説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】トロイダル式無段変速装置、モータ・ジェネレータ、ギヤ機構及び出力軸を一軸上に配置して、FR用として好適なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン7側から、トロイダル式無段変速装置2、モータ・ジェネレータ3、反転ギヤ機構4そして出力軸6を順に一軸上に配置する。無段変速装置の出力部13の回転は、クラッチC1、サンギヤS2、リングギヤR1を介して出力軸6に伝達する。モータ3の出力部13は、サンギヤS2、リングギヤR1を介し出力軸6に連動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータ・ジェネレータ(以下単にモータという)からの動力を組合せて車輌等を駆動するハイブリッド駆動装置に係り、詳しくはトロイダル式無段変速装置を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トロイダル式無段変速装置を備えたハイブリッド駆動装置が提案されている(特許文献1参照)。該ハイブリッド駆動装置は、一軸上にかつエンジン側から順次、入力軸、トロイダル変速装置、モータそして出力軸を配置し、これと平行にカウンタ軸を配置し、エンジンの出力が伝達される入力軸の回転が、トロイダル変速装置及びカウンタ軸を介して出力軸に達すると共に、モータの出力を、カウンタ軸を介して減速して出力軸に伝達する低速モードと、入力軸又は出力軸に直接伝達する高速モードと、を備えている。
【0003】
即ち、低速モードにあっては、エンジンの回転は、トロイダル変速装置を介してカウンタ軸に伝達されると共に、モータの回転もカウンタ軸に伝達されて、出力軸に出力する。高速モードにあっては、エンジンの回転は、同様にトロイダル変速装置を介してカウンタ軸そして出力軸に伝達され、モータの回転が直接出力軸に伝達される。後進モードにあっては、入力軸とモータ軸とが連結され、エンジン駆動力とモータ駆動力を合せた駆動力が、カウンタ軸を介して出力軸に伝達される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−168442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ハイブリッド駆動装置は、モータ(ジェネレータ)が出力軸側に配置されている関係で回生時にモータ(ジェネレータ)と出力軸とを直結することができ、特に、制動時に後輪荷重減少により後輪の制動力を大きくできないFR車輌に搭載する場合、回生時のエネルギ吸収の効率を高め、燃費向上のために都合がよい。しかし、上記ハイブリッド変速装置は、トロイダル式無段変速装置及びモータを入力軸及び出力軸と同軸上に配置して、FR用として好適なレイアウトであるのに拘らず、上記一軸上のトロイダル変速装置及びモータと平行にカウンタ軸を配置する必要があり、径方向のサイズ増加を招き、FR用として車輌に搭載するには、車輌側の大幅な変更等の困難を伴う。また、上記カウンタ軸の外、4個のクラッチが必要となり、構造が複雑となり、この点からもサイズ増加の原因となることが予測される。
【0006】
本発明は、トロイダル式無段変速装置、モータ及び出力軸のすべての構成要素を一軸上に配置し、もって特にFR車輌用に好適なハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジン(7)の駆動力を無段変速装置を介して出力軸(6)に伝達すると共に、モータ・ジェネレータ(3)を前記出力軸に連動してなる、ハイブリッド駆動装置(1,1,1)において、
前記無段変速装置は、前記エンジン駆動力を入力する入力軸(5)と、該入力軸の回転を無段に変速して出力する出力部(13)とを有するトロイダル式無段変速装置(2)であり、
前記モータ・ジェネレータ(3)の出力部(14)に連動する第1の要素(S1)、前記トロイダル式無段変速装置の出力部(13)に連動する第2の要素(S2)、前記出力軸(6)に連動する第3の要素(R1)、及び固定部材(15)に支持され固定要素(C)を少なくとも有するギヤ機構(4)を備え、
