説明

アクティブマトリクス基板およびその製造方法

【課題】従来よりも高い効率で製造することが可能な、コンタクトホールの段差部における画素電極の断線を防止したアクティブマトリクス基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ゲート電極10と、ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層50と、ゲート絶縁層の上に形成された半導体層40と、半導体層と接触するように形成されたソース電極11およびドレイン電極12と、ソース電極およびドレイン電極の上に形成された第1層間絶縁層54と、第1層間絶縁層の上に形成された画素電極20と、第1層間絶縁層に形成された第1コンタクトホール51と、第1コンタクトホール内に形成された第1金属層55であって、厚さが第1コンタクトホールの深さより小さく、且つ、第1コンタクトホール内においてドレイン電極と電気的に接続された第1金属層55とを備え、画素電極は第1コンタクトホール51内で第1金属層に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置のアクティブマトリクス基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板は、画素毎にスイッチング素子を有している。スイッチング素子としては、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、「TFT」)が広く用いられている。TFTには、アモルファスシリコン膜を活性層とするTFT(以下、「アモルファスシリコンTFT」という。)や多結晶シリコン膜を活性層とするTFT(以下、「多結晶シリコンTFT」という。)が用いられている。
【0003】
多結晶シリコン膜における電子および正孔の移動度はアモルファスシリコン膜におけるよりも高く、多結晶シリコンTFTのオン電流は、アモルファスシリコンTFTよりも高い。しかしながら、多結晶シリコンTFTを作製するためには、アモルファスシリコン膜を結晶化させ多結晶シリコン膜を得るためのレーザー結晶化工程の他、熱アニール工程、イオンドーピング工程などの複雑な工程を行う必要があり、製造コストが高いという問題がある。一方、アモルファスシリコンTFTは、製造コストは低いものの、移動度が低いので、高性能化には限界がある。
【0004】
そこで、製造コストを抑えつつ、より高性能なTFTを実現するために、近年、微結晶シリコン(μc−Si)膜を用いたTFT(以下、「微結晶シリコンTFT」という。)が注目されている(例えば、特許文献1、2)。なお、微結晶シリコンは、マイクロクリスタルシリコン、あるいは、セミアモルファスシリコンと呼ばれることもある。微結晶シリコン膜は、微細な結晶粒(結晶相)とアモルファス相とを有している。各結晶粒のサイズは、多結晶シリコン膜に含まれる結晶粒のサイズよりも小さい。
【0005】
微結晶シリコン膜は、原料ガスとして水素ガス(H2ガス)で希釈したシランガス(SiH4ガス)を用いて、プラズマCVD法などの薄膜堆積法によって形成され得る。多結晶シリコン膜を形成する場合のように、薄膜堆積法によって形成されたアモルファスシリコン膜を結晶化する必要がない。したがって、微結晶シリコンTFTは、従来のアモルファスシリコンTFTを製造するための設備を用いて製造することができるという利点を有している。
【0006】
微結晶シリコン膜は、アモルファスシリコン膜よりも移動度は高いので、微結晶シリコンTFTはアモルファスシリコンTFTよりもオン電流が大きいという特長を有している。例えば、特許文献1には、微結晶シリコンTFTがアモルファスシリコンTFTの1.5倍のオン電流を有すると記載されている。しかしながら、微結晶シリコンTFTはオフ電流(リーク電流)が大きく、実用化の障害となっている。
【0007】
そこで、特許文献2および3には、微結晶シリコン膜とアモルファスシリコン膜との積層構造を用いることによってオフ電流を低減させたTFTが記載されている。なお、特許文献2および3のいずれに記載のTFTにおいても、ゲート電極側に微結晶シリコン膜が設けられている。
【0008】
さらに、画素の開口率を高めるために層間絶縁層を介して画素電極の端部をソースバスラインと重ねた構造が知られている。このような構造において、ソースバスラインと画素電極との間の寄生容量が大きいと、クロストークという表示不良が発生することがあるの
で、十分に厚い層間絶縁層を形成することが好ましい。
【0009】
しかしながら、厚い層間絶縁層を形成すると、画素電極とTFTのドレイン電極とを接続するために層間絶縁層に形成されるコンタクトホールが深くなるので、コンタクトホールの段差部で画素電極が分断されるという問題が発生する。
【0010】
そこで特許文献4には、層間絶縁層に形成されたコンタクトホールを金属層で埋めることによって、層間絶縁層の上面を平坦にし、画素電極の分断を防止する技術が開示されている。金属層はスパッタリング法を用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−196701号公報
【特許文献2】特開2008−140984号公報
【特許文献3】特開2005−322845号公報
