に酸化薄膜を形成し、量子ドットを安定化させておくのが好ましい。すなわち、量子ドット22部分を850℃の2%ドライOで酸化し、量子ドット22の表面に0.8〜1.5nmの酸化薄膜を形成した上で、LPCVD法によりHeで10%に希釈したSiガスを用いて0.2Torr、440℃の条件で、量子ドット22を含みトンネルSiO層21を覆う膜厚3〜4nm程度のa−Si(アモルファスSi)膜を成膜し、しかる後、このa−Si膜を800℃の2%ドライOで酸化する。これによって、総膜厚6〜8nmのコントロールSiO層25を形成する。
【0034】
次に、コントロ−ルSiO層25に重ねてゲート電極層27を形成する。ゲート電極層27は、公知の方法、例えばLPCVD法によりドープポリシリコンを積層させることによって形成することができる。
【0035】
以上の工程により、以下のような量子ドットを有するMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子を製造することができる。すなわち、本量子ドット22はSi殻23内にGe核24を内包し外径が10〜20nmの球又は半球状をしており、トンネルSiO層21上に1〜3×1011cm-2の高い数密度でアイランドを形成している。これにより、効率的な発光再結合を実現することができる。また、量子ドット22はその外層に酸化薄膜を有するので、量子ドット22の形成後量子ドット22およびトンネルSiO層21上にコントロールSiO層25を形成する際等に、量子ドット22に包含されたGeが揮発するという問題を生ずることもなく、量子ドット22とトンネルSiO層21およびコントロールSiO層25との界面での欠陥の発生も防止することができる。
【0036】
本発明の実施の形態は上記に説明したものに限らない。半導体基板11、12は、Ge、C等のIV族元素若しくはそれらの化合物からなる単結晶若しくは多結晶半導体、GaAs、InP等のIII−V族あるいはZnO、ZnS、CdTe等のII−VI族からなる単結晶若しくは多結晶化合物半導体基板、絶縁体上に形成された単結晶または多結晶半導体薄膜を適用することができる。
【0037】
トンネルSiO層21は、SiNx膜、SiON膜等のSi酸化、窒化、酸窒化膜、あるいはTa、Zr、Y、Al、Hf等の酸化膜を適用することができる。
【0038】
量子ドット22は、上記のSi、Geの半導体の組み合わせ以外に、GaAs、InP等のIII−V族半導体、ZnO、ZnS、CdTe等のII−VI族半導体等が適用可能である。
【0039】
コントロールSiO層25は、Ta、Zr、Y、Al、Hf等の酸化膜、シリケート膜、アルミネート膜などの高誘電率絶縁膜、若しくはSiO膜と高誘電率絶縁膜の積層構造のものが適用可能である。特にHfAlOやHfSiO膜は好適である。このHfAlOやHfSiO膜は比較的高い比誘電率を有するので、量子ドット22へのキャリア注入を低いゲート電圧で行うことができる。また、高温度でも熱的に安定であるため品質の劣化を防止することができる。
【0040】
上記MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子は、MOS電界効果トランジスタ型のCPU等のプロセッサやメモリセルとともにMOS電界効果トランジスタ製造プロセスを使用して同一のSi基板上に形成することにことができ、それらの各構成要素を一体にした光電子集積チップを構成することができる。例えば、図7に示す光電子集積チップ100は、複数の回路ブロックから構成されており、回路ブロック110Aは、CPU102A、ローカルメモリ104A、共有メモリ106、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10AおよびMOS電界効果トランジスタ型受光素子30Aを有する。回路ブロック110Bは、CPU102B、ローカルメモリ104B、共有メモリ106、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10BおよびMOS電界効果トランジスタ型受光素子30Bを有する。また、回路ブロック回路110Aと110Bの間にはSi層をコアとしSiOをクラッドした光導波路108を有する。これにより回路ブロック110Aと110Bは、光導波路108からなる光配線による相互の信号伝達が可能になる
【0041】
さらに、上記のような光電子集積チップ100を複数個近接配置し、超高速データ処理が可能なデータ処理装置200を構成することができる。例えば、図8に示すデータ処理装置は、電源供給用のベース210上に複数の光電子集積チップ100A〜100Dが、図8の矢印で示すように、各チップに設けられたMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子とMOS電界効果トランジスタ型受光素子との間で赤外光による光通信が可能なように配置されている。これにより、データ処理装置200に入力されたデータは光通信によって各チップの共有メモリで瞬時に共有され、複数のプロセッサを用いてデータの並列処理をすることができるようになる。なお、本光通信で利用される赤外光はSi半導体基板を透過することができ、例えば光電子集積チップ100Bはその前後の光電子集積チップ100Aおよび100Bと光通信による信号伝達が可能である。
【実施例】
【0042】