前記トロイダル式無段変速装置(2)の入力軸(5)及び出力部(13)と、前記モータ・ジェネレータ(3)と、前記ギヤ機構(4)と、前記出力軸(6)とを一軸上に配置してなる、
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置にある。
【0008】
エンジン(7)側から、前記トロイダル式無段変速装置(2)、前記モータ・ジェネレータ(3)、ギヤ機構(4)そして出力軸(6)の順に一軸上に配置されてなる。
【0009】
好ましくは、前記ギヤ機構は、一体に回転する第1及び第2のピニオン(P1,P)を支持するキャリヤ(C)を有するステップピニオンギヤであり、前記固定要素が前記キャリヤ(C)であり、前記第1の要素が第1のサンギヤ(S1)であり、前記第2の要素が第2のサンギヤ(S2)であり、前記第3の要素が第1のリングギヤ(R1)である。
【0010】
前記トロイダル式無段変速装置が、フルトロイダル式無段変速装置(2)であり、
該フルトロイダル式無段変速装置の前記出力部(13)に第1のクラッチ(C1)を介在し、
前記第1のクラッチ(C1)を接続し、前記フルトロイダル式無段変速装置(2)の出力部(13)及び前記モータ・ジェネレータ(3)の出力部と前記出力軸(6)とを連動するエンジン走行モードと、
前記第1のクラッチ(C1)を切断し、前記モータ・ジェネレータ(3)の出力部と前記出力軸(6)とを連動するモータ走行モードと、を有する。
【0011】
例えば図1を参照して示すと、前記ギヤ機構は、前記入力軸(5)に連動する第4の要素(R2)を有し、
前記入力軸に第2のクラッチ(C2)を介在し、該第2のクラッチを接続すると共に前記第1のクラッチ(C1)を切断して、前記入力軸(5)と前記出力軸(6)とを直接的に連動する固定段走行モードを有する。
【0012】
例えば図3を参照して示すと、エンジン(7)からの駆動力を前記入力軸(5)に接続又は切断するクラッチ(C0)を配置してなる。
【0013】
例えば図5を参照して示すと、前記ギヤ機構(4)の前記第3の要素(R1)と前記出力軸(6)との間に第3のクラッチ(C3)を介在し、
前記トロイダル式無段変速装置(2)の前記出力部(13)と前記出力軸(6)との間に後進クラッチ(C4)を介在し、
前記第3のクラッチ(C3)を切断すると共に、前記後進クラッチ(C4)を接続して、エンジン(7)からの駆動力を前記トロイダル式無段変速装置(2)を介して前記出力軸(6)に後進回転として伝達してなる。
【0014】
なお、上述したカッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、モータ・ジェネレータの出力部、トロイダル式無段変速装置の出力部及び出力軸にそれぞれ連動する第1、第2及び第3の要素を有するギヤ機構を備え、トロイダル式無段変速装置、モータ・ジェネレータ及び出力軸を一軸上に配置したので、コンパクト、特に径方向のコンパクト化が可能となり、FR用のハイブリッド駆動装置として車輌側に大きな変更を伴うことなく搭載することが可能となる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、トロイダル式無段変速装置に対して、モータ・ジェネレータを出力軸側に配置したので、出力軸からの慣性エネルギをモータ・ジェネレータで直接的に回生することができ、回生効率を向上して燃費性能を高めることができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、ギヤ機構をキャリヤ固定のステップギヤとするので、トロイダル式無段変速装置で反転した回転を、ギヤ機構で更に反転して、エンジン回転方向と同方向の回転を前進方向回転として出力軸に伝達することができ、トロイダル式無段変速装置を用いたハイブリッド駆動装置として好適であり、かつモータ・ジェネレータの出力部を(第1の)サンギヤに連結して、減速回転として(第1の)リングギヤから取出すので、モータ走行時において、モータトルクを増大して出力軸に伝達し、モータ・ジェネレータの小型化を図ることができ、ハイブリッド駆動装置のコンパクト化、特に径方向のコンパクト化を図ることができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、フルトロイダル式無段変速装置にあっては、逆回転が入力すると、その構造上機能に支障をきたすが、該無段変速装置の出力部に第1のクラッチを介在したので、コースト時、制動時、モータ・ジェネレータによる回生等の充電時又は後進走行時にあっても、上記第1のクラッチを切断することによりフルトロイダル式無段変速装置に逆回転が入力することを阻止できる。