【特許文献4】特開平4−264527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献4に記載の技術によると、比較的厚い層間絶縁層に形成されたコンタクトホールと同程度の膜厚を有する金属層をスパッタリング法で形成するので、生産効率が悪いという問題がある。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、従来よりも高い効率で製造することが可能な、コンタクトホールの段差部における画素電極の断線を防止したアクティブマトリクス基板およびその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、TFTの活性層として微結晶シリコン膜を用いた場合にも、オフ電流を低減できる、アクティブマトリクス基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のアクティブマトリクス基板は、基板と、前記基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に形成された半導体層と、前記半導体層と接触するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極の上に形成された第1層間絶縁層と、前記第1層間絶縁層の上に形成された画素電極と、前記第1層間絶縁層に形成された第1コンタクトホールと、前記第1コンタクトホール内に形成された第1金属層であって、前記第1金属層の厚さは、前記第1コンタクトホールの深さより小さく、且つ、前記第1コンタクトホール内において、前記ドレイン電極と電気的に接続された第1金属層とを備え、前記画素電極は、前記第1コンタクトホール内で、前記第1金属層に接触している、アクティブマトリクス基板。
【0015】
ある好ましい実施形態において、前記基板上に形成された第1導電層と、前記第1導電層を覆うように形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に形成された第2導電層と、前記第2導電層の上に形成された第2層間絶縁層と、前記第2層間絶縁層の上に形成された透明導電層と、前記第2層間絶縁層に形成された第2コンタクトホールと、前記第2コンタクトホール内に形成された第2金属層であって、前記第2金属層の厚さは、前記第2コンタクトホールの深さより小さく、且つ、前記第2コンタクトホール内において、前記第2導電層と電気的に接続された第2金属層とを備え、前記透明導電層は、前記第2コンタクトホール内で、前記第2金属層に接触している。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記第1導電層は前記ゲート電極と同じ導電膜から形成されており、前記絶縁層は前記ゲート絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、前記第2導電層は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と同じ導電膜から形成されており、前記第2層間絶縁層は前記第1層間絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、前記透明導電層は、前記画素電極と同じ導電膜から形成されている。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記半導体層は、微結晶シリコン膜で形成されている。
【0018】
本発明によるアクティブマトリクス基板の製造方法は、上記のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、前記第1および第2金属層をインクジェット法で形成する工程を包含する。
【0019】
本発明による他のアクティブマトリクス基板は、基板と、前記基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に形成された半導体層と、前記半導体層と接触するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極の上に形成された第1層間絶縁層と、前記第1層間絶縁層の上に形成された画素電極と、前記第1層間絶縁層に形成された第1コンタクトホールと、を備え、前記ゲート絶縁層は、前記第1コンタクトホール内にあな(貫通孔または窪み)を有し、前記あなには絶縁材料が充填されている。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記基板上に形成された第1導電層と、前記第1導電層を覆うように形成された絶縁層と、前記絶縁層の上に形成された第2導電層と、前記第2導電層の上に形成された第2層間絶縁層と、前記第2層間絶縁層の上に形成された透明導電層と、前記第2層間絶縁層に形成された第2コンタクトホールと、を備え前記第1導電層は、前記第2コンタクトホール内にあなを有し、前記あなには絶縁材料が充填されている。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記第1導電層は前記ゲート電極と同じ導電膜から形成されており、前記絶縁層は前記ゲート絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、前記第2導電層は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と同じ導電膜から形成されており、前記第2層間絶縁層は前記第1層間絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、前記透明導電層は、前記画素電極と同じ導電膜から形成されている。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記半導体層は、微結晶シリコン膜で形成されている。