本発明に係る一対のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10とMOS電界効果トランジスタ型受光素子30を以下に説明する方法で同時に形成した。MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子・受光素子を形成する半導体基板11は(100)の面方位を有するp型単結晶Si基板を用いた。積層された膜厚の測定は、分光エリプソメトリにより行った。なお、MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10とMOS電界効果トランジスタ型受光素子30は個別に形成してもよい。
【0043】
先ず、図9(a)に示すように、厚さ40nmのパッド酸化膜51を半導体基板11上に熱酸化により成膜した。次いで、パッド酸化膜51の上にLOCOSプロセスのマスクとなる厚さ120nmのSi膜52Aおよび52BをLPCVD法により積層させた。その後、フォトリソグラフィーによりパターニングした。なお、Si膜52Aの側に発光素子を形成し、Si膜52Bの側に受光素子を形成するものとする。
【0044】
次に、図9(b)に示すように、Si膜52A、52Bの間に素子分離体となるフィールド酸化膜53を形成するフィールド酸化を行った。水蒸気中、1000℃で110min間フィールド酸化を行い、450nmのフィールド酸化膜53を形成した。なお、フィールド酸化膜53形成時にSi結晶中に生じる応力により発生する結晶欠陥は、予め半導体基板11上にパッド酸化膜51を形成することによって防止できた。
【0045】
その後、図9(c)に示すように、Si膜52A、52Bおよびパッド酸化膜51をエッチングで除去し、再度熱酸化を行い10nmの犠牲酸化膜を形成し、チャネルストップおよび閾値電圧制御のためのBイオンの注入を行った。Bイオンの注入は、それぞれ11keV、1.5×1012cm-3および30keV、3×1012cm-3の条件で行った。次いで、犠牲酸化膜を除去し、ドライO雰囲気中850℃の熱酸化を行って半導体基板11上に4nmのSiO膜を形成し、半導体基板11を0.1%フッ酸に4min浸漬した後、純水で3min間洗浄し、図9(c)に示すように半導体基板11上に表面がOH結合で終端された膜厚2.8nmのトンネルSiO層21を形成した。
【0046】
次に、図9(d)に示すようにトンネルSiO層21上に量子ドット22を形成した。量子ドット22の形成は、先ず、LPCVD法によりSiHガスを用いて0.5Torr、560℃でGe核形成サイトとなるSi量子ドットをトンネルSiO層21上に形成する。次いで、SiHガスをHで5%に希釈したGeHガスに切替えて、0.2Torr、400℃の条件でGeを堆積し、さらに、GeHガスを再度SiHガスに切替えて、Ge上にSiを0.02Torr、540℃の条件で成長させてSi殻内にGe核を有する量子ドット22を形成する。以上の操作により、ほぼ球状の直径が14〜18nm、数密度が2×1011cm-2の量子ドット22を形成することができた。Si殻内のGe核もほぼ球状をしており、その直径は3〜4nmであった。
【0047】
次に、図9(e)に示すように、量子ドット22およびトンネルSiO層21の上にコントロールSiO層25を形成した。コントロールSiO層25の形成は、先ず、量子ドット22およびトンネルSiO層21の表面を850℃の2%ドライOで酸化して1nmの酸化膜を形成した上で、半導体基板11上の受光素子を形成する部分に積層した量子ドット22とトンネルSiO層21をエッチングにより除去する。次に、上記操作により酸化された量子ドット22およびトンネルSiO層21上に、LPCVD法によりHeで10%に希釈したSiガスを用いて0.2Torr、440℃でa−Si(アモルファスSi)膜を3.3nm形成し、しかる後、このa−Si膜を800℃の2%ドライOで酸化する。これによって、総膜厚7.5nmのコントロールSiO層25が形成された。なお、このとき受光素子形成部分に形成されたコントロールSiO層25は、ゲートSiO層31として機能する。
【0048】
次に、コントロールSiO層25およびゲートSiO層31の上に、LPCVD法によりドープSi層33、Ge層35を順次積層し、その後、発光素子形成部分に積層したGe層35の除去した上で、さらにドープSi層37の積層を行った。次いで、受光素子形成部分に積層させたドープSi層33のエッチバックを行い、図9(f)に示すように、発光素子形成部分に形成されたドープSi層33および37からなるゲート電極層27と、受光素子形成部分に形成されたドープSi層33、Ge層35およびドープSi層37からなる積層ゲート電極層32の高さがほぼ等しくなるようにした。
【0049】
次に、ゲート電極層27、積層ゲート電極層32を、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて異方性エッチングによりパターニングし、その後、ゲート電極層27、積層ゲート電極層32をマスクとしてイオン注入法によりAsまたはBを5×1014cm-3注入し、図9(g)に示すようなソース・ドレインエクステンション55A〜55Dを形成した。
【0050】
次に、LPCVD法により、SiHとNOガスを用いて0.3Torr、750℃でコンフォーマルSiO膜を120nm形成し、このSiO膜をCFとH混合ガスを用いたRIEによりエッチバックすることにより、図9(h)に示すようなゲート電極層27、積層ゲート電極層32の側面部を覆うサイドウオール57A、57Bを形成した。
【0051】
次に、ゲート電極層27、積層ゲート電極層32の頂部のサイドウオール57A、57Bで覆われていない部分を深さ5nmほど酸化した後、イオン注入によりAsまたはBを導入し、図9(i)に示すようなソース領域13、14およびドレイン領域15、16を形成した。なお、発光素子形成部分に形成したソース領域13、ドレイン領域15は、量子ドット22に電子および正孔を注入するため、ソース領域14、ドレイン領域16のいずれかをヘビードープn型半導体とし、他方をヘビードープp型半導体とした。