【0019】
請求項5に係る本発明によると、入力軸とギヤ機構の第4の要素とを、第2のクラッチを介在して連動したので、該第2のクラッチを接続して、入力軸の回転を、トロイダル式無段変速装置の変速を介することなく直接出力軸に伝達することができ、例えば高速道路での巡航時、エンジン駆動力を無段変速装置を介することなく出力軸に伝達して、伝達効率の高い前進巡航走行を可能にして、ハイブリッド駆動装置の燃費性能を更に向上することができる。
【0020】
請求項6に係る本発明によると、エンジン駆動力をクラッチを介して入力軸に伝達するので、トロイダル式無段変速装置、モータ・ジェネレータ、出力軸等の出力側の状況に拘りなく、エンジンのみで回転することが可能となり、トロイダル式無段変速装置の適正な回転比等の出力側の最適状況に合せて、エンジンを始動・回転制御した状態で上記クラッチを接続することができる。
【0021】
請求項7に係る本発明によると、トロイダル式無段変速装置の出力部を後進クラッチを介して出力軸に伝達したので、エンジンの駆動力を出力軸に後進回転として伝達することができ、バッテリが空の状態でモータ・ジェネレータによる後進が困難な状況でも、確実に車輌を後進走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態によるハイブリッド駆動装置を示し、該ハイブリッド駆動装置は、エンジン走行モード(a)と、モータ走行モード(b)と、トロイダル変速装置を介さない固定段走行モード(c)とを有する。ハイブリッド駆動装置1は、図1に示すように、フルトロイダル式無段変速装置(以下バリエータという)2、モータ・ジェネレータ(以下モータという)3、反転ギヤ機構4を有しており、これらバリエータ2、モータ3及び反転ギヤ機構4が、入力軸5及び出力軸6と一軸上に、かつエンジン7から出力軸6に向けてその順(2→3→5)で配置されている。
【0023】
バリエータ2は、入力軸5に連結された2個の入力ディスク10,10と、これら入力ディスクの間に配置される1個の出力ディスク11と、両ディスクの間に挟持されるパワーローラ12,12とを有する。入力ディスク10,10及び出力ディスク11は、それぞれ対向するように円形の一部を形成する円弧状の凹溝を有しており、2列のパワーローラ12,12を挟んでダブルキャビティを構成して、入力ディスク同士のスラスト力を打消す構成からなる。パワーローラ12,12は、軸に直角方向にシフトさせることにより傾斜して、入力ディスク10,10と出力ディスク11との接触半径を変更することにより、無段に連続して変速する。出力ディスク11はその外周側にドラム状の出力伝達軸(出力部)13が連結されており、該ドラム状軸13aは後側入力ディスク10を囲むようにして後方に延びている。
【0024】
ドラム状出力伝達軸13aは、後側ディスク10の後側(モータ3側)で縮径して、入力軸5を被嵌するスリーブ軸13bとなっている。上記ドラム状出力伝達軸13aの後端部分において、該ドラム状出力伝達軸13aとスリーブ状出力伝達軸13bとの間には第1のクラッチC1が介在している。反転ギヤ機構4とバリエータ2との間部分にて、上記スリーブ状出力伝達軸13bを囲うようにモータ3が配置されている。モータ3は、ブラシレスDCモータが好ましく、バッテリ(図示せず)からの電力によりトルクを出力すると共に、エンジン7に基づく出力軸6の回転並びに車輌慣性に基づく出力軸の回転(回生)によりバッテリを充電し得る(ジェネレータ)。該モータ3のロータ3aは、上記バリエータ出力伝達軸(出力部)13を被嵌するスリーブ軸(モータ出力部)14に連結している。
【0025】