【0023】
本発明による他のアクティブマトリクス基板の製造方法は、上記のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、前記絶縁材料をインクジェット法で形成する工程を包含する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、従来よりも高い効率で製造することが可能な、コンタクトホールの段差部における画素電極の断線を防止したアクティブマトリクス基板およびその製造方法が提供される。また、本発明によると、TFTの活性層として微結晶シリコン膜を用いた場合にも、オフ電流を低減できる、アクティブマトリクス基板およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)本発明のアクティブマトリクス基板の実施例1を示す図13のA−A’線に相当するTFTと補助容量電極及び端子部のゲート電極を形成した後の断面図である。(b)本発明のアクティブマトリクス基板の実施例1を示す図13のA−A’線に相当するTFTと補助容量電極及び端子部のゲート絶縁層、微結晶シリコン膜、n+a−Si層を形成した後の断面図である。
【図2】(a)本発明のアクティブマトリクス基板の実施例1を示す図13のA−A’線に相当するTFTと補助容量電極及び端子部のソース電極、ドレイン電極、チャネル部を形成した後の断面図である。(b)本発明のアクティブマトリクス基板の実施例1を示す図13のA−A’線に相当するTFTと補助容量電極及び端子部の保護層及び層間絶縁層を形成した後の断面図である。
【図3】本発明による実施形態のアクティブマトリクス基板のTFT、補助容量電極および端子部のコンタクトホールを形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図4】本発明による実施形態のアクティブマトリクス基板のTFT、補助容量電極、端子部の金属層および画素電極を形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図5】本発明による実施形態の他のアクティブマトリクス基板の図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図であり、(a)はTFT、補助容量電極および端子部の第1導電層を形成した後の断面図であり、(b)はTFT、補助容量電極、端子部の絶縁層、微結晶シリコン膜、およびn+a−Si層を形成した後の断面図である。
【図6】本発明による実施形態の他のアクティブマトリクス基板の図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図であり、(a)はTFT、補助容量電極、端子部の第2導電層、および半導体層を形成した後の断面図であり、(b)はTFT、補助容量電極、端子部の保護層および層間絶縁層を形成した後の断面図である。
【図7】本発明による実施形態の他のアクティブマトリクス基板のTFT、補助容量電極、端子部のコンタクトホールおよび絶縁層を形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図8】本発明による実施形態の他のアクティブマトリクス基板のTFTと補助容量電極および端子部の透明導電層を形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図9】比較例のアクティブマトリクス基板の図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図であり、(a)はTFT、補助容量電極および端子部の第1導電層を形成した後の断面図であり、(b)はTFT、補助容量電極、端子部の絶縁層、微結晶シリコン膜、n+a−Si層を形成した後の断面図である。
【図10】比較例のアクティブマトリクス基板の図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図であり、(a)はTFT、補助容量電極、端子部の第2導電層および半導体層を形成した後の断面図であり、(b)はTFT、補助容量電極、端子部の保護層および層間絶縁層を形成した後の断面図である。
【図11】比較例のアクティブマトリクス基板のTFT、補助容量電極および端子部のコンタクトホールを形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図12】比較例のアクティブマトリクス基板のTFTと補助容量電極、端子部の透明導電層を形成した後の断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【図13】公知のアクティブマトリクス基板の模式的な平面図である。
【図14】インクジェット法に用いる装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明による実施形態のアクティブマトリクス基板およびその製造方法を説明する。
【0027】