【0052】
その後、図9(j)に示すように、層間絶縁膜58、コンタクトホール59を形成し、図9(k)に示すようなソース電極61A、61Bとドレイン電極63を形成して、一対のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子10とMOS電界効果トランジスタ型受光素子30を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の構造を示す模式図である。
【図2】本発明に係るMOS電界効果トランジスタ型受光素子の構造を示す模式図である。
【図3】MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の作動説明図である。
【図4】図3のバンド説明図である。
【図5】MOS電界効果トランジスタ型受光素子の作動説明図である。
【図6】図5のバンド説明図である。
【図7】光電子集積チップの模式図である。
【図8】データ処理装置の模式図である。
【図9】MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子および受光素子の製造説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 MOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子
11 半導体基板
12 半導体基板
13 ソース領域
14 ソース領域
15 ドレイン領域
16 ドレイン領域
21 トンネルSiO
22 量子ドット
23 Si殻
24 Ge核
25 コントロールSiO
27 ゲート電極層
30 MOS電界効果トランジスタ型受光素子
31 ゲートSiO
32 積層ゲート電極層
33 ドープSi層
35 Ge層
37 ドープSi層
51 パッド酸化膜
52、52A、52B Si
53 フィールド酸化膜
55、55A〜55D ソース・ドレインエクステンション
57、57A、57B サイドウオール
58 層間絶縁膜
59 コンタクトホール
61、61A、61B ソース電極
63 ドレイン電極
100 光電子集積チップ
102 CPU
104 ローカルメモリ
106 共有メモリ
108 光導波路
110、110A、110B
200 データ処理装置
210 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、該半導体基板上に形成されたトンネルSiO層と、該トンネルSiO層上に形成されたSi殻内にGe核を内包した量子ドットと、該量子ドット上及び前記トンネルSiO層上に形成されたコントロールSiO層と、該コントロールSiO層上に形成されたゲート電極層と、を有するMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子。
【請求項2】
半導体基板と、該半導体基板上に形成されたゲートSiO層と、該ゲートSiO層上に形成されたドープSi層、Ge層及びドープSi層を順次積層してなる積層ゲート電極層と、を有するMOS電界効果トランジスタ型受光素子。
【請求項3】
請求項1記載のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子と、請求項2記載のMOS電界効果トランジスタ型受光素子を、半導体基板を共有するように形成してなる光電子集積チップ。
【請求項4】
請求項3記載の光電子集積チップを、該光電子集積チップを構成するMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子と、MOS電界効果トランジスタ型受光素子とを対応させるように複数枚近接配設してなるデータ処理装置。
【請求項5】
半導体基板上にトンネルSiO層を形成する工程、該トンネルSiO層上に金属Siが島状に分散したSiアイランドを形成する工程、該Siアイランド上に選択的にGe核を形成する工程、該Siアイランド上に前記Ge核を含んで金属Siを積層させてSi殻内にGe核を内包した量子ドットを形成する工程、該量子ドットを含みトンネルSiO層を覆うコントロ−ルSiO層を形成する工程、および、該コントロ−ルSiO層に重ねてゲート電極層を形成する工程を順次行うMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法。
【請求項6】
Si殻内にGe核を内包した量子ドットを形成するに先立ち、トンネルSiO層の表面層をOH結合で終端されたトンネルSiO層に改質することを特徴とする請求項5に記載のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法。
【請求項7】
量子ドットを含みトンネルSiO層を覆うコントロ−ルSiO層を形成するに先立ち、量子ドット表面に酸化薄膜を形成することを特徴とする請求項5に記載のMOS電界効果トランジスタ型量子ドット発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−32564(P2006−32564A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207620(P2004−207620)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】