反転ギヤ機構4は、ステップピニオンギヤからなり、本ハイブリッド駆動装置1を覆うミッションケースからなる固定部材15に固定された軸16に回転自在された2個のピニオンP1,P2を有するキャリヤCを備える。大ピニオンP1は、上記モータ出力伝達軸14に連結されている第1のサンギヤ(第1の要素)S1が噛合していると共に、出力軸6に連動するドラム状の連動軸17に設けられた第1のリングギヤ(第3の要素)R1が噛合している。小ピニオンP2は、前記スリーブ状出力伝達軸13bに連結されている第2のサンギヤ(第2の要素)S2に噛合していると共に、前記入力軸11に第2のクラッチC2を介して連結している第2のリングギヤ(第4の要素)R2に噛合している。
【0026】
即ち、本ステップピニオンギヤからなる反転ギヤ機構4は、キャリヤCが固定支持され、反力を支持する1個の固定要素(C)と、3個の入力要素(S1,S2,R1)と1個の出力要素(R2)との5要素からなるギヤ機構を構成している。前記第1のリングギヤR1からのドラム状の連動軸17は、第3のクラッチC3を介して前記出力軸6に連結している。
【0027】
前記第1、第2及び第3のクラッチC1,C2,C3は、図2の作動表に示すように作動する。エンジン走行モードにあっては、図1(a)に示すように、第1のクラッチC1、第3のクラッチC3が接続して、第2のクラッチC2が切り状態となる。この状態では、エンジン7の回転は、バリエータ2により変速され、該変速回転がドラム状出力伝達軸13a、第1のクラッチC1及びスリーブ状出力伝達軸13bを介して反転ギヤ機構4の第2のサンギヤS2に伝達される。この際、バリエータ2にあっては、エンジン7からの入力軸5の回転は、パワーローラ12を介在することにより反転して出力伝達軸13に出力する。
【0028】
上記第2のサンギヤS2の回転は、反転ギヤ機構4により反転・減速されて第1のリングギヤR1に伝達され、該回転が連動軸17及び第3のクラッチC3を介して出力軸6に伝達される。従って、エンジン7の回転は、トロイダル式無段変速装置2で反転され、更に反転ギヤ機構4により反転されるため、エンジンの出力軸と同方向の回転が、1軸上の出力軸6から出力され、前進方向回転として後輪の駆動輪に伝達される。
【0029】
一方、モータ3の回転は、その出力伝達軸14から反転ギヤ機構4の第1のサンギヤS1に伝達され、反転・減速されて第1のリングギヤR1に伝達され、更に連動軸17及び第3のクラッチC3を介して出力軸6に伝達される。該モータ3は、運転状況に応じて、エンジン7の動力をアシストしてモータ出力トルクを出力軸6に伝達するアシストモードと、逆に出力軸6のトルク(即ちエンジン7のトルク)をモータ3に伝達する充電モードと、モータ3のロータ3aが自由回転するアイドルモードとに切換えられる。
【0030】
モータ走行モードは、第3のクラッチC3を接続し、第1及び第2のクラッチC1,C2が切り状態となる。この状態では、図1(b)に示すように、モータ3の出力回転が、反転ギヤ機構4のサンギヤS1、第1のリングギヤR1を介して反転・減速して連動軸17に伝達され、更に第3のクラッチC3を介して出力軸6に伝達される。この際、モータ3は、エンジン回転と反対方向の正方向に回転する場合、反転ギヤ機構4で反転され、出力軸6に前進方向回転として伝達される。モータ3を逆回転することにより、出力軸6には後進方向回転して伝達される。
【0031】
また、車輌停止時又は下り坂走行時等、駆動車輪からのトルクがエンジン方向に伝達されるコースト状態にあっては、出力軸6のトルクが第3のクラッチC3及び反転ギヤ機構4を介してモータ(・ジェネレータ)3に伝達され、車輌慣性エネルギを電気エネルギとして回生する。この際、第1のクラッチC1が切断されており、フルトロイダル式無段変速装置(バリエータ)2に逆回転が伝達されることはなく、該バリエータ2の機能に支障をきたすことはない。
【0032】
固定段走行モードは、第2のクラッチC2及び第3のクラッチC3が接続すると共に、第1のクラッチC1が切り状態となる。この状態では、図1(c)に示すように、エンジン7の回転は、バリエータ2を介することなく、入力軸5及び第2のクラッチC2を介して直接反転ギヤ機構4の第2のリングギヤR2に伝達される。該第2のリングギヤR2の回転は、増速して第1のリングギヤR1に伝達され、更に連動軸17及び第3のクラッチC3を介して出力軸6に伝達される。この際、エンジン7の回転は、反転ギヤ機構4で反転されることなく、同方向の回転が前進方向回転として出力軸6に伝達される。