その前に、図9〜図13を参照して、微結晶シリコンTFTを備える比較例のアクティブマトリクス基板の構造および製造方法を説明する。図13は、比較例のアクティブマトリクス基板の平面図であり、図9〜12は、比較例のアクティブマトリクス基板の製造方法を説明するための断面図であり、図13のA−A’線に相当する線に沿った断面図である。
【0028】
以下、TFT30の製造工程を説明するが、補助容量31および端子部32も同じ製造工程で形成される。すなわち、補助容量31や端子部32を構成する導電層および絶縁層等はすべて、TFT30を構成する導電層および絶縁層等と同じ膜である。ここで、端子部32は、例えばゲート配線の端子部であり、端子部32の導電層をゲート電極と呼ぶことがある。
【0029】
比較例のアクティブマトリクス基板は、下記の工程(A)〜(E)を経て作製される。
【0030】
(A)図9(a)に示すように、まずスパッタリング法によりガラス基板1上に、例えば、チタン層10a/アルミニウム層10b/チタン層10a(Ti/Al/Ti)の3層構造金属膜10を成膜する。図9(a)において、TFT、補助容量および端子部が形成される部分を、それぞれ参照符号30、31および32で示している。次に、Ti/Al/Ti層10をフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてゲート電極10等を形成する。この時、図13に示すゲートバスライン8および補助容量線(不図示)が同時に形成される。
【0031】
次に、図9(b)に示すように、プラズマCVD法等により、ガラス基板1上にゲート電極10を覆うようにして、例えば窒化シリコン(SiNx)膜からなるゲート絶縁層50を形成する。その後、微結晶シリコン(μc−Si)膜からなる半導体層40および、リン(P)をドーピングしたn+a−Si層41を積層し、これを図示する断面形状にパターニングする。
【0032】
(B)続いて、図10(a)に示すように、ガラス基板1上にスパッタリング法等により、アルミニウム層12b/チタン層12a(Al/Ti)の2層構造金属膜を成膜する。次に、2層構造金属膜をパターニングしてソース電極11およびドレイン電極12を得る。この時、図13に示されるソースバスライン9が同時に形成される。続いて、ソース電極11およびドレイン電極12をマスクとして、n+a−Si層41をエッチング除去することにより、チャネル部を形成する(チャネルエッチング)。
【0033】
このとき、補助容量および端子部の半導体層40は、後に、保護層53をドライエッチングで除去する際に、ゲート絶縁層50が薄くなり過ぎないようにするための犠牲層として残されている。半導体層40が薄すぎると、補助容量を形成する半導体層40を間に介して対向する2つの電極(補助容量電極とドレイン電極)の間にリーク不良が発生することがある。半導体層40が厚すぎると、TFTのリーク電流が増大する。半導体層40として微結晶シリコン膜を用いるTFTでは特に深刻な問題となる。
【0034】
(C)続いて、図10(b)に示すように、ソース電極11およびドレイン電極12上に、CVD法等を用いて、窒化シリコン(SiNx)膜からなる保護層53を形成する。保護層53上に、フォトリソグラフィ法等を用いて、透明樹脂層(層間絶縁層)54を形成する。透明樹脂層54にはコンタクトホール(51)が形成されている。
【0035】
(D)続いて、図11に示すように、ドレイン電極12および透明樹脂層54をマスクとして、透明樹脂層54のコンタクトホール51内の、保護層53をドライエッチングで除去する。透明樹脂層54のコンタクトホール51内に露出されている半導体層40が、ゲート絶縁層50が除去されないように、犠牲層として機能する。
【0036】
続いて、補助容量のドレイン電極12および端子部のソース電極11の上層のアルミニウム層12bをエッチングによって除去する。画素電極20(図12参照)等を構成するITO膜がアルミニウム層と接触すると、電解腐食が起こるからである。このようにして、補助容量のコンタクトホール51内に、ドレイン電極12のチタン層12aが露出され、端子部のコンタクトホール51内に、ソース電極11のチタン層12aが露出される。
【0037】
(E)続いて、図12に示すように、透明樹脂層54上にITO等からなる透明導電膜をスパッタリング法等により堆積し、パターニングすることによって、TFTおよび補助容量の上に画素電極20を、端子部に端子電極20を形成する。このようにして、従来の一般的なアクティブマトリクス基板が作製される。
【0038】
このようにして得られた従来のアクティブマトリクス基板においては、コンタクトホール51が深いので、画素電極20(および端子電極20)がコンタクトホール51の段差部において断線し易いという問題がある。
【0039】
以下、本発明による実施形態のアクティブマトリクス基板およびその製造方法を説明する。
【0040】
(実施形態1)
図1〜図4を参照して、本発明による実施形態1のアクティブマトリクス基板およびその製造方法を説明する。図1〜図4は、先の図9〜図12に対応する図であり、簡単のために、共通する構成要素は共通の参照を付し、説明を省略する。
【0041】
実施形態1のアクティブマトリクス基板は、例えば、下記の工程(A)〜(E)を経て作製される。
【0042】
(A)図1(a)に示すように、まずスパッタリング法によりガラス基板1上に、例えば、チタン層10a/アルミニウム層10b/チタン層10a(Ti/Al/Ti)の3層構造金属膜10を成膜する。各層の厚さは例えば150/250/30nmである。3層構造金属膜10に代えて、純金属や不純物が添加された単層金属膜やその他の複層構造金属膜でもよい。次に、Ti/Al/Ti層10をフォトリソグラフィ法等によりパターニングしてゲート電極10等を形成する。この時、図13に示すゲートバスライン8および補助容量線(不図示)が同時に形成される。