【0033】
また、モータ3の回転は、第1のサンギヤS1及び第1のリングギヤR1を介して出力軸6に伝達される。この際、先に説明したエンジン走行モードと同様に、モータ3は、運転状況に応じて、アシストモード、充電モード、アイドルモードに切換えられる。
【0034】
一般に、自動車に搭載したハイブリッド駆動装置1は、停止状態から発進する際、まずモータ走行モード(前進)により所定速度まで加速し、自動車が所定速度になると、第1のクラッチC1を接続すると共に、イグニッションが作動してエンジン7が始動し、エンジン走行モードになる。該エンジン走行モードにおいて、エンジン7が最良燃費特性になるようにバリエータ2が無段変速されると共に、モータ3をアシストしつつ、運転者がアクセルペダルの踏み量に従った車速になるように、上記バリエータ2及びモータ3が制御される。
【0035】
そして、運転者がブレーキを踏むことにより停止する際には、モータ走行モードに切換えられ、出力軸6からの逆回転がバリエータ2に伝達されないように第1のクラッチC1を切ると共に、モータ(ジェネレータ)3が出力軸6からの慣性エネルギを直接回生する。また、高速道路等において略々一定速度で高速走行する場合、固定段走行モードに切換えられ、エンジン7の回転がバリエータ2を介することなく直接出力軸6に伝達され、かつバッテリ充電状態(SOC)に応じて、エンジン7の余剰エネルギによりモータ(ジェネレータ)3が充電する。これにより、巡航速度にあっては、バリエータ2を介することなく、効率の高い走行を行えると共に、エンジンの回転により直接モータ(ジェネレータ)3にて充電することができ、これらが相俟って、高い燃費性能を得ることができる。
【0036】
また、車輌の停止状態(ニュートラル状態)で充電する場合、第1及び第3のクラッチC1,C3を切断すると共に、第2のクラッチC2を接続する。この状態では、出力軸6及びバリエータ2に関係なく、エンジン7とモータ(ジェネレータ)3とを接続して、車輌を停止した状態でエンジン7により直接モータ(ジェネレータ)3を充電することができる。
【0037】
ついで、図3に沿って一部変更した第2の実施の形態について説明する。本実施の形態によるハイブリッド駆動装置1は、第1の実施の形態に対して、第3のクラッチC3をなくして連動軸17と出力軸6とを連結すると共に、エンジン7と入力軸5との間に第4のクラッチC0を介在したものである。なお、他の部分は、第1の実施の形態と同様なので、図3に図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
第4のクラッチC0、第1のクラッチC1及び第2のクラッチC2は、図4に示すように作動する。即ち、第1のクラッチC1及び第2のクラッチC2は、先の第1の実施の形態と同様であるが、第4のクラッチC0は、モータ走行モードにあっては切断されるが、エンジン走行モード及び固定段走行モードにあっては接続される。なお、エンジン走行モード、モータ走行モード、固定段走行モードの各作動は、先の第1の実施の形態と同様である。
【0039】
エンジン走行モードは、図3(a)に示すように、エンジン7の回転が第4のクラッチC0を介してバリエータ2に伝達され、該変速回転及びモータ3からの出力が反転ギヤ機構4にて合成されて出力軸6に伝達される。
【0040】
モータ走行モードは、図3(b)に示すように、第4のクラッチC0が切断され、エンジン7と入力軸5との関係が断たれる。この状態で、モータ3を正転又は逆転することにより、出力軸6が前進方向又は後進方向に回転する。また、運転者のブレーキ操作による減速時には、出力軸6の回転がモータ3に直接伝達されて回生する。
【0041】
固定段走行モードは、図3(c)に示すように、第4のクラッチC0の接続及び第1のクラッチC1の切断により、エンジン7の回転がバリエータ2を介することなく、入力軸5及び第2のクラッチC2を介して直接出力軸6に伝達される。
【0042】
そして、本第2の実施の形態が先の第1の実施の形態と異なる点は、自動車がモータ走行モードで発進し、エンジン走行モードに移行する点にある。即ち、モータ走行モードによる停止からの発進時にあっては、第4のクラッチC0が切断されて、エンジン7は入力軸5の回転と関係がなくなる。従って、上記発進時にあっては、エンジン7を停止するか又は無負荷状態で回転し、自動車が所定走行になると、エンジン走行モードに移行する。この際、第4のクラッチC0を先に接続して、バリエータ2を制御すると共にエンジン回転数及び出力伝達軸13aの回転数が最適回転数になった状態で、第1のクラッチC1を接続してエンジン走行モードに移行することが好ましい。
【0043】
図5は、第3の実施の形態を示す図である。先の第1及び第2の実施の形態の後進走行はモータ走行モードで行うため、バッテリの充電が不足している場合、モータ3による後進が不可能になる場合がある。本第3の実施の形態によるハイブリッド駆動装置1は、エンジン7による後進を可能とするため、後進クラッチC4を設けたものである。また、固定段走行モードはなくなり、連動軸17と出力軸6との間に介在する第3のクラッチC3は、前進クラッチとなる。
【0044】
即ち、先の実施の形態における入力軸5と第2のリングギヤR2とに介在する第2のクラッチC2はなくなり、リングギヤR2は不要となる(なくなる)と共に、入力軸5と出力軸6との間に後進クラッチC4が介在する。その他の構成については、先の第1及び第2の実施の形態と同様なので、図5に同一符号を付して説明を省略する。また、第3のクラッチC3及び後進クラッチC4は、図6の作動表に示すように作動する。
【0045】
エンジン走行モードは、図5(a)に示すように、エンジン7の回転がバリエータ2により無段変速され、反転ギヤ機構の第2のサンギヤS2及び第1のリングギヤR1及び前進クラッチである第3のクラッチC3を介して出力軸6に前進方向回転として伝達される。この際、モータ3は、第1のサンギヤ及び第1のリングギヤR1を介して出力軸6に連動しており、運転状況に応じて、エンジン7をアシストし、モータ3を充電し、又はアイドル回転する。
【0046】
モータ走行モードは、図5(b)に示すように、モータ3の回転が反転ギヤ機構4の第1のサンギヤS1、第1のリングギヤR1及び前進(第3の)クラッチC3を介して出力軸6に伝達され、出力軸6を前進方向に回転する。この際、モータ3の回転は、反転ギヤ機構4の第1のサンギヤS1及びバリエータ2を介してエンジン7に伝達されるが、エンジン7は、イグニッションを作動せず、自由回転している。なお、先の実施の形態のように、第1のクラッチC1を介在してエンジン7への動力を切断してもよい。
【0047】
後進走行モードは、図5(c)に示すように、エンジン7の回転が、バリエータ2を介して出力伝達軸13に伝達され、更に後進クラッチC4を介して、後進回転として出力軸6に伝達される。従って、本実施の形態にあっては、エンジン7にて自動車を後進走行するので、例えバッテリが空になっても後進走行が可能である。なお、先の実施の形態と同様に第3のクラッチC3を接続すると共に後進クラッチC4を切断して、モータ3を逆回転することにより、第3のクラッチC3を介して出力軸6を後進方向に回転することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態によるハイブリッド駆動装置を示す概略図及び速度線図であり、(a)はエンジン走行モード、(b)はモータ走行モード、(c)は固定段走行モードを示す。
【図2】上記第1の実施の形態における各クラッチの作動を示す図。
【図3】第2の実施の形態によるハイブリッド駆動装置を示す概略図及び速度線図であり、(a)はエンジン走行モード、(b)はモータ走行モード、(c)は固定段走行モードを示す。
【図4】上記第2の実施の形態における各クラッチの作動を示す図。
【図5】第3の実施の形態によるハイブリッド駆動装置を示す概略図及び速度線図であり、(a)はエンジン走行モード(前進)、(b)はモータ走行モード(前後進)、(c)はエンジン後進走行モードを示す。
【図6】上記第3の実施の形態における各クラッチの作動を示す図。
【符号の説明】
【0049】
,1,1 ハイブリッド駆動装置
2 (フル)トロイダル式無段変速装置
3 モータ・ジェネレータ
4 (反転)ギヤ機構
5 入力軸