【0043】
次に、図1(b)に示すように、プラズマCVD法等により、ガラス基板1上にゲート電極10を覆うようにして、例えば窒化シリコン(SiNx)膜(例えば厚さ400nm)からなるゲート絶縁層50を形成する。その後、微結晶シリコン(μc−Si)膜(例えば厚さ100nm)からなる半導体層40および、リン(P)をドーピングしたn+a−Si層41(例えば厚さ50nm)を積層し、これを図示する断面形状にパターニングする。
【0044】
(B)続いて、図2(a)に示すように、ガラス基板1上にスパッタリング法等により
、アルミニウム層12b/チタン層12a(Al/Ti)の2層構造金属膜を成膜する。各層の厚さは例えば250/40nmである。2層構造金属膜に代えて、純金属または不純物を添加した単層金属膜や多層構造金属膜でもよい。次に、2層構造金属膜をパターニングしてソース電極11およびドレイン電極12を得る。本実施形態では、補助容量および端子部においては、半導体層40およびn+a−Si層41の上の2層構造金属膜を残
す。この時、図13に示されるソースバスライン9が同時に形成される。ソース電極11およびドレイン電極12をマスクとして、n+a−Si層41をエッチング除去することにより、チャネル部を形成する。
【0045】
(C)続いて、図2(b)に示すように、ソース電極11およびドレイン電極12上に、CVD法等を用いて、例えば窒化シリコン(SiNx)層(例えば厚さ150nm)を成膜し、保護層53を形成する。保護層53上に、フォトリソグラフィ法等を用いて、透明樹脂層(層間絶縁層)54(例えば厚さ3000nm)を形成する。透明樹脂層54にはコンタクトホール(51)が形成されている。
【0046】
(D)続いて、図3に示すように、透明樹脂層54をマスクとして、保護層53をエッチングで除去することによって、補助容量のコンタクトホール51内に、ドレイン電極12のアルミニウム層12bが露出され、端子部のコンタクトホール51内に、ソース電極11のアルミニウム層12bが露出される。本実施形態では、補助容量のドレイン電極12および端子部のソース電極11の上層のアルミニウム層12bを除去しない。
【0047】
(E)続いて、図4に示すように、透明樹脂層54上にITO等からなる透明導電膜(例えば厚さ130nm)をスパッタリング法等により堆積し、パターニングすることによって、TFTおよび補助容量の上に画素電極20を、端子部に端子電極20を形成する。
【0048】
本実施形態では、コンタクトホール51の段差による断線の発生を防止するために、透明導電膜を堆積する前に、コンタクトホール51内に露出されたアルミニウム層12b上に、導電性金属溶液などをインクジェット法で付与し、加熱処理等を施して、金属層55を形成する。金属層55の厚さは、コンタクトホールの深さよりも小さくてよく、例えば500nmである。インクジェット法を用いると、特許文献4に記載されている方法に比べて、簡単に比較的厚い金属層55を形成することができる。また、コンタクトホール51の厚さが例えば3000nmのとき、金属層55の厚さは30nm以上(コンタクトホールより厚くなってもよい。)の範囲内にあれば段差による断線を防止することが出来る。
【0049】
インクジェット法を用いた金属層55の形成は、図14に示すような、形成する層の材料を吐出あるいは滴下するパターン形成装置を用いて行うことができる。このパターン形成装置は、基板61を載置する載置台62を備え、インクジェットヘッド63と、インクジェットヘッド63をX方向に移動させるX方向駆動部64、およびY方向に移動させるY方向駆動部65とが設けられている。インクジェットヘッド63は、載置台62上の基板61に対して、例えば導電性金属溶液(以下、インクということがある。)の液滴を吐出する。
【0050】
また、上記パターン形成装置には、インクジェットヘッド63にインクを供給するインク供給システム66と、インクジェットヘッド63の吐出制御、X方向駆動部64およびY方向駆動部65の駆動制御等の各種制御を行うコントロールユニット67とが設けられている。コントロールユニット67からは、XおよびY方向駆動部64、65に対して塗布位置情報が出力され、インクジェットヘッド63の不図示のヘッドドライバに対して吐出情報が出力される。これにより、XおよびY方向駆動部64,65に連動してインクジェットヘッド63が動作し、基板61上の目的位置に目的量の液滴が供給される。上記のインクジェットヘッド63は、ピエゾアクチュエータを使用するピエゾ方式のもの、ヘッド内にヒータを有するバブル方式のもの、あるいはその他の方式のものであってもよい。インクジェットヘッド63からのインク吐出量の制御は、印加電圧の制御により可能である。また、液滴吐出手段は、インクジェットヘッド63に代えて、単に液滴を滴下させる方式のもの等、液滴を供給可能なものであれば方式は問わない。
【0051】
インクジェット方式により金属層55を形成するための導電性金属溶液としては、例えば、AgやAu、ZnOなどのナノ粒子を溶媒中に分散させたものを用いることができる
。これらは、基板上の所定の場所に付与された後、焼成等の処理を経て、金属層55が形成される。このように導電性金属溶液を調製できる金属としては、AgやAu以外に、PdやPtを挙げられる。これらの金属は、ドレイン電極、画素電極等とオーミック接続が可能である。