6 出力軸
7 エンジン
13,(13a,13b) 無段変速装置出力部(ドラム状出力伝達軸、スリーブ状出力伝達軸)
15 固定部材(ミッションケース)
16 軸
C 固定要素(キャリヤ)
S1 第1の要素(サンギヤ)
S2 第2の要素(サンギヤ)
R1 第3の要素(リングギヤ)
R2 第4の要素(リングギヤ)
C1 第1のクラッチ
C2 第2のクラッチ
C3 第3のクラッチ
C0 (第4の)クラッチ
C4 後進クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力を無段変速装置を介して出力軸に伝達すると共に、モータ・ジェネレータを前記出力軸に連動してなる、ハイブリッド駆動装置において、
前記無段変速装置は、前記エンジン駆動力を入力する入力軸と、該入力軸の回転を無段に変速して出力する出力部とを有するトロイダル式無段変速装置であり、
前記モータ・ジェネレータの出力部に連動する第1の要素、前記トロイダル式無段変速装置の出力部に連動する第2の要素、前記出力軸に連動する第3の要素、及び固定部材に支持され固定要素を少なくとも有するギヤ機構を備え、
前記トロイダル式無段変速装置の入力軸及び出力部と、前記モータ・ジェネレータと、前記ギヤ機構と、前記出力軸とを一軸上に配置してなる、
ことを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
エンジン側から、前記トロイダル式無段変速装置、前記モータ・ジェネレータ、ギヤ機構そして出力軸の順に一軸上に配置されてなる、
請求項1記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記ギヤ機構は、一体に回転する第1及び第2のピニオンを支持するキャリヤを有するステップピニオンギヤであり、前記固定要素が前記キャリヤであり、前記第1の要素が第1のサンギヤであり、前記第2の要素が第2のサンギヤであり、前記第3の要素が第1のリングギヤである、
請求項1又は2記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記トロイダル式無段変速装置が、フルトロイダル式無段変速装置であり、
該フルトロイダル式無段変速装置の前記出力部に第1のクラッチを介在し、
前記第1のクラッチを接続し、前記フルトロイダル式無段変速装置の出力部及び前記モータ・ジェネレータの出力部と前記出力軸とを連動するエンジン走行モードと、
前記第1のクラッチを切断し、前記モータ・ジェネレータの出力部と前記出力軸とを連動するモータ走行モードと、を有する、
請求項1ないし3のいずれか記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記ギヤ機構は、前記入力軸に連動する第4の要素を有し、
前記入力軸に第2のクラッチを介在し、該第2のクラッチを接続すると共に前記第1のクラッチを切断して、前記入力軸と前記出力軸とを直接的に連動する固定段走行モードを有する、
請求項4記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
エンジンからの駆動力を前記入力軸に接続又は切断するクラッチを配置してなる、
請求項1ないし5のいずれか記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記ギヤ機構の前記第3の要素と前記出力軸との間に第3のクラッチを介在し、
前記トロイダル式無段変速装置の前記出力部と前記出力軸との間に後進クラッチを介在し、
前記第3のクラッチを切断すると共に、前記後進クラッチを接続して、エンジンからの駆動力を前記トロイダル式無段変速装置を介して前記出力軸に後進回転として伝達してなる、
請求項1,2,3,5,又は6記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132328(P2009−132328A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311300(P2007−311300)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】