【0052】
上述したように、本実施形態のアクティブマトリクス基板の製造方法によると、特許文献4に記載されている方法に比べて、簡単な工程で、コンタクトホールの段差による画素電極等の断線を防止することが出来る。
【0053】
また、上述の比較例の製造方法のように、チャネルエッチング後に、ゲート絶縁層50をエッチングする必要がなく、半導体層40を犠牲層として残す必要も無い。従って、TFT特性だけを考慮して半導体層40の厚さを調整すればよいので、TFT特性を向上させることができる。さらに、コンタクトホール51内に露出されたドレイン電極12等のアルミニウム層12bを除去する必要がないので、製造プロセスを単純にできるという利点がある。
【0054】
(実施形態2)
図5〜図8を参照して、本発明による実施形態2のアクティブマトリクス基板およびその製造方法を説明する。図5〜図8は、先の図9〜図12に対応する図であり、簡単のために、共通する構成要素は共通の参照を付し、説明を省略する。
【0055】
実施形態2のアクティブマトリクス基板は、例えば、下記の工程(A)〜(E)を経て作製される。
【0056】
(A)図5(a)および図5(b)に示すように、実施形態1と同様にして、ゲート電極10等、ゲート絶縁層50、半導体層40およびn+a−Si層41を形成する。
【0057】
(B)続いて、図6(a)に示すように、実施形態1と同様にして、アルミニウム層12b/チタン層12a(Al/Ti)の2層構造金属膜を成膜する。この後、2層構造金属膜をパターニングしてソース電極11およびドレイン電極12を得る。続いて、ソース電極11およびドレイン電極12をマスクとして、n+a−Si層41をエッチング除去することにより、チャネル部を形成する。このとき、本実施形態では、上述の比較例と同様に、補助容量および端子部の半導体層40は、後に、保護層53をドライエッチングで除去する際に、ゲート絶縁層50が薄くなり過ぎないようにするための犠牲層として残す。
【0058】
(C)続いて、図6(b)に示すように、実施形態1と同様に、ソース電極11およびドレイン電極12上に、CVD法等を用いて、例えば窒化シリコン(SiNx)層(例えば厚さ150nm)を成膜し、保護層53を形成する。保護層53上に、フォトリソグラフィ法等を用いて、透明樹脂層(層間絶縁層)54(例えば厚さ3000nm)を形成する。透明樹脂層54にはコンタクトホール(51)が形成されている。
【0059】
(D)続いて、図7に示すように、ドレイン電極12および透明樹脂層54をマスクとして、透明樹脂層54のコンタクトホール51内の、保護層53をドライエッチングで除去する。このとき、コンタクトホール51内のゲート絶縁層50がエッチングされ、ゲート絶縁層50にあな(孔(貫通孔)だけでなく窪み(凹部)も含む)が形成される。このあなに絶縁材料を充填することによって絶縁層56を形成する。ゲート絶縁層50のあなに絶縁材料を充填することによって、補助容量を構成する2つの電極(補助容量電極とドレイン電極)の間のリーク不良を防止することができる。絶縁層56は、絶縁性溶液などをインクジェット法で付与し、加熱処理等を施して硬化させることによって形成される。絶縁層56の厚さは、例えば150nmである。インクジェット法を用いると、薄膜堆積技術を用いるよりも、簡単に比較的厚い絶縁層56を形成することができる。従って、特許文献4に記載の方法よりも簡単なプロセスで、コンタクトホール51における段差を低減することができる。
【0060】
続いて、補助容量のドレイン電極12および端子部のソース電極11の上層のアルミニウム層12bをエッチングによって除去する。画素電極20等を構成するITO膜がアルミニウム層12bと接触すると、電解腐食が起こるからである。このようにして、補助容量のコンタクトホール51内にドレイン電極12のチタン層12aが露出され、端子部のコンタクトホール51内にソース電極11のチタン層12aが露出される。
【0061】
(E)続いて、図8に示すように、透明樹脂層54上にITO等からなる透明導電膜をスパッタリング法等により堆積し、パターニングすることによって、TFTおよび補助容量の上に画素電極20を、端子部に端子電極20を形成する。
【0062】
上述したように、本実施形態のアクティブマトリクス基板の製造方法によると、特許文献4に記載されている方法に比べて、簡単な工程で、コンタクトホールの段差による画素電極等の断線を防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、一般的に用いられているアクティブマトリクス基板を備えた液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置、フラットパネル型X線イメージセンサー等の撮像装置、および密着型画像入力装置、指紋読み取り装置等の画像入力装置に用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1 ガラス基板
8 ゲートバスライン
9 ソースバスライン
10 ゲート電極
11 ソース電極
12 ドレイン電極
20 画素電極、端子電極
30 TFT
31 補助容量
32 端子部
40 微結晶シリコン膜(半導体層)
41 n+a−Si層
50 ゲート絶縁層
51 コンタクトホール
53 保護層
54 透明樹脂層(層間絶縁層)
55 金属層
56 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上に形成された半導体層と、
前記半導体層と接触するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上に形成された第1層間絶縁層と、
前記第1層間絶縁層の上に形成された画素電極と、
前記第1層間絶縁層に形成された第1コンタクトホールと、
前記第1コンタクトホール内に形成された第1金属層であって、前記第1金属層の厚さは、前記第1コンタクトホールの深さより小さく、且つ、前記第1コンタクトホール内において、前記ドレイン電極と電気的に接続された第1金属層と
を備え、
前記画素電極は、前記第1コンタクトホール内で、前記第1金属層に接触している、アクティブマトリクス基板。
【請求項2】
前記基板上に形成された第1導電層と、
前記第1導電層を覆うように形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成された第2導電層と、
前記第2導電層の上に形成された第2層間絶縁層と、
前記第2層間絶縁層の上に形成された透明導電層と、
前記第2層間絶縁層に形成された第2コンタクトホールと、
前記第2コンタクトホール内に形成された第2金属層であって、前記第2金属層の厚さは、前記第2コンタクトホールの深さより小さく、且つ、前記第2コンタクトホール内において、前記第2導電層と電気的に接続された第2金属層と
を備え、
前記透明導電層は、前記第2コンタクトホール内で、前記第2金属層に接触している、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項3】
前記第1導電層は前記ゲート電極と同じ導電膜から形成されており、
前記絶縁層は前記ゲート絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、
前記第2導電層は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と同じ導電膜から形成されており、
前記第2層間絶縁層は前記第1層間絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、
前記透明導電層は、前記画素電極と同じ導電膜から形成されている、請求項2に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項4】
前記半導体層は、微結晶シリコン膜で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、
前記第1および第2金属層をインクジェット法で形成する工程を包含する、アクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上に形成された半導体層と、
前記半導体層と接触するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上に形成された第1層間絶縁層と、
前記第1層間絶縁層の上に形成された画素電極と、
前記第1層間絶縁層に形成された第1コンタクトホールと、を備え、
前記ゲート絶縁層は、前記第1コンタクトホール内にあなを有し、前記あなには絶縁材料が充填されている、アクティブマトリクス基板。
【請求項7】
前記基板上に形成された第1導電層と、
前記第1導電層を覆うように形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成された第2導電層と、
前記第2導電層の上に形成された第2層間絶縁層と、
前記第2層間絶縁層の上に形成された透明導電層と、
前記第2層間絶縁層に形成された第2コンタクトホールと、
を備え
前記第1導電層は、前記第2コンタクトホール内にあなを有し、前記あなには絶縁材料が充填されている、請求項6に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項8】
前記第1導電層は前記ゲート電極と同じ導電膜から形成されており、
前記絶縁層は前記ゲート絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、
前記第2導電層は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と同じ導電膜から形成されており、
前記第2層間絶縁層は前記第1層間絶縁層と同じ絶縁膜から形成されており、
前記透明導電層は、前記画素電極と同じ導電膜から形成されている、請求項7に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項9】
前記半導体層は、微結晶シリコン膜で形成されている、請求項6から8のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、
前記絶縁材料をインクジェット法で形成する工程を包含する、アクティブマトリクス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−282125(P2010−282125A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137203(P2009−137203)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】